特許第6144252号(P6144252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144252
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20170529BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20170529BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A61K31/198
   A61K31/4045
   A61K31/663
   A61K31/519
   A61K31/5513
   A61K9/16
   A61K47/48
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61P25/16
【請求項の数】22
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-503164(P2014-503164)
(86)(22)【出願日】2012年4月5日
(65)【公表番号】特表2014-510128(P2014-510128A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012056366
(87)【国際公開番号】WO2012136816
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】11161398.0
(32)【優先日】2011年4月6日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513249002
【氏名又は名称】リリアナ・ソヴィッチ・ブルキチッチ
【氏名又は名称原語表記】Ljiljana SOVIC BRKICIC
(73)【特許権者】
【識別番号】513249013
【氏名又は名称】ツヴィエトコ・ブルキチッチ
【氏名又は名称原語表記】Cvjetko BRKICIC
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】リリアナ・ソヴィッチ・ブルキチッチ
(72)【発明者】
【氏名】ズドラヴコ・ドクゾヴィッチ
【審査官】 天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−035526(JP,A)
【文献】 特開昭63−101332(JP,A)
【文献】 国際公開第03/020242(WO,A1)
【文献】 特表2006−515008(JP,A)
【文献】 特開平05−132416(JP,A)
【文献】 特開平02−096520(JP,A)
【文献】 特表2006−513182(JP,A)
【文献】 特表2006−522823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/198
A61K 31/4045
A61K 31/519
A61K 31/5513
A61K 31/663
A61K 47/32
A61K 47/38
A61K 47/50
A61K 9/16
A61P 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の被覆粒子を含有する経口医薬組成物であって、
該粒子は、アクリル酸またはアルキルアクリル酸の適宜架橋したホモポリマー、ならびにアクリル酸またはメタクリル酸とアクリル酸(C10-C30)アルキルとの適宜架橋したコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの生体接着性物質を含有する生体接着性コーティング層で被覆されており、
該粒子がさらに、該生体接着性コーティング層を覆うように位置していて少なくとも1つの腸溶コーティング物質を含有する腸溶コーティング層を含み、
該活性薬物がレボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、エンタカポン、アレンドロネート、オランザピン、リスペリドン、ロピニロールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、該経口医薬組成物。
【請求項2】
該被覆粒子の少なくとも一部がさらに、該複合体と該生体接着層の間に位置していて少なくとも1つの放出改変物質を含有する放出改変コーティング層を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
該生体接着性物質が、平均分子量で少なくとも約10,000ダルトンの重量である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
該腸溶コーティング物質が、アニオン性セルロース誘導体、アニオン性ビニル樹脂およびアニオン性アクリル樹脂からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
該腸溶コーティング物質が、酢酸フタル酸セルロース、二酢酸フタル酸セルロース、三酢酸フタル酸セルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ヘキサヒドロフタル酸セルロース、ヘキサヒドロフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの医薬的に許容される塩、酢酸フタル酸ポリビニル、ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル)、ならびにポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル)からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
該放出改変物質が遅延放出物質または徐放性物質から選択される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
該放出改変物質が、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル)、ポリ塩化ビニル、酢酸フタル酸ポリビニル、ポリ(ビニルピロリドン-共-ビニルアセテート)、シリコンエラストマー、シェラック、ゼイン、ロジンエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
該放出改変物質が、メチルセルロース、エチルセルロース、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
放出改変物質の量および/または組成が異なる少なくとも2つのグループの被覆粒子を含有する、請求項2〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
該イオン交換樹脂が、イオン基で修飾されたアクリル酸、メタクリル酸およびスチレンのポリマーおよびコポリマー、イオン基で修飾されたセルロース、イオン基で修飾されたデキストラン、ならびにイオン基で修飾されたシリカゲルからなる群から選択され、ここで、該イオン基はスルホン酸基、第三級アミン基または第四級アンモニウム基から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
該イオン交換樹脂がスチレンおよびジビニルベンゼンの架橋したスルホン化コポリマーである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
該活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の粒子の平均粒子サイズが、約10〜約3000 μmである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
該被覆粒子の平均粒子サイズが、約20〜約5000 μmである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
該被覆粒子が、1.1〜2.0の範囲の比重を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
該被覆粒子が、約1〜200 m2/gの範囲の比表面積を示す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
該活性薬物が、レボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、エンタカポン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
該活性薬物が、アレンドロネート、オランザピン、リスペリドンおよびロピニロールからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
異なる活性薬物を含む少なくとも2つのグループの被覆粒子を含有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
さらに、活性薬物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物を被覆粒子の外側に含有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
レボドパおよびカルビドパもしくはベンセラジドを、20:1〜1:1の比で含有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
該被覆粒子が、被覆粒子の総重量に基づいて、
(a)1〜50重量%の該少なくとも1つの活性薬物;
(b)1〜50重量%の該イオン交換樹脂;
(c)0〜50重量%の該放出改変物質;
(d)0.5〜30重量%の該生体接着性物質;ならびに、
(e)0〜80重量%の該腸溶コーティング物質;
を含有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
(i)活性薬物をイオン交換樹脂と接触させて活性薬物/イオン交換樹脂複合体を得る工程;
(ii)適宜、放出改変物質を含有するコーティング層で工程(i)の複合体をコーティングする工程;
(iii)生体接着性物質を含有するコーティング層で工程(i)の複合体または工程(ii)の被覆された複合体をコーティングする工程;ならびに、
(iv)適宜、腸溶コーティング物質を含有するコーティング層で工程(iii)の被覆された複合体をコーティングする工程
を含有する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された部位特異的な薬物放出を供する経口医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
活性薬物の放出制御は、いずれの薬物の経口投与における重要な側面である。それは、治療域が狭い活性薬物の経口投与にとってとりわけ重要である。そのような活性薬物の1つの例は、パーキンソン病の処置における選択薬であるレボドパである。
【0003】
パーキンソン病(PD)は最も一般的な神経変性疾患のうちの1つであり、典型的には高齢者で発症する。いくつかの類の薬物がパーキンソン病の処置において用いられており、その成功度は様々である。
【0004】
55歳以上の集団における診断済みのPDの有病率は約1.4%であり、年齢とともに増加する。さらに、高齢者におけるパーキンソン病様徴候は65歳以上の集団の30%において生じると推定される。PDは多系統疾患である考えられているが、主に、中脳の黒質緻密部にあるドーパミン作動性神経の持続的な長期にわたる変性によって引き起こされる運動障害である。PDは、これらのドーパミン作動性神経約60〜80%が変性された後か、あるいは線条体ドーパミンの約90%が喪失された後でのみ、症状が現れる。ドーパミンは、黒質内で産生され、通常は黒質線条体路を介して線条体に到達し、そして、線条体シナプスにおいて放出される。黒質におけるドーパミン作動性神経の変性に起因する線条体におけるドーパミン欠乏がPDの原因であると考えられている。しかしながら、ドーパミン自体は、消化管から吸収されることはなく、血液脳関門を通過することもできない。
【0005】
現在は、天然の代謝性ドーパミン前駆体であるレボドパを含有する薬剤によって、PDの最も効果的な処置がもたらされている。レボドパは、血液脳関門から基底核へ通過することができ、そこで、酵素である芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)によって脱炭酸されてドーパミンが生じることにより、欠損した神経伝達物質に取って代わる。しかしながら、AADCは腸壁、肝臓、腎臓および脳の毛細血管にも存在しており、結果としてもたらされるレボドパの末梢での脱炭酸反応およびレボドパ代謝物の形成は多くの副作用(例えば、悪心、嘔吐、不整脈および体位性低血圧)を生じさせる。末梢でのレボドパ脱炭酸反応は、選択的脳外脱炭酸酵素阻害剤(例えば、カルビドパまたはベンセラジド)(それ自体は血液脳関門を通過できない)をさらに投与することによって、大部分は予防できる。現在では、カルビドパまたはベンセラジドと組み合わされたレボドパが、レボドパを適用する場合に選択される処置である。レボドパおよびカルビドパの組み合わせを含有する固形剤形が知られており、PDおよび他の運動障害の処置に用いられている。例えば、セルロース、ステアリン酸マグネシウムおよびデンプンと一緒にレボドパおよびカルビドパを含む速放性の(rapid release)経口錠剤がシネメット(登録商標)の名称で市販されている。しかしながら、レボドパ/カルビドパ組み合わせ療法でさえも、しばしば重篤な副作用(例えば、ジスキネジアおよび精神障害)を伴う。
【0006】
さらに、現在利用可能な製剤は比較的短期間しか有効でなく、ある特定の条件下においては有害でさえあり得る。レボドパの即放性製剤の使用は、レボドパの急激な上昇をもたらす(初期は高すぎ、その後すぐに低くなりすぎて効果的でない)。さらに、このように投与されたレボドパ用量のうち約5%しか脳に到達しない。
【0007】
レボドパの通常の副作用は口腔顔面または四肢の舞踏病またはジストニアの形態の不随意運動(ジスキネジア)であり、それによって可能な投与量がしばしば制限される。レボドパの他の副作用としては、起立性低血圧、悪夢、幻覚、および、時折、中毒性せん妄が挙げられる。高齢者の認知症患者では、幻覚およびせん妄が最もよく見られる。該薬物は、いくらかの患者において、ある程度のジスキネジアまたは他の副作用をもたらすことなくパーキンソン症を回復させることはできない。
【0008】
これらの副作用は、処置を継続するにつれて低用量にて生じる傾向があり、いわゆる「ウェアリング-オフ」および「オン-オフ」現象がパーキンソン病のレボドパ長期治療における主要な問題として出現した。2〜5年の治療後、患者の>50%がレボドパへの応答において変動を経験し始める。これらの患者の大部分において、各用量からの効果が短くなり(「ウェアリング-オフ」作用)、いくらかの患者は移動性と不動性の間を予測不能に行ったり来たりする(「オン-オフ」作用)。「オン」期間は通常、高いかまたは上昇性の血漿レボドパ濃度に関連し、しばしば異常な不随意運動(すなわち、ジスキネジア)および制御不能な活動亢進を伴う。「オフ」期間は、低いかもしくは低下性の血漿レボドパ濃度および動作緩慢なエピソードに関連している。「オン」期間から「オフ」期間への変化は1日に何度も生じ得る。従来、そのような変化には、レボドパの個々の用量をできるだけ低く維持すること、および1〜2時間毎の短い投与間隔を用いることによって、対処してきた。
【0009】
医薬的に活性な薬物の放出挙動を制御するための経口医薬組成物の製剤化において、いくつかの技法が一般的に知られている。
【0010】
特許文献1は、薬物/樹脂複合体(該複合体の少なくとも一部は溶媒和剤で処理され、拡散バリアコーティングが施されている)を提供するためのイオン交換樹脂(そこに医薬的に活性な薬物が吸着されている)を含む長期持続放出医薬製剤を記載している。特許文献2〜5は、異なる溶媒和剤および可塑剤を用いた同様の製剤を記載している。
【0011】
特許文献6は、デキストロメトルファンがロードされている被覆および非被覆カチオン交換樹脂の混合物を含有する経口投与用の徐放性鎮咳シロップ懸濁剤について記載しており、ここで、該薬物/樹脂複合体の約30%は、可塑剤を有するエチルセルロースもしくはエチルセルロースラテックスおよび水分散性ポリマーの混合物で被覆されている。
【0012】
特許文献7は、約1/5-1/500(w/w)の水溶解性を有する薬物の、ゆっくりとした、ゼロ次放出のための固形の経口投与可能な医薬組成物であって、約1/1-1/40(w/w)の水溶解性を有する表面調整化合物、約1/1-1/10(w/w)の水溶解性を有する侵食制御化合物、表面活性剤および界面活性剤の組み合わせを含有する医薬組成物を記載している。
【0013】
特許文献8は、即放性または徐放性処方である1つ以上の薬物を含有する第一の層、徐放性処方である1つ以上の薬物(第一の層のものと同等かまたは異なっている)を含む第二の層、ならびに、該第二の層を被覆しているかまたは第一と第二の層の間に位置している低透過性障壁型の層から成る医薬錠剤について記載している。
【0014】
また、徐放性で経口の、レボドパおよびカルビドパの配合薬(dosage combination)を提供するための取り組みもされてきた。
【0015】
特許文献9〜11は、活性薬物としてカルビドパおよびレボドパを含む、マトリックス型または単層型のドラッグデリバリーシステムについて記載しており、ここで、該薬物は、ポリマービヒクル中に、どちらか一方のポリマービヒクルへの薬物溶解度以上の濃度で均一に分散されている。好ましいビヒクルは水溶性ポリマーであるヒドロキシプロピルセルロースと低い水溶性のコポリマーであるポリ酢酸ビニルクロトン酸(polyvinylacetate-crotonic acid)の組み合わせである。別の好ましいビヒクルはポリメチルメタクリレートである。
【0016】
特許文献12は、カルビドパおよびレボドパの組み合わせを含む、即放性および徐放性の成分の両方を含有する、患者の脳組織におけるドーパミン量の減少に関連した不調の処置のための医薬剤形について記載している。
【0017】
特許文献13は、レボドパ、カルビドパおよびエンタカポンを含有する医薬組成物、とりわけ、薬理学的に有効な量のレボドパ、カルビドパおよびエンタカポン(ここで、十分な量のカルビドパはエンタカポンおよび/またはレボドパとは分けられている)を含有する経口固形組成物について記載している。
【0018】
特許文献14は、崩壊性の層、侵食性の層および膨潤性の層(そのうちの2つが外側で1つが中間であり、各層は1つ以上の薬物(例えば、レボドパおよび/またはカルビドパ)を含む)を含有する経口投与用の制御放出単層型システムについて記載している。
【0019】
ポリマービヒクルであるヒドロキシプロピルセルロースおよびポリ酢酸ビニルクロトン酸ポリマー中にレボドパおよびカルビドパを含有する徐放性の固形経口剤形がシネメット(登録商標)CRという名称で市販されている。
【0020】
レボドパ/カルビドパを含有する現在の徐放性製剤は、多くの不利益に悩まされている。とりわけ、これらの製剤は典型的には、作用発現を示すのが遅い。例えば、市販のシネメット(登録商標)CR錠剤のピーク効果は従来のシネメット(登録商標)錠剤のピーク効果の1時間後に生じることが示されている。さらに、現在の徐放性製剤の生物学的利用能は低い。それと同時に、徐放性錠剤に対する臨床反応は、従来の製剤と比べて低い信頼性および低い予測可能性であることが分かった。現在のレボドパの徐放性製剤は、不十分な患者内および患者間血中濃度再現性に悩まされている。このことは、特にレボドパの場合において問題であり、しばしば、効力を維持するために時間をかけて徐々に用量を増加させなければならず、さらに、それは長期にわたる副作用の発生の一因となる。
【0021】
とりわけ、現在のレボドパの徐放性製剤は、レボドパの継続投与(例えば、点滴静注による)と同程度の好ましい効果をもたらすことができないことが分かっている。一方で、レボドパの点滴静注は、患者にとって不便であることに加えて、しばしば末梢静脈の硬化を引き起こすことが分かった。
【0022】
特許文献15は、レボドパ、および適宜、カルビドパを含有する組成物の、16時間以上の期間にわたる持続的な十二指腸ポンプ(duodenal pump)および腸管投与について記載している。レボドパ/カルビドパドラッグデリバリーのこの方法の明らかに不利な点は、患者は常に十二指腸または空腸に挿管(それは、扱いにくく、痛みを伴い、感染を起こしやすい)している必要があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】US 4,221,778
【特許文献2】US 4,847,077
【特許文献3】US 4,859,461
【特許文献4】US 4,859,462
【特許文献5】US 4,959,219
【特許文献6】US 6,001,392
【特許文献7】US 4,361,545
【特許文献8】WO 94/06416A1
【特許文献9】US 4,832,957
【特許文献10】US 4,900,755
【特許文献11】US 4,983,400
【特許文献12】US 2003/0224045 A1
【特許文献13】WO 01/01984 A1
【特許文献14】WO 99/17745 A1
【特許文献15】US 2008/0051459 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明の目的は、先行技術の不利益を克服すること、ならびに、最大の吸収、生物学的利用能、および最適な血中濃度を達成するための、薬物(とりわけ、治療域が狭い薬物(例えば、レボドパおよびパーキンソン病および他の運動障害の処置で用いられる他の薬物))の制御された部位特異的な放出を可能にする経口デリバリーシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(本発明の説明)
一態様において、本発明は、少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の被覆粒子を含有する経口医薬組成物であって、該粒子は少なくとも1つの生体接着性物質を含有する生体接着性コーティング層で被覆されている、医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、マグネチックスターラーを用いた撹拌下において室温で脱イオン水中に分散された、実施例1Aで得られた500 mgのレボドパ薬物樹脂複合体からのレボドパの放出を示す。NaClを以下の通り加えた: 9分: 200 mg; 36分: 700 mg; 52分: 1200 mg; 61分: 3300 mg。
図2図2は、実施例1B-1で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 5.5, イオン強度 0.075)。
図3図3は、実施例1B-3で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 5.5, イオン強度 0.075)。
図4図4は、実施例1B-2〜1B-4で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 6.0, イオン強度 0.075)。
図5図5は、実施例1C-3で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 6.0, イオン強度 0.075)。
図6図6は、実施例1C-5で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 6.0, イオン強度 0.075)。
図7図7は、実施例1D-2〜1D-4で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 0.1 N HCl, 1〜12時間: リン酸バッファー pH 6.25, イオン強度 0.075)。
図8図8は、実施例1D-1および1D-4で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 0.1 N HCl, 1〜12時間: リン酸バッファー pH 6.25, イオン強度 0.075)。
図9図9は、篩い分けの前および後の、実施例2Aで得られた非被覆ロピニロール薬物樹脂複合体(RoDRC)および実施例2Dで得られた被覆RoDRCの溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 75 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 500 ml 0.1 N HCl, 1〜10時間: バッファー混合物 [500 ml 0.1 N HCl + 500 ml リン酸バッファー], pH 5.6, イオン強度 0.075)。
図10図10は、実施例3Dで得られた被覆アレンドロネート薬物樹脂複合体(AlDRC)の溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 75 rpm, 37℃, 溶解媒質 1000 ml 0.1 M NaCl)。
図11図11は、実施例4Dで得られた被覆リスペリドン薬物樹脂複合体(RiDRC)の溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 75 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 500 ml 0.1 N HCl, 1〜12時間: バッファー混合物 [500 ml 0.1 N HCl + 500 ml リン酸バッファー], pH 5.6, イオン強度 0.075)。
図12図12は、実施例5Dで得られた被覆オランザピン薬物樹脂複合体(OzDRC)の溶解プロファイルを示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 75 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 500 ml 0.1 N HCl, 1〜12時間: バッファー混合物 [500 ml 0.1 N HCl + 500 ml リン酸バッファー], pH 5.6, イオン強度 0.075; 10.5時間後に10 gのNaClを加えた)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による組成物は、少なくとも1つの活性薬物を含有する。いずれのそのような活性薬物は、組成物中に治療上有効な量で存在していることが理解されるであろう。該用語「治療上有効な量」とは、患者に投与された場合にはっきりと認識できる生物学的反応をもたらすのに十分である、活性薬物の総量または含量を言う。
【0028】
一般的には、全ての薬理学的な活性薬物が本発明の組成物において用いるのに適切である。好ましい類の活性薬物としては、抗パーキンソン病薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗うつ薬、麻薬、抗高血圧薬、抗酸化剤、抗悪性腫瘍薬、細胞増殖阻害薬、胃腸薬および筋骨格疾患治療薬(musculoskeletal drug)が挙げられる。
【0029】
適切な活性薬物の例としては、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、ドラセトロン、パロノセトロン、アプレピタント、スルファサラジン、ドキサゾシン、アテノロール、ビソプロロール、ヒドロクロロチアジド、カルベジロール、アムロジピン、フェロジピン、ニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、キナプリル、シラザプリル、フォシノプリル、トランドラプリル、ロサルタン、バルサルタン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、コレスチラミン、オキシブチニン、プロピベリン、ソリフェナシン、トロスピウム、ダリフェナシン、シルデナフィル、フェントラミン、タムスロシン、フィナステリド、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、ロムスチン、テモゾロミド、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、フルダラビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、エトポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、プロカルバジン、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、スニチニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、テムシロリムス、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ヒドロキシウレア、エストラムスチン、トポテカン、イリノテカン、イマチニブ、ボルテゾミブ、エルロチニブ、アナグレリド、メゲストロール、タモキシフェン、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、アナストロゾール(anastrazole)、レトロゾール、エキセメスタン、ミコフェノール酸モフェチル、シロリムス、エベロリムス、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン、エチドロン酸(例えば、エチドロン酸ナトリウム)、クロドロン酸(例えば、クロドロン酸ナトリウム)、パミドロン酸(例えば、パミドロン酸ナトリウム)、アレンドロン酸(例えば、アレンドロン酸ナトリウム)、チルドロン酸(例えば、チルドロン酸ナトリウム)、イバンドロン酸(例えば、イバンドロン酸ナトリウム)、リセドロン酸(例えば、リセドロン酸ナトリウム)、ゾレドロン酸(例えば、ゾレドロン酸ナトリウム)、モルヒネ、ヒドロモルホン、オキシコドン、ペチジン、フェンタニル、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、トラマドール、アセチルサリチル酸、メタミゾール、パラセタモール、スマトリプタン、メチルフェノバルビタール、フェノバルビタール、プリミドン、フェニトイン、エトスクシミド、クロナゼパム、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、バルプロ酸、ビガバトリン、プロガビド、チアガビン、スルチアム、フェナセミド、ラモトリギン、フェルバメート、トピラマート、ガバペンチン、フェネトライド、レベチラセタム、ゾニサミド、プレガバリン、スチリペントール、ラコサミド、ベクラミド、トリヘキシフェニジル、ビペリデン、レボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、エンタカポン、アマンタジン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、ジヒドロエルゴクリプチン、ロピニロール、プラミペキソール、カベルゴリン、アポモルヒネ、ピリベジル、ロチゴチン、セレギリン、ラサギリン、トルカポン、エンタカポン、ブジピン、レボメプロマジン、クロルプロマジン、プロマジン、フルフェナジン、ペラジン、ハロペリドール、セルチンドール、ジプラシドン(ziprazidone)、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、ロキサピン、スルピリド、アミスルプリド、リチウム(例えば、炭酸リチウム)、プロチペンジル、リスペリドン、クロチアピン、モサプラミン、ゾテピン、アリピプラゾール、パリペリドン、ジアゼパム、アルプラゾラム、メプロバメート、フルラゼパム、ニトラゼパム、ミダゾラム、ゾルピデム、クロミプラミン、アミトリプチリン、マプロチリン、フルオキセチン、シタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、アラプロクラート、フルボキサミン、エトペリドン、エスシタロプラム、ミルタザピン、ベンラファキシン、メチルフェニデート、モダフィニル、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、ジスルフィラム、ナロキソン、メサドン、リルゾール、アバカビル、アシクロビル、アトロピン、ブスピロン、カフェイン、カプトプリル、クロロキン、クロルフェナミン、デシプラミン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドキセピン、ドキシサイクリン、エフェドリン、エルゴノビン、エタンブトール、グルコース、イミプラミン、ケトロラク、ケトプロフェン、ラベタロール、レボフロキサシン、メトプロロール、メトロニダゾール、ミノサイクリン、ミソプロストール、フェナゾン、フェニルアラニン、プレドニゾロン、プリマキン、プロプラノロール、キニジン、ロシグリタゾン、サリチル酸、テオフィリン、ジドブジン、コデイン、デキストロメトルファン、ヒドロコドン、ヒドララジン、メタプロテレノール、フェニルプロパノールアミンおよびプソイドエフェドリンが挙げられる。
【0030】
本発明の組成物は、とりわけ、生物薬剤学分類システム(BCS)のクラスIに属する活性薬物に適している。BCSクラスIの活性薬物は、高い浸透性および高い溶解性の両方を示すことを特徴としている。BCSクラスIの活性薬物の例としては、アバカビル、アシクロビル、アミトリプチリン、アトロピン、ブスピロン、カフェイン、カプトプリル、クロロキン、クロルフェナミン、シクロホスファミド、デシプラミン、ジアゼパム、ジルチアゼム、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドキセピン、ドキシサイクリン、エナラプリル、エフェドリン、エルゴノビン、エタンブトール、フルオキセチン、グルコース、イミプラミン、ケトロラク、ケトプロフェン、ラベタロール、レボドパ、レボフロキサシン、メトプロロール、メトロニダゾール、ミダゾラム、ミノサイクリン、ミソプロストール、ニフェジピン、パラセタモール、ペチジン、フェナゾン、フェノバルビタール、フェニルアラニン、プレドニゾロン、プリマキン、プロマジン、プロプラノロール、キニジン、リスペリドン、ロシグリタゾン、サリチル酸、テオフィリン、ベラパミルおよびジドブジンが挙げられる。
【0031】
最大約8時間程度の短い生物学的半減期である活性薬物もまた好ましい。例としては、コデイン、デキストロメトルファン、ドキセピン、エフェドリン、ヒドロコドン、ヒドララジン、メタプロテレノール、モルヒネ、レボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、エンタカポン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリンおよびベラパミルが挙げられる。
【0032】
レボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、エンタカポンおよびそれらの混合物が特に好ましい。
【0033】
本発明の組成物は、2つ以上の活性薬物の組み合わせを含むことができる。活性薬物の好ましい組み合わせとしては、ビソプロロール/ヒドロクロロチアジド、ベラパミル/トランドラプリル、アムロジピン/アトルバスタチン、トラマドール/パラセタモール、ベクラミド/トリヘキシフェニジル、ブプレノルフィン/ナロキソン、レボドパ/カルビドパ、レボドパ/ベンセラジドおよびレボドパ/カルビドパ/エンタカポンが挙げられる。
【0034】
他に指示のない限り、本明細書の活性薬物についての言及は全て、その医薬的に許容される塩および溶媒和物を包含することを意味する。そのような言及は、さらに、結晶性およびアモルファスの形態の両方を包含することを意味する。本明細書で用いる用語「医薬的に許容される」は、妥当な利益/リスク比に見合って、過剰な毒性を伴わずに、ヒトおよび動物で用いるのに適した物質を言う。
【0035】
本発明の組成物は、少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の被覆粒子を含有する。
【0036】
適切なイオン交換樹脂は、典型的には水不溶性であって、共有結合している官能基(イオン性であるかまたは適切なpH条件下においてイオン化され得る)を含む薬理学的に不活性な有機または無機マトリックスを含有する。有機マトリックスの例としては、合成マトリックス(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホネートまたはジビニルベンゼンスルホネートのポリマーまたはコポリマー)および部分合成マトリックス(例えば、変性(modified)セルロースまたはデキストラン)が挙げられる。無機マトリックスの例としては、イオン基を加えることによって修飾されたシリカゲルが挙げられる。共有結合しているイオン基は、強酸性基(例えば、スルホン酸基)か、弱酸性基(例えば、カルボン酸基)か、強塩基性基(例えば、第四級アンモニウム基)か、弱塩基性基(例えば、第一級アミン基)か、または酸性基と強塩基性基の組み合わせであり得る。イオン交換クロマトグラフィーまたは水の脱イオン化に適したイオン交換樹脂は、通常は、本発明での使用にも適している。例えば、該イオン交換樹脂は、H. F. Walton, ”Principles of Ion Exchange” in E. Heftmann (Ed.), ”Chromatography: A laboratory handbook of chromatographic and electrophoretic methods”, 3rd ed., Van Nostrand, New York, 1975, pp. 312-343によって記載されている。適切なイオン交換樹脂は、典型的には、約6 meq./g(ミリグラム当量/グラム)以下、とりわけ、約5.5 meq./g以下の乾燥樹脂(遊離酸または塩基形態)の交換容量を有する。
【0037】
該イオン交換樹脂は、好ましくは、イオン基で修飾されたアクリル酸、メタクリル酸およびスチレンのポリマーおよびコポリマー、イオン基で修飾されたセルロース、イオン基で修飾されたデキストランおよびイオン基で修飾されたシリカゲルからなる群から選択される。適切なイオン基としては、スルホネート基、第三級アミン基および第四級アンモニウム基が挙げられる。スチレンスルホネート、スチリルメチルトリメチルアンモニウム塩およびジメチルアミノメチルスチレンのポリマーおよびコポリマーが特に好ましい。
【0038】
さらに好ましくは、該イオン交換樹脂は架橋剤を用いて架橋されている。適切な架橋剤は当分野で一般的に公知である。好ましい架橋剤は、ジビニルおよびポリビニル化合物、最も好ましくはジビニルベンゼンである。好ましくは、該イオン交換樹脂は、乾燥樹脂(遊離酸または塩基形態)の総重量に基づいて、約3〜約20重量%、とりわけ約4〜約16重量%、より好ましくは約6〜約10重量%、そして最も好ましくは約8重量%の範囲まで、架橋されている。
【0039】
特に好ましくは、該イオン交換樹脂はスチレンとジビニルベンゼンの架橋型スルホン化コポリマーであり、それは好ましくは乾燥樹脂(H+-形態)の総重量に基づいて約8重量%の範囲まで架橋されている。このイオン交換樹脂は、典型的には、乾燥樹脂(H+-形態)の約4.5〜5.5 meq./gのイオン交換能を有する。別の好ましいイオン交換樹脂は、スチレン(第四級アンモニウム基で官能化された)とジビニルベンゼンの架橋コポリマーであり、それは好ましくは、乾燥樹脂(H+-形態)の総重量に基づいて約8重量%の範囲まで架橋されている。このイオン交換樹脂は、典型的には、乾燥樹脂(H+-形態)の約3〜4 meq./gのイオン交換能を有する。
【0040】
該イオン交換樹脂は、好ましくは、約10〜約1000 μmの範囲、とりわけ約20〜約250 μmの範囲、最も好ましくは25〜約200 μmの範囲の平均粒子サイズである。該イオン交換樹脂は、平均粒子サイズが約40〜約250 μmの範囲である不規則な形の粒子か、または平均粒子サイズが約45〜約150 μmの範囲である球状の粒子の形態であり得る。
【0041】
さらに好ましくは、少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体は、該複合体の総重量に基づいて、約5〜80重量%、とりわけ10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%、そして最も好ましくは30〜50重量%の量の活性薬物を含有する。
【0042】
少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の平均粒子サイズは、好ましくは、約10〜3000 μm、とりわけ約30〜2000 μm、そして最も好ましくは約50〜1000 μmである。さらに好ましくは、重量で少なくとも約85%、とりわけ少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも約98%の粒子が、これらの好ましい範囲内の平均粒子サイズを有する。本明細書で用いる用語である平均粒子サイズとは、体積平均(volume average)を言う。粒子サイズは、当分野で一般的に公知の篩い分け分析またはレーザー回折分析によって決定され得る。篩い分け分析は、典型的には、乾燥粉末サンプルで実施される。レーザー回折分析は、乾燥粉末サンプルまたは不活性液体ビヒクル(例えば精製水)中の懸濁サンプルを用い、例えばマルバーンマスターサイザー装置 MS 2000を用いて、実施され得る。
【0043】
被覆粒子は、少なくとも1つの生体接着性物質を含有する生体接着性コーティング層をさらに含有する。用語「生体接着性」とは、一般的に、生体表面(例えば、組織および/または細胞)(とりわけ粘膜)への接着性を粒子に与えることができる物質を言う。
【0044】
適切な生体接着性物質としては、一般的に、修飾および非修飾の、天然または合成の、親水性ホモポリマー、コポリマー、およびヒドロゲルが挙げられる。例としては、ポリカルボキシレート、ヒアルロナン、キトサン、アルギン酸塩(例えばアルギン酸ナトリウム)、ペクチン、キサンタンガム、ポロキサマー、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。修飾および非修飾の合成ポリカルボキシレートポリマーが好ましく、それは典型的には、少なくとも約10,000ダルトン、好ましくは少なくとも約50,000ダルトン、より好ましくは少なくとも約100,000ダルトン、さらにより好ましくは少なくとも約1,000,000ダルトン、そして最も好ましくは約1,000,000〜約10,000,000ダルトンの平均分子量である重量を有する。修飾としては、架橋、中和、加水分解、および完全もしくは部分エステル化が挙げられ得る。
【0045】
好ましくは、生体接着性物質は、アクリル酸またはアルキルアクリル酸の適宜架橋したポリマーおよびコポリマー、とりわけアクリル酸またはメタクリル酸とアクリル酸(C10-C30)アルキルとの適宜架橋したコポリマーを含む。適切な架橋剤としては、多価アルコールのビニルおよびアリルエーテル、とりわけ、アリルスクロース、アリルペンタエリスリトールおよびジビニルグリコールが挙げられる。アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のホモポリマーならびにアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸とアクリル酸(C10-C30)アルキルのコポリマーがとりわけ好ましい。
【0046】
さらに好ましくは、生体接着性コーティング層は、複合体、適宜存在する放出改変(release modifying)コーティング層、および生体接着性コーティング層の合計重量に基づいて1〜30重量%、とりわけ2〜10重量%、そしてより好ましくは3〜7重量%の量で存在する。
【0047】
被覆粒子は、適宜、放出改変コーティング層(複合体と生体接着性層の間に位置し、少なくとも1つの放出改変物質を含有する)を含む。ある特定の実施態様において、とりわけ、該活性薬物が生物薬剤学分類システム(BCS)のクラスIIまたはIV(活性薬物は低い溶解性を示すことを特徴とする)に属する場合、該組成物は、放出改変コーティング層を含まない粒子のみから成る。好ましくは、被覆粒子の少なくとも一部は放出改変コーティング層を含む。該放出改変物質は、好ましくは、遅延放出物質および/または徐放性物質から選択される。
【0048】
適切な遅延放出物質は、典型的には、第一の環境(first environment)において溶解性または侵食性がないかまたは制限されており、一方で、第二の環境(second environment)において溶解性および/または侵食性である。適切な遅延放出物質の例としては、アニオン性セルロース誘導体、アニオン性ビニル樹脂、アニオン性アクリル樹脂およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましいアニオン性セルロース誘導体としては、セルロースエーテル、セルロースエステルおよびセルロースエステル-エーテル、とりわけ、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびアシルセルロースが挙げられ、それらはジ-もしくはトリカルボン酸でエステル化されている。酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好ましい。好ましいアニオン性ビニル樹脂としては、ジ-もしくはトリカルボン酸でエステル化されたポリビニルエステルが挙げられる。酢酸フタル酸ポリビニルが特に好ましい。好ましいアニオン性アクリル樹脂としては、アクリル酸またはアルキルアクリル酸のポリマーおよびコポリマー、とりわけ、アクリル酸またはメタクリル酸とアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートとのコポリマーが挙げられる。ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル)およびポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル)が特に好ましい。酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル) 1:1、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 1:1、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 1:2 およびそれらの組み合わせが遅延放出物質として最も好ましく、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル) 1:1、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの組み合わせが最も好ましい。
【0049】
適切な徐放性物質としては、一般的に、拡散バリア特性を有する天然及び合成の塗膜形成物質が挙げられる。そのような物質は、一般的に、水に不溶性であって、水および活性薬物を透過するべきである。しかしながら、望ましくは、コーティングの透過性を変化させるために水溶性物質(例えばメチルセルロース)を含み得るか、あるいは、腸溶コーティングとして作用するために酸不溶性で塩基溶解性の物質を含み得る。また、適切な徐放性物質の例は、R. C. Rowe in ”Materials used in Pharmaceutical Formulation”, A. T. Florence (Ed.), Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1984, pp. 1-36にも記載されている。適切な徐放性物質の例としては、セルロース誘導体(例えば、セルロースエーテルおよびセルロースエステル)、(メタ)アクリル樹脂(例えば、アクリレートおよびメタクリレートのポリマーおよびコポリマー)、ビニル樹脂(例えば、ビニルピロリドン、ビニルアセテートおよびビニルクロリドのポリマーおよびコポリマー)、シェラック、ゼイン、ロジンエステル、シリコンエラストマーならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましいセルロース誘導体としては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびアシルセルロース、とりわけ、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび酢酸セルロースが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル樹脂としては、第四級アミン官能基を適宜含有するアクリレートおよびメタクリレートコポリマー、とりわけ、ポリ(アクリル酸エチル-共-メタクリル酸メチル)およびポリ(アクリル酸エチル-共-メタクリル酸メチル-共-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)、さらにとりわけ、ポリ(アクリル酸エチル-共-メタクリル酸メチル) 2:1、ポリ(アクリル酸エチル-共-メタクリル酸メチル-共-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド) 1:2:0.1、およびポリ(アクリル酸エチル-共-メタクリル酸メチル-共-トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド) 1:2:0.2が挙げられる。好ましいビニル樹脂としては、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン-共-ビニルアセテート)およびそれらの混合物が挙げられる。エチルセルロース、メチルセルロースおよびそれらの混合物が特に好ましい。最も好ましくは、徐放性コーティングは、セバシン酸ジブチルまたは植物油で可塑化された水ベースのエチルセルロースラテックスまたは擬似ラテックスを含有する。
【0050】
放出改変コーティング層は、好ましくは、複合体と放出改変コーティング層を合わせた重量に基づいて約5〜約70重量%、とりわけ約10〜約60重量%、そしてより好ましくは約20〜約50重量%の量で存在する。放出改変物質の量を変化させること、および/または被覆および非被覆粒子の混合物を用いることによって、要望通りに溶解プロファイルを選択的に改変することができる。粒子の約20〜約80%、より好ましくは約30〜約70%、そして最も好ましくは約40〜約60%が放出改変コーティング層を含んでいることが好ましい。
【0051】
好ましい実施態様によると、該組成物は、量および/または放出改変物質の組成が異なっている、ならびに/あるいは異なる活性薬物を含有している、少なくとも2つのグループの被覆粒子を含有する。
【0052】
一実施態様において、該組成物は、放出改変層を含む第1グループの被覆粒子、ならびに放出改変層を含まないかまたは少量の放出改変物質を含有する放出改変層を含む第2グループの被覆粒子を含有する。別の実施態様において、該組成物は、放出改変物質の組成において異なっている放出改変層を含む2つのグループの被覆粒子を含有する。これらの実施態様において、放出改変層を含まないかまたは少量の放出改変物質を含有する放出改変層を含む粒子は、より速い活性薬物の放出を示すであろう。同様に、放出改変物質の組成が異なる粒子のグループは、異なる放出挙動を示すであろう。
【0053】
該組成物が少なくとも2つの異なるグループの被覆粒子を含有する場合、これらのグループの粒子の活性薬物は、同一であることも異なることもできる。該活性薬物が同一である場合、該活性薬物の全般的な放出特性に適応させるように、異なる放出挙動を示す異なるグループの被覆粒子の組み合わせを用いることができる。該活性薬物が異なる場合、該異なる活性薬物は該異なる放出特性に従って提供され得る(例えば、ある活性薬物は別の活性薬物より高速および/または早期に放出され得る)。
【0054】
当然のことながら、これらおよび他の実施態様を組み合わせて、あらゆる異なるグループの被覆粒子を含有する組成物を提供することもできる。例えば、本発明による組成物は、放出改変層を含む第1の活性薬物または活性薬物の組み合わせを含有する第1のグループの被覆粒子、放出改変層を含まない同一の活性薬物または活性薬物の組み合わせを含有する第2のグループの被覆粒子、ならびに異なる活性薬物または活性薬物の組み合わせを含有する第3のグループの被覆粒子を含有し得る。
【0055】
該被覆粒子は、適宜、腸溶コーティング層を含み、それは生体接着性層を覆うように位置し、少なくとも1つの腸溶コーティング物質を含有する。該腸溶コーティング層は、好ましくは、生体接着性層を直接覆うように(すなわち、生体接着性層と腸溶コーティング層の間に別の層がない)位置している。適切な腸溶コーティング物質は、当分野において一般的に公知である。それらは典型的には、胃液に対して実質的に抵抗性を有することによって胃での活性薬物の放出をかなり防ぎ、腸での放出を促進する。適切な腸溶コーティング物質の例としては、アニオン性セルロース誘導体、アニオン性ビニル樹脂、アニオン性アクリル樹脂が挙げられる。
【0056】
好ましいアニオン性セルロース誘導体としては、セルロースエーテル、セルロースエステルおよびセルロースエステル-エーテル、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキル-セルロースまたはアシルセルロースが挙げられ、それらはジ-またはトリカルボン酸(例えば、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸またはコハク酸、およびその医薬的に許容される塩)でエステル化されている。セルロースエーテルフタレート、セルロースエステルフタレート、セルロースエステル-エーテルフタレートおよびその医薬的に許容される塩が好ましい。酢酸フタル酸セルロース、二酢酸フタル酸セルロース、三酢酸フタル酸セルロース、フタル酸メチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸ヘキサヒドロフタル酸セルロース、ヘキサヒドロフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびその医薬的に許容される塩が特に好ましい。好ましい医薬的に許容される塩としては、アルカリ塩、アルカリ土類塩およびアンモニウム塩、とりわけ、酢酸フタル酸セルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロースカルシウムおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸アンモニウムが挙げられる。
【0057】
好ましいアニオン性ビニル樹脂としては、ポリビニルエステルが挙げられ、それは、ジ-またはトリカルボン酸(例えば、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸またはコハク酸、およびその医薬的に許容される塩)でエステル化されている。酢酸フタル酸ポリビニルが特に好ましい。アニオン性ビニル樹脂とフタレート可塑剤(例えば、フタル酸ジアルキル(例えば、フタル酸ジエチルまたはフタル酸ジブチル)、フタル酸アルキルアリールまたはフタル酸ジアリール)の混合物が、より一層好ましい。
【0058】
好ましいアニオン性アクリル樹脂としては、アクリル酸またはアルキルアクリル酸のポリマーおよびコポリマー、とりわけ、アクリル酸またはメタクリル酸とアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートとのコポリマーが挙げられる。例としては、ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル)およびそれらの組み合わせ、好ましくは、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 50:50、ポリ(メタクリル酸-共-メチルメタクリレート) 30:70、ポリ(メタクリル酸-共-ジメチルアミノエチルメタクリレート-共-アクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸-共-メチルメタクリレート-共-アクリル酸エチル)、およびそれらの組み合わせ、より好ましくは、平均分子量が約135,000 g/molであるポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 50:50、平均分子量が約135,000 g/molであるポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 30:70、平均分子量が約750,000 g/molであるポリ(メタクリル酸-共-ジメチルアミノエチルメタクリレート-共-アクリル酸エチル)、平均分子量が約1,000,000 g/molであるポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル-共-アクリル酸エチル)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
他の適切な腸溶コーティング物質としては:(a)ケラチン、ケラチン サンダラック-トルー(sandarac-tolu)、ザロール(サリチル酸フェニル)、ザロール β-ナフチルベンゾエートおよびアセトタンニン(acetotannin)、ペルーバルサム含有ザロール、トルーバルサム(tolu)含有ザロール、マスチックガム(gum mastic)含有ザロール、ザロールおよびステアリン酸、ならびにザロールおよびシェラック;(b)一定の形の(formalized)タンパク質、一定の形のゼラチン、ならびに一定の形の架橋ゼラチンおよびイオン交換樹脂;(c)ミリスチン酸-硬化ヒマシ油-コレステロール、ステアリン酸-羊脂、ステアリン酸-トルーバルサム、およびステアリン酸-ヒマシ油;(d)シェラック、アンモニア化シェラック、アンモニア化シェラック-ザロール、シェラック-羊毛脂、シェラック-セチルアルコール、シェラック-ステアリン酸-トルーバルサム、およびシェラック n-ブチル ステアレート;(e)アビエチン酸、アビエチン酸メチル(methyl abictate)、ベンゾイン、トルーバルサム、サンダラック、トルーバルサム含有マスチック(mastic)、およびセチルアルコール含有マスチックが挙げられる。
【0060】
腸溶コーティングの存在および性質は、活性薬物の目的の放出部位に応じて選択され得る。活性薬物が胃で放出される場合、該粒子は通常、腸溶コーティング層を含まないであろう。
【0061】
該活性薬物が十二指腸で放出される場合、該腸溶コーティング物質は、好ましくは、約5.0〜6.0、とりわけ約5.5〜6.0の範囲のpHで溶解するように選択される。活性薬物がレボドパである場合に、そのような腸溶コーティングを含有する粒子が特に好ましい。適切な腸溶コーティング物質としては、ポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル)、とりわけポリ(メタクリル酸-共-アクリル酸エチル) 1:1が挙げられる。
【0062】
該活性薬物が回腸で放出される場合、該腸溶コーティング物質は、好ましくは、約6.0〜7.0、とりわけ約6.0〜6.5の範囲のpHで溶解するように選択される。適切な腸溶コーティング物質としては、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル)、とりわけポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 1:1が挙げられる。
【0063】
該活性薬物が結腸で放出される場合、該腸溶コーティング物質は、好ましくは、約6.5〜7.5の範囲、とりわけ7.0以上のpHで溶解するように選択される。適切な腸溶コーティング物質としては、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル)およびポリ(アクリル酸メチル-共-メタクリル酸メチル-共-メタクリル酸)、とりわけ、ポリ(メタクリル酸-共-メタクリル酸メチル) 1:2およびポリ(アクリル酸メチル-共-メタクリル酸メチル-共-メタクリル酸) 7:3:1が挙げられる。
【0064】
腸溶コーティング層が、被覆粒子の総重量に基づいて、1〜80重量%、とりわけ10〜60重量%、そしてより好ましくは30〜50重量%の量で存在することがさらに好ましい。
【0065】
驚くべきことに、本発明による経口医薬組成物は、再現性があって部位特異的で徐放性である活性薬物の放出を提供し、それにより、該活性薬物を初期に速やかに放出して作用を速やかに発現し、その後、長期間にわたって(例えば、1〜10時間にわたって)ゆっくりと実質的に継続的に治療域内の血中濃度を提供することが見いだされている。これらの優れた特性によって、必要とされる総1日用量ならびに1日の投与回数が減り、それによって短期および長期の副作用の両者ともが低減される。
【0066】
いずれの特定の理論に縛られることを望むものではないが、生体接着性物質は、生体表面への付着性によって患者の消化管内における活性薬物の望ましい吸収部位に多数の被覆粒子を保持するために提供されると考えられている。イオン交換樹脂と活性薬物の複合体からの活性薬物の放出速度は、とりわけ、特定の吸収部位における周囲の体液のイオン強度(それは患者内および患者間で比較的一定である)に依存する。そのようにして、例えば患者の消化管の至る所における、制御されない不規則な活性薬物の放出を防ぐ。
【0067】
該組成物は、好ましくは、放出される活性薬物の総量が2時間後に60重量%以下、4時間後に70重量%以下、そして8時間後に90重量%以下であることを特徴とする活性薬物の放出を示す(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, 溶解媒質 0-1時間: 500 ml 0.1 N HCl, 1-12時間: バッファー混合物 [500 ml 0.1 N HCl + 500 ml リン酸バッファー], pH 6.25, イオン強度 0.075)。
【0068】
該組成物はゼロ次、擬ゼロ次、一次または擬一次放出特性を示すことが、特に好ましい。「ゼロ次」放出特性は、単位時間当たりに一定の量の薬物を放出する剤形の放出特性を特徴付ける。「擬ゼロ次」放出特性は、ゼロ次放出特性に近似するものである。「一次」放出特性は、単位時間当たりに最初の薬物チャージの一定の割合を放出する剤形の放出特性を特徴付ける。「擬一次」放出特性は、一次放出特性に近似するものである。
【0069】
被覆粒子の平均粒子サイズは、好ましくは、約20〜約5000 μm、とりわけ約50〜約4000 μm、そして最も好ましくは約70〜約3000 μmである。粒子の体積の少なくとも約85%、とりわけ少なくとも約95%、そして最も好ましくは少なくとも約98%が、これらの好ましい範囲内の平均粒子サイズを有することが、さらに好ましい。
【0070】
該被覆粒子は、典型的には、十二指腸液の比重(SG = 1.008-1.03)または腸液の比重(SG = 1.007-1.009)より高い比重(SG)を有する。本明細書で用いる用語「比重」は、4℃での水の密度に対する粒子の密度の比率を意味する。好ましくは、該被覆粒子は、1.1〜2.0の範囲、より好ましくは1.2〜1.8の範囲の比重を有する。該被覆粒子の比重は、4℃でサンプルを水に加えることによって得られる水置換(ΔV)の体積から以下の式に従って算出され得る(サンプルの質量(m)および4℃での水の密度(ρH2O)):SG = (m/ΔV)/ρH2O。
【0071】
本発明による被覆粒子は、典型的には、大きな比表面積を示す。本明細書において用いる用語「比表面積」は、典型的には、BET表面積を意味する。BET表面積は、77 Kにて、30体積%窒素および70体積%ヘリウムの混合物を用いて、BET FlowSorb II 2300 (Micromeritics Instrument Corp., USA)で得られた窒素の脱離データから算出することによって決定され得る。好ましくは、該被覆粒子は約3,000〜20,000 m2/m3の範囲の比表面積を示す。別の実施態様において、該被覆粒子は約1〜200 m2/gの範囲の比表面積を示す。
【0072】
一実施態様において、本発明による経口医薬組成物は少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の被覆粒子を含有し、ここで、(i)該粒子は少なくとも1つの生体接着性物質を含有する生体接着性コーティング層で被覆されており、そして、(ii)該被覆粒子はさらに、生体接着性層を覆うように(好ましくは直接覆うように)位置していて少なくとも1つの腸溶コーティング物質を含有する腸溶コーティング層を含む。
【0073】
別の実施態様において、本発明による経口医薬組成物は、少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の被覆粒子を含有し、ここで、(i)該粒子は、少なくとも1つの生体接着性物質を含有する生体接着性コーティング層で被覆されており、そして、(ii)被覆粒子の少なくとも一部はさらに、該複合体と該生体接着性層の間に位置していて少なくとも1つの放出改変物質を含有する放出改変コーティング層を含む。
【0074】
好ましい実施態様によると、本発明による経口医薬組成物は、少なくとも1つの活性薬物とイオン交換樹脂との複合体の被覆粒子を含有し、ここで、(i)該粒子は少なくとも1つの生体接着性物質を含有する生体接着性コーティング層で被覆されており、(ii)該被覆粒子はさらに、生体接着性層を覆うように位置していて少なくとも1つの腸溶コーティング物質を含有する腸溶コーティング層を含み、そして、(iii)該被覆粒子の少なくとも一部はさらに、複合体と生体接着性層の間に位置していて少なくとも1つの放出改変物質を含有する放出改変コーティング層を含む。
【0075】
特に好ましい実施態様によると、被覆粒子は、該被覆粒子の総重量に基づいて:
(a)1〜50重量%、とりわけ5〜40重量%、好ましくは10〜20重量%の少なくとも1つの活性薬物;
(b)1〜50重量%、とりわけ10〜35重量%、好ましくは15〜25重量%のイオン交換樹脂;
(c)0〜50重量%、とりわけ1〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜30重量%の放出改変物質;
(d)0.5〜30重量%、とりわけ1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の生体接着性物質;ならびに、
(e)0〜80重量%、とりわけ1〜80重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%の腸溶コーティング物質;
を含有する。
【0076】
該組成物は、活性薬物の迅速な上昇をもたらすために、被覆粒子の外側に、少なくとも1つの活性薬物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物をさらに含有することができる。該活性薬物は、該被覆粒子に含まれる活性薬物と同一であることも異なることもできる。該活性薬物は適宜、腸溶性物質で被覆され得る。
【0077】
本発明による組成物は、治療域が狭い活性薬物(例えば、レボドパ、カルビドパ、ベンセラジドおよび/またはエンタカポン)にとりわけ適している。
【0078】
とりわけ好ましい実施態様において、該組成物は、20:1〜1:1、好ましくは15:1〜2:1、最も好ましくは10:1〜4:1の範囲のレボドパおよびカルビドパもしくはベンセラジドを含有する。
【0079】
最終的な製剤において、上記の様々な形態の被覆粒子に加えて、他の適切な物質を混合することができる。これらの他の物質を、イオン交換樹脂に結合させ、必要に応じて上記のコーティング層の一部または全てで被覆して、目的の溶解プロファイルをもたらすことができるか、あるいは、それらは遊離した未変性の(free native)固体形態または液体形態であることができる。
【0080】
本発明の組成物は、賦形剤をさらに含有することができる。適切なタイプの賦形剤としては、吸着剤、抗酸化剤、酸性化剤、アルカリ化剤、緩衝剤、着色剤、香味剤(flavorant)、甘味剤、抗接着剤(antiadherent)、結合剤、希釈剤、直打用賦形剤、崩壊剤、流動促進剤(glidant)、滑沢剤、乳白剤および/または光沢剤(polishing agent)が挙げられる。
【0081】
用語「抗酸化剤」は、一般的に、酸化を阻害することによって酸化過程による活性薬物の変質を防ぐために用いられる賦形剤を言う。適切な抗酸化剤としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムおよびメタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite)が挙げられる。
【0082】
用語「甘味剤」は、一般的に、医薬組成物に甘味を与えるために用いられる賦形剤を言う。適切な甘味剤としては、アスパルテーム、ブドウ糖、グリセリン、マンニトール、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびスクロースが挙げられる。
【0083】
用語「着色剤」は、一般的に、医薬組成物に色をつけるために用いられる賦形剤を言う。適切な着色剤としては、FD&C 赤No.3、FD&C 赤No.20、FD&C 黄No.6、FD&C 青No.2、D&C 緑No.5、D&C オレンジNo.5、D&C 赤No.8、他のF.D. & C. 色素、カラメル、赤色酸化鉄、および天然の着色剤(例えば、ブドウ果皮抽出物、ビートレッド粉末、β-カロテン、アナトー、カルミン、ターメリック、またはパプリカ)が挙げられる。用いられる着色剤の量は、要望に応じて変えられうる。
【0084】
用語「香味剤」は、一般的に、医薬組成物に好ましい香味(およびしばしば匂いも)を与えるために用いられる賦形剤を言う。適切な香味剤としては、一般的に、合成芳香油、香味芳香族化合物(flavoring aromatic)、天然油、植物全体またはその一部(例えば葉、花、果実、またはそれらの組み合わせ)からの抽出物が挙げられる。例としては、桂皮油、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、チョウジ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、タイム油、セダーリーフ油(cedar leave oil)、ナツメグ油、セージ油、苦扁桃油、およびカッシア油が挙げられる。他の有用な香味剤としては、バニラ、柑橘類果実油(例えばレモン、オレンジ、ブドウ(grape)、ライムまたはグレープフルーツ油)、および果実エッセンス(例えば、リンゴ、セイヨウナシ、モモ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップルまたはアンズエッセンス)が挙げられる。特に有用であることが分かっている香味剤としては、市販の、オレンジ、ブドウ、サクランボおよびバブルガム香味剤ならびにそれらの混合物が挙げられる。香味剤の量は、望ましい官能効果を含む多くの因子に依存し得て、当業者により必要に応じて適応され得る。特に好ましい香味剤は、ブドウおよびサクランボ香味剤、ならびに柑橘類果実香味剤(例えばオレンジ香料)である。
【0085】
可塑剤もまた、組成物のコーティング層またはコアに用いられるポリマーの特性および特徴を修飾するために、医薬組成物に含まれ得る。用語「可塑剤」は、一般的に、医薬組成物の成分(例えばポリマーまたは結合剤)を可塑化するかまたは軟化するために用いられる化合物を言う。適切な可塑剤としては、一般的に、低分子量ポリマー、オリゴマー、コポリマー、油、有機小分子(small organic molecule)、脂肪族ヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール、エステル系可塑剤、グリコールエーテル、ポリプロピレングリコール、マルチブロックポリマー、単一ブロック(single-block)ポリマー、低分子量ポリエチレングリコール、クエン酸エステル系可塑剤、トリアセチン、プロピレングリコールおよびグリセリンが挙げられる。また、そのような可塑剤として、好ましくは、エチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、スチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよび他のポリエチレングリコール化合物、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルビトールラクテート、酪酸エチル、酪酸ブチル、グリコール酸エチル、クエン酸アセチルトリブチル(acetyltributylcitrate)、最も好ましくは、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチルおよびグリコール酸アリルも挙げられ得る。全てのそのような可塑剤は、一般的に、市販されている。また、可塑剤の組み合わせを本発明の製剤に用いることができることも意図される。PEGベースの可塑剤は、市販されているか、あるいは、様々な方法(例えば、”Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications” (J. M. Harris, Ed.; Plenum Press, NY)に記載されている方法)により製造することができる。
【0086】
本発明の組成物には、油、例えば、固定油(例えば、ピーナッツ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、最も好ましくはオリーブ油)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、ステアリン酸およびイソステアリン酸)、脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド、およびアセチル化脂肪酸グリセリド)も含まれ得る。任意のさらなる成分としては、医薬的に適切な界面活性剤、懸濁化剤または乳化剤の添加の有無にかかわらず、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ヘキサデカノール、グリセロールおよびプロピレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)450)、石油炭化水素(例えば、鉱物油およびワセリン)、水またはそれらの混合物が挙げられる。
【0087】
石鹸および合成洗剤を、界面活性剤として、および洗剤組成物のビヒクルとして用いることができる。適切な石鹸としては、脂肪酸のアルカリ塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩が挙げられる。適切な洗剤としては、カチオン性洗剤(例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジウムおよびアルキルアミンアセテート)、アニオン性洗剤(例えば、アルキル、アリールおよびオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリド硫酸塩、ならびにスルホコハク酸塩)が挙げられる。好ましい洗剤としては、両性洗剤(例えば、アルキル-β-アミノプロピオン酸塩および2-アルキルイミダゾリン第四級アンモニウム塩ならびにそれらの混合物)、最も好ましくは、非イオン性洗剤(例えば、脂肪酸アミン(fatty amine)酸化物、脂肪酸アルカノールアミドおよびポリ(オキシエチレン)-ブロック-ポリ(オキシプロピレン)コポリマーが挙げられる。
【0088】
目的の活性薬物の放出特性の最適化のために、該組成物に様々な他の成分を加えることができ、該他の成分としては、グリセリルモノステアレート、ナイロン、酢酸酪酸セルロース、d,l-ポリ(乳酸)、1,6-ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、デンプン、誘導体化デンプン、アセチル化モノグリセリド、ゼラチンコアセルベート(gelatin coacervate)、ポリ(スチレン-共-マレイン酸)、グリコワックス(glycowax)、カスターワックス、ステアリルアルコール、グリセロールパルミトステアレート、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、1,3-ブチレン-グリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレートおよびメタクリレートヒドロゲルが挙げられる。
【0089】
医薬製剤の分野で用いられる化合物は様々な機能または目的を果たしうることが理解されるべきである。従って、本明細書において指定された化合物が一度だけ言及される場合であっても2つ以上の用語を定義するために用いられる場合であっても、その目的または機能は、単にその指定の目的または機能に限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0090】
本発明の医薬組成物は、薬学分野で公知のいずれの形状または形態を想定することができる。とりわけ、棒、プレート、回転放物体、回転楕円体などであり得る。好ましくは、該組成物は、カプセル剤(例えば、硬もしくは軟ゼラチンまたは植物性カプセル剤)、錠剤、長方形錠剤、カプレット、丸剤、球形の剤(sphere)、散剤、または液体懸濁剤(例えば、オリーブ油、グリセリン、ポリエチレングリコールまたは他の適切な非イオン性ビヒクルを用いた無水(unhydrous)懸濁剤)の形態である。最も好ましくは、該組成物はカプセル剤の形態である。該組成物の最終形態はまた、装飾目的、識別目的および/または他の目的のために、表面のマーキング、切り込み(cutting)、溝、文字および/または数字を含み得る。該剤形は、望ましい光沢、色、味または他の美的特徴をもたらすための仕上げ塗りを含み得る。仕上げ塗りの調製に適した物質は、一般的に、当分野において公知である。
【0091】
本発明による組成物のさらに好ましい実施態様は:
1) 4:1の重量比のレボドパ/カルビドパ、とりわけレボドパ 50 mg/カルビドパ 12.5 mg(ここで、カルビドパは未変性の粉末(native powder)の即放性形態であって、レボドパは生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子の形態である)
2) 4:1の重量比のレボドパ/カルビドパ、とりわけレボドパ 100 mg/カルビドパ 25 mg(ここで、カルビドパは未変性の粉末の即放性形態であって、レボドパは生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子と放出制御性で生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子との混合物の形態である)
3) 4:1の重量比のレボドパ/カルビドパ、とりわけレボドパ 200 mg/カルビドパ 50 mg(ここで、カルビドパは未変性の粉末の即放性形態であって、レボドパは生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子と放出制御性で生体接着性の腸溶のコーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子との混合物の形態である)
4) 5〜25:20:1〜5の重量比のレボドパ/エンタカポン/カルビドパ、とりわけレボドパ 50〜250 mg、エンタカポン 200 mg、カルビドパ 10〜50 mg(ここで、レボドパは、生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子と放出制御性で生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子との混合物の形態であって、エンタカポンおよびカルビドパは、生体接着性の腸溶コーティング層で被覆されたイオン交換樹脂/薬物粒子の形態であるか、または未変性の粉末形態である)
を含有する経口製剤、とりわけ硬植物性カプセル剤に代表される。
【0092】
別法として、上記の実施態様において、カルビドパをベンセラジドで置き換えることができる。
【0093】
本発明の経口医薬組成物は、当分野で一般的に公知の方法によって製造され得る。該組成物の典型的な製造方法は、以下の工程を含む:
(i)イオン交換樹脂を活性薬物に接触させて活性薬物/イオン交換樹脂複合体を得る工程;
(ii)適宜、工程(i)の複合体を、放出改変物質を含有するコーティング層で被覆する工程;
(iii)工程(i)の複合体または工程(ii)の被覆された複合体を、生体接着性物質を含有するコーティング層で被覆する工程;ならびに、
(iv)適宜、工程(iii)の被覆された複合体を、腸溶コーティング物質を含有するコーティング層で被覆する工程。
【0094】
工程(i)において、該活性薬物を、好ましくは、樹脂の水性懸濁液と混合し、得られた複合体を洗浄して乾燥させる。該樹脂への活性薬物の吸着は、反応媒質のpHの変化を測定することによってか、あるいは対イオンおよび/または活性薬物の濃度の変化を測定することによって検出され得る。典型的には、該複合体を、アルコール(例えばエタノールおよび/または水)で洗浄していずれの未結合の活性薬物を確実に除去する。該複合体を、通常、トレーにおいて室温または高温で風乾させる。該結合は、例えば、当分野で公知のバッチ法またはカラム法の通りに実施され得る。
【0095】
一般的に、樹脂への活性薬物の結合は、4つの一般的な反応型のうちの1つに従うことができる。カチオン交換樹脂に塩基性の活性薬物を結合させる場合、これらは:(a)樹脂(塩形態, 例えばNa+-形態)+活性薬物(塩形態)、(b)樹脂(塩形態, 例えばNa+-形態)+活性薬物(遊離塩基)、(c)樹脂(H+-形態)+活性薬物(塩形態)、および(d)樹脂(H+-形態)+活性薬物(遊離塩基)である。アニオン交換樹脂に酸性の活性薬物を結合させる場合、これらは:(a)樹脂(塩形態, 例えばCl--形態)+活性薬物(塩形態)、(b)樹脂(塩形態, 例えばCl--形態)+活性薬物(遊離酸)、(c)樹脂(OH--形態)+活性薬物(塩形態);および(d)樹脂(OH--形態)+活性薬物(遊離酸)である。(d)を除いて、これらの反応は全て、樹脂上の結合部位について対イオンと活性薬物が競合し、それによって平衡状態で結合した活性薬物の量が減らされることにより形成された副生成物を伴う。従って、酸性および塩基性の活性薬物の両者において、活性薬物の樹脂への真の化学量論的結合は、反応(d)によってのみ達成される。
【0096】
工程(ii)〜(iv)において、通常のコーティング溶媒およびコーティング方法(例えば、流動層コーティングまたはスプレーコーティング)を用いて該粒子を被覆することができる。流動層コーティングの技法は、例えば、US 3,089,824、US 3,117,027およびUS 3,253,944において教示されている。該コーティングは、通常、活性薬物およびイオン交換樹脂の複合体に塗布されるが、別法として、活性薬物と複合体化される前の樹脂に塗布することができる。該コーティング混合物は、典型的には、コーティング溶媒中の溶液、分散液または乳濁液として塗布される。適切なコーティング溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n-ブチルアセテート、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、塩化メチレン、塩化エチレン、トリクロロエチレン、テトラヒドロフラン、2-ニトロプロパン、トルエン、キシレン、それらの混合物(例えば塩化メチレンとアセトンの混合物)が挙げられる。メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n-ブチルアセテートおよび酢酸エチルが好ましい。
【0097】
本発明は、以下の実施例の方法によってさらに説明される。
【実施例】
【0098】
レボドパの放出を、分光測定により280 nmで測定した。
【0099】
実施例1
A)レボドパ薬物樹脂複合体(LDRC)の製造
ジビニルベンゼンと架橋されたポリスチレンスルホン酸ナトリウムカチオン交換樹脂(400 g)(125-400 メッシュ)を、1時間ゆっくりと撹拌しながら、1200 mlの脱イオン水と混合した。該樹脂を沈殿させ、水をデカントした。300 mlの濃HClを1200 mlの脱イオン水に加えて混合することによって希HClを調製した。該樹脂を、250 mlの希HClと30分間混合した後、沈殿させ、上清をデカントし、全ての希HClを使い切るまでこの工程を繰り返した。該樹脂を、500 mlの脱イオン水と10分間混合し、樹脂を沈殿させ、上清をデカントするという工程を、8回または上清がリトマス試験紙で中性になるまで繰り返すことによって、洗浄した。
【0100】
300 mlのエタノールおよび300 mlの脱イオン水の混合液を該樹脂に加え、250 gのレボドパを加え、30分毎に1分間混合しながら4時間、該樹脂で処理した。該樹脂を終夜沈殿させた後、上清をデカントした。該樹脂を、300 mlの水/エタノール(3:2)混合液と混合し、樹脂を沈殿させ、上清をデカントし、そして上清をエバポレートした後に顕微鏡下でレボドパ結晶が見られなくなるまでこの工程を繰り返すことによって、洗浄した。得られたレボドパ薬物樹脂複合体を、炉において60℃で乾燥させた。水分含量(LOD [乾燥減量]): 5 ± 0.5 重量%, レボドパ含量 (HPLC): 40 ± 1 重量%. 得られた複合体は、空気への曝露に対して、室温で少なくとも6か月間安定であることが分かった。
【0101】
複合体中におけるレボドパのイオン結合を、脱イオン水中のLDRCのスラリーに漸増量の電解質(NaCl)を加えることによって試験した。レボドパの放出を図1に示す。
【0102】
B)放出改変コーティング層でのコーティング
【表1】

レボドパ薬物樹脂複合体(LDRC)を流動体化し、Mini-Glattコーティング装置を用いてコーティング分散液をスプレーし、そのままで45〜50℃まで乾燥させた。該生成物を、40メッシュのステンレススチールスクリーンによって篩い分けした。顕微鏡検査によって、中程度の凝集を有する均一に被覆された粒子が示された。実施例1B-2〜1B-4で得られた被覆された生成物を、60℃で2時間、さらに保存処理(cured)した。
実施例1B-1および1B-3で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイル(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 5.5, イオン強度 0.075)を図2および3に示す。実施例1B-2〜1B-4で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイル(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 6.0, イオン強度 0.075)を図4に示す。
【0103】
C)生体接着性コーティング層でのコーティング
【表2】

*アリルエーテルおよびペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸の高分子量ポリマー
レボドパ薬物樹脂複合体(LDRC)を、流動体化し、Mini-Glattコーティング装置を用いてコーティング分散液をスプレーし、そのままで50℃まで乾燥させた。該生成物を、40メッシュのステンレススチールスクリーンによって篩い分けした。顕微鏡検査によって、中程度の凝集を有する均一な被覆粒子が示された。
実施例1C-3および1C-5で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中の溶解プロファイル(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, pH 6.0, イオン強度 0.075)を図5および6に示す。
【0104】
D)腸溶コーティング層でのコーティング
【表3】

*市販のメタクリル酸コポリマーおよび水中での分散を容易にするために作製された分散剤
レボドパ薬物樹脂複合体(LDRC)を流動体化し、Mini-Glattコーティング装置を用いてコーティング分散液をスプレーし、そのままで55℃まで乾燥させた。該生成物を、40メッシュのステンレススチールスクリーンによって篩い分けした。顕微鏡検査によって、中程度の凝集を有する均一な被覆粒子が示された。
実施例1D-2〜1D-4で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイル(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 0.1 N HCl, 1〜12時間: リン酸バッファー pH 6.25, イオン強度 0.075)を図7に示す。実施例1D-1および1D-4で得られた被覆LDRCの、リン酸バッファー中における溶解プロファイル(USP メソッド #2, パドル回転速度 50 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 0.1 N HCl, 1〜12時間: リン酸バッファー pH 6.25, イオン強度 0.075)を図8に示す。
【0105】
E)レボドパおよびカルビドパを含有する硬ゼラチンカプセル
【表4】

1つ以上のレボドパ薬物樹脂複合体を、記載の通り、カルビドパおよびステアリン酸マグネシウムもしくはタルカムと乾燥混合させた。得られた混合物を硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0106】
F)レボドパおよびカルビドパを含有する錠剤
【表5】

レボドパ薬物樹脂複合体を、記載の通り、カルビドパおよび賦形剤と乾燥混合させた。得られた混合物を錠剤へと圧縮した。
【0107】
実施例2〜5
A)薬物樹脂複合体(DRC)の製造
2A)ロピニロール薬物樹脂複合体(RoDRC)の製造
ジビニルベンゼンと架橋されたポリスチレンスルホン酸ナトリウムカチオン交換樹脂(100 g)(125〜400メッシュ)を500 mlの脱イオン脱気水に加え、時折アルゴン下において、1時間混合した。得られたスラリーを250 mlのガラスカラムに移し、200 mlの脱イオン脱気水で洗浄した。40 gのロピニロール塩酸塩を300 mlの脱イオン脱気水に溶解させ、10 ml/分の速度で該カラムに通した。該カラムを1000 mlの脱イオン脱気水で洗浄した。得られた薬物樹脂複合体をカラムから取り出し、まず濾紙で、次いでシリカによって減圧で、5重量%の水分含量まで乾燥させた。
得られた非被覆ロピニロール薬物樹脂複合体の溶解プロファイル(RoDRC; USP メソッド #2, パドル回転速度 75 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 0.1 N HCl, 1〜10時間: バッファー混合物 [500 ml 0.1 N HCl + 500 ml リン酸バッファー], pH 5.6, イオン強度 0.075)を図9に示す。
【0108】
3A)アレンドロネート薬物樹脂複合体(AlDRC)の製造
50 gのコレスチラミンアニオン交換樹脂(Cl--形態, 99% < 100 μ, 56% < 50 μ)を、5 x 200 mlの脱気水で洗浄した。5時間後に、最後の水部分をデカントした。300 mlの脱気水および16.25 gのアレンドロン酸ナトリウムを樹脂に加えた。得られたスラリーを室温で60分間混合し、遠心分離して、溶媒をデカントした。計65 gのアレンドロン酸ナトリウムが使用されるまで、これをもう3回繰り返した。得られた薬物樹脂複合体を3 lの水で洗浄し、まず濾紙で、次いでシリカによって減圧で、5重量%の水分含量まで乾燥させた。
【0109】
4A)リスペリドン薬物樹脂複合体(RiDRC)の製造
ジビニルベンゼンと架橋されたポリスチレンスルホネートカチオン交換樹脂(H+-形態)(100 g)を、500 mlの脱イオン脱気水で30分間洗浄した。水をデカントし、該樹脂を300 mlの96%エタノールで洗浄した。100 gのリスペリドンを300 mlの96%エタノールに加えた。該スラリーを60℃まで加熱し、該樹脂に加え、アルゴン下において12時間混合した。溶媒をデカントし、該樹脂を5 x 250 mlの96%エタノールで洗浄した。最後のエタノール部分を、アルゴン下で終夜放置した。該エタノールをデカントし、得られた薬物樹脂複合体を、まず濾紙で、次いでシリカによって減圧で、5重量%の水分含量まで乾燥させた。
【0110】
5A)オランザピン薬物樹脂複合体(OzDRC)の製造
ジビニルベンゼンと架橋されたポリスチレンスルホネートカチオン交換樹脂(H+-形態)(100 g)を、500 mlの脱気した96%エタノールで洗浄した。該エタノールをデカントした。80 gのオランザピンを、40℃にて500 mlの脱気した96%エタノールに分散させ、該樹脂に加えた。得られたスラリーを、40℃でアルゴン下において5時間混合した後、室温で終夜放置した。溶媒をデカントし、得られたオランザピン薬物樹脂複合体を10 x 500 mlの脱気した96%エタノールで洗浄した。得られた薬物樹脂複合体を、まず濾紙で、次いでシリカによって減圧で、5重量%の水分含量まで乾燥させた。
【0111】
B)放出改変コーティング層でのコーティング
2B)放出改変コーティング層でのRoDRCのコーティング
【表6】

実施例1Bと同様に、ロピニロール薬物樹脂複合体(RoDRC)を流動体化し、Mini-Glattコーティング装置を用いてコーティング分散液をスプレーした。
【0112】
3B)放出改変コーティング層でのAlDRCのコーティング
25 gのエチルセルロースを、30 mlの99%エタノールおよび0.5 gのグリセリン(可塑剤として用いられる)と十分に混合した。得られた混合液を、実施例3Aで製造した40 gのアレンドロネート薬物樹脂複合体に加え、該混合液が均質になるまで混合した。該湿塊を、425 μの篩に押し通し、60℃で2時間乾燥させた。得られた顆粒を、425 μの篩で篩い分けした。
【0113】
C)生体接着性コーティング層でのコーティング
【表7】

*アリルエーテルおよびペンタエリスリトールと架橋したアクリル酸の高分子量ポリマー

実施例1Cと同様に、薬物樹脂複合体を流動体化し、Mini-Glattコーティング装置を用いて、コーティング分散液をスプレーした。
【0114】
D)腸溶コーティング層でのコーティング
【表8】

*市販のメタクリル酸コポリマーおよび水中での分散を容易にするために作製された分散剤

実施例1Dと同様に、薬物樹脂複合体を流動体化し、Mini-Glattコーティング装置を用いて、コーティング分散液をスプレーした。
篩い分けの前および後の実施例2Dで得られた被覆ロピニロール薬物樹脂複合体の、リン酸バッファー中における溶解プロファイル(USP メソッド #2, パドル回転速度 75 rpm, 37℃, 溶解媒質 0〜1時間: 500 ml 0.1 N HCl, 1〜10時間: バッファー混合物 [500 ml 0.1 N HCl + 500 ml リン酸バッファー], pH 5.6, イオン強度 0.075)を図9に示す。
実施例3D、4Dおよび5Dで得られた被覆薬物樹脂複合体の溶解プロファイルを、図10〜12に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12