特許第6144402号(P6144402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6144402
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】炉床金物用の耐熱鋼
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20170529BHJP
   C22C 38/44 20060101ALI20170529BHJP
   C22C 19/05 20060101ALI20170529BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C22C38/00 302Z
   C22C38/44
   C22C19/05 Z
   C22C30/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-211630(P2016-211630)
(22)【出願日】2016年10月28日
【審査請求日】2017年2月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠城 暢平
(72)【発明者】
【氏名】松原 基行
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 優貴
【審査官】 本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−121172(JP,A)
【文献】 特開昭53−95822(JP,A)
【文献】 特開平5−112842(JP,A)
【文献】 特開昭60−24344(JP,A)
【文献】 特公昭50−40099(JP,B2)
【文献】 中国特許出願公開第101928868(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0303669(US,A1)
【文献】 米国特許第3778256(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C22C 19/05
C22C 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材加熱炉の炉床金物に用いられる耐熱鋼であって、
質量%にて、C:0.05%〜0.5%、Si:0%を越えて0.95%以下、但し、0.05%≦C+Si≦1.0%、Mn:0%を越えて1.0%以下、Ni:40%〜50%、Cr:25%〜35%、及び、W:1.0%〜3.0%を含有し、残部10%以上のFe及び不可避的不純物からなる、
炉床金物用の耐熱鋼。
【請求項2】
質量%にて、Ti:0.05%〜0.5%、及び/又は、Zr:0.02%〜1.0%をさらに含有する、
請求項1に記載の炉床金物用の耐熱鋼。
【請求項3】
質量%にて、P:0.03%以下、及び/又は、S:0.03%以下をさらに含有する、
請求項1又は請求項2に記載の炉床金物用の耐熱鋼。
【請求項4】
質量%にて、N:0.2%以下、O:0.2%以下、及び、H:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の炉床金物用の耐熱鋼。
【請求項5】
一部又は全部が、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の炉床金物用の耐熱鋼からなる鋼材加熱炉の炉床部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間圧延を行なう加熱炉の炉床金物に用いられる耐熱鋼に関するものであり、より具体的には、スキッドボタンやスキッドライナーに用いられる耐熱鋼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延を行なうウォーキングビーム式等の加熱炉では、スラブ(鋼塊)をスキッドボタンやスキッドライナーなどの炉床金物で支持して搬送する。加熱炉では、スラブは、約1100℃以下の予熱帯、約1100℃〜約1300℃の加熱帯を経て、均熱帯で約1300℃を越える温度域まで加熱される。すなわち、炉床金物は、高温の大気雰囲気に曝されるためにすぐれた耐酸化性が要求され、また、高温で重量のあるスラブを支持するために高温での圧縮変形に対する高い抵抗(圧縮変形抵抗速度)が要求される。
【0003】
そこで、たとえば、予熱帯ではFe基合金、加熱帯ではCo含有耐熱鋼、均熱帯ではCr基合金が使用されている。加熱帯で使用されるCo含有耐熱鋼として、Coを質量%にて25%〜45%含有する耐熱合金が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−36936号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、Coが日本国における労働安全衛生法の規制対象となり、Coフリーの炉床金物の開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、Co含有耐熱鋼と同等又はそれ以上の特性を具備し、Coフリーの炉床金物用の耐熱鋼を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炉床金物用の耐熱鋼は、
鋼材加熱炉の炉床金物に用いられる耐熱鋼であって、
質量%にて、C:0.05%〜0.5%、Si:0%を越えて0.95%以下、但し、0.05%≦C+Si≦1.0%、Mn:0%を越えて1.0%以下、Ni:40%〜50%、Cr:25%〜35%、及び、W:1.0%〜3.0%を含有し、残部10%以上のFe及び不可避的不純物からなる。
【0008】
上記炉床金物用の耐熱鋼は、質量%にて、Ti:0.05%〜0.5%、及び/又は、Zr:0.02%〜1.0%をさらに含有することができる。
【0009】
上記炉床金物用の耐熱鋼は、質量%にて、P:0%を越えて0.03%以下、及び/又は、S:0%を越えて0.03%以下の含有を許容する。
【0010】
上記炉床金物用の耐熱鋼は、質量%にて、N:0%を越えて0.2%以下、O:0%を越えて0.2%以下、及び、H:0%を越えて0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種の含有を許容する。
【0011】
また、本発明の炉床部材は、一部又は全部が上記の炉床金物用の耐熱鋼からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炉床金物用の耐熱鋼は、Coフリーである。従って、日本国の労働安全衛生法の規制対象にはならない。また、本発明の炉床金物用の耐熱鋼は、Coの特性をNiで担保し、C、Siの含有量を下げてマトリクスの清浄度を向上させ、融点の低下を防ぐと共に、Cr、W、選択的にTi、Zrを複合的に添加することにより、耐酸化性や圧縮変形抵抗速度等の高温強度を高めることで、Co含有耐熱鋼と同等又はそれ以上の特性を具備できるから、Co含有耐熱鋼の代替品として極めて有用である。
【0013】
<成分限定理由>
本発明の炉床金物用の耐熱鋼は、以下の組成を含有する。なお、特に明示しない限り、「%」は質量%である。
【0014】
C:0.05%〜0.5%
Cは、Cr、Wなどと結合して炭化物を形成し、高温強度を高める効果があるため0.05%以上添加する。一方、Cの含有量が0.5%を越えると、耐熱鋼の固相線温度が下がり、融点の低下を招く。従って、Cの含有量の上限は0.5%とする。なお、Cの含有量の上限は0.3%が望ましく、0.2%がより望ましい。
【0015】
Si:0%を越えて0.95%以下
Siは、耐酸化性を高める元素であり、脱酸作用を有しマトリクスの清浄度を向上させて低融点化合物を減少させるために添加する。一方、次に説明するとおり、CとSiの合計量が1.0%を越えると、固相線温度が下がり、融点の低下を招く。従って、Siの含有量の上限は、CとSiの合計量の上限からCの最低含有量を引いた0.95%とする。
【0016】
但し、CとSiは、固相線温度を下げ、融点の低下を招くため、その合計量(C+Si)は、0.05%〜1.0%とする。
【0017】
Mn:0%を越えて1.0%以下
Mnは、高温強度を高める元素であり、脱酸・脱硫作用を有しマトリクスの清浄度を向上させて低融点化合物を減少させるために添加する。一方、Mnの含有量が1%を越えると耐酸化性の低下を招く。従って、Mnの含有量の上限は1%とする。
【0018】
Ni:40%〜50%
Niは、高温伸びを維持し、また、Coの代替成分として添加する。Niは、CrやW、さらに選択的に添加されるTi、Zrとの複合添加により、耐酸化性や圧縮変形抵抗速度等の高温強度を高めることができるため、40%以上添加する。一方、Niの含有量が50%を越えると、他の添加元素の減量に繋がり、特にCrの減量は各種高温特性の低下を招く。さらにNiはレアメタルであり高価である為、製品のコスト増加にもつながる。従って、Niの含有量の上限は50%とする。なお、Niは、Coよりは安価であるため、Coの代替成分としてNiを採用することで炉床金物を低コストで提供できる利点もある。
【0019】
Cr:25%〜35%
Crは、Niとの複合添加効果によって耐酸化性の向上に極めて有効な元素であり、その複合添加効果を具備するために25%〜35%添加する。
【0020】
W:1.0%〜3.0%
Wは、高温強度を向上させると共に、Niとの複合添加効果によって耐酸化性を向上に寄与するため添加する。Wは、高価な元素であるため添加量を低減させることが望ましいが、上記効果を得るために、1.0%〜3.0%添加する。
【0021】
残部10%以上のFe及び不可避的不純物であるが、選択的に以下の元素を添加することができる。
【0022】
Ti:0.05%〜0.5%、及び/又は、Zr:0.02%〜1.0%
Ti及びZrは、耐酸化性向上や高温圧縮クリープ強度を高めるために選択的に一方又は両方を添加する。Zrは、脱窒効果も有する。これら効果を得るために、Tiは0.05%以上、Zrは0.02%以上とする。一方、Tiは、合金の湯流れ性の低下に伴う鋳造性の悪化を招き、また、機械加工が困難になる虞があるため、その上限を0.5%とする。Zrは、熱間塑性加工性(たとえば曲げ加工)を低下させるため、その上限を1.0%とする。
【0023】
なお、不可避的不純物として、通常の溶製技術上不可避的に混入する元素として、P、S、N、O、Hを例示できる。これらの元素は、夫々P:0.03%以下、S:0.03%以下、N:0.2%以下、O:0.2%以下、H:0.1%以下であれば、その含有が許容される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の炉床金物用の耐熱鋼は、上記成分元素を鋳造し、熱処理及び機械加工を施して所望形状に仕上げることにより製造することができる。炉床金物として、スキッドボタンやスキッドレールを例示できる。なお、炉床金物の全体を本発明の耐熱鋼によって形成することもできるが、炉床構造や操炉条件等によって、炉床金物の一部、たとえばスラブと当接する部位のみを本発明の耐熱鋼としても構わない。
【0025】
本発明の炉床金物用の耐熱鋼は、実施例に示すように、固相線温度が約1300℃〜1400℃であるため、加熱炉における予熱帯や加熱帯への採用が好適であり、約1100℃〜1300℃で操業される加熱帯での使用がより望ましい。
【0026】
本発明の炉床金物用の耐熱鋼は、Coフリーであるため、日本国の労働安全衛生法の適用外であり、後述する実施例に示すように、固相線温度が高く、耐酸化性や圧縮変形抵抗速度等の高温強度が高いことから、炉床金物に用いられるCo含有耐熱鋼の代替品として極めて有用である。
【実施例】
【0027】
表1に示す組成の耐熱鋼について、高周波誘導溶解炉の大気溶解により溶湯を溶製し、鋳造を行なって供試材を作製した。表1に示す供試材のうち、発明例は発明例1〜5、比較例は比較例1〜7である。なお、Coを含有する参考例を比較のため作製した。
【0028】
【表1】
【0029】
そして、各供試材について、固相線温度、引張強さ、引張伸び、圧縮変形率及び耐酸化性の指標となる酸化減量速度を測定し、夫々評価した。結果を表2乃至表5に示す。
【0030】
固相線温度は、昇温速度3℃/分での測定値である。結果を表2に示している。
【0031】
引張強さは、JIS Z2241に準拠して、600℃、800℃、900℃及び1100℃で測定した。結果を表2中、実測値に示している。
【0032】
引張伸びは、JISZ2241に準拠して、600℃、800℃、900℃及び1100℃で測定し、供試材の元の長さに対する破断時の供試材の長さの比を百分率(%)で算出した。結果を表3中、実測値に示している。
【0033】
圧縮変形率の測定は、各供試材から切り出した複数の円柱状試験片(高さ50mm×直径30mm)に対して実施した。詳細には、炉内温度1300℃の電気炉中で、試験片を固定台の上に直立固定し、試験片の温度を1230℃〜1260℃で保持しつつ、試験片に9.81N/mmの圧縮荷重を反復負荷した。反復負荷は、各試験片に対して、5秒間負荷、5秒間無負荷、荷重負荷と無負荷の移行時間を夫々1秒の合計12秒を1サイクルとし、これを2000サイクル反復実施した。この試験を2〜4個の試験片に実施した後、試験片の試験前後の高さと直径の変化率を計測し、その変化量(%)の平均を算出することで測定した。結果を表4中、実測値に示している。
【0034】
酸化減量速度の測定も、各供試材から切り出した丸棒状試験片(長さ50mm×直径10mm)に対して実施した。詳細には、試験片を大気雰囲気中で1200℃、1252℃、1302℃の条件にて100時間保持した後、試験片の酸化による重量変化を測定し、酸化減量速度(mm/year)を求めた。結果を表5中、実測値に示している。
【0035】
上記各試験の結果を表2乃至表5に示している。なお、未測定の供試材については、結果を空欄としている。
【0036】
固相線温度は、すべての供試材について測定した。表2を参照すると、各供試材の固相線温度(実測値)は、何れも1300℃を越えていることがわかる。一方で、加熱炉では、特に加熱帯や均熱帯で安定操業を図るために、1300℃よりも50℃〜60℃以上高い固相線温度が要求される。そこで、固相線温度の評価として、参考例に近い1400℃以上のものを評価「A」、1380℃以上を評価「B」、1360℃以上を評価「C」、1360℃未満を評価「D」とした。その結果、表2に示すように、評価「A」を満たす発明例、比較例はなかったが、発明例は評価「B」又は「C」を満足していた。比較例は比較例1が評価「C」であるが、それ以外は何れも評価「D」であった。
【0037】
【表2】
【0038】
引張強さは、発明例2、3及び5を除く供試材について測定した。なお、発明例2、比較例6及び比較例7については一部の測定温度のみ測定した。測定された引張強さ(実測値)は、参考例の各測定温度における実測値に対し、−5%より小さいものを「−1」、±5%以内のものを「0」、+5%より大きいものを「+1」と点数化した。各測定温度における個別点数を表2に示す。そして、その合計が「+3」よりも大きく且つマイナスがないものを評価「A」、その合計が「0」より大きいものを評価「B」、その合計が「0」のものを評価「C」、その合計が「0」より小さいものを評価「D」とした。結果を合わせて表2に示す。
【0039】
表2を参照すると、引張強さについては、比較例2及び比較例3が評価「A」であり、発明例1、比較例4、比較例5及び比較例7が評価「B」、その他は何れも評価「C」又は「D」であった。
【0040】
引張伸びは、発明例3を除く供試材について測定した。なお、発明例2、発明例5、比較例6及び比較例7は一部の測定温度についてのみ測定した。測定された引張伸び(実測値)は、参考例の600℃における実測値(14%)を基準とし、その実測値が14%より小さいものを「−1」、14%以上を「+1」と点数化した。なお、一般的に高温になるほど引張伸びは大きくなることから、800℃以上の測定温度についても同じ値(14%)を基準として評価を行なった。各測定温度における個別点数を表3に示す。そして、その合計が「0」よりも大きく且つマイナスがないものを評価「B」、その合計が「0」より小又はマイナスがあるものを評価「C」とした。結果を合わせて表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3を参照すると、引張伸びは、発明例1、発明例2、発明例4、発明例5、比較例1及び比較例4が評価「B」、その他は何れも評価「C」であった。
【0043】
圧縮変形率は、すべての供試材について測定した。測定された圧縮変形率(実測値)は、参考例の高さ及び直径方向の圧縮変形率(実測値)に対し、−50%より小さいものを「+2」、−5%より小さいものを「+1」、±5%以内のものを「0」、+5%より大きいものを「−1」と点数化した。高さ方向及び直径方向の個別点数を表4に示す。そして、その合計が「+3」よりも大きく且つマイナスがないものを評価「A」、その合計が「0」より大きいものを評価「B」、その合計が「0」のものを評価「C」、その合計が「0」より小さいものを評価「D」とした。結果を合わせて表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
表4を参照すると、圧縮変形率は、発明例1乃至発明例5、比較例1及び比較例5が評価「A」、比較例4、比較例6及び比較例7が評価「B」、その他が評価「D」であった。
【0046】
酸化減量速度は、すべての供試材について測定した。但し、発明例2乃至発明例5については、一部の測定温度のみについて測定した。測定された酸化減量速度(実測値)は、参考例の各測定温度における実測値に対して、−50%より小さいものを「+2」、−5%より小さいものを「+1」、±5%以内のものを「0」、+5%より大きいものを「−1」と点数化した。各測定温度における個別点数を表5に示す。そして、その合計が「0」より大きいものを評価「B」、その合計が「0」であるものを評価「C」、その合計が「0」より小さく且つマイナスが2つ以上あるものを評価「D」とした。結果を合わせて表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
表5を参照すると、発明例1乃至発明例5、比較例2、比較例4、比較例5及び比較例7が評価「B」、それ以外は評価「D」であった。
【0049】
そして、上記得られた各供試材の評価「A」〜「D」について、評価「A」は「+2」、評価「B」は「+1」、評価「C」は「0」、評価「D」は「−1」として再度点数化した。各供試材の評価及び点数(括弧内)を表6に示す。そして、各点数に基づいて供試材の総合評価を行なった。総合評価では、各点数の合計が3より大きく且つマイナスがないものを評価「A」、合計が3のものを評価「B」、合計が0〜2のものを評価「C」、合計が0未満又はマイナスが2以上あるものを評価「D」とした。総合評価を表6に示す。
【0050】
【表6】
【0051】
表6を参照すると、発明例は何れも総合評価が「A」であり、参考例のCo含有耐熱鋼と同等又はそれ以上の特性を具備していることがわかる。すなわち、発明例の耐熱鋼は、炉床金物として、Co含有耐熱鋼の代替品として極めて有用であることがわかる。
【0052】
一方、比較例については、何れも総合評価が「B」〜「D」であった。これは、以下の要因によるものと考えられる。
【0053】
比較例1は、C、Si、C+Siは共に本発明範囲内であるため固相線温度は高いが、Crが本発明範囲を下回っているため、十分な耐酸化性(酸化減量速度)を得られなかった。
【0054】
比較例2は、Si、C+Siが本発明範囲を上回っているため、固相線温度が低下している。従って、今回の耐酸化試験では十分な耐酸化性を確認できているが、加熱炉中の異常により、温度が上昇したときに溶ける、或いは、酸化量が増加する等の虞がある。
【0055】
比較例3及び比較例4は、Si、C+Siが本発明範囲を上回っており、固相線温度が低下している。また、Crが本発明範囲を上回っているため、十分な延性(引張伸び)が得られなかった。さらに、比較例4については、Niが本発明範囲を下回っており、引張強さも低下していることがわかる。
【0056】
比較例5は、C、Ni、Crは本発明範囲内であるが、C+Siが本発明範囲を上回っており、固相線温度が低下すると共に、引張伸びが低下したと考えられる。
【0057】
比較例6は、C、Si、C+Siは共に本発明範囲内であるが、Wが本発明範囲を超えたため耐酸化性が低下していることがわかる。
【0058】
比較例7は、C、Si、C+Siは共に本発明範囲内であるが、Crが本発明範囲を超えたため、十分な延性が確保できていないことがわかる。
【0059】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【要約】
【課題】本発明は、Co含有耐熱鋼と同等又はそれ以上の特性を具備し、Coフリーの炉床金物用の耐熱鋼を提供する。
【解決手段】本発明に係る炉床金物用の耐熱鋼は、鋼材加熱炉の炉床金物に用いられる耐熱鋼であって、質量%にて、C:0.05%〜0.5%、Si:0%を越えて0.95%以下、但し、0.05%≦C+Si≦1.0%、Mn:0%を越えて1.0%以下、Ni:40%〜50%、Cr:25%〜35%、及び、W:1.0%〜3.0%を含有し、残部10%以上のFe及び不可避的不純物からなる。上記炉床金物用の耐熱鋼は、質量%にて、Ti:0.05%〜0.5%、及び/又は、Zr:0.02%〜1.0%をさらに含有することができる。
【選択図】なし