特許第6144557号(P6144557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144557引抜ジャッキ装置及び引抜ジャッキ付チュービング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144557
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】引抜ジャッキ装置及び引抜ジャッキ付チュービング装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/22 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   E02D7/22
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-146175(P2013-146175)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-17453(P2015-17453A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗本 真司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 遼平
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−088756(JP,A)
【文献】 特開2004−019146(JP,A)
【文献】 特開2004−308249(JP,A)
【文献】 特開2003−003469(JP,A)
【文献】 特開2006−348565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームに対して昇降フレームが複数の押抜シリンダによって昇降可能に設けられ、前記昇降フレームに従って昇降するチャック機構および、前記チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構を備えたチュービング装置本体と、
チュービング装置本体を上に載せ、前記チャック機構によって把持された前記ケーシングを引き抜くための引抜ジャッキ装置とを有する引抜ジャッキ付チュービング装置であり、
前記引抜ジャッキ装置は、ロアフレームに対してジャッキフレームが複数の引抜ジャッキシリンダによって昇降可能に設けられ、
前記ジャッキフレームは、前記チュービング装置本体が搭載可能な大きさで形成され、
前記引抜ジャッキシリンダは、前記押抜シリンダよりも出力が大きいものであること
を特徴とする引抜ジャッキ付チュービング装置。
【請求項2】
ベースフレームに対して昇降フレームが複数の押抜シリンダによって昇降可能に設けられ、前記昇降フレームに従って昇降するチャック機構および、前記チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構を備えたチュービング装置本体と、
該チュービング装置本体を上に載せ、前記チャック機構によって把持された前記ケーシングを引き抜くための引抜ジャッキ装置と、を有する引抜ジャッキ付チュービング装置であり、
前記引抜ジャッキ装置は、ロアフレームに対してジャッキフレームが複数の引抜ジャッキシリンダによって昇降可能に設けられ、
前記ジャッキフレームは、前記チュービング装置本体が搭載可能な大きさで形成され、
前記引抜ジャッキシリンダは、前記押抜シリンダよりも出力が大きいものであり、
前記引抜ジャッキシリンダと前記押抜シリンダとが、その伸縮を制御する油圧ユニットに接続され、前記引抜ジャッキシリンダの収縮動作と前記押抜シリンダの伸長動作とが同期して行われるものであり、
前記引抜ジャッキシリンダ及び前記押抜シリンダは、両シリンダの前記各作動時におけるストロークを一致させるべく、配管によって接続された両シリンダのロッド側油室の受圧面積が等しいこと
を特徴とする引抜ジャッキ付チュービング装置。
【請求項3】
ベースフレームに対して昇降フレームが複数の押抜シリンダによって昇降可能に設けられ、前記昇降フレームに従って昇降するチャック機構および、前記チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構を備えたチュービング装置本体を上に載せ、前記チャック機構によって把持された前記ケーシングを引き抜くための引抜ジャッキ装置であり、
ロアフレームに対してジャッキフレームが複数の引抜ジャッキシリンダによって昇降可能に設けられ、
前記ジャッキフレームは、前記チュービング装置本体が搭載可能な大きさで形成され、
前記引抜ジャッキシリンダは、前記押抜シリンダよりも出力が大きいものであること
を特徴とする引抜ジャッキ装置。
【請求項4】
ベースフレームに対して昇降フレームが複数の押抜シリンダによって昇降可能に設けられ、前記昇降フレームに従って昇降するチャック機構および、前記チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構を備えたチュービング装置本体を上に載せ、前記チャック機構によって把持された前記ケーシングを引き抜くための引抜ジャッキ装置であり、
ロアフレームに対してジャッキフレームが複数の引抜ジャッキシリンダによって昇降可能に設けられ、
前記ジャッキフレームは、前記チュービング装置本体が搭載可能な大きさで形成され、
前記引抜ジャッキシリンダは、前記押抜シリンダよりも出力が大きいものであり、
前記引抜ジャッキシリンダは、前記チュービング装置本体の前記押抜シリンダとともに、それぞれの伸縮を制御する油圧ユニットに接続され、
当該引抜ジャッキシリンダの収縮作動が前記押抜シリンダの伸長動作と同期し、且つストロークが一致するように、両シリンダのロッド側油室同士が配管によって接続され、且つ当該両ロッド側油室の受圧面積が等しいこと
を特徴とする引抜ジャッキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築、土木等の基礎工事に使用するケーシングや鋼管杭などの円筒体の圧入や引き抜きを行うためのチュービング装置に関し、特に、引き抜き力を強化するための引抜ジャッキ装置及び当該ジャッキ装置を一体にした引抜ジャッキ付チュービング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、土木等の基礎工事では、例えばケーシングを回転させながら地盤に圧入し、内部の土を取り出してコンクリートを流し込んで杭にする、場所打ち杭工法といわれる工事が行われる。こうした場所打ち杭工法では、ケーシングの圧入及び引き抜きを行うため、高トルクの回転を発生させるチュービング装置が使用される。そのチュービング装置では、フレームの貫通孔を通ったケーシングをチャックによって把持し、回転を与えたケーシングの圧入や引き抜きが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、場所打ち杭工法などでは、掘削深度が深くなることでケーシングの質量が増加するため、チュービング装置に大きな引き抜き力が必要になる。チュービング装置は、出力の異なる各ランクのものが用意されているので、施工に応じて引き抜き力が大きくなれば、それに適応する大型のものが使用される。しかし、作業スペースの制約によって設置面積を広げられず、大型のチュービング装置が使用できない場合がある。また、現存する最大出力のチュービング装置でも引き抜き力が不十分な場合には、新機種の開発が必要になる。しかし、全回転のチュービング装置は、保持、回転、押抜といった複数機構を有するため、開発に要する費用が膨大になってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、コストを抑えて引き抜き力を強化するための引抜ジャッキ装置及び当該ジャッキ装置を一体にした引抜ジャッキ付チュービング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る引抜ジャッキ付チュービング装置は、ベースフレームに対して昇降フレームが複数の押抜シリンダによって昇降可能に設けられ、前記昇降フレームに従って昇降するチャック機構および、前記チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構を備えたチュービング装置本体と、そのチュービング装置本体を上に載せ、前記チャック機構によって把持されたケーシングを引き抜くための引抜ジャッキ装置とを有するものであり、前記引抜ジャッキ装置は、ロアフレームに対してジャッキフレームが複数の引抜ジャッキシリンダによって昇降可能に設けられ、前記ジャッキフレームは、前記チュービング装置本体が搭載可能な大きさで形成され、前記引抜ジャッキシリンダは、前記押抜シリンダよりも出力が大きいものであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る引抜ジャッキ付チュービング装置は、前記引抜ジャッキシリンダと前記押抜シリンダとが、その伸縮を制御する油圧ユニットに接続され、前記引抜ジャッキシリンダの収縮作動と前記押抜シリンダの伸長作動とが同期して行われるものであり、前記引抜ジャッキシリンダ及び押抜きシリンダは、両シリンダの前記各作動時におけるストロークを一致させるべく、配管によって接続された両シリンダのロッド側油室の受圧面積が等しいことが好ましい。
【0008】
本発明に係る引抜ジャッキ装置は、ベースフレームに対して昇降フレームが複数の押抜シリンダによって昇降可能に設けられ、前記昇降フレームに従って昇降するチャック機構および、前記チャック機構によって把持したケーシングに対して回転を与える回転伝達機構を備えたチュービング装置本体を上に載せ、前記チャック機構によって把持されたケーシングを引き抜くためのものであり、ロアフレームに対してジャッキフレームが複数の引抜ジャッキシリンダによって昇降可能に設けられ、前記ジャッキフレームは、前記チュービング装置本体が搭載可能な大きさで形成され、前記引抜ジャッキシリンダは、前記押抜シリンダよりも出力が大きいものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る引抜ジャッキ装置は、前記引抜ジャッキシリンダが、前記チュービング装置本体の押抜シリンダとともに、それぞれの伸縮を制御する油圧ユニットに接続され、当該引抜ジャッキシリンダの収縮作動が前記押抜シリンダの伸長作動と同期し、且つストロークが一致するように、両シリンダのロッド側油室同士が配管によって接続され、且つ当該両ロッド側油室の受圧面積が等しいことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ケーシングの掘削深度が深くなってチュービング装置本体だけでは引き抜き力が不足する場合であっても、引抜ジャッキ装置の高出力によって引き抜くことが可能になる。そして、引抜ジャッキ装置の上にチュービング装置本体を載せて使用するので、チュービング装置本体は従来のものを使用すればよく、高出力のチュービング装置を新たに開発する必要がなくなり、その点でコストを抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】引抜ジャッキ付チュービング装置の実施形態を示した側面図である。
図2】チュービング装置本体の実施形態を示した断面図である。
図3】チュービング装置本体の実施形態を示した平面図である。
図4】チュービング装置本体のベースフレーム部分を示した平面図である。
図5】引抜ジャッキ付チュービング装置に接続された油圧ユニットの油圧回路を示した図である。
図6】チュービング装置本体の押込時における油圧ユニットの油圧回路を示した図である。
図7】チュービング装置本体の引抜時における油圧ユニットの油圧回路を示した図である。
図8】引抜ジャッキ装置の引抜時における油圧ユニットの油圧回路を示した図である。
図9】引抜ジャッキ装置の押込時における油圧ユニットの油圧回路を示した図である。
図10】引抜作業時における引抜ジャッキ付チュービング装置の収縮時の状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る引抜ジャッキ装置及び引抜ジャッキ付チュービング装置について、その実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、引抜ジャッキ付チュービング装置の実施形態を示した側面図である。引抜ジャッキ付チュービング装置1は、引抜ジャッキ装置2の上にチュービング装置本体3が載せられたものである。本実施形態の引抜ジャッキ付チュービング装置1では、例えば大きな引き抜き力が必要な施工に使用するものであり、チュービング装置本体3によってケーシング80の圧入を行い、引抜ジャッキ装置2とチュービング装置本体3を連動させて引抜を行うものである。
【0013】
先ず、引抜ジャッキ装置2は、ジャッキフレーム11とロアフレーム12とが上下に配置され、各フレームの中央にはケーシング80が貫通する大きさの貫通孔が形成されている。ジャッキフレーム11及びロアフレーム12は、上方から見た場合に略矩形形状をしており、その四隅に昇降ガイド13が設けられ、ジャッキフレーム11が昇降可能に支持されている。そして、昇降ガイド13近くの4箇所に引抜ジャッキ14が設けられ、ジャッキフレーム11とロアフレーム12とが連結されている。
【0014】
引抜ジャッキ14は、ジャッキフレーム11とロアフレーム12に設けられた筒状のガイドが摺動可能に嵌め合わされ、その内部に引抜ジャッキシリンダ16が設けられている。引抜ジャッキシリンダ16は、その伸縮によってジャッキフレーム11を昇降させるものであるが、本実施形態では特に、ケーシングを把持したチュービング装置本体3を上に載せて上昇させることにより、ケーシングの引き抜きを行うものである。そこで引抜ジャッキシリンダ16は、チュービング装置本体3に使用される押抜きシリンダよりも出力の大きい大型シリンダであり、高推力を発生させるものが用いられる。
【0015】
次に、図2は、チュービング装置本体3を示した断面図であり、図3はチュービング装置本体3の平面図である。このチュービング装置本体3は、ベースフレーム21に4本のスラストジャッキ25が立設され、それに昇降フレーム22とチャックフレーム23とが昇降可能に支持されている。ベースフレーム21、昇降フレーム22およびチャックフレーム23は、上方から見た場合に略矩形形状をしており、その四隅にスラストジャッキ25が設けられている。そして、各フレームの中央部には、ケーシング80が貫通する大きさの貫通孔が形成されている。
【0016】
スラストジャッキ25は、ベースフレーム21にポスト26が固定され、そのポスト26に対して第1ガイド27が摺動可能にはめ合わされている。更に、その第1ガイド27には第2ガイド28が摺動可能にはめ合わされている。こうしたガイド部材により、第1ガイド27と一体の昇降フレーム22および、第2ガイド28と一体のチャックフレーム23が、それぞれ昇降可能となっている。
【0017】
スラストジャッキ25には、ガイド部材内に駆動手段である押抜きシリンダ29が設けられている。押抜きシリンダ29のピストンロッドは、ポスト26に固定された支持ブラケットにピン結合され、シリンダチューブは、第2ガイド28に固定されている。また、昇降フレーム22とチャックフレーム23とは複数のチャックシリンダ31によって連結されている。従って、押抜きシリンダ29が伸縮することにより、直接連結された昇降フレーム22だけではなく、チャックフレーム23も同時に昇降する。
【0018】
昇降フレーム22には、モータ34が設置され、貫通孔を囲むようにコーン33が取り付けられている。コーン33は、昇降フレーム22に対して、ベアリングによって回転自在に組み付けられ、モータ34の回転が減速機35からピニオンギヤ、アイドラギヤを介して伝えられる。コーン33は、その内周面に複数のテーパ溝が形成され、楔形をした複数のメインチャック32がそれぞれに対応して設けられている。メインチャック32は、ベアリングやリンクを介してチャックフレーム23に吊り下げられ、チャックシリンダ31の伸縮によって相対的に上下動する。これにより、ケーシング80とコーン33との間にメインチャック32が差し込まれ、或いは引き抜きが行われてケーシング1の把持と解放とが行われる。
【0019】
ところで、ケーシング80を引き抜く場合、メインチャック32の開放時にケーシング80が自重で沈下してしまう。そのため、チュービング装置1には、ケーシング80の沈下を防止するサブチャック機構が設けられている。ここで、図4は、ベースフレーム21部分を示した平面図である。サブチャック機構は、半円弧状の一対のサブチャック37が一端をピン38によって軸着され、他端側ではチャックシリンダ39によって連結されている。サブチャックシリンダ39が伸縮することにより、サブチャック37による円が拡径あるいは縮径し、ケーシング80の開放と把持が行われる。
【0020】
次に、このような引抜ジャッキ付チュービング装置1には、引抜ジャッキ装置2の引抜ジャッキシリンダ16及び、チュービング装置本体3の押抜きシリンダ29を作動させるための油圧ユニットが接続されている。図5は、引抜ジャッキ付チュービング装置1に接続された油圧ユニットの油圧回路を示した図である。油圧ユニット40は、引抜ジャッキシリンダ16に対し伸縮切換弁43を介して油圧ポンプ41が接続され、押抜きシリンダ29に対しては伸縮切換弁44を介して油圧ポンプ42が接続されている。
【0021】
引抜ジャッキシリンダ16及び押抜きシリンダ29は、それぞれが伸縮切換弁43,44を介してオイルタンク45に連結されている。伸縮切換弁43,44は4ポート電磁弁であり、各シリンダのヘッド側油室16a,29aとロッド側油室16b,29bに連結された配管に対し、油圧ポンプ41,42とオイルタンク45の連結を切り換えるものである。そして、伸縮切換弁43には引抜用リモコン47が、伸縮切換弁44にはメインリモコン48が接続され、各々ポートの切り替えが遠隔操作できるよう構成されている。
【0022】
伸縮切換弁43は、引抜ジャッキシリンダ16のヘッド側油室16a及びロッド側油室16bに対し、配管61,62を介して接続され、伸縮切換弁44は、押抜きシリンダ29のヘッド側油室29a及びロッド側油室29bに対し、配管63,64を介して接続されている。更に、伸縮切換弁43と引抜ジャッキシリンダ16や押抜きシリンダ29との間には電磁式の開閉弁51,52,53が接続されている。引抜ジャッキシリンダ16のロッド側油室16bに接続された配管62には、ノーマルオープンの開閉弁51が設けられている。そして、配管62には、押抜きシリンダ29に接続された配管63,64との間に配管66,67が接続され、ノーマルクローズの開閉弁52,53が設けられている。
【0023】
開閉弁51,52,53には引抜用リモコン47が接続され、伸縮切換弁43の切り換えに連動して開閉制御が行われるようになっている。また、引抜ジャッキシリンダ16に接続された配管61には、パイロット式逆止弁55が設けられている。パイロット式逆止弁55は、引抜ジャッキシリンダ16のヘッド側油室16aへ供給する作動油の流れを自由にする一方で、逆に排出方向へ流れる作動油の流れを阻止するよう取り付けられている。ただし、パイロット式逆止弁55は、ロッド側油室16bに接続された配管62内の圧力が設定値以上になった場合に、それがパイロット圧になり、逆止状態が解除される。
【0024】
続いて引抜ジャッキ付チュービング装置1の作用について説明する。引抜ジャッキ付チュービング装置1では、ケーシング80が各フレーム11,12,21,22,23の貫通孔を通り、チュービング装置本体3のメインチャック32によって把持される。すなわち、チャックシリンダ31が収縮することによりチャックフレーム23下降し、メインチャック32がケーシング80とコーン33との間に差し込まれる。こうしたメインチャック32の押さえ付けによって、ケーシング80が把持され、コーン33とケーシング80とが一体になる。
【0025】
次に、モータ34が駆動することにより、その出力が減速機35を介して伝達され、ピニオンギヤ及びアイドラギヤを介してコーン33に高トルクの回転が与えられる。コーン33とケーシング80との間にはメインチャック32が差し込まれており、そのメインチャック32によって把持されたケーシング80に高トルクの回転が与えられる。加えて押抜きシリンダ29が伸長状態から収縮作動し、第ガイド27に固定された昇降フレーム22が引き下げられる。昇降フレーム22にはメインチャック32によりケーシング80把持されているため、押抜きシリンダ29の収縮作動によりケーシング80に対して押し込み力が与えられる。
【0026】
こうして、ケーシング80は地中へと回転圧入される。押抜きシリンダ29のワンストローク分の収縮作動が終了した後は、メインチャック32の掴み換えが行われる。その際、チャックシリンダ31が伸長作動することによりチャックフレーム23が押し上げられる。そのためコーン33から、メインチャック32が抜き取られ、ケーシング80の把持が解除される。次いで、押抜きシリンダ29が伸長作動することによりチャックフレーム23と昇降フレーム22が引き上げられる。そこで、再びメインチャック32によってケーシング80が把持され、同様にして回転と圧入が行われる。こうした繰り返しによってケーシング80が所定深さまで地中に押し込まれる。
【0027】
オールケーシング工法では、圧入させるケーシング80の内部から土砂を排出し、できた縦穴内に鉄筋を建込み、コンクリートを流し込みながらケーシング80が引き抜かれる。その際、掘削深度が深くなることでケーシング80の質量が増加してしまい、チュービング装置本体3だけでは引き抜き力が不足してしまうことがある。そうした場合に、本実施形態のように引抜ジャッキ装置2が利用される。そこで次に、ケーシング80を圧入する場合及び引抜する場合に行われる、引抜ジャッキシリンダ16及び押抜きシリンダ29の伸縮について説明する。
【0028】
先ず、ケーシング80を圧入する場合には、図6に示すように、メインリモコン48のレバーが押込側に倒される。すると、伸縮切換弁44が切り換わり、油圧ポンプ42が配管64接続され、オイルタンク45が配管63に接続される。そのため、押抜きシリンダ29は、ロッド側油室29bへ作動油が供給される一方、ヘッド側油室29aから作動油が排出される。これにより、押抜きシリンダ29が図示するように収縮作動するため、昇降フレーム22が下降してケーシング80が圧入される。その後、メインリモコン48のレバーが中立状態に戻され、ケーシング80からメインチャック32の把持が解除される。
【0029】
次に、図7に示すように、メインリモコン48のレバーが引抜側に倒される。すると、伸縮切換弁44が切り換わり、油圧ポンプ42が配管63に接続され、オイルタンク45が配管64に接続される。押抜きシリンダ29は、ヘッド側油室29aへ作動油が供給される一方、ロッド側油室29bからは作動油が排出される。これにより、押抜きシリンダ29が図示するように伸長作動し、昇降フレーム22が上昇することで、メインチャック32がケーシング80の上方を把持することが可能になる。そこで、メインチャック32がケーシング80を把持した後、再び前述したようにしてレバーを切り換えて圧入が行われる。メインチャック32によるケーシング80の把持と解放、押抜きシリンダ29の伸縮が繰り返され、尺取り虫のようにして段階的に回転圧入が行われる。
【0030】
続いて、ケーシング80の引抜には、図5に示す中立の状態から図8に示すように、引抜用リモコン47のレバーが引抜側に倒される。伸縮切換弁43が切り換わり、油圧ポンプ41が配管61に接続され、オイルタンク45が配管62に接続される。このとき開閉弁52,53は閉じたままであり、配管63,64へ作動油が流れることはない。そのため、引抜ジャッキシリンダ16は、ヘッド側油室16aへ作動油が供給され、ロッド側油室16bから作動油が排出される。一方で、押抜きシリンダ29は、作動油が流れないためチュービング装置本体3側の伸縮は行われない。
【0031】
よって、引抜ジャッキシリンダ16が図示するように伸長作動し、ジャッキフレーム11が上昇してチュービング装置本体3が持ち上げられる。チュービング装置本体3にはケーシング80が把持されているため、引抜ジャッキシリンダ16の伸長作動によって、そのストローク分だけケーシング80が引き抜かれる。このときチュービング装置本体3では、モータ34の駆動によってケーシング80に回転が与えられている。そして、引き抜きの際も、チャック32によるケーシング80の把持と解放、引抜ジャッキシリンダ16の伸縮が繰り返される。
【0032】
次に、引抜ジャッキシリンダ16の収縮が行われる。図10は、そうした収縮時の引抜ジャッキ付チュービング装置1を示した側面図である。チュービング装置本体3は、ケーシング80の沈下を防止するため、収縮時の最初の段階では、図10(a)に示すようにメインチャック32がケーシング80を把持した状態を維持する。そして、メインチャック32の高さを変えないため、図10(b)に示すように、引抜ジャッキシリンダ16の収縮に同期させて押抜きシリンダ29を同じ距離だけ伸長させる。その後、図10(c)に示すように、ケーシング80の把持をメインチャック32からサブチャック37に交換し、押抜きシリンダ29を収縮させる。
【0033】
引抜ジャッキシリンダ16の収縮では、図9に示すように、引抜用リモコン47のレバーが押込側に倒される。すると、伸縮切換弁43が切り換わり、油圧ポンプ41が配管62に接続され、オイルタンク45には配管61が接続される。また、開閉弁51は閉状態になって配管62が遮断されるとともに、開閉弁52,53が開状態に切り換えられ、配管66,67が連通する。
【0034】
油圧ポンプ41から送り出された作動油は、配管62から配管67,63を通って押抜きシリンダ29のヘッド側油室29aへと供給される。一方で押抜きシリンダ29のロッド側油室29bからは作動油が押し出され、その作動油は、配管64から配管66,62を通って引抜ジャッキシリンダ16のロッド側油室16bへと供給される。そして、引抜ジャッキシリンダ16のヘッド側油室16aからは作動油が押し出され、その作動油が配管61を通ってオイルタンク45へと戻される。このとき、配管61のパイロット式逆止弁55は、伸縮切換弁43の近傍で配管62内の圧力が高まることで、それがパイロット圧になり、逆止状態が解除されている。
【0035】
このようにして引抜ジャッキシリンダ16が収縮してジャッキフレーム11が下降した分だけ押抜きシリンダ29が伸び、メインチャック32を支持する昇降フレーム22の高さが一定に保たれる。そのため、引抜ジャッキシリンダ16及び押抜きシリンダ29は、作動油が直接流れ込む両方のロッド側油室16b,29bについて、受圧面積が等しくなるように各シリンダチューブとピストンロッドの径が設計されている。
【0036】
次に、メインチャック32の把持位置が下に移し換えられるが、そのまま放してしまってはケーシング80が沈下してしまう。そこで、チュービング装置本体3では、サブチャック37によってケーシング80を把持して沈下を防止し、その間にメインチャック32は解放状態になり、昇降フレーム22が下降する。
【0037】
その際、図6に示すように、メインリモコン48のレバーが押込側に倒される。すると、前述したように、押抜きシリンダ29のロッド側油室29bへ作動油が供給される一方、ヘッド側油室29aから作動油が排出される。これにより、押抜きシリンダ29が収縮して昇降フレーム22が下降する。そこで、メインチャック32がケーシング80の下方位置を再び把持し、サブチャック37が解放状態になる。メインチャック32によるケーシング80の把持と解放、引抜ジャッキシリンダ16及び押抜きシリンダ29の伸縮が繰り返され、尺取り虫のようにして段階的に引き抜きが行われる。
【0038】
よって、こうした本実施形態の引抜ジャッキ付チュービング装置1によれば、ケーシング80の掘削深度が深くなってチュービング装置本体3だけでは引き抜き力が不足する場合であっても、引抜ジャッキ装置2の高出力によって引き抜くことができる。そして、引抜ジャッキ装置2の上にチュービング装置本体3を載せて使用すればよいので、チュービング装置本体3は、所有する従来のチュービング装置がそのまま使用できる。そのため、高出力のチュービング装置を新たに開発する必要がなくなり、その点でコストを抑えることができる。
【0039】
以上、本発明の引抜ジャッキ装置及び引抜ジャッキ付チュービング装置について実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 引抜ジャッキ付チュービング装置
2 引抜ジャッキ装置
3 チュービング装置本体
11 ジャッキフレーム
12 ロアフレーム
16 引抜ジャッキシリンダ
21 ベースフレーム
22 昇降フレーム
23 チャックフレーム
29 押抜きシリンダ
32 メインチャック
40 油圧ユニット
41,42 油圧ポンプ
43,44 伸縮切換弁
80 ケーシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10