特許第6144512号(P6144512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144512
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/04 20140101AFI20170529BHJP
   E05B 85/02 20140101ALI20170529BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   E05B77/04
   E05B85/02
   B60J5/00 L
   B60J5/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-59940(P2013-59940)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-134087(P2014-134087A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-269437(P2012-269437)
(32)【優先日】2012年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100827
【氏名又は名称】アイシン機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 淳
(72)【発明者】
【氏名】西尾 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小島 一記
(72)【発明者】
【氏名】岩田 将成
(72)【発明者】
【氏名】福地 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】園 靖彦
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−225898(JP,A)
【文献】 特開2010−070916(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0224569(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアに設けられ、前記車両ドアの閉作動時に車体側に設けられるストライカに噛み合うとともにその噛み合い状態を維持することによって車両ドアの閉鎖状態を維持するように構成されるドアラッチ装置と、
前記車両ドアに設けられ、前記車両ドアに取付けられているドアハンドルの操作に応じて初期位置から回転することにより前記ドアラッチ装置と前記ストライカとの噛み合い状態を解除するように構成されるオープンレバーと、を備え、
前記オープンレバーは、初期位置に位置しているときに前記車両ドアに外方から外力が加えられた場合に前記外力により最初に塑性変形するように構成された変形誘発部を有する、車両ドアロック装置であって、
前記ドアラッチ装置を収容する第1ハウジングと、
前記車両ドアに取付けられるとともに前記第1ハウジングが組付けられ、前記オープンレバーを回転可能に支持する支持軸を有する第2ハウジングと、
を備え、
前記オープンレバーは、前記第2ハウジングから突出する突出部を有し、
前記突出部に前記変形誘発部が形成されていて、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングには、隙間を隔てて互いに突き合わされるように対向配置した端面がそれぞれ形成され、
前記オープンレバーは前記隙間を挿通しており、
前記オープンレバーの回転動作が前記隙間を隔てて対向配置した前記第1ハウジングの端面および前記第2ハウジングの端面によってガイドされる、車両ドアロック装置。
【請求項2】
車両ドアに設けられ、前記車両ドアの閉作動時に車体側に設けられるストライカに噛み合うとともにその噛み合い状態を維持することによって車両ドアの閉鎖状態を維持するように構成されるドアラッチ装置と、
前記車両ドアに設けられ、前記車両ドアに取付けられているドアハンドルの操作に応じて初期位置から回転することにより前記ドアラッチ装置と前記ストライカとの噛み合い状態を解除するように構成されるオープンレバーと、を備え、
前記オープンレバーは、初期位置に位置しているときに前記車両ドアに外方から外力が加えられた場合に前記外力により前記オープンレバーのその他の部分よりも塑性変形しやすく構成された変形誘発部を有する、車両ドアロック装置であって、
前記ドアラッチ装置を収容する第1ハウジングと、
前記車両ドアに取付けられるとともに前記第1ハウジングが組付けられ、前記オープンレバーを回転可能に支持する支持軸を有する第2ハウジングと、
を備え、
前記オープンレバーは、前記第2ハウジングから突出する突出部を有し、
前記突出部に前記変形誘発部が形成されていて、
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングには、隙間を隔てて互いに突き合わされるように対向配置した端面がそれぞれ形成され、
前記オープンレバーは前記隙間を挿通しており、
前記オープンレバーの回転動作が前記隙間を隔てて対向配置した前記第1ハウジングの端面および前記第2ハウジングの端面によってガイドされる、車両ドアロック装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両ドアロック装置において、
前記変形誘発部は、前記オープンレバーに前記外力が作用する方向とは異なる方向に折り曲げられている折れ曲がり部により構成される、車両ドアロック装置。
【請求項4】
請求項に記載の車両ドアロック装置において、
前記折れ曲がり部は、前記オープンレバーの長手方向における長さが短くなるように折り曲げられている部分により構成される、車両ドアロック装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両ドアロック装置において、
前記支持軸は円筒形状のボス部であり、前記ボス部の底面の中央部分に第1貫通孔が形成され、
前記第1ハウジングには、前記ボス部の内側に挿通されるとともにその中央部分に前記第1貫通孔と同芯配置する第2貫通孔が形成された凸部が形成され、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔に金属製の連結部材が貫通され、前記連結部材によって前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが接合されている、車両ドアロック装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両ドアロック装置において、
前記ドアラッチ装置は、前記噛み合い状態を維持するための回転可能なポールと、このポールを復帰位置に向けて付勢するポールリターンスプリングを備え、
前記ポールは、金属板製で、プレス成形により形成されていて、板厚方向の一端部に破断面を有し、
前記ポールリターンスプリングは、トーションコイルスプリングであり、そのコイル部の中心は前記ポールの回転中心から径方向に離れていて、前記ポールと係合するポール側端部が、前記ポールにおける板厚方向の他端部に対して片当たりするように、前記破断面に対して傾斜した形状に形成されている、車両ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に記載のように、車両ドアの閉鎖時に車体に設けられたストライカと噛み合うとともにその噛み合い状態を維持することにより車両ドアの閉鎖状態を維持するドアラッチ装置と、このドアラッチ装置を収容する樹脂製の第1ハウジングと、車両ドアに設けられたドアハンドルに連係部材を介して接続されたオープンレバーと、このオープンレバーを収容する樹脂製の第2ハウジングとを備える車両ドアロック装置が知られている。特許文献1に記載の車両ドアロック装置によれば、樹脂製の第2ハウジングに収容されたオープンレバー(アウトサイドオープンレバー27)が、第2ハウジングに一体形成された樹脂支軸(支軸85)に回転可能に支持されている。このオープンレバーは第2ハウジングに収容されたリンク機構を介して第1ハウジング内のドアラッチ装置に接続される。オープンレバーが樹脂支軸の周りを初期位置から回転することによってドアラッチ装置による車両ドアの閉鎖状態(ストライカとの噛み合い)が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−112241号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
車両が側突(側面から衝突)された場合、車両ドアに外方(側方)から外力が作用する。この外力は、車両ドアに取付けられているドアハンドル(例えばアウトサイドドアハンドル)、ドアハンドルに接続された連係部材、さらに連係部材に接続されたオープンレバーに作用する。オープンレバーが樹脂支軸により支持されている場合、この外力によって樹脂支軸が変形するとともにオープンレバーが押し上げられる。つまり側突による外力でオープンレバーが樹脂支軸ごと移動する。このようにオープンレバーが樹脂支軸ごと移動してその移動力がリンク機構を介してドアラッチ装置に作用することにより、意に反して車両ドアの閉鎖状態が解除されるおそれがある。また、オープンレバーの支軸が金属製であっても、支軸が形成された樹脂製のハウジングが側突で変形するおそれがある。この場合にも、樹脂製ハウジングの変形によりオープンレバーが移動して、上記と同様に意に反して車両ドアの閉鎖状態が解除されるおそれがある。
【0005】
本発明は、側突による外力が車両ドアに作用した場合に、意に反してドアラッチ装置による車両ドアの閉鎖状態が解除されることを防止することができる車両ドアロック装置を提供することを目的とする。
【0006】
(課題を解決するための手段)
本発明の車両ドアロック装置は、車両ドアに設けられ、車両ドアの閉作動時に車体側に設けられるストライカに噛み合うとともにその噛み合い状態を維持することによって車両ドアの閉鎖状態を維持するように構成されるドアラッチ装置と、車両ドアに設けられ、車両ドアに取付けられているドアハンドルの操作に応じて初期位置から回転することによりドアラッチ装置とストライカとの噛み合い状態を解除するように構成されるオープンレバーと、を備える。そして、オープンレバーは、初期位置に位置しているときに車両ドアに外方から外力が加えられた場合に外力により最初に塑性変形するように構成された変形誘発部を有する。あるいは、オープンレバーは、初期位置に位置しているときに車両ドアに外方から外力が加えられた場合に外力によりオープンレバーのその他の部分よりも塑性変形しやすく構成された変形誘発部を有するように構成されている。ここで、「最初に塑性変形する」とは、オープンレバーに側突による外力が作用したときにオープンレバーおよびオープンレバーに直接接続された部品の中で最も早く塑性変形することを意味する。
【0007】
本発明によれば、側突時に車両ドアに外方から作用する外力によって、オープンレバーに形成された変形誘発部が最初に塑性変形する。この塑性変形によってオープンレバーが歪んで移動も回動もできなくなる(つまり動作不能になる)。その結果、外力でオープンレバーが移動して意に反して車両ドアの閉鎖状態が解除されることを防ぐことができる。また、仮にオープンレバーが動作できる程度に変形誘発部が塑性変形するような状態であっても、変形誘発部の塑性変形によって外力のエネルギーが吸収されているので、オープンレバーの支持部分などへの外力の伝達量が低減でき、これらの部分が外力で変形することが抑制される。このようにしてオープンレバーの支持部分の変形が防止されるので、オープンレバーが支持部分とともに移動して意に反して車両ドアの閉鎖状態が解除されることを防止できる。
【0008】
また、本発明の車両ドアロック装置は、ドアラッチ装置を収容する第1ハウジングと、車両ドアに取付けられるとともに第1ハウジングが組付けられ、オープンレバーを回転可能に支持する支持軸を有する第2ハウジングと、を備えている。そして、オープンレバーは、第2ハウジングから突出する突出部を有し、突出部に変形誘発部が形成されている。このように、オープンレバーのうち、第2ハウジングから突出した突出部に変形誘発部が形成されているので、オープンレバーに側突による外力が作用したときに、第2ハウジングの外部でオープンレバーが塑性変形する。したがって、第2ハウジング内にオープンレバーの変形が及ぶことが極力防止され、ひいては第2ハウジング内でのオープンレバーの変形に起因して車両ドアの閉鎖状態が解除されることが確実に防止される。
【0009】
また、本発明の車両ドアロック装置にて、上記第1ハウジングおよび第2ハウジングには、隙間を隔てて互いに突き合わされるように対向配置した端面がそれぞれ形成され、オープンレバーはこの隙間を挿通している。そしてオープンレバーの回転動作が上記隙間を隔てて対向配置した第1ハウジングの端面および第2ハウジングの端面によってガイドされる。この場合、オープンレバーの突出部は、オープンレバーの第2ハウジング内で回転可能に支持されている部分に対してオフセットしていてもよい。ここで、オープンレバーについて「オフセット」とは、オープンレバーのある部分と他の部分との回転平面が平行であって同一でないことを意味する。
【0010】
これによれば、第1ハウジングの端面と第2ハウジングの端面とによりオープンレバーの回転動作がガイドされる。このため、例えば側突により生じる外力以外の力、例えばオープンレバーを回転させるために加えられる乗員の操作力が過剰であり、過剰な操作力でオープンレバーが捩じれるように変形しようとする際に、オープンレバーが第1ハウジングの端面または第2ハウジングの端面に接することによってオープンレバーの変形が抑えられる。その結果、通常の回転動作においては変形を抑えることができ、側突による外力が入力されたときには容易に変形するようにオープンレバーを構成することができる。
【0011】
上記した本発明の実施に際して、変形誘発部は、オープンレバーに外力が作用する方向とは異なる方向に折り曲げられている折れ曲がり部であるのがよい。ここで、オープンレバーがある方向に「折り曲げられる」とは、ある方向に沿って折り目が形成されるように折り曲げられることを意味する。したがって、本発明に係るオープンレバーの折れ曲がり部は、初期位置にあるオープンレバーに作用する外力の作用方向とは異なる方向に沿って折り目が形成されるように折り曲げられているように構成される。これによれば、折れ曲がり部で変形誘発部を形成するため、変形誘発部を形成するためにオープンレバーに切欠きなどを形成しなくてもよく、それ故、オープンレバーの幅を所定の長さに保つことができる。このため回転方向に過剰な力が作用した場合に変形し難く、一方、側突による外力で容易に変形するようにオープンレバーを構成することができる。すなわち、通常の回転動作においてはオープンレバーの変形を十分に抑えることができ、側突による外力が入力されたときにはオープンレバーを容易に変形させることができる。
【0012】
この場合において、折れ曲がり部は、オープンレバーに外力が作用する方向にほぼ直交する方向に折り曲げられている部分により構成されるとよい。これによれば、わずかな外力でオープンレバーの折れ曲がり部を容易に塑性変形させてオープンレバーを動作不能な程度に歪ませることができる。また、折れ曲がり部は、オープンレバーの長手方向における長さが短くなるように折り曲げられている部分により構成されるとよい。これによれば、オープンレバーの長手方向またはそれに近い方向から外力がオープンレバーに作用した場合に、オープンレバーの長さが短くなるように折れ曲がり部が塑性変形し易い。このためオープンレバーの折れ曲がり部を容易に塑性変形させてオープンレバーを動作不能な程度に歪ませることができる。
【0013】
また、第2ハウジング内のオープンレバーの支持軸は円筒形状のボス部であり、ボス部の底面の中央部分に第1貫通孔が形成され、第1ハウジングにはボス部の内側に挿通されるとともにその中央部分に第1貫通孔と同芯配置する第2貫通孔が形成された凸部が形成されているのがよい。そして、第1貫通孔と第2貫通孔に金属製の連結部材が貫通され、連結部材によって第1ハウジングと第2ハウジングが接合されているとよい。これによれば、オープンレバーの支持軸としてのボス部に金属製の連結部材が貫通しているので、支持軸自体を補強できる。このため万が一、支持軸に外力が作用した場合であっても、支持軸の変形を抑えることができる。
【0014】
また、本発明の実施に際して、前記ドアラッチ装置は、前記噛み合い状態を維持するための回転可能なポールと、このポールを復帰位置に向けて付勢するポールリターンスプリングを備え、前記ポールは、金属板製で、プレス成形により形成されていて、板厚方向の一端部に破断面を有し、前記ポールリターンスプリングは、トーションコイルスプリングであり、そのコイル部の中心は前記ポールの回転中心から径方向に離れていて、前記ポールと係合するポール側端部が、前記ポールにおける板厚方向の他端部に対して片当たりするように、前記破断面に対して傾斜した形状に形成されていることも可能である。この場合には、ドアラッチ装置において、ポールリターンスプリングのポール側端部がポールの破断面に係合することはない。したがって、ポールの回動に際して、ポールとポールリターンスプリングの係合部位にて滑りが発生するものの、その滑りは滑らかであり、操作フィーリングの悪化は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両ドアロック装置を車両前方から見た正面図である。
図2図1のB方向矢視図である。
図3】噛み合いボディを示す図である。
図4】アクチュエータ側ハウジングのカバーを取り外した車両ドアロック装置の側面図である。
図5】アクティブレバーの正面図である。
図6図1のA−A断面図である。
図7図6の下方部分の詳細を示す概略断面図である。
図8】噛み合いボディの内部構成(ラッチ、ラッチリターンスプリング、ポール、ポールリターンスプリング等の構成)を示す図である。
図9】ポールとポールリターンスプリングの関係を示した斜視図である。
図10図9の矢印X方向からみたポールとポールリターンスプリングの関係を概略的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において矢印で示されている方向は、車両に組み付けられている閉鎖状態の車両ドアを基準とした向きを示す。図1および図2は本実施形態に係る車両ドアロック装置を示す図である。この車両ドアロック装置1は、車両の右後部を開閉するための右後部ドア(RRドア)に組み込まれる。図1は、閉鎖状態のRRドアに組み込まれた車両ドアロック装置1を車両前方側から見た正面図であり、図2はRRドアに組み込まれた車両ドアロック装置1を車両側方(車室内側)から見た側面図、つまり図1のB方向矢視図である。図1および図2に示すように、この車両ドアロック装置1は、噛み合いボディ10とアクチュエータボディ20とを備える。噛み合いボディ10はアクチュエータボディ20の車両後方側に組付けられる。したがって、車両ドアロック装置1を前方から見た図1においては、噛み合いボディ10は隠れている。
【0017】
図3は、噛み合いボディ10を示す図である。図3(a)は、RRドアに組み込まれた車両ドアロック装置1の噛み合いボディ10を車両前方側から見た正面図、図3(b)は車両後方側から見た背面図である。図2および図3に示すように、噛み合いボディ10は、樹脂製のラッチ側ハウジング(第1ハウジング)11と、ラッチ側ハウジング11内に収容されているドアラッチ装置12と、ラッチ側ハウジング11の車両前方面側に配設された金属製のサブベースプレート13とを有する。この金属製のサブベースプレート13はラッチ側ハウジング11の一部と解釈してもよい。
【0018】
ラッチ側ハウジング11には、RRドアが開いている状態から閉じられたときに車体側に設けられたストライカが進入してくるストライカ受容溝111が形成される。また、ドアラッチ装置12は、ラッチ121およびポール122を備える。ラッチ121は、ラッチ側ハウジング11に支持軸121aを介して回転可能に支持されていて、ラッチ側ハウジング11との間に介装したラッチリターンスプリングS1によって復帰位置(図8に示した位置から時計回転方向に90度程度回転し、ラッチ側ハウジング11の内壁と係合する位置)に向けて付勢されている。ポール122は、ラッチ側ハウジング11に支持軸122aを介して回転可能に支持されていて、ラッチ側ハウジング11との間に介装したポールリターンスプリングS2によって復帰位置(図8に示した位置)に向けて付勢されている。詳説すると、復帰位置にてポール122は、反時計方向に付勢されているが、ラッチ側ハウジング11に設けられたポールストッパゴム11cに当接する。したがって、ポール122は、ポールストッパゴム11cによって復帰位置に保持される。ポールリターンスプリングS2は、図8図10に示したように、ラッチ側ハウジング11のスプリング収容部に収容されるコイル部S2aと、ラッチ側ハウジング11に係合する直線状のハウジング側端部S2bと、ポール122のスプリング係止部122cに係合するL字状のポール側端部S2cを有している。
【0019】
ストライカ受容溝111内に進入したストライカはラッチ121に噛み合う。また、ポール122がラッチ121の回転を規制することで、ラッチ121がストライカに噛み合う状態が維持される。このためRRドアの閉鎖状態が維持される。また、RRドアが後述するアンロック状態であるときにRRドアに設けられているドアハンドル(インサイドドアハンドルまたはアウトサイドドアハンドル)が開操作された場合には、ポール122によるラッチ121の回転規制が解除される。このためラッチ121によるストライカの噛み合いが解除され、ストライカがストライカ受容溝111から離脱することができるようにされる。この状態ではRRドアを開くことができる。また、RRドアが後述するロック状態であるときにRRドアに設けられているドアハンドルが開操作された場合には、ポール122によるラッチ121の回転規制は解除されない。このためRRドアを開くことはできない。
【0020】
アクチュエータボディ20は、RRドアのロック状態(RRドアが閉鎖状態であるときにドアハンドルを開操作しても、ラッチ121とストライカとの噛み合いが解除されない状態)とアンロック状態(RRドアが閉鎖状態であるときにドアハンドルを開操作した場合にラッチ121とストライカとの噛み合いが解除される状態)とを切り換えるように作動する。このアクチュエータボディ20は、樹脂製のアクチュエータ側ハウジング(第1ハウジング)21と、アクチュエータ側ハウジング21内に収納された多数のレバーとを備える。アクチュエータ側ハウジング21は、図1に示すようにケース22とカバー23とを備えて構成される。ラッチ側ハウジング11がアクチュエータ側ハウジング21に組付けられ、さらにラッチ側ハウジング11を組み付けたアクチュエータ側ハウジング21がRRドアに取付けられることにより、車両ドアロック装置1がRRドアに固定される。
【0021】
図4は、アクチュエータ側ハウジング21のカバー23を取り外した車両ドアロック装置1の側面図である。図4に示すように、アクチュエータ側ハウジング21のケース22内には、樹脂製のアクティブレバー30、インサイドオープンレバー40、アウトサイドオープンレバー50を含む多数のレバーが収容される。アクティブレバー30、インサイドオープンレバー40、アウトサイドオープンレバー50以外のレバーとして、チャイルドプロテクトレバー、リフトレバー、などが、ケース22内に取付けられる。また、ケース22内には、上記したレバー類以外に、電動モータ、ウォーム減速機構、オープンリンク等も配設される。
【0022】
アクティブレバー30は、ケース22に設けられた第1支持ピン221に取付けられ、第1支持ピン221を介して回転可能にケース22に取付けられる。図5はアクティブレバー30の正面図である。図5に示すように、アクティブレバー30は、第1支持ピン221が挿通されるボス部31と、ボス部31から図5の上方に向かって延びる本体部32と、本体部32の左側部から左方に向かって延びた第3突出部33と、本体部32の右側部から右方に突出した第1突出部34と、本体部32の上方部から上方に突出した第2突出部35と、ボス部31の下方部から下方に向かって延びるアーム部36とを有する。
【0023】
本体部32はアクティブレバー30の骨格をなし、この本体部32から上述のように第3突出部33、第1突出部34および第2突出部35が、それぞれ異なる方向に延びる。また、図示しない凹部に、ケース21内に配設されたウォームホイールの一対の突部が係合する。ウォーム減速機構のウォームギヤは、ケース22内に配設された電動モータの出力軸に同軸連結する。電動モータが駆動してその出力軸が回転した場合、出力軸の回転がウォーム減速機構で減速され、減速された回転がアクティブレバー30に伝達される。これによりアクティブレバー30は第1支持ピン221を中心として回転する。
【0024】
アーム部36は、ボス部31(すなわちアクティブレバー30の回転中心)から下方に向かって延びるとともにその先端部位が図5において左方に折れ曲がったような形状を呈する。アーム部36の先端にアクティブレバー側係合部361が形成される。アクティブレバー側係合部361にロッキングケーブル部材62が係合する(図4参照)。ロッキングケーブル部材62が引っ張られた場合、その張力はアーム部36に伝達される。アーム部36は張力によって第1支持ピン221を中心として回転する。これによりアクティブレバー30が第1支持ピン221を中心として回転する。
【0025】
図4に示すように、ケース22に、第1ストッパ222および第2ストッパ223が設けられている。第1ストッパ222および第2ストッパ223は、第1支持ピン221を中心としたアクティブレバー30の回転領域内に配置されている。より具体的には、第1ストッパ222および第2ストッパ223は、アクティブレバー30の第2突出部35の回転軌跡上に位置している。したがって、第2突出部35が第1ストッパ222に当接することによってアクティブレバー30の図4において時計周り方向への回転が規制され、第2突出部35が第2ストッパ223に当接することによってアクティブレバー30の図4において反時計周り方向への回転が規制される。
【0026】
また、アクティブレバー30は、ケース22内に配設されたトーションスプリング224により回転付勢される。このトーションスプリング224はアクティブレバー30の回転動作に節度感を持たせるために採用される。トーションスプリング224は、アクティブレバー30の第2突出部35が第1ストッパ222に当接しているときに第2突出部35を第1ストッパ222に押し付けるようにアクティブレバー30を図4において時計周り方向に付勢力する。このためアクティブレバー30は、第1ストッパ222に当接したときに、トーションスプリング224の付勢力でその位置に保持される。また、トーションスプリング224は、アクティブレバー30の第2突出部35が第2ストッパ223に当接しているときに第2突出部35を第2ストッパ223に押し付けるようにアクティブレバー30を図4において反時計周り方向に付勢する。このためアクティブレバー30は、第2ストッパ223に当接したときに、トーションスプリング224の付勢力でその位置に保持される。
【0027】
第1ストッパ222に当接しているときのアクティブレバー30の回転位置をアンロック位置と呼び、第2ストッパ223に当接しているときのアクティブレバー30の回転位置をロック位置と呼ぶ。したがって、電動モータの駆動力あるいはロッキングケーブル部材62の張力によって、アクティブレバー30はアンロック位置からロック位置までの間の回転領域を回転することができる。なお、アクティブレバー30がアンロック位置にあるときにはRRドアがアンロック状態であり、アクティブレバー30がロック位置にあるときにはRRドアがロック状態である。つまり、アクティブレバー30は、RRドアの施解錠状態を切り換える際に回転する。
【0028】
図4に示すように、インサイドオープンレバー40は、ケース22に設けられた第2支持ピン225を中心として回転可能にケース22に取付けられる。インサイドオープンレバー40の先端にはオープンレバー側係合部41が形成されていて、このオープンレバー側係合部41にオープンケーブル部材61が接続される。オープンケーブル部材61はRRドアの車室内側に取付けられたインサイドドアハンドル(図示省略)に連結されている。したがって、インサイドドアハンドルが開操作された場合にオープンケーブル部材61が引っ張られてインサイドオープンレバー40が回転する。
【0029】
次に、アウトサイドオープンレバー50について説明する。図1に示すように、アウトサイドオープンレバー50はアクチュエータ側ハウジング21のケース22に回転可能に組み付けられている。図1において、アウトサイドオープンレバー50は紙面に平行な平面上を回転する。図6図1のA−A断面図である。図6にアウトサイドオープンレバー50の断面形状が表わされる。図6に示すように、アクチュエータ側ハウジング21のケース22には、図6において略鉛直方向(略前後方向)に延びた鉛直部分22aと、鉛直部分22aの下方端(後方端)から略水平方向(外方)に延びた水平部分22bとが形成される。水平部分22bには、図6において下方(後方)に向かって立設された円筒状のボス部226が形成されている。このボス部226の外周にアウトサイドオープンレバー50が回転可能に取付けられている。
【0030】
アウトサイドオープンレバー50は、レバー部51および取付片52とを備える。レバー部51には取付孔が形成されており、この取付孔にボス部226が挿通することにより、レバー部51が回転可能にボス部226に取付けられる。レバー部51の先端側はケース22(アクチュエータ側ハウジング21)から突出した突出部511を形成する。この突出部511の先端に取付片52が設けられている。取付片52には、RRドアの車外側に設けられたアウトサイドドアハンドルに接続されている連係部材が接続される。したがって、アウトサイドドアハンドルが開操作された場合には、連係部材を介してその操作力がアウトサイドオープンレバー50の取付片52に伝達されて、アウトサイドオープンレバー50が回転する。ちなみに、アウトサイドオープンレバー50は図示しないスプリング等によって、図1に示す初期位置に付勢されている。アウトサイドドアハンドルの開操作による操作力がアウトサイドオープンレバー50に伝達された場合には、アウトサイドオープンレバー50は図1に示す初期位置から図1の矢印Cで示すように反時計周り方向に回転する。
【0031】
また、上述したように、ケース22内にはオープンリンクやリフトレバー等のリンク部材が配設されている。インサイドオープンレバー40あるいはアウトサイドオープンレバー50が初期位置から回転した場合、オープンリンクが図4において上方に押し上げられるように軸方向移動する。また、オープンリンクはアクティブレバー30の第1突出部34に当接しており、アクティブレバー30がアンロック位置にあるとき、オープンリンクは、ケース22内に配設されたリフトレバー(図示省略)に動力伝達可能であるような位置(動力伝達可能位置)に傾動する。一方、アクティブレバー30がロック位置にあるとき、オープンリンクはリフトレバーに動力伝達不能であるような位置(動力伝達不能位置)に傾動する。したがって、アクティブレバー30がアンロック位置にあるときにインサイドオープンレバー40あるいはアウトサイドオープンレバー50が初期位置から回転した場合、オープンリンクは動力伝達可能位置に傾動した状態で軸方向移動し、アクティブレバー30がロック位置にあるときにインサイドオープンレバー40あるいはアウトサイドオープンレバー50が初期位置から回転した場合、オープンリンクは動力伝達不能位置に傾動した状態で軸方向移動する。
【0032】
ここで、RRドアが閉鎖状態を維持しているときに動力伝達可能位置にあるオープンリンクが軸方向移動した場合、オープンリンクはリフトレバーを作動させることができる。リフトレバーの作動によってドアラッチ装置12のポール122が回転させられて、ポール122によるラッチ121の回転規制が解除される。このためラッチ121からストライカが離脱可能とされてRRドアが開放可能となる。すなわち、アクティブレバー30がアンロック位置にあるときにインサイドドアハンドルまたはアウトサイドドアハンドルが開操作されてインサイドオープンレバー40またはアウトサイドオープンレバー50が初期位置から回転した場合、その回転動作に伴う操作力がオープンリンク、リフトレバーを通じてドアラッチ装置12に作用するため、RRドアが開放可能とされる。一方、RRドアが閉鎖状態を維持しているときであって且つオープンリンクが動力伝達不能位置にあるときに、インサイドドアハンドルまたはアウトサイドドアハンドルが開操作されてインサイドオープンレバー40またはアウトサイドオープンレバー50が初期位置から回転した場合、その回転動作に伴う操作力はオープンリンクに伝わってオープンリンクは軸方向移動するものの、リフトレバーには伝わらない。このため上記操作力がドアラッチ装置12に作用することはなく、ポール122によるラッチ121の回転規制は解除されない。すなわち、アクティブレバー30がロック位置にあるときには、インサイドドアハンドルまたはアウトサイドドアハンドルが開操作されてインサイドオープンレバー40またはアウトサイドオープンレバー50が回転してもRRドアは閉鎖状態を維持する。
【0033】
図7は、図6の下方部分(後方部分)の詳細を示す概略断面図である。図6および図7に示すように、ケース22の水平部分22bの後方側に噛み合いボディ10のラッチ側ハウジング11が組付けられる。ラッチ側ハウジング11には、図6および図7において上方(前方)に突出した凸部112が形成されていて、この凸部112が、水平部分22bに形成されたボス部226の内周側に挿入される。
【0034】
ボス部226の底部の中央には、水平部分22bを突き抜けるように第1貫通孔226aが形成されている。また、凸部112の中央にもその軸方向に沿って貫通するようにネジ孔(第2貫通孔)112aが形成されている。ボス部226の貫通孔226aと凸部112のネジ孔112aは、ボス部226内に凸部112が挿入された場合に同芯配置する。そして、同芯配置した貫通孔226aおよびネジ孔112aを貫くように金属製の連結ボルト71がこれらの孔に挿通されてネジ止めされる。連結ボルト71のボルトヘッドは水平部分22bの表面に係止され、連結ボルト71の先端部分は凸部112のネジ孔112aを突き抜けている。このようにして、アウトサイドオープンレバー50の回転を支持する部位(ボス部226)にて、ケース22(アクチュエータ側ハウジング21)とラッチ側ハウジング11が、金属製の連結ボルト71を介して強固に締結接合される。
【0035】
また、図7からわかるように、ケース22の水平部分22bの外方端部22cは後方側に折り曲げられていて、その後方端面22dが後方を向いている。一方、ラッチ側ハウジング11の外方縁部11aは前後方向に延びていて、その前方端面11bが前方を向いている。ケース22の後方端面22dとラッチ側ハウジング11の前方端面11bとは微小な隙間Gを隔てて互いに突き合わされるように対向配置している。この隙間Gの幅はアウトサイドオープンレバー50のレバー部51の厚さよりもわずかに大きい。この隙間Gにアウトサイドオープンレバー50のレバー部51が差し込まれている。なお、隙間Gは、そこに差し込まれたアウトサイドオープンレバー50がボス部226を中心として必要な範囲で回転することができるような形状に形成されている。
【0036】
また、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51の突出部511には、折れ曲がり部511aが形成されている。折れ曲がり部511aは、突出部511のうち、取付片52が設けられている部分と、隙間Gに対面している部分との間の位置に形成される。折れ曲がり部511aは、後述するように側突による外力がアウトサイドオープンレバー50に作用する方向とは異なる方向に沿って折り目が形成されるように折り曲げられた部分により構成される。本実施形態では、折れ曲がり部511aは、図1に示すように、側突による外力が初期位置にあるアウトサイドオープンレバー50に作用する方向に対してほぼ直交する方向に折り目Dが形成されるように段差状(クランク状)に折り曲げられている部分により構成される。また、折れ曲がり部511aは、図7からわかるように、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51の長手方向における長さが短くなるように折り曲げられている部分により構成される。また、図6および図7からわかるように、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51のうちボス部226に支持されている部分の回転軸方向位置と、突出部511の回転軸方向位置は若干異なる。つまり、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51の突出部511は、ボス部226に支持されている部分に対してオフセットしている。
【0037】
上記構成の車両ドアロック装置1において、RRドアの車外側に設けられたアウトサイドドアハンドルが強く引かれた場合、アウトサイドオープンレバー50の取付片52に過剰な回転力が作用する。取付片52はアウトサイドオープンレバー50のレバー部51から突き出たように形成されていて、その回転平面がレバー部51の回転平面に対して軸方向にずれているため、過剰な回転力によってアウトサイドオープンレバー50のレバー部51がその長手方向に対して捩じれるように変形するおそれがある。また、レバー部51の突出部511がオフセットしているため、過剰な回転力でレバー部51が捩じれるように変形するおそれがある。この点に関し、本実施形態によれば、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51がケース22とラッチ側ハウジング11との間の隙間Gを挿通しており、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51がその回転方向とは異なる方向に変形(例えば捩じれ変形)した場合には、隙間Gに面しているケース22の後方端面22dあるいはラッチ側ハウジング11の前方端面11bがレバー部51に接触することで、その変形が抑えられる。つまり、隙間Gを隔てて突き合わされるように対面するケース22の後方端面22dおよびラッチ側ハウジング11の前方端面11bで、アウトサイドオープンレバー50の回転動作がガイドされる。よって、過剰な回転力がアウトサイドオープンレバー50に作用しても、アウトサイドオープンレバー50の変形が抑えられる。
【0038】
また、図1に示すように、RRドアに側突による外力が外方から内方に向けて作用した場合、その外力はアウトサイドオープンレバー50にも作用する。ここで、図1に示すアウトサイドオープンレバー50の回転位置は初期位置であり、この位置よりも時計周り方向には回動できないようにされている。側突による外力の作用方向は、図1に示すように車両外方から車両内方に向かう方向であり、この方向はアウトサイドオープンレバー50を初期位置から時計周り方向に回転させる方向であるので、外力によってアウトサイドオープンレバー50がRRドアを開くように回転させられることはない。しかしながら、図1に示すようにアウトサイドオープンレバー50が初期位置であるときその先端部分が回転中心に対して上方に向いているため、アウトサイドオープンレバー50の先端に外力が作用した場合には、その回転中心(ボス部226)を図1において上方に持ち上げようとする力が作用する。また、外力が図1において下方から斜め上方に向かうようにアウトサイドオープンレバー50に作用する場合もある。従来においてはこのような外力の作用によってアウトサイドオープンレバーの回転中心(樹脂支軸)が上方に持ちあげられてしまい、それに伴ってアウトサイドオープンレバー50も上方に移動してオープンリンクを押し上げ、リフトレバーを介してドアラッチ装置12によるストライカの噛み合いが解除されてしまうおそれがあった。
【0039】
しかしながら、本実施形態に係る車両ドアロック装置1のアウトサイドオープンレバー50のレバー部51の突出部511には折れ曲がり部511aが形成されているので、アウトサイドオープンレバー50に側突による外力が加えられた場合には、まず最初に折れ曲がり部511aが畳み込まれるように塑性変形する。つまり、折れ曲がり部511aは、アウトサイドオープンレバー50のその他の部分よりも塑性変形し易く構成されている。折れ曲がり部511aが塑性変形することにより、レバー部51が他の部品と緩衝して回転も移動もできなくなる。すなわちアウトサイドオープンレバー50が動作不能にされる。したがって、外力でアウトサイドオープンレバー50が移動してドアラッチ装置12によるストライカの噛み合いが解除されること(すなわちRRドアの閉鎖状態が解除されること)が防止される。
【0040】
また、折れ曲がり部511aが塑性変形することによって外力がある程度吸収されるために、アウトサイドオープンレバー50の支持部分(ボス部226)に伝えられる外力の大きさが低減される。そのため支持部分の変形に伴ってアウトサイドオープンレバー50が移動してドアラッチ装置12によるストライカの噛み合いが解除されること(すなわちRRドアの閉鎖状態が解除されること)が防止される。
【0041】
以上のように、本実施形態の車両ドアロック装置1は、RRドアに設けられ、RRドアの閉作動時に車体側に設けられるストライカに噛み合うとともにその噛み合い状態を維持することによってRRドアの閉鎖状態を維持するように構成されるドアラッチ装置12と、RRドアに取付けられているアウトサイドドアハンドルの操作に応じて初期位置から回転することによりドアラッチ装置12とストライカとの噛み合い状態を解除するように構成されるアウトサイドオープンレバー50と、を備える。そして、アウトサイドオープンレバー50は、初期位置に位置しているときにRRドアに外方から側突による外力が加えられた場合にその外力により最初に塑性変形するように構成された折れ曲がり部511aを有する。つまり、折れ曲がり部511aは、アウトサイドオープンレバー50のその他の部分よりも塑性変形し易く構成されている。
【0042】
本実施形態に係る車両ドアロック装置1によれば、上述したように側突時にRRドアに外方から作用する外力によって、アウトサイドオープンレバー50に形成された折れ曲がり部511aが最初に塑性変形することによってアウトサイドオープンレバー50が回転も移動もできなくされる。そのためアウトサイドオープンレバー50が移動してドアラッチ装置12によるストライカとの噛み合い状態を解除するといった、意に反するRRドアの閉鎖状態の解除が防止される。
【0043】
また、本実施形態に係る車両ドアロック装置1は、ドアラッチ装置12を収容するラッチ側ハウジング11と、RRドアに取付けられるとともにラッチ側ハウジング21が組付けられ、アウトサイドオープンレバー50を回転可能に支持するボス部226を有するアクチュエータ側ハウジング21と、を備える。また、アウトサイドオープンレバー50は、アクチュエータ側ハウジング21から突出する突出部511を有し、突出部511に折れ曲がり部511aが形成されている。このため、アウトサイドオープンレバー50に側突による外力が作用したときに、アクチュエータ側ハウジング21の外部でアウトサイドオープンレバー50が塑性変形する。したがって、アクチュエータ側ハウジング21内にアウトサイドオープンレバー50の変形が及ぶことが極力防止され、ひいてはアクチュエータ側ハウジング21内でのアウトサイドオープンレバー50の変形に起因してRRドアの閉鎖状態が解除されることが確実に防止される。
【0044】
また、ラッチ側ハウジング11およびアクチュエータ側ハウジング21には、隙間Gを隔てて互いに突き合わされるように対向配置した端面(ラッチ側ハウジング11の前方端面11bおよびアクチュエータ側ハウジング21のケース22の後方端面22d)がそれぞれ形成され、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51はこの隙間Gを挿通している。そして、アウトサイドオープンレバー50の回転動作が上記隙間Gを隔てて対向配置したラッチ側ハウジング11の端面(前方端面11b)およびアクチュエータ側ハウジング21のケース22の端面(後方端面22d)によってガイドされる。このため、例えば側突により生じる外力以外の力、例えばアウトサイドオープンレバー50を回転させるために加えられる乗員の操作力が過剰であり、その操作力でアウトサイドオープンレバー50のレバー部51が捩じれるように変形しようとする際に、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51がラッチ側ハウジング11の前方端面11bまたはアクチュエータ側ハウジング21のケース22の後方端面22dに接することによってレバー部51の変形が抑えられる。その結果、通常の回転動作においてはアウトサイドオープンレバー50の変形を十分に抑えることができる。一方で、側突による外力が入力されたときにはアウトサイドオープンレバー50を容易に変形させることができる。
【0045】
また、アウトサイドオープンレバー50の折れ曲がり部511aは、上記したように外力によって最初に変形する変形誘発部として機能する。変形させるだけであれば、例えばレバー部51の幅を部分的に狭くした切欠き部分を形成し、その部分を最初に変形させるように構成してもよい。しかしながら、このような切欠き部分の形成はアウトサイドオープンレバー50の回転方向への剛性をも著しく低下させる。これに対して本実施形態のように折れ曲がり部511aにより変形誘発部を構成することによって、アウトサイドオープンレバー50の幅を狭めることなく、すなわち回転方向への剛性を低下させることなく、側突による外力の入力で容易にアウトサイドオープンレバー50を変形させるように構成することができる。このため、通常の回転動作においてはアウトサイドオープンレバー50の変形を十分に抑えることができ、側突による外力が入力されたときにはアウトサイドオープンレバー50を容易に変形させることができる。
【0046】
また、折れ曲がり部511aは、アウトサイドオープンレバー50に外力が作用する方向にほぼ直交する方向に折り曲げられている部分により構成されている。このため、わずかな外力で折れ曲がり部511aを容易に塑性変形させてアウトサイドオープンレバー50を動作不能な程度に歪ませることができる。また、折れ曲がり部511aは、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51の長手方向における長さが短くなるように折り曲げられている部分により構成されている。特に、折れ曲がり部511aは、レバー部51の長手方向に直交する方向(幅方向)に折り曲げられている部分により構成されている。このため、図1に示すように初期位置にあるアウトサイドオープンレバー50の長手方向またはそれに近い方向から外力がアウトサイドオープンレバー50に作用した場合に、アウトサイドオープンレバー50のレバー部51は、外力によって容易にその長さを短くするように、つまり折れ曲がり部51aがさらに折り畳まれるように塑性変形する。このため例えば折り畳まれるように塑性変形した部分がケース22に干渉することで、アウトサイドオープンレバー50を動作不能(回転も移動もできない状態)にすることができる。
【0047】
また、アウトサイドオープンレバー50の支持軸はケース22に形成された円筒形状のボス部226であり、ボス部226の底面の中央部分に第1貫通孔226aが形成されている。また、ラッチ側ハウジング11にはボス部226の内側に挿通されるとともにその中央部分に第1貫通孔226aと同芯配置するネジ孔(第2貫通孔)112aが形成された凸部112が形成されている。そして、第1貫通孔226aとネジ孔112aに金属製の連結ボルト71が貫通され、連結ボルト71によってラッチ側ハウジング11とアクチュエータ側ハウジング21が接合されている。アウトサイドオープンレバー50の支持軸であるボス部226に金属製の連結ボルト71が貫通されているので、ボス部226自体が補強される。このため万が一、ボス部226に外力が作用した場合であっても、ボス部226の変形を抑えることができる。このためボス部226が変形することによってアウトサイドオープンレバー50が移動してRRドアの閉鎖状態を解除するということがより確実に防止される。
【0048】
また、本実施形態に係る車両ドアロック装置1では、ポール122が、金属板製であり、プレス成形により形成されていて、板厚方向の一端部(図10の下端部)に破断面(凹凸面)122Aを有している。ポール122のプレス成形は、図10に示した上方から下方に素材(金属板)を剪断した後に、所定の形状となるように、成形型を用いて行われている。このため、ポール122では、板厚方向の他端部(図10の上端部)に剪断面(破断面に比して凹凸が小さい面)が形成されている。
【0049】
また、ポールリターンスプリングS2は、トーションコイルスプリングであり、そのコイル部S2aの中心O1はポール122の回転中心O2から径方向に所定量離れていて、ポール122のスプリング係止部122cに係合するL字状のポール側端部S2cが、ポール122における板厚方向の他端部(図10の上端部)に対して片当たりするように、その先端部(起立部)がポール122の破断面122Aに対して所要量θ傾斜した形状に形成されている。
【0050】
このため、本実施形態に係る車両ドアロック装置1では、ドアラッチ装置12において、ポールリターンスプリングS2のポール側端部S2cがポール122の破断面122Aに係合することはない。したがって、ポール122の回動に際して、ポール122とポールリターンスプリングS2の係合部位にて滑りが発生するものの、その滑りは滑らかであり、操作フィーリングの悪化は生じない。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態ではRRドアの車両ドアロック装置について説明したが、他のドアに設けられる車両ドアロック装置にも本発明を適用することができる。また、インサイドオープンレバーにも本発明を適用することができる。また、上記実施形態では折れ曲がり部511aが側突による外力で最初に変形する例を示したが、アウトサイドオープンレバー50に他の部分よりも強度的に弱い部分(脆弱部)を設け、側突による外力が作用したときにその脆弱部が最初に変形するように構成してもよい。脆弱部の構成としては、例えばその部分のみを切欠いておくように構成してもよく、あるいは、脆弱部を脆い材質で形成してもよい。また、上記実施形態では、ラッチ側ハウジング11の前方端面11bとアクチュエータ側ハウジング21の後方端面22dとによりアウトサイドオープンレバー50が挿通する隙間Gが形成された例を示したが、サブベースプレート13とアクチュエータ側ハウジング21とによりアウトサイドオープンレバー50が挿通する隙間Gが形成されていてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…車両ドアロック装置、10…噛み合いボディ、11…ラッチ側ハウジング(第1ハウジング)、11a…外方縁部、11b…前方端面、111…ストライカ受容溝、112…凸部、112a…ネジ孔、12…ドアラッチ装置、121…ラッチ、121a…ラッチの支持軸、S1…ラッチリターンスプリング、122…ポール、122a…ポールの支持軸、122A…ポールの破断面、S2…ポールリターンスプリング、S2a…コイル部、S2b…ハウジング側端部、S2c…ポール側端部、13…サブベースプレート、20…アクチュエータボディ、21…アクチュエータ側ハウジング(第2ハウジング)、22…ケース、22a…鉛直部分、22b…水平部分、22c…外方端部、22d…後方端面、226…ボス部(支持軸)、226a…貫通孔、30…アクティブレバー、40…インサイドオープンレバー、50…アウトサイドオープンレバー(オープンレバー)、51…レバー部、511…突出部、511a…折れ曲がり部(変形誘発部)、52…取付片、61…オープンケーブル部材、71…連結ボルト(連結部材)、G…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10