(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部は、前記一方の導電部に設けられ、前記一方の導電部とは異なる他方の導電部に対する反対側に向けて突出した凸部を含む、請求項1または請求項2に記載のセラミックヒータ。
前記凸部は、前記一方の導電部に設けられ、前記一方の導電部とは異なる他方の導電部に向けて突出した凸部を含む、請求項1または請求項2に記載のセラミックヒータ。
前記導電部に直交する方向に沿った前記凸部の長さは、0.2mm以上1.0mm以下であり、前記導電部に沿った前記凸部の長さは、0.3mm以上1.5mm以下である、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のセラミックヒータ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.実施形態
A1.グロープラグの構成
図1は、グロープラグ10の部分断面を示す説明図である。
図1には、グロープラグ10の軸心SCを境界として、紙面右側にグロープラグ10の外観形状を図示し、紙面左側にグロープラグ10の断面形状を図示した。本実施形態の説明では、グロープラグ10における
図1の紙面下側を「先端側」といい、
図1の紙面上側を「後端側」という。
【0020】
図1には、XYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸は、互いに直交する3つの空間軸として、X軸、Y軸およびZ軸を有する。X軸に沿ったX軸方向のうち、+X軸方向は、正の方向であり、−X軸方向は、負の方向である。Y軸に沿ったY軸方向のうち、+Y軸方向は、正の方向であり、−Y軸方向は、負の方向である。Z軸に沿ったZ軸方向のうち、+Z軸方向は、正の方向であり、−Z軸方向は、負の方向である。本実施形態では、Z軸は、軸心SCに沿った軸であり、+Z軸方向は後端側であり、−Z軸方向は先端側である。
図1のXYZ軸は、他の図におけるXYZ軸に対応する。
【0021】
グロープラグ10は、熱を発生させるセラミックヒータ800を備え、ディーゼルエンジンを始めとする内燃機関90の始動時における点火を補助する熱源として機能する。グロープラグ10は、セラミックヒータ800の他、中軸200と、主体金具500と、外筒700とを備える。グロープラグ10の軸心SCは、グロープラグ10を構成する各部材の軸心でもある。
【0022】
グロープラグ10の中軸200は、導電性を有する金属体である。中軸200は、軸心SCを中心に延びた円柱状を成す。中軸200は、グロープラグ10の外部から供給される電力をセラミックヒータ800へと中継する。
【0023】
本実施形態では、中軸200は、中軸200の後端側において、グロープラグ10の外部から、端子100を介して給電を受け付ける。他の実施形態では、中軸200は、中軸200の後端側において、グロープラグ10の外部から直接的に給電を受け付けてもよい。
【0024】
本実施形態では、中軸200は、中軸200の先端側において、リング600を介してセラミックヒータ800と電気的に接続される。他の実施形態では、中軸200は、中軸200の先端側において、セラミックヒータ800と直接的に接続されてもよい。
【0025】
グロープラグ10の主体金具500は、導電性を有する金属体である。主体金具500は、軸心SCを中心に延びた筒状を成す。主体金具500は、軸孔510と、工具係合部520と、雄ネジ部540とを備える。
【0026】
主体金具500の軸孔510は、軸心SCを中心に延びた貫通孔である。軸孔510の内径は、中軸200の外形よりも大きい。軸孔510の内側で、中軸200が軸心SC上に位置決めされ、軸孔510と中軸200との間には、軸孔510と中軸200とを電気的に絶縁する空隙が形成される。本実施形態では、軸孔510の後端側には、円筒状を成す絶縁部材300と、環状を成す絶縁部材400とを介して、中軸200が取り付けられる。
【0027】
主体金具500の工具係合部520は、内燃機関90に対するグロープラグ10の取り付けおよび取り外しに用いられる工具(図示しない)に係合可能に構成されている。主体金具500の雄ネジ部540は、内燃機関90に形成された雌ネジに嵌り合うことによって、内燃機関90に対して固定可能に構成されている。
【0028】
グロープラグ10の外筒700は、導電性を有する金属体である。外筒700は、軸心SCを中心に延びた筒状を成す。外筒700は、セラミックヒータ800を保持する軸孔710を備える。外筒700の後端側は、主体金具500の先端側に溶接されている。外筒700の先端側からは、セラミックヒータ800が突出する。
【0029】
グロープラグ10のセラミックヒータ800は、セラミック組成物から成る発熱素子(発熱装置)である。セラミックヒータ800は、基体810と、発熱抵抗体830とを備える。
【0030】
セラミックヒータ800の基体810は、電気絶縁性を有するセラミック材料から成る絶縁性セラミックスである。基体810には、発熱抵抗体830が埋め込まれている。基体810は、発熱抵抗体830を支持する。基体810は、グロープラグ10の外部から発熱抵抗体830を電気的に絶縁すると共に、発熱抵抗体830の熱をグロープラグ10の外部へと伝達する。
【0031】
本実施形態では、基体810を形成するセラミック材料は、窒化ケイ素(Si
3N
4)から主に成る。他の実施形態では、基体810を形成する窒化ケイ素(Si
3N
4)のうち、ケイ素(Si)の少なくとも一部がアルミニウム(Al)で置換され、窒素(N)の少なくとも一部が酸素(O)で置換されてもよい。基体810を形成するセラミック材料は、焼結助剤として、希土類酸化物(例えば、イッテルビウム(Yb)酸化物、エルビウム(Er)酸化物など)とアルミニウム(Al)酸化物とを含有してもよい。
【0032】
セラミックヒータ800の発熱抵抗体830は、導電性を有するセラミック材料から成る導電性セラミックスである。発熱抵抗体830は、通電によって発熱する。本実施形態では、発熱抵抗体830は、射出成形法によって成形された部材である。
【0033】
本実施形態では、発熱抵抗体830を形成するセラミック材料は、炭化タングステン(WC)から主に成る。本実施形態では、セラミック材料は、炭化タングステンに加え、窒化ケイ素(Si
3N
4)を含有する。セラミック材料は、55〜70質量%の炭化タングステンと、28〜35質量%の窒化ケイ素とを含有し、残りの2〜10質量%として酸化エルビウム(Er
2O
3)および酸化ケイ素(SiO
2)を含有してもよい。他の実施形態では、セラミック材料は、二ケイ化モリブデン(MoSi
2)から主に成る組成物であってもよい。
【0034】
A2.セラミックヒータの構成
図2は、セラミックヒータ800を示す説明図である。
図2には、+Y軸方向から見た発熱抵抗体830を基体810の輪郭と共に示し、基体810に対応する領域にハッチングを施した。
【0035】
図3は、セラミックヒータ800を示す説明図である。
図3には、
図2の矢視F3から見た発熱抵抗体830を基体810の輪郭と共に示し、基体810に対応する領域にハッチングを施した。
【0036】
セラミックヒータ800の発熱抵抗体830は、折返し部832と、一対の線状部834と、一対の導電部836と、2つの端子部838とを備える。
【0037】
発熱抵抗体830の折返し部832は、基体810の先端側(−Z軸方向側)に設けられている。折返し部832は、円弧状に折り返した線状を成す部位である。折返し部832は、一対の線状部834の間を接続する。
【0038】
発熱抵抗体830における一対の線状部834は、折返し部832から後端側(+Z軸方向側)へ相互に延びた部位である。一対の線状部834は、線状部834aと、線状部834bとを含む。線状部834aは、折返し部832の+X軸方向側から後端側へと線状に延びた部位であり、線状部834bは、折返し部832の−X軸方向側から後端側へと線状に延びた部位である。本実施例では、線状部834aと線状部834bとは、相互にほぼ平行に延びた部位である。本実施形態の説明では、線状部を総称する場合には符号「834」を使用し、線状部を特定する場合には符号「834a」、「834b」を使用する。
【0039】
発熱抵抗体830における一対の導電部836は、一対の線状部834の各々から後端側(+Z軸方向側)へ相互に延びた部位である。一対の導電部836は、導電部836aと、導電部836bとを含む。導電部836aは、線状部834aから後端側へと線状に延びた部位であり、導電部836bは、線状部834bから後端側へと線状に延びた部位である。本実施形態では、導電部836aと導電部836bとは、相互にほぼ平行に延びた部位である。本実施形態の説明では、導電部を総称する場合には符号「836」を使用し、導電部を特定する場合には符号「836a」、「836b」を使用する。
【0040】
発熱抵抗体830における2つの端子部838は、一対の線状部834の各々から突出し、基体810の表面に露出する。2つの端子部838は、端子部838aと、端子部838bとを含む。端子部838aは、導電部836aの後端側に形成され、導電部836aから+X軸方向に突出した部位である。端子部838bは、導電部836bの後端側に形成され、導電部836bから−X軸方向に突出した部位である。本実施形態では、端子部838bは、端子部838aより先端側に位置する。本実施形態では、セラミックヒータ800が主体金具500に組み付けられた状態で、端子部838aは中軸200と電気的に接続され、端子部838bは外筒700と電気的に接続される。本実施形態の説明では、端子部を総称する場合には符号「838」を使用し、導電部を特定する場合には符号「838a」、「838b」を使用する。
【0041】
折返し部832および線状部834の断面は、導電部836の断面より小さいため、折返し部832および線状部834の電気抵抗は、導電部836より大きい。本実施形態では、発熱抵抗体830は、通電によって線状部834を中心に発熱し、線状部834は、発熱抵抗体830の中で最も高温になる。
【0042】
図4は、セラミックヒータ800の先端側を拡大して示す説明図である。
図5は、
図4の矢視F5−F5から見たセラミックヒータ800の断面を示す説明図である。
図6は、
図4の矢視F6−F6から見たセラミックヒータ800の断面を示す説明図である。
【0043】
図2から
図5までに示すように、発熱抵抗体830の線状部834は、柱状に突出した凸部840を有する。凸部840は、線状部834aの軸C1aと線状部834bの軸C1bとを含む仮想平面TP1のうち、線状部834aと線状部834bとの間に位置する内側仮想平面TP1iを避けて線状部834から突出している。
【0044】
本実施形態では、凸部840は、2つの凸部840a1と、2つの凸部840b1とを含む。2つの凸部840a1は、それぞれ線状部834aに形成され、仮想平面TP1を挟んで相互に対向する一対の凸部である。2つの凸部840b1は、それぞれ線状部834bに形成され、仮想平面TP1を挟んで相互に対向する一対の凸部である。本実施形態の説明では、線状部834における凸部を総称する場合には符号「840」を使用し、線状部834における凸部を特定する場合には符号「840a1」、「840b1」を使用する。
【0045】
2つの凸部840a1は、線状部834aの軸C1aに直交する方向に突出している。2つの凸部840a1のうち、+Y軸方向側の凸部840a1は、線状部834aから+Y軸方向に突出し、−Y軸方向側の凸部840a1は、線状部834aから−Y軸方向に突出している。本実施形態では、線状部834aの断面形状は、仮想平面TP1を挟んで対称である。
【0046】
2つの凸部840b1は、線状部834bの軸C1bに直交する方向に突出している。2つの凸部840b1のうち、+Y軸方向側の凸部840b1は、線状部834bから+Y軸方向に突出し、−Y軸方向側の凸部840b1は、線状部834bから−Y軸方向に突出している。本実施形態では、線状部834bの断面形状は、仮想平面TP1を挟んで対称である。
【0047】
凸部840は、線状部834の断面積を増加させるため、線状部834の機械的強度を向上させる。これによって、発熱と冷却との繰返し(冷熱サイクル)で起こる線状部834の断線を抑制できる。
【0048】
図6は、
図4の矢視F6−F6から見たセラミックヒータ800の断面を示す説明図である。
図7は、
図2の矢視F7−F7から見たセラミックヒータ800の断面を示す説明図である。
図8は、
図2の矢視F8−F8から見たセラミックヒータ800の断面を示す説明図である。
【0049】
図2から
図8までに示すように、発熱抵抗体830の導電部836は、柱状に突出した凸部860を有する。本実施形態では、導電部836の凸部860は、導電部836と線状部834との断面の大きさの比に応じて、線状部834の凸部840より大きい。他の実施形態では、凸部860は、凸部840と同じ大きさであってもよいし、凸部840より小さくてもよい。
【0050】
本実施形態では、凸部860は、2つの凸部860a1と、2つの凸部860b1とを含む。2つの凸部860a1は、それぞれ導電部836aにおける線状部834a寄りの位置に形成され、導電部836aの軸C2aと導電部836bの軸C2bとを含む仮想平面TP2を挟んで相互に対向する一対の凸部である。本実施形態では、導電部836に基づく仮想平面TP2は、線状部834に基づく仮想平面TP1と同一平面である。2つの凸部860b1は、それぞれ導電部836bにおける線状部834b寄りの位置に形成され、仮想平面TP2を挟んで相互に対向する一対の凸部である。
【0051】
2つの凸部860a1は、導電部836aの軸C2aに直交する方向に突出している。2つの凸部860a1のうち、+Y軸方向側の凸部860a1は、導電部836aから+Y軸方向に突出し、−Y軸方向側の凸部860a1は、導電部836aから−Y軸方向に突出している。本実施形態では、2つの凸部860a1が位置する導電部836aの断面形状は、仮想平面TP2を挟んで対称である。
【0052】
2つの凸部860b1は、導電部836bの軸C2bに直交する方向に突出している。2つの凸部860b1のうち、+Y軸方向側の凸部860b1は、導電部836bから+Y軸方向に突出し、−Y軸方向側の凸部860b1は、導電部836bから−Y軸方向に突出している。本実施形態では、2つの凸部860b1が位置する導電部836bの断面形状は、仮想平面TP2を挟んで対称である。
【0053】
凸部860a1,860b1は、線状部834a寄りの位置に形成されているため、冷熱サイクルに起因して線状部834に発生する熱応力を緩和する。これによって、線状部834の断線を抑制できる。
【0054】
本実施形態では、凸部860は、更に、2つの凸部860a2と、2つの凸部860b2とを含む。2つの凸部860a2は、2つの凸部860a1より後端側に位置する点を除き、2つの凸部860a1と同様である。2つの凸部860b2は、2つの凸部860b1より後端側に位置する点を除き、2つの凸部860b1と同様である。
【0055】
本実施形態では、凸部860は、更に、2つの凸部860a3と、2つの凸部860b3とを含む。2つの凸部860a3は、2つの凸部860a2より後端側であって導電部836aの中央に位置する点を除き、2つの凸部860a1と同様である。2つの凸部860b3は、2つの凸部860b2より後端側であって導電部836bの中央に位置する点を除き、2つの凸部860b1と同様である。
【0056】
本実施形態では、凸部860は、更に、2つの凸部860a4と、2つの凸部860b4とを含む。2つの凸部860a4は、2つの凸部860a3より後端側に位置する点を除き、2つの凸部860a1と同様である。2つの凸部860b4は、2つの凸部860b3より後端側であって導電部836bにおける端子部838bが突出する部位に位置する点を除き、2つの凸部860b1と同様である。
【0057】
本実施形態では、凸部860は、更に、2つの凸部860a5と、2つの凸部860b5とを含む。2つの凸部860a5は、2つの凸部860a4より後端側であって導電部836aにおける端子部838aが突出する部位に位置する点を除き、2つの凸部860a1と同様である。2つの凸部860b5は、2つの凸部860b4より後端側に位置する点を除き、2つの凸部860b1と同様である。
【0058】
本実施形態では、導電部836aにおいて、凸部860a1,860a2,860a3,860a4は、端子部838aより先端側(−Z軸方向側)に設けられた凸部である。凸部860a1,860a2,860a3,860a4は、導電部836aにおいて端子部838aが突出する部位に発生する応力集中を緩和する。これによって、端子部838aが突出した導電部836aにおけるクラックの発生を抑制できる。
【0059】
本実施形態では、導電部836bにおいて、凸部860b1,860b2,860b3は、端子部838bより先端側(−Z軸方向側)に設けられた凸部である。凸部860b1,860b2,860b3は、導電部836bにおいて端子部838bが突出する部位に発生する応力集中を緩和する。これによって、端子部838bが突出した導電部836bにおけるクラックの発生を抑制できる。
【0060】
本実施形態の説明では、導電部836における凸部を総称する場合には符号「860」を使用し、導電部836における凸部を特定する場合には符号「860a1」、「860b1」、「860a2」、「860b2」、・・・、「860a5」、「860b5」を使用する。
【0061】
端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制する観点から、凸部860の1つあたりの体積Vcは、0.1×10
-3mm
3以上88.5×10
-3mm
3未満であることが好ましい。「凸部860の1つあたりの体積」とは、1つの凸部860が導電部836に占める空間の大きさである。体積Vcの評価については後述する。
【0062】
端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制する観点から、凸部860が突出する方向に凸部860を投影した投影面積Scは、0.05mm
2以上1.18mm
2以下であることが好ましい。投影面積Scの評価については後述する。
【0063】
端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制する観点から、導電部836の軸に直交する方向に沿った凸部860の長さLmは、0.2mm以上1.0mm以下であり、導電部836の軸に沿った凸部860の長さLnは、0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。長さLmおよび長さLnの評価については後述する。
【0064】
図9は、凸部860の詳細を示す説明図である。本実施形態では、
図9(A)に示すように、凸部860の側面861は、凸部860が突出する方向に沿った面であり、凸部860の端面862は、凸部860が突出する方向に膨張した面である。他の実施形態では、
図9(B)に示すように、凸部860の端面862は、平坦な面であってもよい。他の実施形態では、
図9(C)に示すように、凸部860の端面862は、陥没した面であってもよい。
【0065】
本実施形態では、凸部840の形状は、
図9(A)に示す凸部860の形状と同様である。他の実施形態では、凸部840の形状は、
図9(B)に示す凸部860の形状と同様であってもよいし、
図9(C)に示す凸部860の形状と同様であってもよい。
【0066】
A3.変形例
図10は、第1変形例のセラミックヒータ801を示す説明図である。第1変形例のセラミックヒータ801は、発熱抵抗体830の線状部834に凸部840が設けられていない点、発熱抵抗体830の導電部836に凸部860a3,860b3を除く凸部860が設けられていない点を除き、
図2のセラミックヒータ800と同様である。
【0067】
図11は、第2変形例のセラミックヒータ802を示す説明図である。
図12は、
図11の矢視F12−F12から見たセラミックヒータ802の断面を示す説明図である。第2変形例のセラミックヒータ802は、2つの凸部860a3および2つの凸部860b3に代えて、凸部860a6および凸部860b6が設けられている点を除き、第1変形例のセラミックヒータ801と同様である。第2変形例の凸部860a6は、導電部836aに設けられ、導電部836bに対する反対側(+X軸方向)に向けて突出した凸部である点を除き、
図2の凸部860と同様である。第2変形例の凸部860b6は、導電部836bに設けられ、導電部836aに対する反対側(−X軸方向)に向けて突出した凸部である点を除き、
図2の凸部860と同様である。本実施形態では、凸部860a6および凸部860b6が設けられている位置において、導電部836a,836bの断面形状は、仮想平面TP2を挟んで対称である。
【0068】
図13は、第3変形例のセラミックヒータ803を示す説明図である。
図14は、
図13の矢視F14−F14から見たセラミックヒータ803の断面を示す説明図である。第3変形例のセラミックヒータ803は、2つの凸部860a3および2つの凸部860b3に代えて、凸部860a7および凸部860b7が設けられている点を除き、第1変形例のセラミックヒータ801と同様である。第3変形例の凸部860a7は、導電部836aに設けられ、導電部836bに向けて突出した凸部である点を除き、
図2の凸部860と同様である。第3変形例の凸部860b7は、導電部836bに設けられ、導電部836aに向けて突出した凸部である点を除き、
図2の凸部860と同様である。本実施形態では、凸部860a7および凸部860b7が設けられている位置において、導電部836a,836bの断面形状は、仮想平面TP2を挟んで対称である。
【0069】
図15は、第4変形例のセラミックヒータ804の断面を示す説明図である。第4変形例のセラミックヒータ804は、2つの凸部860a3および2つの凸部860b3に代えて、凸部860a8および凸部860b8が設けられている点を除き、第1変形例のセラミックヒータ801と同様である。第4変形例の凸部860a8は、導電部836aに設けられ、−X軸方向かつ+Y軸方向に突出した部位である。凸部860a8の側面861a8は、射出成形の作業性を考慮して凸部860a8が先細りとなるように傾斜した面であり、凸部860a8の端面862a8は、平坦な面である。第4変形例の凸部860b8は、導電部836bに設けられ、+X軸方向かつ+Y軸方向に突出した部位である。凸部860b8の側面861b8は、射出成形の作業性を考慮して凸部860b8が先細りとなるように傾斜した面であり、凸部860b8の端面862b8は、平坦な面である。
【0070】
図16は、第5変形例のセラミックヒータ805の断面を示す説明図である。第5変形例のセラミックヒータ805は、2つの凸部860a3および2つの凸部860b3に代えて、凸部860a9および凸部860b9が設けられている点を除き、第1変形例のセラミックヒータ801と同様である。第5変形例の凸部860a9は、導電部836aに設けられ、+X軸方向かつ+Y軸方向に突出した部位である。凸部860a9の側面861a9は、射出成形の作業性を考慮して凸部860a9が先細りとなるように傾斜した面であり、凸部860a9の端面862a9は、平坦な面である。第5変形例の凸部860b9は、導電部836bに設けられ、−X軸方向かつ+Y軸方向に突出した部位である。凸部860b9の側面861b9は、射出成形の作業性を考慮して凸部860b9が先細りとなるように傾斜した面であり、凸部860b9の端面862b9は、平坦な面である。
【0071】
A4.セラミックヒータの評価
図17は、セラミックヒータを評価した結果を示す表である。
図17の評価試験では、試験者は、発熱抵抗体830の形状が異なるセラミックヒータである試料1〜10について評価を行った。
【0072】
図18は、試料1のセラミックヒータ901を示す説明図である。試料1のセラミックヒータ901は、発熱抵抗体830に凸部840および凸部860が設けられていない点を除き、
図2のセラミックヒータ800と同様である。
【0073】
図19は、試料2のセラミックヒータ902を示す説明図である。試料2のセラミックヒータ902は、2つの凸部860a3および2つの凸部860b3に代えて、2つの凹部960a2および2つの凹部960b2が設けられている点を除き、第1変形例のセラミックヒータ801と同様である。凹部960a2は、導電部836aに設けられ、凸部860a3に対応する位置を陥没させた窪みである。凹部960b2は、導電部836bに設けられ、凸部860b3に対応する位置を陥没させた窪みである。
【0074】
図20は、試料3のセラミックヒータ903を示す説明図である。
図21は、
図20の矢視F21−F21から見たセラミックヒータ903の断面を示す説明図である。試料3のセラミックヒータ903は、導電部836aの+X軸方向側に−Z軸方向から+Z軸方向にわたって凸条970が設けられているとともに、導電部836bの−X軸方向側に−Z軸方向から+Z軸方向にわたって凸条970が設けられている点を除き、試料1のセラミックヒータ901と同様である。試料3の凸条970は、突出した細長いすじであり、導電部836aの+X軸方向側に−Z軸方向から+Z軸方向にわたって突出しているとともに、導電部836bの−X軸方向側に−Z軸方向から+Z軸方向にわたって突出している。
【0075】
試料4〜8は、第1変形例のセラミックヒータ801に相当する(
図10を参照)。試料9は、第2変形例のセラミックヒータ802に相当する(
図11、
図12を参照)。試料10は、第3変形例のセラミックヒータ803に相当する(
図13、
図14を参照)。
【0076】
試験者は、試料1〜10について、導電部836における凸部について、凸部の1つあたりの体積Vcと、凸部が突出する方向に凸部を投影した投影面積Scと、導電部836の軸に直交する方向に沿った凸部の長さLmと、導電部836の軸に沿った凸部の長さLnとを測定した。試料2については、導電部836における凹部について、他の試料の凸部と同様に各値を測定した。
図17の表には、試料2の体積Vcを負の値で表した。試料3については、凸条970の長さLmについてのみ測定した。
【0077】
試験者は、100個づつ作製した各試料について、導電部836におけるクラックの有無を確認することによって、導電部836にクラックが発生した個数の割合であるクラック発生率を求めた。試験者は、次の評価基準に基づいてクラック発生率Rcを評価した。
○(良):Rc<1%
△(可):1%≦Rc<4%
×(劣):4%≦Rc
【0078】
試験者は、各試料について、通電時の温度特性が試料1と比較して変化するか否かを確認した。例えば、導電部836の電気抵抗が大き過ぎる場合、導電部836と線状部834との抵抗割合の関係から、発熱抵抗体830の先端側における発熱量が低下する。これによって、通電時の温度特性が変化する。試験者は、次の評価基準に基づいて温度特性を評価した。
○(良):試料1と比較して温度特性に変化なし
△(可):試料1と比較して温度特性に変化あり
【0079】
試料2のクラック発生率Rcは、試料1より倍増した。この結果は、導電部836における凹部960a2,960b2によって導電部836の断面積が小さくなるため、導電部836の機械的強度が試料1と比較して低下することに起因すると考えられる。このように、導電部836における凹部960a2,960b2が導電部836におけるクラックの発生を増加させることが分かる。
【0080】
試料3のクラック発生率Rcは、試料1と同等であった。これによって、導電部836における凸条970は、導電部836におけるクラックの抑制に寄与しないことが分かる。
【0081】
試料4〜8のクラック発生率Rcは、試料1より低下した。この結果は、仮想平面TP2を挟んで対向する一対の凸部860によって、試料1と比較して、導電部836における端子部838の周囲に発生する応力集中が緩和されることに起因すると考えられる。試料8では、試料1と比較して温度特性に変化があった。この結果は、試料8における凸部860の体積Vcが比較的に大きいため、凸部860を通じて拡散される熱量が比較的に多くなることに起因すると考えられる。
【0082】
試料9のクラック発生率Rcは、試料1より低下した。この結果は、他方の導電部836に対する反対側に向けて突出した凸部860によって、試料1と比較して、導電部836における端子部838の周囲に発生する応力集中が緩和されることに起因すると考えられる。
【0083】
試料10のクラック発生率Rcは、試料1より低下した。この結果は、他方の導電部836に向けて突出した凸部860によって、試料1と比較して、導電部836における端子部838の周囲に発生する応力集中が緩和されることに起因すると考えられる。
【0084】
試料4〜10の結果から、少なくとも、凸部860の体積Vcは、0.1×10
-3mm
3以上88.5×10
-3mm
3未満であれば、クラック発生率Rcを低減できることが分かる。試料4〜10の結果から、少なくとも、凸部860の投影面積Scは、0.05mm
2以上1.18mm
2以下であれば、クラック発生率Rcを低減できることが分かる。試料5〜11の結果から、少なくとも、凸部840の長さLmは、0.2mm以上1.0mm以下であり、凸部840の長さLnは、0.3mm以上1.5mm以下であれば、クラック発生率Rcを低減できることが分かる。
【0085】
A5.効果
以上説明した実施形態のセラミックヒータ800において、導電部836aは、柱状に突出した凸部840として、端子部838aより先端側に設けられた凸部860a1,860a2,860a3,860a4を有するとともに、導電部836bは、柱状に突出した凸部840として、端子部838bより先端側に設けられた凸部860b1,860b2,860a3を有する。そのため、端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制できる。その結果、セラミックヒータ800の耐久性を向上させることができる。変形例のセラミックヒータ801,802,803,804,805についても同様である。
【0086】
また、セラミックヒータ800において、凸部860は、導電部836の軸に直交する方向に突出している。そのため、成形性に比較的に優れた凸部860の形状によって、端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制できる。変形例のセラミックヒータ801,802,803,804,805についても同様である。
【0087】
また、セラミックヒータ800において、端子部838より先端側に設けられた凸部860は、仮想平面TP2を挟んで対向する一対の凸部860である。そのため、成形性に比較的に優れた凸部860の形状によって、端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制できる。変形例のセラミックヒータ801についても同様である。
【0088】
また、第2変形例のセラミックヒータ802において、凸部860は、他方の導電部836に対する反対側に向けて突出した凸部860a6,860b6である。そのため、成形性に比較的に優れた凸部860a6,860b6の形状によって、端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制できる。
【0089】
また、第3変形例のセラミックヒータ803において、凸部860は、他方の導電部836に向けて突出した凸部860a7,860b7である。そのため、成形性に比較的に優れた凸部860a7,860b7の形状によって、端子部838が突出した導電部836におけるクラックの発生を抑制できる。
【0090】
また、セラミックヒータ800において、凸部860は、導電部836における端子部838寄りの位置に形成された凸部860a4,860b3と、導電部836における線状部834寄りの位置に形成された凸部860a1,860b1とを含む。そのため、凸部860a4,860b3によって導電部836におけるクラックの発生を抑制するとともに、凸部860a1,860b1によって冷熱サイクルに対する線状部834の耐久性を向上させることができる。
【0091】
B.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0092】
線状部834の凸部840は、内側仮想平面TP1iを避けて線状部834から突出していればよく、いずれの方向に突出していてもよい。導電s部836の凸部860は、導電部836から突出していればよく、いずれの方向に突出していてもよい。凸部860は、導電部836aと導電部836bとの一方のみに形成されていてもよい。凸部860は、Y軸方向に突出している場合であっても、仮想平面TP2を挟んで一対となる態様に限らず、単独で形成されていてもよい。