特許第6144334号(P6144334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シラス ロジック、インコーポレイテッドの特許一覧

特許6144334適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い
<>
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000002
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000003
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000004
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000005
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000006
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000007
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000008
  • 特許6144334-適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144334
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】適応雑音消去を有するパーソナルオーディオデバイスにおける周波数および方向依存周囲音の取り扱い
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20170529BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20170529BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20170529BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G10K11/16 H
   H04R3/00 320
   H04R1/40 320A
   H04M1/00 H
【請求項の数】45
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-511489(P2015-511489)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公表番号】特表2015-520870(P2015-520870A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】US2013037049
(87)【国際公開番号】WO2013169453
(87)【国際公開日】20131114
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】61/645,244
(32)【優先日】2012年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/784,018
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504371240
【氏名又は名称】シラス ロジック、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルダーソン, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョー, ダヨン
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/153165(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/101967(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/041012(WO,A1)
【文献】 特開平07−098592(JP,A)
【文献】 特表平11−512194(JP,A)
【文献】 特表2012−506069(JP,A)
【文献】 特開平08−227322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04M 1/00
H04R 1/40
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルオーディオデバイスであって、前記パーソナルオーディオデバイスは、
パーソナルオーディオデバイス筐体と、
前記筐体に搭載された変換器であって、聴取者へのプレイバックのためのソースオーディオと、前記変換器の音響出力における周囲オーディオ音の影響を打ち消すための反雑音信号との両方を含むオーディオ信号を再生するための、変換器と、
前記筐体に搭載されたマイクロホンであって、前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を提供するための、基準マイクロホンと、
前記変換に近接して前記筐体に搭載されたエラーマイクロホンであって、前記変換器の前記音響出力と前記変換器における前記周囲オーディオ音とを示すエラーマイクロホン信号を提供するための、エラーマイクロホンと、
前記基準マイクロホン信号から導出される第1の信号を受け取る第1の入力と、前記エラーマイクロホン信号から導出される第2の信号を受け取る第2の入力とを有する係数制御ブロックによって制御される応答を有する適応フィルタを使用して、前記聴取者によって聞き取られる前記周囲オーディオ音の存在を低減するために、前記基準マイクロホン信号から前記反雑音信号を発生させる処理回路であって、前記処理回路は、周囲音を検出し前記周囲音がエネルギーを有する1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定するために前記基準マイクロホン信号を分析し、かつ、前記周囲音の検出に応答し、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定した結果に適合するように、前記適応フィルタの前記応答の適応の前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域における感度を低減するように前記第1の信号または前記第2の信号の周波数成分を改変することによって前記適応フィルタの前記応答の前記適応を改変する、処理回路と
を備えるパーソナルオーディオデバイス。
【請求項2】
前記処理回路は、前記ソースオーディオを形成する二次経路応答を有する二次経路フィルタと、前記聴取者に送達される組み合わせられた反雑音および周囲オーディオ音を示すエラー信号を提供するために、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去するコンバイナとをさらに実装し、前記係数制御ブロックの前記第2の入力が前記第2の信号として前記エラー信号を受け取って、前記適応フィルタの前記応答が、前記エラー信号および前記基準マイクロホン信号と適合するように制御される、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項3】
前記処理回路は、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域と適合するように選択された固定応答を有する非適応フィルタによって前記第1のまたは第2の信号の少なくとも1つをフィルタ処理し、その結果として、前記適応フィルタの前記応答の前記適応の感度は、前記固定応答によって、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域において低減される、請求項2に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項4】
前記処理回路は、複数の所定の周波数応答の中から前記固定応答を選択する、請求項3に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項5】
前記処理回路は、前記基準マイクロホン信号および前記エラーマイクロホン信号の両方における前記周囲音を検出する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項6】
前記処理回路は、前記周囲音の方向を決定し、前記処理回路は、前記周囲音の前記方向と適合するように、前記適応フィルタの前記応答の前記適応を選択的に改変する、請求項5に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項7】
前記聴取者の発話と前記周囲音とを示す近接発話マイクロホン信号を提供するために、前記筐体に搭載された近接発話マイクロホンをさらに備え、前記処理回路は、前記近接発話マイクロホン信号における前記周囲音をさらに検出する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項8】
前記処理回路は、前記基準マイクロホン信号の1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域の振幅を測定することによって、前記周囲音を検出する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項9】
前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域は、選択可能である、請求項8に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項10】
外部ヘッドセットに接続するためのヘッドセットコネクタと、
前記外部ヘッドセットのタイプを検出するためのヘッドセットタイプ検出回路であって、前記処理回路は、前記外部ヘッドセットの検出されたタイプと適合するように、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域をさらに決定する、ヘッドセットタイプ検出回路と、
をさらに備える、請求項8に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項11】
前記検出することは、低周波数成分が存在するかどうか検出する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項12】
前記検出することは、高周波数成分が存在するかどうか検出する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項13】
前記改変することは、前記適応フィルタの係数制御ブロックの更新レートを改変する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項14】
前記処理回路は、漏出特性を有する前記適応フィルタの周波数応答の可変部分を制御し、特定の変化率において前記適応フィルタの応答を所定の応答に復元し、前記処理回路は、前記周囲音の検出の結果と適合するように、前記特定の変化率を改変する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項15】
前記処理回路は、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域において前記適応フィルタの前記応答の前記感度を低減する周波数成分を有する信号を投入することによって、前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかの周波数成分を改変する、請求項1に記載のパーソナルオーディオデバイス。
【請求項16】
パーソナルオーディオデバイスによって周囲オーディオ音の影響を打ち消す方法であって、前記方法は、
基準マイクロホン信号を生成するために基準マイクロホンによって前記周囲オーディオ音を測定することと、
エラーマイクロホン信号を生成するために変換器の音響出力と前記周囲オーディオ音とをエラーマイクホンで測定することと、
前記基準マイクロホン信号から導出される第1の信号を受け取る第1の入力と、前記エラーマイクロホン信号から導出される第2の信号を受け取る第2の入力とを有する係数制御ブロックによって計算される係数によって制御される応答を有する適応フィルタを使用して、聴取者によって聞き取られる前記周囲オーディオ音の存在を低減するために前記基準マイクロホン信号から反雑音信号を適応的に発生させることと、
前記反雑音信号をソースオーディオと組み合わせることと、
前記組み合わせの結果を前記変換器に提供することと、
周囲音を検出し前記周囲音がエネルギーを有する1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定するために前記基準マイクロホン信号を分析することと、
前記周囲音の検出に応答し、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定した結果に適合するように、前記適応フィルタの前記検出された周囲音への前記応答の適応の感度を低減するように前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかの周波数成分を改変することによって、前記適応フィルタの前記応答の前記適応を改変することと
を含む方法。
【請求項17】
前記適応的に発生させることは、前記反雑音信号を、前記変換器の前記音響出力および前記周囲音を示すエラー信号から発生させることをさらに含み、前記方法は、
二次経路適応フィルタによって提供される二次経路応答を用いて、前記ソースオーディオを形成することと、
前記形成されたソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去することにより、前記エラー信号を発生させることと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記周波数成分を改変することは、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域と適合するように選択された固定応答を有する非適応フィルタを用いて、前記第1の信号または前記第2の信号をフィルタ処理することを含み、その結果として、前記適応フィルタの前記応答の前記適応の感度は、前記固定応答によって、1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域において低減される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
複数の所定の周波数応答の中から前記固定応答を選択することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記検出することは、前記基準マイクロホン信号および前記エラーマイクロホン信号の両方における前記周囲音を検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、前記周囲音の方向を決定することをさらに含み、前記改変することは、前記周囲音の決定された方向と適合するように、前記適応フィルタの前記応答の前記適応を選択的に改変する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記パーソナルオーディオデバイスは、前記聴取者の発話と前記周囲音とを示す近接発話マイクロホン信号を提供するために、前記パーソナルオーディオデバイスの筐体に搭載された近接発話マイクロホンを含み、前記検出することは、前記近接発話マイクロホン信号における前記周囲音をさらに検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記検出することは、前記基準マイクロホン信号の1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域の振幅を測定することによって、前記周囲音を検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
複数の所定の周波数または周波数帯域の中から前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を選択することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
外部ヘッドセットを前記パーソナルオーディオデバイスに接続することと、
前記外部ヘッドセットのタイプを検出することと、
をさらに含み、
前記検出することは、前記検出された前記外部ヘッドセットのタイプと適合するように、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定すること
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記検出することは、低周波数成分が存在するかどうか検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記検出することは、高周波数成分が存在するかどうか検出する、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記改変することは、前記適応フィルタの係数制御ブロックの更新レートを改変する、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
特定の変化率において前記適応フィルタの応答を所定の応答に復元する漏出特性によって前記適応フィルタの周波数応答の可変部分を制御することと、
前記周囲音の前記検出の結果と適合するように、前記特定の変化率を改変することと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記改変することは、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域において前記適応フィルタの前記応答の前記感度を低減する周波数成分を有する信号を投入することによって、前記第1の信号または前記第2の信号の周波数成分を改変する、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
パーソナルオーディオデバイスの少なくとも一部を実装するための集積回路であって、前記集積回路は、
出力信号を出力変換器に提供するための出力であって、聴取者へのプレイバックのためのソースオーディオと前記変換器の音響出力における周囲オーディオ音の影響を打ち消すための反雑音信号との両方を含む、出力信号を出力変換器に提供するための出力と、
前記周囲オーディオ音を示す基準マイクロホン信号を受信するための基準マイクロホン入力と、
前記変換器の前記音響出力と前記変換器における前記周囲オーディオ音とを示すエラーマイクロホン信号を受信するためのエラーマイクロホン入力と、
前記基準マイクロホン信号から導出される第1の信号を受け取る第1の入力と、前記エラーマイクロホン信号から導出される第2の信号を受け取る第2の入力とを有する係数制御ブロックによって制御される応答を有する適応フィルタを使用して、前記聴取者によって聞き取られる前記周囲オーディオ音の存在を低減するために、前記基準マイクロホン信号から前記反雑音信号を発生させる処理回路であって、前記処理回路は、周囲音を検出し前記周囲音がエネルギーを有する1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定するために前記基準マイクロホン信号を分析し、かつ、前記周囲音の検出に応答し、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域を決定した結果に適合するように、前記適応フィルタの前記応答の適応の前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域における感度を低減するように前記第1の信号または前記第2の信号の周波数成分を改変することによって前記適応フィルタの前記応答の前記適応を改変する、処理回路と
を備える、集積回路。
【請求項32】
前記処理回路は、前記ソースオーディオを形成する二次経路応答を有する二次経路フィルタと、前記聴取者に送達される組み合わせられた反雑音および周囲オーディオ音を示すエラー信号を提供するために、前記ソースオーディオを前記エラーマイクロホン信号から除去するコンバイナとをさらに実装し、前記係数制御ブロックの前記第2の入力が前記第2の信号として前記エラー信号を受け取って、前記適応フィルタの前記応答が、前記エラー信号および前記基準マイクロホン信号と適合するように制御される、請求項31に記載の集積回路。
【請求項33】
前記処理回路は、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域と適合するように選択された固定応答を有する非適応フィルタによって前記第1のまたは第2の信号の少なくとも1つをフィルタ処理し、その結果として、前記適応フィルタの前記応答の前記適応の感度は、前記固定応答によって、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域において低減される、請求項32に記載の集積回路。
【請求項34】
前記処理回路は、複数の所定の周波数応答の中から前記固定応答を選択する、請求項33に記載の集積回路。
【請求項35】
前記処理回路は、前記基準マイクロホン信号および前記エラーマイクロホン信号の両方における前記周囲音を検出する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項36】
前記処理回路は、前記周囲音の方向を決定し、前記処理回路は、前記周囲音の前記方向と適合するように、前記適応フィルタの前記適応を選択的に改変する、請求項35に記載の集積回路。
【請求項37】
前記聴取者の発話と前記周囲音とを示す近接発話マイクロホン信号を受信するための近接発話マイクロホン入力をさらに備え、前記処理回路は、前記近接発話マイクロホン信号における前記周囲音を検出する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項38】
前記処理回路は、前記基準マイクロホン信号の1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域の振幅を測定することによって、前記周囲音を検出する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項39】
前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域は、選択可能である、請求項38に記載の集積回路。
【請求項40】
前記出力に結合された外部ヘッドセットのタイプを検出するためのヘッドセットタイプ検出回路をさらに備え、前記処理回路は、前記外部ヘッドセットの検出されたタイプと適合するように、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域をさらに決定する、請求項38に記載の集積回路。
【請求項41】
前記検出することは、低周波数成分が存在するかどうか検出する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項42】
前記検出することは、高周波数成分が存在するかどうか検出する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項43】
前記改変することは、前記適応フィルタの係数制御ブロックの更新レートを改変する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項44】
前記処理回路は、漏出特性を有する前記適応フィルタの周波数応答の可変部分を制御し、特定の変化率において、前記適応フィルタの応答を所定の応答に復元し、前記処理回路は、前記周囲音の検出の結果と適合するように、前記特定の変化率を改変する、請求項31に記載の集積回路。
【請求項45】
前記処理回路は、前記1つまたはそれよりも多くの周波数または周波数帯域において前記適応フィルタの前記応答の前記感度を低減する周波数成分を有する信号を投入することによって、前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかの周波数成分を改変する、請求項31に記載の集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、概して、雑音消去を含む無線電話等のパーソナルオーディオデバイスに関し、より特定すると、周囲音における周波数または方向依存特性が検出され、それに応答して、反雑音信号についての措置が講じられるパーソナルオーディオデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
無線電話(モバイル/携帯電話、コードレス電話等)、およびMP3プレーヤ等の他の消費者オーディオデバイスおよびヘッドホンまたはイヤホン(earbud)が、広く使用されている。明瞭度に関するそのようなデバイスの性能は、周囲音響事象を測定するマイクロホンを使用して雑音消去を提供し、次いで、信号処理を使用して反雑音信号をデバイスの出力に挿入し、周囲音響事象を消去することによって、改良されることができる。
【0003】
無線電話等のパーソナルオーディオデバイスの周囲の音響環境は、劇的に変化し得るので、存在する雑音源およびデバイス自体の位置に応じて、そのような環境変化を加味するように雑音消去を適応させることが、望ましい。しかしながら、適応雑音消去は、ある種の周囲音に対して非効果的であり得るか、またはある種の周囲音に対して予想外の結果を提供し得る。
【0004】
したがって、ある種の周囲音の存在下で効果的雑音消去を提供する(無線電話を含む)パーソナルオーディオデバイスを提供することが、望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の開示
ある種の周囲音の存在下で雑音消去を提供するパーソナルオーディオデバイスを提供する上記で述べられている目的は、パーソナルオーディオデバイス、動作方法、および集積回路において達成される。方法は、パーソナルオーディオデバイス内に組み込まれ得るパーソナルオーディオデバイスおよび集積回路の動作方法である。
【0006】
パーソナルオーディオデバイスは、聴取者へのプレイバックのためのソースオーディオと、変換器の音響出力における周囲オーディオ音の影響を打ち消すための反雑音信号との両方を含むオーディオ信号を再生するために、筐体に搭載された変換器を有する筐体を含む。少なくとも1つのマイクロホンが、筐体に搭載され、周囲オーディオ音を示すマイクロホン信号を提供する。パーソナルオーディオデバイスは、反雑音信号が変換器において周囲オーディオ音の実質的消去を生じさせるように、反雑音信号をマイクロホン信号から適応的に発生させるための、適応雑音消去(ANC)処理回路を筐体内にさらに含む。エラーマイクロホンは、反雑音信号の適応を制御することにより周囲オーディオ音を消去するため、および処理回路の出力から変換器を通る電気−音響経路を補償するために含まれてもよい。ANC処理回路は、周波数依存特性を有する周囲音を検出し、ANC回路の適応に措置を講じ、破壊的であるか、非効果的であるか、または別様に性能を損なわせる反雑音の発生を回避する。
【0007】
別の側面では、ANC処理回路は、周波数依存特性の検出ありで、またはそれなしで周囲音の方向を検出し、さらに、ANC回路の適応に措置を講じ、破壊的であるか、非効果的であるか、または別様に性能を損なわせる反雑音の発生を回避する。
【0008】
本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面に図示されるように、本発明の好ましい実施形態の下記のより特定されている説明から明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、例示的な無線電話10の図示である。
【0010】
図2図2は、無線電話10内の回路のブロック図である。
【0011】
図3A図3A〜3Cは、図2のCODEC集積回路20のANC回路30を実装するために使用され得る種々の例示的なANC回路の信号処理回路および機能ブロックを描写するブロック図である。
図3B図3A〜3Cは、図2のCODEC集積回路20のANC回路30を実装するために使用され得る種々の例示的なANC回路の信号処理回路および機能ブロックを描写するブロック図である。
図3C図3A〜3Cは、図2のCODEC集積回路20のANC回路30を実装するために使用され得る種々の例示的なANC回路の信号処理回路および機能ブロックを描写するブロック図である。
【0012】
図4図4は、CODEC集積回路20内に実装され得る方向検出回路を描写するブロック図である。
【0013】
図5図5は、方向決定ブロック56の動作を図示する信号波形図である。
【0014】
図6図6は、CODEC集積回路20内の信号処理回路および機能ブロックを描写するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明を実行するための最良のモード
無線電話等のパーソナルオーディオデバイスに実装され得る雑音消去の技法および回路が、開示される。パーソナルオーディオデバイスは、周囲音響環境を測定してスピーカ(または、他の変換器)出力に投入される信号を発生させて周囲音響事象を消去する適応雑音消去(ANC)回路を含む。しかしながら、いくつかの音響事象または方向性に対しては、ANC回路の通常動作が、不適切な適応および誤りのある動作につながり得る。下記で示される例示的なパーソナルオーディオデバイス、方法、および回路は、特定の周波数特性または方向を有する周囲オーディオ音(ambient audio sound)を検出し、ANC回路の適応に措置を講じ、望ましくない動作を回避する。特に、自動車状況におけるモータヒス音(motor hiss)等の高周波数成分(high frequency content)は、変換器と、変換器出力を測定するエラーマイクロホンと、ユーザの耳との間の結合の高周波数応答における未知要素のため、良好に消去されない場合がある。車の雑音ゴロゴロ音(noise rumble)等の低周波数成分もまた、反雑音信号を再生する変換器の能力が低下するある周波数と、無線電話のイヤホンまたは内蔵スピーカが使用されているかどうかに応じて低周波数応答が低下する周波数とを下回ると、容易に消去されない。
【0016】
図1は、ヒトの耳5に近接する例示的な無線電話10を示す。図示される無線電話10は、本明細書で図示される技法が用いられ得るデバイスの例であるが、図示される無線電話10において、または後続図に描写される回路において具現化される要素または構成の全てが要求されるわけではないことが、理解される。無線電話10は、呼出音、記憶されたオーディオプログラム材料、近端発話、無線電話10によって受信されるウェブページまたは他のネットワーク通信からのソース、ならびに低バッテリ量および他のシステム事象通知等のオーディオ指標のような、他のローカルオーディオ事象とともに、無線電話10によって受信される遠隔発話を再生するスピーカSPKR等の変換器を含む。近接発話マイクロホンNSは、無線電話10から他の会話参加者(単数または複数)に伝送される近端発話を捕捉するために提供される。
【0017】
無線電話10は、反雑音信号をスピーカSPKRに投入することによりスピーカSPKRによって再生される遠隔発話および他のオーディオの明瞭度を改善する適応雑音消去(ANC)回路および特徴を含む。基準マイクロホンRは、周囲音響環境を測定するために提供され、近端発話が基準マイクロホンRによって生成される信号において最小限にされるように、ユーザ/話者の口の典型的な位置から離れて位置付けられる。第3のマイクロホンであるエラーマイクロホンEは、無線電話10が耳5に近く接近するとき、耳5に近接するスピーカSPKRによって再生されるオーディオ信号と組み合わせて周囲オーディオの測定値を提供することによって、ANC動作をさらに改善するために提供される。無線電話10内の例示的な回路14は、基準マイクロホンR、近接発話マイクロホンNS、およびエラーマイクロホンEから信号を受信し、無線電話送受信機を含むRF集積回路12等の他の集積回路と繋がっているオーディオCODEC集積回路20を含む。本発明の他の実施形態では、本明細書に開示される回路および技法は、MP3プレーヤオンチップ(player−on−a−chip)集積回路等のパーソナルオーディオデバイスの全体を実装するための制御回路および他の機能性を含む単一集積回路に組み込まれてもよい。
【0018】
概して、本明細書に開示されるANC技法は、基準マイクロホンRに飛び込む周囲音響事象(スピーカSPKRの出力および/または近端発話と対立するものである)を測定し、さらにエラーマイクロホンEに飛び込む同一の周囲音響事象を測定することによって、図示される無線電話10のANC処理回路は、基準マイクロホンRの出力から発生させられる反雑音信号を適応させることにより、エラーマイクロホンEに存在する周囲音響事象の振幅を最小限にする特性を有する。音響経路P(z)は、基準マイクロホンRからエラーマイクロホンEに延びるので、ANC回路は、本質的に、電気−音響経路S(z)の影響を除去した状態で組み合わせられた推定音響経路P(z)である。電気−音響経路S(z)は、CODEC IC 20のオーディオ出力回路の応答と、特定の音響環境におけるスピーカSPKRとエラーマイクロホンEとの間の結合を含むスピーカSPKRの音響/電気伝達関数とを表す。電気−音響経路S(z)は、耳5の近接度および構造と、無線電話10が耳5にしっかりと押し付けられていないときに無線電話10に近接し得る他の物理的物体およびヒト頭部構造とによって影響される。図示される無線電話10は、第3の近接発話マイクロホンNSを有する2つのマイクロホンANCシステムを含むが、別個のエラーマイクロホンおよび基準マイクロホンを含まない他のシステムも、上記で説明されている技法を実装することができる。代替として、近接発話マイクロホンNSは、上記で説明されているシステムにおける基準マイクロホンRの機能を果たすために使用されることができる。最後に、オーディオプレイバックのためだけに設計されたパーソナルオーディオデバイスでは、近接発話マイクロホンNSは、概して、含まれず、下記でさらに詳細に説明される回路における近接発話信号経路が、省略されることができる。
【0019】
次に、図2を参照すると、無線電話10内の回路が、ブロック図に示される。CODEC集積回路20は、基準マイクロホン信号を受信して基準マイクロホン信号のデジタル表現refを生成するためのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)21A、エラーマイクロホン信号を受信してエラーマイクロホン信号のデジタル表現errを生成するためのADC 21Bと、近接発話マイクロホン信号を受信して近接発話マイクロホン信号のデジタル表現nsを生成するためのADC 21Cとを含む。CODEC IC 20は、増幅器A1からスピーカSPKRまたはヘッドホンを駆動するための出力を発生させ、その増幅器は、コンバイナ26の出力を受信するデジタル/アナログコンバータ(DAC)23の出力を増幅する。ヘッドホンタイプ検出器27は、制御信号hptypeを介して情報をANC回路30に提供し、その情報は、ヘッドセットが接続されるかどうかに関し、随意に、接続されるヘッドセットのタイプに関する。ヘッドホンタイプ検出器27を実装するために使用され得るヘッドセットタイプ検出技法の詳細は、米国特許出願第13/588,021号「HEADSET TYPE DETECTION AND CONFIGURATION TECHNIQUES」に開示されており、それの開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。コンバイナ26は、内部オーディオソース24からのオーディオ信号ia、ANC回路30によって発生させられる反雑音信号anti−noiseを組み合わせ、その反雑音信号は、通例、基準マイクロホン信号refにおける雑音と同一の極性を有し、したがって、コンバイナ26によって減じられる。加えて、コンバイナ26はまた、無線電話10のユーザが無線周波数(RF)集積回路22から受信されるダウンリンク発話dsに適切に関連して自分自身の音声を聞き取れるように、近接発話信号nsの一部を組み合わせる。例示的な回路では、ダウンリンク発話dsが、ANC回路30に提供される。ダウンリンク発話dsおよび内部オーディオiaは、ソースオーディオ(ds+ia)がANC回路30内の二次経路適応フィルタを有する推定音響経路S(z)に与えられ得るように、ソースオーディオ(ds+ia)を提供するためにコンバイナ26に提供される。近接発話信号nsはまた、RF集積回路22に提供され、アンテナANTを介して、アップリンク発話としてサービスプロバイダに伝送される。
【0020】
図3Aは、図2のANC回路30を実装するために使用され得るANC回路30Aの詳細の一例を示す。適応フィルタ32は、基準マイクロホン信号refを受信し、理想的状況下で、その伝達関数W(z)をP(z)/S(z)となるように適応させ、反雑音信号anti−noiseを発生させ、その反雑音信号は、図2のコンバイナ26によって例示されるように、反雑音信号と変換器によって再生されるオーディオ信号とを組み合わせる出力コンバイナに提供される。適応フィルタ32の係数は、2つの信号の相関を使用して、適応フィルタ32の応答を決定するW係数制御ブロック31によって制御され、それは、概して、エラーマイクロホン信号errに存在する基準マイクロホン信号refのそれらの成分の間のエラーを(最小二乗平均的な意味において)最小限にする。W係数制御ブロック31によって処理される信号は、フィルタ34Bによって提供される経路S(z)の応答の推定値のコピーによって形作られるような基準マイクロホン信号refと、エラーマイクロホン信号errとを含む別の信号である。基準マイクロホン信号refを経路S(z)の応答の推定値のコピーである応答SECOPY(z)を用いて変換することと、エラーマイクロホン信号errを最小限にすることとによって、ソースオーディオのプレイバックに起因するエラーマイクロホン信号errの成分を除去した後、適応フィルタ32は、P(z)/S(z)の所望の応答に適応させられる。下記でさらに詳細に説明されるように、応答C(z)を有するフィルタ37Aは、フィルタ34Bの出力を処理し、第1の入力をW係数制御ブロック31に提供する。W係数制御ブロック31への第2の入力は、C(z)の応答を有する別のフィルタ37Bによって処理される。応答C(z)は、フィルタ37Aの応答C(z)に整合させられる位相応答を有する。フィルタ37Bへの入力は、エラーマイクロホン信号errおよびフィルタ応答SE(z)(応答SECOPY(z)は、そのコピーである)によって処理されたダウンリンクオーディオ信号dsの反転量(inverted amount)を含む。応答C(z)およびC(z)は、種々の機能を行なうことによって形作られる。応答C(z)およびC(z)の機能のうちの1つは、反雑音信号の応答が変換器SPKRの応答によって制限されるので、不適切な動作を生じさせてANCシステムにおいて何の目的も果たさない低周波数成分およびオフセットを除去することである。応答C(z)およびC(z)の別の機能は、消去が、条件に応じて、効果的であり得る場合とそうではない場合とがあるより高い周波数におけるANCシステムの適応をバイアスすることである。
【0021】
エラーマイクロホン信号errに加え、W係数制御ブロック31によってフィルタ34Bの出力とともに処理される他の信号は、フィルタ応答SE(z)(応答SECOPY(z)は、そのコピーである)によって処理されたダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaを含むソースオーディオ(ds+ia)の反転量を含む。ソースオーディオの反転量を投入することによって、適応フィルタ32は、エラーマイクロホン信号errに存在する比較的に大量のソースオーディオに適応することを防止される。経路S(z)の応答の推定値を用いてダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaの反転コピーを変換することによって、処理前のエラーマイクロホン信号errから除去されるソースオーディオは、エラーマイクロホン信号errに存在するソースオーディオ(ds+ia)の予期されるバージョンに整合するはずである。電気および音響経路S(z)が、エラーマイクロホンEに到達するために、ダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaによって辿られる経路であるので、除去されるソースオーディオ(ds+ia)の部分は、エラーマイクロホン信号errに存在するソースオーディオ(ds+ia)に整合する。フィルタ34Bは、それ自体は適応フィルタではないが、適応フィルタ34Aの応答に整合するように整調される調節可能応答を有し、その結果として、フィルタ34Bの応答が、適応フィルタ34Aの適応を追跡する。上記のものを実装するために、適応フィルタ34Aは、SE係数制御ブロック33によって制御される係数を有し、それは、コンバイナ36が、エラー信号eからエラーマイクロホンEに送達される予期されているソースオーディオを表すための、適応フィルタ34Aによってフィルタ処理された上記で説明されているフィルタ処理されたソースオーディオ(ds+ia)を除去した後、ソースオーディオ(ds+ia)およびエラーマイクロホン信号errを処理する。適応フィルタ34Aは、それによって、エラー信号eをダウンリンクオーディオ信号dsおよび内部オーディオiaから発生させるように適応させられ、それは、エラーマイクロホン信号errから減じられると、ソースオーディオ(ds+ia)に起因しないエラーマイクロホン信号errの成分を含む。
【0022】
周囲オーディオ音がANC回路30Aによって効果的に消去されることができない周波数依存特性を含むとき、非効果的かつ概して破壊的なANC動作を回避するために、ANC回路30Aは、フィルタ基準マイクロホン信号refを多数の離散周波数ビン(discrete frequency bin)にフィルタ処理する高速フーリエ変換(FFT)ブロック50と、ビンの各々における基準マイクロホン信号のエネルギーの指標を提供する振幅検出ブロック52とを含む。振幅検出ブロック52の出力は、ANC動作が非効果的であることまたは誤りのある適応または雑音消去を生じさせることが予期され得る基準マイクロホン信号refの1つまたはそれよりも多くの周波数帯域にエネルギーが存在するかどうかを決定する周波数特性決定論理54に提供される。どの周波数帯域が着目されるかは、プログラム可能であっても、パーソナルオーディオデバイス10の種々の構成に応答して選択可能であってもよい。例えば、異なる周波数帯域が、パーソナルオーディオデバイス10に接続されるヘッドセットのタイプを示す制御信号hptypeに応じて選択されてもよく、または周囲音周波数特性検出は、ヘッドセットが接続される場合、ディスエーブルであり得る。選択または所定周波数特性が基準マイクロホン信号refに存在するかどうかに応じて、周波数特性決定論理54は、ANC回路の不適切な適応/動作を防止するための措置を講じる。特定すると、図3Aに与えられる例では、周波数特性決定論理54は、制御信号halt Wをアサートすることによって、W係数制御ブロック31の動作を停止する。代替として、または組み合わせて、周波数特性決定論理54が、特定の周波数依存特性が周囲音で検出されたことを示す場合、制御信号halt Wは、W係数制御ブロック31の更新レートを低下させるレート制御信号rateを用いて置換または補足されてもよい。別の代替として、周波数特性決定論理54は、フィルタ37Bの応答C(z)およびフィルタ37Aの応答C(z)に対する複数の応答の中から選択することによって、適応フィルタ32の応答W(z)の適応を改変し得、その結果として、基準マイクロホンrefにおいて受信される実際の周囲信号の周波数依存特性に応じて、特定の周波数における係数制御ブロック31の応答性が、変更されることができ、それゆえに、適応は、ANC回路30Aによって検出された周囲音の周波数成分に応じて、増減され得る。例証的な例は、基準マイクロホン信号refのみの分析を使用して、周囲音の周波数依存特性を検出するが、近接発話マイクロホンNSも、実際の近接発話条件が適切に取り扱われる限り、使用されることができ、代替として、エラーマイクロホンEは、ユーザの耳が周囲音を遮蔽しないある条件下、またはそのような周波数において使用されることができる。さらに、二重の基準マイクロホンを含む複数のマイクロホンが、高速フーリエ変換(FFT)ブロック50に入力を提供するために使用されることができ、それは、代替として、離散フーリエ変換(DFT)等の他のフィルタ処理/分析技法または無限インパルス応答(IIR)バンドパスフィルタ等の並列セットのフィルタを使用し得る。
【0023】
次に、図2のANC回路30を実装するために代替として使用され得る別のANC回路30Bの詳細である図3Bを参照する。ANC回路30Bは、図3AのANC回路30Aに類似し、したがって、それらの間の差異のみが、下記で説明される。ANC回路30Bでは、ANC回路30Bに応答W(z)を実装するために、適応フィルタを採用するのではなく、固定応答WFIXED(x)が、フィルタ32Aによって提供され、応答WADAPT(z)の適応部分が、適応フィルタ32Bによって提供される。フィルタ32Aおよび32Bの出力は、コンバイナ36Bによって組み合わせられ、固定部分および適応部分を有する全応答を提供する。W係数制御ブロック31Aは、制御可能漏出応答を有する。すなわち、応答は、応答が経時的に平坦周波数応答または別の所定の初期周波数応答となる傾向があるような時間変数であり、その結果として、いかなる誤りのある適応も、経時的に適応を取り消すことによって補正される。ANC回路30Bでは、周波数特性決定論理54は、制御信号leakageを用いて漏出のレベルを制御し、それは、2つの状態(すなわち、漏出イネーブルまたはディスエーブル)のみを有し得るか、またはWADAPT(z)を初期応答に復元するために適用される漏出の時間定数または更新レートを制御する値を有し得る。
【0024】
次に、図3Cを参照すると、別のANC回路30Cの詳細が、図2のANC回路30を実装するために使用され得る別の例示的な回路に従って示される。ANC回路30Cは、図3AのANC回路30Aに類似し、したがって、それらの間の差異のみが、下記で説明される。ANC回路30Cは、図3AのANC回路30Aおよび図3BのANC回路30Bにおけるような周波数特性決定要素、すなわち、FFTブロック50および振幅検出52を含むが、さらに、周囲音がやってくる方向を推定する方向決定ブロック56を含む。組み合わせられた周波数および方向決定論理59は、適応フィルタ32の応答W(z)の適応に措置を講じる制御出力を発生させ、それは、図示されるように、W係数制御ブロック31によって発生させられる係数の更新を停止させるか、または更新レートを変化させる制御信号halt Wまたはrateであり得る。他の出力も、追加または代替として、図3AのANC回路30AおよびANC回路30Bにおけるように、適応フィルタ32の応答W(z)の適応(例えば、ANC回路30Aにおけるようなフィルタ37Bの応答C(z)およびフィルタ37Aの応答C(z)の選択、またはANC回路30Bにおけるような応答W(z)の漏出の調節)を制御してもよい。やってくる周囲音の方向を測定するために、近接発話マイクロホンNSまたはエラーマイクロホンE等の別のマイクロホンと組み合わせて、基準マイクロホンRによって提供され得る2つのマイクロホンが、必要とされる。しかしながら、実際の近接発話を周囲音から区別する問題と、パーソナルオーディオデバイス10がユーザの耳に対しているときに周囲環境へのエラーマイクロホンEの異なる応答とを回避するために、図3CにおけるANC回路30Cへの入力として図示される2つの基準マイクロホン信号ref1およびref2を発生させるために、2つの基準マイクロホンを提供することが、有用である。基準加重ブロック57が、周波数および方向決定論理59によって提供される制御信号ref mix ctrlによって制御され、それは、基準マイクロホン信号ref1とref2とを選択するか、またはそれらを異なる利得と組み合わせ、周囲音の最良測定値を提供することによって、ANC回路30Cの性能を改善し得る。
【0025】
加えて、図3Cは、図3AのANC回路30A内および図3BのANC回路30B内のいずれかに随意に含まれ得る適応フィルタ32の応答W(z)の適応を改変するためのさらに別の技法を図示する。応答W(z)の漏出の調節またはW係数制御ブロック31への入力の応答の調節ではなく、ANC回路30Cは、適応フィルタ32Cによって提供される適応フィルタ32の応答W(z)のコピーWCOPY(z)に供給される雑音発生器37を使用して、雑音信号n(z)を投入する。コンバイナ36Cは、雑音信号noise(z)をW係数制御31に提供される適応フィルタ34Bの出力に追加する。フィルタ32Cによって形作られるような、雑音信号n(z)は、雑音信号n(z)がW係数制御31への相関入力に非対称的に追加されるように、コンバイナ36Dによってコンバイナ36の出力から減じられ、その結果として、適応フィルタ32の応答W(z)が、雑音信号n(z)の完全に相関させられた投入によって、W係数制御31への各相関入力にバイアスされる。投入された雑音は、W係数制御31への基準入力に直接的に現れ、エラーマイクロホン信号errには現れず、コンバイナ36Dによるフィルタ32Cの出力におけるフィルタ処理された雑音の組み合わせを介して、W係数制御31への他の入力のみに現れるので、W係数制御31は、応答W(z)を適応させ、雑音信号n(z)に存在する周波数を減衰させる。雑音信号n(z)の成分は、反雑音信号には現れないが、適応フィルタ32の応答W(z)にのみ現れ、雑音信号n(z)がエネルギーを有する周波数/帯域において振幅減少を有する。パーソナルオーディオデバイス10に到達する周囲音の周波数成分またはそれの方向に応じて、周波数および方向決定論理ブロック59は、制御信号noise adjustを改変し、雑音発生器37によって投入されるスペクトルを選択することができる。
【0026】
次に、図4を参照すると、ANC回路30Cの例示的な方向決定ブロック56の詳細が、示される。方向決定ブロック56はまた、ANC回路30AまたはANC回路30Bにおける周波数特性決定回路の代替として、またはそれと組み合わせて、使用されてもよい。方向決定ブロック56は、一対の基準マイクロホン、または基準マイクロホンR、エラーマイクロホンE、および近接発話マイクロホンNSのうちの任意の2つまたはそれよりも多くの組み合わせであり得る2つのマイクロホンを使用することによって、周囲音の方向についての情報を決定する。相互相関が、上記のマイクロホンの任意の組み合わせの出力であり得るマイクロホン信号、例えば、例示的なマイクロホン信号mic1およびmic2に対して行なわれる。相互相関は、マイクロホン信号mic1およびmic2の両方に存在する周囲音の間の遅延を示す波形である遅延確信度を算出するために使用される。遅延確信度は、(T)*ρmic1*mic2(T)として定義され、式中、ρmic1*mic2(T)は、マイクロホン信号mic1とmic2との相互相関であり、T=arg max[ρmic1*mic2(T)]であり、それは、マイクロホン信号mic1とmic2との相互相関ρmic1*mic2(T)の値が最大値である時間である。遅延推定回路62は、相互相関関数の結果から実際の遅延を推定し、決定論理ブロック59は、検出された周囲音の方向に応じて、ANC回路の適応に措置を講じるかどうかを決定する。決定論理ブロック59は、加えて、周波数依存特性および方向性情報(directional information)の組み合わせが、W(z)適応の停止、図3Bの例における漏出の増加、または図3Aの例におけるフィルタ37Bの応答C(z)およびフィルタ37Aの応答C(z)のための代替応答の選択等の措置を講じるべきかどうか決定するために使用され得るように、図3Bの周波数特性決定論理54から入力を受信してもよい。
【0027】
次に、図5を参照すると、図4に描写される回路内の信号の信号波形図が、示される。時間tでは、周囲音が、基準マイクロホンRに到達し、第1のマイクロホン信号mic1の例である基準マイクロホン信号refに現れる。時間tでは、同一の周囲音が、エラーマイクロホンEに到達し、第2のマイクロホン信号mic2の例であるエラーマイクロホン信号errに現れる。エラーマイクロホン信号errおよび基準マイクロホン信号refの遅延確信度(T)*ρref*err(T)が、図示される。時間tにおける遅延確信度(T)*ρref*err(のピーク値は、基準マイクロホンRにおける到達時間とエラーマイクロホンEにおける到達時間との間の遅延を示す。したがって、図5の略図に到達する第1の周囲音について、方向は、基準マイクロホンに向かっており、したがって、周波数特性決定論理54または別の問題検出源からの何らかの逆指標がなければ、ANC回路が、周囲音を効果的に消去し得ることが予期され得る。しかしながら、図5に示される第2の周囲音は、時間tにおいてエラーマイクロホンEに、次いで、時間tにおいて基準マイクロホンに到達しており、これは、周囲音が、エラーマイクロホンEの方向から来ていて、特に、周囲音の周波数成分がANC有効性の上限近傍である場合、ANCシステムによって効果的に消去されることができない可能性があることを示す。方向は、遅延確信度(T)*ρref*err(T)の逆極性に示される。したがって、周囲音が、基準マイクロホンRではなく、変換器およびエラーマイクロホンEの方向から来ているという十分な信頼性がある時間tにおいて、決定論理64は、制御信号halt Wをアサートし、応答W(z)の係数の更新を中止する。代替として、漏出の増加またはフィルタ37BのC(z)およびフィルタ37Aの応答C(z)のための異なる応答の選択等の他の措置も、そのような条件の検出に応答して、行なわれ得る。図4および図5に図示される例は、例証にすぎず、一般に、反復的なまたはより長い周囲音についての観測が、ANCシステムにおいて問題となって介入を要求し得る周囲音の方向を効果的に識別するために行なわれてもよい。特に、処理および電気音響経路遅延は、入ってくる周囲音に反応してそれを消去するためのANC回路の能力に影響を及ぼすので、周囲音が、エラーマイクロホンにおける周囲音の到達前の所定の時間区間未満に、基準マイクロホンに到達する場合、ANC回路が、その条件に応答して、ANC挙動を改変しないことを決定し得る基準を適用することが、概して必要である。
【0028】
次に、図6を参照すると、図3に描写されるようなANC技法を実装するため、および図2のCODEC集積回路20内に実装され得るような処理回路40を有するためのANCシステムのブロック図が、示される。処理回路40は、メモリ44に結合されるプロセッサコア42を含み、そのメモリに、上記で説明されているANC技法の一部または全部ならびに他の信号処理を実装し得るコンピュータプログラム製品を含むプログラム命令が記憶されている。随意に、専用のデジタル信号処理(DSP)論理46が、処理回路40によって提供されるANC信号処理の一部、または代わりにそれの全部を実装するために提供されてもよい。処理回路40はまた、基準マイクロホンR、エラーマイクロホンE、および近接発話マイクロホンNSから入力をそれぞれ受信するために、ADC 21A〜21Cを含む。DAC23および増幅器A1もまた、上記で説明されているような反雑音を含む変換器出力信号を提供するために、処理回路40によって提供される。
【0029】
本発明は、特に、その好ましい実施形態を参照して図示および説明されたが、形態および詳細における前述および他の変形例は、本発明の精神および範囲から逸脱することなくそこで行なわれてもよいことが、当業者によって理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6