(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の遺骨収納室が格子状に形成され、各遺骨収納室は棚板および仕切り板によって区画された納骨壇であって、前後2本のスライドベースが平行して敷設された底板、前方のスライドベースにスライド可能に係合され、仕切り板を挿入支持可能な挿入溝が設けられた複数の前基柱、後方のスライドベースにスライド可能に係合され、仕切り板を挿入支持可能な挿入溝が設けられた複数の後基柱、前基柱の前面に架設された複数のフロントカウンター並びにフロントカウンターとの嵌合部および棚板を挿入支持可能な挿入溝を有するリアカウンターを備え、対向する前基柱および後基柱の挿入溝に仕切り板の両端が挿入されて仕切り板が支持固定され、挿入した仕切り板の上辺に挿着されたU字鋼上に棚板が載置されるとともに、隣り合う前基柱間においてフロントカウンターに嵌合されたリアカウンターの挿入溝に棚板の端部が挿入されて棚板が支持固定されることを特徴とする納骨壇。
【技術分野】
【0001】
本発明は骨壺等を収納する納骨壇に関し、さらに詳細には、ビス等の固定手段をほとんど使用することなく組立てが簡易でありながら、組立て誤差が小さい納骨壇に関する。
【0002】
従来は、墓地において、家毎に独立した個壇に故人の遺骨を収納して埋葬していたが、近年は、墓地の不足や価格の高騰などから、屋内において多数の遺骨収納室を有する納骨壇の利用が増加している。
【0003】
このような納骨壇として、例えば、金属板を格子状に組み立てた納骨壇(特許文献1)などが開示されている。しかし、このような従来の納骨壇は、多数の板材を使用しており、それぞれをビス等の固定手段によって固定しているため、組立ての工程が複雑で、非常に手間がかかるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ビス等の固定手段を極力省略し、組立てが簡易であって、組立て誤差が小さい納骨壇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく納骨壇の構造について鋭意検討を行った結果、本発明を完成した。
【0007】
すなわち上記課題を解決した本発明の納骨壇は、複数の遺骨収納室が格子状に形成され、各遺骨収納室は棚板および仕切り板によって区画された納骨壇であって、前後2本のスライドベースが平行して敷設された底板、前方のスライドベースにスライド可能に係合され、仕切り板を挿入支持可能な挿入溝が設けられた複数の前基柱、後方のスライドベースにスライド可能に係合され、仕切り板を挿入支持可能な挿入溝が設けられた複数の後基柱、前基柱の前面に架設された複数のフロントカウンター並びにフロントカウンターとの嵌合部および棚板を挿入支持可能な挿入溝を有するリアカウンターを備え、対向する前基柱および後基柱の挿入溝に仕切り板の両端が挿入されて仕切り板が支持固定され、挿入した仕切り板の上辺に挿着されたU字鋼上に棚板が載置されるとともに、隣り合う前基柱間においてフロントカウンターに嵌合されたリアカウンターの挿入溝に棚板の端部が挿入されて棚板が支持固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の納骨壇は、両端および天地を除き、中央部の構造は全てビス等の固定手段を使用することなく、板材を順次、部材に設けられた溝に挿入したり、載置するなどして一定の遊びを保持した状態で形成され、組み上げた後に振動を与えることによって自律的に所定の位置に組み込まれる自調納まり形の遊式構造であり、各構成部材も主にワンタッチで係合するだけであるため、極めて簡易に組み立てることができ、作業コストを大きく軽減することが可能である。さらに、全体の組み立て誤差を小さい範囲に抑えることができる。また納骨壇を構成する各部材の材質、意匠の選択の自由度が高く、これらを様々に組合せによって高い付加価値を付与することができる。さらに、各構成部材として主にアルミ型材を採用することにより、防火性に優れるとともに、コストを軽減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図17-1】組立て手順において、台座を構築する段階を示す図。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図17-2】組立て手順において、台座にスライドベース、巾木等を取り付けた状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図17-3A】組立て手順において、前基柱、後基柱を取り付けた状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図17-4】組立て手順において、背板を挿着した状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図17-5】組立て手順において、両端の袖柱を取り付けた状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図17-6A】組立て手順において、底板、仕切り板、化粧柱を設置した状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図17-7A】組立て手順において、フロントカウンターを設置した状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図17-8A】組立て手順において、リアカウンター、U字鋼、棚板を設置した状態を示す図。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)はE−E’側断面図である。
【
図17-9A】組立て手順において、中間段組立てを繰り返した状態を示す図。(a)は正面図、(b)はG−G’側断面図である。
【
図17-10A】組立て手順において、最上段まで組み上げた状態を示す図。(a)は正面図、(b)はI−I’側断面図である。
【
図17-10B】同図中最上段部の平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。
【
図17-11A】組立て手順において、袖後基柱を側板に固定されたキャッチプレートに嵌着した状態を示す図。
【
図17-12】組立て手順において、扉を取り付けた状態を示す図。(a)は正面図、(b)はK−K’側断面図である。
【
図18】本発明の別の実施態様の納骨壇を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の納骨壇のいくつかの実施形態示す図面と共に、本発明を更に詳しく説明する。なお、本発明の納骨壇は、これら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0011】
図1は、本発明納骨壇の斜視図、
図2は同正面図、
図3は同側面断面図、
図4は同側面断面拡大図を示す。
【0012】
本発明の納骨壇の躯体は、
図2〜4に示すように、両端の袖柱1、台座2、天蓋3、背板4、側板5から構成されており、その内部は棚板6および仕切り板7によって任意の段数および列数に区画されて各納骨収納室が形成されている。各区画には、扉23が開閉自在に取り付けられている。
【0013】
図4に示すとおり、台座2は、木製または金属製の柱材、板材によって形成され、その前面には巾木8および巾木台9が取り付けられる。巾木8は人造石またはアルミ型材であり、巾木台9はアルミ型材で形成される。
【0014】
台座ベース2の上面には、2本のスライドベース10が長手方向に平行して敷設される。
図5はスライドベース10の断面図である。スライドベース10の上部には、前基柱11、後基柱12または袖後基柱13を係合するためのスライド溝10aが長手方向に沿って形成されている。スライド溝10aは断面略矩形で、上面に開口部を有しており、スライドベース10の長手方向の一方の側面から他方の側面まで連通し、側面も開口している。前基柱11、後基柱12、袖後基柱13は、それぞれ下端にスライドエッジ14を備えている(
図6)。本実施形態において、後基柱12、袖後基柱13は井型形状のものである(井型柱)。スライドエッジ14は、スライドベース10のスライド溝10aの一方の側面開口部から挿入され、スライド可能に係合される(
図17−3B)。スライドエッジ14の本体部分の幅はスライドベース10のスライド溝10aの上方開口部の幅よりもわずかに短く、その下端縁がスライド溝10aの内部形状に沿って折り返されて形成されているため、上方向に脱抜が規制されるとともに、垂直方向に支持される。スライド溝10aの上方開口部は、スライドベース10の長手方向の両端まで連通しており、前基柱11および後基柱(井型柱)12をスライドさせて、スライドベース10上の任意の位置に設置することができる。前基柱11および後基柱(井型柱)12を所定の位置に配置し、隣り合う1対の前基柱11および後基柱(井型柱)12により形成される区画毎に、スライドベース10の支持部10b上に底板15が載置される。前基柱11が係合される前方のスライドベース10の支持部10b上には、その全面に底板15が載置されるが、後基柱(井型柱)12が係合される後方のスライドベース10には、背板4が挿入溝10cに挿入されるため、底板15は支持部10bの一方の面にのみ載置される(
図4)。
【0015】
前基柱11は、ビス穴11a、挿入溝11b、嵌合部11c、嵌合溝11dを備える(
図8)。前基柱11は、ビス穴11aを介してビスでスライドエッジ14に取り付けられる。化粧柱嵌合部11cには溝部11eが形成され、化粧柱16の嵌合部16aの先端に設けられた突起部16bと嵌着する(
図8、
図17−6B)。前基柱11の嵌合部11cの先端部は楔形状となっているため、化粧柱16を円滑にその内部に導入し、嵌合部11cの溝部11eに化粧柱16の突起部16bが嵌め込まれ、化粧柱16は、前基柱11から抜け落ちることなく保持される。一方、化粧柱16の嵌合部16aを内側にしぼることにより簡単に取り外すことができる。このように、化粧柱16は前基柱11に対しワンタッチで着脱可能である。また前基柱11の嵌合溝11dには、アタッチメント17の突起部17aが嵌め込まれて嵌着される(
図9、
図17−7B)。アタッチメント17は、その上端がリアカウンター21の下端と当接する位置に嵌着されてリアカウンター21の上下と前後の位置決めをする(
図4)。
【0016】
後基柱(井型柱)12は、ビス穴12a、仕切り板挿入溝12b、背板挿入溝12cを備えたものである(
図10)。後基柱(井型柱)12はビス穴12aを介してビスでスライドエッジ14に取り付けられる。仕切り板挿入溝12bは、対向する前基柱の仕切り板挿入溝11bと一対となって、それぞれの挿入溝に1枚の仕切り板7の両端が挿入され、この間に挟持される。一方、背板挿入溝12cは、隣接する後基柱12の背板挿入溝12cに1枚の背板を挿入し、その間で挟持される。後基柱(井型柱)のうち、両端に設置されるものには、仕切り板挿入溝の一方の先端に折返し部を設けた袖後基柱(袖井型柱)13が用いられる(
図11)。この仕切り板挿入溝13bに、側板5に固定されたキャッチプレート18の嵌合部18aを嵌め込むことによって、この袖後基柱(袖井型柱)13が側板5に係止、固定される(
図12,17−11B)。
【0017】
挿入された仕切り板7の上辺には、U字鋼19が挿着される(
図13、
図17−9B)。U字鋼19は、仕切り板6を挿入する挿入溝19aと支持部19bを備えており、支持部19b上に棚板6が載置される。
【0018】
前基柱11の前面には、フロントカウンター20が架設される。フロントカウンター20は両端のみ袖柱1にビス等の固定手段により固定され、所望の段数となるように必要な数だけ架設される。フロントカウンター20の上部後面側には、リアカウンター21と係合するための溝部20aが設けられている(
図14)。この溝部20aにリアカウンター21の嵌合部21aを嵌め込むとともに、リアカウンター21の突出部21bの下端が、アタッチメント17の上端と当接する位置に、アタッチメント17が前基柱11に嵌着されることによって、リアカウンター21が支持固定される(
図17−8B)。またリアカウンター21の上部後面側には棚板6を挿入する挿入溝21cが設けられており、この挿入溝21cに棚板6を挿入しつつ、U字鋼19の支持部19b上に載置することによって、棚板6が支持固定される(
図15、
図17−8B)。本実施形態において、スライドベース10、前基柱11、後基柱(井型柱)12、袖後基柱(袖井型柱)13、スライドエッジ14、化粧柱16、アタッチメント17、キャッチプレート18、U字鋼19、フロントカウンター20、リアカウンター21等の各部材はアルミ型材であり、このように主要な部材をアルミ型材で構成することにより、防火性に優れるとともに、製造コストを軽減することができる。
【0019】
このようにして形成される各区画において、前基柱21に設けられたヒンジ機構(図示せず)を介して開閉自在に扉23が取り付けられる。扉23は天然石、人造石で形成される他、木製、金属製とすることもできる。扉23には名札差し、錠が設けられている。扉23は平面の他、曲面を有するアーチ型としてもよく、任意の意匠を施すことができる(
図2)。
【0020】
図17−1〜17−11は、本発明納骨壇の施工方法の手順を示す図である。これらの図を参照して本発明納骨壇の施工方法を説明する。各図面において、太線部分が当該手順において取り付けられた部分を表わす。
【0021】
(手順1)
まず、木製または金属製の柱材、板材を用いて台座2を組み立て、水平を調整し所定の設置床面にアンカーボルトで固定する(
図17−1)。
(手順2)
台座2の前面に、巾木8および巾木台9をビス付けする。また台座2の上面に、2本のスライドベース10を長手方向に平行に敷設し、ビス付けする(
図17−2)。
(手順3)
前基柱11、後基柱(井型柱)12にスライドエッジ14をビス付けした後、所要数の前基柱11、後基柱(井型柱)12をスライドベース10の端部から挿入し、遊びを持った状態で所定の位置に配置する。両端の後基柱には、袖後基柱(袖井型柱)13を使用する(
図17−3A、B)。
(手順4)
隣り合う後基柱(井型柱)12又は袖後基柱(袖井型柱)13の背板挿入溝12c(又は13c)に、背板4を挿着する(
図17−4)。
(手順5)
両端において、袖柱1を巾木台9に取り付ける(
図17−5)。
(手順6)
スライドベース10の支持部10bに底板15を載置し、対向する前基柱11と後基柱(井型柱)12の挿入部に仕切り板7の両端を挿入する。次に前基柱11に化粧柱16をワンタッチで取り付ける。また前基柱11にアタッチメント17を嵌着する(
図17−6A、B)。
(手順7)
化粧柱16の上端木口を受台として、フロントカウンター20を設置し、両端を袖柱1にビスで固定する。(
図17−7A、B)。
(手順8)
隣接する前基柱11間の所定寸法に切断加工されたリアカウンター21をフロントカウンターにワンタッチ接合する。次に仕切り板7の上端にU字鋼19を設置する。棚板6をリアカウンター21の棚受け(挿入溝21c)に差し込むようにU字鋼19の上に載せて取り付ける(
図17−8A,B)。
(手順9)
手順6〜9のとおり、仕切り板7挿着、化粧柱16取り付け、アタッチメント17取り付け、フロントカウンター20取り付け、リアカウンター21取り付け、U字鋼19取り付け、棚板6挿着を繰り返し、中間段を組み上げる。
(手順10)
手順9を繰り返し最上段まで組み上げる。最上段においては、仕切り板7に加え、背板4の上端にもU字鋼19を設置する。その上に天蓋3を取り付け、笠木22をフロントカウンター20に取り付ける(
図17−10A,B)。
(手順11)
側板5の後側にキャッチプレート18を取り付ける。側板5の前側を袖柱の受け溝1aに挿入し、後側のキャッチプレート18を袖後基柱(袖井型柱)13にワンタッチで嵌め込み固定する。このようにワンタッチで嵌着する構造とすることにより、狭い場所や壁付設置においても、組立ての作業空間を確保する必要もなく、作業当初より、所定位置での組み立てが可能であり効率的である(
図17−11A)。
(手順12)
扉23を取り付けて完成する(
図17−12)。
【0022】
このように、それぞれの区画を形成する板材や柱材、その他の部材をそれぞれビス等で固定することなく、挿入したり嵌合するだけの作業で遊びを持たせて順次組み立てていく遊式ワンタッチ組立構造であるため、施工が極めて簡単であり、作業コストを大幅に軽減することが可能となる。さらに、このように遊びを持たせて全体を組み上げた状態で振動を与えることによって、自律的に所定の位置に組み込まれ、全体として組立て誤差を最小限に抑えることができる。
【0023】
図18は本発明の別の実施態様を示す図である。これは上下2段で1個の個壇を構成するものであり、このように、各段の高さは均一でなくてもよく、自由に設計することができる。下段32は上記したような遺骨収納室であるが、上段31は厨子であり、位牌載置棚や供物載置棚などが設けられ、その他にも任意に装飾意匠を施して壮麗、重厚な外観を呈するものとすることができる。