(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144704
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】加速度センサー構造体およびその用途
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20170529BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20170529BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20170529BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
G01P15/125 Z
G01P15/18
G01P15/08 101B
G01P15/08 101D
H01L29/84 Z
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-551657(P2014-551657)
(86)(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公表番号】特表2015-503758(P2015-503758A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】FI2013050024
(87)【国際公開番号】WO2013104827
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】20125034
(32)【優先日】2012年1月12日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】507220615
【氏名又は名称】ムラタ エレクトロニクス オサケユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】リトコネン、ヴィッレ−ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ロスチアー、レイフ
(72)【発明者】
【氏名】ブロムクヴィスト、アンッシ
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−247812(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0030472(US,A1)
【文献】
特開2010−238921(JP,A)
【文献】
特開2010−38903(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0158370(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00−15/18
G01C19/00−19/72
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー構造体のマトリックスであって、当該センサー構造体のマトリックスは、第一のセンサーセル(Z1、Z2)と、第二のセンサーセル(X)と、第三のセンサーセル(Y)とを有し、これらセンサーセルのそれぞれは平坦な構造を持っており、前記第一のセンサーセルはMEMSセンサー構造体を含んでおり、
前記第一のセンサーセルは、検出可能な量が差動的に連結された第一のペアを提供するために、回転軸を中心にピボット回転するように構成された第一のプルーフマス(Z1)を有し、前記検出可能な量は、第一の位置における減少する第一の量と、第二の位置における増加する第二の量とを含んでおり、これら第一の量と第二の量は、前記の減少することと増加することが同じ作動によって生じるように、互いに連結されており、
前記第一のセンサーセルは、検出可能な量が差動的に連結された第二のペアを提供するために、回転軸を中心にピボット回転するように構成された第二のプルーフマス(Z2)を有し、前記検出可能な量は、第三の位置における減少する第三の量と、第四の位置における増加する第四の量とを含んでおり、これら第三の量と第四の量は、前記の減少することと増加することが同じ作動によって生じるように、互いに連結されており、
前記第一のプルーフマス(Z1)と前記第二のプルーフマス(Z2)は、二重差動検出のために連結されており、かつ、位相シフトにおける二重差動検出のための量を生成するように、対称的に位置決めされており、
第一のセンサーセル(Z1、Z2)と、第二のセンサーセル(X)と、第三のセンサーセル(Y)は、共通の平面に配置されており、
第二のセンサーセル(X)と、第三のセンサーセル(Y)は、前記共通の平面内における加速度成分をそれぞれ検出するように配置されており、
第二のセンサーセル(X)と、第三のセンサーセル(Y)は、前記共通の平面内における第一の方向(x)に沿って平行に配置されており、
第一のセンサーセル(Z1、Z2)は、前記共通の平面において、第二のセンサーセル(X)と第三のセンサーセル(Y)との間に配置され、前記MEMSセンサー構造体の回転軸は前記第一の方向(x)に平行になっており、
第一のセンサーセルの第一のプルーフマス(Z1)は端部を含んでおり、該端部は、第二の方向(y)においては、第二のセンサーセル(X)と第三のセンサーセル(Y)の寸法を超えて延び、かつ、前記第一の方向(x)においては、第二のセンサーセル(X)と第三のセンサーセル(Y)の外側端部まで延び、ここで、前記第二の方向(y)は、前記共通の平面において、前記第一の方向(x)に垂直であり、
第一のセンサーセルの第二のプルーフマス(Z2)は端部を含んでおり、該端部は、前記第二の方向(y)においては、第二のセンサーセル(X)と第三のセンサーセル(Y)の寸法を超えて延び、かつ、前記第一の方向(x)においては、第二のセンサーセル(X)と第三のセンサーセル(Y)の外側端部まで延び、
第一のプルーフマス(Z1)の前記端部と、第二のプルーフマス(Z2)の前記端部が、前記回転軸に対して互いに異なる側にある、
前記センサー構造体のマトリックス。
【請求項2】
前記位相シフトが180°であり、そのことによって、第一のプルーフマス(Z1)と、第二のプルーフマス(Z2)とが、逆位相における二重差動検出のための量を提供するようになっている、請求項1に記載のセンサー構造体のマトリックス。
【請求項3】
第二のセンサーセル(X)または第三のセンサーセル(Y)が:
1以上のバネによって基板に対して懸架されているフレーム(602)と:
前記フレームによって支持された第一の静電容量性の要素(603)と;
前記基板への接続のためのアンカー要素(606)と;
前記基板によって支持された第二の静電容量性の要素(607N、607P)と;
を含み、
上記の検出可能な量が、前記第一の静電容量性の要素(603)と前記第二の静電容量性の要素(607N、607P)との間の静電容量であり、それら静電容量は、前記基板に対する前記フレーム(602)の動きに応じて変化する、
請求項1または2に記載のセンサー構造体のマトリックス。
【請求項4】
上記第二のセンサーセル(X)および上記第三のセンサーセル(Y)が、上記共通の平面におけるXY方向の平坦な構造体に配置され、かつ、上記第二のセンサーセル(X)のプルーフマスと上記第三のセンサーセル(Y)のプルーフマスが、X方向またはY方向の加速度を、または、前記XY方向の構造体のX方向またはY方向の加速度を検出するように方向付けられている、請求項3に記載のセンサー構造体のマトリックス。
【請求項5】
上記第一のプルーフマス(Z1)が、上記回転軸を中心にピボット回転するように、第一のバネ構造に連結され;
上記第二のプルーフマス(Z2)が、前記回転軸を中心にピボット回転するように、第二のバネ構造に連結されている、
請求項1または2に記載のセンサー構造体のマトリックス。
【請求項6】
上記第一のセンサーセルの、上記第一のプルーフマス(Z1)と上記第二のプルーフマス(Z2)の質量分布が、点対称である、請求項5に記載のセンサー構造体のマトリックス。
【請求項7】
上記第一のバネ構造および上記第二のバネ構造が、基板への接続のための単一のアンカー(120)に対して連結されている、請求項6に記載のセンサー構造体のマトリックス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサー構造体のマトリックスを少なくとも1つ有する加速装置センサー。
【請求項9】
請求項8に記載の加速装置センサーを有するデバイス(D)であって、
当該デバイスが:
自動車、衣類、靴、ポインター、コンパス、計器、地震計、ナビゲーター、モバイル装置、機械的モーター、液圧モーター、電気モーター、発電機、ベアリングモジュール、遠心機、
のうちの少なくとも1つを有する、
前記デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスを少なくとも1つ有するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概しては、MEMS、微小電気機械システム(micro-electro-mechanical systems)、に関するが、より具体的には、MEMSセンサー構造体に向けられた独立クレームの序文に示された加速装置センサー構造体に関する。本発明はまた、それぞれの独立請求項の序文に示されたとおり、センサー構造体のマトリックス(matrix、行列体)、センサーデバイス、および、システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
本体(body)の加速度を感知して、作用力の影響下における該本体の運動状態(kinetic state)に応じた信号を得ることは、その本体のポジション(姿勢)および/またはロケーション(位置)を決定するために広く応用されている方法である。その目的のためには、様々なセンサーが使用できるが、MEMS構造体は、小さいサイズであるがゆえに、多くの用途に好適である。マイクロエレクトロニクスでは、需要の増大によって、多くの分野で直面した目的のために益々良好な構造体を開発することが可能になっており、特許分類がMEMS関連の加速度センサーを有し得るいくつかの応用分野では、例えば、車両、家庭用電子機器、衣類、靴に関連する分野が挙げられる。
【0003】
しかしながら、本特許出願の優先日において、公知のMEMS構造体は、産業上におけるそれらの使用を制限するようないくつかの問題に直面している。あるいは、加速度センサーを使用する関連製品は、それらの所望の目的を十分に満たすように作ることは可能であるが、先行技術のMEMS構造体の使用は、余分な信号処理、誤差補正、および/または、補償の手段を必要とする場合があり、かつ、その目的を満たす構成部品を獲得するための解決策を必要とする場合がある。MEMS構成部品の作動は、外的な電気機械的な手段によって改良できる。しかし、通常、そのような手段は、全体の構造を複雑にし、かつ、製造コストを増大させる。また、それらは、外来的な相互作用する一団(interacting parties)の数が増えるので、その構造を故障に対して敏感にするだろう。
【0004】
以下の
図1〜5Bでは、公知の技術の欠点のいくつかが実証されている。
【0005】
図1は、公知の技術による、櫛形構造(comb-structure)検出手段を用いた容量検出に基づいた加速度感知のための、X方向および/またはY方向を感知するセルを有する例示的なセンサー構造体を図解している。該セル(cell)は、有効質量のための可動フレーム102を有する。該可動フレームの有効質量は、可動電極103の一式(ensemble)を保持するように配置される。そのような電極が1つだけ、符号103で示されているが、当業者は、前記一式の可動電極には1つよりも多い電極があり得ることを知っている。当業者はまた、一式中に多くの可動電極がある場合、有効質量へのそれらの貢献度を正しく考慮する必要があることを知っている。
【0006】
該セルは、要素を通じて物体の表面にアンカー係留(anchored)され得、該要素は、数字および文字の組み合わせ106、107N、107Pで示される。添えられた文字「N」は、負(negative)の電荷および/または電圧を表し、添えられた文字Pは、正(positive)の電荷および/または電圧を表す。何も付けていない数字106は、グラウンド電位を示し得るか、および/または、素のままの機械的特性を持っていることを示し得る。従って、
図1では、それぞれの符号表示NおよびPで表される固定電極105Nおよび104Pは、相互接続されたアンカー107N、107Pとして、対応する極性を持ち得る。アンカー構造体106、107N、107Pは、グラウンドから絶縁されていてもよいが、絶縁配置構成それ自体は、この文脈においては関連性がない。MEMS構造体の分野の当業者であれば、MEMS構造体において構成部品同士を絶縁することが必要な場合には、そうするための多くの方法を知っている。可動フレーム102は、バネ101を介して、アンカー構造体106に接続されている。
【0007】
図1の先行技術の構造体は、差動(differential)構造体であって、即ち、バネ101で懸架された該フレーム102が+X方向に移動する場合に、P符号のついた静電容量(capacitance)が増加すると、N符号のついた静電容量が減少するものであって、その逆も同様である。図は、アンカー106に対して対称な構造を示しているが、これは、可動フレーム102の静止状態(rest state)において有効となる。
【0008】
図2および3のセンサー構造体は、正のおよび負の静電容量の電極領域を有する要素(element)によって実施された、先行技術の、z方向を感知する加速度センサー構造体を図解している。これらの正のおよび負の静電容量の領域は、図では、対応する極性符号+および−でそれぞれに示されている。
【0009】
図2は、典型的な、機械的要素を図解しており、該要素は、プルーフマス(proof mass、試験質量部)202と、ピボット回転軸204とを有する。該プルーフマス202が(図示した)xy方向に広がると考え、かつ、該プルーフマス202がz方向の加速度の影響下にあると考えるならば、該プルーフマスは力を受け、その力は、その軸204を中心に該プルーフマスをしかるべくピボット回転させる。
【0010】
可動プルーフマス202上の、負のおよび正の静電容量の電極領域206P、206Nは、固定電極と相互作用し、かつ、静電容量を生成するように配置され得、該静電容量は、該プルーフマスの運動に応じて変化する。形成されたキャパシタの固定電極は、分かり易くするために、
図2および3には示されていない。しかしながら、該プルーフマスと共に移動するそれぞれの電極は、専用の固定電極を持つことができ、または、共通の固定電極が、正のおよび負の電極領域に提供されてもよい。例えば、電極領域206P、206Nは、グラウンド電位となっている共通の固定電極を持っていてもよい。
【0011】
図3の先行技術のセンサー構造体は、ピボット回転可能な一対の機械的要素Z1、Z2によって実施され得、これら機械的要素のそれぞれは、プルーフマス301、302およびピボット回転軸Axiを有する。ここでも、該マス(mass、質量部)301、302がz方向の加速度の影響下にある場合、それらは、加速力(acceleration force)を受け、該力によって、それぞれの軸Axiを中心にピボット回転する。該機械的要素は、シーソー型、即ち、「ティーター・トッター(teeter-totter)」型にて、移動するように配置されることによって、ピボット回転中、該要素の一方の側が一方の方向に移動し、それと同時に、要素の他方の側が反対方向に移動するようになっている。従って、電極領域303P、304P、305N、306Nの静電容量が変化することによって、例えば、電極303Pの静電容量が増加するとき、電極305Nの静電容量は、これに対応して減少するようになっている。同様に、電極304Pの静電容量が増大するとき、電極306Nの静電容量が、これに対応して減少する。増加および減少するPおよびNの要素は、入れ替わってよいが、しかし、該同時の逆のシーソー運動は、両方の状況において起こる。
図3では、両方の機械的要素のプルーフマスが、ピボット回転軸Axiに対して、不均一に分布している。
図3の上方および下方の機械的要素は、単一の対称性を持つように示されている。該ピボット回転は、一対のトルク重視(torque-oriented)のバネでAxiを中心に回転するように構成され得る。従って、ピボット回転軸Axiは、トルク作用を有する一対のバネで実施できる。
【0012】
図4Aおよび4Bは、
図2のセンサー構造体で検出される問題を図解している。
図5Aは、3d加速度センサー構造体の上面図の概略的な写真図を示しており、該写真図では、
図2の1つの機械的なシーソー要素が用いられている。該センサー構造体はまた、XおよびY方向の加速度検出のための
図1の櫛形構造の容量検出セルを有する。
図4Aは、検出器で用いられているセンサー構造体の中央における、ピボット回転可能な機械的要素Zを図解している。
図2で説明されるように、該機械的要素は、軸Axiによって、より短い部分、および、より長い部分へと分割される。
図4Bは、
図4Aのセンサー構造体の機械的要素Zの側面図を図解している。
図4Bはまた、構造体400、例えば、カバーまたは基板(substrate)を示し、該構造体では、Zの静電容量のためのグラウンド電極402、404が固定(fixed)されている。該機械的要素が変形するような構造、または、グラウンド電極が固定(secured)されている構造が変形するとき、概略図が示すように、機械的要素Zの電極領域までのグラウンド電極の距離が、異なる様に変化する。例えば、
図4Bに図解される場合では、負の電極までの距離が減少し、正の電極までの距離が増大するが、これは、従来の差動検出が、変形によって激しく妨げられることを意味する。
【0013】
図5Aおよび5Bは、
図3の従来のセンサー構造体で検出される問題を図解している。
図5Aは、センサー構造体の上面図の概略的な写真図を示し、該写真図では、
図3の、一対の機械的なシーソー要素が使用されている。該センサー構造体はまた、XおよびY方向の加速度検出のための、
図1の櫛形構造の容量検出セルXYを有する。
図5Bは、
図5Aのセンサー構造体の機械的要素Z1、Z2の側面図を図解している。
図5Bは、さらなる構造体500を示し、該構造体では、Z1、Z2の静電容量のためのグラウンド電極502、504が固定されている。機械的要素が支持されている構造が変形するか、または、グラウンド電極が固定(secured)された構造が変形するとき、概略図が示すように、グラウンド電極と機械的要素Z1、Z2の電極領域との間の距離は、異なる様に変化することがわかり得る。例えば、
図5Bに図解される場合では、Z1、Z2の負の静電容量の電極領域からグラウンド電極までの距離が増大し、Z1、Z2の正の静電容量の電極領域から正の電極までの距離は減少する。差動検出が適用されるとき、これは、検出にオフセット誤差を引き起こす。加えて、
図2および3で説明されているように、Z1、Z2のプルーフマスが、軸Axiに対して非対称に分布し得、従って、異なる様に傾くか、またはピボット回転する。5Aに示される構成では、これは、変形の影響を補償しない。
【0014】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを、克服または緩和するための解決策を提供することである。本発明の目的は、独立請求項1のMEMSセンサー構造体で達成される。本発明の目的は、他の独立請求項の物品、加速装置センサー(accelerator sensor、アクセルセンサー)、加速装置センサーのマトリックス、デバイス、および、システムでさらに達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において開示されている。
【0015】
グローバル(global、全体的な)という用語(特に、本発明の実施形態内でのグローバルに対称であるとの表現の文脈において)は、対称な部分を持つと記載される物品(article)全体のスケールまたは寸法を示す。該物品は、センサー構造体、センサー、および/または、その一式の実施形態では、グローバルに対称に実施できる。従って、一式とは、例えば、マトリックス(行列体)、または、積層体、または、積層されたマトリックスを指すことができ、それらがセンサーを有し、および/または、センサーで用いられる機械的要素を有することができる。
【0016】
従って、「グローバル」は、物品の内的部分が、対称性要素に対して/対称性要素に従って、少なくとも1つの対称性を持つようなスケールだけに適用可能とされることを必ずしも望まれていない。部分のスケールでその内的なサブ構造が考慮されるとき、それ自体でグローバルに対称であり得るのは、物品に関連する前記部分のスケールである。
【0017】
実施形態の例として、全体的スケールでのマトリックスが、通常の意味での対称性において非対称に見えるような非対称なセンサー構造体がマトリックス構造体にあるという条件のもとでは、センサーのマトリックスは、グローバル的に対称ではないとみなされる。それは、たとえ、単数のセンサー/複数のセンサーが、センサー構造体(該センサーがその一部となっている)のスケールで、ローカル的に対称なセンサーがあったとしてもである。従って、マトリックスのセンサー構造体がグローバルに対称でなくても、全体的なスケールでのセンサーは、グローバルに対称であり得る。
【0018】
ローカル(local、局所的な)は、特に、本発明の実施形態では、ローカル的に(locally、局所的に)に対称なということに関連して、この文脈では、サブ構造のスケールまたは寸法で、物品全体の少なくとも一部を意味する。該物品は、センサー構造体、センサー、および/または、その一式(例えば、マトリックス(行列体)、または、積層体、または、積層されたマトリックスといったものであり、それが、センサーを有し、および/または、センサーにおいて使用される構造体を有する)の実施態様にて具現化され得る。
【0019】
従って、「ローカル」は、純粋に、物品の詳細または部分的な構造体をいうために使用され、従って、物品自体の全体のスケールであることは殆どないが、特に、構造体の部分の個々のその部分のスケールにおいて、グローバルな対称性を有する入れ子対称性(nested symmetries)の構造体においても、ローカルな対称性は存在し得る。
【0020】
この文脈における対称性は、対称性要素によって定められる少なくとも2つの側における物体の対称性を表すために使用される。対称性要素という表現は、点、軸、プレート、平面、および/または、センサー構造体のサブ物体(sub-object)を意味する。対称性要素は、必ずしも本当の物体ではなく、対称性を定めるために使用される仮想の物体またはポジションであってよい。
【0021】
物品の対称性の次数(order)は、特に、本発明の実施形態に関する文脈では、特定の形で、対称性を供述している表現をいう。
【0022】
よって、一次の対称性(first order symmetry)は、物品についての対称性要素が1つだけあることを意味しており、これによると、単一の対称性要素に対して、通常の意味での対称性がある。同様に、二次の対称性は、物品について、少なくとも1つの対称性要素があることを意味しており、これによると、通常の意味での対称性が存在するが、対称性を定める2つを超える対称性要素はない。同様に、三次の対称性は、物品について、少なくとも1つの対称性要素があることを意味し、これによると、定義される通常の意味での対称性があるが、対称性を定める3つを超える対称性要素はない。同様に、四次の対称性は、物品について、少なくとも1つの対称性要素があることを意味し、これによると、通常の意味での対称性があるが、5つ未満の対称性要素によって定められる対称性だけがあり得る。
【0023】
実施形態の一式によれば、対称性要素は、対称性の次数(order of symmetry)を持ち得る。これはまた、対応する実施形態の一式のローカルなおよび/またはグローバルな対称性に適用される。
【0024】
物体(object)または物品(article)の対称性の位置は、対称性の中心であって、その中心について、対称性要素に対して対称な部分の対称性が在るように、該対称性要素が合致する。対称性の質(quality)は、以下から、つまり:対称性要素に対する対称性に関連する形状的測定、形状的特徴、質量、容積、面積、密度、数、または、他の量から選択できる属性であるため、対称性の次数に適用可能な対称性要素に対して、同量の、少なくとも2つの同様の対称性の質の特性(attribute)で表現された質がある。対称性の質の範囲には、鏡面状の対称性もまた含まれるが、また、構造体が非鏡面(anti-mirror)対称性を有するような対称性(即ち、物体が、それが鏡面対称であるかのように位置づけられているが、半サイクル分だけ、または、任意の実施形態では、他のピボット回転角度分だけ、ピボット回転しているような対称性)も含まれる。鏡面対称性および非鏡面対称性は、並進対称性(translatory symmetry)を持つと考えることができ、即ち、対称性要素によって対称な部分が、それがあった鏡面対称性または非鏡面対称性の場所から、対称性要素に対する鏡面対称性によってシフトされたと考えることができる。
【0025】
プレートは、平坦なまたは実質的に平坦な物体と考えられるが、物理的な平面として考えられ、しかし、仮想的な平面さえも含むため、物体が、平面またはプレート上に共通の特徴を持つような記述に使用されるための構造的な用語として、平面自体を表す。
【0026】
以下の例示的な実施形態の詳細な説明では、以下に示す図を(符号の図によって)参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、先行技術の、加速度感知のためのxおよび/またはy方向を感知するセルを図解している。
【
図2】
図2は、先行技術の、加速度感知セルのための機械的要素を図解している。
【
図3】
図3は、他の先行技術の、加速度感知セルのための機械的要素を図解している。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、先行技術の加速度センサー構造体を図解しており、該構造体では、
図2の1つの機械的なシーソー要素が使用されている。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、先行技術のセンサー構造体を図解しており、該構造体では、
図3の一対の機械的なシーソー要素が使用されている。
【
図6】
図6は、X方向の加速度検出のための容量性電極を有する櫛形構造セルを図解している。
【
図7】
図7は、Y方向の加速度検出のための容量性電極を有する櫛形構造セルを図解している。
【
図8】
図8Aおよび8Bは、単一の先行技術のセル、および、センサーセルの実施形態である。
【
図9】
図9Aおよび9Bは、異なる対称性の補償のための、異なるバネサスペンションを有する2つの実施形態を図解している。
【
図10】
図10A〜10Cは、Xおよび/またはY方向の検出のためのセルマトリックス構成を図解している。
【
図11】
図11は、Z方向検出のための実施形態を図解している。
【
図12】
図12は、対称なZ軸方向センサー構造体が、単一のアンカーを有する基礎をなす基板に懸架された実施形態を図解している。
【
図14】
図14は、単一のアンカー係留点(anchoring point)を有する他の可能なセンサー構造体の構成を図解している。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態による3dセンサー構造体の構成を図解している。
【
図16】
図16は、提案される二重差動構造でなされたシミュレーションの結果を図解している。
【
図17】
図17は、さらに可能なセンサー構造体の構成を図解している。
【
図18】
図18は、加速度センサーの実施形態を図解しており、該センサーは、実施例で示されるセンサー構造体の構成を使用している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施形態は、例示的なものである。明細書は、「an」「one」または「some」実施形態に言及し得るが、これは、そのような言及それぞれが、同じ実施形態を指すこと、または、特徴が、単一の実施形態だけに適用されることを必ずしも意味しない。異なる実施形態の単一の特徴は、さらなる実施形態を提供するべく、組み合わせられ得る。
【0029】
本発明の特徴を、センサー構造体の簡単な例で説明するが、該例では、本発明の様々な実施形態が実施され得る。実施形態を例証するのに関係する要素についてのみ、詳細に説明する。発明された方法およびデバイスの様々な実施は、当業者に一般的に知られる要素を有し、本文では、具体的には説明し得ない。
【0030】
センサー構造体の手段は、対応する構造体内に配置された、バネ、バー(bars、棒状物)、キャパシタ電極、アンカー、アンカー基板、および軸を有し得る。特に、本発明の実施形態による対称性に関する場合、該手段は、図およびそれらについての記載において後ほど示される通り、第一の手段、第二の手段等として参照する場合がある。
【0031】
実施形態の文脈における差動(differential)という用語は、例えば、差動動作が、第一の位置において第一の量を減少させ、第二の位置において第二の量を増大させることを有し、これらが結合されて、前記減少および増大が同じ動作によって起こるようになっているということを意味する。作動検出では、第一の量と第二の量との両方が、動作の検出結果を生成するために検出される。
【0032】
そのような構造の例は、キャパシタのペア(capacitor pair、キャパシタ対)であり、該キャパシタのペアは、それぞれが電位を持った状態にある2つの電極を有し、かつ、グラウンド電位となっている共通電極とを有している。それらの電極は、次のように配置され得る。即ち、2つの電極が1つの軸線の周りをピボット回転するとき、共通のグラウンド電極までのこれらの電極の距離が変化し、一方の静電容量が増加しかつ他方の静電容量が減少するようにである。そのような構成は、機械的なカップリング(連結)が、2つのピボット回転する電極に共通の堅固(rigid)な対象物についてなされるとき、達成される。
【0033】
実施形態の文脈における二重差動(double differential)という用語は、例えば、他の差動的に連結された一対の量、つまり、第三の位置における第三の量と、第四の位置における増加する第四の量とのペアがあることを意味しており、該ペアは、第一の位置における第一の量、および、第二の位置における増加する第二の量の作動についての文脈で説明したのと同じように作用するが、第一の量および第二の量のペアに対して位相シフトがあることを意味している。二重差動検出では、第一の量、第二の量、第三の量、および第四の量は、検出される動作から、またはそれに応じた前記検出可能な量を生成するために、ペア(対)になって使用される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、静電容量、またはそれらの誘導物(derivables)は、第一のおよび第二の量、並びに、第三のおよび第四の量として適用され得る。なお、静電容量は、ペアになった(pair-wise)量の例として使用されるが、当業者は、他の量もまた、差動的に、また、二重差動的にも、互いに依存するように配置できることを知っている。例示的な実施形態では、位相シフトは180度、すなわち、ペアは逆位相にあるが、本発明は、必ずしも、そのような位相シフトだけに限定されるわけではない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、量のペアは、第一の、第二の、第三の、および、第四の量の一式から選択され、前記量に依存する信号を生成して、その信号を二重差動的に処理し得る。本発明の実施形態によれば、量は、静電容量であり得、信号は、静電容量またはその少なくとも1つに対応する電気信号であり得る。信号は、加速度または加速度の成分の決定では、実施例で示された加速度センサー構造体と共に使用され得る。
【0036】
図6および7は、単一のセルを有する例示的なセンサー構造体を図解しており、該単一のセルは、それぞれ、例示的なXおよびY方向の加速度検出のための容量性電極を有する櫛形構造を持っている。電圧を提供する従来の要素、および、読取り電子機器(reading electronics)は、わかりやすくするために示されていない;当業者は、センサー構造体のそのような部品を実施する方法を知っている。
【0037】
図6および7は、有効質量をフレーム602、702として示し、該フレームは、検出用櫛歯の周囲に延びている。該検出用櫛歯は、固定電極604P、605Nおよび可動電極603を有する。使用中、要素は、正のまたは負の電圧で、グラウンドに対してバイアスされ得る。ここでは、文字Pは、グラウンドに対する正電荷を示し、文字Nは、グラウンドに対する負電荷を示している。図では、電極のテクスチャーのタイプは、セル構造が使用中であるときの、テクスチャーを付けられた要素の電荷の例示的な符号を示している。いくつかの実施形態では、バイアスは、電極グループに特有であり得、一つの方向で用いられる各加速度成分検出セルについては、必ずしも同じではない。
【0038】
図1にあるように、物体の表面にアンカー係留されているとみなされ得る構造体が、数字と文字との組み合わせ606、607N、607Pで示されている。セルは、移動するフレーム602、702をバネ601、701で懸架するためのアンカー606を有し得る。セルはまた、負の固定電極605Nのためのアンカー607N、および/または正の電極604Pのためのアンカー606Pを有し得る。本文においては、特定の極性を表すように示されているが、該アンカーは、グラウンド、バネおよび/またはキャパシタプレートから、好適な部分に絶縁できる。
【0039】
該細長いアンカー606は、対称軸に対し一線上にある(aligned)とみなすことができ、それらのより長い第一の方向では、第一の対称性要素として機能すると考えることができる。櫛歯および/またはそれらそれぞれのアンカー607N、607P、並びにバネはまた、該対称軸に対して構造的に対称に配置され得る。前記第一の方向に対して垂直な方向を持った対称性要素606同士の間のピッチは、櫛歯および/またはアンカー607N、607Pと、また、バネとの構造上の対称性のための、他の第二の対称性要素とみなされ得る。なお、対称性は、単純な鏡面対称性からの、非鏡面の、鏡面の、回転の、および/または、並進の変更でのチャージおよび/または作動によって考慮され得る。
【0040】
図6と
図1とを比較することでわかるように、
図6のセル構造は、X方向のフレーム602の運動に、二重差動検出を適用している。フレームが移動するとき、可動電極と固定電極との間の距離が変化し、検出可能な静電容量をしかるべく増加および減少させる。従って、二重差動検出の第一の量は、ここでは、アンカー構造体607Nから延びる固定負電荷電極605Nと、これらの固定電極と交互に挿入された可動電極603の一部とに関する、静電容量を参照することができる。第二の量は、アンカー構造体607Pから延びる固定正電荷電極と、これらの固定電極と交互に挿入された可動電極603の一部とに関連する静電容量を参照することができる。
【0041】
先に定義したように、差動検出の結果は、第一の量および第二の量の静電容量の測定によって決定され得る。センサー構造体の変形による影響をなくすか、または緩和するために、
図6のセル構造は、二重差動検出に、2つの差動検出要素同士の間の補償的な対称性(compensating symmetries)を提供するべく配置される。要素の第一のペアは、第一の量および第二の量を運動の第一の差動検出に提供し、第二のペアは、第三の量および第四の量を同じ運動の二重差動検出に提供する。対称性、第一のペアは、第二のペアとは逆位相において動作するよう配置されている。従って、
図6では、第三の量は、固定負電荷電極608Nと、これらの固定電極と交互に挿入された可動電極603の一部とに関する静電容量を参照できる。第四の量は、固定正電荷電極604Pと、これらの固定電極と交互に挿入された可動電極603の一部とに関する静電容量を参照できる。
【0042】
逆位相は、この文脈では、第一および第二のペアが、フレームの1つの検出された運動が、一方のペアの減少する量と、他方のペアの増加する量とに、同時に影響するように位置付けられていることを意味する。つまり、第一の位置における第一の量の減少と、これと連結された第二の位置における第二の量の増加とが、成分の変位によって妨害される場合、第二のペアにおける第三および第四の量の対称な位置付けにより、第二のペアに逆変位が起こり、変位の影響が少なくとも部分的に消去される。
【0043】
図6は、センサー構造体がX方向の検出向きである二重差動検出の例示的な実施を図解しており、
図7は、センサー構造体がY方向の検出向きである二重差動検出の例示的な実施を図解している。
【0044】
図6および7におけるセルは、Xおよび/またはY方向の加速度成分の検出に好適である。従って、これらの単軸性(mono-axial)のセルのそれぞれは、それぞれの加速度成分を検出するために、セルを適切なポジションに配置することによって、一方向の加速度成分、XまたはYに使用できる。いくつかの実施形態では、これらのセルはまた、XY平面上の加速度成分を検出するために、ペアになって使用され得る。X方向セルの構造は、Y方向セルについても同じであり得るが、X方向セルは、Y方向セルに対して90度、平面上でピボット回転していてよい。しかしながら、
図6および7のセルはまた、セルのマトリックス(行列体)を形成するためにも使用できる。マトリックスが、1つのタイプのセル、つまり、XまたはY方向セルだけを含むとき、マトリックスは、1種類の加速度成分を検出できる。該マトリックスはまた、それぞれの向きの両方のタイプのセルをそのマトリックスに含むことによって、平面上の加速度のXおよびY方向成分を検出できるように配置され得る。単軸性の検出(mono-axial detection)については、すべてのセルは、同じXまたはY方向タイプのセルであってよいが、二軸性の検出(bi-axial detection)については、セルの少なくとも1つは、残りのセルとは異なるタイプでなければならない。
【0045】
例示の目的のためだけに、デカルトXYZ表記法が使用されている。検出方向は、センサーのポジション、並びに、回転状態および並進状態を含む運動状態と併せて、示されている例とは異なり得る。
【0046】
図8Aおよび8Bは、
図8Aの単一の先行技術のセルを、
図8Bのセンサーセルの実施形態と比較することによって、本発明の利点を図解している。水平の矢印Aで示される方向では、8Aおよび8Bのセルは両方とも、信号または信号成分を同様に提供する。例えば、支持基板の変形により、検出フレームが、図に示されるように変位していて、即ち、対称軸線の下方の電極が、該軸線の上方の電極よりも交互に入る傾向にあると仮定しよう。そのような変位によって、上方の電極の静電容量が低減すると同時に、下方の電極の静電容量が増加する。
図8Aおよび8Bの例では、Nが、対称軸Sの下方の負のキャパシタ電極をローカル的に表すのに使用され、Pは、対称軸S下方の正のキャパシタ電極を、nは、対称軸Sの上方の負のキャパシタ電極を、pは、対称軸Sの上方の正のキャパシタ電極を表すのに使用される。
【0047】
図8Aでは、当該センサー構造体は、電極Pおよびnを有し、出力信号は、電極Pおよびnで生じた静電容量の変化と、差動的に対応している。
図8Bでは、構造体は、電極P、N、pおよびnを有し、出力信号は、電極P、N、pおよびnで生じた静電容量の変化に二重差動的に対応している。
【0048】
図8Aにおける、描写される構造体のズレ(misalignment)によって、オフセット誤差信号(offset error signal)が生成されることが容易にわかる:
(1)err(N)−err(p) > 0、
しかしながら、
図8Bの構成では、誤差(error)は消える:
(2)[err(N)+err(n)]−[err(P)+err(p)] = 0。
【0049】
これは、補償的な構造対称性と組み合わせた二重差動検出の結果である。電極(N、p)の第一のペア、および、電極(P、n)の第二のペアは、フレームの検出された運動が、第一のペアのN、および、第二のペアのPに、並びに、第一のペアのp、および第二のペアのnに、同様の影響を持つよう、位置付けられる。たとえ、生成された単一の静電容量が、望ましくないフレームや電極の変位によって妨害され得る場合であっても、類似のしかし逆の妨害が両方のペアに引き起こされる。二重差動検出が用いられるので、電位的なオフセット誤差が、効果的に補償される。
【0050】
図9Aおよび9Bは、異なる補償的な対称性のための異なるバネサスペンションを有するセンサー構造体の2つの実施形態を図解している。
図9Bの鏡面的に組み立てられたバネは、9Aの非鏡面的に方向付けられた態様ほど、交差軸(cross-axis)の誤差に対する感度が高くない。しかしながら、
図9Aの実施形態は、そのような感度が、それほど重要でない用途において使用され得る。本発明のオプション的な実施形態では、交差軸の誤差の重要度が、Xおよび/またはYセルのマトリックスにおいて、両方のタイプのバネ対称性を含むことによって推定され得る。
【0051】
本発明の実施形態では、中間のアンカーは、互いに離されていてもよく、また、該中間のアンカーは、互いに機械的に接続されていてもよい。
【0052】
上述した通り、単一のセルを組み合わせて、セルのマトリックス(行列体)を提供することができる。
図10Aは、X方向の検出のためのセルX1、X2(以降:Xセル)と、Y方向の検出のためのセルY1、Y2(以降:Yセル)とを含むセンサー構造体のマトリックスの構成を図解している。
図10Bおよび10Cは、XおよびY方向の検出のためのセンサー構造体のマトリックス(以降:XYセル)の2つの例示的な構成を図解している。XYセルは、補償的な二重の対称性を有する二重差動構造を持ち得る。
図10Bのセルマトリックスでは、個々のセルのそれぞれは、補償的な対称性と共に実施される。
図10Cのセルマトリックスでは、個々のセルは、補償的な対称性なしで実施されるが、セルは、セルマトリックスでは、所望の補償的な対称性が達成されるようなポジションへと配置される。
【0053】
図11は、センサー構造体の実施形態を図解しており、該実施形態では、二重検出および補償的な対称性が、Z方向の加速度の検出に適用される。本発明の実施形態によれば、要素Z1およびZ2のそれぞれは、
図2および3で説明される通り、差動シーソー構造として実施され得る。本発明の実施形態によれば、それら(Z1、Z2)は、誤差を補償する二重差動構造を実施するように互いに位置付けられ得る。先に述べたとおり、Z方向の加速度検出では、機械的シーソー式のプルーフマスが、電極領域を備え得る。該電極領域は、固定電極と相互作用することによって該電極領域と該固定電極との間の距離に応じて変化する静電容量を提供するように配置され得る。例示的な
図11では、二重差動検出は、Z1の、正電荷の電極114Pおよび負電荷の電極114N、並びに、Z2の、正電荷の電極115Pおよび負電荷の電極115Nの静電容量を組み合わせることによって実施される。加速度出力は、静電容量に対応するように配置され得る:
A
out 〜 [C(114P) + C(115P)] − [C(114N) + C(115N)]
【0054】
図11に示される通り、Z1およびZ2の質量分布は、有利には、Z1およびZ2が逆位相で作動するように配置される。従って、Z方向の構造体の加速度によって、Z1が一方の方向に傾き、Z2が他方の方向に傾く。もし、それら電極を超えてグラウンド電極が延びるならば、グラウンド電極を支持する基板の変形によって、該グラウンド電極までの電極114Nの距離が増大するのと同時に、該グラウンド電極までの電極114Pの距離が減少するように、構成が変位し得る。その変位によって、114Nの静電容量について測定された値が本質的に減少し、114Pの静電容量について測定された値が増大する。該変形によって要素が同様に傾くことによって、115Pおよび115Nの距離および静電容量についても、同じことになる。即ち、該変位は、同時に、115Pの静電容量について測定された値を減少させ、115Nの静電容量について測定された値を増大させる。加速度の出力において、構成の変位から生じるこれらの誤差が、電極の点対称なポジショニングによって、互いにキャンセルされることが、これでわかる。
【0055】
図11に+および−符号で示されている両方のキャパシタ電極のために、共通のグラウンド電極が在ってもよい。他の実施形態では、グラウンド電位のための電極は分離していてよく、またバイアスされていてもよい。
【0056】
図12は、当該センサー構造体のさらなる実施形態を図解しており、該実施形態では、対称なZ軸方向センサー構造体は、基礎の基板に対して、単一のアンカー120にて懸架されている。アンカー係留(anchoring、アンカリング)は、実質的に堅固な支持構造体121を有して、回転式バネ122へと延び得る。要素Z1、Z2は、回転式バネに接続され、
図11に開示されているバネの軸線を中心にピボット回転または回転し得る。二重差動検出および補償的な対称性を得るために、要素Z1およびZ2は、アンカー120のアンカー係留点に対して点対称である。この単一点のアンカー係留によって、該アンカー係留は、支持基板の変形による影響をよりいっそう受け難くなる。このさらなる利点は、
図13でより詳細に図解されている。
【0057】
図13は、3つの異なる状況A、BおよびCを図解しており、これらにおいて、センサー構造体を支持する基板が、例えば、熱応力によって捩じられている。AおよびBの場合では、
図12に開示されるように、先の実施形態の二重差動センサー構造体は、1つのアンカーを介して基板に接続されている。Aの場合は、アンカー点が、基板の全体的な対称点に位置しているような状況を図解している。基板が捩られている場合、即ち、基板の端部が異なる方向に回転している場合、全体的な対称点は変位せず、捩れによってオフセット誤差は生成されない。Bの場合は、アンカー点のポジションが、基板の全体的な対称点から外れているような状況を図解している。基板が捩られているとき、要素Z1およびZ2を有する構造体が傾いて、オフセット誤差が生じる。しかしながら、上記に開示されているように、この誤差は、二重差動検出の補償的な対称性によって消される。Cの場合は、要素Z1、Z2の両方が、基板に別々にアンカー係留されているような状況を図解している。基板が捩られているとき、構造体は、Z1のアンカーの下と、Z2のアンカーの下とでは、異なる様に移動する。
【0058】
図14は、単一のアンカー係留点140を有する要素Z1およびZ2の他の可能なセンサー構造体の構成を図解している。
【0059】
図15は、本発明の実施形態による3dセンサー構造体のための構造を図解している。センサー構造体は、本発明の先のいくつかの実施形態によるXおよびYセルと、それらの間のポジションに配置されたZセルとを有し得る。
図14に開示されているように、Z1およびZ2の寸法は、センサー構造体のXY平面上に続いて、XおよびYセルのY寸法を超えて、有利には、ずっとX方向のXおよびYセルの外方端部にまで延び得る。対向する要素Z1およびZ2の質量の増加により、Z方向における感度がより高くなる。こうしたより高い感度は、示される構成で、コンパクトに、しかも、スペースの最小限の使用で得られ得る。
【0060】
図16は、補償的な二重差動構造で行われたシミュレーションの結果を図解している。
図16の下部分に示したシミュレーション出力は、センサー要素におけるトルクとその変形効果が、XおよびY座標図に示されているように、消去され得るということを示している。
【0061】
図17は、明細書のテキストにおいて、先に説明した表記を使って、センサー構造体のマトリックスのさらなる実施形態を図解している。文字Sは、センサー構造体の使用の実施例を記号で表しており、該センサー構造体は、3d加速度成分検出のデカルト座標系を例示するべく、文字XYおよび/またはZで示される二重差動セルおよび/またはシーソーを有する。
【0062】
図18は、実施例で示されたセンサー構造体Sを使用する加速度センサーの実施形態を図解している。文字Sは、センサーまたはセンサー構造体を表している。文字Mは、マトリックスを表し、該マトリックスは、上記実施例にて示したセンサーまたはセンサー構造体を有する。例として、1つのタイプの4つのセンサーが、1つのポジションにおいて示され、他のタイプの2つのセンサーが、異なるポジションに示されているが、センサーの数またはそれらのタイプ(X、Y、Zまたはこれらの組み合わせ)は、示される実施例だけに限定されない。文字Dは、デバイスを表し、該デバイスは、上記実施例で示したセンサーまたはセンサー構造体のマトリックスを有する。1つのタイプの4つのセンサーは、例として、1つのポジションにある3つのセンサーと、他のポジションにある異なるタイプの1つのセンサーとであるが、センサーの数またはそれらのタイプは、示される実施例だけに限定されない。該デバイスにおけるセンサーのマトリックスの数および/またはポジションは、示される実施例だけに限定されない。文字の組み合わせArは、配置(arrangement)またはシステムを表し、該配置またはシステムは、本発明の実施形態によるデバイスDおよび/またはデバイスGにおける、実施例で示したセンサー構造体を具現化した少なくとも1つの(デバイスDおよびG)を有する。いくつかの実施形態における文字SおよびMのポジションが当業者に示しているのは、様々な実施形態のセンサー構造体が、マスタリングデバイスのポジションで独立的に作動され得、その加速度が、当該センサー構造体でモニターされるということである。