特許第6144404号(P6144404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144404減速機の故障診断装置及び故障診断方法並びに前記故障診断装置を備える機械装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6144404
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】減速機の故障診断装置及び故障診断方法並びに前記故障診断装置を備える機械装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20170529BHJP
   G01M 13/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B25J19/06
   G01M13/02
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-253970(P2016-253970)
(22)【出願日】2016年12月27日
【審査請求日】2017年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸二
(72)【発明者】
【氏名】川井 淳
(72)【発明者】
【氏名】兼田 哲男
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−144325(JP,A)
【文献】 特開2012−194035(JP,A)
【文献】 特開2000−146771(JP,A)
【文献】 特開2015−34776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
G01M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動される機械装置に、前記モータの回転動力を減速して前記機械装置の動作部に伝達するよう設けられた減速機の故障診断装置であって、
前記機械装置の動作が加減速する加減速期間を特定し、当該加減速期間における前記モータの回転数の変化に対する前記モータの負荷電流又は当該負荷電流と相関関係を有する電流値(以下、モータ電流という)の周波数スペクトラムの変化に基づいて、前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定するよう構成されている、減速機の故障診断装置。
【請求項2】
前記モータの回転数を取得する回転数取得部と、
前記回転数取得部により取得されるモータの回転数に基づいて前記加減速期間を特定する加減速期間特定部と、
前記モータ電流を取得するモータ電流取得部と、
前記加減速期間において前記回転数取得部により取得される前記モータの回転数を順次サンプリングして一群の時系列回転数データを生成する時系列回転数データ生成部と、
前記加減速期間において前記モータ電流取得部により取得される前記モータ電流を順次サンプリングして一群の時系列モータ電流データを生成する時系列モータ電流データ生成部と、
前記一群の時系列モータ電流データを前記一群の時系列回転数データにそれぞれ対応させて周波数解析し、前記一群の時系列回転数データにそれぞれ対応する一群の前記モータ電流データの周波数スペクトラムを生成するFFT解析部と、
一群の前記モータ電流データの周波数スペクトラムのうちの、前記減速機の所定の固有振動数に対応する所定の周波数領域におけるモータ電流の振幅のピーク値を抽出する振幅ピーク値抽出部と、
抽出された前記モータ電流の振幅のピーク値を所定の振幅閾値と比較し、その結果に基づいて前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定する判定部と、を含む、請求項1に記載の減速機の故障診断装置。
【請求項3】
前記振幅閾値が、前記減速機の摩耗量の許容限度を示す許容摩耗量閾値に対応する許容振幅閾値である、請求項2に記載の減速機の故障診断装置。
【請求項4】
前記モータ電流が所定値以上である場合に、前記判定を行うように構成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の減速機の故障診断装置。
【請求項5】
前記減速機は、出力軸が前記機械装置の動作範囲において1回転未満の回転範囲内でしか回転しないように構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の減速機の故障診断装置。
【請求項6】
前記加減速期間が加速期間である、請求項1乃至5のいずれかに記載の減速機の故障診断装置。
【請求項7】
前記加減速期間が減速期間である、請求項1乃至5のいずれかに記載の減速機の故障診断装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の減速機の故障診断装置を備える、機械装置。
【請求項9】
モータにより駆動される機械装置に、前記モータの回転動力を減速して前記機械装置の動作部に伝達するよう設けられた減速機の故障診断方法であって、
前記機械装置の動作が加減速する加減速期間を特定するステップ(a)と、当該加減速期間における前記モータの回転数の変化に対する前記モータの負荷電流又は当該負荷電流と相関関係を有する電流値(以下、モータ電流という)の周波数スペクトラムの変化に基づいて、前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定するステップ(b)と、を含む、減速機の故障診断方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)は、
前記モータの回転数を取得する回転数取得ステップと、
回転数取得ステップにより取得される前記モータの回転数に基づいて前記加減速期間を特定する加減速期間特定ステップと、を含み、
前記ステップ(b)は、
前記モータ電流を取得するモータ電流取得ステップと、
前記加減速期間において前記回転数取得ステップにより取得される前記モータの回転数を順次サンプリングして一群の時系列回転数データを生成する時系列回転数データ生成ステップと、
前記加減速期間において前記モータ電流取得ステップにより取得される前記モータ電流を順次サンプリングして一群の時系列モータ電流データを生成する時系列モータ電流生成ステップと、
前記一群の時系列モータ電流データを前記一群の時系列回転数データにそれぞれ対応させて周波数解析し、前記一群の時系列回転数データにそれぞれ対応する一群の前記モータ電流データの周波数スペクトラムを生成するFFT解析ステップと、
一群の前記モータ電流データの周波数スペクトラムのうちの、前記減速機の所定の固有振動数に対応する所定の周波数領域におけるモータ電流の振幅のピーク値を抽出する振幅ピーク値抽出ステップと、
抽出された前記モータ電流の振幅のピーク値を所定の振幅閾値と比較し、その結果に基づいて前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定する判定ステップと、を含む、請求項9に記載の減速機の故障診断方法。
【請求項11】
前記振幅閾値が、前記減速機の摩耗量の許容限度を示す許容摩耗量閾値に対応する許容振幅閾値である、請求項10に記載の減速機の故障診断方法。
【請求項12】
前記モータ電流が所定値以上である場合に、前記判定を行う、請求項9乃至11のいずれかに記載の減速機の故障診断方法。
【請求項13】
前記減速機は、出力軸が前記機械装置の動作範囲において1回転未満の回転範囲内で回転するように構成されている、請求項9乃至12のいずれかに記載の減速機の故障診断方法。
【請求項14】
前記加減速期間が加速期間である、請求項9乃至13のいずれかに記載の減速機の故障診断方法。
【請求項15】
前記加減速期間が減速期間である、請求項9乃至13のいずれかに記載の減速機の故障診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機の故障診断装置及び故障診断方法並びに前記故障診断装置を備える機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のロボットの故障の主要因の一つとして減速機の故障がある。このような減速機の異常診断装置として、例えば、トルク指令と速度フィードバックとに基づいて、減速機に関する外乱推定値を推定し、この外乱推定値の周波数成分から抽出した特定スペクトルの振幅に基づいて減速機の異常を診断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−032477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記異常診断装置では、モータにより回転運動する被駆動部材が一定速度で回転することが必要である。しかし、ロボットの様々な動作において必ずしも等速時間が存在するわけではない。そこで、上記異常診断方法では、例えば、ロボットが作業を開始する前に、ロボットに等速時間が存在するような所定の動作をさせて異常診断を行うことが必要であった。
【0005】
しかし、作業効率の観点からはロボットの作業中に異常(故障)診断を行うことが好ましい。つまり、上記従来の異常(故障)診断装置には、ロボットの作業中に異常(故障)診断を行うことができないという問題があった。また、このことは、ロボットに限らず、減速機が設けられた機械装置全般に共通する問題である。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことが可能な減速機の故障診断装置及び故障診断方法並びに前記故障診断装置を備える機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様(aspect)に係る減速機の故障診断装置は、 モータにより駆動される機械装置に、前記モータの回転動力を減速して前記機械装置の動作部に伝達するよう設けられた減速機の故障診断装置であって、前記機械装置の動作が加減速する加減速期間を特定し、当該加減速期間における前記モータの回転数の変化に対する前記モータの負荷電流又は当該負荷電流と相関関係を有する電流値(以下、モータ電流という)の周波数スペクトラムの変化に基づいて、前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定するよう構成されている。ここで、「前記モータの回転動力を減速して」は、モータから直接減速機に入力される回転動力を減速することと、モータから間接に減速機に入力される回転動力を減速することとの双方を含む。また、「前記機械装置の動作部に伝達する」は、機械装置の動作部に直接伝達することと、機械装置の動作部に間接に伝達することとの双方を含む。また、「モータの回転数」は、モータの実際の回転数と、当該実際の回転数と相関関係を有する物理量(例えば、減速機の出力軸の回転数、モータによって駆動される機械装置の動作部における回転軸の回転数等)と、を含む。
【0008】
この構成によれば、機械装置の動作が加減速する加減速期間を特定することができる。加減速期間では、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化において、減速機の固有振動数に対応する特定の周波数領域の電流振幅が減速機の共振により増大してピーク値を示す。このピーク値は減速機の故障の兆候と相関がある。そのため、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化に基づいて、減速機に故障の兆候があるか否かを判定することができる。従って、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことができる。
【0009】
前記減速機の故障診断装置は、前記モータの回転数を取得する回転数取得部と、前記回転数取得部により取得されるモータの回転数に基づいて前記加減速期間を特定する加減速期間特定部と、前記モータ電流を取得するモータ電流取得部と、前記加減速期間において前記回転数取得部により取得される前記モータの回転数を順次サンプリングして一群の時系列回転数データを生成する時系列回転数データ生成部と、前記加減速期間において前記モータ電流取得部により取得される前記モータ電流を順次サンプリングして一群の時系列モータ電流データを生成する時系列モータ電流データ生成部と、前記一群の時系列モータ電流データを前記一群の時系列回転数データにそれぞれ対応させて周波数解析し、前記一群の時系列回転数データにそれぞれ対応する一群の前記モータ電流データの周波数スペクトラムを生成するFFT解析部と、一群の前記モータ電流データの周波数スペクトラムのうちの、前記減速機の所定の固有振動数に対応する所定の周波数領域におけるモータ電流の振幅のピーク値を抽出する振幅ピーク値抽出部と、抽出された前記モータ電流の振幅のピーク値を所定の振幅閾値と比較し、その結果に基づいて前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定する判定部と、を含んでもよい。
【0010】
この構成によれば、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断が可能な故障診断装置を、好適に具体化することができる。
【0011】
前記振幅閾値が、前記減速機の摩耗量の許容限度を示す許容摩耗量閾値に対応する許容振幅閾値であってもよい。
【0012】
この構成によれば、実質的に減速機の摩耗量が故障の指標になるので、減速機の故障の兆候があるか否かを的確に判定することができる。
【0013】
前記モータ電流が所定値以上である場合に、前記判定を行うように構成されてもよい。
【0014】
この構成によれば、減速機の負荷が大きい場合に故障の兆候の有無を判定することになる。減速機の負荷が大きい場合には、歯車がしっかりかみ合うので、減速機の共振による特定の周波数領域の電流振幅のピーク値がより明確に現れる。そのため、故障の兆候の有無をより的確に判定することができる。
【0015】
前記減速機は、出力軸が前記機械装置の動作範囲において1回転未満の回転範囲内でしか回転しないように構成されてもよい。
【0016】
この構成によれば、そのような減速機であって、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障の診断を行うことができる。
【0017】
前記加減速期間が加速期間であってもよい。
【0018】
この構成によれば、機械装置の動作における加速期間に故障の兆候の有無を判定することになる。加速期間では、歯車がしっかりかみ合うので、減速機の共振による特定の周波数領域の電流振幅のピーク値がより明確に現れる。そのため、故障の兆候の有無をより的確に判定することができる。
【0019】
前記加減速期間が減速期間であってもよい。
【0020】
また、本発明の他の態様(aspect)に係る機械装置は、上記のいずれかの減速機の故障診断装置を備える。
【0021】
この構成によれば、当該機械装置の作業中に故障診断を行うことができる。
【0022】
また、本発明のさらなる他の態様(aspect)に係る減速機の故障診断方法は、モータにより駆動される機械装置に、前記モータの回転動力を減速して前記機械装置の動作部に伝達するよう設けられた減速機の故障診断方法であって、前記機械装置の動作が加減速する加減速期間を特定するステップ(a)と、当該加減速期間における前記モータの回転数の変化に対する前記モータの負荷電流又は当該負荷電流と相関関係を有する電流値(以下、モータ電流という)の周波数スペクトラムの変化に基づいて、前記減速機に故障の兆候があるか否かを判定するステップ(b)と、を含む。
【0023】
この構成によれば、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことが可能な減速機の故障診断装置及び故障診断方法並びに前記故障診断装置を備える機械装置を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る減速機の故障診断装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化を模式的に示す図である。
図3図3は、図1の故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、図4B−4Eとともに耐久試験における減速機のグリスの鉄粉の濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。
図4B図4Bは、図4A、4C−4Eとともに耐久試験における減速機のグリスの鉄粉の濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。
図4C図4Cは、図4A、4B、4D、4Eとともに耐久試験における減速機のグリスの鉄粉の濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。
図4D図4Dは、図4A−4C、4Eとともに耐久試験における減速機のグリスの鉄粉の濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。
図4E図4Eは、図4A−4Dとともに耐久試験における減速機のグリスの鉄粉の濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。
図5図5は、耐久試験における減速機のグリスの鉄粉濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者等は、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことを可能にすべく鋭意検討した。
【0027】
この検討において、本発明者等は、減速機に特化した故障診断を見出すことを第1の前提とした。また、例えば、産業用ロボットの減速機は、出力軸がロボットの動作範囲において1回転未満の回転範囲内でしか回転しない。そこで、そのような減速機に対しても有効な故障診断を見出すことを第2の前提とした。さらに、例えば、産業用ロボットは、モータにより駆動され、モータ電流を制御することによって、その動作が制御されるので、モータ電流を故障か否かを解析する基礎データとして用いれば、解析の基礎データを検知するセンサを省略することができる。そこで、モータ電流を、故障か否かを解析する基礎データとして用いることを、第3の前提とした。ここで、「モータ電流」は、制御上の概念であり、モータの負荷電流と、当該負荷電流と相関関係を有する電流値(例えば、コントローラからモータの駆動回路(電力変換器)に出力される電流指令値)と、を含む。
【0028】
これらの第1乃至第3の前提の下に試行錯誤した結果、本発明者等は、出力軸がロボットの動作範囲において1回転未満の回転範囲内でしか回転しない減速機を有する産業用ロボットにおいて、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化(図2参照)において、減速機の固有振動数に対応する特定の周波数領域の電流振幅が減速機の共振により増大して明確なピーク値を示すことを見出した(図4A−4E参照)。
また、減速機のグリス中の鉄粉の濃度(以下、グリスの鉄粉濃度という)の変化に対する減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅の変化を実験により調べた(図4A−4E参照)。減速機のグリスの鉄粉濃度は減速機の劣化(故障の兆候)と関係がある。その結果、減速機のグリスの鉄粉濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との間に相関関係があることを見出した(図5参照)。換言すると、本発明者等は、上記特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値は減速機の故障の兆候と相関があることを見出した。
【0029】
これらの知見によれば、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化に基づいて、減速機に故障の兆候があるか否かを判定することができる。
なお、以上の知見を、産業用ロボット以外の減速機を有する機械装置にも適用することができることは明らかである。また、出力軸が機械装置の動作範囲において1回転以上回転する減速機にも適用することができることは明らかである。
【0030】
本発明者等は、以上の知見に基づいて本発明を想到した。以下、本発明を具体化した実施形態を、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0031】
(実施形態1)
[構成]
図1は、本発明の実施形態1に係る減速機の故障診断装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0032】
図1を参照すると、減速機の故障診断装置(以下、単に故障診断装置という)1は、モータ14により駆動される機械装置11に、モータ14の回転動力を減速して機械装置11の動作部12に伝達するよう設けられた減速機13の故障診断装置1であって、機械装置11の動作が加減速する加減速期間(以下、単に加減速期間という)を特定し、当該加減速期間におけるモータ14の回転数の変化に対するモータ14のモータ電流の周波数スペクトラムの変化に基づいて、減速機13に故障の兆候があるか否かを判定するよう構成されている。以下、これを具体的に説明する。
【0033】
まず、故障診断装置1の診断対象である減速機13及び当該減速機13を備える機械装置11について説明する。
【0034】
機械装置11は、動作部12と、動作部12を駆動するモータ14と、モータ14の回転動力を減速して動作部12に伝達する減速機13と、モータ14の回転位置を検出するエンコーダ16と、モータ14に供給する電力(ここでは電流)を制御して、モータ14の回転を制御する電力変換器15と、を含む。
【0035】
機械装置11は、動作部12を含むものであればよい。機械装置11として、典型的には産業用ロボットが挙げられる。機械装置11として、これ以外に、工作機械等が例示される。
【0036】
減速機13は、モータ14の回転動力を減速して動作部12に伝達するものであればよい。減速機13は、例えば、入力軸の回転動力を減速機構(図示せず)によって減速し、減速した回転動力を、出力軸13aに出力する。入力軸として、図1には、モータ14の回転軸14aが例示されているが、例えば、他の動作部の出力軸であってもよい。また、減速機構として、典型的には歯車減速機構が例示されるが、それ以外の減速機構であってもよい。
【0037】
モータ14はサーボモータであり、ブラシレスモータ、直流モータでもよい。しかし、誘導電動機等の他のモータであってもよい。サーボモータが用いられる場合は、エンコーダ16を併用して、動作部12の位置制御が行われる。モータ14の設置場所は、機械装置11の静止部でも、動作部でもよい。産業用ロボットの場合、モータ14は、第1関節を除いて、各関節において各関節より先のアーム部材を駆動するために設けられるので、第1関節以外の関節ではモータ14は動作部に設けられる。第1関節では静止部に設けられる。
【0038】
エンコーダ16は、モータ14の回転軸14aに設けられる。エンコーダ16は、モータ14の回転角(回転位置)を検出するものであればよい。なお、モータ14が、誘導電動機等によって構成され、動作部12の位置制御が行われない場合は、例えば、エンコーダ16に代えて回転数検知器が用いられる。
【0039】
電力変換器15は、モータ14に、電圧又は電流が制御される(図1では電流が制御される)電力を供給して、モータ14を駆動する。電力変換器15は、周知であるので、その具体的な説明を省略する。図1では、電力変換器15が電流センサ(図示せず)を備えていて、モータ14に供給する電流(モータ14の負荷電流)を検知し、その検知した電流19をコントローラ17に出力する。電流センサは、電力変換器15の外部に設けられてもよい。
【0040】
コントローラ17は、エンコーダ16から入力されるモータ14の回転角と電力変換器15の電流センサから入力されるモータ電流19に基づいて、電流指令値20を生成し、それを電力変換器15に出力する。電力変換器15は、電流指令値20に従った電流の電力をモータ14に出力する。かくして、コントローラ17は、モータ14の回転角及びトルクをフィードバック制御する。
【0041】
次に、故障診断装置1を説明する。
【0042】
故障診断装置1は、演算装置で構成される。演算装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、マイクロコントローラ等のプログラム(ソフトウェア)に従って動作するものの他、論理回路、電子回路等のハードウエアが例示される。故障診断装置1は、ここでは、プログラムに従って動作する演算器で構成される。故障診断装置1(演算器)は、演算部と記憶部とを有し、演算部が記憶部に格納された所定の故障診断プログラム読み出して実行することにより、所定の故障診断を行う。故障診断装置1は、回転数取得部2と、加減速期間特定部3と、モータ電流取得部4と、時系列回転数データ生成部5と、時系列モータ電流データ生成部6と、FFT解析部7と、振幅ピーク値抽出部8と、判定部9と、出力部10と、を含む。
【0043】
機能部2−9は、上述の所定の故障診断プログラムが実行されることによって実現される機能部であり、実際には上記演算器が機能部2−9として動作する。
【0044】
回転数取得部2は、エンコーダ16から入力されるモータ14の回転角に基づいて、モータ14の回転数を取得する(そして、一時的に保存する)。なお、エンコーダ16に代えて回転数検知器が設けられる場合には、回転数検知器から入力される回転数に基づいて、モータ14の回転数を取得する。
【0045】
加減速期間特定部3は、回転数取得部2により取得されるモータの回転数に基づいて加減速期間を特定する。
【0046】
モータ電流取得部4は、ここでは、コントローラ17から入力される電流指令値20をモータ電流として取得する(そして、一時的に保存する)。なお、電力変換器15の電流センサ(図示せず)から入力されるモータ電流19を、「モータ電流」として取得してもよい。なお、電流指令値は、モータの負荷電流に対する現在値の偏差に応じた指令信号であり、モータの負荷電流と遜色ない結果が得られる。
【0047】
時系列回転数データ生成部5は、加減速期間において回転数取得部2により取得されるモータの回転数を順次サンプリングして一群の時系列回転数データを生成する。
【0048】
時系列モータ電流データ生成部6は、加減速期間においてモータ電流取得部4により取得されるモータ電流を順次サンプリングして一群の時系列モータ電流データを生成する。
【0049】
ここで、回転数データ及びモータ電流データの切り出し(抽出)とサンプリングについて説明する。回転数取得部2及びモータ電流取得部4は、それぞれ、モータ回転数及びモータ電流を、時系列のデータとして取得する。この時系列のデータについては、加減速期間の部分の切り出しと、サンプリングとを行う必要があるが、いずれが先であってもよい。また、サンプリングは、モータの1回転におけるサンプリング点数を定義し、且つ、モータの回転数が変化しても、定義した点数のサンプリングが行われるように、モータの回転数に応じたサンプリング周波数を決定する。
【0050】
FFT解析部7は、一群の時系列モータ電流データを一群の時系列回転数データにそれぞれ対応させて周波数解析し、一群の時系列回転数データにそれぞれ対応する一群のモータ電流データの周波数スペクトラムを生成する。この周波数解析(以下、3次元周波数解析という場合がある)は、例えば、FFT(高速フーリエ変換)により行われる。
【0051】
図2は、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化を模式的(概念的)に示す図であり、周波数解析を3次元で表示したものである。図2において、X軸は回転数(rpm)を表し、Y軸は周波数(Hz)を表し、Z軸はモータ電流の振幅(A)を表す。X軸上には、一群の時系列回転数データ21が位置する。参照符号Rは、個々の回転数データを示す。そして、一群の時系列回転数データ21に対応して、一群のモータ電流データの周波数スペクトラム22が存在する。参照符号Sは、個々のモータ電流データの周波数スペクトラムを示す。図2には、簡略化のため、1次回転数(基本回転数)及び2次回転数のみ示してある。参照符号fは周波数を示し、f0は減速機13の固有振動数(共振周波数)を示す。周波数が(f0−Δf)≦f≦(f0+Δf)の範囲は、所定の周波数領域frを示す。この所定の周波数領域frにおいて、モータ電流データの周波数スペクトラムSにおける電流の振幅は、減速機13の共振により増大してピーク値24を示す。
【0052】
なお、実際には、X軸上に多数の回転数データRが位置し、それらに対応する多数のモータ電流データの周波数スペクトラムSが存在する。また、故障診断時には、時系列の回転数データから加減速期間に相当するデータが切り出されるので、X軸上の一部領域のみに回転数データ21が位置し、且つそれらに対応するモータ電流データの周波数スペクトラム22のみが存在する場合もあり得る。
【0053】
図1及び図2を参照すると、振幅ピーク値抽出部8は、一群のモータ電流データの周波数スペクトラムSのうちの、減速機13の所定の固有振動数f0に対応する所定の周波数領域frにおけるモータ電流の振幅のピーク値を抽出する。所定の固有振動数f0は、予め、実験、シミュレーション、計算等により決定され、故障診断装置1の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0054】
判定部9は、抽出されたモータ電流の振幅のピーク値24を所定の振幅閾値と比較し、その結果に基づいて減速機13に故障の兆候があるか否かを判定する。具体的には、モータ電流の振幅のピーク値24が所定の振幅閾値以上であると減速機13に故障の兆候があると判定し、モータ電流の振幅のピーク値24が所定の振幅閾値未満であると減速機13に故障の兆候がないと判定する。この振幅閾値は、実験、シミュレーション等によって決定される。振幅閾値は、減速機13の劣化(故障の兆候)と関連する物理量(パラメータ)の許容限度を示す許容限度閾値に対応させて決定される。本実施形態では、減速機のグリスの鉄粉濃度の許容限度閾値と対応させて決定される。
【0055】
出力部10は、判定部9による判定結果を出力する。出力部10は、例えば、判定結果を表示する表示器又は警報器、判定結果を外部に送信する送信器、判定結果を印刷する印刷器等で構成される。
【0056】
[動作]
次に、以上のように構成された故障診断装置1の動作を説明する。なお、故障診断装置1の動作は、本実施形態1に係る故障診断方法でもある。
【0057】
図3は、図1の故障診断装置の動作を示すフローチャートである。図1乃至図4Eを参照すると、まず、機械装置11が動作される。この状態において、故障診断装置1は、時間(周期)を取得する(ステップS1)。
【0058】
また、回転数取得部2が、モータ14の回転数を取得する(ステップS2)。
【0059】
また、モータ電流取得部4が、モータ14のモータ電流を取得する(ステップS3)。
【0060】
ここで、ステップS1(時間取得)、ステップS2(回転数取得)、ステップS3(モータ電流取得)は相互に順番が入れ替わってもよい。
【0061】
次いで、加減速期間特定部3が、回転数取得部2により取得されるモータの回転数に基づいて加減速期間を特定する(ステップS4)。
【0062】
次いで、時系列回転数データ生成部5が、加減速期間において回転数取得部2により取得されるモータの回転数を順次サンプリングして一群の時系列回転数データを生成する。また、時系列モータ電流データ生成部6が、加減速期間においてモータ電流取得部4により取得されるモータ電流を順次サンプリングして一群の時系列モータ電流データを生成する。(ステップS5)。
【0063】
ここで、故障診断装置1は、予めサンプリング周波数を決定する。また、モータの1回転におけるサンプリング点数を定義する。
【0064】
次いで、FFT解析部7が、一群の時系列モータ電流データを一群の時系列回転数データにそれぞれ対応させて周波数解析し、一群の時系列回転数データ21にそれぞれ対応する一群のモータ電流データの周波数スペクトラム22を生成する(ステップS6)。
次いで、振幅ピーク値抽出部8が、一群のモータ電流データの周波数スペクトラム22のうちの、減速機13の所定の固有振動数f0に対応する所定の周波数領域frにおけるモータ電流の振幅のピーク値24を抽出する。
【0065】
次いで、判定部9が、抽出されたモータ電流の振幅のピーク値24を所定の振幅閾値と比較し、その結果に基づいて減速機13に故障の兆候があるか否かを判定する。具体的には、モータ電流の振幅のピーク値24が所定の振幅閾値以上であると減速機13に故障の兆候があると判定し、モータ電流の振幅のピーク値24が所定の振幅閾値未満であると減速機13に故障の兆候がないと判定する。
【0066】
[作用効果]
以上に説明したように、本実施形態によれば、機械装置11の動作が加減速する加減速期間を特定することができる。加減速期間では、モータ14の回転数データRの変化に対するモータ電流データの周波数スペクトラムSの変化において、減速機13の固有振動数f0に対応する特定の周波数領域frの電流振幅が減速機13の共振により増大してピーク値24を示す。このピーク値24は減速機13の故障の兆候と相関がある。そのため、モータ14の回転数データRの変化に対するモータ電流データの周波数スペクトラムSの変化に基づいて、減速機13に故障の兆候があるか否かを判定することができる。従って、減速機13が設けられた機械装置11の作業中に故障診断を行うことができる。
【0067】
[変形例1]
変形例1では、故障診断装置1が、モータ電流が所定値以上である場合に、減速機13に故障の兆候が存在するか否かを判定するように構成される。所定値は、実験、シミュレーション等により決定される。モータ電流が所定値以上であるか否かを判定するタイミングは、図3において、モータ電流を取得するステップS3と故障の兆候の有無を判定するステップS8との間であれば、いずれのタイミングであってもよい。
【0068】
本変形例1によれば、減速機13の負荷が大きい場合に故障の兆候の有無を判定することになる。減速機13の負荷が大きい場合には、歯車がしっかりかみ合うので、減速機13の共振による特定の周波数領域frの電流振幅のピーク値24がより明確に現れる。そのため、故障の兆候の有無をより的確に判定することができる。
【0069】
[変形例2]
変形例2では、加減速期間が加速期間とされる。
【0070】
本変形例2によれば、機械装置11の動作における加速期間に故障の兆候の有無を判定することになる。加速期間では、歯車がしっかりかみ合うので、減速機の共振による特定の周波数領域frの電流振幅のピーク値24がより明確に現れる。そのため、故障の兆候の有無をより的確に判定することができる。
【0071】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る機械装置11は、実施形態1、変形例1、及び変形例2のいずれかの減速機13の故障診断装置1を備える。
【0072】
本実施形態2によれば、機械装置11の作業中に故障診断を行うことができる。
【0073】
(実施例)
本発明者等は、本発明の故障診断装置及び故障診断方法の有効性を確認するために、産業用ロボットの減速機の耐久試験を実施した。耐久試験の対象は第2関節の減速機とされた。そして、耐久試験の過程において、減速機に封入されたグリスの鉄粉濃度の変化に対する減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅の変化が調べられた。産業用ロボットとして、6軸多関節ロボットが用いられた。耐久試験は、ロボットに、第2関節の減速機及びモータに大きな負荷がかかる姿勢を取らせて行われた。即ち、ロボットが、ロボットアームをほぼ水平状態に伸ばした姿勢を取らされた。
【0074】
そして、第2関節の減速機の摩耗状態が確認された。摩耗状態の確認は、定期的に減速機の封入グリスからその鉄粉濃度を確認することによって行われた。また、摩耗状態の確認に合わせて、減速機を駆動するモータの電流指令値について、上述の3次元周波数解析(図2参照)が行われた。
【0075】
図4A−4Eは、上述の耐久試験における減速機のグリスの鉄粉濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。4A−4Eは、それぞれ、鉄粉濃度が0.008wt%の図、鉄粉濃度が0.057wt%の図、鉄粉濃度が0.104wt%の図、鉄粉濃度が0.176wt%の図、及び鉄粉濃度が0.290wt%の図である。図4Aから図4Eに向かうに連れて耐久性試験が進行している。図4A−4Eにおいて、X軸はモータの回転数(rpm)を表し、Y軸は周波数を表し、画像の階調がモータ電流の振幅(A)を表している。画像が濃い(黒い)程、モータ電流の振幅が大きく、画像が淡い(白い)程、モータ電流の振幅が小さい。
【0076】
図4A−4Eを参照すると、14Hz付近にモータ電流の振幅が大きい領域が現れ、耐久試験が進行する程、モータ電流の振幅が大きくなる(画像が濃くなる)ことが判る。すなわち、モータ電流の振幅がピーク値を示すことが判る。また、耐久試験が進行する程、グリスの鉄粉濃度が増大することが判る。
【0077】
従って、この試験結果から、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化において、減速機の固有振動数に対応する特定の周波数領域の電流振幅が増大して明確なピーク値を示すことが確認された。
【0078】
また、別途、加減速期間のうち、加速期間において、特定の周波数領域の電流振幅が明確なピーク値を示すことが確認された。
【0079】
さらに、別途、モータの負荷電流が大きい程、特定の周波数領域の電流振幅が明確なピーク値を示すことが確認された。
【0080】
図5は、上述の耐久試験における減速機のグリスの鉄粉濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との相関関係を示す図である。図5において、横軸は鉄粉濃度を表し、縦軸はモータ電流の振幅のピーク値を表す。図5から、減速機のグリスの鉄粉濃度と減速機の固有振動数に対応する特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値との間に相関関係があることが判る。換言すると、特定周波数領域のモータ電流の振幅のピーク値は減速機の故障の兆候と相関があることが判る。
【0081】
これらの耐久試験の結果から、モータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化に基づいて、減速機に故障の兆候があるか否かを判定することが可能であることが実証された。
【0082】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の減速機の故障診断装置等は、減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことが可能な減速機の故障診断装置等として有用である。
【符号の説明】
【0084】
1 故障診断装置
2 回転数取得部
3 加減速期間特定部
4 モータ電流取得部
5 時系列回転数データ生成部
6 時系列モータ電流データ生成部
7 FFT解析部
8 振幅ピーク値抽出部
9 判定部
10 出力部
11 機械部
12 動作部
13 減速機
13a 出力軸
14 モータ
14a 回転軸
15 電力変換器
16 エンコーダ
17 コントローラ
18 回転角
19 電流
20 電流指令値
21 一群の時系列回転数データ
22 一群の時系列モータ電流データの周波数スペクトラム
【要約】
【課題】減速機が設けられた機械装置の作業中に故障診断を行うことが可能な減速機の故障診断装置等を提供する。
【解決手段】モータ14により駆動される機械装置11に、モータの回転動力を減速して機械装置の動作部12に伝達するよう設けられた減速機13の故障診断装置1であって、機械装置の動作が加減速する加減速期間を特定し、当該加減速期間におけるモータの回転数の変化に対するモータ電流の周波数スペクトラムの変化に基づいて、減速機に故障の兆候があるか否かを判定するよう構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5