【実施例】
【0073】
必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma、和光純薬、ナカライ、等)の同等品でも代用可能である。本明細書中亜塩素酸水は「亜水」と省略して表示することがあるが、これは同義である。
【0074】
(実施例1:亜塩素酸水の生産)
以下の実施例で使用される亜塩素酸水は、以下に説明するように生産した。
【0075】
(製造プラント例)
使用した製造用のプラントの例を
図1に示す。
【0076】
図1において、各番号は、以下の表に示す部材である。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
(各溶液の配合例)
以下に、本製造例において使用されうる各溶液の配合例を記載する。配合表aは以下の実施例で使用する配合例である。配合表bは亜塩素酸水pH8.5の配合例である。配合表cは亜塩素酸水pH6.5の配合例である。配合表dは亜塩素酸水pH3.5の配合例である。配合表eはガス洗浄液の配合例である。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
(亜塩素酸水の製造方法)
(1.設定)
設定は以下のとおりに行った。
1 6に配合表eを入れた。
2 5に配合表b、配合表cまたは配合表dを入れた。
3 A、B、C、D、Gが密栓していることを確認した。
4 Eは3→E→5のルートで開放されていることを確認した。
【0086】
(2.反応)
反応は以下のとおりに行った。
5 Gを開放した。
6 8から、配合表aの(1)を3へ投入した。
7 Gを閉じた。
8 1に配合表aの(2)を入れた。
9 Aを開放した。
10 1にシリンジを挿入し、ゆっくりと3へ投入した。
11 配合表aの(2)をすべて入れ終えたら、Aを締めた。
12 9を稼動させ、1分間攪拌した。
13 9を停止させた。
14 2に配合表aの(3)を入れた。
15 Bを開放した。
16 2にシリンジを挿入し、ゆっくりと3へ投入した。
17 配合表aの(3)をすべて入れ終えたら、Bを締めた。
18 5分間静置した。
19 9を稼動させ、15秒間攪拌した。
20 9を停止させた。
21 10分間静置した。
22 7を稼動させた。
23 Cを開放し、空気を送り込んだ。
24 1時間静置した。
25 Cを閉じた。
26 7を停止した。
27 Eは、4→E→5のルートになるようにコックを移動させた。
28 Dを開放した。
29 すべての反応液が4に移動したら、Dを締めた。
30 Eは、3→E→5のルートに変更した。
31 1時間静置した。
32 5番から31番までの手順を必要に応じて、2回〜4回繰り返した。
33 5から液を回収し、これを亜塩素酸水とした。
【0087】
(成分分析)
以下に、本実施例の亜塩素酸水pH8.5の成分分析表を示す。
【0088】
【表8】
【0089】
以下に、製造例の亜塩素酸水pH6.5の成分分析表を示す。
【0090】
【表9】
【0091】
以下に、製造例の亜塩素酸水pH3.5の成分分析表を示す。
【0092】
【表10】
【0093】
本実施例で製造された亜塩素酸水(pH3.0)と亜塩素酸水(pH9.0)の製造直後のUVスペクトルを
図5〜8に示す。
図5:pH3.0の製造直後のUVスペクトル;
図6:pH3.0の製造30日後のUVスペクトル;
図7:pH9.0の製造直後のUVスペクトル;
図8:pH9.0の製造30日直後のUVスペクトルである。
【0094】
次に、殺菌効果の確認を石炭酸係数の評価により行った。石炭酸係数(phenol coefficient(PC);フェノール係数ともいう)とは、消毒薬の細菌に対する消毒作用をフェノール(石炭酸)を基準として比較した係数である。石炭酸係数は、対象の消毒薬とフェノールの希釈液にそれぞれ、被検菌であるStaphylococcusaureus、Salmonellatyphi、Escherichia coli等を接種し、5分間では死滅しないが10分間では死滅する消毒薬とフェノールの最高希釈倍率の比によって示される。
【0095】
図9に製造直後のpH3.5、6.5および8.5の殺菌効果の確認表(石炭酸濃度および亜塩素酸濃度)およびUVスペクトルを併記して示す。
【0096】
図10に製造10日後のpH3.5、6.5および8.5の殺菌効果の確認表(石炭酸濃度および亜塩素酸濃度)およびUVスペクトルを併記して示す。
【0097】
図11に製造30日後のpH3.5、6.5および8.5の殺菌効果の確認表(石炭酸濃度および亜塩素酸濃度)およびUVスペクトルを併記して示す。
【0098】
図12に、製造直後の石炭酸係数、製造10日後の石炭酸係数、製造30日後の石炭酸係数をpH2.0〜9.0まで0.5ごとに示す。10日後では、pH4.5〜7.5で実質的に維持されており、30日後ではpH5.0〜7.5で実質的に維持されていることが明らかになった。
【0099】
亜塩素酸水は、前述した製造方法により、各pHを持つ亜塩素酸水として製造した。ここでは、pH2.0から9.0までの亜塩素酸水を製造し、その保存性と殺菌効果の持続性を、石炭酸係数として表現した。なお、製造時の各pHを持つ亜塩素酸水の配合については、代表的な例としてpH3.5、pH6.5、pH8.5のものを記載した。これ以外のpHを持つ亜塩素酸水を製造する際には、これらの配合の許容範囲の組み合わせで製造することができる。
【0100】
製造直後の亜塩素酸水は、pH3.5からpH8.5までの間で双瘤ピークが確認され、この範囲にあるものを亜塩素酸水としてみなすことができる。殺菌効果については、pH2.0から9.0の全てにおいて、殺菌効果が認められ、特にpH3.5以上8.5の間にある亜塩素酸水の殺菌効果が高いということがわかる。また、pH3.0以下であっても、高い殺菌効果が認められるが、双瘤のピークを維持しておらず、波長350nmのみに特異吸収部があり、これは二酸化塩素(ClO
2)の殺菌効果であると考えられる。又、pH9.0であると波長260nmのみに特異吸収部があり、亜塩素酸イオンの状態にあり、他の亜塩素酸水と比べて、石炭酸係数が低く、殺菌力が低いということが分かる。
【0101】
これらの亜塩素酸水を、30日間4℃で保存した時の石炭酸係数を見てみると、pH3.0以下では、UVスペクトルが消失していると共に、殺菌効果も消失しており、また、pH9.0では、UVスペクトルと殺菌効果ともに変化は見られなかった。また、pH3.5からpH8.5までは、双瘤のピークが認められ、かつ、製造直後と比べて石炭酸係数が低下しているものの、石炭酸係数が50以上あり、殺菌効果が認められる。このことから亜塩素酸水は、pH3.5からpH8.5までであると考えられ、その中で特に殺菌効果の保存性が高かったのは、pH5.0からpH7.5であり、最適pHは5.5であった。しかし、常識的にpH7.0以上では、亜塩素酸イオンとして存在し、亜塩素酸ではないと考えられており、このことから、好ましくはpH3.5以上pH7.0未満のpH域の範囲が特に、亜塩素酸水として有用であると考えられるがこれに限定されない。
【0102】
そこで、製造直後に殺菌効果がありながら、30日後に殺菌効果が著しく低下した亜塩素酸水(pH3.5)を用いて、以下の配合に従い、pH6.0からpH7.0になるように製剤化した。
【0103】
【表11】
【0104】
【表12】
【0105】
なお、この成分規格は、他のpHを持つ亜塩素酸水を同じようにpH6.0からpH7.0のpH域にした場合と、同じ結果になった。この亜塩素酸水製剤を用いて、以下の実施例を実施した。
【0106】
(実施例2:殺菌力持続性評価試験−大腸菌、黄色ブドウ球菌に対する殺菌力持続性−)
本実施例では、除菌効果の評価指標菌である菌種(大腸菌・黄色ブドウ球菌)に対する亜塩素酸水製剤の殺菌効果が持続性するのかどうかについて確認した。
【0107】
<試験方法>
(材料)
(1)使用試薬
実施例1で生産した亜塩素酸水製剤、0.1M チオ硫酸ナトリウム
(2)使用器具
電子天秤、共栓付き三角フラスコ、ビーカー、ピペット、スターラー、スターラーバー、試験管、ボルテックスミキサー
(3) 被検菌種
大腸菌(Escherichia coli IFO3972)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)
(方法)
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
各被検菌を普通寒天培地(栄研化学株式会社製製)上に塗抹し、37℃で24時間培養した後、培地上に発育したコロニーを白金耳で釣菌し、滅菌生理食塩水にて濃厚懸濁とした。本液を遠心分離処理して、上澄液を除去し、菌体を再度生理食塩水に均一に懸濁し、被検菌濃厚懸濁液(×10
6個/ml)とした。菌液の調製は濁度により調製することで菌数を一定量となるようにした。
2).試験用試料液の調製方法
開始時点で亜塩素酸水製剤原液(表11を参照)を、亜塩素酸(HClO
2)濃度として3,600ppm と、1,000ppm となるように調整し、その際の希釈倍率を記録した。その後、定期的に亜塩素酸水原液を取り出した際には、開始時点に記録した希釈倍率で滅菌済みイオン交換水を用いて調製し、これを各試験用試料液とした。なお、40℃という温度帯で保管することにより、その経過日数を常温保管の6倍相当である加速試験として実施した。
3).被検菌接触方法および菌に対する効果評価方法
各試験用試料液9.0mlに、各被検菌濃厚懸濁液(×10
6 個/ml) 1.0ml を加えて均一に混合し、25℃ウォーターバス中にて保管、1分、5分、10 分毎に、再度均一に混合し、各9.0ml を採取した。その採取した液を、滅菌済の0.1mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液(各種緩衝液で調製)1.0ml中に加え、均一に混合後、更に10分放置後にシャーレ2 枚に各々1.0ml を分取した。その後は常法に従って混釈培養法により生残菌数の測定を行った。この時に用いた培地は大腸菌はデソオキシコレート培地(栄研化学株式会社製)を、黄色ブドウ球菌は卵黄添加マンニット食塩寒天培地(栄研化学株式会社製)を用い、37℃、24時間培養後、2プレートに発生した定型的コロニーの数を平均して、生残菌数として記述した。
【0108】
以上の方法で実施し、生菌数の減少率から効果の有無、程度を判定した。
【0109】
(試験結果)
40℃40日保管した亜塩素酸水の菌に対する効果持続性確認試験
本発明の亜塩素酸水は40℃保管という過酷条件下に保管しても、大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の消失や減少は見られず、安定した効果を確認した。
【0110】
【表13】
【0111】
【表14】
【0112】
表13および表14は、実施例1で製造した亜塩素酸水製剤を、40℃で40日間保管した時の殺菌効果を表したものである。その結果、実施例1の亜塩素酸水(pH3.5)では、わずか30日で殺菌効果が著しく低下したが、この亜塩素酸水を製剤化して、pH6.0から7.5にすることによって、常温換算で、その殺菌効果が最低でも、240日維持することができるということがわかった。
【0113】
(実施例3:40℃40日保管後の効果持続性確認試験)
本実施例では、実施例2で使用した40℃40日(常温換算で240日)保管した亜塩素酸水を任意に希釈し、この希釈液を、更に常温30日間保存した時の被検菌に対する殺菌効果持続性確認試験を行った。亜塩素酸水は40℃保管という過酷条件下に保管した後に、その亜塩素酸水を規定濃度に希釈し、その希釈液を常温で30日間保管しても、大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する殺菌効果の消失や減少は見られず、安定した効果を確認した。
【0114】
【表15】
【0115】
【表16】
【0116】
このように、亜塩素酸水製剤を希釈しても、40℃という過酷な条件下であっても、殺菌効果は長期間(常温換算で240日)維持できているということが分かった。
【0117】
(実施例4:処理用シートに含浸した場合の殺菌力の安定性確認試験)
本実施例では、実施例1の亜塩素酸水製剤を、有効塩素濃度として1,000ppmもしくは500ppmに希釈し、この液を用いて処理用シートに固液比1:3になるように含浸させ、この時の殺菌力の安定性確認試験を行った。
【0118】
すなわち、亜塩素酸水製剤希釈液を処理用シートに含浸した場合の殺菌力の安定性について確認した。
【0119】
<試験方法>
(材料)
1)処理用シート(素材:コットン100%):(約27×40cm)
※処理用シート重量(g):液量(ml)=1:3 の割合で含浸させた。
2)使用試薬
「亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)」、次亜塩素酸ナトリウム(サンクリン12)、10 w/w%ヨウ化カリウム、10%硫酸、0.1M チオ硫酸ナトリウム
3)使用器具
電子天秤、共栓つき三角フラスコ、ビーカー、ピペット、スターラー、スターラーバー処理用シート(素材:コットン100%)
(方法)
<試験手順>
(1)「亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)」の有効塩素濃度を測定し、有効塩素濃度1,000 ppm〔亜塩素酸(HClO
2)濃度:489ppm〕と500 ppm〔亜塩素酸(HClO
2)濃度:245ppm〕になるよう希釈した。
(2)次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度を測定し、有効塩素濃度1000 ppm と500 ppmになるよう希釈した。
(3)希釈した溶液の有効塩素濃度を測定し、処理用シートと接触する前の有効塩素濃度を確認した。
(4)処理用シートを重ねて巻き、200 ml 容PET ボトルに入れ、処理用シート:薬液の重量比が1:3 となるよう希釈した溶液を処理用シートの入った200ml 容PETボトルに注ぎ入れた。
(5) 処理用シートと接触させたのちに、接触直後、1 時間後、2 時間後、3 時間後、12 時間後、24 時間後、48時間後(2 日後)、72 時間後(3 日後)、168時間後(7 日後)に200ml容PET ボトルから処理用シートを抜き取り、有効塩素濃度確認用の検体として用いた。
(6) 200ml 容PET ボトルから抜き取った検体の処理用シートは、100 mL ビーカーに液を絞り、その液の有効塩素濃度を測定した。
【0120】
(有効塩素測定方法)
1.共栓つき三角フラスコに検体から絞った液を約5 g 採取した。
2.共栓つき三角フラスコに10 w/w%ヨウ化カリウム10 mL を加えたのち10%硫酸を10 mL 加えた。
3.密栓したのち、暗所にて15 分間静置した。
4.0.1mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液を溶液の色が薄い黄色になるまで加えたおち、1 w/w%でんぷん溶液を約1 mL 加え、0.1 mol/L チオ硫酸ナトリウム溶液を溶液の色が無色
になるまで加えた。
5. 次式より塩素力価を求めた。
R=(a×f/w)×0.0035×100
R;塩素力価値
a;0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液の添加量(g)
f;0.1 mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター
w;量り採った検体溶液の重量(g)
0.0035;0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム1 gに相当する塩素量
100;百分率
<試験結果>
結果を表17および
図14に示す。
【0121】
【表17】
【0122】
このように、亜塩素酸水製剤を希釈し、処理用シートに含浸させても、有効塩素濃度は長期間維持できているということが分かった。
【0123】
(実施例5:嘔吐物処理時における二次汚染防止効果確認試験)
本実施例では、実施例1で得られた亜塩素酸水製剤の希釈液を処理用シートに含浸させたウェットシートを用いて、嘔吐物を処理した場合に、嘔吐物中の細菌が作業者に感染してしまうという二次汚染を防止することができるのかどうかについて確認しておくことを目的として各実験を実施した。
【0124】
<試験方法>
(材料)
1) 亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)
処理用シート(素材:コットン100%):(約27×40cm)
※処理用シート重量(g):液量(ml)=1:3 の割合で含浸させた。
2) 模擬嘔吐物(以下嘔吐物という。)
味噌液:塩酸でpH2に調整した。
3) 使用被検菌
大腸菌:Escherichia coli IFO3927
黄色ブドウ球菌:Stanphylococcus aureus IFO 12732
耐熱性菌(セレウス菌):Bacillus cereus NBRC15305
サルモネラ属菌:Salmonella Enteritidis IFO3313
腸管出血性大腸菌O157:Escherichia coli O157
腸管出血性大腸菌O111:Escherichia coli O111
腸管出血性大腸菌O26:Escherichia coli O26
(方法)
<試験手順>
嘔吐物処理時の病原性細菌の処理用シートへの浸透性を確認し、二次汚染の防止効果を比較した。
(1) A4サイズ程度に模擬嘔吐物を撒いた。
(2)上から薬液含浸処理用シートを30 枚かけ、10 分静置させた。
(3) 処理用シートを上から1 枚ずつとり、生理食塩水で希釈した後、シャーレに撒き培養した。
【0125】
<試験結果>
【0126】
【表18】
【0127】
※有効塩素濃度での測定値
【0128】
【表19】
【0129】
※有効塩素濃度での測定値
【0130】
【表20】
【0131】
※有効塩素濃度での測定値
【0132】
【表21】
【0133】
※有効塩素濃度での測定値
【0134】
【表22】
【0135】
※有効塩素濃度での測定値
【0136】
【表23】
【0137】
※有効塩素濃度での測定値
【0138】
【表24】
【0139】
※有効塩素濃度での測定値
水道水を含浸させた処理用シートでは、30枚重ねても病原性細菌に汚染されており、アルコール75%を含浸させた処理用シートでは、5枚以上重ねて処理をしないと汚染されずに模擬嘔吐物を処理することができなかった。また、次亜塩素酸ナトリウムの場合は、1枚目から病原性細菌を殺菌することができたが、模擬嘔吐物と次亜塩素酸ナトリウムの臭いが酷く室内の環境が急激に悪化し、次亜塩素酸ナトリウムを使って模擬嘔吐物を処理することは、困難であった。亜塩素酸水製剤では、どの濃度であっても、1枚目で病原性細菌を除去することができ、7日間保存しても、その殺菌効果は衰えなかった。また、模擬嘔吐物に亜塩素酸水製剤を含浸させた処理用シートを被せた場合、ほとんど臭いは感じられず、また、拭取りやすかった。
【0140】
(実施例6:嘔吐物処理時の床面の殺菌効果確認試験)
本実施例では、嘔吐物処理時の床面の殺菌効果確認試験を行った。
【0141】
亜塩素酸水希釈液を処理用シートに含浸させたウェットシートを用いて、床面の嘔吐物を処理した場合の殺菌効果について確認することを目的として各実験を実施した。
【0142】
<試験方法>
(材料)
1)亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)
処理用シート(素材:コットン100%):(約27×40cm)
※処理用シート重量(g):液量(ml)=1:3 の割合で含浸させた。
2)模擬嘔吐物
味噌液:塩酸でpH2に調整した。
3)使用被検菌
大腸菌:Escherichia coli IFO3927
黄色ブドウ球菌:Stanphylococcus aureus IFO 12732
耐熱性菌(セレウス菌):Bacillus cereus NBRC15305
サルモネラ属菌:Salmonella Enteritidis IFO3313
腸管出血性大腸菌O157:Escherichia coli O157
腸管出血性大腸菌O111:Escherichia coli O111
腸管出血性大腸菌O26:Escherichia coli O26
(方法)
(試験手順)
<ゴムマット>
(1) A4 サイズ程度に模擬嘔吐物を撒いた。
(2) 薬液含浸処理用シートを模擬嘔吐物の上から5枚かけた。
(3) 模擬嘔吐物を拭き取った。
(4) 滅菌生理食塩水を綿棒に染み込ませ、模擬嘔吐物を撒いた箇所をこすり、床に残った菌を綿棒でとり、生理食塩水に懸濁後、シャーレに撒き培養し、各菌数を測定した。(5)試験操作3、4を合計7 回繰り返した(完全に模擬嘔吐物が除去できるまで繰り返した。)。
<畳>
(1) A4 サイズ程度に模擬嘔吐物を撒いた。
(2) 模擬嘔吐物の上からドライシートを5枚かけた。
(3) ドライシートの上から薬液をかけ、模擬嘔吐物を拭き取る
(4) 滅菌生理食塩水を綿棒に染み込ませ、模擬嘔吐物を撒いた箇所をこすり、床に残った菌を綿棒でとり、生理食塩水に懸濁後、シャーレに撒き培養し、各菌数を測定した。
(5)試験操作3、4を合計7 回繰り返した(完全に模擬嘔吐物が除去できるまで繰り返した。)。
<じゅうたん>
(1) A4 サイズ程度に模擬嘔吐物を撒いた。
(2) 模擬嘔吐物の上からドライシートを5枚かけた。
(3) ドライシートの上から薬液をかけ、模擬嘔吐物を拭き取った。
(4) 滅菌生理食塩水を綿棒に染み込ませ、模擬嘔吐物を撒いた箇所をこすり、床に残った菌を綿棒でとり、生理食塩水に懸濁後、シャーレに撒き培養し、各菌数を測定した。
(5)試験操作3、4を合計7 回繰り返した(完全に模擬嘔吐物が除去できるまで繰り返した)。
【0143】
ゴムマット、畳およびじゅうたんの各手順の実施例の写真を
図15に示す。
【0144】
<試験結果>
以下に個々の試験結果をまとめた表を示す。
【0145】
(ゴムマットでの結果)
【0146】
【表25】
【0147】
※有効塩素濃度での測定値
【0148】
【表26】
【0149】
※有効塩素濃度での測定値
【0150】
【表27】
【0151】
※有効塩素濃度での測定値
【0152】
【表28】
【0153】
※有効塩素濃度での測定値
【0154】
【表29】
【0155】
※有効塩素濃度での測定値
【0156】
【表30】
【0157】
※有効塩素濃度での測定値
【0158】
【表31】
【0159】
(畳での結果)
【0160】
【表32】
【0161】
※有効塩素濃度での測定値
【0162】
【表33】
【0163】
※有効塩素濃度での測定値
【0164】
【表34】
【0165】
※有効塩素濃度での測定値
【0166】
【表35】
【0167】
※有効塩素濃度での測定値
【0168】
【表36】
【0169】
※有効塩素濃度での測定値
【0170】
【表37】
【0171】
※有効塩素濃度での測定値
【0172】
【表38】
【0173】
(じゅうたん)
【0174】
【表39】
【0175】
※有効塩素濃度での測定値
【0176】
【表40】
【0177】
※有効塩素濃度での測定値
【0178】
【表41】
【0179】
※有効塩素濃度での測定値
【0180】
【表42】
【0181】
※有効塩素濃度での測定値
【0182】
【表43】
【0183】
※有効塩素濃度での測定値
【0184】
【表44】
【0185】
※有効塩素濃度での測定値
【0186】
【表45】
【0187】
水道水を含浸させた処理用シートでは、拭取り1回だけでは病原性細菌を殺菌できておらず、アルコール75%を含浸させた処理用シートでも、同様に、病原性細菌を殺菌することができなかった。また、次亜塩素酸ナトリウムの場合は、0日目には病原性細菌を殺菌することができていたが、7日間保存すると病原性細菌を殺菌することができていない場合があった。亜塩素酸水製剤では、どの濃度であっても、1枚目で病原性細菌を除去することができ、7日間保存しても、その殺菌効果は衰えなかった。
【0188】
また、本実施例において、実施した際の、実施者の官能的感想を纏めた。
【0189】
【表46-1】
【表46-2】
【0190】
(実施例7:各希釈倍率に希釈し、処理用シートに含浸させたときの殺菌効果の有無確認試験)
本実施例では、亜塩素酸水を各亜塩素酸濃度に希釈した液の殺菌効果の有無について確認することを目的とした。
【0191】
<試験方法>
(材料)
1)亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)
処理用シート(素材:コットン100%):(約27×40cm)
※処理用シート重量(g):液量(ml)=1:3 の割合で含浸させた。
2)使用被検菌
大腸菌:Escherichia coli IFO3927
黄色ブドウ球菌:Stanphylococcus aureus IFO 12732
サルモネラ属菌:Salmonella Enteritidis IFO3313
(方法)
(試験手順)
(1)処理用シートに「亜塩素酸水製剤」を各希釈倍率に希釈した液を含浸させた。
(2)各薬液含浸処理用シートを絞り、含浸液を採取し、試験用試料液とした。
(3)各試験用試料液9.0mlに、各被検菌濃厚懸濁液1.0mlを加えて均一に混合し、25℃ウォターバス中にて保管、1分、5分、10分毎に、再度均一に混合し、各9.0mlを採取した。
(4)その採取した液を、滅菌済の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液(各種緩衝液で調製)1.0ml中に加え、均一に混合後、更に10分放置後にシャーレ2枚に各々1.0mlを分取した。その後は常法に従って混釈培養法により生残菌数の測定を行った。
【0192】
(結果)
以下にその結果を示す。
【0193】
【表47】
【0194】
(実施例8:処理用シートに含浸させた場合の含浸率と殺菌効果の評価試験)
本実施例では、オウトゥロックスーパー希釈液を処理用シートに含浸させた場合の含浸液が有する殺菌力を確認することを目的に各実験を実施した。
【0195】
(材料)
1) 処理用シート(素材:コットン100%):(約27×40cm)
2) 使用試薬:亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)、0.1Mチオ硫酸ナトリウム
3) 使用器具 電子天秤、共栓付き三角フラスコ、ビーカー、ピペット、スターラー、スターラーバー、試験管、ボルテックスミキサー
4) 被検菌種 大腸菌(Escherichia coli IFO3972)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)
(方法)
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
各被検菌を普通寒天培地(栄研化学株式会社製製)上に塗抹し、37℃で24時間培養した後、培地上に発育したコロニーを白金耳で釣菌し、滅菌生理食塩水にて濃厚懸濁とした。本液を遠心分離処理して、上澄液を除去し、菌体を再度生理食塩水に均一に懸濁し、被検菌濃厚懸濁液(×10
7個/ml)とした。菌液の調製は濁度により調製することで菌数を一定量となるようにした。
2).試験用試料液の調製方法
亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)(亜塩素酸濃度:43,200ppm)を各希釈倍率〔4倍、6倍、12倍、30倍、40倍、50倍、100倍、150倍、200倍、300倍、400倍、600倍、800倍〕に希釈した液と、これら希釈液を処理用シートに含浸させる際、処理用シート1kgに対して、含浸させる液量を含浸率:300%から含浸率:2000%という比率になるように含浸させた後に、ウェットシートをしぼり、採取した液を検体とし、この検体溶液を更に希釈し、試験用試料液とした。
3).被検菌接触方法及び菌に対する評価方法
各試験用試料液9.0mlに、各被検菌濃厚懸濁液(×10
6個/ml)1.0mlを加えて均一に混合し、25℃ウォターバス中にて保管、1分、5分、10分毎に、再度均一に混合し、各9.0mlを採取した。その採取した液を、滅菌済の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液(各種緩衝液で調製)1.0ml中に加え、均一に混合後、更に10分放置後にシャーレ2枚に各々1.0mlを分取した。その後は常法に従って混釈培養法により生残菌数の測定を行った。この時に用いた培地は大腸菌はデソオキシコレート培地(栄研化学株式会社製)を、黄色ブドウ球菌は卵黄添加マンニット食塩寒天培地(栄研化学株式会社製)を用い、37℃、24時間培養後、2プレートに発生した定型的コロニーの数を平均して、生残菌数として記述した。
【0196】
以上の方法で実施し、接触時間が5分では生残菌数を確認でき、接触時間が10分であれば生残菌数が確認できない希釈倍率を効果有りとして判断した(検出限界 100 個/mL)。
【0197】
(結果)
以下に処理用シートに含浸させた亜塩素酸水製剤「オウトゥロックスーパー」の希釈液の“大腸菌”に対する効果が記される表を示す。
【0198】
【表48】
【0199】
次に処理用シートに含浸させた亜塩素酸水製剤「オウトゥロックスーパー」の希釈液の“黄色ブドウ球菌”に対する効果が記される表を示す。
【0200】
【表49】
【0201】
以上の結果から、含浸率と希釈倍率とはほぼ比例関係にあることがわかる。このほか、シート(不織布)によって、一定量の殺菌成分は消失するが、消失後は安定に殺菌力を維持することができることが示された。2000%含浸と希釈液が変わらないのは、最大含浸率が2000%であり、消失する殺菌成分量に影響がみられない程の殺菌成分量が存在している為、希釈液と同等になったと考えられる。また、適正な濃度と、含浸率から様々な用途に応じて使用することが可能であることが示された。
【0202】
(実施例9:嘔吐物処理を想定した有機物存在下における感染性病原菌に対する殺菌効果確認試験)
本実施例では、有機物(タンパク質)存在下におけるオウトゥロックスーパー希釈液の殺菌力を確認することを目的に各実験を実施した。
【0203】
<試験方法>
(材料)
1)使用試薬:亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)、0.1Mチオ硫酸ナトリウム
2)使用タンパク質 ポリペプトン(ベクトン・デッキンソン社製)希釈液
3) 使用器具 電子天秤、共栓付き三角フラスコ、ビーカー、ピペット、スターラー、スターラーバー、試験管、ボルテックスミキサー
4) 被検菌種 腸管出血性大腸菌 O157 (Escherichia coli O157sakai strain) 。
【0204】
(方法)
1).被検菌濃厚懸濁液の調製方法
マッコンキー培地(日水製薬株式会社製)上のコロニーを白金耳で釣菌し、LB培地を用いてで37℃で、24時間培養し、遠心分離処理し、滅菌済生理食塩水で2回洗浄後、得られた菌液を被検菌濃厚懸濁液(×10
7個/ml)とした。菌液の調製は濁度により調製することで菌数を一定量となるようにした。
2).試験用試料液の調製方法
亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)を各希釈倍率〔5倍、10倍、20倍、30倍、50倍、100倍〕に希釈した液を検体とした。尚、最終希釈倍率としては、10倍、20倍、40倍、60倍、100倍、200倍の各希釈液となるように調製した。
3).被検菌接触方法及び菌に対する評価方法
滅菌済イオン交換水を3.0mlに各濃度(ペプトン濃度として10%、1%、0.1%)のポリペプトン液1.0mlと、被検菌濃厚懸濁液(×10
7個/ml) 1.0mlを加えて均一に混合し、更に各試験用試料液5.0mlを加えて均一に混合し、25℃ウォーターバス中にて保管した。
【0205】
尚、タンパク質の濃度は、終濃度として、ペプトン1%、0.1%、0.01%になるように調整した。
【0206】
1分、5分、10分毎に、再度均一に混合し、各1.0mlを採取し、これらの採取した液を、滅菌済の0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液(各種緩衝液で調製)9.0ml中に加え、均一に混合後、更に10分放置後にシャーレ1.0mlを分取した。その後は常法に従って混釈培養法により生残菌数の測定を行った。この時に用いた培地はマッコンキー培地(日水化学株式会社製)を用い、37℃、24時間培養後、プレートに発生した定型的コロニーの数を生残菌数として記述した。
【0207】
以上の方法で実施し、接触時間が5分では生残菌数を確認でき、接触時間が10分であれば生残菌数が確認できない希釈倍率を効果有りとして判断した(検出限界 100 個/mL)。
【0208】
(結果)
以下に、亜塩素酸水製剤「オウトゥロックスーパー」の希釈液の“腸管出血性大腸菌O−157”に対する効果を示す。
【0209】
【表50】
【0210】
以上の結果から、いずれの濃度でも有機物中で殺菌をすることができることが示された。なお、1%という高濃度の有機物中でも約90〜99%程度の殺菌をするこができていることがわかる(10
7CFU/mlから10
5CFU/mlに減菌することができている。)。また、0.1%の20倍希釈の結果から、時間経過に伴い緩やかではあるが、菌数を低減させることができていることがわかる。このことから、有機物存在下でも殺菌成分は安定に維持することができており、殺菌処理時間を長くすることで菌数を低減することができることが示された。
【0211】
(実施例10:手指に付着した汚染菌の除菌洗浄効果の確認試験)
本実施例では、身体への影響を見るために、手指に付着した汚染菌の除菌洗浄効果の確認試験を行った。すなわち、嘔吐物を処理する際に、誤って作業者の手に嘔吐物が付着した場合に、オウトゥロックスーパー希釈液を含浸させたウェットワイパーでの拭取りにより、手指に付着した汚染菌を除去することができるのかどうかを確認することを目的に各実験を実施した。
【0212】
(材料)
1) 亜塩素酸水製剤(実施例1:表11参照)
処理用シート(素材:コットン100%):(約27×40cm)
※処理用シート重量(g):液量(ml)=1:3の割合で含浸させる
2) 「使用被検菌」
大腸菌:Escherichiacoli IFO3927
黄色ブドウ球菌:Stanphylococcus aureus IFO12732
耐熱性菌(セレウス菌):Bacillus cereus NBRC15305。
【0213】
(方法)
試験手順:
1)ハンド式噴霧器で両手に噴霧し、擦り合わせて手指に付着させた。
2)液を含浸させた処理用シートを用いて、1)の両手指を拭き取った。
3)綿棒で両手を丁寧に拭き取り、生理食塩水に懸濁し、希釈後、シャーレに撒き選択培地を用いて培養し、各菌数を測定した。
【0214】
【表51】
【0215】
【表52】
【0216】
【表53】
【0217】
(実施例11:亜塩素酸水の消臭効果)
本実施例では、消臭効果試験の評価を行うため、(一財)日本食品分析センターで採用されている、芳香消臭脱臭剤協議会(http://www.houkou.gr.jp/)において定められる、消臭・脱臭に関する基準(〔II〕―2消臭効力試験方法(化学的消臭))を効力試験方法として用いて、消臭効果を確認した。
【0218】
以下、その詳細を説明する。
【0219】
(使用薬剤)
亜塩素酸水
次亜塩素酸ナトリウム:試薬 和光純薬工業(株)製 化学用標準液
(対象臭気物質)
アンモニア臭:アンモニア標準液II 〔和光純薬工業(株)製 悪臭物質試験用〕
アミン臭:メチルメルカプタン標準液 〔和光純薬工業(株)製 悪臭物質試験用〕
硫黄臭:硫化水素 〔自作 硫化亜鉛に硫酸を加え発生した硫化水素を使用〕
(検出器)
ガステック製ガス検知管
アンモニア臭:ガステック製 検知管 アンモニア 3L
アミン臭:ガステック製 検知管 メチルメルカプタン 71
硫黄臭:ガステック製 検知管 硫化水素 4LL
(試験方法)
芳香消臭脱臭剤協議会が定めた「〔II〕―2消臭効力試験方法(化学的消臭)」に準拠して行った。
【0220】
(1)適用方法
静置法によって行った。試験容器は市販されている容積10L程度のコック付エアーバッグを用いることで行った。製品の大きさに応じてエアーバッグの容積は適宜変更した。エアーバッグおよびにおい袋の素材は悪臭、香りなどを吸脱着しないもの、例えば、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニル、FRPなど)、ポリエステル(PET等)、アルミラミ(アルミ薄膜にプラスチックフィルムをラミネートしたもの)等の素材を用いた。
【0221】
(2)試験の手順
使用状態の製品と、悪臭を入れたエアーバッグまたはその等価物、および悪臭のみを入れたエアーバッグまたはその等価物(ブランク(本実施例では、該当品は密閉状態で販売されており、
図16に示すようなファンや製品を入れることができない為、ハサミやカッターなどで一度開封し、再度、密閉する必要があるということから、熟練度を要する作業であると判断し、兵庫県立工業技術センターのガラス容器(
図17)を用いた。)を用意し、無臭空気で満たした。室温(約20℃)で経時的に悪臭濃度を測定した(3ポイント以上、検知管法(
図16)、機器分析法または嗅覚測定法による。ブランクに減衰がみられる場合は、適宜補正した。嗅覚測定法で行う場合はエアーバッグのコックを開いて直接嗅ぐか、またはにおい袋にガスを写し取り、マスクを装着して自立呼吸式で嗅覚測定を行った。図った空気は元に戻さないものとした。
【0222】
(詳細結果)
(1)アンモニア臭(悪臭物質:アンモニア)に対する消臭効果確認結果
以下に、アンモニア臭について、噴霧前、噴霧後0時間、3時間、6時間、9時間、24時間でのコントロール(検体なし)、蒸留水、次亜塩素酸ナトリウム(次亜Naと表示、400ppm)、亜塩素酸水(亜水と表示、400ppm)を20ml(cc)噴霧したときの残留濃度を検知し記録した。
エアーバッグに悪臭物質が入っている状態では、悪臭物質はエアーバックが吸着し、自然減少することが分かっている。そこで、コントロール区では、この自然減少による目減り分を測定し、実測値に対して正規化補正を行った
値は、生データの値を記録した後、噴霧前の濃度を整え、コントロールを100にする正規化補正を行った。これらを以下の表に示す(表中、Contはコントロールを示し、hは時間を示す。)。
【表54】
【0223】
(結果)
結果を表54および
図18に示す。
【0224】
アンモニア臭(悪臭物質:アンモニア)に対しては、確実に消臭効果があった。まず、コントロールとして、悪臭物質しか入れていない区を100とした場合の各薬剤区(蒸留水区、次亜塩素酸ナトリウム(次亜Na)水溶液 400ppm区、亜塩素酸水(亜水) 400ppm区)の結果では、噴霧直後では、次亜Naおよび亜水を添加している試験区には、消臭効果があると判断することができる10以下に減少した。しかしながら、次亜Na区では、時間が経過すると、アンモニア臭が立ち上がってしまうことがわかり、長時間で消臭効果があると判断できたのは「亜塩素酸水」のみであった。日本食品分析センターにペット(犬・猫)のオシッコの消臭試験の実施について確認したところ、アンモニアを標準物質として設定していることから、本発明は、ペット(犬・猫)のオシッコの消臭効果があるといえる。
【0225】
なお、データは示さないが、アンモニア濃度を約10倍にした場合は、消臭効果は減少したが、亜塩素酸水が最も消臭効果を示した。ただし、噴霧量を変更しなかったため、その消臭効果は上記実験よりも減少傾向がみられ完全消臭には至らなかった。したがって、アンモニア濃度を増加した場合は、同様に亜塩素酸水も増加させることが好ましいといえる。
【0226】
(2)アミン臭(悪臭物質:メチルメルカプタン)に対する消臭効果確認結果
次に、アミン臭(メチルメルカプタン)について、噴霧前、噴霧後0時間、3時間、6時間、9時間、24時間でのコントロール(検体なし)、蒸留水、次亜塩素酸ナトリウム(次亜Naと表示、400ppm)、亜塩素酸水(亜水と表示、400ppm)を20ml(cc)噴霧したときの残留濃度を検知し記録した。実験は2回行った。
【0227】
【表55】
【0228】
【表56】
【0229】
(結果)
結果を表55−56および
図19−20に示す。1回目では、コントロールとして、悪臭物質しか入れていない区を100とした場合の各薬剤区(蒸留水区、次亜塩素酸ナトリウム(次亜Na)水溶液 400ppm区、亜塩素酸水(亜水) 400ppm区)の結果では、噴霧直後3時間で、次亜Na区は、消臭効果があると判断することができる10以下に減少していた。しかしながら、時間が経過するとアミン臭が立ち上がる傾向が見られた。また、亜水区では経時的に減少する傾向が見られた。その結果、9時間後には、消臭効果があると判断できたのは「亜塩素酸水」のみであった。
【0230】
2回の実験とも、亜塩素酸水のみが、完全な消臭効果を示した。いずれにせよ、次亜塩素酸ナトリウムは、噴霧直後から、強い消臭効果を発揮するものの、その後、時間が経過するにつれて、臭いの立ち上がり現象が確認できるが、本発明の消臭剤は、次亜塩素酸ナトリウムほど、急激な消臭効果は見られないが、徐々に消臭効果を発揮し、最終的には、入れ替わるような形で次亜塩素酸ナトリウムよりも強い消臭効果を発揮する。このことから、本発明の消臭剤は、遅行性の消臭剤といえる。
【0231】
(3)硫黄臭(悪臭物質:硫化水素)に対する消臭効果確認結果
【表57】
【0232】
【表58】
【0233】
(結果)
結果を表57−58および
図21−22に示す。
【0234】
硫黄臭(悪臭物質:硫化水素)に対しても、消臭効果があるということがわかった。但し、いずれの薬剤を添加した区でも、噴霧直後には、消臭効果があると判断される10以下に減少しており、その後 24時間後まで立ち上がりは確認されず、試験した濃度では硫化水素は水でも消臭されていた。2回目の試験でも、1回目と同様の結果が得られ、消臭効果があった。
【0235】
(まとめ)
以上から、本発明の亜塩素酸水を用いた消臭剤は、従来技術である次亜塩素酸ナトリウムに比べても、消臭効果が優れていることが判明した。特に、アンモニア臭およびアミン臭に対する効果は、立ち上がりのないこと等優れている点が多数みられることが理解される。
【0236】
以上のように、本発明の好ましい実施形態および実施例を用いて本発明を例示してきたが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載した構成の範囲内において様々な態様で実施することができ、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。