特許第6144204号(P6144204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 滄州豊源環保科技有限公司の特許一覧

特許6144204トルエンジイソシアネートの合成工程から排出されるタール廃棄物残渣からのトルエンジアミンの回収
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144204
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】トルエンジイソシアネートの合成工程から排出されるタール廃棄物残渣からのトルエンジアミンの回収
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/00 20060101AFI20170529BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20170529BHJP
   C07C 211/50 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C07C209/00
   C07B61/00 300
   C07C211/50
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-550741(P2013-550741)
(86)(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公表番号】特表2014-511357(P2014-511357A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】CN2011084196
(87)【国際公開番号】WO2012100609
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年7月16日
【審判番号】不服2016-8804(P2016-8804/J1)
【審判請求日】2016年6月14日
(31)【優先権主張番号】201110029377.6
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512280943
【氏名又は名称】滄州豊源環保科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蘇 徳 水
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 中田 とし子
【審判官】 冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−142501(JP,A)
【文献】 特開平5−287210(JP,A)
【文献】 特開昭60−193951(JP,A)
【文献】 特開2001−348477(JP,A)
【文献】 特開平6−184439(JP,A)
【文献】 米国特許第5693862(US,A)
【文献】 国際公開第2004/108656(WO,A1)
【文献】 特表2002−518369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルエンジイソシアネート(TDI)の合成工程から排出されるタール廃棄物残渣からトルエンジアミン(TDA)を回収する方法であって、
a)タール廃棄物残渣をすりつぶして粒子にするステップと;
b)タール廃棄物残渣の粒子を相間移動触媒、アルカリおよび水に分散させてスラリーを得るステップとを含み、前記相間移動触媒は、ヘプタノール、ジエチレングリコール、グリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオールおよびそれらの組合せからなる群から選択され;前記方法はさらに、
c)保護ガスの保護下で、計器測定された0〜0.95MPaの圧力下で120℃〜180℃の温度でスラリーを加水分解反応させてトルエンジアミンを生成するステップと;
d)加水分解反応液からトルエンジアミンを回収するステップとを含み、
前記アルカリは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウム、炭酸カリウムであり、
前記スラリーは10以上のpH値を有し、
前記スラリー中では、タール廃棄物残渣の粒子の重量パーセントは10〜30%であり、相間移動触媒の重量パーセントは40〜75%であり、アルカリの重量パーセントは10〜30%であり、水の重量パーセントは5〜25%であり、
前記加水分解反応液からトルエンジアミンを回収するステップは、前記加水分解反応液を熱ろ過して固体沈殿物を除去し、ついで第1の蒸留塔に通過させて、第1の気相塔頂留分と第1の塔底留分とを分離するステップを含み、前記第1の気相塔頂留分は水蒸気および軽量のガス状成分を含み、第1の塔底留分は相間移動触媒、トルエンジアミンおよび高沸点を有するコールタールを含み、前記加水分解反応液からトルエンジアミンを回収するステップは、最終的に、減圧蒸留によって前記第1の塔底留分からトルエンジアミンを分離するステップを含み、
前記減圧蒸留は、前記第1の塔底留分を第2の減圧蒸留塔に通過させて、第2の気相塔頂留分と第2の塔底留分とを分離するステップを含み、前記第2の気相塔頂留分は前記相間移動触媒を含み、前記第2の塔底留分は、トルエンジアミンおよび高沸点を有するコールタールを含み、前記加水分解反応液からトルエンジアミンを回収するステップは、前記第2の塔底留分からトルエンジアミンを分離するステップをさらに含み、
トルエンジアミンを前記第2の塔底留分から分離するステップは、前記第2の塔底留分を第3の蒸留塔に通過させて、第3の気相塔頂留分と第3の塔底留分とを分離するステップを含み、第3の塔頂留分はトルエンジアミンを含み、前記第3の塔底留分は高沸点を有するコールタールを含み、
前記第2の減圧蒸留塔から分離された前記相間移動触媒は再利用され、前記第1の気相塔頂留分に含まれる水蒸気は、凝縮後に再利用される、方法。
【請求項2】
タール廃棄物残渣は100メッシュ未満の粒子にすりつぶされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護ガスは窒素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
加水分解反応のための時間は8〜16時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
加水分解反応は、直列または並列に接続された2つ以上の反応器において行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
加水分解反応は、制御可能な温度で加熱することのできる反応器、撹拌可能な反応器、および/または、密封された反応器もしくは再循環装置を有する反応器において行なわれる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
技術分野
この発明は、穏和な条件下でトルエンジイソシアネート(TDI:toluene diisocyanate)の合成工程から排出される高沸点のタール廃棄物残渣または固体の蒸留残留物を加水分解することによってトルエンジアミン(TDA:toluene diamine)を回収および調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
TDIは、ポリウレタンを生成するための重要な材料であり、主に、ポリウレタン軟質フォーム、硬質フォーム、接着剤、コーティング、シーラントおよび一連のエラストマーのための材料および中間生成物として用いられる。TDAはまた、TDIを調製するための必須の材料およびさまざまな染料および医薬中間体を調製するための重要な材料として、幅広い販路が得られることが予想されている。
【0003】
TDIの合成工程の終わりに、TDIは、通常、精留方法によって生成混合物から分離される。乾燥後に精留塔の底における留分から排出された高沸点の固形残渣または蒸留残留物は、一般に、タール粉末と称される。タール粉末は、ポリビウレット、副生成物および複数の不純物からなる混合物である。
【0004】
先行技術は、TDIの合成工程から排出される蒸留残留物中の物質を直接利用するさまざまな方法を開示してきた。US3,499,021においては、蒸留残留物がホスゲン化処理されて上記工程に戻される。DE4211774、DD257827およびUS3,694,323においては、蒸留残留物がジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:diphenylmethane diisocyanate)と混ぜ合わされ、部分的に蒸留されてポリウレタンに変化する。DD296088、US4,143,008、US4,000,099およびUS4,311,800は、蒸留残留物をポリオールと直接反応させて、合成樹脂、リグノセルロースなどを調製するための対応するポリウレタンを形成することを開示している。しかしながら、これらの工程によって得られる生成物の付加価値は高くはなく、これら生成物は大量のアルコールを消費し(アルコール分解反応は少なくとも24%のポリオールを消費する必要がある)、コストが高くなる。
【0005】
蒸留残留物を利用する別の方法として、これら蒸留残留物を加水分解することが挙げられる。アンモニア水およびアルカリ土類水酸化物が追加されたアルカリ性水溶液を用いるか、またはTDAを調製するように無機酸および有機酸の酸性水溶液を用いることによってTDIタール粉末を加水分解することは周知の技術である。しかしながら、タール粉末は特別な生理化学的特性を有しており、水および有機溶媒にはほとんど溶解できず、その加水分解は不均一反応に属するものであり、質量および熱を伝達する工程は緩やかである。このため、標準温度および標準圧力下での加水分解反応の速度は極めて緩やかであり、その収率は非常に低い。
【0006】
加水分解温度および圧力を上げる方法や、材料を混合し接触させる手段を改善する方法によってTDAの収率を上げることができるが、水の沸点が低く反応物の水溶性が低いことによって制約があるために、収率上昇の度合いが制限されてしまう。このため、その実用性は極めて低い。このことに関する報告を、US3,331,876、US3,128,310、DE2942678、DE1962598およびJP58−201751に見出すことができる。加えて、韓国特許2001−52948によって紹介されている加水分解技術は、連続的または半連続的な逆混合反応器を採用することによって、物質移動の効率をある程度まで向上させるが、反応物の作用を向上させるのではなく、単に機械的な混合の度合いを高めるに過ぎない。物質移動に対する抵抗による制約をなくすことは依然として難しく、このため、効果がほとんど得られない。
【0007】
亜臨界水または超臨界水の加水分解を用いることにより、加水分解温度および圧力をさらに改善させて反応を加速させ、TDAの収率を高め得る。韓国特許2001−1488が開示している方法においては、タール廃棄材料の加水分解のための触媒としてアンモニア水を用い、218〜400気圧下で350〜600℃で超臨界水中で加水分解を行う。超臨界水の高い温度および圧力条件により加水分解を加速させることができるが、超臨界水は装置を腐食させるだけでなく、さまざまな塩の溶解度を低下させてしまい、さらに、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムおよび有機ポリアミン塩、さらには、加水分解工程中に部分的なアンモニア水から変化した複合含水塩はすべて、装置のパイプラインにおける詰まりや、環境における二次汚染などの問題などを引起す可能性がある。
【0008】
中国特許CN200480015939.Xは、タール廃棄材料の超臨界加水分解に対して一連の改善をもたらし、トルエンジイソシアネート(TDA)の加水分解生成物は特に高い収率を有し、TDI生成工程に戻すことができ、炭酸塩の加水分解触媒および水を回収することによって再利用することができる。上記発明は触媒としてアルカリ土類水酸化物または炭酸塩を選択することにより、アンモニア水の触媒によってもたらされる問題を回避することができるが、水中での反応物の溶解性が低く、物質移動が困難であるといった問題は依然として解決されない。このため、本発明では、依然として、高い温度および圧力(100〜200気圧および280〜320℃の温度)下での超臨界加水分解を採用している。したがって、装置に対する要件および投資額が高まり、製造安全性を保証するのが困難になり、これにより装置のパイプラインに詰まりが起こるといった問題を解決することが困難になり、このため産業化が実現し難くなる。
【0009】
上述の問題に基づき、TDI蒸留残留物からTDAを調整することは産業規模ではまだ実現されておらず、このため、結果として、ほとんどのTDI蒸留残留物は現在、高温で燃焼させなければならず、大量の資源が浪費されるだけでなく、二次汚染もほとんど避けることができない。
【0010】
加水分解方法でタール粉末を処理することにより、燃焼させなければならないTDI蒸留残留物の量を大幅に減らすことができ、廃棄物から高い付加価値のあるTDAを回収して利用することができ、これにより、エネルギ節約、排出量削減およびイソシアネート産業での資源再利用といった目的を達成することができる。しかしながら、TDIタール廃棄物残渣を加水分解することによるTDAの調整は不均一反応に属するものであり、250℃よりも低い温度での加水分解により、物質移動に対する抵抗が大きくなり反応の作用が乏しくなるといった欠点がもたらされる一方で、400℃よりも高い温度での加水分解により、目標生成物TDAが容易に熱分解されるといった問題がもたらされる可能性がある。これにより、結果として、既存の方法は以下の問題を伴うこととなる。すなわち、加水分解媒体の沸点が低いことによる制約のせいで加水分解反応のための温度を上げることが困難になり、加水分解の効率が低くなる;不適切な触媒を選択すると、タール粉末が低い値で有機塩に変化してしまい、資源を再利用することができなくなる;使用する水が多すぎると、廃棄された物質に含まれる廃水または窒素成分が二次汚染を引起す;高い温度および圧力下での方法は、加水分解の収率をある程度まで上げ得るが、超臨界加水分解用の装置への投資額が高くなり、その動作安全性は保証することができず、実際に生成を産業化することは困難である;アルコール分解工程で大量のアルコールが消費されてしまい、目標生成物が高価値を有さない;アルコール分解後に加水分解によって調製した場合、TDAの収率は極めて低くなり、経済的な適用可能性が乏しくなる。結果として、TDIタール廃棄物残渣を加水分解することによってTDAを直接調製することは事実上困難であり、先行技術は産業化の要件をほとんど満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の概要
この発明の目的は、緩和な条件下でTDIの合成工程から排出されるタール廃棄物残渣からTDAを回収することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に従うと、TDIの合成工程から排出されるタール廃棄物残渣からTDAを回収する方法が提供される。当該方法は、
a)タール廃棄物残渣をすりつぶして粒子にするステップと;
b)タール廃棄物残渣の粒子を相間移動触媒、アルカリおよび水に分散させてスラリーを得るステップとを含み、上記相間移動触媒は、120℃〜280℃の沸点を有する高級アルコール、ポリオール、ポリエーテル化合物およびそれらの組合せからなる群から選択され;当該方法はさらに、
c)保護ガスの保護下で、計器測定された0〜0.95MPaの圧力下で120℃〜180℃の温度でスラリーを加水分解反応させてTDAを生成するステップと;
d)加水分解反応液からTDAを回収するステップとを含む。
【0013】
好ましくは、タール廃棄物残渣は100メッシュ未満の粒子にすりつぶされる。
保護ガスは好ましくは窒素ガスである。
【0014】
加水分解反応のための時間は8〜16時間であり得る。
アルカリは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであってもよく、または、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムであってもよい。
【0015】
スラリーのpH値は好ましくは10以上である。
好ましくは、スラリー中では、タール廃棄物残渣の粒子の重量パーセントは10〜30%であり、相間移動触媒の重量パーセントは40〜75%であり、アルカリの重量パーセントは10〜30%であり、水の重量パーセントは0〜25%である。
【0016】
好ましくは、相間移動触媒は、ヘプタノール、ジエチレングリコール、グリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0017】
ステップd)は、加水分解反応液を熱ろ過して固体沈殿物を除去し、第1の蒸留塔を通過させて、第1の気相塔頂留分および第1の塔底留分を分離するステップを含み、第1の気相塔頂留分は水蒸気および軽量のガス状成分を含み、第1の塔底留分は相間移動触媒TDAおよび高沸点を有するコールタールを含み;ステップd)はさらに、最終的に、減圧蒸留によって第1の塔底留分からTDAを分離するステップを含み得る。
【0018】
減圧蒸留は、第1の塔底留分を第2の減圧蒸留塔に通過させて、第2の気相塔頂留分と第2の塔底留分とを分離するステップを含み、第2の気相塔頂留分は相間移動触媒を含み、第2の塔底留分は、TDAおよび高沸点を有するコールタールを含み、減圧蒸留はさらに、第2の塔底留分からTDAを分離するステップを含み得る。
【0019】
TDAを第2の塔底留分から分離するステップは、第2の塔底留分を第3の蒸留塔に通過させて、第3の気相塔頂留分と第3の塔底留分とを分離するステップを含み、第3の塔頂留分はTDAを含み、第3の塔底留分は高沸点を有するコールタールを含む。
【0020】
第2の減圧蒸留塔から分離された相間移動触媒は好ましくは再利用される。
第1の気相塔頂留分に含まれる水蒸気は、好ましくは、凝縮後に再利用される。
【0021】
加水分解反応は、直列または並列に接続された2つ以上の反応器において行なわれてもよい。加水分解反応はまた、制御可能な温度で加熱することのできる反応器、撹拌可能な反応器、および/または密封された反応器もしくは再循環装置を備えた反応器において行なわれてもよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、タール粉末の加水分解の速度を大幅に向上させ、120℃〜180℃および0〜0.95MPa(計器測定された圧力)などの緩和な条件下でTDAの非常に効率的な回収を実現し(TDAの回収率は最大で60%である)、相間移動触媒(その回収率は最大で99.6%である)および水を再利用することにより有意な経済的利益および環境保全性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
具体的な実施例
この発明は、以下の実施例によってより良く理解されるだろう。しかしながら、これら実施例はこの発明の範囲に対する限定として理解されてはならない。
【実施例】
【0024】
実施例1
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコール、水酸化ナトリウムおよび水を10:75:10:5の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、(標準圧下で、すなわち計器測定された圧力が0MPaである)混合物を再循環させ、180℃で10時間加水分解させる。加水分解後の混合溶液を熱ろ過して、未反応の固体残渣、塩などを除去し、第1の塔を通過させて、(凝縮後に再利用され得る)水蒸気および軽量ガス状成分を除去し、ジエチレングリコールを第2の塔から回収し(その回収率は99.4%である)、生成物TDAを第3の塔内の塔頂留分から分離する。TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の(重量で)58%である。
【0025】
実施例2
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコール、水酸化ナトリウムおよび水を10:75:10:5の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.95MPa)で混合物を180℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ジエチレングリコールの回収率は99.5%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の(重量で)60%である。
【0026】
参考例3
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコールおよび水酸化カリウムを15:70:15の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、180℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、ジエチレングリコールの回収率は99.2%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の(重量で)53%である。
【0027】
参考例4
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコールおよび水酸化カリウムを15:70:15の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を180℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、ジエチレングリコールの回収率は99.3%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の(重量で)55%である。
【0028】
実施例5
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,2−プロパンジオール、水酸化カリウムおよび水を20:60:15:5の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ、140℃で12時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、1,2−プロパンジオールの回収率は99.0%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の41%である。
【0029】
実施例6
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,2−プロパンジオール、水酸化カリウムおよび水を20:60:15:5の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽(0.3MPa)内で混合物を140℃で12時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、1,2−プロパンジオールの回収率は99.2%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の42%である。
【0030】
参考例7
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,2−プロパンジオールおよび水酸化カリウムを20:60:20の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、130℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、1,2−プロパンジオールの回収率は98.7%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の39%である。
【0031】
参考例8
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,2−プロパンジオールおよび水酸化カリウムを20:60:20の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を130℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、1,2−プロパンジオールの回収率は98.9%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の38%である。
【0032】
実施例9
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,3−プロパンジオール、水酸化ナトリウムおよび水を15:45:15:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ、160℃で8時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、1,3−プロパンジオールの回収率は98.3%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の38%である。
【0033】
実施例10
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,3−プロパンジオール、水酸化カリウムおよび水を15:45:15:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.55PMa)で混合物を160℃で12時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、1,3−プロパンジオールの回収率は98.9%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の44%である。
【0034】
参考例11
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,3−プロパンジオールおよび水酸化ナトリウムを25:50:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、160℃で8時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、1,3−プロパンジオールの回収率は98.1%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の37%である。
【0035】
参考例12
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,3−プロパンジオールおよび水酸化ナトリウムを25:50:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を160℃で12時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、1,3−プロパンジオールの回収率は98.8%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の43%である。
【0036】
実施例13
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、グリコール、水酸化ナトリウムおよび水を15:65:10:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、150℃で15時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、グリコールの回収率は99.3%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の57%である。
【0037】
実施例14
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、グリコール、水酸化ナトリウムおよび水を15:65:10:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を120℃で13時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、グリコールの回収率は99.6%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の49%である。
【0038】
参考例15
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、グリコールおよび水酸化ナトリウムを20:65:15の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、140℃で15時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、グリコールの回収率は99.0%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の55%である。
【0039】
参考例16
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、グリコールおよび水酸化ナトリウムを20:65:15の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を140℃で13時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、グリコールの回収率は99.1%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の50%である。
【0040】
実施例17
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,4−ブタンジオール、水酸化ナトリウムおよび水を30:40:25:5の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ、150℃で15時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、1,4−ブタンジオールの回収率は99%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の42%である。
【0041】
実施例18
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,4−ブタンジオール、水酸化カリウムおよび水を30:40:25:5の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.4MPa)で混合物を150℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、1,4−ブタンジオールの回収率は99.2%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の38%である。
【0042】
参考例19
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,4−ブタンジオールおよび水酸化ナトリウムを30:40:30の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、150℃で15時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、1,4−ブタンジオールの回収率は98.7%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の41%である。
【0043】
参考例20
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,4−ブタンジオールおよび水酸化カリウムを30:40:30の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を150℃で14時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、1,4−ブタンジオールの回収率は98.8%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の40%である。
【0044】
実施例21
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ヘキサンジオール、水酸化ナトリウムおよび水を10:45:10:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ、130℃で11時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ヘキサンジオールの回収率は99%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の42%である。
【0045】
実施例22
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ヘキサンジオール、水酸化ナトリウムおよび水を10:45:10:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.2MPa)で混合物を130℃で9時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ヘキサンジオールの回収率は99.1%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の37%である。
【0046】
参考例23
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ヘキサンジオールおよび水酸化ナトリウムを25:50:25の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、130℃で11時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、ヘキサンジオールの回収率は98.7%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の41%である。
【0047】
参考例24
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ヘキサンジオールおよび水酸化カリウムを20:50:30の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を130℃で9時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、ヘキサンジオールの回収率は98.8%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の36%である。
【0048】
実施例25
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ヘプタノール、水酸化ナトリウムおよび水を15:60:15:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ、120℃で16時間加水分解させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ヘプタノールの回収率は98.0%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の35%である。
【0049】
実施例26
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ヘプタノール、水酸化カリウムおよび水を15:60:15:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を120℃で16時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ヘプタノールの回収率は98.5%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の36%である。
【0050】
実施例27
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ブタンジオールとヘキサンジオールとの1:1の混合物、炭酸ナトリウムおよび水を10:60:30:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.3MPa)で混合物を140℃で10時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、混合アルコールの回収率は99.2%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の43%である。
【0051】
参考例28
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコールとグリコールとの1:1の混合物および炭酸ナトリウムを20:65:15の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、140℃で14時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、混合アルコールの回収率は99.0%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の55%である。
【0052】
参考例29
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコールとヘプタノールとの1:1の混合物および炭酸カリウムを28:50:22の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.15MPa)で混合物を130℃で14時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同様である。この場合、混合アルコールの回収率は98.9%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の46%である。
【0053】
実施例30
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、1,2−プロパンジオールとヘプタノールとの1:1の混合物、水酸化カリウムおよび水を、15:60:15:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、密封された反応槽内(0.2MPa)で混合物を130℃で14時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ヘプタノールの回収率は98.0%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の41%である。
【0054】
実施例31
TDIタール固体廃棄物残渣粒子、ジエチレングリコールとヘプタノールとグリコールとの1:1:1の混合物、水酸化ナトリウムおよび水を15:60:15:10の重量比で混合する。撹拌中に、窒素ガスを投入することによって空気を排出させた後、混合物を再循環させ(標準圧)、140℃で14時間反応させる。その他のステップは実施例1のステップと同じである。この場合、ヘプタノールの回収率は98.6%であり、TDAの収率は廃棄物残渣の追加量の45%である。
【0055】
この発明では、上述の相間移動触媒をTDIタール廃棄物残渣の加水分解反応に用いるので、比較的緩和な条件下で生成の産業化を実現することができ、TDAが回収され、これにより、資源を再利用するという目的が達成される。最終的に燃焼させなければならない固体廃棄物材料の量が35〜60%低減されるように、この発明におけるトルエンジアミンの回収率は加水分解に用いられる高沸点での固体TDIタール廃棄物残渣の量の約35〜60重量パーセントとされる。この発明における加水分解反応後の残留する廃水および使用済みの相間移動触媒は再利用されてもよく、これにより、当該方法の経済性を向上させ、さらに、最終的な固体廃棄物材料が環境にさらなる悪影響を及ぼすことがなくなるだろう。
【0056】
結論として、この発明は、緩和な条件下でのTDAの極めて効率的な回収を実現し、そして、廃水および使用済みの相間移動触媒を再利用することによって、それ自体が、工業生産および経済的利益の実現可能性と、環境保全性とを有することになる。