特許第6144218号(P6144218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144218
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】スピンドルモータ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20170529BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   H05K1/02 B
   H05K1/02 C
   H02K3/46 C
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-37978(P2014-37978)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-162629(P2015-162629A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 忠
【審査官】 小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−234602(JP,A)
【文献】 特開平11−120828(JP,A)
【文献】 特開2012−165543(JP,A)
【文献】 特開2012−074114(JP,A)
【文献】 特開2014−036447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H02K 3/00− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
前記ステータコアに巻回されたコイルと、
前記コイルからの導線が接続されたフレキシブルプリント基板と、
前記フレキシブルプリント基板に設けられ、前記導線が半田付けされるランド部と、
前記フレキシブルプリント基板を保持するベースプレートと
を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、基部と、前記ランド部が設けられたランド部形成部とを有し、
前記基部とランド部形成部との間に応力吸収部が設けられているスピンドルモータにおいて、
前記フレキシブルプリント基板は前記ベースプレートに粘着層により固定されており、
前記フレキシブルプリント基板における前記ランド部形成部は、前記粘着層が設けられておらず、前記ベースプレートに固定されていないことを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
前記基部から前記ランド部へはプリント配線が繋がっており、
前記応力吸収部は、前記プリント配線を保持する前記フレキシブルプリント基板を構成する樹脂フィルムの幅が前記基部と前記ランド部形成部に比較して狭い部分であることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記基部と前記ランド部形成部とを接続する接続部分を有し、
前記接続部分を構成する前記樹脂フィルムがくびれた形状であり、このくびれた形状により前記狭い部分が構成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
前記樹脂フィルムには、前記プリント配線を挟んで一対のスリットが設けられており、
前記一対のスリットに挟まれた部分により、前記狭い部分が構成されていることを特徴とする請求項2に記載のスピンドルモータ。
【請求項5】
前記スリットは複数設けられており、
前記複数のスリットにより、前記フレキシブルプリント基板の前記ランド部形成部が囲まれていることを特徴とする請求項4に記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
前記ベースプレートの一方の面の側に前記コイルが配置され、
前記ベースプレートの他方の面の側に前記フレキシブルプリント基板が固定されており、
前記ベースプレートには、前記導線を通す開孔が設けられており、
前記ランド部に繋がる前記プリント配線の延長方向と前記ランド部と前記開孔とを結ぶ線の延長方向とのなす角度が70°〜110°であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のスピンドルモータ。
【請求項7】
前記ベースプレートの一方の面の側に前記コイルが配置され、
前記ベースプレートの他方の面の側に前記フレキシブルプリント基板が固定され、
前記ベースプレートには、前記導線を通す第1の開孔が設けられ、
前記ランド部には、前記導線を通す第2の開孔が設けられ、
前記ランド部は前記第1の開孔と重なる位置に設けられると共に前記第1の開孔よりも小さい形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスピンドルモータ。
【請求項8】
前記ランド部、前記ランド部に付着した半田、前記第1の開孔および前記第2の開孔が封止材により封止されていることを特徴とする請求項7に記載のスピンドルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータコイルから引き出された導線をフレキシブル回路基板に接続した構造を有するスピンドルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動用スピンドルモータが知られている。特許文献1および2には、ハードディスク駆動用スピンドルモータにおいて、ステータコイルから引き出された銅線をフレキシブルプリント基板(FPC)に半田付けにより接続した構造が記載されている。半田付けでは、フラックスが用いられるが、半田付けが終了した後にこのフラッスクを超音波洗浄により除去する作業が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2012−165543号公報
【特許文献2】特開2009−110611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この超音波洗浄の際、フレキシブルプリント基板のランド部(銅箔で構成された接続電極)に半田接続された導線に断線が発生し易いという問題がある。以下、この導線の断線について説明する。図10(A)には、スピンドルモータのステータを構成するベースプレートをステータコイルが配置された面と反対の面の側から見た正面図が示され、図10(B)には、図10(A)におけるA−Aの線で切断した断面図が示されている。
【0005】
図10には、ステータを構成するベースプレート901が示されている。ベースプレート901には、ステータコア902が固定されている。ステータコア902には、ステータコイル903が巻回されている。ステータコイル903からは、導線904が引き出され、導線904は、ベースプレート901に設けられた開孔911を介して、ランド部906に半田接続されている。ランド部906は、樹脂製のフレキシブルプリント基板910に設けられた配線パターン(銅箔パターン)905の先端の部分に設けられたランド状の銅箔パターンである。ランド部906に半田が盛られ、半田付け部907が形成されている。半田付け部907によって導線904のランド部906への接続が行われている。
【0006】
半田付け部907における半田付けにおいてフラックスが用いられるが、半田付けの工程の後、このフラックスは超音波洗浄によって除去される。この超音波洗浄の際、破線909で囲った部分において導線904の断線が発生し易い。
【0007】
超音波洗浄が行われると、導線904が振動する。他方において、ランド部906は、フレキシブルプリント基板910と一体であるので、導線904に比較して振動し難い。よって、超音波振動が加わると、振動し易い導線904と振動し難い半田付け部907との境界付近に応力が集中し、その箇所で導線904の断線が生じ易くなる。
【0008】
このような背景において、本発明は、フレキシブルプリント基板に接続された導線の断線が生じ難い構造のスピンドルモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、前記コイルからの導線が接続されたフレキシブルプリント基板と、前記フレキシブルプリント基板に設けられ、前記導線が半田付けされるランド部と、前記フレキシブルプリント基板を保持するベースプレートとを備え、前記フレキシブルプリント基板は、基部と前記ランド部が設けられたランド部形成部とを有し、前記基部と、前記ランド部形成部との間に応力吸収部が設けられているスピンドルモータにおいて、前記フレキシブルプリント基板は前記ベースプレートに粘着層により固定されており、前記フレキシブルプリント基板における前記ランド部形成部は、前記粘着層が設けられておらず、前記ベースプレートに固定されていないことを特徴とするスピンドルモータである。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ランド部の部分が基部から独立して動くことができる。そのため、半田付け後の超音波洗浄において、半田接続された導線と一緒にランド部が動き易く、導線への局所的な応力の集中が抑えられ、導線の断線が防止される。また、フレキシブルプリント基板のランド部形成部がよりフリーな状態となるので、ランド部が導線と共に動き易い状態が得られる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基部から前記ランド部へはプリント配線が繋がっており、前記応力吸収部は、前記プリント配線を保持する前記フレキシブルプリント基板を構成する樹脂フィルムの幅が前記基部と前記ランド部形成部に比較して狭い部分であることを特徴とする。請求項2に記載の発明によれば、ランド部が設けられたランド部形成部に繋がる樹脂フィルムの幅を部分的に狭くすることで、ランド部が基部に対して動きやすい構造が得られる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記基部と前記ランド部形成部とを接続する接続部分を有し、前記接続部分を構成する前記樹脂フィルムがくびれた形状であり、このくびれた形状により前記狭い部分が構成されていることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、くびれた部分を設けることで、くびれた部分から先の部分にあるランド部が基部に対して動き易い構造が得られる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記樹脂フィルムには、前記プリント配線を挟んで一対のスリットが設けられており、前記一対のスリットに挟まれた部分により、前記狭い部分が構成されていることを特徴とする。請求項4に記載の発明によれば、2つのスリットの隙間の部分を介して、基部とランド部形成部を繋ぐ構造とすることで、ランド部が基部に対して動きやすい構造が得られる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記スリットは複数設けられており、前記複数のスリットにより、前記フレキシブルプリント基板の前記ランド部形成部が囲まれていることを特徴とする。複数のスリットによりランド部形成部が囲まれた構造とすることで、ランド部が周囲から浮いたフローティング構造が得られ、ランド部が基部に対してより動き易い構造が得られる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記ベースプレートの一方の面の側に前記コイルが配置され、前記ベースプレートの他方の面の側に前記フレキシブルプリント基板が固定されており、前記ベースプレートには、前記導線を通す開孔が設けられており、前記ランド部に繋がる前記プリント配線の延長方向と前記ランド部と前記開孔とを結ぶ線の延長方向とのなす角度が70°〜110°であることを特徴とする。
【0016】
ランド部は、プリント配線が延長する方向に相対的に動き難き難く、プリント配線が延長する方向に直交する方向に相対的に動き易い。そこで、ランド部に接続される導線の引き出し方向とプリント配線が延長する方向とがなす角度を70°〜110°(好ましくは、直交させる)ことで、ランド部が導線の延長方向に動きやすい状態が得られる。この構造によれば、超音波洗浄時にランド部に半田接続された導線が引っ張られる現象が抑えられる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記ベースプレートの一方の面の側に前記コイルが配置され、前記ベースプレートの他方の面の側に前記フレキシブルプリント基板が固定され、前記ベースプレートには、前記導線を通す第1の開孔が設けられ、前記ランド部には、前記導線を通す第2の開孔が設けられ、前記ランド部は前記第1の開孔と重なる位置に設けられると共に前記第1の開孔よりも小さい形状であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、ランド部がベースプレートに設けたれた第2の孔に沈み込むように変位することが可能となり、フレキシブルプリント基板自体の弾性も相まってランド部が導線と共に振動し易い構造が得られる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記ランド部、前記ランド部に付着した半田、前記第1の開孔および前記第2の開孔が封止材により封止されていることを特徴とする。請求項8に記載の発明によれば、導線を通す開孔が封止材で塞がれ、密閉性が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フレキシブルプリント基板に接続された導線の断線が生じ難い構造のスピンドルモータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態のステータ部分を軸に平行な方向で切断した断面図である。
図2図1を上方から見た上面図(A)と図2(A)の一部を拡大した拡大図(B)である。
図3図2(B)におけるA―Aの線で切断した断面図(A)および(B)である。
図4】実施形態の上面図(A)と(A)のA―Aの線で切断した断面図(B)である。
図5】振動時の状態を示す説明図(A)〜(C)である。
図6】実施形態の上面図(A)と(A)の一部を拡大した拡大図(B)である。
図7図6(A)におけるA―Aの線で切断した断面図(A)および(B)である。
図8】実施形態の上面図(A)と(A)の一部を拡大した拡大図(B)である。
図9図8におけるA―Aの線で切断した断面図(A)および(B)である。
図10】従来技術の上面図(A)と(A)におけるA―Aの線で切断した断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)第1の実施形態
本実施形態では、フレキシブルプリント基板の基材である樹脂フィルムのランド部に至る部分の幅を狭くくびれた形状とし、そこを応力吸収部として利用する。図1には、発明を利用したスピンドルモータのステータ部分を軸に平行な方向で切断した断面図が示されている。図2(A)には、図1の上方から見た上面図が示され、図2(B)には、図2(A)の一部を拡大した拡大図が示されている。図3には、図2(B)におけるA―Aの線で切断した断面図(A)および(B)が示されている。
【0024】
図1には、ベースプレート101が示されている。ベースプレート101には、ステータコア102が固定されている。ステータコア102は、電磁鋼鈑等の軟磁性材料の薄板を複数枚積層した構造を有している。ステータコア102は、軸方向(図1の上または下の方向)から見て、軸中心から離れる方向に延在した複数の極歯が周方向に沿って複数配置された形状を有している。この複数の極歯のそれぞれには、駆動コイルとなるステータコイル103が巻回されている。ステータコイル103からは導線104が引き出されている。導線104は、ベースプレート101に設けられた導線引き出し孔である開孔105を介して、ベースプレート101におけるステータコイル103が配置された側と反対側の面に引き出されている。開孔105から引き出された導線104は、フレキシブルプリント基板106のランド部108に半田付けにより接続されている。
【0025】
ベースプレート101には、円形の開孔151が形成されている。開孔151には、図示しないシャフトが回転自在な状態で収められている。このシャフトに図示しない円盤状のハブが固定される。このハブは、ステータコア102の外周に隙間を有した状態で対向する図示しない環状のロータマグネットを有している。ステータコイル103に駆動電流を流すと、ロータマグネットを回転させる駆動力が作用し、ハブが回転する。ハブには、ハードディスクが固定されており、ハブが回転することでハードディスクが回転する。
【0026】
図2には、フレキシブルプリント基板106が示されている。フレキシブルプリント基板106は、樹脂製でフィルム状を有し、可撓性(湾曲させることが可能なフレキシブル性)を有している。フレキシブルプリント基板106は、フレキシブルな樹脂フィルム122(図3参照)を基材とし、この樹脂フィルム122の上に銅箔の配線パターン107が設けられている。配線パターン107は樹脂製のカバーフィルム121(図3参照)によりラミネートされており、露出しない構造とされている。配線パターン107の先端には、銅箔パターンによる略円形のランド部108が設けられている。
【0027】
樹脂フィルム122の配線パターン107が設けられた側と反対側の面には、粘着剤の層により構成された粘着層120が設けられている(図3参照)。粘着層120の粘着力によってフレキシブルプリント基板106は、ベースプレート101に固定されている。粘着層120は、フレキシブルプリント基板106片面の全面に渡って設けられている。なお、フレキシブルプリント基板106がベースプレート101に固定されている状態において、粘着層120は、硬化せず弾性を有している。
【0028】
ランド部108は、導線104の端部が半田付けされる電極であり、配線パターン107が繋がったランド状の銅箔パターンにより構成されている。ここでいうランド状とは、配線パターンより幅を広げたり、広い面積としたりすることで導線の半田付けを行い易くした形状のことをいう。ランド状の具体的な形状としては、円形、楕円形、小判形状、矩形等の多角形状を挙げることができる。また、ランド部108は、半田付けが行われる関係で露出している。符号109は、半田付け部であり、盛り上がった状態で硬化した半田である。半田付け部109によって、導線104とランド部108とが物理的および電気的に接合されている。また、配線パターン107の他方の端部は、露出した電極111となっている。電極111に外部からの図示省略したコンタクトピンが接触接続される。
【0029】
図2に示すように、フレキシブルプリント基板106は、基部106a、応力吸収部106bおよびランド部形成部106cを有している。基部106aから4カ所の応力吸収部106bが枝分かれし、各応力吸収部106bの先にランド部形成部106cが設けられている。応力吸収部106bは、樹脂フィルム122(図3参照)の幅が部分的に狭くなったくびれた構造を有している。すなわち、応力吸収部106bは、基部106aおよびランド部形成部106cよりも樹脂フィルム122の幅が狭い構造を有している。応力吸収部106bは、ランド部形成部106cに繋がっている。ランド部形成部106cには、ランド部108が設けられている。配線パターン107は、基部106aから応力吸収部106bを経て、ランド部形成部106cのランド部108に繋がっている。ここで、開口105の中心とランド部108の中心を結ぶ線の延長方向と、ランド部108に向かって延びる配線パターン107の延長方向とは、略直交する関係となっている。
【0030】
半田付けが終了した後に超音波洗浄を行い、残存したフラックスの除去が行われる。この状態が図3(A)に示されている。また、フラックスの除去が行われた後に図3(B)に示すように、接着剤110が塗布され、半田付け部108に繋がる導線104が固定される。またこの際、導線104を引き出すための開孔105が塞がれ封止された状態が得られる。開孔105の封止を行う部材としては、接着剤に限定されず、隙間を埋める機能を有する各種の封止材を用いることができる。
【0031】
本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板106の基部106aとランド部形成部106cとを細くくびれた形状の応力吸収部106bで接続した構造としている。この構造によれば、基部106aに対してランド部形成部106cが相対的に動き易い状態となる。また、ランド部形成部106cの裏面側は弾性を有し歪むことが可能な粘着層120によりベースプレート101に固定されている。このため、ランド部形成部106c、ランド部108および半田付け部109は、基部106aからある程度独立して動くことができる。よって、超音波洗浄時に導線104の動きに合わせて半田付け部109も動き、導線104の半田付け部109に近い部分に応力が集中する現象が抑えられる。
【0032】
また、開口105の中心とランド部108(半田付け部109)の中心を結ぶ線の延長方向と、ランド部108(半田付け部109)に向かって延びる配線パターン107の延長方向とが略直交する関係とすることで、導線104が引っ張られる現象が抑えられる。
【0033】
すなわち、配線パターン107が延長した方向は、銅箔である配線パターン107がある程度の引張強度を有しているので、ランド部108は、配線パターン107の延長した方向へはそれと直交する方向に比較して動き難い。よって、仮に開口105の中心とランド部108の中心を結ぶ線の延長方向がランド部108に向かって延びる配線パターン107の延長方向と同じであると、導線104が動いた際に導線104が引っ張られる現象が生じ易くなり、導線104の切断が誘発され易い。
【0034】
他方において、応力吸収部106bを設けた場合、配線パターン107の延長方向と直交する方向には、ランド部108は首を振るように揺動し易い。したがって、開口105の中心とランド部108の中心を結ぶ線の延長方向と、ランド部108に向かって延びる配線パターン107の延長方向とが略直交する関係であると、導線104を引っ張る方向にランド部108が動き易く、導線104が引っ張られる現象が抑えられる。
【0035】
開口105の中心とランド部108の中心を結ぶ線の延長方向と、ランド部108に向かって延びる配線パターン107の延長方向とのなす角度は、なるべく90°に近い値が好ましいが、70°〜110°程度の範囲であれば同様な効果が得られる。
【0036】
(変形例)
第1の実施形態において、基部106aの部分は粘着層120を残し、応力吸収部106bとランド部形成部106cの部分の粘着層120を除去する。この構造によれば、ランド部形成部106cおよびランド部108がベースプレート101に束縛されず、導線104と共に動ける自由度が大きくなる。
【0037】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、ランド部形成部(ランド部)の位置が第1の実施形態と異なる。以下の説明において、第1の実施形態と同じ符号の部分は、第1の実施形態と同じである。図4は、本実施形態の上面図(A)とランド部の部分の断面図(B)である。図4には、ランド部形成部106dが示されている。ランド部形成部106dには、配線107に繋がったランド部401が設けられている。ランド部形成部106d以外の構造、すなわち基部106aおよび応力吸収部106bの構造は、第1の実施形態と同じである。また、樹脂フィルム122を基材とする点や粘着層120により全面がベースプレート101に固定されている点も第1の実施形態と同じである。
【0038】
この例では、ベースプレート101の開孔105に重なるようにランド部形成部106dの位置が決められている。ランド部形成部106dおよびランド部401には、開孔402が設けられている。開孔402は、開口105よりも径が小さく、開孔402の中心は、開孔105の中心に一致している。ステータコイル103からの導線104は、開孔105と開孔402を通してベースプレート101の裏面側(ステータコイル103がある側と反対の側)に引き出され、ランド部401に半田付け部403によって半田接続されている。また、半田付け部403により、開孔402は塞がれ封止されている。
【0039】
ここで、ランド部401、ランド部形成部106dおよび開孔105は、略円形の形状を有している。そして、ランド部401の外径をr、ランド部形成部106dの外径をr、開孔105の外径をrとすると、r>r>rの関係があり、更にランド部401、ランド部形成部106dおよび開孔105の中心は略一致する位置関係に設定されている。
【0040】
この構造に半田付けの際にフラックスを除去するための超音波振動が加わると、応力吸収部106bの作用に加えて、以下に述べる作用が生じる。図5(A)〜(C)には、超音波が加わった際の振動の状態が誇張して示されている。
【0041】
図5(A)には、動きが生じていない状態が示されている。図5(B)には、導線104がステータコイル103(図4(B)参照)の方向に引かれた状態が示されている。図5(C)には、導線104がステータコイル103(図4(B)参照)の側から半田付け部403の方向に押された状態が示されている。
【0042】
ここで、ランド部形成部106dは樹脂製で柔軟性があり、r>rであるので、図5(B)に示すような、ランド部401および半田付け部403が開孔105の方向に沈み込む変位が可能となる。同様な理由により、図5(C)に示すような、ランド部401および半田付け部403が(B)とは逆の方向に変位することも可能である。つまり、ランド部形成部106dとランド部403は上下に揺動する変位が可能である。このため、超音波が加わった際に、導線104が半田付け部403と共に上下に変位し、導線104の半田付け部403に近い部分に繰り返し高い応力が加わる現象が抑えられる。
【0043】
また、r>rであるので、ランド部形成部106dの縁によって開孔105が塞がれる。なお、図示されていないが、フラックスの除去後に接着剤で半田付け部403を覆い封止する作業が行われ、半田付け部403とその周辺は、接着剤によって覆われる。
【0044】
(変形例)
本実施形態において、基部106aの部分は粘着層120を残し、応力吸収部106bとランド部形成部106dの部分の粘着層120を除去する構成も可能である。この構造によれば、ランド部形成部106dおよびランド部401が導線104と共に動き易く、超音波洗浄時における導線104の断線を防止する効果が得られる。なお、ランド部形成部106dの部分の粘着層120を除去する構造とした場合、超音波洗浄によるフラックスの除去工程の後で、ランド部401およびランド部形成部106dを接着剤で覆い、ランド部形成部106dを接着剤で封止すると共にベースプレート101に固定する。
【0045】
(3)第3の実施形態
本実施形態では、応力吸収部としてフレキシブルプリント基板にスリットを入れた構造を採用する。図6には、実施形態の上面図(A)とその一部を拡大した拡大図(B)が示されている。図7には、図6のA―Aの線で切断した断面図が示されている。本実施形態では、フレキシブルプリント基板の構造が実施形態1と異なっている。フレキシブルプリント基板以外の部分は、第1の実施形態と同じである。
【0046】
図6には、フレキシブルプリント基板601が示されている。フレキシブルプリント基板601は、基部601aおよび腕部601bを有している。腕部601bには、4つのランド部形成部601cが設けられている。図7に示すように、フレキシブルプリント基板601は、基材となる樹脂フィルム602を有している。樹脂フィルム602の上には、銅箔の配線パターン603が設けられ、その裏面側の全面には、フレキシブルプリント基板601をベースプレート101に固定するための粘着層604が設けられている。また、配線パターン603は、樹脂製のカバーフィルム605で覆われている。
【0047】
ランド部形成部601cには、銅箔パターンにより構成された4カ所のランド部606が設けられている。ランド部606は、配線パターン603の先端の部分に形成されている。ランド部606には、半田が盛られ、半球状に半田が硬化した半田付け部607が形成されている。半田付け部607により、導線104とランド部606の電気的な接続が行われている。
【0048】
ランド部形成部601cの周囲には、スリット608a,608b,608cが設けられている。スリット608a〜608cは、フレキシブルプリント基板601の表裏に貫通した細長い孔である。スリット608a〜608cは、ランド部606の回りを囲むように配置されている。また、スリット608aと608bの間の隙間の部分をランド部606に繋がる配線パターン603が通っている。このスリット608aと608bの間の隙間の部分が応力吸収部609として機能する。応力吸収部609は、フレキシブルプリント基板601を構成する樹脂フィルム602の幅が他の部分、すなわち基部601aおよびランド部形成部601cに比較して狭い部分により構成されている。また、開口105の中心とランド部606の中心を結ぶ線の延長方向と、ランド部606に向かって延びる配線パターン107の延長方向とが略直交する関係に設定されている。この構造によれば、導線104を引っ張る方向にランド部606が動き易いので、導線104が引っ張られる現象が抑えられ、導線104の切断が防止される。
【0049】
半田付け部607の半田付けが行われることで、図7(A)の状態が得られる。なお、図7では、ランド部606、半田付け部607およびそれらの周囲に付着したフラックスは図示省略されている。図7(A)の半田付け部607の形成を行った後、超音波洗浄を行い図示しないフラックスの除去が行われる。そして、超音波洗浄の後、接着剤610を塗布し、開孔105の封止が行われる。開孔105の封止は、隙間を埋める封止機能があればよく、接着剤以外に各種の封止材を用いることができる。
【0050】
スリット608a〜608cを設けることで、超音波を加えた際に、ランド部606および半田付け部607がフレキシブルプリント基板601の他の部分に対して動き易い状態となる。すなわち、ランド部形成部601cの周囲に、スリット608a,608b,608cが設けられることで、ランド部形成部601cが周囲からフローティングされた状態となり、ランド部形成部601cが相対的に周囲に対して動き易くなる。そのため、導線104が半田付け部607と共に動き易い状態となり、超音波洗浄時における導線104の断線が防止される。
【0051】
また、半田付け部607に向かう導線の延長方向とランド部606に向かう配線パターン104の延長方向とが略直交する関係とすることで、超音波洗浄時に半田付け部607の近くで導線104が引っ張られる現象が抑制される。このことも超音波洗浄時における導線104の断線を防止する効果に寄与する。なお、本実施形態において、ランド部形成部601の裏面側の粘着層604を取り除いた構造も可能である。
【0052】
(4)第4の実施形態
本実施形態は、第3の実施形態におけるランド部の構造を第2の実施形態におけるものに変更した例である。図8には、実施形態の上面図(A)と(A)の一部を拡大した拡大図(B)が示されている。図9には、図8におけるA―Aの線で切断した断面図(A)と(A)の一部を拡大した拡大断面図(B)が示されている。
【0053】
この例でも第3の実施形態の場合と同様に、フレキシブルプリント基板601は、基部601aと延長部601bを有している。フレキシブルプリント基板601の層構造は、第3の実施形態の場合と同じで、下層から粘着層604、基材となる樹脂フィルム602、配線パターン603、カバーフィルム605を有している。
【0054】
延長部601bには、4カ所のランド部形成部601dが設けられている。ランド部形成部601dには、配線603の先端の部分に設けられた銅箔パターンで構成されたランド部606が設けられている。この例では、ベースプレート101の開孔105に重なるようにランド部形成部601dの位置が決められている。ランド部形成部601dおよびランド部606には、開孔611が設けられている。開孔611は、開孔105よりも径が小さく、開孔611の中心は、開孔105の中心に一致している。ステータコイル103からの導線104は、開孔105と開孔611を通してベースプレート101の裏面側(ステータコイル103がある側と反対の側)に引き出され、ランド部606に半田付け部607によって接続されている。また、半田付け部607により、開孔611は塞がれ封止がされている。
【0055】
ここで、ランド部606の外径をr、ランド部形成部601dの外径をr、開孔105の外径をrとすると、r>r>rの関係に設定され、ランド部606、ランド部形成部601dおよび開孔105の中心は略一致する位置関係に設定されている。
【0056】
この例では、スリット608a〜608cが設けられることによるランド部形成部601dが動き易くなる作用に加えて、半田付け部607がランド部606と共に上下に揺動し易くなる作用が得られ、この2つの作用の複合効果により、導線104の断線が防止される。なお、本実施形態において、ランド部形成部601cの裏面側の粘着層604を取り除いた構造も可能である。この場合、接着剤により半田付け部607とその周辺の部分をベースプレート101に固定する。
【0057】
(その他)
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0058】
101…ベースプレート、102…ステータコア、103…ステータコイル、104…導線、105…開孔、106…フレキシブルプリント基板、106a…基部、106b…応力吸収部、106c…ランド部形成部、107…配線パターン、108…ランド部、109…半田付け部、110…接着剤、111…電極、120…粘着層、151…円形の開孔、120…粘着層、121…カバーフィルム、122…樹脂フィルム、401…ランド部、402…開孔、403…半田付け部、601…フレキシブルプリント基板、601a…基部、601b…腕部、601c…ランド部形成部、601d…ランド部形成部、602…樹脂フィルム、603…配線パターン、604…粘着層、605…カバーフィルム、606…ランド部、607…半田付け部、608a…スリット、608b…スリット、608c…スリット、609…応力吸収部、610…接着剤、611…開孔、901…ベースプレート、902…ステータコア、903…ステータコイル、904…導線、905…配線パターン、906…ランド部、907…半田つけ部、909…断線が生じ易い部分、910…フレキシブルプリント基板、911…開孔。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10