【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を説明する図で、車両の左側から見た左側面図であり、
図2は
図1におけるII部の拡大図である。ブレーキペダル装置10は車両用ペダル装置に相当し、エンジンルームと車室内とを区切るダッシュパネル12には第1ペダルブラケット14が一体的に固定されており、操作ペダル18が略水平で且つ車両幅方向と略平行な第1支持軸20まわりの回動可能に配設されている。操作ペダル18は、上端部において第1支持軸20の軸心まわりに回動可能に支持されており、下端部に設けられた踏部22が車両前方側(
図1の左方向)へ踏込み操作されるようになっている。
【0020】
第1ペダルブラケット14にはまた、操作ペダル18よりも車両の前側に、第1支持軸20と平行な第2支持軸24まわりに回動可能に中間レバー26が配設されている。中間レバー26は、下端部において第2支持軸24の軸心まわりに回動可能に支持されて上方へ延び出しており、上下の中間位置で、連結リンク28を介して操作ペダル18に連結されている。中間レバー26の上端部には、ブレーキブースタ30のオペレーティングロッド32が連結されており、操作ペダル18の踏込み操作に連動して連結リンク28を介して機械的に第2支持軸24の左回り方向(出力方向)へ回動させられることにより、オペレーティングロッド32を前方へ押圧してブレーキ力を発生させる。ブレーキブースタ30はダッシュパネル12のエンジンルーム側に一体的に固設されており、オペレーティングロッド32は、そのダッシュパネル12から車室内へ突き出すように配設されている。オペレーティングロッド32は出力部材に相当する。
【0021】
ダッシュパネル12よりも運転席側に位置するインパネリインフォースメント34には、第2ペダルブラケット36が一体的に固設されている。第2ペダルブラケット36は、第1支持軸20の両側部で前記第1ペダルブラケット14と重ね合わされ、ボルト等により共締めされており、互いに支え合うように一体的に連結されている。これにより、ペダルブラケットとして必要な所定の強度や剛性が確保されるようになっている。インパネリインフォースメント34は車体側部材に相当するもので、一般に、正面衝突時等の車両前方からの大荷重入力時に運転席側すなわち車両後方側へ変位する可能性或いは変位量がダッシュパネル12よりも少ない。
図1はペダルブラケット14、36を仮想線で示し、その内側の構造が分かるように示した図である。
【0022】
前記連結リンク28は、その両端部においてそれぞれ第1支持軸20と平行な第1連結ピン40、第2連結ピン42を介して、操作ペダル18、中間レバー26に相対回動可能に連結されている。連結リンク28を仮想線で示した
図2から明らかなように、操作ペダル18側の第1連結ピン40は、操作ペダル18の予め定められたリンク連結部位に設けられた連結穴44に、軸心まわりに回動可能に配設されている。また、中間レバー26側の第2連結ピン42は、中間レバー26のリンク連結部位に設けられたピン受け部46に着座させられているとともに、中間レバー26に一体的に固設された離脱防止部材48によってピン受け部46からの離脱が阻止されるようになっている。この第2連結ピン42が、連結リンク28を中間レバー26に連結する連結ピンで、離脱防止部材48は離脱防止部に相当する。
【0023】
図3は、離脱防止部材48が固設された中間レバー26を単独で示した側面図で、
図4は、その離脱防止部材48を単独で示した斜視図である。中間レバー26に設けられたピン受け部46は、連結リンク28を介して操作ペダル18の踏込み操作力が加えられる部分に設けられているとともに、その踏込み操作力を受け止めることができるように、第2連結ピン42の外周面と略等しい曲率の円弧形状を成している。これにより、踏込み操作力によって第2連結ピン42がピン受け部46に押圧されると、その第2連結ピン42はピン受け部46に安定して着座させられるように位置決めされ、踏込み操作力が確実にピン受け部46から中間レバー26に伝達される。
【0024】
離脱防止部材48は金属板材を曲げ加工したもので、中間レバー26を跨ぐように断面U字形状を成しており、背部50から略平行に延び出すL字形状の一対の側壁52、54を備えている。一対の側壁52、54のL字形状の背部50側の一端部、すなわち
図4において右上に位置する部分は、中間レバー26に固設される取付部56で、前記ピン受け部46の近傍において中間レバー26の両側面に密着するように重ね合わされ、溶接等により一体的に接合される。また、一対の側壁52、54のL字形状の他端部、すなわち
図4において下方に位置して背部50から左方向へ突き出す部分は、前記ピン受け部46との間で第2連結ピン42を保持するストッパ部58で、第2連結ピン42の外周面と略等しい曲率の円弧が設けられている。このストッパ部58の先端と中間レバー26との間には開口S(
図2参照)が存在するが、この開口Sは第2連結ピン42の直径よりも小さく、第2連結ピン42はストッパ部58とピン受け部46との間に隙間が殆ど無い状態で回転可能に位置決めされて離脱不能に保持される。
【0025】
このように第2連結ピン42がストッパ部58とピン受け部46との間に保持されることにより、連結リンク28は第2連結ピン42を介して中間レバー26に連結され、通常の操作ペダル18の踏込み操作時および踏込み解除時には、それ等の操作ペダル18および中間レバー26は連動してそれぞれ第1支持軸20、第2支持軸24の軸心まわりに回動させられる。
図5および
図6は、操作ペダル18が踏込み操作された状態で、中間レバー26は操作ペダル18の踏込み操作に連動して連結リンク28を介して第2支持軸24の左回り方向へ回動させられる。また、この時の踏込み操作力は、
図6に白抜き矢印で示すように、第1連結ピン40から連結リンク28を介して第2連結ピン42に伝達され、その第2連結ピン42からピン受け部46を介して確実に中間レバー26に伝達される。
図6は
図5におけるVI部の拡大図で、前記
図2に対応する側面図である。
【0026】
一方、
図7および
図8に示すように、車両の正面衝突時にブレーキブースタ30等と共にダッシュパネル12が後退変位させられると、そのダッシュパネル12とインパネリインフォースメント34とに跨がって配設されているペダルブラケット14、36は、インパネリインフォースメント34の後退変位量がダッシュパネル12よりも少ないことから、主に第1ペダルブラケット14のダッシュパネル12に近い部分が座屈変形させられる。このため、第1支持軸20および第2支持軸24の後退変位量はインパネリインフォースメント34と同様に比較的小さく、オペレーティングロッド32がダッシュパネル12と共に後退変位させられることにより、中間レバー26が初期位置から出力方向と逆方向、すなわち
図7、
図8において第2支持軸24の右まわり方向へ回動させられ、それに伴って操作ペダル18も第1支持軸20の左まわり方向へ回動させられて踏部22が運転席側へ後退させられる。
図8は
図7におけるVIII部の拡大図で、前記
図2に対応する側面図である。
【0027】
ここで、本実施例では中間レバー26が初期位置から逆方向へ回動させられた場合に、操作ペダル18との相対回動に基づいて、その操作ペダル18に一体に設けられた当接部60が前記離脱防止部材48に当接させられ、その離脱防止部材48を変形させ、場合によっては破断させて第2連結ピン42をピン受け部46から離脱させるようになっている。当接部60は三角形状の突起で、離脱防止部材48はその当接部60に押圧されることによって
図9に示すように変形させられ、前記開口Sが寸法aだけ拡大されることにより、第2連結ピン42の離脱が許容される。
図8に二点鎖線で示す連結リンク28は、第2連結ピン42がピン受け部46から離脱させられることにより、第1支持軸40まわりに下方へ回動させられた状態である。離脱防止部材48には、背部50の中間部分であって中間レバー26に固設される取付部56の近傍部分に、その背部50側からV字状に押圧変形させられたV字溝状のクラッシュビード62が設けられているとともに、そのクラッシュビード62と反対側、すなわち前記ストッパ部58に設けられた円弧の端部には、背部50側へ向かってスリット(U字状切欠)64が形成されている。そして、それ等のクラッシュビード62およびスリット64が設けられた部分が脆弱部として機能し、その脆弱部を起点として曲げ変形させられ、場合によってはクラッシュビード62およびスリット64を結んだ破断線66付近で破断する。
図9の実線は変形後の形状で、一点鎖線は初期形状である。
【0028】
中間レバー26は、第2支持軸24が支点、オペレーティングロッド32との連結部が力点、当接部60に押圧される離脱防止部材48が作用点として機能し、その作用点の押圧力F1は、力点に加えられた入力f1がてこの原理で増幅される。本実施例では作用点から力点までの距離よりも作用点から支点までの距離の方が短く、支点から作用点までの寸法をr1、支点から力点までの寸法をR1とすると、寸法r1はR1の半分以下で、それ等のレバー比(R1/r1)に応じて押圧力F1が増幅される。この押圧力F1に基づいて、離脱防止部材48が確実に曲げ変形させられ、場合によっては破断される。
【0029】
このように離脱防止部材48の曲げ変形乃至は破断により第2連結ピン42がピン受け部46から離脱させられると、連結リンク28による操作ペダル18と中間レバー26との連結が解除され、中間レバー26の逆方向への回動に拘らず操作ペダル18の逆方向の回動や踏部22の後退が抑制される。すなわち、操作ペダル18は、中間レバー26の挙動と無関係に第1支持軸20まわりに回動できるようになり、自重によって下方へ垂下させられる。本実施例では、中間レバー26に設けられたピン受け部46、離脱防止部材48、操作ペダル18に設けられた当接部60等によって後退防止装置68が構成されている。
【0030】
このような本実施例のブレーキペダル装置10においては、車両衝突時等にダッシュパネル12が後退変位させられた際に、中間レバー26が初期位置から逆方向へ回動させられると、離脱防止部材48が操作ペダル18の当接部60に当接して押圧されることにより曲げ変形させられ、場合によっては破断されて、第2連結ピン42がピン受け部46から離脱させられる。これにより、連結リンク28による操作ペダル18と中間レバー26との連結が解除され、中間レバー26の逆方向への回動に拘らず操作ペダル18の運転席側への回動が抑制されて、踏部22の後退を抑制する後退防止作用が安定して得られるようになる。
【0031】
また、車両衝突時等にダッシュパネル12が後退変位させられた際に、中間レバー26の逆方向への回動に伴う操作ペダル18との相対回動に基づいて離脱防止部材48が曲げ変形させられ、場合によっては破断されることにより、第2連結ピン42がピン受け部46から離脱することが許容されるため、インパネリインフォースメント34との位置関係を考慮する必要がなく、ペダルブラケット14、36に組み付けられる操作ペダルアッシーのみで後退防止作用を実現することが可能で、設計の自由度が高いとともに設計変更などが容易で安価に構成できる。具体的には、インパネリインフォースメント34に固定される第2ペダルブラケット36を交換するだけで種々の車両に適用できる。
【0032】
また、本実施例では離脱防止部として、中間レバー26と別体に構成されている離脱防止部材48が用いられており、操作ペダル18の当接部60に当接させられて押圧されることにより、クラッシュビード62およびスリット64が設けられた脆弱部が曲げ変形させられ、場合によっては破断させられて、ピン受け部46から第2連結ピン42が離脱することを許容するため、中間レバー26に離脱防止部を一体に形成する場合に比較して、当接部60との当接に伴って第2連結ピン42をピン受け部46から離脱させるための脆弱部等の設計の自由度や材質の選択の自由度が高く、各種の車両用ペダル装置に対して容易に適用できる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。