(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓋のつまみを下に向けて水平な状態を保ったまま蓋を支持する目的の蓋置き器具であって、平面方向から見て同じ中心点を持つふたつの円弧状支持部材を円弧の中心点を通る中心線に対して対称になるように配置し、ふたつの円弧状支持部材を正面方向から見て水平に配置し、ふたつの円弧状支持部材の配置幅のうち少なくとも使用者からみて手前側にある円弧状支持部材の配置幅を、蓋のつまみを持った手を上方から下方へと通過させることができる幅とし、次にふたつの円弧状支持部材を支える支柱部材を配置し、その次に支柱部材下部を固定して蓋置き器具の変形防止と安定化に貢献する台座部材を配置し、台座部材を手のひらにのせられるほどの大きさにしたことを特徴とする蓋置き器具。
蓋のつまみを下に向けて水平な状態を保ったまま蓋を支持する目的の蓋置き器具であって、曲面を持った蓋を支えるときに、接する部分が複数の点になり、それらの点が同一円周上に並び、実質的に円弧で支えることとほぼ同義になるふたつの多角形状支持部材を、平面方向から見て多角形状支持部材に内接する円の中心点を通る中心線に対して対称になるように配置し、ふたつの多角形状支持部材を正面方向から見て水平に配置し、ふたつの多角形状支持部材の配置幅のうち少なくとも使用者からみて手前側にある多角形状支持部材の配置幅を、蓋のつまみを持った手を上方から下方へと通過させることができる幅とし、次にふたつの多角形状支持部材を支える支柱部材を配置し、その次に支柱部材下部を固定して蓋置き器具の変形防止と安定化に貢献する台座部材を配置し、台座部材を手のひらにのせられるほどの大きさにしたことを特徴とする蓋置き器具。
台座部材を木または金属またはプラスチックから削り出して作り、台座部材に支柱部材の受け穴を設け、支柱部材を台座部材に差し込んで固定したことを特徴とする、請求項1記載または請求項2記載または請求項3記載の蓋置き器具。
台座部材をプラスチック成型または金属ダイカスト成型によって作り、台座部材に支柱部材の受け穴を設け、支柱部材を台座部材に差し込んで固定したことを特徴とする、請求項1記載または請求項2記載または請求項3記載の蓋置き器具。
金属製丸棒材をリング状に曲げ加工したものを台座部材とし、支柱部材と台座部材を溶接で固定したことを特徴とする、請求項1記載または請求項2記載または請求項3記載の蓋置き器具。
直線状の金属製丸棒材を2本または直線状の金属製丸棒材の両端を曲げてコの字状に加工したものを2本用いて台座部材とし、支柱部材と台座部材を溶接で固定したことを特徴とする、請求項1記載または請求項2記載または請求項3記載の蓋置き器具。
側面方向から見て、支持部材から連続して形成される支柱部材を、イチョウ葉の形状のような雰囲気を持たせて、支柱下方部の奥行きが支持部材の奥行きよりも小さくなるように変形させることにより、使用者の手前側にある支柱部に手が触れにくくなり使い勝手が向上したことを特徴とする、請求項1記載または請求項2記載または請求項3記載の蓋置き器具。
側面方向から見て、支持部材と、支持部材に連続するように形成された支柱部材とによって構成される全体形状が略T字状であることにより、使用者の手前側にある支柱部に手が触れにくくなり使い勝手が向上したことを特徴とする、請求項1記載または請求項2記載または請求項3記載の蓋置き器具。
【背景技術】
【0002】
鍋の蓋置き器具に関する従来例を見ることで本発明の主体が明確になるので、調査できた範囲内の従来例を示す。
【0003】
鍋の蓋置き器具としては、従来例1である特開2007−190341にて代表されるような、V字形状のくびれ部を持ったものが多数出願されている。V字形状のくびれ部であれば、どんな大きさの蓋やつまみであっても、V字のどこか適当な位置に止まってくれる、というような安易な記述をかなり見かける。蓋の支持体を全体的に見ると、およそM字形状であることが多い。
【0004】
図1は、従来例1特開2007−190341にて示された3枚の図の内、第2番目の図である。従来例1は板材を用いているが、全体的に似たようなのM字形状をステンレスワイヤー材で作ることもできる。またV字形状のくびれ部を持った全体的にM字形状のステンレスワイヤー部材を垂直方向に対して30度ほど傾けて、各々を4cmほど離して4個連続して配置し、4個の蓋を同時に置くことができるようにした収容スタンド、というような製品もある。このように鍋の蓋を置くための器具には、V字形状のくびれを持ったものや、全体的にM字形状のデザインを採用したものが多い。しかしそれらのほとんどが、蓋をほぼ垂直あるいは斜めに傾けて立てるように置く方式であるので、加熱調理中に一時的に蓋をとってそのようなスタンドに置くと、蓋の内側に付着した水滴や油滴が重力によって流れ出し、蓋の下方から垂れ落ちてしまうことになる。そのため、垂直や斜めに立てかけられた蓋から垂れ落ちる水滴や油滴を受けるために、蓋スタンドに受け皿を付けました、というような内容の出願も多く見られる。そして実際にそのような受け皿付きの蓋縦置き方式の製品が多種販売されている。
【0005】
加熱調理中は味見や味付けの必要があるので、途中で蓋をとることが多い。適切な蓋置き器具を持っていない人は、片手で蓋のつまみをつかみ、水滴が垂れないように蓋の内側を上に向け、残る片手で味見や味付けをがんばるか、あるいは蓋の内側を上に向けて持った後に、蓋の水平を保ちながら、まな板の上などにそっと蓋のつまみを置こうとがんばるか、ということになる。そして後者は熱い蓋の縁に手や腕が触れて、アチチ、となることがほとんどである。つまみの高さは、低いものでは2cmほど、高いものでも3.5cmほどしかないので、そのわずかなすき間から安全に手を抜き取ることは非常に難しいのである。
【0006】
煮物などをしているときに、蓋を静かに斜めに傾けながら開けようとすると、蓋の内側に付着していた大量の水滴は大半が鍋の中に戻るように流れ落ちるので、その後に蓋をひっくり返して内側を上に向けて水平に保持していれば、蓋の縁から水滴が落ちることはほとんどない、ということを私達は経験的に知っている。熱い蓋をひっくり返して持った後に、残った水滴が落ちないようにそのままの水平を保ちながら蓋をのせて、熱い蓋の縁に触れないように手を抜き取ることができるようなコンパクトで良質な蓋水平置き用の蓋置き器具が必要とされているのであるが、そのようなものを市場で見た経験はない。
【0007】
蓋の水平置きを考えている従来例として初めに、最も単純な、2本の直線状部材を突き出しておいて、そこに蓋を置く、というアイデアの例を示す。従来例2特開平09−266863がそれである。
図2は特開平09−266863にて示された6枚の図の内、第2番目の図である。2本の直線状の長い腕をガスレンジの前の壁から水平方向手前に突き出させるように配置したもので、腕の上部には滑り止めが付いている。図示されている蓋の直径が普通サイズの20cmくらいだと仮定すると、腕の長さは25cmから30cmほどと推測される。とても大きなものであり、また壁面固定用なので、食卓などへ持ち運んで使うことはできない、という欠点がある。
【0008】
ガラス製の蓋は球面の一部のような曲面を採用していることが多い。そのような曲面を持った蓋を、つまみを下にして置いたときには、実質的に曲面を2点で支持することになるので、置かれた蓋はグラグラと不安定になる。しかし、2本の直線状部材が平行にそして水平に配置されているのであれば、落下するというようなことはない。単に、グラグラして嫌だな、と感じる程度である。
【0009】
従来例2は、2本の平行な直線状部材で蓋を支持するタイプであったが、壁固定式で持ち運ぶことができない、という欠点があった。その欠点を取り除き、持ち運ぶことができるようにした、というようなものが従来例3特開平10−211111にて示されている。
図3は特開平10−211111にて示された4枚の図の内、第4番目の図である。2本の平行な直線状部材で蓋を支持する、というところは従来例2と同様であるが、持ち運べるようにしている、という点が異なっている。
【0010】
成人男子の手指の幅(親指を含まずに、人差し指から小指までの4指の付け根外側を測定した値)は8cmから9cm程度である。8cmより小さいと少し手が小さい人、10cmでは相当に手が大きい人、というような感じである。成人女子は成人男子よりも平均的にその値は小さい。
【0011】
図3にて示す従来例3は、土台となる板材に2枚の板を立て、その2枚の板が倒れないように斜めの板で補強した構造となっている。立てられた2枚の板の上端部が蓋をのせるための2本の平行な直線状部材となっている。蓋のつまみを持った手が、立てた2枚の板の間を前後に通過できることが条件となるので、その空間の幅は10cm程度であれば成人男子でもほぼ支障なく機能する。そのようにすると、従来例3は、ほぼ等角投影図法で描かれているので図より推測すると、垂直に立てられた2枚の板の間隔が10cm程度、垂直に立てられた2枚の板の高さが22cm程度、土台となる板の幅が45cmほどで奥行きが15cmほど、それに補強の斜め板を2枚加えたような構造物となる。その構造物を運搬用の段ボール箱に入れるとしたら、段ボール箱の内側寸法はどれくらいになり、その内側部分の収容容積はどれくらいになるのであろうかを算出してみると、幅45cm奥行き15cm高さ22cm、容積14.85リットルの箱に入る、ということになる。2リットルのペットボトルを7本入れられるような数値である。このような大きな構造物をキッチンや食卓の上に常時置いておくのは難しく、また流し台の下などに収納することも難しい。土台板の幅が広く設置面積が大きすぎ収容容積が大きすぎる、ということが従来例3の大きな欠点である。そして厚い板材で全体が構成されているのでどこを持っても気楽に持ち運びができる、というものではなく、重くて取り扱いがやっかいという欠点もある。また従来例2とも共通する欠点であるが、2本の平行な直線状部材で蓋を支持するというところにも問題がある。ガラス製の蓋は球面の一部のような曲面を採用していることが多い。そのような曲面を持った蓋を、つまみを下にして置いたときには、実質的に曲面を2点で支持することになるので、置かれた蓋はグラグラと不安定になり好ましくない。
【0012】
球面の一部のような曲面を持った蓋を2本の平行な直線で支持するとグラグラして落ち着かない、という欠点は致命的な欠点ではないが、2本の直線が平行ではなくV字状に構成された場合には、置いたはずの蓋が滑り落ちる、という問題が発生する可能性がある。従来例4特開2002−51922にてその問題点を説明する。
【0013】
図4は特開2002−51922にて示された5枚の図の内、第2番目の図である。蓋を置く部分を上方から見るとおよそM字形状であり、全体を側面方向から見るとおよそS字形状に構成されている。特開2002−51922の中に、『上下3段の水平辺とこれらの水平辺を連結する後方垂直辺からなるS字状の側辺部を両側に配し』という記述があるので、M字状の上面部分は側面から見て水平に配置されている。つまみが小さくてつまみの近辺が平面であるような蓋を置くのであれば、
図4にて示されたような状態で水平に置けることは理解できる。しかし、つまみの近辺が球面の一部であるような曲面を持ったガラス製の重い蓋などを置いた場合には、蓋は水平にならず、V字状に開いた方向に倒れこむように傾いてしまう。これは摩擦がなかったらそのままV字の拡がり方向に向けて滑り落ちていく初期状態を示すものである。
【0014】
本件出願人は従来例4に示されたような試作品を作って実験した。
図4にて示された構造体は、蓋のつまみをつまんだ手指をV字状くぼみの手前側から差し込むようにして使用するので、側面から見てS字状の構造の上側空間の高さを作業に支障がないように10cmほどと仮定すれば、S字状の下側空間も高さおよそ10cmとなる。ほぼ等角投影図法で描かれているので、図示された比率を採用して全体の構成を推測すると、およその全体寸法は幅20cm、奥行き13cm、高さ20cm程度となり、上側M字形状の中央V字の奥行きはおよそ10cm、V字の拡がりの角度は40度、V字の奥の曲げ部半径は1cm程度となる。これを比較的曲げやすい直径3mmのアルミ製丸棒材で作り、横棒1本を接着剤で固定した。着脱自在とされる2本の横棒は実験に不要なので再現しなかった。その試作品に、およその数値が直径17cm、重さ280g、つまみの細い部分の直径が3cm、曲面がR20cmであるガラス製の蓋をのせたところ、蓋は水平にはならず、V字の拡がり方向に向けて倒れ込んだ。摩擦の力でかろうじて止まっていたが、構造体にわずかな振動を与えただけで蓋は前方へと滑り始め、落下した。従来例4特開2002−51922では直径6mmから8mm程度のステンレス製の丸棒材を想定しているような記述があるが、丸棒材であれば直径3mmでも直径6mmでも直径8mmでも、丸棒材と蓋の曲面とが接するところは点であり、丸棒材の太さに関係なく落下の危険性がある。上面のM字部分を水平ではなく、奥に10度ほど傾けることで、この落下の危険性を取り除くことは可能であるが、それでは特開2002−51922の『上下3段の水平辺とこれらの水平辺を連結する後方垂直辺からなるS字状の側辺部を両側に配し』という基本部分が崩れてしまうという問題が発生する。この矛盾を解決する方法は何かあるだろうが、いずれにせよ
図4にて示されているような構造体をそのままの形で商品化すると、曲面を持ったガラス製の重い蓋をのせたときに危険である。
【0015】
V字の拡がり方向への滑落を防ぐには、V字部分を含むM字部分を水平に配置するのではなく、少なくとも10度できればそれ以上の角度をもって配置するほうが良い。そして、そのような考えのもとに出願したのではないかとも思われるものが従来例5特開2011−161183である。
図5は特開2011−161183にて示された2枚の図の内、第1番目の図である。上面部が水平方向からおよそ30度傾いている。この例が、蓋を水平に置こうとしていないのは明らかであるが、従来例4との比較にもなるので考察する。従来例5特開2011−161183の中に、『つまみ部の首径が異なってもV字形くぼみ部の適当な地点にスムーズに挿入できる。』という記述がある。図面や文章中に具体的な大きさや形状を示すものはないが、蓋のつまみをつまんだ手指を出し入れするのには10cmほどの高さが必要である、という基本から考えて、従来例5の支柱部の高さをおよそ10cmと仮定すると、コの字形をした安定脚部はおよそ幅10cm奥行き10cmの大きさ、蓋置き部の傾斜角はおよそ30度、蓋置き部の左右腕部の長さは11.5cmくらい、底面から腕部の先端までの高さはおよそ16cmほどと推測される。V字形くぼみ部の先端にある円弧の半径は1cmほどで、Rの中心点はコの字形安定脚部の中心点に一致すると考えられる。
図5はほぼ等角投影図法で描かれているので、V字形くぼみの開口部幅は全幅の約3分の1、およそ3.3cmほどである。
図5に描かれたような首径の小さいつまみを持った蓋であるならば、まさに
図5のように落ち着くであろうことが理解できる。しかし、たとえば首径が3.2cmであるガラス製の重い蓋をそこに置こうとしたらどうなるか、と考えてみると危険性が見えてくる。
【0016】
従来例5特開2011−161183には『ゆるやかなV字形のくぼみ部』と記述されているので、ゆるやかさによっては、3.3cm幅の開口部に挿入された首径3.2cmのつまみは、開口部から1cmも入らないところで止まってしまうこともある。『V字形くぼみ部の適当な地点』がすべて好ましい地点であるとは限らない。極めて不都合な安定性のない地点に挿入され止ってしまうこともある。その場合、軽量を特徴とする蓋置き台と、ガラス製の重い蓋(たとえば直径17cmのガラス製蓋で280g程度、直径21cmのガラス製蓋で500g程度)を含めた重心の位置はほぼ蓋の中心真下に来る。その位置はコの字をした安定脚部の端部に極めて近い位置であって、蓋や蓋置き台に不注意に触れただけで倒れてしまう危険性がある。従来例5の斜めに配置された蓋置き部を水平に曲げ直しただけでは、蓋を水平に安定して支持できるコンパクトな器具を作ることはできない、ということが分かる。そしてV字形のくぼみ部というものが万能ではないということも分かる。
【0017】
従来例1のところで書いたことだが、鍋の蓋を置くための器具にはV字状のくびれを持たせたものや全体的にM字形状のデザインを採用しているものが多い。しかしつまみを下にして蓋を水平に置こうとすると、V字やM字を安易に採用するわけにはいかない。角度を持った2本の直線を設ければ、どんなサイズのつまみでもどこかに収まるだろう、というような安易な考え方をしてしまうと、従来例4のような角度の場合にはわずかな振動でも滑り落ちてしまう危険性があり、従来例5のような角度の場合にはV字形くぼみ部の入り口付近で止まってしまい、不注意でわずかに触れただけでも軽い置き台ごと転倒してしまう危険性がある。転倒を防ぐには、土台部分をかなり大きくしなければ対応は難しく、器具が大型化してしまうことになり不都合である。V字形のくぼみは一見すると万能のようであるが、つまみの形状の違いや直径の違い、あるいは蓋の曲面形状の違いなどにうまく対応できないことがある。蓋を立てて置くタイプの場合にはV字でも問題はほとんど発生しないが、蓋をひっくり返して水平に置くタイプの場合には、V字で対応できる範囲は思いのほか限られることになるので注意が必要である。
【0018】
しかしV字形を採用した出願は多く、従来例6特開2005−296558もそのような出願のひとつである。
図6は特開2005−296558に示された6枚の図の内、第3番目の図である。この従来例6は、厚い円形の板材を上方から皿状に削り出して凹部を作り、そこにV字の溝を刻んだようなもの、と思われる。特許出願の主体はその皿部分であって、皿部分の下側に脚や土台を付けて持ち運びができるようなタイプにしたり、皿部分の背面に棒材のようなものを付けてそれを壁に固定させることで壁取り付けタイプにもすることができる、というような記述がされている。
【0019】
多くの特許出願は権利範囲を広く取ろうとするためか、あいまいな表現を多用し、大きさや形状を具体的に記述することが少ない。この従来例6特開2005−296558もあいまいな表現が多く、図もあいまいであって形態を理解することがとても難しい。『円錐形で中心部が薄い皿型』と記述されているが図を見ても何が円錐形なのか理解することはとても難しい。『V形の溝がハの字に形成』とう表現も理解に苦しむ。使用状況を示した図がないので、蓋の大きさやつまみの大きさなどとの比較も難しく『皿』と呼ばれている部分の全体形状が把握しにくい。斜視図もあいまいでとても理解しにくい。主として理解の参考となるのは
図6の断面図と
図7の平面図である。このふたつの図はほぼ同じような尺度で描かれているので、およそのつじつまが合う。そして『切れ目にハの字の角度を持たせた』、『鍋の取っ手部分をV型のハの字溝部分に挟む』、『取っ手をはめるV型の溝の耳をハの字に角度をつける』、『蓋の取っ手を挟め蓋の安定を確保した』というような表現から、出願人が取っ手と呼んでいる蓋のつまみを、断面がハの字形状である部分にはめ込む仕様であることが想像できる。一般的な蓋のつまみは、蓋に接している側の首径が細く、手でつまむ側の直径が大きくなっていることが多い。しかし実際の商品は多種多様で、蓋に接している側の首径が3cmほどで、その直径のままが高さ1.5cmほどまで首部が続き、その先のつまむ部分が直径4cmから4.5cmほどの円盤状に大きく拡がっていて、2本の指で円盤部を引っ掛けるようにして持てるようにしたものなどもある。そのような直径が突然大きく変化するつまみを持った蓋は、従来例6のような特定のハの字形状で挟んで安定を確保することはできないのであるが、従来例6特開2005−296558の出願人はそのようなつまみがあることを想定していないと思われる。
【0020】
図6は従来例6特開2005−296558の正面断面図である。従来例6の出願人は、断面形状がハの字形状を有するつまみを、正面断面図のハの字形状に合致させて安定を確保するようである。そのように考えると、正面断面図のハの字の上方の狭い部分に、つまみの首径の細い部分が合致するような様子を考えれば良さそうである。たとえばつまみの首径の細い部分が3cmであるとすれば、正面断面図のハの字の上方の狭い部分の寸法も3cmと考えて良さそうである。これを従来例6の基準寸法と仮定すれば全体像が見えてくる。ただし従来例6特開2005−296558にて示された6枚の図を見比べると、底面部にも斜めカットのような加工が加えられているようにも見えるが、図に統一感がなく、『円錐形で中心部が薄い皿型』と記述されている部分も含め理解が難しく、皿が最終的にどのような形になっているのかはよくわからない。
【0021】
理解しえた範囲での従来例6の全体像を想像すると、およその数値が、厚さ3cmで直径13cmの円板を、深さ1.5cmのあたりまで断面R15cmほどで皿状に削り出して凹部を作り、その皿に、開口部の幅6cm奥行き7.5cmから8cm開き角度30度のV字形溝を
図7のように垂直に切り出し、次にそのV字形溝の切断面部全体に、仕上げ加工として開き角度35度の面取り作業を施して断面形状がハの字になるように形成したようなものとなる。従来例6特開2005−296558のタイプ別の全体像をおよその数値で推測すると、幅16cm奥行き13cm厚さ3cmの台座に、長さ24cmの支柱を立て、その支柱の上に厚さ3cm直径13cmの皿を配置したものが、持ち運びが可能な台座タイプである。壁付けタイプの寸法は、壁面から皿の先端までが24cmほどと推測される。
【0022】
市販されている鍋の蓋に付いているつまみの高さは、低いもので2cmほど、高いもので3.5cmほどである。そのような高さのつまみが付いているアルミ製の平らな蓋を、従来例6のような厚みのある皿状の蓋置き器具に置くと、つまみが皿の厚さの中にもぐってしまい、次につまみを取り出そうとしたときに、つまみを持つことが簡単ではなくなってしまうという欠点がある。
【0023】
ここまでは2本の平行な直線状部材で蓋を支持する例(従来例2、従来例3)や、V字形状やM字形状に係る例(従来例4、従来例5、従来例6)について述べてきた。次にC字形状に係る例について述べ、その後に3点支持の例、4点支持の例について述べる。
【0024】
図8は従来例7特開平09−238855にて示された6枚の図の内、第1番目の図であって、
図9は第2番目の図である。特開平09−238855の出願人は『上部を水平にU字状に曲げて形成した支持部』という具合に記述しているが、
図8を含む全ての図を見る限り支持部はC字形状に見えるので、本件出願人はこれをC字形状に係る類に分類し、今後C字形状と呼ぶことにする。
図8は、蓋を支持する部分をおよそC字形状に形成し、C字形状部から連続して支柱部を形成し、支柱部の下部に磁石などの吸着部材を配して、ガスレンジの上などに立てようとしたものである。大きなC字形状部が蓋を支持するタイプなので、曲面を持ったガラス製の蓋などを置いてもグラグラすることはなく安定する。仮にU字形状であった場合には、曲面を持った蓋を置いたときには実質的に2点支持に近くなるのでグラグラすることになる。
【0025】
従来例7はC字形状部から連続して支柱部を形成しているので、C字形の開口部下部に斜めに支柱の一部が割り込んできてしまい、蓋のつまみを持った手を上方からあるいは前方から差し込もうとするときにジャマになる。従来例7特開平09−238855の出願人は、部品点数を減らしコストを下げようとしてそのような1本棒の曲げ加工を選択したようであるが、そこが欠点につながっている。
図9から分かるように、鍋の蓋の直径が普通サイズの20cm程度とすると、全体の高さがおよそ50cm以上もあり、C字形状部の外径も15cmほどはありそうである。とにかく全体として大きく、高さがある。
図9の状態からお玉を取ろうとして、不注意で、まだフックにかかったままなのにお玉を引っ張ってしまったりすると、下部の吸着磁石だけでは支えきれず転倒してしまう危険性がある。加熱調理中の鍋の近くで、倒れるかもしれない器具の上に、重いガラス製の蓋を置くことはとても危険である。
【0026】
そのような倒れる危険性は恐らくないであろうと思われる蓋水平置き用の出願例がある。従来例8特開2002−336142がそれである。
図10は特開2002−336142にて示された10枚の図の内、第1番目の図であり、
図11は第5番目の図である。特開2002−336142の出願人も、図面から見る限り明らかなC字形状のものを、U字形状であるような記述をしているが、本件出願人は従来例7のときと同じようにC字形状に分類されるべきものと考え、今後C字形状と呼ぶことにする。
【0027】
図10と
図11にて示されたように従来例8は、鍋の直径を20cm程度とすると、外径30cm程度の大きなC字形状を持つ底部に、高さ30cmほどの3本の支柱を立て、それらの支柱の上端部に底部と同程度の大きさを持つC字形状の部材を配置している。C字形状の開口部の幅は、鍋が通過できるように少なくとも20cmほどが必要とされる。C字形状の開口部から測った奥行きは26cmほどである。そしてC字形状開口部の開きの角度は、C字状円弧の中心から70度ないし80度ほどではないかと推測される。上方のC字形状部の内側に、上方のC字形状部から連続するような作り方で1段落ち込んだような位置にひょうたん形状の支え部を形成している。1段落ち込んだ内側のひょうたん形状の支え部に小さな蓋を置くことができ、大きな四角形状の蓋などは外側のC字形状の支え部に置くことができる、というようなことが記述してある。従来例7がいかにも倒れそうな内容であったのに比べると、この従来例8特開2002−336142は倒れることはまずないだろう、という安心感がある。蓋を水平に置く、ということだけを考えるのであれば使いやすそうである。しかし何せ大きすぎる。そして大きすぎる割に、フライパンを振るときにはジャマになるのではないか、というような狭さを感じてしまう欠点がある。組み立て式にできるとも書いてあるが、それも簡単そうではなく強度も低下して、バラバラになった部品は紛失しやすい。運搬や収納、洗浄などが大変そうである。
【0028】
C字形状に係る第3の例として、従来例9特開平10−211111を示す。この特開平10−211111は、特開平10−211111にて示された4枚の図の内、第4番目の図を掲げて従来例3としていたものである。従来例3は2本の平行な直線状部材を用いた例として示していたが、特開平10−211111の出願人はC字形状で蓋を支持する従来例9のような案も示している。
【0029】
図12は従来例9であって特開平10−211111にて示された4枚の図の内、第1番目の図である。
図12で分かるとおり、単に円筒の一部を切り欠いた形状であり、底部も上部もC字形状になる。従来例7や従来例8はC字形状部を針金状の部材を曲げ加工して形成したものであったが、従来例9はC字形状部を円筒を切り欠くという方法または長方形の板材を丸めるという方法で形成している。
図12にて示された従来例9のC字形状開口部の幅を仮に10cmほどとすると、元の円筒の直径は15cmから17cmほど、高さは13cmから16cmほどと推測される。C字形状開口部から測った製品としての奥行きは13cmから15cmほどと推測される。そしてC字形状開口部の開きの角度は、C字状円弧の中心から70度ないし80度ほどではないかと推測される。
図12で描かれたような比率で推測すると、厚さは1cmほどとなる。厚さ1cmとなると陶器製や木製などが考えられるが、長方形の板材を丸めるという方法を採用するのであれば、厚さ2mmほどのステンレス板材などを使用することもでき、厚さは薄くすることができる。
図12はとてもあいまいな図であるのでこれ以上の推測は難しい。
【0030】
従来例7や従来例8との違いは、従来例9は全体が単一の面1枚で構成されている、という点である。とっかかりのない大きな面状の部材は、調理中などの濡れた手で持とうとすると滑って持ちにくく扱いにくいという欠点を持つ。その欠点を補おうとして、
図12にて示されたように、取り扱いのために指を入れる穴を設けている。そして針金状のものを用いたものに比べると、大きな面積を持つ面状の部材を用いた器具は重くなるという欠点もある。材料というものは、1kgあたり幾ら、というような取引がなされることが多い。同じような機能を持つ同じような大きさのものを作った場合、同じ材質の材料を用いるとしたら、針金状の材料を用いたものよりも面状の材料を用いたほうが何倍も重くなり材料代も高くなる。従来例9は大きな面積を持つ面状の部材を用いたのでコストが高くなるという欠点を持つ。また2リットルペットボトルよりもずっと太いような略円筒形の物体が食卓に置かれた場合などには、相当な威圧感がある。そして単に円筒を切り欠いただけの形状なので、機能美のようなものがほとんど感じられず、キッチンスペースや食卓上に置いておくにはデザイン的にどうしても違和感があり、これはおもしろい、これはユニークだ、これはちょっとかわいいね、使っていて気持ちがいいね、というような何か文化的な製品を使っているときに得られる満足感のようなものを感じることができない。
【0031】
従来例9の出願人は同じ出願の中で、C字形状を採用した別の作り方を示している。
図13は従来例10であって特開平10−211111にて示された4枚の図の内、第3番目の図である。針金状のものを用い、上部にC字形を形成し、底部に円形を形成している。軽量化したもの、というような記述がある。たしかに全体が面で構成されている従来例9に比べ軽量化されていると思えるし、面とは異なって針金状部材のどこにでも手をかけられるのでどの方向からでも扱いやすい。しかし軽量化を図ると転倒の危険性が増すと考えてのことだろうが、底部の外径を、上部C字形状部の外径のおよそ1.5倍ほどに大きくして安定を確保している。従来例9に比べ全体の大きさは大きくなっているが、スッキリとした透明感が出て、威圧感はなくなった。
【0032】
針金状のものは強度に不安があり、底部までC字形状にすると、拡げられてしまったり、ゆがめられて平らに置けなくなったりする恐れがあるので、従来例10では底部を円形にして強度を上げ安定化を図っている。そしてC字形の上部と円形の底部との中間にC字形の補強部材を入れて強度を向上させている。中間部が補強され、底部が大きな円形ということもあり、従来例8に匹敵するような安心感がある。従来例9と従来例10は同じ出願人によるものであるから、上方のC字形状の大きさは同じような寸法を採用していると思われる。そうすると上部C字形状部の外径寸法は15cmから17cmほどで開口部の幅は10cm程度、底部円形部の直径は上部C字形状部の外径のおよそ1.5倍以上に描かれているので、およそ20cmから23cmほどという全体イメージになる。直径20cmから23cmという数値は普通サイズの鍋の直径に近く、高さは鍋よりも高いほどである。キッチンや食卓の脇役である蓋水平置き用の蓋置き器具としては、直径も高さも大きすぎる数値であり欠点である。しかも
図13に示されたようなものを作ろうとすると、10ヵ所以上の溶接が必要となる。溶接は針金を高温状態にするのでゆがみが発生しやすく、底部円形部材に複数か所の溶接したときに円形部材がゆがんでしまい、平らに置けなくなってしまうのではないか、という不安もある。ゆがみを発生させないで複数か所の溶接をおこない、安定した品質で量産するには高度な技術が必要である。高度な技術は高価なことが多い。従来例10には大きすぎるという大きな欠点と、部品点数が多くて溶接箇所も多く高価になるという欠点がある。
【0033】
出願人が調査した範囲において、加熱調理中の熱い鍋の蓋をひっくり返して持ち、蓋の裏側を上に向け、つまみを下に向けて、水平な状態を保ったままどこかに置こう、という考えのもとに出願されたものの中で、最も古いものが従来例11公開実用昭60−24252である。
図14は公開実用昭60−24252にて示された5枚の図の内、第2番目の図である。従来例11は支柱の頂点部と、支柱に取り付けられたV字形状の腕部の先端に配置されたゴム部材のふたつの頂点との都合3点で、
図14のように蓋を水平に支持するものである。一般的に物体を支持するには、3点支持が優れている、ということを私達は学んでいる。平面的な物体でも、曲面を持った物体でも、およそどんな形状の物体であっても、3点で支持すればおよそ物体は安定する。そこまでは理解できるのであるが、
図14の従来例11は高さが高い割りに台座が小さく、台座部には吸着させるような工夫もされていないので、とても倒れやすい。また部品点数が多く、部品の形状も様々なので高価になる。図示された蓋を普通サイズの20cmほどのものと仮定してみると、土台となる台座の大きさが20cmほど、そして高さは50cmから55cmほどにもなる。そして上部に置かれた蓋の中心点が台座の中心点からはずれているので、重いガラス製の蓋などを置くととても危険であるという欠点を持つ。
【0034】
3点支持の例の次に、4点支持の例を示す。従来例12特開2004−267717がそれであって、
図15は特開2004−267717にて示された2枚の図の内、第2番目の図である。発明の名称は『鍋の蓋を置ける容器』となっていて、
図15では容器部分にお玉が入っている様子が描かれている。お玉の代わりに固形燃料を入れて火をつけ、蓋の代わりに鍋を置いた図を想像するとよく分かるのであるが、これは居酒屋などで昔からよく見かける陶器製やアルミ製の固形燃料コンロそのものの形状ではないのか、と思う。脚部の長さが少し長く描かれているようではあるが、
図15にて示されたような断面形状とほとんど同じような断面形状を持った固形燃料コンロが従来より広く売られている。鍋を置くための公知である固形燃料コンロに『蓋が置けます』と主張しているような出願であって、4本の脚部を持ったおもちゃのテーブルをひっくり返して『蓋が置けます』という主張をして出願するのと同じような雰囲気がある。特許を受けることができる 『発明』は、今までにない 『新しいもの』でなければなりません、と経済産業省のホームページに書いてあったが、従来例12特開2004−267717の内容は公知のものなので、特許を受けることができるものではないように感じる。他の従来例との比較のため、大きさを推測しておく。少し広がったU字形のようにくり抜かれた空間の中央部付近を手指が通過することになるので、そのあたりの幅を10cmほどとすると、底面部は1辺が10cmほどの正方形、4本の支柱部先端の外側寸法は1辺が16cmほどの正方形、高さは17cmほどである。このような物体を箱に入れて運搬しようとすると、箱の内側寸法は幅16cm、奥行き16cm、高さ17cmほどが必要であり、容積に換算すると4.352リットルもあり、2リットルペットボトル2本分ほどになる。運搬や保管にそのような大きな容積が必要となるものを、コンパクトである、という人はいない。
【0035】
コンパクト、という言葉に具体的な大きさの定義のようなものはないが、一般的にはおよそ手のひらに乗る程度のものを示す言葉ではないだろうか。コンパクトカメラなどがそのようなイメージである。
【0036】
従来例のコンパクト度合いを比べてみるために、従来例に示されたものを運搬用の段ボール箱に入れるとしたら、段ボール箱の内側寸法はどれくらいになり、その内側部分の容積はどれくらいになるのであろうかを算出し考察してみる。各従来例について、その都度推定寸法を書いてきたので、それをもとに計算する。なお『8cmから10cm』のように幅を持って記述したものについては、小さいほうの数値を用いて計算する。
【0037】
従来例1や従来例5は蓋を水平に置くタイプではないので計算しない。従来例2は壁取り付けタイプであるので計算しない。比較するのは、蓋を水平に置くタイプで、持ち運びができるタイプである。本件出願人が調査した範囲では以下に示す9件がそのようなものである。
【0038】
従来例3は幅45cm奥行き15cm高さ22cm、容積14.85リットルの箱に入る。
従来例4は幅20cm奥行き13cm高さ20cm、容積5.2リットルの箱に入る。
従来例6は幅16cm奥行き13cm高さ30cm、容積6.24リットルの箱に入る。
従来例7は幅15cm奥行き15cm高さ50cm、容積11.25リットルの箱に入る。
従来例8は幅30cm奥行き26cm高さ30cm、容積23.4リットルの箱に入る。
従来例9は幅15cm奥行き13cm高さ13cm、容積2.535リットルの箱に入る。
従来例10は幅20cm奥行き20cm高さ13cm、容積5.2リットルの箱に入る。
従来例11は幅20cm奥行き20cm高さ50cm、容積20リットルの箱に入る。
従来例12は幅16cm奥行き16cm高さ17cm、容積4.352リットルの箱に入る。
最も小さなものでも2リットル以上あり、大きなものでは20リットル以上もある。2リットルのペットボトルと同じような収納容積が必要なものを手のひらに乗せたとき、普通の人はそれをコンパクトなものであるとは言わない。本件出願人は、従来例の中で最も小さな数値2.535リットルの半分以下の数値を目指している。そこまで小さくすれば全ての従来例に比べて十分にコンパクトであるといえる。
【0039】
近年は家族で食卓を囲み、食卓の中央に電気コンロを置いて鍋を置き、加熱調理したものを皆で取り分けて食事する、というような場面が増えている。たとえば電気式の鉄板焼き器を使うとすると、四角形の鉄板焼き器の蓋は非常に大きく、長辺の長さが35cmほどもあり取り扱いが大変である。畳の部屋でコタツにはいり、家族4人で鉄板焼きを楽しむ、肉をいれ野菜などを入れ、蓋をしてしばらくするとジュージューと音がしてくる。さあ食べましょう、とママが蓋をあける。しかしその大きな蓋を食卓上に置くスペースはない。ママもコタツから出たくない。キッチンの流し台まで蓋を持っていくのはいやだ。どこか手の届くあたりに、水滴を落とさないように水平を保ったまま蓋を置きたい。そんなときに欲しいと思うのが、コンパクトで持ち運び取り扱いが簡単な蓋水平置き用の蓋置き器具である。どの方向からでも気楽にヒョイと手にとって簡単に扱えるコンパクトな蓋水平置き用の蓋置き器具を、コタツに入っている自分の横のちょっと後ろあたりに置いておけば、熱い蓋をひっくり返した状態のまま水平に置けるので、手をヤケドすることもなく、食卓から離れる必要もない。食事が済んだらコタツから出て、大きな蓋は流し台に運び、コタツの横に置いてあった蓋置き器具は、足元のジャマになるので食卓の上に置けば良い。コンパクトな蓋置き器具であれば、食卓の上に常時置いてあってもさほど気にならない。コンパクトな蓋置き器具であれば、キッチンで調理中でも、手のひらほどのスペースさえあればどこにでも置けるので、コンロの横やまな板の上などに色々なものが散らばって置いてあったりしても、片手でサッとそれらを少しよけるだけで簡単に置くことができる。使い終わったら流し台の下の空間に放り込んでおくこともできるし、コンロ脇などの引き出しの中にしまうこともできる。本件出願人は、公知の技術ではできなかったそんな扱い方ができる蓋水平置き用の蓋置き器具を提供する。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0045】
本発明の実施例の説明には、本発明用の用語などが出てくるので、初めに各部の名称や呼び方などの用語を示す。
図16は、実施例1の平面図である。
図16の平面図においては、左の円弧状支持部材A、右の円弧状支持部材B、蓋置き器具全体の奥行きD、蓋置き器具の幅W、ふたつの円弧状支持部材の配置幅w1、円弧状支持部材の奥行きd1、円弧の中心点P、中心点Pを通る中心線L、などの用語を使う。支持部材とは、蓋の面に接触して直接的に蓋を支持する部材をいう。支柱部材とは、上部で支持部材に結合し、下部で台座部材に結合する部材をいう。
図17は、実施例1の正面図である。
図17の正面図においては、左の支柱部材A1、右の支柱部材B1、卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH、支柱下部の曲げ部分r1、などの用語を使う。
図18は、実施例1の側面図である。
図18の側面図においては、台座部材の高さh1、支柱部材下部の奥行きs1、の用語を使う。実施例1においては、円弧状支持部材の奥行きd1と支柱部材下部の奥行きs1は同じ数値である。
作図にあたってのおよその設定は、蓋置き器具全体の奥行きDを8cm、蓋置き器具の幅Wを12.3cm、ふたつの円弧状支持部材の配置幅w1を10cm、円弧状支持部材の奥行きd1を6.4cm、卓上面から円弧状支持部材上部までの高さHを10cm、台座部材の高さh1を1cm、支柱部材下部の奥行きs1を6.4cmとした。使用する金属製丸棒材の直径はおよそ3mmである。高さ1cmの台座の厚みの中心あたりへ金属製丸棒材を差し込むように描いているので、金属製丸棒材の最下部と卓上面とのすき間はおよそ3.5mmである。従来例との大きさ比較で基準となるのは、ふたつの円弧状支持部材の配置幅w1である。それは、蓋のつまみを持った手を上方から下方へと通過させるのに十分な幅は10cmほどである、として従来例の大きさ推測の基準としていた数値である。
実施例1の製品を箱に入れるとしたときの箱の内寸は、幅12.3cm、奥行き8cm、高さ10cmとなる。そしてその容積は0.984リットルであり、従来例の中で最も小さな数値2.535リットルの半分以下を達成している。
【0046】
図16の平面図において、左の円弧状支持部材Aと右の円弧状支持部材Bは、円弧の中心点である点Pを通る中心線Lに対して左右対称の位置に配置されている。
図17の正面図において、左の円弧状支持部材Aと右の円弧状支持部材Bは水平に配置されている。左の円弧状支持部材Aは左の支柱部材A1にて支えられており、右の円弧状支持部材Bは右の支柱部材B1にて支えられている。
図17においては、円弧状支持部材と支柱部材が連続して形成されているように描いているが、円弧状支持部材と支柱部材を別体で作って結合させてもよい。左の支柱部材A1は支柱下部の曲げ部分r1あたりで内側に曲げられて、台座部材1に差し込まれ固定されているように描かれている。右側も図に示すように同様である。
図17の正面図において、曲げられた支柱部材の下方部分に水平部分があるように描かれているが、水平部分が必ず必要という訳ではない。作図にあたって便利だから水平部分を描いている。水平部分を描くと、台座に穴をあけて支柱を横から差し込む、というような表現で簡単に状況が理解できる。斜めに差し込める台座と斜めに差し込める支柱を用意すれば、斜めに差し込むようなイメージのデザインができる。当然、上から差し込むようなイメージのデザインもできるが、それらはここでは図示しない。r1あたりで内側に曲げられて、と記述したが、
図17のように丸みを与えた曲げ方のほか、多角形状などに曲げてもよい。
実施例1での製品イメージは、円弧状支持部材と支柱部材がステンレス製の丸棒材で連続して形成された一体ものであって、台座部材1が厚みのある木製の円板、と考えると理解しやすい。台座部材1である木製円板に左右両側から丸穴があけられていて、その穴に支柱部材A1と支柱部材B1の端部が差し込まれ固定されている、というイメージである。ただし台座部材1の材質や形状を限定するものではない。台座部材1はプラスチック成型やアルミニウムダイカスト成型、亜鉛ダイカスト成型などによる成型品でもよい。厚みのある台座部材をプラスチック成型によって得ようとすると、上下2分割のパーツを接合することが多い。接合されるパーツの内部空間にオモリを封入すれば、小さな台座部材でも倒れにくくなる。真ちゅうなどの金属切削加工品である台座部材を用いれば重くて倒れにくい。あとで図とともに説明するが、金属製丸棒材の曲げ加工品でも台座部材を作ることができる。その場合は、台座部材と支柱部材は溶接で固定される。また金属板材をプレス加工して台座部材を作ることもでき、支柱部材を溶接できる。上面を凸面鏡のようにメッキ加工した台座部材を採用すれば照明器具や窓、天井などがゆがんで映り込み美しい。台座部材の形状も円形に限定されるものではなく、四角形、6角形、8角形や他の形状を採用することもできる。幾何学的な形状ではない形状たとえばハート型などを採用してもよい。円は作図に便利なので使用しているにすぎない。台座部材が木製やプラスチック製などであった場合には、金属製の支柱部材を固定する方法は接着剤を用いて固定するのが一般的であるが、あえて接着剤を用いずに、差し込み取り外し自在にして組み立て式とするのもよい。そのような組み立て式とすれば、輸送コストを下げることができる。実施例1は部品点数は3点、部品の種類は2種類であって、簡単な構成であり安価に製造することができる。実施例1は、前からでも後ろからでも使えて利便性が高い。
【0047】
図18は、実施例1の側面図であり、左右側面図とも同じである。
図18で分かるように、実施例1は、側面方向から見て、支柱部材が直線状で平行に配置されているが、支柱部材が直線状であることや平行に配置されていることが条件ではない。少しカーブした形状なども採用できる。実施例1においては、円弧状支持部材の奥行きd1と支柱部材下部の奥行きs1は同じ数値である。
【0048】
図19は、実施例1の参考図である。球面の一部のような曲面を採用しているガラス製の蓋2を、実施例1の蓋置き器具にのせた状態を正面方向から描いた図である。左右の円弧状支持部材に落ち込むようにガラス製の蓋2が支えられているのが分かる。斜線を施された楕円3は、高さ7.5cm、幅8.5cmほどに描かれており、つまみをつまんでいる手指全体のおよその大きさを表している。ふたつの円弧状支持部材の配置幅w1が10cm、卓上面から円弧状支持部材上部までの高さHが10cmほどあれば、
図19にて示すような空間的ゆとりがあり、手指の動きに支障はない。実際に使用するときには、手指は左右の支柱部材に軽く触れるのが普通であって、それにより蓋は自然と蓋置き器具の中心に導かれることになる。
【0049】
図20は、実施例1の参考図である。球面の一部のような曲面を採用しているガラス製の蓋2を、実施例1の蓋置き器具にのせた状態を左側面方向から描いた図である。斜線を施された楕円4は、高さ7.5cm、幅8.5cmほどに描かれており、つまみをつまんでいる手指全体のおよその大きさを表している。楕円4の右側の斜線部分は手首部分5である。実施例1が、手指全体を前後方向に関して自由に動かせるものであることを表している。
図20の状態からつまみをはなし、手指全体を使用者の手前方向、
図20では右方向に抜けば、熱い蓋の縁に触れることはなく安全である。
【0050】
図21は、実施例1の参考図である。球面の一部のような曲面を採用しているガラス製の蓋2を、実施例1の蓋置き器具にのせた状態を正面方向から描いた図である。蓋2が右方向にずれている様子が描かれている。初めからこのように蓋を置くことはないが、蓋を置いた後に、不注意で手が左側から蓋に当たってしまった場合などには、
図21のようにずれた状態になる。蓋に加えられた不注意な力は、蓋をずらすようには働くが、実施例1の蓋置き器具には直接的には働かないので、蓋置き器具が右側に向かって倒れるようなことはない。
【0051】
図22は、実施例1の参考図である。球面の一部のような曲面を採用しているガラス製の蓋2を、実施例1の蓋置き器具にのせた状態を左側面方向から描いた図である。蓋2が使用者からみて奥の方向、
図22で左方向にずれている様子が描かれている。初めからこのように蓋を置くことはないが、蓋を置いた後に、不注意で手が手前側から蓋に当たってしまった場合などには、
図22のように奥側にずれた状態になる。蓋に加えられた不注意な力は、蓋をずらすようには働くが、実施例1の蓋置き器具には直接的には働かないので、蓋置き器具が奥側に向かって倒れるようなことはない。
V字状のくぼみ部であれば蓋のつまみが適当な位置に落ち着く、といったような考え方をした従来例では、つまみは蓋置き器具に常時接触していることが多いので、蓋に加えられた不注意な力がそのまま蓋置き器具に伝わってしまい、転倒しやすかった。V字状の支持方法で、蓋が滑って逃げられるのは奥から手前にかけての力のみであり、そのような方向の力が不注意で蓋にかかることはほとんどない。主な不注意の力は、手前方向からと左右方向からのものであり、V字状のくぼみはその3方向からの力をまともに受けてしまう。
【0052】
台座の大きさを手のひらにのるような大きさにしてしまったら、大きな重い蓋をのせたときなどに倒れてしまうのではないか、という不安を抱くかもしれないが、常識的な取り扱いで実施例1の蓋置き器具に蓋をのせた場合には、蓋の重心が台座からはずれることはなく、蓋を安定して置くことができる。そして蓋を置いた後に不注意で蓋に多少の力が加わったとしても、
図21や
図22で分かるように、蓋のみが滑るように動くだけなので、実施例1の蓋置き器具ごと倒れるということはない。ただし、蓋が吹っ飛ぶような強烈な力が加われば、文字どおり蓋は吹っ飛んでしまうのが常識である。不注意で蓋に多少の力が加わっても、という範囲においては蓋置き器具ごと倒れるということはない。実施例1の蓋置き器具では台座部材1を直径8cmの円板としているが、後で述べる実施例5や実施例6では直径6cmほどの円板を採用している。本件出願人は、実施例1と実施例5と実施例6に示したものを実際に3点試作して、実際に2ヶ月間ほど使用している。実施例1の台座部材は直径8cmの円板で安定感がある。実施例5と実施例6に示した台座部材は下方の周囲もR加工を施してあり、実際に接地する部分は直径5cmほどしかなく小さすぎるのではないかというふうにも見える。それでも、試作した3点を2ヶ月間ほど使用しているが、いずれの試作品においても蓋を倒したことは1回もない。常識的な注意をして扱う範囲においては、直径5cmほどの接地部分しかない円形状の台座の場合でも十分であり、本件出願の蓋置き器具が簡単に倒れることはない。
絶対に倒れないように、というような考え方にはまってしまうと底部を大型化させるか固定式にするなどしかなく、蓋置き器具の進化は止まってしまう。いくら進化しても絶対に落ちないというような飛行機がないように、持ち運びが簡単で絶対に倒れない蓋置きというものも今はまだない。本件発明も公知の従来例に比べれば十分に進化し小型化しているものであるが、絶対に倒れない蓋置き器具というものではない。
【実施例2】
【0053】
図23は、実施例2の平面図である。実施例1の円弧状支持部材AとBの代わりに、多角形状支持部材6と多角形状支持部材7を配置したものである。
図16で示したような蓋置き器具の幅W、蓋置き器具全体の奥行きD、卓上面から支持部材上部までの高さHなどの基本寸法に変更はないので、収容容積は実施例1と変わらない。円弧状支持部材の場合は、曲面を持った蓋を支えるときに、接する部分は円弧線になるが、多角形状支持部材の場合は、曲面を持った蓋を支えるときに、接する部分は複数の点になり、それらの点は同一円周上に並び、実質的に円弧で支えることとほぼ同義になる。カクカクした形状が好きとか、台座を多角形状にしたときには支持部材も多角形状のほうがデザイン的に合っている、というように思ったときに多角形状支持部材を採用すればよい。
図23は、内外にギザギザしていない正多角形の一部を用いた例を示しているが、多角形とはそのような正多角形のみを指す言葉ではない。いわゆる『星形』と呼ばれるような、内外にギザギザした多角形も含む。内外にギザギザした多角形も曲面を持った蓋を支えるときに、蓋と接する部分が複数の点になり、それらの点は同一円周上に並ぶので、実質的に円弧で支えることとほぼ同義になる。また内外にギザギザした多角形の頂点部と谷部に丸みを付ければ波型のようなギザギザ多角形となる。多角形状支持部材は、円弧状支持部材と置換してもほぼ同じ機能を有する部材である。
【実施例3】
【0054】
図24は、実施例3の平面図である。実施例1の台座部材1の代わりに、リング状台座部材8を配置したようなものである。リング状台座部材8は直径3.5mmの金属製丸棒材を外径8cmほどに丸めたものである。
図16で示したような蓋置き器具の幅W、蓋置き器具全体の奥行きD、卓上面から支持部材上部までの高さHなどの基本寸法に変更はないので、収容容積は実施例1と変わらない。曲げられた支柱部材の下部水平部分を延長し、左の支柱部材端部と右の支柱部材端部が接したように描いている。実施例3のような蓋置き器具の場合は、支柱部材端部の互いが接した部分が溶接されているのがよい。支柱部材とリング状台座部材8の接した部分が溶接されて完成体となる。リング状台座部材8を上にして支柱部材の水平直線部を下にして、
図24とは上下関係が入れ替わった状態にしてもよい。接地部分が円であるか2本の直線であるかの違いである。設置面積を小さくしたい目的で、2本の直線の長さを短くしたいのであれば、
図17で示したr1部分を大きな曲げとすればよい。曲げの方法は、円弧状の曲げ方法でも、多角形状の曲げ方法でもよい。あるいは接地部分を2本の直線ではなく4個の点にしたいのであれば、支柱部材の水平直線部の適宜の箇所に曲げ加工を加え、下方を向いたV字状やU字状の小さな足部を形成すればよい。またリング状台座部材の外形を小さくして、前後に配置された支柱部材の水平直線部の間にはまるようにして、リング状台座部材と支柱部材の水平直線部を平面上に並べて、接する2点を溶接する方法を取ってもよい。台座部材とは、支柱部材の下方部分と結合する部材であって、支柱部材の変形を防止し、蓋置き器具をがたつかないように安定して置けるようにする部材をいう。円弧状支持部材を支える支柱が2本の構成である場合は、2本の支柱部材の下方部分が広がった縮んだりゆがんだりすることを防ぎ、左右の円弧状支持部材の水平を保つのが台座部材である。台座部材がないと、収納するために押し込まれたときや子供にいたずらされたときなどに、支柱部材がゆがんでしまい、接地底面部の安定が崩れてしまう。実施例3のような溶接で固定された製品は堅牢であり、洗浄しやすく衛生的である。また
図24にて示したような、支柱部材の下部水平部分にある程度の長さがあって、左の支柱部材端部と右の支柱部材端部が溶接されて一体化してるものにあっては、木製円板などの底部に深さ3mmほどの溝を2本彫った台座部材を用意して、2本の溝に接着剤をつけ、支柱部材の下部水平部分を溝に押し込んで接着固定して、安定した蓋置き器具とすることができる。
図24にて示したような、支柱部材の下部水平部分を延長して左の支柱部材端部と右の支柱部材端部が溶接され一体化されたようなものは、リング状台座部材や木製溝付き円板などの台座部材や、次に述べる2本のコの字状台座部材や2本の棒状台座部材などを採用することができるので、利用範囲が広い。
【実施例4】
【0055】
図25、は実施例4の側面図であり、左右側面図とも同じである。台座部材9は、直径3.5mmの金属製丸棒材を外幅を8cmほどにしてコの字状に曲げ加工したものとして描いてあり、この外幅8cmほどという数値が蓋置き器具の奥行きD4になる。実施例1と実施例4の外側基本寸法は同じであり、収容容積も同じである。
【0056】
図26は、実施例4の平面図である。側面から見てコの字状の台座部材9は2本あり、曲げられた支柱部材の水平下部が延長され、左の支柱部材端部と右の支柱部材端部が接して溶接されたように描かれている。左右の支柱部材が直接結合して一体化していて、コの字状の台座部材9は支柱下方部の形状の安定化に貢献している。左右の支持部材と左右の支柱部材のすべてを1本の金属製丸棒材から曲げ加工して作ることもできる。その場合は溶接箇所が1箇所となる。実施例4のような蓋置き器具の場合は、支柱部材端部の互いが接した部分が溶接され、支柱部材と台座部材9の接した部分が溶接され固定される。実施例4では、台座部材9の長い水平直線部が支柱部材の水平直線部の上に位置する構成としているが、台座部材9の長い水平直線部が支柱部材の水平直線部の下に位置する構成としてもよい。その場合、台座部材9の曲がった脚部をなくしてもよい。実施例4では、台座部材9の長い水平直線部が支柱部材の前後側にはみ出ている構成としているが、それを短くして、台座部材9の長い水平直線部が前後の支柱部材の間におさまる構成としてもよい。台座部材の大きな役目は、支柱部材の変形を防止し、蓋置き器具をがたつかないように安定して置けるように貢献することである。実施例4のような、溶接で固定された製品は堅牢であり、洗浄しやすく衛生的である。
【実施例5】
【0057】
図27は実施例5の斜視図である。実施例1の台座部材は直径8cmほどの円板であったが、その8cmをもっと小さく6cmほどにして、蓋置き器具全体の奥行きを狭め、収容容積を更に小さくしたものである。
図27の斜視図で分かるように、全体的にとてもなめらかなデザインである。実施例1から実施例4までが、丸、四角、直線、といったような幾何学的で単純なデザインイメージであったのとは異なり、側面方向から見てイチョウ葉の形状のような雰囲気を持ったやわらかいイメージとなっている。3面図からだけで、このようなやわらかいイメージは想像しにくいので3次元的に図示した。
【0058】
図28は実施例5の平面図である。実施例5の作図にあたってのおよその設定は、蓋置き器具の幅W5を13.2cm、ふたつの円弧状支持部材の配置幅w5を10cm、円弧状支持部材の奥行きd5を6.4cm、台座部材の直径を6cmとした。使用する金属製丸棒材の直径は3mmである。円弧状支持部材10の奥行きd5を6.4cmとして説明するが、円弧状支持部材から支柱部材になめらかに連続させる構成であるので、実質的に円弧である部分はそれよりも少し小さい。支柱部材下部の奥行きs5を2.9cmとし、円弧状支持部材10の奥行きd5の6.4cmの半分程度まで狭くした。これにより台座部材を実施例1より小さなものとすることができた。実施例1では蓋置き器具全体の奥行きDは台座部材の直径8cmであったが、実施例5では、円弧状支持部材の奥行きd5が6.4cmであって、台座部材11の直径6cmのほうが小さいので、蓋置き器具全体の奥行きは6.4cmとなる。その分だけ実施例1よりも収容容積が小さくなり小型化の効果が高い。数値的に比較すると、実施例5は幅13.2cm、高さ10cm、奥行き6.4cmであって収容容積は0.8448リットルとなる。数値的に比較すると従来例の最小値が従来例9の容積2.535リットルであって、実施例5の容積は従来例の最小値のおよそ3分の1ほどにまで小さくできたことになる。とても大きな小型化効果があった。
【0059】
図29は、実施例5の正面図である。卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH5はおよそ10cmである。台座部材11を小さくすることができたので支柱の曲げ部分r5を、実施例1のr1に比べて大きくすることができた。支柱の曲げ部分r5を大きくすることで、全体的なやわらかさが向上する。
図29において、垂直である支柱部材の下方部12あたりから円弧状支持部材10にかけて少し拡げるように描いているが、有機的な雰囲気を出すための拡がりであって、拡げることを条件とはしていない。垂直に描かれた支柱部材の下方部12あたりから、そのまま拡げずに上方の円弧状支持部材10に連続させてもよい。
【0060】
図30は、実施例5の側面図であり、左右側面図とも同じである。台座部材の高さh5はおよそ1cmである。
図30で分かるとおり、側面図方向において支柱部材を変形させ、支柱部材下部の奥行きs5を、円弧状支持部材10の奥行きd5よりも狭くすることで、台座部材11の直径を実施例1の台座部材の直径よりも小さくすることができた。このように側面図方向において、円弧状支持部材から連続して形成される支柱部材をイチョウ葉の形状のような雰囲気を持たせて、支柱下方部の奥行きs5が狭くなるように変形させたことにより、正面図における支柱の曲げ部分r5を大きくできたことと相乗して、斜視図のように全体的にとても有機的な雰囲気を持ったやわらかいデザインとすることができた。
【0061】
図31は、実施例5の説明図である。実施例1の側面図と実施例5の側面図を重ねて表示したものである。それに加えて手13を描き、手13が実施例5の側面図に触れない状況を示している。蓋を置いた後、手を手前に引き抜くときに、実施例1では手前側にある垂直な支柱部から完全に手が離れるまで、手を左右方向へと動かすことはできなかった。この、完全に手が離れるまで、というところが、実際に使用してみると少しではあるが不自由さを感じる。
図31で分かるとおり、手前側にある垂直な支柱部には当たるが、下方が狭くなるように曲げられてへこんだ形状の支柱部を持つ実施例5では当たらない範囲で、手を左右方向へと動かすことができる。わずかの差異であるが、使い勝手の良し悪し、という話になると、見た目以上に使い勝手がよくなる。実施例1ではしっかりと手を手前に抜かないと支柱部に触れてしまうが、実施例5では適当に手を手前に抜いても支柱部に触れないようになる。この差は意外に大きい。実施例1に比べさらなる小型化が図れ、使い勝手が向上する。
【実施例6】
【0062】
図32は、実施例6の側面図である。実施例6の作図にあたってのおよその設定は、蓋置き器具の幅を13.2cm、ふたつの円弧状支持部材の配置幅を10cm、円弧状支持部材の奥行きd6を6.4cm、卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH6を10cm、台座部材の高さh6を1cm、台座部材の直径を6cmとした。使用する金属丸棒材の直径は3mmである。これらの基本設定は、実施例5と同じであるので、収容容積も同じである。側面方向から見て、円弧状支持部材と、円弧状支持部材に連続するように形成された支柱部材とによって形成される全体形状が、
図32のように略T字状であるように構成されている。支柱部材下部の奥行きs6は、実施例5の支柱部材下部の奥行きs5の半分ほどになっている。実施例5では適当に手を手前に抜いても支柱部に触れないようになる、と書いたが、実施例6は支柱部に触れない範囲がもっと広がり、使い勝手が向上している。
【0063】
図33は、実施例6の説明図である。
図31と比べると、実施例5よりもっと奥深い位置で、もっと上の位置で手14を横に動かすことができる様子がわかる。
【0064】
図34は、実施例6の斜視図である。
図34で分かるように、円弧状支持部材の弧の中央下部に支柱部材の垂直部分がある。実施例5では、
図28で分かるように、円弧状支持部材の弧の中央下部に支柱部材の垂直部分はない。実施例6では、蓋置き器具の幅が13.2cmであるので、左右の支柱部材の垂直部分の外側幅もおよそ13.2cmである。丸棒材の寸法を引いた内側寸法ではおよそ12.6cmとなる。これは実施例5の支柱部材の垂直部分の内側幅10cmよりも大きい。これは収容容積を決める縦横高さの値が同じであっても、実施例6のほうが、実施例5よりも支柱に触れない範囲が広い、ということを表している。つまみをつまんだ手指をはなして拡げて動かそうとする場合に、幅10cmより大きく拡げても手前に抜くときに支柱に触れない、ということであり、手指の動きの自由度が上がって、蓋置き器具としての使い勝手が向上する。
【実施例7】
【0065】
図35は、実施例7の説明図である。実施例1にて示した台座部材の中央を、上方から円形にくり抜き、底部に肉厚2mmを残して皿状にしたものである。
図35は、それの断面を示した正面図である。蓋置き器具は断面表示としているが、説明用に加えたお玉15と調理用ハシ16は外形を示す線画表示としていて、お玉15と調理用ハシ16が交差する部分についても単純に重ねた状態で描いている。このように台座部材を凹部のある皿状の部材とすれば、調理中の油などが付着したお玉や調理用ハシを凹部に置き、持ち手側部分を円弧状支持部材の弧の内側にそわせて置くことができる。お玉や調理用ハシの持ち手側部分は、円弧の内側に落ち込むようにして支えられるので安定する。断面が円形であるような転がりやすい調理用ハシでも安心して置くことができる。お玉や調理用ハシを立てた状態で置くことができるので、次にそれらを持とうとしたときに持ちやすく便利である。このように円弧状支持部材を持った蓋置き器具の台座部材を凹部のある皿状の部材とすれば、蓋を置かないときには、お玉置きや調理用ハシ置きとしても使うことができるようになる。
【実施例8】
【0066】
図36は、実施例8の平面図である。実施例1の平面図である
図16と比べると分かりやすい。
図16における左の円弧状支持部材Aと右の円弧状支持部材Bを上方に伸ばし、使用者からみて手前側にある支柱部材を取り除いたものである。実施例8の作図にあたってのおよその設定は、蓋置き器具の幅W8を12.3cm、ふたつの円弧状支持部材の配置幅のうち使用者からみて手前側にある円弧状支持部材の配置幅w8aを10cm、 使用者からみて奥側にある円弧状支持部材の配置幅w8bを5.8cm、 台座部材の直径を8cm、使用する金属丸棒材の直径をおよそ3mmとしている。実施例1との違いは、円弧状支持部材の奥行きd8を8.5cmほどに大きくした点と、使用者からみて手前側にある支柱部材を取り除き、使用者からみて奥側にある支柱部材だけで円弧状支持部材を支えている点である。使用者からみて奥側にある支柱部材の位置や形状は実施例1とは違ってくる。円弧状支持部材の奥行きd8を8.5cmほどに大きくしたことで、蓋置き器具全体の奥行きD8が9.3cmほどとなり、収容容積は少し大きくなる。その値は1.1439リットルとなる。従来例の最小値容積2.535リットルのおよそ45%である。容積3分の1とまではいかないが、半分より小さくしたいという初期の目標は達成している。
【0067】
図37は実施例8の正面図である。卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH8はおよそ10cm、台座部材の高さh8はおよそ1cmである。使用者からみて奥側にある支柱部材が配置されている空間の横幅w8bは、5.8cmほどである。5.8cmというような狭い幅は、蓋のつまみを持った成人の手指が上方から通過できる幅ではない。実施例1から実施例7までは、前からでも後ろからでも使うことができた。この実施例8は、前からでも後ろからでも使える、という利便性はなく、使う方向を限定される実施例である。しかし使う方向に限定はかかるものの、得られるメリットは大きい。
【0068】
図38は、実施例8の左側面図である。
図38の右側が使用者側、左側が使用者からみて奥側になる。使用者側には支柱がないので、円弧状支持部材の下側に大きな空間があいているという特徴がある。
【0069】
図39は、実施例8の説明図である。実施例8の蓋置き器具に曲面を持った蓋が置かれていて、蓋のつまみを手17がつまんでいる状況を示している。手17を上方から円弧状支持部材の間を通過させて蓋を置いたところを描いている。この後使用者は手17を手前に引くことは勿論、左右方向にもはずすことができる。実施例1から実施例7までの蓋置き器具では、蓋を置いた後の手をそのまま左右方向へと動かすことはできなかった。実施例5と実施例6はその点を改善したものであったが、いくらかは手を手前に引いて、その後に左右方向に動かさなければならなかった。実施例8は、手前に引く動作なしで左右方向に自由に手を動かすことができる。これは、左右方向から手を入れて蓋を取りにいけるということであり、コタツに入っていて斜め後方あたりに蓋置き器具を置いているときなどに便利である。コタツに入っているときは体の回転が自由でなく、振り向いても、わき腹あたりについてしまったヒジのおかげで、手を前後方向に動かすことができにくくなっている。しかし左右方向にはかなり自由に動く。そのような状況では実施例8はとても使い勝手がよい。
【実施例9】
【0070】
図40は実施例9の背面図である。実施例8の
図37で垂直だった支柱部材を、斜めに配置し、左右の支柱であわせてV字形状にデザインしたものである。実施例9の作図にあたってのおよその設定は、
図40および
図41にて示すように、蓋置き器具の幅W9を12.3cm、ふたつの円弧状支持部材の配置幅のうち使用者からみて手前側にある円弧状支持部材の配置幅w9aを10cm、 使用者からみて奥側にある円弧状支持部材の配置幅w9bを5.8cm、卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH9を10cm、台座部材の高さh9を1cm、台座部材の直径を8cm、使用する金属丸棒材の直径をおよそ3mm、蓋置き器具全体の奥行きD9を9.3cmほど、円弧状支持部材の奥行きd9を8.5cmほどとしている。基本寸法のほとんどが実施例8と同じであり、収容容積も同じであり、部品点数もおなじである。なお使用者からみて奥側にある円弧状支持部材の配置幅w9bの数値を厳密に指定することは難しい。円弧状支持部材と支柱部材は滑らかに連続しているので円弧の終わりあたりをとらえておよその数値としている。実施例8との違いは、正面図あるいは背面図において、垂直水平のラインしかない、といった硬いイメージを、V字形状で特異な雰囲気に変化させたことである。大きさが同じ、機能も同じ、使い勝手も同じであれば、食卓に置いてあるとしたらどっちが素敵、といったイメージが大事になる。幾何学が好きな人は垂直水平が好き、という意見もあるかもしれないが、デザイン的に何か少し変わったものを持ちたいという人は多い。実施例9は、そのようなデザイン的に何か少し変わったものを持ちたいという人のために創られた蓋置き器具である。
【0071】
図41は、実施例9の平面図である。支柱部材下方の接触部分18あたりを溶接することが望ましい。
【0072】
図42は実施例9の説明図である。実施例9の蓋置き器具に曲面を持った蓋が置かれていて、蓋のつまみを手19がつまんでいる状況を示している。
【0073】
実施例8と実施例9において、台座部材の中央に凹部を設ければ、
図35のようにお玉や調理用ハシなどを置けるようになる。実施例8と実施例9において、円板状の台座部材をリング状台座部材に替えてもよい。溶接で固定された製品は堅牢であり、洗浄しやすく衛生的である。
【実施例10】
【0074】
図43は実施例10の背面図である。実施例10の作図にあたってのおよその設定は、
図43および
図44にて示すように、蓋置き器具の幅W10を12.3cm、ふたつの円弧状支持部材の配置幅のうち使用者からみて手前側にある円弧状支持部材の配置幅w10aを10cm、 使用者からみて奥側にある円弧状支持部材の配置幅w10bを5.8cm、卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH10を10cm、リング状台座部材の外径を8cm、円弧状支持部材と支柱部材に使用する金属丸棒材の直径をおよそ3mm、リング状台座部材に使用する金属丸棒材の直径をおよそ4mm、蓋置き器具全体の奥行きD10を9.3cmほど、円弧状支持部材の奥行きd10を8.5cmほどとしている。基本寸法のほとんどが実施例8や実施例9と同じであり、収容容積も同じである。リング状台座部材に使用する金属丸棒材の直径をおよそ4mmとしたのは、単に台座重量の増加を図ったものである。一般的に台座は重いほど倒れにくい。
図43と
図44で分かるとおり、実施例10は、ふたつの円弧状支持部材と2本の支柱部材をすべて一体化したものである。これにより、実施例10の部品点数は2点となり、コスト低下に貢献する。一体化された支持体20とリング状台座部材21は溶接で固定されるので堅牢である。リング状台座部材の代わりに金属板を用いてもよい。凸面鏡のように加工したステンレス板を用いて、支持体を溶接固定した後にメッキ処理を施せばとてもきれいでオシャレな製品となる。実施例10では背面方向から見て支柱部をV字状にデザインした。
【0075】
図44は実施例10の平面図である。
【0076】
図45は、実施例10の説明図である。実施例10の蓋置き器具に曲面を持った蓋が置かれていて、蓋のつまみを手22がつまんでいる状況を示している。奥側にある支柱部材が垂直に対して6度ほどの傾きを持っているのが分かる。角度が付いた分、
図42と比べると奥側が少し迫っているが実使用にはほとんど支障はない。厚みの薄いリング状台座部材を用いているので、
図42と比べると手22の下方にゆとりができる。
【実施例11】
【0077】
図46は、実施例11の正面図である。実施例1のところで、上から差し込むようなイメージのデザインもできる、と記述したので、それを図で示す。実施例1の正面図である
図17と比べるとよくわかるが、支柱部材を大きく湾曲させている。支柱部材を大きく湾曲させると、デザイン的にとてもやわらかくなる。実施例1、実施例5、実施例6のような左右側方から支柱部材を差し込むようなイメージのデザインでも、差し込み部のギリギリまでを大きく湾曲させることでやわらかさが増す。
【0078】
図47は、実施例11の平面図である。
【実施例12】
【0079】
図48は実施例12の正面図である。実施例1の正面図である
図17と比べるとよくわかるが、支柱部材の下方部分の曲げ方を変えただけのデザインである。支柱部材の下部が、直接卓上面に触れるように曲げている。蓋がのっていないときに、矢印23のような力が加わると、実施例1のような支柱部材の曲げ方をしていると支柱部材の下部が直接卓上面に触れていないので、蓋置き器具は力を加えられた方向に回転するように動く。そのような動きをしてほしくない、というのであれば実施例12のような曲げ方を採用してもよい。接地する4点を囲む面積は台座部材の接地面積より増えるので全体的な安定度は増す。実施例5や実施例6においても同じように支柱部材の下方部分の曲げ方を変えてもよい。
【実施例13】
【0080】
図49は、実施例13の正面図である。実施例12における厚みのある台座部材を、厚みの薄いリング状台座部材24に替えたものとイメージすれば分かりやすい。そしてリング状台座部材24を支柱部材下方端部25にのせたようなデザインとしている。リング状台座部材24は卓上面に触れていない。リング状台座部材24は直径3.5mmの丸棒材としている。卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH13は10cmである。
【0081】
図50は、実施例13の平面図である。実施例3の
図24と比べると、リングが強調されたイメージであることが分かる。
【0082】
図51は、実施例13の側面図である。リングが浮いているイメージであることが分かる。
【実施例14】
【0083】
図52、は実施例14の正面図である。実施例1の厚みのある台座部材を、厚みの薄いリング状台座部材26に替えたものとイメージすれば分かりやすい。リング状台座部材26は卓上面に接している。支柱部材下方端部には少し垂直部を作ってある。その垂直部にリング状台座部材26を接するように配置して溶接する。溶接箇所は4箇所である。卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH14は10cmである。
図52では、リング状台座部材26を卓上面に接するように配置しているが、リング状台座部材26を3mmとか4mmとか卓上面から浮かすことができる。6mm浮かせたいというのであれば、支柱部材下方端部にある垂直部の長さを調整すればよい。リング状台座部材を浮かせた場合は、支柱部材下方端部の端面が4箇所卓上面に接することになる。ゴム足などを付けてもよい。
【0084】
図53は、実施例14の平面図である。
【0085】
図54は、実施例14の側面図である。
【0086】
図55は、実施例3の正面図である。実施例3の説明のところで、リング状台座部材を上にして支柱部材の水平直線部を下にして
図24とは上下関係が入れ替わった状態にしてもよい、というような記述をしたので、理解の補助として図示した。卓上面から円弧状支持部材上部までの高さH3は10cmである。下にあるリング状台座部材27と、上にある支柱部材の水平直線部28の上下関係を入れ替える、とイメージするとよい。ただし
図55の中で単純にリング状台座部材27を切り取って上に移動してしまうと、高さが3.5mm低くなってしまう。卓上面から円弧状支持部材上部までの高さをどうしても10cmにしたいのであれば、支柱部材の長さを調整すればよい。
【実施例15】
【0087】
図56は、実施例15の説明図である。実施例15を正面方向から描き、実施例1の
図19にて示したような蓋29と、つまみをつまんだ手を表す楕円30を描いている。楕円30には斜線が施されている。支柱部材31はr15のように大きく曲げられ、支柱部材の水平直線部32はとても短い。2本の直線の長さを短くしたいのであれば、
図17で示したr1部分を大きな曲げとすればよい、とも記述していたので、大きな曲げにして
図56のように図示した。リング状台座部材33は卓上面に接している。
【0088】
図57は、実施例15の平面図である。リング状台座部材33は、直径4mmの丸棒材としている。円の直径が小さくなると貧弱になるので太くした。前後の支柱部材に内接した状態で溶接されている。実施例3のところで、リング状台座部材の外径を小さくして、前後に配置された支柱部材の水平直線部の間にはまるようにして、リング状台座部材と支柱部材の水平直線部を平面上に並べて、接する2点を溶接する方法を取ってもよい、と記述したが、分かりにくいかもしれないので図示した。
【0089】
図58は、実施例15の側面図である。
【実施例16】
【0090】
図59は、実施例16の平面図である。実施例5において、厚みのある台座部材を採用していたものを、厚みの薄いリング状台座部材に替えたような例である。リング状台座部材34は、直径3.5mmの丸棒材として描いている。リング状台座部材34の底部が卓上面に接するようにしている。そして支柱部材の水平直線部を
図59のように曲げて舌状のデザインとしている。右の部材35は1本の丸棒材から作ることができ、接した端部をあらかじめ溶接しておけば閉じた形状となるので、保管中や作業中にゆがみが発生しにくく、保管中の箱から出すときにからみあうことがない。開いた形状の部材は、箱の中に保管しておいて取り出そうとすると、からまって扱いにくく、変形しやすい。左の部材36も1本の丸棒材から作ることができる。右の部材35と左の部材36は直径3mmの丸棒材として描かれている。右の部材35と左の部材36は同じものであるので、量産性がよい。右の部材35と左の部材36をリング状台座部材34の上にのせて4点を溶接して完成する。
図59では、右の部材35と左の部材36が接しているように描いているが、離すデザインにしてもよい。円弧状支持部材と支柱部材を1本の丸棒材から曲げ加工して作り、丸棒材の両側の端部が対面しておよそ接するように曲げ加工しておけば、鋭い切断部に手を触れて嫌な思いをすることがなくなる。端部の溶接はしなくてもよいが、溶接したほうが丈夫で変形しにくく、扱いやすい。
一般的にワイヤー製品と呼ばれる丸棒材を曲げ加工した製品で、切断部をきれいに処理した製品は少なく、大半は機械切断したままの端部を露出させている。それでケガをするということはほとんどないが、切断端部に指が触れたときには、ケガをするかもしれないというような嫌な気がする。実施例13や実施例14においては、丸棒材を切断した端部が露出しているが、あくまでも例示である。ワイヤー製品においては、なるべく切断端部は露出させないほうがよい。
【0091】
図60は実施例16の正面図である。
【0092】
図61は実施例16の側面図である。実施例16の作図にあたっての基本寸法はおよそ実施例5と同じである。収容容積もおよそ同じである。
【実施例17】
【0093】
図62は実施例17の部品の斜視図である。実施例16において、右の部材35と左の部材36はそれぞれを1本の丸棒材から曲げ加工して作ることができ、接した端部をあらかじめ溶接しておけばそれぞれが閉じた形状となる、というような記述をした。実施例16において、右の部材35と左の部材36は直径3mmの丸棒材を曲げ加工したものとして描かれている。右の部材35と左の部材36は同一の部材であって方向を変えて使っているだけである。左右の部材を代表して、今後は左の部材36と呼ぶことにする。左の部材36は、上部に円弧状支持部材を有していて、その円弧状支持部材の両側になめらかに連続するように支柱部材が形成されている。そして左の部材36の下方部分は、
図59でわかるように、台座部材の中心方向に向かうような舌状部分を有している。そして左の部材36は閉じた形状をしている。たとえば左の部材36を、濃いシャボン玉液に入れて取り出すとどうなるか、と考えてみると、閉じた形状の中にシャボンの膜が張っている様子を想像することができる。複雑な3次元曲面を持ったシャボン膜であろうことが想像できるが、とにかく左の部材36の閉じた形状の中を面で埋めることができる、ということがわかる。そして、その面の厚さが3mmであったらどうなるのか、シャボン液ではなくプラスチックだったらどうなるのか、というように考えると、左の部材36と3次元曲面を持ったプラスチック板が一体化したものが想像できる。直径3mmの丸棒材で作られた金属枠と、その金属枠の内部空間を埋め尽くすような厚さ3mmのプラスチック板、というようなものを、すべてプラスチックで一体成型したらどうなるか、と考えて3次元CADで描いてみたものが
図62である。
図62は、実施例17で使用する部品を表している。
図62で示された部品単体では蓋置き器具として機能しない。
図62は、厚さ3mmのプラスチック成型品として描いている。3次元CADの特性として印刷したときに面の丸みを表す点線が表示されるが、点線をすべて削除してしまうと
図62のようなものは外形線しか残らず、全体形状がわからなくなるので、点線を残した図とする。
図62以降の斜視図でも形状がわかりやすいように、点線を残した図とする。
図62でわかるように左の部材37は、上部に円弧状支持部材を有していて、その円弧状支持部材の下側になめらかに連続するように支柱部材が一体的に形成されている。そして支柱部材の下方部分は、台座部材に差し込むための舌状部分を有している。
【0094】
図63は、実施例17の斜視図である。分解組立図のように表示している。左の部材37と右の部材38は同じ部品である。台座部材上側39と台座部材下側40も同じ部品としている。一般的な量産品では、台座部材上側と台座部材下側をネジ部材などを用いて組み立てることが多いが、
図63では接着あるいは超音波溶着を考えている。超音波溶着は作業時間も短く、溶着後の強度もある。台座部材上側39と台座部材下側40を接着あるいは超音波溶着で合体させると、左右に差込用の穴を持った台座部材ができる。そのようにしてできた左右に差込用の穴を持った台座部材と、左の部材37と右の部材38の3点を箱に入れて販売すれば、それは組み立て式の蓋置き器具となる。あるいは左の部材37と右の部材38と台座部材上側39と台座部材下側40のすべてを接着あるいは超音波溶着で合体してしまえば、それは完成した蓋置き器具となる。台座部材に差し込むための舌状部分を半円状に描いているが、舌を切断したような形状にしてもよくデザインは自由である。台座部材側の支柱部材受け部の形状も、半円を受けるように描いているが、舌状部分の形状が変わったらそれにあわせて変えればよい。
図63に示したような上下分割式の台座部材を採用したときには、台座部材の内部に空間ができるので、そこにオモリを入れると器具が安定してよい。台座部材は上下分割式の成型品のほか、木材や金属材などに差込用の穴を設けた加工品でもよい。左の部材37と右の部材38と、差込用の穴を設けた台座部材の組み合わせが実施例17である。
【0095】
図64は、実施例17の斜視図である。左の部材37と右の部材38と台座部材上側39と台座部材下側40を合体した状態を示す。左の部材37と右の部材38を抜き取れるようにしておけば、それは組み立て式の蓋置き器具となる。抜き取れないように接着あるいは超音波溶着などで合体してしまえば、それは完成した蓋置き器具となる。台座部材上側39の金型を変更して、台座部材上側39の上面周囲に高さ8mmくらいのリング状の壁のようなものを設ければ、上部が皿状になるので、
図35で示したようなお玉置きや調理用ハシ置きとしての使い方もできる。上部が皿状で、舌状部分を受け入れるための差し込み穴を有した台座部材を、木材や金属材などから削り出して作ってもよい。実施例17において、円弧状支持部材の代わりに、多角形状支持部材としてもよい。
【0096】
図65は、実施例18の部品の斜視図である。実施例17の
図62で示した左の部材37に穴を設けたものである。あたらしく左の部材41と呼ぶ。
【実施例18】
【0097】
図66は、実施例18の斜視図である。分解組立図のように表示している。左の部材41と右の部材42は同じ部品である。台座部材上側43と台座部材下側44も同じ部品としている。一般的な量産品では、台座部材上側と台座部材下側をネジ部材などを用いて組み立てることが多いが、
図66では接着あるいは超音波溶着を考えている。左の部材41と右の部材42と台座部材上側43と台座部材下側44のすべてを接着あるいは超音波溶着で合体してしまえば、それは完成した蓋置き器具となる。
図66に示したような台座部材を採用したときには、台座部材の内部に空間ができるので、そこにオモリを入れると器具が安定してよい。左の部材41と右の部材42が抜けないように、抜け止めの構造を採用したものが実施例18である。一般的な量産品では、台座部材上側と台座部材下側をネジ部材などを用いて組み立てることが多い。実施例18の台座部材上側と台座部材下側をネジ部材などを用いて組み立てる方法を採用すると、
図62のようなつるりとした差し込み部のままでは、組み立て後に抜けてしまうことがある。初めから組み立て式として販売していれば抜けても苦情は来ないが、完成品として販売した場合には、使用中あるいは洗浄中などに抜けてしまうと苦情の対象となる。左の部材41と右の部材42が組み立て後に抜けないように、抜け止めの措置を施したものが実施例18である。抜け止めの措置は
図66にて示す穴とボスによる方法のほか、舌状部分の外形に凹部や凸部を設ける方法などによってもよい。実施例18において、円弧状支持部材の代わりに、多角形状支持部材としてもよい。
実施例17と実施例18は基本的にはプラスチック成型品を考えているので、何色かの成型品を用意しておけば、組み立てのときに色の組み合わせを変えることで、左の部材と右の部材の色を変えたり、台座の色を上下で変えたりすることも可能であって、カラフルな商品群を構成することができる。
【実施例19】
【0098】
図67は、実施例19の斜視図である。左の部材45と右の部材46と台座部材47とを一体成型品としたものである。台座部材47には凹部を設けて、お玉や調理用ハシなどを置けるようにしたデザインである。凹部があると汚れがたまって嫌だという場合には、
図64のような天井面を持ったデザインとすればよい。その場合は、底面側から成型のために肉抜き設計がなされるのが普通である。円弧状支持部材の部分にシリコン樹脂製の補助部材を付加して耐熱性を高めてもよい。実施例19において、円弧状支持部材の代わりに、多角形状支持部材としてもよい。蓋置き器具に必要な蓋の支持部材、支持部材を支える支柱部材、支柱部材を支える台座部材のすべてをプラスチックの一体成型品とした実施例19は、とても低コストで量産することができる。
【0099】
鍋に蓋をして加熱調理中に、熱くなって内側に水滴や油滴が付着した蓋のつまみを持って、蓋をひっくり返し、蓋の内側を上方に向けつまみを下側に向けて持ったまま、水滴や油滴が垂れないように蓋を水平な状態に保った状態で置き、熱くなった蓋の縁などに触れて指などをやけどしないように手を抜き取ることができるような蓋置き器具において、本発明の実施例にて示したような、引き出しの中にしまうことができ、手のひらにのるほどにコンパクトで使い勝手がよい蓋置き器具は従来なかった。
【0100】
請求項と実施例のかかわりを示す。請求項1は、実施例1や他の実施例にかかわる。請求項2は、実施例2や他の実施例にかかわる。請求項3は、実施例1から実施例16までにかかわる。請求項4は、実施例1、2、5、6、7、8、9、11、12などにかかわる。請求項5は、実施例1、2、5、6、7、8、9、11、12などにかかわる。請求項6は、実施例3、10、13、14、15、16などにかかわる。請求項7は、実施例4にかかわる。請求項8は、実施例3、4、15などにかかわる。請求項9は、実施例3、4、15などにかかわる。請求項10は、実施例5にかかわる。請求項11は、実施例6にかかわる。
請求項16は、実施例1、2、5、6、7、8、9、11、12、17、18、19などにかかわる。
請求項12は、実施例8、9にかかわる。
請求項13は、実施例10にかかわる。
請求項14は、実施例17、18にかかわる。
請求項15は、実施例19にかかわる。