(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、前記信号処理システムは対応する前記活動電位持続時間及び前記拡張期間隔を推定するため、前記サイクル長の各々をランダムに分割するようにさらに構成されるカテーテルシステム。
請求項1〜8の何れか一項に記載のカテーテルシステムにおいて、前記信号処理システムは前記活動電位持続時間回復曲線を複数の前記電極の各々に対して生成するようにさらに構成されるカテーテルシステム。
請求項1〜9の何れか一項に記載のカテーテルシステムにおいて、複数の前記電極の少なくとも一つは所定のペーシングプロトコルを制定し、所定の前記ペーシングプロトコルに応じて心臓の前記活性化信号を感知するようにさらに構成されるカテーテルシステム。
請求項1〜10の何れか一項に記載のカテーテルシステムにおいて、前記信号処理システムは生成された前記活動電位持続時間回復曲線に基づいて前記解剖学的構造の解剖学的マップを生成するようにさらに構成されるカテーテルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記に鑑みて、最適化された活動電位持続時間及び拡張期間隔に基づいて
活動電位持続時間回復曲線を生成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
心臓カテーテルによって感知された内因性心臓活性化信号から解剖学的構造をマッピングするための方法、並びに、このような方法を用いた解剖学的マッピングシステムの様々な実施形態が本明細書に開示される。
【0005】
実施例1では、解剖学的構造をマッピングするためのカテーテルシステムは
心臓の活性化信号を感知するように構成された複数の電極を備え、複数の電極は解剖学的構造内、又は、解剖学的構造の周辺に配置され、
心臓の活性化信号の各々は関連するサイクル長を有する。また、カテーテルシステムは複数の電極と関連した信号処理システムを備え、信号処理システムはサイクル長の各々に対する活動電位持続時間及び拡張期間隔を推定し、推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔に基づいて初期の回復曲線を生成し、推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の間の機能的関連性を最大化するため、推定された活動電位持続時間の各々、及び、対応する拡張期間隔を反復的に最適化し、且つ、最適化された活動電位持続時間及び拡張期間隔に基づいた最終的な活動電位持続時間回復曲線を生成するように構成される。
【0006】
実施例2では、実施例1に記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは対応する活動電位持続時間及び拡張期間隔を推定するため、サイクル長の各々をランダムに分割するようにさらに構成される。
【0007】
実施例3では、実施例1又は2に記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは推定された活動電位持続時間の各々、及び、対応する拡張期間隔を第一分解能で反復的に最適化し、且つ、推定された活動電位持続時間の各々、及び、対応する拡張期間隔を第一分解能で最適化した後に第二分解能で反復的に最適化し、第二分解能は第一分解能よりも高いようにさらに構成される。
【0008】
実施例4では、実施例1〜3の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の各々を一組にする二次元データセットを生成し、且つ、初期の回復曲線を生成するために二次元データセットをプロットするようにさらに構成される。
【0009】
実施例5では、実施例1〜4の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、機能的関連性を最大化するため、信号処理システムは推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の間の相互情報量を最大化すること、推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の最大情報係数値を最大化すること、推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の間の間隔の相関尺度を最大化することの少なくとも一つを実行するようにさらに構成される。
【0010】
実施例6では、実施例1〜5の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの類似性を最大化するようにさらに構成される。
実施例7では、実施例6に記載のカテーテルシステムにおいて、類似性を最大化するため、信号処理システムは生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの相関係数を最大化すること、生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの平均二乗誤差を最小化することの少なくとも一つを実行するようにさらに構成される。
【0011】
実施例8では、実施例6又は7に記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは所定の回復テンプレートが指数関数、シグモイド関数、及び、前に生成されて最適化された回復曲線の何れかに対応するように、類似性を最大化するようにさらに構成される。
【0012】
実施例9では、実施例1〜8の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは活動電位持続時間回復曲線を複数の電極の各々に対して生成するようにさらに構成される。
実施例10では、実施例1〜9の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、複数の電極の少なくとも一つは所定のペーシングプロトコルを制定し、所定のペーシングプロトコルに応じて
心臓の活性化信号を感知するようにさらに構成される。
【0013】
実施例11では、実施例1〜10の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは生成された活動電位持続時間回復曲線に基づいて解剖学的構造の解剖学的マップを生成するようにさらに構成される。
【0014】
実施例12では、解剖学的構造をマッピングするためのカテーテルシステムは心臓活性化信号を感知するように構成された複数の電極を備え、複数の電極は解剖学的構造内、又は、解剖学的構造の周辺に配置され、心臓活性化信号の各々はサイクル長に関連する。また、カテーテルシステムは複数の電極と関連した信号処理システムを備え、信号処理システムはサイクル長の各々を活動電位持続時間及び拡張期間隔に分割し、データ点の各々が活動電位持続時間、及び、直前の拡張期間隔を含むように回復データセットを生成し、データ点の二次元プロットを生成し、二次元プロットは個別のグリッド位置の事前に定義されたグリッドを有し、回復データセット内の機能的関連性を決定し、データ点の各々が一つのグリッド位置から別のグリッド位置へとずれるようにサイクル長の各々の分割を調整し、回復データセット内の機能的関連性を最大化するために調整及び決定のステップを反復し、且つ、最大化された機能的関連性に対応する回復データセットに基づいて活動電位持続時間回復曲線を生成するように構成される。
【0015】
実施例13では、実施例12に記載のカテーテルシステムにおいて、機能的関連性を最大化するため、信号処理システムは推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の間の相互情報量を最大化すること、推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の最大情報係数値を最大化すること、推定された活動電位持続時間、及び、前サイクル長から推定された拡張期間隔の間の間隔の相関尺度を最大化することの少なくとも一つを実行するようにさらに構成される。
【0016】
実施例14では、実施例12又は13の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、機能的関連性を最大化するため、信号処理システムは生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの類似性を最大化するようにさらに構成される。
実施例15では、実施例14に記載のカテーテルシステムにおいて、類似性を最大化するため、信号処理システムは生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの相関係数を最大化すること、生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの平均二乗誤差を最小化することの少なくとも一つを実行するようにさらに構成される。
【0017】
実施例16では、実施例14又は15に記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは所定の回復テンプレートが指数関数、シグモイド関数、及び、前に生成されて最適化された回復曲線の何れかに対応するように、類似性を最大化するようにさらに構成される。
【0018】
実施例17では、実施例12〜16の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、機能的関連性が最大化された後、信号処理システムは所定のグリッドの分解能を高め、且つ、機能的関連性が回復データセット全体にわたってさらに増加するまで調整及び決定のステップを反復するようにさらに構成される。
【0019】
実施例18では、実施例12〜17の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、複数の電極の少なくとも一つは所定のペーシングプロトコルを制定し、所定のペーシングプロトコルに応じて心臓活性化信号を感知するようにさらに構成される。
【0020】
実施例19では、実施例18に記載のカテーテルシステムにおいて、複数の電極の少なくとも一つは統計的分布からサンプリングされたパルス間の間隔のランダムなペーシングパルスの少なくとも一つを含む所定のペーシングプロトコルを制定するように構成される。
【0021】
実施例20では、実施例12〜19の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは活動電位持続時間回復曲線を生成することに基づいて心臓マップを生成するようにさらに構成される。
実施例21では、解剖学的構造をマッピングするためのカテーテルシステムは、
心臓の活性化信号を感知するように構成された複数の電極を備え、複数の電極は解剖学的構造内、又は、解剖学的構造の周辺に配置され、
心臓の活性化信号の各々は関連するサイクル長を有する。また、カテーテルシステムは複数の電極と関連した信号処理システムを備え、信号処理システムは活動電位持続時間と前サイクル長との関数を生成し、生成された関数に基づいてサイクル長の各々を活動電位持続時間及び拡張期間隔に分割し、且つ、分割された活動電位持続時間、及び、前拡張期間隔に基づいて活動電位持続時間回復曲線を生成するように構成される。
【0022】
実施例22では、実施例21に記載のカテーテルシステムにおいて、関数を生成するため、信号処理システムは前サイクル長に基づいて活性化信号の各々のサイクル長のヒストグラムを生成し、生成されたヒストグラムに基づいてサイクル長の不応期を決定し、決定された不応期に基づいて活動電位持続時間を推定し、且つ、ヒストグラムを生成し、不応期を決定し、活動電位持続時間を推定するステップを複数の前サイクル長に対して反復するようにさらに構成される。
【0023】
実施例23では、実施例22に記載のカテーテルシステムにおいて、ヒストグラムを生成するため、信号処理システムは記録されたサイクル長の範囲を決定し、決定された範囲を等間隔のビンに分割し、三つの連続した活性化信号による全ての三つ組を識別し、且つ、第一のサイクル長のビンを共有する三つ組に対する第二及び第三の活性化信号のためのサイクル長のヒストグラムを生成するようにさらに構成される。
【0024】
実施例24では、実施例23に記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは不応期を全てのサイクル長のビンに対して決定するようにさらに構成される。
実施例25では、実施例23に記載のカテーテルシステムにおいて、不応期を決定するため、信号処理システムは生成されたヒストグラムのゼロから所定の閾値に少なくとも等しい数の第一のビンまでの間の領域を識別し、且つ、識別された領域に従って不応期を決定するようにさらに構成される。
【0025】
実施例26では、実施例22〜25の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは推定された活動電位持続時間を不応期の期間とするようにさらに構成される。
実施例27では、実施例22〜26の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、不応期を決定するため、信号処理システムは生成されたヒストグラムに滑らかな関数を適合し、生成されたヒストグラムのゼロから滑らかな関数が所定の閾値を下回る点までの間の領域を不応期として識別するようにさらに構成される。
【0026】
実施例28では、実施例27に記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは生成されたヒストグラムに滑らかなシグモイド関数である滑らかな関数を適合するように構成される。
実施例29では、実施例21〜28の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、複数の電極の少なくとも一つは所定のペーシングプロトコルを制定し、所定のペーシングプロトコルに応じて
心臓の活性化信号を感知するようにさらに構成される。
【0027】
実施例30では、実施例21〜29の何れかに記載のカテーテルシステムにおいて、信号処理システムは活動電位持続時間回復曲線を生成することに基づいて心臓マップを生成するようにさらに構成される。
複数の実施形態が開示されているが、当業者には、本発明の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに他の実施形態が明らかとなるであろう。従って、図面及び詳細な説明は当然例示としてみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明には様々な改変形態及び代替形態の可能性があるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、且つ、以下に詳細に説明されている。しかしながら、本発明を記載された特定の実施形態に限定することは意図しない。それどころか、本発明は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にある全ての改変形態、均等物、及び代替形態を包含することを意図する。
【0030】
図1は、診断又は治療目的のために体内の標的とする組織領域にアクセスするためのシステム10の概略図である。
図1は一般に、心臓の左心室内に配置されたシステム10を示す。あるいは、システム10は左心房、右心房、又は右心室のような心臓の他の領域内に配置することもできる。図示の実施形態は心筋組織を焼灼するために用いられるシステム10を示しているが、システム10(及び、本明細書に記載された方法)はあるいは、前立腺、脳、胆嚢、子宮、及び身体の他の領域の組織を焼灼する行為のような、他の組織焼灼用途で用いられるように構成されてもよく、必ずしもカテーテルベースのシステムに限られない。
【0031】
システム10は、マッピングプローブ14及びアブレーションプローブ16を含む。
図1において、それぞれが別々に適切な経皮アクセスを介し、静脈又は動脈(例えば、大腿静脈又は大腿動脈)を通して選択された心臓領域12に挿入される。あるいは、マッピングプローブ14及びアブレーションプローブ16は、心臓領域12における同時挿入及び同時配置のための一体構造に組み込むことができる。
【0032】
マッピングプローブ14は可撓性のあるカテーテル本体18を有している。カテーテル本体18の先端は三次元複数電極構造20を支持している。図示の実施形態において、構造20は開放された内部空間22(
図2参照)を定義するバスケットの形態をとるが、電極構造及び電極位置の幾何学的構造が知られている他の複数電極構造を用いることもできる。複数電極構造20は、各々が電極位置及びチャンネルを有する複数のマッピング電極24を支持している。各電極24は焼灼行為を実行すべき解剖学的領域内の内因性生理活動を感知するように構成される。いくつかの実施形態において、電極は解剖学的構造、例えば心臓活動の活性化時間内における内因性生理活動の活性化信号を検出するように構成される。
【0033】
電極24は処理システム32に電気的に接続される。信号線(図示なし)はバスケット構造20上の各電極24に電気的に接続される。より詳細に後述するように、信号線はプローブ14の本体18を通して延び、各電極24を処理システム32の入力へと電気的に接続する。電極24は解剖学的領域、例えば心筋組織における内因性電気的活動を感知する。感知された活動、例えば活性化信号は焼灼に適した心臓内の部位を特定するため、解剖学的マップ、例えば活動電位持続時間(APD)の回復曲線、又は、伝導速度(CV)の回復曲線を生成することによって医師を支援するため、処理システム32によって処理される。
【0034】
アブレーションプローブ16は一つ以上のアブレーション電極36を支持する可撓性のあるカテーテル本体34を含む。一つ以上のアブレーション電極36は、一つ以上のアブレーション電極36にアブレーションエネルギーを送達するように構成された無線周波数(RF)発生装置37に電気的に接続される。アブレーションプローブ16は構造20と同様に、治療されるべき解剖学的特徴に対して移動可能である。アブレーションプローブ16は、一つ以上のアブレーション電極36が治療されるべき組織に対して位置決めされるときに、構造20の電極24の間に、又は隣接して位置決め可能である。
【0035】
処理システム32は生成されたAPDマップを医師に対して表示装置40に出力する。図示の実施形態において、処理システム32は出力表示装置40(例えば、CRT、LEDディスプレイ、又はプリンタ)を含む。表示装置40は医師にとって最も有用な形式でAPDマップを表示する。また、処理システム32は焼灼のために特定された部位において組織と接触するようにアブレーション電極36を操作する際に医師を支援する、表示装置40上のディスプレイのための位置特定出力を生成してもよい。
【0036】
図2は、
図1に示すシステム10において用いられるのに適した先端に電極24を含むマッピングカテーテル14の一実施形態を示す。マッピングカテーテル14は可撓性のあるカテーテル本体18と、マッピング電極又はセンサ24を支持するように構成された三次元構造20を支持する先端とを有している。マッピング電極24は心筋組織内の内因性電気的活動、例えば活性化信号を感知し、感知された活動は生成及び表示された
APD回復曲線を介して心拍障害又は他の心筋病変を有する部位を特定する際に医師を支援するため、処理システム32によって処理される。このプロセスは一般に、マッピングと呼ばれる。特定された部位に焼灼のような適切な治療を適用するための適切な位置を決定するため、且つ、特定された部位に一つ以上のアブレーション電極36を誘導するため、この情報を用いることができる。
【0037】
図示の三次元構造20はベース部材41及びエンドキャップ42を含み、その間において可撓性のあるスプライン44は一般に、周方向に空間を形成した関係で延びている。上述のように、三次元構造20は開放された内部空間22を定義するバスケットの形態をとる。いくつかの実施形態において、スプライン44はニチノール金属又はシリコーンゴムのような弾力性のある不活性材料で形成され、接触する組織表面に沿って曲げられて適合するため、弾力性があり、予め緊張された状態で、ベース部材41及びエンドキャップ42の間に接続される。図示の実施形態において、8個のスプライン44が三次元構造20を形成している。他の実施形態においては、追加の、又はより少ないスプライン44を用いることができる。図示のように、各スプライン44は8個のマッピング電極24を支持している。三次元構造20の他の実施形態においては、追加の、又はより少ないマッピング電極24を各スプライン44上に配置することができる。図示の実施形態において、三次元構造20は比較的小さい(例えば、直径40mm以下)。代替実施形態においては、三次元構造20はより大きい(例えば、直径40mm以上)。
【0038】
スライド可能なシース50はカテーテル本体
18の長軸に沿って移動可能である。シース50を前方に(すなわち、先端に向かって)移動させることによって、シース50に三次元構造20が詰められ、従って構造20は例えば心臓内のような内部空間への挿入に適した、コンパクト且つロープロファイルな状態に潰される。対照的に、シース50を後方に(すなわち、基端に向かって)移動させることによって、三次元構造20を解放し、構造20が弾性的に拡張し、
図2に示す予め緊張された状態をとることを許容する。三次元構造20の実施形態のさらなる詳細は、本明細書においてその全体が参考として取り入れられた「複数電極支持機構(Multiple Electrode Support Structures)」と題される米国特許第5,647,870号に開示されている。
【0039】
信号線(図示なし)は各マッピング電極24に電気的に接続される。信号線はマッピングカテーテル14の本体
18を通してハンドル54内に延長され、多ピンコネクタであり得る外部コネクタ56に接続される。コネクタ56はマッピング電極24を処理システム32に電気的に接続する。マッピングシステム、及び、マッピングカテーテルによって生成された信号処理のための方法のさらなる詳細は、「可動電極要素を複数電極構造体内で誘導するためのシステム(Systems and Methods for Guiding Movable Electrode Elements within Multiple−Electrode Structure)」と題される米国特許第6,070,094号、「心臓マッピング及びアブレーションシステム(Cardiac Mapping and Ablation Systems)」と題される米国特許第6,233,491号、「体腔の登録マップの精緻化のためのシステム及びプロセス(Systems and Processes for Refining a Registered Map of a Body Cavity)」と題される米国特許第6,735,465号に記載されており、これらの開示は本明細書において参考として取り入れられている。
【0040】
他の複数電極構造をマッピングカテーテル14の先端に配置することができることに留意されたい。また、複数のマッピング電極24が例えば
図2に示す単一のマッピングカテーテル14ではなく、複数の構造上に配置されてもよいことに留意されたい。例えば、複数のマッピング構造とともに左心房内にマッピングされた場合、複数のマッピング電極を支持する冠状静脈洞カテーテルと、左心房内に配置された複数のマッピング電極を支持するバスケットカテーテルとを含む構成が用いられてもよい。他の例として、複数のマッピング構造とともに右心房内にマッピングされた場合、冠状静脈洞内に配置するための複数のマッピング電極を支持する10極カテーテルと、三尖弁輪の周辺に配置するための複数のマッピング電極を支持するループカテーテルとを含む構成が用いられてもよい。
【0041】
マッピング電極24はマッピングカテーテル14のような専用のマッピングプローブによって支持されていると記載されているが、マッピング電極は非マッピング専用プローブ又は多機能プローブ上に支持されてもよい。例えば、アブレーションカテーテル16のようなアブレーションカテーテルはカテーテル本体の先端上に配置され、
信号処理システム32に接続された一つ以上のマッピング電極24を含むように構成することができる。他の例として、アブレーションカテーテルの先端のアブレーション電極はマッピング電極としても動作するよう、信号処理システム32に接続されてもよい。
【0042】
システム10の動作を説明するため、
図3は複数のマッピング電極24を含むバスケット構造20の一実施形態の概略側面図を示す。図示の実施形態において、バスケット構造は64個のマッピング電極24を含む。マッピング電極24は8個のスプライン(A、B、C、D、E、F、G、及びH)の各々の上の、8個の電極のグループ(1、2、3、4、5、6、7、及び8)に配置されている。64個のマッピング電極24の構成がバスケット構造20上に配置されて示されているが、マッピング電極24は代わりに異なる数、異なる構造、及び異なる位置の少なくとも一つにおいて配置されてもよい。また、複数のバスケット構造は異なる解剖学的構造から信号を同時に取得するため、同じ、又は異なる解剖学的構造に配置することができる。
【0043】
バスケット構造20が治療されるべき解剖学的構造(例えば、心臓の左心房、左心室、右心房、又は右心室)に隣接して位置決めされた後、処理システム32は解剖学的構造の生理活動に関連した各電極24のチャンネルからの活性化信号を記録するように構成される。すなわち、電極24は解剖学的構造の生理機能に固有の電気的活性化信号を測定する。生理活動の活性化信号は、内因性生理活動に応じて、又は、複数の電極24の少なくとも一つにより制定された所定のペーシングプロトコルに基づいて、感知することができる。処理システム32は前拡張期間隔(pDI)と活動電位持続時間との間、並びに、前拡張期間隔と解剖学的構造の伝導速度との間の相関情報に基づいて回復曲線を決定するように構成することができる。あるいは、処理システム32は活動電位持続時間と前拡張期間隔(pDI)との間の相関に基づいたヒストグラムを用いた回復曲線を決定するように構成することができる。回復曲線は心臓の病変、例えば心不整脈を特定し、又は特徴づけようとする際に医師にとって有用になる。
【0044】
図4はサイクル長(CL)、並びに、活動電位持続時間(APD)、すなわち活動から同じ拍の回復までの期間と、拡張期間隔(DI)、すなわち現在の拍の回復から次の拍の活動までの期間とで構成された二つの連続した拍の活動の間の期間を含む活動電位を示す。APDを決定する要因の一つは、
前CLである。CLが一定の場合、APDも一定となる。しかしながら、CLが短く、又は長くなった場合、現在のAPDはそれぞれ短く、又は長くなる。APDの変化と前DI(pDI)の変化との関係は回復として知られている。回復は解剖学的構造、例えば心臓組織の回復特性を反映し、医師が診断をする際に重要となる。
【0045】
図5に示すように、回復曲線はpDI(又はCL)に対するAPDの変化をプロットしたものであり、異常な信号伝導及び細動の少なくとも一方のような心臓の病態を理解する上で重要である。回復曲線はまた、活性化信号の伝播を可視化するため、活性化信号に活動電位波形を挿入するための手引きとして用いることができる。
APD回復曲線は一般的に拡張期間隔の範囲にわたって測定され、指数関数曲線に類似又は対応するようにプロットされる。従来、各対応するDIのためのAPDを測定するため、人工的に様々なDIを生成するための心臓ペーシングプロトコルを介してDIは一定に設定されていた。
【0046】
いくつかの実施形態において、処理システム32は、取得された活動電位のAPD及びpDIの間の機能的関連性又は関連付けに基づいて
APD回復曲線を決定するように構成される。活性化信号が記録された後、処理システム32は各活性化信号のサイクル長を決定し、各サイクル長に対するAPD及びDIを推定する。各サイクル長に対するAPD及びDIの初期推定値はランダムであるか、所定の回復テンプレート、又は、前に決定された回復曲線のような事前情報に基づくことができる。処理システム32は、推定されたAPDの各々と推定されたpDI、すなわち直前の活性化信号から推定されたDIとを一組にする二次元回復データセットを生成する。回復データセットは
図5に示すような初期の回復曲線を生成するために二次元座標平面上にプロットされ、ここでx軸はミリ秒単位のpDIであり、y軸はミリ秒単位のAPDであり、従って回復曲線上の各点は(pDI,APD)の形式となる。初期の回復曲線は推定された、及び、任意に選択された少なくとも一方のAPD及びDIの初期の回復データセットに基づいているので、初期の回復曲線は
図5に示す指数関数曲線に類似しない可能性がある。しかしながら、各CLに対する初期のAPD及びDIの推定の際に事前知識を適用すれば、初期の回復曲線は
APD回復曲線に一般的に特有の指数関数曲線に類似させることができる。
【0047】
処理システム32は回復データセットの二つの期間、すなわちAPD及びpDIの間の機能的関連性を決定する。機能的関連性は、相互情報量、最大情報係数、及び、推定された活動電位期間と
前サイクル長から推定された拡張期間隔との間の間隔の相関の少なくとも一つを最大化することを含んでもよい。記録された活性化信号の各CLに対する実際のAPD及びDIは未知であるため、処理システム32は反復的機能的関連性を用いてAPD及びDIを推定することができる。例えば、処理システムは、機能的関連性、すなわち、相互情報量、最大情報係数、及び間隔の相関が最大化され、最適化された回復データセットから得られた
APD回復曲線が
図5に示す指数プロットに類似する点まで、初期の回復データセットを最適化するために反復的な変更を行う。
【0048】
相互情報量の相関は二つの変数、すなわちAPDとpDIとの関係の関数形式を仮定することなく、それらの間の関連又は依存度を定量化する。最大情報係数は二つの変数X及びY、すなわちAPD及びpDIの間の線形又は非線形関連の強度の尺度である。間隔の相関は任意の、必ずしも等寸法ではない二つのランダムな変数、又は二つのランダムなベクトル、すなわちAPD及びpDIの間の統計的依存の尺度であり、間隔の分散、間隔の標準偏差、及び間隔の共分散に通常由来する。
【0049】
機能的関連性に従って初期の回復データセットを最適化するため、処理システム32は初期の回復曲線(
図6A)を
図6Bに示すように複数のグリッド位置を有するグリッドに分割し、初期の機能的関連性が決定される。処理システム32は一つのグリッド位置を選択し、選択されたグリッド位置から
8つの隣接するグリッド位置の一つへと点を移動させる。回復曲線上の点は(pDI,APD)として表されることから、回復曲線上の点を移動するため、処理システム32は点が隣接するグリッド位置の一つに位置するように、その点に対応する推定されたAPD及びpDIの少なくとも一方を調整する。点を隣接するグリッド位置に再配置した後、機能的関連性を決定する。機能的関連性の正の変化が前及び現在の機能的関連性の間で観察された場合、回復データセットにおいて変更内容を更新する。このように、各グリッド位置内の点はすべてのグリッド再配置に対してすべてのグリッド位置における機能的関連性が最大化されるまで、隣接するグリッド位置に再配置される。得られた回復データセットは、最適化されたAPD及びpDIの値からなる最適化された回復データセットである。
【0050】
いくつかの実施形態において、回復データセット、及び、対応する推定されたAPD及びpDIの値をさらに最適化するため、
図6Cに示すようにより低い分解能からより高い分解能へとグリッドの分解能を高め、機能的関連性がさらに最大化されるまで、一つのグリッド位置から隣接するグリッド位置へと点を再配置するプロセスが反復される。例えば、選択されたグリッド位置において、処理システム32は選択されたグリッド位置内にある回復データセットの点を、その点に関連したAPD及びpDIの値を調整することによって8つの隣接するグリッド位置の何れかに再配置する。機能的関連性は決定され、前の機能的関連性と比較される。機能的関連性において正の変化が観察された場合、回復データセットにおいて変更内容を更新する。このプロセスは機能的関連性が最大化されるまで、各々の対応する隣接するグリッド位置に対して各々のグリッド位置において反復される。
【0051】
いくつかの実施形態において、回復データセットは複数の電極の内の選択された電極のセットから生成される。回復データセットは前述のように機能的関連性に従って最適化される。結果として得られる最適化された
APD回復曲線は所定の回復テンプレートとして設定され、電極の隣接するセットに対して最適化された回復データセットを生成するための前述の事前知識として用いられる。
【0052】
事前情報は、生成された回復データセットと所定の回復テンプレートとの類似性を最大化するために用いることができる。類似性は生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの相関係数を最大化すること、又は、生成された回復曲線と所定の回復テンプレートとの平均二乗誤差を最小化することを含んでもよい。回復テンプレートは、同じ患者又は異なる患者に対して前に生成された回復テンプレート、同じ試験中に電極の近接又は隣接するセットから生成された回復曲線、上昇指数関数、及びシグモイド関数の何れかを含んでもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、処理システム32は活動電位持続時間と
前サイクル長との関数に基づく回復曲線を決定するように構成される。例えば、関数は活動電位持続時間(APD)及び前サイクル長(pCL)の間のヒストグラム相関であってもよい。ペーシング又は洞調律中のCLの一般的なヒストグラムは、
図7Aに示すように狭いことが予想される。しかしながら、心房細動、又は、ランダムなペーシングプロトコルの間のCLのヒストグラムは、
図7Bに示すように広くなり得る。活性化信号を十分に記録すると、ヒストグラムの下方の尾部は不応期60に起因してゼロに収束する。不応期とは、活動電位後の新たな活動電位を誘発することができない期間である。この不応期60は各サイクル長のAPDを推定するために用いることができ、そこから記録された活性化信号の
APD回復曲線を生成するために対応するDI及びpDIを推定することができる。
【0054】
処理システム32は複数の電極24から活性化信号を感知し、各活性化信号に対するサイクル長(CL)を決定する。生理活動の活性化信号は、内因性生理活動に応じて、又は、複数の電極24の少なくとも一つにより制定された所定のペーシングプロトコルに基づいて、感知することができる。決定されたCLのヒストグラムは
前サイクル長に基づいて生成される。処理システム32は全てのCLの範囲を決定し、その範囲を等間隔のビンに分割する。例えば、決定された範囲が110ミリ秒(ms)〜500msの場合、処理システムは110〜115ms、115〜120ms、120〜125ms等というように5ms間隔のビンを生成してもよい。しかしながら、この間隔はより短く、又はより長くすることができる。前述のように、APDは直前のDI、又はpDIに依存する。処理システムは三つの連続した活性化信号の全てのセットを識別し、同じ第一のサイクル長のビンを共有する全ての三つ組に対する第二の二つの活性化信号のためのサイクル長のヒストグラムを生成する。例えば、110ms〜115msのビン内にある第一のサイクル長を伴う全ての三つ組に対して、第二及び第三の活性化信号の間のサイクル長をヒストグラム化する。処理システム32は、例えば滑らかなシグモイド関数のような滑らかな関数を用いて生成されたヒストグラムからノイズ及び異常値をフィルタリングするように構成される。
【0055】
不応期60は生成されたヒストグラムに基づいて推定される。生成されたヒストグラムのゼロから所定の閾値に少なくとも等しい数の第一のビンまでの間の領域は、不応期60として識別される。所定の閾値の数はゼロであっても、数の割合に基づいた相対的な閾値であってもよい。不応期60は全てのサイクル長のビンに対して決定される。各ビンの活動電位持続時間は対応する不応期60に従って推定され、対応する不応期の期間として設定されてもよい。
【0056】
全ての前サイクル長(pCL)のビン、すなわち115〜120ms、120〜125ms等に対して、複数のデータ点(APD,pCL)を得るため、ヒストグラムを生成し、生成されたヒストグラムから不応期を決定し、決定された不応期からAPDを推定するというプロセスが反復される。データ点はAPDと
前サイクル長との関数を生成するためにプロットすることができる。例えば、APD対pCLの曲線は各pCLのビンに対して決定されたAPDに従って生成することができる。処理システム32は決定されたCLの各々をこの関数に従ってAPD及びDIに分割する。得られたAPDは分割されたCLに対する回復曲線を生成するため、対応する
前拡張期間隔に対してプロットすることができる。
【0057】
記載された代表的な実施形態に対して本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び追加を行うことができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴について述べているが、本発明の範囲はまた、異なる特徴の組み合わせを有する実施形態、及び、記載された特徴の全てを含まない実施形態も含む。従って、本発明の範囲は、その全ての均等物とともに、特許請求の範囲内に入るような全ての代替、修正、及び変形物を包含することを意図する。