(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、車両1の側面図である。以下では、車両1の進行方向を前方側(図中、左側)、車両1の後退方向を後方側(図中、右側)として説明をする。
図1に示すように、車両1は、ボンネット2、および、車両1の前輪を覆うフェンダー3に囲まれたエンジンルーム内に、エンジン10、エンジン10の駆動を制御するECU(Engine Control Unit、制御部)20、および、エンジン10とECU20とを電気的に接続するワイヤハーネス100等が収納されている。車両1では、ECU20の制御に基づいてエンジン10が駆動し、エンジン10の動力により車両1が走行する。
【0018】
ボンネット2は、後方側が車両本体部4とヒンジ機構を介して接続された板形部材でなり、ヒンジ機構を支点として開閉自在となっている。車両1では、ボンネット2を開放することで、エンジンルーム内のエンジン10、ECU20およびワイヤハーネス100などが作業者Aから視認可能となる。また、車両1では、ボンネット2を閉鎖することで、エンジンルーム内のエンジン10、ECU20およびワイヤハーネス100などが作業者Aから視認不能となる。なお、作業者Aがボンネット2を開放してエンジンルーム内を視認する場合、前方側からエンジンルーム内を視認することが多い。以下では、ボンネット2を開放したときのボンネット2の開放端側(車両1の前方側)から見た方向となる作業者Aの目線方向(白抜き矢印)を視認方向として説明する。
【0019】
図2は、本実施形態におけるワイヤハーネス100の通常取付状態を説明する図であり、視認方向から視認されるエンジンルーム内に収納されたエンジン10、ECU20およびワイヤハーネス100を示した図である。
図3は、ワイヤハーネス100の構成を説明する図である。なお、
図2では、エンジンルーム内における各構成について、本実施形態を説明する上で必要な構成のみを記載し、必要でない構成は省くものとする。また、ケーブル部102(ワイヤハーネス100)が予め決められた取付態様で車両1に取り付けられた状態(ケーブル部102がねじれていない状態)を通常取付状態ともいう。
【0020】
図2および
図3に示すように、ワイヤハーネス100は、ケーブル部102と、接続端子104、106と、固定部材108、110と、標識部112と、粘着テープ114とを含んで構成されている。
【0021】
ケーブル部102は、複数のケーブル120と、被覆部122とを含んで構成される。ケーブル120は、エンジン10に設けられた各種センサおよび点火プラグ、インジェクタ、吸排気バルブを駆動するアクチュエータ等の各種機器と、ECU20とをそれぞれ電気的に接続する。ケーブル120は、エンジン10の各種センサの検出結果をエンジン10からECU20に伝達するとともに、各種機器を制御するための電気信号をECU20からエンジン10に伝達する。
【0022】
被覆部122は、例えば黒色であって、束ねられた複数のケーブル120を、ケーブル120の長さ方向に亘って被覆する。被覆部122(ケーブル部102)の外周面122aには、固定部材108、110、標識部112および粘着テープ114が設けられている。なお、ケーブル部102は、複数のケーブル120を束ねて、被覆部122で被覆した場合、その断面が略円形状となる。以下では、ケーブル部102の断面が円形状であるとして説明し、ケーブル部102の断面の径方向を単に径方向といい、ケーブル部102の断面の周方向を単に周方向という。
【0023】
接続端子104は、複数のケーブル120それぞれの一端が接続されており、エンジン10に設けられた端子挿入口12に挿入される。接続端子106は、複数のケーブル120それぞれの他端が接続されており、ECU20に設けられた端子挿入口22に挿入される。
【0024】
固定部材108は、
図3に示すように、バンド108aおよび係止部108bが一体形成されている。バンド108aは、固定部材108とケーブル部102とが相対移動しないように、被覆部122の外周面122aに周方向に巻き付けられる。これにより、固定部材108は、被覆部122に固定される。係止部108bは、固定部材108がバンド108aによりケーブル部102に固定された際に径方向外側に突出する。
【0025】
図4は、固定部材108の係止部108bとエンジン10およびECU20に設けられた留め具14との構成を説明する図である。なお、
図4において、説明の便宜上、ケーブル部102のみを断面図としている。
【0026】
図4に示すように、係止部108bは、固定部材108がケーブル部102に固定された際、バンド108aから径方向外側に向かって突出し、略円柱形状をした円柱部108cと、円柱部108cよりも径方向外側であって、径方向外側に向かって先端が尖った、略円錐形状をした円錐部108dとにより形成されている。円錐部108dは、底面(径方向の内側の面)の直径が、円柱部108cの直径よりも大きい。
【0027】
留め具14は、エンジン10の所定位置に設けられた、円柱部108cの高さと同程度の厚みを有する板部材であって、円柱部108cの直径よりも大きく、かつ、円錐部108dの底面の直径よりも小さい直径でなる円形状の挿入孔14aが形成されている。
【0028】
固定部材108は、円錐部108dが留め具14に形成された挿入孔14aに挿入されると、円錐部108dが挿入孔14aを貫通して、円柱部108cの側面と挿入孔14aの内周面とが当接した状態で固定される。このとき、固定部材108は、円錐部108dの底面の直径が挿入孔14aの直径よりも大きいので、円錐部108dが挿入孔14aから抜けることなく留め具14に係止される。
【0029】
固定部材110は、固定部材108と同一形状であり、バンド110aと、円柱部110cおよび円錐部110dからなる係止部110bとが一体形成されている。また、留め具24は、ECU20の所定位置に設けられた、円柱部110cの高さと同程度の厚みを有する板部材でなり、円柱部110cの直径よりも大きく、かつ、円錐部110dの底面の直径よりも小さい直径でなる円形状の挿入孔24aが形成されている。
【0030】
上記より、固定部材108、110は、ワイヤハーネス100が車両1に取り付けられる際、ケーブル部102が周方向にねじれることがないように、係止部108b、110bがそれぞれ周方向の予め決められた固定位置に配置されて、留め具14、24に固定される。
【0031】
したがって、ワイヤハーネス100は、予め決められた取付態様で、固定部材108、110が留め具14、24にそれぞれ係止されると、ケーブル部102がねじれることなく車両1に取り付けられる。
【0032】
図3に戻って、標識部112は、所定の幅を有する例えば白色のテープであって、被覆部122の外周面122aにおける、固定部材108と固定部材110との間の略中央にケーブル部102の長さ方向(延在方向)に沿って設けられている。具体的には、標識部112は、隣接する固定部材108および固定部材110間の中央C0を基準として、中央C0および固定部材108間の中央C1から、中央C0および固定部材110間の中央C2までに亘って設けられている。つまり、標識部112は、隣接する固定部材108および固定部材110間が4等分された4の範囲のうち、中央C0側に位置する2の範囲に跨って設けられている。
【0033】
また、標識部112は、例えば黒色の粘着テープ114により両端部分が巻かれて被覆部122の外周面122aに固定されている。
【0034】
図5は、
図3におけるV−V線断面図である。なお、
図5では、説明の便宜上、ケーブル120を省略し、また、作業者Aの視認方向を白抜き矢印で示す。
図5に示すように、標識部112は、ワイヤハーネス100が予め決められた取付態様で取り付けられた際、視認方向およびワイヤハーネス100の長さ方向に垂直な仮想直線rを基準として、被覆部122の外周面122aにおける視認方向から視認される表面部とは反対側の裏面部に設けられている。好ましくは、標識部112は、視認方向の仮想延長線lを基準として、外周面122aの裏面部におけるワイヤハーネス100の長さ方向に直交する断面上の角度±θの範囲内に設けられるとよい。ここで、角度θは、ワイヤハーネス100を視認する作業者Aの身長、視認角度、姿勢等によって変化する視認方向が考慮され、通常、視認されるであろう範囲の視認方向から標識部112が視認不能となるような角度に設定されている。
【0035】
したがって、ワイヤハーネス100は、車両1のボンネット2が開放された際に、通常取付状態では、作業者Aの視認方向(目線方向)から標識部112が視認不能となるので、標識部112が視認されることによる美観を損ねることを防止することができる。
【0036】
図6は、本実施形態におけるワイヤハーネス100の異常取付状態を説明する図である。ところで、固定部材108、110は、係止部108b、110bが周方向における予め決められた固定位置から径方向外側に突出しているので、ケーブル部102が360度回転されても留め具14、24に係止することが可能となる。例えば、ワイヤハーネス100は、固定部材110が留め具24に係止された後、ケーブル部102が予め決められた取付態様から周方向にねじられ、通常取付状態と比べて固定部材108が周方向に一回転(360度)されて留め具14に係止されることが可能となる。このように、ケーブル部102がねじれた状態を異常取付状態という。ここでは、ワイヤハーネス100の固定部材108が、1回転(360度)させられて取り付けられた場合について説明する。
【0037】
ケーブル部102は、固定部材108と固定部材110との間が360度ねじられた場合、固定部材108と固定部材110との間の中央部分が、ねじれていない場合と比べて、周方向に180度回転することになる。上記したように、標識部112は、固定部材108と固定部材110との間における中央C1から中央C2(
図3参照)までに沿って設けられているので、標識部112の中央部分もケーブル部102の回転にともなって、通常取付状態と比べて周方向に180度変位することになる。
【0038】
したがって、
図6に示すように、標識部112は、ワイヤハーネス100が異常取付状態である場合、ECU20側の一部分は作業者Aから視認不能となるが、ケーブル部102のねじれによって、エンジン10側の一部分が作業者Aから視認可能となる位置に変位する。これにより、作業者Aは、標識部112を視認することで、ケーブル部102のねじれを判別することができる。
【0039】
以上のように、ワイヤハーネス100は、予め決められた取付態様で車両1に取り付けられた際、被覆部122の外周面122aにおける視認方向から視認される表面部となる部分とは反対側の視認不能である裏面部に標識部112が設けられているので、美観を損ねることなく、ケーブル部102のねじれを判別させることができる。
【0040】
また、ワイヤハーネス100の取り付けは、車両1の製造時や点検・修理時であるため、例えば車両1の所有者がボンネット2を開放した際に標識部112を発見すると、標識部112の設置目的を知らないために困惑してしまう可能性がある。したがって、ワイヤハーネス100に設けられた標識部112は、ボンネット2を開放した際に視認できない方が望ましく、ワイヤハーネス100は、車両1の所有者に誤解を招かせることもない。
【0041】
(他の実施の形態1)
図7(a)は、他の実施形態1におけるワイヤハーネス200の構成を示す図である。他の実施形態1におけるワイヤハーネス200は、ワイヤハーネス100と比較して、接続端子104、106と、固定部材108、110と、粘着テープ114と、ケーブル120との構成が同一の構成であるため、同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
図7(a)に示すように、ワイヤハーネス200は、本線となるケーブル120、支線となるケーブル202a、202bと、被覆部204と、接続端子104、106、206、208と、固定部材108、110と、標識部212と、粘着テープ114を含んで構成される。ケーブル202aおよび202bは、被覆部204上の分岐位置B1およびB2でケーブル120と分岐する。標識部212は、本線となるケーブル120および支線となるケーブル202aが分岐した分岐位置B1と、本線となるケーブル120および支線となるケーブル202bが分岐した分岐位置B2との間の略中央にケーブル部214の長さ方向(延在方向)に沿って設けられている。具体的には、標識部
212は、4等分された4の範囲のうち、分岐位置B1、B2間の中央C3側に位置する2の範囲内に設けられていてもよい。これは、ケーブル部214がねじられた場合、中央C3側の2の範囲における標識部212が設けられた部分が被覆部204の外周面204aにおける視認方向から視認される表面部に現れるので、少なくともこの範囲に標識部212を設けておけばよく、標識部212の面積を減らすことができるためである。
【0043】
(他の実施の形態2)
図7(b)は、他の実施形態2におけるワイヤハーネス300の構成を示す図である。他の実施形態2におけるワイヤハーネス300は、ワイヤハーネス100と比較して、接続端子104、106と、固定部材108、110と、粘着テープ114と、ケーブル120との構成が同一の構成であるため、同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0044】
図7(b)に示すように、ワイヤハーネス300は、本線となるケーブル120、支線となるケーブル302aと、被覆部304と、接続端子104、106、306と、固定部材108、110と、標識部312と、粘着テープ114とを含んで構成される。支線となるケーブル302aは、被覆部304上の分岐位置B3で本線となるケーブル120と分岐する。標識部312は、本線となるケーブル120および支線となるケーブル302aが分岐した分岐位置B3と、固定部材110との間の略中央に設けられおり、具体的には、4等分された4の範囲のうち、中央C4側に位置する2の範囲内に設けられていてもよい。
【0045】
(他の実施の形態3)
図7(c)は、他の実施形態3におけるワイヤハーネス400の構成を示す図である。他の実施形態3におけるワイヤハーネス400は、ワイヤハーネス100と比較して、接続端子104、106と、固定部材108、110と、ケーブル120との構成が同一の構成であるため、同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
図7(c)に示すように、ワイヤハーネス400は、ケーブル120と、被覆部404と、接続端子104、106と、固定部材108、110と、標識部412と、粘着テープ414とを含んで構成される。標識部412は、標識部412の両端部分および中央部分を、粘着テープ414を用いて、被覆部404の周方向に巻きつけることで被覆部404と標識部412とを固定してもよいこととする。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0048】
なお、本実施形態においては、ワイヤハーネス100がエンジン10とECU20とを接続したが、本発明はこれに限らず、その他の機器または装置間を接続してもよく、例えば、車両1に設けられている電装機器とそのコントローラとを接続するワイヤハーネスであってもよいとする。
【0049】
また、例えば本実施形態においては、ケーブル部102が複数のケーブル120および被覆部122により構成されるようにしたが、本発明はこれに限らず、被覆部122が設けられていなくてもよく、ケーブル120に直接、標識部112を設けるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態及び他の実施形態において、標識部112は、所定の幅を有する例えば白色のテープとしたが、本発明はこれに限らず、いかなる方法で標識部を設置してもよく、例えば、インキ等で標識部を設置してもよい。
【0051】
なお、上記実施形態において、標識部112、212、312、412は、2の固定部材108、110の間、2の分岐位置B1、B2の間、または、固定部材110と分岐位置B3との間が4等分された4の範囲のうちの中央側に位置する2の範囲内に設けたが、4の範囲のうちの中央側に位置する2の範囲内に少なくとも一部が設けられていればよい。