(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0017】
(実施の形態1)
<システム構成>
図1は、本発明の実施の形態1である服薬支援システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態の服薬支援システム1は、患者の在宅での服薬を支援するシステムであり、例えば、各患者22の居宅20(患者22が日常生活を送る医療機関以外の拠点であり、患者22の自宅に限らず、患者22が入所する介護施設等も含まれるものとする)に設置された服薬支援装置30により患者22に対して所定のタイミングで服薬の通知をするとともに、所定の薬21を取り出し可能とすることで、患者22の服薬を支援する。
【0018】
本実施の形態では、さらに、各居宅20の服薬支援装置30が取得した服薬の履歴情報や患者22の動静に係る情報等を服薬支援サーバ10に送信して集約するとともに、例えば、医師や看護師、薬剤師、介護スタッフ、自治体などが提供する地域医療連携サービス50や、各患者22に薬21を提供する調剤薬局40などから参照可能とするクラウドサービスを提供することで、服薬支援にとどまらず、医療や生活支援などへの適用の拡大を図ることも可能とする。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態の服薬支援システム1は、例えば、データセンター等においてサーバ機器やクラウドコンピューティングサービス上に構築された仮想サーバなどのサーバシステムにより構成された服薬支援サーバ10と、各居宅20に設置され、服薬支援サーバ10と無線通信を介して接続可能な服薬支援装置30からなる。
【0020】
服薬支援サーバ10は、例えば、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラムなどのミドルウェア上で稼働するソフトウェアとして実装された薬歴管理部11、患者管理部12、装置管理部13、およびデータ連携部14などの各部を有する。また、データベースやファイルテーブル等により実装されたユーザマスタデータベース(DB)15や支援装置マスタDB16、薬歴DB17、服薬履歴DB18、および動静DB19などの各データストアを有する。
【0021】
薬歴管理部11は、各患者22が処方された薬の情報を患者22毎に薬歴DB17に記録・蓄積して管理する機能を有する。薬歴の情報は、例えば、病院等の医療機関や調剤薬局40などにおいて図示しない情報処理端末を利用して図示しないインターネット等のネットワークを介して服薬支援サーバ10にアクセスし、入力したり参照したりすることができる。なお、各患者22の識別情報等を含むユーザ情報はユーザマスタDB15に予め登録されているものとする。
【0022】
患者管理部12は、各患者22について服薬履歴DB18や動静DB19に記録・蓄積された服薬の履歴情報や動静情報に基づいて、患者22の服薬状況や服薬支援装置30内の残薬状況に加えて、患者22の健康状況や活動状況、生活状況などを分析・把握し、必要に応じて対応する処理を行う機能を有する。
【0023】
例えば、薬歴DB17に記録されている処方の情報と、服薬履歴DB18に記録されている服薬履歴の情報とに基づいて、患者22が所定のタイミングで正しく服薬しているか否かを判定することができる。所定の回数以上連続して服薬がされていないなどの所定の条件に合致する場合には、予め登録された連絡先(例えば、介護スタッフや訪問服薬指導員、遠隔地の家族など)に電子メールや情報処理端末上のアプリケーションに対するプッシュ通知などを利用して連絡するようにしてもよい。服薬がされていないことの検知は、服薬支援サーバ10ではなく服薬支援装置30によって行い、検知した場合に患者22に対して直接通知するとともに服薬支援サーバ10にその旨を送信するようにしてもよい。
【0024】
また、薬歴DB17に記録されている処方の情報と、服薬履歴DB18に記録されている服薬履歴の情報に基づいて、服薬支援装置30に収納されている薬21の残り(残薬)の状況を把握することができる。すなわち、服薬支援装置30に収納した薬21の種類・量と、実際に服薬された薬21の種類・量を把握し、その差分から残薬の状況を把握することができる。
【0025】
また、動静DB19に記録されている患者22の動静情報に基づいて、患者22が正常に生活・活動しているか否か(少なくとも動いているか否か)を判定することができる。例えば、患者22が所定の時間以上動いている形跡がない場合には、予め登録された連絡先に通知するようにしてもよい。
【0026】
また、上記のような現時点での患者22の状況に限らず、履歴として蓄積された服薬情報や動静情報を用いることで、服薬や通常の活動・生活についての傾向を把握することも可能である。例えば、服薬支援装置30が後述するように服薬のタイミングを患者22に通知してから実際に薬21が取り出されるまでの時間や、服薬する薬21の種類によるその変動などの傾向を把握することができる。また、時間帯による患者22の活動量・移動量の多寡の傾向なども把握することができる。このような傾向を把握することにより、例えば、薬21の種類による好き嫌いを把握して今後の調剤に活かすことができる。また、傾向と相違する状況が検知された場合に何らかの異常が発生した可能性があるものとして通知したりすることができる。
【0027】
装置管理部13は、各居宅20に設置された服薬支援装置30との間で図示しないインターネット等のネットワークを介して通信を行い、服薬支援装置30が記録した服薬履歴の情報や動静情報を取得して、服薬履歴DB18や動静DB19に記録する機能を有する。服薬支援装置30に発生した障害の情報を取得して保守に利用できるようにしてもよい。また、服薬支援装置30に対して通信により服薬タイミング等の設定情報を送信したり、遠隔からの操作を行ったり、音声・画像による双方向通信を行ったりしてもよい。各服薬支援装置30のシリアル番号等の識別情報および設置先の患者22や居宅20との関連付けの情報は、例えば、服薬支援装置30が出荷される際や居宅20に設置された際などに支援装置マスタDB16に予め登録しておくものとする。
【0028】
データ連携部14は、薬歴DB17や服薬履歴DB18、動静DB19などに記録・蓄積された各患者22の服薬履歴情報や動静情報などを参照・入力するクラウドサービスのためのAPI(Application Programming Interface)等のインタフェースを提供する。例えば、各地域医療連携サービス50において、データ連携部14を介して各種情報を参照し、それぞれの固有のサービスに活用することができる。
【0029】
各居宅20に設置された服薬支援装置30は、詳細は後述するが、所定の期間(例えば1週間)に服薬すべき薬21を服薬のタイミング毎に収納し、患者22に対して所定のタイミングで服薬の通知をするとともに、対応する薬21を取り出し可能とすることで、患者22の服薬を支援する。服薬の履歴情報や、後述するセンサにより取得した動静情報は、図示しないインターネット等のネットワークを介して服薬支援サーバ10に送信する。当該ネットワークへの接続は、有線/無線のLAN(Local Area Network)や、3G/4Gなどの移動体用無線通信を適宜用いることができる。本実施の形態では、後述するように、3Gによる通信を行うことで、各居宅20での服薬支援装置30の簡易なセットアップを可能とする。
【0030】
服薬支援装置30に収納される薬21は、調剤薬局40において薬剤師により後述するような専用のカセットに所定の期間分(例えば1週間分)収納され、訪問服薬指導員や介護スタッフ等により、もしくは宅配業者等により対象の居宅20に運搬されて、訪問服薬指導員等により服薬支援装置30にセットされる。
【0031】
このとき、服薬支援装置30内に残薬があれば通常はこれを回収するが、本実施の形態では、上述したように、残薬の状況を遠隔から予め把握することが可能である。したがって、調剤薬局40等では、再利用が可能な残薬についてはこれを再利用することを前提としてカセットに薬21を収納することで、無駄な薬21の提供を回避して医療コストを低減することができる。
【0032】
<服薬支援装置>
図2は、本実施の形態における服薬支援装置30の構成例について概要を示した図である。
図2(a)は、服薬支援装置30の本体の外観の例を示しており、本体の前面には、各種の情報や画像、映像を表示することができる液晶パネルやタッチパネルからなる表示部31、患者22が1回の服薬分の薬21を取り出すための取り出しボタン32、1回の服薬分の薬21が収納されたピルケースが排出される取り出し口33、スピーカ34、および人感センサ35が配置されている。人感センサ35には、例えば、赤外線や可視光を用いたものや、超音波によるドップラーセンサ等、各種のものを適宜用いることができる。
【0033】
また、本体の側面にはケーブル36を介して通信モジュール37が接続されている。なお、
図2(a)の例では側面に接続されているが、接続位置は特に限定されず、背面や前面等であってもよい。また、ケーブル36を介した接続に限らず、服薬支援装置30の本体に設けられたスロット等に通信モジュール37を挿入するような構成であってもよい。
【0034】
表示部31には、例えば、現在日時の情報を常時表示するとともに、服薬の時間もしくはそれに近い前後のタイミングで、服薬を促す所定のメッセージを表示する。メッセージの表示と併せてスピーカ34から音声によりメッセージを出力してもよい。服薬を促すメッセージが表示された後に患者22が取り出しボタン32を押下すると、取り出し口33からピルケースが排出される。患者22がピルケースに収納されている薬21を服用することで1回分の服薬が完了する。
【0035】
図2(b)は、ピルケースおよびこれを収納する専用のカセットの外観の例を示している。患者22が服用する薬21は、調剤薬局40において薬剤師により服用タイミング毎(例えば、朝、昼、夜、就寝前など)に一包化されて専用のピルケース38に収納される。ピルケース38は、薬21の入れ間違え等を防ぐために、例えば、服用タイミング毎に異なる色が付されている。薬剤師はこのピルケース38を所定の期間分(例えば1週間分)用意し、図示するようにカセット39に収納する。カセット39は、例えば、服用タイミング毎に個別に用意する。
【0036】
このカセット39は、訪問服薬指導員等が調剤薬局40から対象の居宅20に運搬し、
図2(a)に示した服薬支援装置30の本体に装填する。各カセット39には例えば図示しないIC(Integrated Circuit)タグ/RFID(Radio Frequency IDentifier)タグ(以下では「RFIDタグ」と記載する)等の識別情報保持媒体が取り付けられており、タグのID情報(識別情報)を患者22や服薬支援装置30の識別情報と関連付けて服薬支援サーバ10上のユーザマスタDB15や支援装置マスタDB16に記録しておくことで、誤装填等を防止することができる。なお、本実施の形態では、識別子保持媒体をRFIDタグとしているが、これに限られない。例えば、QRコード(登録商標)等の二次元バーコードや一次元バーコード等、識別情報を保持することができるものであれば適宜用いることができる。
【0037】
図2(a)に戻り、カセット39の装填状況や、服薬履歴の情報、服薬を促す通知のタイミング等の各種設定情報等は、表示部31上に表示させることができる。表示部31がタッチパネルの場合にはタッチ操作により、また液晶パネルの場合には図示しない操作ボタン等により、各種情報の入力・設定や、服薬支援装置30の操作を行うことができる。
【0038】
人感センサ35は、服薬支援装置30の前面の所定の範囲における患者22の動きを検知することができるセンサである。例えば、服薬を促す通知が表示部31に表示された場合でも、患者が表示部31を見なければこれに気付くことができず、スピーカ34によって音声で通知しても、たまたま音声が聞こえない別の部屋等にいた場合にはやはり気付くことができない。そこで例えば、服薬を促す通知をしてから所定の時間が経過しても取り出しボタン32が押下されない場合に、人感センサ35が人(患者22)の動きを検知した場合は、服薬支援装置30の付近に患者22が来たものとして表示部31およびスピーカ34による通知を再度行うようにする。
【0039】
本実施の形態では、服薬を促す通知がされた場合、患者22(もしくは介護スタッフ等)が服薬支援装置30の設置場所に来て取り出しボタン32を押下しなければピルケース38を取り出すことができない。したがって、患者22が服薬する際には少なくとも人感センサ35は患者22の動きを検知することができるはずである。
【0040】
そこで例えば、服薬を促す通知がされている状況で、人感センサ35は患者22の動きを検知しているのに取り出しボタン32が押下されない場合や、所定の時間以上取り出しボタン32が押下されず、かつ人感センサ35が患者22の動きも検知できない場合は、患者22の活動量が低下しているなどのアラートを服薬支援サーバ10に送信するようにしてもよい。また、服薬のタイミングに限らず、人感センサ35が患者22の動きを検知する毎にその情報を服薬支援サーバ10に送信して動静情報を把握できるようにしてもよい。
【0041】
このような人感センサ35を用いることで、例えば内蔵カメラによる撮影や測定器による測定を要求するものなどと異なり、患者22の動静情報の把握を自然な形で行うことができ、患者22にとっては「監視」されている感を薄くして心理的抵抗を小さくすることができる。
【0042】
上述したように、服薬支援装置30が服薬支援サーバ10に対して接続する際の通信手段は特に限定されないが、高齢者や被介護者等でも居宅20で容易にセットアップできるようにするため、本実施の形態では3Gによる通信を行う通信モジュール37を用いるものとする。通信モジュール37は、例えば、3G通信に特化した携帯電話と同程度の大きさの機器であり、予め通信設定がされた状態で出荷され、また、通信の相手方である服薬支援サーバ10においても、支援装置マスタDB16等に予め通信モジュール37の識別情報等の通信に必要な情報を登録しておくものとする。これにより、患者22は、居宅20において通信モジュール37をケーブル36等を介して服薬支援装置30に接続するだけで、容易に服薬支援サーバ10との間の通信を開始することができる。
【0043】
通信モジュール37に対する電力は、簡易なセットアップを考慮して、例えば、ケーブル36を介して服薬支援装置30(図示しない電源ケーブルを介して家庭用電源等に接続されている)から供給するのが望ましい。したがって、本実施の形態では、ケーブル36は給電対応のRS−232Cケーブルとするが、USB(Universal Serial Bus)等の他の給電可能なケーブル等であってもよい。通信モジュール37と服薬支援装置30が近距離無線通信により接続されるような場合には、ワイヤレス給電を用いてもよい。
【0044】
以上に説明したように、本発明の実施の形態1である服薬支援システム1によれば、患者22の居宅20に設置された服薬支援装置30により患者22に対して所定のタイミングで服薬の通知をするとともに、所定の薬21を取り出し可能とすることで、患者22の服薬を支援することができる。
【0045】
さらに、各居宅20の服薬支援装置30が取得した服薬の履歴情報や患者22の動静に係る情報等を服薬支援サーバ10に送信して集約するとともに、地域医療連携サービス50や調剤薬局40などから参照可能とするクラウドサービスを提供する。これにより、各患者22に対する服薬支援にとどまらず、調剤薬局40が残薬の状況を把握して効率的な薬の提供を可能とするとともに、かかりつけの医療機関における薬の処方や、地域での生活支援などへも利用を拡大することができる。
【0046】
また、服薬支援装置30の前面に配置された人感センサ35を用いることで、患者22の動静情報の把握を心理的抵抗が少ない自然な形で行うことができる。また、服薬支援装置30が服薬支援サーバ10と通信を行うためのネットワークへの接続手段として、3G通信に特化した通信モジュール37を用いることで、高齢者や被介護者等でも居宅20で容易に服薬支援装置30のネットワーク環境をセットアップすることができる。
【0047】
(実施の形態2)
上記の実施の形態1では、各居宅20の服薬支援装置30の本体に装填するカセット39に収納されるピルケース38に対して、対象の患者22の処方された所定の期間分の薬21を一包化する作業は、調剤薬局40において行われる。
【0048】
図3は、上記の実施の形態1における薬21の一包化と服薬支援装置30に対する装填までの処理の流れの例について概要を示した図である。ここでは、病院等の医療機関51において各患者22に処方された薬21の情報は、服薬支援サーバ10上の図示しない薬歴管理部11を介して薬歴DB17に記録される。そして、かかりつけ等の所定の調剤薬局40では、それぞれ、服薬支援サーバ10にアクセスして薬歴DB17から対象の患者22に処方された薬21の情報を取得し、これに基づいてピルケース38(図示しない)に所定の薬21を一包化し、さらにカセット39(図示しない)に収納する。これを当該調剤薬局40の薬剤師等が訪問服薬指導の際に対象の患者22の居宅20まで携行、運搬し、設置されている服薬支援装置30に装填する。
【0049】
このようなスキームの場合、ピルケース38に対して薬21を一包化する作業は、各調剤薬局40にてそれぞれ個別に行われることになり、比較的小規模で人数が少ない店舗が多い調剤薬局では負担が大きく、作業ミスなどの重大な事態を生じるリスクが高くなる。また、各調剤薬局40がそれぞれ所定の種類・量の薬21を在庫として保持している必要があり、全体として薬21の重複保持など高コストで非効率な運用となる場合がある。また、調剤薬局40で薬21が一包化されたピルケース38およびカセット39を対象の患者の居宅20にそれぞれ正しく運搬し、服薬支援装置30に装填して配薬するのも、当該患者22に対して訪問服薬指導を行う薬剤師等であり、負担が大きい状況となる。
【0050】
そこで、本発明の実施の形態2である服薬支援システム1では、各調剤薬局40で行っていた薬21の一包化の作業をセンターにて集約し、当該センターからピルケース38およびカセット39を各患者22の居宅20に配送する構成をとる。すなわち、多数の薬21を在庫として保持し、また一包化して配送も行うのに特化した薬局と、薬21の在庫を持たず調剤も行わないが、個々の患者22に対して薬剤師による訪問服薬指導を行うのに特化したかかりつけの薬局とで役割を分担する。これにより、一包化および配送の作業を集約して効率化するとともに、地域のかかりつけ薬局の人的・物的負担を低減して、薬剤師が本来の服薬指導等の業務に注力することを可能とする。
【0051】
図4は、本発明の実施の形態2である薬21の一包化と服薬支援装置30に対する装填までの処理の流れの例について概要を示した図である。上述したように、本実施の形態では、上記の
図3の例において各調剤薬局40で行っていた一包化の作業を調剤センター60で一括して行い、一包化された薬21(すなわち図示しないピルケース38およびカセット39)を対象の各居宅20に配送する。配送には、例えば、一般的に用いられる宅配便などの物流サービスを適宜用いることができる。
【0052】
一方、かかりつけ薬局41は、配薬に際して、薬剤師等を訪問服薬指導員として対象の居宅20に派遣するだけでよい。また訪問服薬指導員は、対象の居宅20において配送されてきた薬21(ピルケース38およびカセット39)を服薬支援装置30に装填するだけでよい。実施の形態1で説明したように、図示しないカセット39(および/またはピルケース38)にはRFIDタグが付されており、装填されるべき服薬支援装置30の識別情報と服薬支援サーバ10上で関連付けて管理することで、配送ミス等により誤ったカセット39を装填することを防止することができる。
【0053】
なお、かかりつけ薬局41は、訪問服薬指導員としての薬剤師を有していればよく、必ずしも薬21の在庫を有して実際の調剤業務を行っていなくてもよい。また、複数の薬局が物理的もしくは観念的に一体となって、薬剤師派遣センターとして機能するような大規模な拠点として構成されていてもよい。
【0054】
調剤センター60は、例えば、複数の調剤薬局40が属するフランチャイズチェーンが有する大規模な拠点であり、十分な種類・量の薬21の在庫を保持する。薬21の調剤を行うため薬剤師は必要であるが、一般の患者22に対して直接薬21を販売する調剤薬局としての機能は有していなくてもよい。調剤センター60には、例えば、情報処理システム、もしくは情報処理システムを含む、もしくは情報処理システムにより制御される装置や機械として実装された調剤処理部61および配送処理部62などの各部が設けられている。これらの各部は、例えば、図示しない情報処理システム等により構成される制御機構の制御に基づいて連携して動作するよう構成される。
【0055】
調剤処理部61は、服薬支援サーバ10にアクセスして薬歴DB17から各患者22に処方された薬21の情報を取得し、これに基づいて所定の薬21を在庫から取得してピルケース38(図示しない)に一包化する。なお、医療機関51により処方された内容に基づいて、実際に提供する薬21の具体的な製品(メーカーや製品名等)を決定する役割は、かかりつけ薬局41の薬剤師が行う。例えば、かかりつけ薬局41の薬剤師は、図示しない情報処理端末を利用して服薬支援サーバ10にアクセスし、薬歴DB17を参照して医療機関51により処方された内容を取得する。そして、患者22に対して実際に問診や確認を行って、提供する薬21の具体的な内容を決定し、服薬支援サーバ10の薬歴DB17に処方データとして記録する。
【0056】
調剤処理部61は、薬21が一包化されたピルケース38を、さらにカセット39(図示しない)に収納する処理を一括して行う機能を有する。上述したように、カセット39(および/またはピルケース38)に付されたRFIDタグのIDと、対象の患者22の居宅20に設置された服薬支援装置30の識別情報との関連付けに係る情報を服薬支援サーバ10に登録する機能を有していてもよい。一連の処理を全て自動化して行ってもよいし、一部の処理を人手を介して行うものであってもよい。
【0057】
配送処理部62は、調剤処理部61によって薬21が一包化された各ピルケース38およびカセット39を、対象の患者22の居宅20に配送するための指示情報を出力する機能を有する。例えば、宅配便などの物流サービスが提供する集荷受付システムに対して受付情報を自動もしくは手動で出力するようにしてもよい。また、ピルケース38やカセット39に貼付するラベル等を自動で印刷し、自動もしくは手動で貼付するようにしてもよい。
【0058】
対象の患者22に対して薬21を発送した旨は、例えば、配送処理部62が服薬支援サーバ10に記録することで、当該患者22のかかりつけ薬局41がこれを参照して把握できるようにしてもよい。また、服薬支援サーバ10もしくは配送処理部62が電子メール等によりかかりつけ薬局41に通知するようにしてもよい。薬21が配送されたことを検知した調剤薬局40では、これをトリガーとして薬剤師等を対象の居宅20に訪問させて、服薬指導を行うとともに、薬21が一包化されたピルケース38やカセット39を服薬支援装置30に装填する作業を行わせることができる。
【0059】
図5は、本実施の形態における薬21の一包化と服薬支援装置30に対する装填までの処理の流れの例について概要を示したシーケンス図である。まず、病院等の医療機関51の所属者が、各患者22に処方した薬21の処方データを図示しない医療機関用情報処理端末を用いて入力し、服薬支援サーバ10に送信する(S01)。服薬支援サーバ10は、受信した処方データを図示しない薬歴管理部11を介して薬歴DB17に記録する(S02)。記録した旨をかかりつけ薬局41や調剤センター60に電子メール等により通知するようにしてもよい。
【0060】
かかりつけ薬局41の薬剤師は、図示しないかかりつけ薬局用情報処理端末を用いて服薬支援サーバ10にアクセスして、薬歴DB17から対象の患者22に処方された薬21の情報を取得する(S03)。そして、取得した内容に基づいて、かかりつけ薬局41の薬剤師が患者22に対して実際に問診や確認を行い(S04)、提供する薬21の具体的な内容を決定して、図示しないかかりつけ薬局用情報処理端末を用いて入力し、服薬支援サーバ10に送信する(S05)。服薬支援サーバ10は、受信した内容を薬歴DB17に記録する(S06)。服薬支援サーバ10は、記録した旨を調剤センター60に電子メール等により通知するようにしてもよい。
【0061】
調剤センター60では、例えば、配送処理部62が服薬支援サーバ10にアクセスして、薬歴DB17から対象の患者22に対して決定された薬21の情報を取得する(S07)。そして、取得した情報に基づいて所定の薬21を在庫から取得してピルケース38に一包化し、患者22の居宅に配送する(S08)。配送は、一般的な宅配便等の物流サービスを利用することができ、患者22は、居宅20等において、当該物流サービスから薬21が一包化されたピルケース38を受領することができる(S09)。
【0062】
なお、調剤センター60では、薬21をピルケース38に一包化する際に、実際に一包化された薬21が、対象の患者22に対して医療機関51が処方し、かかりつけ薬局41の薬剤師によって具体的に決定されたものと合致しているか否かを、薬剤師によって実際に確認する必要がある。本実施の形態では、この確認が適切に行われたことを追跡可能とするための情報として、例えば、調剤センター60の調剤処理部61が、対象の薬21や一包化されたピルケース38等を撮像した画像データ、その他のセンサ等により取得されたデータ等の証跡データを自動もしくは手動で取得するようにしてもよい。また、取得した証跡データを服薬支援サーバ10に送信して薬歴DB17に記録するようにしてもよい。
【0063】
一方、患者22に対して薬21(ピルケース38やカセット39)を配送した旨は、例えば、配送処理部62が服薬支援サーバ10の薬歴DB17に記録する(S10)。具体的には、例えば、配送したピルケース38(および/またはカセット39)に付されたRFIDタグのIDと、対象の患者22の居宅20に設置された服薬支援装置30の識別情報との関連付けに係る情報を薬歴DB17に記録する。配送した旨をかかりつけ薬局41に電子メール等により通知するようにしてもよい。
【0064】
かかりつけ薬局41の薬剤師は、図示しないかかりつけ薬局用情報処理端末を用いて服薬支援サーバ10にアクセスして、薬歴DB17から配送状況を取得し(S11)、対象の患者22の居宅20に薬21が配送されたことを検知して、当該居宅20に薬剤師等を訪問服薬指導員として派遣・訪問させる(S12)。
【0065】
派遣・訪問先の居宅20で、薬剤師はまず、当該居宅20に配送されている薬21が一包化されたピルケース38もしくはカセット39を、服薬支援装置30に装填する(S13)。このとき、服薬支援装置30は、装填されたピルケース38および/またはカセット39に付されたRFIDタグのIDを読み取り、このIDと、服薬支援装置30の識別情報とを、服薬支援サーバ10に送信する。服薬支援サーバ10では、送信されたRFIDタグのIDと、服薬支援装置30の識別情報との組み合わせが、ステップS10で薬歴DB17に記録された内容と合致するか否かを照合する(S14)。合致していれば正しく配送されたものとし、合致しなければ誤配送があったものと取り扱うことができる。その後、訪問服薬指導員である薬剤師が、正しく配送された薬21に基づいて、対象の患者22に対して服薬指導を行う(S15)。
【0066】
以上に説明したように、本発明の実施の形態2である服薬支援システム1によれば、各調剤薬局40で行っていた薬21の一包化の作業を調剤センター60にて集約し、調剤センター60からピルケース38およびカセット39を各患者22の居宅20に配送する。すなわち、薬21の在庫の保持と、一包化・配送に特化した薬局である調剤センター60と、薬21の在庫を持たず個々の患者22に対する訪問服薬指導に特化した薬局であるかかりつけ薬局41とで役割を分担する。これにより、一包化および配送の作業を調剤センター60に集約して効率化できるとともに、地域のかかりつけ薬局41の人的・物的負担が低減し、薬剤師が本来の服薬指導等の業務に注力することが可能となる。
【0067】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【解決手段】居宅20に設置された服薬支援装置30と調剤センター60に設置された情報処理システムと服薬支援サーバ10とを有し、服薬支援装置30は、患者が服用する所定の期間分の薬21を服用タイミング毎に分けて一包化された所定の容器の装填により収納し、服薬支援サーバ10は、複数の患者に係る薬21の処方の情報の登録を医療機関51から受け付けて記録し、前記情報処理システムは、服薬支援サーバ10から複数の患者に係る薬21の処方の情報を取得し、患者毎に処方された薬21を前記容器にそれぞれ一包化する調剤処理部61と、患者毎に前記容器を居宅20に配送する旨の指示情報を出力する配送処理部62とを有する。