(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学素子が、相対向する一対の主面および相対向する一対の側面を有しており、前記一対の主面の一方が前記接合面として機能することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の光学部品。
前記金属膜と前記接合面との間に形成された下地膜を有しており、前記下地膜が前記非被覆部に露出していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載の光学部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、光ファイバーの更なる高速化、高周波数化が加速度的に進行している。各種の光学部品には、これに対する対応が迫られており、安定性や信頼性の観点から、光学部品を実装基板に対して接合する際には、樹脂よりもハンダなどの金属が用いられている。このため、光学部品の主面に接合用の金属膜を形成し、この金属膜を別体の実装基板に対してハンダ等で金属接合することが主流である。
【0006】
本発明者は、SHG素子などの光学素子の底面に、金属接合用の金属膜を形成し、次いで、光学素子の入射面、出射面を端面研磨し、金属膜を基板に対して金属接合することを試みていた。しかし、その過程で、以下のような問題点に遭遇した。
【0007】
すなわち、光学素子の端面を光学研磨する際に、研磨パッドによって端面を擦過すると、金属膜に微細な捲くれが発生し、電極膜が剥離して浮いてしまうことがあった。こうした電極膜の剥離が生ずると、実装基板等に接合した後、所望の接合強度が得られず、光学的特性が変動しやすかったり、長期の信頼性試験を満足しなかったりするおそれがあるので、歩留り低下の原因となる。こうした金属膜の剥離の頻度は、全数の約20%に達していた。
【0008】
このため、本発明者は、端面から接合用の金属膜を後退させ、金属膜のエッジと端面との間に、金属膜の設けられていない非被覆部を設けることによって、端面を研磨するときの金属膜の剥離や浮きを防止することを検討してみた。
【0009】
しかし、この場合には、以下の問題点が生ずることが判明した。すなわち、光学素子は微小なものであり、一枚のウエハーから多数の光学素子を切り出すことが必要である。そして、各光学素子について、パターニング精度や切り出す際の寸法精度、さらには端面研磨の加工寸法精度には限界がある。つまり、各光学素子の非被覆部の位置には通常数十μmの位置ずれが生ずる。この程度の位置ずれは通常は問題がないのであるが、上述のように、光学素子の端面から非被覆部を設けた場合には問題が起こる。なぜなら、非被覆部の幅が小さいと、一部の光学素子では、切り出しの際に非被覆部が残らず、端面まで被覆されてしまう。一方、他の光学素子では、非被覆部の幅が大きくなるおそれがある。
【0010】
基板に実装された状態では金属膜は別体の基板に対して金属接合されており、従って金属膜を通じて光学素子の熱を逃がすことで放熱制御を行っている。非被覆部では、このような放熱がなされない。ここで、金属素子ごとに非被覆部の幅が変化すると、光学素子ごとに放熱の度合いが異なることになり、性能バラツキの原因となることがわかった。
【0011】
本発明の課題は、接合用の金属膜を介して別体の基板に対して金属接合される光学部品において、光学部品の端面研磨時の金属膜の捲くれによる剥離や浮きを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光学部品は、接合面および光学研磨された端面を有している光学素子、および
光学素子の接合面に形成された、光学素子を基板に対して接合するための金属膜を備えており、
金属膜が、接合面の端面側の端部以外の領域を被覆する主被覆部と、接合面を端部内で被覆
し、かつ端面に隣接して設けられている端部被覆部とを含んでおり、
接合面が金属膜によって被覆されていない非被覆部が
少なくとも主被覆部と端部被覆部との間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合用の金属膜を介して別体の基板に対して金属接合される光学部品において、接合面の端部に金属膜の被覆部および非被覆部を
設け、非被覆部を少なくとも主被覆部と端部被覆部との間に設けることによって、
端面に隣接する端部被覆部が光学研磨時に捲くれることで剥離や浮きが生じても、それが主被覆部へと伝搬することを防止できる。これとともに、端部内にも金属膜による被覆部を設けることによって、端部内でも光学部品と別体の基板との金属接合を確保できる。従って、光学部品ごとに金属膜の位置ずれが生じても、主被覆部への剥離の進展を確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
本発明者は、
図1に示すような光学部品20の量産を検討していた。本例の光学素子20においては、素子本体3にチャンネル型光導波路2が形成されている。素子本体3は、一対の主面3a,3b、一対の側面3cおよび一対の端面3dを有している。本例では、光導波路2が、一対の端面3d間に延びている。
【0017】
この光学部品を、別体の基板に対して金属接合するためには、主面3aもしくは3bのどちらか一方を接合面とし、接合面上に接合用の金属膜を形成する必要がある。本例では、主面3aに所定の電極を形成し、反対側の底面3b上に金属膜4を設けることにした。接合強度を安定にするため、金属膜4は、底面3bの全面にわたって設ける。
【0018】
しかし、光学素子20の端面3dを光学研磨する際に、研磨パッドによって端面を擦過すると、特に、Au金属膜に微細な捲くれが発生し、金属膜が剥離して浮いてしまうことがあった。こうした金属膜の剥離の頻度は、全数の約20%に達していた。
【0019】
このため、本発明者は、例えば
図2に示すように、端面3dから接合用の金属膜4Aを後退させ、金属膜のエッジと端面との間に、金属膜の設けられていない非被覆部5Aを設けることを検討した。すなわち、本例の光学素子20Aにおいては、主面3aに所定の電極を形成し、反対側の底面3c上に金属膜4Aを設ける。ただし、金属膜4Aは、底面3bの全面にわたって設けていない。すなわち、底面3bのうち、各端面3d側の端部には、金属膜4Aの設けられていない非被覆部5Aを設けた。これによって、端面3dを研磨するときの金属膜の剥離や浮きを防止できるはずであった。
【0020】
しかし、この場合には、以下の問題点が生ずることが判明した。すなわち、光学素子は微小なものであり、一枚のウエハーから多数の光学素子を切り出すことが必要である。この点について、
図7を参照しつつ説明する。
図7(a)に示すように、ウエハー15上に接合用の金属膜16を設ける。そして、エッチングによって金属膜16の一部を除去し、非被覆部のパターン17を形成する(
図7(b)参照)。この後、
図7(c)に示すように、切断線18、19に沿って縦横にウエハー15を切断し、各光学素子を得る。
【0021】
ここで一枚のウエハー15からは多数枚の光学素子1を切り出す必要がある。しかし、非被覆部5Aを形成するためのフォトリソグラフィの精度、そして切り出し寸法の精度、さらには端面研磨の加工寸法精度にはおのずと限界があり、各非被覆部の位置には通常数十μmの位置ずれが生ずる。この結果、光学素子の端面から非被覆部5Aを設けた場合には、問題が起こる。なぜなら、非被覆部5Aの幅tが小さいと、端面の切り出し時の寸法が少しずれると、切り出しの際に非被覆部5Aが残らず、底面が端面3dまで被覆されてしまう。
【0022】
ここで、
図2(c)に示すように、非被覆部5Bの幅tを十分に大きくすることによって、切り出し時の位置ずれが生じても、端面3dの手前に非被覆部5Bが残るようにすることも検討した。しかし、この場合には、非被覆部5Bの幅tを大きくする必要があり、接合の安定性が低下する上、接合されていない領域では光学素子から基板への放熱が少なくなる。非被覆部5Bの幅が大きくなり、しかも切り出し時の位置ずれがあると非被覆部5Bの幅が著しく大きくなり易いことから、特に端部での基板への放熱量が低下し、さまざまな光学特性にバラツキを生じさせる。
【0023】
図3、
図4は、本発明例に係る光学部品21Aを示すものである。
【0024】
本例の光学素子21Aにおいては、素子本体3にチャンネル型光導波路2が形成されている。素子本体3は、一対の主面3a,3b、一対の側面3cおよび一対の端面3dを有している。本例では、光導波路2が、一対の端面3d間に延びている。
【0025】
本例では、主面3aに所定の電極を形成し、反対側の底面3bを接合面とし、底面上に金属膜を設けた。ここで、
図3(b)、
図4に示すように、底面3bのうち端面3d側の端部30以外の領域に主被覆部6を形成した。これとともに、底面の端面3d側の各端部30においては、細長いストライプ状の端部被覆部7が、主被覆部6から端面3dへと向かって複数列配列されている。隣接する端部被覆部7の間にはスリット状の非被覆部8が形成されており、また最も内側にある端部被覆部7と主被覆部6との間にもスリット状の非被覆部8が形成されている。
【0026】
本実施形態によれば、接合面3bの端部30に金属膜の被覆部7を設け、端部被覆部7と主被覆部6との間に非被覆部8を設けることによって、端部被覆部7が光学研磨時に捲くれることで剥離や浮きが生じても、それが主被覆部6へと伝搬することを防止できる。これとともに、端部30内にも金属膜による被覆部7を設けることによって、端部内でも光学部品1と別体の基板との金属接合を確保できる。従って、光学部品1ごとに金属膜の位置ずれが生じても、複数あるスリット8のうち一つあるいは複数が、被覆部7と主被覆部6との間に介在するので、主被覆部への剥離の進展を防止できる。
【0027】
図5、
図6に示す光学部品21Bにおいては、素子本体3にチャンネル型光導波路2が形成されている。素子本体3は、一対の主面3a,3b、一対の側面3cおよび一対の端面3dを有している。本例では、光導波路2が、一対の端面3d間に延びている。
【0028】
本例では、主面3aに所定の電極を形成し、反対側の底面3bを接合面とし、底面上に金属膜を設けた。ここで、
図5(b)、
図6に示すように、底面3bのうち端面3d側の端部30以外の領域に主被覆部6を形成した。これとともに、底面の端面3d側の各端部においては、四角形の端部被覆部7Aが、主被覆部6から端面3dへと向かって複数列配列されており、また一対の側面3c間に複数列配列されている。底面の長手方向に向かって隣接する端部被覆部7Aの間にはスリット状の非被覆部8Aが形成されており、また最も内側にある端部被覆部7と主被覆部6との間にもスリット状の非被覆部8Aが形成されている。底面の幅方向に向かって隣接する端部被覆部7Aの間にはスリット状の非被覆部8Bが形成されている。
【0029】
本実施形態によれば、接合面3bの端部30に金属膜の被覆部7Aを設け、端部被覆部7Aと主被覆部6との間に非被覆部8Aを設けることによって、端部被覆部7が光学研磨時に捲くれることで剥離や浮きが生じても、それが主被覆部6へと伝搬することを防止できる。これとともに、端部内にも金属膜による被覆部7Aを設けることによって、端部内でも光学部品1と別体の基板との金属接合を確保できる。従って、光学部品1ごとに金属膜の位置ずれが生じても、複数あるスリット8Aのうち一つあるいは複数が、端面側の末端にくる被覆部7と主被覆部6との間に介在するので、主被覆部の剥離の進展を確実に防止できる。更に、底面の幅方向に向かう剥離の伝搬も、スリット状の非被覆部8Bによって抑制できる。
【0030】
以下、本発明の各要素について更に詳細に述べる。
光学素子の種類は特に限定されず、光学的機能を果たせばよい。具体的には、波長変換素子、光強度変調器、光位相変調器、光スイッチング素子などを例示できる。
【0031】
光学素子に形成される光導波路の種類は限定されず、スラブ導波路、チャンネル導波路を含む。また、導波路の種類は、チタン拡散法などの内拡散型光導波路や、リッジ型光導波路であってよい。また、好適な実施形態においては、光学素子の少なくとも光導波路内に周期分極反転構造が形成されている。
【0032】
本発明は、波長変換素子に対して特に好適である。なぜなら、波長変換素子は、波長変換で発生する光の吸収による発生熱で導波路方向に対して温度偏差が付く場合がある。温度偏差が生じると、材料の屈折率の温度依存性により、波長変換を行うための周期構造が長手方向に実効的に不均一になり、波長変換効率を低下させることになる。効率の低下を招かないよう、温度差を無くすため、素子の裏面を実装基板等に浮き箇所が少なく接合する必要があるからである。
【0033】
光学素子は、接合面および光学研磨された端面を有している。好適な実施形態においては、光学素子は、板状であり、相対向する一対の主面を有している。主面とは、他の面よりも相対的に面積の大きい表面である。この場合には、一方の主面が接合面として機能する。また、好適な実施形態においては、光学素子が、相対向する一対の側面を有している。この場合には、好適な実施形態においては、側面が光学研磨されていない。
【0034】
本発明では、一対の主面のうち一方を金属接合用の接合面として用いる。
図3〜
図6の例では、底面3bを接合面として用いたが、底面3b側に制御電極を形成する場合には、表面3aを接合面として使用することができる。
【0035】
一般に、側面はダイシングなどの切断工程によって形成されており、端面のような精密な光学研磨は行わない。側面はダイシングにより局所的に10μm程度のチッピングが生じるが、このような箇所を含んでテープによる剥離試験を行っても金属膜の捲くれや剥離、浮きは生じなかった。本発明は、光学研磨を行う端面を起点とする接合用金属膜の捲くれや浮き、剥離という未知の問題点を解決するものである。
【0036】
光学素子は、一体の基板3に形成されていてよい。しかし、光学素子の内部構造は特に限定するものではない。例えば、光学素子が、支持基板、強誘電性材料からなる光学基板、および支持基板と光学基板とを接着する接着層を備えていてもよい。
【0037】
本発明の光学部品は、光学素子を基板に対して接合するための金属膜を備える。
【0038】
ここで言う接合用の金属膜は、接合用の金属に接する最表面の金属膜であり、接合用金属膜の下にある下地膜や中間膜は含まない。
【0039】
例えば、
図3〜
図6の例では、光学素子の底面3b上に、下地膜9、中間膜10、接合用金属膜11を順次形成している。下地膜9や中間膜10は、接合用金属膜11を光学素子1に対して強固に接合するために設けることがある。
図3〜
図6の例では、主被覆部6および端部被覆部7、7Aは、それぞれ、金属膜11によって被覆されている部分を意味している。一方、非被覆部8、8A、8Bには下地膜9が露出している。非被覆部8、8A、8Bに更に中間膜10が露出していてもよい。
【0040】
光学素子を構成する光学材料は、特に限定されないが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、ニオブ酸カリウムリチウム、KTP、GaAs及び水晶、K
3Li
2Nb
5O
15、La
3Ga
5SiO
14などを例示することができる。
【0041】
光学材料中には、光導波路の耐光損傷性を更に向上させるために、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含有させることができ、マグネシウムが特に好ましい。強誘電体単結晶中には、ドープ成分として、希土類元素を含有させることができる。この希土類元素は、レーザー発振用の添加元素として作用する。この希土類元素としては、特にNd、Er、Tm、Ho、Dy、Prが好ましい。
【0042】
接合用の金属膜の材質は、金、ニッケル、銅などが例示できるが、安定した接合を行うためには金が好ましい。銅やニッケルなどは表面が酸化されやすいため、接合しにくくなる場合がある。また、下地膜の材質は、金を表面に成膜することを想定すると、クロム、チタン、銅が好ましい。また中間膜を用いる場合には、その材質は、ニッケル、白金が好ましい。
【0043】
中間膜を利用した場合には、電蝕を防止する上で効果的である。しかし、金属接合後に、光学部品を実装した部材を気密封止するような場合は、金属膜と下地膜との2種の金属だけでも電蝕は生じない。
【0044】
金属接合の方法は、ハンダの他、金属同士の直接接合を例示できる。
【0045】
本発明では、接合用金属膜が、接合面の端面側の端部以外の領域を被覆する主被覆部と、接合面を端部内で被覆する端部被覆部とを含んでおり、端部に、金属膜によって被覆されていない非被覆部が設けられている。
【0046】
端部被覆部は少なくとも一つは必要であり、複数存在していることが好ましい。また、非被覆部も少なくとも一つは必要があるが、複数存在していることが好ましい。これによって、加工時の位置ずれや偏差による悪影響を吸収し易くなる。
【0047】
好適な実施形態においては、非被覆部がスリット状である。この場合には、金属膜の剥離の進展を防止するという観点からは、非被覆部の幅d、dA、dBは、1μm以上が好ましく、3μm以上が更に好ましい。また、金属接合の安定性および放熱という観点からは、非被覆部の幅d、dA、dBは、10μm以下が好ましく、5μm以下が更に好ましい。
【0048】
好適な実施形態においては、非被覆部が光学素子の一方の側面から他方の側面に向かって延びている。
図3〜
図6はこの実施形態に係るものである。これによって、端面から主被覆部への剥離の伝搬がいっそう効果的に防止される。
【0049】
また、好適な実施形態においては、非被覆部が主被覆部から端面へと向かって延びている。
図5、
図6はこの実施形態に係るものである。これによって、剥離の側面方向に向かう伝搬も防止されるので、いっそう好適である。
【0050】
また、好適な実施形態においては、端部において複数の端部被覆部が形成されており、各端部被覆部が非被覆部によって包囲されている。
図5、
図6はこの実施形態に係るものである。このように端部被覆部を非被覆部によって包囲することで、更に確実に端部における接合を確保できる。
【0051】
各端部被覆部の平面的形状は、
図3、
図4の例ではストライプ状であり、
図5、
図6の例では四角形である。しかし、各端部被覆部の平面的形状は、ストライプ状や四角形に限定されるものではなく、三角形、六角形などの多角形や、真円形、楕円形などの円形であってもよい。
【0052】
各端部被覆部の幅Wは、光学素子の金属接合を確保するという観点からは、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましい。また、各端部被覆部の幅Wは、非被覆部のスペースを確保するという観点からは、20μm以下が好ましく、10μm以下が更に好ましい。
【0053】
端面3dから主被覆部6までの間隔Rは、寸法精度に伴う非被覆部の位置ずれを補償するという観点からは、50μm以上が好ましく、100μm以上が更に好ましい。また、間隔Rは、金属接合強度を安定とし、光学素子から基板への排熱を促進するという観点からは、200μm以下が好ましく、150μm以下が更に好ましい。
【0054】
また、光学研磨としては、以下が好ましい。
ダイシングによりウェハーから素子を切断後、ダイヤモンド砥粒の大きさを小さくしつつ段階を踏んでラッピング端面研磨を行い、最後の仕上げで、コロイダルシリカ砥粒を使用してCMP(Chemical mechanical polishing)研磨を行う。
【実施例】
【0055】
(比較例1)
図1に示すような形態の光学部品を作製した。
ただし、光学素子1をニオブ酸リチウムによって形成し、光学素子1内に周期分極反転構造を形成するとともに、リッジ型のチャンネル光導波路2を形成した。
【0056】
具体的には、厚さ0.5mmの5度オフyカットMgO5%ドープニオブ酸リチウム基板上に、周期6.6μmの櫛状周期電極をフォトリソグラフィ法によって形成した。この基板の裏面には全面に一様電極を形成したのち、パルス電圧を印加し、周期分極反転構造を形成した。次いで、厚さ0.6umのSiO
2アンダークラッドをスパッタ法によって成膜した。
【0057】
厚さ0.5mmのニオブ酸リチウム基板に接着剤を塗布した後、前記のMgOドープニオブ酸リチウム基板と貼り合せた。MgOドープニオブ酸リチウム基板の表面を、厚さ3.7μmとなるまで研削、研磨した。得られた基板に光導波路を形成した後、厚さ0.6μmのSiO
2オーバークラッドをスパッタ法によって成膜した。
【0058】
得られた光学素子1の底面3b上に、全面にわたって、スパッタリング法によって、厚さ500オングストロームのクロム膜、厚さ2000オングストロームのニッケル膜、厚さ500オングストロームの金膜を形成した。金膜が接合用の金属膜であり、クロム膜が下地膜であり、ニッケル膜が中間膜である。ただし、光学素子1の底面3bの全面にわたって、クロム膜、ニッケル膜、金膜を形成した。
【0059】
得られたウエハーをダイサーによって、
図7(c)の18に示すように切断し、細長い切断物を得た(寸法約10mm×約30mm:長い場合は、2分割、あるいは3分割して切断物の長さを30mmに揃えた)。この切断物を端面研磨治具に固定し、ダイヤモンド砥粒、およびコロイダルシリカ砥粒によって端面研磨した後、両端面に反射防止膜を施した。この細長い切断物を更に19のように切断し、幅0.8mmの光学部品を得た。
【0060】
図8は、得られた光学部品の端面付近において、金属膜を手前にして観察した写真である。
図8の中央部に横方向に向かって端面が延びており、端面の上の黒色部分は空間である。端面から見て下側(部品の底面)には、金属(金、ニッケル、クロム)が存在しておらず、ニオブ酸リチウム基材が露出した剥離部分が形成されており、その下に明るい金膜が残留している。
【0061】
図9は、得られた光学部品を切断し、端面を観察した写真である。矢印で示した領域には突起が見えるが、これは下地膜であるクロム膜が、光学研磨によって捲くれ上がっていることを示しており、最表面の金の捲くれに伴って、中間層のニッケル、さらにはその下地のクロムまで剥離させている現象を表している。
【0062】
(比較例2)
比較例1と同様にして光学部品を作製した。ただし、本例では、
図2(b)に示すように、底面の端面側の端部に非被覆部5Aを形成し、クロム膜を露出させた。
【0063】
本例では、端部に非被覆部を残し、歩留まり良く端面研磨するには、非被覆部の幅tを50μm以上とする必要があることが判明した。その反面、非被覆部の幅tを50μm以上にすると、端面研磨により、このCrの領域の幅が狭いものや広いものが加工され、特に幅の非常に大きい非被覆部が形成される場合があるので、光学部品間で接合後の特性のバラツキが大きくなった。特に出射側の波長変換光が強く発光する領域で、非被覆部の幅が大きいと、接合しない領域が大きくなり、基板への排熱性が悪くなる。この領域の長さ分は、波長変換に全く寄与せず、波長変換効率を低下させることになった。
【0064】
(実施例1)
比較例1と同様にして光学部品を作製した。ただし、本例では、
図3、
図4に示すように、底面の端面側の端部に非被覆部8および端部被覆部7を形成し、クロム膜を露出させた。非被覆部8は21本とし、幅は2μmとした。また端部被覆部は20本とし、幅は6μmとした。
【0065】
こうした金属膜パターンは、
図7(b)の17に示すように、ウエハー上にパターニングすることによって、複数の光学部品について容易に一括してパターニングすることが可能であった。
【0066】
得られた光学部品の観察結果を示す。
図10は、端面で剥がれが生じたものの写真であり、
図11は、端面で金属膜の剥がれがなく研磨できたものである。
【0067】
光学部品の端面研磨を行うと、
図10に示したように、一部の素子では、金膜が端面から捲れるように剥がれたものが生じた。矢印は剥離部分を示す。また、
図10の写真では端部が三つの部分に分かれており、最上部は端部被覆部7であり、その下に非被覆部8があり、その下に端部被覆部7がある。これは、端面研磨すると、研磨パッドに柔らかいAuが避けて、Auが捲れてしまったと考える。さらにAuが捲くれた箇所では、下地のニッケル膜、クロム膜もくっついて捲れていた。
なお、
図11には、端面付近で剥離がない状態の写真を示す。
【0068】
この端面研磨で金膜等が剥がれた領域でテープを使用して剥離試験を行うと、金膜等のパターンが残っている端部被覆部7で剥がれが進展するものの、ニッケル膜とクロム膜のみの非被覆部8で剥がれが止まり、それ以上の剥がれの進展は生じなかった。理由は明らかではないが、Au膜とその下部の金属膜との密着強度が、クロム膜とニオブ酸リチウム基材との密着強度より強く剥離を進展させたものと推察する。
【0069】
この端面剥離の生じた光学部品を別体のパッケージ基板に半田接合した結果、金膜の剥がれが生じた領域では接合できなかったものの、端面から僅か数μm程度の微小領域であるため、安定に強固に接合することができた。また、接合後に、波長変換素子の評価を行ったところ、高効率の波長変換性能を確認することができた。
【0070】
(実施例2)
比較例1と同様にして光学部品を作製した。ただし、本例では、
図5、
図6に示すように、底面の端面側の端部に非被覆部8A、8Bおよび端部被覆部7Aを形成し、クロム膜を露出させた。非被覆部8A、8Bはそれぞれ21本、101本とし、幅は2μmとした。また端部被覆部7Aは20×100列とし、それぞれ寸法は6μm×6μmとした。
【0071】
光学素子の底面で、このようにスリットを設けることで、研磨部からの金属の剥離を長手方向にも、幅方向にも進展しにくくすることができ、安定な接合および安定した波長変換素子の特性が得られた。