特許第6144597号(P6144597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6144597-電流センサ 図000002
  • 特許6144597-電流センサ 図000003
  • 特許6144597-電流センサ 図000004
  • 特許6144597-電流センサ 図000005
  • 特許6144597-電流センサ 図000006
  • 特許6144597-電流センサ 図000007
  • 特許6144597-電流センサ 図000008
  • 特許6144597-電流センサ 図000009
  • 特許6144597-電流センサ 図000010
  • 特許6144597-電流センサ 図000011
  • 特許6144597-電流センサ 図000012
  • 特許6144597-電流センサ 図000013
  • 特許6144597-電流センサ 図000014
  • 特許6144597-電流センサ 図000015
  • 特許6144597-電流センサ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144597
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-206613(P2013-206613)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-72124(P2015-72124A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】安部 稔
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−088370(JP,A)
【文献】 特開2002−277491(JP,A)
【文献】 特表2002−523751(JP,A)
【文献】 特開2013−195381(JP,A)
【文献】 特開2005−283451(JP,A)
【文献】 特開2003−028899(JP,A)
【文献】 特開2013−057629(JP,A)
【文献】 特開2001−074782(JP,A)
【文献】 特開2010−048809(JP,A)
【文献】 米国特許第06040690(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0187943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の検出感度が最大となる感度軸と、磁界の検出感度に影響を与える感度影響軸とを有する少なくとも1つの磁気抵抗効果素子と、
被検出電流が流れる方向へ直線状に延伸し、当該延伸方向と垂直な断面が仮想的な第1の対称軸に対して線対称な形状を有する導電部材と
を備え、
前記導電部材は、前記第1の対称軸が通る空隙を隔てて互いに離間し、前記被検出電流の分流電流がそれぞれ同じ方向に流れる第1導電部及び第2導電部を含み、
前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と平行となる姿勢で、前記空隙の外側の領域であって、前記第1の対称軸と平行な方向から見て前記空隙と重なる領域に配置される
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と重なる位置であって、前記感度影響軸と平行な磁界成分が極小となる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の対称軸と平行な方向から見て、前記延伸方向における前記空隙の中央に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記延伸方向における前記第1導電部及び前記第2導電部の断面は、前記第1の対称軸と直交する第2の対称軸に対して線対称な形状をしており、
前記第1の対称軸と平行な方向において前記空隙を挟んで対向する位置に配置された一対の前記磁気抵抗効果素子と、
前記一対の磁気抵抗効果素子の出力信号に基づいて電流の検出値を演算する演算部とを有する
ことを特徴する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記導電部材の前記延伸方向と直交する平面に沿って配置された回路基板を有し、
前記回路基板は、前記導電部材の前記空隙を挟んで対向する第1腕部と第2腕部を含み、
前記一対の磁気抵抗効果素子の一方が前記第1腕部に取り付けられ、
前記一対の磁気抵抗効果素子の他方が前記第2腕部に取り付けられる
ことを特徴とする請求項4に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記一対の磁気抵抗効果素子を挟んで対向する位置に配置された一対の磁気シールドを有する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記延伸方向と垂直な断面が矩形形状を有し、
前記空隙を形成する前記第1導電部の一側面と前記第2導電部の一側面とが互いに平行である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項8】
磁界の検出感度が最大となる感度軸と、磁界の検出感度に影響を与える感度影響軸とを有する少なくとも1つの磁気抵抗効果素子と、
被検出電流が流れる方向へ直線状に延伸し、当該延伸方向と垂直な断面が仮想的な第1の対称軸に対して線対称な形状を有する導電部材と
を備え、
前記導電部材は、前記第1の対称軸が通り、当該第1の対称軸の方向に凹んだ溝を有し、
前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と平行となる姿勢で、前記溝の外側の領域であって、前記第1の対称軸と平行な方向から見て前記溝と重なる領域に配置される
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項9】
前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と重なる位置であって、前記感度影響軸と平行な磁界成分が極小となる位置に配置される
ことを特徴とする請求項8に記載の電流センサ。
【請求項10】
前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の対称軸と平行な方向から見て、前記溝の前記延伸方向における中央に配置される
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の電流センサ。
【請求項11】
前記延伸方向における前記導電部材の断面は、前記第1の対称軸と直交する第2の対称軸に対して線対称な形状をしており、
前記導電部材は、前記延伸方向に延びた一対の前記溝を有しており、
前記第1の対称軸と平行な方向において前記一対の溝を挟んで対向する位置に配置された一対の前記磁気抵抗効果素子と、
前記一対の磁気抵抗効果素子の出力信号に基づいて電流の検出値を演算する演算部とを有する
ことを特徴する請求項8乃至10のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項12】
前記導電部材の前記延伸方向と直交する平面に沿って配置された回路基板を有し、
前記回路基板は、前記一対の溝を挟んで対向する第1腕部と第2腕部を含み、
前記一対の磁気抵抗効果素子の一方が前記第1腕部に取り付けられ、
前記一対の磁気抵抗効果素子の他方が前記第2腕部に取り付けられる
ことを特徴とする請求項11に記載の電流センサ。
【請求項13】
前記一対の磁気抵抗効果素子を挟んで対向する位置に配置された一対の磁気シールドを有する
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の電流センサ。
【請求項14】
前記溝は、前記延伸方向と垂直な断面が矩形状若しくは台形状に形成される、
ことを特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項15】
前記磁気抵抗効果素子は、前記被検出電流により生じる磁束線が平らになる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体に流れる電流の誘導磁界に基づいて電流を検出する電流センサに係り、特に、磁電変換素子を用いて電流を検出する電流センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電流を検出する方法として、一般に、電流経路に設けた抵抗器(シャント抵抗)の電圧降下を検出する方法や、カレント・トランス(CT:current transformer)を用いる方法、磁電変換素子(ホール素子,磁気抵抗素子等)を用いる方法などが知られている。抵抗器の電圧降下を検出する方法は、直流と交流の広い周波数帯域で電流を検出できるものの、測定系と被測定系を絶縁するためにフォトカプラ等の回路を追加しなければならない。これに対し、カレント・トランスを用いる方法は、測定系と被測定系が絶縁されており、構成が比較的簡易で安価なことから、主に交流電流を扱う機器や設備において広く使用されている。
【0003】
他方、ホール素子等の磁電変換素子を用いる方法は、検出対象の電流経路に発生する磁界を電圧や電気抵抗に変換することにより電流を検出するものである。この方法は、測定系と被測定系が絶縁されていることに加えて、直流と交流の広い周波数帯域で電流を検出できるなどの優れた特徴がある。
【0004】
下記の特許文献1には、車載バッテリの端子に取り付けられた導電性部材(バスバー)に流れる電流を磁電変換素子によって検出するように構成された電流センサが記載されている。この電流センサは、被検出電流が流れる導電性部材を収容するスリットと、そのスリットに収容された状態の導電性部材の表面又は裏面と直交する位置に設けられた磁電変換素子及びバイアス磁石を有する。磁電変換素子及びバイアス磁石は、回路基板上に実装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−242367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、磁電変換素子には、磁界の検出感度が最大となる感度軸が存在する。ところが、比較的感度の高い磁電変換素子(ハードバイアスを備えたGMR素子やTMR素子,磁気収束板を備えたホール素子など)の中には、この感度軸に加えて、磁界の検出感度に影響を与える軸(感度影響軸)が存在するものがある。このような高感度の磁電変換素子を用いる場合、被検出電流の誘導磁界に含まれる感度影響軸の磁界成分は、検出感度の線形性を低下させる要因となる。
【0007】
図13は、細長い板状のバスバーに流れる電流を検出する電流センサの構成の一例を示す図であり、バスバーの断面方向から見た図である。バスバー100の電流Iは、紙面の表から裏の方向(Y方向)に流れる。バスバー100の周囲に描かれた点線は、バスバー100に流れる電流Iによって生じる誘導磁界の磁束線を表す。磁束線は、バスバー100の周りを囲む楕円状の閉曲線となっている。
【0008】
図13に示す電流センサは、バスバー100の上面側と下面側に配置された2つの磁電変換素子(200A,200B)を有する。これらの磁電変換素子(200A,200B)は、検出感度が最大となる感度軸(S1A,S1B)と、これに直交した感度影響軸(S2A,S2B)をそれぞれ有する。感度軸(S1A,S1B)はバスバー100の表面に対して平行な方向(X方向)を向き、感度影響軸(S2A,S2B)はバスバー100の表面に対して垂直な方向(Z方向)を向いている。
【0009】
図14は、細長い板状のバスバーに流れる電流による誘導磁界の方向をシミュレーションより求めた結果を示す図である。図14のシミュレーション結果から分かるように、バスバー100の幅方向の中央付近においては磁界の向きが水平に近くなり、X方向の磁界成分が支配的になる。従って、感度軸(S1A,S1B)をX方向に向けることで、誘導磁界を感度良く検出することができる。
【0010】
他方、図15は、細長い板状のバスバーに流れる電流による誘導磁界の強さをシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。図15における「Hx」,「Hy」,「Hz」は、それぞれX方向,Y方向,Z方向の磁界成分を表す。図15の縦軸は各磁界成分の強さを示し、横軸はX方向の位置[mm]を示す。横軸における20[mm]の位置が、バスバー100の幅方向の中央に対応する。
図15のシミュレーション結果からも、バスバー100の幅方向の中央付近では、X方向の磁界成分Hxが他の磁界成分に比べて概ね大きいことが分かる。しかしながら、感度影響軸(S2A,S2B)と平行な磁界成分Hzも、少なからず存在している。磁界成分Hzは、バスバー100の幅方向の中央(図15の横軸における20[mm]の位置)においてゼロになるが、この中央から離れるにつれて直線的に大きくなる。すなわち、磁界成分Hzは、バスバー100の幅方向の中央から僅かにずれた位置でも発生し、ずれが大きくなるほど直線的に増大する。
【0011】
このように、図13に示す電流センサでは、磁電変換素子(200A,200B)の位置がバスバー100の幅方向の中央から僅かにずれただけで、感度影響軸(S2A,S2B)に平行な磁界成分Hzが現れてしまい、検出感度の線形性が低下するという問題がある。検出対象の誘導磁界に感度影響軸の成分が存在すると、磁電変換素子の後段の回路におけるゲイン調整やオフセット調整などでは、線形性の改善が困難になる。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検出電流の誘導磁界に含まれる磁界成分のうち、磁電変換素子の感度影響軸と平行な磁界成分を減らすことができる電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点に係る電流センサは、磁界の検出感度が最大となる感度軸と、磁界の検出感度に影響を与える感度影響軸とを有する少なくとも1つの磁気抵抗効果素子と、被検出電流が流れる方向へ直線状に延伸し、当該延伸方向と垂直な断面が仮想的な第1の対称軸に対して線対称な形状を有する導電部材とを備える。前記導電部材は、前記第1の対称軸が通る空隙を隔てて互いに離間し、前記被検出電流の分流電流がそれぞれ同じ方向に流れる第1導電部及び第2導電部を含む。前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と平行となる姿勢で、前記空隙の外側の領域であって、前記第1の対称軸と平行な方向から見て前記空隙と重なる領域に配置される。
【0014】
上記の構成によれば、前記空隙の外側の領域であって、前記第1の対称軸と平行な方向から見て前記空隙と重なる領域では、前記空隙に電流が流れていないことによって、前記空隙を通る前記第1の対称軸と平行な方向における磁界成分が小さくなる。従って、前記磁電変換素子をこの領域に配置し、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と平行となるような姿勢を持たせることによって、前記感度影響軸の磁界成分が小さくなり、検出感度の線形性の低下が効果的に抑制される。
【0015】
好適に、前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と重なる位置であって、前記感度影響軸と平行な磁界成分が極小となる位置に配置されてよい。これにより、検出感度の線形性の低下がより効果的に抑制される。
【0016】
好適に、前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の対称軸と平行な方向から見て、前記延伸方向における前記空隙の中央に配置されてよい。これにより、前記空隙の端部における磁界の対称性の乱れによる前記感度影響軸の磁界成分への影響が低減される。
【0017】
好適に、前記延伸方向における前記第1導電部及び前記第2導電部の断面は、前記第1の対称軸と直交する第2の対称軸に対して線対称な形状をしていてもよい。この場合、上記第1の観点に係る電流センサーは、前記第1の対称軸と平行な方向において前記空隙を挟んで対向する位置に配置された一対の前記磁気抵抗効果素子と、前記一対の磁気抵抗効果素子の出力信号に基づいて電流の検出値を演算する演算部とを有してよい。
【0018】
好適に、上記第1の観点に係る電流センサは、前記導電部材の前記延伸方向と直交する平面に沿って配置された回路基板を有してよい。前記回路基板は、前記導電部材の前記空隙を挟んで対向する第1腕部と第2腕部を含んでよい。前記一対の磁気抵抗効果素子の一方が前記第1腕部に取り付けられ、前記一対の磁気抵抗効果素子の他方が前記第2腕部に取り付けられてもよい。これにより、前記一対の磁気抵抗効果素子の相対的な位置決めの精度が向上する。
【0019】
好適に、上記第1の観点に係る電流センサは、前記一対の磁気抵抗効果素子を挟んで対向する位置に配置された一対の磁気シールドを有してよい。これにより、外来磁界の検出精度への影響が緩和される。
【0020】
好適に、前記第1導電部及び前記第2導電部は、前記延伸方向と垂直な断面が矩形形状を有してよい。この場合、前記空隙を形成する前記第1導電部の一側面と前記第2導電部の一側面とが互いに平行でもよい。
【0021】
本発明の第2の観点に係る電流センサは、磁界の検出感度が最大となる感度軸と、磁界の検出感度に影響を与える感度影響軸とを有する少なくとも1つの磁気抵抗効果素子と、
被検出電流が流れる方向へ直線状に延伸し、当該延伸方向と垂直な断面が仮想的な第1の対称軸に対して線対称な形状を有する導電部材とを備える。前記導電部材は、前記第1の対称軸が通り、当該第1の対称軸の方向に凹んだ溝を有する。前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と平行となる姿勢で、前記溝の外側の領域であって、前記第1の対称軸と平行な方向から見て前記溝と重なる領域に配置される。
【0022】
上記の構成によれば、前記溝の外側の領域であって、前記第1の対称軸と平行な方向から見て前記溝と重なる領域では、前記溝の空間に電流が流れていないことによって、前記溝を通る前記第1の対称軸と平行な方向における磁界成分が小さくなる。従って、前記磁電変換素子をこの領域に配置し、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と平行となるような姿勢を持たせることによって、前記感度影響軸の磁界成分が小さくなり、検出感度の線形性の低下が効果的に抑制される。
【0023】
好適に、前記磁気抵抗効果素子は、前記感度影響軸が前記第1の対称軸と重なる位置であって、前記感度影響軸と平行な磁界成分が極小となる位置に配置されてよい。これにより、検出感度の線形性の低下がより効果的に抑制される。
【0024】
好適、前記磁気抵抗効果素子は、前記第1の対称軸と平行な方向から見て、前記溝の前記延伸方向における中央に配置されてよい。これにより、前記空隙の端部における磁界の対称性の乱れによる前記感度影響軸の磁界成分への影響が低減される。
【0025】
好適に、前記延伸方向における前記導電部材の断面は、前記第1の対称軸と直交する第2の対称軸に対して線対称な形状をしていてもよい。この場合、前記導電部材は、前記延伸方向に延びた一対の前記溝を有してよい。上記第2の観点に係る電流センサは、前記第1の対称軸と平行な方向において前記一対の溝を挟んで対向する位置に配置された一対の前記磁気抵抗効果素子と、前記一対の磁気抵抗効果素子の出力信号に基づいて電流の検出値を演算する演算部とを有してよい。
【0026】
好適に、上記第2の観点に係る電流センサは、前記導電部材の前記延伸方向と直交する平面に沿って配置された回路基板を有してよい。前記回路基板は、前記一対の溝を挟んで対向する第1腕部と第2腕部を含んでよい。前記一対の磁気抵抗効果素子の一方が前記第1腕部に取り付けられ、前記一対の磁気抵抗効果素子の他方が前記第2腕部に取り付けられてよい。これにより、前記一対の磁気抵抗効果素子の相対的な位置決めの精度が向上する。
【0027】
好適に、上記第2の観点に係る電流センサは、前記一対の磁気抵抗効果素子を挟んで対向する位置に配置された一対の磁気シールドを有してよい。これにより、外来磁界の検出精度への影響が緩和される。
【0028】
好適に、前記溝は、前記延伸方向と垂直な断面が矩形状若しくは台形状に形成されてよい。
好適に、前記磁気抵抗効果素子は、前記被検出電流により生じる磁束線が平らになる位置に配置されてよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、被検出電流の誘導磁界に含まれる磁界成分のうち、磁電変換素子の感度影響軸と平行な磁界成分を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、導電部材の延伸方向に対して垂直な方向から見た図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、図1のY1−Y1線における断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る電流センサの回路構成の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、磁電変換素子が実装される回路基板と磁気シールドを導電部材とともに図解した図である。
図5図1に示す電流センサにおける誘導磁界の方向をシミュレーションにより求めた結果の一例を示す図である。
図6図1に示す電流センサにおける誘導磁界の強さをシミュレーションにより求めた結果の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る電流センサの一変形例を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、導電部材の延伸方向に対して垂直な方向から見た図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、図8のY2−Y2線における断面図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、磁電変換素子が実装される回路基板と磁気シールドを導電部材とともに図解した図である。
図11図8に示す電流センサにおける誘導磁界の方向をシミュレーションにより求めた結果の一例を示す図である。
図12図8に示す電流センサにおける誘導磁界の強さをシミュレーションにより求めた結果の一例を示す図である。
図13】細長い板状のバスバーに流れる電流を検出する電流センサの構成の一例を示す図であり、バスバーの断面方向から見た図である。
図14】細長い板状のバスバーに流れる電流による誘導磁界の方向をシミュレーションより求めた結果を示す図である。
図15】細長い板状のバスバーに流れる電流による誘導磁界の強さをシミュレーションにより求めた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電流センサ1の構成の一例を示す図であり、導電部材10の延伸方向に対して垂直な方向から見た図である。図2は、図1に示す電流センサ1のY1−Y1線における断面図である。
本実施形態に係る電流センサ1は、被検出電流が流れる導電部材10と、その導電部材10に流れる被検出電流による誘導磁界を検出する磁電変換素子20A,20Bを有する。
【0032】
導電部材10は、直線状に(真っ直ぐに)延伸しており、その延伸方向に被検出電流が流れる。図1の例において、導電部材10は紙面の縦方向(Y方向)に伸び、被検出電流もこれと同じ方向に流れる。
【0033】
導電部材10の延伸方向と垂直な断面は、図2における第1の対称軸L1及び第2の対称軸L2に対して線対称な形状を有する。第1の対称軸L1は図2の紙面の縦方向(Z方向)に伸び、第2の対称軸L2は図2の紙面の横方向(X方向)に伸びる。図2において、導電部材10の被検出電流は、紙面の表から裏の方向(Y方向)へ流れる。
【0034】
図2に示すように、被検出電流が流れる方向と垂直な導電部材10の断面が線対称な形状を有していることから、この断面を囲む被検出電流の磁束線も、導電部材10の断面と同様に、第1の対称軸L1及び第2の対称軸L2に対して線対称な形状を持った閉曲線となる。
【0035】
また、導電部材10は、空隙5を隔てて互いに離間した第1導体部11及び第2導体部12を有する。この空隙5には、上述した第1の対称軸L1が通る。そのため、導電部材10の延伸方向(Y方向)と垂直な第1導体部11及び第2導体部12の断面は、図2に示すように、第1の対称軸L1に関して対称な形状を有する。
【0036】
また、導電部材10の延伸方向(Y方向)と垂直な第1導体部11及び第2導体部12の断面は、導電部材10の延伸方向(Y方向)の各位置において一様である。すなわち、第1導体部11及び第2導体部12が形成される領域AR1(図1)の任意の位置において、Y方向に垂直な断面が同一となっている。
【0037】
導電部材10に流れる被検出電流は、第1導体部11と第2導体部12に分流する。第1導体部11には分流電流I11が流れ、第2導体部12には分流電流I12が流れる。第1導体部11及び第2導体部12は同一の導電材料によって形成されており、また、上記のように互いに対称な形状を有することから、第1導体部11の分流電流I11と第2導体部12の分流電流I12は略同じになる。
【0038】
分流電流I11,I12によって生じる磁束線は、図2の点線で示すように、空隙5の中央を通る第1の対称軸L1に対して対称な形状を持った閉曲線となる。空隙5には電流が流れていないため、空隙5の付近で磁界は弱くなる。第1導体部11,第2導体部12に近接した磁束線は、例えば図2に示すように空隙5を貫通し、第1導体部11,第2導体部12を個別に囲む閉曲線となる。第1導体部11,第2導体部12からやや離れると、磁束線は空隙5を貫通せず、第1導体部11,第2導体部12の両方を囲む閉曲線となる。ただし、空隙5の付近の磁界が弱いため、磁束線は空隙5に近づく方向へ凹んだ閉曲線となる。第1導体部11,第2導体部12から離れるにつれて、空隙5の方向への磁束線の凹みは小さくなり、第1導体部11,第2導体部12からある距離を隔てたところで、磁束線は略平らになる。磁束線が平らになるということは、空隙5を通る第1の対称軸L1と平行な方向(Z方向)における磁界成分が極小になることを意味する。
【0039】
図2の例において第1導体部11及び第2導体部12は、導電部材10の延伸方向(Y方向)と垂直な断面が矩形形状を有している。また、空隙5を形成する第1導体部11の一側面51と第2導体部12の一側面52は、互いに平行になっている。このような導電部材10の形状は、例えば細長い板状の導電板の中央に、打ち抜き加工によって穴を開けることで簡単に形成できる。
【0040】
磁電変換素子20A,30Bは、被検出電流の誘導磁界に応じた抵抗や電圧などの変化を検出信号として出力する素子であり、例えばGMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子などの磁気抵抗変換素子を含んで構成される。磁電変換素子20A,30Bは、磁界の検出感度が最大となる感度軸に加えて、磁界の検出感度に影響を与える感度影響軸を有する。磁電変換素子20Aは、互いに直交する感度軸S1Aと感度影響軸S2Aを有する。磁電変換素子20Bは、互いに直交する感度軸S1Bと感度影響軸S2Bを有する。
【0041】
例えば、ハードバイアス層を備えるGMR素子やTMR素子などの磁気抵抗変化素子では、ハードバイアス層のバイアス磁界によって、強磁性固定層(PIN)の磁化方向に対する磁化自由層の磁化方向の向きを一定方向にバイアスする。これにより、磁界に応じて抵抗値が線形に変化する範囲を広げることができる。このバイアス磁界と同じ方向が、感度影響軸に相当する。バイアス磁界と同じ方向に磁界が加わると、実質的にバイアス磁界が変動することになるため、検出感度の線形性が低下する。バイアス磁界による感度影響軸は、一般に感度軸と直交する。
また、感度の高い磁電変換素子には、感度軸と直交する軸において感度軸より相対的に弱い検出感度を有するものがある。このような感度の弱い軸(副感度軸と呼ばれる場合がある。)も、検出感度に影響を与える軸となる。
【0042】
磁電変換素子20A,20Bは、空隙5の外側の領域であって、第1の対称軸L1と平行な方向から見て空隙5と重なる領域に配置される。この領域は、空隙5に電流が流れていないことによって、空隙5を通る第1の対称軸L1と平行な方向における磁界成分(Z方向の磁界成分)が小さくなっている。磁電変換素子20A,20Bは、この領域において感度影響軸S2A,S2Bが第1の対称軸L1(Z方向)と平行となる姿勢で配置される。これにより、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分が小さくなるため、検出感度の線形性の低下を抑えることができる。
【0043】
また、磁電変換素子20A,20Bは、感度影響軸S2A,S2Bが第1の対称軸L1と重なる位置であって、第1の対称軸L1と平行な磁界成分(Z方向の磁界成分)が極小となる位置に配置される。すなわち、磁電変換素子20A,20Bは、第1の対称軸L1の上であって、第1導体部11,第2導体部12から適度な距離を隔てたところにそれぞれ配置される。この位置に磁電変換素子20A,20Bを配置することで、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分を極小にすることができる。
【0044】
更に、磁電変換素子20A,20Bは、第1の対称軸L1と平行な方向(Z方向)から見て、導電部材10の延伸方向(Y方向)における空隙5の中央(図1における領域AR1の中央)に配置される。空隙5の端部付近では、Y方向の磁界の対称性が乱れているため、Z方向の磁界成分が生じ易くなっている。空隙5の両端部から最も離れた空隙5の中央では、この対称性の乱れによる影響が緩和されるため、感度影響軸S2A,S2Bと平行なZ方向の磁界成分が抑えられる。従って、この位置に感度影響軸S2A,S2Bを配置することで、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分をより小さくすることができる。
【0045】
磁電変換素子20Aと磁電変換素子20Bは、導電部材10の空隙5を挟んで対向する位置に配置される。例えば図2に示すように、共通の第1の対称軸L1の上であって、第1導体部11及び第2導体部12から略等しい距離だけ離れた位置に配置される。第1導体部11及び第2導体部12の断面は第2の対称軸L2に対して線対称な形状を有しているため、磁電変換素子20Aと磁電変換素子20Bにおける被検出電流の誘導磁界の大きさは略等しくなる。
【0046】
図2の例において、磁電変換素子20Aの感度軸S1Aと磁電変換素子20Bの感度軸S1Bは同一方向(X方向)を向いており、磁電変換素子20Aの感度影響軸S2Aと磁電変換素子20Bの感度影響軸S2Bも同一方向(Z方向)を向いている。そのため、2つの磁電変換素子(20A,20B)の感度軸(S1A,S1B)に作用する被検出電流の誘導磁界は互いに逆方向となり、これらの感度影響軸(S2A,S2B)に作用する被検出電流の誘導磁界も互いに逆方向となる。従って、被検出電流の誘導磁界による磁電変換素子20A及び磁電変換素子20Bの検出信号は、感度軸(S1A,S1B)について逆の極性となり、感度影響軸(S2A,S2B)についても逆の極性となる。
【0047】
図3は、本実施形態に係る電流センサ1の回路構成の一例を示す図である。
本実施形態に係る電流センサ1は、一対の磁電変換素子20A,20Bの出力信号に基づいて電流の検出値を演算する演算部50を有する。この演算部50は、図2に示すように感度軸S1A及び感度軸S1Bが同一方向かつ感度影響軸S2A及び感度影響軸S2Aが同一方向の場合、一対の磁電変換素子20A,20Bの出力信号の差に応じて電流の検出値を演算する。これにより、一対の磁電変換素子20A,20Bにおいて互いに逆の極性を有する誘導磁界の検出信号が、差の演算によって足し合わされる。また、被検出電流とは無関係な外来磁界によって一対の磁電変換素子20A,20Bに生じる検出信号は、被検出電流の誘導磁界の場合と異なり同一の極性を持つことから、演算部50の差の演算によってキャンセルすることができる。
【0048】
図4は、本実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、磁電変換素子20A,20Bが実装される回路基板30と磁気シールド40A,40Bを導電部材10とともに図解した図である。
本実施形態に係る電流センサ1は、例えば図4において示すように、導電部材10の延伸方向(Y方向)と直交する平面に沿って配置された回路基板30を有する。この回路基板30は、導電部材10の空隙5を挟んで対向する第1腕部31と第2腕部32を備える。磁電変換素子20Aは第1腕部31に取り付けられ、磁電変換素子20Bは第2腕部32に取り付けられる。このように、一対の磁電変換素子20A,20Bを共通の回路基板30上に取り付けることで、両者を高い精度で位置決めすることが可能となり、位置ずれによる検出精度の低下を抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る電流センサ1は、例えば図4において示すように、一対の磁電変換素子20A,20Bを挟んで対向する位置に配置された一対の磁気シールド40A,40Bを有する。導電部材10及び一対の磁電変換素子20A,20Bの外側に磁気シールド40A,40Bを設けることによって、外来磁界の影響を効果的に低減することができる。
【0050】
図5は、電流センサ1における誘導磁界の方向をシミュレーションにより求めた結果の一例を示す図である。図5図14を比較すると、図5に示すシミュレーション結果の方が、導電部材10の幅方向中央付近における磁界の向きが水平に近くなっている。
【0051】
図6は、電流センサ1における誘導磁界の強さをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。図6における「Hx」,「Hy」,「Hz」は、それぞれX方向,Y方向,Z方向の磁界成分を表す。図6の縦軸は各磁界成分の強さを示し、横軸はX方向の位置[mm]を示す。横軸における20[mm]の位置が、導電部材10の幅方向の中央に対応する。
図6図15を比較すると、図6のシミュレーション結果では、導電部材10の幅方向の中央付近(横軸における20[mm]付近)においてZ方向の磁界成分Hzが略ゼロになっており、このゼロの範囲が幅方向の中央付近において2mm程度も存在している。すなわち、Z方向の磁界成分Hzが極小になる範囲が、従来に比べて格段に広くなっている。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る電流センサ1において、導電部材10は、被検出電流の流れる方向へ直線状に延伸しており、その延伸方向に対して垂直な断面が線対称な形状を有している。また、導電部材10は、第1の対称軸L1が通る空隙5を隔てて互いに離間した第1導体部11及び第1導体部11を有しており、被検出電流の分流電流が第1導体部11及び第1導体部11のそれぞれに同じ方向へ流れている。そのため、空隙5の外側の領域であって、第1の対称軸L1と平行な方向から見て空隙5と重なる領域では、空隙5に電流が流れていないことによって、空隙5を通る第1の対称軸L1と平行な方向における磁界成分(Z方向の磁界成分)が小さくなる。従って、磁電変換素子20A,20Bをこの領域に配置し、感度影響軸S2A,S2Bが第1の対称軸L1(Z方向)と平行となるような姿勢を持たせることによって、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分が小さくなり、検出感度の線形性の低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0053】
なお、上記の実施形態では、導電部材10に1つの空隙5を形成して2本の導体部(11,12)に被検出電流を分流させているが、空隙の数は更に多くてもよい。図7は、本実施形態に係る電流センサの一変形例を示す図であり、3つの空隙(5,6,7)が設けられた導電部材10Aを有する電流センサ1Aを示す。図7に示す導電部材10Aは、図1に示す導電部材10の空隙5の両側に空隙6,7を設けたものである。導電部材10Aにおける第1導体部11は、空隙6により隔てられた2つの導体部101及び102を含む。導電部材10Aにおける第2導体部12は、空隙7により隔てられた2つの導体部103,104を含む。これらの導体部により、被検出電流は4つの電流(I101,I102,I103,I104)に分流する。上記のような導電部材10Aを有する電流センサ1Aにおいても、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分を低減でき、電流センサ1と同様な効果を奏することが可能である。
【0054】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る電流センサについて説明する。
上述した第1の実施形態に係る電流センサにおいては、導電部材に空隙を形成することによって感度影響軸の磁界成分が小さくなる領域が形成されるが、本実施形態に係る電流センサにおいては、導電部材に溝を形成することによって感度影響軸の磁界成分が小さくなる領域が形成される。
【0055】
図8は、第2の実施形態に係る電流センサ1Bの構成の一例を示す図であり、導電部材10Bの延伸方向に対して垂直な方向から見た図である。図9は、第2の実施形態に係る電流センサの構成の一例を示す図であり、図8のY2−Y2線における断面図である。図10は、磁電変換素子20A,20Bが実装される回路基板30と磁気シールド40A,40Bを導電部材10Bとともに図解した図である。
本実施形態に係る電流センサ1Bは、被検出電流が流れる導電部材10Bと、その導電部材10Bに流れる被検出電流による誘導磁界を検出する磁電変換素子20A,20Bと、磁電変換素子20A,20Bの出力信号を処理する演算部50と、磁電変換素子20A,20Bが実装される回路基板30と、磁気シールド40A,40Bを有する。磁電変換素子20A,20B、演算部50、回路基板30及び磁気シールド40A,40Bは、既に説明した第1の実施形態に係る電流センサ1と同じものであるため、説明を割愛する。
【0056】
導電部材10Bは、直線状に(真っ直ぐに)延伸しており、その延伸方向に被検出電流が流れる。図8の例において、導電部材10は紙面の縦方向(Y方向)に伸び、被検出電流もこれと同じ方向に流れる。
【0057】
導電部材10の延伸方向と垂直な断面は、図9における第1の対称軸L1及び第2の対称軸L2に対して対称な形状を有する。第1の対称軸L1は図9の紙面の縦方向(Z方向)に伸び、第2の対称軸L2は図9の紙面の横方向(X方向)に伸びる。図9において、導電部材10Bの被検出電流は、紙面の表から裏の方向(Y方向)へ流れる。
【0058】
図9に示すように、被検出電流が流れる方向と垂直な導電部材10Bの断面が線対称な形状を有していることから、この断面を囲む被検出電流の磁束線も、導電部材10Bの断面と同様に、第1の対称軸L1及び第2の対称軸L2に対して線対称な形状を持った閉曲線となる。
【0059】
また、導電部材10Bは、その表面において第1の対称軸L1の方向に凹んだ一対の溝13A,13Bを有する。図9の例において、導電部材10Bは細長い板状の部材であり、溝13A,13Bは、板状部材の延伸方向(Y方向)と垂直な断面が矩形形状を有している。この溝13A,13Bには、上述した第1の対称軸L1が通る。そのため、導電部材10の延伸方向(Y方向)と垂直な溝13A,13Bの断面は、図9に示すように、第1の対称軸L1に関して対称な形状を有する。また、溝13Aと溝13Bの端面は、第2の対称軸L2に対しても対称な形状を有する。
【0060】
溝13A,13Bが形成される領域AR2において導電部材10Bの延伸方向(Y方向)と垂直な断面は、導電部材10Bの延伸方向(Y方向)の各位置において一様である。すなわち、溝13A,13Bが形成される領域AR1(図1)の任意の位置において、Y方向に垂直な断面が同一となっている。
【0061】
導電部材10Bに流れる被検出電流によって生じる磁束線は、図9の点線で示すように、溝13A,13Bの中央を通る第1の対称軸L1に対して対称な形状を持った閉曲線となる。溝13A,13Bの空間には電流が流れていないため、溝13A,13Bの付近で磁界は弱くなる。そのため、導電部材10Bを囲む磁束線は、溝13A,13Bに近づく方向へ凹んだ閉曲線となる。導電部材10Bから離れるにつれて、溝13A,13Bの方向への磁束線の凹みは小さくなり、導電部材10Bからある距離を隔てたところで、磁束線は略平らになる。磁束線が平らになるということは、溝13A,13Bを通る第1の対称軸L1と平行な方向(Z方向)における磁界成分が極小になることを意味する。
【0062】
磁電変換素子20A,20Bは、溝13A,13Bの外側の領域であって、第1の対称軸L1と平行な方向から見て溝13A,13Bと重なる領域に配置される。この領域は、溝13A,13Bの空間に電流が流れていないことによって、溝13A,13Bを通る第1の対称軸L1と平行な方向における磁界成分(Z方向の磁界成分)が小さくなっている。磁電変換素子20A,20Bは、この領域において感度影響軸S2A,S2Bが第1の対称軸L1(Z方向)と平行となる姿勢で配置される。これにより、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分が小さくなるため、検出感度の線形性の低下を抑えることができる
【0063】
磁電変換素子20A,20Bは、感度影響軸S2A,S2Bが第1の対称軸L1と重なる位置であって、第1の対称軸L1と平行な磁界成分(Z方向の磁界成分)が極小となる位置に配置される。すなわち、磁電変換素子20A,20Bは、第1の対称軸L1の上であって、導電部材10Bから適度な距離を隔てたところにそれぞれ配置される。この位置に磁電変換素子20A,20Bを配置することで、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分を極小にすることができる。
【0064】
更に、磁電変換素子20A,20Bは、第1の対称軸L1と平行な方向(Z方向)から見て、導電部材10Bの延伸方向(Y方向)における溝13A,13Bの中央(図8における領域AR2の中央)に配置される。溝13A,13Bの端部付近では、Y方向の磁界の対称性が乱れているため、Z方向の磁界成分が生じ易くなっている。溝13A,13Bの両端部から最も離れた溝13A,13Bの中央では、この対称性の乱れによる影響が緩和されるため、感度影響軸S2A,S2Bと平行なZ方向の磁界成分が抑えられる。従って、この位置に感度影響軸S2A,S2Bを配置することで、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分をより小さくすることができる。
【0065】
磁電変換素子20Aと磁電変換素子20Bは、導電部材10Bの溝13A,13Bを挟んで対向する位置に配置される。例えば図9に示すように、共通の第1の対称軸L1の上であって、導電部材10Bから略等しい距離だけ離れた位置に配置される。導電部材10Bの断面は第2の対称軸L2において線対称な形状を有しているため、磁電変換素子20Aと磁電変換素子20Bにおける被検出電流の誘導磁界の大きさは略等しくなる。
【0066】
図11は、電流センサ1Bにおける誘導磁界の方向をシミュレーションにより求めた結果の一例を示す図である。図11図14を比較すると、図11に示すシミュレーション結果の方が、導電部材10Bの幅方向中央付近における磁界の向きが水平に近くなっている。
【0067】
図12は、電流センサ1における誘導磁界の強さをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。図6に示すシミュレーション結果と同様に、横軸における20[mm]の位置が導電部材10Bの幅方向の中央に対応する。
図12図15を比較すると、図12のシミュレーション結果では、導電部材10の幅方向の中央付近においてZ方向の磁界成分Hzが略ゼロになっており、このゼロの範囲が幅方向の中央付近において1mm程度存在している。すなわち、Z方向の磁界成分Hzが極小になる範囲が、従来に比べて格段に広くなっている。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る電流センサ1Bにおいて、導電部材10Bは、被検出電流の流れる方向へ直線状に延伸しており、その延伸方向に対して垂直な断面が線対称な形状を有している。また導電部材10Bの表面には、第1の対称軸L1が通る溝13A,13Bが設けられている。そのため、溝13A,13Bの外側の領域であって、第1の対称軸L1と平行な方向から見て溝13A,13Bと重なる領域では、溝13A,13Bの空間に電流が流れていないことによって、溝13A,13Bを通る第1の対称軸L1と平行な方向における磁界成分(Z方向の磁界成分)が小さくなる。従って、磁電変換素子20A,20Bをこの領域に配置し、感度影響軸S2A,S2Bが第1の対称軸L1(Z方向)と平行となるような姿勢を持たせることによって、感度影響軸S2A,S2Bの磁界成分が小さくなり、検出感度の線形性の低下を効果的に抑制することが可能となる。
【0069】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0070】
上述した実施形態では、2つの磁電変換素子(20A,20B)の感度軸(S1A,S1B)が同一方向を向き、これらの感度影響軸(S2A,S2B)も同一方向を向く例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、2つの磁電変換素子(20A,20B)の感度軸(S1A,S1B)が逆方向を向き、これらの感度影響軸(S2A,S2B)も逆方向を向くようにしてよい。この場合、演算部50は、2つの磁電変換素子(20A,20B)の出力信号の和に応じて電流の検出値を演算する。これにより、被検出電流に応じた検出値が得られるとともに、外来磁界による検出値の誤差を和の演算によってキャンセルできる。
【0071】
上述した実施形態では、2つの磁電変換素子20A,20Bを用いて電流センサを構成する例を挙げたが、磁電変換素子の数は1つでもよいし、3以上でもよい。
【0072】
上述した実施形態では、溝13A,13Bが矩形であったが、台形でも良い。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B…電流センサ、10,10A,10B…導電部材、11…第1導電部、12…第2導電部、5,6,7…空隙、13A,13B…溝、20A,20B…磁電変換素子、30…回路基板、31…第1腕部、32…第2腕部、40A,40B…磁気シールド、50…演算部、S1A,S1B…感度軸、S2A,S2B…感度影響軸、L1…第1の対称軸、L2…第2の対称軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15