(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144253
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】タンタル製の複数レベル蒸留るつぼ
(51)【国際特許分類】
F27B 14/10 20060101AFI20170529BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20170529BHJP
C22B 9/02 20060101ALI20170529BHJP
C22B 59/00 20060101ALI20170529BHJP
B01D 3/00 20060101ALN20170529BHJP
【FI】
F27B14/10
B01D5/00 Z
C22B9/02
C22B59/00
!B01D3/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-504149(P2014-504149)
(86)(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公表番号】特表2014-519000(P2014-519000A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】CN2012073688
(87)【国際公開番号】WO2012139484
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】201110089343.6
(32)【優先日】2011年4月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512114707
【氏名又は名称】チャンシー レア アース アンド レア メタルズ タングステン グループ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100062982
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ピング
(72)【発明者】
【氏名】タオ、リミン
(72)【発明者】
【氏名】クスウ、クイウフア
【審査官】
市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−036427(JP,A)
【文献】
特開平08−085833(JP,A)
【文献】
特表2008−509872(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0032434(US,A1)
【文献】
特表2012−512797(JP,A)
【文献】
特開2003−073754(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/119720(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0023660(US,A1)
【文献】
特開2001−303149(JP,A)
【文献】
特開2003−147447(JP,A)
【文献】
特開昭60−255102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 11/10−15/20
F27B 5/00− 7/42
C22B 1/00−61/00
B01B 1/00− 1/08
B01D 1/00− 8/00
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼ加熱用熱発生区域と、この熱発生区域内に設けたるつぼ本体と、熱絶縁板と、受容フードと、上記熱発生区域における上記るつぼ本体の高さを調節するため上記るつぼ本体の底部に積重される複数の間隔片とより成り、上記熱絶縁板が上記るつぼ加熱用熱発生区域の上方で上記るつぼ本体の上部に嵌合され、上記受容フードが上記るつぼ本体の頂部において上記熱絶縁板より上方に設けられ、上記るつぼ本体が、タンタル製の小径の頂部と大径の底部とを有するトランペット様の形状であり、上記熱絶縁板が高耐熱性で良熱絶縁性であり、積重可能な複数の熱絶縁板であることを特徴とするタンタル製の複数レベル蒸留るつぼ。
【請求項2】
上記熱絶縁板が高アルミナれんが、コランダム板、またはタンタルであることを特徴とする請求項1記載のタンタル製の複数レベル蒸留るつぼ。
【請求項3】
上記るつぼ本体の厚さが2〜3mmであることを特徴とする請求項1記載のタンタル製の複数レベル蒸留るつぼ。
【請求項4】
上記るつぼ本体の頂部開口の内径が100〜250mm、底部内径が300〜500mm、高さが250〜400mmであることを特徴とする請求項1記載のタンタル製の複数レベル蒸留るつぼ。
【請求項5】
上記熱絶縁板の頂部と上記るつぼ本体の底部間の温度差が上記熱絶縁板の数を変えることによって調節されることを特徴とする請求項1記載のタンタル製の複数レベル蒸留るつぼ。
【請求項6】
熱発生区域に対する上記るつぼ本体の高さが上記るつぼ本体の底部に積重される間隔片の数を増、減することによって調節され、その結果、熱絶縁板の頂部とるつぼ本体の底部間の温度差が調節されることを特徴とする請求項1記載のタンタル製の複数レベル蒸留るつぼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レアアースメタルの真空蒸留及び精錬のために用いられる、特別材料であるタンタルで作られた多段または複数レベル蒸留及び精錬るつぼに関するものである。
本発明の明細書に示す"多段"または"複数レベル"とは、熱発生器/熱源内に設けられたるつぼの深さが異なり、るつぼの上部出口と底部の温度が互いに異なることを指す。
複数レベルの蒸留は、複数の温度差を形成することによって成される。ここでいう異なる温度差とは異なる金属を作るために要求される温度差を示す。
本発明の明細書で示す"温度傾度"とは熱絶縁板の頂部とるつぼの底部間の温度差を示す。
【背景技術】
【0002】
真空蒸留は異なるレアアースメタルの異なる蒸気圧と、異なる蒸発率と、異なる温度における不純物エレメントをベースとして行ない、レアアースメタルを真空蒸留によって不純物エレメントから分離できる。
公知技術においては、所定の深さの熱発生機内にるつぼが置かれるが、るつぼの上方出口とるつぼの底部間の温度差を変えるのは容易ではない。従って、異なるるつぼを異なる金属を作るために用いる。従って、異なるサイズの一連のるつぼを用意しなければならない。然しながら、タンタルのるつぼは高価である。更に、るつぼの出口のサイズは比較的に小さく、大きなサイズの金属ブロックをるつぼに入れることはできず、蒸留の前に砕かなければならない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、熱発生区域内のるつぼの深さを調節でき、種々のレアアースを溶融し、蒸留するのに好適な異なる温度差をるつぼの上部出口と底部間に形成でき、従って種々のレアアースメタルを蒸留するのに使用できるタンタル製の多段蒸留るつぼを得るにある。
本発明の一実施例におけるタンタル製の多段蒸留るつぼは、るつぼ本体と、熱絶縁板と、受容フードとより成り、上記熱絶縁板はるつぼ本体の
頂部に嵌合され、受容フードは上記るつぼ本体の上
端に取り付けられる。上記るつぼ本体はタンタル製であり、上部は小径で、底部は大径でトランペット形状をなし、上記熱絶縁板は耐高温性で熱絶縁性が良い耐熱材料製であり、上記熱絶縁板は使用のため積重できる複数の熱絶縁板を含み、るつぼ本体の底部に積重できる複数の間隔片
またはパッドが熱発生区域内に設けられている。
上記耐熱材料は高アルミナれんが、コランドム板、またはタンタル材料とするのが好ましい。
上記るつぼ本体の厚さは2〜3mmにするのが好ましい。
上記るつぼ本体の頂部開口の
内径は100〜250mm、底部内径は300〜500mm、高さは250〜400mmとするのが好ましい。
上記熱発生区域内のるつぼ本体の高さは間隔片の数を増、減することによって調節し、熱絶縁板の頂部とるつぼ本体の底部間の温度差を調節できるようにするのが好ましい。レアアースメタルは高温において高い化学活性を示し、他の物質と容易に反応するようになるため、本発明の多段蒸留るつぼをレアメタルであるタンタルによって作る。タンタルは高い化学安定性と耐腐食性能を有するため、本発明の蒸留及び精錬の間に生ずる不純物に基因する製品の再汚染の可能性を防ぐことができる。
本発明の多段蒸留るつぼは傾斜面と、小径の頂部と大径の底部とを有するトランペット形状をなし、輻射熱を遮断でき、るつぼ本体の上端における受容フードと熱絶縁板より下方のるつぼ本体間に温度差が形成される。異なる蒸留金属は融点が異なる。従って、受容フード内(凝縮区域)の温度はるつぼ本体内の温度と異なるようにすることが望まれる。本発明のタンタル製の多段蒸留るつぼのるつぼ本体は、熱発生器内に設けられ、るつぼ本体の上部は耐熱材料(熱絶縁板)によってるつぼ本体の下部から絶縁され、輻射熱と伝導熱は遮断され、この結果、頂部の受容フード内に凝縮区域が形成され、蒸留された金属は頂部凝縮区域の受容フード内に受容される。
本発明のタンタル製の多段蒸留るつぼにおいては、るつぼ本体の(熱発生器の内側)の深さ/高さは、間隔片の数を増、減することによって調節でき、及び/または凝縮−受容区域の温度は熱絶縁板の数を変えることによって調節され、異なる融点及び蒸気圧の金属を蒸留し、精錬できるようになる。
本発明のタンタル製多段蒸留るつぼの使用に際しては、熱発生器内に置かれ、加熱されたるつぼの底部に、蒸留し精錬されるべきレアアースメタルを置く。低融点、高蒸気圧のレアアースメタルは凝縮区域内に置かれ、低融点、高蒸気圧のレアアースメタルは凝縮区域内に置き、高融点、低蒸気圧の金属不純物をるつぼから取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本発明のタンタル製の多段蒸留るつぼの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
図1に示すように、本発明のタンタル材料の多段または複数レベル蒸留るつぼは、るつぼ本体1と、複数の熱絶縁板2と、受容フード3とより成る。熱絶縁板2の中央孔はるつぼ本体1の
頂部に嵌合し、一方、受容フード3は熱絶縁板2の上方に
おいて上記つるぼ本体1の上端に設ける。
るつぼ本体1はパゴダまたはホーン形状とし、即ち、小径頂部と大径底部とを有するトランペット形状とし、その上部には1つまたはそれ以上の熱絶縁板2を設け、
るつぼ本体1の
上端には受容フード3を取り付ける。るつぼ本体1は厚さ2〜3mmのタンタルにより作る。トランペット状のるつぼ本体1の頂部開口の内径は100〜250mmとし、底部内径は300〜500mm、高さは250〜400mmとし、小径の頂部と大径底部間は傾斜面とし、輻射熱をブロックし、温度傾度が生ずるようにする。
熱発生区域または熱源6内の本発明の多段蒸留るつぼの使用においてはるつぼ本体の高さ位置を間隔片5の数を増、減することによって調節し、異なる融点または異なる蒸気圧の金属を蒸留し、精錬できるようにする。凝縮−受容区域の温度は熱絶縁板2の数を変えることによって調節する。蒸留し、精錬すべきレアアースメタル4を、加熱すべき熱源6内に挿入したるつぼ本体の内底上に置く。融点が低く、蒸気圧の高いレアアースメタルは受容フード3内の温度傾度の異なる凝縮区域に
集めることができる。一方、融点が高く、蒸気圧の低い
金属不純物はるつぼ本体内に
溜める。
本発明においては、るつぼ本体1と凝縮区域(受容フード3)間に温度差を形成せしめ、るつぼ本体の頂部と底部間にトランペット形状の傾斜面を形成せしめ、高温に耐える熱絶縁板を用いてるつぼ本体からの輻射熱をブロックする手段を用いてるつぼ本体内の温度を受容フード内の温度と異ならしめる。
るつぼ本体の頂部は耐熱材で塞ぎ熱の輻射と伝達を防ぎ、凝縮区域を上部に形成し、蒸留金属を凝縮区域上部内の受容フードで受け取るようにする。
融点及び蒸気圧の異なる金属をるつぼによって蒸留するときは、
A)加熱区域内のるつぼ本体の
位置を間隔片の数を増、減することによって調節する、及びまたは、B)凝縮物受容フード内の温度
は熱絶縁板の数を増、減することによって規制する。