特許第6144686号(P6144686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144686
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】β−C−アリールグルコシドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/12 20060101AFI20170529BHJP
   C07D 493/08 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C07D309/12
   C07D493/08 B
【請求項の数】39
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2014-539427(P2014-539427)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-532690(P2014-532690A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】IB2012002894
(87)【国際公開番号】WO2013068850
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2014年8月5日
【審判番号】不服2016-5953(P2016-5953/J1)
【審判請求日】2016年4月21日
(31)【優先権主張番号】61/556,780
(32)【優先日】2011年11月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/661,793
(32)【優先日】2012年6月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514113599
【氏名又は名称】サイノファーム・タイワン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘンチキ,ジュリアン・ポール
(72)【発明者】
【氏名】リン,チェン−ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー−ピン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,チ−ヌン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ジー−シュン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ツン−ユー
【合議体】
【審判長】 井上 雅博
【審判官】 中田 とし子
【審判官】 木村 敏康
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAPLUS/STN
REGISTRY/STN
CASREACT/STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IVの化合物:
【化1】
を調製する方法であって、
該方法は、前記式IVの化合物を形成するために式IIの化合物:
【化2】
を金属化アリール化合物と接触させることを含み、
式中、Arは以下の基
【化3】
からなる群より選ばれるものであり、
式中、Pは、TBS、TBDPS、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ベンジル、及び4−メトキシベンジルからなる群から選ばれる保護基であり;
はそれぞれ水素、又は保護基であり;
は、水素及びRと同じ又は異なる保護基からなる群より選ばれ、
該金属化アリール化合物は式Arで表され、
式中、Arは前記で規定したものであり;
はLi、Mg、及びAlからなる群より選ばれ;
は存在しない、あるいはハライド、フェノキシド、アルコキシド、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、カルバニオン、シアニド、及びシアネートからなる群より独立して選ばれる1つ又はそれを超える陰イオンであり
下付記号nは1〜6の整数であり
下付記号pは0〜6の整数であって、かつn+pは陰イオンの合計数でありそして、
該方法は、場合によりルイス酸である式AlYの三置換アルミニウム(III)塩の存在下で行われ、ここでYはハライド、フェノレート、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、カルバニオンからなる群より選ばれる、
前記方法。
【請求項2】
式Iの化合物:
【化4】
を調製する方法であって、
該方法は、該式Iの化合物を形成するために式IIIの化合物:
【化5】
を式Arの金属化アリール化合物と接触させることを含み、
該方法は、場合によりルイス酸である式AlYの三置換アルミニウム(III)塩の存在下で行われ、
式中、Ar、M、Y、n、及びpは、請求項1で規定したものである、前記方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、式中、R及びRは保護基であり、該方法はさらにR及びR基を式IVの化合物から取り除いて式Iの化合物:
【化6】
を生成することを含む、前記方法。
【請求項4】
式Vの化合物を調製する方法であって、
a)式IVの化合物:
【化7】
と、RXとを接触させること、及び、
b)基を取り除いて式Vの化合物:
【化8】
を生成すること、を含み、
式IV、又はV中、Rは保護基であり;
水素であり
Xは脱離基であり;
Arは以下の基
【化9】
からなる群より選ばれるものであり、
式中、Pは、TBS、TBDPS、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ベンジル、及び4−メトキシベンジルからなる群から選ばれる保護基であり;
−COR、−COR、−COCHOCOR、−CHOCOR、−P(O)(OR)、−P(O)(OH)O、−SOOR、−SO、−PO2−、−CONHR、−CON(R)、−COCOR、−COCOR、−CONHR、又は−CON(R)であり、
Rは分岐状又は非分岐状のC−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、又はC−CシクロアルキルC−Cアルキルであり、
NHR及びN(R)部分がアミノ酸基を含むものであり;
該式IVの化合物は、該式IVの化合物を形成するために式IIの化合物:
【化10】
を金属化アリール化合物と接触させることにより調製され、
式II中、Rは水素又は保護基であり;
は、水素であり
該金属化アリール化合物は式Arで表され、
式中、Arは前記で規定したものであり;
はLi、Mg、及びAlからなる群より選ばれ;
は存在しない、あるいはハライド、フェノキシド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレート、スルフェート、カルバニオン、シアニド、及びシアネートからなる群より独立して選ばれる1つ又はそれを超える陰イオンであり
下付記号nは1〜6の整数であり
下付記号pは0〜6の整数であり、かつn+pは陰イオンの合計数でありそして、
該式IIの化合物の金属化アリール化合物との接触は、場合によりルイス酸である式AlYの三置換アルミニウム(III)塩の存在下で行われ、ここでYはハライド、フェノレート、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、カルバニオンからなる群より選ばれる、
前記方法。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の方法であって、式IVの化合物の調製工程がルイス酸である式AlYの三置換アルミニウム(III)塩の存在下で行われる、前記方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、式Iの化合物の調製工程がルイス酸である式AlYの三置換アルミニウム(III)塩の存在下で行われる、前記方法。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の方法であって、MがAlである場合、下付記号nは1〜4の数である、前記方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、MがAlである場合、下付記号nは1〜4の数である、前記方法。
【請求項9】
請求項1又は4に記載の方法であって、式IVの化合物の調製工程が、ルイス塩基添加物の存在下、又はエーテル、又はニトリル、又はそれらの混合物から選ばれるルイス塩基溶媒の存在下で行われることを特徴とする前記方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、式Iの化合物の調製工程が、ルイス塩基添加物の存在下、又はエーテル、又はニトリル、又はそれらの混合物から選ばれるルイス塩基溶媒の存在下で行われることを特徴とする前記方法。
【請求項11】
請求項1又は4に記載の方法であって、式IVの化合物の調製工程が立体選択的である、前記方法。
【請求項12】
請求項2に記載の方法であって、式Iの化合物の調製工程が立体選択的である、前記方法。
【請求項13】
請求項1又は4に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物を式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物(式中、Yはハライド、フェノレート又はスルホネートである)と好適な溶媒中で混合することにより、式Arで表される金属化アリール化合物を、式IIの化合物と接触させる前に調製する、前記方法。
【請求項14】
請求項2に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物を式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物(式中、Yはハライド、フェノレート又はスルホネートである)と好適な溶媒中で混合することにより、式Arで表される金属化アリール化合物を、式IIIの化合物と接触させる前に調製する、前記方法。
【請求項15】
請求項1又は4に記載の方法であって、式ArLiのアリールリチウム化合物又は式ArMgYのアリールグリニャール試薬(式中、Yはハライドである)を式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物(式中、Yはハライド、フェノレート又はスルホネートである)と好適な溶媒中で混合することにより、式Arで表される金属化アリール化合物を、式IIの化合物と接触させる前に調製する、前記方法。
【請求項16】
請求項2に記載の方法であって、式ArLiのアリールリチウム化合物又は式ArMgYのアリールグリニャール試薬(式中、Yはハライドである)を式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物(式中、Yはハライド、フェノレート又はスルホネートである)と好適な溶媒中で混合することにより、式Arで表される金属化アリール化合物を、式IIIの化合物と接触させる前に調製する、前記方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法であって、式Arで表される金属化アリール化合物を析出、結晶化、蒸留又は抽出により精製して、式Arで表される金属化アリール化合物を調製する際に形成されるハロゲン化リチウム又はハロゲン化マグネシウム塩副生成物を取り除く、前記方法。
【請求項18】
請求項13又は15に記載の方法であって、式Arで表される金属化アリール化合物と接触させる前に、式IIの化合物(式中、R=Hである)を塩基で脱プロトン化する、前記方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、該塩基は有機リチウム化合物である、前記方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、該塩基は有機リチウム化合物n−BuLiである、前記方法。
【請求項21】
請求項1又は4に記載の方法であって、R及びRがいずれも保護基であり、式Arで表される金属化アリール化合物は式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物である、前記方法。
【請求項22】
請求項1、2又は4に記載の方法であって、式II又はIIIの化合物と、式Arで表される金属化アリール化合物との接触は、エーテル、ニトリル、又はハロベンゼン、又はそれらの混合物から選ばれる溶媒中、周囲温度より高い温度で行われる、前記方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、該周囲温度より高い温度は80℃〜180℃の範囲内である、前記方法。
【請求項24】
請求項13又は14に記載の方法であって、Yはハライドである、前記方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、該ハライドはクロリドである、前記方法。
【請求項26】
請求項13又は14に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物の、式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物に対するモル比は1:1〜20:1である、前記方法。
【請求項27】
請求項13又は14に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物の、式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物に対するモル比は1.5:1〜15:1である、前記方法。
【請求項28】
請求項1、2又は4に記載の方法であって、式Arで表される金属化アリール化合物は式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物である、前記方法。
【請求項29】
請求項1又は4に記載の方法であって、該式IIの化合物は式IIaのシリル基で保護された化合物
【化11】
であり、
式中、R、R、及びRは独立してアルキル、アルキルオキシ又はアリールである、前記方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、該シリル保護基SiRは、tert−ブチルジメチルシリル(R=t−Bu、R=R=Me)、tert−ブチルジフェニルシリル(R=t−Bu、R=R=Ph)、トリイソプロピルシリル(R=R=R=i−Pr)、ジエチルイソプロピルシリル(R=i−Pr、R=R=Et)、ジメチルイソプロピルシリル(R=i−Pr、R=R=Me)、トリエチルシリル(R=R=R=Et)、ジ−tert−ブチルイソブチルシリル(R=R=t−Bu、R=i−Bu)、又はtert−ブトキシジフェニルシリル(R=t−BuO、R=R=Ph)からなる群から選ばれる、前記方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、該シリル保護基はtert−ブチルジメチルシリル(R=t−Bu、R=R=Me)である、前記方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、該シリル保護基はtert−ブチルジフェニルシリル(R=t−Bu、R=R=Ph)である、前記方法。
【請求項33】
請求項1又は4に記載の方法であって、該式IIの化合物は式XIのボロン酸エステル化合物
【化12】
であって、
式中、Rはアルキル、アリール、アミノアルキル、又は置換されたホウ素から選ばれる基である、前記方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、Rはアリール基である、前記方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、アリール基は、式XIVの化合物
【化13】
を生成するアリール化反応中に、式IIの化合物のC1に実質的に転移しない基であり、
式中、Rは式XIの化合物のRと同じであり、
該「実質的に転移しない」は、式XIVの化合物の、式IVの化合物に対するモル比が1:9以下であることを指すものである、前記方法。
【請求項36】
請求項33に記載の方法であって、該Rは置換ホウ素基である、前記方法。
【請求項37】
請求項1、2又は4に記載の方法であって、さらに未反応の金属化アリール化合物又は副生成物を、未反応の金属化アリール化合物又は副生成物をハロゲン化アリールに変換するためにハロゲン源と接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、該ハロゲン源は、ヨウ素、ブロミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ヨードスクシンイミド、及びN−ヨードフタルイミド、又はそれらの混合物から選ばれる、前記方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、未反応の金属化アリール化合物又は副生成物をハロゲン源と接触させる工程を塩化リチウムの存在下で行うものである、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の参照
[0001]本出願は、2011年11月7日に出願された米国仮出願第61/556,780号及び2012年6月19日に出願された米国仮出願第61/661,793号の利益を主張するものであり、それぞれの内容は引用によって、それら全文を本明細書に援用する。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発でなされた発明の権利に関する記載
[0002]適用なし
「シーケンスリスト」、表、又はコンパクトディスクに書き込まれたコンピュータプログラムリストの補遺への参照
[0003]適用なし
【背景技術】
【0002】
[0004]糖尿病は、高血中グルコース(高血糖)を特徴とする深刻な慢性代謝疾患であり、世界中で何百万人もの人が羅患している。SGLT2は、ナトリウム依存性グルコース共輸送体タンパク質のことであり、腎臓でのグルコースの再吸収に関与している。腎臓でのグルコースの再吸収のおよそ90%が、SGLT2の働きによるものである。主にSGLT2がグルコースの再吸収に関与していること、及び高グルコースレベルが糖尿病の病因と同定されていることから、SGLT2がII型糖尿病治療における薬物のターゲットとなっている。SGLT2を選択的に阻害すると、腎臓でのグルコースの再吸収を阻害してグルコースを尿(糖尿)中に排泄することで除去することにより、高血糖を低減することが可能である。
【0003】
[0005]現在、多数のSGLT2阻害剤が臨床開発されており、そのうちのかなりの部分がβ−C−アリールグルコシドである。これらの中で、ブリストル・マイヤーズスクイブ社及びアストラゼネカ社が開発しているダパグリフロジンが最も開発の進んだ段階にあり、2011年にその新薬承認申請(NDA)が米国食品医薬品局(FDA)によって審査受理された。
【0004】
[0006]ダパグリフロジンに加えて、他にも多くのβ−C−アリールグルコシドから誘導された薬剤候補がある。そのほとんどは、アグリコン部分のみが異なっている(すなわち、これら化合物は、C1がアリール化された中央の1−デオキシ−グルコース環部分を含む)。このことは、それらを新規な合成基盤技術にとって魅力的な対象にする。一つの手順で複数の生成物を供給することが可能であるからである。周知のSGLT2阻害性を有し、現在、臨床開発中のβ−C−アリールグルコシドには、カナグリフロジン、エンパグリフロジン、及びイプラグリフロジンがある。
【0005】
【化1】
【0006】
[0007]β−C−アリールグルコシドの調製に用いることが可能な様々な合成方法が査読済み文献及び特許文献で報告されている。本明細書ではこれらの方法を、グルコノラクトン法、金属化グルカール法、グルカールエポキシド法、及びグリコシル脱離基置換法と称して、以下に説明する。
【0007】
[0008]グルコノラクトン法:1988年及び1989年に、テトラ−O−ベンジルで保護したグルコノラクトン(グルコースの酸化誘導体)からC−アリールグルコシドを調製する一般的な方法が報告された(J. Org. Chem. 1988, 53, 752-753、及びJ. Org. Chem. 1989, 54, 610-612を参照)。この方法は、1)アリールリチウム誘導体をヒドロキシ保護グルコノラクトンに付加して、ヘミケタール(ラクトールとして知られている)を形成することと、2)三フッ化ホウ素エーテラートの存在下、得られたヘミケタールをトリエチルシランで還元すること、とを含む。β−C−アリールグルコシド合成に一般に用いられるこの古典的方法は、次のような短所がある。
【0008】
1)「レドックス効率」に劣る(J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 17938-17954、及びAnderson, N. G. Practical Process Research & Development, 1st Ed.; Academic Press, 2000 (ISBN-10: 0120594757); pg 38を参照)。グルコースのC1の炭素原子の酸化状態は、グルコノラクトンでは酸化され、次のアリール化工程で還元されて、最終生成物に必要な酸化状態が得られる。
【0009】
2)立体特異性がないため、所望のβ−C−アリールグルコシドは、望ましくないα−C−アリールグルコシド立体異性体と一緒に形成される(これについては、部分的には立体障害トリアルキルシラン還元剤を用いることにより(Tetrahedron: Asymmetry 2003, 14, 3243-3247を参照)、又は還元の前にヘミケタールをメチルケタールに変換する(J. Org. Chem. 2007, 72, 9746-9749、及び米国特許第7,375,213号を参照)ことにより対処している)。
【0010】
【化2】
【0011】
[0009]金属化グルカール法:米国特許第7,847,074号では、SGLT2阻害剤の調製方法を開示している。この方法は、遷移金属触媒の存在下、ハロゲン化アリールでC1位を金属化したヒドロキシ保護されたグルカールのカップリングを含む。カップリング工程に続いて、水をC−アリールグルカール二重結合にホルマール付加して所望のC−アリールグルコシドを得なければならない。この付加反応は、i)ヒドロホウ素化及び酸化、ii)エポキシ化及び還元、又はiii)ジヒドロキシル化及び還元のいずれかによって行う。いずれの場合も、金属化グルカール法ではレドックス効率が劣る。C1及びC2それぞれの炭素原子に求められる酸化状態を形成するのに酸化還元反応を行わなければならないからである。
【0012】
[0010]米国特許出願第2005/0233988号には、パラジウム触媒の存在下、C1をボロン酸又はボロン酸エステルで置換したヒドロキシ保護されたグルカールとハロゲン化アリールとの鈴木反応を利用することが開示されている。得られた1−C−アリールグルカールをホルマール的に水和し、還元工程、続く酸化工程を経て所望の1−C−アリールグルコシド骨格を得る。ボロン酸の合成、それに続く鈴木反応、還元及び酸化という一連の過程は、比較的長いC−アリールグルコシド合成アプローチであり、レドックス効率に劣る。さらに、このカップリング触媒は有害なパラジウムを含むので、薬剤物質においては非常に低レベルに制御しなければならない。
【0013】
【化3】
【0014】
[0011]グルカールエポキシド法:米国特許第7,847,074号では、ヒドロキシ保護されたグルコース環のC1−C2に位置する求電子性エポキシドへの(必須のアグリコン部分から誘導された)有機金属の付加を利用して、SGLT2阻害剤の合成に有用な中間生成物を供給する方法が開示されている。このエポキシド中間生成物は、ヒドロキシ保護されたグルカールを酸化することにより調製されるが、特に安定しているわけではない。Tetrahedron 2002, 58, 1997-2009によれば、トリ−O−ベンジル保護グルカールから誘導されたエポキシドに有機金属を付加すると、カルバニオンアリール求核剤に適切な対イオン(すなわち、有機金属試薬)を選択することにより、α−C−アリールグルコシド、α−及びβ−C−アリールグルコシドの混合物、又はβ−C−アリールグルコシドのいずれかを生成することができる。例えば、カルバニオンアリール基を銅(すなわち、クプラート試薬)又は亜鉛(すなわち、有機亜鉛試薬)イオンと対にするとβ−C−アリールグルコシドを生成し、マグネシウムイオンと対にするとα−及びβ−C−アリールグルコシドを生成し、アルミニウム(すなわち、有機アルミニウム試薬)イオンと対にするとα−C−アリールグルコシドを生成する。
【0015】
【化4】
【0016】
[0012]グリコシル脱離基置換法:米国特許第7,847,074号では、ハロゲン化グリコシルなどのヒドロキシ保護されたグルコシル種のC1に位置する脱離基を金属化アリール化合物で置換して、SGLT2阻害剤を調製することを含む方法も開示している。米国特許出願第2011/0087017号では、SGLT2阻害剤カナグリフロジンを調製する同様の方法を開示している。好ましくはテトラ−O−ピバロイル保護された臭化グルコシルとともに、求核剤としてジアリール亜鉛錯体を用いる。
【0017】
【化5】
【0018】
[0013]Helv. Chim. Acta. 1995, 78, 242-264に報告されている1,6−アンヒドログリコシドをアルキニル化する手法では、部分的に保護した4−デオキシ−4−C−エチニル−1,6−アンヒドログルコピラノースをエチニル化開環(アルキニル化)することにより1,4−ジデオキシ−1,4−ジエチニル−β−D−グルコピラノース(グルコピラノシルアセチレンとして知られており、ブタ−1,3−ジイン−1,4−ジイルが結合した多糖類を調製するのに有用)を調製する方法が記載されている。SLGT2阻害剤の前駆体として用いることが可能なβ−C−アリールグルコシドの合成は、開示されていない。このエチニル化反応は、アノマー中心の配置を保持しながら進行することが報告されており、次のように合理的に説明される(Helv. Chim. Acta 2002, 85, 2235-2257を参照)。1,6−アンヒドログルコピラノースのC3−ヒドロキシルが脱プロトン化してC3−O−アルミニウム種を形成する。C3−O−アルミニウム種はC6−酸素と配位し、それによってエチン基がグルコピラノースのオキシカルベニウム陽イオン誘導体のβ面に供給される。1,6−アンヒドログルコピラノース1モル当量あたり、エチニルアルミニウム試薬を3モル当量用いた。エチニルアルミニウム試薬は、等モル(すなわち、1:1)量の塩化アルミニウムとエチニルリチウム試薬を反応させて調製した。エチニルリチウム試薬自体は、アセチレン化合物とブチルリチウムを反応させて得た。この保持性エチニル化開環法を2,4−ジ−O−トリエチルシリル−1,6−アンヒドログルコピラノースに応用して1−デオキシ−1−C−エチニル−β−D−グルコピラノースも製造した(Helv. Chim. Acta. 1998, 81, 2157-2189を参照)。この例では、1,6−アンヒドログルコピラノース1モル当量あたり、エチニルアルミニウム試薬4モル当量を用いた。エチニルアルミニウム試薬は、等モル(すなわち、1:1)量の塩化アルミニウムとエチニルリチウム試薬を反応させて調製した。エチニルリチウム試薬自体は、アセチレン化合物とブチルリチウムを反応させて得た。
【0019】
[0014]査読済み文献及び特許文献から、C−アリールグルコシドを得るのに用いることが可能な従来の方法にはいくつか短所があることがわかる。それらとして、(1)C−アリールグルコシドの所望のアノマーを形成する際の立体選択性に欠けること、(2)炭水化物部分のC1又はC1及びC2の酸化状態を変化させるのに酸化還元反応工程が必要であるため、レドックス効率に劣ること、(3)合成経路が比較的長いこと、(4)パラジウムなど有害金属を使用していること、及び/又は(5)4つの遊離水酸基を原子で保護することの非効率性、が挙げられる。レドックス効率については、酸化還元反応は上記合成方法及び後続の合成工程で炭水化物部分にアリール基を導入可能にして要求される酸化状態を確立するために元来必要ではあるが、余剰な酸化還元反応はプロセスに合成工程を追加するだけでなく、特に製造プロセスには望ましくない。なぜなら、大規模に還元剤を作用させるのは、その引火性や、反応中や処理中に引火性の水素ガスの生成能力のため、困難かつ危険でありうるからである。また、酸化剤の多くは腐食性があり、特別な取り扱い操作が必要であるためである。(この問題についての考察はAnderson, N. G. Practical Process Research & Development, 1st Ed.; Academic Press, 2000 (ISBN-10: 0120594757); pg 38を参照)。
【0020】
[0015]以上の点から、より短時間で効率的で、立体選択性があり、レドックス効率の高い、β−C−アリールグルコシドを調製するためのプロセスが求められている。新規なプロセスは、SGLT2阻害剤及びそのプロドラッグ、他の医療的に有益な薬剤候補又は薬剤、あるいは非医療的に使用される合成構築ブロックの工業的な製造に応用されるものである。本発明はこのような要求に対応するものである。
【発明の要旨】
【0021】
[0016]本発明は、SGLT2阻害剤を含む薬剤、プロドラッグ、又は合成の構成要素(図1)として用いることが可能なC−アリールグルコシドを調製する新規でレドックス効率が高いプロセスを提供する。本プロセスは、特にSGLT2阻害剤の製造に関するものであるが、それに限定されない。グルコシドは、D−配置又はL−配置であってよい。本発明はまた、マンノース、ガラクトースなどグルコース以外の炭水化物から誘導したC−アリールグリコシド、又はデオキシ炭水化物などの炭水化物誘導体から誘導したC−アリールグリコシドの調製にも応用することが可能である。
【0022】
[0017]一つの側面において、本発明は、式IV、VI、V及びIの化合物などのβ−C−アリールグルコシドを立体選択的に合成する方法を提供する。2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース保護化合物(すなわち、式IIの化合物であって、R=H及びR≠Hである)を求核性アリール化合物(Ar)とカップリングして(ここでArは芳香環、芳香族複素環式環、バイアリール環系、縮合芳香環、ポリ芳香族系、メチレン基で架橋した2つ以上の芳香環、又はメタ置換されたジアリールメタン系である)、まず、式IVの化合物を生成する(図2)。いくつかの態様において、Arはメタ置換されたジアリールメタン(すなわち、金属に付加された置換ベンゼン環において金属とメチレン置換基とがメタの関係にあるジアリールメタン)系である。2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物(すなわち、式IIの化合物)は、本明細書で開示する方法(図3;R=H)、あるいは関連技術で周知の方法(例えば、J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 10508-10518, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 18085-18092, Helv. Chim. Acta 2002, 85, 2235-2257, Synthesis 2009, 3880-3896, Carbohyd. Res. 1971, 18, 357-361, Carbohyd. Res. 1988, 172, 311-318、及びJ. Org. Chem. 2011, 76, 10187-10197を参照)により、1,6−アンヒドログルコピラノース(すなわち、式IIIの化合物)から調製することが可能である。該求核性アリール化合物は、化学式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物(芳香族有機金属化合物又は金属化アリール化合物として知られている)を含む。化学式[Ar]Mにおいて、下付記号n、p及びqは、式中の成分の化学量論的関係を表す数値を示す。これら数値は、金属原子Mに対する相対値である。アリール部分Arを選択することにより、周知の、あるいは新規なSGLT2阻害剤、又は他の医学的状態の治療に用いる薬剤もしくは薬剤以外の用途に用いるβ−C−アリールグルコシドを製造することが可能である。本発明のこの側面において、所望のβ−C−アリールグルコシドに対する立体選択性を高くすることが可能であり、望ましくないα−C−アリールグルコシドは検出できない程度の量か、ほんの少量しか形成されない。該プロセスの特徴を図1図2及び図4に示す。
【0023】
[0018]第二の側面において、2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース(C2−O、C3−O、C4−Oが同じ又は異なる保護基で保護されている)を金属化アリール化合物[Ar]M、好ましくはArAlに接触させて立体選択的にアリール化して所望のβ−C−アリールグルコシドを得る。本発明のこの側面において、所望のβ−C−アリールグルコシドに対する立体選択性を高くすることができ、望ましくないα−C−アリールグルコシドは検出できない程度の量か、検出できてもほんの少量しか形成されない。該トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースII(R=R)は、関連技術で周知の方法で1,6−アンヒドログルコピラノースIII(図3)の保護によって調製することが可能である。該トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースII(R≠R)を1,6−アンヒドログルコピラノースIIIのジ−O−保護により調製して、式IIの化合物(R=H)を得る。次いで、この式IIの化合物(R=H)のC3−OHを保護することにより、トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースII(R≠R)を得る。
【0024】
[0019]第三の側面において、本発明は、糖部分の水酸基を保護しないで、1,6−アンヒドログルコピラノースIIIを金属化アリール化合物[Ar]Mと接触させることによりβ−C−アリールグルコシドを合成する方法に関する。すなわち、個別保護工程及びインサイチュ(in situ)保護工程を省いて、式IIIの化合物を直接、式Iの化合物に変換することが可能である。該プロセスの特徴を図5に示す。
【0025】
[0020]第四の側面において、本発明は、金属化アリール化合物[Ar]Mと接触させることにより式VIIの1,3−ジオキソラン化合物から式VIIIのアリール化化合物を合成する方法に関する(図6)。好ましくは、本発明のこの側面は、限定されないが、式VIIの化合物で表されるグルコース以外のアンヒドロ炭水化物、又はアンヒドロ炭水化物誘導体、又はアンヒドロ炭水化物類似体から誘導した、式VIIIの化合物によって表される1−アリール−3−ヒドロキシメチル環状エーテルに関する。
【0026】
[0021]第五の側面において、本発明は、式IXの1−O−アルキル又は1−O−アリールグルコシド化合物を金属化アリール化合物[Ar]Mと接触させることにより式IVの化合物などのβ−C−アリールグルコシドを立体選択的に合成する方法に関する(図7)。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】[0022]図1は、本発明の方法によるβ−C−アリールグルコシドを立体選択的に合成するための反応機構を示す。
図2】[0023]図2は、複数箇所でO保護された1,6−アンヒドログルコピラノースを立体選択的にアリール化する反応機構を示す。
図3】[0024]図3は、2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース及び2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース誘導体を調製するための反応機構を示す。
図4】[0025]図4は、本発明の方法によるSGLT2プロドラッグを調製するための反応機構を示す。
図5】[0026]図5は、糖部分の水酸基を保護せずにβ−C−アリールグルコシドを立体選択的に合成するプロセスを示す。
図6】[0027]図6は、1,3−ジオキソラン化合物をアリール化するための反応機構を示す。
図7】[0028]図7は、1−O−グルコシドからβ−C−アリールグルコシドを調製するための反応機構を示す。
図8】[0029]図8は、脱保護工程を経ることなく、IIIからXIaを経てβ−C−アリールグルコシドを調製するための反応機構を示す。
図9】[0030]図9は、本発明の方法において有用な金属化アリール化合物[Ar]Mのいくつかを示す。
図10】[0031]図10は、C−アリールグルコシド化合物を脱保護するための反応機構を示す。
図11】[0032]図11は、XIaを高度に立体選択的にアリール化してβ−C−フェニルグルコシドIaを得るための反応機構を示す。
図12】[0033]図12は、II''''を立体選択的にアリール化してβ−C−フェニルグルコシドIVa''''を得るための反応機構を示す。
図13】[0034]図13は、IIIを立体選択的にアリール化してβ−C−フェニルグルコシドIaを得るための反応機構を示す。
図14】[0035]図14は、IIIを立体選択的にアリール化してβ−C−フェニルグルコシドIaを得るための反応機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
[0036]本明細書を通して、用語「グリコシド」は、炭水化物が非炭水化物部分(アグリコンという)に結合した炭水化物誘導体を指す。
【0029】
[0037]本明細書を通して、用語「グルコシド」は、グルコースが非炭水化物部分(アグリコンという)に結合したグルコース誘導体を指す。グルコシドは、グリコシド族の一部である。
【0030】
[0038]本明細書を通して、用語「C−グリコシド」は、炭水化物が非炭水化物部分に結合し、かつその炭水化物が炭素−炭素共有結合で非炭水化物部分と結合しているグルコース誘導体を含む炭水化物誘導体を指す(よって「C−グルコシド」ともいう)。
【0031】
[0039]本明細書を通して、用語「C−アリールグリコシド」は、炭水化物が炭素−炭素共有結合で芳香族部分と結合しているグルコース誘導体を含む炭水化物誘導体を指す(よって「C−アリールグルコシド」ともいう)。
【0032】
[0040]本明細書を通して、接頭辞α−及びβ−は、C−アリールグリコシドのアノマー中心の配置を指す。β−C−アリールグリコシドでは、アリール基(すなわち、アグリコン)は、アノマー中心の他の化学結合との相対的な位置関係で、β−グルコースの水酸基と同じ位置にある。α−C−アリールグリコシドでは、アリール基(すなわち、アグリコン)は、アノマー中央の他の化学結合との相対的な位置関係で、α−グルコースの水酸基と同じ位置にある。
【0033】
[0041]本明細書を通して、式IIIの化合物は「1,6−アンヒドログルコピラノース」と呼ばれるが、「レボグルコサン」、「リーボグルコサン」、「1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース」、「β−1,6−アンヒドロ−グルコピラノース」、「1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース」、「1,6−アンヒドロ−β−D−グルコース」及び「(1R,2S,3S,4R,5R)−6,8−ジオキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,3,4−トリオール」としても知られている。
【0034】
[0042]本明細書を通して、用語「SGLT2」は、ナトリウム依存性グルコース輸送タンパク質であるナトリウム/グルコース共輸送体2を指す。SGLT2は、腎臓でのグルコース再吸収に関与する主要な共輸送体である。本明細書を通して、「SGLT2阻害剤」は、生体外又は生体内でSGLT2活性を調製することができる分子を指す。
【0035】
[0043]用語「アルキル」は、特に説明がなければ、それ自体あるいは他の置換基の一部として、線状又は分岐状の分子鎖を有する炭化水素基を意味する。アルキル置換基は、他の炭化水素置換基と同様、置換基の炭素原子数を示す数字標識(例えばC−Cは炭素数が1から8を意味する)を含む。そのような標識は省かれることがある。特に説明がなければ、本発明のアルキル基は1〜20個の炭素原子を含む。例えば、アルキル基は、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7、1−8、1−9、1−10、2−3、2−4、2−5、2−6、3−4、3−5、3−6、4−5、4−6、又は5−6の炭素原子を含む。アルキル基には、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどがある。
【0036】
[0044]本明細書を通して、用語「アリール」、「アレーン」、及び「芳香環」はそれ自体あるいは他の置換基の一部として、炭素原子6〜18のポリ不飽和炭化水素基を指す。これらは、単環又はポリ芳香族系(すなわち縮合又は共有結合した3つまでの環)であることが可能である。アリールは、ビアリールを含む。ビアリールは、2つの芳香環が各芳香環の1つの環原子で互いに直接共有結合したものである。アリール基は例えばフェニル、ナフチル、ビフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
[0045]本明細書で用いられる「ヘテロアリール」、「ヘテロアレーン」、及び「芳香族複素環」は、環の原子の少なくとも1つは炭素以外の元素、すなわち、窒素、酸素、又は硫黄である、5〜18の環原子を含む芳香族単環又は複環系を含む。ヘテロアリールの前に付いた接頭辞「アザ」、「オキサ」、「チア」はそれぞれ、少なくとも窒素、酸素、又は硫黄原子が環原子として存在することを意味する。代表的なヘテロアリールには、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどがある。
【0038】
[0046]本明細書で用いられる用語「アリール化」は、金属化アリール化合物を炭水化物化合物と化学反応させてC−アリールグリコシドを形成することを意味する。
【0039】
[0047]本明細書で用いられる「アルキレン」は、 炭素原子1〜20の線状又は分岐状の二価の炭化水素鎖を含む。代表的なアルキレン基にはメチレン、エチレンなどがある。
【0040】
[0048]本明細書で用いられる「シクロアルキル」は、炭素原子3〜20の非芳香族単環又は複環系を含む。シクロアルキル基は、少なくとも1つのsp混成炭素(例えば、環内又は環外オレフィンを組み込んだ環)を含んでいてもよい。代表的な単環状シクロアルキル基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどがある。代表的な複環状シクロアルキルには、1−デカリン、ノルボルニル、アダマンチルなどがある。
【0041】
[0049]本明細書を通して、用語「アミノ酸」は、アミン官能基を有するカルボン酸を指す。アミノ酸は、アミンがカルボン酸のカルボニル炭素に隣接した炭素に結合したα−アミノ酸を含む。天然のα−アミノ酸は、例えば、L−アラニン、L−システイン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−フェニルアラニン、L−グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−リジン、L−ロイシン、L−メチオニン、L−アスパラギン、L−プロリン、L−アルギニン、L−グルタミン、L−セリン、L−トレオニン、L−バリン、L−トリプトファン、L−チロシンである。アミノ酸はまた、天然のα−アミノ酸のD−エナンチオマーや、β−アミノ酸、他の人工のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0042】
[0050]本明細書を通して、「エステル」は、アルキル基、アリール基、又はシクロアルキルカルボキシレート基、すなわち、「−CO−O−R」基(Rは本明細書で記載するようなアルキル、アリール、又はシクロアルキルである)を指す。
【0043】
[0051]本明細書を通して、用語「保護基」は、ある官能基を反応しないようにするが、その官能基を元の状態に戻すように取り除くことも可能である化合物を指す。そのような保護基は、当業者に周知であり、Greene, T. W.; Wuts, P. G. M. Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed.; John Wiley & Sons, New York, 2006に開示された化合物を含む。これらは、引用によってその全文を明細書中に援用する。
【0044】
[0052]本明細書を通して、用語「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、及びランタノイドを含む周期表の金属元素を指す。アルカリ金属は、Li、Na、K、Rb、及びCsを含む。アルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、及びBaを含む。遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、及びAcを含む。ポスト遷移金属はまた「卑金属」としても知られており、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、及びPoを含む。ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを含む。金属イオンは、中性の金属元素に存在する原子価殻の電子よりも電子が多く、又は少なくなった結果、負又は正に帯電している。当業者にとっては、上記の金属が、本発明に有用な、いくつかの異なる酸化状態を取り得ることは自明である。いくつかの例では、最も安定した酸化状態が形成されるが、他の酸化状態も本発明においては有用である。本発明において有用な金属イオンは、Au(III)、Pt(IV)、Co(II)、Ni(II)、Fe(III)、Ag(I)、及びCd(II)、Pd(II)、Pb(II)、Ru(IV)、Cr(VI)、Mn(VII)、Zn(II)、Os(IV)、Ir(IV)、Mo(VI)、Cu(II)、及びRh(III)を含むが、これらに限定されない。「半金属(メタロイド)」は、(限定されないが)B、Si、As、Teを含み、本発明においても有用である。用語「非金属」は、「陰イオン」及びルイス酸の文脈で用いられる。この用語は、例えばハライド、シアノ、カルバニオンを含む非金属陰イオンを指す。ルイス酸を参照するのに用いる場合、用語「非金属」は、B及びSi(半金属としても分類される)を指す。本明細書で用いる非金属のルイス酸は、少なくとも1つの対イオン配位子Yが結合した非金属M(例えば、BF及びMeSiOSOCF(すなわち、TMSOTf))を指す。
【0045】
[0053]本明細書を通して、用語「対イオン」は、反対の極を有する金属又は非金属イオンと会合する陽イオン又は陰イオンを指す。陽イオンには、Li、Na、K、及びMg2+などがあるが、これに限定されない。陰イオンには、シアノ、ハライド、BF、PF、及びカルバニオン(すなわち、アルカンなどの炭化水素からプロトンを引き抜いて得た陰イオン)などがある。
【0046】
[0054]本明細書を通して、用語「ルイス酸」は、IUPACで定義された意味、すなわち「(a)電子対の受容体であって、ルイス塩基と反応してルイス塩基が供給する電子対を共有することによりルイス付加物を形成することが可能な分子実体(及び対応する化学種)」(IUPAC Gold Book, International Union of Pure and Applied Chemistry, 2006)を意味する。本発明のルイス酸は、少なくとも1つの対イオン配位子Yが結合した金属又は半金属Mを含む。ルイス酸は、ホウ素系、チタン系、スズ系、亜鉛系、アルミニウム系などであってよい。ルイス酸はケイ素系であってもよい。当業者には、他のルイス酸が本発明の方法に有用であることは自明である。
【0047】
[0055]本明細書を通して、用語「ルイス塩基」は、IUPACに記載された意味、すなわち「電子対を提供可能であって、ルイス酸に配位してルイス付加物を形成することができる分子実体(及び対応する化学種)(IUPAC Gold Book, International Union of Pure and Applied Chemistry, 2006)を意味する。本発明のルイス塩基は、1つ又はそれを超える窒素(N)原子、硫黄(S)原子、酸素(O)原子、又はリン(P)原子を含む。当業者には、他のルイス塩基が本発明の方法に有用であることは自明である。
【0048】
[0056]本明細書を通して、用語「脱離基」は、適切な求核剤による置換に好適な、分子中の官能基を指す。分子から脱離基を取り除けるように、脱離基と分子との(共有又は非共有)結合は置換中に切れる。ハライド、トシレート、メシレート、トリフレート、ノシレート(これらに限定されない)などの脱離基は、本発明の方法に有用である。
【0049】
[0057]本明細書を通して、用語「プロドラッグ」は、生理学的条件下で医薬活性薬剤を放出することが可能な、共有結合した担体を指す。活性薬剤の放出は生体内で行うことが可能である。プログラッグは当業者に周知の技術で調製することができる。これらの技術は一般にある化合物の適切な官能基を修飾する。これら修飾された官能基は、所定の操作や生体内で元の官能基を再生成する。本発明の化合物のプロドラッグの形態は、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸又は類似基などを修飾した化合物を含む。
【0050】
[0058]本明細書を通して、用語「立体選択的」は、 ある立体異性体を別の立体異性体よりも優先的に形成することを指す。
【0051】
[0059]本明細書を通して、用語「化学選択的」は、C1位のアリール化で得られる1,6−アンヒドログルコピラノース部分のアセタール官能基に対するアリール化試薬の選択的反応性を指す。
【0052】
[0060]本明細書で用いる原子の位置番号は、以下の図に示すようなものである。
【0053】
【化6】
【0054】
[0061]本発明は、β−C−アリールグルコシド及びC−アリールグルコシドの類似体、SGLT2阻害剤のプロドラッグを含むβ−C−アリールグルコシドの可能なプロドラッグを製造するための、レドックス効率が高く、新規なプロセスを提供する。
【0055】
[0062]一つの側面において、本発明は、式IIの化合物(R=H)から式IVの化合物(R=H)を合成するプロセスであって、式IIの化合物を金属化アリール化合物[Ar]Mで接触させること、又は金属化アリール化合物[Ar]Mと金属又は非金属ルイス酸化合物Mの存在下で接触させることを含む。ルイス酸は中性化合物、配位錯体、又は塩であってもよい。この反応工程を、本明細書ではアリール化反応という。図2は、本発明の合成プロセスの概要を示すものである。
【0056】
[0063]図1及び図2において、好ましくは、Rは保護基であるか、又は各RはC2−O及びC4−O間の鎖を形成する(化合物Xによって示され、原子XはB、Sn、Si、又はAl、又はXはSi−O−Si基である)。Rは水素を含む。Rは、反応条件に耐性があるが、式IV又はVIの化合物から除かれて式I又はVの化合物(図1)を生成することができる保護基から選択される。いくつかの態様では、保護基Rは、アリール化反応生成物の単離の前に特定の脱保護工程を経ることなく除去されてもよく、これにより、直接、式Iの化合物を生成する。すなわち、本発明の方法により式XI又はXIIの化合物をアリール化する場合、式IVの中間化合物は、単離しない。
【0057】
【化7】
【0058】
[0064]本発明の他の側面において、本発明は、式IIの化合物(R≠H)から式IVの化合物(R≠H)を合成するプロセスであって、式IIの化合物(Rと同じ又は異なるRは保護基であってもよい)を金属化アリール化合物[Ar]Mと接触させること、あるいは金属化アリール化合物[Ar]Mを金属又は非金属ルイス酸化合物Mの存在下で接触させることを含む方法を提供する。Rは保護基であるか、又は各RはC2−O及びC4−O間の鎖を形成する。この側面において、R及びRは好ましくは、反応条件に耐性があるが、式IV又はVIの化合物から除去されて式I又はVの化合物を生成することができる保護基から選択される。いくつかの態様において、保護基Rは、アリール化反応生成物の単離の前に特定の脱保護工程を経ることなく除去してもよい。
【0059】
[0065]本発明の他の側面において、式IIIの化合物は、保護及び脱保護工程のいずれも用いることなく、直接、式Iの化合物に変換することが可能である。これにより、所望のβ−C−アリールグルコシドを非常に直接的な方法で製造することができる。
【0060】
[0066]本発明の他の側面において、式IVの化合物は、式Vのプロドラッグを調製するのに有用である。式IVの化合物のC6−O水酸基は、C2−O及びC4−Oを保護しながら選択的に誘導体化することが可能であるからである。
【0061】
[0067]グルコースからホルマール脱水により、1,6−アンヒドログルコピラノースIIIを調製するためのいくつかの方法が文献に開示されている。例えば、J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 1987, 1613-1621及びTetrahedron Lett. 2009, 50, 2154-2157には有用な方法が記載されている。
【0062】
[0068]本発明のC2−OH及びC4−OH保護基は、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS又はTBDMS)、又はtert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジ−tert−ブチルイソブチルシリル(BIBS)などケイ素系の基;tert−ブトキシジフェニルシリルなどアルコキシシリル基;ジ−tert−ブチルシリリデン(DTBS)などジアルキルシリリデン(すなわち、C2−O及びC4−Oが式Xの化合物に示すように架橋されており、Xは−Si(R−基である);テトライソプロピルジシロキサニリデン(TIPDS)などジシロキサニリデン(すなわち、C2−O及びC4−Oが式Xの化合物に示すように架橋されており、Xは−(R)Si−O−Si(R)−である)を含む。ボロン酸エステル(すなわち、式XIの化合物に示すように、C2−O及びC4−Oはアルキル又はアリールで置換されたホウ素原子であって、Rはブチル、tert−ブチル、又は不飽和アルキル(アルケン及びアセチレン)などのアルキル、あるいは置換又は無置換のフェニルなどアリール、又は式[Ar]Mの金属化アレーン化合物に示すような同じアリール基Arである)、ジブチルスタンニレン(すなわち、C2−O及びC4−Oは式Xの化合物に示すように架橋されており、Xは−(R)Sn−基である)、アリル、ベンジル、ベンジリデン誘導体、アルキリデン誘導体、Boc、Cbz(Zとして知られている)、Fmoc、ベンゾイル又はピバロイルなどのエステルなど、他の保護基も用いることができる。
【0063】
[0069]式IIの2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース(R=H)を合成する方法は、文献で見られる。例えば、Helv. Chim. Acta 2002, 85, 2235-2257、J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 10508-10518及びJ. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 18085-18092は、1,6−アンヒドログルコピラノースのシリルで保護した誘導体を調製するための方法を提供する。J. Org. Chem. 2011, 76, 10187-10197は、1,6−アンヒドログルコピラノースのベンジルで保護した誘導体を調製する方法を提供する。Synthesis 2009, 3880-3896及びCarbohyd. Res. 1971, 18, 357-361は1,6−アンヒドログルコピラノースを2,4−O−ボロン酸エステルで保護した誘導体XIaを調製する方法を提供する。Carbohyd. Res. 1988, 172, 311-318は、1,6−アンヒドログルコピラノースを2,4−O−ジブチルスタンニレンで保護した誘導体XIIaを調製する方法を提供する。
【0064】
[0070]いくつかの態様では、シリル系保護基を用いる。TIPS、IPDMS、TBS及びTBDPSなどの嵩高いシリル系保護基がより好ましいが、以下のような理由による。1)異性体及び/又は2,3,4−トリ−O−保護された共生成物を実質的に形成することなく、C2−O及びC4−Oに選択的に導入することができる場合がある;2)アリール化反応条件に耐性がある;3)アリール化工程後に、除去して、所望のC−アリールグルコシドを供給することができる。TMS及びTESなど、あまり嵩高くないシリル系保護基は、あまり好ましくない。なぜなら、アリール化反応条件への耐性が低く、部分的又は全体がアリール化反応中に意図に反して除去されることがあるからである。
【0065】
[0071]式IIIの化合物は水酸基を保護せずにアリール化することができるが、C2−O及びC4−Oの保護など、部分的に保護することがより好ましい。なぜなら、より少ない量のアリール化試薬で、効果的にアリール化を行うことができるからである。
【0066】
[0072]いくつかの態様では、C2−O及びC4−Oを保護する保護基は、ボロン酸エステル(すなわち、式XIの化合物)であってもよい。式XIの化合物は、1,6−アンヒドログルコピラノース(III)の存在下、脱水により置換されたボロン酸RB(OH)から容易に調製することができる。脱水は、反応系から水を除去する技術を用いて、ボロン酸及び1,6−アンヒドログルコピラノース(III)を有機溶媒中で接触させて行う。脱水は、当該分野で周知のボロン酸エステル合成方法によって簡便に行われる。この方法は、(ディーン・スターク装置で容易に行うことができるような)水/有機溶媒共沸混合物の蒸留や分子篩やMgSOなどの乾燥助剤を用いて反応系から水を連続的に除去することを含む。式XIの化合物はまた、置換されたボロン酸RB(OH)及び1,6−アンヒドログルコピラノース(III)から調製することも可能である。この場合、式XIの化合物がエステル化反応中に反応混合物から析出するように、水を除去せずに、溶媒中でエステル化を行う。本発明のボロン酸エステルはまた、有機溶媒中で1,6−アンヒドログルコピラノース(III)でボロン酸エステルRB(OR’)をエステル交換することによっても調製することができる。ボロン酸エステルRB(OR’)は、低分子アルコキシ基OR’(例えばR’=Me、Et、Pr、i−Pr; アルコキシ基のアルコール誘導体HOR’は揮発性化合物である)を含む。式RB(N(R’)のボランジアミンは、式XIの合成にも用いることができる。いくつかの態様では、調製の容易さから、置換基Rがアルキル基ではなく芳香基である、式XIのボロン酸エステルが用いられる。一旦、式XIの化合物が合成されると、単離し、場合により沈殿又は結晶化や、当該分野で周知の他の精製方法で精製することができる。あるいは、精製及び/又は単離を行わずに、直接アリール化工程に用いることもできる。
【0067】
[0073]アリール化反応の基質としてXIを用いる態様には次のような利点がある。i)コスト効率がよい。なぜなら、共沸蒸留により水を除去しながら、好適なボロン酸又はボロン酸誘導体(例えば、低分子アルコキシ基OR’を含むボロン酸エステルRB(OR’)(例えば、R’=Me、Et、Pr、i−Prであって、親になるアルコールHOR’は揮発性化合物である)又は式RB(N(R’)のボランジアミン)と1,6−アンヒドログルコピラノース(III)との混合物を溶媒中で加熱することにより、XIは安価なホウ素含有試薬から容易に合成されるからである。ii)時間及びコスト効率がよい。なぜなら、式XIの化合物は、その合成に続く(行うとすると、さらに時間がかかることになる)水性反応処理工程を必要としないからである。iii)式XIの化合物は、精製する必要がなく、時間とコストを低減する。iv)式XIの化合物は、単離する必要がない。これは、XIの合成と続くアリール化を同じ反応器で行うことができることを意味し、時間とコストを低減する。v)ボロン酸エステルを脱保護する特定の工程が不要であり、アリール化反応の後、式IVの化合物を単離、又は特に脱保護する必要がなく、式Iの化合物を直接、生成混合物から単離することができる(図8)。これにより、時間とコストを低減する。vi)XIの調製に用いるボロン酸は、アリール化反応の終わりに回収して、リサイクルすることができる。vii)実験から分かるように、式XIの化合物は、式IIの化合物よりもアリール化反応における反応性が高い。これは式XIの化合物が式IIの化合物よりも低い反応温度でアリール化できることを意味する。viii)当該分野のC−アリールグルコシドの合成に比べて、この手法は、糖基質をC−アリールグルコシドに変換する際に酸化又は還元工程を用いないのでレドックス効率が高い。ix) 式XIの化合物のボロン置換基Rは、溶解性、安定性、コスト面での向上など製造要件に合わせて変化させることができる。Rは、アリール、ヘテロアリール、またアルキル基であってもよい。又は、Rは第二のホウ素原子であって、式IIの化合物の第二の分子を含む式XIIIの化合物のようなホウ素二量体を形成してもよい。2つのホウ素原子が架橋基により変位されたジボロン酸から、他の二量体化合物を形成することができる。例えば、ジボロン酸は、1,4−ベンゼンジボロン酸などの1,4−アリールジボロン酸、又は1,4−ブタンジボロン酸など、アルキル鎖によって結合されたジボロン酸であってもよい。二量体化合物をボロン酸から形成する場合、1,6−アンヒドログルコピラノース(III)1モル当量あたり、好ましくはジボロン酸0.5モル当量を用いる。式(N(R’)BB(N(R’)(R’=Me、Et、Pr、i−Prなど)のテトラキス(ジアルキルアミド)ジボランや、式(OR’)BB(OR’)(R’=Me、Et、Pr、i−Prなど)の反応性ジボロン酸エステルなど、他のジボロン酸誘導体をジボロン酸の代わりに二量体化合物の合成に用いることもできる。
【0068】
[0074]いくつかの態様では、XIのアリール化の後、生成混合物を周囲温度まで冷却し、式R’OHのアルコール、好ましくはメタノールなど、プロトン性試薬又は溶媒を添加する。溶媒を蒸発させて、式Iの化合物を直接得る。この態様では、ボロン酸エステル反応入力XIのホウ素成分をボロン酸として、又はボロン酸エステル(すなわち式RB(OR’)又は(OR’)BB(OR’)。ここでアルコキシ基OR’はアルコールR’OHに由来し、ボロン酸エステルはアリール化の後の処理工程において添加される)として、生成混合物から回収することができる。ホウ素成分を単離し、リサイクルして、より多くの式XIの化合物を調製するのに用いることができる。ホウ素含有保護基(例えば、ボロン酸RB(OH))のリサイクルにより、原子経済効率を向上させ、環境への負荷を低減し、廃棄コストを低減することができる。
【0069】
[0075]いくつかの態様では、式XIの化合物は、式XIa、XIf、XIk、及びXIdのB−アリールボロン酸エステル化合物である。これらB−アリールボロン酸エステル化合物は、1,6−アンヒドログルコピラノース(III)の存在下で脱水することによりアリール及び置換アリールボロン酸ArB(OH)から容易に調製される。好ましい態様では、このエステル化反応は、反応系から水を除去する技術を用いて、トルエン(PhMe)などの有機溶媒又はアニソール(PhOMe)など次のアリール化反応が行われる溶媒中でボロン酸及び1,6−アンヒドログルコピラノース(III)を加熱することにより簡便に行われる。脱水は、当該分野で周知のボロン酸エステル合成方法によって簡便に行われる。この方法は、(ディーン・スターク装置で容易に行うことができるような)水/有機溶媒共沸混合物の蒸留や分子篩やMgSOなどの乾燥助剤を用いて反応系から水を連続的に除去することを含む。所望のB−アリールボロン酸エステルが高い収率で得られる。式XIのB−アリールボロン酸エステル中のR置換基がフェニル、4−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルなど単純な芳香族化合物である場合、H−NMR分光分析から、これらが単一の異性体として生成されていることがわかる。XIがジボロン酸誘導体(1,4−ベンゼンジボロン酸及びテトラヒドロキシジボロンなど)であるなどその他の場合、粗生成混合物のH−NMR分光分析からわかるように、1,6−アンヒドログルコピラノース(III)の存在下でジボロン酸誘導体を脱水する際に混合物が形成される。驚くべきことに、混合物が形成されていても、本発明の方法によってこのボロン酸エステル混合物をアリール化すると、所望のβ−C−アリールグルコシドが得られる。
【0070】
[0076]他の態様では、ホウ素に付加された式XIの化合物の有機置換基Rは、アリール化反応時に炭水化物基質のC1位に実質的に転移しない基である。すなわち、式XIの化合物の有機置換基Rは、(アノマー位置Clは、アリール化試薬のアリール基ではなくボロン酸エステルのホウ素原子からの炭素系置換基に置換される)式XIVの化合物の形成を排除する又は最小にする置換基から選択される。2,4−O−ボロン酸エステルで保護した1,6−アンヒドログルコピラノース化合物XIのアリール化において周知の副反応が、ボロン酸エステルのホウ素原子に付いた炭素系置換基とアリール化試薬のアルミニウム原子との交換であるため、このことは重要である。これにより、アノマー位置がアリール化試薬のアリール基ではなくボロン酸エステルのホウ素原子からの炭素系置換基で置換された式XIVの化合物が少量形成されることがある。例えば、PhOMe/ジ−n−ブチルエーテル(BuO)の混合溶媒中で1モル当量の式XIfの化合物を3モル当量のPhAlにて165℃(槽の外温)で6時間アリール化すると、式Iaの化合物(すなわち、式Iの化合物のArがフェニル)と式Ifの化合物(すなわち、式Iの化合物のArが4−フルオロフェニル)の混合物がモル比98.5:1.5で得られた。他の例では、ベンゾニトリル(PhCN)/BuOの混合溶媒中で1モル当量の式XIdの化合物を1モル当量のPhAlにて165℃(槽の外温)で6時間アリール化すると、式Iaの化合物と式Idの化合物(すなわち、式Iの化合物のArが4−メトキシフェニル)の混合物がモル比97.3:2.7で得られた。この副反応はいくつかの方法で抑制ことが可能である。例えば、i)ホウ素置換基が好適な電子的及び立体特性を有するアリール基を転移させない、あるいは転移させにくいボロン酸エステルを選択する。ii)ホウ素原子からの炭素系置換基がアリール化試薬のアリール基と同じアリール基Arである(すなわち、式XIの化合物においてR=Arとする、例えばカナグリフロジンの合成ではXIi、ダパグリフロジンの合成ではXIjなど)ボロン酸エステルを用いる。iii)炭素系の転移可能基が反応基質にない式XIIIのジボロン酸エステルを用いる。
【0071】
【化8】
【0072】
[0077]また、炭水化物部分をボロン酸エステルで保護することは、本発明の方法において有用である。これにより他の保護基系に比べて次のような利点が得られるからである。i)保護基の導入が容易である(酸又は塩基などの追加の試薬や、活性化剤が不要である)。ii)専用の脱保護工程が不要である(上述のように、アリール化反応の後で式Iの化合物を直接得られる)、iii)ボロン酸は商業的規模で容易に、かつ安価に入手できるので、コストを低減できる。iv)アリール化反応の後でボロン酸をリサイクルできるので原子効率がよい。v)ボロン酸は一般に無害とされているので、環境によい。いくつかの態様では、式XIの化合物のRは、金属化アレーンの式[Ar]M中のArと同じである。
【0073】
[0078]他の態様において、C2−O及びC4−Oの保護基は、スタンニレンアセタール(すなわち、式XIIの化合物)であってもよい。ジオールのスタンニレンアセタールは当該分野で周知である(例えばJ. Org. Chem. 1990, 55, 5132-5139)。一つの態様において、式XIIの化合物は式XIIaの化合物である。この化合物は、1,6−アンヒドログルコピラノース(III)をジ−n−ブチル酸化スズ(n−BuSnO)と反応させて合成される。式XIIの化合物を合成した後、単離して、必要であれば析出、結晶化、又は当該分野で周知の他の精製方法で精製してもよい。あるいは、精製及び/又は単離を行わずに、アリール化工程に直接用いてもよい。いくつかの態様では、XIIのアリール化の後、生成混合物を周囲温度まで冷却し、アルコール、好ましくはメタノールなどのプロトン性試薬又は溶媒、あるいは酸水溶液を加える。溶媒を分離又は蒸発させて、式Iの化合物を直接、得る。いくつかの態様では、式XIIの化合物は式XIIaの化合物である。
【0074】
【化9】
【0075】
[0079]他の態様において、C2−O、C3−O、又はC4−Oの保護基は、アルミニウムを含んでいてもよい。このような保護基は、1,6−アンヒドログルコピラノース(III)を塩基性アルミニウム試薬(すなわち、式XVIの化合物)とインサイチュ(in situ)で反応させて形成することができる。例えば、いくつかの態様では、式IIIの化合物をアルミニウム試薬RAl(R及びRはそれぞれ独立にH、置換又は無置換のアルキル、又はAr)で前処理すると、式XVIの化合物が形成されることがあるが、その正確な分子構造は決定されていない。好ましくは、アルミニウム試薬はMeAl又はi−BuAlH(DIBAL)などの安価な化学物質である。RAlの前処理を行った後、XVIの化合物を式[Ar]Mの金属化アレーンと接触させてアリール化する。この態様の利点は、式IIIの化合物に比べて化合物IIIのアルミニウム誘導体は、アリール化反応を行うことができる有機溶媒への溶解性が向上していることである。他の態様において、2,4−ジ−O−保護された化合物II(Rは保護基、かつR=H)又は2,4−ジ−O−保護された化合物XIを塩基性アルミニウム化合物(式RAl)と反応させて、式II−Aの化合物又は式XI−Aの化合物をそれぞれ形成することができる。これらの化合物は、単離してもよく、あるいは単離せずに直接用いて本発明の方法によりアリール化してもよい。例えば、式XI−Aの化合物(R=Ph、かつR=i−Bu)を、XIaのPhOMe溶液をDIBALのPhMe溶液1モル当量と反応させることにより0℃で調製し、次いで、PhAlClでアリール化した。2.5時間後に110℃で51%のHPLC分析収率を得た。
【0076】
【化10】
【0077】
[0080]第二の側面において、本発明は、β−C−アリールグルコシドIV(R及びR≠H)を合成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、[Ar]Mで2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースをアリール化することを含む。この側面の好ましい態様において、アリール化試薬はトリアリールアルミニウム試薬(ArAl)である。これらの方法において、アルミニウム系アリール化試薬[ArAlY]M(例えばn<3.0、Yは塩化物などのハロゲン化物)で式IIの2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物(例えばR=R=Bn又はR=R=TBS)をアリール化すると、炭水化物の部分的脱酸素が起こる副反応によって反応が起こらない、あるいは起こっても低い収率である。さらに、MgClなどの反応混合物中において金属ハロゲン化物塩の存在下でアリール化試薬としてトリアリールアルミニウム化合物を用いた本発明のこの側面を実験で検証したところ、金属ハロゲン化物塩はこの反応に対して好ましくない影響を与えることがわかった。これに対して、式ArAlのアリール化試薬を金属ハロゲン化物塩の非存在下で用いると、式IVのアリール化物が高い収率で得られた。このことから、本発明のこの側面において、アリール化試薬は好ましくは他の金属塩及び非金属ハロゲン化物塩の非存在下で式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物である。この手法において、式IIの化合物の保護基R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、三置換シリル、ベンジル、メチル、ボロン酸エステルなどである。必要があれば、式IIIの化合物のC2−OH及びC4−OHの水酸基をはじめに保護したのち、C3−OHをRとは異なる保護基(すなわちR≠R)で保護してもよい。式IIの化合物(R及びR≠H)は、関連技術において記載された方法で合成することができる(例えば、J. Org. Chem. 2011, 76, 10187-10197を参照)。好ましくは、R及びRは、アリール化試薬及びアリール化反応条件に耐性がある保護基の群から選択されたものである。
【0078】
[0081]当業者には自明であるが、炭水化物環の水酸基上の異なる保護基(例えばベンジル保護基とシリル保護基など)又は保護基の異なる配置(例えば2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物及び2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物など)がアリール化反応の速度及び/又は効率に影響することがある。ある保護基の場合は、式IIの化合物(R及びR≠H)の2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースのアリール化反応は、式IIの化合物(R=H、かつRがジ−O−保護された系及びトリ−O−保護された系の両方で同じである)の2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースに比べて、同じ又は相当する反応条件下でのアリール化物の化学収率が低くなる。例えば、式IIの化合物(R=R=TBS)をPhOMe/n−BuO(各2モル当量)の混合溶媒に溶解したアリール化試薬PhAlにて150℃(槽の外温)でアリール化すると、式IVa'''''のフェニル化物(化合物IV、ただしAr=Ph)では分析による収率が15%、単離化学収率が12%と、同様のアリール化反応を式IIの化合物(R=TBS及びR=H)に行った場合(単離収率が約68%)に比べて、低かった。しかし、これに対して、2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物のアリール化の他の例では、ほぼ等モル量のPhAlとPhOMe/n−BuOとの混合物にて式IIの化合物(R=R=Bn)を150℃(槽の外温)でアリール化すると、分析による収率が64%、単離化学収率が62%であった。
【0079】
[0082]したがって、ある保護基及び保護基の配置は、他の保護基やその配置より好ましい。本発明においては、シリル保護基(TBDPS、TBSなど)及びボロン酸エステル保護基(B−アリールボロン酸エステルなど)が、2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物に対しては最も好ましく、ベンジル基及びベンジル基誘導体が2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物に対してはシリル基よりも好ましい。原子効率の点から、2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物が、2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物よりも好ましい。
【0080】
[0083]第三の側面において、本発明は式Iの化合物を調製するための簡単で効果的なプロセスを提供する。このプロセスは、必要であれば、金属又は非金属ルイス酸Mの存在下で、前記式Iの化合物を形成するのに十分な条件で式IIIの化合物を金属化アリール化合物(式[Ar]M)と接触させることを含む。この簡単なプロセスの主要な特性は、式IIIの化合物を場合によりアルミニウム試薬RAl(R及びRはそれぞれ独立してH、置換又は無置換のアルキル、又はAr)など、安価な塩基で前処理する場合、必要な金属化アリール化合物[Ar]Mが少なくてすむことである。アルミニウム試薬RAlは、例えば、MeAl、水素化ジイソブチルアルミニウム(i−BuAlH;DIBAL)、及びPhAlなどがあるが、これらに限定されない。特定の理論に縛られるものではないが、式IIIの化合物の前処理の機能としては、金属化アリール化合物[Ar]Mと反応させる前に、化合物IIIのC2−O、C3−O及びC4−Oの3つの遊離水酸基のうち、1〜3個を脱プロトン化して式XVIの化合物などの炭水化物アルミニウム錯体を形成することである。場合により、アリール化反応の速度及び/又は収率を向上させるために、ルイス酸Mを加えてもよい。
【0081】
[0084]いくつかの態様では、式Iの化合物は次のような方法で調製される。i)式IIIの化合物をMeAlのMeCN溶液又はDIBALのPhMe溶液で前処理し、得られた混合物をArAl(Arはアリール基)と接触させ、場合によりルイス酸としてAlClを加える。あるいは、ii)追加のルイス酸の存在無しに、適切な溶媒中で式IIIの化合物を直接、過剰な量の金属化アリール化合物[Ar]Mと反応させる。式IIIの化合物のアリール化反応は約80℃、好ましくは110〜180℃、最も好ましくは約130℃で行われる。このアリール化法は、水酸基の保護を用いておらず、合成工程の工数が非常に効率的である。アリール化試薬のコストがそれほど高価ではないプロセスの中でも、この方法は保護及び脱保護工程が不要であるので、β−C−アリールグルコシドを調製する合成方法としてコスト及び時間の点で競合できるものである。例えば、式IIIの化合物を1,4−ジオキサン(ジオキサン)中で還流温度下、6日間、過剰な量のPhAlと反応させた場合、93%のHPLC分析収率が得られた。また続くカラムクロマトグラフによる精製によって式Iの化合物(Ar=Ph)が、単離収率71%で得られた。アリール化反応は、所望のβ−C−アリールグルコシドに対する立体選択性があり、望ましくないα−アノマーは約2%とわずかに形成されただけであった。
【0082】
[0085]本発明の主要な合成工程は、i)〜iii)の、レドックス効率が高く、立体選択的なアリール化反応である。i)2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース(すなわち、式XIの化合物を式Iの化合物に直接変換することを含む式IIの化合物(R≠HかつR=H)の式IVの化合物への変換)、ii)2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース(すなわち、式IIの化合物(R及びR≠H)の式IVの化合物への変換)、及びiii)保護されていない1,6−アンヒドログルコピラノース(すなわち、式IIIの化合物の式Iの化合物への直接変換)。このアリール化反応は、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物を用いて、あるいは式Mで表される金属又は非金属ルイス酸の存在下で金属化アリール化合物[Ar]Mを用いて達成することができる。ルイス酸は中性化合物、配位錯体又は塩であってもよい。ある反応系では、ある種のルイス塩基を添加剤又は溶媒として用いると、[Ar]M又はルイス酸Mと[Ar]Mの組み合わせにより保護及び非保護の1,6−アンヒドログルコピラノースのアリール化をより効率的に行うことができることがわかった。ルイス塩基は、ニトリル(置換又は無置換のベンゾニトリルを含む)などN、S、O及びP含有化合物や、エーテルなどを含む。
【0083】
[0086]したがって、いくつかの態様では、式IIの化合物又は式IIIの化合物に対して化学量論又は準化学量論量でルイス塩基をアリール化反応の添加剤として用いてもよい。いくつかの例では、ルイス塩基が溶媒として有用であることが証明されている。例えば、エーテル溶媒PhOMe(アニソール)及びニトリル化合物PhCN(ベンゾニトリル)は、アリール化反応の効率を向上させ、添加剤、溶媒、又は共溶媒として用いることができる。4−メトキシベンゾニトリルなど他のニトリルは、アニソールなどのエーテル溶媒を用いるときでも添加剤として用いることができる。したがって、いくつかの態様では、ルイス塩基は、添加物、共溶媒、又は溶媒として用いることができる。
【0084】
[0087]いくつかの態様では、アリール化基質のC3−O基は遊離水酸基(すなわち、C3−OH(Rは式II又はXIの化合物のH)として存在する。この遊離水酸基は、場合により2つの方法で脱プロトン化される。i)アリール化反応時に、金属化アリール化合物[Ar]Mと接触させる、又はii)金属化アリール化合物[Ar]Mと接触させる前に、式II又はXIの化合物(RはH)を塩基と接触させることにより個別に脱プロトン化する。塩基を用いてアリール化反応の前にC3−OHを脱プロトン化する場合、好ましくは、NaH、LiH、KH、MgH、LHMDS、NaHMDS、n−BuLi、s−BuLi、t−BuLi、PhLi、i−BuAlH(DIBAL)、PhMgBr(臭化フェニルマグネシウム)、i−PrMgCl、又はLDAなどの強塩基を用いる。いくつかの態様では、式II又はXIの化合物(R=H)を脱プロトン化するのに、PhMgBrなどのハロゲン化マグネシウム塩基を用いるよりもn−BuLiなどのリチウム塩基又はi−BuAlHなどのアルミニウム塩基を用いるほうがより好ましい。アリール化物がより高い収率で得られるからである。特定の理論に縛られるものではないが、これは、ハロゲン化マグネシウム塩がアリール化反応及び副反応の促進に悪影響を及ぼすためと思われる。
【0085】
[0088]したがって、いくつかの態様では、アリール化試薬と接触させる前に、周囲温度以下でアリール化反応溶媒中、好ましくはPhOMe中で、1モル当量の式II又はXIの化合物(R=H)を1モル当量のアルミニウム塩基i−BuAlH又はリチウム塩基n−BuLiで脱プロトン化することが好ましい。
【0086】
[0089]アリール化試薬を用いて式IIの化合物(R=H)のC3−OHを脱プロトン化する他の態様において、式[Ar]Mにおけるアリールの下付記号nを、好ましくは、プロトン化してArHを形成することによりアリール化試薬から失われるアリール部分に相当する量だけ増加させる。
【0087】
[0090]製造規模でのコスト面から、式II又はXIの化合物(R=H)の脱プロトン化の2つの方法のうち、i−BuAlH及びn−BuLiなど、安価で入手しやすい塩基がより好ましい。他の態様において、式II又はXIの化合物(R及びR≠H、かつR≠R)のRは、アリール化反応中に取り除かれて遊離C3−アルコキシ基になる一時的な保護基であってもよい。アリール化反応中に取り除かれてもよいR基は、アリール化試薬と反応することが可能で、そのため、反応中に脱保護される。これらの基は、エステル(アセチルなど)又は高感度シリルエーテル(トリメチルシリルなど)などの保護基を含む。
【0088】
[0091]金属化アリール化合物[Ar]Mは、1つ(n=1)又はそれを超える(n>1)アリール基Arを含み、Arは、フェニル誘導体、芳香族複素環式化合物、ビアリール化合物、縮合芳香族化合物、ポリ芳香族化合物、メチレン架橋芳香族化合物、好ましくはメタ置換されたジアリールメタン基を含む。アリール基の分子構造は、アリール化反応の速度及び化学収率にも大きく影響する。ある系の場合、最もよい化学収率を達成するように、金属化アリール化合物[Ar]Mの性質、反応条件、及び操作モードはすべて修正、微調整、最適化することができる。
【0089】
[0092]ある態様では、Arは以下のものを含む基から選択される。
【0090】
【化11】
【0091】
ここで、PはTBS、TIPS、TBDPSなどのシリル基、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、及びベンジルなどのアルキル基、及び4−メトキシベンジルなどの置換ベンジル基から選択される好適な保護基である。
【0092】
[0093]本明細書でアリール化試薬の実験組成を表すのに用いる式[Ar]Mにおいて、下付記号n、p及びqはそれぞれ、金属M1モル当量に対するアリール部分Arのモル当量、陰イオンのYのモル当量、及び対の陽イオンMのモル当量を表す。式[Ar]Mは、合成された各成分に基づくアリール化試薬の実験式を表し、必ずしも分子式を表していない。当業者にとっては自明であるが、金属種を有する混合配位子の場合、これら金属配位子は溶液中で交換し得る。これは、関連する金属種の混合物が共存することを意味する。さらに、当業者にとっては自明であるが、いくつかの金属種は、ある条件でモノマー又は二量体、オリゴマー、ポリマーなどの非モノマー体として存在することができる。さらに、当業者にとっては自明であるが、分子レベルで陰イオンYはM又はMのいずれか、又は陽イオンM及びMの両方と会合していてもよい。したがって、式[Ar]Mは、アリール化試薬の表記を表すためのみに提供されたものであり、アリール化反応を起こす正確な種や混合物は、この式とは異なることがある。
【0093】
[0094]アリール化試薬の化学反応性及び化学選択性は、金属Mの配位子Ar、Y、他の会合しているイオンMの相対的なモル量を変えることにより変化させることができる。特に、YのMに対するモル比を増減させながらArのMに対するモル比を増減させることは、アリール化試薬[Ar]Mの化学反応性及び化学選択性に大きく影響する。一般に、YのMに対するモル比を増加させて、ArのMに対するモル比を減じると、アリール化試薬の反応性は増すが、副反応の促進によって選択性は低減する可能性があり、得られるアリール化試薬の安定性が低くなる。一方、YのMに対するモル比を減じてArのMに対するモル比を増加させると、アリール化試薬の反応性が減ぜられて反応が遅くなる(またより多くのアリール基が必要になり、原料コストが増加する可能性がある)が、反応の化学選択性は向上する。M錯体に会合しているMイオンを変更することによっても大きく影響する。
【0094】
[0095]すべての要因を考慮し、所望の最終生成物によって、アリール化試薬の反応性及び化学選択性について妥協をする必要がある場合がある。ArのMに対するモル比及びYのMに対するモル比がアリール化試薬(M=Al)の反応性及び化学選択性にとって重要であると判断される場合、使用前に、有機金属試薬及びAlClのテトラヒドロフラン(THF)溶液などのアルミニウム(III)塩溶液をすべて滴定する際に、アリール化試薬の調製中に正確な量が結合するように確認することが最適である。使用まで長期間、試薬を保存する際に濃度や選択した試薬の変化を避ける、あるいは最小にするため、典型的にはグリニャール試薬及びAlClのTHF溶液を約−20℃で保存し、使用する前に周囲温度まで温める。
【0095】
[0096]Mは、酸化状態(原子価として知られている)o(o=n+p−q)を有する金属である。この式構成要素Ar、M、Y及びMの実験的関係を表しており、必ずしも化学的実体を表すものでないとすると、下付記号n、p及びqは整数であってもよく、整数でない数字であってもよい。一般に、下付記号nは1以上6以下の数字である。下付記号pは、0以上6以下の数字である。下付記号qは0以上4以下の数字である。例えば、Mが酸化状態が+3(すなわち、o=3)であるアルミニウム(Al)であるとき、式Ph2.5AlCl0.5で表されるアリール化試薬など、式[Ar2.5AlY0.5]Mで表されるように、nは2.5でありpは0.5である。式Ph2.5AlCl0.5で表されるアリール化試薬は、2モルのAlClと5モルのPhMgClの金属交換反応(塩メタセシス反応)により調製されてもよい。
【0096】
[0097]当業者には自明であるが、化合物Ph2.5AlCl0.5は独立した化学実体として存在することができない。むしろ、この式は、アルミニウムイオン1モルあたり、2.5モルのフェニル陰イオン及び0.5モルのクロリドが存在することを意味する。つまり、PhAl及びPhAlClを様々な量で含み、PhAlClなど可能性のある他の種を含む種の統計的な混合物として存在する。
【0097】
[0098]Mは、遷移金属、卑金属、アルカリ土類金属及びランタノイド、特にAl、Ga、Zn、Cu、Mn、Mg、In、Li、及びBなどの半金属(図9を参照)を含む。
【0098】
[0099]Yは、1つ又はそれを超える陰イオンであり、ハライド、スルホネート、シアニド、アルコキシド(式II又はXIの化合物が脱プロトン化されたC3−O水酸基を含む)、フェノレート、カルボキシレート、又はカルバニオン(反応に関与せず反応しない配位子、又はC3−OH基の脱プロトン化のための塩基として作用することにより反応に関与のみする配位子)などを含むが、これらに限定されない。陰イオンYが1種以上ある場合、下付記号pはM1モル当量あたりの陰イオンの合計モル当量である。
【0099】
[0100]Mは、1つ又はそれを超える陽イオンであり、Li、Na、K及びMgを含むが、これらに限定されない。陽イオンの対イオンMが1つ以上ある場合、下付記号qは陽イオンの合計数である。Y及びMは、存在してもしなくてもよい。Mが存在しない場合、[Ar]Mは単に式Arとして表される。Y及びMの両方が存在しない場合、[Ar]Mは単に式Ar(例えばアリール化試薬PhAl)として表される。
【0100】
[0101]アリールアルミニウム試薬などのルイス酸アリール化試薬は、エーテルなどのルイス塩基と安定したルイス酸−ルイス塩基付加物を形成することが、関連技術(例えばTetrahedron: Asymmetry 2009, 20, 1407-1412を参照)において知られている。したがって、式[Ar]Mのアリール化試薬は、エーテル(例えばジエチルエーテル(EtO)、BuO、PhOMe、又はTHF)などのルイス塩基性有機化合物と形成したルイス酸−ルイス塩基錯体として用いてもよい。しかしながら、これら錯体の有無や性質がアリール化試薬の反応性及び化学選択性に影響するかもしれないが、本明細書ではアリール化試薬の式でこれら錯体を特定することは意図しない。図9は、本発明に有用な金属化アリール化合物[Ar]Mのいくつかを示している。
【0101】
[0102]いくつかの例において、[Ar]Mは、市販の試薬(例えば、PhAlなど)であってもよく、あるいはアリール化反応の前に必須の出発材料を混合して合成してもよい。例えば、PhAlを商業的な供給源から購入してもよく、あるいはアリール化反応を行う前に、1モル当量のAlCl又はAlBrと、3モル当量のPhMgBr、PhMgCl、又はPhLi、又は他の好適な有機金属試薬とを金属交換反応させて合成してもよい。
【0102】
[0103]アリール化試薬の純度及びアリール化試薬を合成するのに用いる出発材料もまた、アリール化試薬の反応性及び化学選択性に影響を与え得る。特定の理論に縛られるものではないが、これは、LiCl、LiBr、MgCl、MgBrなどの金属交換反応塩副生成物をアリール化の前に取り除かなければ、アリール化試薬と相互作用して、化学的な性質を変えてしまうからだと思われる。アリール化試薬は、精製されていない形態又は(沈殿、結晶化、又は金属交換反応副生成物塩を実質的に溶解することができない溶媒への抽出などによって得られた)精製された形態で用いてもよく、あるいはM(p=o)をArn’でインサイチュ(in situ)反応により形成してもよい。いくつかの態様では、MがAlであり、Ar陰イオンがアリールリチウム化合物(ArLi)又はアリールグリニャール試薬に由来する場合、アリール化試薬の合成から生じたLiCl及びMgClなどの塩副生成物がアリール化反応を妨げるため、アリール化試薬を精製された形態で用いることが好ましい。三置換有機アルミニウム種(オルガノアラン)の合成及び精製が文献に記載されている(例えば、6種のトリアリールアルミニウム(ArAl)錯体についてはJ. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14808-14809の補助情報の項、いくつかのトリフェニルアルミニウム(PhAl)錯体についてはTetrahedron: Asymmetry 2009, 20, 1407-1412を参照)。トリアリールアルミニウム化合物ArAlは、二量体ArAlとして存在してもよいが、本明細書では簡便さから実験式ArAlとして表すものとする。アリール化試薬を精製する一つの方法は、AlClとPhMgBrのメタセシス反応によって形成された粗アリール化試薬をBuOと混合して、望ましくないハロゲン化マグネシウム塩を沈殿させることである。PhAlのBuO溶液を濾過して塩から分離し、直接、アリール化反応に用いることができる。Arn’はアリールリチウム化合物及びアリールグリニャール試薬を含むが、それらに限定されない。
【0103】
[0104][Ar]Mは、例えばArAl、Ar2.5AlX0.5、ArAlLi、ArAlMgX(Xはハライド(クロリド、ブロミドなど)、フェノキシド又は置換体フェノキシド、又はスルホネートであり、Arは上述のようにアリール基である)を含む。
【0104】
[0105]いつくかの金属化アリール化合物(式[Ar]M)は、金属塩(M、下付記号oはMの酸化数であり、Mに対する対の陰イオンYの数)と、アリールリチウム(ArLi)、アリールグリニャール試薬(ArMgX、Xはハライド)、又はアリールアルミニウム試薬(ArAl)との金属交換反応により簡便に調製できる。これら試薬は購入してもよく、関連技術において周知の方法で調製してもよい。例えば、PhAlは、1モルのAlClを3モルのPhLi、又はPhMgCl、又はPhMgBrで反応させて調製することができる。
【0105】
[0106]リチウム及びマグネシウム塩副生成物がアリール化反応を妨げ得るとすると、ArAlの金属交換反応により、式Ar(MはAl)の金属化アリール化合物を直接調製することがより好ましい。これにより、ハロゲン化マグネシウムなどの望ましくない塩、及びAlYのない金属化アリール化合物が得られる。例えば、アリール化反応の前に、1モル当量の好適なAlCl溶媒と2モル当量の好適なPhAl溶媒とを周囲温度で1時間未満、約1時間、又は数時間混合することにより、式PhAlClで表されるアリール化試薬を簡便に調製することができる。ArAlとAlYの金属交換反応により、式ArAlYで表されるアリール化試薬を直接調製する態様では、ArAlとAlY試薬のモル比を変化させることにより下付記号の値n及びpを変える。Yは、クロリド及びブロミドなどのハライド、メタンスルホネート及びトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート又はOTfとして知られている)などのスルホネート、2,6−ジハロフェノレート及び2,3,4,5,6−ペンタハロフェノレートなどのフェノレート誘導体を含むフェノレート、トリフルオロアセテートなどのカルボキシレート、アリール又はアルキルなどのカルバニオンからなる群から選択できる。
【0106】
[0107]あるいは、M=Alのとき、式ArAl2/3のアリールセスキハロゲン化物(ArAlY及びArAlYの混合物を表す)は、アルミニウム金属を式ArYのハロゲン化アリールに酸化付加することにより調製することができる(例えばAnn. Chem. 1962, 654, 23、及びNature Chemistry 2010, 2, 313-318を参照)。これらのアリールセスキハロゲン化物は本発明のアリール化試薬として有用であり、あるいは、グリニャール試薬及びアリールリチウム化合物などのアリール有機金属試薬Arn’とさらに反応させて修飾させることもできる。
【0107】
[0108]アリール化反応は、式II又はXIの化合物をアルミニウム混合物に加え、場合により任意の低沸点溶媒を蒸発させ、上昇させた温度で混合物を加熱することにより、簡便に行われる。好ましい態様において、アリール化試薬はアリールアルミニウム化合物である。より好ましい態様において、アリール化試薬は式ArAlClで表されるアリールクロロアルミニウム化合物である。
【0108】
[0109]アリール化試薬はまた、限定された量、化学量論量、又は過剰な量の[Ar]Mを式II又はXIの化合物(R及びRの両方が水素である)と反応させて金属Mと1,6−アンヒドログルコピラノースの金属錯体を生成することにより、調製することができる。これら金属アルコキシ錯体は、場合により単離してもよく、アリール化反応に直接用いてもよい。
【0109】
[0110]Mがアルミニウム(Al)であるいくつかの態様では、式[ArAlY]Mのアリール化試薬は、ArAlをAlY(Yはハライド(クロリド及びブロミド)、フェノレート、アルコキシド、カルボキシレート、又はスルホネート)と金属交換反応させることにより、簡便に調製することができる。
【0110】
[0111]また、ArAlとAlYのモル比が異なれば、有意に異なる反応性及び化学選択性を有するアリール化試薬が得られる。ある例では、アリール化試薬(1.0モル当量のAlCl(すなわち、Y=Cl)と3モル当量のPhAlから調製)で式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)をアリール化すると、130℃(槽の外温)でPhOMe/BuO溶媒中で約3時間加熱することにより式IVの化合物(R=TBDPSかつR=H)を収率80%で得た。この例では、アリール化試薬は塩基としての役割も果たして、C3−OHを脱プロトン化した。これに対して、1.7モル当量のPhAl及び0.3モル当量のAlClのプレミックスを用いて式IVの化合物(R=TBDPSかつR=H)のアリール化を130℃(槽の外温)でPhOMe/BuO溶媒中で8時間行ったところ、収率は73%であった。さらにこれに対して、AlClの非存在下、2.0モル当量のPhAlを用いて式IVの化合物(R=TBDPSかつR=H)のアリール化を130℃(槽の外温)でPhOMe/BuO溶媒中で31時間行ったところ、収率は66%であった。
【0111】
[0112]特定の理論に縛られるものではないが、AlYとArMgBrの金属交換反応、AlYとArLiの金属交換反応、又はAlYのArAlの金属交換反応が効果的に起きて、アリール化反応工程の加熱の前に行う前混合段階で、あるいはアリール化反応工程の初期の初期加熱の際にArAlYが生成される。一例として、AlCl及びPhMgBrを周囲温度で1時間混合すると、アリール化反応の前に試薬を同じ条件で16時間混合した場合に匹敵するアリール化収率、反応性及び化学選択性を有するアリール化試薬が得られた。
【0112】
[0113]一つの態様において、アリール化反応は、アリール化試薬を塩基で脱プロトン化した式II又はXIの化合物(Rは保護基、R=M、MはNa、Li、K、Al又はMgX(Xはハライド又は脱プロトン化された式II又はXIの化合物の他の分子))と接触させて二量体を形成することにより行う。式II又はXIの化合物の脱プロトン化プロセスはまたアリール化試薬ArAlYによっても行うことができるが、このプロセスは昇温が必要である。また、Ar基が塩基として作用し、1モル当量のArが無駄になるため、コスト効率が悪い。したがって、脱プロトン化のこの方法は、原料コストの点からあまり好ましくない。アリール化試薬に直接接触させることによる式II又はXIの化合物(R=H)のインサイチュ(in situ)脱プロトン化プロセスは急速で、実質的にアリール化反応が起こる前に完了する。アリール化反応の前の、式II又はXIの化合物(Rは保護基、かつR=H)の脱プロトン化は、安価で商業的に入手しやすいn−ブチルリチウム(n−BuLi)溶液(ヘキサンなどに供給)又はジイソブチルアルミニウム(i−BuAlH;DIBAL)溶液(PhMeなどに供給)1モル当量と接触させることにより、周囲温度またそれ以下の温度で素早く、簡便に達成することができる。アリール化反応の前に式IIの化合物(Rは保護基、かつR=H)の脱プロトン化を行う好ましい態様では、1モル当量のn−BuLi又はi−BuAlH溶液が用いられる。脱プロトン化を行い、脱プロトン化された式IIの化合物(Rは保護基、かつR=Li又はR=Al(i−Bu))をアリール化試薬と混合した後、場合により塩基の溶液を含む低沸点溶媒を蒸発させ、アリール化工程を行う。
【0113】
[0114]本明細書で記載するアリール化法では、場合によりルイス酸Mを添加物として追加で用いることができる。ルイス酸は、金属又は半金属M、及び陰イオンなどの配位子Y、又は陰イオンの組み合わせを含む。下付記号rは1〜7の数字である。Mには、三ハロゲン化ホウ素(BF、BF・EtO、BClなど)及び他のホウ素系ルイス酸(ボレートなど)、アルミニウム系ルイス酸(AlClなど)、チタン系ルイス酸(TiCl及びTi(Oi−Pr、及びこれらの混合物など)、スズ系ルイス酸(SnClなど)、亜鉛系ルイス酸(ZnClなど)、マグネシウム系ルイス酸(MgCl、MgBr2、Mg(OTf)など)、リチウム系ルイス酸(LiOTf、LiOClOなど)、スカンジウム系ルイス酸(Sc(OTf)など)、Ln(OTf)で表されるランタノイド系ルイス酸(LnはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、遷移金属ルイス酸(ZrCl、Zr(OTf)、HfCl、Hf(OTf)など)、及びBi(OTf)などがある。非金属ルイス酸Mは、TMSOTf、TESOTf、及びTBSOTfなどがあるが、これらに限定されない。
【0114】
[0115]ルイス酸を意図的に反応に加えて反応を促進してもよく、ルイス酸はアリール化試薬[Ar]Mの合成の結果、反応混合物として存在してもよい。例えば、1モルのAlCl及び3モルのPhMgClからPhAlを合成すると、副生成物として3モルのルイス酸MgClが生じる。ある種の塩が[Ar]Mと錯体を形成することは当業者には自明であるが、本明細書では、式[Ar]Mにおけるこれら無関係の塩を網羅する意図はない。1モルのAlCl及び3モルのPhMgClから調製され、精製されていない粗PhAlは、PhAl及びMgClの両方を含むことがある。これらの種は、溶液中に別々の分子として存在していてもよく、あるいは[PhAlCl]MgClなどの錯体を形成していてもよい。
【0115】
[0116]いくつかの態様では、ルイス酸を加えると、アリール化反応の速度、化学選択性及び収率に大きく影響することがある。いくつかの場合、この影響は好ましくないものであり得る。例えば、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)をPhOMe/BuOの混合溶媒に溶解した2モル当量のPhAlにて130℃(槽の外温)でアリール化した場合、6モル当量のLiClを反応に加えると、対照試験の分析による収率67%の半分以上低下して22%となり、副反応のレベルが増加した。同じ反応条件で、1モル当量のMgClを加えると、対照試験の分析による収率67%が51%に低下し、4モル当量のMgClを加えると、対照試験の分析による収率67%が5%に低下した。MgBr又はMg(OTf)を加えると、反応への影響は好ましくないものの、あまり目立たなくなった。さらに、非金属ハロゲン化物塩はアリール化反応に好ましくない影響を与え得る。例えば、1モル当量の塩化テトラフェニルホスホニウム(PhPCl)を試験的に加えて、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)をPhOMe/BuOの混合溶媒に溶解した2モル当量のPhAlにて130℃(槽の外温)でアリール化反応させると、対照試験の分析による収率67%の半分以上低下して32%となった。
【0116】
[0117]したがって、いくつかの例では、非金属ハロゲン化物塩又は無関係の金属ハロゲン化物塩(意図的に用いるハロゲン化アルミニウム塩を除く)の非存在下でアリール化反応を行うことが好ましい。
【0117】
[0118]これに対して、他の場合では、ルイス酸の添加がアリール化反応の速度、化学選択性及び収率に好ましい影響を与え得る。いくつかの態様では、トリアリールアルミニウム(ArAl)試薬を三置換アルミニウム(III)塩AlY(ただしM=M=AlかつY=Yの場合、ルイス酸Mは式AlYで表すことができる)を併用すると、反応速度を有意に向上させることができる。また、式IIの化合物に対するアリール基Arのモル当量を減らす必要がある。例えば、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)をPhOMe/BuOの混合溶媒に溶解した2モル当量のPhAlにて130℃(槽の外温)でアリール化すると、8時間後の式IVの化合物(R=TBDPSかつR=H)の分析による収率は45%となった(約30時間後には71%に上昇した)。1.7モル当量のPhAlを0.3モル当量のルイス酸AlClと併用すると、8時間後の分析による収率は73%であった。
【0118】
[0119]以上のことから、当業者には自明であるが、ルイス酸添加剤はアリール化反応に好ましい影響、好ましくない影響の両方を及ぼし得るが、当業者であれば最適な結果を得ることができる。好ましい態様において、このルイス酸はアルミニウム(III)塩AlY(Yはハライド、フェノレート、スルホネート、カルボキシレート、アルコキシド、カルバニオンなどを含む)であり、好ましくはAlCl又はAlBrなどの三ハロゲン化アルミニウムである。
【0119】
[0120]当業者には自明であるが、[Ar]M及びMを併用する場合、陰イオンY及びYは、M、又はM、又はMのいずれかとアリール化反応中に会合してもよい。これは、[Ar]M及びMが混合すると、陰イオン配位子が金属陽イオンと液相において交換され得るからである。同様に、当業者には自明であるが、[Ar]M及びMを併用する場合、陽イオンM、又はM、又はMがアリール化反応中に交換し得る。したがって、Mを反応混合物に添加するけれども、本明細書ではこの種及び[Ar]Mが反応混合物中、分子レベルでの状態を述べる意図はない。また、当業者には自明であるが、M=M=Alの場合、アリール化試薬ArAlとルイス酸AlYとは結合して、式ArAlYで表される混成アリール化試薬を形成することができる。ここで、下付記号n及びpの値は、結合するArAlとAlYのモル比に依存する。
【0120】
[0121]いくつかの態様では、ArAl又はArAlY(n+p=3、かつYはハライド(例えばクロリド)、フェノキシド、スルホネート、アルコキシド、カルボキシレート、又はアルコキシド)であり、Arは上述のようにアリール基である)など、金属化アリール化合物[Ar]Mで処理して、添加されたルイス酸(式M)の存在下又は非存在下で式XIの化合物を式Iの化合物に変換する。アリール化反応の前にトリアリールアルミニウム(ArAl)試薬をAlClと前混合して式ArAlCl(n+p=3)で表されるアリール化試薬を提供することは、アリール化反応の速度の点では利点があることが証明されているが、AlCl及びBF(そのエーテル錯体BF・EtOなど)などのルイス酸を、すでに部分的に反応したArAlを含有するアリール化反応混合物に加えることもまた有用であることが証明されている。
【0121】
[0122]式XIの化合物の調製、それに続くアリール化は、以下のような異なる操作手法を用いて行うことができる。i)XIを単離することなく、式XIの化合物を合成し、その後アリール化する。ii)式XIの化合物を合成し、場合により精製により化合物を単離し、その後アリール化する。iii)単離を行う、又は単離を行うことなく、式XIの化合物を合成し、周囲温度で(すなわち、加熱することなく)金属化アリール化合物[Ar]M(例えばArAl又はArAlY(n+p=3、かつYはクロリドなどのハライド))と接触させて、XIと[Ar]Mの錯体を形成する。これは、場合により、(沈殿させて溶媒相から分離させるなど)固体として単離してもよく、その後、溶媒中で加熱してアリール化を行う。特定の理論に縛られるものではないが、この錯体は、アリール化試薬のAl原子と式XIの化合物のC3−O基との間にAl−O結合を含んでいると推定され、それは、アリール化試薬によって生じた1モル当量のアリール陰イオンによるC3−OH基の脱プロトン化時に形成されたものである。この錯体が溶媒に不溶性である場合、沈殿させて、濾過により単離することができる。例えば、式XIの化合物(R=Ph)のPhMe溶液を周囲温度で1モル当量のPhAlのBuO溶液で処理した場合、湿分のある高感度白色沈殿物が5分以内に形成された。この白色沈殿物を約110℃で加熱すると、PhMe/BuO混合溶媒に溶解し、式Iの化合物(Ar=Ph)に変換された。追加の操作手法としては、上述の手法i)又はii)に従うことであるが、アリール化反応の前に式XIの化合物をi−BuAlHなどのアルミニウム塩基RAlと反応させる。これは、より経済的であることから、手法iii)よりも好ましい。なぜなら、アリール化試薬自体のAr基によってC3−OHが脱プロトン化されるため、アリール化試薬の一部が無駄にならないからである。
【0122】
[0123]このように、他の態様では、式XIの化合物の合成の後、金属化アリール化合物[Ar]M(例えばArAl又はArAlY(n+p=3かつYはハライド、フェノキシド、スルホネート、アルコキシド、カルボキシレート、又はアルコキシド))と接触させる前に、式XIの化合物を塩基で脱プロトン化する。アリール化反応の前の脱プロトン化に用いる塩基は、好ましくはNaH、LiH、KH、MgH、LHMDS、NaHMDS、i−BuAlH、n−BuLi、s−BuLi、t−BuLi、PhLi、PhMgBr、i−PrMgCl、又はLDAなどの強塩基である。より好ましくは、この塩基は、n−BuLiなどのリチウム塩基、あるいはi−BuAlHなどのアルミニウム塩基である。好ましくは、塩基で式XIの化合物を、周囲温度又はそれ以下の温度(0℃、−20℃、−40℃、−60℃、又は78℃など)で脱プロトン化する。好ましくは、式XIの化合物の量に対して塩基を1モル当量だけ用いる。
【0123】
[0124]本発明のアリール化反応は、β−アノマーに対して立体選択性を有する。すなわち、所望のβ−C−アリールグルコシドをアリール化反応の主要なC−アリールグルコシド立体異性体生成物として得ながら、共生成物として望ましくないα−C−アリールグルコシドがわずかな量で形成されるか、形成されても検出できない(すなわち、分析方法の検出の限界以内の)量の望ましくないα−C−アリールグルコシドが形成される。例えば、XIaをPhAlのPhCN溶液でアリール化すると、HPLCによる分析からわかるようにもっぱらβ−C−フェニルグルコシドIa(図11)が形成される。α−C−フェニルグルコシドIa−aはHPLCによる分析によっても、α−アノマーIa−aの標準試料との比較によるHPLCクロマトグラムの質量分析によっても検出することがでなかった。これはこの反応が高い立体選択性を有することを示している。さらに、例えば、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H(すなわち、II’’))を、予めC3−OHを脱プロトン化して、Ph2.5AlX0.5(XはCl、又はBr又は混合物)のPhOMe溶液にて100℃を超える温度でアリール化すると、式IVの化合物(R=TBDPS、R=H、かつAr=Ph(すなわち、IVa’’))のβ−アノマーのみが生成される。さらに、例えば、式IIの化合物(R及びRはベンジル)をPhAlのBuO溶液でアリール化して、ベンジル化すると、周知の(Tetrahedron: Asymmetry 2003, 14, 3243-3247)テトラ−O−ベンジル誘導体を形成する。(HPLCによる分析から)β−C−フェニルグルコシド VIa''''/α−C−フェニルグルコシド VIa−a''''(R、R及びRはベンジル)(図12)の99.6:0.4混合物であることがわかる。これはこの反応が高い立体選択性を有することを示している。さらに、例えば、PhAlのジオキサン溶液で処理した式IIIの化合物をアリール化すると、β−C−フェニルグルコシドIa/α−C−フェニルグルコシドIa−a(図13)の97.6:2.4混合物が得られる。他の例では、DIBALのPhMe溶液で処理した式IIIの化合物をPhAlのPhMe/BuO溶液でアリール化すると、β−C−フェニルグルコシドIa/α−C−フェニルグルコシドIa−a(図14)の93:7混合物が得られる。これはこの反応が立体選択性を有することを示している。
【0124】
[0125]本明細書に記載する、本発明のアルミニウム系アリール化試薬([ArAlY]M)と1,6−アンヒドログルコピラノース化合物との反応は、典型的には化学選択性を有する。すなわち、アリール化反応を好ましい条件で好ましい炭水化物保護基及びアリール化試薬を用いて行うと、いくつかの周知の副反応よりもアリール化が優勢になる。
【0125】
[0126]2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物II(R=TBDPSかつR=Hなど)のアリール化において周知の副反応に脱酸素があり、これにより式XVIIの化合物を生じると思われる。式XVIIの化合物を酸水溶液(例えば、三フッ化酢酸水溶液)など酸性条件で処理すると、(−)−レボグルコセノンやシラノール(t−BuPhSiOH(R=TBDPS)など)が生じことがある。この脱酸素反応は、反応条件を最適化することにより制御でき、例えばArのAlに対する比及びYのAlに対する比を変化させることにより、アリール化試薬の調製及びアリール化試薬[ArAlY]Mの微調整に用いるアルミニウム試薬の品質を制御する。本発明者らはまた、アリール化試薬を調製するのに用いた有機金属試薬及び/又はアルミニウム(III)試薬(すなわち、AlClなどのAlY)の保存中に濃度(力価)が変化及び/又は分解したりすると、所望のアリール化反応に匹敵するほど脱酸素副反応の量が増加することを見出した。したがって、本発明のアリール化試薬の調製に用いる有機金属試薬及び/又はアルミニウム(III)試薬は、所定の高品質なものであることが好ましい。これら試薬の品質を制御することにより、アリール化反応の収率及び再現性を確実に達成できる。一般に、ArのAlに対するモル比が3.0〜1.5(すなわち、nは3.0から1.5)、より好ましくは2.5から2.0(すなわち、nは2.5から2.0)、かつY(Yはクロリド)のAlに対するモル比が1.0以下(すなわち、pは≦1.0)である場合、脱酸素が抑制される。脱酸素はまた、式IIの化合物を約120℃以上の温度でアリール化反応することによっても抑制することができる。
【0126】
[0127]2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノース化合物II(R=R=TBS又はBn)のアリール化における周知の副反応に脱酸素及び二重アリール化がある。これにより、式XVIIIの化合物とアルコール又は式ROHのシラノールが生じると思われる。式IIの化合物の2,3,4−トリ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースをアリール化して式IVの2,3,4−トリ−O−保護されたアリール化物のより高い収率を得るための化学選択性は、アリール化試薬として、ArAlClなどのアリールハロアルミニウム化合物ではなくトリアリールアルミニウム化合物ArAlを用いることによって向上させることができる。この副反応はまた、シリル保護基ではなく、ベンジル保護基又はその誘導体を用いることにより最小にすることができる。
【0127】
[0128]2,4−O−ボロン酸エステルで保護した1,6−アンヒドログルコピラノース化合物XIのアリール化における周知の副反応に、ボロン酸エステルのホウ素原子上の炭素系置換基のアリール化試薬のアルミニウム原子による交換がある。これにより、アノマー位置がアリール化試薬のアリール基ではなく、ボロン酸エステルのホウ素原子からの炭素系置換基で置換された式XIVの化合物が少量形成されることがある。この副反応は、例えば以下のようないくつかの方法で抑制することができる。i)ボロン置換基Rが好適な電子的及び立体特性を有する基を転移させない、あるいは転移させにくいボロン酸エステルを選択する。ii)ホウ素原子からの炭素系置換基がアリール化試薬(すなわち式XIの化合物(R=Ar))のアリール基と同じアリール基Arであるボロン酸エステルを用いる。iii)炭素系の転移可能基が反応基質にない式XIIIのジボロン酸エステルを用いる。
【0128】
【化12】
【0129】
[0129]周知の副反応は他に、アリール化試薬に由来するアリール基Arが式ArArのビアリール化合物を形成する二量化がある。この副反応は一般に軽微なものであるが、アリール化試薬[ArAlY]MにおけるArのAlに対するモル比を3.0未満(すなわち、nは<3.0)に抑えることにより抑制することができる。また、ArのAlに対するモル比が2.5未満(すなわち、nは<2.5)の場合、さらに抑制される。ある種の金属汚染物質はこの二量化を促進することができる(J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 13788-13789及びNature Chem. 2010, 2, 313-318を参照)。
【0130】
[0130]アリール化反応は一般に、非プロトン性溶媒などの不活性溶媒やそれらの混合溶媒中で行う。溶媒又は混合溶媒は一般に、金属化アリール化合物[Ar]Mとの親和性を有するものである。好適な溶媒には、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化芳香族炭化水素、複素芳香族化合物、エーテル、及びニトリル(例えば、ジクロロメタン(DCM)、キシレン(いずれかの異性体又はそれらの混合物)、トルエン(PhMe)、アニソール(PhOMe)、フェネトール(PhOEt)、ジ−n−ブチルエーテル(BuO)、ジフェニルエーテル(PhO)、クロロベンゼン(PhCl)、1,4−ジオキサン(ジオキサン)、ベンゾニトリル(PhCN)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などを含む)などがあるが、これらに限定されない。エーテル溶媒には、金属化アリール化合物[Ar]Mの存在下、高温で長時間加熱していると部分的に分解を受けるものがある。例えば、PhOMeは、式ArAlClの金属化アリール化合物の存在下でフェノールに変換される。これによりアリール化試薬の一部は壊れるが、特にアリール化反応自体が急速に起こる場合は、これは大きな問題ではない。さらに、PhCNなどいくつかのニトリル溶媒は、アリール化試薬と反応することがあるが、反応基質(式XIの化合物など)の高い反応性によりアリール化反応が急速に起こる場合、このことはあまり重要ではない。また、130℃以下の低い反応温度で抑制される。当業者には自明であるが、金属化アリール化合物[Ar]M及びその前駆体(例えば、グリニャール及びアリールリチウム化合物)は、酸素及び水分に敏感であり、したがって、試薬の合成及び取り扱いや、アリール化反応自体を乾燥した酸素のない条件で行わなければならない。これは、試薬の調製及びアリール化反応時に、分子篩いを通す、あるいは当該分野で周知の他の方法によって乾燥した溶媒と、乾燥した不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)とを用いて従来の反応容器中で達成することができる。本発明において、PhOMe、ジオキサン、及びPhCNなどのルイス塩基性溶媒が特に有用であることがわかった。PhOMeが式IIの化合物(R=TBDPS又はTBS、かつR=H)のアリール化反応にとって好ましい溶媒である一方、ジオキサンが式IIIの化合物のアリール化反応にとって好ましい溶媒であり、PhCNが式XIの化合物(R=Ph)のアリール化反応にとって好ましい溶媒であった。PhOMeもまた、式XIの化合物(R=Ph)のアリール化反応において特に有用な溶媒であった。特定の理論に縛られるものではないが、ルイス塩基性、十分な溶媒和力、及び溶媒の十分に高い沸点の組み合わせが本発明におけるより有用な溶媒のすぐれた特性に寄与していると思われる。
【0131】
[0131]いくつかの態様では、75℃より高い沸点を有する溶媒が好ましい。好ましくは、約80℃から180℃の間の内温でアリール化反応を行うが、最適反応温度は、反応濃度、用いるアリール化試薬のAr基の化学構造、炭水化物の水酸基を保護するのに用いる保護基及びその配置など、使用する反応条件の組み合わせに依存する。例えば、ある種のAr基を用いるアリール化反応は、4時間未満など、素早く反応が完了するが、他のAr基を用いる他のアリール化反応では12時間以上など、反応により時間がかかる。
【0132】
[0132]最も好ましくは、式IVの化合物が最大収率(HPLC純度分析及び当業者に周知のHPLCによる分析技術により反応の監視を行うことにより決定できる)に到達するや否や、反応混合物の加熱を終了することである。いくつかの態様では、最大化学収率に達した時点を過ぎて生成混合物をさらに加熱していると、ある種のアリール基Arによりアリール化物が部分的に分解することがある。本発明者は、反応系(例えば、溶媒、反応濃度など)が異なり、炭水化物に異なるアリール基と異なるヒドロキシル保護基を用いると、この分解の量及び速度は有意に変化することを見出した。例えば、最大化学収率に達した時点を超えて、形成された式IV(R=TBDPS、R=H、かつAr=4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、又は2−チエニル)のアリール化物をアリール化反応混合物で100℃を超える温度で加熱すると、アリール化物は部分的に分解した。一例として、この加熱が約12〜16時間に渡ると式IV(R=TBDPSかつR=H)の4−メトキシフェニルアリール化物及び2−チエニルアリール化物の化学収率は半減した。一方、同じ条件で、式IVの2−フリル、フェニル、及びその他多数のフェニル誘導アリール化物は有意な分解を受けなかった。さらに、式IIの化合物(R=H)のアリール化が典型的には約110℃を超える温度を必要とするのに対して、ボロン酸エステルXI(R=H)は100℃以下、例えば80℃のより低い温度でアリール化することができる。
【0133】
[0133]例えば、PhMeなどの非ルイス塩基性溶媒よりも、例えば、PhOMeなどの穏やかなルイス塩基性溶媒がより好ましいことを見出した。一例として、以下でPhMeとPhOMeを直接比較する。まず、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)を1モル当量のPhMgBrで脱プロトン化し、式Ph2.5AlX0.5(XはCl及びBr)で表されるアリール化試薬1.5モル当量でアリール化した。このアリール化試薬は、アリール化反応の前に槽の外温130℃でPhMe溶媒中、1.5モル当量のAlClと3.75モル当量のPhMgBrと混合することにより調製した。この場合、HPLCによる分析で決定した最大化学収率は42%であった。同じ条件で、溶媒としてPhOMeを用いると、64%の収率が得られた。特定の理論に縛られるものではないが、これはエーテル溶媒が次のことから恩恵を受けるからであると思われる。i)アリール化試薬の凝集体が分解し、アリール化試薬の溶解性が向上する。ii)アリール化試薬又はルイス酸の交代がアリール化反応の促進を補助する。あるいはiii)錯体化により、アリール化試薬の電子が増加して、アリール基Arの求核性が高まる。沸点や溶媒和力など、PhOMeの、反応混合物全体を均一に保持するいくつかの特性により、PhOMeがいくつかの態様(式IIの化合物(RはTBS又はTBDPSなどのシリル保護基、かつR=H)のアリール化の態様など)において最も好ましい溶媒となる。
【0134】
[0134]沸点の低い(例えば、90℃以下)いくつかのエーテル溶媒(THFなど)はアリール化反応の速度を下げることがわかった。例えば、式Ph2.5AlCl0.5で表されるアリール化試薬をTHFなどのエーテル溶媒中で、AlClとPhMgClとの金属交換反応により調製した場合、残った低沸点エーテル溶媒がアリール化反応の速度を遅くした。この問題を避けるため、好ましいアリール化反応溶媒中で、この溶媒をアリール化試薬の合成に用いることができる状況でアリール化試薬[Ar]Mを調製することができる。あるいは、場合により[Ar]M混合物から低沸点溶媒の残りを取り除く溶媒交換を行い、上記の問題を回避する。実際、本発明者らは、揮発性の高い溶媒を取り除く溶媒蒸発工程を行い、アリール化反応を開始する前に第二の高沸点溶媒で希釈することにより、アリール化反応速度が大幅に向上することを見出した。あるいは、この「溶媒交換」操作は、低沸点溶媒をあらかじめ蒸発させずに、アリール化試薬の元の低沸点溶媒を高沸点溶媒で希釈し、次いで混合物から低沸点溶媒を留去することで行うことができ、これにより、アリール化試薬の高沸点溶媒溶液が得られる。本明細書に記載した溶媒交換操作法がアリール化反応自体に影響を及ぼさないとすると、製造設備で用いる方法は、その製造設備にとって最も時間効率及びコスト効率のよいものとして決定されるはずである。
【0135】
[0135]Rがシリル保護基であり、Rが水素である態様では、広範な溶媒をアリール化反応に用いることができるが、PhOMeなどいくつかの溶媒がより好ましい。アリール化反応の前に式IIの化合物を塩基で脱プロトン化する場合、続くアリール化反応は溶媒としてのPhMe中で有効に機能する。この場合、あらかじめ溶媒交換を行って低沸点エーテル溶媒を取り除くことが有用である。式Ar2.5AlCl0.5で表される金属化アリール化合物を2から4モル当量、好ましくは約2当量用いて、コストを最小にする。溶媒としてのPhMe中に金属化アリール化合物Ar2.5AlCl0.5が2当量未満(例えば1.5モル当量)であると、上述のように化学収率が有意に低下してアリール化反応の効率が低下する。これに対して、アリール化反応の前に塩基で式IIの化合物(Rはシリル保護基、かつR=H)を脱プロトン化し、アリール化溶媒としてPhOMeを用いてアリール化反応を行うと、1.5モル当量、さらには1.2当量の式Ar2.5AlCl0.5で表される金属化アリール化合物を用いても反応は有効に機能する。このように、溶媒としてPhOMeを用いると、化合物II(R=H)に対して必要な金属化アリール化合物[Ar]Mのモル当量を有意に低下させることができ、よりコスト効率の高い反応とすることができる。
【0136】
[0136]2,4−ジ−O−保護された1,6−アンヒドログルコピラノースII(R=H)を金属化アリール化合物でアリール化する、好ましくはn−BuLiなどの塩基でアリール化反応の前に脱プロトン化を行うと、Mとアリール基のモル比がアリール化反応の効率に影響を及ぼし得る。式[Ar]Mのアリール化試薬のMがAlではない場合、モル比M/Arは約1:1〜1:6で変えることができる。すなわち、下付記号の値nは1〜6である。好ましい態様のようにMがAlである場合、モル比M/Arは約1:1〜1:4で変えることができる。すなわち、下付記号の値nは1〜4である。アリール化は広範な値nで生じ得るが、本発明者らは、効率、すなわちアリール化速度と望ましくない副生成物の量は、ArのMに対する比に非常に依存していることを見出した。したがってArのMに対する比のある範囲は、他の範囲より好ましい。
【0137】
[0137]MがAlであり、アリール化反応の前に塩基で式IIの化合物(R=H)が脱プロトン化されている場合、好ましくはnは約2.0〜2.5の範囲である(すなわち、MのArに対する比は好ましくは約1:2.0〜1:2.5)。アリール化反応の前に式IIの化合物(R=H)が脱プロトン化されていない場合、アリール基Arの量は一般に、保護されていないC3−O水酸基に暴露している間に失われるアリール基の一部に相当する量だけ増加させる。そして、nは3.0〜3.5であることが好ましい。MがAlであり、nが2.5(すなわち、AlのArに対する比が約1:2.5)であり、アリール化反応の前に塩基で式IIの化合物が脱プロトン化されている場合、nが2.0の(かつ、アリール化試薬の前に塩基で式IIの化合物が脱プロトン化されている)場合に比べてアリール化反応速度が低いことがわかった。nが2.0の場合、アリール化反応速度は速いが、副反応のために収率が低かった。MがAlであり、nが3(すなわち、モル比Al:Arが約1:3)であり、かつアリール化反応の前に式IIの化合物(R=H)が脱プロトン化されている場合、アリール化反応速度が有意に低下することがわかった。
【0138】
[0138]一般に、本発明者らは、ArのAlに対する比が低い(例えばn=1から2未満)場合に比べてArのAlに対する比が高い(例えばn=2〜3)場合、アリール化反応速度は低いが、副生成物の量は少なくなることを見出した。実際、ArのAlに対する比が2:1未満(例えば1.5:1、1:1)であることは最も好ましくない。なぜなら、収率が低くなり、副反応による不純な生成混合物が生じるからである。例えば、2モル当量のアリール化試薬[Ph2.5AlY]M(2.0モル当量のAlClと5.0モル当量のPhMgBrの混合物から調製)で式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H、アリール化反応の前に1モル当量の塩基PhMgBrで脱プロトン化されている)をアリール化すると、130℃(槽の外温)で溶媒としてのPhOMe中で19時間、加熱した後、収率は60%であった。同じ方法、同じ条件で、[Ph3.0AlY]M(2.0モル当量のAlClと6.0モル当量のPhMgBrの混合物から調製)にてアリール化を行うと、30時間で収率は50%と低下した。また、同じ方法、同じ条件で、アリール化試薬[Ph2.0AlY]M(2.0モル当量のAlClと4.0モル当量のPhMgBrの混合物から調製)にて式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)をアリール化すると、7時間で収率は60%であり、[Ph1.5AlY]M(2.0モル当量のAlClと3.0モル当量のPhMgBrの混合物から調製)でアリール化すると、4時間で収率は54%であった。他の例では、アリール化試薬[Ph1.0AlY]M(2.0モル当量のAlClと2.0モル当量のPhMgBrの混合物から調製)にて式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H、アリール化反応の前にPhMgBrで脱プロトン化されている)をアリール化すると、2時間で最大収率は9.8%であった。
【0139】
[0139]転移不可能な配位子(本明細書では「ダミー配位子」ともいう)の使用もまた、式[Ar]Mのアリール化試薬において評価した。アリール基がアリール化試薬のコストのかなりの部分に寄与しているとすると、アリール基Arをハライド、スルホネート、及びフェノキシドなどのダミー配位子で部分的に置換することにより、コストを低減することができる。当業者には自明であるが、アリール基を異なるダミー配位子で置換すると、アリール化試薬の反応性が異なることがある。アリール化試薬のコスト及び反応性を考慮すると、本発明で好ましいダミー配位子はクロリドなどのハライドである。実際、本発明者らは、ハライドダミー配位子を用いると、式Ar(Yはハライドダミー配位子)のアリール化試薬の反応性が向上することを見出した。この態様の式Ar(Yはハライドダミー配位子、かつM=Al)のアリール化試薬は、アリール化反応の前に、周囲温度で好適な溶媒又は混合溶媒中、トリアリールアルミニウム錯体(ArAl)を三ハロゲン化アルミニウム(AlY(Yはハライド))と1時間未満、約1時間、又は数時間混合することにより容易に調製することができる。これらの態様において、式[Ar]Mで表されるアリール化試薬は、より簡潔に式ArAlY(Yはハライド)で表される。
【0140】
[0140]式ArAlY(Yはハライド)で表されるアリール化試薬は、アリール化反応の前に、AlClなどの三ハロゲン化アルミニウムとトリアリールアルミニウムArAlを、好ましくはArAlのAlClに対するモル比が約1:1〜20:1、より好ましくは約1.5.0:1〜15:1で混合することより調製される。ArAlの割合とAlClの割合を過度に増減させると、反応収率が低下する。また、AlClの割合が高すぎると、不純物形成が増加する。また、AlClにかえて、AlBrを用いることもできる。
【0141】
[0141]当業者には自明であるが、式ArAlY(Yはハライドではない)で表される他のアリール化試薬を本発明の1,6−アンヒドログルコピラノース化合物のアリール化に用いることができる。Yが実質的にアリール化基質と反応して副生成物を生成する条件で、例えば、Yは、メタンスルホネート又はトリフルオロメタンスルホネート(トリフレート又はOTfとして知られている)などのスルホネート、フェノレート、2,6−ジハロフェノレート及び2,3,4,5,6−ペンタハロフェノレートなどのフェノレート、トリフルオロアセテートなどのカルボキシレート、アルコキシド、カルバニオンからなる群から選択される。式ArAlY(Yはハライドではない)で表されるアリール化試薬は、アリール化反応の前に、三置換アルミニウム塩AlYとトリアリールアルミニウムArAl化合物を混合することにより調製することができる。AlY化合物は、二量体Alとして存在してもよいが、簡便さのため、本明細書では実験式AlYで表す。AlY(Y=OTf(トリフル酸アルミニウム(III)又はトリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム)、又はY=OPh(アルミニウムフェノキシド))は当該分野で記載されているように調製してもよい(Y=OTfについてはJ. Am. Chem. Soc. 1988, 110, 2560-2565、Y=OCについてはOrganometallics 2007, 26, 2561-2569を参照)。あるいは、商業的な購入源から入手してもよい(例えば、AlY(Y=OTf又はOPh)は市販品である)。
【0142】
[0142]以下の例では、式IIの化合物はアリール化の前に脱プロトン化されていないが、その代わりに、アリール化試薬自体が塩基として作用してC3−OHを脱プロトン化する。一例として、PhOMe/BuO溶媒中で式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)を式PhAl(ダミー配位子Yは存在しない)のアリール化試薬2モル当量と反応させると、31時間130℃で加熱後、式IV(Ar=Ph)の生成物(すなわち、化合物IVa’’)が分析による収率66%で得られた。一方、同じ式IIの化合物を2モル当量の式Ph2.5AlCl0.5(すなわち、ダミー配位子Y=Cl)のアリール化試薬(0.3モル当量のAlClと1.7モル当量のPhAlから調製)と反応させると、8時間加熱後、式IVa’’の生成物が分析による収率73%で得られた。他の例では、同じ条件で、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)を式Ph2.5Al(CO)0.5(ペンタフルオロフェノキシ基はダミー配位子である、すなわち、Y=OC)のアリール化試薬2モル当量と反応させると、12時間後、式IVa’’の生成物が分析による収率73%で得られた。さらに他の例では、同じ条件で、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)を、式Ph2.5Al(OPh)0.5(フェノキシ基はダミー配位子である、すなわち、Y=OPh)のアリール化試薬2モル当量と反応させると、24時間後、式IVa’’の生成物が分析による収率59%で得られた。これらの例から、アリール基Arは部分的にダミー配位子で置換することができること、またアリール化試薬の優れた、あるいは向上した反応性が保たれることがわかる。
【0143】
[0143]フェノキシ配位子及びハライド配位子が有用であることが示されたが、当業者には自明であるように、スルホネート、カルバニオン、シアニド、シアネートなどの擬似ハライドを含む他のダミー配位子も有用であることがある。カルバニオンはアルキル基及びアリール基を含むが、これらダミー配位子を用いる場合、カルバニオンはアリール化反応において実質的にArと競合しないものであることが好ましい。すなわち、ダミー配位子は、アリール化反応中に式IIの化合物と実質的に反応して式XIVの化合物(R=カルバニオンダミー配位子Y)を生成しないものである。好ましい態様では、ダミー配位子はハライドであり、より好ましい態様では、ダミー配位子はクロリドである。特に、式IIの化合物(Rは保護基、かつR=H)を式Ph2.5AlY0.5で表される化合物(0.33モル当量のAlY及び1.66モル当量のPhAlから調製された化合物であって、塩基として作用して、C3−OHを脱プロトン化する)2モル当量でアリール化する場合、クロリドが好ましいダミー配位子Yである。式IIの化合物(Rは保護基、かつR=H)がn−BuLiなど、塩基を有するアリール化試薬と接触する前に脱プロトン化されている場合、2モル当量の式PhAlYで表されるアリール化試薬が好ましく、クロリドが好ましいダミー配位子Yである。
【0144】
[0144]いくつかの態様では式IIの化合物(C2−O及びC4−OのRは鎖を形成し、Rは水素(すなわち、X))を式Iの化合物(RはH)に変換する際、これらに限定されないが、PhMe、PhOMe、PhOEt、PhCl、PhCN、1,2−ジクロロベンゼン、BuO、ジオキサン、MeCN、n−BuCN、及びt−BuCNなどを含む溶媒がアリール化反応において好適である。一つの態様では、式XIの化合物に対して通常必要な量よりも金属化アリール化合物[Ar]Mが少なくて(例えば、わずか約1モル当量)済むので、PhCNが好ましい溶媒であり、アリール化反応を非常に急速に、かつ効率的に行う。溶媒にPhCNを用いるこの態様では、反応を、100℃を超える温度で行ってもよいが、好ましくは約150℃以上で行う。他の溶媒を用いる態様では、反応を、80℃を超える温度で行ってもよいが、好ましくは約100℃又はその溶媒の沸点で行う。他の態様では、PhOMe、BuO、及びPhClが好ましい溶媒であり、約1.5〜2.6モル当量のアリール化試薬を用いる。このアリール化試薬は、好ましくは、式XIの化合物と接触させる前に、AlClなどの三ハロゲン化アルミニウムとトリアリールアルミニウムArAlを周囲温度で1時間未満から数時間混合して調製したものである。
【0145】
[0145]アリール化反応の前にAlClなどの三ハロゲン化アルミニウムとトリアリールアルミニウムArAlを混合してアリール化試薬[Ar]Mを調製する態様では、PhOMeがアリール化反応にとって好適な溶媒である。というのも、PhOMeは許容できる溶媒和特性を有しており、またコスト効率がよく、相対的に毒性がなく、製造面からも好ましい溶媒であるからである。この溶媒はまた、これらに限定されないが、PhMe、PhCl、PhCN、BuO、1,4−ジオキサンなどの他の溶媒(共溶媒)の存在下で効果的に用いることができる。好ましくは、共溶媒の沸点は、必要なアリール化反応温度以上である。したがって、好ましい態様において、式XIの化合物のアリール化は、PhOMeと他の溶媒の混合溶媒中で行うか、より好ましくは追加の溶媒を用いずにPhOMe中で行う。
【0146】
[0146]アリール化反応の前にAlClなどの三ハロゲン化アルミニウムとトリアリールアルミニウムArAlを混合してアリール化試薬[Ar]Mを調製し、アリール化試薬と接触させる前に式XIの化合物を脱プロトン化しない態様では、このアリール化試薬は好ましくはArAlのAlClに対するモル比が約3.5:1〜20:1、より好ましくは約5.0:1〜15:1で調製される。ArAlの割合とAlClの割合を過度に増減させると、反応収率が低下する。また、AlClの割合が高すぎると、不純物形成が増加する。これら好ましい条件で、PhOMe中、約100℃(反応内温)でアリール化反応は1〜3時間以内に完了するが。反応は80℃から150℃の温度で行ってもよい。
【0147】
[0147]アリール化試薬と接触させる前に式XIの化合物を脱プロトン化しない態様では、アリール化試薬は塩基として作用してC3−OHを脱プロトン化すると思われる。この筋書きでは、AlClなどの三ハロゲン化アルミニウムとトリアリールアルミニウムArAlの最適な比は、実際にはアリール化試薬[Ar]Mの総モル当量に依存しており、この最適な比は実験で求めることができることがわかった。
【0148】
[0148]さらに他の態様では、3つの代案が利用できる。i)式XIの化合物に対して過剰なモル量の金属化アリール化合物[Ar]Mを用いる。ii)AlClやBFなど、追加のルイス酸を用いる。iii)ルイス塩基性添加剤をベンゾニトリル又は置換ベンゾニトリルなどの反応混合物に加える。いくつかの態様では式XIの化合物をアリール化反応の前に調製して直接反応に用いるため、式XIの化合物を調製するのに用いた溶媒、及びアリール化試薬[Ar]Mを調製するのに用いた(あるいは市販の試薬の場合はアリール化試薬が溶解している)溶媒を取り除く溶媒交換を場合によりアリール化反応を開始する前に行い、残った低沸点溶媒を反応混合物から取り除いてもよい。これらの溶媒はアリール化反応を遅くすることがあるからである。
【0149】
[0149]アリール化反応条件(例えば、温度、試薬を加える順序、試薬の濃度、添加の時期など)の他の特徴は、一般に出発試薬の性質及び費用に依存する。当業者には自明であるが、以下の実施例で用いた条件は変更することができる。
【0150】
[0150]アリール化反応が完了した後、ハロゲン源をアリール化反応生成混合物と結合させてもよい。ハロゲン源にはヨウ素(I)、臭素(Br)、ブロモヨージド(BrI)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBDMH)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、及びN−ヨードフタルイミドなどがあるが、これらに限定されない。これにより、未反応のアリール化試薬及びそのアリールアルミニウム副生成物を式ArXのハロゲン化アリール化合物(Xはハロゲン源に由来するハライド、Arは式[Ar]Mのアリール化試薬に由来するアリール基)に変換する。このハロゲン化反応は好ましくは周囲温度で行って、副反応を最小にする。これに限定されないが、LiClなどの塩をこのハロゲン化反応に加えて、アリールアルミニウム化合物のハロゲン化アリールへの変換効率を向上させることができる。未反応のアリール化試薬及びその副生成物をハロゲン化した後、ハロゲン化アリールを式IV、I、VI、又はVの化合物から分離する。この態様では、式ArXのハロゲン化アリール化合物をリサイクルして式[Ar]Mのアリール化試薬にさらに変換する際に再利用できるので、原子効率及びコストを向上させることができる。
【0151】
[0151]いくつかの態様では、本発明は、式IVの化合物のC−アリールグルコシドの脱保護プロセスを提供し、R及びR(R≠H)の脱保護によって式Iの化合物を生成する(図10)。ある態様では、Rは、適切な溶媒中でシリルエーテルの脱保護に用いる当該分野で周知のフッ化物試薬(HF水溶液、3HF・EtN、HF・ピリジン、TBAF、又はHClなどを含む)を用いて取り除くことができるシリル保護基である。(Rに)好適なシリル保護基には、TMS、TBS、TBDPS、TIPS、TESなどがあるが、これらに限定されない。R及びRがベンジル又は置換ベンジルである場合、脱保護は水素化分解によって達成することができる。他の態様では、R同士が、式XI及びXIIの化合物のようにC2−OとC4−Oとの間で鎖を形成する。保護基がボロン酸エステルXI又はスタンニレンアセタールXIIを含む場合、典型的には特定の脱保護工程は必要なく、その保護基は反応中又は処理中に、あるいは反応及び処理中に自然に取り除かれる(ジオールからのスタンニレンアセタールの脱保護についてはJ. Org. Chem. 1990, 55, 5132-5139を参照)。
【0152】
[0152]他の側面において、本発明はSGLT2プロドラッグを製造する方法を提供する(図4を参照)。式IVの化合物は、式Iの化合物の調製に有用であるばかりでなく、式Iの化合物のプロドラッグとして機能する式Vの化合物の調製にも有用である。式VIの化合物を脱保護してRを取り除き、可能なプロドラッグを生成することができる。この場合、Rは、R及びR(R≠H)を取り除かずに式VIの化合物から取り除くことができる酸素保護基を含む。一つの態様では、本明細書に記載したアリール化の手法を式IIの化合物に適用して、式IVの化合物を生成し、式IVの化合物のC6−O位置をアルキルカルボキシル化、アリールカルボキシル化、及びアシル化などの選択的誘導体化し、式VIの化合物の保護基を脱保護する。これにより医療に用いられるSGLT2阻害剤及び関連する化合物のプロドラッグ式Vを得ることができる。例えば、式IIの化合物(R=TBDPSかつR=H)のアリール化により生成された式IVaの化合物(R=TBDPS、Ar=Ph、かつR=H)をトリエチルアミン及び触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)の存在下でクロロギ酸エチルで処理すると、C6−O水酸基が選択的にエチルカルボキシル化されて式VIの化合物(R=TBDPS、R=H、かつR=COEt)を高い収率(96%)で得られる。次いで、TBAFで化合物IVのTBDPS基を脱保護して、式Vの化合物を高い収率(92%)で生成した。
【0153】
[0153]プロドラッグに有用な官能基には、例えば、エステル、及びカルボネート、アシルオキシメチルエステル、アシルオキシメチルエーテル、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート、テトラヒドロフラニルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、カルバメート、及びジカルボネート無水物などが挙げられる。すなわち、式VI及びVの化合物のRは、−COR、−COR、−COCHOCOR、−CHOCOR、−P(O)(OR)、−P(O)(OH)O、−SOOR、−SO、−PO2−、−CONHR、−CON(R)、−COCOR、−COCORであり、Rは分岐状又は非分岐状のC−C20アルキル、あるいはC−C20シクロアルキルであり、NHR及びN(R)部分がアミノ酸基を含む。本発明のこの側面は、2,4−ジ−O−保護された生成物を生成する際に第一のC6−O位置及び第二のC3−O位置が保護されていない場合に生成物として2,4−ジ−O−保護されたC−グルコシド又は2,3,4−トリ−O−保護されたC−グルコシドを生成する、式IIの化合物のアリール化反応に固有に見られる。したがって、(C3−O位置の立体障害がより大きいため、C3−O位置(R=H)の誘導体化は行わずに)選択的誘導体化は第一のC6−O位置に対して行うことができる。この選択的誘導体化は、C2−O及びC4−O位置をRで保護したまま、効率的及び選択的に達成することができる。C6−O位置は典型的には他の位置の保護基と同じ保護基で保護されるため、他の合成手法を用いると、より困難である。いくつかの態様ではRとしてシリル保護基が好ましいので、C2−O及びC4−O保護基を取り除いた後、C6−Oでプロドラッグを形成することができる。この側面の調製プロセスを図4に示す。さらに、場合により、C6−O及びC3−Oを誘導体化してプロドラッグ(R=R、又はR≠RかつR=H)を形成することができる。
【0154】
[0154]β−C−アリールグルコシド及びその誘導体を調製する周知の方法と比較して、本明細書に記載された本発明の態様は、次の利点を有する。
1)すべての態様に用いた合成手法は、一般に用いられるグルコノラクトン手法に比べて合成工程数が非常に少ない。この合成工程の短縮は、レドックス効率の高い合成手法(すなわち、C1位の酸化状態を変えない)により達成された。
2)ボロン酸エステルを保護基として用いる、あるいは保護基を全く用いない態様では、親となる糖グルコースからβ−C−アリールグルコシドを合成するプロセス全体で、関連技術のβ−C−アリールグルコシド合成に比べて、反応工程効率及びプロセス操作(処理工程など)効率が非常に高い。
3)このアリール化手法は、立体選択的に(すなわち、所望のβ−アノマーに対して少量の望ましくないα−アノマーがアリール化生成混合物中に検出される)あるいは非常に立体選択的に(すなわち、望ましくないα−アノマーが粗生成混合物中に全く検出されない)C−アリールグルコシドの所望のβ−アノマーを提供する。これは、α−及びβ−C−アリールグルコシドの混合物を生成する他のC−アリールグルコシドの合成手法のいくつか(例えばグルコノラクトン手法など)と対照をなす。
4)いくつかの態様では、アリール化反応は、第一のC6−O及び第二のC3−O位置が保護されていない2,4−ジ−O−保護されたC−アリールグルコシド、又はC6−Oヒドロキシルが保護されていない2,3,4−トリ−O−保護されたC−アリールグルコシドを生成する。これは、これら化合物をC6−Oエステル及びカルボネートを含むC−アリールグルコシドプロドラッグに変換する機会を示すものである。これは、当該分野の他の方法で達成することはより困難である。
5)好ましい態様では、アリール化試薬は自然界に非常に豊富な金属であり、安価で毒性のない金属であるアルミニウム(すなわち、M=Al)を含む。また、水系処理中に形成される水酸化アルミニウムは毒性が低く、環境にやさしい。
6)アリール化試薬のアリール基成分を変えることにより、異なるC−アリールグルコシドを得ることができる。このアリール化手法は、様々な異なるアリール基で行われ、そのいくつかは周知のSGLT2阻害剤ダパグリフロジン及びカナグリフロジンの構成要素である。
7)アリール化試薬は、微調整可能であり、市販の、あるいは容易に得られる出発材料から簡単に調製することができる。ハライドなどのダミー配位子を用いることにより、原子効率及び/又はコスト効率を改善することができる。
【実施例】
【0155】
[0155]本明細書を通して、また以下の実施例を通して、記号、慣例表記、及び略語は、同時代の技術文献、例えば、Journal of the American Chemical Society、The ACS Style Guide: effective communication of scientific information, 3rd ed. (技術情報の有効な伝達、第3版); Coghill, A.M. and Garson, L. R. ed.; Washington, DC, OxfordUniversity Press, New York Oxford, 2006に沿っている。水系処理中を除いて、以下のすべての実験は無酸素環境で厳密な乾燥条件のもとで行った。これは、乾燥した溶媒(典型的には分子篩いを通して乾燥した)、オーブンで乾燥したガラス器具(約105℃で乾燥)及びシリンジを乾燥した窒素雰囲気下で用いたことを意味する。商業的に入手可能な、あるいは実験室内で調製した有機金属試薬及びAlClの溶液は、使用前に滴定して濃度を求めた。
【0156】
[0156]BuO ジ−n−ブチルエーテル
[0157]Bu ブチル
[0158]t−Bu tert−ブチル
[0159]n−BuLi n−ブチルリチウム
[0160]t−BuLi t−ブチルリチウム
[0161]Me メチル
[0162]Et エチル
[0163]Pr プロピル
[0164]Ph フェニル(C
[0165]EtO ジエチルエーテル
[0166]DIBAL 水素化ジイソブチルアルミニウム
[0167]DCM ジクロロメタン
[0168]PhCN ベンゾニトリル
[0169]g グラム
[0170]mg ミリグラム
[0171]L リットル
[0172]mL ミリリットル
[0173]TBS tert−ブチルジメチルシリル
[0174]TBSCl 塩化tert−ブチルジメチルシリル
[0175]M モル濃度
[0176]N 規定度
[0177]MHz メガヘルツ
[0178]mol モル
[0179]mmol ミリモル
[0180]min 分
[0181]h 時間
[0182]TLC 薄層クロマトグラフィー
[0183]TBDPS tert−ブチルジフェニルシリル
[0184]TBDPSCl 塩化tert−ブチルジフェニルシリル
[0185]TES トリエチルシリル
[0186]TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
[0187]R 保持係数
[0188]MeOH メタノール
[0189]PrOH イソプロパノール
[0190]PhOMe アニソール
[0191]PhMe トルエン
[0192]PhCl クロロベンゼン
[0193]Pd/C パラジウム担持炭素
[0194]塩水 飽和塩化ナトリウム水溶液
[0195]AcOH 酢酸
[0104]TFA トリフルオロ酢酸
[0196]THF テトラヒドロフラン
[0197]NMP N−メチルピロリジノン
[0198]DMSO ジメチルスルホキシド
[0199]EtOAc 酢酸エチル
[0200]DCM ジクロロメタン
[0201]DCE ジクロロエタン
[0202]DMF N,N−ジメチルホルムアミド
[0203]atm 雰囲気
[0204]HPLC 高速液体クロマトグラフィー
[0205]以下の実施例は本発明をさらに説明するためのものであって、限定するものではない。
【0157】
実施例1 1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(II’’)の合成
【0158】
【化13】
【0159】
[0206]0℃の1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(1.83g、11.3mmol)とイミダゾール(3.07g、45.2mmol)のTHF(10mL)懸濁液に、TBDPSCl(11.6mL、45.2mmol)のTHF(10mL)溶液を滴加した。1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースを消費した後、水(10mL)を加えて、混合物をEtOAc(それぞれ20mL)で二回抽出し、塩水(10mL)で洗浄した。それを(NaSO)乾燥し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)により、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(5.89g、81%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.82-7.70 (m, 8H), 7.49-7.36 (m, 12H), 5.17 (s, 1H), 4.22 (d, J=4.8 Hz, 1H), 3.88-3.85 (m, 1H), 3.583-3.579 (m, 1H), 3.492-3.486 (m, 1H), 3.47-3.45 (m, 1H), 3.30 (dd, J=7.4, 5.4 Hz, 1H), 1.71 (d, J=6.0 Hz, 1H), 1.142 (s, 9H), 1.139 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ135.89 (CH×2), 135.87 (CH×2), 135.85 (CH×2), 135.83 (CH×2), 133.8 (C), 133.5 (C), 133.3 (C), 133.2 (C), 129.94 (CH), 129.92 (CH), 129.90 (CH), 129.88 (CH), 127.84 (CH2×2), 127.82 (CH2×2), 127.77 (CH2×4), 102.4 (CH), 76.9 (CH), 75.3 (CH), 73.9 (CH), 73.5 (CH), 65.4 (CH2), 27.0 (CH3×6), 19.3(C×2)
実施例2 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)
【0160】
【化14】
【0161】
[0207]AlCl(4.0mL、2.0mmol、0.5M濃度のTHF溶液)と臭化フェニルマグネシウム(1.9mL、5.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を一緒にして黒色溶液を得た。周囲温度で1時間撹拌した後、溶媒を真空(50torr)蒸発させ、PhMe(6.0mL)を加えた。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.4mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えて、約5分間撹拌した。次いで、混合物を部分的に減圧(50torr)濃縮して、EtOを取り除いた。残った1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノースのPhMe溶液をあらかじめ調製しておいたアルミニウム混合物に加えて、PhMe(1.0mL)で希釈した。混合物を27時間穏やかな還流下で加熱した。周囲温度まで冷却した後、THF(20mL)、10%NaOH水溶液(2mL)、珪藻土(2g)、NaSO(5g)の順に生成混合物に加えて、得られた懸濁液を濾過した。濾液を濃縮して、橙色のオイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:6のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)により精製して、生成物2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(0.46g、64%)を淡黄色のオイルとして得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.67 (dd, J=8.2, 1.4Hz, 2H), 7.57 (dd, J=8.0, 1.6Hz, 2H), 7.46-7.33 (m, 12H), 7.31-7.24 (m, 7H), 7.17-7.14 (m, 2H), 4.28 (d, J=9.6Hz, 1H), 3.89 (ddd, J=11.4, 8.2, 2.8Hz, 1H), 3.85-3.79 (m, 1H), 3.61 (ddd, J=9.3, 6.3, 2.7Hz, 1H), 3.53-3.48 (m, 2H), 3.41 (dd, J=9.4, 8.6Hz, 1H), 1.77 (dd, J=8.0, 5.2Hz, 1H, OH), 1.23 (d, J=4.8Hz, 1H, OH), 1.01 (s, 9H), 0.62 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ138.6 (C), 136.6 (CH×2), 136.2 (CH×2), 135.5 (C), 135.3 (CH×2), 135.0 (CH×2), 134.9 (C), 132.9 (C), 132.0 (C), 129.8 (CH), 129.7 (CH), 129.4 (CH), 129.3 (CH), 128.7 (CH×2), 128.5 (CH), 128.4 (CH×2), 127.6 (CH×6), 127.3 (CH×2), 82.9 (CH), 80.6 (CH), 79.4 (CH), 76.5 (CH), 72.9 (CH), 62.8 (CH2), 27.3 (CH3×3), 26.7 (CH3×3), 19.7 (C), 19.2 (C);計算値[C4452NaOSi]=739.32455に対するESI−QTof実測値は739.32450であった。
【0162】
実施例3 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(Ia)の合成
【0163】
【化15】
【0164】
[0208]周囲温度の2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(1g、1.4mmol)のTHF(5mL)溶液に、TBAF(14mL、14mmol、1.0M濃度のTHF溶液)を加えた。出発材料を消費した後、反応溶液をDowex(登録商標)50WX8−400イオン交換樹脂(8g)、CaCO(3g)、及びMeOH(10mL)の混合物に加えた。周囲温度で1時間撹拌した後、反応混合物を濾過し、MeOH(20mL)で洗浄した。濾液を濃縮して、得られたものをカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製して、1−C−フェニル−β−D−グルコシド(0.24g、72%)を得た。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ7.46-7.43 (m, 2H), 7.37-7.28 (m, 3H), 4.16 (d, J=9.2Hz, 1H), 3.92-3.89 (m, 1H), 3.75-3.70 (m, 1H), 3.53-3.38 (m, 4H); 13C NMR (100MHz, CD3OD) δ139.5 (C), 127.7 (CH×2), 127.62 (CH×2), 127.55 (CH), 82.3 (CH), 80.8 (CH), 78.4 (CH), 75.0 (CH), 70.6 (CH), 61.8 (CH2); LCMS (ESI) m/z 258 (100, [M+NH4]+), 263 (69, [M+Na]+), 503 (25, [2M+Na]+).
実施例4 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0165】
【化16】
【0166】
[0209]AlCl(2.4mL、1.2mmol、0.5M濃度のTHF溶液)と臭化フェニルマグネシウム(1.2mL、3.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)の混合物を周囲温度で1時間撹拌した(黒色溶液)。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.63g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加え、約5分撹拌した。シリンジで得られた溶液をあらかじめ調製しておいたアルミニウム混合物に加え、その後、PhOMe(2.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。混合物を60−70℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して、低沸点エーテル系溶媒を取り除いた(PhOMeは取り除かなかった)。残った混合物を130℃(槽の外温)で22時間加熱したところ、HPLCによる分析による収率が68%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドが得られた。
【0167】
実施例5 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0168】
【化17】
【0169】
[0210]AlCl(0.60ml、0.30mmol、0.5M濃度のTHF溶液)とPhAl(1.7ml、1.7mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を周囲温度で混合して、黒色溶液を得た。この混合物に、周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(4.0mL)溶液を加えた。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物(溶媒としてPhOMe/BuOを含む)を130℃(槽の外温)で6時間加熱したところ、HPLCによる分析による収率が71%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドが得られた。周囲温度まで冷却した後、この生成混合物の一部(0.5mL)をヨウ素(0.25g、0.98mmol)のTHF(5.0mL)溶液に加えた。この黒色の混合物を周囲温度で15分撹拌したところ、HPLCによる分析で43%のヨードベンゼンを回収し、52%のベンゼンを回収した。さらにこの生成混合物の一部(0.5mL)を、ヨウ素(0.25g、0.98mmol)とLiCl(5.0mL、0.5M、THF)の溶液に加えた。この黒色の混合物を周囲温度で2時間撹拌したところ、HPLCによる分析で59%のヨードベンゼンを回収し、33%のベンゼンを回収した。
【0170】
実施例6 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0171】
【化18】
【0172】
[0211]AlCl(1.4ml、0.70mmol、0.5M濃度のTHF溶液)とPhAl(1.3ml、1.3mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を周囲温度で混合して淡茶色溶液を得た。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(4.0mL)溶液に、周囲温度でn−BuLi(0.42mL、1.0mmol、2.4M濃度のヘキサン溶液)を加えて、約5分撹拌した。得られた混合物を上記の調製済みアルミニウム混合物に加えた。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物(溶媒としてPhOMe/BuOを含む)を130℃(槽の外温)で3時間加熱したところ、HPLCによる分析で収率76%の2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0173】
実施例7 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0174】
【化19】
【0175】
[0212]0℃のAlCl(12mL、6mmol)の0.5M濃度のTHF溶液に、PhLi(6mL、12mmol)の2M濃度のBuO溶液を滴加した。この混合物を室温まで温め、1時間後に混合物を60℃まで加熱した。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(2.54g、4mmol)のPhMe(15mL)溶液を滴加して、混合物を還流下で加熱した。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノースを消費した後、生成混合物を0℃まで冷却し、氷と水の混合物(50mL)に注いだ。この混合物をEtOAc(20mL)で抽出し、1NのHCl(10mL)及び塩水(10mL)で洗浄し、(NaSO)乾燥して、濃縮した。得られた残留物のカラムクロマトグラフィー(1:10のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(1.17g、41%)が得られた。
【0176】
実施例8 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2,4,6−トリメチルフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVb’’)の合成
【0177】
【化20】
【0178】
[0213]PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)及び臭化2,4,6−トリメチルフェニルマグネシウム(0.8M濃度のTHF溶液、6.25mL、5.0mmol)を周囲温度で混合して、黄色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えた。約5分間撹拌した後、シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加えて、さらにPhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を150℃(槽の外温)で16時間加熱したところ、HPLCによる分析で収率67%の2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2,4,6−トリメチルフェニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、この生成混合物を周囲温度で10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)、及び珪藻土で処理した。次いで、混合物を濾過して、濾過ケーキをTHFで洗浄した。濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:10のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)にて精製したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2,4,6−トリメチルフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(494mg、65%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.56-7.54 (m, 2H), 7.47-7.45 (m, 2H), 7.34-7.22 (m, 12H), 7.21-7.13 (m, 4H), 6.74 (d, J=0.8Hz, 1H), 6.66 (d, J=0.8Hz, 1H), 4.74-4.69 (m, 1H), 3.80 (ddd, J=11.2, 8.4, 2.6Hz, 1H), 3.68-3.65 (m, 2H), 3.48 (ddd, J=9.2, 6.4, 2.6Hz, 1H), 3.41-3.36 (m, 1H), 3.30-3.25 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 1.77 (s, 3H), 1.71 (dd, J=8.0, 5.2Hz, 1H, OH), 0.91 (s, 9H), 0.53 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ137.8 (C), 137.4 (C), 137.3 (C), 136.5 (CH×2), 136.1 (CH×2), 135.6 (C), 135.2 (CH×2), 135.0 (C), 134.9 (CH×2), 133.0 (C), 131.8 (C), 131.3 (C), 130.9 (CH), 129.63 (CH), 129.60 (CH), 129.3 (CH), 129.14 (CH), 129.09 (CH), 127.54 (CH×2), 127.48 (CH×4), 127.3 (CH×2), 80.7 (CH), 80.0 (CH), 78.2 (CH), 74.3 (CH), 73.0 (CH), 63.1 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.4 (CH3×3), 21.8 (CH3), 20.8 (CH3), 20.1 (CH3), 19.6 (C), 19.0 (C); LCMS (ESI) m/z 776 (100, [M+NH4]+), 781 (3, [M+Na]+);計算値[C4758NaOSi]=781.3715に対するESI−QTof実測値は781.3712であった。
【0179】
実施例9 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−メチルフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVc’’)の合成
【0180】
【化21】
【0181】
[0214]PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)及び臭化4−メチルフェニルマグネシウム(5.0mL、5.0mmol、1.0M濃度のTHF溶液)を周囲温度で混合して黒色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えて、約5分撹拌した。シリンジでこの混合物を上記の調製済みアルミニウム混合物に加えて、さらにPhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を130℃(槽の外温)で26時間加熱したところ、HPLCによる分析で収率59%の2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−メチルフェニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、反応物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをTHFで洗浄した。濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:10のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)にて精製したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−メチルフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(405mg、55%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.66 (d, J=6.8Hz, 2H), 7.57 (d, J=6.8Hz, 2H), 7.45-7.32 (m, 12H), 7.30-7.24 (m, 4H), 7.07 (d, J=7.6Hz, 2H), 7.03 (d, J=7.6Hz, 2H), 4.24 (d, J=9.6, 1H), 3.90-3.85 (m, 1H), 3.83-3.77 (m, 1H), 3.62-3.58 (m, 1H), 3.52-3.46 (m, 2H), 3.40 (dd, J=8.8, 8.8Hz, 1H), 2.34 (s, 3H), 1.77 (dd, J=6.6, 6.6Hz, 1H, OH), 1.22 (d, J=4.8Hz, 1H, OH), 1.01 (s, 9H), 0.63 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3;) δ138.2 (C), 136.5 (CH×2), 136.1 (CH×2), 135.5 (C), 135.4 (C), 135.2 (CH×2), 135.0 (CH×2), 134.9 (C), 132.9 (C), 132.1 (C), 129.7 (CH), 129.5 (CH), 129.3 (CH), 129.2 (CH), 128.9 (CH×2), 128.5 (CH×2), 127.53 (CH×4), 127.51 (CH×2), 127.2 (CH×2), 82.6 (CH), 80.4 (CH), 79.4 (CH), 76.3 (CH), 72.9 (CH), 62.8 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 21.2 (CH3), 19.6 (C), 19.1 (C); LCMS (ESI) m/z 748 (100, [M+NH4]+), 753 (2, [M+Na]+);計算値[C4554NaOSi]=753.3402に対するESI―QTof実測値は753.3423であった。
【0182】
実施例10 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−メトキシフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVd’’)の合成
【0183】
【化22】
【0184】
[0215]PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、5.0mL、2.5mmol)及び臭化4−メトキシフェニルマグネシウム(10.0mL、5.0mmol、0.5M濃度のTHF溶液)を周囲温度で混合して、黒色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えた。約5分間撹拌した後、シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加えて、PhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して、低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を130℃(槽の外温)で8時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率54%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−メトキシフェニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.67 (d, J=7.2Hz, 2H), 7.58 (d, J=7.2Hz, 2H), 7.46-7.34 (m, 13H), 7.30-7.25 (m, 3H), 7.05 (d, J=8.4Hz, 2H), 6.80 (d, J=8.0Hz, 2H), 4.24 (d, J=9.6Hz, 1H), 3.91-3.86 (m, 1H), 3.84-3.78 (m, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.62-3.58 (m, 1H), 3.53-3.47 (m, 2H), 3.41 (dd, J=9.9, 9.9Hz, 1H), 1.77 (dd, J=6.6, 6.6Hz, 1H, OH), 1.02 (s, 9H), 0.66 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ159.8 (C), 136.5 (CH×2), 136.2 (CH×2), 135.4 (C), 135.2 (CH×2), 135.0 (CH×2), 134.9 (CH), 132.9 (C), 132.0 (C), 130.8 (C), 129.8 (CH×2), 129.7 (CH), 129.6 (CH), 129.4 (CH), 129.2 (CH), 127.54 (CH×4), 127.53 (CH×2), 127.2 (CH×2), 113.7 (CH×2), 82.3 (CH), 80.4 (CH), 79.4 (CH), 76.3 (CH), 72.9 (CH), 62.8 (CH2), 55.4 (CH3), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 19.6 (C), 19.1 (C);計算値[C4554NaOSi]=769.3351に対するESI−QTof実測値は769.3330であった。
【0185】
実施例11 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVe’’)の合成
【0186】
【化23】
【0187】
[0216]PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)及び臭化4−クロロフェニルマグネシウム(0.8M濃度のTHF溶液、6.25mL、5.0mmol)を周囲温度で混合して、黒色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えた。約5分間撹拌した後、シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加え、PhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を150℃(槽の外温)で22時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率47%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロフェニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、この生成混合物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理した。この混合物を濾過して、濾過ケーキをTHFで洗浄した。濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:15のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)により精製したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(328mg、44%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.67 (dd, J=8.0, 1.2Hz, 2H), 7.57 (dd, J=8.0, 1.6Hz, 2H), 7.44-7.33 (m, 13H), 7.31-7.26 (m, 3H), 7.22-7.20 (m, 2H), 7.05 (dd, J=6.4, 2.0Hz, 2H), 4.25 (d, J=9.6Hz, 1H), 3.90 -3.79 (m, 2H), 3.60 (ddd, J=9.2, 6.4, 2.6Hz, 1H), 3.53-3.38 (m, 3H), 1.70 (dd, J=8.0, 5.6Hz, 1H, OH), 1.01 (s, 9H), 0.67 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ137.0 (C), 136.4 (CH2×2), 136.1 (CH2×2), 135.2 (CH2×2), 135.1 (C), 134.9 (CH2, ×2), 134.8 (C), 134.2 (C), 132.7 (C), 131.9 (C), 130.0 (CH×2), 129.73 (CH), 129.67 (CH), 129.4 (CH), 129.3 (CH), 128.4 (CH×2), 127.6 (CH×6), 127.3 (CH×2), 82.1 (CH), 80.5 (CH), 79.3 (CH), 76.4 (CH), 72.7 (CH), 62.7 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 19.6 (C), 19.1 (C); LCMS (ESI) m/z 768 (100, [M+NH4]+)、773 (5, [M+Na]+);計算値[C4451ClNaOSi]=773.2856に対するESI−QTof実測値は773.2852であった。
【0188】
実施例12 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−フルオロフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVf’’)の合成
【0189】
【化24】
【0190】
[0217]PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)及び臭化4−フルオロフェニルマグネシウム(1.9M濃度のTHF溶液、2.6mL、5.0mmol)を周囲温度で混合して黒色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えて、この混合物を約5分間撹拌した。シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加え、次いで、さらにPhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を150℃(槽の外温)で6時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率56%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−フルオロフェニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、この生成混合物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理した。この混合物を濾過し、濾過ケーキをTHFで洗浄した。濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−フルオロフェニル)−l−β−D−グルコピラノシド(395mg、54%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.67 (d, J=7.2Hz, 2H), 7.57 (d, J=7.2Hz, 2H), 7.44-7.33 (m, 12H), 7.31-7.25 (m, 4H), 7.09 (dd, J=6.6, 6.6Hz, 2H), 6.93 (dd, J=8.6, 8.6Hz, 2H), 4.26 (d, J=10.0Hz, 1H), 3.91-3.79 (m, 2H), 3.62-3.58 (m, 1H), 3.54-3.38 (m, 3H), 1.70 (dd, J=6.6, 6.6Hz, 1H, OH), 1.01 (s, 9H), 0.66 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ162.8 (d, J=245Hz, C), 136.4 (CH×2), 136.2 (CH×2), 135.21 (CH×2), 135.20 (C), 134.9 (CH×2), 134.8 (C), 134.4 (d, J=3.1Hz, C), 132.8 (C), 131.9 (C), 130.3 (d, J=8.1Hz, CH×2), 129.73 (CH), 129.68 (CH), 129.4 (CH), 129.3 (CH), 127.58 (CH×2), 127.57 (CH×4), 127.3 (CH×2), 115.1 (d, J=21.2Hz, CH×2), 82.1 (CH), 80.5 (CH), 79.3 (CH), 76.4 (CH), 72.8 (CH), 62.8 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 19.6 (C), 19.1 (C);計算値[C4451FNaOSi]=757.3151に対するESI−QTof実測値は757.3131であった。
【0191】
実施例13 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2−フリル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVg’’)の合成
【0192】
【化25】
【0193】
[0218]フラン(2.5mL、34.3mmol)の冷(−76℃)THF(21.5mL)溶液に、n−BuLi(21.5mL、34.3mmol、1.6M濃度のヘキサン溶液)を加えた。混合物を1時間撹拌し、次いで周囲温度まで温めた。濃度を滴定により求めたところ、0.5Mであった。PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)及び上記の調製済み2−フリルリチウム(10mL、5mmol、0.5M濃度のTHF溶液)を周囲温度で混合して、黒色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えた。約5分間撹拌した後、シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加え、次いで、さらにPhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して、低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を130℃(槽の外温)で16時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率78%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2−フラニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、この反応物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理し、濾過した。濾過ケーキをTHFで洗浄した。濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:15のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2−フリル)−l−β−D−グルコピラノシド(482mg、68%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.68-7.67 (m, 2H), 7.58-7.56 (m, 2H), 7.50-7.48 (m, 2H), 7.45-7.28 (m, 14H), 7.26 (dd, J=1.6, 0.4Hz, 1H) 6.27 (dd, J=3.4, 1.8Hz, 1H), 6.13 (dd, J=3.2, 0.4Hz, 1H), 4.39 (d, J=9.2Hz, 1H), 3.90 (ddd, J=11.6, 8.4, 2.4Hz, 1H), 3.80-3.70 (m, 2H), 3.58 (ddd, J=9.2, 6.6, 2.4Hz, 1H), 3.53-3.47 (m, 1H), 3.39 (dd, J=9.4, 8.2Hz, 1H), 1.76 (dd, J=8.0, 5.2Hz, 1H, OH), 1.30 (d, J=4.4Hz, 1H, OH), 1.01 (s, 9H), 0.76 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ151.3 (C), 142.2 (CH), 136.3 (CH×2), 136.2 (CH×2), 135.24 (C), 135.20 (CH×2), 135.1 (CH×2), 134.8 (C), 132.6 (C), 132.1 (C), 129.7 (CH), 129.6 (CH), 129.4 (CH), 129.3 (CH), 127.59 (CH×2), 127.58 (CH×2), 127.53 (CH×2), 127.3 (CH×2), 110.4 (CH), 110.1 (CH), 80.3 (CH), 79.4 (CH), 75.3 (CH), 74.2 (CH), 72.6 (CH), 62.7 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.7 (CH3×3), 19.6 (C), 19.1 (C);計算値[C4250NaOSi]=729.3038に対するESI−QTof実測値は729.3027であった。
【0194】
実施例14 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2−チエニル)−l−β−D−グルコピラノシド(IVh’’)の合成
【0195】
【化26】
【0196】
[0219]PhOMe(6mL)、AlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)及び臭化2−チエニルマグネシウム(1.0M濃度のTHF溶液、5.0mL、5.0mmol)を周囲温度で混合して黒色溶液を得た。これを周囲温度で1時間撹拌した。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、周囲温度の臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えて、約5分間撹拌した。シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加え、PhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して、低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物を130℃(槽の外温)で2時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率57%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2−チエニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、反応物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理し、この混合物を濾過した。濾過ケーキTHFで洗浄した。 濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(1:10のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)にて精製したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(2−チエニル)−l−β−D−グルコピラノシドを得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.70 (dd, J=8.0, 1.2Hz, 2H), 7.59 (dd, J=8.0, 1.2Hz, 2H), 7.51-7.30 (m, 16H), 7.26-7.24 (m, 1H), 6.96-6.94 (m, 2H), 4.62 (d, J=9.6Hz, 1H), 3.93 (dd, J=11.6, 2.0Hz, 1H), 3.82 (ddd, J=10.2, 6.6, 1.8Hz, 1H), 3.64 (ddd, J=9.3, 6.3, 2.7Hz, 1H), 3.57-3.51 (m, 2H), 3.45 (dd, J=9.0, 9.0Hz, 1H), 1.05 (s, 9H), 0.75 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ141.5 (C), 136.5 (CH×2), 136.2 (CH×2), 135.5 (C), 135.2 (CH×2), 135.0 (CH×2), 134.8 (C), 132.8 (C), 132.0 (C), 129.8 (CH), 129.7 (CH), 129.4 (CH), 129.3 (CH), 127.63 (CH2×2), 127.61 (CH2×4), 127.34 (C), 127.33 (CH×2), 126.5 (CH), 125.7 (CH), 80.6 (CH), 79.4 (CH), 77.9 (CH), 77.2 (CH), 72.6 (CH), 62.7 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 19.6 (C), 19.2 (C); LCMS (ESI) m/z 740 (100, [M+NH4]+), 745 (5, [M+Na]+);計算値[C4250NaOSSi]=745.2810に対するESI−QTof実測値は745.2808であった。
【0197】
実施例15 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0198】
【化27】
【0199】
[0220]ペンタフルオロフェノール(0.18g、1.0mmol)、PhAl(2.0ml、2.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)及びPhOMe(1.0mL)を周囲温度で混合して淡黄色の透明な溶液を得た。この混合物に、1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(4.0mL)溶液を加えた。この混合物を130℃(槽の外温)で12時間加熱したところ、HPLCによる分析で収率73%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0200】
実施例16 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0201】
【化28】
【0202】
[0221]AlCl(2.4ml、1.2mmol、0.5M濃度のTHF溶液)、臭化フェニルマグネシウム(0.73mL、1.9mmol、2.6M濃度のEtO溶液)及びt−BuLi(0.50mL、0.95mmol、1.9M濃度のペンタン溶液)を−40℃で混合して、黒色溶液を得た。これを周囲温度まで温めた。周囲温度で1時間撹拌した後、この溶媒を真空(50torr)蒸発させ、PhMe(5.0mL)を加えた。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(364mg、0.57mmol)のPhMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.22mL、0.57mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えて、この混合物を部分的に減圧(50torr)濃縮してEtO溶媒を取り除いた。残った1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノースのPhMe溶液をあらかじめ調製しておいたアルミニウム混合物に加えて、PhMe(1.0mL)で希釈した。この反応混合物を加熱して30時間穏やかに還流させたところ、HPLCによる分析で、収率20%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0203】
実施例17 1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(II''''')及び1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(II’)の合成
【0204】
【化29】
【0205】
[0222]0℃の1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(5.0g、30.8mmol)及びイミダゾール(14.7g、216mmol)のTHF(40mL)懸濁液に、TBSCl(23.2g、154mmol)のTHF(10mL)溶液を滴加し、混合物を周囲温度で一晩撹拌した。1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースを消費した後、水(50mL)を加えて、混合物をEtOAc(それぞれ100mL)で二回抽出し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(1:10のDCM/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、白色の固体として1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(6.4g、41%)を得た。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(4.3g、36%)を白色粉末として単離した。
1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(II'''''):
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ5.28-5.27 (m, 1H), 4.37-4.35 (m, 1H), 4.10 (dd, J=6.8、0.8Hz, 1H), 3.67 (dd, J=6.4、6.4Hz, 1H), 3.62-3.60 (m, 1H), 3.50 (d, J=1.2Hz, 1H), 3.45 (d, J=1.2Hz, 1H), 0.94 (s, 9H), 0.93 (s, 9H), 0.92 (s, 9H), 0.12 (s, 3H), 0.113 (s, 6H), 0.105 (s, 3H), 0.100 (s, 3H), 0.096 (s, 3H).
1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(II'):
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ5.29 (s, 1H), 4.39 (d, J=4.8Hz, 1H), 3.86 (d, J=7.2Hz, 1H), 3.68 (dd, J=7.2、5.2Hz, 1H), 3.55-3.52 (m, 2H), 3.64-3.45 (m, 1H), 2.09 (d, J=5.2Hz, 1H, OH), 0.943 (s, 9H), 0.938 (s, 9H), 0.140 (s, 3H), 0.130 (s, 6H), 0.126 (s, 3H).
実施例18 2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’)の合成
【0206】
【化30】
【0207】
[0223]AlCl(0.60ml、0.30mmol、0.5M濃度のTHF溶液)とPhAl(1.7ml、1.7mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を周囲温度で混合して黒色溶液を得た。この混合物に、周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(0.51g、1.31mmol)のPhOMe(3.5mL)溶液を加えた。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物(溶媒としてPhOMe/BuOを含む)を130℃(槽の外温)で4時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、THF(10mL)、珪藻土(1g)、15%NaOH水溶液(1mL)、NaSO(2g)の順に生成混合物に加えた。得られた懸濁液を濾過し、濾液を濃縮して黄色のオイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)により精製したところ、白色粉末として1−C−フェニル−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノシド(0.39g、64%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.36-7.34 (m, 5H), 4.17 (d, J=8.8Hz, 1H), 3.93-3.87 (m, 1H), 3.73-3.52 (m, 4H), 3.48-3.44 (m, 1H), 2.11 (d, J=2.8Hz, 1H), 1.96 (dd, J=6.8, 6.4Hz, 1H), 0.94 (s, 9H), 0.72 (s, 9H), 0.21 (s, 3H), 0.18 (s, 3H), -0.03 (s, 3H), -0.67 (s, 3H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ139.2 (C), 128.4 (CH), 128.30 (CH×2), 128.26 (CH×2), 82.9 (CH), 80.3 (CH), 79.8 (CH), 76.8 (CH), 71.6 (CH), 62.5 (CH2), 26.0 (CH3×3), 25.8 (CH3×3), 18.3 (C), 18.0 (C), -3.7 (CH3), -4.2 (CH3), -4.8 (CH3), -5.8 (CH3);LCMS (ESI) m/z 469 (100, [M+H]+), 470 (27, [M+H+1]+), 486 (65, [M+NH4]+).
実施例19 2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’)の合成
【0208】
【化31】
【0209】
[0224]AlCl(0.60ml、0.30mmol、0.5M濃度のTHF溶液)とPhAl(1.7ml、1.7mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を周囲温度で混合して黒色溶液を得た。この混合物に、周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(0.39g、1.00mmol)のPhOMe(3.5mL)溶液を加えた。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除いた。残った混合物(溶媒としてPhOMe/BuOを含む)を130℃(槽の外温)で3時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、THF(10mL)、珪藻土(0.8g)、15%NaOH水溶液(1mL)、NaSO(1.9g)の順に生成混合物に加えた。得られた懸濁液を濾過し、濾液を濃縮して黄色のオイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、白色粉末として生成物1−C−フェニル−2,4−ジ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノシド(0.32g、68%)を得た。
【0210】
実施例20 1−C−フェニル−2,4−ジ−O−トリエチルシリル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’’)の合成
【0211】
【化32】
【0212】
[0225]AlCl(3.6mmol、0.5M濃度のTHF溶液)と臭化フェニルマグネシウム(9.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を混合して黒色溶液を得た。周囲温度で1時間撹拌した後、この溶媒を真空(50torr)蒸発させ、PhMe(8.0mL)を残留物に加えた。1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−トリエチルシリル−β−D−グルコピラノース(0.72g、1.8mmol、Helv. Chim. Acta. 1998, 81, 2157-2189に報告されているように調製)のPhMe(4.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(1.8mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えて約5分間撹拌した後、混合物を部分的に減圧(50torr)濃縮してEtOを取り除いた。残った1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−トリエチルシリル−β−D−グルコピラノースのPhMe溶液をあらかじめ調製しておいたアルミニウム混合物に加えて、PhMe(1.0mL)で希釈した。この混合物を6.5時間還流下で加熱した。HPLCによる分析から、反応が終了したこと、さらに保護されていない生成物1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドが少量形成されたことがわかった。周囲温度まで冷却した後、THF(30mL)、10%NaOH水溶液(3mL)、珪藻土(3g)、NaSO(7.5g)の順に生成混合物に加えた。得られた懸濁液を濾過し、濾液を濃縮して橙色のオイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:4のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製して、無色から淡黄色のオイルとして生成物1−C−フェニル−2,4−ジ−O−トリエチルシリル−β−D−グルコピラノシド(0.44g、51%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.37-7.34 (m, 5H), 4.16 (d, J=8.8Hz, 1H), 3.93-3.88 (m, 1H), 3.75-3.69 (m, 1H), 3.66-3.62 (m, 1H), 3.58-3.51 (m, 2H), 3.49-3.43 (m, 1H), 2.17 (d, J=3.2Hz, 1H, OH), 2.02 (br, 1H, OH), 1.02 (t, J=7.8Hz, 9H), 0.77-0.69 (m, 6H), 0.76 (t, J=7.8Hz, 9H), 0.31 (dq, J=14.8, 7.8Hz, 3H), 0.20 (dq, J=15.2, 8.0Hz, 3H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ139.1 (C), 128.4 (CH), 128.2 (CH×2), 127.9 (CH×2), 82.7 (CH), 80.3 (CH), 79.8 (CH), 77.1 (CH), 71.8 (CH), 62.6 (CH2), 6.9 (CH3×3), 6.7 (CH3×3), 5.2 (CH2×3), 4.8 (CH2×3)
実施例21 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa’’)の合成
【0213】
【化33】
【0214】
[0226]臭化フェニルマグネシウム(2.6M濃度のEtO溶液、1.9mL、5.0mmol)とPhOMe(6mL)の混合物に、GaCl(0.5M濃度のペンタン溶液、4.0mL、2.0mmol)を加えて白色スラリーを得て、これを1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(2.6M濃度のEtO溶液、0.38mL、1.0mmol)を加えて、混合物を約5分間撹拌した。この溶液を調製済みガリウム混合物に加え、得られた混合物を60℃で真空(50torr)濃縮してEtO及びペンタンを取り除いた。残った溶液を130℃(槽の外温)で24時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率2%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0215】
実施例22 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(3−((5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル)メチル)−4−メチルフェニル)−β−D−グルコピラノシド(2,4−ジ−O−TBDPS−カナグリフロジン;(IVi’’))の合成
【0216】
【化34】
【0217】
[0227]2−(5−ブロモ−2−メチルベンジル)−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン(1.5g、4.15mmol)及びマグネシウム粉末(0.33g、13.7mmol)を好適な反応器に入れて、さらにTHF(9mL)及び1,2−ジブロモエタン(95μL)を入れた。混合物を加熱して還流させた。反応を開始した後、2−(5−ブロモ−2−メチルベンジル)−5−(4−フルオロフェニル)チオフェン(2.5g、6.92mmol)のTHF(15mL)溶液を滴加した。この混合物をさらに2時間還流下で撹拌し、次いで周囲温度まで冷却し、滴定して濃度を求めた。このように調製した臭化3−[[5−(4−フルオロフェニル)−2−チエニル]メチル]−4−メチルフェニルマグネシウム(0.29M濃度のTHF溶液、17mL、5.0mmol)とAlCl(0.5M濃度のTHF溶液、4.0mL、2.0mmol)を周囲温度で混合して黒色溶液を得て、これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液にn−BuLi(0.4mL、1.0mmol、2.5M濃度のBuO溶液)を加えた。約5分間撹拌した後、シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加え、次いで、さらにPhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除き、PhOMe(6mL)を加えた。残った混合物を150℃(槽の外温)で5時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率68%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(3−((5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル)メチル)−4−メチルフェニル)−β−D−グルコピラノシドを得たことがわかった。周囲温度まで冷却した後、この反応物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理した。混合物を濾過し、濾過ケーキをTHFで洗浄した。混合した濾液を濃縮して、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のMTBE/n−ヘプタンで溶出)で精製して、白色粉末として生成物2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(3−((5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル)メチル)−4−メチルフェニル)−β−D−グルコピラノシド(0.51g、56%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.65 (d, J=7.2Hz, 2H), 7.55 (d, J=7.2Hz, 2H), 7.48 (dd, J=7.6, 5.6Hz, 2H), 7.44-7.20 (m, 16H), 7.11-6.95 (m, 6H), 6.57 (d, J=3.2Hz, 1H), 4.25 (d, J=9.6Hz, 1H), 4.06 (s, 2H), 3.90-3.86 (m, 1H), 3.81-3.76 (m, 1H), 3.61-3.57 (m, 1H), 3.54-3.49 (m, 2H), 3.40 (dd, J=8.8, 8.8Hz, 1H), 2.31 (s, 3H), 1.81 (dd, J=6.6, 6.6Hz, 1H, OH), 1.19 (d, J=4.4Hz, 1H, OH), 1.00 (s, 9H), 0.64 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ162.1 (d, J=246Hz, C), 143.1 (C), 141.4 (C), 137.9 (C), 136.8 (C), 136.5 (C), 136.4 (CH×2), 136.1 (CH×2), 135.25 (C), 135.20 (CH×2), 135.0 (CH×2), 134.8 (C), 132.8 (C), 132.3 (C), 130.9 (d, J=3.5Hz, C), 130.5 (CH), 130.0 (CH), 129.7 (CH), 129.5 (CH), 129.4 (CH), 129.2 (CH), 127.6 (CH×4), 127.5 (CH×2), 127.2 (CH×2), 127.1 (d, J=8.2Hz, CH×2), 127.06 (CH), 126.0 (CH), 122.7 (CH), 115.7 (d, J=21.8Hz, CH×2), 82.7 (CH), 80.5 (CH), 79.4 (CH), 76.3 (CH), 72.9 (CH), 62.8 (CH2), 34.1 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.7 (CH3×3), 19.6, (C), 19.3 (CH3), 19.2 (C); LCMS(ESI) m/z 938 (100, [M+NH4]+), 943 (10, [M+Na]+).
実施例23 カナグリフロジン(1−C−(3−((5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル)メチル)−4−メチルフェニル)−β−D−グルコピラノシド;(Ii))の合成
【0218】
【化35】
【0219】
[0228]2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(3−((5−(4−フルオロフェニル)チオフェン−2−イル)メチル)−4−メチルフェニル)−β−D−グルコピラノシド(408mg、0.44mmol)とTBAF(3.5mL、3.5mmol、1.0M濃度のTHF溶液)の混合物を周囲温度で4時間撹拌した。CaCO(0.73g)、Dowex(登録商標)50WX8−400イオン交換樹脂(2.2g)及びMeOH(5mL)を生成混合物に加えて、懸濁液を周囲温度で1時間撹拌した。混合物を珪藻土パッドで濾過した。濾過ケーキをMeOHで洗浄し、濾液を一緒にして真空蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(1:20のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、カナグリフロジン(143mg、73%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ7.63-7.57 (m, 2H), 7.28 (d, J=3.6Hz, 1H), 7.23-7.18 (m, 3H), 7.17-7.12 (m, 2H), 6.80 (d, J=3.6Hz, 1H), 4.93 (br, 2H, OH), 4.73 (br, 1H, OH), 4.44 (br, 1H, OH), 4.16 (d, J=16Hz, 1H), 4.10 (d, J=16Hz, 1H), 3.97 (d, J=9.2Hz, 1H), 3.71 (d, J=11.6Hz, 1H), 3.47-3.43 (m, H), 3.30-3.15 (m, 4H), 2.27 (s, 3H); 13C NMR (100MHz, DMSO-d6) δ161.8 (d, J=243Hz, C), 144.1 (C), 140.7 (C), 138.7 (C), 137.8 (C), 135.4 (C), 131.0 (d, J=3.1Hz, C), 130.1 (CH), 129.5 (CH), 127.4 (d, J=8.1Hz, CH×2), 126.8 (CH), 126.7 (CH), 123.9 (CH), 116.4 (d, J=21.6Hz, CH×2), 81.8 (CH), 81.7 (CH), 79.0 (CH), 75.2 (CH), 70.9 (CH), 61.9 (CH2), 33.9 (CH2), 19.3 (CH3); LCMS(ESI) m/z 462 (100, [M+NH4]+), 467 (3, [M+Na]+).
実施例24 2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロ−3−(4−エトキシベンジル)フェニル)−β−D−グルコピラノシド(2,4−ジ−O−TBDPS−ダパグリフロジン;(IVj’’))の合成
【0220】
【化36】
【0221】
[0229]1−(5−ブロモ−2−クロロベンジル)−4−エトキシベンゼン(1.5g、4.6mmol)及びマグネシウム粉末(0.54g、22.2mmol)を好適な反応器に入れて、さらにTHF(12mL)及び1,2−ジブロモエタン(0.16mL)を入れた。混合物を加熱して還流させた。反応を開始した後、1−(5−ブロモ−2−クロロベンジル)−4−エトキシベンゼン(4.5g、13.8mmol)のTHF(28mL)溶液を滴加した。この混合物をさらに1時間還流下で撹拌し、次いで周囲温度まで冷却し、滴定して濃度を求めた。上記の調製済み臭化4−クロロ−3−[(4−エトキシフェニル)メチル]フェニルマグネシウム(31mL、10mmol、0.32M濃度のTHF溶液)とAlCl(0.5M濃度のTHF溶液、8.0mL、4.0mmol)を周囲温度で混合して黒色溶液を得て、これを周囲温度で1時間撹拌した。周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−β−D−グルコピラノース(0.64g、1.0mmol)のPhOMe(3.0mL)溶液に、臭化フェニルマグネシウム(0.38mL、1.0mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えた。約5分間撹拌した後、シリンジでこの溶液を上記の調製済みアルミニウム混合物に加え、次いで、さらにPhOMe(1.0mL)を加えてフラスコを洗浄した。この混合物を60℃(槽の外温)で減圧(50torr)濃縮して低沸点エーテル系溶媒を取り除き、PhOMe(6mL)を加えた。反応混合物を130℃(槽の外温)で8時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率51%で2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロ−3−(4−エトキシベンジル)フェニル)−β−D−グルコピラノシドを得た。周囲温度まで冷却した後、反応物を周囲温度の10%NaOH水溶液(1mL)、THF(10mL)及び珪藻土で処理した。混合物を濾過して、濾過ケーキをTHFで洗浄した。濾液を一緒にして、濃縮し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:30のEtOAc/n−ヘプタン溶液で溶出)で精製したところ、白色粉末として生成物2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロ−3−(4−エトキシベンジル)フェニル)−β−D−グルコピラノシド(0.30g、34%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.56-7.54 (m, 2H), 7.43-7.31 (m, 13H), 7.29-7.22 (m, 6H), 7.07-7.04 (m, 2H), 7.00 (d, J=2.0Hz, 1H), 6.87 (dd, J=8.4, 2.0Hz, 1H), 6.83-6.81 (m, 2H), 4.18 (d, J=9.6Hz, 1H), 4.02 (q, J=6.9Hz, 2H), 3.96 (d, J=10.8Hz, 2H), 3.86 (ddd, J=11.3, 7.7, 1.1Hz, 1H), 3.76 (ddd, J=8.4, 8.4, 4.8Hz, 1H), 3.56 (ddd, J=9.0, 6.4, 2.4Hz, 1H), 3.50 (dd, J=11.4, 5.4Hz, 1H), 3.44 (dd, J=9.4, 8.6Hz, 1H), 3.38 (dd, J=8.8, 8.8Hz, 1H), 1.70 (dd, J=7.8, 5.4Hz, 1H, OH), 1.42 (t, J=6.8Hz, 3H), 1.21 (d, J=5.2Hz, 1H, OH), 1.00 (s, 9H), 0.64 (s, 9H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ157.4 (C), 138.8 (C), 137.4 (C), 136.3 (CH×2), 136.1 (CH×2), 135.2 (CH×2), 135.0 (C), 134.9 (CH×2), 134.8 (C), 134.2 (C), 132.8 (C), 132.0 (C), 131.6 (CH), 131.1 (C), 129.9 (CH×2), 129.7 (CH), 129.6 (CH), 129.5 (CH), 129.4 (CH), 129.2 (CH), 127.58 (CH×2), 127.57 (CH×2), 127.54 (CH×2), 127.31 (CH), 127.28 (CH×2), 114.4 (CH×2), 82.2 (CH), 80.5 (CH), 79.3 (CH), 76.3 (CH), 72.7 (CH), 63.4 (CH2), 62.7 (CH2), 38.2 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 19.6 (C), 19.2 (C), 14.9 (CH3).
実施例25 ダパグリフロジン((2S,3R,4R,5S,6R)−2−[4−クロロ−3−(4−エトキシベンジル)フェニル]−6−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(Ij))の合成
【0222】
【化37】
【0223】
[0230]2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−(4−クロロ−3−(4−エトキシベンジル)フェニル)−β−D−グルコピラノシド(60mg、0.068mmol)のTHF(3.0mL)溶液とTBAF(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のTHF溶液)を周囲温度15時間撹拌した。CaCO(0.62g)、Dowex(登録商標)50WX8−400イオン交換樹脂(1.86g)及びMeOH(5mL)を生成混合物に加えて、懸濁液を周囲温度で1時間撹拌し、混合物を珪藻土パッドで濾過した。濾過ケーキをMeOHで洗浄し、濾液を一緒にして、真空蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製して、ダパグリフロジン(30mg)を得た。
1H NMR (400MHz, CD3OD) δ7.37-7.34 (m, 2H), 7.29 (dd, J=8.2, 2.2Hz, 1H), 7.12-7.10 (m, 2H), 6.82-6.80 (m, 2H), 4.10 (d, J=9.6Hz, 2H), 4.04 (d, J=9.2Hz, 2H), 4.00 (q, J=7.1Hz, 2H), 3.91-3.87 (m, 1H), 3.73-3.67 (m, 1H), 3.47-3.40 (m, 3H), 3.31-3.23 (m, 2H), 1.37 (t, J=7.0Hz, 3H); 13C NMR (100MHz, CD3OD) δ157.4 (C), 138.6 (C), 138.5 (C), 133.1 (C), 131.5 (C), 130.5 (CH), 129.4 (CH×2), 128.7 (CH), 126.8 (CH), 114.0 (CH×2), 80.5 (CH), 80.8 (CH), 78.3 (CH), 75.0 (CH), 70.4 (CH), 63.0 (CH2), 61.7 (CH2), 37.8 (CH2), 13.8 (CH3); LCMS (ESI) m/z 426 (100, [M+NH4]+), 428 (36, [M+NH4+2]+), 447 (33, [M+K]+).
実施例26 2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(XIa)の合成
【0224】
【化38】
【0225】
[0231]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(5g、30.8mmol)及びフェニルボロン酸(3.76g、30.8mmol)のPhMe(150mL)混合溶液をディーン・スターク装置で、15時間還流下で加熱した。この混合溶液を周囲温度まで冷却し、白色沈殿物を濾過し、PhMe(10mL)で洗浄して2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(4.90g、64%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.83-7.87 (m, 2H), 7.46-7.51 (m, 1H), 7.37-7.42 (m, 2H), 5.65 (t, J=2.4Hz, 1H), 4.63-4.67 (m, 1H), 4.58 (d, J=8.0Hz, 1H), 4.19-4.22 (m, 1H), 4.12-4.16 (m, 1H), 4.08-4.10 (m, 1H), 3.94 (dd, J=7.6Hz, 4.8Hz, 1H), 3.44 (d, J=8.8Hz, 1H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ134.3, 131.2, 127.7, 101.7, 76.5, 70.3, 70.2, 69.0, 66.2.
実施例27 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0226】
【化39】
【0227】
[0232]ディーン・スターク装置で反応系から水を連続的に取り除きながら1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(0.50g、3.1mmol)及びフェニルボロン酸(0.38g、3.1mmol)のPhMe(40mL)溶液を15時間還流下で加熱した。生成混合物を周囲温度まで冷却し、溶媒を取り除いて白色沈殿物(2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース)を得た。この白色沈殿物にPhCN(5mL)とPhAl(3.1mL、3.1mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加え、蒸留によりBuOを取り除くことができるよう、混合物を160℃(槽の外温)、真空下(50torr)で加熱した。残った溶液を、1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースがTLCにより検出されなくなるまで(約2時間)180℃(槽の外温)で加熱した。生成混合物を周囲温度まで冷却し、MeOH(5mL)を加えた。この混合物を10分間撹拌して、濃縮した。得られたものをカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(0.41g、1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースに対して55%)を得た。
【0228】
[0233]HPLC分析及び1−C−フェニル−D−グルコピラノシドのβ−及びα−アノマーを検出するための分析法:
【0229】
【表1】
【0230】
実施例28 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0231】
【化40】
【0232】
[0234]ディーン・スターク装置で反応系から水を連続的に取り除きながら1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(0.75g、4.6mmol)とフェニルボロン酸(0.79g、6.5mmol)のPhMe(40mL)溶液を15時間還流下で加熱した。反応物を周囲温度まで冷却して、PhAl(4.6mL、4.6mmol、1.0M濃度のBuO溶液)及びAlCl(4.6mL、2.3mmol、0.5M濃度のTHF溶液)を加えた。反応混合物を20時間還流下で加熱した。生成混合物を周囲温度まで冷却し、MeOH(10mL)を加えて10分間撹拌した。混合物を減圧濃縮し、次いで、カラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(0.38g、1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースに対して34%)を得た。
【0233】
実施例29 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0234】
【化41】
【0235】
[0235]周囲温度の2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(248mg、1.0mmol)のPhOMe(5mL)溶液にPhAl(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を165℃(槽の外温)で6時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率65%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0236】
実施例30 2,4−O−(4’−フルオロフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(XIf)の合成
【0237】
【化42】
【0238】
[0236]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(2.5g、15.4mmol)と4−フルオロフェニルボロン酸(2.15g、15.4mmol)のPhMe(70mL)溶液をディーン・スターク装置で15時間還流加熱した。反応物を冷却して、白色沈殿物を濾過した。白色沈殿物をPhMe(10mL)で洗浄して2,4−O−(4’−フルオロフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(2.86g、70%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.81-7.86 (m, 2H), 7.04-7.10 (m, 2H), 5.64 (t, J=2.4Hz, 1H), 4.62-4.64 (m, 1H), 4.58 (d, J=8.0 Hz,1H), 4.18-4.22 (m, 1H), 4.10-4.15 (m, 1H), 4.07-4.09 (m, 1H), 3.94 (dd, J=8.0Hz, 4.8Hz, 1H), 3.42 (d, J=8.4Hz, 1H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ165.1 (d, J=248 Hz), 136.5 (d, J=8.2 Hz), 114.7 (d, J=20.0 Hz), 101.6, 76.5, 70.3, 70.1, 69.0, 66.2.
実施例31 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0239】
【化43】
【0240】
[0237]周囲温度の2,4−O−(4’−フルオロフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(266mg、1.0mmol)のPhOMe(5mL)溶液にPhAl(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を165℃(槽の外温)で6時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率60%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0241】
実施例32 2,4−O−(4’−メトキシフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(XId)の合成
【0242】
【化44】
【0243】
[0238]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(2.5g、15.4mmol)と4−メトキシフェニルボロン酸(2.35g、15.4mmol)のPhMe(70mL)溶液をディーン・スターク装置で15時間還流下で加熱した。反応物を周囲温度まで冷却して白色沈殿物を得た。これを濾過して、PhMe(10mL)で洗浄し、2,4−O−(4’−メトキシフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(4.28g、99%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.79 (d, J=8.8Hz, 2H), 6.92 (d, J=8.8Hz, 2H), 5.63 (t, J=2.4Hz, 1H), 4.62-4.64 (m, 1H), 4.57 (d, J=7.6 Hz,1H), 4.17-4.19 (m, 1H), 4.10-4.14 (m, 1H), 4.05-4.08 (m, 1H), 3.93 (dd, J=7.6Hz, 4.8Hz, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.45 (d, J=8.8Hz, 1H);13C NMR (100MHz, CDCl3) δ162.1, 136.0, 113.3, 101.7, 76.6, 70.3, 70.2, 68.9, 66.2, 55.1.
実施例33 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0244】
【化45】
【0245】
[0239]2,4−O−(4’−メトキシフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(278mg、1.0mmol)のPhOMe(5mL)溶液にPhAl(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を165℃(槽の外温)で6時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率57%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得たことが分かった。
【0246】
実施例34 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0247】
【化46】
【0248】
[0240]2,4−O−(4’−メトキシフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(278mg、1.0mmol)のPhCN(5mL)溶液にPhAl(1.0mL、1.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を約165℃(槽の外温)で22時間撹拌した。HPLCによる分析で、収率43%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得たことが分かった。
【0249】
実施例35 2,4−O−(2’,3’,4’,5’,6’−ペンタフルオロフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(XIk)の合成
【0250】
【化47】
【0251】
[0241]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(2.5g、15.4mmol)とペンタフルオロフェニルボロン酸(3.26g、15.4mmol)のPhMe(70mL)溶液をディーン・スターク装置で2時間還流下で加熱した。溶媒(PhMe)を減圧蒸発させて黄色の固体として2,4−O−(2’,3’,4’,5’,6’−ペンタフルオロフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースを得て、さらなる精製をすることなく直接次の工程に用いた。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ5.65 (t, J=2.4Hz, 1H), 4.64-4.68 (m, 1H), 4.61 (d, J=8.0 Hz,1H), 4.25-4.28 (m, 1H), 4.18-4.23 (m, 1H), 4.12-4.15 (m, 1H), 3.99 (dd, J=8.0Hz, 4.8Hz, 1H), 3.40 (d, J=8.4Hz, 1H). 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ147.7-150.4 (m), 141.3-143.9 (m), 135.9-138.6 (m), 101.2, 76.3, 71.2, 69.7, 69.6, 66.5.
実施例36 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0252】
【化48】
【0253】
[0242]粗2,4−O−(2’,3’,4’,5’,6’−ペンタフルオロフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(338mg、1.0mmol)のPhOMe(5mL)溶液にPhAl(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を165℃(槽の外温)で6時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率51%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0254】
実施例37 2,4−O−(2’,4’,6’−トリメチルフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(XIb)の合成
【0255】
【化49】
【0256】
[0243]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(162mg、1.0mmol)と2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸(164mg、1.0mmol)のPhOMe(5mL)溶液をディーン・スターク装置で12時間還流下で加熱して、粗2,4−O−(2’,4’,6’−トリメチルフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノースを得て、これを精製することなく直接次の工程に用いた。
【0257】
実施例38 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0258】
【化50】
【0259】
[0244]上記で調製した2,4−O−(2’,4’,6’−トリメチルフェニル)ボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(≦1.0mmol)の粗PhOMe溶液に、PhAl(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を165℃(槽の外温)で3.5時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率39%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0260】
実施例39 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(Ia))の合成
【0261】
【化51】
【0262】
[0245]ディーン・スターク装置の側肢(side arm)に取り付けた分子篩を用いて1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(324mg、2mmol)とテトラヒドロキシジボロン(90mg、1mmol)のジオキサン(40mL)混合溶液を15時間還流下で加熱した。生成混合物の試料をH−NMR分析にかけたところ、生成物の混合物からなることがわかった。この生成混合物にPhAl(6.0mL、1M濃度のBuO溶液)を加えて、混合物を135℃(槽の外温)で加熱した。約24時間で、HPLCによる分析から収率53%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドが得られたことがわかった。また、HPLC純度分析から、β−アノマー/α−アノマーの比は97.8:2.2であった。
【0263】
実施例40 2,4−O−ジブチルスタンニレン−1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(XIIa)の合成
【0264】
【化52】
【0265】
[0246]ディーン・スターク装置で反応系から水を連続的に取り除きながら1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(1.0g、6.2mmol)と酸化ジブチルスズ(1.5g、6.2mmol)のPhMe(40mL)溶液を15時間還流下で加熱した。溶媒(PhMe)が取り除かれるまで生成混合物を減圧蒸発させた。残留物を周囲温度まで冷却して、2,4−O−ジブチルスタンニレン−1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(2.42g、99%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ5.47 (t, J=2.0Hz, 1H), 4.49-4.53 (m, 1H), 4.27 (d, J=7.6 Hz,1H), 3.76-3.80 (m, 2H), 3.69-3.73 (m, 1H), 3.65-3.68 (m, 1H), 3.78 (d, J=7.2Hz, 1H), 1.66-1.75 (m, 4H), 1.27-1.45 (m, 8H), 0.92-0.97 (m, 6H).
実施例41 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0266】
【化53】
【0267】
[0247]2,4−O−ジブチルスタンニレン−1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(0.39g、1.0mmol)の1,2−ジクロロベンゼン(8mL)溶液にPhAl(3.0mL、3.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を165℃(槽の外温)で1.5時間加熱したところ、HPLCによる分析で、収率29%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0268】
実施例42 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0269】
【化54】
【0270】
[0248]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(162mg、1.0mmol)のジオキサン(5mL)懸濁液に周囲温度のPhAl(6.0mL、6.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。この混合物を135℃(槽の外温)で150時間加熱した。混合物を周囲温度まで冷却し、THF(5mL)で希釈した。水(0.5mL)、15%NaOH水溶液(0.25mL)、珪藻土をこの順序で加えた。混合物を1時間撹拌し、MgSO(1g)を加えて、濾過した。濾過した固体にMeOH(5mL)と15%NaOH水溶液(0.12mL)を加えた。この懸濁液を1時間撹拌し、再度濾過した。濾液を一緒にして、濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(170mg、71%)を得た。
【0271】
実施例43 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0272】
【化55】
【0273】
[0249]AlCl(53mg、0.4mmol)のDCM(1.5mL)懸濁液に、周囲温度のPhAl(2.0mL、2.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。3時間撹拌した後、2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(248mg、1.0mmol)のPhCl(4.2mL)溶液を加えた。得られた混合溶液を、60〜70℃で減圧(50torr)下で蒸発させて、低沸点成分を取り除いた。残留物を150℃で3.5時間加熱した。5%TFA/アセトニトリル溶液(3mL)を加えて、次いで分離及び溶媒蒸発を行った。得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィー(1:9のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、所望の1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(162mg、67%)を黄色のオイルとして得た。
【0274】
実施例44 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0275】
【化56】
【0276】
[0250]AlCl(0.8mL、0.4mmol、0.5M濃度のTHF溶液)のPhOMe(8.0mL)溶液に周囲温度のPhAl(2.0mL、2.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。周囲温度で3時間撹拌した後、2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(248mg、1.0mmol)を加えて、混合物を100〜110℃(内温)で加熱した。1.5時間後に試料を採取し、HPLCによる分析から、反応が完了していることがわかった。混合物を周囲温度まで冷却した後、生成混合物を約10分間撹拌しながらMeOH(5.0mL)で処理した。HPLCによる分析から、収率66%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得たことがわかった。
【0277】
実施例45 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0278】
【化57】
【0279】
[0251]AlCl(0.4mL、0.8mmol、0.5M濃度のTHF溶液)のPhOMe(7.6mL)溶液に周囲温度のPhAl(2.2mL、2.2mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えた。周囲温度で3時間撹拌した後、2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(248mg、1.0mmol)を加えて、混合物を100〜110℃(内温)で加熱した。2.5時間後に試料を採取し、HPLCによる分析から、反応が完了していることがわかった。混合物を周囲温度まで冷却した後、生成混合物を約10分間撹拌しながらMeOH(5.0mL)で処理した。HPLCによる分析から、収率71%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0280】
実施例46 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0281】
【化58】
【0282】
[0252]AlCl(1.3mL、0.67mmol、0.5M濃度のTHF溶液)、PhAl(1.3mL、1.3mmol、1.0M濃度のBuO溶液)及びPhOMe(2.5mL)を周囲温度で混合し、3.0時間撹拌した。別のフラスコ内の−20℃の2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(248mg、1.0mmol)のPhOMe(2.5mL)溶液に、n−BuLi(0.63mL、1.0mmol、1.6M濃度のヘキサン溶液)を撹拌しながら滴加した。20分間撹拌した後、アルミニウム混合物を−20℃の調製済み溶液に加え、周囲温度までゆっくりと温めた。この混合物を100〜110℃(内温)で3時間加熱した。HPLCによる分析から、収率33%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得た。
【0283】
実施例47 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0284】
【化59】
【0285】
[0253]AlCl(1.0mL、0.5mmol、0.5M濃度のTHF溶液)とPhAl(1.0mL、1.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)の溶液を混合し、周囲温度で3.0時間撹拌した。別のフラスコで、0℃の2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(186mg、0.75mmol)のPhOMe(8.0mL)溶液に、DIBAL(750μL、0.75mmol、1.0M濃度のトルエン溶液)を撹拌しながら滴加した。40分間撹拌した後、得られた溶液を0℃の上記の調製済みアリールアルミニウム混合物に加え、周囲温度までゆっくりと温めた。この混合物を110℃(内温)で2.5時間加熱した。HPLCによる分析から、収率51%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得たことがわかった。
【0286】
実施例48 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0287】
【化60】
【0288】
[0254]1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(324mg、2.0mmol)のPhMe(30mL)にDIBAL(2.0mL、2.0mmol、1.0M濃度のPhMe溶液)を加えた。この混合物を周囲温度で3.5日間撹拌した。この混合物にPhAl(2.0mL、2.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えて、105℃(槽の外温)で18時間撹拌した。混合物を周囲温度まで冷却して、AlCl(4.0mL、2.0mmol、0.5M濃度のTHF溶液)を加え、混合物を24時間還流下で加熱した。混合物を周囲温度まで冷却して、MeOH(10mL)を加え、1時間撹拌した。得られた混合物を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(117mg、24%)を得た。
【0289】
実施例49 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0290】
【化61】
【0291】
[0255]MeAl(1mL、2.0mmol、2.0M濃度のPhMe溶液)と1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(324mg、2mmol)のPhMe(30mL)混合溶液を周囲温度で3.5日間撹拌した。得られた混合物にPhAl(2mL、2.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加え、105℃(槽の外温)で約18時間撹拌した。混合物を周囲温度まで冷却し、AlCl(4.0mL、2.0mmol、0.5M濃度のTHF溶液)を加えて24時間還流下で加熱した。混合物を周囲温度まで冷却し、MeOH(10mL)を加えて1分間撹拌した。得られた混合物を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(88mg、18%)を得た。
【0292】
実施例50 2,4−ジ−O−(tert−ブチルジフェニル)シリル−6−O−(エトキシカルボニル)−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(VIa’’)の合成
【0293】
【化62】
【0294】
[0256]トリエチルアミン(23μL、0.32mmol)、クロロギ酸エチル(20μL、0.21mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(2.1mg、0.017mmol)及び2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(50mg、0.070mmol)のDCM(0.6mL)混合溶液を周囲温度で2時間撹拌した。反応が終了した後、DCM(10mL)を加え、さらにHCl水溶液(10mL、0.5M)を加えた。相分離後、この有機溶液を減圧濃縮して、残留物をカラムクロマトグラフィー(1:19のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−6−O−(エトキシカルボニル)−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(53mg、96%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.66-7.64 (m, 2H), 7.56-7.54 (m, 2H), 7.44-7.16 (m, 21H), 4.40 (dd, J=11.6, 1.6Hz, 1H), 4.25 (d, J=9.2Hz, 1H), 4.21-4.16 (m, 1H), 4.11 (q, J=7.3Hz, 2H), 3.82-3.73 (m, 2H), 3.52-3.44 (m, 2H), 1.25 (t, J=7.0Hz, 3H), 1.18 (d, J=4.8Hz, 1H, OH), 1.00 (s, 9H), 0.61 (s, 9H);13C NMR (100MHz, CDCl3) δ154.8 (C), 138.4 (C), 136.4 (CH×2), 136.2 (CH×2), 135.4 (C), 135.2 (C), 135.1 (CH×2), 134.9 (CH×2), 132.5 (C), 131.9 (C), 129.7 (CH), 129.6 (CH), 129.3 (CH), 129.1 (CH), 128.7 (CH×2), 128.4 (CH), 128.2 (CH×2), 127.55 (CH×2), 127.54 (CH×2), 127.52 (CH×2), 127.3 (CH×2), 83.1 (CH), 79.4 (CH), 78.3 (CH), 76.4 (CH), 72.3 (CH), 67.2 (CH2), 63.9 (CH2), 27.2 (CH3×3), 26.6 (CH3×3), 19.5 (C), 19.1 (C), 14.2 (CH3); LCMS (ESI) m/z 806 (100, [M+NH4]+), 807 (85, [M+NH4+1]+), 808 (62, [M+NH4+2]+).
実施例51 6−O−(エトキシカルボニル)−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(Va)の合成
【0295】
【化63】
【0296】
[0257]TBAF(1.87mL、1.87mmol、1.0M濃度のTHF溶液)と2,4−ジ−O−tert−ブチルジフェニルシリル−6−O−(エトキシカルボニル)−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(492mg、0.62mmol)のTHF(4.2mL)混合溶液を周囲温度で2時間撹拌した。反応が終了した後、CaCO(1.2g)を加え、さらにDowex(登録商標)50WX8−400イオン交換樹脂(3.7g)、MeOH(8.7mL)を加えた。撹拌して濾過した後、濾液を濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(4:1のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、6−O−(エトキシカルボニル)−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(180mg、92%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.37-7.29 (m, 5H), 4.46-4.42 (m, 2H), 4.38 (dd, J=12.0, 4.4Hz, 1H), 4.22-4.16 (m, 2H), 4.13-4.11 (m, 2H), 3.65-3.50 (m, 3H), 3.44-3.40 (m, 1H), 3.25 (br, 1H), 1.29 (t, J=7.2Hz, 3H);13C NMR (100MHz, CDCl3) δ155.6 (C), 138.1 (C), 128.49 (CH), 128.47 (CH×2), 127.5 (CH×2), 81.8 (CH), 77.73 (CH), 77.60 (CH), 75.0 (CH), 70.1 (CH), 66.9 (CH2), 64.4 (CH2), 14.2 (CH3); LCMS (ESI) m/z 313 (100, [M+H]+), 314 (20, [M+H+1]+), 330 (100, [M+NH4]+), 331 (20, [M+NH4+1]+), 335 (100, [M+Na]+), 336 (50, [M+Na+1]+).
実施例52 2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(((2R,3R,4R,5S,6S)−3,4,5−トリス(ベンジルオキシ)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メタノール;(1S)−1−C−フェニル2,3,4−トリ−O−ベンジル−グルコシド;(IVa''''))の合成
【0297】
【化64】
【0298】
[0258]1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−グルコピラノース(0.43g、1.0mmol、J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 13132-13142で報告されているように調製)とPhAl(2.2mL、2.2mmol、1.0M濃度のBuO溶液)のBuO(4.0mL)溶液を150℃(槽の外温)で6時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、THF(10mL)、珪藻土(1g)、15%NaOH水溶液(1mL)、NaSO(2g)をこの順序で生成混合物に加え、得られた懸濁液撹拌して、濾過した。濾液濃縮して黄色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、白色の固体として生成物2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(0.32g、64%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.48-7.31 (m, 15H), 7.24-7.19 (m, 3H), 6.95-6.92 (m, 2H), 5.00 (d, J=11.2Hz, 1H), 4.95 (d, J=10.8Hz, 1H), 4.94 (d, J=11.2Hz, 1H), 4.74 (d, J=10.8Hz, 1H), 4.41 (d, J=10.0Hz, 1H), 4.31 (d, J=9.6Hz, 1H), 3.93 (ddd, J=11.8, 6.1, 2.6Hz, 1H), 3.87 (dd, J=9.0, 9.0Hz, 1H), 3.81-3.70 (m, 3H), 3.59-3.53 (m, 2H), 1.97 (dd, J=6.8, 6.8, 1H, OH); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ139.0 (C), 138.6 (C), 138.0 (C), 137.6 (C), 128.54 (CH×2), 128.52 (CH), 128.47 (CH×4), 128.26 (CH×2), 128.23 (CH×2), 128.1 (CH×2), 128.0 (CH), 127.744 (CH×2), 127.735 (CH), 127.69 (CH×2), 127.67 (CH), 86.6 (CH), 84.3 (CH), 81.7 (CH), 79.4 (CH), 78.3 (CH), 75.7 (CH2), 75.2 (CH2), 74.9 (CH2), 62.4 (CH2); LCMS (ESI) m/z 528 (100, [M+NH4]+), 529 (35, [M+NH4+1]+), 533 (5, [M+Na]+).
実施例53 2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(((2R,3R,4R,5S,6S)−3,4,5−トリス(ベンジルオキシ)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メタノール;(1S)−1−C−フェニル2,3,4−トリ−O−ベンジル−グルコシド;(IVa''''))の合成
【0299】
【化65】
【0300】
[0259]1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−グルコピラノース(0.43g、1.0mmol)とPhAl(2.2mL、2.2mmol、1.0M濃度のBuO溶液)のPhOMe(4.0mL)溶液を150℃(槽の外温)で6時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、THF(10mL)、珪藻土(1g)、15%NaOH水溶液(1mL)、NaSO(2g)をこの順序で生成混合物に加え、得られた懸濁液を撹拌して、濾過した。濾液を濃縮して黄色のオイルを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、白色の固体として生成物2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(0.31g、62%)を得た。
【0301】
実施例54 2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(((2R,3R,4R,5S,6S)−3,4,5−トリス(ベンジルオキシ)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メタノール;(1S)−1−C−フェニル2,3,4−トリ−O−ベンジル−グルコシド;(IVa''''))の合成
【0302】
【化66】
【0303】
[0260]1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−ベンジル−β−D−グルコピラノース(0.2g、0.46mmol)とPhAl(0.9mL、0.90mmol、1.0M濃度のBuO溶液)のPhMe(4mL)溶液を還流下で加熱した。(TLC分析で求めたように)出発材料を消費した後、反応混合物を0℃まで冷却し、氷と水の混合物(50mL)に注いだ。得られた混合物をEtOAc(20mL)で抽出し、1NのHCl(10mL)、次いで塩水(10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させて、減圧濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(2:8のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(82mg、35%)を得た。
【0304】
実施例55 1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))の合成
【0305】
【化67】
【0306】
[0261]2,3,4−トリ−O−ベンジル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(40mg、0.08mmol)のMeOH(1.5mL)及びTHF(1.5mL)の混合溶液に周囲温度の5%のPd/C(20mg)を加えた。(TLC分析で求めたように)出発材料を消費するまで、水素気体雰囲気(約1atm)で反応混合物を周囲温度で撹拌した。生成混合物を濾過してパラジウム残渣を取り除き、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:10のMeOH/DCMで溶出)で精製したところ、生成物1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(15mg、80%)を得た。
【0307】
実施例56 2,3,4−トリ−O−tert−ブチルジメチルシリル−1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド(IVa''''')の合成
【0308】
【化68】
【0309】
[0262]周囲温度の1,6−アンヒドロ−2,3,4−トリ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノース(0.51g、1.0mmol)のPhOMe(4.0mL)溶液に、PhAl(2.0ml、2.0mmol、1.0M濃度のBuO溶液)を加えて淡黄色の溶液を得た。混合物を150℃(槽の外温)で23時間加熱した。周囲温度まで冷却した後、THF(10mL)、珪藻土(1g)、15%NaOH水溶液(1mL)、NaSO(2g)をこの順序で生成混合物に加え、得られた懸濁液を濾過し、濃縮して黄色のオイルを得た。このオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:20のEtOAc/n−ヘプタンで溶出)で精製したところ、淡黄色のオイルとして生成物1−C−フェニル−2,3,4−トリ−O−tert−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノシド(69mg、12%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.44-7.42 (m, 2H), 7.38-7.34 (m, 2H), 7.32-7.30 (m, 1H), 4.66 (d, J=5.6Hz, 1H), 4.00 (dd, J=9.2, 4.4Hz, 1H), 3.94-3.90 (m, 2H), 3.85-3.79 (m, 3H), 2.34 (dd, J=6.0, 6.0Hz, 1H, OH), 0.98 (s, 9H), 0.94 (s, 9H), 0.88 (s, 9H), 0.16 (s, 6H), 0.15 (s, 3H), -0.03 (s, 6H), -0.27 (s, 3H); 13C NMR (100MHz, CDCl3) δ141.5 (C), 128.1 (CH×2), 127.7 (CH), 127.6 (CH×2), 81.8 (CH), 81.3 (CH), 78.0 (CH), 77.9 (CH), 71.9 (CH), 64.4 (CH2), 25.9 (CH3×9), 17.96 (C), 17.95 (C), 17.87 (C), -4.1 (CH), -4.2 (CH), -4.3 (CH), -4.6 (CH), -4.9 (CH), -5.1 (CH); LCMS (ESI) m/z 583 (100, [M+H]+), 584 (44, [M+H+1]+), 605 (46, [M+Na]+).
実施例57 トリフェニルアルミニウム(PhAl)の合成
[0263]ジイソプロピルエーテル(20mL)のAlCl(1.25g、9.4mmol)懸濁液に0〜5℃の臭化フェニルマグネシウム(10.8mL、27mmol、2.5M濃度のEtO溶液)を加えた。この混合物を室温で3〜4時間撹拌した。この溶媒を高真空ポンプで取り除いて白色の固体を得た。この固体にPhMe(15mL)を加えて、混合物を15分間撹拌した。得られたスラリーを窒素雰囲気下で濾過した。透明な濾液を元の体積の約1/3まで蒸発させ、得られた固体を濾過したところ、粗生成物1.36gを得た。粗生成物及びPhMe(15mL)のスラリーを撹拌して、濾過した。濾液を元の体積の約1/3まで蒸発させ、得られた固体を濾過したところ、所望の生成物(0.56g、18%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.71-7.74 (m, 6H), 7.23-7.26 (m, 9H), 4.05 (q, J=7.6Hz, 4H), 1.14 (t, J=7.6Hz, 6H).
実施例58 トリ−(4−メチルフェニル)アルミニウム(p−TolAl)の合成
[0264]4−メチル臭化フェニルマグネシウム(9mL、9mmol、1.0M濃度のTHF溶液)の溶液に0℃のAlCl(6mL、3mmol、0.5M濃度のTHF溶液)の溶液を加えた。混合物を室温で15時間撹拌した。この溶液をカニューレで固体と分離し、溶媒を乾燥窒素ガスの強い気流下で蒸発させた。残留物をn−ヘキサン(それぞれ10mL)で二回洗浄し、水分に敏感な有機金属生成物が空気にさらされるのをさけるために密閉系で濾過(シュレンク濾過)した。濾過した固体を減圧乾燥して、上記見出しの生成物(0.81g、72%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ7.70 (d, J=7.6Hz, 6H), 7.17 (d, J=7.6Hz, 6H), 4.01-4.11 (m, THF信号), 2.37 (s, 3H), 1.93-2.03 (m, THF信号).
実施例59 PhAlの合成、及び1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシド((2R,3S,4R,5R,6S)−2−(ヒドロキシメチル)−6−フェニルテトラヒドロ−2H−ピラン−3,4,5−トリオール;(1S)−1−C−フェニルグルコシド;(Ia))を得るためのアリール化反応での使用
【0310】
【化69】
【0311】
[0265]AlCl(133mg、1.0mmol)のBuO(4.0mL)溶液に周囲温度で臭化フェニルマグネシウム(1.2mL、3.1mmol、2.6M濃度のEtO溶液)を加えた。周囲温度で一晩撹拌した後、生成混合物を窒素ガスの強い気流でパージしてTHF及びEtOを蒸発させた。BuO(5.0mL)を残留物に加えて、この混合物を一晩撹拌した。それを濾過して、濾液を窒素ガスの強い気流でパージして、固体としてPhAlを得た。
【0312】
2,4−O−フェニルボロン酸1,6−アンヒドロ−β−D−グルコピラノース(248mg、1.0mmol)のPhCN(3ml)溶液に上記で得たPh3Alを加え、この混合物を170℃(槽の外温)で加熱した。4時間加熱した後、HPLCによる分析から、収率65%で1−C−フェニル−β−D−グルコピラノシドを得たことがわかった。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
式IVの化合物:
【化70】
を調製する方法であって、
該方法は、前記式IVの化合物を形成するのに十分な条件で式IIの化合物:
【化71】
を金属化アリール化合物と接触させることを含み、
式中、Arは芳香環、芳香族複素環、ビアリール環系、縮合芳香環、ポリ芳香族系、メチレン基で架橋した2つ以上の芳香環、及びメタ置換されたジアリールメタン系からなる群より選ばれるものであり;
はそれぞれ水素、又は保護基であり;
は、水素及びRと同じ又は異なる保護基からなる群より選ばれる、前記方法。
[請求項2]
請求項1記載の方法であって、該金属化アリール化合物は式[Ar]Mで表され、
式中、Arは芳香環、芳香族複素環、ビアリール環系、縮合芳香環、ポリ芳香族系、メチレン基で架橋した2つ以上の芳香環、及びメタ置換されたジアリールメタン系からなる群より選ばれ;
は金属、半金属、卑金属、アルカリ土類金属、及びランタノイドからなる群より選ばれ;
は存在しない、あるいはハライド、フェノキシド、アルコキシド、スルホネート、スルフェート、カルボキシレート、カルバニオン、シアニド、及びシアネートからなる群より独立して選ばれる1つ又はそれを超える陰イオンであり;
は存在しない、あるいは1つ又はそれを超える陽イオンであり;
下付記号nは1〜6の整数また非整数であり;
下付記号pは0〜6の整数又は非整数であって、かつn+pは陰イオンの合計数であり;
下付記号qは0〜4の整数又は非整数であって、かつ陽イオンの合計数であり;そして、
該方法は、場合により金属又は非金属ルイス酸M(式中、Mは金属、半金属、又は非金属であり;Yは陰イオンであり;及び、下付記号rは1〜7.1の整数である)の存在下で行われる、前記方法。
[請求項3]
式Iの化合物:
【化72】
を調製する方法であって、
該方法は、該式Iの化合物を形成するのに十分な条件で式IIIの化合物:
【化73】
を式[Ar]Mの金属化アリール化合物と接触させることを含み、
該方法は、場合により金属又は非金属ルイス酸Mの存在下で行われ、
式中、Ar、M、M、M、Y、Y、n、p、q、及びrは、請求項2で規定したものである、前記方法。
[請求項4]
請求項1に記載の方法であって、式中、R及びRは保護基であり、該方法はさらにR及びR基を式IVの化合物から取り除いて式Iの化合物:
【化74】
を生成することを含む、前記方法。
[請求項5]
式Vの化合物を調製する方法であって、
a)式IVの化合物:
【化75】
と、RXと、場合によりRX(Rは水素以外のものであり、RはHである)とを、式VIの化合物:
【化76】
を生成するのに十分な条件で接触させること、及び、
b)式VIの化合物からR基及びR基(Rは保護基である)を取り除いて式Vの化合物:
【化77】
(RはHである)
を生成すること、を含み、
式中、Rは保護基であり;
はHあるいはRと同じ又は異なる保護基であり;
Xは脱離基であり;
Arは芳香環、芳香族複素環、ビアリール環系、縮合芳香環、ポリ芳香族系、メチレン基で架橋した2つ以上の芳香環、又はメタ置換されたジアリールメタン系であり;
は、アミノ酸基を含む−COR、−COR、−COCHOCOR、−CHOCOR、−P(O)(OR)、−P(O)(OH)O、−SOOR、−SO、−PO2−、−CONHR、−CON(R)、−COCOR、−COCOR、−CONHR、−CON(R)であり;
はR、R又はHであり;
Rは分岐状又は非分岐状のC−C20アルキル、C−C20シクロアルキル、又はC−CシクロアルキルC−Cアルキルである、前記方法。
[請求項6]
請求項5に記載の方法であって、該式VIの化合物は、該式IVの化合物を形成するの
に十分な条件で式IIの化合物:
【化78】
を金属化アリール化合物と接触させることにより調製され、
式中、Arは芳香環、芳香族複素環、ビアリール環系、縮合芳香環、ポリ芳香族系、メチレン基で架橋した2つ以上の芳香環、及びメタ置換されたジアリールメタン系からなる群より選ばれ;
は水素又は保護基であり;
は、水素あるいはRと同じ又は異なる保護基からなる群より選ばれる、前記方法。
[請求項7]
請求項6に記載の方法であって、該金属化アリール化合物は式[Ar]Mで表され、
式中、Arは芳香環、芳香族複素環、ビアリール環系、縮合芳香環、ポリ芳香族系、メチレン基で架橋した2つ以上の芳香環、及びメタ置換されたジアリールメタン系からなる群より選ばれ;
は金属、半金属、卑金属、アルカリ土類金属、及びランタノイドからなる群より選ばれ;
は存在しない、あるいはハライド、フェノキシド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレート、スルフェート、カルバニオン、シアニド、及びシアネートからなる群より独立して選ばれる1つ又はそれを超える陰イオンであり;
は存在しない、あるいは1つ又はそれを超える陽イオンであり;
下付記号nは1〜6の整数又は非整数であり;
下付記号pは0〜6の整数又は非整数であり、かつn+pは陰イオンの合計数であり;
下付記号qは0〜7の整数又は非整数であり、かつ陽イオンの合計数であり;そして、
該方法は、場合により金属又は非金属ルイス酸M(式中、Mは金属、半金属又は非金属であり;Yは陰イオンであり;下付記号rは1〜7の整数である)の存在下で行われる、前記方法。
[請求項8]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、該方法は金属又は非金属ルイス酸Mの存在下で行われる、前記方法。
[請求項9]
請求項2、3又は7に記載の方法であって、Mは金属、半金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる、前記方法。
[請求項10]
請求項2、3又は7に記載の方法であって、MがAlである場合、下付記号nは1〜4の数である、前記方法。
[請求項11]
請求項10に記載の方法であって、RがHではない場合、又はRがHであって式IIの化合物がアリール化反応の前に塩基で脱プロトン化されている場合、アリール基の下付記号nは1.5〜3の範囲にあり;そして、Yは存在しない、あるいはYはハライド、スルホネート、フェノレート、カルボキシレート、アルコキシド、スルフェート、カルバニオン、シアニド、又はシアネートである、前記方法。
[請求項12]
請求項11に記載の方法であって、該アリール基の下付記号nは1.75〜2.75の範囲にあり、Yはハライド、スルホネート、又はフェノレートである、前記方法。
[請求項13]
請求項10に記載の方法であって、RがHであり、式IIの化合物がアリール化反応の前に脱プロトン化されていない場合、アリール基の下付記号nは1.5〜4の範囲にあり;そして、Yは存在しない、あるいはYはハライドである、前記方法。
[請求項14]
請求項13に記載の方法であって、該アリール基の下付記号nは1.75〜3.25の範囲にあり、Yは存在しない、あるいはハライド、スルホネート、又はフェノレートである、前記方法。
[請求項15]
請求項3に記載の方法であって、Mがアルミニウムである場合、アリール化反応の前に式IIIの化合物を塩基と反応させ、アリール基の下付記号nは1.5〜3の範囲であり;そして、Yは存在しない、あるいはYはハライド、スルホネート、フェノキシド、カルボキシレート、アルコキシド、スルフェート、カルバニオン、シアニド、又はシアネートである、前記方法。
[請求項16]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、該方法は、ルイス塩基添加物の存在下、又はエーテル、又はニトリル、又はそれらの混合物から選ばれるルイス塩基溶媒の存在下で行われることを特徴とする方法。
[請求項17]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、該方法が立体選択的である、前記方法。
[請求項18]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物を式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物(式中、Yはハライド、フェノレート又はスルホネートである)と好適な溶媒中で混合することにより、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物を、式II又はIIIの化合物と接触させる前に調製する、前記方法。
[請求項19]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、式ArLiのアリールリチウム化合物又は式ArMgYのアリールグリニャール試薬(式中、Yはハライドである)を式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物(式中、Yはハライド、フェノレート又はスルホネートである)と好適な溶媒中で混合することにより、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物を、式II又はIIIの化合物と接触させる前に調製する、前記方法。
[請求項20]
請求項19に記載の方法であって、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物を析出、結晶化、蒸留又は抽出により精製して、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物を調製する際に形成されるハロゲン化リチウム又はハロゲン化マグネシウム塩副生成物を取り除く、前記方法。
[請求項21]
請求項18及び19に記載の方法であって、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物と接触させる前に、式IIの化合物(式中、R=Hである)を塩基で脱プロトン化する、前記方法。
[請求項22]
請求項21に記載の方法であって、該塩基は有機リチウム化合物である、前記方法。
[請求項23]
請求項21に記載の方法であって、該塩基は有機リチウム化合物n−BuLiである、前記方法。
[請求項24]
請求項1又は6に記載の方法であって、R及びRがいずれも保護基であり、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物は式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物である、前記方法。
[請求項25]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、式II又はIIIの化合物と又は、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物との接触は、エーテル、ニトリル、又はハロベンゼン、又はそれらの混合物から選ばれる溶媒中、周囲温度より高い温度で行われる、前記方法。
[請求項26]
請求項25に記載の方法であって、該周囲温度より高い温度は80℃〜180℃の範囲内である、前記方法。
[請求項27]
請求項18に記載の方法であって、Yはハライドである、前記方法。
[請求項28]
請求項27に記載の方法であって、該ハライドはクロリドである、前記方法。
[請求項29]
請求項18に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物の、式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物に対するモル比は約1:1〜20:1である、前記方法。
[請求項30]
請求項18に記載の方法であって、式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物の、式AlYの三置換アルミニウム(III)化合物に対するモル比は約1.5:1〜15:1である、前記方法。
[請求項31]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、式[Ar]Mで表される金属化アリール化合物は式ArAlのトリアリールアルミニウム化合物である、前記方法。
[請求項32]
請求項1又は6に記載の方法であって、該式IIの化合物は式IIaのシリル基で保護された化合物
【化79】
であり、
式中、R、R、及びRは独立してアルキル、アルキルオキシ又はアリールである、前記方法。
[請求項33]
請求項32に記載の方法であって、該シリル保護基SiRは、tert−ブチルジメチルシリル(R=t−Bu、R=R=Me)、tert−ブチルジフェニルシリル(R=t−Bu、R=R=Ph)、トリイソプロピルシリル(R=R=R=i−Pr)、ジエチルイソプロピルシリル(R=i−Pr、R=R=Et)、ジメチルイソプロピルシリル(R=i−Pr、R=R=Me)、トリエチルシリル(R=R=R=Et)、ジ−tert−ブチルイソブチルシリル(R=R=t−Bu、R=i−Bu)、又はtert−ブトキシジフェニルシリル(R=t−BuO、R=R=Ph)からなる群から選ばれる、前記方法。
[請求項34]
請求項33に記載の方法であって、該シリル保護基はtert−ブチルジメチルシリル(R=t−Bu、R=R=Me)である、前記方法。
[請求項35]
請求項33に記載の方法であって、該シリル保護基はtert−ブチルジフェニルシリル(R=t−Bu、R=R=Ph)である、前記方法。
[請求項36]
請求項1又は6に記載の方法であって、該式IIの化合物は 式XIのボロン酸エステル化合物
【化80】
であって、
式中、Rはアルキル、アリール、アミノアルキル、又は置換されたホウ素から選ばれる基である、前記方法。
[請求項37]
請求項36に記載の方法であって、Rはアリール基である、前記方法。
[請求項38]
請求項37に記載の方法であって、アリール基は、式XIVの化合物
【化81】
を生成するアリール化反応中に、式IIの化合物のC1に実質的に転移しない基であり、
式中、Rは式XIの化合物のRと同じである、前記方法。
[請求項39]
請求項38に記載の方法であって、該「実質的に転移しない」は、式XIVの化合物の、式IVの化合物に対するモル比が1:9以下であることを指すものである、前記方法。
[請求項40]
請求項36に記載の方法であって、該Rは置換ホウ素基である、前記方法。
[請求項41]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、Arは以下の基
【化82】
から選ばれ、
式中、Pは、TBS、TBDPS、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ベンジル、及び4−メトキシベンジルからなる群から選ばれる好適な保護基である、前記方法。
[請求項42]
請求項1、3又は6に記載の方法であって、さらに未反応の金属化アリール化合物又は副生成物を、未反応の金属化アリール化合物又は副生成物をハロゲン化アリールに変換するのに十分な条件のもとでハロゲン源と接触させる工程を含む、前記方法。
[請求項43]
請求項42に記載の方法であって、該ハロゲン源は、ヨウ素、ブロミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ヨードスクシンイミド、及びN−ヨードフタルイミド、又はそれらの混合物から選ばれる、前記方法。
[請求項44]
請求項42に記載の方法であって、未反応の金属化アリール化合物又は副生成物をハロゲン源と接触させる工程を塩化リチウムの存在下で行うものである、前記方法。
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