(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記色材受容層中の前記水溶性樹脂の含有量が、無機微粒子100質量部に対し、3.3質量部以上20質量部以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の転写材。
画像支持体と、少なくとも、無機微粒子、水溶性樹脂および重量平均分子量が1,000以上15,000以下であるカチオン性樹脂を含有した色材受容層と、を備えた色材受容層付き画像支持体の製造方法であって、
前記画像支持体に、請求項1から5のいずれか一項に記載の転写材を構成する色材受容層を加熱圧着して積層する工程である工程1と、
工程1の後に、前記転写材から基材シートおよび前記離型層を剥離する工程である工程2と、を備えることを特徴とする色材受容層付き画像支持体の製造方法。
画像支持体と、少なくとも、無機微粒子、水溶性樹脂、および重量平均分子量が1,000以上15,000以下であるカチオン性樹脂を含有し、且つ、画像が記録された色材受容層と、を備えた記録物の製造方法であって、
前記画像支持体に、基材シート、離型層、および前記色材受容層が順次積層された積層構造を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の転写材の前記色材受容層を加熱圧着して積層する工程1と、
前記工程1の後に、前記転写材から前記基材シートおよび前記離型層を剥離する工程2と、
前記色材受容層に画像を記録する工程である工程4と、を備えることを特徴とする記録物の製造方法。
基材シートと、離型層と、色材受容層と、更に透明シートとを備え、且つ、前記基材シート、前記離型層、前記透明シート、および前記色材受容層が順次積層された積層構造を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の転写材。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、同一構造の部材については図面において同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0029】
本発明者らは前記課題について鋭意検討を行った。その結果、本発明では、画像精度に優れ、しかもその生産性を飛躍的に向上せしめることが可能な、画像記録方法を実現した。
【0030】
本発明では、インクジェット方式で好適に対応できる。インクジェット方式においては、十分な画像濃度を実現するためには、多量のインクを色材受容層が吸収する必要がある。このため、転写材を構成する色材受容層はやや厚くする必要があり、厚い色材受容層の転写剥離には転写不良等のインクジェット特有の課題も生ずる。
【0031】
第1の本発明では、画像支持体に転写材の色材受容層を完全に転写させる必要があるが、ヒートローラ等で熱をかけて記録後の転写材と画像支持体を転写(密着)させる際に、画像支持体と転写材に使用される材質等で密着性が低下するなど剥離性及び密着性に課題が生じたり、加熱による細孔の変化によりインクの吸収性に課題が生じたりする場合がある。そこで、本発明では色材受容層中にカチオン性樹脂(以下、カチオン剤とも呼ぶ)を添加し、カチオン剤の分子量を15000以下に制御することで、その課題を克服した。より好ましくは、カチオン剤の融点、画像支持体と色材受容層のSP値と基材シートと色材受容層のSP値を制御することで、上記課題が更に解決できることを見出した。
【0032】
図1は、第1の本発明の色材受容層付き画像支持体の一の実施形態を示す図であり、色材受容層付き画像支持体を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。本発明の色材受容層付き画像支持体は、
図2に示す第1の転写材を画像支持体55に加熱圧着させ、基材シート50を剥離することによって得られる。本発明の工程を具体的に説明すると、
図29に示すように、まず、ヒートロールを用いて転写材と画像支持体を加熱圧着して、画像支持体55に色材受容層53と転写させる(工程1)。つぎに、剥離ロール88を用いて転写材の基材シート50を剥離する(工程2)。最後に、色材受容層付き画像支持体の色材受容層53に画像72を記録ヘッド607で印字を行う(工程4)により記録物を得ることができる。
【0033】
また、第1の本発明においては、前記色材受容層が少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂、カチオン性樹脂を含有し、前記カチオン性樹脂の平均分子量を15,000以下に制御することによって、画像支持体に対し、色材受容層を良好に転写することができる。更に好ましくは、転写材の基材シートのSP値と、転写材の基材シートに当接する層のSP値との差SP1、および画像支持体のSP値と、転写材の画像支持体に当接する層のSP値との差SP2を下記式(1)、(2)を満たすように制御することによって、画像支持体に対し、色材受容層を更に良好に転写することができる。
1.1≦SP1≦3 :(1)
0≦SP2≦1.0 :(2)
【0034】
一方、第2の本発明では、画像支持体に、転写材の透明シートと色材受容層を完全に転写させる必要があるが、ヒートローラ等で熱をかけて記録後の転写材と画像支持体を転写(密着)させる際に、画像支持体と転写材に使用される材質等で密着性が低下するなど剥離性及び密着性に課題が生ずる場合がある。そこで、本発明では、色材受容層中にカチオン剤を添加し、カチオンの分子量を15000以下に制御すること、より好ましくは更にその融点を制御し、画像支持体と色材受容層のSP値と基材シートと透明シートのSP値を制御することで、上記課題を更に克服した。
【0035】
第2の本発明においては、
図40に示すように、画像支持体55に基材シート50の表面に積層された透明シート52と色材受容層53とを転写する際、色材受容層53と画像支持体55の密着性が向上し、画像支持体55に転写材を完全に転写させることができる。その後、転写材の基材シート50を剥離することで、
図30に示すように、最表面層に、印字された色材受容層53を保護する透明シート52の保護層が形成できるため、耐擦過性や耐候性に優れた記録物を得ることが可能になる。本発明の工程を具体的に説明すると、
図58に示すように、まず転写材の色材受容層53に記録ヘッド607で反転画像72を記録する(工程5)。次に、ヒートローラ21を用いて転写材と画像支持体を加熱圧着して、画像支持体55に色材受容層53を転写させる(工程6)。最後に剥離ロール88を用いて基材シート50を剥離する(工程7)ことで、記録物を得る。
【0036】
図31は、本発明の転写材の二の実施形態を示す図であり、転写材を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。本発明の第2の転写材は、
図31に示すように、基材シート50と透明シート52と色材受容層53と、を備えた転写材である。
【0037】
上記構成においては、第2の転写材は、後述する転写により、透明シートと色材受容層を画像支持体上に形成する際、前記色材受容層が少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂、カチオン性樹脂を含有し、前記カチオン性樹脂の平均分子量が15,000以下であり、更に好ましい態様では、転写材の基材シートのSP値と、転写材の基材シートに当接する層のSP値との差SP1、および画像支持体のSP値と、転写材の画像支持体に当接する層のSP値との差SP2を下記式(1)、(2)を満たすように制御することによって、画像支持体に対し、透明シートと色材受容層を良好に転写することができる。
1.1≦SP1≦3 :(1)
0≦SP2≦1.0 :(2)
【0038】
ここで、SP値について説明する。SP値は溶解度パラメーターを示し、ヒルデブラントパラメータとも呼ばれる。正則溶液論では溶媒−溶質間に作用する力は分子間力のみと仮定されるので溶解パラメーターは分子間力を表す尺度として使用される。実際の溶液は正則溶液とは限らないが、2つの成分のSP値の差が小さいほど溶解度が大となることが経験的に知られている。
【0039】
正則溶液理論では溶媒−溶質間に作用する力は分子間力のみとモデル化されているので、液体分子を凝集させる相互作用が分子間力のみであると考えることが出来る。液体の凝集エネルギーΔEは蒸発エンタルピーとΔH=ΔE+PΔVの関係にあることから、モル蒸発熱ΔHとモル体積Vより、溶解パラメータ−を下記式で定義する。すなわち、1cm
3の液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根(cal/cm
3)
1/2から計算される。
【0041】
実際の溶液が正則溶液であることは稀であるが、溶媒−溶質分子間には水素結合など分子間力以外の力も作用し、2つの成分が混合するか相分離するかはそれらの成分の混合エンタルピーと混合エントロピーの差で熱力学的に決定される。しかし経験的に溶解パラメーターが近い物質は混ざりやすい傾向を持つ。そのためSP値は溶質と溶媒の混ざりやすさを判断する目安ともなる。但し、本発明のようなプラスチックの基材では相溶性は使用する材質の極性によって左右され、極性が高いほど相溶性が高く、分子結合力を示すCD(凝集エネルギー密度)の平方根であらわされるSP値が近いほど相溶性が高い。
【0042】
なお、本発明においては、SP値は下記一般式(4)で示される。代表的なSP値を表1に示す。表1に示すSP値は、「プラスチック加工技術ハンドブック」、1995年6月12日、高分子学会編、日刊工業新聞社発行、1474頁、表3.20に示される各種プラスチックのSP値を転記したものである。
【0043】
(SP)
2=CEO=ΔE/V=(ΔH−RT)/V=d(CE)/M (4)
[ΔE:蒸発エネルギー(kcal/mol)、V:モル体積(cm
2/mol)、ΔH:蒸発エネルギー(kcal/mol)、R:ガス定数、M:グラム分子量(g/mol)、T:絶対温度(K)、d:密度(g/cm
3)、CE:凝集エネルギー(kcal/mol)]
【0045】
SP値は値が近いものほど相溶性が高くなるため、高い接着性を示す。このため、第1の本発明においては、画像支持体のSP値と、転写材の画像支持体に当接する層(
図2の形態の場合は色材受容層)のSP値との差SP2が、下記式(2)の関係を満たすようにすることによって画像支持体と色材受容層の相溶性が高くなり、画像支持体と色材受容層は高い接着性を示す。一方で、基材シートのSP値と、転写材の基材シートに当接する層のSP値との差SP1が、下記式(1)の関係を満たすようにすることで、色材受容層と基材シートの接着性は比較的弱い状態で積層されていることなる。この範囲にすることで、転写時においては基材シートを色材受容層から容易に剥離しやすい状況なり、一方で、色材受容層と画像支持体は接着性をより強固にすることができるため、転写時の転写性を高めることができる。
1.1≦SP1≦3 :(1)
0≦SP2≦1.0 :(2)
【0046】
また、第2の本発明においては、画像支持体のSP値と、転写材の画像支持体に当接する層(
図31の形態の場合は色材受容層)のSP値との差SP2が、下記式(2)の関係を満たすようにすることによって画像支持体と色材受容層の相溶性が高くなり、画像支持体と色材受容層は高い接着性を示す。一方で、基材シートのSP値と、転写材の基材シートに当接する層のSP値との差SP1が、下記式(1)の関係を満たすようにすることで、透明シートと基材シートの接着性は比較的弱い状態で積層されていることなる。この範囲にすることで、転写時においては基材シートを透明シートから容易に剥離しやすい状況になり、一方で、色材受容層と画像支持体は接着性をより強固にすることができる。この結果、転写時の転写性を高めることができる。
1.1≦SP1≦3 :(1)
0≦SP2≦1.0 :(2)
【0047】
[1]第1の転写材:
本発明の第1の転写材は、
図2に示すように、色材を受容する色材受容層53と、色材受容層53を支持する基材シート50と、を備えている。色材受容層転写材1は、画像支持体に色材受容層を転写する際の中間シートとして作用する。色材受容層転写材の色材受容層を画像支持体に転写することで、画像支持体に色材受容層が形成され、画像を形成することが可能となる。
【0048】
[1−1]色材受容層:
色材受容層は、色材を受容する層である。そして、前記色材受容層は、少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂および重量平均分子量が15,000以下のカチオン性樹脂を含有する。色材受容層の形態としては、水溶性高分子の網目構造中に色材(例えばインク等)を受容する膨潤吸収型と、無機微粒子により形成される空隙中に色材を受容する空隙吸収型が存在する。本発明の転写材は、少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂および重量平均分子量が15,000以下のカチオン性樹脂を含有する組成物からなる空隙吸収型の色材受容層を備えている。空隙吸収型の色材受容層は、画像支持体に加熱圧着させても、無機微粒子によって形成される空隙の容量を維持することができ、色材を速やかに吸収すること(顔料インクの場合、色材は表面に色材受容層表面に定着し、溶媒および水成分は色材受容層内部に吸収される)ができる。また、色材受容層と画像支持体とが完全に密着しない不具合(転写不良)を抑制することができる。
【0049】
[1−1−1]無機微粒子:
無機微粒子は、無機材料からなる微粒子である。無機微粒子は色材受容層に色材を受容する空隙を形成する機能を有する。
【0050】
無機微粒子を構成する無機材料の種類は特に限定されない。但し、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機材料であることが好ましい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の混合物)、ゼオライト等を挙げることができる。
【0051】
これらの無機材料からなる無機微粒子の中でも、アルミナおよびアルミナ水和物からなる群より選択される少なくとも1種の物質からなるアルミナ微粒子が好ましい。アルミナ水和物としては、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物などを挙げることができる。アルミナ、ベーマイト構造のアルミナ水和物、擬ベーマイト構造のアルミナ水和物は、色材受容層の透明性および画像の記録濃度を向上させることができる点において好ましい。
【0052】
ベーマイト構造のアルミナ水和物は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行うことによって得ることができる(特開昭56−120508号公報参照)。解膠には有機酸、無機酸のいずれを用いてもよい。但し、硝酸を用いることが好ましい。硝酸を用いることにより、加水分解の反応効率を向上させることができ、形状が制御されたアルミナ水和物を得ることができ、分散性が良好な分散液を得ることができる。
【0053】
無機微粒子は、その平均粒子径が120nm以上250nm以下であることが好ましい。前記平均粒子径を120nm以上、好ましくは140nm以上とすることで、色材受容層のインク吸収性を向上させることができ、記録後の画像におけるインクの滲みやビーディングを抑制することができる。一方、前記平均粒子径を250nm以下、好ましくは220nm以下とすることで、無機微粒子による光散乱を抑制し、色材受容層の光沢性および透明性を向上させることができる。また、色材受容層の単位面積当たりの無機微粒子数を増加させることができるため、インク吸収性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。
【0054】
無機微粒子は、公知の無機微粒子をそのまま用いてもよいし、粉砕分散機などを用いて公知の無機微粒子の平均粒子径、多分散指数を調整したものを用いてもよい。粉砕分散機の種類は特に限定されない。例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機などの従来公知の粉砕分散機を用いることができる。
【0055】
粉砕分散機をより具体的に例示すると、以下全て商品名で、マントンゴーリンホモジナイザー、ソノレータ(以上、同栄商事製);マイクロフルイタイザー(みずほ工業製);ナノマイザー(月島機械製);アルティマイザー(伊藤忠産機製);パールミル、グレンミル、トルネード(以上、浅田鉄鋼製);ビスコミル(アイメックス製);マイティーミル、RSミル、SΓミル(以上、井上製作所製);荏原マイルダー(荏原製作所製);ファインフローミル、キャビトロン(以上、太平洋機工製);などを挙げることができる。
【0056】
また、無機微粒子は、前記平均粒子径の範囲を満たし、且つ、多分散指数(μ/<Γ>
2)が0.01以上0.20以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.01以上0.18以下とすることが好ましい。上記の範囲に設定することで粒子の大きさを一定に保つことが可能になるため、色材受容層の光沢性および透明性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。
【0057】
なお、本明細書にいう平均粒子径および多分散指数は動的光散乱法によって測定された値を、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、或いはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法により解析することで求めることができる。動的光散乱の理論によれば、異なる粒径を持つ微粒子が混在している場合、散乱光からの時間相関関数の減衰に分布を有する。この時間相関関数をキュムラント法により解析することで、減衰速度の平均(<Γ>)と分散(μ)が求まる。減衰速度(Γ)は粒子の拡散係数と散乱ベクトルの関数で表わされるため、ストークス−アインシュタイン式を用いて、流体力学的平均粒径を求めることができる。従って、減衰速度の分散(μ)を平均の二乗(<Γ>
2)で除した多分散指数(μ/<Γ>
2)は、粒径の散らばりの度合いを表わしており、値が0に近づく程、粒径の分布は狭くなることを意味する。本発明で定義される平均粒子径及び多分散指数は、例えば、レーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子製)等を用いて容易に測定することができる。
【0058】
前記無機微粒子は1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、材質自体が異なるものの他、平均粒子径、多分散指数等の特性が異なるものも含まれる。
【0059】
[1−1−2]水溶性樹脂:
水溶性樹脂は、25℃において、水と完全に混和するか、水に対する溶解度が1(g/100g)以上の樹脂である。水溶性樹脂は、無機微粒子を結着するバインダーとして機能する。
【0060】
水溶性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼインおよびこれらの変性物;
メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体; ポリビニルアルコール(完全けん化、部分ケン化、低けん化など)またはこれらの変性物(カチオン変性物、アニオン変性物、シラノール変性物など);尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体樹脂、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂;などを挙げることができる。
【0061】
前記水溶性樹脂の中でも、ポリビニルアルコール、特にポリ酢酸ビニルを加水分解(けん化)することにより得られる、けん化ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールのSP値は後述するPVCやPET−GのSP値と値が近い。従って、ポリビニルアルコールは、画像支持体としてPVCやPET−Gを使用した場合に、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができ、特に好ましく用いられる。
【0062】
色材受容層は、けん化度70mol%以上100mol%以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。けん化度とは、ポリビニルアルコールの酢酸基と水酸基の合計モル数に対する水酸基のモル数の百分率を意味する。
【0063】
前記けん化度を70mol%以上、好ましくは86mol%以上とすることで、色材受容層が過度に硬くならず、色材受容層に十分な粘弾性を付与することができる。従って、基材シートから色材受容層を剥離させ易い状態とすることができる。また、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、基材シートに対して前記塗工液を塗工し易くなり、転写材の生産性を向上させることできる。一方、けん化度を100mol%以下、好ましくは90mol%以下とすることで、色材受容層に適度な親水性を付与することができ、インクの吸収性が良好となる。従って、色材受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。
【0064】
前記けん化度の範囲を満たす、けん化ポリビニルアルコールとしては、完全けん化ポリビニルアルコール(けん化度98mol%以上99mol%以下)、部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度87mol%以上89mol%以下)、低けん化ポリビニルアルコール(けん化度78mol%以上82mol%以下)などを挙げることができる。中でも、部分けん化ポリビニルアルコールが好ましい。
【0065】
色材受容層は、重量平均重合度が2,000以上5,000以下のポリビニルアルコールを含有する組成物からなることが好ましい。
【0066】
重量平均重合度を2,000以上、更に好ましくは3,000以上とすることで、ポリビニルアルコールが適度な粘度を有するようになり、色材受容層に十分な粘弾性を付与することができる。従って、基材シートから色材受容層を剥離させ易い状態とすることができる。一方、重量平均重合度を5,000以下、好ましくは4,500以下とすることで、無機微粒子とポリビニルアルコールを含む塗工液の粘度を低下させることができる。従って、基材シートに対して前記塗工液を塗工し易くなり、転写材の生産性を向上させることができる。また、色材受容層の細孔が埋まることを防止し、細孔の開口状態を良好に保つことができ、インクの吸収性が良好となる。従って、色材受容層に高品位の画像を記録することが可能となる。
【0067】
重量平均重合度の値は、JIS−K−6726に記載の方法に準拠して算出された値である。
【0068】
前記水溶性樹脂は、1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。「2種以上」とは、けん化度、重量平均重合度などの特性が異なるものも含まれる。
【0069】
水溶性樹脂の量は、無機微粒子100質量部に対し、3.3質量部以上20質量部以下とすることが好ましい。水溶性樹脂の量を3.3質量部以上、好ましくは5質量部以上とすることで、色材受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなる。一方、水溶性樹脂の量を20質量部以下、好ましくは15質量部以下とすることで、画像支持体に加熱圧着させる際の熱や圧力によっても空隙容量を維持することができ、インクの吸収性が良好となる。
【0070】
[1−1−3]カチオン性樹脂:
本発明で使用するカチオン性樹脂は、分子中にカチオン性の原子団(例えば、4級アンモニウム等)を有する樹脂である。また、前記カチオン性樹脂の重量平均分子量は15,000以下である。また、本発明で使用するカチオン性樹脂のSP値は、画像支持体を構成する樹脂のSP値と近いを示すだけでなく、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際の熱で容易に溶融し、また、静電気的な結合も促進するため、画像支持体と色材受容層との接着性を更に強固なものとし、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。すなわち、カチオン性樹脂は一般的にマイナスに帯電しているインクと静電気的に結合するため、色材受容層中にインクを定着させることができるが、この機能に加え、本発明で使用する15,000以下の重量平均分子量を持つカチオン性樹脂は、(1)画像支持体のSP値に近い値となるようなものを選択しているため、画像支持体と親和性が高く、転写時の画像支持体と色材容層との接着性を向上させることができる。また、本発明で使用するカチオン性樹脂は、(2)融点が低く、転写時の熱で容易に溶融するので、画像支持体と色材受容層との接着性をさらに強くする。さらに、本発明で使用するカチオン性樹脂は、(3)分子量が小さいため、色材受容層への添加量が少なくても、色材受容層中に多くの分子を添加できる。よって、一般的にマイナスに帯電している画像支持体と静電気的に結合できるカチオン基を、色材受容層の表面に介在させることができ、結果として、画像支持体と接着性を向上させることができる。したがって、本発明で使用するカチオン性樹脂は、上記3つの効果により、色材受容層の画像支持体への転写性能を高める役目を果たしている。
【0071】
このようなカチオン性樹脂としては、例えばポリアリルアミン(例えば、アリルアミン系重合物、ジアリルアミン系重合物等)およびウレタン系重合物から選択される少なくとも1種の重合物を用いることが好ましい。これらの中でも、特に後述する平均分子量が5,000以下のポリアリルアミンは、(1)融点が80℃付近と低く、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際に容易に溶融すること;(2)分子構造が小さいために、色材受容層表面において単位面積当たりのカチオン基を多く存在させることができ、画像支持体に対する静電気的な結合を促進することができること;等の理由から、特に好ましく用いることができる。
【0072】
なお、ポリアリルアミンは、下記一般式(5)で示される少なくとも1種のポリアリルアミンであることが好ましい。
【0074】
(式中、R
3、R
4、R
5は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルカノール基、アリルアルキル基、アリルアルケニル基を示す。また、R
3、R
4、R
5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。X
-は、無機系、有機系の陰イオンを示す。nは重合度を示す整数である。)
【0075】
前記カチオン性樹脂の重量平均分子量は、15,000以下であり、好ましくは1,000以上15,000以下、より好ましくは1,000以上10,000以下、更に好ましくは1,000以上5,000以下である。平均分子量を前記範囲内とすることで塗工液の安定性を向上させることができることに加えて、色材受容層の空隙が減少し難く、色材の吸収性を維持することができる。更に、前記カチオン性樹脂の分子量5,000以下とすると、画像支持体と接する色材受容層の表面にカチオン基(即ち、静電気的な結合を行う吸着サイト)をより多く分布させることができるため、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を更に向上させることができる。なお、平均分子量が15000より大きくなると画像支持体と接する色材受容層の表面にカチオン基(則ち、静電気的な結合を行う吸着サイト)が少なくなるため、画像支持体との密着性(転写性能)が低下する。一方、重量平均分子量が1000より小さくなると、印刷時のインク溶媒とともに色材受容層内部にカチオン性樹脂が移動してしまい色材受容層の表面に分布するカチオン基の量が少なくなるため、好ましくない。
【0076】
前記カチオン性樹脂の使用量は無機微粒子(アルミナ水和物等)に対して0.01質量%以上5質量%以下とすることが好ましく、0.01質量%以上3質量%以下とすることが好ましい。前記カチオン性樹脂の使用量が前記範囲を超えると、前記無機微粒子の分散液や前記分散液にバインダーを添加した塗工液の粘度が高くなり、前記分散液または前記塗工液の保存性や塗工性が低下する場合がある。
【0077】
カチオン性樹脂の融点は、60℃以上160℃以下であることが好ましい。カチオン性樹脂の融点を前記範囲内とすることで、画像支持体に対して転写材を加熱圧着させる際にカチオン性樹脂を溶融させることができ、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。
【0078】
[1−1−4]その他の添加物
色材受容層には、色材受容層の膜強度を調整し、または画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させる目的で、熱融着性樹脂を含有させることが好ましい。熱融着性樹脂としては後述するプライマー層に含有させる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。熱融着性樹脂を色材受容層に含有させることにより、プライマー層を設けなくても画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができ、また、色材受容層からの基材シートの剥離性を向上させることができる。但し、熱融着性樹脂を過剰に加えると、転写の際の熱や圧力により過剰の樹脂が色材受容層の細孔を埋めてしまい、色材の吸収性、ひいては画像品位が低下する場合がある。
【0079】
[1−1−5]厚さ:
色材受容層の厚さは、特に限定されない。但し、色材受容層の厚さが10μm以上40μm以下であることが好ましい。色材受容層の厚さを10μm以上、好ましくは15μm以上とすることで、インクの吸収性を確保することができる。また、インクの吸収性およびインクの定着性が良好となる。一方、色材受容層の厚さを40μm以下、より好ましくは20μ以下とすることで、画像支持体に加熱圧着させる際にも熱伝導を良好にできるため、画像支持体と色材受容層との密着性(転写性能)を向上させることができる。また、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.84mm以下に抑制することが容易になるため好ましい。
【0080】
[1−1−6]空隙容量:
本発明においては、色材受容層が、空隙吸収型のインク受容層(以下、色材受容層をインク受容層と呼ぶ場合がある)であり、その空隙容量が30ml/m
2以上であることが好ましい。また、画像支持体に加熱圧着させた後(転写後)においても、空隙容量が30ml/m
2以上に維持されていることが好ましい。転写時の熱や圧力によって、色材受容層中の水溶性樹脂やカチオン性樹脂が皮膜化し、空隙容量が小さくなり、インクの吸収性が低下する場合がある。しかし、本発明においては、水溶性樹脂やカチオン性樹脂を用い、更に、後述する転写温度を120℃以上180℃以下に制御することで、転写後の空隙容量を上記範囲に維持することができ、インクの吸収性を良好にすることができる。
【0081】
なお、空隙容量はJ.TAPPI紙パルプ試験方法(ブリストー法)に記載された方法により、動的浸透性試験機(例えば、商品名「B341000−702」、東洋精機製等)を用いて測定することができる。測定に使用する液体としては蒸留水にBKインクを0.16%混合したものを用い、吸収時間2秒の時(紙の移動速度:v=0.5mm/S)の空隙容量を測定した。空隙容量の算出は下記式(6)により行った。条件としては、ヘッドボックスへの液体添加量を40μl、スリット長さを15.00mmとした。
V=40*1000/(15*A) :(6)
[V=空隙容量(ml/m
2)、A=転移跡の長さ(トレース長)(mm)]
【0082】
[1−2]基材シート:
本発明の第1の転写材は、
図2に示すように、基材シート50を備えている。基材シート(「剥離ライナー」、「セパレータ」とも称される。)は、後述する離型層または色材受容層の支持体となるシート体である。
【0083】
基材シートの材質、形態等については、基材シートのSP値と色材受容層のSP値との差SP1を前記式(1)が成立する材料である限り、特に限定されない。このような基材シートとしては、樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0084】
例えば、ポリエステル(PETなど)、ナイロン(脂肪族ポリアミド)、ポリイミド、酢酸セルロース、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ゴム、フッ素樹脂、アイオノマー等の樹脂からなる樹脂フィルム;などが好ましい。これらの中でも、耐熱性に優れるPETフィルムが好ましい。色材受容層を構成する水溶性樹脂としてポリビニルアルコールを用い、且つ、基材シートとしてPETフィルムを用いると、PETのSP値とポリビニルアルコールやカチオン性樹脂のSP値が比較的離れており、SP1の値を大きくすることができるため好ましい。樹脂フィルムは1種を単独で、或いは2種以上を複合または積層して用いることができる。
【0085】
基材シートの厚さは材料強度等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、基材シートの厚さが5μm以上200μm以下であることが好ましい。基材シートの厚さを5μm以上、好ましくは10μm以上とすることで、色材受容層を積層した際に、その積層体のカールを防止することができる。転写材をロール状とする場合は、転写材の製造装置上での搬送性を向上させるために、転写材の厚さが15μm以上であることが好ましい。転写材をカットシート状とする場合はカットシートのカールを防止する観点から、転写材の厚さが30μm以上であることが好ましい。一方、基材シートの厚さを200μm以下、好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下とすることで、転写材を画像支持体に加熱圧着させる場合の熱伝達性を良好にすることができる。特に、転写材の形態が後述するロール状である場合は、その搬送性を向上させるために厚さが15μm以上であることが好ましい。一方、転写材の形態が後述するカットシート状である場合は、加熱圧着時のカールを防止する観点から、厚さが30μm以上であることが好ましい。
【0086】
[1−3]離型層:
本発明の第1の転写材は、
図3に示すように、離型層51を備えていてもよい。離型層は、離型剤を含有する組成物からなる層で、基材シート50と色材受容層53の間に設けられる。離型層51を備えることによって、色材受容層53から基材シート50を容易に剥離することができる。なお、本発明において離型層を形成する場合は、基材シートは離型層を含むものとする。すなわち、基材シートのSP値と、基材シートに当接する層のSP値と、の差のSP1は、離型層SP値と色材受容層のSP値との差となる。
【0087】
離型剤の種類は特に限定されず、離型性に優れ、ヒートローラやサーマル式のインクジェット記録ヘッドが発生する熱で容易に溶融しない材料であることが好ましい。例えば、シリコーンワックスなどのワックス類に代表されるシリコーンワックス、シリコーン樹脂などのシリコーン系材料;フッ素樹脂などのフッ素系材料;は、離型性に優れる点において好ましい。
【0088】
離型層の厚さは、剥離性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、離型層の厚さが、乾燥状態で0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。離型層の厚さを0.1μm以上、好ましくは1μm以上とすることで、基材シートと透明シートとの融着を抑制することができる。一方、離型層の厚さを10μm以下、好ましくは5μm以下とすることで、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.84mm以下に抑制することができる。
【0089】
[1−4]積層構造:
本発明の第1の転写材は、
図2に示すように、基材シート50および色材受容層53が順次積層された積層構造を有している。「基材シートおよび色材受容層が順次積層」とは、基材シート、色材受容層の間に他の層が介在するか否かに拘わらず、基材シート、色材受容層がその順序に従って積層されていることを意味する。即ち、
図3に示す転写材1のように、基材シート50と色材受容層53との間に、離型層51が存在する構造も、「基材シートおよび色材受容層が順次積層」された積層構造に含まれる。
【0090】
但し、本発明の第1の転写材は、
図2に示すように、基材シート50、色材受容層53が相互に当接された積層構造を有することが好ましい。即ち、基材シート50と色材受容層53の間に、他の層(シートも含む。)が介在していない構造が好ましい。記録物の対象物となるクレジットカードなどは厚さの制限が厳格であるため、積層される層やシートの数を減じ、記録物を薄厚化することが望ましいからである。特に、色材受容層に含まれるポリビニルアルコールやカチオン性樹脂により色材受容層のSP値を精密に調整すれば、画像支持体と色材受容層との接着性を制御することができる。このような構成によれば、転写材ひいては記録物を薄厚化することができるという利点がある。
【0091】
[1−5]製造方法:
本発明の第1の転写材は、例えば、基材シートに、無機微粒子、水溶性樹脂およびカチオン性樹脂を含有する塗工液を塗工することにより製造することができる。なお、以下の記載においては、転写材の項などで既に説明した事項については割愛し、製造方法固有の事項のみ説明する。
【0092】
[1−5−1]塗工液:
色材受容層は、少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂およびカチオン性樹脂を、適当な媒体と混合して塗工液を調製し、これを基材シートの表面に塗布し、乾燥させて色材受容層を形成することで得られる。
【0093】
塗工液の媒体としては、水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体としては、水;水と水溶性有機溶剤との混合溶媒;などを挙げることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;などを挙げることができる。
【0094】
前記塗工液としては、熱融着性樹脂を更に含有する塗工液を用いることが好ましい。前記熱融着性樹脂としては、後述するプライマー層の項で例示する材料、特にガラス転移温度が60℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、塗工液の濡れ性を向上させ、結着性を高めるために、ポリオレフィン樹脂などを含有させることが好ましい。中でもポリエチレンを含有させることが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などを挙げることができる。但し、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンなども用いることができる。
【0095】
塗工液には、本発明の効果を妨げない限り、各種添加剤を含有させることができる。反転画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、染料固着剤を含有させることが好ましい。染料固着剤は染料分子のアニオン性基と結合して塩を形成し、染料を水に対して不溶化させることで、マイグレーションを防止することができる。
【0096】
その他の添加剤としては、例えば界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを挙げることができる。
【0097】
塗工液中の無機微粒子の濃度は塗工液の塗工性などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。但し、塗工液の全質量に対し、10質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。
【0098】
[1−5−2]塗工:
色材受容層の形成は、例えば、基材シートの表面に、前記塗工液を塗工することにより行う。塗工後は必要により塗工液の乾燥を行う。これにより、
図2に示すような、基材シート50および色材受容層53が順次積層された積層構造を有する転写材1を得ることができる。
【0099】
塗工方法としては、従来公知の塗工方法を用いることができる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などを挙げることができる。
【0100】
塗工液の塗工量は、固形分換算で10g/m
2以上40g/m
2以下とすることが好ましい。塗工量を10g/m
2以上、好ましくは15g/m
2以上とすることで、インク中の水分吸収性に優れた色材受容層を形成することができる。従って、記録された画像中のインクが流れたり、画像が滲んだりする不具合を抑制することができる。一方、塗工量を40g/m
2以下、より好ましくは20g/m
2以下とすることで、塗工層を乾燥させる際に転写材にカールが発生し難くなる。また、色材受容層の厚さを薄くすることにより、最終的に形成される記録物の厚さを薄厚化することができる。画像支持体がクレジットカードなどのプラスチックカードである場合には、日本工業規格(JIS−X−6305)により厚さが厳格に規定されているため、前記塗工量とすることが有効である。
【0101】
[1−6]プライマー層:
本発明においては、
図4に示すように、第1の転写材の色材受容層53の表面にプライマー層56を更に備えていてもよい。転写材が、プライマー層を備える場合には、基材シート、インク受容層、プライマー層が順次積層された積層構造を有する。プライマー層56は、接着性を有する層であり、色材受容層の表面に配置される。この場合、画像支持体と接する層はプライマー層となる。プライマー層を備えることで、画像支持体55と転写材との密着性、接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により画像支持体から転写材が剥離する不具合を抑制することができる。プライマー層を設けることにより、プライマー層のSP値と画像支持体のSP値との差SP2を、前記一般式(2)の範囲に制御することができ、密着性、接着強度を向上させることができるため、画像支持体から色材受容層が剥離する不具合を抑制することができる。特に、本発明においては、画像支持体としてPVCやPET−G以外のPET基材を用いる場合、プライマー層を設けることは有効である。
【0102】
プライマー層の構成材料は特に限定されない。但し、加熱により接着性を発現する材料、例えば熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックスなどから構成されていることが好ましい。より具体的には、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース誘導体;ポリスチレン、ポリα−メチルスチレンなどのスチレン系樹脂; ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタールなどのビニル系樹脂;ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などの、その他の合成樹脂;ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガムなどの粘着性付与剤;ポリイソブチレンゴム(ブチルゴム)、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィンなどの合成ゴム;などを挙げることができる。
【0103】
プライマー層が熱可塑性樹脂で構成されている場合、その熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、60℃以上160℃以下であることが好ましい。前記ガラス転移温度を60℃以上、好ましくは70℃以上とすることで、装置内部の雰囲気温度によってプライマー層が溶融することが少なく、厳格な温度管理が不要で、転写材のハンドリングを容易にすることができる。一方、前記ガラス転移温度を160℃以下、好ましくは140℃以下、更に好ましくは100℃以下とすることで、プライマー層が接着性を発揮する温度まで加熱しても色材受容層と画像支持体との接着性が良好となる。また、記録物のカールを抑制することができる。
【0104】
ガラス転移点が60℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステルなどを挙げることができる。これらの樹脂は熱時接着性が良好である点において好ましい。
【0105】
プライマー層は、前記材料の1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。また、プライマー層の厚さは、構成材料の種類、要求される接着性能、塗工性などを考慮して適宜設定すればよく、特に限定されない。但し、プライマー層の厚さが0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。プライマー層の厚さを0.5μm以上、好ましくは1.0μm以上とすることで、紙ベース支持体のような表面が粗い画像支持体を用いた場合でも良好な接着性を得ることができる。一方、プライマー層の厚さを10μm以下、好ましくは5μm以下とすることで、後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.84mm以下に抑制するという効果を得ることができる。
【0106】
プライマー層の形成方法は、特に限定されない。但し、プライマー層の項で例示した材料、特にガラス転移温度が60℃以上160℃以下の熱可塑性樹脂からなるシートを転写材に対して積層して積層体とし、前記積層体を加熱圧着させることにより、プライマー層を支持する基材を引き剥がすことにより、プライマー層を形成することが好ましい。加熱圧着の方法としては、ヒートローラを用いて前記積層体を全面的に加熱する方法、サーマルヘッドを用いて前記積層体の特定部分を選択的に加熱する方法などを挙げることができる。
【0107】
[1−7]転写材の形状と厚さ:
本発明においては、後述する画像記録装置や記録物の製造装置の構造に合わせて、転写材をロール状またはシート状(カットシート状)としてもよい。ロール状とする場合には、前記色材受容層を外側にしても内側にしてもよいが、後述する画像記録装置の搬送機構に最適化させるためには、前記色材受容層を外側、前記基材シートを内側としてロール状に巻かれたロール状転写材とすることが好ましい。
【0108】
本発明においては、基材シートの厚さが、色材受容層の厚さの1.5倍以上5倍以下であることが好ましい。1.5倍以上とすることでシート状(カットシート状)の転写材のカールを防止することができ、画像記録装置や記録物の製造装置における転写材の搬送性を良好にすることができる。一方、5倍以下とすることで、画像支持体に転写材を加熱圧着させる際の熱伝達性を良好にすることができる。
【0109】
本発明の第1の転写材は、熱時剥離型であってもよいし、冷時剥離型であってもよい。熱時剥離型とは、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、両部材の積層体の温度が高い状態のまま基材シートを剥離することが最適な転写材である。一方、冷時剥離型とは、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、両部材の積層体の温度が低下した状態で基材シートを剥離することが最適な転写材である。
【0110】
熱時剥離型の転写材は、画像支持体に加熱圧着させた後、すぐに基材シートを剥離することができるため、生産性の面で優れている。例えば、ロール状転写材を用い、基材シートの剥離をロールToロールで行うことにより生産性を向上させることができる。一方、冷時剥離型の転写材は、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、両部材の積層体の温度が低下してからも基材シートの剥離が可能である。従って、シート状(カットシート状)の転写材を用いる場合等には、画像支持体と転写材を加熱圧着させた後、基材シートを剥離する際のハンドリングが容易になるため好ましい。
【0111】
[1−8]プレカット処理:
本発明の転写材を製造する際には、前記色材受容層を形成した後、前記色材受容層の側から、前記色材受容層に切り込みを入れるプレカット処理を行ってもよい。プレカット処理は、画像支持体がICチップや磁気ストライプを備えている場合であっても、転写材と画像支持体とを接着した後に、前記切り込みを起点にして色材受容層を綺麗に切断することができる。
【0112】
[2]色材受容層付き画像支持体の形成方法:
本発明の色材受容層付き画像支持体は、
図1に示すように、画像支持体55と色材受容層53と、を備えた画像記録媒体であり(以下、画像記録媒体と呼ぶ場合もある)、
図2に示す第1の転写材を画像支持体55に加熱圧着し、基材シート50を剥離することによって容易に得ることができる。
【0113】
[2−1]画像支持体:
画像支持体は、転写材の画像が支持される対象物で、一般的にマイナスに帯電している。画像支持体の構成は特に限定されない。樹脂を構成材料とする画像支持体(樹脂ベース支持体)、紙を構成材料とする画像支持体(紙ベース支持体)などを挙げることができる。樹脂べース支持体としては、例えばクレジットカード、ICカードなどの樹脂製カード;などを挙げることができる。紙ベース支持体としては、例えばパスポートなどの紙製冊子;紙製カード;などを挙げることができる。
【0114】
[2−1−1]樹脂ベース支持体:
樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、画像支持体の用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体などのポリフッ化エチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6などの脂肪族ポリアミド樹脂;
ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体樹脂;三酢酸セルロース、セロハンなどのセルロース系樹脂;ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどの、その他の合成樹脂;を挙げることができる。
【0115】
樹脂ベース支持体を構成する樹脂は、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリカプロラクトンなどの生分解性樹脂であってもよい。また、樹脂ベース支持体は、樹脂を主たる構成材料としているものであればよく、例えば金属箔などの樹脂以外の材料を含むものであってもよい。
【0116】
[2−1−2]紙ベース支持体:
紙ベース支持体を構成する紙の種類も特に限定されない。例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、サイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙などが挙げられる。
【0117】
[2−1−3]その他:
樹脂ベース支持体および紙ベース支持体は、必要に応じて、エンボス、サイン、ICメモリ(ICチップ)、光メモリ、磁気記録層、偽変造防止用記録層(パール顔料層、透かし記録層、マイクロ文字など)、エンボス記録層、ICチップ隠蔽層などを備えていてもよい。
【0118】
また、樹脂ベース支持体および紙ベース支持体は、前記の材質からなる単層体として構成してもよいし、材質や厚さの異なるシートやフィルムを2層以上貼り合わせた複層体として構成してもよい。
【0119】
更に、画像支持体の全体の厚さは、180μm以上800μm以下であることが好ましい。画像支持体の厚さを180μm以上、好ましくは500μm以上、更に好ましくは650μm以上とすることが好ましい。一方、画像支持体の厚さを800μm以下、好ましくは770μm以下とすることが好ましい。後述するように画像支持体としてプラスチックカードを用いた場合に、記録物全体の厚さをJIS6301に記載される総厚み0.68mm以上0.84mm以下に制御することができる。
【0120】
[2−2]色材受容層付き画像支持体の製造方法:
[2−2−1]加熱圧着:
まず、
図5に示すように、画像支持体55と、第1の転写材とを、画像支持体55、色材受容層53および基材シート50が順次積層されるように当接させた状態で加熱圧着する。これにより、前記画像支持体、前記色材受容層および前記基材シートが順次積層された積層構造を有する色材受容層付き画像支持体を得る。なお、プライマー層を有する場合は、画像支持体、プライマー層、色材受容層および基材シートが順次積層されるように当接させた状態で加熱圧着する。
【0121】
前記加熱圧着の温度は60℃以上160℃以下に制御することが好ましい。加熱圧着の温度を60℃以上とすることにより、色材受容層中のカチオン性樹脂、水溶性樹脂などの樹脂やプライマー層(或いはアンカー層)に含まれる熱可塑性樹脂を接着に十分な程度に溶融し、画像支持体と転写材とを圧着させることができる。一方、加熱圧着の温度を160℃以下とすることにより、画像支持体と転写材を加熱圧着させる際に、インク受容層の細孔を必要以上につぶすことなく細孔を維持することができるため、インクの吸収性が低下することがない。
【0122】
加熱圧着の方法は特に限定されない。例えば、画像支持体に対して転写材を積層して積層体とし、前記積層体を一対のヒートローラ間に挟み込み、加熱圧着する方法などを挙げることができる。この際、ヒートローラの表面温度は、100℃以上180℃以下とすることが好ましい。これにより、前記積層体の搬送速度が速く加熱時間が十分にとれない場合でも、前記積層体を60℃以上160℃以下に加熱することができる。
【0123】
このとき、
図12に示すような製造装置を用いる場合、画像支持体側に接するヒートローラ22は、シリコーンローラを使用することが好ましい。この構成することで、シリコーンローラはSP値が8.7付近になるため、基材シート側からの色材受容層を加熱するヒートローラ21の熱圧着によっても、ヒートローラ22へ色材受容層が付着しにくくなり、色材受容層の転写を防止することができる。
【0124】
[2−2−2]基材シートの剥離:
前記のようにして得られた色材受容層付き画像支持体は、最後に、
図6および
図7に示すように基材シート50を剥離することにより、画像支持体55および色材受容層53が順次積層された構造の色材受容層付き画像支持体が得られる。この色材受容層付き画像支持体においては、色材受容層53が最上層に位置し、その色材受容層53に画像を記録することができる。なお、プライマー層を用いる場合は、画像支持体55は、プライマー層を介して色材受容層53に十分に密着固定される。
【0125】
基材シートを剥離する際、転写材が熱時剥離である場合は加熱圧着後、温度が下がらないうちに直ちに剥離を行うことが好ましい。このような熱時剥離タイプの場合は、
図6に示す分離爪86による剥離機構や、
図7に示す剥離ロール88によって剥離することが好ましく、転写工程における転写材の供給を、「ロールtoロール」で行う場合に生産性の面で適している。
【0126】
一方、転写材が冷時剥離型の場合は、温度が下がっても剥離することができる。このような場合は、ロールやピール機構による剥離だけでなく、手動で剥離することも可能になるため、特にカットシート状に加工したのも用いる場合に、好適に使用できる。なお、ロールtoロール剥離を行う際の、剥離角度θはθが0〜165°であり、更に好ましくは0〜90°である。この剥離角度θに設定することにより、プリンタ走行中に、プレカット処理部5にて転写材1のプレカット処理により分離されたパッチ部分が不用意に剥がれたり、めくれたりすることを防止することができる。
図7において剥離角度θは、図に示す角度であるが、これに限定されない。
【0127】
なお、加熱圧着、剥離工程においては、公知の2本ロールタイプ、および4本ロールタイプのラミネート機をしようしてもよい。4本ロールタイプは2本ロールタイプに比べて、加熱圧着時の熱が伝わりやすく、転写剥離工程が容易に行うことができるため、好ましく使用される。
【0128】
[2−2−3]両面同時剥離:
なお、画像支持体の両面に同時に色材受容層を転写する場合は、
図8に示すように、上面転写材92と下面転写材94のフィルム位置をずらすことが好ましい。この構成とすることで、熱ローラ転写におけるSP値が同じである色材受容層同士の接着を防止することができ、表裏同時転写が可能となる。また、ピール部90により基材シートを容易に引き剥がすことができる。
【0129】
[3]記録物の製造:
本発明の第1の記録物は、上記で説明した色材受容層付き画像支持体の最上層に位置する色材受容層に画像を形成することで得ることができる。
【0130】
[3−1]色材:
本発明の記録物においては、前記画像が、染料インクにより形成された画像であってもよいし、顔料インクにより形成された画像であってもよい。染料インクの場合は、インクが色材受容層の内部まで浸透するため、耐擦過性に優れる。
【0131】
上記内容について更に詳細に説明する。顔料インクは、
図9に示すように、空隙吸収型の色材受容層64においては、顔料インク中の顔料成分63は粒子径が大きいため、色材受容層64を形成する無機微粒子65で構成される細孔の内部まで浸透せずに、色材受容層64の記録表面で定着する。更に、空隙吸収型の色材受容層64は、膨潤型の色材受容層とは異なり、色材受容層64が膨潤することなく平滑に保たれる。一方、膨潤吸収型の色材受容層の場合は、
図10に示すように、インク中の水分により色材受容層67が膨潤して、色材受容層67の表面66に凹凸が発生する。
【0132】
また、空隙吸収型の色材受容層64においては、顔料インク中の顔料成分63は色材受容層64の表面で定着する一方でインク中の水分および溶媒成分62は、色材受容層64の内部まで浸透し、表面の顔料成分63と分離(固液分離)する。これにより、残存水分および溶媒成分62は色材受容層64の内部にとどまるため、顔料成分63は、再度、残存水分および溶媒成分62が接触することがないため、インクの移動(マイグレーション)を防止することができる。一方で染料インクは、
図11に示すように、残存水分の影響により染料成分68が染料成分69のように移動(マイグレーション)してしまうため、にじみが発生する。
【0133】
また、顔料インク中の顔料成分としては、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、又は、スルホン基のうち、少なくとも1種の官能基又はその塩を結合された自己分散顔料や、顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料を用いることができる。中でも顔料粒子の周りを樹脂で被覆した樹脂分散型の顔料は、印字後の擦過性が向上するため好ましい。また、樹脂分散型顔料を用いることによって、インク媒体を分離した後の顔料粒子同士の結着力を高めることができ、色材受容層表面に顔料膜を形成できる。このとき、顔料膜の表面上の水分は少量となる。これは、顔料膜が色材受容層中の下層の水分をほぼ遮断し、更に下層からの水分補給もほぼ遮断するからである。このため、樹脂分散型の顔料成分は、インクの高速定着、高速記録に適しており、好ましい。
【0134】
顔料粒子の周りを被覆する樹脂としては、酸価100mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。前記酸価を100mgKOH/g以上とすると、サーマル方式でインクを吐出するインクジェット記録方式において吐出安定性が向上する。一方、前記酸価を160mgKOH/g以下とすると、顔料粒子に対して相対的に疎水性を有するようになりインクの定着性および耐滲み性が良好となる。従って、インクの高速定着、高速記録に適する。
【0135】
ここで酸価とは、1gの樹脂を中和するのに必要となるKOHの量(mg)であり、その親水性を示す指標となり得るものである。なお、この場合の酸価は、樹脂分散剤を構成する各モノマーの組成比から計算により求めることもできるが、具体的な顔料分散体の酸価の測定方法としては、電位差滴定により酸価を求める、Titrino(Metrohm製)等を使用して測定することができる。
【0136】
前記の顔料インクは、いわゆる水性顔料インクである。水性顔料インクは、水溶性媒体に顔料を分散させたものである。また、顔料−樹脂分散と呼ばれるタイプであり、表面に対してランダム構造である(メタ)アクリル酸エステル系共重合物を吸着させて水性媒体中に分散させたものである。製法は、常法によるものであり、例えば、特許4956917に開示されている方法で得ることができる。
【0137】
[3−1−1]顔料:
顔料としては、例えば、カーボンブラックや有機顔料等が挙げられる。各種顔料の1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、商品名としてレイヴァン(アディティア・ビルラ製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)、ヴァルカン(Valcan)(以上キャボット製)、カラーブラック(Color Black)、プリンテックス(Printex)、スペシャルブラック(Special Black)(以上エボニック製)、三菱カ−ボンブラック(三菱化学製)等の冠称を有するものを使用することができる。勿論、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを使用することも可能である。物性的には、一次粒子径が10nm以上40nm以下、BET法による比表面積が50〜400m
2/g以下、吸油量40〜200ml/100g以下、揮発分が0.5〜10%、pHが2〜9であるカーボンブラックであることが好ましい。なお、DBP吸収量は、JIS K6221 A法によって測定される。
【0138】
有機顔料の具体例は、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;チオインジゴ系顔料;縮合アゾ系顔料;チオインジゴ系顔料;その他、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の顔料が例示できる。
【0139】
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものが例示できる。勿論、下記以外でも従来公知の有機顔料が使用可能である。
【0140】
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168;
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61;
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240;
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64;
C.I.ピグメントグリーン7、36;
C.I.ピグメントブラウン23、25、26;
【0141】
[3−1−2]樹脂:
前記顔料分散体で使用する樹脂としては疎水性の顔料を水系液媒体中に良好に分散させる分散機能を有するものであることが好ましく、ランダムコポリマーが使用される。ランダムコポリマー以外、例えばブロックコポリマー等は、顔料の親水性が高くなるものが多く、印字画像の耐水性が劣るものが多いため好ましくない。
【0142】
上記ランダムコポリマーの例としては、(メタ)アクリル酸エステル系共重合物が好ましく用いられる。前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合物は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びそれらと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体を共重合させることにより得ることができる。(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられ、なかでも電気的中性状態とアニオン状態の共存範囲を広く制御出来ることを考慮すると(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0143】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラメチレンエーテルグルコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシドのランダムポリマーグリコール又は同ブロックポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンエーテルのランダムポリマーグリコール又は同ブロックポリマーグリコールのモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0144】
前記(メタ)アクリル酸エステル
系共重合物は、前記した(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、モノエチレン性不飽和単量体の他に、スチレン系単量体も含めることができる。ここでスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン等が挙げられる。即ち、上記した(メタ)アクリル酸エステル共重合物は、スチレン系単量体を有するスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体であることが好ましい。
【0145】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合物の重量平均分子量は、スチレン換算で重量平均分子量(Mw)が6,000〜12,000の範囲にあることが好ましく、7,000〜9,000の範囲にあることがより好ましい。上記の範囲にすることで、顔料分散体の分散安定性を高め、粘度が低く設定でき、ヒーター部分でのコゲーションを抑え長期間安定した印字を行わせることができる。重量平均分子量が6,000より小さいと水性顔料分散体自体の分散安定性が低下するため好ましくない。また、12,000より大きいと水性顔料分散体の粘度が高くなるだけでなく、分散性が低下する傾向が認められる。更にヒーター部分に対するコゲーションがひどくなり、サーマル方式インクジェットプリンタのノズル先端からインク液滴の不吐出を引き起こす原因となるので好ましくない。
【0146】
[3−1−3]顔料分散体:
前記顔料分散体は顔料が(メタ)アクリル酸エステル系共重合物で被覆されることにより調製される。
【0147】
前記顔料分散体の平均粒子径は、液中での動的光散乱法により求められる値が、70nm以上150nm以下であることが好ましく、80nm以上120nm以下であることが好ましい。粒子径が150nmを超えるとインクの沈降が促進されるため、長期間での分散安定性がそこなわれるため好ましくない。一方、粒子径が70nmより小さくなると、画像を形成するのに十分な発色性や得られた画像に対して十分な耐候性を得ることができなくなるため好ましくない。
【0148】
具体的な平均粒子径の測定方法としては、例えば、レーザ光の散乱を利用した、FPAR−1000(大塚電子製、キュムラント法解析)、ナノトラックUPA 150EX(日機装製、50%の積算値の値とする)等を使用して測定できる。
【0149】
上述した顔料分散体のインク中への添加量は、インク全量に対して0.5質量%以上10質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。顔料濃度が0.5質量%より小さくなると画像を形成するのに十分な発色性を得ることができず、また10.0%質量を超えると、水性顔料インクの粘度が上昇してしまい、吐出が困難になるため好ましくない。
【0150】
前記水性顔料分散体においては、顔料と(メタ)アクリル酸エステル系共重合物との割合は、分散体の分散性を保ち、更に顔料インクの粘度を低く保つ観点から、質量換算で顔料1部に対して、(メタ)アクリル酸エステル系共重合物が0.2〜1.0部の範囲にあることが好ましい。
【0151】
顔料を(メタ)アクリル酸エステル系共重合物で被覆する際には、酸析工程を組み込むことが好ましい。酸析とは、顔料と塩基性物質の水溶液に溶解している(メタ)アクリル酸エステル系共重合物とを含有する液媒体に酸性物質を加えて酸性化することにより、(メタ)アクリル酸エステル系共重合物中のアニオン性基を中和される前の官能基に戻して、該重合物を析出させることである。
【0152】
この様な酸析工程としては、前記した分散工程と必要に応じて実施される蒸留工程を経て得られた水性分散体に塩酸、硫酸、酢酸等の酸を加えて酸性化し、塩基と塩を形成することによって溶解状態にある(メタ)アクリル酸エステル系共重合物を顔料粒子表面に析出させる工程である。この工程を実施することにより、顔料と(メタ)アクリル酸エステル系共重合物との相互作用をより高めることができる。その結果、前記した様なマイクロカプセル型複合粒子が水性分媒中に分散している形態を取らせることができ、水性顔料分散体として、分散到達レベル、分散所要時間および分散安定性等の物性面や耐溶剤性等の使用適性面で、より優れた効果を存分に発揮させることができる。
【0153】
こうして相互作用を高めて得られた析出物を濾別する濾過工程を実施し、より好ましくはその析出物を前記濾過工程終了後、洗浄する洗浄工程を実施して、顔料分散体中に吸着せずに存在するフリーポリマーを除去して、再度塩基性物質と共に水性媒体中に分散させる再分散工程を実施することで、分散安定性により優れた水性顔料分散体を得ることができる。
【0154】
[3−1−4]水溶性化合物:
前記顔料インクは、少なくとも水溶性化合物に、顔料分散体を分散させたものである。本発明の水溶性化合物の種類は特に限定されないが、前記水溶性化合物が、水溶性有機溶媒および25℃で固体の水溶性化合物の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0155】
ここにいう「水溶性化合物」とは、水と自由に混和するか、或いは水に対する溶解度(25℃)が20g/100g以上の化合物を意味する。水溶性有機溶媒および25℃で固体の水溶性化合物の群から選択される少なくとも1種である。前記水溶性化合物を含有させることで、水の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止することができる。
【0156】
水溶性化合物としては、例えば以下に掲げるようなアルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、カルボン酸アミド類、複素環類、ケトン類、アルカノールアミン類:等、各種水溶性有機溶媒を用いることができる。また、尿素、エチレン尿素、トリメチロールプロパン等のような25℃で固体の水溶性化合物を用いることもできる。
【0157】
(1)アルコール類:
メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール等の炭素数1〜5の鎖式アルコール類;
(2)多価アルコール類:
エチレングリコール(エタンジオール)、プロパンジオール(1,2−、1,3−)、ブタンジオール(1,2−、1,3−、1,4−)、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等のアルカンジオール類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルカンジオールの縮合体;
グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール等のアルカンジオール類以外の多価アルコール類;
(3)グリコールエーテル類:
エチレングリコールのモノメチルエーテル;ジエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル;トリエチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル;テトラエチレングリコールのジメチルエーテル、ジエチルエーテル;
(4)カルボン酸アミド類:
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド;
(5)複素環類:
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン等の含窒素複素環類;
スルホラン等の含硫黄複素環類;
(6)尿素類:
尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(N,N≡−ジメチルエチレン尿素)等の尿素類;
(7)ケトン類:
アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;
4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール;
(8)アルカノールアミン類:
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン;
(9)その他:
ジメチルスルホキシド、ビスヒドロキシエチルスルホン等の含硫黄化合物;
【0158】
前記水溶性有機溶媒の中では、多価アルコール類が好ましく、グリセリンが更に好ましい。グリセリンは揮発し難く、インクの固着を防止する効果に優れる点において好ましい。また、前記水溶性有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。例えばグリセリンと、グリセリン以外の多価アルコールおよび含窒素複素環類を併用することも好ましい。この際、グリセリン以外の多価アルコールとしてはトリエチレングリコール等を、含窒素複素環類としては2−ピロリドン等を用いることができる。このような混合溶媒はインクの増粘を防止する効果が高い点において好ましい。
【0159】
前記水溶性有機溶媒の含有率は特に限定されない。但し、水性媒体の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止する効果を得るために、インク全質量に対して5質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上とすることが好ましい。一方、高い駆動周波数にも対応可能とし、また、カビの発生を防止する観点から、インク全質量に対して50質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下とすることが好ましい。
【0160】
25℃で固体の水溶性化合物としては、尿素、エチレン尿素等を用いることが好ましく、エチレン尿素を用いることが好ましい。25℃で固体の水溶性化合物の含有率は特に限定されない。但し、水性媒体の蒸発を防止し、乾燥によるインクの固着を防止する効果を得るために、インク全質量に対して5質量%以上とすることが好ましく、9質量%以上とすることが更に好ましい。一方、過剰の添加による不具合を防止するため、インク全質量に対して40質量%以下とすることが好ましく、30質量%以下とすることが更に好ましく、15質量%以下とすることが特に好ましい。
【0161】
[3−1−5]界面活性剤:
本発明においては、後述するインクの表面張力をコントロールして、画像記録媒体におけるインクのにじみ度合いや浸透性を任意にコントロールやヘッド内でのインクの濡れ性の向上、インクのヒーター面上でのコゲーションを防止し、吐出を向上さたりする目的で必要に応じて、前述のインクに界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、特に限定はされないが、以下に挙げることができる。なお、前記界面活性剤は単独で使用しても複数を併用して使用してもよい。
【0162】
〔ノニオン性界面活性剤〕
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等。脂肪酸ジエタノールアミド、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレングリコール系界面活性剤等。
【0163】
〔アニオン性界面活性剤〕
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルフォン酸塩等。アルファスルホ脂肪酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルフェノールスルフォン酸塩、アルキルナフタリンスルフォン酸塩、アルキルテトラリンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等。
【0164】
〔カチオン性界面活性剤〕
アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド等。
【0165】
〔両性界面活性剤〕
アルキルカルボキシベタイン等。
【0166】
その中でも、アセチレングリコール系界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテル等は、インクの吐出安定性を向上させることができるため、特に好ましく使用される。
【0167】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、下記一般式(7)に示す化合物(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物)を用いる。
【0169】
(一般式(7)中、U、Vはそれぞれ独立に1以上の整数であり、U+Vは0乃至20の整数である)
【0170】
[3−1−6]水:
水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水の含有率は特に限定されない。ただし、インクの全質量に対し、30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。10質量%以上とすることにより、顔料および水溶性化合物を水和させることができ、顔料や水溶性化合物の凝集を防止することができる。一方、90質量%以下とすることにより、相対的に水溶性有機化合物の量が増え、水性媒体中の揮発成分(水等)が揮発してしまった場合でも、顔料の分散状態を維持することができ、顔料の析出や固化を防止することができる。
【0171】
[3−1−7]他の添加剤:
前記インクは、目的に応じて、界面活性剤以外の添加剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、例えばpH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、塩等を挙げることができる。
【0172】
[3−1−8]粘度:
インクの粘度ηは、1.5mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは、1.6mPa・s以上3.5mPa・s以下、更に好ましくは1.7mPa・s以上3.0mPa・s以下にすることが好ましい。粘度を1.5mPa・s以上とすることにより、良好なインク滴を形成することができる。一方、5.0mPa・s以下とすることにより、インクの流動性が向上し、ノズルへのインク供給性、ひいてはインクの吐出安定性が向上する。
【0173】
インクの粘度は、JIS Z 8803に準拠して、温度25℃の条件下、E型粘度計(例えば、東機産業製「RE−80L粘度計」等)を用い、測定した値を意味するものとする。インクの粘度は、界面活性剤の種類や量の他、水溶性有機溶媒の種類や量等により調整することができる。
【0174】
[3−1−9]表面張力:
インクの表面張力γは、25mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。表面張力を25mN/m以上とすることにより、インク吐出口のメニスカスを維持することができ、インクがインク吐出口から流出してしまう不具合を防止することができる。また表面張力を45mN/m以下とすることにより、インクの画像記録媒体への吸収速度を最適にすることができ、インクの吸収不足による定着不良をという不具合を防止することができる。
【0175】
インクの表面張力は、温度25℃、自動表面張力計(例えば、協和界面科学製「CBVP−Z型」等)を用い、白金プレートを用いたプレート法により測定した値を意味するものとする。インクの表面張力は、界面活性剤の添加量、水溶性有機溶剤の種類及び含有量等により調整することができる。
【0176】
[3−1−10]pH:
インクのpHは、7.5以上10.0以下であることが好ましく、より好ましくは8.5以上9.5以下にすることが好ましい。pHを7.5未満では顔料粒子の分散安定性が悪くなり、顔料の粒子の凝集が起こりやすくなるため好ましくない。一方、pHは10.0を超えると、インクのpHが高すぎてしまい、使用する装置の部材によっては、インクと接することによってケミカルアタックを引き起こし、これにより有機物や無機物がインク中に溶出することによって、結果として吐出不良を引き起こすため好ましくない。インクの粘度は、温度25℃の条件下、pHメーター(例えば、HORIBA(製)D−51等)を用い、測定した値を意味するものとする。
【0177】
[3−2]画像の記録:
次いで、色材受容層付き画像支持体の最上層に位置する色材受容層に画像記録する。画像記録はインクジェット記録方式により行うことができる。
【0178】
[3−2−1]インクジェット記録方式:
インクジェット記録方式とは、記録ヘッドに形成された複数のノズルから転写材に対してインク(インク滴)を吐出して画像を記録する方式である。インクジェット記録方式の種類は特に限定されない。但し、駆動パルスに応じた熱エネルギーをノズル内のインクに付与して膜沸騰により気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させるサーマルインクジェット記録方式が、高品位で高解像度の画像を高速で記録することができる点において好ましい。
【0179】
インクジェット記録方式は、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)により実施することができる。インクジェットプリンタは、画像記録時に記録ヘッドと色材受容層付き画像支持体が接触しないので、極めて安定した画像記録を行うことができる点において好ましい。インクジェットプリンタの種類は特に限定されない。但し、インク吐出口およびインク流路などからなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを色材受容層付き画像支持体の搬送方向と直交するように多数配列させたラインヘッドを備えたフルライン型のインクジェットプリンタを用いることが好ましい。フルライン型のインクジェットプリンタは色材受容層付き画像支持体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像の記録を行う。このため、高品位で高解像度の画像を高速で記録することができる点において好ましい。
【0180】
特に本発明においては、フルラインヘッドはノズル列として複数のノズル流路が連通した共通液室と、該共通液室と連通した開口部と、該開口部と連通したメイン液体供給室と、該メイン液体供給室と連通する液体供給路と、該液体供給路と連通する液体供給室と、該液体供給室を、液体供給の際の流れに沿って上流側より第一液体供給室と、第二液体供給室とに分離するように配設された供給フィルターと、前記メイン液体供給室の一部に設けられた気液分離部と、該気液分離部と連通する空気室と、を備え、前記ノズル流路と、前記共通液室と、前記開口部と、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記液体供給室と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、前記ノズル流路の配列方向と前記液体の吐出方向を含む平面に対して、平行平面上に配置され、前記メイン液体供給室と、前記液体供給路と、前記供給フィルターと、前記気液分離部と、前記空気室とが、各々積層することなく配置されているものが好ましく、前述した樹脂分散型の顔料インクに適している。すなわち、気液分離部を有するヘッドにおいては、ノズルから発生する泡を効果的に除去できるが、一方でインクが増粘しやすくなりリフィル性能が低下するなど、高速印字においてはインク物性に厳密な調整が必要であるが、前述した樹脂分散型の顔料インクはこれを容易にすることができる。
【0181】
記録ヘッドのインクの吐出量としては、20pl以下であることが好ましい。インクの吐出量を20pl以下、好ましくは10pl以下、更に好ましくは5pl以下とすることにより、後述するラミネート工程で保護層を形成する場合に、インク成分の急激な蒸発が抑制され、画像支持体と転写材との密着強度の低下、色材受容層における気泡残りなどの不具合を防止することができる。また、吐出量を小さくするほど、色材受容層でのインクの広がりを抑えることができ、稠密で十分な濃度の画像を記録することができる。更には、画像層(インク層)の厚さを抑えることが可能となる。
【0182】
また、本発明においては記録ヘッドを記録面に対して相対的に移動走査させつつ順次記録媒体を搬送する、シリアルヘッド型のインクジェットプリンタを用いてもよい。シリアルヘッドのプリンタは、熱転写方式のプリンタの記録速度に比べて十分な優位性があり、また液滴を小さくできるので高品位な画像を容易に作製することができる。
【0183】
[7−1]第1の製造装置:
図12は、本発明の記録物を製造する製造装置の第1の構成例(以下、「第1の製造装置」ともいう。)を模式的に示す側面図である。
【0184】
[7−1−1]主要な構成:
第1の製造装置は、画像支持体供給部12、転写材供給部、プレカット部94、受容層転写部91、剥離部92、カール矯正部150、記録部6、反転装置152、排出部26等を備えている。
【0185】
画像支持体供給部12は、画像支持体55を搬送経路へ送り出す。転写材供給部はロール状で、且つ、色材受容層が外側となるように巻かれたロール状の第1の転写材90を搬送経路へ送り出す。プレカット部94はインク受容層のプレカット処理を行う。受容層転写部91は画像支持体55の表面に転写材を転写する。剥離部92は転写材の基材シートを剥離して色材受容層付き画像支持体を得る。カール矯正部150は画像支持体のカールを矯正する。記録部6は色材転写層付き画像支持体に色材、水、不揮発性の有機溶媒などを含有する水系インクを直接吐出して、画像を記録する。反転装置152は両面印刷を行う際に色材受容層付き画像支持体を反転させる。排出部26は画像が記録された記録物を排出して集積する。
【0186】
[7−1−2]動作:
供給部はインク受容層が外表に巻かれたロール状の第1の転写材を回転させ、送り出す。転写材の搬送が開始されると、センサー31で転写材の位置検出を行い、プレカット処理部5で色材受容層のプレカット処理を行う。
【0187】
一方、画像支持体供給部12は、予備加熱部93に画像支持体55を1枚ずつ供給する。予備加熱部では、転写材との密着性を向上させるため、画像支持体の加熱を行う。更に、レジストガイド14が画像支持体と転写材の位置合わせを行う。その後、画像支持体が色材受容層付の転写材の上に積層される。
【0188】
画像支持体は付着部へ供給される。付着部は一対のヒートローラ21、22を備えている。一対のヒートローラ21、22の間を通過する際に、画像支持体に、プレカット処理された転写材が積層されることで、画像支持体と転写材とが加熱圧着される。これと同時に、剥離部92で転写材を構成している基材シートが剥離ロール95により剥離され、基材シートは巻取りロール96に巻き取られる。この際、転写材はガイドロールにより支持されている。このような動作を経て、色材受容層付きの画像支持体を得ることができる。色材受容層付き画像記録媒体は、カール矯正部150でカール矯正が行われ、記録部6で色材受容層に画像が記録され、記録物が排出部26に排出される。
【0189】
なお、両面印刷を行う際は、反転装置152によって画像支持体を反転させ、この画像支持体をレジストガイド14までバックフィードさせる。その後、表面印刷と同様の工程を経て裏面印刷を行う。このような動作を経て、記録物を得ることができる。
【0190】
[7−1−3]第1の製造装置とコントローラとの接続:
図13に示すように、製造装置25(画像形成記録装置)は、ネットワーク47を経由してコントローラ41に接続される。但し、この製造装置25は、ネットワーク47を介さずに、シリアル・ポート、パラレル・ポート、またはUSBポート等を介してコントローラ41に接続することも可能である。製造装置25は、カット処理部、付着部、剥離部、カール矯正部、記録部、画像反転部などを備える。CPUは記録部6に備えられ、カット処理部、付着部、剥離部、カール矯正部、記録部、ラミネート部、画像反転部などが記録部6に接続され、CPUが動作を制御するように構成されている。
【0191】
ネットワーク47は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークであり、有線、無線を問わない。コントローラ41は、製造装置25を制御するためのコンピュータである。コントローラ41は、制御部44、表示部45、入出力部46、記憶部42、通信部43がシステム・バス48を介して互いに接続される。また、コントローラ41にはデジタルカメラや、画像データ等を読み込むためのドライブ装置等が接続される場合もある。更に、コントローラ41には製版装置等が接続されることもある。
【0192】
制御部44は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有する。CPUは、記録部、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、演算処理、動作制御を行い、システム全体を制御する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラム、データ等を恒久的に保持する。また、RAMは、揮発性メモリであり、プログラム、データ等を一時的に保持する。
【0193】
表示部45は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)の表示装置等である。
【0194】
入出力部46は、データの入出力を行う部分である。データの入力を行うものとしては、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等があり、これらの入出力部を介して、コントローラ41に対して、操作指示、動作指示、データ入力、維持管理等を行うことができる。また、不図示のスキャナやドライブ装置等と接続され、これらの外部装置からの入力データを制御部44に転送したり、データを外部装置に出力したりする。
【0195】
記憶部42は、データを記憶する装置であり、磁気ディスク、メモリ、光ディスク装置等がある。記憶部42には、制御部44が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。また製造装置25の記録部6で記録されるパターンを格納することもできる。通信部43は、コントローラ41とネットワーク47間の通信を媒介する通信インターフェースであり、通信制御装置、通信ポート等を有する。なお、パーソナルコンピュータ等をコントローラ41の代りに用いることも可能である。
【0196】
[7−1−4]制御系:
図14は、
図13に示す記録部6に設けられた制御系の構成を示すブロック図である。ホストPC120から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、記録部の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等、全般的な制御を司る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各々の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング位置(待機位置)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0197】
続いて、一定速度で搬送される転写材にインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するためのセンサ部31(先端検出センサ)で転写材の位置を検出する。その後、転写材の搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各々の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに記録ヘッド制御回路112を介して転送する。これにより、記録ヘッドの各ノズルに設けられた吐出エネルギー発生素子が記録データに従って駆動され、駆動された吐出エネルギー発生素子によってノズルからインク滴が吐出される。吐出されたインク滴は、記録ヘッドに対向する位置にある転写材の色材受容層(インク受容部)へと着弾し、ドットを形成する。このドットの集合によって所望の画像が形成される。
【0198】
なお、上記のようなCPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108が使用される。
【0199】
[7−1−5]第1の製造装置の動作フロー:
次に、
図12に示す第1の製造装置25の動作フローを、
図15のフローチャートに従って説明する。このフローチャートは
図14に示すCPU100により実行される。
【0200】
記録部のCPUは、コントローラよりネットワークまたは各種ポートを介して記録データが送信されたか否かを判断し(S101)、記録データが送信されていると判断されると(S101のYES)、供給部からの未記録の転写材の供給を開始させ(S102)センサー部で転写材の検知を行い、センサー部が転写材を検出していなければ(OFFであれば(S103のYES))、記録部に搬送され、画像支持体との位置合わせを行い、ヒートローラによる加熱圧着を開始する(S115)。以上の動作は、いずれもセンサ部が転写材を検出した時点を基準としており、互いに同期をとりながら行われる。
【0201】
一方、前述のようにCPUに記録データが送信されると(S107のYES)、画像支持体供給部から転写部(プライマー転写部)へと画像支持体が供給される(S108)。その後、転写部での転写性能を向上させるため、予備加熱部によるプレ加熱処理を行い(S110)、レジストガイドにおいて画像支持体と転写材との位置合わせを開始し(S111)、転写材との位置合わせが完了した時点で(S113)、先のステップへと進む。このとき、S113のステップはYESとなり、画像支持体上に転写材が載り、付着部において転写材と画像支持体とをプライマーを介して互いに接着させる(S115)。この後、下流側へと搬送されるのに伴って、プレカット処理部でプレカットされた部分を基点に、転写材の基材シートが剥離され、色材受容層付き画像支持体が形成される。その後、記録部において、色材受容層付き画像支持体への記録動作(S104)を開始する(S104)。この後、記録動作が終了すると(S105のYES)、記録物(最終記録物)を排出部に積載させる(S116)。
【0202】
[7−1−6]第1の製造装置により実行される処理:
[7−1−6−1]転写材のプレカット処理:
第1の転写材は、必要に応じて
図16示すように色材受容層53に切込み54を形成しておくカット処理(以下、プレカット処理という)が施されている。このため、プライマー層または画像支持体に色材受容層を付着させた場合、プレカット処理により形成された切込みを境界にして、色材受容層が綺麗に切断されるため、
図17に示すように、画像記録される部分の(画像記録領域)色材受容層53のみ画像支持体55に転写される。
【0203】
また、プレカット処理を施し、切込みを形成することにより、シャープで正確なエッジ形状を得ることができる。これにより、画像支持体の、例えばサインパネル、ICチップ、磁気ストライプの部分や、画像支持体に予め記録されているロゴ、ホログラム等の意匠デザインの部分の位置と、上記の部分的に抜けている部分の位置を合わせて、そのパッチを画像支持体へ付着させることができる。これにより、サインパネルやICチップ、磁気ストライプ等の部分では、その部分の後処理における性能の低下を防止することができる。また、ロゴ、ホログラム等の意匠デザイン部分では、その個所に画像が形成されると、透明性が損なわれ(不透明性が増加し)、品位の低下が生じるために、画像形成部から外す必要があるが、これを正確に行うことができる。なお、上記のサインパネル部分は、ボールペン等の筆記具で手書きしたり、スタンプインキでナンバリングしたり、朱肉やスタンプインキで捺印したりする部分である。
【0204】
第1の製造装置においては、インクジェット方式による記録を行うため、色材受容層がインクを吸収する必要があり、吸収性を確保するために色材受容層の厚みを厚くする必要がある。特に色材受容層が空隙吸収型で形成され、色材受容層中に接着性を有する樹脂等が含有されていなかったり、その塗工量が25g/m
2以上となったりした場合には、色材受容層の厚みにより、画像形成領域が不用意に画像支持体から剥がれてしまうことがある。このため、画像形成領域の剥がれを防止するために、プレカット処理を行うことが好ましい。
【0205】
プライマーの転写は、
図18に示したように、画像支持体55を1枚ずつ転写部13内に供給し、供給ロール15(プライマー供給ロール)からサーマルヘッド30と画像支持体55の間を通り、ガイドロール16を経由して巻上げロール17(プライマー巻上げロール)側に巻き取られて搬送される。サーマルヘッド30は、プライマーの厚みや材質等で変わる熱容量に応じてエネルギーが印加され、発熱し、プライマーを画像支持体55に移行させて接着層を形成する。サーマルヘッド30の選択的加熱により、IC部など表面コートを行いたくない特殊な部分へのプライマー転写を行わない、選択的なプライマー転写が可能となるが、全面へのプライマー層の付与が前提となる装置では、安価なヒートローラなどの加熱手段によるプライマー転写を行うことも可能である。
【0206】
[7−1−6−2]転写工程(色材受容層の転写):
画像支持体55は、2本のヒートローラ21、22から構成される付着部に移動する。この付着部では、基材シートはヒートローラ21と画像支持体の間に供給され加熱圧着されることで基材シートの色材受容層と画像支持体55が接着する。
【0207】
また、転写時の温度は、転写時の温度をプライマーの接着が発現するプライマーのTg以上、または色材受容層のバインダー成分Tg以上の範囲で行うものとする。転写時における色材受容層への加熱は、プラスチックカードなどの厚めの画像支持体側からでなく、主として転写材の基材シート側からの熱伝達によって行われるが、付着工程時の色材受容層の最大到達温度が画像支持体が溶融しない温度(変形しない)を超えないように制御すれば良い。また搬送速度等が速く熱源による加熱時間が十分に取れない場合は熱源と受容部との温度差が生じる場合もあることから、ヒートローラの表面温度は、100℃〜180℃など、通常時より高くなるように制御してもよく、密着性・箔切れ性に考慮して更に高い温度となるように制御しても良い。
【0208】
[7−1−6−3]プレ加熱:
図12に示すように、記録された第1の転写材と位置を合わせて付着させる場合は、画像支持体とを含むカード等の表面を、転写材を付着させる前に予備加熱部19で適度に加熱しておけば、転写材上のインク受容層の加熱による過度な温度上昇を制御できる。
【0209】
[7−1−6−4]剥離処理:
図に示すように、剥離部151では、画像支持体に付着されている転写材の基材シートの部分を剥離し、剥離した基材シートを巻とりロール96に巻き取る。これにより、
図17に示すような画像支持体55の上に色材受容層53が付着された状態の色材受容層付き画像支持体が構成される。つまり、色材受容層付き画像支持体の最上層に色材受容層53が位置し、画像を記録することができるようになる。なお、プレカット処理を行った場合には、色材受容層の一部は剥離されて巻取りロール24側に巻き取られ、色材受容層付き画像支持体は記録部6に搬送される。
【0210】
[7−1−6−5]カール矯正:
図12に示すように、画像支持体は、カール矯正部150で矯正され、画像支持体のカールをフラットに矯正する。矯正は画像支持体があたたかいうちに、加熱プレートと支持プレートで挟み込むことにより矯正することができる。
【0211】
[7−1−6−6]記録処理:
記録ヘッドに形成された複数のノズルから色材受容層付き画像支持体にインク(インク滴)を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。ノズルからインク滴を吐出させる技術として、駆動パルスに応じた熱エネルギーをノズル内のインクに供給して膜沸騰による気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる技術が知られている。形成する画像に応じた多数のインク滴がノズルから色材受容層付き画像支持体に吐出されることにより色材受容層付き画像支持体の色材受容層に画像が形成される。
【0212】
インクジェットプリンタには、画像記録速度を向上させるために、インク吐出口及びインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを色材受容層付き画像支持体の搬送方向に直交させて多数配列させたラインヘッドを用いる、フルライン型のものがある。このフルライン型のプリンタでは、色材受容層付き画像支持体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させて画像の記録を行う。このため、上記のフルライン型のインクジェットプリンタによれば、画像品位で高解像度の画像を高速で形成するという現在のプリンタに対する要求を満足させることができる。また、インクジェットプリンタは、画像記録時に記録ヘッドと色材受容層付き画像支持体とが非接触であるので、非常に安定した画像記録を行うことができるという利点も有している。
【0213】
記録部6は、K、C、M、Yからなる4つの記録ヘッドを主な構成要素としている。4個の記録ヘッドは、画像データに応じてインクを吐出し、色材受容層付き画像支持体に設けた色材受容層にインク滴を吐出して画像を形成する。
【0214】
[7−1−6−9]画像反転装置:
両面印字を行う際は、
図12に示すように、製造装置25が画像反転部152を備えることが好ましい。剥離後の記録物は反転装置により反転され、裏面印字を行うために、反転された記録物はレジストガイド14までフィードバックされる。その後、表面の印字と同様の処理を行い、裏面に画像を形成される。
【0215】
[7−2]第2の製造装置:
第2の製造装置は、ロール状で、且つ、色材受容層が外表に巻かれた転写材90を供給部から供給し、その第1の転写材上にプライマー層を転写する機構を備える。これにより画像支持体と転写材の接着性を上げることができ、効率的に転写材を転写させることができる。
【0216】
上記第1の製造装置との主な相違点は、
図18に示したように、プライマー層を転写する転写部13を転写材1の搬送経路上に備えた点である。第1の製造装置との共通部分は、第1の製造装置と同じ装置及び同じ制御系構成を有しているので説明は省略する。
【0217】
プライマーの転写は、
図18に示すように転写材を1枚ずつプライマー転写部13内に供給する際に、プライマーシートを供給ロール15(プライマー供給ロール)からサーマルヘッド30と転写材の間を通り、ガイドロール16を経由して巻上げロール17(プライマー巻上げロール)側に巻き取るように搬送する。サーマルヘッド30はプライマーの厚みや材質等で変わる熱容量に応じてエネルギーが印加され、発熱し、プライマーを画像支持体11に移行させて接着層を形成する。サーマルヘッド30の選択的加熱により、IC部など表面コートを行いたくない特殊な部分へのプライマー転写を行わない、選択的なプライマー転写が可能となるが、全面へのプライマー層の付与が前提となる装置では、安価なヒートローラなどの加熱手段によるプライマー転写を行うことも可能である。
【0218】
[7−3]第3の製造装置:
第3の製造装置は、転写部とプリンタ部が分離独立したものである。第3の製造装置は、
図19に示すような色材受容層53が外側となるように巻かれたロール状の転写材を、「ロールtoロール」の公知のラミネーターに搭載して、転写材を画像支持体に転写させ、転写材から基材シートを剥離することにより色材受容層付き画像支持体を得る。その後、ラインヘッドを搭載したプリンタ部に搭載して印字を行い、記録物を得る。
【0219】
更に、必要に応じて、公知のラミネーターを用いて、ロール状の転写材を、
図20に示したラミネート機の巻きだしロール201にセットする。画像支持体が供給部206より搬送されると、ロール状に加工された転写材は巻きだしロール201より転写部203へ搬送される。このとき、センサー208はマーキングを検知し、画像支持体との位置合わせを行い、転写材は転写ロール204と画像支持体の間に搬送され、転写ロール204により加熱圧着される。その後、剥離ロール207により転写材の基材を引き剥がすことにより、画像記録媒体を形成する。
【0220】
図23に示すのはラインヘッド型のプリンター401であり、
図24および
図25は、
図23に示すプリンター401の搬送機構402を更に具体的に示した図である。
図25に示すように、供給部にセットされた色材受容層付き画像支持体は、搬送ベルト410によって印字ヘッド311に搬送され、画像が記録され、排出部414から記録物として排出される。
【0221】
なお、
図21に示すような、転写材1が基材シート50を外側に、且つ、色材受容層を内側にした内巻きのロール状である場合には、
図22に示すような搬送パスで、巻きだしロール210より転写材を送り出すことにより、色材受容層付き画像支持体を得る。上述の内巻きのロールはインク受容層表面にゴミ付着を防止する効果がある。
【0222】
[7−4]第4の製造装置:
第4の製造装置は、転写部とプリンタ部が分離独立したものである。第4の製造装置は転写材をカットシート状に加工し、公知のラミネーターに搭載して、転写材を画像支持体に転写させ、基材シートを剥離することにより色材受容層付き画像支持体を得る。その後、色材受容層付き画像支持体を、ラインヘッドプリンタにセットして、画像記録を行い、記録物を得る。
【0223】
具体的には、
図26に示すように、画像支持体に対し、シート状の転写材を手動で位置合わせし、転写ロール204に搬送して、画像支持体と転写材を加熱圧着した後、排出部205に排出し、基材シートを手動で引き剥がして色材受容層付き画像支持体を得る。その後、
図23に示すプリンタ401で、色材受容層に画像記録を行い、記録物を得る
【0224】
[7−5]第5の製造装置:
第5の製造装置は、転写部とプリンタ部が分離独立したものである。第5の製造装置は転写材をカットシート状に加工し、カットシートを公知のラミネーターに搭載して、転写材を転写させ、基材シートを剥離することにより色材受容層付き画像支持体を得る。その後、色材受容層付き画像支持体をシリアルプリンターに搭載して画像記録を行い、記録物を得る。シリアル型のインクジェットプリンタを、
図12に示す製造装置のような一体型の製造装置に組み込んでしまうと、ヘッドは、付着部29と記録部6の間で速度差を生じる場合があり、速度差を吸収および調節するためのたるみ部を設ける必要がある。従って、シリアル型のインクジェットプリンタを用いる場合は、プリンタ部と転写部が独立した分離型とすることが好ましい。
【0225】
具体的には、
図26に示すように、シート状の転写材1を画像支持体55に手動で位置合わせを行った後、転写ロール204に搬送して、転写材1と画像支持体55を加熱圧着させた後、排出部205に排出する。その後、基材シートを手動で引き剥がして色材受容層付き画像支持体を得る。
図27は色材受容層付き画像支持体に画像記録を行うシリアルプリンタ501である。シリアルプリンタ501においては、供給部513に色材受容層付き画像支持体をセットすると、搬送ロール510によって印字ヘッド502に搬送され、記録物が排出される。印字ヘッド502は、
図28に示すような構造となっており、ノズル511よりインクを吐出して画像記録を行う。このとき、印字ヘッド502を記録面に対して相対的に移動走査させつつ順次、色材受容層付き画像支持体の搬送を行い、印字ヘッド502はシャフト501に固定され、搬送される色材受容層付き画像支持体と直角の方向(図中の矢印a、bの方向)に走査させて、ノズルよりインクを吐出することにより画像記録を行う。
【0226】
以上説明したように、上記製造装置によれば、色材受容層と画像支持体との密着性が向上し、色材受容層を画像支持体上に容易に設けることができる。これにより、画像精度に優れ、生産性を飛躍的に向上せしめることが可能な記録物の製造方法を提供することができる。
【0227】
[8]第2の転写材:
本発明の第2の転写材は、
図31に示すように、色材を受容する色材受容層53と透明シート52と、色材受容層53および透明シート52を支持する基材シート50と、を備えている。
【0228】
[8−1]色材受容層:
色材受容層については、前述した第1の転写材の説明の[1−1]で記載したものと同等のものを使用できる。空隙吸収型の色材受容層は、無機微粒子によって形成される空隙によって色材を速やかに吸収することができる。従って、透明シートを、基材と色材受容層との間に設ける第2の転写材の場合においては、転写材を画像支持体に加熱圧着させる際に、色材が急激に突沸することが少なく、転写材と画像支持体とが完全に密着しない不具合(密着性不良)や、転写材と画像支持体との間に気泡が残る不具合(気泡残り)を抑制することができる。
【0229】
色材受容層を形成する際に、無機微粒子の平均粒子径や水溶性樹脂の重量平均重合度および、けん化度を精密に制御することが好ましい。これにより、色材受容層の透明性(透過性)や色材受容層と透明シートとの密着強度を向上させることができる。これにより、透明シートの側からの画像の視認性を向上させることができる。従って、色材として、色材受容層に浸透し難い顔料インクを使用した場合でも、インク密度を増加させ、或いは多量のインクを受容させるために色材受容層の厚さを増大させる必要がない。このため、転写材、ひいては記録物の全体厚さを薄厚化することができる。
【0230】
[8−1−1]無機微粒子:
無機微粒子については、前述した第1の転写材の説明の[1−1−1]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0231】
透明シートを、基材シートと色材受容層との間に設ける第2の転写材の場合においては、使用する無機微粒子は、その平均粒子径が120nm以上200nm以下であることが好ましい。前記平均粒子径を120nm以上、好ましくは140nm以上とすることで、色材受容層のインク吸収性を向上させることができ、記録後の画像におけるインクの滲みやビーディングを抑制することができる。一方、前記平均粒子径を200nm以下、好ましくは170nm以下とすることで、無機微粒子による光散乱を抑制し、色材受容層の光沢性および透明性を向上させることができる。また、色材受容層の単位面積当たりの無機微粒子数を増加させることができるため、インク吸収性を向上させることができる。従って、画像の記録濃度を向上させることができ、記録後の画像のくすみを抑制することができる。
【0232】
[8−1−2]水溶性樹脂:
水溶性樹脂については、前述した[1−1−2]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0233】
[8−1−3]カチオン性樹脂:
カチオン性樹脂については、前述した[1−1−3]で記載したものと同等のものを使用できる。なお、透明シートを基材と色材受容層との間に設ける第2の転写材の場合においては、[1−1−3]で記述した機能に加え、後述する樹脂分散顔料との接着性を高めることができる。すなわち、樹脂分散顔料の分散樹脂のSP値は、本発明で使用するカチオン性樹脂のSP値と近いため、転写時の熱でカチオン性樹脂および分散樹脂が溶融すると両者の相溶性が高まり、樹脂分散顔料は色材受容層に強固に接着される。これにより、色材受容層の画像支持体への転写性能が向上する。
【0234】
[8−1−4]その他の添加物:
その他添加物については、前述した[1−1−4]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0235】
[8−1−5]厚さ:
厚さについては、前述した[1−1−5]で記載したものと同等のものを使用できる。なお、透明シートを基材と色材受容層との間に設ける場合においては、インクの吸収性の向上や密着性(転写性能)だけでなく、色材受容層の透明性を向上させることができる。
【0236】
[8−1−6]その他:
色材受容層は、後述する画像とは異なる補助的な画像が予め形成(プレプリント)されているものであってもよい。
【0237】
[8−2]透明シート:
本発明の第2の転写材は、
図31に示すように、透明シート52を備えている。透明シートは、JIS K7375に準拠して測定される全光線透過率が50%以上、好ましくは90%以上のシートを意味する。従って、透明シートには、無色透明シートの他、半透明シート、着色透明シートなども含まれる。
【0238】
透明シート52の種類は特に限定されない。但し、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性などの耐久性に優れ、色材受容層との相溶性が高い材質からなるシート、フィルムであることが好ましい。更に、透明シートが基材シートに当接する場合は、基材シートのSP値と透明シートのSP値との差SP1が1.1以上の材料を選択することが好ましい。具体的な材質としては、例えば、樹脂フィルムなどを挙げることができる。
【0239】
また、本発明の第2の転写材を画像支持体に加熱圧着させ、基材シートを剥離すると、透明シートを介して色材受容層に記録された画像を本来の画像として視認することが可能となる。また、転写材を画像支持体に加熱圧着させた場合に、透明シートが色材受容層に記録された画像の保護層として機能する。
【0240】
なお、色材受容層に画像を記録するインクとして染料インクを用いる場合には、紫外線による染料の分解(光劣化)を防止するために、前記透明シートが、UVカット剤を含有するものであることが好ましい。UVカット剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などの紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛などの紫外線散乱剤;などを挙げることができる。
【0241】
[8−3]基材シート:
本発明の第2の転写材は、
図31に示すように、基材シート50を備えている。基材シート(「剥離ライナー」、「セパレータ」とも称される。)は、後述する離型層または色材受容層の支持体となるシート体である。なお、基材シートについては、前述した[1−2]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0242】
[8−4]離型層:
本発明の第2の転写材は、
図32に示すように、離型層51を備えていてもよい。離型層は、離型剤を含有する組成物からなる層で、基材シート50と透明シート52の間に設けられる。離型層51を備えることによって、透明シート52から基材シート50を容易に剥離することができる。なお、本発明において離型層を形成する場合は、基材シートは離型層を含むものとする。すなわち、基材シートのSP値と、基材シートに当接する層のSP値と、の差のSP1は、離型層SP値と色材受容層のSP値との差となる。離型層については、前述した[1−3]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0243】
なお、透明シートの表面に艶消し(マット)加工を行いたい場合には、離型層に各種粒子を含有させるか、離型層の透明シートに当接する側の表面をマット処理しておくことが好ましい。マット加工は透明シートの光沢感を適度に制御することができる点において有用な方法である。
【0244】
[8−5]アンカー層:
本発明の第2の転写材は、
図32に示すようにアンカー層59を更に備えていてもよい。
【0245】
アンカー層59は透明シート52と色材受容層53との間に配置される。アンカー層を備えることで、透明シートと色材受容層との密着性、接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により透明シートから色材受容層が剥離する不具合を抑制することができる。
【0246】
また、表面改質処理として、色材受容層を塗工する透明シート52の表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行ったり、IPAやアセトン等の有機溶剤を塗工することによって透明シート52の表面をあらすことによって、塗れ性を改良し密着性を向上させることができる。上記のようなアンカー層の形成や表面処理を行うことによって、色材受容層53と透明シート52との結着性を高めることができ、膜強度を上げ、透明シート52の剥がれを防止することができる。
【0247】
このような、アンカー層59としては、結着性を高めるものとして、前述したプライマー層を構成するものと同等のものが使用できる。例えば、熱可塑性の合成樹脂、天然樹脂、ゴム、ワックス等を用いて形成することができる。より具体的には、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、粘着性付与剤としてのロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体等が挙げられる。
【0248】
また、塗工液の濡れ性を向上させたり、結着性を高めたりするものとしては、ポリオレフィン樹脂なども好ましく用いられ、中でもポリエチレンは特に好ましく用いられる。ポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0249】
上記、アンカー層59は、後述する転写材の付着工程でのヒートローラでの熱処理により、アンカー層59が溶融することが好ましい。アンカー層59の溶融により、色材受容層53のおよび透明シート52表面の凹凸の影響を受けることなく、色材受容層53と透明シート52の結着性をより強固なものとすることができる。熱処理は、熱によりアンカー層を溶融させることによって接着性を発現させる一方で、インクの蒸発が起こらない範囲で用いることが好ましい。従って、ガラス転移温度(Tg)が60℃〜160℃、更に好ましくは70〜140℃、特に好ましくは70〜100℃の熱可塑性樹脂から形成することが好ましい。上記の温度範囲は、付着部29において転写材1から印加される熱によっても色材受容層内部のインクの内圧が上がることから、インクに沸騰が起こらないため、好ましく使用される。一方、160℃以上では、急激な熱によりインクが沸騰してしまい、良好な接着が行われなくなるので好ましくない。
【0250】
[8−6]ホログラム層:
本発明の第2の転写材は、
図32に示す転写材1のように、ホログラム層58を更に備えていてもよい。ホログラム層58は、三次元像が記録された層であり、透明シート52と色材受容層53との間に配置される。ホログラム層を備えることで、記録物(クレジットカードなど)の偽造を防止する効果が付与される。ホログラム層の構成は特に限定されず、従来公知の構成を採用することができる。例えば、レリーフホログラムなどを挙げることができる。
【0251】
アンカー層59を設ける場合は、
図32に示すようにアンカー層59と透明シート52の間にホログラム層58を設けることができる。ホログラム層58は、一般に樹脂の層で構成されるが、この層自体は単一構造でもよく、また多層構造でもよい。そして、ホログラム形成層は、平面型ホログラムでも体積型ホログラムでもよく、平面型ホログラムの場合、なかでもレリーフホログラムが量産性およびコストの面から好ましい。
【0252】
その他、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、および、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、更にそれらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等を用いることができる。
【0253】
干渉縞を記録するためのホログラム形成用感光材料としては、銀塩、重クロム酸ゼラチン、サーモプラスチックス、ジアゾ系感光材料フォトレジスト、強誘電体、フォトクロミックス材料、カルコゲンガラス等が使用できる。また、ホログラム形成層の材質として、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、ポリメチルメタアクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、そして、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂を硬化させたもの、或いは、上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物が使用可能である。
【0254】
更に、ホログラム層58の材質として、ラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質が使用可能である。ホログラム層58は、従来既知の方法によって形成することができる。例えば、透明型ホログラムがレリーフホログラムである場合、干渉縞が凹凸の形で記録されたホログラム原版をプレス型として用いる。そして、このホログラム原版上にホログラム形成用樹脂シートを置き、加熱ロールなどの手段によって両者を加熱圧着し、ホログラム形成用樹脂シート表面にホログラム原版の凹凸模様を複製する方法によってレリーフ形成面を有するホログラム形成層を得ることができる。
【0255】
[8−7]積層構造:
本発明の第2の転写材は、
図31に示すように、基材シート50、透明シート52および色材受容層53が順次積層された積層構造を有している。「基材シート、透明シートおよび色材受容層が順次積層」とは、基材シート、透明シート、色材受容層の間に他の層が介在するか否かに拘わらず、基材シート、透明シート、色材受容層が、その順序に従って積層されていることを意味する。即ち、
図32に示す転写材1のように、透明シート52と色材受容層53との間に、アンカー層59やホログラム層58が存在する構造も、「基材シート、透明シートおよび色材受容層が順次積層」された積層構造に含まれる。
【0256】
但し、本発明の第2の転写材は、
図31に示すように、基材シート50、透明シート52、色材受容層53が相互に当接された積層構造を有することが好ましい。即ち、基材シート50と透明シート52、透明シート52と色材受容層53の間に、他の層(シートも含む。)が介在していない構造が好ましい。記録物の対象物となるクレジットカードなどは厚さの制限が厳格であるため、積層される層やシートの数を減じ、記録物を薄厚化することが望ましいからである。特に、色材受容層に含まれるポリビニルアルコールの重量平均重合度、けん化度を精密に調整すれば、透明シートと色材受容層との接着強度が顕著に向上し、必ずしも離型層やアンカー層を形成する必要がなくなる。このような構成によれば、転写材ひいては記録物を薄厚化することができるという利点がある。
【0257】
本発明の第2の転写材が、
図32に示すように、離型層51、アンカー層59、ホログラム層58を更に備える場合には、色材受容層53、アンカー層59、ホログラム層58、透明シート52、離型層51および基材シート50が順次積層された積層構造を有することが好ましい。
【0258】
[8−8]転写材の形状と厚さ:
本発明の第2の転写材の形状および厚さについては、前述した[1−7]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0259】
[8−9]製造方法:
本発明の第2の転写材は、例えば、基材シートおよび透明シートが順次積層された積層体に、無機微粒子、水溶性樹脂およびカチオン性樹脂を含有する塗工液を塗工することにより製造することができる。なお、以下の記載においては、転写材の項などで既に説明した事項については割愛し、製造方法固有の事項のみ説明する。
【0260】
[8−9−1]透明シート:
透明シートとしては、予め表面改質が行われたものを用いてもよい。透明シートの表面を粗面化する表面改質を行うことにより、透明シートの濡れ性が向上し、色材受容層やアンカー層との密着性を向上させることができる場合がある。表面改質の方法は特に限定されない。例えば、透明シートの表面に、予めコロナ放電処理やプラズマ放電処理を行う方法;透明シートの表面にIPAやアセトン等の有機溶剤を塗工する方法;などを挙げることができる。これらの表面処理は、色材受容層と透明シートとの結着性が高まり、強度が向上し、透明シートから色材受容層が剥離する不具合を防止することができる。
【0261】
そして、透明シートは、他の層やシートとの積層体とした状態で用いてもよい。例えば、アンカー層、透明シート、離型剤を含有する組成物からなる離型層、基材シートが順次積層された積層シートを用いることが好ましい。
【0262】
離型層は、基材シートを構成する樹脂フィルムなどに、離型層を構成する樹脂やワックスを含有する塗工液を塗工し、乾燥することにより形成することができる。塗工方法としては、従来公知の塗工方法、例えばグラビア記録法、スクリーン記録法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法などの塗工方法を挙げることができる。
【0263】
[8−9−2]塗工液:
色材受容層は、少なくとも無機微粒子、水溶性樹脂およびカチオン性樹脂を、適当な媒体と混合して塗工液を調製し、これを透明シートの表面に塗布し、乾燥させて色材受容層を形成することで得られる。
【0264】
塗工液の媒体およびその他添加剤、塗工液中の無機微粒子の濃度ついては、前述した[1−5]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0265】
[8−9−3]塗工:
色材受容層の形成は、例えば基材シートおよび透明シートの積層体を構成する透明シートの表面に、前記塗工液を塗工することにより行う。塗工後は必要により塗工液の乾燥を行う。これにより、
図31に示すような、基材シート50、透明シート52および色材受容層53が順次積層された積層構造を有する転写材1を得ることができる。
【0266】
アンカー層、前記透明シート、前記離型層、および前記基材シートが順次積層された積層シートを用いる場合には、前記積層シートを構成する前記アンカー層の表面に、前記塗工液を塗工すればよい。これにより、
図32に示すような、色材受容層53、アンカー層59、透明シート52、離型層51および基材シート50が順次積層された積層構造を有する本発明の第2の転写材を得ることができる。
【0267】
塗工方法および塗工液の塗工量ついては、前述した[1−5]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0268】
[8−10]画像:
図33は、本発明の第2の転写材を模式的に示す斜視図である。本発明の転写材は、色材受容層に画像が形成されていることが好ましい。特に
図33に示す転写材1のように、色材受容層53に、色材受容層53の側から見ると鏡像となり、透明シート52の側から見ると正像となる反転画像72が記録されていることが好ましい。
【0269】
本発明の第2の転写材においては、
図33に示す転写材1のように、反転画像72は、色材受容層53の透明シート52が積層されていない面に記録されたものである。特にインクジェット記録方式により記録されたものは従来の熱転写方式と比較して、記録物の生産性および情報セキュリティーを向上させることができ、記録コストの低減を図ることが可能となる。
【0270】
本発明の第2の転写材においては、前記画像が、染料インクにより形成された画像であってもよいし、顔料インクにより形成された画像であってもよい。但し、前記画像が、顔料インクにより形成された画像であることが好ましい。顔料インクにより反転画像を形成することで、色材受容層の表面にインク中の水分や溶媒が残存し難くなり(即ち、乾燥が容易となり)、前記水分や前記溶媒に起因する画像支持体と転写材(具体的には、色材受容層)との接着不良やマイグレーション(インクの移動)を有効に防止することができる。更に、顔料インクにより反転画像を形成することで、反転画像の耐光性を向上させることができる。
【0271】
上記内容について更に詳細に説明する。顔料インクは、
図34に示すように、空隙吸収型の色材受容層64においては、顔料インク中の顔料成分63は粒子径が大きいため、色材受容層64を形成する無機微粒子65で構成される細孔の内部まで浸透せずに、色材受容層64の記録表面で定着する。更に、空隙吸収型の色材受容層64は、膨潤型の色材受容層とは異なり、色材受容層64が膨潤することなく平滑に保たれる。一方、膨潤吸収型の色材受容層の場合は、
図35に示すように、インク中の水分により色材受容層67が膨潤して、色材受容層67の表面に凹凸が発生するため、画像支持体に対する接着性を低下させてしまう。また、インク中の残存水分や溶媒は色材受容層67の表面66に残るため、付着工程における残存水分および溶媒の蒸発により、画像支持体と色材受容層のとの密着性が不足する可能性があるため、好ましくない。
【0272】
また、空隙吸収型の色材受容層64においては、顔料インク中の顔料成分63は色材受容層64の表面で定着する一方でインク中の水分および溶媒成分62は、色材受容層64の内部まで浸透し、表面の顔料成分63と分離(固液分離)する。これにより、転写時には、顔料表面は乾燥した状態になるため、水分の蒸発による接着不良を防止し接着性を向上することができる。また、残存水分および溶媒成分62は色材受容層64の内部にとどまるため、顔料成分63は、再度、残存水分および溶媒成分62が接触することがないため、インクの移動(マイグレーション)を防止することができる。一方で染料インクは、
図36に示すように、残存水分の影響により染料成分68が染料成分69のように移動(マイグレーション)してしまうため、にじみが発生する。
【0273】
顔料インクついては、前述した[3−1]で記載したものと同等のものを使用できる。なお、本発明においては、転写材の色材受容層にカチオン性樹脂が含有されているため、一般的にマイナス帯電している顔料粒子は、カチオン性樹脂との静電気的に結合し、色材受容層と顔料インクとの接着性を強固にしている。しかしながら、自己分散顔料を用いた場合、自己分散顔料が色材受容層の表面を覆うと、色材受容層や画像支持体との接着性が低下し、転写性能が低下する場合がある。そこで、本発明では、樹脂分散顔料を用いる。樹脂分散顔料は顔料粒子の周りを樹脂で被覆しているため、自己分散顔料に比べて転写性能を向上させるため好ましい。顔料インクとして樹脂分散型顔料を使用した場合には、その分散樹脂と色材受容層中のカチオン性樹脂のSP値を近い値にすることができる。こうすることで、樹脂分散型顔料の色材受容層への接着性が向上する。前記樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂を用いることが好ましい。アクリル樹脂のSP値は、色材受容層中のポリビニルアルコールやカチオン性樹脂、プライマー樹脂、画像支持体のPVC、PET−GなどのSP値と値が近いことから、印刷後に印字表面が顔料膜で覆われても、画像支持体や色材受容層との結着性も高めることが可能になる。よって、透明シートを、基材と色材受容層との間に設ける態様とした場合においては、画像支持体に対する色材受容層の転写性能を向上させることができる。
【0274】
[8−11]画像の記録:
次いで、前記した第2の転写材における前記色材受容層の前記透明シートが積層されていない面に、画像記録する。特に、前記色材受容層の側から見ると鏡像となり、前記透明シートの側から見ると正像となる反転画像を、記録する。これにより、
図33に示すように、転写材1の色材受容層53に反転画像72が記録される。
【0275】
画像の記録ついては、前述した[3−2]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0276】
透明シートを基材と色材受容層との間に設ける場合においては、記録ヘッドのインクの吐出量としては、20pl以下であることが好ましい。インクの吐出量を20pl以下、好ましくは10pl以下、更に好ましくは5pl以下とすることにより、インクの吸収性の向上や高速記録だけでなく、画像支持体との加熱圧着工程においてインクの水分量を適切なレベルにコントロールすることができるため、色材受容層の転写性を高めることができる。
【0277】
また、画像の印字は、画像支持体よりも大きなサイズで印字することが好ましい。このようにすることで、ふち無し印字が可能になり、良好な画像を得ることができる。特にインクジェットを用いる場合、画像支持体に直接ふち無し印字を行うとエッジ部分にインクが吸収されエッジ部分の画像品位が悪化するが、本発明においては、インクジェット方式によってもエッジ部の良好な印刷が可能となる。
【0278】
[8−11−1]マーキング処理:
また、画像を印字する際に、
図37に示すように後述する転写工程での自動ラミネート機の位置合わせ用に、画像形成領域161や印字領域160の外側に、位置あわせ用のマーキング162を印刷することができる。このマーキングを、後述する透過および反射型のセンサーで読み取ることにより、転写時の貼り合わせ位置を正確に行うことができる。また、
図38に示すように、転写材がカットシート形状である場合は、画像形成領域161の外側に、マーキング162に加えて、貼り合わせガイド163を印字すると、転写時の貼り合わせの位置調整を容易に行うことができる。
【0279】
[8−11−2]インクの乾燥:
本発明においては、前記画像を形成しているインクジェット記録用のインクの水分量を、前記インクの総打ち込み量に対して70質量%以下となるまで乾燥することが好ましい。インクの水分量を70%質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることにより、インク成分の急激な蒸発が抑制され、画像支持体と転写材との密着強度の低下、色材受容層における気泡残りなどの不具合を防止することができる。なお、ここにいう水分量とは、色材を除く水および不揮発性溶媒などの総量を意味するものとする。インクの総打ち込み量は、記録ヘッドのインク吐出量により調整することができる。水分量の制御を容易に行えるように、予め画像記録時のドット数を間引くなどして、打ち込み量を制限してもよい。前記乾燥は、ハロゲンヒータなどのヒータ(熱源)、ファンなどの排気装置などにより行うことができる。但し、ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、十分な長さの搬送路を搬送させることによって、自然乾燥を促してもよい。
【0280】
[8−12]プライマー層:
本発明においては、
図39に示すように、印字後の転写材1の色材受容層53の表面にプライマー層56を更に備えていることが好ましい。プライマー層56は、接着性を有する層であり、色材受容層の表面に配置される。この場合、画像支持体と接する層はプライマー層となる。プライマー層を備えることで、画像支持体と転写材との密着性、接着強度を向上させることができ、前記接着強度の不足により画像支持体から転写材が剥離する不具合を抑制することができる。プライマー層を設けることにより、プライマー層のSP値と画像支持体のSP値との差SP2を、前記一般式(2)の範囲に制御することができ、密着性、接着強度を向上させることができるため、画像支持体から色材受容層が剥離する不具合を抑制することができる。特に、本発明においては、画像支持体としてPVCやPET−G以外のPET基材を用いる場合、プライマー層を設けることは有効である。
【0281】
プライマー層ついては、前述した[1−6]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0282】
[10]第2の記録物:
本発明の第2の記録物は、
図30に示す記録物73のように、画像が支持される画像支持体55と、画像が記録された記録媒体と、を備える。そして、記録媒体が、本発明の第2の転写材の色材受容層53に画像が記録され、基材シートが剥離されたものである。更に、画像支持体55、色材受容層53および透明シート52が順次積層された積層構造を有しており、画像支持体55のSP値と、転写材の画像支持体55に当接する層(
図1に示す例では色材受容層53)のSP値との差SP2が、下記式(2)の関係を満たすことを特徴とする。
0≦SP2≦1.0 :(2)
【0283】
[9−1]記録物の製造方法(工程2、工程3):
図40は、本発明の第2の転写材を画像支持体55に貼付した積層体84を模式的に示す断面図であり、
図41は、
図40に示す積層体84から基材シート50を剥離して記録物73を得る工程を模式的に示す斜視図である。
【0284】
本発明の第2の転写材は、
図40に示すように、色材受容層53を画像支持体55と対向させるように画像支持体55に貼付して用いる。これにより、画像支持体55、色材受容層53および透明シート52が順次積層された積層体84が形成される。これにより、転写材の色材受容層53に記録された反転画像が画像支持体55に貼付される。
【0285】
その後、
図41に示すように積層体から基材シート50を剥離することにより記録物73を得ることができる。
【0286】
[9−2]画像支持体:
画像支持体ついては、前述した[2−1]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0287】
[9−3]積層構造:
本発明の第2の転写材を利用して得られる記録物は、
図30、
図41に示す記録物73のように、画像支持体55、色材受容層53および透明シート52が順次積層された積層構造を有している。
【0288】
[9−4]転写材と画像支持体との加熱圧着:
前記画像支持体と、前記した第2の転写材とを、前記画像支持体、前記色材受容層および前記透明シートが順次積層されるように当接させた状態で加熱圧着する。これにより、前記画像支持体、前記色材受容層および前記透明シートが順次積層された積層構造を有する記録物を得る。
【0289】
加熱圧着の温度および加熱圧着の方法ついては、前述した[2−2−1]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0290】
[9−5]基材シートおよび離型層の剥離:
前記のようにして得られた第2の記録物は、最後に、
図41に示すように基材シート50を剥離することにより、画像支持体55、色材受容層53および透明シート52が順次積層された構造の記録物73が得られる。この記録物73においては、透明シート52が最上層に位置し、その下層側に位置する色材受容層53に記録された反転画像72を保護している。なお、プライマー層を用いる場合は、画像支持体55は、プライマー層を介して色材受容層53に十分に密着固定される。
【0291】
基材シートを剥離する際、転写材が熱時剥離である場合は加熱圧着後、温度が下がらないうちに直ちに剥離を行うことが好ましい。このような熱時剥離タイプの場合は、
図42に示す分離爪86による剥離機構や、
図43に示す剥離ロール88による剥離が好ましく、転写工程における転写材の供給を「ロールtoロール」で行う場合に生産性の面で適している。
【0292】
一方、利用する第2の転写材が冷時剥離型の場合は、温度が下がっても剥離することができる。このような場合は、ロールやピール機構による剥離だけでなく、手動で剥離することも可能になるため、特にカットシート状に加工したものを用いる場合に、好適に使用できる。なお、「ロールtoロール」剥離を行う際の、剥離角度θはθが0〜165°であり、更に好ましくは0〜90°である。この剥離角度θに設定することにより、プリンタ走行中に、プレカット処理部にて転写材のプレカット処理により分離されたパッチ部分が不用意に剥がれたり、めくれたりすることを防止することができる。
図43において剥離角度θは、図に示す角度であるが、これに限定されない。
【0293】
なお、加熱圧着、剥離工程においては、公知の2本ロールタイプ、および4本ロールタイプのラミネート機をしようしてもよい。4本ロールタイプは2本ロールタイプに比べて、加熱圧着時の熱が伝わりやすく、転写剥離工程が容易に行うことができるため、好ましく使用される。
【0294】
[9−6]両面同時剥離:
両面同時剥離ついては、前述した[2−2−3]で記載したものと同等のものを使用できる。なお、画像支持体の両面に同時に印字物を転写する場合は、
図8に示すように、上面転写材92と下面転写材94のフィルム上の印字位置をずらすことが好ましい。
【0295】
[11−1]第6の製造装置:
図44は、本発明の記録物を製造する製造装置の第6の構成例(以下、「第6の製造装置」ともいう。)を模式的に示す側面図である。
【0296】
[11−1−1]主要な構成:
第6の製造装置は、ロール状で且つ外表に巻かれた第2の転写材1を搬送経路へと送り出す供給部4と、プレカット処理を行うプレカット処理部5、搬送経路へと送り出した転写材1に、色材、水、不揮発性の有機溶媒などを含有する水系インクを直接吐出して、反転画像を記録する記録部6と、を備えている。
【0297】
また、第6の製造装置は、インクが付与された転写材1の中の水分を蒸発させて画像支持体11との密着性を向上させるための乾燥部7と、蒸発した水分によって、機内の結露を防止するファン10と、を備えている。
【0298】
更に、第6の製造装置は、画像支持体11を加熱して転写材1との密着性を向上させるための予備加熱部19と、反転画像が記録された色材受容層および透明シートを画像支持体11に付着させる付着部29と、付着後の画像支持体11のカールを矯正するカール矯正部150、基材シートを剥離する剥離部151、両面印刷を行う際に画像支持体11反転させる画像反転部152、反転画像が記録された画像支持体11を排出して集積する排出部26と、を備えている。
【0299】
[11−1−2]動作:
供給部4は、色材受容層を外表に巻いたロール状の第2の転写材1を、図中の矢印に示す方向に回転させ、転写材1を記録部6へ送り出す。その際、転写材1はガイド板で案内されるとともに、グリップローラ3とニップローラ2で挟持され、平坦な状態で記録部6へと搬送される。
【0300】
供給部4から第2の転写材1の搬送が開始されると、センサ部31により、プレカット処理部5でプレカット処理された被検出部(貫通孔)の検出を行い、色材受容層にプレカット処理が施され、記録部6は、転写材1の色材受容層に反転画像を記録する。その後、転写材1は乾燥部7を通過する。乾燥部7は反転画像を形成するインク中の水などを蒸発させ、ファン10は蒸発した水分を排気する。これにより、色材受容層に反転画像が記録された転写材1が得られる。このとき、マーキング印刷も合わせて行う。
【0301】
一方、画像支持体供給部12は、予備加熱部19に画像支持体11を1枚ずつ供給する。
【0302】
予備加熱部19は、第2の転写材1との密着性を向上させるため、画像支持体11の加熱を行う。更に、レジストガイド14が画像支持体11と転写材1の位置合わせを行う。その後、画像支持体11が転写材1の上に積層される。
【0303】
画像支持体11と、第2の転写材1との積層体は付着部29に搬送される。付着部29は一対のヒートローラ21、22を備えている。前記積層体が一対のヒートローラ21、22の間を通過する際に画像支持体11と第2の転写材1とが加熱圧着される。
【0304】
その後、画像支持体11と第2の転写材1との積層体は、カール矯正部150に搬送され、カール矯正される。更に、転写材1を構成している基材シートおよび離型層が剥離部151で剥離され、巻取りロール24に巻き取られる。また、両面印刷を行う際は、画像反転部152によって画像支持体を反転させ、この画像支持体をレジストガイド14までバックフィードさせる。また同様にしてバックフィードさせた画像支持体に転写された色材受容層に裏面画像の印字を行い、その後、表面印刷と同様に付着部29、カール矯正部150、剥離部151での工程を経て裏面の印字を行う。このような動作を経て、画像支持体11に、第2の転写材1が加熱圧着された記録物を得ることができる。
【0305】
[11−1−3]第6の製造装置とコントローラとの接続:
図45に示すように、製造装置700(画像形成記録装置)は、ネットワーク47を経由してコントローラ41に接続される。但し、この製造装置700は、ネットワーク47を介さずに、シリアル・ポート、パラレル・ポート、または、USBポート等を介してコントローラ41に接続することも可能である。製造装置700は、先に説明したような、プレカット処理部、記録部、乾燥部、プレカット処理部、付着部、カール矯正部、剥離部、画像反転部などを備えるとともに、後述するCPUが記録部に備えられ、プレカット処理部、記録部、乾燥部、プレカット処理部、予備加熱部、および付着部、カール矯正部、剥離部、画像反転部に接続されている。そして、CPUが、プレカット処理部、記録部、乾燥部、プレカット処理部、予備加熱部、付着部、カール矯正部、剥離部、画像反転部の動作を制御するように構成されている。
【0306】
ネットワーク47は、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワークであり、有線、無線を問わない。コントローラ41は、製造装置700を制御するためのコンピュータである。コントローラ41は、制御部44、表示部45、入出力部46、記憶部42、通信部43がシステム・バス48を介して互いに接続される。また、コントローラ41にはデジタルカメラや、画像データ等を読み込むためのドライブ装置等が接続される場合もある。更に、コントローラ41には製版装置等が接続されることもある。
【0307】
制御部44は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を有する。CPUは、記録部、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、演算処理、動作制御を行い、システム全体を制御する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラム、データ等を恒久的に保持する。また、RAMは、揮発性メモリであり、プログラム、データ等を一時的に保持する。
【0308】
表示部45は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)の表示装置等である。
【0309】
入出力部46は、データの入出力を行う部分である。データの入力を行うものとしては、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等があり、これらの入出力部を介して、コントローラ41に対して、操作指示、動作指示、データ入力、維持管理等を行うことができる。また、不図示のスキャナやドライブ装置等と接続され、これらの外部装置からの入力データを制御部44に転送したり、データを外部装置に出力したりする。
【0310】
記憶部42は、データを記憶する装置であり、磁気ディスク、メモリ、光ディスク装置等がある。記憶部42には、制御部44が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(Operating System)等が格納される。また製造装置700の記録部6で記録されるパターンを格納することもできる。通信部43は、コントローラ41とネットワーク47間の通信を媒介する通信インターフェースであり、通信制御装置、通信ポート等を有する。なお、パーソナルコンピュータ等をコントローラ41の代りに用いることも可能である。
【0311】
[11−1−4]制御系:
図46は、
図44に示す記録部6に設けられた制御系の構成を示すブロック図である。ホストPC120から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、記録部の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等、全般的な制御を司る演算処理装置である。CPU100は、受信したコマンドを解析した後、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各々の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング位置(待機位置)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0312】
続いて、一定速度で搬送される転写材にインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するためのセンサ部31(先端検出センサ)で転写材の位置を検出する。その後、転写材の搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各々の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに記録ヘッド制御回路112を介して転送する。これにより、記録ヘッドの各ノズルに設けられた吐出エネルギー発生素子が記録データに従って駆動され、駆動された吐出エネルギー発生素子によってノズルからインク滴が吐出される。吐出されたインク滴は、記録ヘッドに対向する位置にある転写材の色材受容層(インク受容部)へと着弾し、ドットを形成する。このドットの集合によって所望の画像が形成される。
【0313】
なお、上記のようなCPU100の動作は、プログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108が使用される。
【0314】
[11−1−5]第6の製造装置の動作フロー:
次に、
図44に示す第6の製造装置の動作フローを、
図47のフローチャートに従って説明する。このフローチャートは
図46に示すCPU100により実行される。
【0315】
記録部のCPUは、コントローラよりネットワークまたは各種ポートを介して記録データが送信されたか否かを判断し(S101)、記録データが送信されていると判断されると(S101のYES)、供給部からの未記録の転写材の供給を開始させる(S102)。このときセンサー部がプレカット処理部でプレカット処理された被検出部(貫通孔)の検出を行い、センサ部が被検出部を検出していなければ(OFFであれば(S103のYES))、転写材への記録部による記録動作を開始する(S104)。記録動作が終了すると(S105のYES)、乾燥部は、記録部によって記録された転写材から余分な水分を蒸発させるための乾燥処理を行う(S106)。以上の動作は、いずれもセンサ部が被検出部を検出した時点を基準としており、互いに同期をとりながら行われる。なお、プレカット処理部で処理される被検出部は、予め記録媒体に形成しておいたものでもよい。
【0316】
一方、前述のようにCPUに記録データが送信されると(S107のYES)、画像支持体供給部から予備加熱部へと画像支持体が給送される(S108)。この後、記録部で記録された転写材の密着性を向上させるため、予備加熱部によるプレ
加熱処理を行い(S110)、レジストガイドにおいて画像支持体と転写材との位置合わせを開始し(S111)、転写材との位置合わせが完了した時点で(S113)、先のステップへと進む。このとき、S112のステップはYESとなり、画像支持体は転写材上に載り、付着部によって転写材と画像支持体とを接着させる(S115)。この後、剥離部へと搬送されるに伴って、プレカット処理部でプレカットされた部分を基点に、転写材の基材が剥離し、記録物(最終記録物)を排出部に積載させる(S116)。記録物は、色材受容層を挟み込む形で透明シートが付着され、優れた画像品位を実現するとともに、強固な堅牢性を有する。
【0317】
[11−1−6]第6の製造装置により実行される処理:
[11−1−6−1]第2の転写材の位置検出およびプレカット処理:
図44に示す被検出部では、記録媒体1と記録部6との同期をとるため、記録媒体1の位置を検出し、その検出結果に基づいて各部の制御を行なっている。マーキング検出には、反射型または透過型の光センサを用いている。
【0318】
[11−1−6−2]プレカット処理:
本発明の第2の転写材を製造する際には、前記色材受容層を形成した後、前記色材受容層の側から、前記色材受容層と前記透明シートの一部に切り込みを入れるプレカット処理を行ってもよい。プレカット処理は、転写材に反転画像を記録して転写材とし、前記転写材と画像支持体とを接着した後に、前記切り込みを起点にして透明シートを綺麗に切断することができる。従って、均一な厚さの透明シートからなる強固な保護層を形成することができ、色材受容層に形成された反転画像に十分な耐久性が付与される。
【0319】
具体的には、第2の転写材には、必要に応じて、
図48に示すように色材受容層53と透明シート52の一部分に切込み54を形成しておくプレカット処理が施されている。このため、画像支持体に転写材1を付着させた場合、プレカット処理により形成された切込み54を境界にして、透明シート52が切断され、画像記録された部分(画像記録領域)が透明シート52によって覆われる。この透明シート52は均一厚みを有する強固な保護層として機能するため、画像には十分な耐久性が付与されることとなる。また、
図49に示すように基材シートとともに、透明シート52と色材受容層53の一部を剥離する際に、プレカット処理により形成された切込み54で、透明シート52が綺麗に切断されるため、保護層を画像上に精度よく、簡単に転写することができる。
【0320】
ここで、
図48に示すように、プレカット処理により形成される切込み54は、色材受容層53と透明シート52の一部分に行われているものであり、
図50に示すように、離型層51を設けた場合における、離型層51まで切込み54を形成するカット処理とは異なるものである。
【0321】
また、離型層51までカット処理を施してしまうと、インクジェット方式によって画像を記録する第6の製造装置では、カット部にインクが吐出された場合に、
図50に示すように離型層51にインクが吸収されてしまい、記録画像の品質低下を招く。これに対し、
図51に示すように、色材受容層53と透明シート52の一部にプレカット処理を施した場合、切込み54の部分に記録が行われても、インクは色材受容層53に適切に吸収されるのみで、離型層51には吸収されないため、良好な記録画像を得ることができる。このため、
図48に示すように、色材受容層53と透明シート52の一部、または、色材受容層とアンカー層(不図示)と透明シートの一部に切込みを形成するプレカット処理を行うことが好ましい。
【0322】
第6の製造装置においては、インクジェット方式による記録を行うため、色材受容層がインクを吸収する必要があり、吸収性を確保するために色材受容層の厚みを厚くする必要がある。特に色材受容層が空隙吸収型で形成され、色材受容層中に接着性を有する樹脂等が含有されていなかったり、その塗工量が20g/m
2以上となったりした場合には、色材受容層の厚みにより、画像形成領域が不用意に転写材から剥がれてしまうことがある。このため、画像形成領域の剥がれを防止するためにも、前記したプレカット処理を行うことが好ましい。
【0323】
前述した画像剥がれを防止するために、転写前のプリンタ内での転写材の搬送は曲率を持たずに平滑な状態で搬送されることが好ましい。これにより、プリンタ走行中に、画像形成部が不用意に転写材から剥がれることがなく、過酷な使用条件においても、転写画像の各種耐久性に優れたものを作製でき、透明シートを、精度よく、簡単に転写不良がなく、画像支持体上の画像上へ転写させることができる。
【0324】
[11−1−6−3]記録処理:
記録処理ついては、前述した[7−1−6−6]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0325】
図44に示す第6の製造装置においては、転写材1は、グリップローラ3とニップローラ2とに挟持されつつ記録部6へと搬送される間に、ガイド板が存在し、転写材1はそのガイド板の上を通過し案内されて記録部6に入る。記録部6は、K、C、M、Yからなる4つの記録ヘッドを主な構成要素としている。4個の記録ヘッドは、画像データに応じてインクを吐出し、転写材1に設けた色材受容層にインク滴を吐出して画像を形成する。
【0326】
[11−1−6−4]水分蒸発制御:
記録物を作製後、インクを含む受容層表面に、インクが残存すると画像支持体と密着不良となる。加熱処理により受容層表面層に残るインク成分やインクの急激な蒸発により密着性不足や受容層の部分的な気泡残りなどの不具合の可能性がある為、インクジェット記録後、搬送路に効果的な工夫を施した乾燥が必要な場合がある。ヒータ等の特別な乾燥手段を設けずに、十分な長さの搬送路を備える構成として自然乾燥を促しても良い。またその際に蒸発したインク成分による装置内部の気流制御や排気手段が必要な場合がある。
図44に示すように、記録部6によって、第2の転写材上の色材受容層に記録した反転画像を、乾燥部とガイド板の間を通す際に、ハロゲンそれに順ずる熱源及び風、またはそれら二つの組み合わせによる蒸発機能を持つ乾燥部によって、受容層に記録した画像に含まれているインクの主成分である水や若干の揮発性溶剤成分を蒸発させ、蒸発した気体が機内において結露等するのを防ぐために、ファンによって気流及び排気の制御を行う。気流制御を併用することによって、色材受容層表面の飽和蒸気圧も改善されて乾燥が促進される場合もある。上記水分制御によって、付着工程時に色材受容層中のインクの水分量(色材を除く水と不揮発性溶媒等の総量)を、インクの総打ち込み量に対して70%以下、更に好ましくは50%以下に制御する。インクの水分量が70%より多く残る場合には、色材受容層の厚みにも拠るが、色材受容層表面層に残るインク成分やインクの急激な蒸発により密着性不足や受容層の部分的な気泡残りなどの不具合の可能性があるため好ましくない。また、上記インクの総打ち込み量は、前記ヘッドの吐出量により異なるが、上記水分制御が適切に行われるように、予め画像形成時のドット数を間引くなどして、打ち込み量を制限するなどして、適正な打ち込み量に設定することができる。
【0327】
[11−1−6−5]付着工程:
図44に示すように、転写材1上の色材受容層に、記録部6にて画像が形成され、次にその転写材1がガイド板の上に案内されて、2本のヒートローラ21、22から構成される付着部29に移動する。この付着部29では、画像支持体11が枚葉状のシートの形態で、画像支持体供給部12に置かれて、レジストガイド14で位置を補正され、転写材1の搬送に合わせて供給される。画像支持体供給部12は、画像支持体11の転写面へのゴミ付着やピックアップ時によるゴムロールからの汚染を防止するため、下方からの給紙とする。
【0328】
転写材1の画像形成された色材受容層と、画像支持体11のプライマー層とが当接されるように転写材1と画像支持体11を重ねてヒートローラ21、22間に搬送し、加熱することで、画像支持体11と画像形成された転写材1とが接着する。その後、基材シートを転写材1から剥離する。これにより、画像支持体11上に画像の形成された色材受容層と共に透明シートが付着した状態となる。つまり、画像支持体11上には透明シートが保護膜として最上層に位置し、その保護膜の下に画像が形成される。
【0329】
また、転写時の温度は、転写時にインク中の水の急激な蒸発が発生すると密着不良や受容層の部分的な気泡残りが発生するため、転写時の温度をインクの蒸発温度以下の範囲で行うものとする。転写時における色材受容層への加熱は、プラスチックカードなどの厚めの画像支持体側からでなく、主として転写材の基材シート側からの熱伝達によって行われるが、付着工程時の色材受容層の最大到達温度がインクの主成分たる水の蒸発温度を超えないように制御すれば良い。つまり、転写材1と画像支持体11とを接着させる際のヒートローラの表面温度は、水が蒸発して転写材1と画像支持体11との間に気泡ができない温度であればよく、また搬送速度等が速く熱源による加熱時間が十分に取れない場合は熱源と受容部との温度差が生じる場合もあることから、ヒートローラの表面温度は、100℃〜180℃など、通常の水の蒸発温度よりも高くなるように制御しても構わない。また、閉空間による加熱では、圧力上昇による沸点上昇もあるため、プライマー層と透明シート層とに挟まれた色材受容層では、水の蒸発温度は上昇するため、密着性・箔切れ性に考慮して更に高い温度となるように制御してもよい。
【0330】
[11−1−6−6]プレ加熱:
プレ加熱ついては、前述した[7−1−6−3]で記載したものと同等のものを使用できる。
【0331】
[11−1−6−7]カール矯正:
カール矯正は、前述した[7−1−6−5]で記載したものと同等のものを使用できる。カール矯正は、
図44に示すように、カール矯正部150でカールを矯正する。
【0332】
[11−1−6−8]剥離処理:
図44に示すように、付着部29を通過した転写材1のうち、基材シートの部分は、プレカット処理により画像形成領域以外の領域が剥がされて、巻取りロール24側に巻き取られ、また、画像形成された画像支持体11は排出部26に搬送されて一枚ずつ集積されていく。
【0333】
[11−1−6−9]画像反転装置:
画像反転装置は、前述した[5−6−9]で記載したものと同等のものを使用できる。
図44に示すように、画像反転部152で記録物は反転装置により反転され、裏面印字を行うために、反転された記録物は、レジストガイド14までフィードバックされる。これと同時に転写材もフィードバックされ、フィードバック後、記録部、付着部、カール矯正部、剥離部で表面の印字と同様の処理を行い、裏面にも画像が形成される。
【0334】
図30は、記録物73の構成を示すもので、記録物73は、
図30に示すように、画像支持体55と透明シート52の間に色材受容層53を挟み込むように透明シート52が付着されることにより、優れた画像品位と強い堅牢性を併せ持つ。
【0335】
[11−2]第7の製造装置:
次に、本発明の記録物を製造するための製造装置の第7の構成例(以下、「第7の製造装置」ともいう。)を説明する。
【0336】
図52は、第7の製造装置の全体構成を示す模式図である。この製造装置はロール状で且つ色材受容層が外表に巻かれた転写材1を搬送経路へと送り出す供給部4と、搬送経路へと送り出した転写材1に水系インクを直接吐出して記録する記録部6とを備える。更に、第7の製造装置は、転写材1に記録された反転画像に含まれる溶媒を蒸発させて画像支持体11との密着性を向上させる乾燥部7と、蒸発した水分によって、機内の結露を防止するファン10と、記録部によって記録された転写材1と画像支持体供給部12とを有する。更に、第7の製造装置は、レジストガイド14で位置合わせされた画像支持体11を転写材1に接着させるためのプライマー層を転写する転写部13を、転写材1の搬送経路上に備える。この構成が、先に説明した第6の製造装置との主な相違点である。第6の製造装置との共通部分は、第6の製造装置と同じ装置及び同じ制御系構成を有しているので説明は省略する。
【0337】
プライマー層の転写は、前述した[7−2]の第2の製造装置で記載したものと同等のものを使用できる。
【0338】
[11−3]第8の製造装置:
第8の製造装置は、プリンタ部と転写部が分離独立したものである。第8の製造装置は転写材をロール状に加工し、その転写材を、ラインヘッドを搭載したプリンタに搭載して印字を行いロール状で巻取りを行う。その後、「ロールtoロール」の公知のラミネーターによって転写材を画像支持体に加熱圧着(転写)させる。この際、ロール上に印字を行う際にマーキング印刷も同時に行い、転写時にはロール上のマーキング処理をセンサーで読み取り、画像支持体との位置あわせを自動で行い、転写/剥離を行う。
【0339】
図53は、転写材1に印字を行うプリンタ301であり、
図55及び
図54は、転写材を搬送する
図53に示した搬送機構302の模式図を示す。まず、
図55及び
図54に示す巻きだしロール313に、
図19に示すような色材受容層53が外表になるように巻いた転写材1をセットする。転写材1は、搬送ベルト310によって印字ヘッド311に搬送され、反転画像の印字を行い、巻き取りロール314によって印字物として巻き取られる。
【0340】
次に、上記のようにして得た印字済み転写材ロールを、例えば、
図20に示したラミネート機の巻きだしロール201にセットする。画像支持体が供給部206より搬送されると、印字され、且つ、ロール状に加工された転写材は巻きだしロール201より転写部203へ搬送される。このとき、センサー208はマーキングを検知し、画像支持体との位置あわせを行い、転写材は転写ロール204と画像支持体の間に搬送され、転写ロール204により加熱圧着される。その後、剥離ロール207により基材シートを引き剥がすことにより、記録物を形成する。なお、
図21に示す転写材1のように、基材シート50を外側にして、且つ、色材受容層を内側にした内巻きのロールを用いた場合には、
図55に示すような搬送パスで印字を行う。上述の内巻きのロールは色材受容層表面にゴミ付着を防止する効果がある。
【0341】
[11−4]第9の製造装置:
第9の製造装置は、プリンタ部と転写部が分離独立したものである。第9の製造装置は転写材をロール状に加工し、転写材を、ラインヘッドを搭載したプリンタに搭載して搭載して印字を行い、シート状にカットを行う。その後、公知のラミネーターを用い、目視により、画像支持体に転写材を加熱圧着(転写)させる。この際、ロール状の転写材に印字を形成するのと同時に貼り合わせガイドを同時に印刷しておき、貼り合わせガイドに沿って画像支持体を目視で配置し、ラミネート機へ搬送を行い加熱圧着処理および基材シートの剥離処理を行うものである。この製造装置は、
図56に示すように、転写材1の印字後に、カット機構315を設けて転写材1をシート状にカットし、排出部316に排出するものである。その後、
図57に示すように、シート状の転写材1を画像支持体55に手動で位置合わせを行った後、転写部203を構成する転写ロール204に搬送して加熱圧着後、排出部205に排出し、基材シートを手動で引き剥がして、記録物を得る。
【0342】
[11−5]第10の製造装置:
第10の製造装置は、プリンタ部と転写部が分離独立したものである。第10の製造装置は、転写材をカットシート状に加工し、転写材を、ラインヘッドを搭載したプリンタに搭載して印字を行い、その後、公知のラミネーターによって転写させるものである。この際、カットシートの色材転写体に印字を形成するのと同時に貼り合わせガイドを印刷しておき、貼り合わせガイドに沿って画像支持体を目視で配置し、ラミネート機へ搬送を行い、加熱圧着、基材シートの剥離処理を行う。
【0343】
図23は転写材1に印字を行うプリンタ401であり、
図25は、転写材1を搬送する搬送機構を示す。まず、供給部に転写材1をセットする。転写材1は搬送ベルト410によって印字ヘッド311に搬送され、反転画像の印字が行われ、排出部414によって印字物として排出される。次に、印字済み転写材と画像支持体を、
図26に示したラミネート機より加熱圧着し、手動で基材シートを引き剥がすことにより、記録物を形成する。
【0344】
[11−6]第11の製造装置:
第11の製造装置は、プリンタ部と転写部が分離独立したものである。第11の製造装置は、転写材をカットシート状に加工し、転写材を、シリアルヘッドを搭載したプリンタに搭載して印字を行い、その後、公知のラミネーターによって転写させるものである。シリアル型インクジェットを用いる場合は、
図52に示す第6の製造装置のような一体型では、ヘッドは、プリンタ部と転写部の間に速度差を生じる場合があるため、速度差を吸収および調節するためのたるみ部を設ける必要がある。従って、プリンタ部と転写部が独立した分離型は、プリンタ部および転写部における処理を各々の最適な速度で行うことができるため、好ましく用いられる。なお、印字の際にはカットシートの転写材に印字するのと同時に貼り合わせガイドを印刷しておき、貼り合わせガイドに沿って画像支持体を目視で配置し、ラミネート機へ搬送を行い、転写材と画像支持体との加熱圧着、基材シートの剥離処理を行う。
【0345】
図27は、転写材1に印字を行うシリアルプリンタ501であり、供給部513に転写材1をセットする。転写材1は搬送ロール510によって印字ヘッド502に搬送され、反転画像の印字を行い、印字物を排出する。このとき、印字ヘッド502を記録面に対して相対的に移動走査させつつ、順次、転写材1の搬送を行う。印字ヘッド502は、シャフト503に固定され、搬送される転写材1と直角の方向(図中のa、b)に走査させて、
図28に示すノズル511よりインクを吐出することにより画像記録を行う。次に、印字済み転写材と画像支持体を、
図26に示したラミネート機により加熱圧着させ、手動で基材シートを引き剥がすことにより、記録物を形成する。
【0346】
以上説明したように、上記第6〜第11の製造装置によれば、第2の転写材が基材シートに少なくとも透明シートと色材受容層を有している態様の場合に、転写材を画像支持体に付着させる工程において、色材受容層のインク水分量の制御と付着時の温度制御とを行っている。これにより、転写材を構成する透明シートと、画像支持体との密着性が向上し、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐ガス性などの各種耐久性に優れた記録物を提供することができる。
【実施例】
【0347】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例の構成のみに限定されるものではない。なお、以下の記載における「部」、「%」は特に断らない限り質量基準である。
【0348】
(実施例1)
以下の方法により空隙吸収型の色材受容層を備えた転写材および記録物を製造した。
【0349】
[アルミナ水和物分散液の調製]
ベーマイト構造(擬ベーマイト構造)を有するアルミナ水和物A(商品名「Disperal HP14」、サソール製)20部を純水中に添加し、更に酢酸0.4部を添加して解膠処理を行うことによりアルミナ水和物分散液を得た。前記アルミナ水和物分散液におけるアルミナ水和物微粒子の平均粒子径は140nmであった。次いで、前記分散液に対して、ホウ酸0.3部を添加し、ホウ酸添加アルミナ水和物分散液を得た。
【0350】
[ポリビニルアルコール水溶液の調製]
これとは別に、ポリビニルアルコール(商品名「PVA235」、クラレ製)をイオン交換水に溶解し、固形分含量が8%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。なお、前記ポリビニルアルコールは、重量平均重合度が3,500、けん化度が87〜89mol%、SP値は9.4であった。
【0351】
[色材受容層形成用塗工液の調製]
前記ホウ酸添加アルミナ水和物分散液100部に、前記ポリビニルアルコール水溶液27.8部を加え、更にカチオン性樹脂としてポリアリルアミン3.0部を加え、スタティックミキサーにより混合し、色材受容層形成用の塗工液を得た。ポリアリルアミンとしては、融点83.3℃、平均分子量が1,000のポリアリルアミン(商品名「PAA−01」、日東紡製)を用いた。
【0352】
[第1の転写材の製造]
前記混合の直後に、前記塗工液を、基材シートの表面に塗工し、乾燥することにより、空隙吸収型の色材受容層を備えた、実施例1の転写材を製造した。前記塗工液の塗工は、ダイコーターを用い、5m/分の塗工速度で、乾燥後の塗工量が15g/m
2となるように行った。乾燥温度は60℃とした。転写材は、色材受容層を外側、基材シートを内側としてロール状に巻くことによりロール状転写材とした。なお、前記基材シートとしては、PET製で厚さ30μmのシート(商品名「テイジンテトロンフィルム」、帝人製)を使用した。前記色材受容層の厚さは15μmであった。このとき、転写材の基材シートのSP値と色材受容層のSP値の差SP1は1.3であった。
【0353】
上記のようにして得られた転写材に、上述した第1の製造装置(
図12に示す製造装置)を用いて、転写材を画像支持体に加熱圧着させ、その後、前記基材シートを剥離することにより、実施例1の色材受容層付き画像支持体を得た。画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。加熱圧着は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secの条件で行った。前記基材シートを剥離する際の引き剥がし角度は90°とした。色材受容層のSP値と画像支持体のSP値の差SP2は0.2であった。
【0354】
上記のようにして得られた色材受容層付き画像支持体に、上述した第1の製造装置(
図12に示す製造装置)を用いて、顔料インクにより60%ベタ印刷を行い、実施例1の記録物を得た。前記顔料インクの調製法については、後述する。
図12に示した製造装置の記録部6としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を用いた。
【0355】
[顔料インクの調製]
<(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の合成>
(合成例1)
撹拌装置、滴下装置、温度センサ及び上部に窒素導入装置を有する還流装置を取り付けた反応容器にメチルエチルケトン1,000部を仕込み、そのメチルエチルケトンを撹拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸2−ヒドロキシエチル63部、メタクリル酸141部、スチレン417部、メタクリル酸ベンジル188部、メタクリル酸グリシジル25部、重合度調整剤(商品名「ブレンマーTGL」、日本油脂社製)33部、及びペルオキシ−2−エチルヘキサン酸−t−ブチル 67部を混合して得た混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で10時間反応を継続させて、酸価110mgKOH/g、ガラス転移点(Tg)89℃、重量平均分子量8,000の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液(樹脂分:45.4%)を得た。
【0356】
<水性顔料分散体の調製1>
冷却機能を備えた混合槽に、フタロシアニン系ブルー顔料1,000部、合成例1で得た(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)の溶液、25%水酸化カリウム水溶液、および水を仕込み、撹拌及び混合して混合液を得た。なお、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)は、フタロシアニン系ブルー顔料に対して、不揮発分で40%の比率となる量を用いた。また、25%水酸化カリウム水溶液は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A−1)が100%中和される量を用いた。更に、水は、得られる混合液の不揮発分を27%とする量を用いた。得られた混合液を直径0.3mmのジルコニアビーズを充填した分散装置に通し、循環方式により4時間分散させた。なお、分散液の温度を40℃以下に保持した。
【0357】
混合槽から分散液を抜き取った後、水10,000部で混合槽と分散装置の流路を洗浄し、洗浄液と分散液を混合して希釈分散液を得た。得られた希釈分散液を蒸留装置に入れ、メチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して濃縮分散液を得た。室温まで放冷した濃縮分散液を撹拌しながら2%塩酸を滴下してpH4.5に調整した後、ヌッチェ式濾過装置にて固形分を濾過して水洗した。得られた固形分(ケーキ)を容器に入れ、水を加えた後、分散撹拌機を使用して再分散させ、25%水酸化カリウム水溶液にてpH9.5に調整した。その後、遠心分離器を使用し、6000Gで30分間かけて粗大粒子を除去した後、不揮発分を調整して水性シアン顔料分散体(顔料分:14% 酸価110)を得た。
【0358】
フタロシアニン系ブルー顔料を、カーボンブラック系ブラック顔料、キナクリドン系マゼンタ顔料またはジアゾ系イエロー顔料に変更したことを除いては、前記水性シアン顔料分散体と同様にして、水性ブラック顔料分散体、水性マゼンタ顔料分散体、または水性イエロー顔料分散体を得た。
【0359】
<インクの調製>
表2に示す組成(合計:100部)となるように、前記水性顔料分散体及び表2に示す各成分を容器に投入し、プロペラ撹拌機を使用して30分以上撹拌した。その後、孔径0.2μmのフィルター(日本ポール製)で濾過して顔料インクを調製した。なお、表2中の「AE−100」は、アセチレングリコール10モルエチレンオキサイド付加物(商品名「アセチレノールE100」、川研ファインケミカル製)を示す。
【0360】
【表2】
【0361】
(実施例2)
画像支持体をPET−G製のカード(商品名「PET−Gカード」、太平化学製品製)に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0362】
(実施例3)
画像支持体をアクリル樹脂製のカードに変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0363】
(実施例4)
色材受容層を形成する塗工液に加えるポリビニルアルコール水溶液の量を35.7部としたことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0364】
(実施例5)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、ジアリルアミン(商品名「PAS−01ジアリルアミン 融点−80℃、平均分子量1600」、日東紡製)に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0365】
(実施例6)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、カチオン性ウレタン樹脂(商品名「CP−7050 カチオン性ウレタン樹脂 融点190℃」、DIC製)に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0366】
(実施例7)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、別のポリアリルアミン(商品名「PAA−05 平均分子量5000」、日東紡製)に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0367】
(実施例8)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、商品名「PAA−08 平均分子量8000」(日東紡社製)、に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0368】
(実施例9)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、別のポリアリルアミン(商品名「PAA−15 平均分子量15000」、日東紡製)に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0369】
(実施例10)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を120℃に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0370】
(実施例11)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を180℃に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0371】
(実施例12)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を110℃に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0372】
(実施例13)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を190℃に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。なお、画像支持体に加熱圧着された後の色材受容層の細孔容量は28ml/m
2であった。
【0373】
(実施例14)
転写材をカットシートに加工されたもの、色材を水性インク、記録物の製造装置を
図23および
図25に示す第4の製造装置に変更した以外は実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。画像支持体と転写材の加熱圧着は、ラミネート機(商品名「LPD3223 CLIVIA」、フジテックス製)を用いて行った。画像記録装置としては、ラインヘッド搭載カードプリンタ(商品名「CXG−2400」、キヤノンファインテック製)、染料インクとしては、商品名「BJI_P211(Bk、C、M、Y)」(キヤノンファインテック製)を用いた。
【0374】
(実施例15)
転写材をカットシート状とし、転写材の基材シートの厚さを100μm、色材受容層の厚さを20μmとしたこと、記録物の製造装置を、
図23および
図25に示す第4の製造装置に変更したこと以外は実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。画像支持体と転写材の加熱圧着は、ラミネート機(商品名「LPD3223 CLIVIA」、フジテックス製)を用いて行った。また、画像記録装置としては、ラインヘッド搭載カードプリンタ(商品名「CXG−2400」、キヤノンファインテック社製)を用いて、実施例1で使用した顔料インクを搭載して行った。
【0375】
(実施例16)
転写材1をロール状とし、基材シートの厚さを15μm、色材受容層の厚さを10μmとしたこと、記録物を製造する際に、製造装置を
図20および
図23に示す第3の製造装置に変更したこと以外は実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。画像支持体と転写材の加熱圧着は、ロール to ロールで搬送できるDC−10 ラミネート機(ダイニック社製)を用いて行った。また、画像記録装置としては、ラインヘッド搭載カードプリンタ(商品名「CXG−2400(キヤノンファインテック社製)を用いて、実施例1で使用した顔料インクを搭載して行った。
【0376】
(実施例17)
転写材1をカットシート状とし、基材シートの厚さを120μm、色材受容層の厚さを20μmとしたこと、記録物を製造する際は、
図26および
図27に示す製造装置を用いたこと以外は実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。画像支持体と転写材の加熱圧着は、ラミネート機(LPD3223 CLIVIA フジテックス社製)を用いて行った。また、画像記録装置としては、キヤノン社製の(PIXUS Pro9500)を用いて行った。
【0377】
(実施例18)
転写材1をロール状とし、転写材の基材シートの厚さを10μm、色材受容層の厚さを10μmとしたこと、記録物を製造する際は、
図20および
図23に示す第4の製造装置を用いたこと以外は実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。画像支持体と転写材の加熱圧着は、ロール to ロールで搬送できるDC−10 ラミネート機(ダイニック社製)を用いて行った。また、画像記録装置としては、ラインヘッド搭載カードプリンタ(商品名「CXG−2400(キヤノンファインテック社製)を用いて行い、実施例1で使用した顔料インクを搭載して行った。
【0378】
(実施例19)
図18に示す製造装置を用い、画像を印字後に転写材の表面をウレタン系プライマー樹脂で処理し、更に画像支持体の材質をPET「商品名 白ペットカード C−0002」(合同技研社製)したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0379】
(実施例20)
図18に示す製造装置を用いて画像を印字後に転写材の表面をウレタン系プライマー樹脂で処理し、更に画像支持体の材質をPOMとしたことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0380】
(比較例1)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を添加しなかったことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0381】
(比較例2)
画像支持体をPET製カード(商品名「白ペットカード C−0002」、合同技研製)に変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0382】
(比較例3)
画像支持体をPOM製カードに変更したことを除いては実施例1と同様にして、転写材、色材受容層付き画像支持体、更には記録物を得た。
【0383】
(実施例21)
[第2の転写材の製造]
前記混合の直後に、前記塗工液を、積層シート(基材シートと透明シートの積層シート)における透明シートの表面に塗工し、乾燥することにより、空隙吸収型の色材受容層を備えた、実施例21の転写材を製造した。前記塗工液の塗工は、ダイコーターを用い、5m/分の塗工速度で、乾燥後の塗工量が15g/m
2となるように行った。乾燥温度は60℃とした。転写材は、色材受容層を外側、基材シートを内側としてロール状に巻くことによりロール状転写材とした。なお、前記積層シートとしては、厚さ30μmの基材シートと、透明シートとの積層シート(商品名「DCR−320」、ダイニック製)を使用した。前記色材受容層の厚さは15μmであった。このとき、転写材の基材シートのSP値と透明シートのSP値の差SP1は1.4であった。
【0384】
上記のようにして得られた転写材に、上述した第6の製造装置(図に示す製造装置700)を用いて、顔料インクにより60%ベタ印刷を行い、その転写材を画像支持体に加熱圧着させ、その後、前記基材シートを剥離することにより、実施例21の記録物を得た。前記顔料インクは実施例1と同様のものを使用した。
図44に示した製造装置を用い、その記録部6としては、ラインヘッドを搭載したプリントモジュール(商品名「PM−200Z」、キヤノンファインテック製)を、画像支持体としては、塩化ビニル製のカード(商品名「C−4002」、エボリス製)を用いた。加熱圧着は、温度160℃、圧力3.9Kg/cm、搬送速度50mm/secの条件で行った。前記基材シートを剥離する際の引き剥がし角度は90°とした。色材受容層のSP値と画像支持体のSP値の差SP2は0.1であった。
【0385】
(実施例22)
画像支持体をPET−G製のカード(商品名「PET−Gカード」、太平化学製品製)に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0386】
(実施例23)
画像支持体をアクリル樹脂製のカードに変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0387】
(実施例24)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、ジアリルアミン(商品名「PAS−01ジアリルアミン 融点−80℃、平均分子量1600」、日東紡製)に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0388】
(実施例25)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、カチオン性ウレタン樹脂(商品名「CP−7050 カチオン性ウレタン樹脂 融点190℃」、DIC製)に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0389】
(実施例26)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、別のポリアリルアミン(商品名「PAA−05 平均分子量5000」、日東紡製)に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0390】
(実施例27)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、商品名「PAA−08平均分子量8000」(日東紡社製)、に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0391】
(実施例28)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を、別のポリアリルアミン(商品名「PAA−15 平均分子量15000」、日東紡製)に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0392】
(実施例29)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を120℃に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0393】
(実施例30)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を180℃に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0394】
(実施例31)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を110℃に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0395】
(実施例32)
画像支持体に転写材を加熱圧着させる温度を190℃に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0396】
(実施例33)
転写材をカットシートに加工されたもの、色材を水性インク、記録物の製造装置を
図25および
図23に示す第10の製造装置に変更した以外は実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。画像記録装置としては、ラインヘッド搭載カードプリンタ(商品名「CXG−2400」、キヤノンファインテック製)、染料インクとしては、商品名「BJI_P211(Bk、C、M、Y)」(キヤノンファインテック製)を用いた。画像支持体と転写材の加熱圧着は、ラミネート機(商品名「LPD3223 CLIVIA」、フジテックス製)を用いて行った。
【0397】
(実施例34)
転写材をカットシート状とし、転写材の基材シートの厚さを100μm、色材受容層の厚さを20μmとしたこと、記録物の製造装置を、
図25および
図23に示す第10の製造装置に変更したこと以外は実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。なお、転写材への印字は、ラインヘッド搭載カードプリンタ(商品名「CXG−2400」、キヤノンファインテック社製)を用いて、実施例1で使用した顔料インクを搭載して行い、画像支持体と転写材の加熱圧着は、ラミネート機(商品名「LPD3223 CLIVIA」、フジテックス製)を用いて行った。
【0398】
(実施例35)
転写材1をロール状とし、基材シートの厚さを15μm、色材受容層の厚さを10μmとしたこと、記録物を製造する際に、製造装置を
図53および
図56に示す第9の製造装置に変更したこと以外は実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。なお、転写材への印字はラインヘッド搭載ラベルプリンタ(商品名「LXP−5500」、キヤノンファインテック社製)を用いて行い、印字後の転写材をシート状にカットし、画像支持体への転写装置としては、ラミネート機(LPD3223 CLIVIA フジテックス社製)を用いて行った。
【0399】
(実施例36)
転写材1をカットシート状とし、基材シートの厚さを120μm、色材受容層の厚さを20μmとしたこと、記録物を製造する際は、
図26および
図27に示すプリンタ部と転写部が分離独立した第11の製造装置を用いたこと以外は実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。なお、転写材への印字はキヤノン社製の(PIXUS Pro9500)を用いて行い、画像支持体への転写装置としては、ラミネート機 (LPD3223 CLIVIA フジテックス社製)を用いて行った。
【0400】
(実施例37)
転写材1をロール状とし、転写材の基材シートの厚さを10μm、色材受容層の厚さを10μmとしたこと、記録物を製造する際は、
図53および
図20に示す第8の製造装置を用いたこと以外は実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。なお、転写材への印字はラインヘッド搭載ラベルプリンタ(商品名「LXP−5500」、キヤノンファインテック社製)を用いて行い、画像支持体への転写装置としては、ロールtoロールで搬送できる転写装置(商品名「DC−10」、ダイニック製)を用いて行った。
【0401】
(実施例38)
図52に示す第7の製造装置を用い、画像を印字後に転写材の表面を、ウレタン系プライマー樹脂で処理し、更に画像支持体の材質をPET「商品名 白ペットカード C−0002」(合同技研社製)したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0402】
(実施例39)
図52に示す第7の製造装置を用いて画像を印字後に転写材の表面を、ウレタン系プライマー樹脂で処理し、更に画像支持体の材質をPOMとしたことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0403】
(比較例4)
色材受容層の調製に用いるカチオン性樹脂を添加しなかったことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0404】
(比較例5)
画像支持体をPET製カード(商品名「白ペットカード C−0002」、合同技研製)に変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0405】
(比較例6)
画像支持体をPOM製カードに変更したことを除いては実施例21と同様にして、転写材、更には記録物を得た。
【0406】
[評価<吸収性>]
実施例または比較例の色材受容層付き画像支持体に画像を記録した際の、記録面(色材受容層)におけるインクのビーディング(溢れの状態)により、色材受容層の色材(インク)の吸収性を評価した。評価は目視観察により行い、下記の基準で評価した。その結果を表3乃至表5にまとめて示した。
【0407】
○:色材受容層が良好に色材を吸収している
△:色材受容層の色材の吸収は若干悪いが、ビーディングはしていない
×:画像支持体に対し、色材受容層が転写されない
【0408】
[評価<転写・剥離性>]
実施例または比較例の転写材を用いて画像支持体に色材受容層を転写した際の、色材受容層の転写および基材シートの剥離の度合いを評価した。評価は目視観察により行い、下記の基準で評価した。その結果を表3乃至表8にまとめて示した。
【0409】
○:画像支持体に対し、色材受容層が良好に転写されていて、基材シートも良好に剥離する(箔切れがよい)
△:画像支持体に対し、色材受容層が転写されない部分があるか、基材シートが剥離しない(箔切れがわるい)部分がある
×:画像支持体に対し、色材受容層が転写されない
【0410】
[評価<搬送性>]
実施例または比較例の転写材の搬送性を評価した。評価は、実施例または比較例の記録物を作製する各々の画像記録装置または記録物の製造装置において転写材を搬送した際の転写材の状態を目視することによって行い、下記の基準で評価した。その結果を表3乃至表8にまとめて示した。
【0411】
○:画像記録装置または記録物の製造装置において転写材が良好に搬送される
△:画像記録装置または記録物の製造装置において転写材を搬送する際に、転写材に一部しわが入る
×:画像記録装置または記録物の製造装置において転写材がまったく搬送できない
【0412】
[評価<耐光性>]
実施例または比較例の記録物について、耐光性試験を行った。記録物をアトラスフェードオメーター(条件:波長340nmにおける照射強度0.39W/m
2、温度45℃、湿度50%)に投入し、100時間後にBkインク画像の光学濃度を、光学反射濃度計(商品名「RD−918」、グレタマクベス製)を用いて測定し、下記式(A)より残存OD率を算出し、下記の基準で評価した。その結果を表3乃至表8にまとめて示した。
【0413】
残存OD率=(試験後のOD/試験前のOD)×100%・・・式(A)
○:残OD率が90%以上
△:残OD率が60%以上90%未満
×:残OD率が60%未満
【0414】
【表3】
【0415】
【表4】
【0416】
【表5】
【0417】
【表6】
【0418】
【表7】
【0419】
【表8】