(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生体組織を切除するために2つ以上の異なるRFアブレーション周波数を有する電磁放射線エネルギーを順次に又は同時に放射するアブレーションアンテナを備える電気外科手術用アブレーション装置であって、
前記アブレーションアンテナは、第1及び第2の共振素子を含む少なくとも1つのアンテナ針を有しており、該アンテナ針は、第1及び第2のRFアブレーション周波数でそれぞれ共振し、
第1の共振素子は、内部導体と外部RF遮蔽体とを有する同軸導体構造の形態で実現されており、
第2の共振素子は、前記同軸導体構造の周りに巻回された螺旋状コイルの形態で実現されており、
第2の共振素子の前記螺旋状コイルの基端は、第1の共振素子の前記内部導体に接続されており、第2の共振素子の前記螺旋状コイルの先端は、第1の共振素子から電気絶縁されている、
電気外科手術用アブレーション装置。
生体組織を切除するために2つ以上の異なるRFアブレーション周波数を有する電磁放射線エネルギーを順次に又は同時に放射するアブレーションアンテナを備える電気外科手術用アブレーション装置であって、
前記アブレーションアンテナは、第1及び第2の共振素子を含む少なくとも1つのアンテナ針を有しており、該アンテナ針は、第1及び第2のRFアブレーション周波数でそれぞれ共振し、
第1及び第2の共振素子は、それぞれ、長手方向に電気絶縁するキャリア上にストリップラインの形態で適用される、
電気外科手術用アブレーション装置。
第1及び第2の共振素子は、互いに平行に延びており、第1及び第2の共振素子の基端部が、互いに電気接続されており、第1及び第2の共振素子の先端部が、互いに電気絶縁されている、
請求項8に記載の電気外科手術用アブレーション装置。
生体組織を切除するために2つ以上の異なるRFアブレーション周波数を有する電磁放射線エネルギーを順次に又は同時に放射するアブレーションアンテナを備える電気外科手術用アブレーション装置であって、
前記アブレーションアンテナは、第1及び第2の共振素子を含む少なくとも1つのアンテナ針を有しており、該アンテナ針は、第1及び第2のRFアブレーション周波数でそれぞれ共振し、
第1及び第2の共振素子は、それぞれ、チューブ要素の外面に適用された螺旋状コイルの形態で実現されており、
給電部は、前記チューブ要素内に挿入されるインダクタンスの形態で結合装置を含み、該結合装置は、前記給電部を介して供給される第1及び第2のアブレーション信号を第1及び第2の共振素子内でそれぞれ誘導結合させる、
電気外科手術用アブレーション装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、2つ以上の異なるRF周波数を有するRFアブレーション信号の形態で、好ましくはマイクロ波周波数域で、電磁放射線エネルギーを生成するとともに、この電磁放射線エネルギーを切除すべき標的組織又は病変部内に放射するための電気外科手術用アブレーション装置の第1の基本的なセットアップが概略的に示されている。好ましくは、このような周波数は、通常、許可された工業・科学・医療(ISM)周波数域によれば、約900MHz、2.4GHzの範囲であり、上限は約9〜12GHzまでの範囲である。
この装置は、実質的に、操作ユニット1(通常、静止ユニットである)と、アプリケータアンテナ4(アブレーションアンテナとも呼称される)を含む手持ち式アプリケータユニット3と、手持ち式アプリケータユニット3を操作ユニット1に接続するような接続ケーブル2と、を有している。
【0014】
操作ユニット1は、例えば、アプリケータユニット3を制御するための、具体的にはアプリケータアンテナ4によって送信すべきRFアブレーション信号の生成を起動させ且つその電力及び周波数を選択するための制御システム11と、好ましくは、接続ケーブル2及び/又はアプリケータユニット3を冷却するための冷却システム12と、を有している。電源等の更なるシステムを、操作ユニット1内に含めることができる。
【0015】
手持ち式アプリケータユニット3は、好ましくは、それぞれ生成及び増幅するために制御システム11によって制御されるような少なくとも1つのマイクロ波発生器と、RF出力増幅器33a,...,33dと、を有しており、所望のRF出力及び周波数を含むRFアブレーション信号が、組織を切除するためにアプリケータアンテナ4により送信される。
【0016】
少なくとも1つのマイクロ波発生器及びRF出力増幅器33a,...,33dを手持ち式アプリケータユニット3内に一体化させることは、これらの構成要素を操作ユニット1内に一体化させることに比べて、マイクロ波(出力)接続ケーブルによって、操作ユニット1を手持ち式アプリケータユニット3に接続する必要がないという利点を有する。こうして、接続ケーブル2をより長くすることができ、より高い周波数のマイクロ波を使用することができ、RF出力損失が従来のマイクロ波接続ケーブルのように発生しなくなり、それによって、RF出力要件が低減され、スタンドアロン型マイクロ波アブレーションシステム及び例えば磁気共鳴撮像システムの内部の併用治療アブレーションの設計の自由度が増大する。更なる構成要素、例えば、ディスプレイユニット、RF出力増幅器33a,...,33dのスイッチのオン/オフを手動で切り替えるための、且つ送信されるRFアブレーション信号のRF出力及び/又は周波数を選択するためのスイッチユニット等を、アプリケータユニット3内に含めることができる。
【0017】
さらに、アプリケータユニット3には、アプリケータアンテナ4が設けられている。一般的に、アプリケータアンテナ4は、少なくとも2つの異なる周波数の電磁放射線エネルギー(すなわち、RFアブレーション信号)を交互に(すなわち、順次に)又は同時に(すなわち、同時に)のいずれかで組織(病変部)の標的ボリューム内に放射するために設けられている。これを実現するために、様々な解決策が、以下に提案されており、これらの解決策は、互いに任意の組み合わせで使用することもできる。
【0018】
図1によれば、アプリケータアンテナ4は、例えば、複数のアンテナ針(needle)41a,...,41dを含んでいる。明瞭にするためだけに、以下では、このアンテナ4は、4つのアンテナ針41aを含んでいるが、これらの説明は、同様に他の数のアンテナ針に適用されることが想定される。
【0019】
4つのアンテナ針41a,...,41dは、好ましく、モノ共振(mono-resonant)である、すなわち、それらアンテナ針は、4つの異なる周波数のうちの1つでそれぞれ共振する(好ましくは、λ/4共振)ように寸法決めされている。従って、マイクロ波アブレーションは、選択される1つの共振周波数で行われる、又は関連するアンテナ針を選択するとともに起動させることにより、同時に4つの異なる周波数までで共振させることができる。以下では、これらの周波数が、上述したように、マイクロ波周波数域にあると想定されている。
【0020】
従って、
図1によるアプリケータユニット3は、4つのアンテナ針41a,...,41dにそれぞれ並列に給電するために、RF出力増幅器33a,...,33dを含む4つのマイクロ波発生器を有している。それぞれ、1つのRFアブレーション信号が、RFアブレーションエネルギーを標的組織内に放射するために、4つの異なる周波数のうちの1つを有している。
【0021】
アプリケータユニット3、具体的にはマイクロ波発生器及びRF出力増幅器33a,...,33dが、それぞれ、操作ユニット1に含まれる制御システム11によって生成される(好ましくは、光学式の)デジタル制御信号によって、アンテナ針41a,...,41dに送達すべく、周波数及び/又はRF出力レベルの活性化及び選択するために好ましく制御される。従って、接続ケーブル2は、好ましくは、関連する(光学式の)制御信号を送信するための光ファイバ22を含んでいる。
【0022】
このようなデジタル制御信号を受信するとともに処理するために、アプリケータユニット3は、関連するインターフェイス31と、好ましくは、このようなデジタル制御信号をマイクロ波発生器及びRF出力増幅器33a,...,33dに分配するようなプログラム可能なDDS32とを含む。
【0023】
アプリケータユニット3に電力を供給するために、接続ケーブル2は、DC電源ケーブル21を有している。最後に、接続ケーブル2は、好ましくは、冷却ライン23を有しており、この冷却ラインは、操作ユニット1に含まれる冷却システム12からの冷却媒体、具体的には液体をアプリケータユニット3に供給し、且つ及び公知の方法で再び返送する。好ましくは、温度センサが、その温度を感知するためにアプリケータユニット3に設けられている。ここで、温度が特定の最大許容閾値を超える場合にマイクロ波発生器及びRF出力増幅器33a,...,33dのスイッチをオフにするために、センサ信号を、光ファイバ22を介して操作ユニット1の制御システム11にフィードバックすることができる。
【0024】
図2には、電気外科手術用アブレーション装置の第2の基本的なセットアップが示されている。
図1のような同一又は対応するユニット及び構成要素には、
図2において同一又は対応する参照符号を付している。従って、第1の実施形態との相違点のみを以下で説明するものとする。
第1のセットアップと対照的に、アプリケータアンテナ4は、1つのアンテナ針41のみを有しているが、このアンテナ針41は、二共振又はマルチ共振となるような寸法決めされている。すなわち、このアンテナ針41は、以下で説明するように、2つ(又はそれ以上)の異なるマイクロ波周波数で(好ましくは、λ/4波長で)共振するように励起させることができる。従って、2つ(又はそれ以上)のマイクロ波発生器及びRF出力増幅器33a,33bには、アンテナ針41に給電するために、2つ(又はそれ以上)の異なるマイクロ波周波数(RF出力レベルは異なっていてもよい)を有するRFアブレーション信号が提供されており、このRFアブレーション信号は、ユーザによって選択することができ、且つ同時に又は順次に送信することができる。あるいはまた、関連する2つ(又はそれ以上)の異なるマイクロ波周波数(好ましくは、RF出力レベル)の間で切り替えることができるような、1つのマイクロ波発生器又はRF出力増幅器を、提供することができる。
【0025】
あるいはまた、例えばそれぞれが2つの異なる共振周波数で共振するように寸法決めされた2つのアンテナ針を提供することができ、それによって、トータル4つの異なる共振周波数が、アブレーションに利用可能となる。ここでも、マイクロ波発生器及びRF出力増幅器33a,...,33dが、それぞれ、上述したように制御システム11によって提供されたデジタル制御信号によって、アプリケータアンテナ4に送達すべく、周波数及び/RF出力の活性化及び選択するために好ましく制御される。
【0026】
特に、アンテナ針が組織内に部分的又は全体的に導入された場合に、アプリケータアンテナ4の異なる負荷によって、好ましくは同調(チューニング)及び整合(マッチング)装置34が、一般的に公知のように、アプリケータアンテナ4の入力インピーダンスは、RF増幅器33a,33bの出力インピーダンスに整合されており、且つそれに応じて同調するように提供されており、それによって、生成されたRF出力は、アブレーションアンテナ4で反射されない、又は最小値のみが反射される。これにより、RF出力は、組織内で熱エネルギーに最適に変換される。当然のことながら、これは、それぞれ、アプリケータアンテナ4及びアプリケータユニット3のすべての開示及び他の実施形態に適用される。
【0027】
最後に、
図2には、例として、このような方法でアンテナ針41をアプリケータユニット3のハウジングに接続するための随意のコネクタ42aが示されており、このアンテナ針41は、使用後に廃棄及び交換するために、ユーザによりハウジングから容易に分離することができる。
【0028】
図3には、第1の実施形態に係るアプリケータユニット3と二共振アプリケータアンテナ4との実質的な構成要素が示されている。
アプリケータユニット3は、例として、第1のRF出力増幅器33aと、第2のRF出力増幅器33bと、従来のPINスイッチ35とを有している。第1及び第2の増幅器33a,33bの入力は、それぞれ、第1及び第2のRF(マイクロ波)信号発生器(図示せず)に接続されており、第1のRF信号発生器は、第1の周波数f1を有する第1のRFアブレーション信号を生成し、第2のRF信号発生器は、第2周波数f2を有する第2のRFアブレーション信号を生成する。これらのRF信号は、関連する組織のRFアブレーションの必要に応じて、関連する第1及び第2のRF出力増幅器33a,33bによってそれぞれ増幅される。第1及び第2のRF出力増幅器33a,33bの出力は、PINスイッチ35の第1及び第2のPINダイオードのD1,D2にそれぞれ接続されている。第1及び第2のPINダイオードD1,D2は、増幅された第1又は第2のRFアブレーション信号をアプリケータアンテナ4に印加するために、第1及び第2のインダクタンスL1,L2をそれぞれ介して関連する第1及び第2のバイアス電圧U1,U2をそれぞれ適用することにより、導電性又は非導電性を切り替えることができる。
【0029】
アプリケータアンテナ4は、二共振アンテナ(ここでも好ましくは、λ/4波長である)であり、この二共振アンテナは、第1の周波数f1で第1のRFアブレーション信号を送信する第1の共振素子411と、第2の周波数f2で第2のRFアブレーション信号を送信する第2の共振素子412とを有するような実質的に螺旋状アンテナの形態である。
【0030】
第1の共振素子411は、内部導体と外部RF遮蔽体とを有する同軸導体構造である。第2の共振素子412は、第1の共振素子411の周りに巻回された(螺旋状)コイルによって提供されており、ここでコイルの基端部412aは、同軸導体構造の内部導体に接続されている。コイルの先端412b及び同軸導体構造411Cの先端、すなわち内部導体の先端及びRF遮蔽体の先端は、互いに電気絶縁されている、好ましくは、電気絶縁性材料で製造されるキャリアにその同じものを固定することにより、電気絶縁されている。
【0031】
同軸導体構造のRF遮蔽体は、互いに電気絶縁された2つ以上の遮蔽スタブ411a,411bの形態で実現されており、これら遮蔽スタブ411a,411bは、所望の第1及び第2の共振周波数を同調させるために、及び/又は二共振アプリケータアンテナ4の共振素子411,412に沿ってより均一な電流分布を得るために、互いにそれら軸方向の長さ及び直径及び距離に関して寸法決めされている。好ましくは、第1の共振素子411は、第2の共振素子412と比較して、2つのマイクロ波アブレーション周波数のうちのより高い周波数に同調されており、第2の共振素子は、特に1/4波長アンテナとして実現されている。
【0032】
アプリケータアンテナ4の組織内への導入を容易にするために、第1及び第2の共振素子411,412は、絶縁材料から作製された共通スリーブ(図示せず)によって好ましく取り囲まれている。
第1及び第2の共振素子411,412の寸法、すなわち、軸方向長さ及び直径、コイルの巻数又はインダクタンス、及び遮蔽スタブの寸法は、好ましくは、既知の電磁界シミュレーションプログラムによって選択された第1及び第2のマイクロ波アブレーション周波数に依存して計算される。
【0033】
最後に、アプリケータアンテナ4は、このアンテナがアプリケータユニット3に接続されるような同軸給電部45を含んでいる。好ましくは、アプリケータアンテナ4は、使用後にアプリケータアンテナ4を容易に取外し且つ交換するために、
図2を参照して上述したように、コネクタ42aによってアプリケータユニット3のハウジングに再び固定される。
【0034】
図4には、第2の実施形態に係るアプリケータユニット3と二共振アプリケータアンテナ4との実質的な構成要素が示されている。
図3による第1の実施形態のような同一又は対応する部品及び構成要素には、同一又は対応する参照符号を付している。以下では、第3の実施形態との相違点のみを実質的に説明する。
【0035】
PINスイッチ35の代わりに、アプリケータユニット3は、従来のダイバーシティ回路の形態のダイプレクサ36を含む。このような回路36は、特に3つの機能を有しており、すなわち、第1及び第2のRFアブレーション信号を結合させ、第1及び第2の増幅器33a,33bの出力を互いに切り離し、且つ増幅器の出力におけるインピーダンスをRFアブレーションアンテナの入力におけるインピーダンスに整合させる機能を有している。
従って、この実施形態は、第1及び第2のRFアブレーション信号を同時に送信するのに特に適している。
【0036】
ここでも、ダイプレクサ36は、第1の増幅器33aの出力に接続された第1の入力と、第2の増幅器33bの出力に接続された第2の入力とを含む。また、ダイプレクサ35は、アプリケータアンテナ4に接続された1つの出力を含む。ダイプレクサ36の第1の入力と出力との間には、第1のインダクタンスL11が第1のコンデンサC11に直列接続されており、第1のコンデンサC11は、第2のインダクタンスL12と第2のコンデンサC12とが直列接続されたものに、並列接続されている。ダイプレクサ36の第2の入力と出力との間には、第3のコンデンサC21が第4のコンデンサC22に直列接続されており、第4のコンデンサC22は、第3のインダクタンスL21と第5のコンデンサC23とが直列接続されたものに、並列接続されている。これらのコンデンサ及びインダクタンスは、上述した3つの機能が充足されるように、公知の方法で第1及び第2の周波数に依存して寸法決めされている。
アブレーションアンテナ4は、好ましくは、
図3による第1の実施形態を参照して示され且つ説明したようなアンテナと同様である。
【0037】
図5には、特定の臓器T(例えば、肝臓)を含む器官Eが概略的に示されており、この臓器Tは、様々なサイズ及び異なる電気的特性を有する、切除すべき3つの病変部のL1,L2,L3(例えば腫瘍組織)を有している。このような異なる病変部を効果的に切除するために、関連する病変部に放射されるRFアブレーション信号の周波数及び/又は出力は、特に個々の病変部のサイズ及び電気的特性及び/又は他のパラメータに依存して適切に選択すべきである。
【0038】
適切に選択された周波数及びRF出力レベルを有する個々のRFアブレーション信号によって、3つ(又は複数)の病変部のそれぞれを個別に切除するために、アプリケータアンテナ4は、適切なRFアブレーション信号が複数の病変部のうちの各1つにそれぞれ印加されるような3つ(又は対応する他の数)のアンテナ針41a,...,41c(各々は、シングル共振又はマルチ共振とすることができる)を含んでいる。
【0039】
対応する病変部においてアンテナ針41a,...,41cの先端をより容易に位置決めするために、最初に、可撓性カテーテル44a,...,44cによってそれぞれ、MRI又は超音波又はX線制御下で、病変部L1,...,L3のうちの1つにそのカテーテル先端を向けて又はその病変部のうちの1つに案内する。カテーテルの先端が、切除すべき関連する病変部(標的組織)に到達した場合に、対応するアンテナ針41a,...,41cは、そのアンテナ針がカテーテルの先端に、つまり所望の病変部に到達するまで、各カテーテル44a,...,44cの内腔に導入される。好ましくは、カテーテル44a,...,44cは、ホルダ43によって互いに固定される。
カテーテル44a,...,44cが可撓性材料から作製される場合に、カテーテル内に導入すべきアンテナ針41a,...,41cの先端領域は、好ましくは、可撓性材料から作製される。
【0040】
図6には、アプリケータユニット3に接続される同軸給電部45を含むような二共振アプリケータアンテナ4の別の実施形態が概略的に示されている。
図3及び
図4による実施形態と同一又は対応する部品及び構成要素は、同一又は対応する参照符号を付している。以下では、これらの実施形態との実質的な相違点のみについて説明するものとする。
【0041】
二共振アンテナは、第1の周波数f1で第1のRFアブレーション信号を送信するための第1の共振素子411と、第2の周波数f2で第2のRFアブレーション信号を送信するための第2の共振素子412とを含む。
第1の共振素子411には、内部導体及び外部RF遮蔽体を有する同軸導体構造が設けられている。第2の共振素子412には、第1の共振素子411の周りに巻回された(螺旋状)コイルが設けられており、このコイルの基端部412aは、同軸導体構造の内部導体に接続されている。
【0042】
ここでも、コイルの先端412b及び同軸導体構造の先端411b、すなわち内部導体の先端及びRF遮蔽体の先端は、互いに電気絶縁されている、好ましくは、電気絶縁材料から製造された共通のキャリアにその同じものを固定することにより、電気絶縁されている。
1つの遮蔽スタブ411aの形態で外部RF遮蔽体を提供することにより、アンテナは、先端が共振器となる形態として実現することができる。
図5に示すように、特にこのようなアンテナは、カテーテルと共に使用するための可撓性アンテナの形態で実現することができる。
第1及び第2の共振素子411,412の寸法、特に軸方向長さ及び直径、コイルの巻数又はインダクタンスは、好ましくは、既知の電磁界シミュレーションプログラムによって、選択された第1及び第2のRFアブレーション周波数に依存して計算される。
【0043】
図7には、同軸給電部45が、この同軸給電部45を同軸に取り囲む第1及び第2のバラン(balun)451,452を有するアプリケータアンテナ4の実施形態が概略的に示されている。第1バラン451は、第1の(より高い)周波数f1の波長の約1/4に等しい、第1の(短い)長さLf1に沿って延びており、この第1の周波数f1で共振するように同調(調整)される。第2バラン452は、第2の(より低い)周波数f2の波長の約1/4に等しい、第2の(長い)長さLf2に沿って延びており、この第2の周波数f2で共振するように同調(調整)される。これらのバラン451,452は、二共振アンテナ411,412の先端で、第1及び第2の周波数f1,f2のRF電流に高インピーダンスを提供し、これによって、アプリケータアンテナの基端側の給電部45の後方加熱が防止される。また、給電部45上のRF電流を制限することにより、両周波数f1,f2の別個の放射パターン、を提供することができる。
二共振アンテナ411,412は、好ましくは、
図3又は
図6に示されており、且つ
図3又は
図6に関して上述したように提供される。
【0044】
同軸給電部45及び二共振アンテナ411,412の間に、好ましくは、同軸給電部45の内部導体及び外部導体の間に第1のコンデンサC1を含むような整合回路34が、(
図2を参照して上述したように)接続されている。第2のコンデンサC2と第1のインダクタンスL1との並列接続は、同軸給電部45の内部導体と、アプリケータアンテナ4に接続された整合回路34の出力との間に行われている。あるいはまた、整合回路34は、集中した素子の代わりに、ストリップライン回路によって既知の方法によって実現することができる。
この整合回路34により、給電部45の出力におけるインピーダンスが、所望の共振周波数に亘って二共振アンテナの入力におけるインピーダンスに整合される。必要な場合に、このような整合回路34は、公知の方法で他の任意の実施形態に提供してもよい。
【0045】
図8(A)には、第1及び第2の共振素子を含む二共振アンテナの形態で再びアプリケータアンテナ4の別の実施形態が概略的に示されており、第1の共振素子は、第1のマイクロ波周波数で共振する第1の導体構造411の形態であり、第2の共振素子は、第2のマイクロ波周波数で共振する第2の導体構造412の形態である。これらの導体構造は、特にストリップラインであり、好ましくは円筒形ホルダ又はキャリア46の周りに互いに平行に巻回されている。ここでも、導体構造411,412の寸法、特にそれらの長さ及び幅、これら構造体の巻数又はインダクタンスは、好ましくは、既知の電磁界シミュレーションプログラムによって(ここでも好ましくはλ/4波長である)選択された第1及び第2の共振周波数に依存して計算される。
【0046】
キャリア46は、例えば円形又は楕円形の断面を有するロッドであり、セラミック材料又は可撓性材料又は他の電気絶縁材料で作製されている。このようなキャリア46には、液体等の冷却媒体がアブレーションアンテナを冷却するために供給されるように内側チャンネルを設けることができる。
また、
図8(A)には、第1及び第2の周波数f1、f2をそれぞれ有する第1及び第2の両方のRFアブレーション信号が印加されるような、給電部に接続された入力を有するダイプレクサ36が示されており、ここで、ダイプレクサ36の第1出力は、第1の導体構造411に接続されており、ダイプレクサ36の第2の出力は、アプリケータアンテナ4の第2の導体構造412に接続されている。
【0047】
ダイプレクサ36は、それぞれ、第1及び第2のRFアブレーション信号を第1及び第2の導体構造に切り離し(decouple)且つ供給するために提供されており、且つ給電部のインピーダンスとRFアブレーションアンテナのインピーダンスとを整合させるために提供される。ダイプレクサ36は、拡大して、
図8(B)に示されている。入力と第1の出力との間において、ダイプレクサ36は、第1のコンデンサC11と第1のインダクタンスL11との直列接続を含んでおり、第2のコンデンサC12が第1のインダクタンスL11と並列接続されている。入力と第2の出力との間において、ダイプレクサ36は、第2のインダクタンスL21と第3のインダクタンスL22との直列接続を含んでおり、第3のコンデンサC21が第3のインダクタンスL22に並列接続されている。これらの導体及びインダクタンスは、第1の出力が第2出力から切り離されるような既知の方法で寸法決めされ、すなわち、第1出力において第1のRFアブレーション信号のみが、第2の出力において第2のRFアブレーション信号のみが、それぞれ、第1及び第2の導体構造411,412において第1及び第2の共振をそれぞれ励起するするために、適用される。ダイプレクサ36は、例えばキャリア46内に小型化された形態で提供することができる。
【0048】
図9には、アプリケータアンテナ4の別の実施形態が概略的に示されており、このアンテナ4は、ここでも、第1のマイクロ波周波数において共振(好ましくは、λ/4共振)する第1の導体構造411と、第2のマイクロ波周波数において共振(好ましくは、λ/4共振)する第2の導体構造412とを有するような二共振アンテナの形態である。導体構造は、
図8による実施形態とは対照的に、好ましくは互いに平行にホルダ又はキャリア46上に適用されており、且つホルダ46の長手方向に延びている。ホルダ46は、プリント基板等の平坦なホルダの形態で提供することもできる。ここでも、導体構造411,412の寸法、特にそれらの長さ及び幅は、好ましくは、既知の電磁界シミュレーションプログラムにより、選択された第1及び第2のマイクロ波アブレーション周波数及び互いからの所望の切り離し(decoupling)に依存して計算される。
【0049】
また、
図9には、
図7に示されるように、RFアブレーションアンテナの給電部45と第1及び第2の導体構造411,412の基端との間に好ましく接続された整合回路34が示されている。この整合回路34とその構成要素の機能に関して、参照が、
図7に関連して上述したように行われる。
【0050】
図10には、
図9による実施形態とは対照的に、第1及び第2の共振導体構造411,412が直列に接続されたアプリケータアンテナ4の別の実施形態が概略的に示されており、ここでコンデンサCとインダクタンスLとを並列接続した例示的な形態の並列共振回路が、両方の導体構造411,412の間に接続されている。また、
図10には、
図9に示されるような整合回路34が示されている。
【0051】
図11には、少なくとも第1、第2及び第3の導体構造411,412,413を含むマルチ共振アンテナの形態のアプリケータアンテナ4の別の実施形態が示されている。ここで、これらの導体構造は、それぞれ、第1、第2及び第3のマイクロ波周波数で共振(好ましくは、λ/4共振)する。導体構造は、この例では円形断面を有するロッドの形態で実現されるホルダ又はキャリア46上に適用される。好ましくは、上述したような導体構造を包囲する電気絶縁ホース461がこの図に示されている。また、
図11には、
図7を参照して示し且つ説明したような、整合回路34が示されている。
【0052】
給電部45の好ましい構成が、
図12に示されている。この給電部45(アプリケータアンテナの他の実施形態に関連して使用することができる)は、MR画像において実質的に透明となるように作られており、このため、MRI制御下で病変部を切除すべき組織T内に導入するのに適している。
MR透過性は、少なくとも1つのコンデンサ451を給電部45の各ラインに直列に接続することにより得られる(すなわち、RF遮蔽体及び内部導体内に同軸ラインが形成される場合である)、ここで、コンデンサは、マイクロ波アブレーション信号が、マイクロ波周波数において低挿入損失(low insertion loss)によってコンデンサを通過することができるような寸法である。
【0053】
図13には、
図11によるマルチ共振アンテナ及び整合回路が示されている。また、この図には、直列コンデンサ454によって接続された複数の導体セクションを設けることによりMRI適合性が得られた給電部45が示されている。
これらのコンデンサ454は、マイクロ波アブレーション周波数において低く、且つさらに低いMRI周波数において高いインピーダンスを有する。コンデンサは、離散したコンデンサ454の形態で、及び/又は箔と誘電絶縁材料とを用いて実現することができる。さらに、
図13には、アプリケータアンテナを取り囲む外側絶縁カバー455が示されており、ここで、給電部45は、誘電材料453によって同軸に取り囲まれている。この誘電材料453は、外側絶縁カバー455が適用される金属遮蔽体452に同軸に取り囲まれている。
【0054】
図14には、共振導体構造411,412が、給電部45に誘導結合される及びこの給電部45からガルバニック的に切り離されたアプリケータアンテナの実施形態が示されている。
給電部45は、チューブ要素413内に挿入されるインダクタンス414の形態の結合装置を含む。チューブ要素413の外面において、共振導体構造411,412は、第1の巻線パターンを有する第1のコイル411及び第2の巻線パターンを有する第2のコイル412の形態で
図14(A)及び
図14(B)に例示的に示されており、各共振導体構造は、それぞれ第1及び第2のアブレーション信号を生成する。コイル411,412は、好ましくは、遮蔽体415によって取り囲まれている。
【0055】
給電部45を介して供給された第1及び第2のアブレーション信号は、
図8に関連しての説明ようにダイバーシティスイッチ36介してインダクタンス414に印加され、且つ共振導体構造411,412内に誘導結合される。この誘導結合を制御するために、インダクタンス414は、
図14の矢印P1で示されるように、チューブ要素413内でその軸線方向にシフトさせることが好ましい。
【0056】
図15には、給電部45の実施形態が示されている。この給電部45は、従来のコネクタ45cによって互いに接続されている第1のケーブル部45aと第2のケーブル部45bとを含んでいる。第1のケーブル部45aは、特に低い電力損失を有するように実現されており、ここで、第2のケーブル部45bは、特に可撓性を有して実現されており、好ましくは、組織内に導入可能にするために、(低損失ケーブル部45aの直径d1よりも小さい)特に小さい直径d2を有している。最後に、
図15には、
図11を参照して上述したように、電気絶縁ホース461によって包囲されるような、上述した第1及び第2の共振導体構造411,412を有するアブレーションアンテナが概略的に示されている。
【0057】
図16には、MR検査中に使用するために特に提供された二共振アプリケータアンテナの実施形態が示されており、このアプリケータアンテナ及び接続された給電線が、MR撮像装置のRF/MR励起フィールドに露出されている。共通モード電流がアンテナ上に誘起され且つ供給ラインに沿って伝搬するのを防止するために、バラン43a,43b,24は、このような電流を阻止するために設けられている。
【0058】
図16に示す実施例は、それぞれ、第1及び第2のマイクロ波周波数で共振する2つの単一の共振アプリケータアンテナ又はアンテナ針41a,41bを含んでいる。こうして、第1のバラン43aは、第1のアンテナ41aの給電ラインに接続されており、第2のバラン43bは、第2のアンテナ41bの給電ラインに接続されている。バラン43a,43bは、関連する組織に導入するのに適している。
【0059】
また、図
16には、それぞれ、第1及び第2のマイクロ波周波数を有する第1及び第2のアブレーション信号をそれぞれ生成し且つ増幅するための第1及び第2のマイクロ波発生器と増幅器33a,33bが示されており、これらのアブレーション信号は、それぞれ、第1及び第2のアンテナ41a,41bによって放射される。マイクロ波発生器及び増幅器33a,33bは、光ファイバ22によって供給される光信号によって好ましくは制御されるが、電源は、第3のバラン24が接続されるガルバニックケーブルによって供給される。
【0060】
一般に、バラン43a,43b,24は、MR周波数に対して高いインピーダンスを有しており、マイクロ波アブレーション周波数に対して低挿入損失を有しており、且つ
図7に示されるような3軸同軸ケーブル等の関連するケーブルの一部である、或いはマイクロ波ケーブルは、ソレノイドの形態で巻回されており、MR周波数に応じてRF遮蔽体又はコンデンサを用いて同調(調整)される。
【0061】
図17には、上述したような二共振アブレーションアンテナを用いたマイクロ波アブレーション処置のフローチャートが示されており、この処置は、好ましくは、MRI制御下で行われる。
第1のステップでは、切除すべき病変部を含む臓器又は組織又は身体又はボリュームの一部が、MR撮像手順及びセグメント化によって撮像される。第2のステップでは、関連するボリュームの電磁特性のモデルを確立する。第3のステップでは、アブレーションプロセスの速い電磁シミュレーションが、周波数の適切な値や、マイクロ波アブレーションプロセスのデューティサイクル及び出力を評価するために、電磁モデルに基づいて行われる。これらのデータは、第4のステップにおいて格納される。次に、実際のマイクロ波アブレーションプロセスが、第4のステップで格納されたデータを用いて第5のステップを開始する。好ましくは、アブレーションプロセス及び関連する組織内での温度の進行及び他のパラメータは、第6のステップ中の関連する組織のMR撮像によりリアルタイムで監視されている。温度及び/又は他のパラメータが所定の閾値を超えた場合に、アブレーションプロセスのために格納され且つこのプロセスのために現在使用されるような関連データが、それに応じて適合される。最終的に、病変部が切除されると、切除処置が停止される。
【0062】
本発明は、図面及び前述した詳細な説明において詳細に図示及び説明してきたが、このような例示及び説明は、例示又は説明目的であり、限定的ではないことを考慮されたい。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。上述した本発明の実施形態の変形形態は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲から逸脱することのない範囲で可能である。
【0063】
開示された実施形態に対する変形形態は、図面、詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲の検討から特許請求の範囲に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、達成することができる。特許請求の範囲において、単語「備える、有する、含む(comprising)」は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「1つの(a, an)」は、複数を除外するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、特許請求の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。