【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリを均一に冷却するためには、バッテリに対して大量の空気を供給することが望ましい。電気自動車やハイブリッドカーの走行用電力を貯えるバッテリは、バッテリセルと呼ばれる単電池が多数配置されてなるものであり、例えば規則的な間隔を設けて配置されるなど、複雑な表面形状を有している。このようなバッテリに対しては、表面に空気が滞留して冷却不足となる部位が残らないように、十分な量の空気を供給することが必要である。
【0006】
すると、バッテリを収納するモジュールケースの内部に、熱交換器及び送風手段を備えたバッテリ温度調整ユニットを配置し、そのユニットにてモジュールケースの内部の空気を大量に循環し、且つ冷却できるように構成するのが好適と思料される。しかしながら、送風手段によって移動する空気のすべてが熱交換器を通過する構成にすると、熱交換器の通気抵抗により、空気の循環が満足に得られない場合が考えられる。また、空気の循環を向上するべく送風手段の能力を引き上げると、送風手段のコストの上昇につながるという事情もある。
【0007】
尚、バッテリは、その能力を適切に得るために加熱される場合もある。熱交換器としては、空気を冷却してバッテリを冷却する冷却用熱交換器の他、空気を加熱してバッテリを加熱する加熱用熱交換器や、流通する媒体の温度によって冷却と加熱とを切換える汎用タイプの熱交換器が考えられる。熱交換器の通気抵抗の問題は、いずれの熱交換器にも共通に存在する。
【0008】
本願発明者は、構成(B)を採用するバッテリモジュールの技術分野において、現状の電気自動車やハイブリッドカーにおけるバッテリを温度調整するために求められる熱交換器の能力と、バッテリに供給すべき空気の量との関係を踏まえた上で、より優れたバッテリ温度調整ユニットを得るべく設計と検証を繰り返すことにより、本願発明を案出したものである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、適度に温度調整された空気を効率よくバッテリに供給できるバッテリ温度調整ユニット及び、これを用いた車両搭載用のバッテリモジュール並びにその車両を提供するものである。
【0010】
また、この種のバッテリ温度調整ユニットにおいて、適度に温度調整された空気を効率よくバッテリに供給することに加えて、当該ユニットの小型化も強く望まれている。
【0011】
本発明は、適度に温度調整された空気を効率よくバッテリに供給できる構成を維持しつつ、合理的な小型化構造を得ることができるバッテリ温度調整ユニット及び、これを用いた車両搭載用のバッテリモジュール並びにその車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願第1請求項に記載した発明は、実施例で用いた符号を付して記すと、バッテリ(2)を収納するモジュールケース(10)の内部に設けられるユニットであって、吸込み口(111)及び吹出し口(112)を有するユニットケース(110)と、前記ユニットケース(110)の内部に配置された熱交換器(120)及び送風手段(130)とを備え、前記モジュールケース(10)の内部の空気は、前記送風手段(130)により前記吸込み口(111)から吸込まれるとともに前記吹出し口(112)から吹出されて、前記モジュールケース(10)の内部を循環し、前記吹出し口(112)から吹出される空気は、前記熱交換器(120)を通過した空気と、前記熱交換器(120)を通過していない空気とを含
み、前記熱交換器(120)は、前記送風手段(130)よりも前記吸込み口(111)側に配置されており、前記ユニットケース(110)は、前記熱交換器(120)と前記送風手段(130)との間の部位に第2の吸込み口(113)を設けてなる構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0014】
本願第
2請求項に記載した発明は、請求項
1において、前記ユニットケース(110)
には、前記吸込み口(111)から吸込まれた空気の一部が前記熱交換器(120)を迂回して通過するバイパス路(114)を設けてなる構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0015】
本願第
3請求項に記載した発明は、請求項1
又は2において、前記ユニットケース(110)には、電気ヒーター(140)を設けた構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0016】
本願第
4請求項に記載した発明は、請求項1から
3のいずれかに記載のバッテリ温度調整ユニット(100)を用いてなる構成の車両搭載用のバッテリモジュール(1)である。
【0017】
本願第
5請求項に記載した発明は、請求項1から
3のいずれかに記載のバッテリ温度調整ユニット(100)を搭載した構成の車両である。
【0018】
本願第
6請求項に記載した発明は、バッテリ(2)を収納するモジュールケース(10)の内部に設けられるユニットであって、吸込み口(111)及び吹出し口(112)を有するユニットケース(110)と、前記ユニットケース(110)の内部に配置された熱交換器(120)及び送風手段(130)とを備え、
前記送風手段(130)は、シロッコファンとモータを備え、前記モジュールケース(10)の内部の空気は、前記送風手段(130)により前記吸込み口(111)から吸込まれるとともに前記吹出し口(112)から吹出されて、前記モジュールケース(10)の内部を循環し、また、前記熱交換器(120)は、冷却用熱交換器であって前記吸込み口(111)と前記送風手段(130)との間に配置され、更に、前記吸込み口(111)と前記送風手段(130)との間に加熱器(140)を備え、前記加熱器(140)は、前記冷却用熱交換器(120)と並列、又は当該冷却用熱交換器よりも前記吸込み口(111)側に配置され
ており、前記冷却用熱交換器(120)と前記シロッコファンの空気取入口とが向かい合っている構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0019】
本願第
7請求項に記載した発明は、請求項
6において、前記加熱器(140)は前記込み口(111)と前記冷却用熱交換器(120)との間に配置される構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0020】
本願第
8請求項に記載した発明は、請求項
6において、前記加熱器(140)は前記冷却用熱交換器(120)と並列に配置される構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0021】
本願第
9請求項に記載した発明は、請求項
6から
8のいずれかにおいて、前記加熱器(140)は電気発熱式ヒーターである構成のバッテリ温度調整ユニット(100)である。
【0022】
本願第
10請求項に記載した発明は、請求項
6から
8のいずれかに記載のバッテリ温度調整ユニット(100)を用いてなる構成の車両搭載用のバッテリモジュール(1)である。
【0023】
本願第
11請求項に記載した発明は、請求項
6から
8のいずれかに記載のバッテリ温度調整ユニット(100)を搭載した構成の車両である。
【0024】
本願第
12請求項に記載した発明は、請求項
11において、前記加熱器(140)は前記冷却用熱交換器(120)よりも上方に配置された構成の車両である。
【0025】
本願第1発明(請求項1〜
5)によれば、適度に温度調整された空気を効率よくバッテリに供給できるバッテリ温度調整ユニットを得ることができる。以下に、本願第1発明の考え方を説明する。
【0026】
バッテリ温度調整ユニットは、ユニットケースの内部に熱交換器及び送風手段を配置してなるものである。モジュールケースの内部の空気は送風手段によって循環され、熱交換器によって温度が調整される。
【0027】
ここで、熱交換器による空気の温度調整の効率を考慮すると、ユニットケースの吹出し口から吹出される空気は、全て熱交換器を通過していることが望ましい。しかし、熱交換器を小型化された高性能のものとすると、空気が通過できる面積が小さくなるため、その熱交換器は通気抵抗が大きくなるという事情がある。その結果、ユニットケースの吹出し口から吹出される空気の量が減少し、大量の空気を供給することができない。言い換えると、モジュールケースの内部を循環する空気の速度を上げることができない。また、通気抵抗を小さくするために空気が通過できる面積を大きくすると、その熱交換器は大型化してしまう。バッテリ温度調整ユニットの大型化という問題が生じる。
【0028】
結論としては、小型化された高性能の熱交換器を用いると同時に、送風手段の性能を十分に活用するべくユニットケースの構造を工夫することにより、ユニットケースの吹出し口から吹出される空気の量を調整するとよい。
【0029】
本願第1発明は、吹出し口から吹出される空気に、熱交換器を通過した空気と、熱交換器を通過していない空気とが含まれるように、ユニットケースに工夫を施してなるものである。このような構成によると、送風手段の性能に対して、熱交換器による空気の温度調整と、空気によるバッテリの温度調整とをバランスよく確保することができる。
【0030】
このように、吹出し口から吹き出す空気に熱交換器を通過していない空気が含まれるようにしたことで、モジュールケースの内部の空気を合理的に循環することができる。その結果、バッテリの温度調整の効率が確実に向上する。本発明の構成が極めて有効であることは、本願発明者の試作実験によっても確認されている。
【0031】
また、本願第2発明(請求項
6〜
12)によれば、本願第1発明と同様に適度に温度調整された空気を効率よくバッテリに供給できるとともに、合理的に小型化できるバッテリ温度調整ユニットを得ることができる。以下に、本願第2発明の考え方を説明する。
【0032】
バッテリ温度調整ユニットを小型化するためには、吸込み口、熱交換器、ブロア(送風手段)の順に、つまりブロアの上流側に熱交換器を配置することが好ましい。これは、ブロアの吸込口の面積より熱交換器の通風面積が大きい場合でも、熱交換器を吸込口の上流側に配置することで、熱交換器を流れる空気が均一な風速で流れるので、空気と熱交換器との熱の交換量の悪化を防止できるからである。とりわけ、熱交換器と吸込口とが接近するよう配置されていても、空気は熱交換器を均一に流れる効果を得ることができる。
【0033】
ところで、通常の車両用空調装置は、空調の目的が搭乗者の快適性具現にあるから、暖房、冷房のほかに、除湿も大きな要素として存在する。そのため、空調装置内を通流する空気をエバポレータで一旦除湿し、必要によりヒーターコアを通過させて加熱する。従って、自動車等の車両に用いられる一般の空調装置は、上流側から下流側に亘って、エバポレータ(冷却用熱交換器)とヒーターコア(加熱用熱交換器)の順に配置されている。
【0034】
尚、このような車両用の空調装置において、ヒーターコアの下流側にエバポレータを配置するものは通常見受けられない。すなわち、一旦ヒーターコアで暖めた空気を、下流側のエバポレータで冷却することは、エネルギー効率を著しく毀損するので、用いられていない。
【0035】
また、通常の車両用空調装置に配置されるエバポレータは、空調装置内を通流する空気を確実に除湿する機能も要請されるので、エバポレータは空気が迂回しないようにダクトに配置される。
【0036】
そして、上述した車両用の空調装置、つまり上流側にエバポレータ(冷却用熱交換器)、下流側にヒーターコア(加熱用熱交換器)の順に配置されている空調装置を、そのままバッテリ温度調整ユニットに適用して、小型化を図ると、下流側のヒーターコアに不具合を生じることが判明した。
【0037】
これは、上流側で空気をエバポレータで冷却すると、凝縮水が出て、これが通流する空気に乗って、小型化によってエバポレータとヒーターコアとが接近していると下流側のヒーターコアに到達し、当該ヒーターコアに付着する。
【0038】
水滴の付着したヒーターコアは徐々に劣化し、永年使用によりヒーターコアの不具合(アルミ製コアの腐食等)を惹起する。これを回避するため、つまりヒーターコアに水滴が付着しないようにエバポレータとヒーターコアの間隔を大きくすると、装置全体の小型化を図ることができない。
【0039】
このように、搭乗者の快適性向上のための車両用空調装置をそのままバッテリ温度調整ユニットに転用することには困難が伴うので、これをどのように解決するか検討した。
【0040】
翻って、バッテリの空調を考えてみると、次のことが想起される。すなわち、バッテリはその充放電時に発熱するものであるから、基本的にバッテリの冷却が要請される。他方、寒冷地において、バッテリの作動効率や充電効率の点から、副次的に、バッテリを別途加熱することが要請される(例えば寒冷地等においてマイナス40℃をマイナス10℃前後に上げる等)ものである。
【0041】
このようなバッテリの特性やバッテリ温度調整ユニットの空調形態を勘案した結果、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とを同時に作動して空気を除湿する必要性の無いことが導かれた。従って、冷却用及び加熱用の熱交換器を双方配置する場合でも、通常の車両用の空調装置とは異なり、その配置を車両用空調装置のものとは逆にしても、機能上問題の無いことが判明した。
【0042】
更に、バッテリ温度調整ユニットの空調形態を勘案した結果、該装置内を通流する空気を確実に除湿する機能が要請されていないことも導かれた。従って、バッテリ温度調整ユニットに冷却用熱交換器を配置するとしても、通流する空気が冷却用熱交換器を迂回することとなっても、要請される冷却能力が確保できるのであれば問題の無いことが判明した。
【0043】
そこで、バッテリ温度調整ユニットにおいては、ヒーターコアを上流側に、エバポレータを下流側に配置すること(直列配置形態)、及び、ヒーターコアとエバポレータを並列に配置すること(並列配置形態)で、上述した車両用空調装置の場合に生じ得る不具合を解消することができるものとなる。このように、ヒーターコアを上流側に、エバポレータを下流側に、配置する形態、及び、並列配置形態を採用することにより、ヒーターコアとエバポレータの間隔を短くすることができる。以上のような知見を得て、本願第2発明を案出したものである。
【0044】
本願第2発明は、基本的に用いる熱交換器は、冷却用熱交換器であって吸込み口と送風手段(ブロア)との間に配置され、更に、吸込み口と送風手段との間に加熱器を備えるものであり、前記加熱器は、前記冷却用の熱交換器と並列、又は当該冷却用熱交換器よりも吸込み口側に配置される構成のバッテリ温度調整ユニットである。
【0045】
このような構成によると、送風手段(ブロア)は吹出し口側に配置されるので、本願第1発明と同様に、バッテリへ送風される空気を効率的に行い得て、モジュールケースの内部の空気を合理的に循環することができる。その結果、バッテリの温度調整の効率が確実に向上することとなる。
【0046】
更に、加熱器は、前記冷却用の熱交換器と並列、又は当該冷却用熱交換器よりも吸込み口側に配置されるので、通常の車両用空調装置の場合のような、エバポレータの凝縮水が下流側のヒーターコアに到達して当該ヒーターコアに付着する事態を回避することができ、従ってヒーターコアとエバポレータの間隔を短くすることができるので、装置の小型化を実現することができることとなる。