【実施例】
【0036】
以下、脂肪族ポリエステルとして、ポリグリコ−ル酸(PGA)およびポリ乳酸(PLA)を製造する実施例により、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載を含めて、本明細書中に記載した物性(値)は、以下の方法による測定値に基づく。
【0037】
(1)重合反応率:
反応混合物中のモノマー含有量を測定し、重合反応率として算出した。またモノマー含有量測定のために、サンプル約50mgに、内部標準物質の4−クロロベンゾフェノンを0.2g/lの濃度で溶解したジメチルスルホキシド(DMSO)2gを加え、160℃で約3分間加熱して溶解させ、室温まで冷却した後、濾過を行った。その濾液を1μl採取し、ガスクロマトグラフィー(GC)装置に注入して測定した。
<GC条件>
装置:(株)島津製作所製「GC−2010」
カラム:「TC−17」、0.25mmφ×30m
カラム温度:150℃5分間保持、20℃/分で270℃まで昇温、270℃3分間保持
気化室温度:180℃
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)、温度:300℃。
【0038】
(2)初期反応率、反応終了時間および反応速度定数
重合が進行し、ほぼ反応物が粘性を持ち始める時点(重合開始からグリコリドについては60分、L−ラクチドについては6時間)の重合反応率を初期反応率とし、この時点から30分毎に重合反応率を測定し、反応率が変化しなくなる重合開始からの時間を、反応終了時間として記録した。
【0039】
他方、重合初期、反応物が粘性を持ち始める前の領域においては、停止反応が起こらず、反応中心の数(開始剤分子および触媒分子の数によって決定されると仮定した)が一定であると仮定して得られる以下の一次式(1)から、反応速度定数k
p(単位:「1/s」)を求めた。
−d[M]/dt=k
p[M] (1)
より具体的には、反応開始からグリコリドについては15分まで、L−ラクチドについては60分までの期間に数回のサンプリングを行い、測定モノマー濃度[M]に基づいて、反応時間に対する―ln([M]/[M]
0)(ここで[M]
0:初期モノマー濃度)をプロットし、そのプロットの傾きより(初期)反応速度定数k
pを求めた。
【0040】
(3)分子量:
サンプル約10mgをDMSO0.5mlで160℃において加熱溶解し、室温まで冷却した。その溶液をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)で10mlにメスアップし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置に注入して分子測定した。測定された分子量分布に基づき、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
<GPC条件>
装置:昭和電工(株)製「ShodexGPC−104」
カラム:「HFIP−606M」(2本)、プレカラム:「HFIP−G」(1本)を直列接続
カラム温度:40℃
溶離液:5mMトリフルオロ酢酸ナトリウム/HFIP中溶液
流速:0.6ml/min
検出器:RI(示差屈折率検出器)
分子量決定基準物質:標準ポリメタクリル酸メチル(昭和電工(株)製、分子量195.0万、65.9万、21.8万、5.0万、2.1万、0.7万及び0.2万)。
【0041】
(4)熱安定性:
サンプル樹脂10mgを熱重量分析装置(TGA)に入れ、窒素を40cc(標準状態)/分の割合で流しながら260℃で、60分間保持した前後の重量変化により、下式により熱重量保持率(%)を計算し、評価した。
熱重量保持率(%)=(加熱後重量/加熱前重量)×100。
なお、重合後の経時変化による測定結果のばらつきを避けるために、(3)分子量及び(4)熱安定性、の測定には重合後、温度23±1℃且つ露点−50℃以下の低湿度環境下で保存し、測定直前に取り出したサンプル樹脂を使用した。
【0042】
(実施例1)
グリコリド100重量部に対して、 触媒として二塩化スズ0.015重量部、重合開始剤としてエチレングリコール0.1重量部、助触媒としてパラトルエンスルホン酸を触媒に対してモル比0.1の量で重合容器に仕込んだ。仕込み内容物を、170℃の加熱条件下で保持し、前述の方法により、60分後反応率および最終反応時間ならびに(初期)反応速度定数を求めた。
結果を以下の実施例、比較例の結果とまとめて、後記表1に示す。
【0043】
(実施例2)
助触媒/触媒モル比を0.5に変更する以外は、実施例1の操作を繰り返した。
【0044】
(実施例3)
助触媒/触媒モル比を1に変更する以外は、実施例1の操作を繰り返した。
【0045】
(実施例4)
助触媒/触媒モル比を2に変更する以外は、実施例1の操作を繰り返した。
【0046】
(参考例1)
助触媒/触媒モル比を5に変更する以外は、実施例1の操作を繰り返した。
【0047】
(実施例5)
助触媒としてメタンスルホン酸を用いる以外は、実施例3の操作を繰り返した。
【0048】
(実施例6)
触媒としてオクタン酸スズ(II)0.0027重量部を用いる以外は、実施例3の操作を繰り返した。
【0049】
(比較例1)
助触媒を用いない以外は、実施例1の操作を繰り返した。
【0050】
(比較例2)
助触媒として、
特許文献9で用いられるトリフェニルホスフィンを用いる以外は、実施例3の操作を繰り返した。
【0051】
(比較例3)
助触媒を用いない以外は、実施例6の操作を繰り返した。
【0052】
上記実施例1〜6、参考例1及び比較例1〜3の結果をまとめて次表1に示す。
【表1】
【0053】
上記表1を見ると、次のことがわかる。二塩化スズ触媒に加えて、助触媒としてパラトルエンスルホン酸(芳香族スルホン酸化合物)を加えると、助触媒を加えない比較例1との対比において、助触媒/触媒モル比が0.1の場合(実施例1)であっても、反応終了時間の若干の短縮が認められ助触媒効果が認められる。さらに、助触媒/触媒モル比を増大させると(実施例2〜4)、反応速度定数、60分後の重合反応率および反応終了時間のいずれの点においても顕著な助触媒効果が認められるが、助触媒/触媒モル比が5とさらに増大すると(参考例1)、助触媒を用いない場合(比較例1)と比べて重合速度はむしろ低下する。二塩化スズ触媒に対する助触媒効果は、メタンスルホン酸(脂肪族スルホン酸化合物)においても認められる。オクタン酸スズ触媒に対し、助触媒としてパラトルエンスルホン酸を使用した場合(実施例6)、助触媒を使用しない場合(比較例3)と比べて、初期反応速度定数は若干低下しているが、60分後の反応率の増大、反応終了時間の短縮で分かるように、反応の中期以降における顕著な助触媒効果が認められる。
【0054】
モノマーとして、グリコリドの代わりにL−ラクチドを用いて、以下の重合試験を行った。
(実施例7)
L-ラクチド100重量部に対して、 触媒としてオクタン酸スズ0.054重量部、重合開始剤としてエチレングリコール0.1重量部、助触媒としてパラトルエンスルホン酸を触媒に対してモル比1の量で重合容器に仕込んだ。仕込み内容物を、180℃の加熱条件下で保持して重合を進め、前記の方法により、初期反応速度定数、6時間後反応率および最終反応時間を求めた。
【0055】
(比較例4)
助触媒を用いない以外は、実施例7の操作を繰り返した。
【0056】
上記実施例7及び比較例4の結果をまとめて、次表2に示す。
【表2】
【0057】
上記表2を見ると、グリコリドの場合(前記表1の実施例6と比較例3)と同様に、L-ラクチドをモノマーに用いても、オクタン酸スズ触媒に対し、助触媒としてパラトルエンスルホン酸を使用した場合、助触媒を使用しない場合と比べて、初期反応速度定数は若干低下しているが、6時間後の反応率の増大、反応終了時間の短縮で分かるように、反応の中期以降における顕著な助触媒効果が認められる。
【0058】
(分子量測定及び熱安定性試験)
上記実施例3及び比較例1で反応終了後に得られたポリマーについて、それぞれ上記した方法により初期分子量測定ならびに熱安定性試験(熱重量保持率測定)を行った。結果をまとめて次表3に示す。
【0059】
【表3】
助触媒としてパラトルエンスルホン酸を加えた実施例3において、助触媒を加えない比較例1との対比において、重合後に得られたポリマーの分子量に差は無いのにも関わらず、熱重量保持率には明らかな差異が観測された。これより、パラトルエンスルホン酸を加えたことによる顕著な熱安定性(熱重量保持率)の向上効果が認められる。
【0060】
(参考例2)
実施例3および5のいずれにおいても、二塩化スズを用いずに助触媒のみを用いた場合には、重合はほとんど進行しなかった。
【0061】
(参考例3)
触媒として、二塩化スズの代わりに塩化亜鉛(II)を用いる以外は、助触媒を用いずに、比較例1の操作を繰り返した。
【0062】
(参考例4)
触媒として、二塩化スズの代わりに塩化亜鉛(II)を用いる以外は、実施例3の操作を繰り返した。
【0063】
(参考例5)
触媒として、二塩化スズの代わりに塩化ジルコニウム(II)を用いる以外は、助触媒を用いずに、比較例1の操作を繰り返した。
【0064】
(参考例6)
触媒として、二塩化スズの代わりに塩化ジルコニウム(II)を用いる以外は、実施例3の操作を繰り返した。
【0065】
(参考例7)
触媒として、二塩化スズの代わりにジルコニウム(II)アセチルアセトナートを用いる以外は、助触媒を用いずに、比較例1の操作を繰り返した。
【0066】
(参考例8)
触媒として、二塩化スズの代わりにジルコニウム(II)アセチルアセトナートを用いる以外は、実施例3の操作を繰り返した。
【0067】
上記参考例3〜8において7時間後の重合反応率を測定した。比較例1及び3の結果とまとめて、次表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
上表4に示す結果は、スルホン酸化合物の助触媒効果は、スズ化合物触媒に対して特異的に認められるものであり、環状エステルの開環重合触媒として知られる他の金属化合物触媒との組合わせで一様に認められるものではないことを示す。