特許第6144648号(P6144648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144648
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両用ペダル装置の後退防止装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/32 20080401AFI20170529BHJP
【FI】
   G05G1/32
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-122877(P2014-122877)
(22)【出願日】2014年6月13日
(65)【公開番号】特開2016-4334(P2016-4334A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】津隈 智弘
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−334889(JP,A)
【文献】 特開2006−103501(JP,A)
【文献】 特開平10−236335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルと、正面衝突時に車両後方側へ変位する変位量が該ダッシュパネルよりも小さい可能性が高い車体側部材と、に跨がって配設されているペダルブラケットと、
該ペダルブラケットに第1支持軸の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が車両前方側へ踏込み操作される操作ペダルと、
前記ペダルブラケットに前記第1支持軸と平行な第2支持軸の軸心まわりに回動可能に配設されるとともに、連結リンクを介して前記操作ペダルに連結され、該操作ペダルの踏込み操作に連動して機械的に出力方向へ回動させられることにより、所定の出力部材を車両前側へ変位させる中間レバーと、
を有する車両用ペダル装置に関し、前記ダッシュパネルが運転席側へ後退変位した時に前記操作ペダルの踏部が該運転席側へ後退することを抑制する後退防止装置において、
前記中間レバーには連結ピンを介して前記連結リンクが連結される連結部位にピン受け部が設けられ、該連結ピンが該ピン受け部に着座させられて、前記操作ペダルの踏込み操作力が該連結ピンから該ピン受け部を介して該中間レバーに伝達されるとともに、
該ピン受け部が設けられた前記連結部位には、前記連結ピンの離脱を阻止して連結状態を維持する離脱防止部が設けられている一方、
前記操作ペダルには、前記中間レバーが初期位置から前記出力方向と逆方向へ回動させられた場合に、該中間レバーおよび該操作ペダルの相対回動に基づいて前記離脱防止部に当接させられ、該離脱防止部を変形、破断、変位、または脱落させて前記連結ピンを前記ピン受け部から離脱させる当接部が設けられている
ことを特徴とする車両用ペダル装置の後退防止装置。
【請求項2】
前記離脱防止部は、前記中間レバーと別体に構成されている別部材で、前記ピン受け部との間で前記連結ピンを保持するストッパ部と、前記中間レバーに一体的に取り付けられる取付部と、前記当接部に当接させられた際に変形乃至は破断させられて前記ストッパ部を前記ピン受け部から離間させて前記連結ピンの離脱を許容する脆弱部と、を一体に備えている離脱防止部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ペダル装置の後退防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルが運転席側へ後退変位した時に操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制する車両用ペダル装置の後退防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) ダッシュパネルと、正面衝突時に車両後方側へ変位する変位量がそのダッシュパネルよりも小さい可能性が高い車体側部材と、に跨がって配設されているペダルブラケットと、(b) そのペダルブラケットに第1支持軸の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が車両前方側へ踏込み操作される操作ペダルと、(c) 前記ペダルブラケットに前記第1支持軸と平行な第2支持軸の軸心まわりに回動可能に配設されるとともに、連結リンクを介して前記操作ペダルに連結され、その操作ペダルの踏込み操作に連動して機械的に出力方向へ回動させられることにより、所定の出力部材を車両前側へ変位させる中間レバーと、を有する車両用ペダル装置に関し、(d) 前記ダッシュパネルが運転席側へ後退変位した時に前記操作ペダルの踏部がその運転席側へ後退することを抑制する後退防止装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図10は、このような車両用ペダル装置の後退防止装置の一例で、車両用のブレーキペダル装置100に関するものである。このブレーキペダル装置100は、(a) ダッシュパネル102に配設されている第1ペダルブラケット104と、(b) 第1ペダルブラケット104に第1支持軸106の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部108が車両前側へ踏込み操作される操作ペダル110と、(c) 前記第1ペダルブラケット104に前記第1支持軸106と平行な第2支持軸112の軸心まわりに回動可能に配設されるとともに、連結リンク114を介して前記操作ペダル110に連結され、その操作ペダル110に連動して機械的に出力方向へ回動させられることにより、ダッシュパネル102から突き出す出力部材116を車両前側へ変位させる中間レバー118と、を備えている。出力部材116は、ブレーキブースタ120のオペレーティングロッドで、操作ペダル110が踏込み操作されると中間レバー118を介してブレーキブースタ120内に押し込まれる。なお、ダッシュパネル102よりも運転席側のインパネリインフォースメント等の車体側部材122には第2ペダルブラケット105が配設され、第1ペダルブラケット104と共に第1支持軸106を支持している。すなわち、第1ペダルブラケット104および第2ペダルブラケット105は、第1支持軸106の両側部で互いに重ね合わされて共締めされ、相互に支え合うように配設されている。
【0004】
そして、上記車体側部材122には後退防止部材124が設けられており、車両衝突時のダッシュパネル102および車体側部材122の後退変位量L1、L2の相違(L1>L2)に基づいて中間レバー118の突起126が後退防止部材124に当接させられると、図10の(b) に矢印Aで示すように中間レバー118が出力部材116を押圧する出力方向(車両前側)へ相対的に回動させられる。この中間レバー118の回動に伴い、連結リンク114を介して連結されている操作ペダル110は、矢印Bで示すように踏込み方向へ回動させられ、踏部108の運転席側への後退が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−8698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の車両用ペダル装置の後退防止装置は、中間レバー118が後退防止部材124に当接させられることにより、相対的に出力部材116を車両前側へ押圧しながら出力方向へ回動することを前提としている。このため、衝突時の各部の変形などで出力部材116をブレーキブースタ120内に押し込むことができないと、中間レバー118を出力方向へ回動させることができず、操作ペダル110を踏込み方向へ回動させて踏部108の後退を抑制する後退防止作用が適切に得られない可能性があった。
【0007】
また、インパネリインフォースメント等の車体側部材122に設けられた後退防止部材124に中間レバー118が当接させられることにより、操作ペダル110を踏込み方向へ回動させて踏部108の後退を抑制するため、後退防止機能を有する車両用ペダル装置の設計に際してその車体側部材122との位置関係を考慮する必要があり、車両毎に設計変更が必要になるなど設計が面倒でコスト高になるという別の問題もある。
【0008】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、出力部材の押込み不可などで中間レバーを出力方向へ回動させることができない場合でも後退防止作用が適切に得られるとともに設計が容易で安価な後退防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) ダッシュパネルと、正面衝突時に車両後方側へ変位する変位量がそのダッシュパネルよりも小さい可能性が高い車体側部材と、に跨がって配設されているペダルブラケットと、(b) そのペダルブラケットに第1支持軸の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が車両前方側へ踏込み操作される操作ペダルと、(c) 前記ペダルブラケットに前記第1支持軸と平行な第2支持軸の軸心まわりに回動可能に配設されるとともに、連結リンクを介して前記操作ペダルに連結され、その操作ペダルの踏込み操作に連動して機械的に出力方向へ回動させられることにより、所定の出力部材を車両前側へ変位させる中間レバーと、を有する車両用ペダル装置に関し、(d) 前記ダッシュパネルが運転席側へ後退変位した時に前記操作ペダルの踏部がその運転席側へ後退することを抑制する後退防止装置において、(e) 前記中間レバーには連結ピンを介して前記連結リンクが連結される連結部位にピン受け部が設けられ、その連結ピンがそのピン受け部に着座させられて、前記操作ペダルの踏込み操作力がその連結ピンからそのピン受け部を介してその中間レバーに伝達されるとともに、(f) そのピン受け部が設けられた前記連結部位には、前記連結ピンの離脱を阻止して連結状態を維持する離脱防止部が設けられている一方、(g) 前記操作ペダルには、前記中間レバーが初期位置から前記出力方向と逆方向へ回動させられた場合に、それ等の中間レバーおよび操作ペダルの相対回動に基づいて前記離脱防止部に当接させられ、その離脱防止部を変形、破断、変位、または脱落させて前記連結ピンを前記ピン受け部から離脱させる当接部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
第2発明は、第1発明の車両用ペダル装置の後退防止装置において、前記離脱防止部は、前記中間レバーと別体に構成されている別部材で、前記ピン受け部との間で前記連結ピンを保持するストッパ部と、前記中間レバーに一体的に取り付けられる取付部と、前記当接部に当接させられた際に変形乃至は破断させられて前記ストッパ部を前記ピン受け部から離間させて前記連結ピンの離脱を許容する脆弱部と、を一体に備えている離脱防止部材であることを特徴とする。
なお、「変形乃至は破断」とは、変形或いは破断だけでも良いが、変形して破断する場合も含む趣旨である。
【発明の効果】
【0011】
このような車両用ペダル装置の後退防止装置においては、連結リンクの連結ピンが中間レバーのピン受け部に着座させられ、操作ペダルの踏込み操作力がその連結ピンからピン受け部を介して中間レバーに伝達されるとともに、離脱防止部によって連結ピンの離脱が阻止される一方、車両衝突時等にダッシュパネルが後退変位させられた際に、中間レバーが初期位置から逆方向へ回動させられると、上記離脱防止部が操作ペダルの当接部に当接させられて変形、破断、変位、または脱落させられ、連結ピンがピン受け部から離脱させられる。これにより、連結リンクによる操作ペダルと中間レバーとの連結が解除され、中間レバーの逆方向への回動に拘らず操作ペダルの運転席側への回動が抑制されて、踏部の後退を抑制する後退防止作用が安定して得られるようになる。
【0012】
また、車両衝突時等にダッシュパネルが後退変位させられた際に、中間レバーの逆方向への回動に伴う操作ペダルとの相対回動に基づいて離脱防止部が変形等させられることにより、連結ピンがピン受け部から離脱することが許容されるため、車体側部材(インパネリインフォースメントなど)との位置関係を考慮する必要がなく、ペダルブラケットに組み付けられる操作ペダルアッシーのみで後退防止作用を実現することが可能で、設計の自由度が高いとともに設計変更などが容易で安価に構成できる。
【0013】
第2発明では、上記離脱防止部が中間レバーと別体に構成されている別部材で、操作ペダルの当接部に当接させられた際に脆弱部が変形乃至は破断して前記ピン受け部から連結ピンが離脱することを許容するため、中間レバーに離脱防止部を一体に形成する場合に比較して、当接部との当接に伴って連結ピンをピン受け部から離脱させるための脆弱部等の設計の自由度や材質の選択の自由度が高く、各種の車両用ペダル装置に対して容易に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用されたブレーキペダル装置の概略構成を示す左側面図である。
図2図1におけるII部すなわち離脱防止部材や当接部が設けられた後退防止装置部分を拡大して示した側面図である。
図3図2の中間レバーを単独で示した側面図である。
図4】中間レバーに一体的に固設される離脱防止部材の斜視図である。
図5図1において操作ペダルが踏込み操作された状態を示す左側面図である。
図6図5におけるVI部すなわち後退防止装置部分を拡大して示した側面図である。
図7図1において車両衝突時にダッシュパネルが後退変位させられた状態を示す左側面図である。
図8図7におけるVIII部すなわち後退防止装置部分を拡大して示した側面図である。
図9図8における離脱防止部材を拡大して単独で示した側面図である。
図10】従来のブレーキペダル装置の後退防止装置を説明する図で、衝突前の状態と衝突後の状態とを比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、例えば油圧式ブレーキのブレーキブースタのオペレーティングロッドが出力部材として中間レバーに連結される常用ブレーキ用のブレーキペダル装置など、出力部材がダッシュパネルから車室内に突き出すように配設されて中間レバーに回動可能に連結される車両用ペダル装置に好適に適用される。ペダルブラケットは、単一のペダルブラケットをダッシュパネルおよび車体側部材に跨がって取り付けるものでも良いが、ダッシュパネルおよび車体側部材にそれぞれ固設された2つのペダルブラケットが、第1支持軸および/または第2支持軸が配設される部分で重ね合わされて共締めされることにより一体的に連結されるものでも良い。このペダルブラケットは、車両衝突時にダッシュパネルおよび車体側部材の後退変位量の相違に基づいて変形させられ、第2支持軸に配設された中間レバーは、ダッシュパネルと略一体的に後退させられる出力部材の後退変位に伴って初期位置から逆方向へ回動させられる。
【0016】
上記車体側部材は、ダッシュパネルよりも車両後方側のインパネリインフォースメント(インストルメントパネルの補強部材)やカウルブラケットなどで、正面衝突時等の車両前方からの大荷重入力時に運転席側すなわち車両後方側へ変位する可能性或いは変位量がダッシュパネルに比較して少ない部材である。中間レバーは、例えば上下方向に配設されるとともに、上部に出力部材が連結されて車両前側へ押圧するように、上下方向の中間部または下端部においてペダルブラケットに回動可能に配設される。中間レバーは、例えば操作ペダルよりも車両前側に配設されるが、操作ペダルの上方に配設することもできるなど、種々の態様が可能である。
【0017】
中間レバーに設けられるピン受け部は、連結リンクを介して操作ペダルの踏込み操作力が加えられる部分に設けられ、その踏込み操作力を受け止めることができるように構成され、例えば連結ピンの外周面と略等しい曲率の円弧形状が望ましいが、連結ピンを位置決めできればV字形状などでも良い。離脱防止部は、ピン受け部との間で連結ピンを離脱不能に保持するもので、ピン受け部と共に連結ピンの全周を囲むように設けることもできるが、連結ピンの直径寸法以下の開口(隙間)があっても良い。この離脱防止部には、操作ペダルの当接部と当接させられることにより、変形、破断、変位、或いは脱落するように、必要に応じてV溝やミシン穴、スリット、切欠等が形成された脆弱部が設けられる。離脱防止部が中間レバーと別部材で、当接部との当接により溶接等による取付部位から脱落する場合、その取付部位が脆弱部である。離脱防止部の変位は回転やスライド移動などである。
【0018】
離脱防止部は、第2発明の離脱防止部材のように中間レバーと別体に構成され、中間レバーに溶接やねじ締結、リベットなどで一体的に取り付けられるものでも良いが、中間レバーに一体に設けることも可能である。第2発明の離脱防止部材は、ピン受け部との間で連結ピンを保持するストッパ部、取付部、および脆弱部を備えているが、離脱防止部を中間レバーに一体に設ける場合も、ストッパ部や脆弱部等を設けて構成することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を説明する図で、車両の左側から見た左側面図であり、図2図1におけるII部の拡大図である。ブレーキペダル装置10は車両用ペダル装置に相当し、エンジンルームと車室内とを区切るダッシュパネル12には第1ペダルブラケット14が一体的に固定されており、操作ペダル18が略水平で且つ車両幅方向と略平行な第1支持軸20まわりの回動可能に配設されている。操作ペダル18は、上端部において第1支持軸20の軸心まわりに回動可能に支持されており、下端部に設けられた踏部22が車両前方側(図1の左方向)へ踏込み操作されるようになっている。
【0020】
第1ペダルブラケット14にはまた、操作ペダル18よりも車両の前側に、第1支持軸20と平行な第2支持軸24まわりに回動可能に中間レバー26が配設されている。中間レバー26は、下端部において第2支持軸24の軸心まわりに回動可能に支持されて上方へ延び出しており、上下の中間位置で、連結リンク28を介して操作ペダル18に連結されている。中間レバー26の上端部には、ブレーキブースタ30のオペレーティングロッド32が連結されており、操作ペダル18の踏込み操作に連動して連結リンク28を介して機械的に第2支持軸24の左回り方向(出力方向)へ回動させられることにより、オペレーティングロッド32を前方へ押圧してブレーキ力を発生させる。ブレーキブースタ30はダッシュパネル12のエンジンルーム側に一体的に固設されており、オペレーティングロッド32は、そのダッシュパネル12から車室内へ突き出すように配設されている。オペレーティングロッド32は出力部材に相当する。
【0021】
ダッシュパネル12よりも運転席側に位置するインパネリインフォースメント34には、第2ペダルブラケット36が一体的に固設されている。第2ペダルブラケット36は、第1支持軸20の両側部で前記第1ペダルブラケット14と重ね合わされ、ボルト等により共締めされており、互いに支え合うように一体的に連結されている。これにより、ペダルブラケットとして必要な所定の強度や剛性が確保されるようになっている。インパネリインフォースメント34は車体側部材に相当するもので、一般に、正面衝突時等の車両前方からの大荷重入力時に運転席側すなわち車両後方側へ変位する可能性或いは変位量がダッシュパネル12よりも少ない。図1はペダルブラケット14、36を仮想線で示し、その内側の構造が分かるように示した図である。
【0022】
前記連結リンク28は、その両端部においてそれぞれ第1支持軸20と平行な第1連結ピン40、第2連結ピン42を介して、操作ペダル18、中間レバー26に相対回動可能に連結されている。連結リンク28を仮想線で示した図2から明らかなように、操作ペダル18側の第1連結ピン40は、操作ペダル18の予め定められたリンク連結部位に設けられた連結穴44に、軸心まわりに回動可能に配設されている。また、中間レバー26側の第2連結ピン42は、中間レバー26のリンク連結部位に設けられたピン受け部46に着座させられているとともに、中間レバー26に一体的に固設された離脱防止部材48によってピン受け部46からの離脱が阻止されるようになっている。この第2連結ピン42が、連結リンク28を中間レバー26に連結する連結ピンで、離脱防止部材48は離脱防止部に相当する。
【0023】
図3は、離脱防止部材48が固設された中間レバー26を単独で示した側面図で、図4は、その離脱防止部材48を単独で示した斜視図である。中間レバー26に設けられたピン受け部46は、連結リンク28を介して操作ペダル18の踏込み操作力が加えられる部分に設けられているとともに、その踏込み操作力を受け止めることができるように、第2連結ピン42の外周面と略等しい曲率の円弧形状を成している。これにより、踏込み操作力によって第2連結ピン42がピン受け部46に押圧されると、その第2連結ピン42はピン受け部46に安定して着座させられるように位置決めされ、踏込み操作力が確実にピン受け部46から中間レバー26に伝達される。
【0024】
離脱防止部材48は金属板材を曲げ加工したもので、中間レバー26を跨ぐように断面U字形状を成しており、背部50から略平行に延び出すL字形状の一対の側壁52、54を備えている。一対の側壁52、54のL字形状の背部50側の一端部、すなわち図4において右上に位置する部分は、中間レバー26に固設される取付部56で、前記ピン受け部46の近傍において中間レバー26の両側面に密着するように重ね合わされ、溶接等により一体的に接合される。また、一対の側壁52、54のL字形状の他端部、すなわち図4において下方に位置して背部50から左方向へ突き出す部分は、前記ピン受け部46との間で第2連結ピン42を保持するストッパ部58で、第2連結ピン42の外周面と略等しい曲率の円弧が設けられている。このストッパ部58の先端と中間レバー26との間には開口S(図2参照)が存在するが、この開口Sは第2連結ピン42の直径よりも小さく、第2連結ピン42はストッパ部58とピン受け部46との間に隙間が殆ど無い状態で回転可能に位置決めされて離脱不能に保持される。
【0025】
このように第2連結ピン42がストッパ部58とピン受け部46との間に保持されることにより、連結リンク28は第2連結ピン42を介して中間レバー26に連結され、通常の操作ペダル18の踏込み操作時および踏込み解除時には、それ等の操作ペダル18および中間レバー26は連動してそれぞれ第1支持軸20、第2支持軸24の軸心まわりに回動させられる。図5および図6は、操作ペダル18が踏込み操作された状態で、中間レバー26は操作ペダル18の踏込み操作に連動して連結リンク28を介して第2支持軸24の左回り方向へ回動させられる。また、この時の踏込み操作力は、図6に白抜き矢印で示すように、第1連結ピン40から連結リンク28を介して第2連結ピン42に伝達され、その第2連結ピン42からピン受け部46を介して確実に中間レバー26に伝達される。図6図5におけるVI部の拡大図で、前記図2に対応する側面図である。
【0026】
一方、図7および図8に示すように、車両の正面衝突時にブレーキブースタ30等と共にダッシュパネル12が後退変位させられると、そのダッシュパネル12とインパネリインフォースメント34とに跨がって配設されているペダルブラケット14、36は、インパネリインフォースメント34の後退変位量がダッシュパネル12よりも少ないことから、主に第1ペダルブラケット14のダッシュパネル12に近い部分が座屈変形させられる。このため、第1支持軸20および第2支持軸24の後退変位量はインパネリインフォースメント34と同様に比較的小さく、オペレーティングロッド32がダッシュパネル12と共に後退変位させられることにより、中間レバー26が初期位置から出力方向と逆方向、すなわち図7図8において第2支持軸24の右まわり方向へ回動させられ、それに伴って操作ペダル18も第1支持軸20の左まわり方向へ回動させられて踏部22が運転席側へ後退させられる。図8図7におけるVIII部の拡大図で、前記図2に対応する側面図である。
【0027】
ここで、本実施例では中間レバー26が初期位置から逆方向へ回動させられた場合に、操作ペダル18との相対回動に基づいて、その操作ペダル18に一体に設けられた当接部60が前記離脱防止部材48に当接させられ、その離脱防止部材48を変形させ、場合によっては破断させて第2連結ピン42をピン受け部46から離脱させるようになっている。当接部60は三角形状の突起で、離脱防止部材48はその当接部60に押圧されることによって図9に示すように変形させられ、前記開口Sが寸法aだけ拡大されることにより、第2連結ピン42の離脱が許容される。図8に二点鎖線で示す連結リンク28は、第2連結ピン42がピン受け部46から離脱させられることにより、第1支持軸40まわりに下方へ回動させられた状態である。離脱防止部材48には、背部50の中間部分であって中間レバー26に固設される取付部56の近傍部分に、その背部50側からV字状に押圧変形させられたV字溝状のクラッシュビード62が設けられているとともに、そのクラッシュビード62と反対側、すなわち前記ストッパ部58に設けられた円弧の端部には、背部50側へ向かってスリット(U字状切欠)64が形成されている。そして、それ等のクラッシュビード62およびスリット64が設けられた部分が脆弱部として機能し、その脆弱部を起点として曲げ変形させられ、場合によってはクラッシュビード62およびスリット64を結んだ破断線66付近で破断する。図9の実線は変形後の形状で、一点鎖線は初期形状である。
【0028】
中間レバー26は、第2支持軸24が支点、オペレーティングロッド32との連結部が力点、当接部60に押圧される離脱防止部材48が作用点として機能し、その作用点の押圧力F1は、力点に加えられた入力f1がてこの原理で増幅される。本実施例では作用点から力点までの距離よりも作用点から支点までの距離の方が短く、支点から作用点までの寸法をr1、支点から力点までの寸法をR1とすると、寸法r1はR1の半分以下で、それ等のレバー比(R1/r1)に応じて押圧力F1が増幅される。この押圧力F1に基づいて、離脱防止部材48が確実に曲げ変形させられ、場合によっては破断される。
【0029】
このように離脱防止部材48の曲げ変形乃至は破断により第2連結ピン42がピン受け部46から離脱させられると、連結リンク28による操作ペダル18と中間レバー26との連結が解除され、中間レバー26の逆方向への回動に拘らず操作ペダル18の逆方向の回動や踏部22の後退が抑制される。すなわち、操作ペダル18は、中間レバー26の挙動と無関係に第1支持軸20まわりに回動できるようになり、自重によって下方へ垂下させられる。本実施例では、中間レバー26に設けられたピン受け部46、離脱防止部材48、操作ペダル18に設けられた当接部60等によって後退防止装置68が構成されている。
【0030】
このような本実施例のブレーキペダル装置10においては、車両衝突時等にダッシュパネル12が後退変位させられた際に、中間レバー26が初期位置から逆方向へ回動させられると、離脱防止部材48が操作ペダル18の当接部60に当接して押圧されることにより曲げ変形させられ、場合によっては破断されて、第2連結ピン42がピン受け部46から離脱させられる。これにより、連結リンク28による操作ペダル18と中間レバー26との連結が解除され、中間レバー26の逆方向への回動に拘らず操作ペダル18の運転席側への回動が抑制されて、踏部22の後退を抑制する後退防止作用が安定して得られるようになる。
【0031】
また、車両衝突時等にダッシュパネル12が後退変位させられた際に、中間レバー26の逆方向への回動に伴う操作ペダル18との相対回動に基づいて離脱防止部材48が曲げ変形させられ、場合によっては破断されることにより、第2連結ピン42がピン受け部46から離脱することが許容されるため、インパネリインフォースメント34との位置関係を考慮する必要がなく、ペダルブラケット14、36に組み付けられる操作ペダルアッシーのみで後退防止作用を実現することが可能で、設計の自由度が高いとともに設計変更などが容易で安価に構成できる。具体的には、インパネリインフォースメント34に固定される第2ペダルブラケット36を交換するだけで種々の車両に適用できる。
【0032】
また、本実施例では離脱防止部として、中間レバー26と別体に構成されている離脱防止部材48が用いられており、操作ペダル18の当接部60に当接させられて押圧されることにより、クラッシュビード62およびスリット64が設けられた脆弱部が曲げ変形させられ、場合によっては破断させられて、ピン受け部46から第2連結ピン42が離脱することを許容するため、中間レバー26に離脱防止部を一体に形成する場合に比較して、当接部60との当接に伴って第2連結ピン42をピン受け部46から離脱させるための脆弱部等の設計の自由度や材質の選択の自由度が高く、各種の車両用ペダル装置に対して容易に適用できる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
10:ブレーキペダル装置(車両用ペダル装置) 12:ダッシュパネル 14:第1ペダルブラケット 18:操作ペダル 20:第1支持軸 22:踏部 24:第2支持軸 26:中間レバー 28:連結リンク 32:オペレーティングロッド(出力部材) 34:インパネリインフォースメント(車体側部材) 36:第2ペダルブラケット 42:第2連結ピン(連結ピン) 46:ピン受け部 48:離脱防止部材(離脱防止部) 56:取付部 58:ストッパ部 60:当接部 62:クラッシュビード(脆弱部) 64:スリット(脆弱部) 68:後退防止装置
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