(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144254
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】ポリ−N−アセチルグルコサミンナノファイバを用いた疾患の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/715 20060101AFI20170529BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20170529BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20170529BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20170529BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20170529BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20170529BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20170529BHJP
A61K 36/02 20060101ALI20170529BHJP
A61K 31/722 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
A61K31/715
A61P31/22
A61P1/04
A61P17/00
A61P29/00
A61K9/70
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/12
A61L27/20
A61K36/02
A61K31/722
【請求項の数】36
【全頁数】114
(21)【出願番号】特願2014-505398(P2014-505398)
(86)(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公表番号】特表2014-514309(P2014-514309A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】US2012033782
(87)【国際公開番号】WO2012142581
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】61/476,237
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501250337
【氏名又は名称】マリン ポリマー テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルナキス,ジョン,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】フィンキールシュタイン,セルジオ
【審査官】
鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】
Abstr. Paper. Am. Chem. Soc.,2010年,Vol.239,p.527-CHED
【文献】
J. Immunol.,2006年,Vol.177,pp.8658-8666
【文献】
J. Allergy Clin. Immunol.,2007年,Vol.119 No.4,pp.1022-1025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/715
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/107
A61K 9/12
A61K 9/14
A61K 9/70
A61K 31/722
A61K 36/02
A61L 27/20
A61P 1/04
A61P 17/00
A61P 29/00
A61P 31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HSV感染を有するヒト対象に、HSV感染の治療のために局所投与するための量のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンの短ファイバ(sNAGナノファイバ)を含む組成物であって、
(i)50%を超える上記sNAGナノファイバは、長さが約1から15μmの間であるか、あるいは、
(ii)上記sNAGナノファイバの長さが約15μm未満であり、上記sNAGナノファイバは、80%以上のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、組成物。
【請求項2】
上記量が、以下の(i)〜(iv)のうちの1つ以上を充足するための効果的な量である、請求項1に記載の組成物。
(i)上記HSV感染又は上記HSV感染の1以上の症状の重症度の軽減、
(ii)上記HSV感染又は上記HSV感染の1以上の症状の持続時間の短縮、
(iii)上記HSV感染の負荷又はHSVの数の削減、及び、
(iv)上記HSV感染に関連する1以上の症状の根絶。
【請求項3】
HSV感染によって引き起こされる疾患が進行する危険性のあるヒト対象に、HSV感染によって引き起こされる疾患を予防するために局所投与するための量のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンの短ファイバ(sNAGナノファイバ)を含む組成物であって、
(i)50%を超える上記sNAGナノファイバは、長さが約1から15μmの間であるか、あるいは、
(ii)上記sNAGナノファイバの長さが約15μm未満であり、上記sNAGナノファイバは、80%以上のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、組成物。
【請求項4】
上記量は、上記HSV感染によって引き起こされる疾患、及び/又は、上記HSV感染によって引き起こされる疾患の1以上の症状の発生、進行または再発を防止するために効果的な量である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
HSV感染によって引き起こされる疾患を有するヒト対象に、HSV感染によって引き起こされる疾患の治療のために局所投与するための量のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンの短ファイバ(sNAGナノファイバ)を含む組成物であって、
(i)50%を超える上記sNAGナノファイバは、長さが約1から15μmの間であるか、あるいは、
(ii)上記sNAGナノファイバの長さが約15μm未満であり、上記sNAGナノファイバは、80%以上のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、組成物。
【請求項6】
上記量が、以下の(i)〜(iv)のうちの1つ以上を充足するための効果的な量である、請求項5に記載の組成物。
(i)上記HSV感染によって引き起こされる疾患又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患の1以上の症状の重症度の軽減、
(ii)上記HSV感染によって引き起こされる疾患又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患の1以上の症状の持続時間の短縮、
(iii)上記HSV感染によって引き起こされる疾患又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患の1以上の症状の進行阻止、及び、
(iv)上記HSV感染によって引き起こされる疾患に関連する症状数の減少。
【請求項7】
(i)50%を超える上記sNAGナノファイバが、長さが約1から10μmの間であるか、あるいは、
(ii)上記sNAGナノファイバの長さが約10μm未満であり、上記sNAGナノファイバは、80%以上のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記HSV感染又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患は、局所的なHSV感染又は局所的なHSV感染によって引き起こされる疾患である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記対象の皮膚又は粘膜に投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記HSV感染又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患の症状のある部位又はその近傍に局所投与される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
上記HSV感染又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患の症状は、発疹、病斑、ヘルペス、水疱、丘疹又は小胞である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
上記HSV感染又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患は、口唇ヘルペス、陰部ヘルペスまたは帯状疱疹である、請求項3〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
上記HSV感染又は上記HSV感染によって引き起こされる疾患は、口唇ヘルペスの再発である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
上記sNAGナノファイバは、膜、粉、懸濁液、溶液、軟膏、クリーム、スプレー又はゲルとして形成されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
上記sNAGナノファイバは、平均の長さが約10μm未満である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
上記sNAGナノファイバは、平均の長さが約1μmから10μmの間である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
上記sNAGナノファイバは、平均の長さが、約2μmから8μmの間であるか、あるいは、約4μmから7μmの間である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
90%を超える上記sNAGナノファイバは、長さが約1から15μmの間である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
上記sNAGナノファイバの長さが、走査型電子顕微鏡(SEM)分析によって測定される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
上記sNAGナノファイバは、微小藻類のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミン由来である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
上記sNAGナノファイバは、甲殻類のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミン由来ではない、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
上記sNAGナノファイバは、90%または95%を超える量のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
上記sNAGナノファイバは、100%の量のN−アセチルグルコサミン単糖類を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
上記sNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉内移植試験、皮内反応試験、及び/又は、全身性試験において試験したときに、非反応性である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
上記sNAGナノファイバは、筋肉内移植試験において試験したときに、非反応性である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
上記sNAGナノファイバは、MTT分析において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝率を上昇させ、及び/又は、トリパンブルー排除試験において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救済しない、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
別の抗ウイルス剤を含んでいない、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
別の抗ウイルス剤と共に投与されない、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
別の抗炎症剤を含んでいない、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
免疫システムを増強する別の薬剤を含んでいない、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
別の活性成分を含んでいない、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
別の療法と共同では投与されない、請求項1〜31のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
上記sNAGナノファイバが、約100μmの長さの微小藻類のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンファイバの微細構造を有している、請求項1〜32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
上記sNAGナノファイバが、約100μmの長さの微小藻類のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンファイバの化学的構造及び物理的構造を有する、請求項1〜33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
上記化学的構造及び上記物理的構造は、赤外線(IR)スペクトル、元素分析および走査型電子顕微鏡(SEM)分析により測定される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
上記sNAGナノファイバの赤外線(IR)スペクトルが、約100μmの長さの微小藻類のポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンと同等であるか、あるいは、実質的に同等である、請求項1〜34のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
1.序論
本発明は、ポリ−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体の短ファイバ(sNAGナノファイバ)を含む組成物、並びに、疾患の治療における当該組成物の使用に関する。
【0002】
2.背景技術
ディフェンシンは、小さく(3〜4kDa)、システインリッチなカチオンペプチドであり、動物、昆虫及び植物中において見られ、そのジスルフィド結合のパターンに基づいて、異なるファミリー(α、β及びθ)に分類されている。これらの小さいペプチドは、先天性免疫の重要なエフェクターであり、結果として、種々の疾患に対する体内の戦闘において重要な役割を果たす。
【0003】
現時点において、多くの疾患が不治であるか、又は、可能な治療が最適状態には及んでいない。これは、治療が部分的にのみ効果的であるため、又は、治療に関連する副作用のためである。このような疾患は、例えば、癌、いくつかのウイルス疾患、いくつかの真菌性疾患、炎症性腸疾患(例えば、クローン病)、並びに、乾癬及び皮膚炎のような皮膚病を含む。これらの疾患に対する効果的な治療の要求が存在し、この治療が、単独で又は標準的な療法と組み合わせて利用することが可能であり、安全で効果的であることが求められている。
【0004】
3.概要
一つの局面において、ディフェンシン生成及び/又は分泌を増加させる、感染症及び/又は疾患を予防及び/又は治療する有益な方法を、ここに記載する。この方法は、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体の短ファイバ(本明細書においては「sNAGナノファイバ」と称する)を含む組成物を、対象に投与することを含む。このような感染症及び/又は疾患の例は、固形癌、皮膚癌、ウイルス感染症、酵母感染症、真菌感染症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、及び、皮膚炎を含むが、これに限定されない。
【0005】
一実施形態において、対象におけるウイルス感染症を治療する方法を、ここに記載する。この方法は、sNAGナノファイバを含む組成物を、ウイルス感染症(例えばHSV感染症)にかかった(診断された)患者に投与することを含む。他の実施形態において、ヒト対象におけるウイルス疾患を予防する方法を、ここに記載する。この方法は、sNAGナノファイバを含む組成物を、ウイルス疾患が進行する危険性のある(例えば、ヘルペス又は病斑のようなHSV感染の症状のある)対象に投与することを含む。特定の実施形態において、sNAGナノファイバ組成物を、対象に局所的に(例えば、皮膚又は粘膜に)投与する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0006】
他の実施形態において、対象における固形癌を治療する方法を、ここに記載する。この方法は、sNAGナノファイバを含む組成物を、固形癌と診断された対象に投与することを含む。特定の実施形態において、固形癌の全て又は一部が対象から除去され(例えば、外科的除去)、そして、固形癌の全て又は一部が除去される前、除去される間及び/又は除去された後に、sNAGナノファイバを固形癌部位に投与する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0007】
他の実施形態において、対象における皮膚癌を治療する方法を、ここに記載する。この方法は、sNAGナノファイバを含む組成物を、皮膚癌と診断されたヒト対象に局所投与することを含む。特定の実施形態において、皮膚癌の全て又は一部が対象から除去され(例えば、外科的除去)、そして、皮膚癌の全て又は一部が除去される前、間及び/又は後に、sNAGナノファイバを皮膚癌部位に投与する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0008】
他の実施形態において、対象における炎症性腸疾患を治療する方法を、ここに記載する。この方法は、sNAGナノファイバを含む組成物を、炎症性腸疾患の対象(例えば、炎症性腸疾患と診断された対象)に投与することを含む。特定の実施形態において、対象におけるクローン病の治療方法を、ここに記載する。この方法は、sNAGナノファイバを含む組成物を、クローン病の対象(例えば、クローン病と診断された対象)に投与することを含む。特定の実施形態において、sNAGナノファイバ組成物を、対象に局所(例えば、座薬により直腸に)投与する。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0009】
ここに記載した方法において検討するsNAGナノファイバは、以下の5.1の項に示すように、種々の長さ、幅及び分子量であってもよい。ある実施形態において、sNAGナノファイバの大部分(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%若しくは99%)、又は、sNAGナノファイバの100%は、その長さが、約1μmから15μmの間である。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバの大部分(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%若しくは99%)、又は、sNAGナノファイバの100%は、その長さが、約2μmから10μmの間、約4μmから7μmの間、約4μmから10μmの間、又は、約5μmから10μmの間である。ここに示した長さのsNAGナノファイバは、例えば、以下の5.2の項に示したように得られる。
【0010】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、ポリ−N−アセチルグルコサミン又はその誘導体の放射線照射、例えば、ガンマ線照射により生成される。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、乾燥ファイバの形態(例えば、50〜2000kgy)における、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンの放射線照射、又は、ウエットファイバの形態(例えば、100〜500kgy)における、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンの放射線照射により生成される。
【0011】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、微小藻類由来である。他の実施形態において、sNAGナノファイバは、甲殻類由来ではない。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバは、微小藻類、甲殻類(例えば、エビ)、菌類、又は、他の何れかのもの由来であってもよい。
【0012】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、N−アセチルグルコサミン単糖類及び/又はグルコサミン単糖類を含み、60%、70%、80%、90%、95%又は99%より多いsNAGナノファイバの単糖類は、N−アセチルグルコサミン単糖類である。他の実施形態において、sNAGナノファイバは、N−アセチルグルコサミン単糖類及び/又はグルコサミン単糖類を含み、70%より多いsNAGナノファイバの単糖類は、N−アセチルグルコサミン単糖類である。
【0013】
ある実施形態において、ここに記載した方法において用いるsNAGナノファイバは、生体適合性試験に非反応性である。例えば、ここに記載した方法において用いるsNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉内移植試験、皮内反応試験、又は、全身性試験において試験したときに、非反応性である。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、溶出試験、筋肉内移植試験、皮内反応試験、又は、全身性試験において試験したときに、非反応性である。他の実施形態において、ここに記載した方法において用いるsNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉内移植試験、皮内反応試験、又は、全身性試験において試験したときに、グレード0又は1である。さらに他の実施形態において、ここに記載した方法において用いるsNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉内移植試験、皮内反応試験、又は、全身性試験において試験したときに、最も穏やかに反応する。一実施形態において、sNAGナノファイバ、又は、このようなナノファイバを含む組成物は、筋肉内移植試験により決定される場合、非反応性である。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、例えば、投与部位において、アレルギー反応又は炎症を引き起こさない。他の実施形態において、ここに記載した組成物は、例えば、投与した部位において、最も穏やかなアレルギー反応又は最も穏やかな炎症を引き起こす。
【0014】
ある実施形態において、ここに記載した方法において使用するsNAGナノファイバは、MTT分析において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝率を上昇させ、及び/又は、トリパンブルー排除試験において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救済しない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、MTT分析において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝率を上昇させ、かつ、トリパンブルー排除試験において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救済しない。
【0015】
ここに記載した組成物の検討した投与方法は、例えば皮膚の局所のように局所的;創傷部位、手術部位、ウイルス感染部位、真菌感染部位、若しくは、感染症状(例えば、腫物、水疱、発疹、創傷)部位に局所的;皮膚、粘膜(例えば、膣、肛門、喉、目、耳)、若しくは、他の組織表面のような体表面に局所的な投与である。ある実施形態において、sNAGナノファイバ又はこのようなナノファイバを含む組成物は、手当用品、包帯、マット、スプレー、液体、懸濁液(例えば、濃厚懸濁液)、膜、粉、軟膏、クリーム、ペースト、座薬、又は、ゲルのような形態である。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はこのようなナノファイバを含む組成物は、懸濁液、クリーム、液体溶液、ゲル、軟膏、膜、粉、スプレー、又は、座薬のような形態である。一実施形態において、sNAGナノファイバ又はこのようなナノファイバを含む組成物は、懸濁液(例えば、濃厚懸濁液)の形態である。特定の実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物は、固形物又はバリア形成物ではない。
【0016】
他の曲面において、ここに記載した方法において使用するための組成物を、ここに記載する。特定の実施形態において、組成物は、sNAGナノファイバを含む。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、sNAGナノファイバと1以上の活性添加成分とを含む。この活性添加成分は、固形癌、皮膚癌、ウイルス感染、ウイルス疾患、酵母感染、真菌感染、真菌性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、皮膚炎、及び、乾癬の、予防及び/又は治療に有用なものである。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、いずれの抗菌添加剤(例えば、抗生物質)も含まない。特定の実施形態において、ここに記載した組成物は、唯一の活性成分としてsNAGナノファイバを含み、他にいずれの活性添加成分を含まない。
【0017】
ある実施形態において、ここに記載した組成物は、1以上のさらなる療法と共同投与してもよい。他の実施形態において、ここに記載した組成物は、他のいずれの療法とも共同では投与しない。
【0018】
3.1 専門用語
ここで使用する限り、用語「sNAGナノファイバ」、「sNAG」、「タリデルム(Taliderm)」又は「タリム(Talymed)」(以前は「タリデルム」として知られた)は、ポリ−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体の短ファイバに関して、交換可能に使用される。好ましい実施形態において、sNAGナノファイバは、ポリ−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体の短ファイバの全体からなる。タリデルム又はタリムは、ポリ−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体の短ファイバの全体からなる膜である、sNAGナノファイバの例である。
【0019】
ここで使用する限り、用語「約」は、任意の値の周囲の範囲を意味しており、結果値が、明白に記載された値と同一又は実質的に同一であること(例えば、10%、5%又は1%内)を意味している。一実施形態において、用語「約」は、任意の値又は範囲の10%以内であることを意味している。他の実施形態において、用語「約」は、任意の値又は範囲の5%以内であることを意味している。他の実施形態において、用語「約」は、任意の値又は範囲の1%以内であることを意味している。
【0020】
ここで使用する限り、用語「疾患」及び「病気」は、対象の状態に関して交換可能に用いられる。ここに記載した方法に基づき治療又は予防可能な疾患/病気の例は、固形癌、皮膚癌、ウイルス疾患、酵母疾患、真菌疾患、炎症性腸疾患、クローン病、皮膚炎、及び、乾癬を含むが、これに限定されない。ウイルス疾患、酵母疾患、及び、真菌疾患との関連で、疾患は、ウイルス、酵母又は真菌それぞれの感染の結果による病理状態である。
【0021】
ここで使用する限り、用語「感染」は、細胞又は対象において、病原体(例えば、ウイルス、酵母又は真菌)の増殖及び/又は存在による侵入を意味している。
【0022】
ここで使用する限り、数値用語「log」は、log
10に関する。
【0023】
ここで使用する限り、用語「対象」及び「患者」は、動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、トリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、ネズミ、ラット、ウサギ、ギニーピッグ等)に関して、交換可能に用いられる。いくつかの実施形態において、対象は、非霊長類及び霊長類のような哺乳動物である(例えば、サル及びヒト)。特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0024】
ここで使用する限り、用語「効果的な量」は、sNAGナノファイバ又はその組成物を対象に投与することとの関連でsNAGナノファイバ又はその組成物の量に関し、有益な効果又は治療効果が結果として得られる量である。特定の実施形態において、sNAGナノファイバ又はその組成物の「効果的な量」は、sNAGナノファイバ又はその組成物の量に関し、以下に示す効果のうち、少なくとも1、2、3、4又はそれ以上を達成するために十分な量である:(i)対象若しくは対象集団における、疾患又はそれに関連する症状の重大性の縮小又は回復;(ii)対象若しくは対象集団における、疾患又はそれに関連する症状の持続期間の短縮;(iii)対象若しくは対象集団における、疾患又はそれに関連する症状の進行阻止;(iv)対象若しくは対象集団における、疾患又はそれに関連する症状の後退;(v)対象若しくは対象集団における、疾患又はそれに関連する症状の発生又は攻撃阻止;(vi)対象若しくは対象集団における、疾患又はそれに関連する症状の再発防止;(vii)対象若しくは対象集団から、他の対象若しくは対象集団への、疾患の拡大防止又は低減;(viii)対象若しくは対象集団における、疾患に関連する臓器損傷の減少;(ix)対象若しくは対象集団の入院発生の減少;(x)対象若しくは対象集団の入院期間の短縮;(xi)対象若しくは対象集団の生存率の上昇;(xii)対象若しくは対象集団の疾患の排除;(xiii)対象若しくは対象集団の他の療法における予防又は治療効果の強化又は改善;(xiv)対象の細胞、組織、臓器から、対象の他の細胞、組織、臓器への病原体拡散防止;(xv)対象若しくは対象集団における疾患の症状数の減少;(xvi)病原体(例えば、ウイルス、真菌又は酵母)による感染の除去;(xvii)感染に関連した1以上の症状の根絶;(xviii)感染根絶に要求される期間の短縮;(xix)感染根絶に要求される期間の短縮;(xx)感染及び/又はこれに関連する1以上の症状の重症度の低減又は改善;(xxi)感染及び/又はこれに関連する1以上の症状の再発防止;(xxii)病原体における、例えばウイルス数等の測定値の減少又は除去;(xxiii)1つの対象から他の対象、又は、1つの臓器若しくは組織から他の臓器若しくは組織への病原体拡散の低減又は除去;(xxiv)病原体における、例えばウイルス数等の測定値の上昇防止;(xxv)感染又はこれに関連する1以上の症状の発展又は攻撃防止;(xxvi)感染に関連した症状数の減少;(xxvii)感染に関連した炎症の安定化又は減少;(xxviii)1以上のディフェンシンタンパク質及び/又はディフェンシン様タンパク質の発現誘導;(xxix)1以上のToll様レセプターの発現誘導;(xxx)病原体感染若しくはこれに関連した1以上病状の解消又は減退に有益な1以上の蛋白質の発現誘導;(xxxi)病原体感染又はこれに関連した疾患に関連した臓器不全の減退;(xxxii)病原体感染に起因する又は関連した状態の発現、発展又は再発の防止;(xxxiii)死亡率低下;(xxxiv)癌及び/又はこれに関連した1以上の症状の進展抑制;(xxxv)癌細胞群の減少又は除去;(xxxvi)腫瘍又は新生物の成長低下;(xxxvii)腫瘍サイズ(例えば、量又は直径)の縮小;(xxxviii)初期、局所的及び/又は転移性癌の根絶、除去又は制御;(xxxix)転移数又はサイズの減少;(xxxx)患者の腫瘍フリー生存率の上昇;(xxxxi)再発フリー生存率の上昇;(xxxxii)寛解した患者数の増加;(xxxxiii)PSA濃度、直腸内触診、超音波(例えば、経直腸超音波)、骨のスキャン、コンピュータ断層撮影スキャン、磁気共鳴映像法(MRI)、動的コントラスト促進MRI(DCE−MRI)又は陽電子放出断層撮影(PET)スキャンのような、当業者が可能な従来の方法により測定した、腫瘍サイズが維持される、拡大しない、又は、標準的な療法投与後の腫瘍よりも拡大量が少ない;(xxxiv)患者における寛解期間の延長;(xxxxv)癌患者の症状フリー生存率の上昇;(xxxxvi)腫瘍又は腫瘍周囲炎又は浮腫の安定化又は減少;(xxxxvii)腫瘍代謝又は潅流の抑制又は減少;並びに/又は(xxxiii)例えば、アンケート等のような当業者に公知の方法により評価した生活の質の向上。特定の実施形態において、sNAGナノファイバの「効果的な量」は、例えば、以下の5.6の項目に記載した特定のsNAGナノファイバ組成物の量に関連する。
【0025】
ここで使用する場合、用語「ヒト早産児」は、妊娠期間37週未満で生まれたヒト乳児に関する。
【0026】
ここで使用する場合、用語「ヒト乳児」は、1歳までのヒトの新生児に関する。
【0027】
ここで使用する場合、用語「ヒト早産児」は、妊娠期間37未満(例えば、妊娠37週、36週、35週、34週、33週、32週、31週、30週、29週、28週、又は、28週よりも少ない週数未満)で生まれた1歳までのヒトの新生児に関する。
【0028】
ここで使用する場合、用語「ヒト幼児」は、1歳から3歳までのヒトに関する。
【0029】
ここで使用する場合、用語「ヒト小児」は、1歳から18歳までのヒトに関する。
【0030】
ここで使用する場合、用語「ヒト成人」は、18歳以上のヒトに関する。
【0031】
ここで使用する場合、用語「ヒト老人」は、65歳以上のヒトに関する。
【0032】
ここで使用する場合、用語「低発現」は、(例えば、遺伝子による生成されるタンパク質又はペプチドのレベルに基づく)遺伝子発現との関連で、「標準的」な遺伝子発現よりも発現が少ないことに関する。特定の実施形態において、「低発現」は、「標準的」な遺伝子発現よりも、99%未満、95%未満、90%未満、85%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、又は20%未満の遺伝子発現に関する。他の特定の実施形態において、「低発現」は、「標準的」な遺伝子発現の、約20倍、約15倍、約10倍、約5倍、約4倍、約3倍、約2倍、又は、約1.5倍少ない遺伝子発現に関する。
【0033】
ここで使用する場合、用語「大多数」は、例えば50.5%、51%、55%等を含む50%よりも多いことに関する。
【0034】
ここで使用する場合、用語「療法群」及び「療法」は、病原体感染、疾患若しくはその症状、又は、ここに記載した疾患(例えば、クローン病、炎症性腸疾患、乾癬、皮膚炎及び固形癌)の予防及び/又は治療において使用可能な、いずれかの手順、方法、組成物、化合物、及び/又は、試薬に関してもよい。病原体は、ウイルス、真菌、又は、酵母であり得る。ある実施形態において、用語「療法群」及び「療法」は、薬剤療法、アジュバント療法、放射線療法、手術、生物学的療法、支持療法、及び/又は、病原体感染、疾患若しくはその症状、又はここに記載した疾患の治療及び/又は予防に有用な他の療法に関する。ある実施形態において、用語「療法」は、sNAGナノファイバ又はその薬学組成物以外の療法に関する。特定の実施形態において、「追加療法」及び「追加療法群」は、sNAGナノファイバ又はその薬学組成物を用いた治療以外の療法に関する。特定の実施形態において、療法には、アジュバント療法としてのsNAGナノファイバの使用を含む。例えば、薬学療法、生物学的療法、手術及び/又は支持療法と組み合わせたsNAGナノファイバの使用である。
【0035】
4.図面の簡単な説明
〔
図1〕ナノファイバが、Ets1の上流レギュレータであるAkt1活性化を刺激する。(A)は、NAG応答によるリン酸化Akt及び血清欠乏ECのsNAG刺激のウエスタンブロット分析である。(B)は、スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAレンチウイルスの何れかに感染したECのRT−PCR分析、及び、ローディングコントロールとしてのEts1及びS26の発現評価である。(C)は、sNAGナノファイバからAkt1、Ets1及びディフェンシンへ信号伝達する信号伝達経路の概略図である。
【0036】
〔
図2〕Akt1欠損動物における遅延した創傷治癒が、タリデルム治療により部分的に救済されている。(A)は、タリデルムにより治療した又は治療していない、WT及びAKT1欠損創傷マウスの、代表的な図である。(B)は、創傷3日後のマウスにおける、代表的なマウス皮膚部分のH&E染色である。
【0037】
〔
図3〕sNAGナノファイバが、一次内皮細胞におけるサイトカイン及びディフェンシン発現を刺激する。(A)は、a−ディフェンシンに対する直接抗体を用いた、sNAGにより治療した又は治療していないECの免疫組織化学である。(B)は、ECのナノファイバ治療(血清欠乏、5μg/mL又は10μg/mLのsNAGによる治療)が、α−ディフェンシン1−3の分泌をもたらしたことを示すELISAである。
【0038】
〔
図4〕sNAGナノファイバが、Akt1依存様式による一次内皮細胞におけるディフェンシン発現を刺激する。(A)及び(B)は、sNAG(「snag」)、PD98059(MAPKインヒビター、「PD」)、ウォルトマンニン(wortmannin)(PI3Kインヒビター、「wtm」)、又は、スクランブルコントロール(「SCR」)若しくはAkt1(「AKT1」)shRNAレンチウイルスによる感染、のいずれかの処理をした又は処理をしない血清欠乏EC(「ss」)の量的RT−PCR分析、並びに、遺伝子発現の分析を示している。
【0039】
〔
図5〕sNAGナノファイバが、マウスケラチン生成細胞におけるβ−ディフェンシン3発現を刺激する。(A)は、3日目における、WT及びAkt1欠損動物からのパラフィン包埋マウス皮膚創傷部位の、β−ディフェンシン3(右手上部パネルにおいて明るい染色として見られる;例えば濃白矢印を参照)及びInvolucrin抗体での免疫蛍光染色である。(B)は、NIHImageJソフトウェアを用いた、β−ディフェンシン3免疫蛍光染色の定量化である(TX=タリデルム;Akt1=Akt1欠損)。(C)は、β−ディフェンシン3(明るい染色として見られる;例えば濃白矢印を参照)及びTOPRO−3(核染色;例えば薄白矢印を参照)により治療した及び治療していない、WT及びAkt1欠損ケラチン生成細胞の免疫蛍光染色である。WT及びAkt1タリデルムで治療した創傷におけるβ−ディフェンシン3染色の増加に注目する。
【0040】
〔
図6〕Akt1依存転写因子結合部位である。Akt1依存転写因子結合部位の概略図である。Genomatixソフトウェアを用いて、転写開始部位の500塩基上流を、DEF1、4及び5のmRNAにおける保存部位として分析した(ETS−黒楕円;FKHD−縞模様楕円;CREB−白楕円;NFKB−格子縞楕円)。
【0041】
〔
図7〕sNAG処理が、in vitroにおけるディフェンシンの発現及び分泌をもたらす。(A)は、示した時間sNAG(50μg/mL)で処理した血清欠乏(SS)一次内皮細胞のRTPCR分析、ならびに、β−ディフェンシン3及びα−ディフェンシン1の発現の評価である。(B)は、血清欠乏(非処理)又はsNAGナノファイバで処理した(10μg/mLで5時間)内皮細胞の免疫蛍光標識である。抗体は、α−ディフェンシン5(FITC、左手上部パネル)、β−ディフェンシン3(テキサスレッド、右手上部パネル)に対する直接抗体である。核はTOPRO−3(青、左手下部パネル)で染色された。右手下部パネルは、三重オーバーレイを表している。(c)は、血清欠乏(非処理)又はsNAGナノファイバで処理した(10μg/mLで5時間)ケラチン生成細胞(HaCat)の免疫蛍光標識である。抗体は、α−ディフェンシン5(FITC、左手上部パネル)、β−ディフェンシン3(テキサスレッド、右手上部パネル)に対する直接抗体である。核はTOPRO−3(青、左手下部パネル)で染色した。
【0042】
〔
図8〕sNAG誘導ディフェンシン発現がAkt1に依存する。(A)は、sNAGによる3時間の処理若しくは非処理、PD098059(「PD」)による処理(50μM)若しくは非処理、ウォルトマンニン(「WTM」)による処理(100nm)若しくは非処理の、血清欠乏内皮細胞から単離した全長RNAからの、α−ディフェンシン1に対するプライマーを用いた量的RT−PCR分析である。(B)は、sNAGによる3時間の処理若しくは非処理、PD98059による処理(50μm)若しくは非処理、ウォルトマンニン(「WTM」)による処理(100nm)若しくは非処理の、血清欠乏内皮細胞から単離した全長RNAからのβ−ディフェンシン3の定量化であり、S26に関連して示す。(C)は、示した時間sNAGにより刺激した血清欠乏内皮細胞(SS)におけるリン酸化−Aktのウエスタンブロット分析である。ラインは、除去されたレーンを示している。(D)は、スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAレンチウイルスに感染し、sNAGにより処理又は非処理の血清欠乏内皮細胞の量的RT−PCR分析であり、α−ディフェンシン 4発現により評価した。定量化はS26に対して示す。(E)は、スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAレンチウイルスに感染し、sNAGにより処理又は非処理の血清欠乏内皮細胞から単離した全長RNAから発現したβ−ディフェンシン3の定量化である。定量化はS26に対して示す。全ての実験を、少なくとも3通り行い、少なくとも独立して3回繰り返し、p値を示した。
【0043】
〔
図9〕in vivoにおけるsNAG誘導ディフェンシン発現が、Akt1を要求する。(A)は、創傷後3日目に回収された、WT(n=3)及びAkt1マウスからの、パラフィン包埋皮膚創傷部位である。創傷部に、非処理又はsNAG膜による処理のいずれかを行った。β−ディフェンシン3(緑、右手上部パネルにおいて明るい染色部として見られる。例えば濃白矢印参照)、Involucrin(赤)、及び、Topro(青、核染色、例えば薄白矢印)に対する直接抗体を用いて、免疫蛍光を行った。(B)は、3日目に回収した、sNAGで処理したWTからのパラフィン包埋部位である。βディフェンシン3(緑、明るい染色として見られる;例えば濃白色矢印参照)、Involucrin(赤)及びTopro(青、核染色;例えば薄白矢印参照)に対する直接抗体を用いて、免疫蛍光を行った。この低倍率(20×)は、β−ディフェンシン3を発現する内皮層をより良く示すためでもある。スケールバーは50μmである。(C)は、NIH ImageJソフトウェアを用いて行った、パラフィン包埋部位から発現したβ−ディフェンシン3発現の定量化である。実験を独立して3回繰り返し、p値を示す。
【0044】
〔
図10〕sNAG処理により、野生型マウスにおいて、創口閉鎖が向上する。sNAG膜により処理した又は非処理のC57B16野生型動物由来の創傷組織部位のH&E染色である。創傷後の日数を各パネルの左側に示す。濃い黒線は、創口閉鎖を示すケラチン生成細胞層に沿っている。黒矢印は、創面の縁を示す。
【0045】
〔
図11〕sNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(A)は、WTマウスのS.アウレアス(aureus)感染創傷部位の組織グラム染色である。WTマウスを、4mm生検穿孔機を用いて傷つけた。創傷後すぐにマウスに1×10
9cfu/mLを接種させた。感染30分後に、処理群のマウスをタリデルムで処理した。皮膚サンプルを処理の5日後に採取し、分析のために区分化した。組織グラム染色を行った。暗紫染色は、グラム陽性微生物及び微生物を呑食した好中球を示している。領域を20倍及び40倍に拡大して示す。(B)は、WTマウス及びAkt1欠損マウス(n=3)のパラフィン包埋S.アウレアス感染創傷の組織グラム染色である。感染創傷をsNAG膜で処理又は非処理し、創面を3日目及び5日目に分析のために回収した。暗紫染色は、創面中のグラム陽性微生物の存在を示す。黒矢印はグラム陽性染色の例を示す。sNAG処理したWT動物においてはなかったが、非処理WTにおいては陽性染色の蓄積が見られたことに注目する。スケールバーは50μmである。(C)は、処理又は非処理のWTマウス(n=3)及びAkt1マウス(n=3)の両方を用いて、創傷5日後のCFUsのS.アウレアス感染創傷を定量化した。sNAGで処理した野生型マウスにおいては、Akt1欠損動物と比較して、創面中の微生物の顕著な減少(p<.01)が見られる。全ての実験を独立して3回繰り返し、p値を示す。(D)は、
図11Cに示したのと同様の方法で、創傷3日後における感染した創傷部位から定量化したCFUである。感染創傷のsNAG処理により、3日目のWT動物及びAkt1欠損動物の両方においてCFUの顕著な減少が見られたが、WT動物は約10倍の差が見られたのに対して、Akt1動物においては約2倍の差が見られた。(E)は、種々の量のsNAGナノファイバで処理した又は非処理のS.アウレアス培地におけるCFUsの定量化である。各実験を独立して3回行い、p値を示した。(F)は、β−ディフェンシン3ペプチド(1.0μM)で処理した又は非処理のWTマウス(n=3)において、創傷3日後に回収したS.アウレアス感染創傷の組織グラム染色である。β−ディフェンシン3ペプチドで処理した感染創傷におけるグラム陽性染色が減少したことに注目する。(G)は、β−ディフェンシン3ペプチドで処理した又は非処理の、S.アウレアス感染WTマウス(n=3)からのCFUsの定量化である。ペプチドで処理した感染創傷は、CFUにおいて顕著な減少(p<.05)を示す。スケールバーは50μmである。各実験を独立して3回行い、p値を示す。
【0046】
〔
図12〕S.アウレアス感染創傷のsNAG処理によるディフェンシン発現の迅速な誘導。(A)は、sNAG処理したWTマウス(n=3)及び非処理のWTマウス(n=3)の両方において、3日目に回収したS.アウレアス感染創傷からのパラフィン包埋組織部位を、β−ディフェンシン3(緑、右手上部パネル及び下部中央パネルにおいて明るい染色が見られた、例えば濃白矢印参照)、ケラチン生成細胞層を特徴づけるためのInvolucrim(赤)、及び、Topro(青、核染色、例えば薄白矢印参照)に対する直接抗体を用いた免疫蛍光の対象とした。ケラチンの非特異的染色が、二次抗体でのみ染色されており、一次コントロールではないことが示された。スケールバーは50μmである。(B)は、NIH ImageJソフトウェアを用いた、パラフィン包埋部位におけるβ−ディフェンシン3発現の定量化である。sNAGで処理したS.アウレアス感染創傷においては、β−ディフェンシン3染色の顕著な上昇(p<.05)がみられる。実験を独立して3回繰り返し、p値を示す。
【0047】
〔
図13〕β−ディフェンシン3に対する抗体が、sNAG処理の抗菌効果を妨げる。(A)は、3日目に回収した、WTマウス(n=3)のsNAG処理したパラフィン包埋S.アウレアス感染創傷の組織グラム染色である。sNAG処理した創傷は、sNAG処理の前に、β−ディフェンシン3抗体又はコントロールのヤギIgG抗体のアイソタイプで処理した。代表的な図は、β−ディフェンシン3の直接抗体で処理したマウスの創面において、グラム陽性染色の蓄積(黒矢印)の増加を示す。スケールバーは20μmである。(B)は、sNAG処理の前にβ−ディフェンシン3抗体(n=3)又はコントロールのIgG抗体(n=3)により処理した、S.アウレアス感染WTマウスからのCFUsの定量化である。β−ディフェンシン3適用により、CFUが顕著に増加した(p<.05)。
【0048】
〔
図14〕ポリ−N−アセチルグルコサミン(「pGlcNAc」)ファイバの化学的構造及び物理的構造に対する放射線照射の効果。(A)は、pGlcNAcの分子量と、放射線レベル/放射線照射のための形成との間の相関である。(B)は、非放射線照射pGlcNAcスラリーの赤外線スペクトル(上部ライン)、100kGyで放射線照射したpGlcNAcスラリーの赤外線スペクトル(下部ライン)、200kGyで放射線照射したpGlcNAcスラリーの赤外線スペクトル(中央ライン)である。(C)は、pGlcNAcの走査型電子顕微鏡(SEM)分析である。(D)は、sNAGの走査型電子顕微鏡(SEM)分析である。
【0049】
〔
図15〕pGlcNAcが代謝率に影響しなかった。各期間(例えば、24時間及び48時間)において、4つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL及び100μg/mLにおけるpGlcNAc(NAG)。
【0050】
〔
図16〕pGlcNAcが、血清欠乏により引き起こされる細胞死から、ヒト臍静脈内皮細胞(EC)を保護したことを示す。各期間(例えば、24時間、48時間及び72時間)において、5つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL、100μg/mL及び250μg/mLにおけるpGlcNAc(NAG)。
【0051】
〔
図17〕sNAGが代謝率の著しい増加を引き起こした。5つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLにおけるsNAG。
【0052】
〔
図18〕sNAGが、血清欠乏により引き起こされる細胞死からECを保護しなかった。各期間(例えば24時間及び48時間)において、5つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLにおけるsNAG。
【0053】
〔
図19〕痛みの強さの数値スケール。
【0054】
〔
図20〕マウスモデルにおける3%DSS(硫酸ナトリウムデキストラン)誘引炎症性腸疾患(特に、潰瘍性大腸炎)のために用意した実験の概略。
【0055】
〔
図21〕sNAG処理が、炎症性腸疾患の動物モデルにおいて、炎症を減少させた。(A)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介して生理食塩水(100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスのコントロール群における、腸上皮組織領域のH&E染色である。(B)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介してsNAG(sNAGを総量で12μg/μL含む100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスの試験群における、腸上皮組織領域のH&E染色である。薄い矢印及び括弧書きは浮腫部位を示しており、濃い矢印は白血球炎症部位を示している。
【0056】
〔
図22〕sNAG処理が、炎症性腸疾患の動物モデルにおいて、線維形成を減少させた。(A)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介して生理食塩水(100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスのコントロール群における、腸上皮組織領域の線維染色である。(B)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介してsNAG(sNAGを総量で12μg/μL含む100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスの試験群における、腸上皮組織領域の線維染色である。
【0057】
5.詳細な説明
本発明の発明者らは、sNAGナノファイバが、ディフェンシンの発現を刺激し、先天性免疫反応を促進するであろうことを見出した。ディフェンシンは、先天性免疫において重要な役割を果たすことは広く受け入れられている。下記の項目6.1及び6.2に記載した実施例において実証したように、本発明の発明者らは、sNAGナノファイバが、i vitro及びin vivoの創傷回復モデルにおいて、内皮細胞におけるα型ディフェンシンとβ型ディフェンシンとの両方、並びに、ケラチン生成細胞におけるβ型ディフェンシンの発現を増加させることを見出した。
【0058】
さらに、下記の項目6.1及び6.2に記載した実施例において実証したように、いずれかの特定の作用メカニズムの結合なしに、Akt1は、i vitro及びin vivoの創傷回復におけるsNAG依存ディフェンシン発現にとって、重要であることを示す。
【0059】
本発明の発明者らは、いくつかのToll様レセプターが、ヒト内皮細胞のsNAG処理により上方制御され得ることを見出した。Toll様レセプター(「TLRs」又は「TLR」)は、高度に保存されたレセプターであり、先天性免疫を活性化する。最近の研究は、TLR活性化、特に、TLRsの刺激に対するヒトディフェンシン発現が、ディフェンシン合成の促進につながり得ることに関連している。それゆえに、活性のいずれのメカニズムにも結び付かずに、sNAGナノファイバが全身性免疫の刺激剤として作用するかもしれない。
【0060】
したがって、有用であり得る1つ以上のディフェンシン及びToll様レセプターの発現及び/又は分泌を促進することによって、感染及び疾患を予防及び/又は治療するための新規な方法としての、sNAGナノファイバの使用をここに記載する。ある実施形態において、sNAGナノファイバを用いたウイルス、酵母又は真菌感染の治療は、患者における病原体数を減少させる。特定の実施形態において、sNAGナノファイバの使用は、創傷のウイルス、真菌又は酵母感染を根絶する、低減させる、又は、予防する一方で、同時に、創口閉鎖を向上させる。他の実施形態において、sNAGナノファイバを、例えば、このような疾患の1以上の症状を軽減することにより、皮膚炎又は乾癬のような皮膚の状態の治療に用いることができる。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバを、例えば、このような疾患の1以上の症状を軽減することにより、炎症性腸疾患(例えばクローン病)の治療に用いることができる。
【0061】
本発明者らは、事実、sNAGナノファイバがウイルス感染治療に効果的であり得ることを見出した。特に、本発明者らは、sNAGナノファイバをヒト患者に局所投与したときに、HSV感染の治療に効果的であることを見出した。下記の実施例8は、ヒト患者において、sNAGナノファイバのヘルペスへの局所投与が、ヘルペスに関連する痛みを軽減し、さらに、ヘルペスの持続期間を短縮したことを示している。ヘルペスは、典型的には、HSV−1感染により引き起こされる。それゆえに、ウイルス感染、特に局所ウイルス感染を治療するための、sNAGナノファイバの使用を、ここに記載する。特定の実施形態において、sNAGナノファイバを患者に局所(例えば、HSV感染部位若しくはHSV感染症状部位、又は、感染症状の発生が知られている部位)投与することによって、HSV感染(例えばヘルペス又は創傷)を治療するための、sNAGナノファイバの使用を、ここに記載する。
【0062】
本発明者らは、また、sNAGナノファイバが炎症性腸疾患(IBD)の治療に効果的であり得ることを見出した。特に、本発明者らは、sNAGナノファイバを腸に投与したときに(座薬を介する等)、IBD動物モデルにおけるIBDの治療に効果的であることを見出した。下記の実施例9は、sNAGナノファイバの投与が、IBDマウスモデルにおいて、IBDに関連する炎症及び線維形成を低減したことを示す。それゆえに、潰瘍性大腸炎及びクローン病のようなIBDを治療するための、sNAGナノファイバの使用について、ここに記載する。特定の実施形態において、患者に対してsNAGナノファイバを局所(例えば、座薬、クリーム、懸濁液、液体溶液、ゲル又は軟膏を介して肛門又は腸に)投与することによって、IBD(例えば、潰瘍性大腸炎又はクローン病)を治療するための、sNAGナノファイバの使用についてここに記載する。
【0063】
5.1 sNAGナノファイバ
sNAGナノファイバ組成物をここに記載する。sNAGナノファイバは、ポリ−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体のファイバを含んでおり、例えば、走査型電子顕微鏡(「SEM」)のような、当業者に公知のいずれかの方法により測定した長さは概ね30μmより短く、少なくとも1μmである。このようなsNAGナノファイバは、例えば、本明細書に記載したように得ることができる。
【0064】
ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、約30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3μmより短く、少なくとも1μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、約15μm又は約12μmより短く、少なくとも1μmである。特定の実施形態において、全て(100%)のsNAGナノファイバは、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、約15μm又は約10μmより短く、少なくとも1μmである。ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、14、13、12、11、10、9、8又は7μm以下であり、少なくとも1μmである。ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、1〜15、2〜15、2〜14、1〜12、2〜12、1〜10、2〜10、3〜12、3〜10、4〜12、4〜10、5〜12、5〜10、1〜9、2〜9、3〜9、1〜8、2〜8、3〜8、4〜8、1〜7、2〜7、3〜7、4〜7、1〜6、1〜5、1〜4、又は、1〜3μmである。
【0065】
特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、約8、7、6、5、4、3又は2μmである。他の特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、約2〜10μm、約3〜8μm、約4〜7μm、約4〜10μm、又は、約5〜10μmである。他の特定の実施形態において、全て(100%)のsNAGナノファイバは、例えばSEMのような、当業者に公知の何れかの方法により測定した長さが、約2〜10μm、約3〜8μm、約4〜7μm、約4〜10μm、又は、約5〜10μmである。
【0066】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、電子顕微鏡により決定した厚み及び/又は直径が0.005〜5μmの範囲である。特定の実施形態において、sNAGナノファイバは、平均又はいずれかの範囲(例えば、0.02〜2μm、0.02〜1μm、0.02〜0.75μm、0.02〜0.5μm、0.02〜0.5μm、0.05〜1μm、0.05〜0.75μm、0.05〜0.5μm、0.1〜1μm、0.1〜0.75μm、0.1〜0.5μm等)における厚み及び/又は直径が、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.4、2.6、2.8、3又は4μmである。特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、厚み又は直径が、約0.02〜1μmである。他の特定の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、厚み又は直径が、約0.05〜0.5μmである。特定の実施形態において、全て(100%)のsNAGナノファイバは、厚み又は直径が、約0.02〜1μm又は約0.05〜0.5μmである。ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、厚み又は直径が、約0.02〜2μm、0.02〜1μm、0.02〜0.75μm、0.02〜0.5μm、0.02〜0.5μm、0.05〜1μm、0.05〜0.75μm、0.05〜0.5μm、0.1〜1μm、0.1〜0.75μm、又は、0.1〜0.5μmである。
【0067】
ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、長さが1〜15μmの間である、又は、長さが1〜10μm、2〜10μm、3〜10μm、4〜10μm、4〜7μm、5〜10μm若しくは5〜15μmの間若しくはその範囲内であり、かつ、厚み又は直径が、約0.02〜1μmである。
【0068】
ある実施形態において、sNAGナノファイバの分子量は、100kDa、90kDa、80kDa、75kDa、70kDa、65kDa、60kDa、55kDa、50kDa、45kDA、40kDa、35kDa、30kDa又は25kDaより小さい。ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、分子量が、100kDa、90kDa、80kDa、75kDa、70kDa、65kDa、60kDa、55kDa、50kDa、45kDa、40kDa、35kDa、30kDa又は25kDaより小さい。他の実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、分子量が、約5kDa〜100kDa、約10kDa〜100kDa、約20kDa〜100kDa、約10kDa〜80kDa、約20kDa〜80kDa、20kDa〜75kDa、約25kDa〜約75kDa、約30kDa〜約80kDa、約30kDa〜約75kDa、約40kda〜約80kDa、約40kDa〜約75kDa、約40kDa〜約70kDa、約50kDa〜約70kDa又は約55kDa〜約65kDaの間である。ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のsNAGナノファイバ)は、分子量が、約60kDaである。
【0069】
ある実施形態において、sNAGナノファイバの1%〜5%、5%〜10%、5%〜15%、20%〜30%又は25%〜30%は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバの1%、5%、10%、15%、20%、25%又は30%は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバの30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%以上、又は、全て(100%)は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%未満は、脱アセチル化されている。
【0070】
ある実施形態において、sNAGナノファイバの70%〜80%、75%〜80%、75%〜85%、85%〜95%、90%〜95%、90%〜99%又は95%〜100%は、アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバの70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%は、アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバの70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%より多くは、アセチル化されている。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%以上、又は、全て(100%)は、アセチル化されている。他の実施形態において、sNAGナノファイバの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%未満は、アセチル化されている。
【0071】
ある実施形態において、大多数のsNAGナノファイバ(さらに、ある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%若しくは100%のsNAGナノファイバ)は、2〜12μm、2〜10μm、4〜15μm、4〜10μm、5〜15μm若しくは5〜10μmの間又は範囲内であり、このようなsNAGナノファイバの少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%は、アセチル化されている。
【0072】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、少なくとも1つのグルコサミン単糖類を含んでおり、さらに、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%のN−アセチルグルコサミン単糖類を含んでいてもよい。他の実施形態において、sNAGナノファイバは、少なくとも1つのN−アセチルグルコサミン単糖類を含んでおり、さらに、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%のグルコサミン単糖類を含んでいてもよい。
【0073】
ある局面において、sNAGナノファイバは、MTT分析において、血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞(「EC」)の代謝率を上昇させる。MTT分析は、細胞増殖(細胞成長)のための、臨床試験及び標準比色分析(色の変化を測定する分析)である。簡単に言うと、黄色MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物、テトラゾール)は、生細胞のミトコンドリアにおいて、紫ホルマザンに変換される。ミトコンドリア還元酵素が活性であるときにのみこの変換は生じ、それゆえに、この変換は、細胞の生存数(生細胞の数)に直接関連する。MTT分析は、下記の実施例6に記載しており、EC細胞の代謝率に対するsNAGナノファイバの効果を評価するために用いている。細胞の代謝率は、また、当業者に周知の他の技術により決定してもよい。
【0074】
他の局面において、sNAGナノファイバは、トリパンブルー排除試験において、血清欠乏ECのアポトーシスを救済しない。トリパンブルー排除試験は、細胞懸濁液に存在する生存細胞数を決定するために用いられる、色素排除試験である。生細胞が、トリパンブルー、エオシン又はプロピジウムのような特定の色素を排除する完全細胞膜を有している一方で、死亡細胞が有していないという原理に基づいている。トリパンブルー分析は、下記の実施例6に記載しており、EC細胞の細胞生存能力に対するsNAGナノファイバの効果を評価するために用いている。細胞の生存能力は、また、当業者に周知の他の技術により決定してもよい。
【0075】
ある実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物を記載しており、このsNAGナノファイバは、MTT分析における血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝率を上昇させる、及び/又は、トリパンブルー排除試験における血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救済しない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、MTT分析における血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞の代謝率を上昇させ、かつ、トリパンブルー排除試験における血清欠乏ヒト臍帯静脈内皮細胞のアポトーシスを救済しない。
【0076】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバは生体適合性がある。溶出試験、筋肉注入、又は、動物対象への皮内若しくは全身注射のような処置を含むが、これらに限定されない種々の技術によって、生体適合性を決定してもよい。このような試験は、米国特許番号6,686,342(例えば実施例10参照)に記載されており、当該文献の全てを参照としてここに組み込む。生体適合性試験のいくつかは、下記の実施例7に記載しており、sNAGナノファイバがこのような試験に反応しないことを示している。
【0077】
ある実施形態において、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバは、生体適合性試験又は試験群において、反応しない。例えば、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉注入試験、皮内試験、及び/又は、全身性試験において試験したときに、反応しない。他の実施形態において、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉注入試験、皮内試験又は全身性試験において試験したときに、試験結果がグレード0又はグレード1である。さらに他の実施形態において、ここに記載した方法において使用されるsNAGナノファイバは、溶出試験、筋肉注入試験、皮内試験、及び/又は、全身性試験において試験したときに、最も穏やかに反応する。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、アレルギー反応又は炎症を引き起こさない。他の実施形態において、ここに記載した組成物は、例えば適用部位において、最も穏やかなアレルギー反応又は最も穏やかな炎症を引き起こす。試験結果に関連する試験及び評価は、その全てを参照としてここに組み込む米国特許番号6,686,342及び下記の項目6.8に記載されている。
【0078】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバは、筋肉注入試験において試験したときに、反応しない。ある局面において、筋肉注入試験は、下記の項目6.8.3に記載したような、筋肉注入試験−ISO4週間注入である。ある実施形態において、sNAGナノファイバは、溶出試験により決定する場合に、生物学的反応性を全く示さない(溶出試験グレード=0)。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、筋肉注入試験により決定される試験スコアが「0」と同等である、及び/又は、最も無視できる刺激性である。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、Kligman試験において皮内反応を導かない(例えば、グレードI反応)、及び/又は、Kligman試験により決定される弱いアレルゲン性能力を有している。下記の実施例7に、sNAGナノファイバが、筋肉注入試験、皮内注入試験及びKligman試験において、反応しないことを示す。
【0079】
ある局面において、sNAGナノファイバは免疫中性である(例えば、免疫反応を導かない)。
【0080】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは生体分解性である。sNAGナノファイバは、好ましくは、患者に適用又は注入した後、約1日、2日、3日、5日、7日(1週)、8日、10日、12日、14日(2週)、17日、21日(3週)、25日、28日(4週)、30日、1月、35日、40日、45日、50日、55日、60日、2月、65日、70日、75日、80日、85日、90日、3月、95日、100日又は4月以内に分解される。
【0081】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、検出可能な異物反応を引き起こさない。異物反応は、損傷部位における滲出物の蓄積、その領域の創傷清拭するための炎症細胞の湿潤、及び、肉芽組織の形成を含む、創傷治癒中に生じ得る。異物の存在の持続は、完全治癒を妨げ得る。創傷治癒において生じる再吸収及び再建というよりむしろ、異物巨細胞の形成、異物のカプセル化及び慢性炎症によって、異物反応は特徴づけられる。カプセル化は、異物周囲に堆積した、硬く無血管性のコラーゲンシェルに関し、宿主組織から有効に分離される。一実施形態において、sNAGナノファイバを用いた部位(例えば、創傷部位又は創傷の微生物感染部位)の治療は、治療の1日、3日、5日、7日、10日又は14日後の、検出可能な異物反応を導かない。このような一実施形態において、sNAGナノファイバを用いた部位(例えば創傷)の治療は、治療の1日、3日、5日、7日、10日又は14日後の、異物カプセル化を導かない。
【0082】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、(i)大多数のファイバの長さが約1〜15μmのファイバ群を含み、並びに、(ii)(a)MTT分析における血清欠乏ECの代謝率を上昇させる及び/又はトリパンブルー排除試験における血清欠乏ECのアポトーシスを救済せず、及び、(b)筋肉注入試験において試験したときに反応しない。ある実施形態において、sNAGナノファイバは、(i)大多数のファイバの長さが約1〜12μmであるファイバ群を含み、並びに、(ii)(a)MTT分析における血清欠乏ECの代謝率を上昇させる及び/又はトリパンブルー排除試験における血清欠乏ECのアポトーシスを救済せず、及び、(b)筋肉注入試験において試験したときに反応しない。ある実施形態において、sNAGナノファイバは、(i)大多数のファイバの長さが1〜10μmの間(又は範囲内)であるファイバ群を含み、並びに、(ii)(a)MTT分析における血清欠乏ECの代謝率を上昇させる及び/又はトリパンブルー排除試験における血清欠乏ECのアポトーシスを救済せず、及び、(b)筋肉注入試験において試験したときに反応しない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、(i)大多数のファイバの長さが約4〜10μmであるファイバ群を含み、並びに、(ii)(a)MTT分析における血清欠乏ECの代謝率を上昇させる及び/又はトリパンブルー排除試験における血清欠乏ECのアポトーシスを救済せず、及び、(b)筋肉注入試験において試験したときに反応しない。ある実施形態において、sNAGナノファイバは、(i)大多数のファイバの長さが約4〜7μmであるファイバ群を含み、並びに、(ii)(a)MTT分析における血清欠乏ECの代謝率を上昇させる及び/又はトリパンブルー排除試験における血清欠乏ECのアポトーシスを救済せず、及び、(b)筋肉注入試験において試験したときに反応しない。
【0083】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、当業者が決定する場合、S.アウレアスのような微生物の成長又は生存に直接影響しない。他の実施形態において、sNAGナノファイバは、下記の項目6.2.2.5に記載した方法により決定する場合、S.アウレアスのような微生物の成長又は生存に直接影響しない。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、in vitroにおける微生物の成長又は生存に直接影響しない。一実施形態において、sNAGナノファイバは、(例えばin vitroにおける)グラム陰性菌の成長又は生存に直接影響しない。他の実施形態において、sNAGナノファイバは、(例えばin vitroにおける)グラム陽性菌の成長又は生存に直接影響しない。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバは、(例えばin vitroにおける)グラム陽性菌又はグラム陰性菌のいずれかの成長又は生存に直接影響しない。
【0084】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバは、(i)大多数のファイバの長さが約1〜15μm、1〜12μm、1〜10μm、4〜10μm、4〜15μm、5〜10μm、5〜15μm又は4〜7μmの間(又は範囲内)であるファイバ群を含み、(ii)in vitroにおけるスタフィロコッカスアウレアス(Staphylococcus aureus)菌株の細菌成長又は生存に影響せず、並びに、(iii)生体適合性試験(例えば、筋肉注入試験)において試験したときに反応しない。
【0085】
ある実施形態において、sNAGナノファイバは、sNAGナノファイバ組成物で処理又は暴露した細胞、組織又は臓器において、特定の発現(例えば、RT−PCR、マイクロアレイ又はELISAにより決定したRNA又はタンパク質発現)パターンを引き起こさない。特に、いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、1以上のディフェンシンタンパク質、1以上のディフェンシン様タンパク質、及び/又は、1以上のToll様レセプターの発現を誘引する。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、抗菌効果を有することが知られている1以上のタンパク質の発現を誘引する。
【0086】
ある実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、1以上のα−ディフェンシン(例えばDEFA1(例えばα−ディフェンシン1)、DEFA1B、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFA6)、1以上のβ−ディフェンシン(例えばDEFB1(例えばβ−ディフェンシン1)、DEFB2、DEFB4、DEFB103A、DEFB104A、DEFB105B、DEFB107B、DEFB108B、DEFB110、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB127、DEFB128、DEFB129、DEFB131、DEFB136)、及び/又は、1以上のθ−ディフェンシン(例えばDEFT1P)の発現を誘導する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、1以上のDEFA1、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFB1、DEFB3、DEFB103A、DEFB104A、DEFB108B、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB128、DEFB129及びDEFB131の発現を誘導する。ある実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、1以上のTollレセプター(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11及び/又はTLR12)の発現を誘導する。他の実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、1以上のIL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6及びIKKiの発現を誘導する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、1以上のIRAK2、SIGIRR、TLR1、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR10及びTRAF6の発現を誘導する。一実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、上記列挙した遺伝子産物の少なくとも1つの発現を誘導する。
【0087】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、sNAGナノファイバで処理する前の対象の細胞、組織又は臓器における、上記列挙した1以上の遺伝子の発現レベル(例えば、上記列挙した遺伝子の1以上の公知の平均発現レベル)と比較して、約0.25倍、0.5倍、1倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、15倍又は20倍以上の、上記列挙した1以上の遺伝子の発現を誘導する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、sNAGナノファイバで処理する前の対象の細胞、組織又は臓器における、上記列挙した1以上の遺伝子の発現レベル(例えば、上記列挙した遺伝子の1以上の公知の平均発現レベル)の10%、25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、900%又は1000%の、上記列挙した1以上の遺伝子の発現を誘導する。
【0088】
いくつかの実施形態において、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチン及び/又はキトサンではないsNAGナノファイバは、当業者に公知の方法又はここに記載した方法により決定した場合、1以上の上記列挙した遺伝子の発現を誘引する。いくつかの実施形態において、長いポリ−N−アセチルグルコサミン、キチン及び/又はキトサンではないsNAGナノファイバは、当業者に公知の方法又はここに記載した方法により決定した場合、上記列挙した遺伝子の発現を引き起こさない、又は、sNAGナノファイバにより引き起こされる1以上の上記列挙した遺伝子の発現よりも低いレベルの発現(例えば、1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍若しくは10倍以上低い)を誘導する。
【0089】
ある実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、下記の表I、II,III,V、VIII及びIX、項目6.2〜6.5に示した1以上の遺伝子発現特性に一致した、同様の、概ね同一の又は同等の遺伝子発現特性を誘導する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、下記の表I、II,III,V、VIII及びIX、項目6.2〜6.5において、sNAG処理により上方制御された1以上の遺伝子発現を誘導する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、下記の表I、II,III,V、VIII及びIX、項目6.2〜6.5において、sNAG処理により上方制御された遺伝子の大多数又は全ての発現を誘導する。いくつかのこれら実施形態においては、細胞、組織又は臓器をsNAGナノファイバにより処理した、1時間、2時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、48時間、3日又は5日後に、当業者に公知の方法又はここに記載した方法によって遺伝子発現を測定する。
【0090】
ある実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、長いポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー又はファイバにより引き起こされる特性とは異なる遺伝子発現特性を誘導する。特定の実施形態において、sNAGナノファイバにより誘導される遺伝子発現特性は、下記の表I、II,III,V、VIII及びIX、項目6.2〜6.5に示されたものに一致する、同様である、概ね同一である又は同等である一方で、長いポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー又はファイバにより誘導される遺伝子発現特性は、下記の表VIII及び/又はIX、項目6.5に示されたものに一致する、同様である、概ね同一である又は同等である。他の実施形態において、sNAGナノファイバ又はsNAGナノファイバを含む組成物は、キチン又はキトサンが誘導する遺伝子発現特性とは異なる遺伝子発現特性を誘導する。
【0091】
特定の実施形態において、sNAGナノファイバは、ポリ−N−アセチルグルコサミン及び/又はその誘導体に放射線照射することによって得られる。ポリ−N−アセチルグルコサミン及びその誘導体に関しては、下記の項目5.1.1を参照し、放射線照射を用いたsNAGナノファイバを生成するための方法に関しては、下記の項目5.2を参照する。例えばsNAGナノファイバのように、短縮したポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンファイバ及び/又は短縮したポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体ファイバを形成するために、放射線照射は、ポリ−N−アセチルグルコサミンナノファイバ及びポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体ファイバの長さの短縮に用いられる。特に、放射線照射は、ポリ−N−アセチルグルコサミン又はその誘導体の長さ及び分子量を、そのマクロ構造を邪魔することなく減ずる。sNAGナノファイバの赤外線スペクトル(IR)は、放射線照射されていないポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミン又はその誘導体と同様である、概ね同一である又は同等である。
【0092】
一実施形態において、sNAGナノファイバは、キチン又はキトサン由来ではない。他の実施形態に反して、ここに記載した組成物は、キチン若しくはキトサン由来である、又は、sNAGナノファイバは、キチン若しくはキトサン由来である。
【0093】
5.1.1 ポリ−N−アセチルグルコサミン及びその誘導体
US特許番号5,622,834、5,623,064、5,624,679、5,686,115、5,858,350、6,599,720、6,686,342、7,115,588、及び、US特許公開番号2009/0117175(それぞれ参照としてここに組み込む)は、ポリ−N−アセチルグルコサミン及びその誘導体、並びに、これらの生成方法について記載されている。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、β−1→4構造である。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、α−1→4構造である。ポリ−N−アセチルグルコサミン及びその誘導体は、ポリマー形式又はファイバ形式であり得る。
【0094】
ポリ−N−アセチルグルコサミンは、例えば、微小藻類、好ましくは珪藻植物より生成することが可能であり、かつ、精製されてもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの生成出発源として使用される珪藻植物は、Coscinodiscus genus、Cyclotella genus及びThalassiosira genusのメンバーを含むが、これに限定されない。ポリ−N−アセチルグルコサミンは、公知の機械力法及び化学/生物学的方法(例えば、米国特許番号5,622,834、5,623,064、5,624,679、5,686,115、5,858,350、6,599,720、6,686,342及び7,115,588を参照、それぞれの全てを参照としてここに組み込む)を含む、多くの異なる方法を介して、珪藻植物菌株から得ることができる。ある実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、アワビ、甲殻類、昆虫、真菌又は酵母の1つ以上に由来しない。
【0095】
一実施形態において、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンは、a)細胞体及びポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバを含む微小藻類を、十分な時間でN−アセチルグルコサミンポリマーファイバを細胞体から分離可能な生物因子(フッ化水素のような)で処理することによって、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバを細胞体から放出させる工程、b)ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバを細胞体から分離する工程、及び、c)分離されたポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーファイバから不純物を除去し、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンポリマーを単離及び精製する工程を含む処理により得られる。
【0096】
他の実施形態において、ポリ−β−1→4−N−アセチルグルコサミンは、アワビ、甲殻類、昆虫、真菌又は酵母の1つ以上に由来してもよい。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、キチン又はキトサンを含まない。
【0097】
ポリ−N−アセチルグルコサミンの単糖類単位の1以上は、脱アセチル化されていてもよい。ある実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%〜5%、5%〜10%、5%〜15%、20%〜30%又は25%〜30%は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%、5%、10%、15%、20%、25%又は30%は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%未満は、脱アセチル化されている。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%若しくは99%以上、又は、全て(100%)は、脱アセチル化されている。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%未満は、脱アセチル化されている。
【0098】
ある実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミン(例えばN−アセチルグルコサミン)単糖類を、70%〜80%、75%〜80%、75%〜85%、85%〜95%、90%〜95%、90%〜99%又は95%〜100%含む。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミン(例えばN−アセチルグルコサミン)単糖類を、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%含む。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミンを、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%より多く含む。いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミンを、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%以上含む、又は、全て(100%)において含む。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、アセチル化グルコサミンを、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%以下含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、少なくとも1つのグルコサミン単糖類を含み、さらに、N−アセチルグルコサミン単糖類を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%含んでもよい。他の実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン組成物は、少なくとも1つのN−アセチルグルコサミン単糖類を含み、さらに、グルコサミン単糖類を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%含んでもよい。
【0100】
ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体は、また、ここに記載した組成物において用いられ得る。ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体及びこのような誘導体を生成する方法は、米国特許番号5,623,064(例えば項目5.4参照)に記載されており、その全てを参照としてここに組み込む。ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体は、部分的に若しくは完全に脱アセチル化されたポリ−N−アセチルグルコサミン、又は、その脱アセチル化された誘導体を含んでもよいが、これに限定されない。さらに、ポリ−N−アセチルグルコサミンは、硫酸化、リン酸化及び/又は硝酸化により誘導体化されてもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体は、例えば、硫酸化ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体、リン酸化ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体、又は、硝酸化ポリ−N−アセチルグルコサミン誘導体を含む。さらに、ポリ−N−アセチルグルコサミンの単糖類単位の1以上は、1以上のスルホニル基、1以上のO−アシル基を含んでもよい。さらに、脱アセチル化ポリ−N−アセチルグルコサミンの1以上の単糖類は、N−アシル基を含んでもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミン又はその脱アセチル化誘導体の1以上の単糖類は、O−アルキル基を含んでもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの単糖類単位の1以上は、アルカリ誘導体であってもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1以上は、N−アルキル基を含んでもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1以上は、少なくとも1つのデオキシハロゲン誘導体を含んでもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1以上は、塩を形成してもよい。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1以上は、金属キレートを形成してもよい。特定の実施形態において、金属は亜鉛である。ポリ−N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化誘導体の単糖類単位の1以上は、N−アルキリデン基又はN−アリ−リデン基を含んでもよい。一実施形態において、上記誘導体は酢酸塩誘導体である。他の実施形態において、上記誘導体は酢酸塩誘導体ではない。一実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミン又は脱アセチル化ポリ−N−アセチルグルコサミンは、乳酸により誘導体化される。他の実施形態において、上記誘導体は、乳酸により誘導体化されない。
【0101】
5.2 sNAGナノファイバの生成方法
ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー若しくはファイバ、並びに、上記ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー若しくはファイバ誘導体のいずれかは、乾燥ポリマー若しくはファイバ、又は、ポリマー膜若しくはファイバ膜として、放射線照射することができる。代替として、ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー若しくはファイバ、並びに、上記ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー若しくはファイバ誘導体のいずれかは、湿った状態で放射線照射することができる。放射線照射によりsNAGナノファイバを生成する方法、及び、そのように生成したsNAGナノファイバは、米国特許公開番号2009/0117175に記載されており、その全てを参照としてここに組み込む。
【0102】
ある実施形態において、ポリ−N−アセチルグルコサミンポリマー又はファイバは、放射線照射のために、懸濁液/スラリー又はウエットケーキの形態にする。放射線照射は、手当用品のような最終形態に上記ポリマー又はファイバを成形する前、同時又は後に、行うことができる。一般に、懸濁液/スラリー及びウエットケーキの、上記ポリマー又はファイバ含有量は様々であり、例えば、蒸留水1mLあたり約0.5mg〜約50mgのポリマー又はファイバをスラリー成形のために用い、蒸留水1mLあたり約50mg〜約1000mgのポリマー又はファイバをウエットケーキ成形のために用いる。ポリマー又はファイバを、まず、凍結乾燥、液体窒素凍結及び粉砕し、懸濁液/スラリー又はウエットケーキの成形のために、より影響されやすくしてもよい。また、懸濁液/スラリーをろ過して水を取り除くことによって、ウエットケーキを形成してもよい。ある局面において、上記ポリマー又はファイバを、蒸留水1mLあたり約0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、12mg、15mg、18mg、20mg、25mg若しくは50mg、又は、上記実施形態のいずれかの範囲(例えば1〜10mg/mL、5〜15mg/ml、2〜8mg/ml、20〜50mg/ml等)のポリマー又はファイバを含む懸濁液として、放射線照射する。他の局面において、ポリマー又はファイバを、蒸留水1mLあたり約50〜1000mgのポリマー又はファイバを含むウエットケーキとして、放射線照射する。特定の実施形態において、ウエットケーキは、蒸留水1mLあたり約50、100、200、300、400、500、600、700、800、900若しくは1,000mg、又は、いずれかの範囲(例えば100〜500mg/ml、300〜600mg/ml、50〜1,000mg/ml等)のポリマー又はファイバを含む。
【0103】
放射線照射は、好ましくは、ガンマ線、電子ビーム線又はX線の形式である。放射線照射の2つの発生源は、好ましくは、放射線核種及び電気である。特定の実施形態において、放射線核種はコバルト60及びセシウム137である。これらの核種の両方はガンマ線を放出し、質量のない光子である。ガンマ線のエネルギーは、0.66〜1.3MeVである。電気を用いるとき、電子を生成し、10MeV又はそれより高くなるまでエネルギーを高める。ポリマー又はファイバに放射線を照射してその長さを減じるとき、10MeVの電子による、約3.7cmの一方向照射、又は、約8.6cmの二方向照射に限定することによって、水と同様の密度を有する材料への侵入深さを考慮する。侵入深さはより低い電子エネルギーにおいて減少する。電子ビーム経路に金属ターゲット(通常タングステン又はタンタル)を配置することによって、電子エネルギーをX線に変換することができる。X線への返還は、エネルギーが5MeVまでの電子に限定される。X線は、質量のない光子でありガンマ線と同様に、ポリマー又はファイバに侵入することができる。電子エネルギーからX線エネルギーへの変換は、わずか約8%の効率である。変換効率の低さを補うために、X線生成設備として高出力の電子ビーム装置が必要である。
【0104】
特定の実施形態において、放射線照射はガンマ線照射である。
【0105】
放射線照射の吸収線量は、グレイ(gy)又はキログレイ(kgy)で測定され、製品の単位質量あたりのエネルギー吸収である。乾燥ポリマー又はファイバのために、好ましい吸収線量は、約500〜2,000kgyの放射線照射であり、最も好ましくは約750〜1,250kgy又は約900〜1,100kgyの放射線照射である。ウエットポリマー又はファイバのために、好ましい吸収線量は、約100〜500kgyの放射線照射であり、最も好ましくは約150〜250kgy又は約200〜250kgyの放射線照射である。
【0106】
放射線照射量は、ポリマー又はファイバの長さにおけるその効果に関して記載することができる。特定の実施形態において、好ましく使用される放射線照射量は、ポリマー又はファイバそれぞれの開始時の長さの約10%〜90%のいずれかに、ポリマー又はファイバの長さを減じる放射線照射量である。特定の実施形態において、平均の長さを、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%若しくは約90%、又は、いずれかの範囲(例えば20〜40%、30〜70%等)に減じる。代替として、好ましく使用される放射線照射量は、ポリマー又はファイバの長さを、1〜100μmのいずれかに減ずる放射線照射量である。特定の実施形態において、また、開始時のファイバの長さに応じて、ポリマー又はファイバの長さを、約15μm未満、約14μm未満、約13μm未満、約12μm未満、約11μm未満、約10μm未満、約8μm未満、約7μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満又は約1μm未満に減じる。ある実施形態において、大多数の(さらに、ある実施形態において、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%の)ポリマー又はファイバの長さを、約20μm未満、約15μm未満、約12μm未満、約10μm未満、約8μm未満、約7μm未満又は約5μm未満に減じる。ある実施形態において、ポリマー又はファイバの放射線照射を、大多数の(さらに、ある実施形態において、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%の)ファイバの長さを、約1〜20μm、約1〜15μm、約2〜15μm、約1〜12μm、約2〜12μm、約1〜10μm、約2〜10μm、約1〜8μm、約2〜8μm、約1〜7μm、約2〜7μm、約3〜8μm、約4〜10μm、約4〜7μm、約5〜10μm、約1〜5μm、約2〜5μm、約3〜5μm、約4〜10μm又は上述の長さ範囲のいずれかに減ずることもまた、本発明の範疇である。
【0107】
放射線照射量は、ポリマー又はファイバの分子量に対するその効果に関して記載することもできる。特定の実施形態において、好ましく使用される放射線照射量は、開始時のポリマー又はファイバの分子量を、約10%〜90%のいずれかに減ずる放射線照射量である。特定の実施形態において、平均分子量を、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%若しくは約90%、又は、いずれかの範囲(例えば、20〜40%、30〜70%等)に減ずる。代替として、好ましく使用される放射線照射量は、ポリマー又はファイバの分子量を、1,000〜1,000,000ダルトンのいずれかに減ずる放射線照射量である。特定の実施形態において、また、開始時の分子量に応じて、ポリマー又はファイバの平均分子量を、1,000,000ダルトン未満、750,000ダルトン未満、500,000ダルトン未満、300,000ダルトン未満、200,000ダルトン未満、100,000ダルトン未満、90,000ダルトン未満、80,000ダルトン未満、70,000ダルトン未満、60,000ダルトン未満、50,000ダルトン未満、25,000ダルトン未満、10,000ダルトン未満又は5000ダルトン未満に減ずる。ある実施形態において、平均分子量を、少なくとも500ダルトン、1,000ダルトン、2,000ダルトン、3,500ダルトン、5,000ダルトン、7,500ダルトン、10,000ダルトン、25,000ダルトン、50,000ダルトン、60,000ダルトン又は100,000ダルトンに減ずる。上記平均分子量の何れかの範囲として、例えば、ある実施形態において、ポリマー又はファイバの放射線照射により減じる範囲が、10,000〜100,000ダルトン、1,000〜25,000ダルトン、50,000〜500,000ダルトン、25,000〜100,000ダルトン、30,000〜90,000ダルトン、約40,000〜80,000ダルトン、約25,000〜75,000ダルトン、約50,000〜70,000ダルトン又は約55,000〜65,000ダルトン等のいずれかである場合も、発明の範疇に含まれる。ある実施形態において、ポリマー又はファイバの放射線照射は、大多数及びある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のファイバの分子量を、約20,000〜100,000ダルトン、約25,000〜75,000ダルトン、約30,000〜90,000ダルトン、約40,000〜80,000ダルトン、約50,000〜70,000ダルトン又は約55,000〜65,000ダルトンの範囲の何れかに減ずる。ある実施形態において、ポリマー又はファイバの放射線照射は、大多数及びある実施形態においては、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.8%、99.9%若しくは100%、又は、55%〜65%、55%〜75%、65%〜75%、75%〜85%、75%〜90%、80%〜95%、90%〜95%若しくは95%〜99%のファイバの分子量を、約60,000ダルトンに減ずる。
【0108】
放射線照射に続いて、スラリーをろ過して乾燥させる、及び、ウエットケーキを乾燥させることが可能であり、これにより、本発明の実施に有用な組成物(例えば、手当用品及びここに記載した他の組成物)を形成することができる。
【0109】
5.3 sNAGナノファイバを含む組成物
sNAGナノファイバを、ここに記載したように局所投与するために、種々の組成物に成形してもよい。
【0110】
sNAGナノファイバを含む組成物は、クリーム、膜、フィルム、液体溶液、懸濁液(例えば濃厚懸濁液)、粉、ペースト、軟膏、座薬、ゲル化組成物、噴霧剤、ゲル又はスプレーとして形成してもよい。一実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物は、極薄膜として形成する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物は、手当用品、マット又は包帯として形成する。特定の実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物は、硬くない、又は、障壁形成されていない。投与前の液体中の溶液若しくは懸濁液に適した硬い形状もまた検討する。このような組成物を、(臀部、膝、肩のための)整形インプラント(ピン、ネジ等)、心臓血管インプラント(ステント、カテーテル等)及び抗菌活性に効果的な同様のもののような、移植可能な装置に組み込む又は移植可能な装置で被覆することも可能である。
【0111】
sNAGナノファイバを含む組成物は、1以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。適切な賦形剤は、水、生理食塩水、食塩水、ぶどう糖、グリセロース、エタノール及び同様のもの、又は、これらの組み合わせを含んでもよい。適切な賦形剤は、また、でんぷん、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦、石灰粉末、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール・モノステアレート、油(ピーナツ油、大豆油、鉱物油、ごま油のような、石油、動物油、野菜油又は合成源油)、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、プロピレン、グリコール等も含む。さらに、sNAGナノファイバを含む組成物は、1以上の湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤及び他の薬剤を含んでもよい。sNAGナノファイバ組成物は、例えば、局所投与に適した生理学的に許容されるキャリアのような、生理学的に許容されるキャリアに組み込まれてもよい。用語「薬学的に許容される」は、連邦若しくは州政府の規制当局、米国薬局方に列挙された規制当局、又は、一般的に認識された薬局方によって、動物及びより具体的にはヒトにおいて使用することが承認されていることを意味する。適切な薬学キャリアは、E.W. Martin による「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0112】
組成物中のsNAGナノファイバの終量は様々であってよい。例えば、(例えば患者に投与するために調製した)組成物中のsNAGナノファイバの終量は、約50w/v%以上、約60w/v%以上、約70w/v%以上、約75w/v%以上、約80w/v%以上、約85w/v%以上、約90w/v%以上、約95w/v%以上、約98w/v%以上又は約99w/v%以上であってもよい。一実施形態において、組成物中のsNAGナノファイバの量は、約95%、約98%、約99%又は約100%である。また、(例えば、患者に投与するために調製した)組成物中のsNAGナノファイバの量は、約50w/v%〜100w/v%、約60w/v%〜100w/v%、約70w/v%〜100w/v%、約75w/v%〜100w/v%、約80w/v%〜100w/v%、約90w/v%〜100w/v%、約95w/v%〜100w/v%、約70w/v%〜95w/v%、約75w/v%〜95w/v%、約80w/v%〜95w/v%、約90w/v%〜95w/v%、約70w/v%〜90w/v%、約75w/v%〜90w/v%又は約80w/v%〜90w/v%であってもよい。組成物は、sNAGナノファイバの30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%又は99%より多い溶液を含んでいてもよい。
【0113】
sNAGナノファイバ組成物は、創傷包帯中に形成してもよい。ある実施形態において、sNAGナノファイバ組成物を、バリア、膜又はフィルムの形式の創傷包帯として形成する。代替として、sNAGナノファイバ組成物を、バリア、膜又はフィルムのように、手当用品の基材に添加してもよい。バリア、膜又はフィルムは、様々な標準サイズで供給することが可能であり、さらに、切断して治療する領域に合わせた大きさにすることができる。基剤は、包帯又はガーゼのような従来の手当用品材料から形成することが可能であり、患者に適用する前に、ポリマー又はファイバを添加又は被覆する。代替として、sNAGナノファイバを、糸、マイクロビーズ、ミクロスフェア若しくは微小線維により形成したバリア、膜若しくはフィルムとして形成することが可能であり、又は、組成物をバリア形成マットとして形成することができる。ある実施形態において、手当用品の少なくとも75%、85%、90%又は95%がsNAGナノファイバにより構成されている。ある局面において、手当用品は、ガーゼ又は包帯のような従来の手当用品材料を含んでいない。このような実施形態においては、sNAGナノファイバ自身を創傷包帯として形成する。
【0114】
sNAGナノファイバを含む組成物は、さらに、適切な天然又は合成ポリマー又はファイバを含んでいてもよい。適切なポリマー又はファイバの例には、セルロースポリマー、キサン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド/イミド、ポリアミドヒドラジド、ポリヒドラジド、ポリイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリエステル/アミド、ポリエステル/イミド、ポリカーボネート/アミド、ポリカーボネート/イミド、ポリスルホン/アミド、ポリスルホンイミド等、並びに、これらのコポリマー及び混合物が含まれる。ポリマー又はファイバの他の適切な部類には、ポリフッ化ビニリデン及びポリアクリロニトリルが含まれる。これらのポリマー又はファイバの例には、米国特許番号RE 30,351、4,705,540、4,717,393、4,717,394、4,912,197、4,838,900、4,935,490、4,851,505、4,880,442、4,863,496、4,961,539、並びに、欧州特許出願0 219 878に記載されたものが含まれ、これらを参照として組み込む。ポリマー又はファイバは、少なくとも1つの、セルロースポリマー、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアミド/イミド又はポリイミドのいずれかを含むことができる。ある実施形態において、ポリマー又はファイバは、ポリアラミド、ポリエステル、ウレタン及びポリテトラフルオロエチレンを含む。一実施形態において、ここに記載した組成物は、一種類以上のポリマーを含む(例えば、sNAGナノファイバ及びセルロース)。
【0115】
ある局面において、sNAGナノファイバは、組成物中の唯一の活性成分である。
【0116】
他の実施形態において、組成物は、例えば、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗酵母剤、化学療法薬剤又は他のいずれかの薬剤のような、1以上の添加活性成分を含む。いくつかの実施形態において、添加活性成分は、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗酵母剤、ディフェンシンペプチド、ディフェンシン様ペプチド若しくはTollレセプター様ペプチド、又は、成長因子の1つ以上である。特定の実施形態において、添加活性成分は、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PDGF−CC、PDGF−DD、FGF−1、FGF−2、FGF−5、FGF−7、FGF−10、EGF、TGF−α、(HB−EGF)、アンフィレグリン(amphiregulin)、エピレグリン(epiregulin)、ベータセルリン(betacellulin)、ニューレグリン(neuregulins)、エピゲン(epigen)、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C, VEGF−D、VEGF−E、胎盤成長因子(PLGF)、アンジオポイエチン(angiopoietin)−1、アンジオポイエチン−2、IGF−I、IGF−II、肝細胞成長因子(HGF)及びマクロファージ刺激タンパク質(MSP)の1つ以上のような、成長因子である。他の実施形態において、添加活性成分は、免疫システム、痛み止め剤又は解熱剤を増強する薬剤である。
【0117】
ある実施形態において、添加活性成分は抗ウイルス剤である。当業者に公知のいずれかの抗ウイルス剤を、sNAGナノファイバ組成物において使用してもよい。抗ウイルス剤の限定されない例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体、核酸分子、有機分子、無機分子及び小分子が含まれ、これらは、そのレセプターへのウイルスの付着、細胞中へのウイルスの内在化、ウイルスの複製、又は、細胞からのウイルスの放出を、抑制及び/又は減ずる。特に、抗ウイルス剤には、ヌクレオシド類似物(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガングシクロビル、ビダラビン、イドクスリジン、トリフルリジン及びリバビリン)、ホスミシン、アマンタジン、ペラミビル(peramivir)、リマンタジン(rimantadine)、サクイナビル(saquinavir)、インジナビル(indinavir)、リトナビル(ritonavir)、α−インターフェロン及び他のインターフェロン、AZT、ザナミビル(Relenza(登録商標))、及び、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))が含まれるが、これに限定されない。他の抗ウイルス剤は、例えば、Fluarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)、FluMist(登録商標)(MedImmune Vaccines)、Fluvirin(登録商標)(Chiron Corporation)、Flulaval(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Afluria(登録商標)(CSL Biotherapies Inc.)、Agriflu(登録商標)(Novartis)又はFluzone(登録商標)(Aventis Pasteur)のような、インフルエンザウイルスワクチンを含む。
【0118】
ある実施形態において、添加活性成分は抗がん剤である。特定の実施形態において、抗がん剤は化学療法薬剤である。当業者に公知のいずれかの抗がん剤を、sNAGナノファイバ組成物中で使用してもよい。抗がん剤の例には、アシビチン(acivicin)、アントラサイクリン、アントラマイシン、アザシチジン(Vidaza)、ビスホスホネート(例えば、パミドロネート(Aredria)、クロンドロネートナトリウム(Bonefos)、ゾレドロン酸(Zometa)、アレンドロネート(Fosamax)、エチドロネート、イバンドロネート、シマドロネート、リセドロメート及びチルドロメート)、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン(Ara−C)、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン(Dacogen)、脱メチル化剤、ドセタキセル、ドキソルビシン、EphA2インヒビター、エトポシド(etoposide)、ファザラビン(fazarabine)、フルオロウラシル、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒストン脱アセチル酵素インヒビター(HDACs)、インターロイキンII(組み換えインターロイキンII又はrIL2を含む)、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、レナリドミド(Revlimid)、抗−CD2抗体(例えば、シプリツマブ(MedImmune Inc.、国際公開番号WO 02/098370、その全てを参照としてここに組み込む))、メルファラン、メトトレキサート、マイトマイシン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ピューロマイシン、リボプリン(riboprine)、スピロプラチン(spiroplatin)、テガフル、テニポシド(teniposide)、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ボロゾール(vorozole)、ゼニプラチン(zeniplatin)、ジノスタチン(zinostatin)及びゾルビシン(zorubicin)塩酸塩が含まれる。
【0119】
sNAGナノファイバ組成物中で使用し得る添加活性成分の他の例には、脈管形成インヒビター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アポトーシス遺伝子モジュレーター、アポトーシスレギュレーター、BCR/ABLアンタゴニスト、ベータラクタム誘導体、カゼインキナーゼインヒビター(ICOS)、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、グルタチオンインヒビター、HMG CoA還元酵素インヒビター、免疫刺激ペプチド、インスリン様成長因子−1レセプターインヒビター、インターフェロンアゴニスト、インターフェロン、インターロイキン、親油性プラチナ化合物、マトリリシン(matrilysin)インヒビター、マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビター、不適合二本鎖RNA、一酸化窒素モジュレーター、オリゴヌクレオチド、プラチナ化合物、タンパク質キナーゼCインヒビター、タンパク質チロシンリン酸化酵素インヒビター、プリンヌクレオシドリン酸化酵素インヒビター、rafアンタゴニスト、情報伝達インヒビター、情報伝達モジュレーター、翻訳インヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、及び、ウロキナーゼレセプターアンタゴニストが含まれるが、これに限定されない。
【0120】
ある実施形態において、添加活性成分は抗脈管形成剤である。抗脈管形成剤の限定されない例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、共役剤、TNF−αに特異的に結合するような抗体(例えば、ヒト、ヒト化した、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fvs、ScFvs、Fabフラグメント、F(ab)2フラグメント及びそのフラグメントに結合する抗原)、核酸分子(例えば、アンチセンス分子又は三重螺旋)、有機分子、無機分子及び小分子が含まれ、脈管形成を減ずる又は抑制する。抗脈管形成剤の他の例は、例えば、米国公開番号2005/000234A1の段落277〜282に見られ、その全てを参照としてここに組み込む。他の実施形態において、添加活性成分は、抗脈管形成剤ではない。
【0121】
いくつかの実施形態において、添加活性成分は、抗炎症剤である。抗炎症剤の限定されない例には、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)(例えば、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))、ジクロフェナク(VOLTAREN(登録商標))、エトドラク(LODINE(登録商標))、フェノプロフェン(NALFON(登録商標))、インドメタシン(INDOCIN(登録商標))、ケトララック(TORADOL(登録商標))、オキサプロジン(DAYPRO(登録商標))、ナブメントン(RELAFEN(登録商標))、スリンダック(CLINORIL(登録商標))、トルメンチン(TOLECTIN(登録商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(登録商標))、ナプロセン(ALEVE(登録商標)、NAPROSYN(登録商標))、ケトプロフェン(ACTRON(登録商標))及びナブメトン(RELAFEN(登録商標)))、ステロイド抗炎症薬(例えば、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON(登録商標))、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MEDROL(登録商標)))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(PREDNISONE(登録商標)及びDELTASONE(登録商標))及びプレドニゾロン(PRELONE(登録商標)及びPEDIAPRED(登録商標)))、抗コリン作用薬(例えば、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン及び臭化イプラトロピウム(ATROVENT(登録商標)))、ベータ2−アゴニスト(例えば、アブテロール(VENTOLIN(登録商標)及びPROVENTIL(登録商標))、ビトルテロール(TORNALATE(登録商標))、レバルブテロール(XOPONEX(登録商標))、メタプロテレノール(ALUPENT(登録商標))、ピルブテロール(MAXAIR(登録商標))、ターブトライン(BRETHAIRE(登録商標)及びBRETHINE(登録商標))、アルブテロール(PROVENTIL(登録商標)、REPETABS(登録商標)及びVOLMAX(登録商標))、フォルモテロール(FORADIL AEROLIZER(登録商標))及びサルメテロール(SEREVENT(登録商標)及びSEREVENT DISKUS(登録商標)))、並びに、メチルキサンチン(例えば、テオフィリン(UNIPHYL(登録商標)、THEO−DUR(登録商標)、SLO−BID(登録商標)及びTEHO−42(登録商標)))が含まれる。
【0122】
ある実施形態において、添加活性成分は、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼIIインヒビター又は分裂インヒビターである。アルキル化剤には、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、クロルムブチル、シクロホスファミド、イフォスファミド、デカルバジン、メクロレタミン、メファレン及びテモゾロミドが含まれるが、これに限定されない。ニトロソウレアには、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)が含まれるが、これに限定されない。代謝拮抗剤には、5−フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキサート、ゲムシタビン及びフルダラビンが含まれるが、これに限定されない。アントラサイクリンには、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトザントロンが含まれるが、これに限定されない。トポイソメラーゼIIインヒビターには、トポテカン、イリノテカン、エトピシド(VP−16)及びテニポシドが含まれるが、これに限定されない。分裂インヒビターには、テキサン(パクリタキシル、ドセタキシル)及びビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)が含まれるが、これに限定されない。
【0123】
sNAGナノファイバ組成物は、コラーゲンを含んでいてもよいが、ある局面において、sNAGナノファイバ組成物はコラーゲンを含んでいない。
【0124】
ある実施形態において、sNAGナノファイバ組成物は別の療法を含んでいない。ある実施形態において、sNAGナノファイバ組成物は、いかなる別の抗ウイルス剤、抗がん剤、抗菌剤、抗酵母剤、抗炎症剤、化学療法剤、抗脈管形成剤、ディフェンシンペプチド、ディフェンシン様ペプチド、Tollレセプター様ペプチド又は成長因子も含んでいない。
【0125】
いくつかの実施形態において、別の活性成分は、抗微生物剤(例えば、抗生物質、ディフェンシンペプチド、ディフェンシン様ペプチド若しくはTollレセプター様ペプチド)又は成長因子ではない。特定の実施形態において、別の活性成分は、PDGF−AA、PDGF−AB、PDGF−BB、PDGF−CC、PDGF−DD、FGF−1、FGF−2、FGF−5、FGF−7、FGF−10、EGF、TGF−α、(HB−EGF)、アンフィレグリン、エピレグリン、ベータセルリン、ニューレグリン、エピゲン、VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E、胎盤成長因子(PLGF)、アンジオポイエチン−1、アンジオポイエチン−2、IGF−I、IGF−II、肝細胞成長因子(HGF)及びマクロファージ刺激タンパク質(MSP)のような成長因子ではない。ある実施形態において、別の活性成分は、免疫システム、鎮痛剤又は解熱剤を促進する薬剤ではない。
【0126】
ある実施形態において、別の活性成分は、抗生物質の下記分類の1つから選択される抗生物質ではない:マイクロライド(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン)、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン)、セファロスポリン(例えば、セファドロキシル、セファクロール、セファタキシン、セフェピン)、フルオロキノロン(例えば、チプロフロキサシン、レボフロキサシン)、ペニシリン(例えば、ペニシリン、アンピシリン、アモキシリン)、テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン)、及び、カルバペネン(例えば、メロペネン、イミペネン)。いくつかの実施形態において、別の活性成分は、バンコマイシン、サルファ剤(例えば、コトリモキサゾール/トリメトプリムスルファメトキサゾール)、テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリン)、クリンダマイシン、オキサソリジノン(例えば、リンゾリド)、ダプトマイシン、テイコプラニン、クイヌプリスチン/ダルフォプリスチン(シネルシド)、タイゲサイクリン、アリシン、バシトラシン、ニトロフラントイン、過酸化水素、ノボビオシン、ネチルマイシン、メチルグリオキサル、ビーディフェンシン−1、トブラマイシン、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシジングルコネート、レボフロキサシン、亜鉛、及び/又は、銀ではない。
【0127】
他の局面において、sNAGナノファイバ組成物は、有意な量のタンパク質材料を含んでいない。特定の実施形態において、sNAGナノファイバ組成物のタンパク質含有量は、0.1w%、0.5w%又は1w%以下である。他の実施形態において、上記組成物のタンパク質含有量はクマシー染色により検出されない量である。
【0128】
一実施形態において、亜鉛もsNAGナノファイバ組成物に含まれている。その抗微生物特性に加えて、亜鉛は、創傷治癒においても機能する(Andrews et al.,1999,Adv Wound Care 12:137−8参照)。亜鉛を、好ましくは、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛又はグルコン酸亜鉛のような、塩の形態で添加する。
【0129】
5.4 予防及び療法のための使用
ある実施形態において、ここに記載した組成物は、感染及び/又は疾患の予防及び/又は治療に使用可能であり、ディフェンシン生成及び/又は分泌の増加に有益である。このような疾患は、ディフェンシン欠乏の結果として引き起こされ得る、又は、ディフェンシンの存在量の増加が効果的であり得る。
【0130】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物は、1以上のディフェンシンペプチドの無発現若しくは低発現レベルに関連する疾患、又は、1以上のディフェンシンペプチドをコードする遺伝子若しくは遺伝子群の変異/欠失/低遺伝子コピー数(「GCN」)
に関連する疾患、の治療及び/又は予防に用いられる。変異/欠失/低GCN/無発現又は低発現若しくは発現が改変され得るディフェンシン遺伝子の例には、公知のα−ディフェンシン(例えば、DEFA1、DEFA1B、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFA6)のいずれか、公知のβ−ディフェンシン(例えば、DEFB1、DEFB2、DEFB4、DEFB103A、DEFB104A、DEFB105B、DEFB107B、DEFB108B、DEFB110、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB127、DEFB128、DEFB129、DEFB131、DEFB136)のいずれか、及び、公知のθ−ディフェンシン(例えば、DEFT1P)のいずれかが含まれる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、上記列挙した1以上の遺伝子における、無発現、低発現若しくは発現の改変、又は、変異/欠失/低GCN、に関連する疾患又は感染の治療又は予防に用いる。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、1以上の、DEFA1、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFB1、DEFB3、DEFB103A、DEFB104A、DEFB108B、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB128、DEFB129及びDEFB131における、無発現、低発現若しくは発現の改変、又は、変異/欠失/低GCN、に関連する疾患又は感染の治療又は予防に用いる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、1以上のTollレセプター(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11及び/又はTLR12)における、無発現、低発現若しくは発現の改変、又は、変異/欠失/低GCN、に関連する疾患又は感染の治療又は予防に用いる。さらに他の実施形態において、ここに記載した組成物を、1以上のIL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1−l様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6及びIKKiにおける、無発現、低発現若しくは発現の改変、又は、変異/欠失/低GCN、に関連する疾患又は感染の治療又は予防に用いる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、1以上のRAK2、SIGIRR、TLR1、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR10及びTRAF6における、無発現、低発現若しくは発現の改変、又は、変異/欠失/低GCN、に関連する疾患又は感染の治療又は予防に用いる。
【0131】
遺伝子の低発現レベルは、「標準的な」発現レベルよりも低い(例えば、1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍以上低い)レベルである。遺伝子の改変された発現レベルは、「標準的な」発現レベルとは異なる(例えば、20%、25%、30%、50%、75%、100%、150%、200%、250%、300%以上異なる)レベルである。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与した患者における、1以上のディフェンシン遺伝子(例えば、上記列挙したディフェンシン遺伝子)の発現は、1以上のディフェンシン遺伝子の「標準的な」発現の、90%未満、75%未満、60%未満、50%未満、30%未満、20%未満であってもよい。1以上のディフェンシン遺伝子の「標準的な」発現とは、(i)治療する疾患又は感染の症状を示さない又は診断されていない患者において見られる公知の平均発現レベル、(ii)治療する疾患又は感染の症状を示さない又は診断されていない対象の3、5、10、20、25、50又はそれ以上において検出される平均発現レベル、及び/又は、(iii)疾患又は感染に攻撃される前に、ここに記載した組成物を投与した患者において検出される発現レベル、である。
【0132】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、固形腫瘍癌の治療のために用いる。作用のいずれの機構にも結びつけることなく、アルファ及びベータディフェンシン(例えば、ベータ−ディフェンシン1)により誘引されるsNAGナノファイバの能力は、sNAGナノファイバの抗がん活性に寄与することであってもよい。ヒトアルファ及びベータディフェンシン(例えば、ベータ−ディフェンシン1)は、抗がん活性を有することを示している。ここに記載した組成物により治療可能な固形腫瘍癌には、骨及び結合組織肉腫、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、すい臓癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、咽喉癌及び中皮腫)、肝臓癌、及び、前立腺癌が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染に起因する又は関連した癌の治療のために用いる。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、カポジ肉腫の治療のために用いる。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによる固形腫瘍を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:固形腫瘍サイズの縮小;固形腫瘍の転移抑制;固形腫瘍の再発防止;固形腫瘍に関連する1以上の症状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;固形腫瘍に関連する症状数の削減;固形腫瘍サイズ増大の抑制;固形腫瘍の癌細胞増殖の削減/抑制;固形腫瘍に関連する臓器不全の低減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;対象の生存率の上昇;及び/又は対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。
【0133】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を皮膚癌の治療に用いる。ここに記載した組成物により治療できる皮膚癌の例には、黒色腫、基底細胞癌及び扁平上皮細胞癌が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによる皮膚癌を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:皮膚癌サイズの縮小;皮膚癌の転移抑制;皮膚癌の再発防止;皮膚癌に関連する1以上の症状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;皮膚癌に関連する症状数の削減;皮膚癌に関連する臓器不全の低減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;対象の生存率の上昇;及び/又は対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。
【0134】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を炎症性腸疾患(IBD)の治療のために用いる。作用のいずれの機構にも結びつけることなく、アルファ及びベータディフェンシンにより誘引されるsNAGナノファイバの能力は、sNAGナノファイバの抗IBD活性に寄与し得る。アルファ及びベータディフェンシンは抗IBD活性を有することが示されている。IBDには、クローン病及び潰瘍性大腸炎が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによるIBDを有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:IBDの再発防止;IBDに関連する1以上の病状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;IBDに関連する症状数の削減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;及び/又は対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。IBDの行くつかの症状には、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、骨盤領域における重篤な内部痙攣/筋肉痙攣、体重減少、並びに、関節炎、壊疽性膿皮症及び/又は原発性硬化性胆管炎のような種々の関連する不具合又は疾患が含まれる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、上記列挙した症状若しくは当該分野で公知の他の症状の1つ以上の攻撃若しくは進行を防ぐ、又は、1以上のこれらの症状の持続期間を短縮及び/若しくは重症度を軽減する。一実施形態において、ここに記載した組成物を、潰瘍性大腸炎の治療のために用いる。潰瘍性大腸炎の症状には、上記列挙したIBDの症状が含まれてもよく、また、頻繁な粘液様排便及び血便、しぶり、並びに/又は、発熱が含まれていてもよい。下記の実施例9は、IBDの動物モデルにおいて得たデータに基づいて、sNAGナノファイバがIBDの治療に効果的であることを示す。IBD治療のために用いることが可能なsNAGナノファイバを含む組成物は、ここに記載したsNAG組成物であってもよい。一実施形態において、IBD治療のために用いることができるsNAGナノファイバを含む組成物は、実施例9に記載した組成物と同一又は同様である。
【0135】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、クローン病(例えば、回腸クローン病)の治療のために用いる。作用のいずれの機構にも結びつけることなく、アルファ及びベータディフェンシンにより誘引されるsNAGナノファイバの能力は、sNAGナノファイバの抗クローン病活性に寄与し得る。アルファ及びベータディフェンシンは、抗クローン病活性を有することが示されている。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによるクローン病を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:クローン病の再発防止;クローン病に関連する1以上の症状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;クローン病に関連する症状数の削減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;及び/又は対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。クローン病のいくつかの症状には、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、骨盤領域における重篤な内部痙攣/筋肉痙攣、体重減少、並びに、関節炎、壊疽性膿皮症及び原発性硬化症胆管炎のような種々の関連する不具合又は疾患が含まれる。クローン病の症状には、また、頻繁な粘液様排便及び時々の脂肪便、発熱、婁孔形成、膨満、鼓脹、かゆみ及び痛みのような肛門周囲の不快感、便失禁、口腔内アフター性潰瘍、並びに/又は、体重減少も含まれる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、上記列挙した症状若しくは当該分野において公知の他の症状の1つ以上の攻撃若しくは侵攻を防ぐ、又は、1以上のこれらの症状の持続期間を短縮及び/若しくは重症度を軽減する。
【0136】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、粘膜炎の予防及び/又は治療のために用いる。粘膜炎は、消化管内面の粘膜における痛みを伴う炎症及び潰瘍形成である。粘膜炎は、例えば口腔内(例えば、口腔粘膜)のように、消化管に沿ったいずれにでも発生し得る。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、粘膜炎を治療するために、患者(例えば、粘膜炎と診断された又は粘膜炎の症状を示した患者)に局所投与する(例えば、口腔内の炎症領域若しくは潰瘍領域への局所投与、又は、クリーム、座薬、懸濁液、液体溶液、ゲル若しくは軟膏を介する等による肛門若しくは直腸領域への局所投与)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、(例えば、口腔内における)粘膜炎が原因の若しくは粘膜炎に関連した炎症若しくは潰瘍部位又はその近接部位に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、粘膜炎が小康状態になるまで(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間、4週間以上)、毎日投与する(例えば、1日1回又は2回)ことができる。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによる粘膜炎を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:粘膜炎の頻繁な再発の防止又は抑制;粘膜炎に関連する1以上の症状(例えば、痛み、潰瘍形成)の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;粘膜炎に関連する症状数の削減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;及び/又は対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。
【0137】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療のために用いる。作用のいずれの機構にも結びつけることなく、アルファ及びベータディフェンシン(例えば、ベータ−ディフェンシン1)により誘引されるsNAGナノファイバの能力は、sNAGナノファイバの抗ウイルス活性に寄与し得る。ベータディフェンシン(ベータ−ディフェンシン1)は、抗ウイルス活性を有することが示されている。ここに記載した組成物を用いて予防及び/又は治療される感染又は疾患の原因となり得るウイルスの例には、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス(インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス又はインフルエンザCウイルス)、ヒトメタスーモウイルス(HMPV)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス(A、B、C)、エボラウイルス、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2、HSV-6、HSV-7)、水痘ウイルス、水痘帯状ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、パラポックスウイルス、麻疹ウイルス、エコーウイルス、アデノウイルス、エプスタインバーウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、風疹ウイルス、大痘瘡ウイルス及び小痘瘡ウイルス、が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによる、対象におけるウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防は、以下の1つ以上の結果をもたらす:ウイルス感染に起因する若しくは関連する疾患の進行若しくは攻撃の予防;及び/又は、ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の、対象から他の対象又は対象群への拡大の予防。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによるウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の再発防止;ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の症状数の削減;ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患に関連する臓器不全の低減:ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の1以上の症状の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;ウイルス負荷又はウイルス数の削減(例えば、約0.25log、0.5log、0.75log、1log、1.5log、2logs、2.5logs、3logs、4logs、5logs、6logs、7logs、8logs、9logs又は10logs以上);対象の入院発生率の低減;対象の入院期間の短縮;対象の生存率の上昇;対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上;対象の細胞、組織、臓器から、対象の他の細胞、組織、臓器へのウイルス拡散防止;ウイルス感染に起因する若しくは関連する疾患又はその1以上の症状の進行抑制又は攻撃抑制;及び/又は、対象から他の対象若しくは対象群への、ウイルス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の拡散防止。
【0138】
特定の一実施形態において、ここに記載した組成物を、HIV感染又はHIV感染に起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療のために使用しない。
【0139】
ウイルス感染の症状には、発熱、悪寒、頭痛、肩こり、神経過敏、腺肥大、下痢、吐き気、嘔吐、ウイルス感染に関連する皮膚若しくは粘膜異常(例えば、発疹、潰瘍形成、ヘルペス、病斑、腫物、赤み、かゆみ、丘疹、気胞、吹出物、水膨れ、痂皮)及び/若しくはこのような異常に関連する痛み、腹痛、ヘルペス、耳痛、咳、体重減少、倦怠感、全身痛、並びに/又は、他の風邪様症状が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、上記列挙した症状又は当該分野において公知の他の症状の1つ以上の攻撃又は進行を抑制する、又は、1つ以上のこれらの症状の持続期間を短縮及び/又は重症度を軽減する。
【0140】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷(例えば、切開、裂傷、侵入、擦り傷又は火傷のような開放創)のウイルス感染を予防及び/又は治療するために用いる。他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷のウイルス感染を予防及び/又は治療するために使用しない。開放創及び閉塞創の2つのタイプの創傷が存在する。開放創は、創傷の原因となる目的物により分類される。例えば、切開又は切開創(手術創傷を含む)は、ナイフ、カミソリ又はガラスの破片のような清潔で先の鋭い目的物により生じる。裂傷は、硬い組織の上にある柔らかい組織に対する鈍い衝突により生じる変則的な創傷(例えば、頭蓋骨を被覆する皮膚の裂傷)、又は、出産により生じるような皮膚若しくは他の組織の裂けである。擦り傷又はかすり傷は、皮膚(表皮)の最表層が削り取れる表面的な創傷である。穿刺創傷は、爪又は針のような、皮膚に穴をあける目的物により生じる。侵入創傷は、体内に入ったナイフのような目的物によって生じる。銃創は、体内を通過する(例えば、射入口)及び/又は体を通過した銃弾(例えば、射出口)又は同様の発射体により生じる。医学に関する場合、全ての刺創及び銃創は開放創とみなす。開放創には、また、熱損傷、化学損傷又は電気損傷により誘引される火傷も含む。閉塞創には、挫傷(打撲としてより一般的に知られており、鈍い力で皮下の組織が損傷することにより生じる)、血塊(血腫とも呼ばれ、血管損傷に続いて皮下に血液が集まることにより生じる)及び圧縮傷(長期間加えられる非常に大きな力又は極度の力により生じる)を含む。
【0141】
ある実施形態において、ここに記載したsNAG組成物を、患者(例えば、ウイルス感染と診断された患者又はウイルス感染の症状を示した患者)における局所ウイルス感染の予防及び/又は治療に用いる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、皮膚、粘膜(例えば、目、耳、喉、膣、肛門)又は他の組織表面における、ウイルス感染又はウイルス感染の症状の予防及び/又は治療に用いる。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、皮膚、粘膜(例えば、目、耳、喉、口腔、膣、肛門)又は他の組織の表面に直接投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染(例えば、単純ヘルペスウイルス感染又は帯状疱疹性感染)の(小胞、吹出物又は水疱のような)小胞段階、潰瘍段階又は痂皮段階の治療に用いる。他の実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染(例えば、単純ヘルペスウイルス感染又は帯状疱疹性感染)の前兆段階、紅斑/斑段階又は丘疹/水腫段階の治療に用いる。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染部位若しくはその近傍、又は、ウイルス感染症状部位若しくはその近傍(例えば、ウイルス感染に関連するヘルペス、病斑、水疱、吹出物、潰瘍、発疹、腫物又は痂皮)に投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を投与することによる、局所ウイルス感染を有する患者の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:局所ウイルス感染の症状(例えば、痒み、病斑、潰瘍、水疱、丘疹、発疹、痂皮、又は、ここに記載した若しくは当業者に公知の局所ウイルス感染の他のいずれかの症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;局所ウイルス感染の症状に関連する痛みの軽減;局所ウイルス感染に関連する症状数の削減;局所ウイルス感染の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象への局所ウイルス感染拡大予防;ここに記載した若しくは当業者に公知の局所ウイルス感染の1以上の症状の攻撃予防若しくは進行予防;及び/又は対象における他の療法(例えば、他の抗ウイルス療法)の予防効果若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載したsNAG組成物を、局所ウイルス感染の治療において使用するために、障壁のない形状に形成する。例えば、ここに記載した組成物を、局所ウイルス感染の治療に使用するために、液体溶液、懸濁液(例えば濃厚懸濁液)、クリーム又は軟膏の形状に形成する。一実施形態において、ここに記載したsNAG組成物は、局所ウイルス感染の治療に使用するとき、固形ではない。さらに他の実施形態において、ここに記載したsNAG組成物は、局所ウイルス感染の治療に使用するために、障壁形成形状及び/又は固形である。下記の実施例8は、ヒト患者から得られたデータに基づいて、sNAGナノファイバが局所ウイルス感染の治療に効果的であることを示す。特に実施例8は、ヒト患者において、HSV感染が原因となる又はHSV感染に関連するヘルペスのようなHSV感染の治療に、sNAGナノファイバが、効果的であることを示す。局所ウイルス感染の治療に用いることができるsNAGナノファイバを含む組成物は、ここに記載したsNAG組成物のいずれかであり得る。一実施形態において、局所ウイルス感染(例えばHSV)の治療に用いることができるsNAGナノファイバを含む組成物は、実施例8に記載した組成物と同一又は同様であり得る。
【0142】
ここに記載した組成物を用いて局所治療可能なウイルス感染に関連する皮膚のウイルス感染及び疾患/状態は、麻疹(はしか)、風疹(三日ばしか)、水疱瘡(水痘)、第5病(パルボウイルスによる伝染性紅斑)、バラ疹、感染性単核球症若しくは腺熱(EBウイルス(エプスタイン−バーウイルス))、エンテロウイルス感染、バラ色粃糠疹(ヘルペス6又は7が原因である可能性)、手足口病(コクサッキー感染による)、ギアノット−クロスティ症候群(小児に生じる一般的な肢端長大症;EBウイルス若しくはB型肝炎による感染性単球増加が最も多い原因である)、ラテロトラシック発疹(幼児期又はAPECの非対称屈曲周囲発疹)、疱瘡、牛痘、疣贅状表皮発育異常症、HIV感染及び/若しくはカポジ肉腫に起因する又は関連する皮膚症状、リケッチア症、黄熱病(フラビウイルス感染による)、単純ヘルペス(ヘルペス及び陰部ヘルペス)、疱疹湿疹、帯状ヘルペス(帯状疱疹)、ヘルパンギーナ/水疱性口内炎(口腔内潰瘍)、伝染性軟属腫、ウイルス性疣贅(例えば、いぼ、陰部疣贅若しくはコンジローム、扁平細胞乳頭腫)、疱疹性ひょう疽、剣状ヘルペス、羊痘、並びに、ミルカー小瘤含むが、これに限定されない。
【0143】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、単純ヘルペスウイルス(例えばHSV−1、HSV−2)の感染、又は、単純ヘルペス(例えばHSV−1、HSV−2)が原因となる病状若しくは状態の、予防及び/又は治療に用いる。単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)の症状には、口、喉、唇(例えば、口腔周囲ヘルペス)における水疱若しくは病斑が含まれてもよく、また、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)の症状には、生殖器外部表面における水疱若しくは病斑が含まれてもよい。HSVの両方の型は、皮膚の感覚神経に潜在状態で存在する。このウイルスは、攻撃中に神経を下降して拡散し、増殖して皮膚又は粘膜に表れ、臨床病斑の原因となる。それぞれの攻撃後、ウイルスは神経線維に引っ込み、再び休止状態となる。活性段階中は、ウイルスの放出が顕著であり、病斑はより伝染性が強い。1型の一次感染は、主に、乳児及び早期小児において起こり、たいてい穏やか又は無症状である。大勢の子供、すなわち、世界の後進領域の100%に至る子供が、5歳までに感染する。2型は、通常、思春期後の性的後天性であり、無症候性であることは稀である。ウイルスは、臨床攻撃中及びその後数日若しくは数週間中に、唾液及び生殖器分泌物中で減少する。活性病斑からの減少量は、不活性状態よりも100〜1,000倍多い。HSVの拡散は、通常、感染分泌物への直接接触である。免疫が不完全なところは、感染がより頻繁に生じ、さらに、より明白でかつ持続性がある。再発は、軽度の外傷;鼻かぜを含む他の感染症、紫外線(太陽光露光);ホルモン因子(月経前のほてりの発生);感情的ストレス;顔面に行う手術若しくは処置(歯科医術を含む)により誘引され得る。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、HSV−1感染、又は、HSV−1感染に関連した病斑若しくはヘルペスの治療のために、局所投与する(例えば、口腔投与又は口腔周囲投与)。他の実施形態において、ここに記載した組成物を、HSV−2感染、又は、HSV−2感染に関連した生殖器病斑の治療のために局所投与する(例えば、膣のような生殖器領域への局所投与)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、HSV感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患を有する患者の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:HSV感染(例えば、ヘルペス、病斑又はここに記載した若しくは当業者に公知のHSV感染の他の症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;HSV感染に関連する症状数の削減、HSV感染の症状(例えば、ヘルペス若しくは病斑)に関連する痛みの軽減;HSV感染の症状の再発予防若しくは再発頻度の低減;対象から他の対象へのHSV感染の拡散予防;HSV感染の1以上の症状進行の攻撃予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、HSV感染又はHSV感染の症状を有する、ヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、表面領域(例えば、皮膚若しくは粘膜における口腔周囲、口腔若しくは生殖器領域)がうずき、痒み又は腫れ始めたときに、当該表面領域に局所投与する(表面領域におけるうずき、痒み又は腫れが、HSV感染(例えばHSV−1又はHSV−2)に関連する場合)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、ヘルペス又は病斑領域又はその周囲領域(皮膚又は粘膜における口腔周囲、口腔又は生殖器)に局所投与する(ヘルペス又は病斑がHSV感染(例えばHSV−1又はHSV−2)に関連する場合)。実施例8は、sNAGナノファイバ組成物を患者のヘルペス部位に局所適用したときに、ヒト患者におけるHSV感染に関連するヘルペスの治療に効果的であることを示し、また、sNAGナノファイバ組成物によるHSV関連ヘルペスの治療が、ヘルペスの重症度の軽減若しくは持続期間の短縮、及び、ヘルペスに関連する痛みの軽減をもたらすことも示す。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、HSV(例えば、HSV−1又はHSV−2)感染の小胞(気胞、吹出物若しくは水疱のような)段階、潰瘍段階又は痂皮段階を治療するために用いる。他の実施形態において、ここに記載した組成物を、感染におけるHSV(例えば、HSV−1又はHSV−2)の前兆段階、紅斑/斑段階、又は、丘疹/水腫段落を治療するために用いる。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、HSV感染の治療において、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル又はここに記載した若しくは当業者に公知の他のいずれかの抗ウイルス薬)と組み合わせて投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、HSV感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0144】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、水痘ウイルス感染、又は、水痘ウイルスに起因する病状若しくは状態(帯状ヘルペス、帯状疱疹又は水疱瘡)を、予防及び/又は治療するために用いる。水痘感染は通常幼児期に生じ、神経細胞、通常、感覚細胞にウイルスがまかれる(Shingles、Clinical Knowledge Summaries(2008)参照)。帯状ヘルペス又は帯状疱疹は、単一の皮膚分節分布により特徴づけられる。これらは、通常1つの皮膚分節に制限され、そのため中線を超えず、皮膚分節の全てに影響しない場合もある。帯状ヘルペスの症状は、斑及び丘疹からなり、かつ、皮膚分節分布内(もっとも一般的には胸)の小胞病斑及び痛みに発展する発疹を含むが、これに限定されない。発疹は7〜10日間続く場合が多く、2〜4週間で完治し得る。より広範な疾患が免疫不全患者(例えば、リンパ腫及びHIV)に起こり得る。帯状ヘルペスはいずれの年代にも起こり得るが、老人がより一般的であり、かつ、(水痘の影響は両方の性別で平等であるが)わずかに女性がより一般的である。皮膚合併症には、二次感染、傷痕化及び色素新着変化が含まれ得る。老人は、帯状ヘルペスの合併症(特にヘルペス後神経痛)がより起こり易い。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、帯状ヘルペス又は水痘の治療のために局所投与する(例えば、皮膚に投与する)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、発疹部位又は発疹近傍部位(例えば、皮膚の斑又は丘疹)に投与する(発疹が帯状ヘルペス感染に関連する場合)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、帯状ヘルペス感染又はこれに起因する疾患を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:帯状ヘルペス感染の症状(例えば、発疹又はここに記載した若しくは当業者に公知の帯状ヘルペス感染の他のいずれかの症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;帯状ヘルペス感染に関連する症状数の削減;帯状ヘルペス感染の症状に関連する痛みの低減;帯状ヘルペス感染症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象への帯状ヘルペス感染の拡散予防;帯状ヘルペス感染症状の攻撃予防若しくは進行予防;及び/又は対象における他の療法(例えば、他の抗ウイルス療法)の予防効果若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、帯状ヘルペス感染又は帯状ヘルペス感染の症状を有する、ヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、帯状ヘルペス感染の治療において、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル又はここに記載した若しくは当業者に公知の他のいずれかの抗ウイルス薬)と組み合わせて投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、帯状ヘルペス感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0145】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、伝染性軟属腫の予防及び/又は治療に用いる。伝染性軟属腫は、一般に及びたいてい乳児及び早期小児に影響し、成人には稀にしか影響しない(Clinical Knowledge Summaries(2008)の伝染性軟属腫を参照)。伝染性軟属腫の症状には、特に、腋窩、鼠径又は膝裏のような温暖湿潤部の小さい丘疹群を含むが、これに限定されない。丘疹領域の大きさは1〜6mmであり、白、ピンク又は茶色であってもよい。これらは、蝋状でピンクがかった外見であり、かつ、窪んでいる場合が多い(表面の中央のくぼみ)。これらが消滅すると、炎症、痂皮又はかさぶたになる。これらは、いずれの固体においても、2、3百個又は数百個になる。この疾患は数ヶ月持続し、2、3年間持続する場合もある。まれに、非常に小さいくぼみのような傷跡(硬化)を残すことがある。伝染性軟属腫は、直接的な皮膚接触により、ヒトからヒト、通常小児間で拡散され得、及び、成人における性接触によっても感染伝染し得る。病斑は、アトピー性湿疹の小児及びHIV感染患者において、より多くなる及びより持続する傾向である。小児において、顔及び胴体に病斑が表れやすい。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、伝染性軟属腫感染を治療するために局所投与する(例えば、皮膚に投与)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、発疹(例えば、皮膚の斑又は丘疹)部位又は発疹近傍部位に投与する(発疹が伝染性軟属腫感染に関連する場合)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、伝染性軟属腫又はこれに起因する若しくは関連する疾患を有する対象の治療は、以下の1つ以上の結果をもたらす:伝染性軟属腫の症状(例えば、発疹又はここに記載した若しくは公知の伝染性軟属腫の他のいずれかの症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;伝染性軟属腫の症状数の削減;伝染性軟属腫の症状に関連する痛みの低減;伝染性軟属腫の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象への伝染性軟属腫拡散の予防;伝染性軟属腫の症状の攻撃予防若しくは進行の予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、伝染性軟属腫又は伝染性軟属腫の症状を有する、ヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、伝染性軟属腫感染の治療において、公知の療法(例えば、圧迫、穿孔、掻爬、凍結療法、サリチル酸及びポドフィリンのような瘤塗装;イミキモドクリームのような免疫調節剤、1%ヒドロコルチゾンクリーム;又はフシジン酸クリーム2%)と組み合わせて投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、伝染性軟属腫感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0146】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ヒトパピローマウイルス又はヒトパピローマウイルスに関連する疣若しくは瘤の予防及び/又は治療に用いる。80以上のHPVサブタイプが知られており(Clinical Knowledge Summaries (June 2009)の疣及び瘤を参照)、そのうちの20は生殖管に影響し得る。HPV感染の存在及び様子は、感染部位により異なる。例えば、足底の疣は、圧迫点領域に生じ、また、持ち上がるよりもむしろ平たくなる。疣は、幼児期に生じることが最も一般的であり、直接接触又は自動予防接種により拡散する;疣が現れるまで12か月かかることもある。HPV疣は、免疫抑制に関連して最も頻度が高く、最も厄介であり、疣が濡れているとき又は疣の傷(例えばひっかき傷)から出血しているときに、より感染しやすい。HPV感染は、小児よりも成人においてより持続する。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、HPV感染又はHPV感染に関連する疣若しくは瘤を治療するために、局所投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、疣若しくは瘤の領域又はその近傍領域に投与する(疣又は瘤がHPVに起因する又は関連する場合)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、HPV感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患を有する患者の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:HPV感染の症状(例えば、疣、瘤、又は、ここに記載した若しくは当業者に公知の他のいずれかのHPV感染の症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮HPV感染に関連する症状数の削減;HPV感染症状に関連する痛みの低減;HPV感染の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象へのHPV感染の拡散予防;HPV感染症状の攻撃予防若しくは進行予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、HPV感染又はHPV感染の症状を有する、ヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、HPV感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0147】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、羊痘の予防及び/又は治療に用いる。羊痘は、ヒツジ及びヤギから感染する(Health Protection Agency(2010)の羊痘を参照)羊痘は、感染に接触した主に若い子羊及びヤギが互いに感染するパラポックスウイルスが原因である。(又は牧草において残留するウイルスから感染する可能性もある)。ヒト病斑は、感染物質の直接接種が原因である。これは、農業従事者、屠殺者、獣医、子羊からの人工栄養により育てられた子供、及び、もしかするとヒツジを放牧する牧草で遊ぶ子供にさえ、生じ得る。パラポックスウイルスの潜伏期間は5日又は6日である。羊痘病斑はたいてい独立しているが、複数の病斑が生じることもある。羊痘病斑はたいてい小さく、硬く、赤色又は赤みがかった青色であり、上部が平らで薄く血の色がついた吹出物又は水疱を形成するために広がったしこりを形成する。完全に進行した病斑は、たいてい直径2又は3cmであるが、5cmになることもあり、白い皮膚の下で膿になるが、これを切開すると、その下の硬い赤い組織が現れる。病斑は、初期段階の間は炎症性の場合があり、たいてい敏感である。これは、たいてい、指、手又は前腕に生じるが、顔に生じることもある。赤いリンパ線が肘から腋までの内側に生じることもある。羊痘に関連する軽い発熱が生じることもある。したがって、いくつかの実施形態においては、ここに記載した組成物を、羊痘を治療するために局所投与する(例えば、皮膚に投与する)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、病斑、吹出物又は水疱の部位又はその周辺部位に投与する(病斑、吹出物又は水疱は羊痘に起因する又は関連する)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による羊痘を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:羊痘(例えば、病斑、吹出物、水疱、又は、ここに記載した若しくは当業者に公知の羊痘の他のいずれかの症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;羊痘に関連する症状数の削減;羊痘の症状に関連する痛みの軽減;羊痘の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象への羊痘の拡散予防;羊痘の症状の攻撃又は進行予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、羊痘又は羊痘の症状を有するヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、羊痘の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0148】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、発疹が生じるウイルス感染の治療に用いる。発疹が生じるウイルス感染の例には、麻疹(はしか)、風疹(三日はしか)、水疱瘡(水痘ウイルス)、第5病(パルボウイルスによる伝染性紅斑)、バラ疹(ヘルペスウイルス6による突発性紅斑)、バラ色粃糠疹(ヘルペスウイルス6及び7が原因である可能性もあるが、原因不明)、エコーウイルス及びアデノウイルス感染、感染性単球増加若しくは腺熱のEBウイルス、並びに、初期HIV感染が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染に関連する非特異的発疹(例えば、紅斑染み皮疹のような紅斑発疹)の治療に用いる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染に起因する若しくは関連する発疹部位、又は、ウイルス感染に起因する若しくは関連する発疹部位近傍に、投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、発疹の重症度を軽減する、発疹の持続期間を短縮する、及び/又は、ウイルス感染に起因する発疹に関連する痛みを軽減する。
【0149】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、手足口病又はコクサッキーウイルス若しくはエンテロウイルスに起因する感染の予防及び/又は治療に用いる。手足口病は、発症率が高く、症状が穏やかで短期間であり、夏の期間に幼い小児が最も頻繁に罹患する(Clinical Knowledge Summaries(March 2010)の手足口病を参照)。手足口病は、コクサッキーウイルスA16が原因であるが、エンテロウイルス71も原因となり得る。このようなウイルスの潜伏期間は3〜5日である。手足口病の症状には、痛みを伴うこともある、手及び足における小さく平坦な水疱並びに口の潰瘍が含まれ、この病気は、軽い発熱又は臀部の発疹(幼い幼児において)を伴うこともある。したがって、いくつかの実施形態においては、ここに記載した組成物を、手足口病、又は、コクサッキーウイルス感染若しくはエンテロウイルス感染に起因する若しくは関連する症状の治療のために、局所投与する(例えば、皮膚に投与)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、水疱、潰瘍又は発疹の部位又はその近傍部位に投与する(この水疱、潰瘍又は発疹は、手足口病、又は、コクサッキーウイルス感染若しくはエンテロウイルス感染に起因する若しくは関連する症状に関連する)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による手足口病を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:手足口病の症状(例えば、発疹、水疱、潰瘍、又は、ここに記載した若しくは当業者に公知の手足口病の他の症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;手足口病の症状数の削減;手足口病の症状に関連する痛みの軽減;手足口病の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象への手足口病の拡散予防
;手足口病の症状の攻撃若しくは進行予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、手足口病又は手足口病の症状を有するヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人、及び/又は、ヒト老人に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、手足口病の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0150】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ジアノッティ(Crosti-Gianotti)症候群の予防及び/又は治療に用いる。ジアノッティ症候群は、数週間継続する丘疹性発疹を伴う、ウイルス感染に対する皮膚反応である。この症状は、小児の小水疱性丘疹性肢端皮膚病、小児の丘疹性肢端皮膚病、及び、小児の丘疹性皮膚炎としても知られている。ジアノッティ症候群は、B型肝炎ウイルス、EBウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス又は呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)により引き起こされ得る。
ジアノッティ症候群は、子供に6か月から12か月影響する。この症状において、くすんだ赤い斑点の過度な発疹が、3日又は4日以上進行し得る。これらは、たいてい、最初に大腿部及び臀部に現れ、その後腕の外側に表れて、最終的には顔に現れ、非対称なパターンであることが多い(Chuh, Cutis 68(3):207−13(2001)参照)。斑点は直径5〜10mmであり得、深紅色又は紫色(毛細血管からの血液の漏れのため、特に足において)であり得、さらに、流体で充たされた水疱に発展し得る。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、ジアノッティ症候群の治療のために局所投与する(例えば、皮膚に投与)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、赤い斑点、皮疹若しくは発疹部位又はその近傍部位に投与する(この赤い斑点、皮疹及び発疹は、ジアノッティ症候群、又は、B型肝炎ウイルス、EBウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス若しくは呼吸器合胞体ウイルスに金する感染に関連する)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、ジアノッティ症候群を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:ジアノッティ症候群の症状(例えば、赤い斑点、皮疹、発疹、又は、ここに記載した若しくは当業者に公知のジアノッティ症候群の他のいずれかの症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;ジアノッティ症候群に関連する症状数の削減;ジアノッティ症候群の症状に関連する痛みの低減;ジアノッティ症候群の症状の再発予防又は再発頻度の軽減;対象から他の対象へのジアノッティ症候群の拡散予防;ジアノッティ症候群の症状の攻撃若しくは進行予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ジアノッティ症候群又はその症状を有する、ヒト乳児(特に6から12月齢の乳児)、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ジアノッティ症候群の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0151】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、剣状ヘルペス又は「スクラム疹」の予防及び/又は治療のために用いる。剣状ヘルペスは、まず、直接的な皮膚間接触により伝染し、擦り傷が入口の侵入を容易にし得る(Becker et al., Am J Sports Med. 16(6):665-9 (1988)参照)。剣状ヘルペスの大半の病斑は、頭又は顔に生じ、その後、胴体及び四肢に生じる。剣状ヘルペスの症状には、前駆的な痒み又は灼熱感に続く、約1〜2週間以上経過後に痂皮を伴って治癒する紅斑性の基部上の小胞群が含まれるが、これに限定されない。他のもっと稀な剣状ヘルペスの症状には、頭痛、倦怠感、咽頭痛及び熱が含まれるが、これに限定されない。再発症状の発見が初期感染に続いくこともある。ウイルス免疫蛍光検査により、正確な診断を行うことができ、培養物は、完全な小胞をそっと破り、紅斑性の基部を横切って先端を拭きとるように、しっかりと擦ることにより得ることができる。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、剣状ヘルペス感染に局所投与する(例えば、皮膚に投与)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、痒み、病斑、小胞又は痂皮の部位又はその近傍部位に投与する(痒み、病斑、小胞又は痂皮の部位は、剣状ヘルペス感染に起因する又は関連する)。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、剣状ヘルペス感染の治療において、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル又はここに記載した若しくは当業者に公知の他のいずれかの抗ウイルス薬)と組み合わせて投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、剣状ヘルペスを有する患者の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:剣状ヘルペスの症状(例えば、痒み、病斑、小胞、痂皮又はここに記載した若しくは当業者に公知のHPV感染の他のいずれかの症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;剣状ヘルペスに関連する症状数の削減;剣状ヘルペスの症状に関連する痛みの軽減;剣状ヘルペスの症状の再発予防;対象から他の対象への剣状ヘルペスの拡散予防;剣状ヘルペスの症状の攻撃若しくは進行の予防;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、剣状ヘルペス又は剣状ヘルペスの症状を有するヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、予防及び/又は治療を目的として、アスリート(例えばプロアスリート)に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、剣状ヘルペスの症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0152】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染に関連する一般的な疣(例えば、足底疣贅、カルスにおける疣)の予防及び/又は治療に用いる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルス感染に起因する若しくは関連する疣の部位、又は、ウイルス感染に起因する若しくは関連する疣の近傍部位に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、疣の数を削減する、疣の重症度を軽減する、疣の持続期間を短縮する、及び/又は、ウイルス感染に起因する疣に関連する痛みを軽減する。
【0153】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、免疫不全患者(例えば、HIV感染患者)におけるウイルス感染の予防及び/又は治療に用いる。
【0154】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、胃腸炎(例えば、ウイルス感染に起因する若しくは関連する胃腸炎、又は、原虫感染に起因する若しくは関連する胃腸炎)の治療に用いる。胃腸炎の原因になり得るウイルスの例には、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス及びアストロウイルスが含まれるが、これに限定されない。胃腸炎の原因になり得る原虫の例には、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム及び赤痢アメーバが含まれるが、これに限定されない。一実施形態において、ここに記載された組成物を、(例えば、クリーム又は座薬として)胃腸炎の治療のために直腸に投与する。ここに記載した組成物の投与による、胃腸炎を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:胃腸炎の再発予防;胃腸炎に関連する1以上の症状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;胃腸炎に関連する症状数の削減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;及び/又は対象における他の療法の予防若しくは治療効果の強調若しくは向上。
【0155】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療に用いる。作用のいずれのメカニズムにも縛られることなく、ベータディフェンシン(例えば、ベータ−ディフェンシン)を誘引するsNAGナノファイバの能力は、sNAGナノファイバの抗真菌活性に寄与し得る。ベータディフェンシン(例えば、ベータ−ディフェンシン1)は、抗真菌活性を有することが示されている。ここに記載された組成物を用いて予防及び/又は治療される感染又は疾患の原因となる真菌の例には、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス、スポロトリクス属、クリプトコッカス属、カンジダ属、アスペルギルス属、ヒストプラズマ属、クリプトコッカス属、ビボラリス属(Bipolaris)、クラドフィアロフォラ属(Cladophialophora)、クラドスポリウム属、ドレヒスレラ属(Drechslera)、エクソフィアラ属、フォンセセア属、フィアロフォラ属(Phialophora)、キシロヒファ属(Xylohypha)、オクロコニス属(Ochroconis)、リノクラディエラ属(Rhinocladiella)、スコレコベシディウム属(Scolecobasidium)、及び、ワンジエラ属(Wangiella)が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、対象における真菌感染、又は、真菌感染に起因する若しくは関連する疾患の予防は、以下の1以上の結果をもたらす:真菌感染に起因する又は関連する疾患の進行又は攻撃の予防;及び/又は対象から他の対象若しくは対象群への、真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の拡散予防。ある実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の再発予防;真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患に関連する症状数の削減;真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患に関連する臓器不全の削減;真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の1以上の症状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;真菌細胞数の削減;対象の入院発生率の低減;対象の入院期間の短縮;対象の生存率の向上;対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上;対象の細胞、組織、器官から、対象の他の細胞、組織、器官への真菌の拡散予防;真菌感染に起因する若しくは関連する疾患又は真菌感染の1以上の症状の進行又は攻撃の予防;及び/又は、真菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の、対象から他の対象若しくは対象群への拡散予防。
【0156】
いんきんを伴う真菌感染の症状には、鼠蹊部の痒み及び/又は赤い鱗状の発疹が含まれ得る。水虫の症状には、鱗屑付着、皮膚剥離、足の痒み及び/又は黄色がかった足指の爪が含まれ得る。膣感染症の症状には、痒み及び炎症、排尿時のヒリヒリ感、並びに/又は、濃いおりものが含まれ得る。真菌性胃腸炎の症状には、嘔吐及び/又は下痢が含まれ得る。肺の真菌感染の症状には、熱、咳及び/又は肺炎の症状が含まれ得る。口腔内酵母感染(鶇鵝口瘡、カンジダ症)の症状には、口腔内又は舌における黄白色の病斑群/腫物群が含まれ得る。生殖器(膣、外陰部、ペニス等)のカンジダ症の症状には、痒み、ヒリヒリ感、痛み、炎症及び/又は分泌物が含まれる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、上記列挙した症状又は当業者に公知の症状の1以上の攻撃若しくは進行を予防する、又は、これらの1以上の症状の持続期間を短縮する及び/又は重症度を軽減する。
【0157】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、水虫、いんきん、たむし又は爪、頭皮若しくは髪の真菌感染の、予防及び/又は治療に用いる。これらの真菌感染は、皮膚の発赤、剥皮、水疱及び鱗屑付着、痒み、感染した爪の変形及び脆性、並びに/又は、痛みやすい髪の原因になり得る。これらは、白癬菌属、小胞子菌属及び表皮菌属を含む真菌属である皮膚糸状菌に起因する。皮膚糸状菌は、ケラチンを栄養源とし、ほとんど皮膚下には侵入しない。水虫(足白癬)は足指間に見られ、足裏まで達する場合もある。いんきん(股部白癬)は、鼠蹊部から大腿部内側まで広がることもある。頭皮及び髪感染(頭部白癬)は、毛幹が影響を受け、子供を中心に影響する。指又は足指感染(爪白癬)は、典型的には足指の爪が影響を受けるが、指の爪もまた影響を受ける。体部のたむし(体部白癬)は体のいたるところに見られる。毛瘡(須毛白癬)は顔のひげ部分が影響を受ける。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、上記列挙した真菌感染症(水虫、足、いんきん、爪、頭皮及び髪感染症のような)のいずれかの治療のために、局所投与する。一実施形態において、ここに記載した組成物を、皮膚の発赤、剥皮、水疱若しくは鱗屑付着部、痒み部、又は、爪の変形若しくは脆性部、又はその近傍部位に投与する(このような症状が真菌感染に関連する)。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物による、上記列挙した真菌感染の1つを有する患者の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:真菌感染の症状(痒み、発赤、剥皮、水疱又はここに記載した若しくは当業者に公知の他のいずれかの真菌感染の症状)の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;真菌感染の症状数の削減;真菌感染の症状に関連する痛みの軽減;真菌感染の症状の再発予防;対象から他の対象への真菌感染の拡散予防;真菌感染の症状の攻撃又は進行予防;及び/又は、対象における他の療法(例えば抗真菌療法)の予防及び/又は治療効果の強調又は向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、上記列挙した真菌感染又はその症状の1つを有する、ヒト乳児、ヒト幼児、ヒト小児、ヒト成人及び/又はヒト老人に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、真菌感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0158】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、スポロトリクム症の予防及び/又は治療に用いる。スポロトリクム症は、皮膚糸状菌ではない、真菌スポロトリックスシェンキイに起因する状態である。これは、この真菌が通常存在する、とげのある植物、松葉及びミズゴケにより擦傷した皮膚及び皮下組織の感染である。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、アポロトリコシス(Aporotrichosis)の治療のために局所投与する。一実施形態において、ここに記載した組成物を、スポロトリクム症感染部位又はその近傍部位に投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、スポロトリクム症を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:スポロトリクム症の症状の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;スポロトリクム症の症状数の削減;スポロトリクム症の症状に関連する痛みの軽減;スポロトリクム症の症状の再発頻度の低減;対象から他の対象へのスポロトリクム症の拡散予防;スポロトリクム症の症状の攻撃又は進行予防;及び/又は、対象における他の療法(例えば、抗真菌療法)の予防及び/又は治療効果の強調又は向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、スポロトリクム症の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0159】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷(例えば、切傷、裂傷、貫通、擦り傷又は熱傷のような、開放創)の真菌感染の予防及び/又は治療に用いる。他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷の真菌感染の予防及び/又は治療に用いない。
【0160】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療に用いる。作用のいずれのメカニズムに縛られることなく、sNAGナノファイバのベータディフェンシンを誘導する能力は、sNAGナノファイバの抗酵母活性に寄与し得る。ベータディフェンシンは、抗酵母活性を有することが示されている。ここに記載した組成物により予防及び/又は治療する感染又は疾患の原因となり得る酵母の例には、アシクロコニディウム属(Aciculoconidium)、ボトリオアスカス属(Botryoascus)、ブレタノマイセス属(Brettanomyces)、ブレラ属(Bullera)、ブレロマイセス属(Bulleromyces)、カンジダ属(Candida)、シテロマイセス属(Citeromyces)、クラビスポラ属(Clavispora)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、シストフィロバシディウム属(Cystofilobasidium)、デバロマイセス属(Debaromyces)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、デッケラ属(Dekkera)ディポダスカス属(Dipodascus)、エンドマイセス(Endomyces)、エンドマイコプシス属(Endomycopsis)エリスロバシディウム属(Erythrobasidium)、フェロマイセス属(Fellomyces)、フィロバシディウム属(Filobasidium)、グイリエルモンデラ属(Guilliermondella)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ハセガワエア属(Hasegawaea)、ハイフォピキア属(Hyphopichia)、イッサチエンキア属(Issatchenkia)、クロエケラ属(Kloeckera)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、コマガタエラ属(Komagataella)、ルーコスポリディウム属(Leucosporidium)、リポマイセス属(Lipomyces)、ロデロマイセス属(Lodderomyces)、マラセジア属(Malassezia)、マスチゴマイセス属(Mastigomyces)、メチニコウイア属(Metschnikowia)ムラキア属(Mrakia)、ナドソニア属(Nadsonia)、オクトスポロマイセス属(Octosporomyces)、オオスポリディウム属(Oosporidium)、パチソレン属(Pachysolen)、ペタソスポラ属(Petasospora)、ファフィア属(Phaffia)、ピキア属(Pichia)、スードジマ属(Pseudozyma)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、サッカロマイコデス属(Saccharomycodes)、サッカロマイコプシス属(Saccharomycopsis)、スキゾブラストスポリオン属(Schizoblastosporion)、スキゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、スキワニオマイセス属(Schwanniomyces)、セレノノチラ属(Selenotila)、シロバジディウム属(Sirobasidium)、スポリディオボラス属(Sporidiobolus)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces)、ステファノアスカス属(Stephanoascus)、ステリグマトマイセス属(Sterigmatomyces)、シリンゴスポラ属(Syringospora)、トルラスポラ属(Torulaspora)、トルロプシス属(Torulopsis)、トレメロイド属(Tremelloid)、トリコスポロン属(Trichosporon)、トリゴノプシス属(Trigonopsis)、ウデニオマイセス属(Udeniomyces)、ワルトマイセス属(Waltomyces)、ウィッカーハミア属(Wickerhamia)、ウィリオプシス属(Williopsis)、ウインガエ属(Wingea)、ヤロウィア属(Yarrowia)、ジゴファボスポラ属(Zygofabospora)、ジゴリポマイセス(Zygolipomyces)、又は、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)が含まれるが、これに限定されない。ある実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、対象の酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防は、以下の1以上の結果をもたらす:酵母感染に起因する又は関連する疾患の進行又は攻撃の予防;及び/又は、対象から他の対象若しくは対象群への、酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の拡散予防。ある実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の再発予防;酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患に関連する症状数の削減;酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患に関連する臓器不全の減少;酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の1以上の症状の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;酵母細胞数の削減;対象の入院発生率の低下;対象の入院期間の短縮;対象の生存率の上昇;対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上;対象の細胞、組織、臓器から、対象の他の細胞、組織、臓器への酵母拡散の予防;酵母感染又はその1以上の症状に起因する又は関連する疾患の進行又は攻撃の予防;及び/又は、対象から他の対象群への、酵母感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の拡散防止。
【0161】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、カンジダ症の予防及び/又は治療に用いる。カンジダ症は一般的なウイルス感染症であり、正常細菌叢の一種であるカンジダアルビカンス及び他のカンジダ属の菌の異常増殖に起因する。口腔内において、カンジダ症は、「鵝口瘡」と呼ばれる、発赤及び白いパッチの原因となる。小児において、カンジダはおむつかぶれの原因になり得る。女性において、生殖器の痒み及びおりものの原因となり得、「酵母感染」に属するものとされる。カンジダ症は、また、爪の感染症を含む様々な他の感染症の原因になり得、特に免疫不全者において、全身が侵される場合もある。これは、現在、米国において、4番目に最も一般的な、院内感染敗血症の原因である。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、カンジダ症の治療のために、局所投与する(例えば、皮膚に局所投与又は膣内のような生殖器領域に局所投与)。一実施形態において、ここに記載した組成物を、発赤、白いパッチ又は生殖器の痒み(このような症状はカンジダ症に関連する)部位又はその近傍部位に投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与によるカンジダ症を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:カンジダ症の症状の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;カンジダ症の症状数の削減;カンジダ症の症状に関連する痛みの軽減;カンジダ症の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象へのカンジダ症拡散予防;カンジダ症の症状の攻撃又は進行予防;及び/又は、対象における他の療法(例えば、抗酵母療法)の予防及び/又は治療効果の強調又は向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、カンジダ感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0162】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、癜風の予防及び/又は治療に用いる。癜風の症状には、皮膚における多色のパッチ又は病斑が含まれるが、これに限定されない。これは、比較的若い成人に良く見られる症状である。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、癜風の治療のために局所投与する。一実施形態において、ここに記載した組成物を、癜風感染部位又はその近傍部位に投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、癜風を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:癜風の症状の重症度の軽減及び/又は持続期間の短縮;癜風の症状数の削減;癜風の症状に関連する痛みの軽減;癜風の症状の再発予防又は再発頻度の低減;対象から他の対象への癜風の拡散予防;癜風の症状の攻撃又は進行の予防;及び/又は、対象における他の療法(例えば、抗酵母療法)の予防及び/又は治療効果の強調又は向上。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、癜風感染の症状が小康状態になるまで、毎日(例えば、1日1回又は2回)投与することができる(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、2週間、3週間、4週間又は4週間以上)。
【0163】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、骨髄炎の予防及び/又は治療に用いる。骨髄炎は、骨又は骨髄の感染症であり、細菌又は菌類に起因し得る。骨髄炎は、硬化症の輪の溶解性中心を示すX線の結果に基づいて診断され得、さらに、材料の培養物は、特定の病原体を同定するための骨生検から得ることができる。したがって、いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、骨髄炎を治療するために、骨髄炎を有する(例えば、診断された)患者に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、真菌感染に起因する骨髄炎の治療のために用いる。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、細菌に起因しない感染を治療するために用いる。さらに他の実施形態において、ここに記載した組成物を、いずれかの感染(細菌感染を含むが、これに限定されない)に起因する骨髄炎の治療のために用いる。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、手術後の患者の組織表面(例えば、骨の表面又は骨の表面近傍)に局所投与する。例えば、ここに記載した組成物を、膝交換手術後の膝領域、臀部交換手術後の臀部領域、又は、肘交換手術後の肘領域に投与することができる。ある実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、骨髄炎を有する対象の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:骨髄炎に関連する1以上の症状(例えば、痛み、炎症)の持続期間の短縮及び/又は重症度の軽減;骨髄炎に関連する症状数の削減;骨髄炎の頻度又は再発の予防又は低減;対象の入院発生率の低減;対象の入院期間の短縮;及び/又は、対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。
【0164】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷(例えば、切傷、裂傷、貫通、擦り傷又は熱傷のような開放創)の酵母感染の予防及び/又は治療に用いる。他の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷の酵母感染の予防及び/又は治療に用いない。
【0165】
特定の実施形態において、ここに記載したsNAG組成物を用いて、ウイルス感染、真菌感染又は酵母感染(ここに記載したウイルス、真菌又は酵母感染のいずれかのような)を治療する対象は、細菌感染を有さない。他の実施形態において、ここに記載したsNAG組成物を用いて、ウイルス、真菌又は酵母感染(ここに記載したウイルス、真菌又は酵母感染のいずれかのような)を治療する対象は、細菌感染と、ウイルス、真菌又は酵母感染との両方を有する。いくつかの実施形態において、このような感染は、対象の臓器において同一位置にある。他の実施形態において、このような感染は、対象の臓器において異なる位置にある。
【0166】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を皮膚病の治療に用いる。作用のいずれのメカニズムに縛られることなく、sNAGナノファイバのベータディフェンシンを誘引する能力は、皮膚病の治療におけるsNAGナノファイバの活性に寄与し得る。ベータディフェンシンは、皮膚病において活性を有することが示されている。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)の治療に用いる。特定の実施形態において、上記組成物を、ヒトの早産児、ヒト乳児、ヒト幼児又はヒト小児におけるアトピー性皮膚炎の予防及び/又は治療に用いる。他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を乾癬(例えば、尋常性乾癬、紅皮症乾癬、膿疱性乾癬、爪乾癬又は粒状乾癬)の治療に用いる。特定の実施形態において、上記組成物を、ヒトの早産児、ヒト乳児、ヒト幼児又はヒト小児における乾癬の治療に用いる。ある実施形態において、ここに記載した組成物の投与による、皮膚病を有する患者の治療は、以下の1以上の結果をもたらす:皮膚病の再発予防;皮膚病に関連する症状数の削減;皮膚病に関連する1以上の症状の重症度の軽減又は持続期間の短縮;対象の入院発生率の低減;対象の入院期間の短縮;及び/又は、対象における他の療法の予防又は治療効果の強調又は向上。
【0167】
皮膚病の症状には、発疹(例えば、でこぼこした発疹)、水疱、皮膚の赤み、腫物、痒み、皮膚病斑、じくじくした部分、及び/又は、傷を含むがこれに限定されない。このような症状は、首、手首、前腕、大腿部又は足首に表れることが多いが、生殖器領域にもまた表れる。アトピー性皮膚炎の一般的な症状には、乾燥、痒み及び/又は皮膚の発赤が含まれるがこれに限定されない。皮膚病の症状には、斑(例えば、銀白色の鱗状皮膚で覆われた、炎症を起こした皮膚の隆起領域)、痒み、腫物、痛み、小膿疱(例えば、非感染性の膿で充たされた隆起した瘤)、皮膚の平坦な炎症性パッチ、小さい鱗状の病斑、及び/又は、爪の肥厚部及び変色が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、1以上の上記列挙した症状又は当業者に公知の他の症状の攻撃又は進行を予防する、又は、1以上のこれらの症状の持続期間の短縮及び/又は重症度を軽減する。
【0168】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、細菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療に使用しない。一実施形態において、ここに記載した組成物を、S.アウレアス感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療に使用しない。他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷(例えば、切傷、裂傷、貫通、擦り傷又は熱傷のような開放創)の細菌感染の予防/又は治療に使用しない。
【0169】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物の投与により治療及び/又は予防する疾患は、創傷(例えば、切傷、裂傷、貫通、擦り傷又は熱傷のような開放創)ではない。
【0170】
5.5 患者集団
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、例えば、疾患又は感染を有さない対象のような、無症状の対象に投与してもよい。一実施形態において、ここに記載した組成物を、疾患にかかる又は感染するリスクのある無症状の対象に投与する。
【0171】
一実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ組成物を、疾患又は感染が診断された患者に投与してもよい。他の実施形態において、ここに記載した組成物を、疾患又は感染の1以上の症状が現れた患者に投与してもよい。ある実施形態において、患者は、ここに記載した組成物の投与前に、疾患又は感染を診断する。
【0172】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、感染が診断された患者に投与する。例えば、ここに記載した組成物を、患者から得た生体サンプルにおいて病原体(例えば、ウイルス、真菌又は酵母)を検出したときに、患者に投与してもよい。一実施形態において、生体サンプルを、ここに記載した組成物により治療する部位若しくは領域、又は、ここに記載した組成物を投与する領域から得る。一実施形態において、感染を検出するために、感染が疑われる部位を綿棒で拭き取り、細胞又は膿を回収してもよい。他の実施形態において、感染を検出するために、感染が疑われる部位(例えば、創傷)から流体を吸引する。さらに他の実施形態において、感染を検出するために組織生検を行う。感染が疑われる部位が創傷である実施形態において、感染を検出するために創傷培養を行ってもよい。他の実施形態において、生体サンプルを、患者の血液、尿、唾液又は糞便から得てもよい。いくつかの実施形態において、血液又は尿検査を、感染を検出するために行ってもよい(例えば、感染が血液又は他の組織/臓器に拡散していることが疑われるとき)。いくつかの実施形態において、回収したサンプル(例えば、細胞、組織又は流体)において、PCRのようなDNA検出方法を使用して、1以上の細菌型の存在を試験する。他の実施形態において、免疫蛍光分析、血清学、培養(例えば、血液寒天培養)、又は、当業者に公知の及び/若しくは当業者が実施している他のいずれかの試験を、感染の検査室診断のために用いてもよい。
【0173】
他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、例えば、癌、IBD、クローン病、皮膚炎、乾癬又は感染(例えば、ウイルス、酵母若しくは真菌感染)のような疾患が診断された、又は、これらの1以上の症状が現れた患者に投与する。ある実施形態において、患者は、ここに記載した組成物の投与前に、疾患(例えば、上記列挙した疾患の1つ)が診断される、又は、疾患の1以上の症状が現れる。疾患は、患者の症状の評価及び/又は患者の生体サンプル中の病原体の検出(例えば、上述したように)を含む、当業者に公知のいずれかの方法により診断されてもよい。一実施形態において、ここに記載した組成物を、治療医又は他の医療の専門家によって、疾患が診断された患者に投与してもよい。他の実施例において、患者は、疾患の1以上の症状の検出に、ここに記載した組成物を用いてもよい。
【0174】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、1以上のディフェンシンペプチド又は1以上のディフェンシンペプチドをコードする遺伝子が変位/欠損したものが発現しない又は発現レベルが低い対象である。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、1以上のα−ディフェンシン(例えば、DEFA1、DEFA1B、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFA6)、1以上のβ−ディフェンシン(例えば、DEFB1、DEFB2、DEFB4、DEFB103A、DEFB104A、DEFB105B、DEFB107B、DEFB108B、DEFB110、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB127、DEFB128、DEFB129、DEFB131、DEFB136)、及び/又は、1以上のθ−ディフェンシン(例えば、DEFT1P)を発現しない、発現レベルが低い又は発現レベルが変化した患者である。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、DEFA1、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFB1、DEFB3、DEFB103A、DEFB104A、DEFB108B、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB128、DEFB129及びDEFB131の1以上を発現しない、発現レベルの低い又は発現レベルが変化した対象である。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、1以上のTollレセプター(例えば、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11及び/又はTLR12)を発現しない、発現レベルの低い又は発現レベルの変化した対象である。さらに他の実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、IL−1、CEACAM3、SPAG11、SIGIRR(IL1様レセプター)、IRAK1、IRAK2、IRAK4、TBK1、TRAF6及びIKKiの1以上を発現しない、発現レベルの低い又は発現レベルの変化した対象である。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、IRAK2、SIGIRR、TLR1、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR10及びTRAF6の1以上を発現しない、発現レベルの低い又は発現レベルの変化した対象である。遺伝子の低い発現レベルとは、正常な発現レベルよりも低い(例えば、1.25倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍以上低い)レベルである。遺伝子の変化した発現レベルとは、正常な発現レベルと異なる(20%、25%、30%、50%、75%、100%、150%、200%、250%、300%異なる)レベルである。1以上のディフェンシンの正常な発現とは、(i)治療する疾患又は感染の、症状を現さない又は診断されていない対象において公知の平均発現レベル、(ii)治療する疾患又は感染の、症状を現さない又は診断されていない3、5、10、20、25、50又はそれ以上の患者において検出された平均発現レベル、及び/又は、(iii)疾患又は感染の攻撃前にここに記載した組成物を投与した患者において検出された発現レベル、である。
【0175】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、骨及び結合組織肉腫、脳腫瘍、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、食道癌、胃癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、咽頭癌及び中皮腫)、肝臓癌、並びに、前立腺癌のような、固形腫瘍癌と診断された患者に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、カポジ肉腫と診断された患者に投与する。
【0176】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、黒色腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌のような皮膚癌と診断された患者に投与する。
【0177】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎)を有する(例えば、診断された)、又は、炎症性腸疾患の症状の1、2若しくはそれ以上を現す患者に投与する。
【0178】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、クローン病(例えば、回腸クローン病)を有する(例えば、診断された)、又は、クローン病の症状の1以上を現す患者に投与する。
【0179】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルスに起因する疾患又はウイルスに関連する感染(例えば、ここに記載したウイルスに起因するいずれかの疾患又はここに記載したウイルスに関連する感染のような)を有する(例えば、診断された)患者、例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス(インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス又はインフルエンザCウイルス)、ヒト後肺炎ウイルス(HMPV)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、肝炎ウイルス(A,B,C)、エボラウイルス、単純疱疹ウイルス(例えば、HSV−1、HSV−2)、風疹、大痘瘡、及び/又は、小痘瘡に感染した患者に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルスに起因する疾患又はウイルスに関連する感染(例えば、ここに記載したウイルスに起因するいずれかの疾患又はここに記載したウイルスに関連する感染)の1、2又はそれ以上の症状を現す患者に投与する。
【0180】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルスに感染した創傷(例えば、切傷、裂傷、穿孔、擦り傷又は熱傷のような開放創)を有する(例えば、診断された)患者に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、ウイルスに感染した創傷と診断された患者に投与しない。
【0181】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、例えば、ブラストマイセス(Blastomyces)、パラコクシジオイデス(Paracoccidiodes)、スポロスリックス(Sporothrix)、クリプトコッカス、カンジダ、アスペルギラス(Aspergillus)、ヒストプラズマ(Histoplasma)、クリプトコッカス、バイポラリス(Bipolaris)、クラドフィアロフォラ(Cladophialophora)、クラドスポリウム(Cladosporium)、ドレクスレラ(Drechslera)、エクソフィアラ(Exophiala)、フォンセカエラ(Fonsecaea)、フィアロフォラ(Phialophora)、キシロヒファ(Xylohypha)、オクロコニス(Ochroconis)、リノクラディエラ(Rhinocladiella)、スコレコバシヂウム(Scolecobasidium)、及び/又は、ワンジエラ(Wangiella)に感染した患者のように、真菌に起因する疾患又は真菌に関連する感染(ここに記載した真菌に起因するいずれかの疾患又は関連する感染)を有する(例えば、診断された)患者に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、真菌に起因する疾患又は真菌に関連する感染(ここに記載したウイルスに起因するいずれかの疾患又はここに記載した真菌に関連する感染のような)の1、2又はそれ以上の症状を現す患者に投与する。
【0182】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、真菌に感染した創傷(例えば、切傷、裂傷、穿孔、擦り傷又は熱傷のような開放創)を有する(例えば、診断された)患者に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、真菌に感染した創傷と診断された患者に投与しない。
【0183】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、アシクロコニディウム属(Aciculoconidium)、ボトリオアスカス属(Botryoascus)、ブレタノマイセス属(Brettanomyces)、ブレラ属(Bullera)、ブレロマイセス属(Bulleromyces)、カンジダ属(Candida)、シテロマイセス属(Citeromyces)、クラビスポラ属(Clavispora)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、シストフィロバシディウム属(Cystofilobasidium)、デバロマイセス属(Debaromyces)、デバリオマイセス属(Debaryomyces)、デッケラ属(Dekkera)ディポダスカス属(Dipodascus)、エンドマイセス(Endomyces)、エンドマイコプシス属(Endomycopsis)エリスロバシディウム属(Erythrobasidium)、フェロマイセス属(Fellomyces)、フィロバシディウム属(Filobasidium)、グイリエルモンデラ属(Guilliermondella)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)、ハンセヌラ属(Hansenula)、ハセガワエア属(Hasegawaea)、ハイフォピキア属(Hyphopichia)、イッサチエンキア属(Issatchenkia)、クロエケラ属(Kloeckera)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、コマガタエラ属(Komagataella)、ルーコスポリディウム属(Leucosporidium)、リポマイセス属(Lipomyces)、ロデロマイセス属(Lodderomyces)、マラセジア属(Malassezia)、マスチゴマイセス属(Mastigomyces)、メチニコウイア属(Metschnikowia)ムラキア属(Mrakia)、ナドソニア属(Nadsonia)、オクトスポロマイセス属(Octosporomyces)、オオスポリディウム属(Oosporidium)、パチソレン属(Pachysolen)、ペタソスポラ属(Petasospora)、ファフィア属(Phaffia)、ピキア属(Pichia)、スードジマ属(Pseudozyma)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、サッカロマイコデス属(Saccharomycodes)、サッカロマイコプシス属(Saccharomycopsis)、スキゾブラストスポリオン属(Schizoblastosporion)、スキゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、スキワニオマイセス属(Schwanniomyces)、セレノノチラ属(Selenotila)、シロバジディウム属(Sirobasidium)、スポリディオボラス属(Sporidiobolus)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces)、ステファノアスカス属(Stephanoascus)、ステリグマトマイセス属(Sterigmatomyces)、シリンゴスポラ属(Syringospora)、トルラスポラ属(Torulaspora)、トルロプシス属(Torulopsis)、トレメロイド属(Tremelloid)、トリコスポロン属(Trichosporon)、トリゴノプシス属(Trigonopsis)、ウデニオマイセス属(Udeniomyces)、ワルトマイセス属(Waltomyces)、ウィッカーハミア属(Wickerhamia)、ウィリオプシス属(Williopsis)、ウインガエ属(Wingea)、ヤロウィア属(Yarrowia)、ジゴファボスポラ属(Zygofabospora)、ジゴリポマイセス(Zygolipomyces)、及び/又は、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)に感染した患者のように、酵母に起因する疾患又は酵母に関連する感染を有する(例えば、診断された)患者に投与する。
【0184】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、酵母に感染した創傷(例えば、切傷、裂傷、穿孔、擦り傷又は熱傷のような開放創)を有する(例えば、診断された)患者に投与する。ある実施形態において、ここに記載した組成物を、酵母に感染した創傷と診断された患者に投与しない。
【0185】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を、皮膚病を有する(例えば、診断された)又は皮膚病の1、2若しくはそれ以上の症状を現す患者に投与する。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)と診断された、又は、皮膚炎の1、2若しくはそれ以上の症状を現す患者に投与する。他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、感染と診断された又は感染の1、2若しくはそれ以上の症状を現す患者に投与する。
【0186】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、免疫不全患者、及び/又は、重大若しくは慢性的な疾患若しくは感染(例えば、HIV陽性患者、又は、癌治療若しくは移植手術の結果として免疫不全となった患者)に感受性のある患者に投与する。一実施形態において、ここに記載した組成物を、嚢胞性線維症と診断された患者に投与する。
【0187】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、疾患若しくは感染の症状が明らかになる前、又は、疾患若しくは感染が重症化する前(例えば、患者が治療又は入院を要求する前)に、疾患又は感染を有する患者に投与する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、疾患若しくは感染の症状が明らかになった後、又は、疾患若しくは感染が重症化した後(例えば、患者が治療又は入院を要求した後)に、疾患又は感染を有する患者に投与する。
【0188】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は動物である。ある実施形態において、この動物はトリである。ある実施形態において、この動物はイヌである。ある実施形態において、この動物はネコである。ある実施形態において、この動物はウマである。ある実施形態において、この動物はウシである。ある実施形態において、この動物は、例えば、ウマ、ブタ、マウス、又は、好ましくはヒトである霊長類のような哺乳動物である。
【0189】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、ヒト成人である。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、50歳を超えるヒト成人である。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、ヒト老人対象である。
【0190】
ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、ヒト幼児である。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、ヒト小児である。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、ヒト乳児である。ある実施形態において、ここに記載した組成物を投与する対象は、ヒト早産児である。
【0191】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、細菌感染又はこれに起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療のために、対象に投与しない。一実施形態において、ここに記載した組成物を、S.アウレアス感染又はこのような感染に起因する若しくは関連する疾患の予防及び/又は治療のために、対象に投与しない。他の特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷(例えば、切傷、裂傷、穿孔、擦り傷又は熱傷のような開放創)の細菌感染の予防及び/又は治療のために、対象に投与しない。
【0192】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、創傷(例えば、切傷、裂傷、穿孔、擦り傷又は熱傷のような開放創)の治療のために、対象に投与しない。
【0193】
5.6 投与形態
ある実施形態において、感染及び/若しくは疾患、又はその症状を治療又は予防するための方法であって、sNAGナノファイバを含む組成物を、このような治療を必要とする患者に局所投与する方法について、ここで記載する。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ組成物を、感染又は疾患の危険性が上昇した組織又は臓器に局所適用する。
【0194】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ及び/又はsNAGナノファイバ組成物の効果的な量を、対象に投与する。
【0195】
いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物を、患者の感染若しくは疾患部位、又は、感染若しくは疾患が影響した部位、に局所投与する。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物を、患者の感染若しくは疾患部位及びその周囲の部位、又は、感染若しくは疾患が影響した部位に、局所投与する。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物を、患者の感染若しくは疾患部位の近傍、又は、感染若しくは疾患が影響した部位の近傍に、適用する。さらに他の実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物を、感染又はそのような感染に関連する疾患の危険性の高い部位に、局所投与する。
【0196】
ここに記載したsNAGナノファイバ組成物を、局所投与の多くの適切な方法の何れかにより投与してもよい。このような方法は、当業者に公知であり、皮膚、他のいずれかの体表面(例えば、粘膜表面)、吸入、鼻腔内、膣内、直腸内、頬又は舌下への局所投与が含まれるが、これに限定されない。局所投与形態は、治療又は予防する感染又は疾患に応じて変化し得る。sNAGナノファイバ組成物は、局所投与の種々の形態に合わせて形成することができる。
【0197】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、例えば、このような治療を必要とする患者の皮膚、又は、このような治療を必要とする患者の他の組織に、局所適用する。いくつかの実施形態において、この組成物を、疾患若しくは感染部位、及び/又は、疾患若しくは感染部位近傍に、直接適用してもよい。いくつかの実施形態において、この組成物を、疾患又は感染が進行するかもしれない部位(例えば、開放創)に、直接適用してもよい。
【0198】
一実施形態において、sNAGナノファイバ組成物を、患者の皮膚に適用する。例えば、このような組成物を、皮膚の疾患又は感染を治療又は予防するために、患者の皮膚に局所適用してもよい。
【0199】
他の実施形態において、ここに記載した組成物を、患者の粘膜表面に局所適用してもよい。例えば、このような組成物を、口又は歯肉の疾患又は感染を治療又は予防するために、口腔粘膜に局所適用してもよい。
【0200】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、患者の生殖器、泌尿器又は肛門表面/領域に局所適用してもよい。例えば、このような組成物を、生殖器、泌尿器又は肛門疾患又は感染を治療又は予防するために、生殖器、泌尿器又は肛門表面/領域に局所適用してもよい。
【0201】
局所投与の上記列挙した方法は、懸濁液(例えば、濃厚懸濁液)、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、膜、スプレー、ペースト、粉、又は、ここに記載した若しくは当業者に公知の他のいずれかの形態でのsNAGナノファイバの投与を含んでもよい。sNAGナノファイバはまた、例えば、患者の皮膚の局在化した疾患又は感染を治療するために、包帯又は帯具に適用してもよい。特定の実施形態において、sNAGナノファイバを含む組成物は、固体又は障壁形成物ではない。
【0202】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、患者の口腔内及び/又は呼吸器系にスプレーとして適用してもよい。例えば、このような組成物を、口、鼻、歯肉、喉又は肺の疾患又は感染を治療又は予防するために、スプレーとして適用してもよい。そのような一実施形態において、この組成物を吸入器として投与するために構築してもよい。
【0203】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、患者の直腸、膣又は尿道に座薬として適用してもよい。例えば、このような組成物を、消化管、尿管又は生殖管の疾患又は感染を治療又は予防するために、座薬として適用してもよい。
【0204】
いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、注射器、又は、患者に組成物を局所運搬するために適した塗布器の他の形式(例えば、へら、綿棒、スクイーズチューブのようなチューブ)で局所適用してもよい。例えば、懸濁液(例えば、濃厚懸濁液)、溶液、クリーム、軟膏又はゲルのような形態のここに記載した組成物を、塗布器(例えば、注射器)を介して、患者の皮膚、粘膜又は他の組織表面に局所投与することができる。
【0205】
他の実施形態において、ここに記載した組成物を、外科手術部位に適用してもよい。例えば、このような組成物を、外科手術の対象となる又は外科手術の対象となっている組織又は臓器の表面に、スプレー塗布してもよいし、クリーム、懸濁液(例えば、濃厚懸濁液)、溶液、軟膏、ゲル、膜若しくは粉として適用してもよいし、又は、被覆してもよい。一実施形態において、ここに記載した組成物を、外科的切開部位、組織摘出部位、又は、外科縫合若しくは縫合糸部位に適用する。ここに記載した組成物のこのような投与は、外科手術後感染の予防、又は、外科手術を必要とした疾患の再発の予防をしてもよい。例えば、ここに記載した組成物を、ウイルス、酵母又は真菌感染が高リスクで引き起こされることが知られている外科手術の間又は後に用いてもよい。感染が高リスクで引き起こされることが知られている外科手術には、腸切除、胃腸外科手術、腎臓手術等が含まれる。ここに記載した組成物を、上記列挙した又は他の外科手術のいずれかの部位に適用してもよい。
【0206】
さらに他の実施形態において、患者の疾患又は感染を予防又は治療するために、ここに記載した組成物で、例えば、口腔衛生製品、カテーテル、手術器具又は他の製品のような、装置を被覆することによって、患者において使用又は患者に挿入してもよい。
【0207】
特定の実施形態において、ここに記載した組成物を固形腫瘍又は皮膚癌の部位に局所適用する。いくつかの実施形態において、この組成物を固形腫瘍又はその皮膚癌に直接適用する。いくつかの実施形態において、この組成物を固形腫瘍又は皮膚癌の部位であって、腫瘍又は皮膚癌の全て又は一部が除去(例えば、外科的除去)された部位に直接適用する。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物を、固形腫瘍又は皮膚癌を切除又は除去した部位及び/又はその周囲に局所投与する。これらのいくつかの実施形態において、このような組成物を、固形腫瘍が切除された臓器又は組織表面に、スプレー塗布してもよいし、懸濁液、溶液、クリーム、軟膏、ゲル、膜若しくは粉として適用してもよいし、被覆してもよい。特定の実施形態において、ここに記載した組成物を、固形腫瘍又は皮膚癌が除去又は切除された部位及びその周囲にスプレー塗布又は被覆する。
【0208】
いくつかの実施形態において、ここで検討した方法は、患者における、疾患又は感染の検出/診断を含む工程を含む。いくつかの実施形態において、検出/診断は、患者の生体サンプルにおける1以上の病原体(例えば、ウイルス、真菌又は酵母)の試験又は分析を含む。他の実施経あ値において、診断は、患者が疾患(例えば、IBD、クローン病、癌、皮膚炎、乾癬、又は、ウイルス、真菌若しくは酵母感染に関連する疾患)の1以上の症状を有しているか否かを評価することを含む。
【0209】
ここに記載した組成物は、持続した放出特性を示してもよいし、及び/又は、このような組成物の持続的な放出をもたらす形態で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、上記5.1の項目に記載したsNAGナノファイバの生物分解時間が長時間であること、及び、sNAGナノファイバのこれらの特性は、ここに記載した組成物の持続した放出に導く又は貢献し得る。さらに他の実施形態において、ここに記載した組成物を、当業者に公知のいずれかの方法を用いて、持続した放出能力を示すように形成する。ここに記載した組成物は、患者にこの組成物を投与した後、約6時間、12時間、18時間、24時間(1日)、2日、3日、5日、7日(1週間)、10日間、14日間(2週間)、3週間又は4週間と同等期間、又は、これを超える長時間、持続した放出を示してもよい。
【0210】
検討した治療体制には、sNAGナノファイバ組成物の単回投与若しくは単回適用;sNAGナノファイバ組成物の二回投与若しくは二回適用;又は、sNAGナノファイバ組成物の複数回投与若しくは複数回適用の体制を含む。投与又は適用は、1時間毎、1日毎、1週間毎又は1月毎の投与であってもよい。例えば、sNAGナノファイバ組成物の投与は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1日おき、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1月に1回、又は、2ヶ月に1回行ってもよい。
【0211】
sNAGナノファイバ組成物を、2日間、3日間、4日間、5日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、9ヵ月間、1年間、1.5年間、2年間、2.5年間、3年間、4年間、5年間、7年間、10年間若しくは10年間以上と同等又はそれ以上、継続して投与してもよい。いくつかの実施形態において、sNAGナノファイバ組成物を、2日間、3日間、4日間、5日間、1週間、2週間、3週間、1ヵ月間、2ヵ月間、3ヵ月間、4ヵ月間、5ヵ月間、6ヵ月間、9ヵ月間若しくは1年間と同等又はそれ以上継続して、1日1回又は2回、患者に投与する。このような一実施形態において、sNAGナノファイバ組成物は、治療期間中の副作用の原因ではない、又は、穏やかな副作用のみの原因である。他の実施形態において、sNAGナノファイバ組成物は、炎症(例えば、穏やかな又は重大な炎症)又はアレルギー(例えば、穏やかな又は重大なアレルギー)の原因ではない。
【0212】
組成物中のsNAGナノファイバの濃度は変化し得る。一般に、sNAGナノファイバの効果的な量を、ここに記載した疾患を治療するための、ここに記載した組成物において使用する。効果的な量は、例えば、疾患を治療するために効果的な量、又は、疾患の1以上の症状の減少若しくは根絶するために効果的な量のように、ここに記載した1以上の効果に達するために十分な量であり得る。例えば、組成物は、患者に局所投与するために適した形態において、組成物の1回投与/適用あたり、sNAGナノファイバを約0.2〜20mg/cm
2含んでもよい。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、患者に局所運搬するために適した形態において、組成物の1回投与/適用あたり、約0.25〜20mg/cm
2、約0.5〜20mg/cm
2、約1〜0mg/cm
2、約1〜15mg/cm
2、約1〜12mg/cm
2、約1〜10mg/cm
2、約1〜8mg/cm
2、約1〜5mg/cm
2、約2〜8mg/cm
2、又は、約2〜6mg/cm
2のsNAGナノファイバを含んでいる。いくつかの実施形態において、ここに記載した組成物は、患者に局所運搬するために適した形態において、組成物の1回投与/適用あたり、約5〜50mg/mLのsNAGナノファイバを含むことができる。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、患者に局所運搬するために適した形態において、組成物の1回投与/適用あたり、約5〜40mg/ml、約5〜35mg/ml、約10〜50mg/ml、約10〜40mg/ml、約10〜35mg/ml、約10〜30mg/ml、約15〜40mg/ml、約15〜35mg/ml、約15〜30mg/ml又は約20〜30mg/mlのsNAGナノファイバを含む。特定の実施形態において、ここに記載した組成物は、患者に局所運搬するために適した形態において、組成物の1回投与/適用あたり、約10mg/mL、12mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL又は30mg/mLのsNAGナノファイバを含む。ある実施形態において、ここに記載した組成物は、患者において治療するための表面(例えば、皮膚、粘膜表面又は他の組織表面)に、0.5cm
2又は1cm
2あたり、約50〜100μL、50〜200μL、50〜250μL、50〜300μL、50〜350μL、50〜400μL、50〜450μL、50〜500μL、100〜200μL、100〜300μL、100〜400μL、100〜500μLの範囲内の量の全溶液又は懸濁液(sNAGナノファイバを含む)を含むことができる。全溶液又は懸濁液は、生理食塩水、バッファ、溶液(例えば、ハンクス緩衝液)又は他の生理学的に交換可能な溶液を含むことができる。
【0213】
5.7 組み合わせ療法
種々の実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物を、1以上の他の療法と組み合わせて対象に投与してもよい。1以上の他の療法は、疾患の治療若しくは予防に有益であり得る、又は、疾患に関連する症状若しくは状態を改善し得る。
ある実施形態において、この療法は、5分未満空けて、30分未満空けて、1時間空けて、約1時間空けて、約1〜約2時間空けて、約2〜約3時間空けて、約3〜約4時間空けて、約4〜約5時間空けて、約5〜約6時間空けて、約6〜約7時間空けて、約7〜約8時間空けて、約8〜約9時間空けて、約9〜約10時間空けて、約10〜約11時間空けて、約11〜約12時間空けて、約12〜約18時間空けて、18〜24時間空けて、24〜36時間空けて、36〜48時間空けて、48〜52時間空けて、52〜60時間空けて、60〜72時間空けて、72〜84時間空けて、84〜96時間空けて、又は、96〜120時間空けて、適用する。特定の実施形態において、2以上の療法を、同一特許訪問内に投与する。
【0214】
ある実施形態において、1以上の療法は外科手術である。特定の実施形態において、外科手術を、固形腫瘍又は皮膚癌の全て又は一部を除去するために行い、さらに、ここに記載した組成物を外科手術前、外科手術中及び/又は外科手術後に、腫瘍の部位に投与する。ある実施形態において、1以上の療法は、放射線療法である。
【0215】
ある実施形態において、1以上の療法は抗ウイルス剤である。当業者に公知の抗ウイルス剤を、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いてもよい。抗ウイルス剤の限定されない例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質抗体、核酸分子、有機分子、無機分子及び小分子が含まれ、これらは、ウイルスのレセプターへの付着、ウイルスの細胞内在化、ウイルスの複製、又は、細胞からのウイルスの放出を、抑制及び/又は低下させる。特定の実施形態において、抗ウイルス剤は、ヌクレオシド類似物(例えば、ジドブジン、アシクロビル、ガングシロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン及びリバビリン)、フォスカルネ(foscarnet)、アマンタジン、ペラミビル、リマンタジン、サクイナビル、インジナビル、リトナビル、アルファ−インターフェロン及び他のインターフェロン、AZT、ザナミビル(リレンザ(登録商標))、並びに、オセルタミビル(タミフル(登録商標))を含むが、これに限定されない。他の抗ウイルス剤は、例えば、Fluarix(登録商標)(GlaxoSmithKline)、FluMist(登録商標)(MedImmune Vaccines)、Fluvirin(登録商標)(Chiron Corporation)、Flulaval(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Afluria(登録商標)(CSL Biotherapies Inc.)、Agriflu(登録商標)(Novartis)又はFluzone(登録商標)(Aventis Pasteur)のような、インフルエンザウイルスワクチンを含む。
【0216】
ある実施形態において、1以上の療法は抗がん剤である。特定の実施形態において、抗がん剤は化学療法薬である。当業者に公知の抗がん剤の何れかを、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いてもよい。抗がん剤の例には、アシビチン;アントラサイクリン;アントラマイシン;アザシチジン(Vidaza);ビスホスホネート(例えば、パミドロネート(Aredria)、クロンドロネートナトリウム(Bonefos)、ゾレドロン酸(Zometa)、アレンドロネート(Fosamax)、エチドロネート、イバンドロネート、シマドロネート、リセドロメート及びチルドロメート);カルボプラチン;クロラムブシル;シスプラチン;シタラビン(Ara−C);ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン(Dacogen);ジメチル化剤;ドセタキセル;ドキソルビシン;EphA2インヒビター;エトポシド;ファザラビン;フルオロウラシル;ゲムシタビン;ヒストン脱アセチル化インヒビター(HDACs);インターロイキンII(インターロイキンIIの組換体又はrIL2を含む)、インターフェロンアルファ;インターフェロンベータ;インターフェロンガンマ;レナリドミド(Revlimid);抗CD2抗体(例えば、シプリツマブ(MedImmune Inc.:国際公開番号WO02/098370の全てを参照としてここに組み込む))。
【0217】
癌療法の他の例は、脈管形成インヒビター;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;BCR/ABLアンタゴニスト;ベータラクタム誘導体;カゼインキナーゼインヒビター(ICOS);エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;グルタチオンインヒビター;HMG CoA還元酵素インヒビター;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子−1レセプターインヒビター;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;親油性プラチナ化合物;マトリリシンインヒビター;マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビター;二重鎖不一致RNA;一酸化窒素モジュレーター;オリゴヌクレオチド;プラチナ化合物;プロテインキナーゼCインヒビター;タンパク質チロシンホスファターゼインヒビター;プリンヌクレオシドホスホリラーゼインヒビター;rafアンタゴニスト;情報伝達インヒビター;情報伝達モジュレーター;翻訳インヒビター;チロシンキナーゼインヒビター;及びウロキナーゼレセプターアンタゴニストを含むがこれに限定されない。
【0218】
いくつかの実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いる療法は、抗脈管形成剤である。抗脈管形成剤の限定されない例には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、配合体、抗体(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ、モノクローナル、ポリクローナル、Fvs、ScFvs、Fabフラグメント、F(ab)2フラグメント、及び、これらの抗体結合フラグメント)であり、このような抗体は、脈管形成を低下させる又は抑制する、TNF−α、核酸分子(例えば、アンチセンス分子又は三重螺旋)、有機分子、無機分子、及び、小分子に特異的に結合する。抗脈管形成剤の他の例は、米国公開番号2005/0002934A1のパラグラフ277〜282において見ることができ、この文献の全てを参照としてここに組み込む。他の実施形態において、本発明に従って使用する療法は、抗脈管形成剤ではない。
【0219】
いくつかの実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いる療法は、抗炎症剤である。抗炎症剤の限定されない例には、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)(例えば、セレコキシブ(CELEBREX(登録商標))、ジクロフェナク(VOLTAREN(登録商標))、エトドラク(LODINE(登録商標))、フェノプロフェン(NALFON(登録商標))、インドメタシン(INDOCIN(登録商標))、ケトララック(TORADOL(登録商標))、オキサプロジン(DAYPRO(登録商標))、ナブメントン(RELAFEN(登録商標))、スリンダック(CLINORIL(登録商標))、トルメンチン(TOLECTIN(登録商標))、ロフェコキシブ(VIOXX(登録商標))、ナプロセン(ALEVE(登録商標)、NAPROSYN(登録商標))、ケトプロフェン(ACTRON(登録商標))及びナブメトン(RELAFEN(登録商標)))、ステロイド抗炎症剤(例えば、グルココルチコイド、デキサメタゾン(DECADRON(登録商標)))、コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン(MEDROL(登録商標)))、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン(PREDNISONE(登録商標)及びDELTASONE(登録商標))及びプレドニゾロン(PRELONE(登録商標)及びPEDIAPRED(登録商標)))、抗コリン作用薬(例えば、硫酸アトロピン、硝酸メチルアトロピン及び臭化イプラトロビウム)、ベータ2−アゴニスト(例えば、アブテロール(VENTOLIN(登録商標)及びPROVENTIL(登録商標))、ビトルテロール(TORNARATE(登録商標))、レバルブテロール(XOPONEX(登録商標))、メタプロテレノール(ALUPENT(登録商標))、ピルブテロール(MAXAIR(登録商標))、テルブトライン(BRETHAIRE(登録商標)及びBRETHINE(登録商標))、アルブテロール(PROVENTIL(登録商標)、REPETABS(登録商標)及びVOLMAX(登録商標))、フォルモテロール(FORADIL AEROLIZER(登録商標))及びサルメテロール(SEREVENT(登録商標)及びSEREVENT DISKUS(登録商標)))、並びに、メチルキサンチン(例えば、テオフィリン(UNIPHYL(登録商標)、THEO−DUR(登録商標)、SLO−BID(登録商標)及びTEHO−42(登録商標)))が含まれる。
【0220】
ある実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いる療法は、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼIIインヒビター、又は、分裂抑制剤である。アルキル化剤は、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、コロルムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、デカルバジン、メクロレタミン、メファレン及びテモゾロミドを含むがこれに限定されない。ニトロソウレアはカルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)が含まれるが、これに限定されない。代謝拮抗剤には、5−フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン及びフルダラビンが含まれるが、これに限定されない。アントラサイクリンには、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びミトキサントロンが含まれるが、これに限定されない。トポイソメラーゼIIインヒビターには、トポテカン、イリノテカン、エトピシド(VP−16)及びテニポシドが含まれるが、これに限定されない。分裂抑制剤には、テキサン(パクリタキシル、ドセタキシル)及びビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)が含まれるが、これに限定されない。
【0221】
いくつかの実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いる療法は、抗痛薬(例えば、鎮痛剤)である。いくつかの実施形態において、ここに記載したsNAGナノファイバ又はその組成物と組み合わせて用いる療法は、抗熱薬である。
【0222】
5.8 キット
ここに記載したsNAGナノファイバ組成物の1以上を含む医薬パック又はキットもまた、ここで提供する。このパック又はキットは、ここに記載した組成物を含む1以上の構成要素を充填した1以上の容器を含んでいてもよい。この組成物は、組成物が汚染されることなく容易に除去することができるように、防水及び殺菌された容器中に密封収容されていることが好ましい。容器を形成する材料は、アルミ箔、プラスチック又は容易に殺菌される他の従来の材料を含んでいてもよい。キットは、組成物の1回投与又は複数回投与のための材料を含むことができ、好ましくは、各投与のための材料が、防水及び殺菌された容器中に独立して提供されている。
【0223】
他の実施形態において、二重区画を有する容器を提供する。第1区画は、ここに記載した上記sNAGナノファイバ組成物のいずれかを収容する一方、第2区画は、sNAGナノファイバ組成物と組み合わせて使用する他の試薬のような他の活性剤を収容する。現場又は診療室において、患者に投与するために、第1区画内の組成物を第2区画内の試薬と容易に組み合わせることができる。
【0224】
キットは、また、ここに記載したsNAGナノファイバ組成物の1以上を投与するため、及び/又は、sNAGナノファイバ組成物と組み合わせて使用するための他の試薬のような他の活性剤を投与するための、塗布器を含むことができる。一実施形態において、キットは、sNAGナノファイバ組成物の局所投与のための塗布器を含む。sNAGナノファイバ組成物の局所投与のための塗布器の例には、注射器、ヘラ、チューブ(スクイーズチューブ)及び綿棒が含まれるが、これに限定されない。
【0225】
さらに、救急使用又は軍使用のために設計したキットもまた、ハサミ、外科用メス、鉗子、止血用具、弾性又は非弾性包帯等のような、使い捨ての事前殺菌器具を含むことができる。
【0226】
このようなキット又はパックには、任意で、医薬品又は生物学的製品の製造、使用又は販売を統制する政府機関が規定する形式の注意書きを記載することができ、このような注意書きは、ヒトに投与するための製造、使用又は販売の機関による承認を反映する。例えば、キットは、FDA承認に関する注意書き及び/又は使用上の注意を含むことができる。
【0227】
ここに包含するキットは、上述した適用及び方法において使用することができる。
【0228】
6.実施例
6.1 実施例1:創傷治癒及びAkt1/Ets−1依存経路を介したディフェンシン発現を促進する海洋珪藻植物由来sNAGナノファイバ
この実施例は、sNAGナノファイバが、皮膚創傷治癒及びディフェンシン発現を促進すること、並びに、Akt1→Ets1経路が、sNAGナノファイバによる皮膚創傷治癒の調節において中心的役割を果たすことを実証する。
【0229】
6.1.1 材料及び方法
sNAGナノファイバ(特にタリデルム)を、海洋ポリマー技術により製造及び提供し、創傷治癒に適した絆創膏に成形した。野生型C57Black及びAkt1欠損マウスを、サウスカロライナ医科大学の動物施設に保管した。8〜12週齢の範囲の野生型及びAkt1欠損マウスを、50%純酸素及び50%イソフルレンガスにより麻酔した。マウスを傷つけた直後に、Nair除毛ローションを背部に塗布し、不要な毛を除去した。生検切除穿孔器を用いて、背面の肌の4mm円形領域を除去した。0日目にタリデルムを各創傷部に配置するか、創傷部を処置せずに放置した。1、3、5及び7日目に、創傷部の撮影、測定及び8mm生検穿孔器を用いた切除を行い、創傷部とその周囲の皮膚が完全に除去されたことを裏付けた。タリデルム治療を行った及び行っていない野生型及びAkt1欠損マウスの創傷部を、H&E及び免疫蛍光染色のために、パラフィン包埋した。
【0230】
パラフィン包埋切片を切断し、染色するために顕微鏡スライド上に配置した。スライドをキシレンで洗浄してパラフィンを除去し、段階的なアルコールシリーズを通して再水和した。その後、切片を0.1% Triton×100中でインキュベートし、浸透させた。切片を、沸騰した抗原賦活溶液中でインキュベートした。ヤギ一次抗体、β−ディフェンシン3 1:400希釈液中でインキュベートする前に、1%動物血清を用いて固定した。その後、4℃の湿度チャンバ中、一晩、一次抗体中でインキュベートした。免疫蛍光ロバ−α−ヤギ488二次抗体 1:200希釈液を用いた後、TOPRO−3により核染色した。共焦点顕微鏡を用いて、画像を記録した。
【0231】
ヘマトキシリン及びエオシン染色を用いて、表皮、真皮、筋肉及び血管のような基本構造を可視化し、創傷の方向と大まかな位置を決定した。また、Akt1に依存しない方法において、タリデルムにより刺激した細胞型を同定するために、H&E染色を用いた。
【0232】
他の材料及び方法は、以下の図面の説明及び結果の欄に記載し、当業者に公知の方法に従って行った。
【0233】
6.1.2 結果
sNAGナノファイバによる、Ets1の上流レギュレータであるAkt1活性化の刺激。
図1Aは、NAG及び血清欠乏ECのsNAG刺激に応答するリン酸化Aktのウエスタンブロット分析を示す。
図1Bは、スクランブルコントロール又はAkt1 shRNAレンチウイルスの何れかに感染したECのRT−PCR分析、並びに、ローディングコントロールとしてのEts1及びS26の発現分析を示す。
図1Cは、sNAGナノファイバからAkt1、Ets1及びディフェンシンに信号を伝達する情報伝達経路を図示している。
【0234】
Akt1欠損マウスにおける創傷治癒の遅延が、タリデルム(sNAG)治療により部分的に救済された。
図2Aは、タリデルムで治療した及び治療していない、負傷したWT及びAkt1欠損マウスの代表的な画像を示す。
図2Bは、負傷3日目の代表的なマウス皮膚切片のH&E染色を示す。野生型及びAkt1の創傷切除物のH&E染色は、ケラチン生成細胞の増殖及び移動のタリデルム依存増大を示した。破線は、創傷の縁部を超えるケラチン生成細胞増殖領域を示す。野生型及びAkt1治療創傷部の両方において、野生型及びAkt1コントロールと比較して、創傷の縁部を超える再上皮形成の証拠が見られた。このことは、タリデルムが、Akt1経路から独立して、ケラチン生成細胞の補充を促進することを示している。タリデルムは、創傷の縁部を超える、表皮の完全な再上皮形成を誘引するが、野生型と比較して、下部組織における再血管新生は実質的に不足したままである。このことは、Akt1動物における、相当量の出血と赤血球の浸潤の証拠である。
【0235】
sNAGナノファイバは一次内皮細胞におけるサイトカイン及びディフェンシン発現を刺激する。
図3Aは、a−ディフェンシンに対する直接抗体を用いて、sNAGで治療した又は治療していないECの免疫組織化学を示す。
図3Bは、ECのナノファイバ治療がα−ディフェンシン1〜3の分泌をもたらすことを示す、ELISAを現している。
【0236】
sNAGナノファイバは、Akt1依存態様において、一次内皮細胞のディフェンシン発現を刺激する。
図4A及び4Bは、sNAGで治療した又は治療していない、D98059(MAPKインヒビター)、ウォルトマンニン(PI3Kインヒビター)、又は、スクランブルコントロール若しくはAkt1 shRNAレンチウイルス感染により、治療した又は治療していない、血清欠乏ECの量的RT−PCR分析を示しており、示した遺伝子の発現を評価した。
【0237】
sNAGナノファイバは、マウスのケラチン生成細胞における、β−ディフェンシン3の発現を刺激する。
図5Aは、3日目のWT及びAkt1欠損動物からのパラフィン包埋マウス皮膚創傷切片における、β−ディフェンシン3及びインボルクリン抗体の免疫蛍光染色を示す。皮膚創傷治癒モデルを、WT及びAkt1欠損マウスの両方において作成し、in vivoでタリデルムの効果を評価した。これらの発見は、Akt1依存態様において、タリデルム治療動物におけるβ−ディフェンシン3の発現が増加したことを示す。創傷治癒においてディフェンシン発現を増加させるタリデルムの能力は、創傷感染の治療及び制御のための重要な意味を有している。
図5Bは、NIHImageJ ソフトウェアを用いた、β−ディフェンシン3免疫蛍光染色の定量化を示す。
図5Cは、β−ディフェンシン3及びTOPRO−3で治療した及び治療していない、WT及びAkt1欠損ケラチン生成細胞の、免疫蛍光染色を示す。WT及びAkt1のタリデルム治療創傷において、βディフェンシン3の緑色染色が増加したことに注目する。創傷切片の免疫蛍光標識は、Akt1依存態様において、タリデルム治療創傷におけるβ−ディフェンシン3の発現の増加が示されたことを説明する。Akt1治療創傷において、β−ディフェンシン3の相応の増加が示されたけれども、野生型治療創傷においては、より顕著な増加が示された。このことは、β−ディフェンシン3発現の増加は、ナノファイバの適用のみではなく、Akt1経路に少なくとも部分的に依存することを示している。β−ディフェンシン3発現は、ケラチン生成細胞特異的な発現を示すケラチン生成細胞に限定されると考えられる。
【0238】
Akt1依存転写因子結合部位。
図6は、Akt1依存転写因子結合部位の模式図を示す。Genomatixソフトウェアを用いて、転写開始部位の500塩基対上流において、DEF1、4及び5のmRNAにおける保存部位を分析した。
【0239】
6.1.3 結論
提供したデータは、Ets1のsNAGナノファイバ刺激が、これらのナノファイバによるAkt1の活性化によってもたらされることを示す。ナノファイバ治療は、IL−1(Ets1の標的として知られている)、VEGF及び種々のディフェンシン(β3、α1、α4及びα5)のような細胞内補給を含む、遺伝子発現の顕著な増加をもたらした。小さい抗細菌ペプチドが化学誘引物質として作用することが近年示されている。shRNAを用いてノックダウンした、PI3K/Akt1経路及びAkt1の両方の薬理学的抑制は、これらの化学走化性因子の発現の減少をもたらした。Akt1欠損マウスは、タリデルムナノファイバにより部分的に救済される、創傷治癒が遅れた表現型を示した。タリデルムで治療した創傷は、また、Akt1依存ディフェンシン発現の増加も示した。
【0240】
タリデルムで治療した創傷におけるβ−ディフェンシン3発現及びケラチン生成細胞の増殖は、効果的な創傷治癒製品としてのタリデルムの有益な使用を実証する。タリデルムは、sNAGナノファイバの機能におけるAkt1の本質的な役割を提案する、Akt1に依存する態様でのケラチン生成細胞における抗細菌ペプチド発現の増加に作用する。このことは、PI3K/Akt1経路の抑制及びshRNAを用いたAkt1のノックダウンが化学走化性因子の発現低下をもたらす、実験室での他の研究の結果(Buff、Muise−Helmericks、未発表)と相互に関連がある。
【0241】
β−ディフェンシン3発現の増加は、Akt1依存性であるが、8mm創傷切除部のH&E染色は、タリデルムが創傷部の再上皮形成において、Akt1から独立して作用することを示した(
図2B)。新しいケラチン生成細胞は創傷縁部の全体にかかっているにも関わらず、下部組織では、血管成長において同様の刺激が実証されなかった。このことは、Akt1欠乏が、血管の漏れ及び真皮中の大量の浮遊赤血球の責任であることを示唆している。このことは、血管新生の増加において、タリデルムはAkt1経路依存性であることを提案している。
【0242】
要約すると、(i)sNAGナノファイバ(タリデルムのような)が脈管形成を部分的に刺激することによって、創傷治癒を促進する;(ii)内皮細胞のsNAGナノファイバ治療が細胞運動性及びサイトカイン分泌の変化を導くAkt1/Ets1依存経路を活性化する;(iii)タリデルムで治療した創傷が、Akt1に依存した態様において、β−ディフェンシン3発現の増加を示す;(iv)Akt1欠損動物のタリデルム治療が、ケラチン生成細胞増殖/移動の顕著な増加を導き、この表現型を部分的に救済する;及び(v)バイオインフォマティクス分析が、Ets1は創傷治癒及びサイトカイン分泌の増加を導くsNAG活性化経路におそらく含まれることを示す。
【0243】
これらの発見を総合して、sNAGナノファイバによる皮膚創傷治癒の調節におけるAkt1→Ets1経路の中心的役割を提案し、創傷治癒を強調するための新規で効果的な方法としてのこれらのナノファイバの使用を支持する。
【0244】
6.2 実施例2:sNAGナノファイバは、ディフェンシン発現を増加させ、動的閉創を向上させ、かつ、間接的ディフェンシン依存抗細菌効果を有する。
【0245】
この実施例は、sNAGナノファイバが、間接的及びディフェンシン依存的に、in vivoでのスタフィロコッカスアウレアスに対する強力な抗細菌効果を有することを実証する。この実施例は、また、sNAGナノファイバが、Akt−1に依存する態様において、in vitroのケラチン生成細胞及び内皮細胞並びにin vivoの皮膚創傷におけるディフェンシン発現を誘引し、かつ、閉創速度を向上させることを示す。
【0246】
6.2.1 材料及び方法
薬理学的抑制、ELISA:ヒト臍帯静脈EC(Lonza)を内皮基礎培地2(Lonza)中で、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃に維持した。内皮基礎培地2(EMB2)を、Lonzaの手順に記載されたSingleQuotsでEC成長培地2に添加し、かつ、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen)を添加した。血清飢餓を、80〜90%コンフルエントで、0.1%ウシ胎仔血清(Valley Biomedical)を添加したEBM2において24時間行った後、殺菌水中の、高度に生成されたpGlcNAc(50μg/mL)ナノファイバ(sNAG)(Marine Polymer Technologies、Inc.、Danvers、Mass.、 USA提供)で刺激した。この研究において用いたpGlcNAc珪藻植物由来ナノファイバは、より長い形態(NAG)由来の短い生体分解性のファイバであり、平均長さが4〜7μm、及び、ポリマー分子量が約60,000Daである。PD098059(50μM)又はウォルトマンニン(wortmannin)(100μM)を用いた抑制のために、sNAG(50μg/mL)で3時間刺激する前に、45分間細胞を前治療した。
【0247】
統計分析:各量的実験を、少なくとも3重で、少なくとも3回独立して行った。全ての統計分析を、マイクロソフトExcelの計算手段、標準偏差及びstudent t−testを用いて行った。
【0248】
レンチウイルス感染:Akt1に対するMisson shRNAレンチウイルスコンストラクトを、Sigma/Aldrichから購入した。スクランブルpLKO.1shRNAベクターをAddgeneから購入した。レンチウイルスを293T細胞中で増殖させ、上記添加したDMEM中で維持した。レンチウイルス製造を、Addgeneから購入したpsPAX2及びpMD2.Gパッケージングベクターを用いて、Addgeneからのレンチウイルス分子製造手順に従って行った。標的細胞の感染のために、7.5×10
5個の細胞を100mm
2プレート上に載置し、一晩インキュベートした。翌日、細胞を、1μg/mLポリブレンの終濃度で、スクランブルコントロール又はAkt1shRNAレンチウイルスのいずれかに形質導入した。形質導入後、内皮細胞を一晩血清飢餓とし、sNAG(50g/mL)で3時間刺激した。全ての感染をRT−PCRによる適切なノックダウンにより観察した。
【0249】
RT−PCR:半量的RT−PCRのために、生産者の取扱説明書に従って、RNAを、RNAsol(TEltest,Inc.)を用いて抽出した。
生産者の取扱説明書にしたがって、cDNAをSuperscript First Strand Synthesis Kit (Invitrogen)により、Oligo(dT)を用いて2μg全長RNAから合成した。PCR反応物は、cDNA及び1.25μMの適切なプライマー対(Sigma−Proligo、St.Louis、MO、USA)の同量を含んでいた。この分析で使用した全てのプライマー配列を下記表に示す。
【0251】
サイクル条件は、94℃で5分間;94℃で1分間を30〜35サイクル、55〜65℃(プライマーTmに基づく)で1分間、72℃で1分間;72℃で7分間とし、4℃で冷却した。使用した各プライマー対のためのサイクル数を、分析の線形範囲内になるように、経験的に決定した。全ての半定量的RT−PCRを、内部コントロールとしてリボソームタンパク質サブユニットS26プライマーを用いて行った。反応産物をBioRad Molecular Imaging System(Hercules、CA、USA)において可視化した。いずれもStratageneから購入したBrilliant CYBR green QPCR kitとMx3000P Real−Time PCR systemとを組み合わせて使用し、リアルタイムPCRを行った。リボソームサブユニットS26を検出するプライマーを内部コントロールとして用いた。
【0252】
切除創傷治癒モデル:野生型C57B1/6及びAkt1−/−[43]を、全ての実験において用いた。Akt1欠損動物を、全タンパク質の発現を妨げる、翻訳開始部位への挿入変位誘発法を用いて作製した。8〜12週齢の麻酔したオスマウス成体に損傷を与えた。2つの完全な厚さ皮膚創傷を、各横腹に同一の2つの創傷を形成するために、4mm生検穿孔器(Miltex)を用いて形成した。O
2/イソフルラン吸入麻酔器(VetEquip,Inc.)を用いてマウスを麻酔した。イソフルランを誘導中に4%、手術中に2%用いた。手術前に、毛を脱毛し、洗浄して70%エタノールで殺菌した。創傷部に対して、蒸留水で湿らせたsNAG膜で治療又は治療せずに放置の何れかを行った。3日目及び5日目に、動物を安楽死させ、8mm生検穿孔器(Miltex)を用いて、周囲の皮膚を含めて全ての創傷部を回収した。創傷部を4℃で一晩、4%パラフォルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋して分析のために切り出した。
【0253】
ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E):全てのH&E染色を、サウスカロライナ医科大学の組織学中央施設の、再生医療及び細胞生物学部門において行った。簡単に、切片をキシレン中で洗浄し、段階的なアルコールシリーズを通して再水和し、ヘマトキシリン中の後酸アルコール中に載置した。サンプルをアンモニア水中に載置し、エタノールですすぎ、段階的なアルコールを通して脱水する前にエオシンに暴露し、キシレンで洗浄した。切片をCytoseal−XYL(Richard−Allan Scientific)を用いて標本化した。H&E切片を、オリンパスBX40顕微鏡(4x対物レンズ、0.13)を用いて可視化し、オリンパスカメラ(モデルDP25)及びDP2−BSW取得ソフトウェアを用いて記録した。
【0254】
細菌接種、組織グラム染色、コロニー形成ユニット定量化:8〜12週齢のオスマウスに、上述と同様に損傷を与えた。スタフィロコッカスアウレアス(ATCC25923)の単一コロニーを選別し、37℃で一晩培養し、OD
600=0.53の吸光度に調節した。S.アウレアス 1mLを、10,000rpmで遠心し、殺菌PBS中に再懸濁し、各創傷に摂取させるために15mLを用いた。接種後30分間、治療グループにsNAG膜を塗布する。損傷を与えてから3及び5日後にマウスを安楽死させ、8mm生検穿孔機を用いて創傷部を回収した。1動物あたり1つの創傷部を、4℃で一晩4%パラフォルムアルデヒド中に固定し、他の創傷部を、細菌定量化(下記参照)のために、抗生物質を含まないLB培地で培養及び載置した。組織グラム染色のための創傷部を、パラフィン包埋し、切片化した。切片をキシレンで洗浄し、アルコールシリーズを通して再水和し、生産者により記載された取り扱い説明書にしたがって、組織グラム染色(Sigma−Aldrich)を用いて染色した。
【0255】
培養のために、創傷切片を0.5mLの細菌培地に載置し、37℃で30分間振とうさせながらインキュベートした。コロニー形成ユニット(CFU)を、37℃で一晩載置した希釈シリーズを用いて定量化した。1プレートあたり/1希釈率あたりのコロニー数を計測し、CFU/mLを算出した。
【0256】
sNAG治療した細菌培養物のCFU/mLを決定するために、溶液中のS.アウレアス培養物を、種々の濃度のsNAG(10.8mg/mLのsNAGを10μL及び20μL)で、3時間処理した。培養物を37℃で一晩載置した後、CFU/mLを決定した。
【0257】
β−ディフェンシン3ペプチド適用:3つの試験濃度(1.0μM、2.5μM、5.0μM)の生物学的に活性なヒトβ−ディフェンシン3ペプチド(Peptide Institute, Inc.)について、上述した感染創傷治癒モデルにおける細菌成長に対する効果を試験した。各濃度において細菌成長に対して負に影響したため、最も低濃度を分析のために選択した。各創傷をS.アウレアスに感染させた後、10μLのペプチドを適用した。3日後、創傷を回収し、区分化のために包埋してグラム染色、又は、上述の通りCFU/mL定量化のために培養した。
【0258】
β−ディフェンシン3抗体遮断:野生型オスマウスに損傷を与え、上述したように、15μLのS.アウレアスに感染させた。接種後、一方の創傷部を0.2μg/mLのβ−ディフェンシン3抗体(Santa Cruz)で治療し、他方を0.2μg/mLの標準ヤギIgGコントロール抗体(Santa Cruz)で治療した。sNAG膜を抗体治療後0日目の全てのマウスに適用した。抗体を24時間毎に適用した。マウスを3日目に安楽死させ、8mm生検穿孔機を用いて創傷部を回収した。創傷部を4℃で一晩4%パラフォルムアルデヒド中に固定し、パラフィン包埋して切片化し、組織グラム染色を用いて分析した。CFU/mL定量化を、上述したように、3日目に回収した創傷部において行った。
【0259】
免疫蛍光、顕微鏡:パラフィン包埋組織切片をキシレン及び段階的なアルコールシリーズを通して再水和した。切片を0.01% Triton−X100で治療し、抗原が明らかな溶液(Vector Laboratories)を用いて、5分間加圧調理器内で抗原回復の対象とし、冷却した。皮膚切片を、β−ディフェンシン3ヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz)、インボルクリンウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz)及びTO−PRO3ヨウ素(Molecular Probes)で標識した。切片を、4℃で一晩、一次抗体中でインキュベートし、かつ、室温で1時間、適切な二次免疫蛍光抗体(Invitrogen)でインキュベートした。各抗体のコントロール切片を一次抗体なしで染色した。組織切片を、オリンパスFluroView共焦点レーザー顕微鏡(モデルIX70)を用いて可視化し、オリンパスカメラ(モデルFV5−ZM)及びFluoview5.0取得ソフトウェアを用いて、周囲温度で記録した。全ての組織切片を、60×油浸レンズ(オリンパス油浸油)を用いてイメージ化した。
【0260】
HUVECsを培地中で、血清飢餓又はsNAGの5時間治療のいずれかを行い、α−ディフェンシン5(FITC)、β−ディフェンシン3(Texas Red)又はTOPRO3(Blue)に対する抗体で染色した。免疫蛍光顕微鏡を用いて画像を得た。
細胞培養物のディフェンシン発現をZeiss Axiovert 100M共焦点顕微鏡を用いて可視化し、水を媒体として用いて、LSM 510カメラ(Zeiss Fluor 63xW/1.2A対物)を用いて、周囲温度で記録した。
【0261】
ウエスタンブロット分析:内皮細胞をsNAG(50μL/mL)で刺激する前に、与えられた時間経過するまで血清飢餓にした。その後、細胞を溶解し、ウエスタンブロット分析の対象とした。ウエスタンブロット分析に用いた抗体は、下記の通りである:PI3Kの抗−p85サブユニット及びリン酸化特異的Akt抗体(Cell Signaling Technologies)。
【0262】
6.2.2 結果
6.2.2.1 sNAGで刺激したときディフェンシンを発現及び分泌するケラチン生成細胞及び内皮細胞
この実施例は、sNAG治療がディフェンシン、先天性免疫反応の一部である抗細菌小ペプチドの発現を調節することを実証する。
【0263】
in vitroでディフェンシン発現におけるsNAG治療の効果を調査するために、培地中のヒト臍帯静脈内皮一次細胞を用いた。内皮細胞は、sNAGで刺激した時、α型及びβ型の両方のディフェンシンを発現した。
図7Aに示すように、sNAGで治療した内皮細胞は、刺激1時間以内に、β−ディフェンシン3及びα−ディフェンシン1 mRNA発現の上方制御を示した。sNAG治療によるα−ディフェンシン4及び5の同様の上方調節もまた観察した(データ示さず)。25以上の異なるディフェンシン遺伝子を含むカスタム遺伝子アレイを、一次内皮細胞中のα型ディフェンシンの発現、及び、ケラチン生成細胞中のβ型ディフェンシンの発現を確認するために用いた。内皮細胞のsNAG刺激が、α−ディフェンシン1、4及び5、並びに、β−ディフェンシン3について、特異的に発現を増加させることが示された。さらに、ヒトケラチン生成細胞のsNAG刺激は、β−ディフェンシン様遺伝子、表1に列挙したいくつかの発現を増加させた。これらの発見は、sNAG刺激に応じた、少なくとも3つのα−ディフェンシン遺伝子及びβディフェンシン3の、一次内皮細胞中での発現、並びに、複数のβ−ディフェンシン遺伝子の一次ケラチン生成細胞中での発現を示唆する。
【0264】
表I:sNAGにより情報調節される多数のディフェンシン遺伝子を明らかにする遺伝子アレイ分析
【0266】
sNAG依存ディフェンシン発現がタンパク質レベルでも起こっているか否かを試験するために、sNAG刺激内皮細胞を、α及びβの両方のディフェンシンに対する抗体を用いた免疫蛍光の対象とした。
図7Bに示すように、β−ディフェンシン3及びα−ディフェンシン5の両方が、この細胞型において、sNAG刺激に対して上方制御された。しかしながら、sNAGによる一次ヒトケラチン生成細胞(HaCat)の刺激は、α−ディフェンシンの発現増加を引き起こさず、β−ディフェンシン3の発現増加のみを引き起こした(
図7C)。総合すると、これらの実験は、sNAG刺激は、一次ケラチン生成細胞及び一次内皮細胞の両方において、ディフェンシンペプチドの上方制御をもたらすことを示唆する。
【0267】
6.2.2.2 sNAG−依存ディフェンシン発現のAkt1の要求
近年発表されたデータは、一次内皮細胞のsNAG刺激が、インテグリン活性化、Ets1発現及びMAPキナーゼ活性化の増加をもたらすことを示している(Vournakis,J.N.,et al.,2008,J Vasc Res.45(3):222−32)。この発見は、内皮細胞及びショウジョウバエにおいて、Akt1をEts1の上流に位置付ける。ディフェンシン発現に寄与する情報伝達経路の決定を開始するために、sNAG刺激前に、内皮細胞を血清飢餓とし、PI3K(ウォルトマンニン)又はMAPキナーゼ(PD098059)に対する薬理的インヒビターで前処理した。量的リアルタイムPCR分析は、PI3K/Akt経路又はMAPキナーゼ経路の何れかの抑制後に、α−ディフェンシン1のmRNAレベルが、大きく減少したことを示した(
図8A)。β−ディフェンシン3のRT−PCR分析は、また、これらの経路の抑制により同様に減少することを示した(
図8B)。短期間の内皮細胞のsNAG治療が、Akt1のリン酸化、その活性化の標準指標を導いた(
図8C)。Akt1が確かにディフェンシン発現に要求されることを確認するために、Akt1に対するshRNAのレンチウイルス運搬を用いた。スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAに感染させた後、sNAGで治療した、血清欠乏内皮細胞の定量的RT−PCRによって、Akt1発現がsNAG依存α−ディフェンシン発現に要求されることを確認した(
図8D)。βディフェンシンは、内皮細胞において発現することが知られているので、Akt1に対するsgRNAのレンチウイルス運搬を、ヒトケラチン生成細胞(HaCat)において使用した。スクランブルコントロール(SCR)に感染した血清欠乏ケラチン生成細胞のsNAG治療は、Akt1ノックダウンにより排除したβ−ディフェンシン3発現の顕著な増加を引き起こした(
図8E)。これらの結果は、sNAG治療が内皮細胞におけるAkt1を活性化することを説明し、sNAG依存ディフェンシン発現が内皮細胞及びケラチン生成細胞の両方において、Akt1を要求することを示唆している。
【0268】
6.2.2.3 in vivoでのディフェンシン発現を増加させる皮膚創傷のsNAG治療
in vivoでのディフェンシン発現のAkt1依存を確認するために、切除創傷治癒モデルにおいて、野生型及びAkt1欠損動物を用いた。多くの哺乳動物(ヒト、ウサギ及びハムスター)の白血球はα−ディフェンシンを発現するが、マウス白血球はα−ディフェンシンを発現しない。それゆえに、これらのマウスモデルにおいて、β−ディフェンシン発現に注目した。生物分解性の薄膜のような、乾燥形態のsNAGを用いた3日間の皮膚創傷の治療は、野生型動物のケラチン生成細胞におけるβ−ディフェンシン3発現の統計的に顕著な増加をもたらした(
図9A)。インボルクリン(Watt,F.M.,1983,J Invest Dermatol.81(1 Suppl):100s−3s)染色(赤)を、ケラチン生成細胞の細胞層を標識するために用い、β−ディフェンシン3の発現が表皮層に制限されていることが示された。sNAG発現がAkt1に依存しているか否かを評価するために、Akt1欠損動物モデルを用いて同様の分析を行った。sNAG膜で治療したAkt1欠損動物からの創傷部において、β−ディフェンシン3発現誘導の顕著な減少が示された(
図9A)。β−ディフェンシン3を発現する表皮層をより良く可視化するために、
図9Bは、3日目に回収したsNAG治療野生型創傷部の代表的な画像を示している。皮膚創傷のsNAG治療は、主に皮膚の基底層の上におけるβ−ディフェンシン3の発現を誘導する(
図9B)。
図9cに示す量的分析は、sNAG治療した野生型動物におけるβディフェンシン3の発現が約5倍増加したこと、及び、Akt1がこの増加に要求されることを示した。
【0269】
6.2.2.4 WT動物における閉創速度を上げるsNAG治療
先の結果は、糖尿病マウスモデルにおける閉創速度が、sNAG治療に反応して上がったことを示した。sNAGが、野生型動物において同様に影響することを試験した。膜の形状のsNAGで治療した又は治療しないままとした切除創傷を野生型動物から作製した。組織切片を損傷を与えてから1、3及び5日後に取得し、H&E染色の対象にした。
図10に示すように、野生型創傷のsNAG治療は、損傷を与えて3日後には、実線に示されるように、完全な閉創をもたらした。これは、コントロールの創傷よりも2日間早く起こった。Akt1欠損動物は閉創の遅れを示し、これらの動物は、損傷を与えてから7日までは、完全に創傷が閉じなかった。Akt1欠損動物の閉創の遅れは、sNAG治療により救済されなかった(データ示さず)。これらの発見は、sNAGはディフェンシン発現を誘引するだけではなく、野生型マウスにおける創傷治癒速度も上げる、新規で効果的な療法であり得ることを示唆する。
【0270】
6.2.2.5 sNAGのS.アウレアスに対する抗細菌効果
ディフェンシンペプチドは、グラム陽性及びグラム陰性細菌に対して活性な抗細菌特性を有することが知られている。sNAGによる内皮細胞の治療は、ディフェンシン発現(α−及びβ−の両方)を増加させ、sNAGの皮膚創傷の治療は、in vivoでのβ−ディフェンシン3の発現を大幅に増加させるので、細菌感染創傷におけるsNAG治療の抗細菌効果を分析した。
【0271】
sNAGが皮膚創傷における細菌量を減少させるか否かを決定するために、野生型及びAkt1欠損動物を、皮膚創傷治癒、その後のスタフィロコッカスアウレアス感染の対象にした。感染した創傷部を感染3及び5日後にsNAG治療した、又は、治療しないままとした。
図11A及び11Bに組織グラム染色を示すように、sNAGで治療した野生型動物の創傷においては、治療していない創傷と比較して、損傷を与えて5日後のグラム陽性染色が顕著に減少した。対照的に、損傷を与えてから5日後の、Akt1欠損動物の治療していない創傷部由来のグラム染色組織は、グラム陽性を染色する好中球の蓄積を示し(
図11B)、これらの動物における細菌消滅能力の欠如、これらがsNAG治療によって救済されないことが示された。これらの発見は、Akt1欠損動物は、sNAG治療により救済されない免疫クリアランス機構の欠陥を有することを示唆している。
【0272】
コロニー形成ユニット(CFU)におけるsNAG特異的細菌変化を定量するために、野生型及びAkt1欠損マウスの両方において、sNAG治療した又は治療していない感染創傷部を回収し、培養した。
図11に示すように、損傷が与えられてから5日後に、sNAGで治療した野生型動物における細菌数が顕著に減少した(10倍)。しかしながら、Akt1欠損動物において検出された細菌数は、野生型と比較して少なかったが、sNAG治療は、Akt1欠損動物における細菌の絶対数にあまり影響しなかった。感染3日後に、sNAGで治療した野生型マウスにおけるCFUが、治療していないコントロールと比較して、同様に10倍減少した(
図11D)。sNAGで治療したAkt1欠損マウスは、治療していないAkt1欠損マウスと比較して、CFUが2倍減少した。一般に、Akt1欠損動物は、創傷部の細菌数がより低く、ディフェンシン発現に加えて、他の作用にAkt1依存効果が反映されている可能性がある。これらの発見は、sNAG治療が、野生型マウスにおける感染した皮膚創傷における細菌数を顕著に減少させるが、Akt1欠損マウスではその効果がなく、ディフェンシンが抗細菌反応を媒介する可能性を示唆していることを示している。
【0273】
sNAG治療の抗細菌効果が、細菌成長又はその生存率に対するナノファイバの直接的な効果のためではないことを示すために、S.アウレアス細菌培養物を、sNAGの異なる量の溶液で3時間処置し、コロニー形成ユニットを決定した。
図11Eに示すように、sNAG治療は、S.アウレアスの成長に対して直接的な効果を有しておらず、sNAGが細菌成長を直接的に抑制せず、ディフェンシンの上方制御を介して作用し得ることを示している。
【0274】
6.2.2.6 ディフェンシンペプチドの添加が模倣するsNAGの抗細菌効果
ディフェンシンペプチドの添加が、sNAG治療により示されるのと同様に細菌感染を阻止できるか否かを決定するために、野生型マウスに損傷を与え、上述したようにS.アウレアスに感染させた後、3日間、生物学的に活性なヒトβ−ディフェンシン3ペプチド(1.0μm)で治療した。組織生検を組織グラム染色を用いて染色し、CFUを定量した。
図11F〜Gは、これらの実験結果を示している。β−ディフェンシン3ペプチドで治療した感染マウスは細菌数が減少し、生存細菌は、sNAGで治療した野生型マウスで示されたのと同様に、約7.5倍減少した(
図11G)。
【0275】
ディフェンシン発現が誘引されるメカニズムの1つは、細菌LPSによる刺激を通してであり、Toll様レセプターの活性化を通してである可能性もある(Selsted,M.E. and A.J.Ouellette,2005,Nat Immunol.6(6):551−7.)。試験期間内に細菌感染単独でβ−ディフェンシン発現を誘引し得るか否かを試験するために、損傷を与えてから3日後に、野生型動物からの感染した創傷におけるβ−ディフェンシンの発現を評価した。
図12Aに示すように、細菌感染単独では、cNAG治療において示されたのと同様の、感染から3日以内のβ−ディフェンシンの発現は誘引されなかった。しかしながら、野生型動物においては、感染した創傷のsNAG治療が、同様の期間内のβ−ディフェンシンの発現を約3倍〜5倍増加させた(
図12B)。これらの発見は、sNAG治療が、S.アウレアスに感染した創傷において顕著な細菌駆除をもたらすディフェンシン発現を急速に誘引することを示している。
【0276】
6.2.2.7 sNAGの抗細菌効果を阻害するβディフェンシン3に対する抗体
ディフェンシンは分泌されたタンパク質であるので、本発明者らは、β−ディフェンシン3に対する抗体が抗細菌活性を阻害する可能性があるという仮説を立てた。この仮説を試験するために、上述したように創傷部を作製し、S.アウレアスに感染させ、sNAGで治療した。創傷部を、β−ディフェンシン3抗体又はアイソタイプコントロールの何れかを、3日間、1日1回適用して処置した。創傷切片を得て、グラム陽性細菌のために染色した。
図13Aに示すように、β−ディフェンシン抗体で治療した創傷由来の切片は、アイソタイプコントロール抗体で治療したものよりもグラム陽性細菌を多く有していた。示した各切片は、痂皮直下の創傷領域由来であった。これらの創傷におけるCFUの定量化は、S.アウレアス感染創傷におけるSNAG治療前のβ−ディフェンシン3の中和は、細菌数の顕著な増加をもたらすことを示した。IgGアイソタイプコントロールで処置した動物は、生存細胞が約5倍減少した(
図13B)。総合すると、これらの結果は、sNAG治療が創傷治癒速度を上げることのみならず、内因性抗細菌反応もまた促進し、創傷感染を減少させると同時に早朝治癒を強調する新規な療法としてのこのナノファイバの使用を支持することが示された。
【0277】
6.2.3 結論
ここに記載した発見は、海洋珪藻植物由来のナノファイバであるsNAGが、創傷感染を減少させると同時に創傷治癒を強調する、新規で効果的な方法として使用し得ることを証明する。このデータは、このFDA承認済みの材料が、現時点では止血剤として使用されているが、一次内皮細胞におけるα型及びβ型の両方のディフェンシンの発現を刺激し、一次ケラチン生成細胞においてβ型ディフェンシンの上方制御を刺激することを証明する。
【0278】
ディフェンシンは、先天性免疫システムの必須成分である。これらのペプチドは、グラム陽性及び陰性細菌、真菌並びに他のウイルスに対して活性な、抗細菌特性を有している。ディフェンシンは、小さく(3〜4kDa)、システインリッチなカチオン性ペプチドであり、哺乳動物、昆虫及び植物において見られ、そのジスルフィド結合のパターンに基づいて異なるファミリー(α、β及びθ)に分類される。αディフェンシンは、好中球に特異的であると考えられ、非常に高濃度で見られる(総細胞タンパク質の約5〜7%を含む)(Ganz,T. and R.I.Lehrer,1994,Curr Opin Immunol.6(4):584−9)。また、αディフェンシンは、抗細菌反応中に分泌される(Ganz,T.,1987,Infect Immun.55(3):568−71)。ウサギ歯槽マクロファージは、ウサギ好中球に匹敵するレベルのα−ディフェンシンを有していることも示されている(Ganz,T.,et al.,1989,J Immunol.143(4):1358−65.)。β−ディフェンシンは、ケラチン生成細胞、粘膜上皮細胞のような上皮細胞型 (Harder,J.,et al.,1997,Nature 387(6636):861; and Harder, J.,et al.,2001,J Biol Chem.276(8):5707−13)、口腔組織及び唾液分泌物(Mathews,M.,et al.,1999,Infect Immun.67(6):2740−5)、並びに、肝臓において見られ、感染又は炎症性刺激に対する反応において上方制御されることができる(Ganz,T. and R.I.Lehrer,1994,Curr Opin Immunol.6(4):584−9).ヒトβ−ディフェンシン1(hDEFB1)は、上皮組織における最も重要な抗細菌ペプチドの1つである。ディフェンシン発現及び分泌は、創傷治療を付与するために非常に重要である。ディフェンシンによる抗細菌作用は、先天性免疫の一部であると考えられ、非特異的でかつ広範囲である。それゆえに、後天性の細菌抵抗性は、抗生物質の乱用に見られるように、問題ではない。
【0279】
ここに記載したデータはまた、in vitro及びin vivoの両方において、Akt1がディフェンシン発現に要求されることを示す。sNAG治療は、野生型コントロール動物において、皮膚創傷のスタフィロコッカスアウレアス感染を減少させるが、同様に治療したAkt1欠損マウスにおいては同様ではない。また、野生型皮膚創傷のsNAG刺激が閉創速度を上げることに注目することも重要である。β−ディフェンシンの抗体による遮断は、sNAGの抗細菌活性の減少をもたらす。これらの発見を総合すると、ディフェンシン発現の調節におけるAkt1の中心的な役割は、細菌感染駆除を担うこと、及び、sNAG治療が野生型動物におけるこれら経路を活性化することであることが示された。
【0280】
データは、感染した創傷のsNAG治療が、ディフェンシン発現の誘引によって、患者において少なくとも部分的に、細菌数を顕著に減少させることを示唆している。スタフィロコッカスアウレアスは、皮膚及び鼻において頻繁にコロニー形成が発見される細菌である。スタフィロコッカスアウレアスは、しばしば術後創傷感染の原因となり、未だに院内感染の一般的な原因である。病院内でのS.アウレアス感染は長年医療関係者を悩ましており、治療のための抗生物質の広範囲の使用が、抗生物質耐性負担を引き起こしている。ここに記載したデータは、スタフィロコッカスアウレアスに感染した創傷のsNAGによる治療が、細菌数を顕著の減少させることを示している。例えば、
図11A及び11Bに示す、治療したWTマウスにおける暗紫のグラム染色の欠如は、S.アウレアス感染がこれらの創傷から除去されたことを示している。in vitro及びin vivoの両方におけるデータは、創傷治療において、細菌感染を減少させ、それにより創傷治癒を強調するために、sNAG(特に、タリデルム)を使用する強力な証拠を提供する。
【0281】
コントロール実験は、sNAGの抗細菌効果が、細菌に対する材料の直接的な作用のためではなく、Akt1活性化によるディフェンシンの調節のような下流への影響のためであることを示している。ディフェンシンが、先天性免疫及び抗細菌活性機能において重要な役割を担っていることは、広く受け入れられている。これらの機能の証拠のほとんどは、in vitroにおける精製ディフェンシンペプチドと組み合わせた実験、又は、
図11に示すように、精製した活性ペプチドを直接適用する同様の実験における、細菌の直接的な殺傷である(Selsted,M.E. and A.J.Ouellette,2005,Nat Immunol.6(6):551−7)。このデータは、sNAGを局所投与した野生型動物におけるディフェンシン発現の誘引が、抗細菌反応をもたらすことを示している。ヒトディフェンシン5遺伝子を発現する形質転換マウスモデルは、S.ティフィムリウムに対して抵抗性を有しており、このような野生型動物に死をもたらす感染が、抗細菌反応の調節におけるディフェンシンの重要性を示唆していることが、近年示されている(Salzman,N.H.,et al.,2003,Nature 422(6931):522−6)。
【0282】
ディフェンシンのα−サブタイプが、好中球において特異的に発現する一方で、β型ディフェンシンの源は上皮であることが受け入れられている。培養物及び皮膚創傷治癒モデルの両方のヒトケラチン生成細胞において、sNAGに反応して誘引されるβ型ディフェンシン発現が、検出された。in vivoデータは、β−ディフェンシン3が、sNAGで治療した後、最基底層において主に発現することを説明する。これは、ヒトβ−ディフェンシン2が皮膚の突起及び顆粒層に位置することを示す以前のデータと矛盾がない(Oren,A.,et al.,2003,Exp Mol Pathol.74(2):180−2)。皮膚は、絶えず怪我及び感染に接するものであり、その機能は、機械的な障壁だけではなく、感染に対して活性な防御を増加させる可能性を維持することでもある。皮膚の外側の層におけるβ−ディフェンシンの発現は、皮膚の先天性免疫における役割を支持する。しかしながら、データは、sNAGは、内皮細胞において2つの異なるα−ディフェンシン(1、4及び5)の発現を特異的に刺激することを示している。このことは、RT−PCR、遺伝子アレイ分析、免疫蛍光及びELISA(データ示さず)により示されている。組織修復における内皮細胞と白血球との間の相互作用は、創傷治癒における初期の及び最も重要な段階の1つである。脈管構造からの白血球の溢出段階は、化学走化性因子により開始され、それゆえに、α−ディフェンシンがsNAGにより誘引されること、及び、必要な好中球/内皮細胞相互作用に寄与するかもしれないことは、興味深い。さらに近年、ディフェンシンが、樹状細胞(Hubert,P.,et al.,2007,FASEB J.21(11):2765−75)及びT細胞、単球、並びに、マクロファージ(Garcia,J.R.,et al.,2001,Cell Tissue Res.306(2):257−64)及びケラチン生成細胞(Niyonsaba,F., et al.,2007,J Invest Dermatol.127(3):594−604)における、化学走化活性を示すことによる適応性の免疫反応に対する貢献を含む、微生物細胞の抑制を超える生物学的活性を示すことが明らかになっている。最近の研究は、ヒトベータディフェンシン1及び2が、CC−ケモカインレセプター6(CCR6)を介して、未成熟樹状細胞及びT細胞を化学的に誘引する能力を有すること(Yang,D.,et al.,1999,Science 286(5439):525−8)、及び、ヒトベータディフェンシン2が、CCR6レセプターを介して、TNFαで処置した好中球を化学的に誘引する能力を有すること(Niyonsaba, F., H. Ogawa, and I. Nagaoka, 2004, Immunology 111(3):273−81)が示している。ヒトβ−ディフェンシン2及び3は、また、マクロファージ、単球及び好中球において発現するレセプターであるCCR2との相互作用によって、走化性を誘引することも示されている(Rohrl,J.,et al.,2010,J Immunol,2010)。興味深いことに、データは、sNAG治療が、内皮細胞におけるα及びβの両方のディフェンシン発現を誘引することを示している。これらを総合すると、最近のデータは、ディフェンシンが、その抗細菌特性によってのみならず、適切な治癒のために他の細胞型では必須の化学走化性によっても、創傷治癒を媒介するかもしれないことを示唆している。しかしながら、β−ディフェンシン3単独の適用は、閉創の向上をもたらさず(図示せず)、ディフェンシン単独の局所投与が、化学的誘引、細胞要求及び閉創のために要求される細胞内相互作用を支持しないことをほのめかしている。
【0283】
野生型及びAkt1ノックアウト動物を用いたin vivoデータにより、sNAG誘引β−ディフェンシン3発現におけるAkt1の要求が確認された。マウス白血球は、他の多くの哺乳動物の白血球のようにα−ディフェンシンを発現しないので(Ganz,T.,2004,C R Biol.327(6):539−49)、in vivoでの浸潤性免疫細胞の染色は不可能である。アルファディフェンシン1〜3による、in vitroでのエアウェイ上皮細胞の治療は、PI3K及びMAPK経路の活性化を要求する、容量及び時間に依存して増加する細胞移動の原因となる(Aarbiou,J.,et al.,2004,Am J Respir Cell Mol Biol.30(2):193−201)。内皮細胞のsNAG刺激がMAPKの活性化をもたらすことが示されており(Vournakis,J.N., et al.,2008,J Vasc Res.45(3):222−32)、さらに、ここに記載したデータにおいて、MEKの薬理学的抑制もまた、in vitroでのディフェンシンの発現を抑制することが示されている。これらの発見は、両方の経路がsNAGによるディフェンシン発現の調節に影響を与えるが、Akt1の除去が、in vitro及びin vivoの両方においてその発現を顕著に減少させることを示唆している。骨髄性細胞において、β−ディフェンシン1の発現は、転写レベルにおいて、EtsファミリーメンバーPU.1により部分的に制御される(Yaneva,M.,et al.,2006,J Immunol.176(11):6906−17; and Ma,Y.,Q.Su, and P.Tempst,1998,J Biol Chem.273(15):8727−40)。PU.1は、B細胞系においてAkt1の下流の標的である(Rieske,P. and J.M.Pongubala,2001,J Biol Chem.276(11):8460−8)。一次内皮細胞において、ショウジョウバエ気管成長の間、Akt1は、in vitro及びin vivoの両方において、Ets1の上流であることが示されている(Lavenburg,K.R.,et al.,2003,FASEB J. 17(15):2278−80)。細胞のsNAG刺激は、内皮細胞の移動に要求されるEts1の発現増加をもたらす(おそらくAkt1を介して)(Vournakis,J.N.,et al.,2008,J Vasc Res.45(3):222−32)。
【0284】
ここまで、sNAG治療により、下記の一連の下流の活性化がもたらされている;止血、細胞移動、細胞増殖、閉創向上、及び、ここに記載したような抗細菌機能をもたらす先天性免疫反応の刺激。
【0285】
慢性的な創傷及び創傷感染による合併症を有する患者群内の糖尿病患者を劇的に増加すると仮定すると、新規な臨床治療への要求が高まっている。ここに、海洋由来のpGlcNAcナノファイバの、創傷治癒速度の向上のみならず、先天性免疫を刺激することにより抗細菌活性を提供する作用を説明する。これらの観察の明白な重要性は、院内感染への適用である。手術創傷感染において、統計的に全ての手術患者の8%未満を示す、院内感染に支配される。これらの型の感染の直接原価は、1年間に約450億ドルである。ディフェンシンが先天性免疫システムの一部であると仮定すると、これらの経路の活性化は、細菌感染の抗生物質から独立した駆除を可能にするのと同様に、耐性有機物の生成を排除するだろう。病院環境におけるsNAGの使用は、多くの費用を負担し、抗生物質耐性種の生産を顕著に減少させる。総合すると、これらの発見は、海洋由来のpGlcNAcナノファイバが、診療の舞台において非常に有益であることを示している。
【0286】
6.3 実施例3:sNAGナノファイバによる、ディフェンシン及びTollレセプター遺伝子の発現数の上方制御
この実施例は、ディフェンシン及びToll様レセプターの数が、ヒト内皮細胞のsNAG治療によって、上方制御されることを証明する。
【0287】
材料及び方法:ヒトチッププローブをエポキシスライドに印刷した。HUVEC細胞を、項目6.2に記載した通り培養し、sNAGナノファイバ(“sNAG”)で5時間処理した。RNAを生産者の取扱説明書にしたがって、RNAsol(Teltest,Inc.)を用いて抽出し、Amino Allyl MessageAMP(登録商標)II aRNA増幅キット(Applied Biosystems)を用いて増幅し、標識した。aRNAとハイブリダイズさせるために、スライドをRT O/Nでブロッキング溶液(dH
2O 1000ml中のSigma Trisバッファ生理食塩水 pH8.0、1% BSAw/v、0.05% NaN
3)中に浸漬して準備し、洗浄して乾燥させた。標識した標的aRNAを含む、sNAG治療細胞からのサンプルを、スライド(65μl/スライド;95℃で5分間変性;0.1% SDS及び5×SSC及び1% BSA中で、37℃で48時間ハイブリダイズ)とハイブリダイズさせ、洗浄して乾燥させた。スライドをスキャニングし、Perkin−Elmer スキャンアレイ装置及びScanArray ExpressソフトウェアV3.0, updatedを用いてハイブリダイゼーションを検出した。上方制御遺伝子を同定するために、マイクロアレイデータをAgilent GeneSpring GX v.11 バイオインフォメーションデータ分析を用いて分析した。
【0288】
分析対象遺伝子:IL−1、CEACAM3、SPAG11、ディフェンシン(“DEFA”=α−ディフェンシン及び“DEFB”=β−ディフェンシン);Toll様レセプター(“TLR”)、SIGIRR(単IG IL−1−関連レセプター)及びTRAF6 (ファクター6に関連するTNFレセプター)。ポジティブコントロール:1433Z (チロシン−3−モノハイドロゲナーゼ/トリプトファン5モノハイドロゲナーゼアクチションタンパク質);GAPD(グリセルアルデヒド−3−脱水素酵素リン酸塩);RPL13A(リボソームタンパク質L13a);UBC(ユビキチンC);ACTB(アクチンB)。
【0289】
結果:マイクロアレイ遺伝子チップ分析及びマイクロアレイのQ−PCR検証の結果を下記表II〜VIに示す。カスタム遺伝子チップを用いて、ヒト内皮細胞のsNAG治療により上方制御されるディフェンシン及びToll様レセプターの数を決定した。
【0290】
Toll様レセプター(TLRs)細菌成分の特異的な分子パターンを認識して、先天性免疫の活性化を導く、高度に保存されたレセプターである。興味深いことに、ショウジョウバエは適応性免疫システムが欠乏しているが、細菌感染に対して抵抗性がある(Imler,J.L. and J.A. Hoffmann,2000,Curr Opin Microbiol,3(1):16−22)。この宿主防御は、TLRsによって誘引される抗細菌ペプチドdToll及び18−wheelerを合成することによって、防御を提供する先天性免疫システムによりもたらされる (Lemaitre,B., et al.,1996,Cell 86(6):973−83; and Williams,M.J.,et al.,1997,EMBO J.16(20):6120−30)。最近の研究も、TLR活性化のためのヒトディフェンシン発現に繋がっている。ヒトβ−ディフェンシン2は、TLR−2に依存する態様において、気道上皮細胞において誘引されることが示されている(Hertz,C.J., et al.,2003,J Immunol.171(12):p.6820−6)。Toll様レセプター4は、単球において、クラミジア肺炎病原体に反応してヒトβ−ディフェンシン2誘導を媒介することが示されている(Romano Carratelli,C.,et al.,2009,FEMS Immunol Med Microbiol.57(2):116−24)。重要なことに、PI3K/Akt経路が、細胞内の病原体に対する反応を制御する、TLR情報伝達の主要成分である(Weichhart,T. and M.D.Saemann,2008,Ann Rheum Dis.67 Suppl 3:iii70−4)。TLRsの刺激がディフェンシン合成の増加を誘引することは知られているので、この研究は、Akt1の活性化を介して、先天性免疫及び細菌駆除の刺激剤としての、sNAGの能力を示唆する。
【0291】
表II:sNAG刺激に反応して上方制御されるいくつかの遺伝子のリスト
【0293】
表III:ディフェンシンマイクロアレイ遺伝子発現
(sNAG 10μg/mL 5時間に対するHUVEC反応)
【0295】
表IV:DEFCB3マイクロアレイ遺伝子検証
(ABプリズム7000;sNAG(10μg/mL) 5時間 HUVEC)
【0297】
表V:Toll様レセプターマイクロアレイ遺伝子発現
【0299】
表VI:TLR1及び4のリアルタイムQ−PCR遺伝子検証
(HUVEC、sNAG 10μg/mL 5時間)
【0301】
6.4 実施例4:遺伝子発現プロファイルが異なるsNAG及びNAG長ファイバ
この実施例は、sNAGナノファイバが、遺伝子発現に対するその効果において、p−GlcNAc長ファイバと異なり、特に、ディフェンシン及びToll様レセプターのいくつかの発現に対するその効果において異なることを証明する。
【0302】
材料及び方法:ヒトディフェンシンチッププローブ(濃度:20μM、量:18〜20、溶液:SSCベースのスポッティングバッファ)を、標準的な方法を用いて、エポキシスライド上に印刷した。HUVEC及びHaCat細胞を、項目6.2に記載した通り培養し、長ファイバ(「LNAG」)又はsNAGナノファイバ(「sNAG」)の何れかで2時間又は20時間処理した。RNAを、生産者の取扱説明書に従って、RNAsol(Teltest,Inc.)を用いて抽出し、アミノアリルMessageAMPTM II aRNA増幅キット(Applied Biosystems)を用いて増幅した。RNA増幅中、LNAGで処理した細胞からのaRNA及びsNAGで処理した細胞からのaRNAを、Cy3又はCy5蛍光染色を用いて異なる標識を付与した。aRNAとハイブリダイズするために、スライドを、RT O/Nにおいてブロッキング溶液(pH8.0、1000mlのdH
2O中のSigma Tris生理食塩水バッファ、1%BSAw/v、NaN
3 0.05%)中に浸漬した後、洗浄して乾燥させて準備した。異なる標識が付与されたLNAG処理細胞及びsNAG処理細胞からの標的aRNAを同量含むサンプルを混合し、スライド(65μl/スライド;95℃で5分間変性;0.1%SDS及び5XSSC及び1%BSA中で、37℃で48時間ハイブリダイズ)とハイブリダイズさせ、洗浄して染色した。以下の表VIIにおける実施例のグラフにより、実験の構成を説明する:
表VII:
【0304】
Perkin−Elmerスキャンアレイ装置及びScanArray ExpressソフトウェアV3.0,updatedを用いてスライドをスキャンし、ハイブリダイゼーションを検出した。各スライドCy5、Cy3に対して、組成物の蛍光発光を可視化した。上方制御及び下方制御遺伝子を同定するために、Agilent GeneSpring GX v.11生物情報データ分析を用いてマイクロアレイデータを分析した。分析対象の遺伝子は、DEFA1、DEFA3、DEFA4、DEFA5、DEFA6、DEFB1、DEFB013A、DEFB104A、DEFB105B、DEFB108B、DEFB112、DEFB114、DEFB118、DEFB119、DEFB123、DEFB124、DEFB125、DEFB126、DEFB127、DEFB128、DEFB129、DEFB131及びDEFB4(“DEFA”=α−ディフェンシン及び“DEFB”=β−ディフェンシン);TLR1、TLR10、TL2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7及びTLR8(“TLR”=Tollレセプター);SIGIRR(単IG IL−1関連レセプター);IRAK2(IL−1レセプター関連キナーゼ1);TRAF6(因子6に関連するTNFレセプター);D106A(β−ディフェンシン106)、D107A(β−ディフェンシン107)とした。ネガティブコントロールを3つのランダム配列(1、2、3)とした。ポジティブコントロールを1433Z(チロシン−3−モノハイドロゲナーゼ/トリプトファン5モノハイドロゲナーゼアクチションタンパク質);GAPD(グリセロアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素);RPL13A(リボソームタンパク質L13a);UBC (ユビキチンC);ACTB(アクチンB)とした。
【0305】
結果:マイクロアレイ遺伝子チップ分析の結果を、下記表VIIIおよびIXに示す。表VIIIは、LNAGファイバ又はsNAGナノファイバのいずれかに2時間又は24時間露出した後の、ヒト臍帯静脈内皮細胞(“HUVEC”)における遺伝子発現を示す。表IXは、LNAGファイバ又はsNAGナノファイバのいずれかに2時間又は24時間露出した後の、ヒトケラチン生成細胞系(HaCat)における遺伝子発現を示す。この結果は、ポリ−N−アセチルグルコサミン長ファイバ(“LNAG”)により誘導される遺伝子発現プロファイルが、sNAGナノファイバ(“sNAG”)により誘導される遺伝子発現プロファイルとは異なることを証明している。特に、LNAGとsNAGとは、ディフェンシン遺伝子及びTollレセプター遺伝子の発現におけるその効果において異なっている。
【0306】
表VIII:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるマイクロアレイディフェンシン遺伝子発現、倍率変化
【0309】
6.5 実施例5:sNAG膜の放射線照射の効果
sNAG膜の調製方法。sNAG膜は、以前に記載されたように生成した(Vournakis et al.、米国特許番号5,623,064及び5,624,679を参照、その章の要旨の全てを参照としてここに組み込む)、微小藻類pGlcNAc由来である。簡単に述べると、微小藻類を、定義された成長培地を用いて、独自の生物反応条件において培養した。高密度培養物から微小藻類を回収した後、ファイバを徐々に分離して単離して精製し、注入のために水中に懸濁した純ファイバの群が得られた(wfi)。ファイバを濃縮及びオーブン乾燥させて絆創膏に形成し、包装してガンマ線照射により滅菌した。ファイバサイズは平均20〜50nm×1〜2nm×〜100μmとした。ファイバの束を、化学及び物理試験パラメータを用いて個別に質を制御し、放出前に各束が厳格な純度基準に満たすようにした。最終的な束は、タンパク質、金属イオン及び他の成分が実質的に含まれないことが要求された。その後、ファイバを放射線照射により短くし、sNAG膜を生成した。簡単に述べると、最初の材料は、1mg/mLの濃度のpGlcNAcスラリーを60g含んでいた。pGlcNAcスラリーの濃度を、0.2μmフィルター中で5mLろ過することによって、確認した。15gのpGlcNAcを含む15LのpGlcNAcスラリーを、ウエットケーキが形成されるまで溶かした。その後、ウエットケーキをフォイルポーチ中に移し、対応する容器においてガンマ線照射し、200kGyガンマ線照射の対象にした。他の放射線照射条件を、pGlcNAc組成物におけるその効果を試験するために行い、
図14Aに反映させた。
【0310】
pGlcNAc膜における放射線照射の効果。放射線照射はpGlcNAcの分子量を減らす一方で、放射線はファイバの微細構造を乱さなかった。pGlcNAcを、:乾燥状態として、凍結乾燥材料;乾燥膜として;濃縮スラリーとして(重量対体積=30:70);及び希釈スラリーとして(5mg/mL)の異なる状態下で放射線照射した。適した分子量減少(分子量500,000〜1,000,000ダルトンまで)に、乾燥ポリマーは1,000kgyの放射線照射量で達し、ウエットポリマーは200kgyの放射線照射量で達した(
図14A)。
【0311】
放射線照射の間中のファイバの化学及び物理構造を、赤外線(IR)スペクトル(
図14B)、元素分析及び走査型電子顕微鏡(SEMs)分析により確認することで、維持した。放射線照射したファイバの顕微鏡観察は、粒子長の減少を示した(
図14C及び14D)大多数のファイバは長さが約15μm未満であり、平均長さは約4μmであった。
【0312】
6.6 実施例6:sNAGナノファイバ及びpGlcNAcファイバの長い形態における、臍帯静脈内皮細胞の代謝率及び血清欠乏に対するその効果の違い
材料及び方法。保管された、複数のドナーからのヒト臍帯血内皮細胞(EC)(Cambrex)を、Cambrexの手順に記載されたように、EC成長培地2SingleQuotsを添加した内皮基礎培地2(Cambrex)中で、5% CO
2、37℃に維持した。血清欠乏を0.1%ウシ胎仔血清(Gibco BRL)を添加したRPMI−1640中で80〜90%コンフルエントで24時間行った後、VEGF165(20 ng/ml, R&D Systems)、又は、図中の説明で示す量の、滅菌水中の高度に精製したpGlcNAcナノファイバ若しくはsNAGナノファイバ(Marine Polymer Technologies,Inc.,Danvers,Mass.,USAにより提供)で刺激した。細胞増殖/生存能力評価のために、2つの異なる評価を用いた:血球計を用いて直接細胞数を計数することによるトリパンブルー排除、及び、製造者(Promega)により示された手順におけるMTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物]分析。
【0313】
結果−pGlcNAc:
pGlcNAcは代謝率に影響を及ぼさなかった。
図15に示すように、pGlcNAcは、MTT分析により測定されたより高い代謝率をもたらし、このポリマー材料は、細胞増殖の顕著な増大を引き起こさなかったことが示された。
【0314】
pGlcNAcは、血清欠乏により誘引される細胞死からECを保護した。pGlcNAcファイバが、ECに直接影響するかどうかを試験するために、血清欠乏EC細胞をVEGF又は異なる濃度のpGlcNAcファイバで処理した。
図16の血清欠乏後48時間及び72時間に示すように、載置した細胞総数(コントロール)と比較して、48時間又は72時間後の細胞数は約2倍減少した。48時間後において、細胞数の減少は、VEGF又は50若しくは100μg/mLのいずれかのpGlcNAcファイバの添加によって、救済された。72時間後において、細胞数の減少は、VEGF又は100μg/mLのpGlcNAcファイバの添加によって、救済された。これらの結果は、VEGFと同様に、pGlcNAcファイバによる処理が血清欠乏により引き起こされる細胞死を抑制することを示した。
【0315】
結果−sNAG
sNAGは、代謝率の顕著な増加を引き起こした。MTT分析によって測定されたように、50、100又は200μg/mLのsNAGは、VEGFよりも高いEC代謝率をもたらした(
図17)。
【0316】
sNAGは、血清欠乏により引き起こされる細胞死からECを保護しなかった。sNAGファイバがECに直接影響を及ぼすかどうかを試験するために、血清欠乏EC細胞を、VEGF又は異なる濃度のsNAGファイバで処理した。
図18に示すように、血清欠乏48時間において、載置した細胞総数(コントロール)と比較して、細胞数が約2倍減少した。細胞数の減少は、VEGFの添加によって救済されたが、50、100又は200μg/mLのsNAGファイバの添加では救済されなかった。これらの結果は、VEGFとは異なり、sNAGナノファイバによる処理は、血清欠乏により引き起こされる細胞死を抑制できないことを示した。
【0317】
結果:上述した結果は、sNAGが、長い形態のpGlcNAcとは異なり、MTT分析における血清欠乏ECの代謝率は増加させるが、トリパンブルー排除試験における血清欠乏ECのアポトーシスは救済しないことを証明する。
【0318】
6.7 実施例7.sNAGの臨床前試験
6.7.1 被験物質
上記項目6.2.1に記載したとおり生成したsNAGを含む被験物質を用いた。被験物質は、Marine Polymer Technologies, Incにより無菌状態で提供された。
【0319】
6.7.2 生適合性試験−L929 MEM 回避試験−ISO 10993−5
被験物質の生適合性試験を、マウス繊維芽細胞L929哺乳動物細胞において行った。被験物質の暴露後48時間において、L929細胞における生物学的反応性は観察されなかった(グレード0)。ポジティブコントロール物質(グレード4)及びネガティブコントロール物質(グレード0)から得た、観察した細胞反応を、適した試験系で確認した。手順の評価基準に基づくと、被験物質は、無毒であり、国際標準化機構(ISO)10993−5ガイドラインの溶出試験の要求にかなうものであった。下記表Xを参照。
【0322】
6.7.3 筋肉内移植試験−ISO−4週間移植
6.7.3.1 材料及び方法
局所毒性効果に対する被験物質の能力を評価するために、筋肉内移植試験−ISO−4週間移植(筋肉内移植試験)を用いた。簡単に述べると、ニュージーランド白ウサギの脊椎傍筋肉組織に、4週間、被験物質を移植した。その後、ポジティブコントロールであるサージセル(Surgicel)(Johnson and Johnson、NJ)及びネガティブコントロールである高密度ポリエチレン(ネガティブコントロールプラスチック)の、2つのコントロール物質を用いて、被験物質を別々に評価した。
【0323】
被験物質及びコントロール物質の準備。被験物質を、幅約1mm、長さ10mmと測定した。2つのコントロール物質を準備した。ポジティブコントロールであるサージセル(C1)を、幅約1mm、長さ10mmと測定し、滅菌したものを得た。ネガティブコントロールであるプラスチック(C2)を、幅約1mm、長さ10mmと測定し、70%エタノール中に浸漬して滅菌した。
【0324】
投与前手順。移植前に各動物の体重を測定した。試験当日、動物の背側を毛を含まないように挟み、抜け毛をバキュームにより除去した。各動物を適切に麻酔した。移植前に、領域を手術調整溶液で拭き取った。
【0325】
分量投与。4つの被験物質のストリップを、外科手術により各ウサギの脊椎傍筋肉中の、正中線から約2.5cm及び脊柱に平行、並びにそれぞれから約2.5cmの位置のそれぞれに移植した。被験物質ストリップを脊柱側に移植した。同様の方法で、ポジティブコントロール物質ストリップ(サージセル)を、各動物の対側筋肉中に移植した。2つのネガティブコントロールストリップ(ネガティブコントロールプラスチック)を、尾骨(尾に向けて)から被験物質に対して及びC1コントロール移植部位に対して、脊柱の何れかの側に移植した(全部で4ストリップ)。少なくとも8つの被験物質ストリップ及び8つのそれぞれのコントロール物質ストリップの全てが、評価のために要求された。
【0326】
投与後の手順。動物を4週間維持した。動物を、この期間毎日観察し、移植部位の適切な治癒及び毒性の臨床的症状を確認した。観察には、全ての臨床兆候を含めた。観察期間の最後に、動物の体重を測定した。各動物に催眠剤を注入して安楽死させた。出血させずに組織を切断するために、十分な時間経過させた。
【0327】
肉眼観察。各動物からの、被験物質又はコントロール物質が移植された脊椎傍筋肉を、まとめて摘出した。外科用メスを用いて、移植部位の周囲を注意深く切り取ることによって、筋肉組織を除去し、組織を取り除いた。組織病理学的評価のために、この組織の完全性を崩壊させ得る過剰に侵襲的な手段を用いずに、摘出した移植組織を肉眼で検査した。10%中性緩衝ホルマリンを収容した、適切に標識された容器内に、組織を載置した。
【0328】
組織病理学。ホルマリン固定の後、それぞれの移植部位をより大きい塊の組織から切除した。移植材料を含む移植部位を顕微鏡検査した。部位において、炎症、被包、出血、壊死及び変色の兆候を、下記の尺度を用いて検査した:
0=正常
1=穏やか
2=中程度
3=顕著
顕微鏡観察の後、移植材料をin situに残し、移植部位を含む組織スライスを処理した。ヘマトキシリン及びエオシン染色切片の組織学的スライドを、Toxikonによって準備した。光学顕微試験により、スライドを評価及び等級づけした。
【0329】
移植効果の病理学評価。生物反応の下記カテゴリーを、各移植部位の顕微観察によって評価した:
1.炎症性反応:
a.多形核白血球
b.リンパ球
c.好酸球
d.プラズマ細胞
e.マクロファージ
f.巨細胞
g.壊死
h.変性
2.治癒反応:
a.線維形成
b.脂肪湿潤。
【0330】
反応の各カテゴリーを、下記尺度を用いて格付けした:
0=正常
0.5=極僅か
1=穏やか
2=中程度
3=顕著。
【0331】
複雑領域の相対的な大きさを、移植/組織境界面から、正常組織及び正常血管分布により特徴付けられる影響を受けていない領域までの、領域幅を評価することによって、記録した。複雑領域の相対的な大きさを、下記尺度を用いて記録した:
0=0mm、領域なし
0.5=0.5mm以下、極僅か
1=0.6〜1.0mm、穏やか
2=1.1〜2.0mm、中程度
3=2.0 mmより大きい、顕著。
【0332】
筋肉内移植試験を、下記参照に基づいて行った:
1.ISO 10993−6、1994、医療機器の生物学的評価−Part 6:移植後の局所効果のための試験
2.ISO 10993−12、2002、医療機器の生物学的評価−Part 12:サンプル調整及び関連材料
3.ASTM F981−04、2004、筋肉及び骨における材料の効果に関して、手術により移植する生体材料の適合性を評価する標準的技法
4.ASTM F763−04、2004、移植材料の短期間検査のための標準的技法
5.ISO/IEC 17025、2005、試験及び実験室検定の能力のための一般的要件。
【0333】
筋肉内移植試験の結果を、下記基準に基づいて評価した:
1.算出した評価:各移植部位について、総合得点を決定する。各動物からの試験部位の平均得点を、その動物からのコントロール部位の平均得点と比較する。全ての動物の試験部位とコントロール部位との間の平均得点差を算出し、初期生物反応性評価を下記の通り割り当てた:
0〜1.5 反応なし*
>1.5〜3.5 穏やかな反応
>3.5〜6.0 中程度の反応
>6.0 顕著な反応
*マイナスの計算結果はゼロ(0)として報告。
【0334】
2.評価の修正:算出した生物反応性レベルを病理学観察者が再考する。全ての因子(例えば、相対的サイズ、反応性のパターン、炎症性対消散)の観察に基づいて、病理学観察者は生物反応性評価を訂正してもよい。評価の修正のための正当性は、経験的報告書に存在する(試験材料の生体適合性に関する記述された経験的報告書が病理学観察者により提供される)。
【0335】
6.7.3.2 結果
結果は、試験物質が、移植から4週間、ポジティブコントロールであるサージセルと比較して反応性を示さなかったこと(生物反応性評価は0.2)、並びに、ネガティブコントロールである高密度ポリエチレン(ネガティブコントロールプラスチック)と比較して反応性を示さなかったこと(生物反応性評価は0.0)を、示唆している。
【0336】
臨床観察。下記の表XIは、4週間の期間、炎症、カプセル化、出血、壊死又は変色の顕著な兆候を示さなかった、試験物質及びコントロール移植部位の肉眼評価の結果を示している。いくつかの試験部位及びポジティブコントロールであるサージセルの大多数は、肉眼では見られず、連続切片を肉眼評価のために提出した。
【0339】
移植部位観察(顕微鏡)。下記の表XIIは、コントロール物質移植部位のそれぞれと比較して、炎症性、線維形成、出血、壊死又は変色の顕著な兆候を示さなかった、試験物質移植部位の顕微鏡評価の結果を示している。4週間の期間の生物反応性評価(動物3体の平均)は、0.2(C1−サージセル)及び0.0(C2−ネガティブコントロールプラスチック)であり、コントロール移植部位のいずれかと比較して反応性を示さなかった。病理学者は、予期せず与えられた試験材料の性質ではない、in situ試験物質周囲における、穏やかな多様性及び組織球性(マクロファージ)侵入が存在したことに注目した。
【0346】
6.7.4 皮内注入試験−ISO10993−10
注入(NaCl)のためのUSP 0.9% 塩化ナトリウム及び試験物質の綿実油(CSO)抽出物について、ニュージーランド白ウサギにおける皮内注入後の炎症発生に対する能力を評価した。試験物質注入部位は、コントロール物質注入部位よりも顕著に優れた生物学的反応性を示さなかった。慣例の基準に基づけば、試験物質は炎症性に関して無視してよいと考えられ、ISO 10993−10ガイドラインの要求を満たしている。結果を以下の表XIIIに示す。
【0349】
6.7.5 クリグマン(Kligman)最大化試験−ISO 10993−10
注入(NaCl)のためのUSP 0.9% 塩化ナトリウム及び試験物質の綿実油(CSO)抽出物は、Hartleyギニーピッグにおける、誘発(0%感作)した後に導入段階を行ったとき、皮内反応を誘発しなかった。それゆえに、クリグマンの評価システムにより定義する場合、これは、グレードI反応であり、試験物質は、弱いアレルギー反応性を有するものとして分類される。慣例の基準に基づけば、グレードIの感作率は顕著であるとは考えられず、かつ、試験物質は、ISO 10993−10ガイドラインンの要求を満たしている。結果を以下の表XIVに示す。
【0352】
6.8 実施例8:ヒト患者におけるウイルス感染治療に効果的なsNAGナノファイバ
この実施例は、sNAGナノファイバが、特に、in vivoで単純疱疹ウイルスに対して、有力な抗ウイルス効果を有することを証明する。特に、この実施例は、sNAGナノファイバをヒト患者のヘルペス感染部位に局所投与したときに、HSV感染が関連するヘルペスの治療に効果的であることを示す。特に、この実施例は、sNAGナノファイバを含む組成物によるヒト患者の局所治療により、HSV感染に関連する痛みを軽減し、かつ、ヘルペス症状の持続期間を短縮させることを証明する。
【0353】
単純疱疹ウイルス感染
単純疱疹円唇化は、人口の20〜40%に影響すると見積もられる一般的な感染である(Spruance、1992;Lowhagen、2002)。これらの感染の大多数は、単純疱疹タイプIによるものであり、単純疱疹タイプIIに由来するのはより少ない。
【0354】
最も多くの個体が、人生の早い時期にヘルペス歯肉口内炎を伴う初期感染を経験する。初期感染の後、ウイルスは、三叉神経知覚神経において、慢性的な潜伏感染を確立させる。ウイルスの再活性化は、一般的であり、典型的には、唇の朱色の境界線に沿ったヘルペス円唇化が現れる。単純疱疹による初期感染は、長期間のウイルス増殖及び放出によって特徴づけられる(Harmenberg、2010)。ウイルス複製が終息した後、病斑は急速に治癒する。ヘルペス円唇化の再発は、一般に、後天性免疫反応のために、初期感染よりも急速に治癒する。残念ながら、活発な免疫反応は、痛み、発赤及び腫物を含む臨床症状を引き起こす顕著な炎症をもたらす。
【0355】
ヘルペスの再発は、明確に区分された段階により特徴づけられる(Harmenberg、2010)。予期される一連の段階は下記のように生じる:前兆、発赤、丘疹、小胞、潰瘍、硬い痂皮、乾いて剥離しつつある腫物の残留物及び標準的な治癒した皮膚。この疾患は、小胞、潰瘍及び痂皮段階の間が最も深刻であり、潰瘍性又は古典的な病斑としても見られる。
【0356】
ヘルペス円唇化の現在の治療法は、口腔内又は局所抗ウイルス薬物療法による、ウイルス複製の減少を、主に対象にしている。残念ながら、ウイルス複製段階は、感染再発においてかなり短期間であるため、これらの薬物療法は、あまり成功せず、ヘルペス病斑の治癒期間を約10%縮める程度である(Harmenberg、2010)。
【0357】
研究目的
初期の終点。この実験の初期の目的は、口周囲のヘルペス円唇化病斑の治療におけるsNAGナノファイバの効果を調査すること、並びに、sNAGナノファイバで治療した対象における、口周囲のヘルペス円唇化病斑の治療における、sNAGナノファイバの効果を調査することであった。
【0358】
封入基準
下記の全ての基準を満たす患者が、研究対象に加えるために適任であった。
【0359】
1.年齢18歳以上の概ね健康な男性又は女性
2.直近12か月以内に、唇及び/又は唇周囲の皮膚に3回以上ヘルペスが再発した病歴により定義される、ヘルペス円唇化の再発を有する。
【0360】
3.典型的なヘルペス病斑(例えば、小胞、潰瘍又は硬い痂皮)が発達する再発症状の50%以上の間である。
【0361】
4.唇の発生部位における、発赤、痛み、発熱、うずき、腫物又は締まった感覚を含む前駆症状により定義された病歴が進行するほとんどのヘルペス再発を有する。
【0362】
5.研究のための初期ヘルペス再発が、粘膜を含まない、唇から1cmの位置又はそれ以内に位置しなければならない。
【0363】
実験材料
それぞれ200μL(sNAG濃度 50mg/mL)含む5つのプラスチックチューブに、sNAGナノファイバを、供給した。
【0364】
投与
10人の対象(ヒト患者)が実験に参加した。sNAGナノファイバ(使用したsNAGナノファイバの大多数は、長さ約1〜15μmであった)を、連続して5晩、1晩1回、就寝直前にヘルペスに添加した。
【0365】
実験評価及び日記
実験チームは、表XVに示すヘルペス臨床評価尺度に基づいて、実験に参加した対象の疱疹性潰瘍を評価した。
【0369】
対象には、ヘルペス再発の日付及び時間、各治療投与時間、痛みの程度を記録するよう指示した。痛みを、0=痛み無し及び10=深刻な痛みのような10段階の尺度(0から10)を用いて評価した。
図19は、実験に使用した痛み強度の数値尺度を示している。表XVIは、調査者に提示した質問及び測定した治療効果の尺度を含む、実験終了時の調査者による治療の総合評価を示している。表XVIIは、対象に提示した質問及び測定した治療効果の尺度を含む、実験終了時の対象による治療の総合評価を示している。表XVIIは、また、対象への「このヘルペス再発は以前よりも早く治癒したか?」の質問、及び、この質問に対する対象による「はい」又は「いいえ」の回答を示している。
表XVI:実験終了時の調査者による治療の総合評価
【0371】
表XVII:実験終了時の対象による治療の総合評価
【0373】
結果及び議論
10人の患者を上述した実験に加え、実験を終了した。調査チームは、これらの患者のヘルペスの臨床評価が確定した後、患者が所定の治療を行ったことを確認した。
【0374】
実験終了時の調査者による、この実験に加えた10人の患者の治療の総合評価を、表XVIIIに示した。実験終了時に、調査者に下記質問「このヘルペス再発の臨床経過に基づいて、治療効果に対するあなたの評価は?」を質問した。調査者の反応を表XVIIIに表す。
【0377】
したがって、調査者は、単純疱瘡ウイルスに起因することが知られているヘルペスの、sNAGナノファイバによる局所治療が、かなり効果的な療法であることを見出した。
【0378】
この実験に加えた10人の対象による療法の効果の評価を、表XIXに表す。患者はsNAGナノファイバの局所投与(上述した通り)を受け、治療適用及び痛みの程度を記録した。患者は質問に答え、結果を報告した。患者に下記質問「ヘルペス再発に基づいて、治療効果に対するあなたの評価は?」、「このヘルペス再発は以前よりも早く治癒したか?」を質問した。対象の反応を表XIXに表す。
【0381】
この実験結果は、sNAGナノファイバの適用により、再発したヘルペス円唇化の持続期間を短縮し、これに関連する痛みを軽減することを証明する。調査者及び患者の両方が、この療法が、この状態の治療においてかなり効果的であったと報告した。
【0382】
この実験結果は、ヘルペス円唇化への適用だけではなく、陰部ヘルペス及び帯状疱疹を含むがこれに限定されない、ウイルスに起因する腫瘍形成に対する治療能力も示している。
【0383】
次に、sNAGナノファイバの局所適用の効果を、プラシーボコントロール実験において、25mg/mLの濃度のsNAGナノファイバを用いて評価した。
【0384】
参照文献
Spruance SL.The natural history of recurrent oral−facial herpes simplex virus infection.Semin Dermatol 1992;11:200−206.
Lowhagen GB,Bonde E,Eriksson B,Nordin P,Tunback P,Krantz I.Self−reported herpes labialis in a Swedish population.Scand J Infect Dis 2002;34:664−667.
Harmenberg J,Oberg B,Spruance S.Prevention of ulcerative lesions by episodic treatment of recurrent herpes labialis:A literature review.Acta Derm Venereol.2010 Mar;90(2):122−30.
Hull C,McKeough M,Sebastian K,Kriesel J,Spruance S.Valacyclovir and topical clobetasol gel for the episodic treatment of herpes labialis:a patient−initiated,double−blind,placebo−controlled pilot trial.J Eur Acad Dermatol Venereol.2009 Mar;23(3):263−7.
6.9 実施例9:in vivoの炎症性腸疾患の治療に効果的なsNAGナノファイバ
この実施例は、sNAGナノファイバが、炎症性腸疾患の進行治療及び/又は予防に効果的であることを示す。特に、この実施例は、sNAGナノファイバの直腸投与が、疾患の動物モデルにおいて化学的に誘引した炎症性腸疾患に関連する炎症の治療及び/又は予防に効果的であることを示す。
【0385】
炎症性腸疾患
死亡率及び生活の質に顕著に影響する一般的な慢性炎症性疾患の1つは、クローン病及び潰瘍性大腸炎(UC)を含む炎症性腸疾患(IBD)である。この疾患の病理生理学に関連して、例えば、初期の要因は何なのか、並びに、疾患がどのように慢性炎症、損傷した組織の効果のない回復及び治癒不全に進行するのかのような、2つの主要な疑問点がある。近年、2番目の疑問点への関心が高まり、疾患の効果的な治療及び生活の質の向上を実現可能な衝撃的な新たな発見につながっている。
【0386】
材料及び方法
この実験に用いたモデルは、マウスに7日間飲料水を介して3%DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)の投与からなるDSS−誘引潰瘍性大腸炎モデルである。炎症反応のピークを7日目に観察し、その後、損傷した直腸組織の修復期間、並びに、直腸疾患への最終的な再生若しくは進行及び線維形成の進行を観察した。
【0387】
実験計画を示すチャートを
図20に表す。0日目から7日目に、この実験に使用する動物(マウス)の全てに、飲料水を介してDSSを投与した。動物の1グループ(N=10)に、sNAGナノファイバ 100μL(濃度12mg/mL;使用した大多数のsNAGナノファイバの長さは約1〜15μmである)を、実験1日目及び3日目に直腸投与した(試験グループ)。動物の第2グループ(N=10)に、生理食塩水コントロールを、実験0日目及び3日目に直腸投与した(コントロールグループ)。全てのマウスを7日目に安楽死させ、それらの炎症反応を、腸内上皮の組織学的分析により評価した。組織学的分析を、H&E染色のような腸内上皮切片の染色を介して行った。
【0388】
腸内上皮切片のH&E染色のプロトコル。脱パラフィン処理のために、切片を、まず、キシレン中で30分間インキュベートした後、エタノール濃度を減少させてインキュベートした(100%×2 3分間、95% 3分間、75% 3分間、50% 3分間)。切片を流水中に5分間放置し、余分なエタノールを除去した。その後、切片をヘマトキシリン中に20秒間浸漬し、浄水中に1〜2浸漬して洗浄した。切片を続けてエオシン中で45秒間インキュベートし、再度浄水中で洗浄した。その後、切片を、エタノール濃度を上昇させてインキュベートした後(80% 30秒間、90% 30秒間及び100% 2分間)、キシレンで9分間インキュベートした。続いて、切片をDPX封入剤で封入し、カバースリップ下に載置した。
【0389】
結果及び議論
図21及び22は、炎症性腸疾患のDSS誘引マウスモデルにおいて、sNAGナノファイバによる治療が:コントロールマウスと比較して、炎症反応の顕著な減少(発表された組織学的基準により判断);並びに、腸内上皮を含む支持組織を再生するための再生メカニズムと協調して作用する、DSS大腸炎の亜急性段階における予防効果、をもたらすことを示す。
【0390】
特に、
図21は、改善した組織学的発見が、sNAGナノファイバ投与マウスにおいては炎症過程に関連したが、コントロールマウスにおいては関連しなかったことを示す。特に、sNAG処理グループマウスでは、浮腫の減少(
図21A及び21Bを参照;浮腫領域を薄い矢印及び括弧書きで示す)、及び、白血球浸潤の減少(
図21A及び21Bを参照;白血球湿潤は濃い矢印で示す)が現れたが、コントロールマウスでは現れなかった。
【0391】
図22は、sNAGナノファイバで処理したマウス及びコントロールマウスからの切片における、線維形成のための染色を示す。sNAG処理マウスとコントロールマウスとの間の炎症反応の違いは明らかである。特に、コントロールグループは、線維形成の増加兆候を示す(
図22A参照)一方で、sNAG処理したグループは示さなかった(
図22B参照)。
【0392】
表されたデータは、sNAGナノファイバが、疾患の動物モデルにおける炎症性腸疾患に関連する炎症の治療及び/又は予防に効果的であることを示す。これらの発見は、IBD患者の治療における、sNAGナノファイバの治療適用の可能性を証明する。さらに、有利なことに、sNAGナノファイバを(座薬を介して直腸に投与のように)局所投与により部分的に適用可能であり、それゆえに(全身投与剤に一般的な)全身性の副作用を避けることができる。
【0393】
7.参照文献の組み込み
この明細書に記載した論文、特許及び特許出願のような全ての参照文献の開示の全てを、まるで個々の論文又は特許出願のそれぞれが、特に及び個別に、参照として組み込むことが示されているように、参照としてここに組み込む。本発明は、明確な理解の目的のための図面及び実施例により、いくつかの詳細が記載されているが、本発明の教示の観点から、単に当業者に明らかにするためのものであり、特定の変更及び修正は、特許請求の範囲に記載した精神又は範囲から離れることなく加えられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0394】
【
図1】ナノファイバが、Ets1の上流レギュレータであるAkt1活性化を刺激する。(A)は、NAG応答によるリン酸化Akt及び血清欠乏ECのsNAG刺激のウエスタンブロット分析である。(B)は、スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAレンチウイルスの何れかに感染したECのRT−PCR分析、及び、ローディングコントロールとしてのEts1及びS26の発現評価である。(C)は、sNAGナノファイバからAkt1、Ets1及びディフェンシンへ信号伝達する信号伝達経路の概略図である。
【
図2A】Akt1欠損動物における遅延した創傷治癒が、タリデルム治療により部分的に救済されている。(A)は、タリデルムにより治療した又は治療していない、WT及びAKT1欠損創傷マウスの、代表的な図である。
【
図2B】Akt1欠損動物における遅延した創傷治癒が、タリデルム治療により部分的に救済されている。(B)は、創傷3日後のマウスにおける、代表的なマウス皮膚部分のH&E染色である。
【
図3】sNAGナノファイバが、一次内皮細胞におけるサイトカイン及びディフェンシン発現を刺激する。(A)は、a−ディフェンシンに対する直接抗体を用いた、sNAGにより治療した又は治療していないECの免疫組織化学である。(B)は、ECのナノファイバ治療(血清欠乏、5μg/mL又は10μg/mLのsNAGによる治療)が、α−ディフェンシン1−3の分泌をもたらしたことを示すELISAである。
【
図4】sNAGナノファイバが、Akt1依存様式による一次内皮細胞におけるディフェンシン発現を刺激する。(A)及び(B)は、sNAG(「snag」)、PD98059(MAPKインヒビター、「PD」)、ウォルトマンニン(PI3Kインヒビター、「wtm」)、又は、スクランブルコントロール(「SCR」)若しくはAkt1(「AKT1」) shRNAレンチウイルスによる感染、のいずれかの処理をした又は処理をしない血清欠乏EC(「ss」)の量的RT−PCR分析、並びに、遺伝子発現の分析を示している。
【
図5A】sNAGナノファイバが、マウスケラチン生成細胞におけるβ−ディフェンシン3発現を刺激する。(A)は、3日目における、WT及びAkt1欠損動物からのパラフィン包埋マウス皮膚創傷部位の、β−ディフェンシン3(右手上部パネルにおいて明るい染色として見られる;例えば濃白矢印を参照)及びInvolucrin抗体での免疫蛍光染色である。
【
図5B】sNAGナノファイバが、マウスケラチン生成細胞におけるβ−ディフェンシン3発現を刺激する。(B)は、NIHImageJソフトウェアを用いた、β−ディフェンシン3免疫蛍光染色の定量化である(TX=タリデルム;Akt1=Akt1欠損)。
【
図5C】sNAGナノファイバが、マウスケラチン生成細胞におけるβ−ディフェンシン3発現を刺激する。(C)は、β−ディフェンシン3(明るい染色として見られる;例えば濃白矢印を参照)及びTOPRO−3(核染色;例えば薄白矢印を参照)により治療した及び治療していない、WT及びAkt1欠損ケラチン生成細胞の免疫蛍光染色である。WT及びAkt1タリデルムで治療した創傷におけるβ−ディフェンシン3染色の増加に注目する。
【
図6】Akt1依存転写因子結合部位である。Akt1依存転写因子結合部位の概略図である。Genomatixソフトウェアを用いて、転写開始部位の500塩基上流を、DEF1、4及び5のmRNAにおける保存部位として分析した(ETS−黒楕円;FKHD−縞模様楕円;CREB−白楕円;NFKB−格子縞楕円)。
【
図7】sNAG処理が、in vitroにおけるディフェンシンの発現及び分泌をもたらす。(A)は、示した時間sNAG(50μg/mL)で処理した血清欠乏(SS)一次内皮細胞のRTPCR分析、ならびに、β−ディフェンシン3及びα−ディフェンシン1の発現の評価である。(B)は、血清欠乏(非処理)又はsNAGナノファイバで処理した(10μg/mLで5時間)内皮細胞の免疫蛍光標識である。抗体は、α−ディフェンシン5(FITC、左手上部パネル)、β−ディフェンシン3(テキサスレッド、右手上部パネル)に対する直接抗体である。核はTOPRO−3(青、左手下部パネル)で染色された。右手下部パネルは、三重オーバーレイを表している。(c)は、血清欠乏(非処理)又はsNAGナノファイバで処理した(10μg/mLで5時間)ケラチン生成細胞(HaCat)の免疫蛍光標識である。抗体は、α−ディフェンシン5(FITC、左手上部パネル)、β−ディフェンシン3(テキサスレッド、右手上部パネル)に対する直接抗体である。核はTOPRO−3(青、左手下部パネル)で染色した。
【
図8A】sNAG誘導ディフェンシン発現がAkt1に依存する。(A)は、sNAGによる3時間の処理若しくは非処理、PD098059(「PD」)による処理(50μM)若しくは非処理、ウォルトマンニン(「WTM」)による処理(100nm)若しくは非処理の、血清欠乏内皮細胞から単離した全長RNAからの、α−ディフェンシン1に対するプライマーを用いた量的RT−PCR分析である。
【
図8B】sNAG誘導ディフェンシン発現がAkt1に依存する。(B)は、sNAGによる3時間の処理若しくは非処理、PD98059による処理(50μm)若しくは非処理、ウォルトマンニン(「WTM」)による処理(100nm)若しくは非処理の、血清欠乏内皮細胞から単離した全長RNAからのβ−ディフェンシン3の定量化であり、S26に関連して示す。
【
図8C】sNAG誘導ディフェンシン発現がAkt1に依存する。(C)は、示した時間sNAGにより刺激した血清欠乏内皮細胞(SS)におけるリン酸化−Aktのウエスタンブロット分析である。ラインは、除去されたレーンを示している。
【
図8D】sNAG誘導ディフェンシン発現がAkt1に依存する。(D)は、スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAレンチウイルスに感染し、sNAGにより処理又は非処理の血清欠乏内皮細胞の量的RT−PCR分析であり、α−ディフェンシン 4発現により評価した。定量化はS26に対して示す。
【
図8E】sNAG誘導ディフェンシン発現がAkt1に依存する。(E)は、スクランブルコントロール(SCR)又はAkt1 shRNAレンチウイルスに感染し、sNAGにより処理又は非処理の血清欠乏内皮細胞から単離した全長RNAから発現したβ−ディフェンシン3の定量化である。定量化はS26に対して示す。全ての実験を、少なくとも3通り行い、少なくとも独立して3回繰り返し、p値を示した。
【
図9】in vivoにおけるsNAG誘導ディフェンシン発現が、Akt1を要求する。(A)は、創傷後3日目に回収された、WT(n=3)及びAkt1マウスからの、パラフィン包埋皮膚創傷部位である。創傷部に、非処理又はsNAG膜による処理のいずれかを行った。β−ディフェンシン3(緑、右手上部パネルにおいて明るい染色部として見られる。例えば濃白矢印参照)、Involucrin(赤)、及び、Topro(青、核染色、例えば薄白矢印)に対する直接抗体を用いて、免疫蛍光を行った。(B)は、3日目に回収した、sNAGで処理したWTからのパラフィン包埋部位である。βディフェンシン3(緑、明るい染色として見られる;例えば濃白色矢印参照)、Involucrin(赤)及びTopro(青、核染色;例えば薄白矢印参照)に対する直接抗体を用いて、免疫蛍光を行った。この低倍率(20×)は、β−ディフェンシン3を発現する内皮層をより良く示すためでもある。スケールバーは50μmである。(C)は、NIH ImageJソフトウェアを用いて行った、パラフィン包埋部位から発現したβ−ディフェンシン3発現の定量化である。実験を独立して3回繰り返し、p値を示す。
【
図10】sNAG処理により、野生型マウスにおいて、創口閉鎖が向上する。sNAG膜により処理した又は非処理のC57B16野生型動物由来の創傷組織部位のH&E染色である。創傷後の日数を各パネルの左側に示す。濃い黒線は、創口閉鎖を示すケラチン生成細胞層に沿っている。黒矢印は、創面の縁を示す。
【
図11A】SNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(A)は、WTマウスのS.アウレアス感染創傷部位の組織グラム染色である。WTマウスを、4mm生検穿孔機を用いて傷つけた。創傷後すぐにマウスに1×10
9cfu/mLを接種させた。感染30分後に、処理群のマウスをタリデルムで処理した。皮膚サンプルを処理の5日後に採取し、分析のために区分化した。組織グラム染色を行った。暗紫染色は、グラム陽性微生物及び微生物を呑食した好中球を示している。領域を20倍及び40倍に拡大して示す。
【
図11B】sNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(B)は、WTマウス及びAkt1欠損マウス(n=3)のパラフィン包埋S.アウレアス感染創傷の組織グラム染色である。感染創傷をsNAG膜で処理又は非処理し、創面を3日目及び5日目に分析のために回収した。暗紫染色は、創面中のグラム陽性微生物の存在を示す。黒矢印はグラム陽性染色の例を示す。sNAG処理したWT動物においてはなかったが、非処理WTにおいては陽性染色の蓄積が見られたことに注目する。スケールバーは50μmである。
【
図11C】SNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(C)は、処理又は非処理のWTマウス(n=3)及びAkt1マウス(n=3)の両方を用いて、創傷5日後のCFUsのS.アウレアス感染創傷を定量化した。sNAGで処理した野生型マウスにおいては、Akt1欠損動物と比較して、創面中の微生物の顕著な減少(p<.01)が見られる。全ての実験を独立して3回繰り返し、p値を示す。
【
図11D】SNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(D)は、
図11Cに示したのと同様の方法で、創傷3日後における感染した創傷部位から定量化したCFUである。感染創傷のsNAG処理により、3日目のWT動物及びAkt1欠損動物の両方においてCFUの顕著な減少が見られたが、WT動物は約10倍の差が見られたのに対して、Akt1動物においては約2倍の差が見られた。
【
図11E】SNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(E)は、種々の量のsNAGナノファイバで処理した又は非処理のS.アウレアス培地におけるCFUsの定量化である。各実験を独立して3回行い、p値を示した。
【
図11F】SNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(F)は、β−ディフェンシン3ペプチド(1.0μM)で処理した又は非処理のWTマウス(n=3)において、創傷3日後に回収したS.アウレアス感染創傷の組織グラム染色である。β−ディフェンシン3ペプチドで処理した感染創傷におけるグラム陽性染色が減少したことに注目する。
【
図11G】SNAG処理により、Alt1依存様式における微生物感染が減少する。(G)は、β−ディフェンシン3ペプチドで処理した又は非処理の、S.アウレアス感染WTマウス(n=3)からのCFUsの定量化である。ペプチドで処理した感染創傷は、CFUにおいて顕著な減少(p<.05)を示す。スケールバーは50μmである。各実験を独立して3回行い、p値を示す。
【
図12】S.アウレアス感染創傷のsNAG処理によるディフェンシン発現の迅速な誘導。(A)は、sNAG処理したWTマウス(n=3)及び非処理のWTマウス(n=3)の両方において、3日目に回収したS.アウレアス感染創傷からのパラフィン包埋組織部位を、β−ディフェンシン3(緑、右手上部パネル及び下部中央パネルにおいて明るい染色が見られた、例えば濃白矢印参照)、ケラチン生成細胞層を特徴づけるためのInvolucrim(赤)、及び、Topro(青、核染色、例えば薄白矢印参照)に対する直接抗体を用いた免疫蛍光の対象とした。ケラチンの非特異的染色が、二次抗体でのみ染色されており、一次コントロールではないことが示された。スケールバーは50μmである。(B)は、NIH ImageJソフトウェアを用いた、パラフィン包埋部位におけるβ−ディフェンシン3発現の定量化である。sNAGで処理したS.アウレアス感染創傷においては、β−ディフェンシン3染色の顕著な上昇(p<.05)がみられる。実験を独立して3回繰り返し、p値を示す。
【
図13】β−ディフェンシン3に対する抗体が、sNAG処理の抗菌効果を妨げる。(A)は、3日目に回収した、WTマウス(n=3)のsNAG処理したパラフィン包埋S.アウレアス感染創傷の組織グラム染色である。sNAG処理した創傷は、sNAG処理の前に、β−ディフェンシン3抗体又はコントロールのヤギIgG抗体のアイソタイプで処理した。代表的な図は、β−ディフェンシン3の直接抗体で処理したマウスの創面において、グラム陽性染色の蓄積(黒矢印)の増加を示す。スケールバーは20μmである。(B)は、sNAG処理の前にβ−ディフェンシン3抗体(n=3)又はコントロールのIgG抗体(n=3)により処理した、S.アウレアス感染WTマウスからのCFUsの定量化である。β−ディフェンシン3適用により、CFUが顕著に増加した(p<.05)。
【
図14A】ポリ−N−アセチルグルコサミン(「pGlcNAc」)ファイバの化学的構造及び物理的構造に対する放射線照射の効果。(A)は、pGlcNAcの分子量と、放射線レベル/放射線照射のための形成との間の相関である。
【
図14B】ポリ−N−アセチルグルコサミン(「pGlcNAc」)ファイバの化学的構造及び物理的構造に対する放射線照射の効果。(B)は、非放射線照射pGlcNAcスラリーの赤外線スペクトル(上部ライン)、100kGyで放射線照射したpGlcNAcスラリーの赤外線スペクトル(下部ライン)、200kGyで放射線照射したpGlcNAcスラリーの赤外線スペクトル(中央ライン)である。
【
図14C】ポリ−N−アセチルグルコサミン(「pGlcNAc」)ファイバの化学的構造及び物理的構造に対する放射線照射の効果。(C)は、pGlcNAcの走査型電子顕微鏡(SEM)分析である。
【
図14D】ポリ−N−アセチルグルコサミン(「pGlcNAc」)ファイバの化学的構造及び物理的構造に対する放射線照射の効果。(D)は、sNAGの走査型電子顕微鏡(SEM)分析である。
【
図15】pGlcNAcが代謝率に影響しなかった。各期間(例えば、24時間及び48時間)において、4つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL及び100μg/mLにおけるpGlcNAc(NAG)。
【
図16】pGlcNAcが、血清欠乏により引き起こされる細胞死から、ヒト臍静脈内皮細胞(EC)を保護したことを示す。各期間(例えば、24時間、48時間及び72時間)において、5つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL、100μg/mL及び250μg/mLにおけるpGlcNAc(NAG)。
【
図17】sNAGが代謝率の著しい増加を引き起こした。5つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLにおけるsNAG。
【
図18】sNAGが、血清欠乏により引き起こされる細胞死からECを保護しなかった。各期間(例えば24時間及び48時間)において、5つの棒グラフ(左から右)のそれぞれは、以下に一致する;血清欠乏(SS)、VEGF、並びに、50μg/mL、100μg/mL及び200μg/mLにおけるsNAG。
【
図20】マウスモデルにおける3%DSS(硫酸ナトリウムデキストラン)誘引炎症性腸疾患(特に、潰瘍性大腸炎)のために用意した実験の概略。
【
図21】sNAG処理が、炎症性腸疾患の動物モデルにおいて、炎症を減少させたことを示す。(A)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介して生理食塩水(100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスのコントロール群における、腸上皮組織領域のH&E染色である。(B)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介してsNAG(sNAGを総量で12μg/μL含む100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスの試験群における、腸上皮組織領域のH&E染色である。薄い矢印及び括弧書きは浮腫部位を示しており、濃い矢印は白血球炎症部位を示している。
【
図22】sNAG処理が、炎症性腸疾患の動物モデルにおいて、線維形成を減少させたことを示す。(A)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介して生理食塩水(100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスのコントロール群における、腸上皮組織領域の線維染色である。(B)は、飲料水を介して3% DSSを7日間(0日目から7日目)投与し、かつ、直腸座薬を介してsNAG(sNAGを総量で12μg/μL含む100μL)を0日目から3日目まで投与した10匹のマウスの試験群における、腸上皮組織領域の線維染色である。