(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する吸着材を備えるキャニスタと、前記キャニスタと前記燃料タンクとをつなぐベーパ通路に設けられている封鎖弁と、前記キャニスタとエンジンの吸気通路とをつなぐパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、
前記封鎖弁は、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量を変化させて、全閉位置と全開位置間で前記ストローク量に応じた弁開度とし、前記ベーパ通路を流れる気体流量を調整して前記燃料タンクの圧抜き制御を行なう構成であり、
前記燃料タンクの圧抜き制御では、前記燃料タンクの内圧に応じて全閉位置と全開位置間で予め設定されている前記封鎖弁の基準ストローク量に基づく弁開度で前記封鎖弁が開弁されることを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した蒸発燃料処理装置では、デューティ比制御により封鎖弁を流れる気体流量(圧抜き流量)を調整することで、燃料タンクの圧抜き制御を行なう構成である。しかし、封鎖弁を周期的にオンオフするデューティ比制御は、弁の全開と全閉とを周期的に繰り返して単位時間内に封鎖弁を流れる気体の平均流量を調整する制御である。このため、封鎖弁の流量を微調整するのが難しく、燃料タンクの圧抜き制御の精度が低い。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、精度良く燃料タンクの圧抜き制御を行なえるようにするとともに、制御が複雑にならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を吸着する吸着材を備えるキャニスタと、前記キャニスタと前記燃料タンクとをつなぐベーパ通路に設けられている封鎖弁と、前記キャニスタとエンジンの吸気通路とをつなぐパージ通路とを備える蒸発燃料処理装置であって、前記封鎖弁は、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量を変化させ
て、全閉位置と全開位置間で前記ストローク量に応じた弁開度とし、前記ベーパ通路を流れる気体流量を調整して前記燃料タンクの圧抜き制御を行なう構成であり、前記燃料タンクの圧抜き制御では、前記燃料タンクの内圧に応じて
全閉位置と全開位置間で予め設定されている前記封鎖弁の基準ストローク量に基づ
く弁開度で前記封鎖弁が開弁されることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、燃料タンクの圧抜き制御では、燃料タンクの内圧に応じて予め設定されている封鎖弁の基準ストローク量に基づいて前記封鎖弁が開弁される。これにより、蒸発燃料を含む燃料タンク内の気体がベーパ通路を介してキャニスタ側に逃がされ、燃料タンクの圧抜きが行なわれる。このように、燃料タンクの内圧に応じて予め設定されている基準ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁される構成のため、圧抜き制御が複雑化しない。
さらに、封鎖弁は、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量を変化させることで、ベーパ通路を流れる気体流量を調整する構成のため、ベーパ通路を流れる気体流量を微調整することができる。このため、精度良く燃料タンクの圧抜き制御を行なえるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、燃料タンクの圧抜き制御では、規定時間内の燃料タンクの内圧低下量が所定値よりも小さい場合には、予め設定されている基準ストローク量に一定値を加算した加算ストローク量に基づいて前記封鎖弁が開弁されることを特徴とする。
即ち、加算ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁される場合には、基準ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁される場合と比べて、封鎖弁の開度が大きくなる。このため、例えば、燃料タンク内で蒸発燃料の発生量が多く、封鎖弁が基準ストローク量に基づいて開弁されても燃料タンクの圧抜きが不十分な場合に、燃料タンクの圧抜きを良好に行なえるようになる。
【0009】
請求項3の発明によると、加算ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁された後、規定時間内の前記燃料タンクの内圧低下量が所定値以上となった場合には、前記基準ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁されることを特徴とする。
請求項4の発明によると、燃料タンクの圧抜き制御では、予め決められた時間毎に燃料タンクの内圧を検出して前回の検出圧力と今回の検出圧力との差圧を演算し、前記差圧が所定値以上の場合には基準ストローク量に基づいて前記封鎖弁が開弁され、前記差圧が所定値よりも小さい場合には、前記加算ストローク量に基づいて前記封鎖弁が開弁されることことを特徴とする。
このため、燃料タンク内の状況に応じて、燃料タンクの圧抜きを良好に行なえるようになる。
【0010】
請求項5の発明によると、ベーパ通路を流れる気体流量がパージ通路を流れる気体流量を超えないように、前記封鎖弁の基準ストローク量が設定されていることを特徴とする。
このため、燃料タンクからベーパ通路を通ってキャニスタ内に流入した蒸発燃料はキャニスタ内に溜まらず、パージ通路を通ってエンジンの吸気通路に導かれるようになる。
【0011】
請求項6の発明によると、エンジンの空燃比が燃料リッチとなった場合には、封鎖弁の基準ストローク量、あるいは加算ストローク量から一定値を減算した減算ストローク量に基づいて前記封鎖弁が開弁されることを特徴とする。
即ち、エンジンの空燃比が燃料リッチとなった場合には、減算ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁されるため、封鎖弁の開度が減少する。このため、燃料タンクからベーパ通路、キャニスタ、及びパージ通路を通ってエンジンの吸気通路に導かれる蒸発燃料量が減少し、エンジンの空燃比が正常に戻される。
請求項7の発明によると、減算ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁された後、エンジンの空燃比が適正値に戻った場合には、基準ストローク量、あるいは加算ストローク量に基づいて封鎖弁が開弁されることを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明によると、封鎖弁は、送りネジ機構と、その送りネジ機構を動作させる電動モータとにより、弁座に対する弁可動部の軸方向距離であるストローク量を変化させる構成であり、 前記弁可動部は、前記弁座に当接可能に構成されたバルブガイドと、そのバルブガイドに対して軸方向に一定寸法だけ相対移動可能な状態で連結されて、前記弁座に対して着座及び離座可能に構成されたバルブ体と、前記バルブ体をバルブガイドに対して前記弁座の方向に付勢する付勢手段とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、燃料タンクの圧抜き制御を高精度で簡単に行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
以下、
図1から
図10に基づいて本発明の実施形態1に係る蒸発燃料処理装置20の説明を行なう。本実施形態の蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、車両のエンジンシステム10に備えられており、車両の燃料タンク15で発生した蒸発燃料が外部に漏れ出ないようにするための装置である。
【0016】
<蒸発燃料処理装置20の構造概要について>
蒸発燃料処理装置20は、
図1に示すように、キャニスタ22と、そのキャニスタ22に接続されたベーパ通路24、パージ通路26、及び大気通路28とを備えている。
キャニスタ22内には、吸着材としての活性炭(図示省略)が装填されており、燃料タンク15内の蒸発燃料を前記吸着材により吸着できるように構成されている。
ベーパ通路24の一端部(上流側端部)は、燃料タンク15内の気層部と連通されており、ベーパ通路24の他端部(下流側端部)がキャニスタ22内と連通されている。そして、ベーパ通路24の途中にはベーパ通路24を連通・遮断する封鎖弁40(後記する)が介装されている。
また、パージ通路26の一端部(上流側端部)は、キャニスタ22内と連通されており、パージ通路26の他端部(下流側端部)がエンジン14の吸気通路16におけるスロットルバルブ17よりも下流側通路部と連通されている。そして、パージ通路26の途中にはパージ通路26を連通・遮断するパージ弁26vが介装されている。
さらに、キャニスタ22は故障検出に使用されるOBD用部品28vを介して大気通路28が連通されている。大気通路28の途中にはエアフィルタ28aが介装されており、大気通路28の他端部は大気に開放されている。
前記封鎖弁40、パージ弁26v及びOBD用部品28vは、ECU19からの信号に基づいて制御される。
さらに、ECU19には、燃料タンク15内の圧力を検出するタンク内圧センサ15p等の信号が入力される。
【0017】
<蒸発燃料処理装置20の動作概要について>
次に、蒸発燃料処理装置20の基本的動作について説明する。
車両の駐車中は、封鎖弁40が閉弁状態に維持される。このため、燃料タンク15の蒸発燃料がキャニスタ22内に流入することはない。そして、駐車中に車両のイグニッションスイッチがオンされると、封鎖弁40の開弁開始位置を学習する学習制御が行われる。
また、車両の駐車中は、パージ弁26vは閉弁状態に維持されてパージ通路26は遮断状態となり、大気通路28は連通状態に維持される。
車両の走行中は、所定のパージ条件が成立する場合に、ECU19がキャニスタ22に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。この制御では、キャニスタ22を大気通路28により大気に連通させたまま、パージ弁26vが開閉制御される。パージ弁26vが開弁されると、エンジン14の吸気負圧がパージ通路26を介してキャニスタ22内に作用する。これにより、キャニスタ22内に大気通路28から空気が流入するようになる。さらに、パージ弁26vが開弁されると、封鎖弁40が開弁方向に動作して燃料タンク15の圧抜き制御が行なわれる(後記する)。これにより、キャニスタ22内にベーパ通路24から燃料タンク15内の気体が流入するようになる。この結果、キャニスタ22内の吸着材がキャニスタ22に流入する空気等によりパージされ、前記吸着材から離脱した蒸発燃料が空気と共にエンジン14の吸気通路16に導かれて、エンジン14内で燃焼される。
【0018】
<封鎖弁40の基本構造について>
封鎖弁40は、閉弁状態でベーパ通路24を封鎖し、開弁状態でベーパ通路24を流れる気体の流量を制御する流量制御弁であり、
図2に示すように、バルブケーシング42とステッピングモータ50とバルブガイド60とバルブ体70とを備えている。
バルブケーシング42には、弁室44、流入路45及び流出路46により、一連状をなす逆L字状の流体通路47が構成されている。また、弁室44の下面すなわち流入路45の上端開口部の口縁部には、弁座48が同心状に形成されている。
前記ステッピングモータ50は、前記バルブケーシング42の上部に設置されている。前記ステッピングモータ50は、モータ本体52と、そのモータ本体52の下面から突出し、正逆回転可能に構成された出力軸54を有している。出力軸54は、バルブケーシング42の弁室44内に同心状に配置されており、その出力軸54の外周面に雄ネジ部54nが形成されている。
【0019】
バルブガイド60は、円筒状の筒壁部62と筒壁部62の上端開口部を閉鎖する上壁部64とから有天円筒状に形成されている。上壁部64の中央部には筒軸部66が同心状に形成されており、その筒軸部66の内周面に雌ネジ部66wが形成されている。前記バルブガイド60は、前記バルブケーシング42に対して、回り止め手段(図示省略)により軸回り方向に回り止めされた状態で軸方向(上下方向)に移動可能に配置されている。
バルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wには、前記ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nが螺合されており、ステッピングモータ50の出力軸54の正逆回転に基いて、バルブガイド60が上下方向(軸方向)に昇降移動可能に構成されている。
前記バルブガイド60の周囲には、そのバルブガイド60を上方へ付勢する補助スプリング68が介装されている。
【0020】
前記バルブ体70は、円筒状の筒壁部72と筒壁部72の下端開口部を閉鎖する下壁部74とから有底円筒状に形成されている。下壁部74の下面には、例えば、円板状のゴム状弾性材からなるシール部材76が装着されている。
前記バルブ体70は、前記バルブガイド60内に同心状に配置されており、そのバルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座48の上面に対して当接可能に配置されている。バルブ体70の筒壁部72の上端外周面には、円周方向に複数個の連結凸部72tが形成されている。そして、バルブ体70の連結凸部72tがバルブガイド60の筒壁部62の内周面に形成された縦溝状の連結凹部62mと一定寸法だけ上下方向に相対移動可能な状態で嵌合している。そして、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに対して下方から当接した状態で、バルブガイド60とバルブ体70とが一体で上方(開弁方向)に移動可能となる。
また、前記バルブガイド60の上壁部64と前記バルブ体70の下壁部74との間には、バルブガイド60に対してバルブ体70を常に下方、即ち、閉弁方向へ付勢するバルブスプリング77が同心状に介装されている。
【0021】
<封鎖弁40の基本動作について>
次に、封鎖弁40の基本動作について説明する。
封鎖弁40は、ECU19からの出力信号に基づいてステッピングモータ50を開弁方向、あるいは閉弁方向に予め決められたステップ数だけ回転させる。そして、ステッピングモータ50が予め決められたステップ数だけ回転することで、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用により、バルブガイド60が上下方向に予め決められたストローク量だけ移動するようになる。
前記封鎖弁40では、例えば、全開位置においてステップ数が約200Step、ストローク量が約5mmとなるように設定されている。
封鎖弁40のイニシャライズ状態(初期状態)では、
図2に示すように、バルブガイド60が下限位置に保持されて、そのバルブガイド60の筒壁部62の下端面がバルブケーシング42の弁座48の上面に対して当接している。また、この状態で、バルブ体70の連結凸部72tは、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bに対して上方に位置しており、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座48の上面に押付けられている。即ち、封鎖弁40は全閉状態に保持されている。そして、このときのステッピングモータ50のステップ数が0Stepであり、バルブガイド60の軸方向(上方向)の移動量、即ち、開弁方向のストローク量が0mmとなる。
また、車両の駐車中等では、封鎖弁40のステッピングモータ50がイニシャライズ状態から開弁方向に、例えば、4Step回転する。これにより、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が約0.1mm(=4Step×(5mm÷200Step))上方に移動し、バルブケーシング42の弁座48から浮いた状態に保持される。これにより、気温等の環境変化で封鎖弁40のバルブガイド60とバルブケーシング42の弁座48間に無理な力が加わり難くなる。
なお、この状態で、バルブ体70のシール部材76はバルブスプリング77のバネ力により、バルブケーシング42の弁座48の上面に押付けられている。
【0022】
ステッピングモータ50が4Step回転した位置からさらに開弁方向に回転すると、前記雄ネジ部54nと雌ネジ部66wとの螺合作用でバルブガイド60が上方に移動し、
図3に示すように、バルブガイド60の連結凹部62mの底壁部62bがバルブ体70の連結凸部72tに下方から当接する。そして、バルブガイド60がさらに上方に移動することで、
図4に示すように、バルブ体70がバルブガイド60と共に上方に移動し、バルブ体70のシール部材76がバルブケーシング42の弁座48から離れるようになる。これにより、封鎖弁40が開弁される。
ここで、封鎖弁40の開弁開始位置は、バルブ体70に形成された連結凸部72tの位置公差、バルブガイド60の連結凹部62mに形成された底壁部62bの位置公差等により、封鎖弁40毎に異なるため、正確に開弁開始位置を学習する必要がある。この学習を行なうのが学習制御であり、封鎖弁40のステッピングモータ50を開弁方向に回転(ステップ数を増加)させながら燃料タンク15の内圧が所定値以上低下したタイミングに基づいて開弁開始位置のステップ数を検出する。
即ち、ステッピングモータ50の出力軸54の雄ネジ部54nとバルブガイド60の筒軸部66の雌ネジ部66wとが本発明の送りネジ機構に相当し、前記バルブスプリング77が本発明の付勢手段に相当する。また、前記ステッピングモータ50が本発明の電動モータに相当する。
【0023】
図5は、燃料タンク15の内圧(タンク内圧P)がP10(kPa)、即ち、封鎖弁40の上流側と下流側との間にP10(kPa)の差圧が加わっている状態での封鎖弁40の流量特性を表している。ここで、
図5の横軸に表すStep数は、開弁開始位置を0StepとしたときのStep数である。
例えば、タンク内圧PがP10(kPa)のときに、封鎖弁40のステッピングモータ50が開弁開始位置0Stepから開弁方向にα4Step回転すると、バルブ体70がバルブガイド60と共に約α4Step×(5mm÷200Step)mm上方に移動し、封鎖弁40には約L03(L/sec)の気体が流れるようになる。同様に、ステッピングモータ50が開弁開始位置0Stepから開弁方向にα5Step回転すると、バルブ体70がバルブガイド60と共に約α5Step×(5mm÷200Step)mm上方に移動し、封鎖弁40には約L04(L/sec)の気体が流れるようになる。即ち、封鎖弁40が開弁することで、燃料タンク15内の気体(蒸発燃料を含む空気)がベーパ通路24、封鎖弁40を通ってキャニスタ22側に流れ、燃料タンク15の圧抜きが行われる。このため、封鎖弁40の流量を圧抜き流量と呼ぶことにする。また、バルブガイド60、及びバルブ体70のストローク量(軸方向の移動量)とステッピングモータ50のステップ数とは一定の関係にあるため、以後、ストローク量とステップ数とは同意語として使用する。
【0024】
<燃料タンク15の圧抜き制御について>
次に、前記封鎖弁40を使用した燃料タンク15の圧抜き制御について説明する。
燃料タンク15の圧抜き制御は、車両の走行中に、ECU19がキャニスタ22内の蒸発燃料をパージさせる制御を実行する際に、同時に行われる。即ち、パージ通路26のパージ弁26v(
図1参照)の開弁に合わせて、ベーパ通路24の封鎖弁40が開弁され、燃料タンク15の圧抜き制御が実行される。
燃料タンク15の圧抜き制御では、
図6のマップに示す適正なストローク量(基準ストローク量)に基づいて封鎖弁40の開弁が行なわれる。ここで、
図6のマップに示す封鎖弁40の基準ストローク量(α1〜α10Step)は、封鎖弁40を流れる流量(圧抜き流量L/sec)がパージ通路26(パージ弁26v)を流れる流量(パージ流量)を超えないように、タンク内圧P(kPa)毎に設定されている。
ここで、タンク内圧は、0(kPa)〜P12(kPa)まで所定の圧力間隔で区分されており、0(kPa)〜P10(kPa)間は図示省略されている。なお、タンク内圧は、0<・・・<P10<P11<P12である。また、パージ流量は、0(L/sec)〜L4(L/sec)まで所定流量間隔で区分されており、0<L1<L2<L3<L4である。なお、
図6のマップに示す基準ストローク量(α1〜α10Step)は
図5と同様に封鎖弁40の開弁開始位置を0StepとしたときのStep数である。
例えば、タンク内圧PがP10(kPa)で、ECU19により演算されたパージ流量がL3(L/sec)の場合には、
図6の符号Mに示すように、封鎖弁40の基準ストローク量はα3Stepに設定される。ここで、封鎖弁40のストローク量がα3Stepのときには、
図5に示すように、封鎖弁40を流れる流量(圧抜き流量L/sec)はL02(L/sec)となる。L02<L3であり、圧抜き流量(L/sec)がパージ流量(L/sec)を超えることはない。
また、タンク内圧PがP10(kPa)で、ECU19により演算されたパージ流量がL2(L/sec)の場合には、
図6の符号Nに示すように、封鎖弁40の基準ストローク量はα2Stepに設定される。ここで、封鎖弁40のストローク量がα2Stepのときには、
図5の流量特性に示すように、封鎖弁40を流れる流量(圧抜き流量L/sec)はL01(L/sec)となる。L01<L2であり、圧抜き流量(L/sec)がパージ流量(L/sec)を超えることはない。
このように、
図6のマップには、それぞれのタンク内圧P(0・・P10、P11、P12(kPa))、それぞれのパージ流量(0、L1、L2、L3、L4(L/sec))に対応する封鎖弁40の基準ストローク量(α1〜α10Step)が設定されている。そして、封鎖弁40が基準ストローク量(Step)で開弁されている状態で、封鎖弁40を流れる流量(圧抜き流量L/sec)はパージ流量(L/sec)を超えることがない。
【0025】
次に、
図7、
図8のフローチャートに基づいて燃料タンク15の圧抜き制御について具体的に説明する。
ここで、
図7、
図8のフローチャートに示す処理は、ECU19の記憶装置に格納されたプログラムに基づいて所定時間毎に繰り返し実行される。
先ず、
図7のステップS101で、圧抜き制御の条件が成立しているか、否かが判定される。例えば、車両が走行中で、パージ通路26のパージ弁26v(
図1参照)の開弁されている場合には、圧抜き制御の条件が成立しているため、ステップS101の判定はYESとなり、処理はステップS102に進む。また、圧抜き制御の条件が成立していない場合には(ステップS101 NO)、封鎖弁40はスタンバイ位置(閉弁状態)に保持される(ステップS105)。
ここで、スタンバイ位置とは、封鎖弁40の開弁開始位置の学習値(Step数)からステッピングモータ50が閉弁方向に8Step回転した位置であり、封鎖弁40は開弁開始位置の近傍で閉弁状態に保持される。このため、封鎖弁40は開弁方向の信号を受ければ速やかに開弁が可能となる。
圧抜き制御の条件が成立している場合には(ステップS101 YES)、タンク内圧Pとパージ流量により算出された基準ストローク量(Step)、即ち、
図6のマップに設定されている基準ストローク量(Step)が選択される(ステップS102)。例えば、タンク内圧PがP10(kPa)で、パージ流量がL3(L/sec)の場合には、基準ストローク量はα3Stepとなる(
図6の符号M参照)。
次に、基準ストローク量の補正算出処理が行なわれる(ステップS103)。ここで、前記補正算出処理は、
図8のフローチャートに基づいて行なわれる。
【0026】
即ち、
図8のステップS201で補正値算出処理の実行条件が成立しているか否かが判定される。最初の処理では、実行条件が成立していないため(ステップS201、S210 NO、ステップS211)、ステップS212で補正値が零に設定され、処理は、
図7のステップS104に戻される。これにより、補正が行われず、
図6のマップから選択された基準ストローク量(α3Step)に基づいて封鎖弁40が開弁される(ステップS104)。
そして、封鎖弁40が基準ストローク量(α3Step)だけ開弁することで、
図5に示すように、燃料タンク15内の気体(蒸発燃料を含む空気)がL02(L/sec)ベーパ通路24を通ってキャニスタ22側に流れ、燃料タンク15の圧抜きが行われる。このとき、パージ流量は、
図6のマップに示すように、L3(L/sec)(L3>L02)であるため、燃料タンク15からベーパ通路24を介してキャニスタ22に流入した蒸発燃料はキャニスタ22内に留まらず、パージ通路26、パージ弁26vを通ってエンジン14に導かれる。さらに、キャニスタ22内の蒸発燃料が大気中に漏れ出ることもない。
【0027】
通常の条件下では、
図6のマップから選択された基準ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁されることで、燃料タンク15の圧抜きが良好に行われる。このため、タンク内圧Pの変化量(低下量)、即ち、前回検出したタンク内圧と今回検出したタンク内圧との差圧(圧力低下量)は所定値より大きくなる。したがって、
図8のステップS210の判断はNOとなり、実行条件不成立となる(ステップS211)。即ち、
図8のステップS201、ステップS210〜ステップS212までの処理が繰り返し実行されて、補正値=0の制御が実行される。このように、補正が行われずに、
図6のマップから選択された基準ストローク量(Step)に基づいて封鎖弁40が開弁される圧抜き制御を、以後、マップ制御と呼ぶ。
【0028】
しかし、特殊な条件下では、例えば、燃料タンク15内で蒸発燃料の発生が多い場合等は、前記マップ制御を行なってもタンク内圧Pが想定どおりに低下しない場合がある。即ち、
図8の下図に示すように、前回検出したタンク内圧P1と今回検出したタンク内圧P2との差圧が所定値より小さい場合には(ステップS210 YES)、実行条件成立となり(ステップS213)、タンク内圧P2が記憶される(ステップS214)。そして、処理はステップS202に進み、タンク内圧P2に対して次に検出されたタンク内圧P3とが比較される。
図8の下図に示すように、差圧ΔPが所定値より大きい場合には(ステップS202 NO)、実行条件不成立となり(ステップS211)、補正値は零となる(ステップS212)。即ち、マップ制御が継続される。
しかし、仮に、
図9のタイミングTp2に示すように、タンク内圧P2とタンク内圧P3との差圧ΔPが所定値より小さい場合には(ステップS202 YES)、エンジン14の空燃比が燃料リッチであるか、否かが判定される(ステップS203)。そして、空燃比が燃料リッチでない場合(ステップS203 NO)、補正値(1Step)を
図6のマップから選択された基準ストローク量に加算する(
図8 ステップS205、
図7 ステップS104)。これにより、補正値を加算した基準ストローク量、即ち、加算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される。
そして、空燃比が燃料リッチでない場合には(ステップS203 NO)、前回のタンク内圧と今回のタンク内圧との差圧ΔPが所定値より大きくなるまで、
図8のステップS202、ステップS203、ステップS205、及び
図7のステップS104の処理が繰り返し実行されて、加算ストローク量に補正値(1Step)が順番に加算される(
図9 タイミングTp3、Tp4参照)。この結果、
図9に示すように、マップ制御よりタンク内圧Pが想定どおりに低下しないときでも、加算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁させることで、燃料タンク15の圧抜きを効果的に行なえるようになる(
図9 タイミングTP1〜TP5参照)。
そして、前回のタンク内圧と今回のタンク内圧との差圧ΔP(圧力低下量)が所定値より大きくなった場合には、再びマップ制御に戻される(
図9 タイミングTP5参照)。
さらに、マップ制御に戻されてから
図9のタイミングTp6、Tp7に示すように、前回のタンク内圧と今回のタンク内圧との差圧ΔPが再び所定値より小さくなると、上記した
図8のステップS202、ステップS203、ステップS205、及び
図7のステップS104の処理により、基準ストローク量に補正値(1Step)が加算される。そして、加算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される。
なお、
図9では、基準ストローク量は一定値で図示されているが、上記したように、基準ストローク量は
図6のマップから選択される値であり、タンク内圧、パージ流量によって変化する。
【0029】
また、
図9に示すように、補正値の加算が継続して行われることで、燃料タンク15からベーパ通路24、キャニスタ22、及びパージ通路26を通ってエンジン14の吸気通路16に導かれる蒸発燃料が増加して空燃比A/Fが燃料リッチになることがある(
図10 タイミングTp4x)。空燃比A/Fが燃料リッチになると、
図8のステップS203における判定がYESとなり、ステップS204で加算ストローク量、あるいは基準ストローク量から補正値(1Step)が減算される。これにより、補正値を減算した減算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される(
図7 ステップS104)。ここで、補正値の減算は、早期に空燃比A/Fを正常に戻す観点から、
図10に示すように、タンク内圧の判定タイミングとは別に短い周期で行なっている。そして、空燃比A/Fが正常に戻るまで、
図8のステップS203、ステップS204、及び
図7のステップS105の処理が繰り返し実行される。
これにより、封鎖弁40の開度が絞られて、燃料タンク15からベーパ通路24、キャニスタ22、及びパージ通路26を通ってエンジン14の吸気通路16に導かれる蒸発燃料が減少する。この結果、空燃比が適正な方向に戻される(
図10 タイミングTp5参照)。
なお、空燃比A/Fの判定タイミングをタンク内圧の判定タイミングと同期させることも可能である。
ここで、封鎖弁40の開度が絞られることで、
図10のタイミングTp5、Tp6に示すように、燃料タンク15の圧抜きが想定どおりに行なわれない場合には、上記したように、補正値の加算が行われる(
図10のタイミングTp6参照)。
【0030】
<本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20の長所>
本実施形態に係る蒸発燃料処理装置20によると、燃料タンク15の圧抜き制御では、タンク内圧Pに応じて予め設定されている封鎖弁40の基準ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される。これにより、蒸発燃料を含む燃料タンク15内の気体がベーパ通路24を介してキャニスタ22側に逃がされ、燃料タンク15の圧抜きが行なわれる。このように、タンク内圧Pに応じて予め設定されている基準ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される構成のため、圧抜き制御が複雑化しない。
さらに、封鎖弁40は、弁座48に対するバルブ体70(弁可動部)の軸方向距離であるストローク量を変化させることで、ベーパ通路24を流れる気体流量を調整する構成のため、ベーパ通路24を流れる気体流量を微調整することができる。このため、精度良く燃料タンク15の圧抜き制御を行なえるようになる。
【0031】
また、燃料タンク15の圧抜き制御では、規定時間内の燃料タンク15の内圧低下量が所定値よりも小さい場合には、予め設定されている基準ストローク量に一定値(1Step)を加算した加算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される。即ち、加算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される場合には、基準ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される場合と比べて、封鎖弁40の開度が大きくなる。このため、例えば、燃料タンク15内で蒸発燃料の発生量が多く、封鎖弁40が基準ストローク量に基づいて開弁されても燃料タンク15の圧抜きが不十分な場合に、燃料タンク15の圧抜きを良好に行なえるようになる。
また、ベーパ通路24を流れる気体流量がパージ通路26を流れる気体流量を超えないように、封鎖弁40の基準ストローク量が設定されているこのため、燃料タンク15からベーパ通路24を通ってキャニスタ22内に流入した蒸発燃料はキャニスタ22内に溜まらず、パージ通路26を通ってエンジン14の吸気通路16に導かれるようになる。
また、エンジン14の空燃比が燃料リッチとなった場合には、封鎖弁の基準ストローク量、あるいは加算ストローク量から一定値を減算した減算ストローク量に基づいて封鎖弁40が開弁される。即ち、エンジン14の空燃比が燃料リッチとなった場合には、封鎖弁40の開度が小さくなる。このため、燃料タンク15からベーパ通路24、キャニスタ22、及びパージ通路26を通ってエンジン14の吸気通路16に導かれる蒸発燃料量が減少し、エンジンの空燃比が正常に戻される。
【0032】
<変更例>
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態で使用するマップでは(
図6参照)、タンク内圧Pを0(kPa)からP12(kPa)まで所定の圧力間隔で区分する例を示したが、使用頻度の多い範囲ではタンク内圧Pをより細かく区分して、パージ流量とそのパージ流量に対応する封鎖弁40の基準ストローク量を設定することが可能である。また、パージ流量を0からL4(L/sec)まで所定の流量間隔で区分する例を示したが、パージ流量をより細かく区分することも可能である。
さらに、本実施形態では、補正値を1Stepとする例を示したが、前回と今回のタンク内圧の差圧値に応じて補正値の値を変えることも可能である。例えば、前回のタンク内圧に対して今回のタンク内圧の低下分が非常に小さい場合には、補正値を1Stepよりも大きく設定することも可能である。
また、本実施形態では、封鎖弁40のモータにステッピングモータ50を使用する例を示したが、ステッピングモータ50の代わりにDCモータ等を使用することも可能である。