特許第6144311号(P6144311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144311混合ガスに対する除去性能に優れた光触媒フィルタおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144311
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】混合ガスに対する除去性能に優れた光触媒フィルタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20170529BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170529BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20170529BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170529BHJP
   B01J 23/888 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B01J35/02 JZAB
   B01D53/86 280
   B01D53/86 228
   B01J35/02 H
   B01J37/02 301D
   B01J37/08
   B01J23/888 M
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-186696(P2015-186696)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-68080(P2016-68080A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年10月9日
(31)【優先権主張番号】62/057,794
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10-2015-0019753
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イー, ジャエソン
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ダエウング
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ゲウンド
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドング ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ク, ヘイ キュング
(72)【発明者】
【氏名】ユーン, キュング シク
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−131756(JP,A)
【文献】 特開2014−105150(JP,A)
【文献】 特開2008−093630(JP,A)
【文献】 特開2010−215781(JP,A)
【文献】 特開2003−048715(JP,A)
【文献】 特表2005−532154(JP,A)
【文献】 特開平10−147771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 35/02
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiOナノ粒子および金属化合物を水に分散させる光触媒分散液製造ステップと、
前記光触媒分散液で光触媒支持体をコーティングするステップと、
前記コーティングされた光触媒支持体を乾燥させるステップと、
を含み、
前記金属化合物は、HWO、WO、WCl、またはCaWOを含むタングステン化合物および鉄化合物を含み、
前記タングステン化合物は、TiO 1モルに対して0.0032〜0.064のモル比であること、
を特徴とする、光触媒フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物は、H原子を含むタングステン化合物を含むこと、
を特徴とする、請求項1に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記タングステン化合物は、HWOであること、
を特徴とする、請求項2に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項4】
前記鉄化合物は、Fe3+化合物であること、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記鉄化合物は、FeCl、FeCl、Fe、またはFe(NOであること、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項6】
前記鉄化合物は、ナノ粒子であること、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記鉄化合物は、Feであること、
を特徴とする、請求項6に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記鉄化合物は、TiO1モルに対して0.005〜0.05のモル比を有すること、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記ナノサイズのパウダーの鉄化合物は、TiO1モルに対して0.00125〜0.0125のモル比であること、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記光触媒支持体は、多孔性セラミックを含むこと、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項11】
前記光触媒支持体にコーティングするステップは、光触媒支持体を分散液に浸漬することを含むこと、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項12】
乾燥した前記光触媒支持体を焼結するステップをさらに含むこと、
を特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【請求項13】
前記焼結ステップは、350〜500℃の温度で0.5〜3時間行われること、
を特徴とする、請求項12に記載の光触媒フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒フィルタおよびその製造方法に関し、より詳細には、光触媒表面の吸着性能を向上させることで、競争反応で劣るガスを含む混合ガスを光触媒反応の初期から分解することができる光触媒フィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応(photocatalytic reaction)とは、二酸化チタン(TiO)などの光触媒物質を用いる反応を意味し、水の光分解、銀と白金などの電析反応、有機物の分解などが光触媒反応として知られている。このような光触媒反応は、新たな有機合成反応に対する応用、超純水の製造などに対する応用も試みられている。
【0003】
空気中に存在するアンモニア、酢酸(acetic acid)、アセトアルデヒドのような有害ガスあるいは悪臭誘発物質は前述した光触媒反応によって分解され、このような光触媒反応を活用した空気浄化装置は、光源(紫外線など)と光触媒物質がコーティングされたフィルタさえあれば半永久的に使用が可能である。光触媒フィルタは、光触媒反応効率が低下した時、フィルタの再生により光触媒反応効率を回復させた後、再使用が可能で半永久的といえる。
特に、紫外線光源としてUV LEDを用いる場合には、既存の水銀ランプなどとは異なり、ランプ内部の有害な物質を必要としないことから、環境に優しく、エネルギー消費効率が高く、サイズが小さくて各種設計に有利である。しかしながら、プレフィル(pre-filter)タやヘパフィルタ(HEPA filter)のように空気がフィルタを経由しながら物理的に集塵される既存のフィルタとは異なり、光触媒フィルタは、有害ガスを含む空気がフィルタを通過しながらフィルタの表面と接触して吸着した有害ガスが光触媒反応によって形成されるヒドロキシラジカル、活性酸素のような活性酸素種によって分解される構造であって、光触媒表面の活性サイトに目標の物質がどれだけ効率的に接触するかが除去効率に大きな影響を及ぼす。
【0004】
光触媒フィルタの光触媒反応効率は、空気清浄能力と直結する。言い換えれば、光触媒反応効率の良い空気清浄機を用いれば、同じ大きさと構造でも、相対的に効率の低い空気清浄機を用いる空間よりも、速やかに有害ガスを分解可能である。
【0005】
一方、空気中に複数種の有害ガスが混合された状態の時には、光触媒フィルタの表面に先に吸着する有害ガスが先に分解されることを確認されている。したがって、有害ガスのうち、光触媒表面に対する吸着率が高いガスであるほど速やかに分解され、光触媒表面に対する吸着率の低いガスは、光触媒表面に対する吸着率の高いガスがある程度分解されてから光触媒表面に吸着して分解される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気清浄機協会の脱臭性能試験は、アセトアルデヒド、アンモニア、酢酸の3種の混合ガスに対する除去率を評価する方法で行われる。しかし、実験の結果、既に市販されているTiO光触媒は、混合ガスに対する除去率実験の際にアセトアルデヒドの除去性能が低いことが確認できた。これは、アセトアルデヒドを分解する反応が競争反応であり、他のガスより遅れて反応するものだからである。すなわち、従来の光触媒フィルタは、競争反応で先に反応する有害ガスを分解した後、競争で劣る有害ガスを後で分解する仕組みとなっていることが分かった。
【0007】
しかし、このような既存の光触媒フィルタの性質は、空気清浄機からしてあまり好ましくない。すなわち、光触媒反応の原理を利用する空気清浄機の場合、有害ガスの分解性能が重要であるのはもちろん、すべての有害ガスに対する分解性能に優れていなければならず、すべての有害ガスに対して競争反応なく初期から分解が行われるようにする必要がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、混合ガス上においてもそれぞれのガスに対する除去率が良く、支持体(base)に付着性の優れた光触媒フィルタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、光触媒物質のTiOナノ粒子および金属化合物を水に分散して光触媒分散液を製造するステップと、光触媒分散液を支持体にコーティングするステップと、コーティングされた支持体を乾燥するステップと、乾燥した支持体を焼結するステップとを含む光触媒フィルタの製造方法を提供する。
【0010】
ここで、前記光触媒分散液に分散する金属化合物は、ナノ粒子であってもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、支持体と、前記支持体上にコーティングされた光触媒物質および金属化合物と、を含む光触媒フィルタを提供することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る光触媒フィルタの製造方法は、二酸化チタン(TiO)ナノ粒子および金属化合物を水に分散する光触媒分散液製造ステップと、前記光触媒分散液で光触媒支持体をコーティングするステップと、コーティングされた前記光触媒支持体を乾燥させるステップと、乾燥した前記光触媒支持体を焼結するステップとを含む製造方法である。
【0013】
本発明の一実施形態において、金属化合物は、タングステン(W)化合物を含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、タングステン(W)化合物は、HWOであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、タングステン(W)化合物は、TiO 1モルに対して0.0032〜0.0064のモル比を有してもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、金属化合物は、鉄(Fe)化合物を含んでもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、鉄化合物は、Feであってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、鉄(Fe)化合物は、TiO1モルに対して0.005〜0.05のモル比を有してもよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、鉄化合物は、ナノ粒子であってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、ナノサイズのパウダー(ナノ粒子)の鉄(Fe)化合物は、TiO1モルに対して0.00125〜0.0125のモル比であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、光触媒支持体は、多孔性セラミックを含んでもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、光触媒支持体にコーティングするステップは、光触媒支持体を分散液に浸漬することを含んでもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、焼結ステップは、350〜500℃の温度で0.5〜3時間行われてもよい。
【0024】
また、本発明の一実施形態は光触媒フィルタであり、該光触媒フィルタは、光触媒支持体と、前記光触媒支持体上にコーティングされた光触媒物質および金属化合物とを含み、前記金属化合物は、タングステン(W)化合物および鉄(Fe)化合物を含む光触媒フィルタである。
【0025】
本発明の一実施形態において、タングステン化合物は、HWOであり、鉄化合物は、Feであってもよい。
【0026】
本発明の一実施形態において、タングステン(W)化合物は、TiO1モルに対して0.016〜0.048のモル比を有し、前記鉄化合物は、TiO1モルに対して0.005〜0.025のモル比を有してもよい。
【0027】
本発明の一実施形態において、鉄化合物は、ナノサイズの粒子であってもよい。
【0028】
本発明の一実施形態において、タングステン(W)化合物は、TiO1モルに対して0.016〜0.048のモル比を有し、前記鉄化合物は、TiO1モルに対して0.00125〜0.00625のモル比であってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、光触媒支持体は、多孔性セラミックであってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、光触媒物質および金属化合物は、焼結されて光触媒支持体上に固着していてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の光触媒フィルタによれば、混合ガスに対してもそれぞれのガスに対する除去率が高く、競争反応の優劣なく反応初期から前記混合ガスのすべてのガスに対する除去率に優れている。
【0032】
また、本発明の光触媒フィルタの製造方法によれば、支持体に対する光触媒物質の付着性に優れている。
【0033】
前述した効果とともに、本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための具体的な事項を説明しながら併せて記述する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】従来の光触媒フィルタと、本発明による第1実施例の光触媒フィルタをそれぞれ用いる時、時間の経過とともに空気中に混合されて存在する有害ガスであるアンモニア、アセトアルデヒド、酢酸の残存率を示す図である。
図2】従来の光触媒フィルタと、本発明による第1実施例および第2実施例の光触媒フィルタをそれぞれ用いる時、時間の経過とともに空気中に混合されて存在する有害ガスであるアンモニア、アセトアルデヒド、酢酸の残存率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明による好ましい実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書中、ナノサイズのパウダーをナノ粒子として説明する。
【0036】
本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現可能であり、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0037】
本発明により開示される技術は、アセトアルデヒド、アンモニア、および酢酸に対する吸着と分解効率が向上した光触媒フィルタに関する。これは、酸化チタン(TiO)に金属あるいは金属酸化物を導入することにより製造される。
このような光触媒フィルタは、水にTiOナノ粒子とともに1つ以上の金属化合物を分散し、支持体を該分散液に浸漬してコーティングし、コーティングされた支持体を乾燥した後、これを焼結する方式で製造される。
【0038】
支持体上に形成された光触媒物質は、紫外線に照射される場合、光学的に活性化して、光触媒物質に吸着した汚染物質を光触媒反応により分解する。このような汚染物質は、細菌や微生物、有機物、そして多様な化合物であり得る。UV LEDのような紫外線光源を利用して紫外線を直接光触媒物質に照射する形態は、空気清浄機などの多様な分野に適用可能である。
【0039】
本発明による第1実施例の光触媒フィルタは、既存のTiO光触媒物質に、金属物質であるWとFe、またはその酸化物を導入することにより、混合ガスに対する除去率に優れている。すなわち、TiO光触媒に金属あるいは金属酸化物を添加することにより、光触媒表面の酸度を調節して有機物の吸着性能が向上し、これによってガス除去率を向上させることができる。
【0040】
また、本発明による第2実施例の光触媒フィルタは、既存のTiO光触媒物質に、金属物質であるWとFe、またはその酸化物を導入するに際し、Fe化合物をナノサイズで導入することにより、混合ガスに対する除去率がさらに優れる光触媒フィルタである。
【0041】
[光触媒フィルタの製造方法]
本発明による光触媒フィルタの製造方法は次の通りである。製造工程は、光触媒物質のTiOナノ粒子とW化合物、Fe化合物を水に分散して光触媒分散液を製造するステップと、光触媒分散液を多孔性セラミックハニカム支持体(支持体)にコーティングするステップと、コーティングされた支持体を乾燥するステップと、乾燥した支持体を焼結するステップとに区分することができる。
【0042】
光触媒物質のTiOナノ粒子としては、エボニック社製のP25パウダーを用いた。
【0043】
W化合物は、HWO、WO、WCl、CaWOなどを用いてもよいし、Fe化合物は、FeCl、FeCl、Fe、Fe(NOなどを用いてもよい。本発明では、W化合物としてはHWOを用い、Fe化合物としてはFeを用いた。
【0044】
W化合物のうち、HWO(tungsten oxide hydrate)を用いた理由は、光触媒物質にWOを導入するためであり、HWOは該WOを導入するための前駆体として用いられる。すなわち、WOパウダーを直接加えるよりも、WOの前駆体としてHWOを導入した方が、脱水反応でWOとTiOと反応性を向上させることができると考えられるためである。
【0045】
Fe化合物について説明すれば、Fe2+の電子配置は1s2s2p3s3p3dで、最外殻電子が最外殻電子価の半分より1つ多い状態であり、Fe3+の電子配置は1s2s2p3s3p3dで、最外殻電子が最外殻電子価の半分だけある状態であるので、Fe2+は最外殻電子を1つ渡して相対的に安定した最外殻電子価の半分だけを有するFe3+になろうとする傾向が強くなる。しかし、このようにFe2+が渡した電子は、TiOの励起反応時に生成されるHと反応することになる。したがって、Fe2+を用いると、Fe2+が渡した電子がTiOの励起反応時に生成されるHと反応して、Fe2+がFe3+になってから光触媒反応に参加する。すなわち、Fe2+とFe3+はいずれも光触媒反応を促進するが、Fe3+の方が、Fe2+よりも光触媒反応の促進効率がさらに高い。
【0046】
光触媒にFeを導入する物質としては、FeCl、Fe、Fe(NOなどを用いてもよいが、これらのうち、FeCl、Fe(NOは、前記HWOと混合時の混合過程で問題が生じたり、光触媒活性の向上が確認されなかった。反面、実験の結果、Feは、HWOとともに光触媒活性の相乗効果を得ることができるので、Fe化合物としてはFeを用いることが好ましい。
【0047】
第1実施例において、TiO1モル対比、HWOは0.0032〜0.064モル、Feは0.005〜0.05モルを用いてもよいし、好ましくは、TiO1モル対比、HWOは0.016〜0.048モル、Feは0.005〜0.025モルを使用するのがよい。
【0048】
一方、光触媒にFeを導入する物質としてナノサイズの粒子を用いる場合、光触媒活性効果がより向上することを確認した。すなわち、第2実施例において、ナノサイズのFeを用いる場合、光触媒活性効果がより向上するが、この時、TiO 1モル対比、HWOは0.0032〜0.064モル、Feは0.00125〜0.0125モルを用いてもよいし、好ましくは、TiO 1モル対比、HWOは0.016〜0.048モル、Feは0.00125〜0.00625モルを使用するのが良い。
【0049】
光触媒支持体としては、金属、活性炭、セラミックなどが用いられてもよい。本発明の一実施例では、光触媒物質の付着力を増進させるために、多孔性セラミックハニカムを支持体として用いた。多孔性セラミックハニカムを支持体として用いる際には、コーティング時、ナノ光触媒分散液がセラミック気孔に侵入して、乾燥後、アンカリング(anchoring)されて光触媒の付着力を増強させることができる。金属支持体の場合は、多孔性セラミックより光触媒物質の付着が容易でなく、活性炭は気孔を持っているが、焼結時に破損する場合があり、支持体として用いることが難しい。したがって、金属を支持体として用いる場合には、当該金属にコーティングが容易となるように作製された光触媒分散液が必要である。光触媒はどの物質にもコーティングできると知られているが、各支持体の性質に合わせて分散液を製造する必要がある。気孔を持つ活性炭に直接コーティングをする方法もあるが、光触媒のコーティングによって気孔の表面積が減少して、活性炭の固有の役割を失う可能性があり、金属と同じく支持体の性質に合ったコーティング条件を見つけることが重要であるといえる。
【0050】
光触媒分散液製造ステップでは、エボニック社のP25TiOパウダーとW化合物、Fe化合物(またはそのナノ粒子)をシリコーン系分散剤を用いて分散する。シリコーン系分散剤は、P25TiOパウダーとW化合物、Fe化合物で構成された固形分対比0.1〜10wt%を適用する。シリコーン系分散剤0.1〜10wt%を水に溶解した後、P25TiOナノ粒子、W化合物、Fe化合物を投入し、撹拌またはボールミル(ball mill)で分散すると、固形分20〜40wt%で構成されたTiO分散液(重量比基準:全体分散液対比の固形分の重量)を得る。この時、分散剤は1種以上を用いることができる。
【0051】
コーティングステップでは、多孔性セラミック支持体を前記製造した光触媒分散液にdipコーティングした。dipコーティング時、セラミックの気孔に前記製造した光触媒分散液が十分に吸収できるように1〜5分静置する。
乾燥ステップでは、光触媒のコーティングされたセラミック支持体を150〜200℃の乾燥機にて3〜5分おいて乾燥させた。
【0052】
焼結ステップでは、前記乾燥ステップを経た光触媒のコーティングされたセラミックハニカムを高温電気炉350〜500℃で0.5〜3時間焼結した。実験の結果、焼結温度が300℃以下の場合、コーティングされた光触媒が支持体から剥がれる現象が発生し、400〜500℃では、光触媒の付着性に優れていることを確認した。500℃を超える場合には、光触媒物質が変性してむしろ光触媒反応効率が低下する。本実験から、光触媒の付着性は焼結温度に大きな影響を受けることが分かった。
【実施例】
【0053】
[混合ガス除去実験]
(第1実施例)第1実施例TiO単独からなる従来の光触媒フィルタと、本発明による第1実施例の光触媒フィルタを用いた混合ガス除去実験は1mのチャンバで進行させ、混合ガス中にある各ガスの濃度は10ppmとした。従来の光触媒フィルタと、本発明の光触媒フィルタは、支持体と光触媒物質のloading量がすべて同じく2.5gであり、同じ紫外線光源を活用して紫外線を照射した。なお、TiOはナノ粒子を用いた。
【0054】
本発明による第1実施例の光触媒フィルタは、各成分のモル比がTiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.01の条件、TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015の条件、そしてTiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.02の条件を作製して構成してそれぞれ比較した。
【0055】
TiO単独構成である既存の光触媒フィルタと、本発明の第1実施例により製造された前記光触媒フィルタの混合ガス除去性能を実験した結果を記載した下記表1から、TiOが単独でコーティングされた従来の光触媒フィルタを用いた混合ガス除去実験の際、アセトアルデヒドは反応開始後30分までは除去されないことが分かり、表2から、他のガスがある程度除去されてからやっと除去され始めたことが分かる。他方、表1および表2の結果から本発明の第1実施例により製造された光触媒フィルタは、脱臭実験の初期からアセトアルデヒドが除去され、アンモニア除去性能も従来に比べて向上して、全体的な脱臭性能が向上したことが分かる。
【0056】
反応開始後30分での除去率
【表1】
【0057】
反応開始後120分での除去率
【表2】
【0058】
【数1】
【0059】
なお、重量比(括弧内はモル比)は以下の通りである。
TiOとHWOとFeとが100、10、2の重量比(TiOとHWOとFeとが1.0、0.032、0.010のモル比)
TiOとHWOとFeとが、100、10、3の重量比(TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015のモル比)
TiOとHWOとFeとが、100、10、4の重量比(TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.020のモル比)
【0060】
また、本実験結果から、アセトアルデヒド、アンモニア、酢酸の3種の混合ガス上においてもそれぞれのガスに対する除去率が良く、付着性に優れた光触媒フィルタは、TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015のモル比であり、350〜500℃で焼結して製造することが好ましいことが分かる。
【0061】
図1と下記表3は、従来のP25光触媒フィルタと、本発明の第1実施例による光触媒フィルタをTiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015のモル比で構成した場合の脱臭性能を比較したものである。
【0062】
【表3】
【0063】
これをみると、従来のP25光触媒フィルタに比べて、本発明の第1実施例による光触媒フィルタのモル比をTiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015で構成した場合、脱臭性能が顕著に上昇したことが分かる。
【0064】
第2実施例(第2実施例)
TiO単独からなる従来のP25光触媒フィルタと、本発明による第1実施例の光触媒フィルタおよび第2実施例の光触媒フィルタを用いた混合ガス除去実験は4mのチャンバで進行させ、混合ガス中にある各ガスの濃度は10ppmとした。従来の光触媒フィルタと、本発明の光触媒フィルタは、支持体と光触媒物質のローディング(loading)量がすべて同じく2.5gであり、同じ紫外線光源を活用して紫外線を照射した。なお、TiOとFe化合物とはナノサイズのパウダー(ナノ粒子)を用いた。
【0065】
本発明による第1実施例の光触媒フィルタは、各成分のモル比を、TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015となるように構成し、第2実施例の光触媒フィルタは、各成分のモル比を、TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.005となるように構成した。
【0066】
TiO単独構成である既存のP25光触媒フィルタ、本発明の第1実施例により製造された前記光触媒フィルタ、第2実施例により製造された前記光触媒フィルタの混合ガス除去性能を実験した結果を記載した下記表4と図2を参照すれば、TiOが単独でコーティングされた従来の光触媒フィルタを用いた混合ガス除去実験の際、アセトアルデヒドは30分まではほとんど除去されず、同じく他のガスがある程度除去されてからやっと除去され始めた。反面、本発明の第1実施例により製造された光触媒フィルタは、脱臭実験の初期からアセトアルデヒドが除去され、アンモニア除去性能も従来に比べて向上して、全体的な脱臭性能が向上したことが分かる。一方、本発明の第2実施例により製造された光触媒フィルタは、第1実施例の場合よりも、アンモニア、アセトアルデヒド、および酢酸に対する脱臭性能がさらに向上したことが分かる。
【0067】
時間別の各気体の除去率
【表4】
【0068】
第1実施例の組成は、TiOとHWOとFeとが、100、10、3の重量比(TiOとHWOとFeとが、1.0、0.032、0.015のモル比)である。
第2実施例の組成は、TiOとHWOとナノFeとが、100、10、1の重量比(TiOとHWOとナノFeとが、1.0、0.032、0.005のモル比)である。
【0069】
上記で説明した本発明の光触媒フィルタは、アセトアルデヒド、アンモニア、酢酸の3種の混合ガス上においてもそれぞれのガスに対する除去率がすべて良いことを説明しているが、本発明の光触媒フィルタは、これらガスおよびこれらガスの組み合わせだけでなく、本発明の課題の解決原理に符合する限り、他のガスおよびそれら組み合わせについても効果を有することはもちろんである。
【0070】
以上、本発明について例示した図面を参照して説明したが、本明細書に開示された実施例と図面によって本発明が限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において当業者によって多様な変形が可能であることは自明である。同時に、上記で本発明の実施例を説明しながら本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成により予測可能な効果も認められなければならないことは当然である。
図1
図2