特許第6144394号(P6144394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6144394
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】管体接続構造及びベルマウス
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/02 20060101AFI20170529BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F16L5/02 J
   F16L5/00 E
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-163424(P2016-163424)
(22)【出願日】2016年8月24日
【審査請求日】2016年8月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392035341
【氏名又は名称】共和ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】寺阪 剛
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136145(JP,A)
【文献】 特開2008−014456(JP,A)
【文献】 特開平11−266519(JP,A)
【文献】 特開2014−207752(JP,A)
【文献】 特開2007−262841(JP,A)
【文献】 特開2001−090884(JP,A)
【文献】 特開2015−006042(JP,A)
【文献】 特開2002−195460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 5/02
H02G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の外周面に螺合する雌ねじを内周面に有し前記管体の外周面に嵌る外筒部と、該外筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して接続対象である貫通穴の周囲に当接する当接面を有する外面鍔部を備えた管継手と、前記管体の内周面に螺合する雄ねじを外周面に有し前記管体内に挿入される内筒部と、該内筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して前記貫通穴の周囲に当接する当接面を有する内面鍔部を備えたベルマウスを用いて前記管体を前記貫通穴に接続する管体接続構造であって、
前記管継手の外筒部の内周面に、水分の吸収により膨張するシート状の止水材からなる管体外水膨張部が前記内周面に沿って形成されるとともに、
前記ベルマウスの内筒部の外周面に、水分の吸収により膨張するシート状の止水材からなる管体内水膨張部が前記外周面に沿って形成された
管体接続構造。
【請求項2】
前記内面鍔部における前記管体の端部が対向する内周側部位に、水分の吸収により膨張する管端水膨張部が形成された
請求項1に記載の管体接続構造。
【請求項3】
前記管継手における膨張前の前記管体外水膨張部の表面と前記管継手を嵌めた前記管体の表面との間に、前記管継手の軸方向の前記外面鍔部の反対側の端から前記外面鍔部側の端まで水分を通す水分通路を有する
請求項1または請求項2に記載の管体接続構造。
【請求項4】
管体の内周面に螺合する雄ねじを外周面に有し前記管体内に挿入される内筒部と、該内筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して接続対象である貫通穴の周囲に当接する当接面を有する内面鍔部を備えたベルマウスであって、
前記内筒部の外周面に、水分の吸収により膨張するシート状の止水材からなる管体内水膨張部が前記外周面に沿って形成され
前記内面鍔部における前記管体の端部が対向する内周側部位に、水分の吸収により膨張する管端水膨張部が形成され、
前記当接面に、水分の吸収により膨張する穴縁水膨張部が形成され、
前記穴縁水膨張部が前記内面鍔部の厚さを厚くするかさ上げ部の上に形成され、
前記管端水膨張部における前記内筒部側の面の方が、前記穴縁水膨張部の面よりも低く設定された
ベルマウス。
【請求項5】
管体の外周面に螺合する雌ねじを内周面に有し前記管体の外周面に嵌る外筒部と、該外筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して接続対象である貫通穴の周囲に当接する当接面を有する外面鍔部を備えた管継手と、前記管体の内周面に螺合する雄ねじを外周面に有し前記管体内に挿入される内筒部と、該内筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して前記貫通穴の周囲に当接する当接面を有する内面鍔部を備えたベルマウスを用いて前記管体を前記貫通穴に接続する管体接続方法であって、
前記管継手の外筒部の内周面と前記ベルマウスの内筒部の外周面に前記内周面または前記外周面に沿って形成された、水分の吸収により膨張するシート状の止水材からなる水膨張部のうち、前記管継手の外筒部の内周面の管体外水膨張部を膨張させた後、前記管体外水膨張部を膨張させた水分で前記ベルマウスの内筒部の外周面の管体内水膨張部を膨張させる
管体接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばハンドホールやマンホールのように地中に埋設される地中箱に対して電線保護用の管体を接続する管体接続構造に関し、より詳しくは、十分な止水性が得られるような管体接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
管体としての螺旋波付き管(FEP管)を地中箱に接続する構造として、下記特許文献1に開示のものがある。
【0003】
この構造は、締め付け用部材と平型フランジ付ベルマウスを用いて管体を接続するものである。締め付け用部材は、筒状に形成されて長手方向の一端に鍔部を有し、筒状部分の内周面に螺旋波付き管の外周面に螺合する雌ねじを有している。鍔部の筒状部分とは反対側の面には、スポンジ状合成ゴムからなる円環板状の止水層が貼り付けられている。止水層の中心の穴は螺旋波付き管の太さより小さく設定されており、締め付け用部材を螺旋波付き管の端部に嵌めて、螺旋波付き管の端部を鍔部から突出させようとすると止水層は大きく変形することになる。
【0004】
平型フランジ付ベルマウスは、筒状に形成されて長手方向の一端に鍔部を有し、筒状部分の外周面に螺旋波付き管の内周面に螺合する雄ねじを有している。鍔部における筒状部分を有する側の面にはパッキンを備えている。
【0005】
この構成では次のように接続を行う。まず、螺旋波付き管の端部に締め付け用部材を嵌めて力をかけて回転し、止水層を変形させて螺旋波付き管の端部を突きだす。つぎに、螺旋波付き管の端部を地中箱の貫通穴に差し込んで螺旋波付き管の端部に対して反対側から平型フランジ付ベルマウスを螺合する。最後に、締め付け部材を回転して、締め付け部材と平型フランジ付ベルマウスで貫通穴の周囲を締め付ければ、止水層による止水がなされ、接着剤なしでの接続が行える。
【0006】
しかし、締め付け用部材と平型フランジ付ベルマウスは接続する螺旋波付き管の寸法に対して精度よく形成されていないと強力な締め付け状態が得られない。また作業には止水層を変形させる力が必要である。さらに、管体の端面で回転しながら押し拡げられた止水層は損傷するおそれがあるうえに、この止水層は管体の外周面の一部のみに位置しているので、十分な止水がなされずに過剰な水分が締め付け用部材と螺旋波付き管の間を伝って奥まで進入した場合に、その水分は容易に螺旋波付き管と平型フランジ付ベルマウスの間に進入するおそれがある。
【0007】
管体の外周面の一部ではなく全体的に止水を可能にした接続構造(下記特許文献2参照)はあるが、管体の内周面においても止水しようとする構成のものはこれまでにない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3090447号公報
【特許文献2】特開2014−207752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、接続作業が容易でありながらも十分な止水性を得られるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、管体の外周面に螺合する雌ねじを内周面に有し前記管体の外周面に嵌る外筒部と、該外筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して接続対象である貫通穴の周囲に当接する当接面を有する外面鍔部を備えた管継手と、前記管体の内周面に螺合する雄ねじを外周面に有し前記管体内に挿入される内筒部と、該内筒部の軸方向の一端において外周方向に張り出して前記貫通穴の周囲に当接する当接面を有する内面鍔部を備えたベルマウスを用いて前記管体を前記貫通穴に接続する管体接続構造であって、前記管継手の外筒部の内周面に、水分の吸収により膨張するシート状の止水材からなる管体外水膨張部が前記内周面に沿って形成されるとともに、前記ベルマウスの内筒部の外周面に、水分の吸収により膨張するシート状の止水材からなる管体内水膨張部が前記外周面に沿って形成された管体接続構造である。
【0011】
この構成では、管体の外周面に管継手の外筒部を嵌めるとともに、管体の端部内にベルマウスの内筒部を嵌めて、管継手の外面鍔部とベルマウスの内面鍔部で貫通穴の周囲を挟み込んだ状態にして地中に埋めると、まず管体外水膨張部が膨張して管体に荷重をかけて管継手と管体との間で止水を行う。多くの水分が進入すると、管体内水膨張部が膨張して管体外水膨張部の膨張による荷重とは異なる方向の荷重を管体にかけながら管体とベルマウスとの間で止水を行い、管体と管継手の間から入る水分が管体内へ進入することを防止する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、接続作業が容易でありながらも十分な止水性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】管体接続構造の断面図。
図2】管体接続構造の側面図。
図3】管継手の片側断面図。
図4】ベルマウスの片側断面図。
図5】管体接続構造の水膨張前の状態を示す断面図。
図6】螺旋波付き管の取り付け方を示す説明図。
図7】作用状態を示す断面図。
図8】他の例に係る管体接続構造の分解状態を示す片側断面図。
図9】他の例に係る管体接続構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に管体接続構造11の要部の断面を示す。管体接続構造11はハンドホールなどの地中箱21の壁部21aに形成された貫通穴22に、管体としての螺旋波付き管12の端部を差し込んだ状態にして接続するもので、管継手31とベルマウス51が使用される。特に、管継手31とベルマウス51を螺旋波付き管12に対して大きな力をかけずに単に嵌めるだけで簡単に接続できる管体接続構造11である。
【0015】
図2は螺旋波付き管12を接続した状態の管継手31とベルマウス51の側面図であり、この図に示すように、管継手31は螺旋波付き管12の外周面に嵌り、ベルマウス51は螺旋波付き管12の端部に挿入されて、管継手31の一部とベルマウス51の一部で貫通穴22の周囲を壁部21aの厚み方向で挟み付けて螺旋波付き管12の接続状態を保持する。
【0016】
螺旋波付き管12は、地中に埋設する電線(図示せず)を保護するためのものであり合成樹脂製である。螺旋状の凹凸(螺旋波)は外周面のほか内周面にも形成されている。この螺旋波付き管12は接続状態において地中箱21の壁部21aの外面から垂直に突出する状態となる。螺旋波付き管12の外径や内径、螺旋波のピッチには製造会社によってばらつきがある。
【0017】
管継手31は合成樹脂製で、図3に示したように略円筒状である。管継手31は螺旋波付き管12の外周面に嵌る外筒部32と、外筒部32の軸方向の一端において外周方向に張り出す外面鍔部33を備えている。外筒部32の内周面には螺旋波付き管12の外周面に螺合する雌ねじ34が形成されている。外面鍔部33は貫通穴22よりも大径に形成されており、壁部21aの外面における貫通穴22の周囲に当接する当接面35を有している。
【0018】
雌ねじ34を含む外筒部32の内周面の全体には、水分の吸収により膨張する管体外水膨張部36が形成されている。管体外水膨張部36は、シート状の止水材を貼り付けて構成される。止水材は、水分を吸収して膨張する水膨張材を保持したポリエチレンテレフタレート等からなる不織布を使用できる。水膨張材には粉粒状のものやシート状のもの、液状のものなどが適宜使用できるが繊維状のものを用いると、不織布を構成する繊維との一体性が高まるのでよい。止水材の内周面に対する固定は、管継手31を成形するときに一体成形して行うとよい。
【0019】
外筒部32の外周面には回転操作をしやすいように、軸方向に沿って長いリブ37が周方向に間隔をあけて複数備えられている。
【0020】
外面鍔部33の当接面35には、水分の吸収により膨張する穴縁水膨張部38が形成されている。このため当接面35は穴縁水膨張部38を介して間接的に貫通穴22の周囲に当接する。穴縁水膨張部38は、前述の管体外水膨張部36と同様にシート状の止水材で構成される。
【0021】
この穴縁水膨張部38は、外面鍔部33の厚さを厚くするかさ上げ部39の上に形成される。かさ上げ部39は適宜厚さの軟質ゴム層で形成される。軟質ゴム層は、指で押した程度で圧縮変形できる程度の低硬度ゴム、例えば高度20以下、より好ましくは硬度10°〜15°(JIS−A)くらいのものが好適に使用できる。軟質ゴム層は管継手31の形成に際して一体に形成してもよいが、別途に粘着剤で貼り付けてもよい。また軟質ゴム層は非水膨張性であるが、水分を吸収して膨張する水膨張性を有するものであってもよい。
【0022】
ベルマウス51は合成樹脂製で、図4に示したように螺旋波付き管12内に挿入される内筒部52と、内筒部52の軸方向の一端において外周方向に張り出す内面鍔部53を備えている。内筒部52の外周面には螺旋波付き管12の内周面に螺合する雄ねじ54が形成されている。内面鍔部53は貫通穴22よりも大径に形成されており、外周側部位には、壁部21aの内面における貫通穴22の周囲に当接する当接面55を有している。
【0023】
雄ねじ54を含む内筒部52の外周面の全体には、水分の吸収により膨張する管体内水膨張部56が形成されている。管体内水膨張部56は前述の管体外水膨張部36と同様に形成される。この管体内水膨張部56と共に、内面鍔部53における螺旋波付き管12の端部が対向する内周側部位にも、水分の吸収により膨張する管端水膨張部57が形成される。これら管体内水膨張部56と管端水膨張部57は同一の止水材によって一体に形成される。
【0024】
内面鍔部53の当接面55には、水分の吸収により膨張する穴縁水膨張部58が形成されている。このため当接面55は穴縁水膨張部58を介して間接的に貫通穴22の周囲に当接する。穴縁水膨張部58は、前述の管体外水膨張部36などと同様にシート状の止水材で構成される。
【0025】
この穴縁水膨張部58は、内面鍔部53の厚さを厚くするかさ上げ部59の上に形成される。かさ上げ部59は管継手31の場合と同様に適宜厚さの軟質ゴム層で形成される。これによって、管端水膨張部57における内筒部52側の面の方が穴縁水膨張部58の面よりも低く設定され、管端水膨張部57の周囲に、管端水膨張部57を取り囲む非吸水性の段差部が形成された状態になる。
【0026】
このような構成の管継手31とベルマウス51の寸法とねじ山(雌ねじ34、雄ねじ54)は、螺旋波付き管12との関係でつぎのように設定する。すなわち、管継手31の外筒部32の内径と雌ねじ34のピッチや高さ、ベルマウス51の内筒部52の外径と雄ねじ54のピッチや高さは、螺旋波付き管12の製造会社ごとの寸法差を吸収できるように設定する。特に、管継手31における膨張前の管体外水膨張部36の表面と、この管継手31を嵌めた螺旋波付き管12の表面との間に、管継手31の軸方向の外面鍔部33の反対側の端から外面鍔部33側の端まで水分を通す水分通路15を形成する(図5参照)。水分通路15の態様は管体外水膨張部36の性能を考慮して設定する。
【0027】
螺旋波付き管12の寸法差を吸収しつつ水分通路15を形成するとともに、接続作業に際しての螺合の簡単化をはかるため、管継手31の雌ねじ34のピッチ数は少なくするとよい。たとえば図3に示したように雌ねじ34のピッチ数を1ピッチ程度にすることができる。ベルマウス51の雄ねじ54も接続作業に際しての螺合の簡単化をはかるためピッチ数は少なく設定するとよいが、耐引張性を確保するためには雄ねじ54のピッチ数は1ピッチよりも多く、たとえば図4に示したように2ピッチ程度とするとよい。
【0028】
以上のような管継手31とベルマウス51で構成する管体接続構造11では、つぎのようにして螺旋波付き管12の接続を行う。この接続は取り付け段階と吸水段階を経て完了する。
【0029】
取り付け段階は図6に示した(a)〜(d)の各工程からなる。まず螺旋波付き管12の接続する側の端部に管継手31を嵌める(図6(a))。嵌める際には外面鍔部33と反対側の端部を螺旋波付き管12の端部に向けて行う。嵌合は、水分通路15を有するため簡単に、軽い力で回転して行える。つぎに管継手31を嵌めて端部を露出した螺旋波付き管12を貫通穴22に嵌める(図6(b))。つづいて貫通穴22の反対側、つまり内面側に出る螺旋波付き管12の端部に、ベルマウス51の内筒部52を挿入する(図6(c))。内筒部52の挿入はベルマウス51を回転しながら行い、螺旋波付き管12の端部がベルマウス51の内面鍔部53の管端水膨張部57に当たるまで行う。管端水膨張部57を構成する止水材が不織布で構成されているので一定の形態を維持し強靭であるので、螺旋波付き管12の端部が強く当たっても水膨張性を確保できる。最後に、ベルマウス51の内面鍔部53を貫通穴22の周囲に当てて管継手31を締める方向に回転して、ベルマウス51の内面鍔部53と管継手31の外面鍔部33で、貫通穴22の周囲を内外に締め付ける(図5参照)。このように管継手31とベルマウス51による取り付け作業は大きな力を要せずに極めて容易に行える。
【0030】
このような取り付け段階のあとに、地中箱21を地中に埋めると、土中の水分を吸収する吸水段階に移行する。吸水段階では、まず、図5に示したように管継手31と螺旋波付き管12の間に水分通路15を有した状態の管体外水膨張部36に対して、水分通路15に進入する水分が作用し、管体外水膨張部36を膨張させる。管体外水膨張部36は水分通路15への水分の進入に従って全体にわたって膨張する。この膨張によって螺旋波付き管12は主に外周方向から圧縮され、管継手31との位置関係が固定される。
【0031】
このように管体外水膨張部36が膨張するのと同期して、管継手31とベルマウス51の穴縁水膨張部38,58はその存在位置と大きさゆえに、土中の水分の作用によっていち早く迅速に膨張し、管継手31とベルマウス51による貫通穴22の周囲を締め付ける力を強力に発揮するとともに、貫通穴22と外部との間の止水を行う。この止水は、穴縁水膨張部38,58を構成する止水材が不織布で構成されているので一定の形態を維持し強靭であるうえに、穴縁水膨張部38,58の背面側に軟質ゴム層からなるかさ上げ部39,59を有するので、穴縁水膨張部38,58が膨張した締め付け時に軟質ゴム層が圧縮されて変形しつつも反発力を有する。このため、より強固で良好な止水状態となる。
【0032】
管体外水膨張部36を膨張させた水分は、図7に示したように、螺旋波付き管12の外周面を伝って奥へと移動して管端水膨張部57に達し、管端水膨張部57と管体内水膨張部56を膨張させる。管端水膨張部57と管体内水膨張部56は一体であるので、一連の膨張が極めて円滑に行われる。管端水膨張部57の周囲にはかさ上げ部59からなる段差部が形成されているので、進入する水分を効率よく管端水膨張部57と管体内水膨張部56の膨張に利用することができる。管端水膨張部57と管体内水膨張部56は、主に管体外水膨張部36を膨張させた水分で膨張させられるが、たとえばベルマウス51の螺合の仕方などの状態によってはベルマウス51の穴縁水膨張部58を膨張させた水分によっても膨張させられる場合がある。
【0033】
管端水膨張部57の膨張によって螺旋波付き管12の端部は図7に仮想線で示したように主に管継手31方向に荷重がかけられるとともに、管体内水膨張部56の膨張によって螺旋波付き管12は、内周側から外周側に広がる方向に荷重をかけられ、図1に示したように管継手31で覆われた部分の螺旋波付き管12の外周面全体とベルマウス51が挿入された部分の螺旋波付き管12の端部と内周面で止水がなされる。
【0034】
このように地中箱21の貫通穴22に対する螺旋波付き管12の接続状態は、管継手31とベルマウス51による挟持と、各水膨張部36,38,56,57,58の膨張圧力によって強力に保持される。しかも、各水膨張部36,38,56,57,58は異なる方向に膨張し、特に管端水膨張部57は螺旋波付き管12の端部を管継手31方向に押し付ける力を生むので、一方向への膨張のみで螺旋波付き管12に密着して止水する場合と比べて各部で高度の止水が行え、この結果十分な止水性を得られる。
【0035】
止水については、管体外水膨張部36による螺旋波付き管12の外周側での止水に加えて、管体内水膨張部56による螺旋波付き管12の内周側での止水も行うので、十分な止水性が得られる。しかも水分通路15を備えているので、螺旋波付き管12の端部と内周側の止水は確実に行える。
【0036】
以下、他の例について説明する。この説明において前述と同一の構成ついては同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
図8は、螺旋波付き管12を貫通穴22に直接接続するのではなく、受け継手71を介して接続する構成の管体接続構造11の分解状態を示す片側断面図であり、貫通穴22に対する受け継手71の接続に、前述の管継手31とベルマウス51を用いた例を示している。つまり、受け継71がこの発明の管体に相当する。
【0037】
受け継手71は、螺旋波付き管12の端部に固定された差し込み継手72を受ける遊端側部分71aを有するもの、貫通穴22に接続される基端側部分71bは螺旋波付き管12と同様の構成であるので、管継手31とベルマウス51は前述と同様に構成される。
【0038】
図9は、土圧がかかっても止水性を維持できるように構成した管体接続構造11を示す断面図であり、管継手31の外面鍔部33よりも内周側の部位に、貫通穴22に進入する筒状の突部75を備えている。突部75の外周側には貫通穴22との間をシールする環状のパッキン76が備えられている。この管体接続構造11は、螺旋波付き管12を貫通穴22に対して直接接続するものであり、管継手31とベルマウス51は前述と同様に構成される。
【0039】
この発明の構成と前述の一形態の構成との対応において、
この発明の管体は、前述の螺旋波付き管12、受け継手71に対応するも、
この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
11…管体接続構造
12…螺旋波付き管
15…水分通路
22…貫通穴
31…管継手
32…外筒部
33…外面鍔部
34…雌ねじ
35…当接面
36…管体外水膨張部
51…ベルマウス
52…内筒部
53…内面鍔部
54…雄ねじ
55…当接面
56…筒体内水膨張部
57…管端水膨張部
58…穴縁水膨張部
59…かさ上げ部
71…受け継手
【要約】
【課題】接続作業が容易でありながらも十分な止水性を得られるようにする。
【解決手段】螺旋波付き管12の外周面に螺合する雌ねじ34を有し螺旋波付き管12の外周面に嵌る外筒部32と、外筒部32の軸方向の一端において外周方向に張り出して接続対象である貫通穴22の周囲に当接する当接面35を有する外面鍔部33を備えた管継手31と、螺旋波付き管12の内周面に螺合する雄ねじ54を有し螺旋波付き管12内に挿入される内筒部52と、内筒部52の軸方向の一端において外周方向に張り出して貫通穴22の周囲に当接する当接面55を有する内面鍔部53を備えたベルマウス51を用いて螺旋波付き管12を貫通穴22に接続する管体接続構造11において、管継手31の外筒部32の内周面に、水分の吸収により膨張する管体外水膨張部36を形成し、ベルマウス51の内筒部52の外周面にも、水分の吸収により膨張する管体内水膨張部56を形成する。
【選択図】図1
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図9