(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144276
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】アポリポタンパク質製剤のための投与計画
(51)【国際特許分類】
A61K 38/00 20060101AFI20170529BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20170529BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20170529BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20170529BHJP
A61K 31/685 20060101ALI20170529BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20170529BHJP
A61K 31/688 20060101ALI20170529BHJP
A61K 31/683 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
A61K37/02ZMD
A61P9/00
A61P3/06
A61P9/10
A61P9/10 101
A61K31/685
A61K47/28
A61K31/688
A61K31/683
【請求項の数】34
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-547627(P2014-547627)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公表番号】特表2015-500840(P2015-500840A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】AU2012001345
(87)【国際公開番号】WO2013090978
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年10月21日
(31)【優先権主張番号】2011905368
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500021413
【氏名又は名称】シーエスエル、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・レイナー
【審査官】
伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−507223(JP,A)
【文献】
特表2007−509157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 31/00
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
60〜140kgの体重範囲内であるヒトにおいて疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置するための医薬を製造するための、固定投薬量アポリポタンパク質製剤の使用であって、該製剤のアポリポタンパク質成分への曝露における患者間変動性が、体重調整した投与計画を用いて観察されるか又は体重調整した投与計画に関連するであろう患者間変動性と比較して、相対的な減少を示すように決定され、
ここで、疾患、障害又は状態が、心血管疾患、高コレステロール血症、及び低コレステロール血症からなる群から選択され、
固定投薬量が、アポリポタンパク質0.1〜15g;1〜10g;2〜9g;3〜8g;4〜7g;及び5〜6gから選択される範囲内の量のアポリポタンパク質を含み、そして
アポリポタンパク質がApo−A1又はそのフラグメントである、
上記使用。
【請求項2】
疾患、障害又は状態が急性冠症候群(ACS)、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、及び心筋梗塞からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
アポリポタンパク質への曝露の患者間変動性が、体重調整した投与計画を用いて観察されるか又は体重調整した投与計画に関連する患者間変動性の90%未満である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
固定投薬量がアポリポタンパク質を0.25g、0.5g、1g、1.7g、2g、3.4g、4g、5.1g、6g、6.8g又は8g含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
アポリポタンパク質製剤が再構成高密度アポリポタンパク質(rHDL)製剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
rHDL製剤が、アポリポタンパク質、1つ又はそれ以上の脂質、及び場合により界面
活性剤を含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
アポリポタンパク質が血漿から精製されたApo A−Iであり、脂質がホスファチジルコリンであり、そしてrHDL製剤がコール酸ナトリウム界面活性剤をさらに含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
アポリポタンパク質と脂質との間の比が1:40〜1:75(mol:mol)であり、そしてコール酸ナトリウムが0.5〜0.9g/Lの濃度で存在する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
アポリポタンパク質が組換えApo A−Iであり、そして1つ又はそれ以上の脂質がスフィンゴミエリンとホスファチジルグリセロールとの混合物である、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
アポリポタンパク質と脂質との間の比が1:80と1:120(mol:mol)との間であり、そしてスフィンゴミエリン及びホスファチジルグリセロールが90:10〜99:1(質量:質量)の比で存在する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
60〜140kgの体重範囲内であるヒトへの投与のための、該製剤のアポリポタンパク質成分への曝露における患者間変動性が、体重調整した投与計画を用いて観察されるか又は体重調整した投与計画に関連するであろう患者間変動性と比較して、相対的な減少を示す、固定投薬量でアポリポタンパク質製剤を製造する工程を含む、アポリポタンパク質又はそのフラグメントを含む固定投薬量アポリポタンパク質製剤を製造する方法であって、
ここで、ヒトが、心血管疾患、高コレステロール血症、及び低コレステロール血症からなる群から選択される疾患、障害又は状態に罹患しており、
固定投薬量が、アポリポタンパク質0.1〜15g;1〜10g;2〜9g;3〜8g;4〜7g;及び5〜6gから選択される範囲内の量のアポリポタンパク質を含み、そして
アポリポタンパク質がApo−A1又はそのフラグメントである、
上記方法。
【請求項12】
変動性が、体重調整した投与計画を用いて観察されるか又は体重調整した投与計画に関連する変動性の90%未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固定投薬量が、アポリポタンパク質0.25g;0.5g;1g;1.7g;2g;3.4g;4g;5.1g;6g;6.8g;及び8gから選択される量のアポリポタンパク質を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
60〜140kgの体重範囲内であるヒトにおける疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置する際に使用するための、固定投薬量アポリポタンパク質製剤であって、該製剤のアポリポタンパク質成分への曝露における患者間変動性が、体重調整した投与計画を用いて観察されるか又は体重調整した投与計画に関連するであろう患者間変動性と比較して、相対的な減少を示し、
ここで、疾患、障害又は状態が、心血管疾患、高コレステロール血症、及び低コレステロール血症からなる群から選択され、
固定投薬量が、0.1〜0.5gの範囲内の量のアポリポタンパク質を含み、そして
アポリポタンパク質がApo−A1又はそのフラグメントである、
上記固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項15】
固定投薬量が、0.25g及び0.5gから選択される量のアポリポタンパク質を含む、請求項14に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項16】
アポリポタンパク質製剤が、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)製剤である、請求項14又は15に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項17】
rHDL製剤中に、アポリポタンパク質、1つ又はそれ以上の脂質及び場合により界面活性剤を含む、請求項16に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項18】
rHDL製剤においてアポリポタンパク質は血漿から精製されたApo A−Iであり、脂質はホスファチジルコリンであり、そしてrHDL製剤はコール酸ナトリウム界面活性剤をさらに含む、請求項17に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項19】
アポリポタンパク質と脂質との間の比が1:40〜1:75(mol:mol)であり、コール酸ナトリウムが0.5〜0.9g/Lの濃度で存在する、請求項18に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項20】
アポリポタンパク質が組換えApo A−Iであり、そして1つ又はそれ以上の脂質がスフィンゴミエリンとホスファチジルグリセロールとの混合物である、請求項19に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項21】
アポリポタンパク質と脂質との間の比が1:80と1:120との間(mol:mol)であり、そしてスフィンゴミエリン及びホスファチジルグリセロールが90:10〜99:1(質量:質量)の比で存在する、請求項20に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤。
【請求項22】
請求項14〜21のいずれか1項に記載の固定投薬量アポリポタンパク質製剤の1又はそれ以上の単位用量;及び1つ又はそれ以上の他のキット構成要素を含む、キット。
【請求項23】
前記1つ又はそれ以上の他のキット構成要素は、使用のための指示書;各単位用量を収容するバイアル、コンテナ若しくは他の貯蔵容器;針、カテーテル、シリンジ、管状部材などのような1つ若しくはそれ以上の送達デバイス;並びに/又はキットを安全かつ都合よく貯蔵及び/又は輸送するために適した包装材料を含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
心血管疾患、高コレステロール血症、及び低コレステロール血症からなる群から選択される疾患、障害又は状態を治療的又は予防的に処置する際の使用のための、請求項22又は23に記載のキット。
【請求項25】
疾患、障害又は状態が、急性冠症候群(ACS)、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、及び心筋梗塞からなる群から選択される、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
体重範囲が60〜120kgである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用又は請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
体重範囲が70〜100kgである、請求項26に記載の使用又は方法。
【請求項28】
体重範囲が80〜90kgである、請求項27に記載の使用又は方法。
【請求項29】
体重範囲が60〜120kgである、請求項14〜21のいずれか1項に記載の固定投薬量製剤。
【請求項30】
体重範囲が70〜100kgである、請求項29に記載の固定投薬量製剤。
【請求項31】
体重範囲が80〜90kgである、請求項30に記載の固定投薬量製剤。
【請求項32】
体重範囲が60〜120kgである、請求項22〜25のいずれか1項に記載のキット。
【請求項33】
体重範囲が70〜100kgである、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
体重範囲が80〜90kgである、請求項33に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポリポタンパク質製剤の固定用量(fixed dosing)に関する。より詳細には、本発明は、アポリポタンパク質の固定投薬量(fixed dosages)の送達、すなわち患者体重に依存しない量での送達に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
高密度リポタンパク質(HDL)は、高密度(>1.063g/mL)及び小さいサイズ(ストークス径=5〜17nm)を特徴とする、脂質及びタンパク質を含む不均一リポタンパク質のクラスである。様々なHDLサブクラスは、脂質、アポリポタンパク質、酵素及び脂質輸送タンパク質の量的及び質的な含有量が異なり、形状、密度、サイズ、電荷、及び抗原性の差異を生じる。アポリポタンパク質A−I(Apo−AI)は主なHDLであるが、他のアポリポタンパク質、例えばApo−AII及びApo−Vが存在していてもよい。
【0003】
疫学的及び臨床的研究は、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−C)のレベルと心血管疾患の危険性との間の逆相関を確立した(非特許文献1において概説される)。より詳細には、例えば再構成HDL(rHDL)製剤の形態でのアポリポタンパク質製剤の臨床投与は、最近の急性冠症候群(ACS)に罹患した高コレステロール血症患者に有益な効果をもたらすということが示されている。
【0004】
アポリポタンパク質製剤、例えばrHDL製剤の投薬量は、典型的には製剤を投与しようとする患者又は個体の体重に従って計算される。投薬量に対するこのアプローチは、患者の体重と、アポリポタンパク質製剤を分布及び排出するそれらの能力との間の直接的相関があるという仮説に基づく。従って、アポリポタンパク質製剤の体重に基づいた用量は、同じかまたは異なる体重の患者間での最小の変動性で各患者がアポリポタンパク質への同じ曝露を受けるということを生じるだろうと期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Assmann et al.、2004、Circulation 109 III−8
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本発明者らは、驚くべきことに、アポリポタンパク質製剤、例えば再構成HDL(rHDL)製剤の典型的な投薬量が、特に患者の体重に従って調整又は計算された場合に、製剤で投与されたアポリポタンパク質(例えばapoA−I)への曝露に関して患者間でかなりの変動性を示すということを発見した。より詳細には、患者の体重に基づいてかれらに投薬した場合にアポリポタンパク質への曝露の際の患者間変動性が、固定用量アプローチで観察された変動性よりも大きいということが本発明者らにより示された。
【0007】
本発明の目的は、先行技術のアポリポタンパク質製剤の1つ又はそれ以上の欠陥を軽減するか又は回避する投薬量でアポリポタンパク質製剤を提供することである。
【0008】
限定されないが心血管疾患を含む疾患又は状態の予防的及び/又は治療的処置において有効である投薬量でアポリポタンパク質製剤を提供することは本発明の好ましい目的である。
【0009】
アポリポタンパク質製剤のアポリポタンパク質成分に対する患者の曝露により測定して、比較的減少した患者間変動性を示す投薬量でアポリポタンパク質製剤を提供することは本発明の別の好ましい目的である。
【0010】
第一の局面において、本発明は、固定用量アポリポタンパク質製剤をヒトに投与して、それにより該ヒトにおける疾患、障害又は状態を処置する工程を含む、ヒトにおいて疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置する方法を提供する。
【0011】
第二の局面において、本発明は、ヒトにおいて疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置する際の使用のための固定投薬量アポリポタンパク質製剤を提供する。
【0012】
第三の局面において、本発明は、治療的に有効な固定用量でアポリポタンパク質又はそのフラグメントを含む固定投薬量アポリポタンパク質製剤を提供する。
【0013】
適切には、固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、いずれかの体重、又は一定体重範囲内のいずれかの体重のヒトへの投与の際に治療的に有効である。
【0014】
適切には、固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、体重調整した投与計画を用いて観察されるか又は体重調整した投与計画に関連するであろう患者間変動性と比較して、該製剤のアポリポタンパク質への曝露の際に比較的減少した患者間変動性を示す。
【0015】
第四の局面において、本発明は、治療的に有効な固定投薬量でアポリポタンパク質製剤を製造する工程を含む、アポリポタンパク質又はそのフラグメントを含む固定投薬量アポリポタンパク質製剤を製造する方法を提供する。
【0016】
適切には、本方法は、いずれかの体重、又は一定体重範囲内のいずれかの体重のヒトへの投与の際に治療的に有効であるアポリポタンパク質製剤の固定投薬量を決定する工程を含む。好ましくは、固定投薬量は、同じ体重範囲にわたる患者に投与される体重調整された投薬量を用いて観察されるか又は体重調整された投薬量に関連するであろう患者間変動性と比較して、その投薬量でのアポリポタンパク質製剤のアポリポタンパク質成分への一定体重範囲の患者にわたる曝露の際にアポリポタンパク質製剤が比較的減少した患者間変動性を示すとして決定される。
【0017】
第五の局面において、本発明は、ヒトにおける疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置するための、第四の局面の方法に従って製造されたアポリポタンパク質製剤を提供する。
【0018】
第六の局面において、本発明は、第二若しくは第三の局面に従う固定投薬量アポリポタンパク質製剤又は第四の局面に従って製造されたの1又はそれ以上の単位用量;及び1つ又はそれ以上の他のキット構成要素を含む、固定投薬量アポリポタンパク質キットを提供する。
【0019】
好ましくは、疾患、障害又は状態は、急性冠症候群(ACS)、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、及び心筋梗塞を含めて、心血管疾患、高コレステロール血症又は低コレステロール血症を含む。
【0020】
好ましい形態において、アポリポタンパク質はApo−A1又はそのフラグメントである。
【0021】
適切には、アポリポタンパク質製剤は、アポリポタンパク質、脂質及び場合により界面活性剤を含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)製剤である。
【0022】
本明細書全体を通して、文脈がそれ以外を必要としなければ、語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」は、示された整数又は整数の群を包含することを意味するが、いずれかの他の整数又は整数群排除することは意味しないと理解される。
【0023】
本明細書以後に詳細に記載される本発明の非限定的実施態様の理解の助けとなる以下の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】4週の用量投与の間の投薬計画(2時間注入期間のみ)による中央値シミュレート(median simulated)ApoA−I血漿濃度対時間プロフィールを示す。
【
図2】4週の用量投与の間の投薬計画(2時間注入期間のみ)による総ApoA−I血漿濃度予測分布対時間プロフィールを示す。線は中央値プロフィールを表し、網掛け領域は95%予測区間(PI)を表す。
【
図3】2時間の間注入された週1回投与計画の最後の用量についての外因性ApoA−I AUC
0-72の分布を示す。白線は応答中央値を表し、暗青色網掛け領域は四分位間範囲を表し、そして淡青色網掛け領域は100シミュレーションについての95%PIを表す。外側の赤い実線の横線は、右パネルの等価な固定用量(3.6g)と比較した、左パネルにおける40mg/kgの用量についての曝露帯の境界幅を示す。内側の赤い実線は、それらの用量についての曝露中央値と交わる。灰色の破線は、左パネルにおける70mg/kgの用量及び右パネルにおける等価固定用量(6.3g)についての比較曝露を示す。
【
図4】2時間の間注入された週1回投与計画の最後の用量についての外因性ApoA−I AUC
0-168の分布を示す。白線は応答中央値を表し、暗青色網掛け領域は四分位間範囲を表し、そして淡青色網掛け領域は100シミュレーションについての95%PIを表す。外側の赤い実線の横線は、右パネルの等価な固定用量(3.6g)と比較した、左パネルにおける40mg/kgの用量についての曝露帯の境界幅を示す。内側の赤い実線は、それらの用量についての曝露中央値と交わる。灰色の破線は、左パネルにおける70mg/kgの用量及び右パネルにおける等価固定用量(6.3g)についての比較曝露を示す。
【
図5】2時間の間注入された週1回投与計画の最後の用量についての外因性ApoA−I C
maxの分布を示す。白線は応答中央値を表し、暗青色網掛け領域は四分位間範囲を表し、そして淡青色網掛け領域は100シミュレーションについての95%PIを表す。外側の赤い実線の横線は、右パネルの等価な固定用量(3.6g)と比較した、左パネルにおける40mg/kgの用量についての曝露帯の境界幅を示す。内側の赤い実線は、それらの用量についての曝露中央値と交わる。灰色の破線は、左パネルにおける70mg/kgの用量及び右パネルにおける等価固定用量(6.3g)についての比較曝露を示す。
【
図6】
図6は、外因性ApoA−I AUC
0-72(2時間の間注入された週1回投与計画の最後の用量について)の間、固定用量と体重用量との間の関係示す。白線は応答中央値を表し、暗青色網掛け領域は四分位間範囲を表し、そして淡青色網掛け領域は100シミュレーションについての95%PIを表す。
【
図7】外因性ApoA−I AUC
0-168(2時間の間注入された週1回投与計画の最後の用量について)と体重との間の関係を示す。白線は応答中央値を表し、暗青色網掛け領域は四分位間範囲を表し、そして淡青色網掛け領域は100シミュレーションについての95%PIを表す。
【
図8】外因性ApoA−I C
max(2時間の間注入された週1回投与計画の最後の用量について)と体重との間の関係を示す。白線は応答中央値を表し、暗青色網掛け領域は四分位間範囲を表し、そして淡青色網掛け領域は100シミュレーションについての95%PIを表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本発明は、アポリポタンパク質製剤(例えばrHDL)についての固定用量投与計画が、患者の体重から独立して、一定範囲の患者体重にわたって、体重調整した用量を課したものよりも少ない影響をapoA−I曝露に対して有するという予期せぬ発見に少なくとも部分的に起因する。従って、体重調整された投与家計画と比較して、特に極端なヒト患者体重範囲において、固定用量投与計画に関連してapo−AIへの曝露においてより少ない患者間変動性がある。
【0026】
1つの好ましい局面において、本発明は、いずれかの体重、又は一定体重範囲内のいずれかの体重のヒトへの投与の際に治療的に有効である投与量で固定投薬量アポリポタンパク質製剤を提供する。
【0027】
別の好ましい局面において、本発明は、いずれかの体重、又は一定体重範囲内のいずれかの体重のヒトへの投与の際に治療的に有効である投与量でアポリポタンパク質製剤を製造する工程を含む、固定投薬量アポリポタンパク質製剤を製造する方法を提供する。
【0028】
当然のことながら、本発明は、上記アポリポタンパク質製剤による治療に応答性の1つ又はそれ以上の疾患、障害又は状態を処置する際に治療的有効性を有するアポリポタンパク質製剤に関する。
【0029】
好ましくは、アポリポタンパク質はApo−A1又はそのフラグメントである。本発明のアポリポタンパク質製剤は、脂質と共に製剤化されても(例えばrHDL)、脂質を用いずに(例えば、脱脂アポリポタンパク質)製剤化されてもよい。
【0030】
特定の実施態様において、アポリポタンパク質製剤はrHDL製剤である。本明細書で使用される「再構成HDL(rHDL)」製剤は、典型的に血漿中に存在する高密度リポタンパク質(HDL)と機能的に同様であるか、類似するか、相当するか、又は高密度リポタンパク質(HDL)を模倣したいずれかの人工的に製造されたアポリポタンパク質製剤又は組成物であり得る。本明細書で使用されるrHDL製剤はリポソーム製剤ではない。rHDL製剤は、それらの範囲内に「HDL模倣物」及び「合成HDL粒子」を含む。適切には、rHDL製剤はアポリポタンパク質、脂質及び場合により界面活性剤を含む。
【0031】
限定されないがrHDL製剤のようなアポリポタンパク質製剤は、コレステロールをさらに含み得る。アポリポタンパク質製剤は有機溶媒を使用して製造され得、これらはいくつかの場合において、米国特許第5,652,339号において記載されるように、製剤を製造する場合に脂質成分(例えばホスファチジルコリン)を溶解するために使用される。しかし、アポリポタンパク質製剤は有機溶媒を存在させずに製造されることが好ましい。
【0032】
アポリポタンパク質は、天然に存在するHDL又は再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の機能的な生物学的に活性な成分であるいずれかのアポリポタンパク質であり得る。典型的には、アポリポタンパク質は、血漿由来又は組換えのいずれかのアポリポタンパク質であり、例えばApo−AI、Apo−AII若しくはApo−AV、pro−apo−A1又は変異体、例えばApo−AI Milanoである。好ましくは、アポリポタンパク質はApo−AIである。アポリポタンパク質の生物学的に活性なフラグメントも考慮される。フラグメントは天然に存在していても、化学合成的でも組換えでもよい。例としてのみ、Apo−AIの生物学的に活性なフラグメントは、好ましくは、rHDL製剤で製剤化された場合のApo−AIのレシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)刺激活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%若しくは95〜100%を有し、又は100%より高くさえある。
【0033】
適切には、アポリポタンパク質は、約5〜100g/L、好ましくは10〜50g/L又はより好ましくは25〜45g/Lの濃度である。これには、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95及び100g/L、並びにこれらの量の間の任意の範囲が含まれる。他の実施態様において、アポリポタンパク質は約5〜20g/L、例えば約8〜12g/Lの濃度であり得る。
【0034】
脂質は、天然に存在するHDL又は再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の成分であるいずれかの脂質であり得る。このような脂質としては、リン脂質、コレステロール、コレステロール−エステル、脂肪酸、及び/又はトリグリセリドが挙げられる。好ましくは、脂質はリン脂質である。リン脂質の非限定的な例としては、ホスファチジルコリン(PC)(レシチン)、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン(PE)(ケファリン)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)、スフィンゴシン−1リン酸又はその天然若しくは合成誘導体が挙げられる。天然誘導体としては、卵PC、卵PG、大豆PC、水素添加大豆PC、大豆PG、脳PS、スフィンゴ脂質、脳SM、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、ケファリン、カルジオリピン、及びリン酸ジセチルが挙げられる。合成誘導体としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジデカノイルホスファチジルコリン(DDPC)、ジエルコイル(dierucoyl)ホスファチジルコリン(DEPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウリルホスファチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、パルミトイルステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSM)及びジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSM)が挙げられる。リン脂質は上記のリン脂質のいずれかの誘導体又は類縁体でもよい。
【0035】
他の特定の実施態様において、脂質は、負に荷電したリン脂質、例えばホスファチジルグリセロール(例えば、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(l−グリセロール))と組み合わせたスフィンゴミエリンであるか、又はそれらを含む。スフィンゴミエリンとホスファチジルグリセロール(特に、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(l−グリセロール))との組み合わせは、脂質としての使用について具体的に構想される。これらの実施態様において、スフィンゴミエリン及びホスファチジルグリセロールは、いずれかの適切な比、例えば90:10〜99:1(質量:質量)、典型的には95:5〜98:2、そして最も典型的には97:3の比で存在し得る。
【0036】
好ましくは、リン脂質は、単独又は1つ若しくはそれ以上の他のリン脂質と組み合わせたホスファチジルコリンであるか、又はそれらを含む。別のリン脂質の例はスフィンゴミエリンである。いくつかの実施態様において、アポリポタンパク質製剤は界面活性剤を含み得る。
【0037】
排他的ではないが典型的には、脂質は10〜100g/L又は好ましくは30〜60g/Lの濃度で存在し得る。
【0038】
界面活性剤は、胆汁酸及びその塩を含めて、アポリポタンパク質(例えば、rHDL)製剤における使用に適したいずれかのイオン性(例えば、カチオン性、アニオン性、双性イオン性)界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であり得る。イオン性界面活性剤としては、胆汁酸及びその塩、ポリソルベート(例えばPS80)、CHAPS、CHAPSO、セチルトリメチル−アンモニウムブロミド、ラウロイルサルコシン、tert−オクチルフェニルプロパンスルホン酸及び4’−アミノ−7−ベンズアミド−タウロコール酸が挙げられ得る。
【0039】
胆汁酸は、典型的にはジヒドロキシル化又はトリヒドロキシル化された24炭素のステロイド類であり、これらとしては、コール酸、デオキシコール酸 ケノデオキシコール酸又はウルソデオキシコール酸が挙げられる。好ましくは、界面活性剤は、コール酸塩、デオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸塩又はウルソデオキシコール酸塩のような胆汁酸塩である。特に好ましい界面活性剤はコール酸ナトリウムである。
【0040】
本明細書の以前に記載されるように、固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、いずれかの体重、又は一定体重範囲内のいずれかの体重のヒト患者への投与の際に治療的に有効である投薬量である。従って、アポリポタンパク質製剤投薬量は、典型的に「体重調整用量」で起こるようにヒトの特定の体重に従って計算、決定又は選択されない。
【0041】
固定投薬量アポリポタンパク質製剤はむしろ、いずれかの体重、又は一定体重範囲内のいずれかの体重のヒト患者に投与される際に、アポリポタンパク質製剤のアポリポタンパク質成分への曝露に関して比較的減少した患者間変動性を示すであろう投薬量として決定される。比較的減少した患者間変動性は、患者集団の体重調整した用量で観察されるか又は体重調整した用量に関連する患者間変動性と比較される。
【0042】
曝露の変動性は、固定投薬量アポリポタンパク質製剤の投与後にアポリポタンパク質への患者の曝露の変動に関して表され得るか又は測定され得る。好ましくは、変動性は、固定投薬量の患者と同じ体重範囲にわたるヒト患者に投与された体重調整された投薬量について生じるであろう変動性と比較して、一定体重範囲にわたるヒト患者に固定投薬量アポリポタンパク質製剤が投与された場合に生じるであろう変動性である。いくつかの実施態様において、アポリポタンパク質への曝露は、平均曝露(例えば、曝露平均又は中央値)、総曝露(例えば、曝露時間にわたって積分された量)又は最大曝露レベル(例えばC
max)として測定され得る。一般的には、体重又は体重範囲は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190若しくは200kg、又はこれらの値の間のいずれかの範囲である。好ましくは、体重又は体重範囲は、20〜200kg、20〜60kg、40〜160kg、50〜80kg、60〜140kg、70〜80kg、80〜120kg、100〜180kg又は120〜200kgである。
【0043】
適切には、変動性は体重調整された用量で生じる変動性の100%若しくは好ましくは99%、98%、97%、96% 95%、94%、93%、92%、91%未満、又は90%、85%若しくは80%未満である。変動性は、当該分野で公知の統計的表現で計算されそして表され得、これらとしては、限定されないが、変動性の係数として(例えば%CV)、標準偏差、標準誤差などが挙げられる。
【0044】
著しく異なる体重の患者への固定投薬量アポリポタンパク質製剤の投与にもかかわらず、アポリポタンパク質への患者の曝露は驚くほど均一である。従って、固定投薬量アポリポタンパク質製剤の治療有効量は体重調整された投薬量と比較して実質的に低下も減少もされないだろうということが提案される。
【0045】
例のみとして、本発明者らは、60〜120kgの体重範囲内の患者への固定投薬量アポリポタンパク質製剤の投与の際にアポリポタンパク質への総曝露に差異が無いということを示した。さらに、アポリポタンパク質についてのC
maxは、60〜120kgの体重範囲にわたって平均16%減少した。
【0046】
相対的に、同じアポリポタンパク質製剤を使用した体重調整された投与計画については、60kgから120kgへの体重の倍増は、アポリポタンパク質の投薬量の倍増を必要とし、そしてapoA−I曝露を増加させた。
【0047】
固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、毎日、週に2回、週に1回、2週間毎、又は毎月を含むいずれかの適切な頻度で複数回用量で投与され得る。固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、当該分野で公知のいずれかの投与経路、例えば静脈内投与(例えば、ボーラスとして又は60、90、120若しくは180分にわたるような期間にわたる持続注入により)、筋内、腹腔内、冠動脈内への直接的なものを含む動脈内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、又は吸入の経路により投与され得る。典型的には、固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、静脈内注入又は注射のように非経口投与される。
【0048】
好ましい固定投薬量としては、アポリポタンパク質0.1〜15g、0.5〜12g、1〜10g、2〜9g、3〜8g、4〜7g又は5〜6gが挙げられる。特に好ましい固定投薬量としては、アポリポタンパク質1〜2g、3〜4g、5〜6g又は6〜7gが挙げられる。特定の固定投薬量の非限定的な例としては、アポリポタンパク質0.25g、0.5g、1g、1.7g、2g、3.4g、4g、5.1g、6g、6.8g及び8gが挙げられる。
【0049】
使用され得る固定投薬量投与計画の非限定的な具体例としては、週に1回90分間にわたる静脈内注入による0.25g、0.5g、1g、1.7g、2g、3.4g、4g、5.1g、6g、6.8g若しくは8g、週に1回120分にわたる静脈内注入によるアポリポタンパク質0.25g、0.5g、1g、1.7g、2g、3.4g、4g、5.1g、6g、6.8g若しくは8g、又は週に2回の90分若しくは120分にわたる静脈内注入によるアポリポタンパク質0.25g、0.5g、1g、1.7g、2g、3.4g、4g、5.1g、6g、6.8g若しくは8gが挙げられる。
【0050】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書において開示されるアポリポタンパク質製剤をヒトに投与する工程を含む、ヒトにおいて疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置する方法を提供する。
【0051】
適切には、固定投薬量アポリポタンパク質製剤の予防的又は治療的投与に応答性の疾患、障害又は状態としては、限定されないが、心血管疾患(例えば急性冠症候群(ACS)、アテローム性動脈硬化症、不安定狭心症、及び心筋梗塞)のような疾患、障害又は状態、ACSを生じやすくする糖尿病、脳卒中、腎機能不全、又は心筋梗塞のような疾患、障害又は状態、高コレステロール血症(例えば、上昇した血清コレステロール又は上昇したLDLコレステロール)、及びタンジール病の症状を示すような高密度リポタンパク質(HDL)の減少したレベルから生じる低コレステロール血症が挙げられる。
【0052】
本発明はまた、本明細書に開示される固定投薬量アポリポタンパク質製剤の1又はそれ以上の単位用量及び1つ又はそれ以上の他のキット構成要素を含む、固定投薬量アポリポタンパク質キットを提供する。
【0053】
適切には、キットは本明細書以前に記載されるようなヒトにおける疾患、障害又は状態を予防的又は治療的に処置するためのものである。
【0054】
1つ又はそれ以上の他のキット構成要素の非限定的な例としては、使用のための指示書;単位用量のそれぞれを含有するバイアル、コンテナ又は他の貯蔵容器;送達デバイス、例えば、針、カテーテル、シリンジ、管状部材など;並びに/又はキットを安全かつ都合よく貯蔵及び/若しくは輸送するために適した包装材料が挙げられる。好ましくは、使用のための指示書はラベル又は添付文書であり、ここでラベル又は添付文書は、アポリポタンパク質製剤がそれを必要とするヒト被験体へ固定用量を投与することにより心血管疾患のような疾患又は状態を処置するために使用され得るということを示す。
【0055】
「添付文書」は、アポリポタンパク質製剤の市販パッケージに含まれる指示書を指し、このようなアポリポタンパク質製剤の使用に関する適応症、用法、投薬量、投与、禁忌及び/又は警告についての情報を含む。
【0056】
本明細書における目的のために、「バイアル」はアポリポタンパク質製剤を保持する容器を指す。バイアルはシリンジにより穿孔可能なストッパにより密封され得る。一般的に、バイアルはガラス材料から形成される。従って、バイアルは好ましくはバイアルあたり0.25g、0.5g、1g、2g、2.5g、3g、3.5g、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、8g又は10gのタンパク質含有量を有する凍結乾燥されたrHDL製剤を含む。より好ましくは、アポリポタンパク質含有量はバイアルあたり0.5g、1g、2g、4g、6g、8g又は10gのいずれかである。
【0057】
バイアル中のアポリポタンパク質製剤は、液体、凍結乾燥、凍結などを含む様々な状態であり得る。固定投薬量アポリポタンパク質製剤は好ましくは液体として安定である。安定性は当該分野で公知のいずれかの手段により測定され得るが、濁度は好ましい基準である。約10、15、20、又は30NTU未満の濁度レベルは、一般的に安定な固定投薬量アポリポタンパク質製剤とみなされ得る。濁度測定は、室温又は37℃のような貯蔵温度で0時間(hr)、2時間、4時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、72時間、7日及び14日のような期間にわたって固定投薬量アポリポタンパク質製剤をインキュベートすることにより取られ(taken)得る。好ましくは、固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、それを14日間室温で貯蔵し、約15NTU未満の濁度を示した場合に液体として安定であるとみなされる。
【0058】
キットは、医療従事者による固定投薬量アポリポタンパク質製剤の投与、又は患者若しくは介護人による自己投与を容易にし得る。
【0059】
以前に記載されるように、本明細書に開示される固定投薬量アポリポタンパク質製剤は、いずれかのアポリポタンパク質製剤であり得る。好ましくは、アポリポタンパク質製剤は、アポリポタンパク質、脂質及び場合により界面活性剤を含むrHDL製剤である。従って、固定投薬量アポリポタンパク質又はrHDL製剤は、一般的には、通常は「体重調整」用量により投与されるであろういずれかのこのような製剤に適用し得る。rHDL製剤の非限定的な例としては、WO2003/096983;US20040266662;WO2005/041866;WO2006/100567;WO06/20069240;及びWO2010/093918、WO2012/000048及びWO2012/109162に記載されるものが挙げられる。
【0060】
1つの特定の非限定的な例は、Apo−A1、並びにスフィンゴミエリンを含む1つ又はそれ以上のリン脂質及び1つ又はそれ以上の負に荷電したリン脂質、例えばホスファチジルイノシトール及びホスファチジルグリセロールを含むrHDL製剤である。
【0061】
いくつかの実施態様において、界面活性剤は固定投薬量rHDL製剤に存在しない。他の実施態様において、界面活性剤は固定投薬量rHDL製剤に存在する。1つの好ましい実施態様において、固定投薬量rHDL製剤は、毒性でないレベルで、又は少なくとも比較的低い毒性を示すレベルで界面活性剤を含む。この点についてWO2012/000048が参照され、これはこの実施態様に従うrHDL製剤に関する詳細な説明を提供する。
【0062】
本発明に至る作業において、いくつかのrHDL製剤は、異常な又は低下した肝機能により証明されるような、rHDL製剤のヒトへの投与の際に肝毒性を示すということが示された。異常であるか又は低下し得る肝機能の非限定的な例としては、上昇したアラニンアミノトランスフェラーゼ活性(ALT)、上昇したアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性及び/又は上昇したビリルビンレベルが挙げられる。肝毒性を引き起こしたレベルでのrHDL製剤の例は、Tardif et al.、2007、JAMA−Exp.297 E1に記載される。好ましくは、固定投薬量アポリポタンパク質製剤は肝毒性を示さない。
【0063】
肝臓毒性は様々なインビトロ及びインビボモデルにより評価され得る。インビトロモデルの一例はHEP−G2細胞を使用する。これはHEP−G2細胞を対数期に増殖させることを含む。次いで細胞を培地から取り出し、そしてPBSで洗浄した後トリプシン処理し、そして培地(90%DMEM、10%不活化FCS、1%非必須アミノ酸、1%Pen/Strep)10mLに再懸濁する。細胞増殖及び生存能力は、Neubauer血球計算器及びトリパンブルー染色を使用してモニタリングされる。続いて10x10
4C/mLを含有する100μLのアリコートを96ウェル平底プレートに播種し、そして終夜37℃、5%CO
2、95%H
2Oにてインキュベートした。試験品(例えばrHDL製剤)を含有するサンプル(700μL)を、培地を加えることにより調製した。ウェルの第一列からの培地を除去し、そして試験品溶液200μLを加えた。連続1:2希釈の組をプレート上にそろえた。次いでこれらのプレートを72時間37℃、5%CO
2、95%H
2Oにてインキュベートした。この後、細胞生存能力を決定した。これは、3xニュートラルレッド溶液(100mL PBS中70mgニュートラルレッド)50μLを各ウェルに加えることにより行われ得る。これらのプレートを2時間37℃、5%CO
2、95%H
2Oにてインキュベートし、そしてウェルを200μL PBSで1回洗浄した。この後、エタノール100μLを各プレートに加え、そしてプレートを20分間震盪させた後、540nmで読み取った。
【0064】
インビボ肝毒性(hepatoxicity)モデルの例は、意識下(conscious)ウサギモデルである。このモデルは、拘束デバイス(ウサギホルダー)に置かれ、そしてそれらの耳静脈中に静脈内(i.v.)カテーテルを挿入されたウサギを使用する。試験品を40分静脈内注入として投与する。血液サンプルを耳動脈から採取し、そして血清にしてストレプトキナーゼ−血漿(5%)バイアル中に集める。血液サンプルを処理して血清にして−20℃で保存し、そして血漿にして−80℃で保存する。次いでサンプルは、市販の酵素光度試験キット(Greiner Biochemica)を使用してALT及びAST活性のレベルを評価され得る。ヒトApo A−Iレベルは比濁法アッセイを使用して決定され得る。好ましくは、固定投薬量アポリポタンパク質製剤中に存在する場合の界面活性剤レベルは、肝毒性を示すレベルの約5〜35%である。この範囲には、例えば5%、10%、15%、20%、25%、30%及び35%が含まれる。より好ましくは、界面活性剤のレベルは、肝毒性を示すレベルの約5〜20%である。有利には、このレベルは、肝毒性を示すレベルの約5〜10%である。好ましくは、これらのレベルは、界面活性剤の肝毒性を示す最小又は閾値レベルを単位として表される。
【0065】
例として、肝毒性を引き起こすか、生じるか、又は少なくとも肝毒性と関連することを示された界面活性剤のレベルは、0.3g/g Apo−AI又は6g/L rHDL製剤(20g/L Apo−AIにて)である。従って、界面活性剤のこのレベルの5〜10%は0.015〜0.03g/g Apo−AI又は0.5〜0.9g/L rHDL製剤(30g/L Apo−AIにて)である。
【0066】
界面活性の「レベル」は、界面活性剤の絶対量、界面活性剤の濃度(例えば、rHDL製剤の単位体積あたりの質量)及び/又はrHDL製剤の成分の別の量若しくは濃度と比較した界面活性剤の量若しくは濃度の比であり得る。例のみとして、界面活性剤のレベルは、rHDL製剤中に存在するアポリポタンパク質(例えばApo−AI)の総質量に関して表され得る。
【0067】
30g/Lアポリポタンパク質を含むrHDL製剤の約0.45g/L以上の界面活性剤濃度は、安定性及び非毒性の点から最適である。安定性は、当該分野で公知のずれかの手段により有利に測定され得るが、rHDL製剤の濁度が好ましい基準である。
【0068】
さらに好ましい実施態様において、固定投薬量rHDL製剤は、肝毒性を引き起こさないレベルで脂質を含む。適切には、脂質のレベルは、肝毒性を引き起こすか又は肝毒性と関連するレベルの約20〜70%である。特定の実施態様において、脂質のレベルは、肝毒性を引き起こすか又は肝毒性と関連があるレベルの好ましくは約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%又は65%、及びこれらの量の間のいずれかの範囲である。好ましくは、これらのレベルは、肝毒性を示す脂質の最小レベル又は閾値レベルを単位として表される。
【0069】
例として、本発明に至る作業において示された、肝毒性を引き起こすか、生じるか、又は少なくとも肝毒性と関連がある脂質レベルは84g/Lである。従って、脂質は好ましくは約30〜60g/Lの濃度である。これには30、35、40、45、50、55及び60g/L、並びにこれらの量の間のいずれかの範囲が含まれる。脂質の特に有利な濃度は約30〜50g/Lであり、又は特定の実施態様では約34若しくは47g/Lである。
【0070】
脂質の「レベル」は、脂質の絶対量、脂質の濃度(例えば、rHDL製剤の単位体積あたりの質量)及び/又は固定投薬量アポリポタンパク質製剤の成分の別の量又は濃度と比較した脂質の量又は濃度の比であり得る。例のみとして、脂質のレベルは、固定投薬量rHDL製剤中に存在するアポリポタンパク質(例えばApo−AI)のモル比を単位として表される。
【0071】
1つの好ましい実施態様において、アポリポタンパク質:脂質のモル比は、1:20〜1:100の範囲である。この範囲には、1:30、1:40、1:50、1:60、1:70、1:80及び1:90のようなモル比が含まれる。より好ましくは、アポリポタンパク質:脂質のモル比は1:40〜1:75の範囲である。アポリポタンパク質の特に有利な比は約1:40又は1:55である。
【0072】
他の実施態様において、アポリポタンパク質:脂質のモル比は、約1:80〜約1:120の範囲である。例えば、この比は1:100〜1:115、又は1:105〜1:110であり得る。これらの実施態様において、モル比は例えば1:80〜1:90、1:90〜1:100、又は1:100〜1:110であり得る。
【0073】
適切には、本明細書に開示される固定投薬量アポリポタンパク質製剤は安定剤をさらに含む。特に、安定剤は凍結乾燥の間のrHDL製剤の安定性を維持する。適切には、安定剤は糖又は糖アルコールのような炭水化物である。適切な糖又は糖アルコールの例は、フルクトース、トレハロース、マンニトール及びソルビトールである。好ましくは、安定剤はスクロースのような二糖類である。スクロースの好ましい濃度は固定投薬量アポリポタンパク質製剤の約10〜85g/L(約1.0〜8.5%質量/体積に相当)である。好ましくは、スクロースの濃度は約46〜48g/L(約4.6〜4.8%質量/体積に相当)又は約75g/L(約7.5%質量/体積に相当)であり、これはCSL111のようなrHDL製剤と比較して比較的減少している。この比較的減少したスクロースが本発明のrHDL製剤のより速い注入速度を可能にし得るということが提案される。他の安定剤は、限定されないが、アミノ酸(例えば、グリシン、プロリン)、抗酸化剤、乳化剤、界面活性剤(surfactants)、キレート剤、ゼラチン、合成油、多価アルコール、アルギネート又はいずれかの薬学的に許容しうる担体及び/若しくは添加剤であり得るか又はこれらを含み得る。これに関して、例として「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」、Frokjaer et al.、Taylor &;Francis(2000)、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、3rd edition、Kibbe et al.、Pharmaceutical Press(2000)及び国際公開WO2009/025754が参照される。
【0074】
界面活性剤の減少又は除去は、例えばろ過、疎水性吸着又は疎水性相互作用クロマトグラフィ、透析、イオン交換吸着及びイオン交換クロマトグラフィを含む当該分野で公知のいずれかの手段により行われ得る。
【0075】
いくつかの実施態様において、非極性ポリスチレン樹脂が界面活性剤レベルを減少させるために適切であり得る。このような樹脂は好ましくは架橋コポリマー(例えば、架橋したスチレンとジビニルベンゼンのコポリマー)の形態である。非限定的な例としては、Amberlite XAD−2及びBio Beads SMが挙げられる。
【0076】
ろ過としては、限定されないが、当該分野でよく理解されているような、ゲルろ過、ゲル浸透、ダイアフィルトレーション及び限外ろ過が挙げられる。ゲル浸透の非限定的な例は、Sephadex樹脂のような多孔性架橋デキストランを利用し得る。
【0077】
大規模製造に特に適している特定の好ましい実施態様において、界面活性剤レベルはダイアフィルトレーションにより減少される。
【0078】
本発明の好ましい実施態様が十分に理解され得、そして効果が実現され得るように、以下の非限定的な実施例が参照される。
【実施例】
【0079】
導入
再構成高密度リポタンパク質(HDL)は、HDLの主要タンパク質成分である精製されたヒトアポリポタンパク質A−I(ApoA−I)からなる。低い血漿HDLは、先進国における主な死亡原因の1つである冠動脈疾患の増加した危険性と関連がある。結果として、HDLはアテローム性動脈硬化症の保護になり得るということが仮定される。HDLがそのアテローム保護(atheroprotective)効果を発揮する機構は複雑で完全に理解されていないが、末梢細胞(動脈細胞を含む)から肝臓へのコレステロールの流出に関与する様々な段階において作用すると考えられている。
【0080】
この実施例において記載されるrHDL製剤は、内在性HDLを模倣した新規な治療剤である。概念実証は、ERASE試験(183人の患者における短期CSL111注入のフェーズ2a研究)において再構成HDLのより古い製剤CSL111について実証された。しかし、CSL111の開発は肝毒性のために中止された(Tardiff et al.、2010(前出)及びWO2012/000048にもより詳細に記載される)。
【0081】
本実施例において記載されるrHDL製剤は、HDLの主要タンパク質成分である精製ヒトアポリポタンパク質A−1(ApoA−I)から構成される(本明細書以前に記載され、そしてWO2012/000048にもより詳細に記載される)。
【0082】
主要目的は、モデルベースのアプローチ及びモンテカルロシミュレーションを使用してrHDL製剤についての適切な投薬戦略(体重調整又は固定用量)の正当化を提供することであった。
【0083】
方法
全体的アプローチ
モンテカルロシミュレーションは、この解析において開発されたApoA−Iについての暫定集団(interim population)PKモデルを使用して行われた。シミュレーションは、ApoA−I生体内分布(disposition)に影響を及ぼすと決定された重要な共変量を含む薬物動態(PK)モデルの全ての構成要素を使用した。推定集団平均(標準値)及び被験体間変動性値を使用して、暫定PKパラメーターについての分布を規定し、そしてシミュレーションはそれらの分布からの無作為サンプリングを使用した。このサンプリングプロセスにより記載されるランダムネスは、モデルパラメーターにおける被験体間変動性を反映していた。
【0084】
無作為に生成されたPKパラメーターを使用して、シミュレーションにおいて各仮想患者についてのApoA−Iの血漿濃度をシミュレートした。PKモデルからの残余誤差の見積もりを使用して、測定誤差を濃度予測に導入した。(今や被験体間変動性及び測定誤差の両方を組み入れた)濃度予測を使用して、選択されたApoA−I曝露測定基準を各仮想患者について計算した。
【0085】
結果を図及び表形態でまとめる。
【0086】
シミュレーション詳細
ApoA−I曝露を以下の投薬計画の各々について別々にシミュレートした:
・90分及び120分にわたる静脈内注入(IVI)による週に1回の40、70及び100mg/kg
・90分にわたるIVIによる週に1回の1.7、3.4及び5.1g並びに120分にわたるIVIによる週に1回の1.7、3.4、5.1及び6.8g
・90分及び120分にわたるIVIによる週に2回の1.7、3.4及び5.1g
投薬は4週間の間継続されると仮定した。週に2回の投与計画については、週の2回目の用量は最初の用量投与の開始の72時間後に投与された。
【0087】
体重、クレアチニンクリアランス(CLCR)及び性別はApoA−Iについての被験体間変動性の重要な源として認識されたので、これらの患者共変量の臨床的に関連する範囲をシミュレーションに含めた:
・ApoA−Iについて体重:60、80、100及び120kg
・CLCR:50、80及び140ml/分
・年齢:20、60及び80歳
・等しい比率の男性及び女性。
【0088】
各シミュレーションセットは、各患者共変量及び投与計画の組み合わせを含んでいた。従って、ApoA−Iシミュレーションセットには456の仮想被験体(すなわち、4体重値×3CLCR値×2性別×19投与計画)があった。100シミュレーションを行った。
【0089】
血漿濃度測定は、週に1回の投薬計画の最初の用量の開始から0、1、2、4、8、12、24、48、72、96、120及び168時間、並びに週に2回の投薬計画の最初の用量の開始から0、1、1.5、2、3、4、6、8、12、18、24、36、48、72、73、73.5、74、75、76、78、80、90、96、108、120、144及び168時間に起こるように割り当てられる。サンプリングを投薬の第1週の間及び第四週の間に行った。
【0090】
目的の終点は、総血漿濃度対時間のプロフィール及び外因性最大血漿濃度(C
max)、各投薬計画後0から72時間までの曲線下面積(AUC
0-72)及び0から168時間までの曲線下面積(AUC
0-168)であった。C
max及びAUC
0-72は最初の用量及び最後の用量について計算したが、AUC
0-168は投薬の最初の週及び最後の週について計算した。曝露決定のための外因性血漿濃度を、シミュレートしたベースライン血漿濃度を各時点でのシミュレートした総血漿濃度から差し引くことにより計算した。
【0091】
結果
投薬計画により推定されたApoA−I曝露
ApoA−I血漿濃度対時間プロフィールの推定中央値(
図1)及び分布(
図2)を投薬計画により示す(2時間注入期間が示される)。90kgの体重中央値を考慮すると、40mg/kg用量についての曝露中央値は3.6g用量を示し、そして3.4g固定用量に匹敵する(
図1を参照のこと)。同様に、70mg/kg用量についての曝露中央値は6.3gを示し、そして6.8g固定用量にほぼ匹敵する。
【0092】
表1は、投与計画による用量投与の第四週の間の推定ApoA−I曝露を要約する。40mg/kg及び3.4g投薬計画について並びに70mg/kg及び6.8g投薬計画についての同様の平均曝露にもかかわらず、固定用量週1回投与計画と比較して、注入期間にかかわらず、体重調整投薬計画に関連して(曝露測定基準で%CVにより測定して)約8〜10%大きい変動性があった。
図3〜5は、週に1回2時間にわたって注入された、同等の固定用量(それぞれ3.6g及び6.3g)と比較して、40mg/kg及び70mg/kg体重調整投薬計画についてやや広い曝露帯を示す。
【0093】
投薬計画によるApoA−I曝露に対する体重の効果
固定用量投与計画については、体重は総曝露(AUC)に影響しなかったが、C
maxは体重が60kgから120kgに倍増するのに伴って平均16%減少した(
図6〜
図8;右パネル)。これに対して、体重調整投薬計画については、60kgから120kgへの体重の倍増は用量の倍増を生じ、そして線形薬物動態理論と一致して、曝露はそれに従って増加すると推測される(
図6〜
図8;左パネル)。従って、体重は体重調整用量により及ぼされるよりもApoA−I曝露に対して小さい影響を有し、これは体重範囲の極限においてより明白であった。
【0094】
考察
シミュレーション解析の結果は、体重が、体重調整用量により及ぼされるよりも小さい影響をApoA−I曝露に対して有していたということを示唆する。従って、体重範囲の極限において体重調整投与計画と比較して、固定用量投与計画に関連する曝露ではより少ない変動性が期待される。
【0095】
本明細書に記載されるモデリング及びシミュレーション結果は、広い体重範囲にわたってApoA−I曝露における変動性を減らすためのrHDL製剤の固定用量投与計画の投与を支持する。
【0096】
本明細書全体を通して、目的は、本発明をいずれか1つの実施態様又は特定の特徴の収集物に限定することなく、本発明の好ましい実施態様を記載することである。様々な変更及び改変が、本発明から逸脱することなく、記載され説明された実施態様に対して為され得る。
【0097】
本明細書において言及される各特許及び特定の書類の開示、コンピュータプログラム並びにアルゴリズムは参照によりその全体が加入される。
【0098】
【表1】