特許第6144747号(P6144747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144747
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】製剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/12 20060101AFI20170529BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A61K9/12
   A61K31/573
   A61K45/06
   A61K31/522
   A61K31/137
   A61K31/46
   A61K31/4704
   A61K31/58
   A61P43/00 121
   A61P43/00 111
   A61P11/06
   A61P11/00
   A61P11/14
【請求項の数】44
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-219431(P2015-219431)
(22)【出願日】2015年11月9日
(62)【分割の表示】特願2014-524444(P2014-524444)の分割
【原出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2016-94409(P2016-94409A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】1113662.9
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511015548
【氏名又は名称】プロソニックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PROSONIX LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルクロフト,グラハム
(72)【発明者】
【氏名】パリック,ディペシュ
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−525820(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/043981(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/042549(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/138862(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/138884(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/060875(WO,A1)
【文献】 特表2007−519604(JP,A)
【文献】 特表2009−526062(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/007447(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/138868(WO,A1)
【文献】 特表2002−544239(JP,A)
【文献】 特表2004−510731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/12
A61K 31/137
A61K 31/46
A61K 31/4704
A61K 31/522
A61K 31/573
A61K 31/58
A61K 45/06
A61P 11/00
A61P 11/06
A61P 11/14
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共晶組成物中に2種類の薬理活性成分を含む製剤組成物であって、
第1の薬理活性成分が、副腎皮質ステロイド、及びその塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択され、
第2の薬理活性成分が、β2アゴニスト、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、及びそれらの塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択される、
製剤組成物。
【請求項2】
共晶組成物中に2種類の薬理活性成分を含む、肺への吸入送達のための製剤組成物であって、
第1の薬理活性成分が、副腎皮質ステロイド、及びその塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択され、
第2の薬理活性成分が、β2アゴニスト、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、及びそれらの塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択される、
製剤組成物。
【請求項3】
共晶組成物中に2種類の薬理活性成分を含む、呼吸器疾患治療のための製剤組成物であって、
第1の薬理活性成分が、副腎皮質ステロイド、及びその塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択され、
第2の薬理活性成分が、β2アゴニスト、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、及びそれらの塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択される、
製剤組成物。
【請求項4】
前記呼吸器疾患は、慢性呼吸器疾患である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記呼吸器疾患は、感染症である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2の薬理活性成分は、メチルキサンチン化合物、またはその塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記メチルキサンチン化合物は、テオフィリン、アミノフィリンまたはオキシトリフィリン、または、これらの塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の薬理活性成分は、β2アゴニスト、または、その塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記β2アゴニストは、ホルモテロール、サルメテロール、カルモテロール、インダカテロール、ビランテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、イソプロテレノール、ミルベテロール、クレンブテロール、オロダテロール、フェノテロール、サルブタモール、レバルブテロール、プロカテロール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、ビトルテロールまたはリトドリン、アルブテロール、及び、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2の薬理活性成分は、抗ヒスタミン薬、または、その塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗ヒスタミン薬は、アクリバスチン、セチリジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン、レボセチリジン、ロラタジン、ミゾラスチン、アリメマジン、クロルフェナミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、ヒドロキシジン、ケトチフェンおよびプロメタジン、シメチジン、アザタジン、ブロムフェニラミン、カルビノキサミンまたはピリラミン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択される、請求項1〜5または7〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記副腎皮質ステロイドは、モメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾン、シクレソニドまたはトリアムシノロン、及び、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、前記組成物中に存在する前記薬理活性成分の総重量に対して、50重量%未満となる過剰量でさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、前記組成物中に存在する前記薬理活性成分の総重量に対して、40重量%未満となる過剰量でさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、前記組成物中に存在する前記薬理活性成分の総重量に対して、30重量%未満となる過剰量でさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、前記共晶組成物中に存在する前記薬理活性成分の量に対して、50mol%未満となる過剰量でさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、前記共晶組成物中に存在する前記薬理活性成分の量に対して、40mol%未満となる過剰量でさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、前記共晶組成物中に存在する前記薬理活性成分の量に対して、30mol%未満となる過剰量でさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方の少なくとも90重量%は、前記共晶組成物の中に含まれている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方の少なくとも95重量%は、前記共晶組成物の中に含まれている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記薬理活性成分のうちの少なくとも一方の少なくとも99重量%は、前記共晶組成物の中に含まれている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、10:1から1:1である請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、9:1から1:1である請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、4:1から1:1である請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、2:1から1:1である請求項1〜21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記共晶組成物は粒子状である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記共晶組成物は粒子状であり、空気動力学的質量中央径が最大10μmである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記共晶組成物は粒子状であり、空気動力学的質量中央径が最大5μmである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1から28のいずれか1項に記載の組成物を製造するためのプロセスであって、
前記2種類の薬理活性成分を準備する工程、および、
i)前記2種類の薬理活性成分を溶媒に溶解し、前記溶媒を除去し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
ii)前記2種類の活性製剤成分の融解物を形成し、前記融解物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
iii)第1の活性製剤成分の融解物を形成し、前記融解物に第2の活性製剤成分の溶液を導入し、得られる組成物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
iv)前記2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕して、共晶組成物の粒子を形成する
工程、を含む、プロセス。
【請求項30】
前記共晶組成物の前記粒子を、それに合った非溶媒で処理し、前記粒子が前記非溶媒と接触しているときに、前記粒子に超音波を印加する工程をさらに含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
(i)溶媒中の前記2種類の薬理活性成分で構成される溶液を形成する工程と、
(ii)前記溶液に、前記溶解される薬理活性成分が実質的に乾燥した固体材料に変換されるよう、急速沈殿、フリーズドライ、凍結乾燥、超臨界溶液の急速膨張、噴霧乾燥、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスをほどこす工程を含み、
(iii)工程(ii)で得られる前記乾燥固体材料を、その材料用の非溶媒で処理する工程と、
(iv)工程(iii)で得られる前記固体材料が前記非溶媒と接触しているときに、前記固体材料に超音波を印加する工程を含む、請求項29または30に記載のプロセス。
【請求項32】
工程(ii)の後、変換された固体材料を、液体成分および/または気体成分から分離し、乾燥固体材料とする工程をさらに含む、請求項31のプロセス。
【請求項33】
工程(iv)で得られた前記固体材料を分離および/または乾燥する工程をさらに含む、請求項31または32に記載のプロセス。
【請求項34】
順次行われるものであって、工程(iii)および(iv)は、工程(ii)の直後に行われる、請求項31に記載のプロセス。
【請求項35】
(a)前記2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕する工程と、
(b)工程(a)で得られる前記薬理活性成分を、それに合った非溶媒で処理する工程と、
(c)工程(b)で得られる前記固体組成物が前記非溶媒と接触しているときに、前記固体組成物に超音波を印加する工程とを含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項36】
工程(a)において、前記2種類の薬理活性成分が、機械的な微粉砕、ミル粉砕、ジェットミル粉砕、破砕、またはこれらの組み合わせによって機械的に粉砕される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
工程(c)で得られる前記固体組成物を分離および/または乾燥する工程をさらに含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、10:1から1:1である、請求項29から37のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は9:1から1:1である、請求項29から37のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項40】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、4:1から1:1である、請求項29から37のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項41】
前記2種類の薬理活性成分のモル比は、2:1から1:1である、請求項29から37のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項42】
請求項1から28のいずれか1項に記載の組成物を含む乾燥粉末吸入器。
【請求項43】
請求項1から28のいずれか1項に記載の組成物を含む加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)。
【請求項44】
請求項1から28のいずれか1項に記載の組成物を含む呼吸作動型経鼻用吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性呼吸器疾患治療用の、2種類の薬理活性成分で構成される製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
単純な共晶組成物は、液体状態では完全に混和するが、固体状態では非常に限られた度合いでしか混和しない2種類の化合物からなる。共晶に特有の特性として、それぞれの化合物が純粋である場合よりも、融解温度が低いことがある。共晶は、多くの特性が各相と同一であるが、融点、溶解性、化学安定性の点では、どちらの成分とも異なる挙動を示す。
【0003】
共晶組成物は、共結晶形成現象とは明らかに区別される。共晶組成物では、2種類の構成材料が独立して結晶となるのに対し、共結晶の場合には完全に新たな結晶相が形成され、事実上、各単位胞内の成分分子の点で別々の結晶相を置き換える形になるのであるが、そのことは当業者であれば自明であろう。よって、共結晶では、単位胞内に秩序立った形で両物質の分子が存在する。
【0004】
固体の共晶組成物は、2種類の成分で構成される微細結晶の物理的混合物を得るべく、2種類の化合物で構成される共融物を高速冷却することで、調製できる。共晶組成物の調製は、胃腸液に対する溶解性が乏しい薬剤を製造するための方法のひとつである。そこでは活性成分を溶解性の高いキャリアと混合するが、この混合は、得られる組成物が、組み合わせでの微結晶特性がゆえに固体成分単体よりも容易に溶解するような割合でなされる。これは、A. Florence, T. Attwood, Physicochemical Principles of Pharmacy, 4th Ed, Pharmaceutical Press 2006, p.28に記載されている。
【0005】
共晶組成物が胃腸液に曝露されると、可溶性のキャリアはすみやかに溶解し、不溶性の薬剤が分断された極めて細かい状態で残る。得られる懸濁液の表面積が大きいため、溶解速度が高まり、結果として、バイオアベイラビリティが改善されるはずである。
【0006】
共晶組成物は、局所麻酔の分野で知られている。たとえば、米国特許第5993836号には、規定の重量比で親油性ベース中にリドカインとプリロカインの共晶組成物を含む局所麻酔、外用麻酔、経皮麻酔が記載されている。この共晶組成物では、両方の麻酔薬が室温では液体のままであるため、それぞれの麻酔薬を結晶形態で個々に適用するよりも、皮膚を介した麻酔薬の浸透と吸収が高められる。
【0007】
WO1998/51283号には、好適な送達系に、構造的および/または薬理学的に多様であってもよい2種類以上の薬理学的活性剤を含む共晶組成物を取り込むことで形成される、外用製剤組成物を用いることが開示されている。これらの組成物は、皮膚との相互作用によってではなく、外用組成物自体からの薬剤放出の改善によって、各々の薬理学的活性剤の局所的な浸透を高める。好ましい組成物は、作用剤が相補性を持つが、薬理学的活性は異なるものである。
【0008】
米国特許出願第2008/0020008号には、香りと味の感覚を改善するために設計された共晶結晶性糖アルコールの製造方法が開示されている。
【0009】
本発明者らが知るかぎり、呼吸器疾患の治療における共晶組成物の使用について開示したものはない。また、加圧式定量噴霧式吸入器、乾燥粉末吸入器または呼吸作動型経鼻用吸入器における共晶組成物の使用について開示したものもない。さらに、肺に吸入される共晶組成物の使用について開示したものもない。
【0010】
吸入は、全身作用薬の送達用のみならず、たとえば呼吸器疾患(好ましくは感染症または慢性呼吸器疾患(たとえば、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症など))を治療するためなどで肺自体において局所的に作用するよう設計された薬剤用の、極めて魅力的で、迅速かつ患者に優しい経路となる。これは、予測可能かつ再現可能な方法で肺に薬剤を送達するための技術を開発する上で特に望ましく好都合であるだけでなく、2種類または3種類以上の薬剤を肺に同時送達するためには、すべての構成要素とその機械的に混合された混合物の固体状態での化学が、十分に理解されることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、成功した乾燥粉末生成物用の粉末技術には、依然として大きな技術的障害がある。粉末の製造と計量の一助となるためだけでなく、信頼性があって予測可能な再懸濁および流動化を与え、分注装置内に粉末が過剰に保持されるのを回避するために、配合物の流合特性が好適でなければならない。再懸濁後の粉末における薬剤粒子または薬理活性成分の粒子を肺の中の適切な標的領域まで運ぶことができるように、これらの粒子を適切にエアロゾル化しなければならない。一般に、肺に沈着させるには、活性粒子の直径はl0μm未満であり、多くの場合は0.1μmから7μmまたは0.1μmから5μmである。
【0012】
この種の系では、薬剤と薬剤との相互作用、ならびに、薬剤とキャリア粒子との相互作用、粒子と壁との相互作用が、肺の奥まで薬剤をうまく送達させるために非常に重要である。薬剤と薬剤との相互作用について考えると、粒子間の相互作用は、ファンデルワールス力、毛管力、クーロン力などの付着力や粘着力によって決まる。これらの力の強さは、粒度、接触表面積、形態に影響される。
【0013】
10μm以下の微粒子の場合、その表面積と体積との比が大きくなるにつれて、次第に熱力学的に不安定になりがちである。このため、粒度が小さくなると、表面の自由エネルギーが大きくなり、結果として、粒子の凝集傾向と凝集強度が増す。本発明は、異なる結晶成分で構成される粒子間の相互作用に関する。
【0014】
もうひとつの問題に、薬剤粒子の表面特性の変動がある。薬理学的活性剤の粉末には各々、それぞれに独特で固有の粘着性または表面エネルギーがあり、これが化合物ごとに非常に大きく変動する可能性がある。さらに、どのように処理されるかによって、同じ化合物でも表面エネルギーの性質が変わることもある。たとえば、高剪断のブレンドでは、使用する衝突が強烈であるため、高剪断のブレンドが表面特性の大幅なばらつきにつながり得る。このようなばらつきは、表面エネルギーの増加と粘着性および付着性の増加につながりかねない。極めて規則的な結晶性粉末ですら、狭い範囲のリフシッツ−ファンデルワールス力によって粘着性と付着性の高い粉末が生じることがある。
【0015】
ブレンドされた微小薬剤粒子は、リフシッツ−ファンデルワールス力によってのみ、ゆるく凝集する。このような配合物の作用についてみるとき、毛管力が生じない点が重要である。これは、粒子の凝集物が、空気流中で必ず解砕するためである。毛管力は通常、たとえばリフシッツ−ファンデルワールス力よりも数倍大きく、凝集物をひとまとめに保持する自着力が増すと、このような凝集物が分割して単一の粒子になる働きは低下する。
【0016】
乾燥粒子吸入器(DPI)用の微粒子を製造するための一般的な2つの技術に、機械的な微粒子化と噴霧乾燥がある。高エネルギーでのミル粉砕操作では、異なる微粉砕粉末とブレンドされると、電荷が大きいため、極めて粘着性で付着性の高い粒子が生じる。得られる粒子は、強い凝集体を形成し得る不規則な画分を含むことが多い。また、多段処理では、粉末製造時における材料の大幅な損失と、生成物特性のバッチ間変動を生じることがある。ミル粉砕とは異なり、噴霧乾燥技術は、所望の大きさの製剤粒子を直接製造できる一段の連続プロセスである。このプロセスに、界面活性剤や他の可溶化剤は必要ない。しかしながら、このプロセスでは、高い流速が必要な上に、制御できるパラメーターが限られることから、各粒子の熱履歴と乾燥速度の制御が困難である。その結果、得られる粒子が通常は非晶質になり、よって、温度や湿度のばらつきに影響されやすくなるため、粉末を保管する間に粒子の構造的な変化や沈殿を生じることがある。
【0017】
2種類の薬理活性成分を肺に同時に送達させることは、知られている。たとえば、Advair(アドベアー)およびSymbicort(シンビコート)は、気管支拡張薬と副腎皮質ステロイドを同時送達させ、臭化グリコピロニウムなどの抗コリン薬とインダカテロールなどの気管支拡張薬を同時に投与する治療法が知られている。ところが、薬理活性成分の有効性を改善することに需要がある。また、肺内の同一領域あるいは、肺内での薬剤の同時送達および同時配置による肺の領域全体への、両方の薬理活性成分の送達を改善することにも需要がある。さらに、薬理活性成分の発現時間を改善することにも需要がある。さらに、肺気管支および肺胞内で乾燥粉末としての堆積時における薬理活性成分の溶解速度を改善することに需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様は、肺への吸入送達のための、2種類の薬理活性成分で構成される共晶組成物を含む製剤組成物を提供する。
【0019】
本発明の第2の態様は、呼吸器疾患治療のための、2種類の薬理活性成分で構成される共晶組成物を含む製剤組成物を提供する。
【0020】
本発明の第3の態様は、共晶組成物中に2種類の薬理活性成分を含む製剤組成物であって、薬理活性成分が、各々独立に、β2アゴニスト、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、鎮咳薬物質、PDE1〜6阻害薬、カルシウムブロッカー、トブラマイシンまたはシプロフロキサシン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物から選択される、製剤組成物を提供する。
【0021】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様による組成物を製造するためのプロセスであって、
2種類の薬理活性成分を提供する工程と、
i)2種類の薬理活性成分を溶媒に溶解し、溶媒を除去し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
ii)2種類の活性製剤成分の融解物を形成し、この融解物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
iii)第1の活性製剤成分の融解物を形成し、この融解物に第2の活性製剤成分の溶液を導入し、得られる組成物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
iv)2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕して、共晶組成物の粒子を形成する工程、
を含み、
薬理活性成分が各々独立に、β2アゴニスト、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、鎮咳薬物質、PDE1〜6阻害薬、カルシウムブロッカー、トブラマイシンまたはシプロフロキサシン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物、から選択される、プロセスを提供する。
【0022】
本発明の2種類の薬理活性成分で構成される共晶組成物を含む製剤組成物には、呼吸器疾患を治療する上での利点がある。これらの利点として、薬理活性成分の有効性の改善、肺内の同一領域あるいは肺の領域全体への、両方の薬理活性成分の送達の改善、薬理活性成分の発現時間の改善があげられる。それぞれの薬剤物質の融点が相互に低下する結果として、各薬剤の熱力学的安定性が低下して、両薬剤の溶解速度および平衡溶解度の両方の増大につながる。溶解速度が速いと、作用発現と臨床有効性の改善につながる。本発明の製剤組成物は、肺内で同時配置可能であり、それによって、粉末状の材料が肺組織に堆積したときに、両分子種の平衡溶解度の増大と溶解速度の相互の増大がゆえに、相乗的な治療作用が最大になる。これらの効果は、さまざまなリン脂質、主にジパルミトイルホスファチジルコリンなどの肺サーファクタントとの相互作用が増すことで、強められてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、肺への吸入送達のための、薬理活性成分2種類の共晶組成物を含む製剤組成物を提供するものである。共晶組成物は従来技術において知られているが、肺への吸入送達用のものは開示されていない。
【0024】
また、本発明は、呼吸器疾患治療のための、薬理活性成分2種類の共晶組成物を含む製剤組成物を提供するものである。好ましくは、呼吸器疾患は慢性呼吸器疾患であり、好ましくはCOPD、喘息、または嚢胞性線維症である。好ましくは、この製剤組成物は、吸入によって肺に送達される。共晶組成物は従来技術において知られているが、呼吸器疾患の治療に用いられるものは開示されていない。好ましくは、薬理活性成分は各々独立に、β2アゴニスト、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、鎮咳薬物質、PDE1〜6阻害薬、またはカルシウムブロッカー、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物、または溶媒和物から選択される。
【0025】
呼吸器疾患は、感染症であってもよい。この感染症は、COPD、喘息または嚢胞性線維症などの慢性呼吸器疾患と併発したものであってもよいし、慢性呼吸器疾患とは無関係の感染症であってもよい。治療対象となる呼吸器疾患が感染症である場合、好ましくは、薬理活性成分のうちの少なくとも一方は、トブラマイシンおよびシプロフロキサシン、ならびに、これらの塩、多形体、水和物または溶媒和物から選択され、任意に、薬理活性成分のうちの一方が、β2アゴニスト、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、鎮咳薬物質、PDE1〜6阻害薬またはカルシウムブロッカー、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物から選択されてもよい。
【0026】
共晶組成物の形成は、その構成成分の適切な濃度に左右される。共晶組成物が形成されると、水素結合またはファンデルワールス力として知られる相互作用に起因する分子間力が生じやすくなる。これは、個々の結晶形態の形成時に各成分で普通にみられる、上記の分子間力よりも典型的なファンデルワールス力と拮抗する。これらの力は、i)2種類の薬理活性成分を溶媒に溶解し、溶媒を除去し、共晶組成物の粒子を形成する、あるいは、ii)2種類の活性製剤成分の融解物を形成し、この融解物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する、あるいは、iii)第1の活性製剤成分の融解物を形成し、この融解物に第2の活性製剤成分の溶液を導入し、得られる組成物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する、あるいは、iv)2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕して、共晶組成物の粒子を形成すること、のいずれかによって、物質同士を、分子レベルで組み合わせることで生じる。どの方法も、共晶形成へとつながっている。
【0027】
理論に拘泥するわけではなく、共晶をなす2種類の有機結晶性物質からなる二成分系に手を加え、これらの物質が液体状態では完全に混和し、結晶状態では全く混和しないと仮定する一般的な熱力学処理に合わせることができる。混合物の組成を、それぞれの融点および凝固点Tfと関連させる式が、Schroederおよびvan Laarによって提案された。これを単純化した形式で示すと、次のようになる。
InXA=ΔHfA/R[(TfA-1−(Tf-1)]
式中、XAは、融解点がTfである混合物中の材料Aのモル分率、ΔHfAは純成分Aの融解エンタルピー、TfAは純成分Aの融解点、Rは気体定数である。
【0028】
さらに、Thermochimica Acta 404 (2003) 213-226に記載されているように、接触融解の熱力学によって、これがエントロピー駆動でなければならないことが示唆される。仮にAおよびBが2種類の共晶形成成分であると仮定すると、共晶組成物はXAおよびXB(ここで、XA=1−XB)であり、Teが共晶融解温度である。化合物AおよびBが別々に融解する場合、エントロピー変化量の合計をΔST、化合物AおよびBの融解のエントロピーをそれぞれΔSAおよびΔSBとすると、全体のエントロピーの変化量は、以下のように与えられる。
ΔST=XAΔSA+XBΔSB
しかしながら、理想ではない混合物によるエントロピーの変化量をΔSexとすると、エントロピー変化量の合計は、次のようになる。
ΔST=XAΔSA+XBΔSB+RXALn(1/XA)+RXBLn(1/XB)+ΔSex
この関係は、ΔSTが常に相互溶解度(Schroederおよびvan Laarと一致する)に比例して増加することを示している。共晶の格子エネルギーまたは融解熱は、液体状態での理想的な混合を想定した、個々の成分の単純な加重和である。エントロピーの増加がゆえに、融解温度は常に低下する(すなわち、総融解熱をΔHTとすると、Te=ΔHT/ΔSTである)。提案されたモデルから、固体状態での密着と液体状態での相互溶解度が、共晶形成の重要な基準であることが示唆される。
【0029】
接触による融点降下を引き起こすには、固体状態で密着する必要がある。共晶形成化合物同士が接触していないと、ΔSTの増加は起こらず、共晶融解は観察されないであろう。タブレットまたは粉末状の混合物における共晶挙動では、共晶温度を超える必要はなく、むしろ機械的な応力によって混合物が形成されることがあるため、共晶形成材料同士が密着しやすくなる。形成される共晶の量は、密着量にいくらかは比例する。大きさが1〜5ミクロンで表面積が3〜10m2/gの粒子の場合、50ミクロンあるいは、100ミクロンの粒子よりも密着が明らかに多く、それぞれ、表面積が0.5m2/g前後の場合の圧密および表面積が0.25m2/g前後の場合の圧密に適している。
【0030】
また、本発明は、共晶組成物中に2種類の薬理活性成分を含む製剤組成物であって、薬理活性成分が各々独立に、β2アゴニスト、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、鎮咳薬物質、PDE1〜6阻害薬、カルシウムブロッカー、トブラマイシンまたはシプロフロキサシン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物から選択される製剤組成物も提供する。
【0031】
2種類の薬理活性成分は、異なるクラスの作用剤から選択されてもよい。2種類の薬理活性成分は、同一クラスの作用剤から選択されてもよい。
【0032】
好ましいβ2アゴニストは、長時間作用型のβ2アゴニストであり、好ましくは、ホルモテロール、サルメテロール、カルモテロール、インダカテロール、ビランテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、イソプロテレノール、ミルベテロール、クレンブテロール、オロダテロール、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物、好ましくはフマル酸ホルモテロールまたはキシナホ酸サルメテロールである。また、β2アゴニストは、フェノテロール、サルブタモール、レバルブテロール、プロカテロール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、ビトルテロール、リトドリン、アルブテロール、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物など、短時間作用型のβ2アゴニストであってもよく、好ましくは、臭化水素酸フェノテロールであってもよい。
【0033】
好ましい抗コリン薬は、長時間作用型のムスカリンアンタゴニストであり、好ましくは、チオトロピウム、アクリジニウム、ダロトロピウム、グリコピロレート、ウメクリジニウム、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物から選択される。好ましい短時間作用型のムスカリンアンタゴニストは、イプラトロピウム、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物である。特に好ましいムスカリンアンタゴニストは、臭化チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、臭化アクリジニウム、臭化ダロトロピウム、臭化グリコピロニウムまたは臭化ウメクリジニウム、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0034】
好ましい副腎皮質ステロイドは、モメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルチカゾン、シクレソニドまたはトリアムシノロン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物、好ましくは、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾンまたはブデソニドからなる群から選択される。
【0035】
好ましいメチルキサンチン化合物は、テオフィリン、アミノフィリンまたはオキシトリフィリン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0036】
好ましい抗ヒスタミン薬は、アクリバスチン、セチリジン、デスロラタジン、フェキソフェナジン、レボセチリジン、ロラタジン、ミゾラスチン、アリメマジン、クロルフェナミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、ヒドロキシジン、ケトチフェンおよびプロメタジン、シメチジン、アザタジン、ブロムフェニラミン、カルビノキサミンまたはピリラミン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0037】
好ましい鬱血除去薬は、プソイドエフェドリン、オキシメタゾリン、フェニレフリンまたはキシロメタゾリン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0038】
好ましい鎮咳薬物質は、グアイフェネシン、カルベタペンタン、ベンゾナテート、デキストロメトルファン、ヒドロコドン、コデイン、エフェドリン、カンファー、メントール、ジフェンヒドラミン、フェニルプロパノールアミン、イソアミニル、ジペプロール、モルクロホン、プレノクスジアジン、ドロプロピジン、ピペリジオン、ペントキシベリン、オキソラミン、オキセラジン、ネピナロン、メプロチキソール、インダンタドール、ジメモルファン、ジブナート、クロペラスチン、クロフェダノール、ブタミラート、ビベンゾニウム、ベンプロペリン、フェドリレートまたはテオブロミン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0039】
好ましいホスホジエステラーゼ1〜6阻害薬(PDE1〜6阻害薬)は、カフェイン、アミノフィリン、3−イソブチル−1−メチルキサンチン、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、ビンポセチン、エリスロ−9−(2−ヒドロキシ−3−ノニル)アデニン、アナグレリド、エノキシモン、ミルリノン、メセンブリン、ロリプラム、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ウデナフィル、アバナフィル、ジピリダモール、(1−[[5−(1(S)−アミノエチル)−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリニル]−4−オキサゾリル]カルボニル]−4(R)−[(シクロプロピルカルボニル)アミノ]−L−プロリン、エチルエステルキシナホ酸塩)、GSK256066:(6−({3−[(ジメチルアミノ)カルボニル]フェニル}スルホニル)−8−メチル−4−{[3−メチルオキシ)フェニル]アミノ}−3−キノリンカルボキサミド)またはロフルミラスト:(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−[3,5−ジクロロピリジ−4−イル]−ベンズアミド、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0040】
好ましいホスホジエステラーゼ4阻害薬(PDE4阻害薬)は、(1−[[5−(1(S)−アミノエチル)−2−[8−メトキシ−2−(トリフルオロメチル)−5−キノリニル]−4−オキサゾリル]カルボニル]−4(R)−[(シクロプロピルカルボニル)アミノ]−L−プロリン、エチルエステルキシナホ酸塩)、GSK256066:(6−({3−[(ジメチルアミノ)カルボニル]フェニル}スルホニル)−8−メチル−4−{[3−メチルオキシ)フェニル]アミノ}−3−キノリンカルボキサミド)またはロフルミラスト:(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−[3,5−ジクロロピリジ−4−イル]−ベンズアミド、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0041】
好ましいカルシウムブロッカーは、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピンまたはパラニジピン、ならびに、これらの塩、多形体、水和物または溶媒和物からなる群から選択される。
【0042】
薬理活性成分は、好ましくは各々独立に、β2アゴニスト、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物または抗コリン薬、ならびに、これらの塩、多形体、水和物または溶媒和物から選択される。
【0043】
本発明では、共晶組成物を含む製剤組成物が開示される。共晶組成物は、単一の融点および融解時の吸熱を特徴とし、2種類の薬理活性成分を、均一な結晶性固体−固体分散を生じるような特定のモル比または質量比で含む。本発明による共晶組成物は、3種類または4種類の薬理活性成分など、3種類以上の薬理活性成分を含んでもよい。
【0044】
共晶組成物が存在するか否か、あるいは、共晶組成物を見いだせるか否かを判断するために、当業者であれば多数の方法を普通に用いるであろう。本発明で使用するような当該方法のひとつでは、各成分を互いに0から90モルパーセントまたは質量パーセントの範囲の割合にして、両方の構成成分の混合物を、これらの構成成分を近接させながら物理的に破砕する。各破砕試料の融点を求めて示差走査熱量測定(DSC)を実施し、融点、融点抑制の大きさ、融解吸熱の大きさをともに確認する。新たな低融点成分の形成は、共晶組成物を示すものではあるが、共晶組成物の決定的な証拠ではない。一方の物質に対する他方の物質の割合を増やすと、融解吸熱イベントが単一になることで示される均一点(point of homogeneity)に到達するまで、融解熱のDSCプロファイルで観察した当該成分の量が増えることになる。
【0045】
共晶組成物を判断して試料を調製したら、粉末X線回折(XRPD)の技術によって決定的な証拠を確立できる。XRPDは、結晶性材料の相同定で主に用いられる高速分析技術であり、単位胞の寸法に関する情報を提供できる。本発明では、分析対象となる材料を微粉砕あるいは、WO2010/007447およびWO2008/114052に規定されているような粒子エンジニアリング技術で調製し、均質化した後、平均バルク組成を求める。結晶性物質は、結晶格子における面間隔に似たX線波長用の三次元回折格子として作用する。X線回折は、結晶構造および原子間隔を研究するための現在では一般的な技術である。X線回折では、単色のX線と結晶性試料との間の強め合いの干渉を利用している。これらのX線は、陰極線管で発生し、単色光を取り出すためにフィルターに通され、1つの光束にすべく平行化され、試料に照射される。条件がブラッグの法則(nλ=2dsinθ)を満たす場合に、入射光線と試料との相互作用によって、強め合いの干渉(および回折光線)が生じる。この法則は、電磁放射の波長を、回折角および結晶性試料の格子間隔と関連させる。その上で、これらの回折X線を検出し、処理し、計測する。粉末材料の配向がランダムであるため、角度2θの範囲にわたって試料を走査することで、格子で可能なすべての回折方向を達成する必要がある。回折ピークを面間隔dに変換すると、個々の物質を確認できる。なぜなら、その物質ひとつずつが、一組の独特な面間隔dを持つからである。通常これは、面間隔dを標準的な基準パターンと比較することで達成される。共晶組成物は、個々の純粋な成分であるXRPDパターンの重なりからなるXRPDパターンを生じることになる。回折方法というのはいずれも、X線管でのX線の発生を利用している。これらのX線を試料に照射し、回折光線を集める。あらゆる回折で重要な成分のひとつに、入射光線と回折光線との間の角度がある。粉末および単結晶の回折は、これを超えて器具内で変化する。
【0046】
DSCによって、共晶組成物を形成する薬理活性成分の質量比を求めることが可能である。そこから、共晶組成物中における薬理活性成分のモル比を計算できる。共晶組成物は、単位胞構造をもとに形成されることがあるため、モル比で共晶組成物の単位胞を示すことができる。単成分結晶の単位胞構造は、結晶内における秩序立った分子群に関連する。この単位胞が、結晶内で順に何度も繰り返される。共晶組成物では、各成分の単位胞またはすべての成分の単位胞が、あたかも個々の成分であるかのように見えるが、ナノ結晶レベルまたは単位胞レベルの大きさですら良く混合されて、完全なまま維持される。
【0047】
製剤組成物は、薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、共晶組成物中に存在する前記薬学的活性成分の量の50mol%未満であるような過剰な量で、さらに含んでもよい。すなわち、共晶組成物のモル比が1:1であれば、50mol%と50mol%の二成分系の製剤組成物で、ゼロ(0)mol%過剰となり、混合物は100%共晶組成物になる。75mol%と25mol%の二成分系の製剤組成物では、主成分が50mol%過剰[50mol%共晶組成物]になり、90mol%と10mol%の二成分系の製剤組成物では、主成分が80mol%過剰となる[20mol%共晶組成物]といった具合である。好ましくは、製剤組成物は、薬理活性成分のうちの少なくとも一方を、共晶組成物中に存在する前記薬学的活性成分の量の40mol%未満である過剰な量、好ましくは30mol%未満である過剰な量で、さらに含んでもよい。
【0048】
製剤組成物は、モル比が10:1から1:1であってもよく、好ましくは、9:1から1:1、好ましくは4:1から1:1、好ましくは2:1から1:1であってもよい。当業者であれば、薬理活性成分の特定の組み合わせでの共晶モル比をDSCで求めることができる。当業者であれば、2種類の薬理活性成分を含む特定の組成物のモル比を求めることができる。したがって、当業者であれば、上述したモル過剰によって説明されるような共晶組成物の割合に対する特定の製剤組成物の偏差を求めることができる。
【0049】
よって、本発明の製剤組成物は、少なくとも一方の薬理活性成分を質量過剰で含んでもよい。好ましくは、過剰とは、組成物中に存在する前記薬理活性成分の総重量に対して50重量%未満、好ましくは40重量%未満、好ましくは30重量%未満をなす。一方の成分の質量過剰の量は、この過剰に対応する融解吸熱ピークの面積を測定および積分し、共晶組成物に対応する吸熱ピークの面積を測定および積分することによって、DSCで求められる。既知の過剰成分の融解熱を与えると、ジュールで測定したそれぞれの負のピーク上とネガティブピーク内の面積を、過剰成分の特定のモル量に変換することが可能である。
【0050】
好ましくは、薬理活性成分の少なくとも一方の少なくとも90重量%が共晶組成であり、薬理活性成分の少なくとも一方の好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは実質的にすべてが、共晶組成である。これは、特定の製剤組成物について、できるだけ多くの薬理活性成分が共晶組成であると好ましいことを意味する。好ましくは、2種類の薬理活性成分がある場合、そのうち一方の全体が共晶組成物の形態であり、任意に、共晶組成物の形態ではない他方の成分が過剰に存在してもよい。
【0051】
薬理活性成分のうちの一方が過剰で存在する場合、この組成物は、共晶挙動を示すことになる。すなわち、組成物の融点が、どちらの薬理活性成分の融点よりも下がることになる。組成物全体としては複数の異なる融点があってもよい、すなわち、組成物の一部の融点が低めで、他の部分の融点が高めのこともあってもよい。組成物の融点が低い部分は、共晶状態の部分となる。組成物の融点が高い部分は、薬理活性成分のうちの一方が過剰となる。2種類の薬理活性成分の治療可能比が共晶比と異なる場合には、薬学的活性成分の一方を過剰にする必要があり得る。このような組成物は、組成物の少なくとも一部の融点が、2種類の薬理活性成分のどちらの融点よりも低いため、本発明の範囲に包含される。
【0052】
テオフィリンは、メチルキサンチン化合物である。これは、喘息およびCOPDなどの慢性呼吸器疾患用の経口剤として用いられる、安価な結晶性白色粉末である。
【0053】
テオフィリンは気管支拡張薬であるとされているが、他の抗喘息活性も持つことが次第に認識されてきている。これらの抗喘息活性は、気管支拡張よりも重要な場合があり、テオフィリンを、軽度から中程度の喘息を長期にわたって治療するための他の抗炎症薬剤に代わる有用な代替品とみなすことができる。テオフィリンは、血漿濃度が5〜10mg/Lとなる低めの用量での使用が好ましく、これによって副作用のリスクが回避されることになる。慢性喘息の管理における低用量の吸入ステロイドに対する補助剤としての低用量テオフィリンの役割は、非常に重要である。
【0054】
テオフィリンの抗喘息作用は、喘息における吸入ステロイドの抗喘息作用を補うことができ、テオフィリンとステロイドを合わせると、ステロイド単独でこれよりも高用量の場合と臨床的に同等であることが、示されている。テオフィリンは、ステロイド減量剤として使用可能である。
【0055】
WO2006/013359号には、ステロイドとテオフィリンなどのメチルキサンチン化合物とを使用して、COPDの動物モデルでタバコの煙(TS)によって誘発される炎症の治療時に、単独で有効ではないが併用投与では相乗作用があり、かつ、前記モデルにおける炎症を顕著に(試験では50%以上)低減できる用量で投与することが、教示されている。TS曝露は、人間におけるCOPDの主な原因であると広く受け入れられている。実際、テオフィリンは、単独では前記呼吸器疾患の治療に効果がないが、ステロイドと併用すると気道での炎症軽減に有効であるような用量で投与される。好ましくは、慢性疾患はCOPDである。好都合なことに、慢性疾患は、重篤な喘息および嚢胞性線維症を含んでもよい。
【0056】
この製剤組成物は、副腎皮質ステロイドとメチルキサンチン化合物である2種類の薬理活性成分を、共晶組成物中に含んでもよい。好ましくは、メチルキサンチン化合物は、テオフィリン、アミノフィリンまたはオキシトリフィリン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物であり、好ましくはテオフィリンである。
【0057】
副腎皮質ステロイドおよびメチルキサンチン化合物は、好ましくは、固体状態の共晶組成物において、特定のモル比、一般にはモル比1:1である。メチルキサンチン化合物(好ましくはテオフィリン)と副腎皮質ステロイド(好ましい副腎皮質ステロイドなど)との特定の組み合わせで、2種類の結晶種間の相互作用が最大になり、融解物の均一性が生まれて単一の共晶融点が規定される。共晶組成物は、薬理学的に関連のあるモル比が1:1であり得る。テオフィリンは、COPD患者でステロイド応答性を回復し、副腎皮質ステロイドの抗炎症作用を強めるとともに、場合によってはグルココルチコイドの抗炎症作用を回復し、ひいてはCOPDの背後にある疾患プロセスを制御できる場合があることが、示されている。テオフィリンと吸入副腎皮質ステロイドを化学量論的かつ薬理学的に許容可能な比で取り入れた本発明の共晶は、肺の全容量にわたって両方の活性成分を完全に同時配置できるような手段を提供した。さらに、両方の活性成分と比較した場合、融点が相当に抑制されるため(実施例5および図11に示すように、テオフィリンで50K、ブデソニドで34K)、共晶組成物を各活性成分と比べると、溶解速度および平衡溶解度が比例的に増加する。これには、喘息患者およびCOPDの患者に投与した場合に、取り込みや応答速度、薬理学的効果に対する劇的な効果があり得る。
【0058】
長時間作用型のβ2−アゴニスト(LABA)を用いることは、長い間、喘息およびCOPDの気管支収縮性の要素を治療する上での鍵となる薬物治療法であった。治験によって、抗コリン薬の化合物である臭化イプラトロピウムにLABAを加えると、どちらの作用剤を単独で用いるよりも効果的であることが強調されている。LABAと抗コリン薬(好ましくは、長時間作用型のムスカリンアンタゴニスト(LAMA))との組み合わせは現在、喘息およびCOPDを扱うための重要な併用療法である。
【0059】
本製剤組成物は、β2−アゴニストおよび抗コリン薬という2種類の薬理活性成分、好ましくは長時間作用型のβ2−アゴニストおよび長時間作用型のムスカリンアンタゴニストという2種類の薬理活性成分を、共晶組成物中に含んでもよい。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、共晶組成物は、LABAとLAMAの特定の組み合わせで2種類の結晶性種間の相互作用が最大となって、均一性と規定の単一融点が得られるようなLABAとLAMAのどのような組み合わせからでも、得ることが可能である。その例を以下にあげておく。
【表1】
【0061】
β2−アゴニストと抗コリン薬との特に好ましい組み合わせは、アルブテロールと臭化イプラトロピウム、フマル酸ホルモテロールと臭化グリコピロニウム、キシナホ酸サルメテロールと臭化グリコピロニウム、フマル酸ホルモテロールと臭化アクリジニウム、オロダテロールと臭化チオトロピウム、ビランテロールと臭化ウメクリジニウム、ビランテロールと臭化グリコピロニウム、マレイン酸インダカテロールと臭化グリコピロニウム、キシナホ酸サルメテロールと臭化チオトロピウム、フマル酸ホルモテロールと臭化チオトロピウム、臭化水素酸フェノテロールと臭化グリコピロニウム、という組み合わせである。
【0062】
β2−アゴニストと抗コリン薬との好ましいモル比は、10:1から1:10であり、好ましくは9:1から1:9、好ましくは4:1から1:4、好ましくは2:1から1:1、好ましくは1:1である。
【0063】
共晶組成物であるような組み合わせ粒子、あるいは、部分的に共晶組成物であって部分的に一成分を過剰に含有するような組み合わせ粒子を使用することは、同一分子内に両方の薬理が存在し、よって両方の部分が互いに共有結合されているダイマー分子(これらの分子は、M3アンタゴニスト−β2アゴニスト(MABA)気管支拡張薬として知られている)を用いることなく、肺内での両薬剤の同時送達および同時配置を実現するための、代替手法となり得る。
【0064】
製剤組成物は、副腎皮質ステロイドおよびβ2−アゴニストである2種類の薬理活性成分を、共晶組成物中に含んでもよい。
【0065】
副腎皮質ステロイドと、β2−アゴニスト、好ましくはLABAとの同時送達は、喘息の炎症性の要素と気管支収縮性の要素の両方を治療するための重要な薬物治療法である。この優れた制御は、一緒に摂取した場合の薬剤相互の相乗作用によるものであり、これには、LABAによるグルココルチコイドレセプターの活性化、ならびに、それによって喘息で炎症に関連する他の細胞機能におよぼされる影響が含まれる。LABAを加えると、どちらの成分を単独で用いる場合よりも増悪が減るだけでなく、肺の機能と症状コントロールが大幅に改善される。物理的混合物からの活性剤の同時配置は、DPIまたはpMDIから放出される同一の混濁物に由来する場合、ランダムに起こりやすい。上記の手法は、鍵となる標的細胞と炎症や気管支収縮の病理に対する相乗作用を高め、添加剤の有効性を得る一助となる。こうして、用量が抑えられるとともに、安全性と付着性が改善される。
【0066】
LABAとの共晶を形成するのに適したコルチコステロイドとしては、そのステロイドとLABAとの特定の組み合わせで、2種類の結晶種間の相互作用が最大になり、融解物の均一性が生まれて単一の共晶融点が規定されるようなコルチコステロイドである、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、シクレソニド、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニドがあげられる。同様に、副腎皮質ステロイドとの共晶を形成するのに適したLABAとしては、フマル酸ホルモテロール、キシナホ酸サルメテロール、ならびに、カルモテロール、インダカテロール、ビランテロールトリフェニル酢酸塩などの新たな実体があげられる。
【0067】
製剤組成物は、副腎皮質ステロイドおよび抗コリン薬(好ましくはLAMA)である2種類の薬理活性成分を、共晶組成物中に含んでもよい。
【0068】
製剤組成物は、2種類の薬理活性成分を共晶組成物中に含み、当該薬理活性成分は、2種類または3種類以上の鎮咳薬物質であってもよい。
【0069】
製剤組成物は、2種類の薬理活性成分を共晶組成物中に含み、当該薬理活性成分は、2種類または3種類以上の抗ヒスタミン薬であってもよい。
【0070】
製剤組成物は、2種類の薬理活性成分を共晶組成物中に含み、当該薬理活性成分は、2種類または3種類以上の鬱血除去薬であってもよい。
【0071】
製剤組成物は、鎮咳薬物質、抗ヒスタミン薬、抗ヒスタミン薬から独立に選択される2種類の薬理活性成分を、共晶組成物中に含んでもよい。
【0072】
製剤組成物は、2種類の薬理活性成分を共晶組成物中に含み、当該薬理活性成分は、2種類または3種類以上のPDE1〜6阻害薬であってもよい。
【0073】
製剤組成物は、2種類の薬理活性成分を共晶組成物中に含み、当該薬理活性成分は、2種類または3種類以上のPDE4阻害薬であってもよい。
【0074】
製剤組成物は、2種類のカルシウムブロッカーである2種類の薬理活性成分を、共晶組成物中に含んでもよい。
【0075】
本発明によれば、本発明の組成物を調製するためのプロセスが提供される。このプロセスは、2種類の薬理活性成分を提供する工程、および、
i)2種類の薬理活性成分を溶媒に溶解し、溶媒を除去し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
ii)2種類の活性製剤成分の融解物を形成し、この融解物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
iii)第1の活性製剤成分の融解物を形成し、この融解物に第2の活性製剤成分の溶液を導入し、得られる組成物を固化し、共晶組成物の粒子を形成する工程、あるいは、
iv)2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕して、共晶組成物の粒子を形成する工程、を含み、
薬理活性成分は、各々独立に、β2アゴニスト、抗コリン薬、副腎皮質ステロイド、メチルキサンチン化合物、抗ヒスタミン薬、鬱血除去薬、鎮咳薬物質、PDE1〜6阻害薬、カルシウムブロッカー、トブラマイシンまたはシプロフロキサシン、ならびに、これらの塩、エステル、多形体、水和物または溶媒和物から選択される。
【0076】
このプロセスが、iv)2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕して、共晶組成物の粒子を形成する工程、を含む場合、機械的な粉砕は、好ましくは、微粉砕、ミル粉砕、ジェットミル粉砕、破砕またはこれらの併用によるものである。このプロセスを用いる場合、共晶混合物を形成するだけの十分な力を与えることが必要である。2種類の薬理活性成分を単にブレンドするだけでは、必ず共晶組成物になるとは限らない。
【0077】
このプロセスは、共晶組成物の粒子を、当該粒子用の非溶媒で処理し、粒子が前記非溶媒と接触しているときに、これらの粒子に超音波を印加することをさらに含んでもよい。この追加のプロセス工程には、極めて結晶性の高い粒子が得られるという別の利点があり、WO2010/007447号(その全体を本明細書に援用する)に開示されている。これは、Ultrasound Mediated Amorphous to Crystalline transition(超音波媒介非晶質結晶転移)の頭文字を取って、UMAX法と記載されている。共晶組成物の粒子を非溶媒で処理する際、組成物が乾燥していると好ましい。これは、粒子が、好ましくは実質的に溶媒(非溶媒、水および有機溶媒など)を含まないことを意味する。これは、共晶組成物の粒子が、実質的に、遊離の水または溶媒を含まないことを意味する。実質的に溶媒を含まないとは、共晶組成物の粒子が、5重量%未満の溶媒しか含有しないこと、一層好ましくは4%未満、一層好ましくは3%未満、一層好ましくは2%未満、一層好ましくは1%未満、一層好ましくは0.5%未満、一層好ましくは0.1重量%未満の溶媒しか含有しないことを意味する。
【0078】
本明細書で使用する場合、非溶媒とは、その中で、固体材料が、25℃で0.1mg/ml未満、好ましくは25℃で0.05mg/ml未満、好ましくは25℃で0.01mg/ml未満の量でしか可溶ではないもののことである。
【0079】
逆に、本明細書で使用する場合、溶媒とは、その中で、固体材料が、25℃で0.1mg/mlを超え、好ましくは25℃で0.5mg/mlを超え、好ましくは25℃で1mg/mlを超え、好ましくは25℃で5mg/mlを超え、好ましくは25℃で10mg/mlを超える量で可溶なもののことである。
【0080】
本願のプロセスは、好ましくは、
(i)溶媒中の2種類の薬理活性成分で構成される溶液を形成する工程と、
(ii)この溶液に、溶解される薬理活性成分が実質的に乾燥固体材料に変換されるよう、急速沈殿、フリーズドライ、凍結乾燥、超臨界溶液の急速膨張、噴霧乾燥またはこれらの組み合わせからなる群から選択される処理をほどこす工程を含み、
(iii)任意に、固体材料を、工程(ii)の処理の液体成分および/または気体成分から分離する工程を含んでもよく、
(iv)工程(ii)または工程(iii)で得られる前記乾燥固体材料を、その材料用の非溶媒で処理する工程と、
(v)工程(iv)で得られる固体材料が前記非溶媒と接触しているときに、この固体材料に超音波を印加する工程を含み、
(vi)任意に、工程(v)で得られる固体材料を分離および/または乾燥する工程を含んでもよい。
【0081】
好ましくは、このプロセスは順次行われるものであって、工程(iv)および(v)は、工程(ii)の直後に行われる。
【0082】
このようなプロセスでは、工程(ii)は、薬理活性成分の溶液の噴霧乾燥を含むとが好ましい。従来の噴霧乾燥を使用してもよい。噴霧乾燥プロセスでは、製造される固体材料は通常、実質的に非晶質である。
【0083】
工程(ii)の適用後、工程(iii)または(iv)に入る材料は、実質的に非晶質であることが好ましく、たとえば、結晶化度が50%未満、一層好ましくは結晶化度が40%未満、一層好ましくは結晶化度が25%未満、一層好ましくは結晶化度が10%未満、一層好ましくは結晶化度が5%未満、たとえば結晶化度が1%未満である。
【0084】
工程(iv)では、「処理する」という表現は、乾燥固体材料を非溶媒に曝露することを意味する。これは、工程(ii)で生成される材料を回収するのに用いる容器と同一の容器で実施してもよいし、別の容器で実施してもよい。好ましくは、非溶媒の量が固体材料の量よりも多い。たとえば、工程(iv)における固体材料と非溶媒との重量比が、好ましくは1:100の範囲、一層好ましくは1:10、たとえば1:2、1:3、1:4、1:5などである。
【0085】
工程(ii)および/または工程(iii)で生成される固体材料は、実質的に乾燥していることが好ましい。これは、好ましくはプロセス工程(iv)に入る固体材料のすべて(100%)が、好ましくは実質的に溶媒(水および有機溶媒を含む)を含まないことを意味する(ここで、「実質的に溶媒を含まない」とは、先に定義したとおりである)。
【0086】
どのような固体材料についても、当業者であれば、過度の負担なく、それに合った好適な溶媒を決定できる。特定の固体材料に適した溶媒の例をいくつかあげると、次のとおりである。メタノール、エタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、2−プロパノールなどの揮発性有機溶媒、ならびに、水などの非有機溶媒が、薬学的活性成分用の一般的な溶媒であろう。
【0087】
本発明の粒子を製造するためのWO2010/007447号における別のプロセスは、
(a)2種類の薬理活性成分を機械的に粉砕する工程、好ましくはミル粉砕、ジェットミル粉砕、破砕またはこれらの組み合わせによって、機械的に粉砕する工程、
(b)工程(a)で得られる前記薬理活性成分を、それに合った非溶媒で処理する工程、
(c)工程(b)で得られる固体組成物が前記非溶媒と接触しているときに、この固体組成物に超音波を印加する工程、を含み、
(d)任意に、工程(c)で得られる固体組成物を分離および/または乾燥する工程を含んでもよい。
【0088】
本発明の製剤組成物を調製するための別のプロセスは、両方またはすべての固体薬理活性成分の溶液を、固体材料が不溶であるか溶解性が乏しい溶媒(抗溶媒)と接触させ、溶媒/溶液および抗溶媒の混合物に超音波を印加して、微結晶組成物を急激に結晶化して分散させることを含む。このような方法は、WO2008/114052号に記載されている。
【0089】
本発明の製剤組成物は、乾燥粉末吸入器、加圧式定量噴霧式吸入器または呼吸作動型経鼻用吸入器によって投与可能である。したがって、本発明は、本発明の組成物を含むような乾燥粉末吸入器、加圧式定量噴霧式吸入器、または呼吸作動型経鼻用吸入器を提供する。
【0090】
また、本発明の製剤組成物は、炭水化物などの賦形剤、特に、フルクトース、グルコース、ガラクトースなどの単糖類;ラクトースなどの還元性二糖類、スクロースおよびトレハロースなどの非還元性二糖類;ラフィノースおよびメレジトースなどの非還元性オリゴ糖;マルトデキストリン、デキストラン、シクロデキストリンなどの非還元性デンプン由来の多糖類生成物;マンニトールおよびキシリトールなどの非還元性アルジトール、を含んでもよい。別の適した賦形剤として、たとえば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物があげられる。上記の賦形剤のいずれかの2種類または3種類以上の混合物も企図される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】さまざまなモル比でのフマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)および臭化グリコピロニウム(GB)の実験的に決定された二元系状態図を示す。
図2】さまざまな質量比でのフマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)および臭化グリコピロニウム(GB)の破砕混合物の融点データおよび吸熱(負のピーク)を示す。
図3】フマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)および臭化グリコピロニウム(GB)の、WO2010/007447号に記載されているような破砕およびUMAXによって調製された共晶組成物の微結晶粒子の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
図4】さまざまなモル比でのキシナホ酸サルメテロール(SX)および臭化グリコピロニウム(GB)の実験的に決定された二元系状態図を示す。
図5】さまざまな質量比でのキシナホ酸サルメテロール(SX)および臭化グリコピロニウム(GB)の破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)を示す。
図6】キシナホ酸サルメテロール(SX)および臭化グリコピロニウム(GB)の、WO2010/007447号に記載されているような破砕およびUMAXによって調製された共晶組成物の微結晶粒子の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
図7】さまざまなモル比での臭化水素酸フェノテロール(FHBr)および臭化グリコピロニウム(GB)の実験的に決定された二元系状態図を示す。
図8】さまざまな質量比での臭化水素酸フェノテロール(FHBr)および臭化グリコピロニウム(GB)の破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)を示す。
図9】さまざまなモル比でのマレイン酸インダカテロール(IM)および臭化グリコピロニウム(GB)の実験的に決定された二元系状態図を示す。
図10】さまざまな質量比でのマレイン酸インダカテロール(IM)および臭化グリコピロニウム(GB)の破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)を示す。
図11】さまざまなモル比でのテオフィリンおよびブデソニドの実験的に決定された二元系状態図を示す。
図12】テオフィリン(TP)およびブデソニド(BDS)の破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)を示す。
図13】テオフィリン(TP)およびブデソニド(BDS)の、WO2010/007447号に記載されているような破砕およびUMAXによって調製された共晶組成物の微結晶粒子の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
図14】臭化チオトロピウム(Tio)およびフマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)の1:1モル破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)を示す。
図15】臭化チオトロピウム(Tio)およびキシナホ酸サルメテロール(SX)の1:1モル破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)を示す。
【0092】
〔実施例〕
以下、下記の非限定的な実施例において、本発明を説明する。
【0093】
実施例1
臭化グリコピロニウム(GP)−フマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)
熱分析用に、比(w/w)が100/0、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、0/100のGB/FFDの二成分混合物を調製した。乳鉢と乳棒を使用して、各混合物を15分間破砕した。融点測定装置(MPA100 Optimelt、SRS U.S.A)および示差走査熱量測定(DSC)によって、試料を分析した。この破砕手順をさらに15分間継続し、完全な破砕が達成されたことを確認するために、DSC分析を繰り返した。透明融解温度(固相線と液相線の曲線)とモル比の図形表示を使用して、最低融点(共晶点)と、それゆえに共晶組成物のモル比とを規定した。
【0094】
図1を参照すると、フマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の二元系状態図に、ほぼFFD2モル:GB1モルで単一の均一な融解を生じる共晶組成物について、約147℃の部分に透明な液体への特徴的な融解転移(固相線−液相線)が示されている。
【0095】
図2を参照すると、フマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、FFDは148℃、GBは193℃で、それぞれ関連する吸熱が完全に失われる共晶組成物について、約124℃の融解開始点で最も降下する特徴的な融解吸熱が示されている。2つの結晶構造とリフシッツ−ファンデルワールス力が密に関連しているため、他の成分の割合が増える一方であるのに対し、純成分の融点は抑えられる。
【0096】
WO2010/007447号に示された方法によって、臭化グリコピロニウムおよびフマル酸ホルモテロール二水和物のUMAX微結晶粒子を調製した。共晶比での臭化グリコピロニウムおよびフマル酸ホルモテロール二水和物を、メタノール(300mL)に溶解させた。得られた溶液を、オリフィス0.7mmの二流体ノズルを取り付けたBuchi−B290噴霧乾燥器を用いて、補助用窒素の流速35〜40m3/時(100%アスピレータ−)、流速9mL/分(30%ポンプ)、ノズルクリーン設定2で、噴霧乾燥させた。入口温度は80℃、出口温度は45℃であった。B−290サイクロンの底につないだ最大容量500mLの攪拌した超音波容器にジイソプロピルエーテル(300mL)を投入し、5℃に温度調節した。40W連続出力で2時間動作している超音波容器に噴霧乾燥生成物を集めた後、非晶質材料の第1の粒子を加えた。共晶組成物の粒子を濾過により回収した。
【0097】
図3を参照すると、(WO2010/007447号に規定されているような)破砕およびUMAX処理によって調製したGB/FFD共晶材料のXRPDパターンに、GBおよびFFDのXRPDディフラクトグラムが、過去に報告されたものと似ていることが示されている。破砕生成物およびUMAX処理材料のXRPDディフラクトグラムは、GBとFFDとの物理的混合物と同一であることから、両方の成分の結晶格子が維持されていることがわかる。
【0098】
示差走査熱量測定(DSC)
DSC Q2000 V24.2 build 107(TA Instruments, UK)で、DSCの実験を実施した。約1〜3mgの材料をDSCの試料皿に秤量し、加熱勾配を25℃/分として、最大200℃まで加熱した。以下の工程を用いて、DSC測定を実施した。
→Instrument DSC Q2000 V24.2 Build 107
→モジュールDSCスタンダードセルRC
→試料PXLB040-83
→サイズ1.2800mg
○方法加熱実験25℃−分
○秤量試料を25℃/分の速度で200℃まで加熱する
【0099】
融解プロファイルの決定
融点測定装置(MPA100 Optimelt、SRS U.S.A)を使用して、混合物の融解プロファイルをモニタリングした。融点測定用毛細管の開放端を粉末に押し込むことで、この毛細管に試料を入れた。毛細管の閉口端をベンチトップに対して慎重に軽く打ち付けることで、閉口端に粉末を圧密した。深さ1〜2mmの試料が毛細管を通して見えるまで、このサイクルを繰り返した。試料が融解するまで、試料を1分あたり20℃の速度で加熱した。試料のバルクに液体が最初に現れた温度と、試料全体が液体になる温度を記録した。この装置では、光透過率によって融解を検出する。光透過率10%の場合を融解開始点とし、光透過率50%を単一点として、光透過率100%で透明な液体と定義する。
【0100】
実施例2
臭化グリコピロニウム(GB)−キシナホ酸サルメテロール(SX)
実施例1の方法に準じて、熱分析用に、比(w/w)が100/0、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、0/100のGP/SXの二成分混合物を調製した。実施例1で示したものと同じようにして、Optimelt融点測定装置を用いる融解プロファイルの決定を実施した。
【0101】
図4を参照すると、キシナホ酸サルメテロール(SX)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の二元系状態図に、ほぼSX6モル:GB1モルで単一の均一な融解を生じる共晶組成物について、約124℃の部分に透明な液体への特徴的な融解転移(固相線−液相線)が示されている。
【0102】
図5を参照すると、キシナホ酸サルメテロール(SX)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、SXは124℃、GBは191℃で、それぞれ関連する吸熱が完全に失われる共晶組成物について、約100℃の融解開始点で最も降下する特徴的な融解吸熱が示されている。他の成分の割合が増える一方であるのに対し、純成分SXおよびFFの融点も抑えられる。
【0103】
WO2010/007447号に示された方法によって、臭化グリコピロニウムおよびキシナホ酸サルメテロールのUMAX微結晶粒子を調製した。共晶組成での臭化グリコピロニウムおよびキシナホ酸サルメテロールを、メタノール(300mL)に溶解させた。得られた溶液を、オリフィス0.7mmの二流体ノズルを取り付けたBuchi−B290噴霧乾燥器を用いて、補助用窒素の流速35〜40m3/時(100%アスピレータ−)、流速9mL/分(30%ポンプ)、ノズルクリーン設定2で、噴霧乾燥させた。入口温度は80℃、出口温度は45℃であった。B−290サイクロンの底につないだ最大容量500mLの攪拌した超音波容器にシクロヘキサン(300mL)を投入し、5℃に温度調節した。40W連続出力で2時間動作している超音波容器に噴霧乾燥生成物を集めた後、非晶質材料の第1の粒子を加えた。共晶組成物の粒子を濾過により回収した。
【0104】
図6を参照すると、破砕およびUMAX処理によって調製したGB、SX、GB:SX共晶材料のXRPDパターンに、GBおよびSXのXRPDディフラクトグラムが、過去に報告されたものと似ていることが示されている。共晶組成での破砕生成物および共晶組成でのUMAX処理材料のXRPDディフラクトグラムは、GBとSXとの物理的混合物と同一であることから、両方の成分の結晶格子が維持されていることがわかる。
【0105】
実施例3
臭化グリコピロニウム(GP)−臭化水素酸フェノテロール(FHBr)
実施例1の方法に準じて、熱分析用に、比(w/w)が100/0、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、0/100のGB/FHBrの二成分混合物を調製した。実施例1で示したものと同じようにして、Optimelt融点測定装置を用いる融解プロファイルの決定を実施した。実測温度を示しておく。
【表2】
【0106】
図7を参照すると、臭化水素酸フェノテロール(FHBr)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の二元系状態図に、ほぼFHBr2モル:GB3モルの比で単一の均一な最小融解を生じる共晶組成物について、約140℃の部分に透明な液体への特徴的な融解転移(固相線−液相線)が示されている。
【0107】
図8を参照すると、臭化水素酸フェノテロール(FHBr)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、FHBrは235℃、GBは195℃で、それぞれ関連する吸熱が完全に失われる共晶組成物について、125℃の融解開始点前後と130℃の負のピーク前後で最も降下する特徴的な融解吸熱が示されている。他の成分の割合が増える一方であるのに対し、純成分FHBrおよびGBの融点も抑えられる。
【0108】
実施例4
臭化グリコピロニウム(GB)−マレイン酸インダカテロール(IM)
実施例1の方法に準じて、熱分析用に、比(w/w)が100/0、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、0/100のGB/IMの二成分混合物を調製した。
【0109】
実施例1で示したものと同じようにして、Optimelt融点測定装置を用いる融解プロファイルの決定を実施した。実測温度を示しておく。
【表3】
【0110】
図9を参照すると、マレイン酸インダカテロール(IM)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の二元系状態図に、IM:GBがほぼ1:2のモル比で単一の均一な最小融解を生じる共晶組成物について、約163℃の部分に透明な液体への特徴的な融解転移(固相線−液相線)が示されている。
【0111】
図10を参照すると、マレイン酸インダカテロール(IM)と臭化グリコピロニウム(GB)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、IMは210℃、GBは195℃で、それぞれ関連する吸熱が完全に失われる共晶組成物について、125℃の融解開始点前後と135℃の負のピーク前後で最も降下する特徴的な融解吸熱が示されている。他の成分の割合が増える一方であるのに対し、純成分IMおよびGBの融点も抑えられる。
【0112】
WO2010/007447号に示された方法によって、臭化グリコピロニウムおよびマレイン酸インダカテロールのUMAX微結晶粒子を調製した。共晶組成での臭化グリコピロニウムおよびマレイン酸インダカテロールを、70℃でメタノール(300mL)に溶解させた。得られた溶液を、オリフィス0.7mmの二流体ノズルを取り付けたBuchi−B290噴霧乾燥器を用いて、補助用窒素の流速35〜40m3/時(100%アスピレータ−)、流速9mL/分(30%ポンプ)、ノズルクリーン設定2で、噴霧乾燥させた。入口温度は80℃、出口温度は45℃であった。B−290サイクロンの底につないだ最大容量500mLの攪拌した超音波容器にジイソプロピルエーテル(300mL)を投入し、5℃に温度調節した。40W連続出力で2時間動作している超音波容器に噴霧乾燥生成物を集めた後、非晶質材料の第1の粒子を加えた。共晶組成物の粒子を濾過により回収した。
【0113】
実施例5
テオフィリン(TP)−ブデソニド(BDS)
実施例1の方法に準じて、熱分析用に、比(w/w)が100/0、90/10、80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80、10/90、0/100のTP/BDSの二成分混合物を調製した。実施例1で示したものと同じようにして、Optimelt融点測定装置およびDSCを用いる融解プロファイルの決定を実施した。データを示しておく。
【表4】
【0114】
WO2010/007447号に示された方法によって、ブデソニドおよびテオフィリンのUMAX微結晶粒子を調製した。テオフィリン(5g)を氷(100%)酢酸(100mL)に溶解させた。ブデソニド(5g)をアセトン(100mL)に溶解させた。これら2種類の溶液を一緒に混合し、この混合溶液を、オリフィス0.7mmの二流体ノズルを取り付けたBuchi−B290噴霧乾燥器を用いて、補助用窒素の流速35〜40m3/時(100%アスピレータ−)、流速9mL/分(30%ポンプ)、ノズルクリーン設定2で、噴霧乾燥噴霧乾燥させた。入口温度は110℃、出口温度は38℃であった。B−290サイクロンの底につないだ最大容量500mLの攪拌した超音波容器にヘプタン(300mL)を投入し、5℃に温度調節した。40W連続出力で2時間動作している超音波容器に噴霧乾燥生成物を集めた後、非晶質材料の第1の粒子を加えた。入口温度110℃、出口温度50℃で上記のようなBuchi−B290を用いて懸濁液を噴霧乾燥することで、共晶組成物の粒子を回収した。
【0115】
図11を参照すると、テオフィリン(TP)とブデソニド(BDS)との破砕混合物の二元系状態図に、TP:BDSがおよそ1:1のモル比で最も降下する単一の均一な最小融解を生じる共晶組成物について、約230℃の部分に透明な液体への特徴的な融解転移(固相線−液相線)が示されている。
【0116】
図12を参照すると、テオフィリン(TP)とブデソニド(BDS)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、共晶組成物について、約220℃(融解開始点/ピーク温度)の部分に特徴的な融解吸熱が示されていることから、BDS:TPがおよそ7:3の質量比で単一の均一な融解であることがわかる。これは、BDSの分子量が430.5、TPが180.2であるほぼBDS:TPのモル比1:1と同等である。完全融解または全体が分解されるかのいずれかが生じたため、240℃でDSC分析を終了した。
【0117】
図13を参照すると、TP、BDS、破砕およびUMAX処理によって調製した(BDS:TP、7:3質量比)材料のXRPDパターンに、TPおよびBDSのXRPDディフラクトグラムが、過去に報告されたものと似ていることが示されている。破砕生成物およびUMAX処理材料のXRPDディフラクトグラムは、TPおよびBDSの物理的混合物と同一であることから、両方の成分の結晶格子が維持されていることがわかる。
【0118】
実施例6
臭化チオトロピウムおよびフマル酸ホルモテロール二水和物
実施例1の方法に準じて、熱分析用に、モル比1:1のTio/FFDの二成分混合物を調製した。実施例1で示したものと同じようにして、Optimelt融点測定装置およびDSCを用いる融解プロファイルの決定を実施した。データを以下に示しておく。
【表5】
【0119】
図14を参照すると、臭化チオトロピウム(Tio)とフマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、共晶組成物について、約102℃(融解開始点/ピーク温度)の部分に特徴的な融解吸熱が示されていることから、共晶組成物の単一の均一な融解であることがわかる。このため、1:1モル比で共晶が形成される。
【0120】
実施例7
臭化チオトロピウムおよびキシナホ酸サルメテロール
実施例1の方法に準じて、熱分析用に、モル比1:1のTio/SXの二成分混合物を調製した。実施例1で示したものと同じようにして、Optimelt融点測定装置およびDSCを用いる融解プロファイルの決定を実施した。データを以下に示しておく。
【表6】
【0121】
図15を参照すると、臭化チオトロピウム(Tio)とキシナホ酸サルメテロール(SX)との破砕混合物の融点および吸熱(負のピーク)に、共晶組成物について、約104℃(融解開始点/ピーク温度)の部分に特徴的な融解吸熱が示されていることから、共晶組成物の単一の均一な融解であることがわかる。このため、1:1モル比で共晶が形成される。
図1
図2
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図15