特許第6144771号(P6144771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144771VEGFR−2とDLL4を標的とする二重標的抗体及びこれを含む薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144771
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】VEGFR−2とDLL4を標的とする二重標的抗体及びこれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20170529BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20170529BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170529BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170529BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20170529BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20170529BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20170529BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170529BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C07K19/00ZNA
   C07K16/28
   C07K14/705
   C12N15/00 A
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/08
   C12Q1/02
   G01N33/574 A
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   A61P35/04
   A61P27/02
   A61P29/00 101
   A61P29/00
   A61P19/02
   A61P17/06
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-543969(P2015-543969)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公表番号】特表2016-505244(P2016-505244A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】KR2013010589
(87)【国際公開番号】WO2014081202
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0132431
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515135871
【氏名又は名称】ファームアブシン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ジン サン
(72)【発明者】
【氏名】リー, サン フン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ウォン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム, スン ウー
(72)【発明者】
【氏名】シム, サン リョル
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ジン サン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヨン エ
(72)【発明者】
【氏名】パク, ミ ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ビュン, サン スン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヒョッ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ド ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, ジン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ナーム, キュン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ナム, ジュ リュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ジョン グン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ボ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ウン ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ショーン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク, イン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ユーン, ジェ ボン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ナム イー
(72)【発明者】
【氏名】オー, スン ファン
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−500621(JP,A)
【文献】 特表2012−525149(JP,A)
【文献】 特表2012−527234(JP,A)
【文献】 特表2010−536855(JP,A)
【文献】 NATURE 2006, Vol.444, p.1083-1087
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGFR‐2に特異的に結合する抗体の末端に結合されたDLL4の拮抗剤を含む、VEGFR‐2とDLL4を標的とする二重標的抗体であって、
前記VEGFR‐2を標的とする抗体は配列番号1〜3から選択される何れかの配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4〜6から選択される何れかの配列を有する軽鎖可変領域からなり、
前記DLL4の拮抗剤は配列番号7のアミノ酸配列を有する人間Notch1受容体の11〜12番目のカルシウム結合EGF‐類似ドメインである、二重標的抗体
【請求項2】
前記VEGFR‐2を標的とする抗体の軽鎖N‐末端にDLL4の拮抗剤が結合されていることを特徴とする請求項に記載の二重標的抗体。
【請求項3】
前記VEGFR‐2を標的とする抗体とDLL4の拮抗剤はアミノ酸リンカーにより結合されていることを特徴とする請求項に記載の二重標的抗体。
【請求項4】
前記VEGFR‐2を標的とする抗体は配列番号1の重鎖可変領域と配列番号4の軽鎖可変領域、配列番号2の重鎖可変領域と配列番号5の軽鎖可変領域、または、配列番号3の重鎖可変領域と配列番号6の軽鎖可変領域からなることを特徴とする請求項に記載の二重標的抗体。
【請求項5】
請求項1〜の中何れか一項による二重標的抗体をコードするDNA。
【請求項6】
請求項によるDNAを含む組み換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項による組み換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
請求項による宿主細胞を培養し、これらの培養物から二重標的抗体を分離することを特徴とする請求項1〜4の中何れか一項による二重標的抗体の製造方法。
【請求項9】
前記二重標的抗体をProtein Aアフィニティーカラム、SP‐sepharoseカラム及びサイズ排除クロマトグラフィーをもってFPLCを利用し、追加製剤することをさらに特徴とする請求項に記載の二重標的抗体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜の中何れか一項による二重標的抗体を含む血管新生関連疾患の治療用薬剤学的組成物。
【請求項11】
前記血管新生関連疾患は腫瘍(癌)、腫瘍の成長と転移、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症、乾癬、リウマチ性関節炎及び慢性炎症から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の薬剤学的組成物。
【請求項12】
前記癌は大腸癌、結腸癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、肝臓癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎臓癌、食道癌、胆道癌、精巣癌、直腸癌、頭頚部癌、頸椎癌、尿管癌、骨肉腫、神経細胞芽腫、黒色腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫及び神経膠腫から選択された1種であることを特徴とする請求項11に記載の薬剤学的組成物。
【請求項13】
ヒトDLL4(hDLL4)を発現する細胞株又は組み換え細胞株とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の共培養によりNotch1活性を測定することを特徴とする請求項1〜の中何れか一項による二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
【請求項14】
前記Notch1活性は、NICDの発現量を測定することを特徴とする請求項13に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
【請求項15】
前記NICDの発現量は、SDS‐PAGE、ウェスタンブロット、免疫組織化学染色法、免疫染色法、免疫蛍光染色法及びルシフェラーゼアッセイからなる群より選択される方法で測定することを特徴とする請求項14に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
【請求項16】
前記hDLL4を発現する細胞株はhDLL4過発現293細胞株(293‐hDLL4)であることを特徴とする請求項13に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
【請求項17】
前記共培養は(a)ヒト臍帯静脈内皮細胞を培養する段階および、(b)hDLL4を発現する293細胞株と二重標的抗体を反応させた後、前記(a)段階で培養されたヒト臍帯静脈内皮細胞に処理して共培養する段階と、を含むことを特徴とする請求項13に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VEGFR‐2を標的とする抗体の末端にDLL4に対する拮抗剤(antagonist)が連結されて、ヒトDLL4をさらに標的する新規の形態の二重標的抗体、前記抗体をコードするDNA及びこれを含む組み換え発現ベクター、また、前記組み換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞及びこれを用いた前記二重標的抗体の製造方法、前記二重標的抗体を含む薬剤学的組成物及び前記二重標的抗体のDLL4拮抗効能を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生(angiogenesis)は、内皮細胞の成長、分裂、移動などにより、既存の血管から新たな血管が生成されるメカニズムであり、傷の治癒や女性の生理周期を含む正常な成長過程において重要な役割を担当しており(Risau,Nature,386:671,1997)、且つ、非正常的に過剰な血管新生は、腫瘍の成長と転移(metastasis)、加齢性黄斑変性(age‐related macular degeneration、ARMD)、糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)、乾癬(psoriasis)、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、慢性炎症(chronic inflammation)のような疾患に決定的な役割を行うと知られている(Carmeliet and Jain,Nature,407:249,2000)。
【0003】
1971年、Dr.J.Folkmanにより、腫瘍の成長と転移は、血管新生依存的であり、そのため、抗血管新生に焦点を合わせた治療法は、固形癌に対する新たな治療剤になることができるという仮説が提起された後、過剰な血管新生のメカニズムの抑制に関する研究は、多数の研究陣の関心を引いてきた(Ferrara and Kerbel,Nature,435:967,2005)。血管新生過程の進行様相は、血管新生誘発因子と血管新生阻害因子の総合的なバランスによって決定され、様々な段階における複雑で順次の過程によって行われる。その過程について説明すると、まず、腫瘍や傷ついた組織から分泌する血管内皮増殖因子(Vasicular Endothelial Growth Factor、VEGF)をはじめ様々な血管新生誘発因子が周辺にある既存の血管内皮細胞の当該受容体に結合することで、血管内皮細胞を活性化させて血管内皮細胞の透過性を増加させ、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase、MMP)のようなプロテアーゼを分泌することで、血管内皮細胞周辺の基底膜と細胞外基質を分解して、血管内皮細胞が既存の毛細管から離脱して血管新生誘発因子を分泌する組織に向かって移動/増殖する。移動/増殖した血管内皮細胞は、血管内チューブ構造をなし、最後に、血管内皮細胞の構造的支持台である血管周皮細胞(pericyte)が流入して、安定して成熟した血管形成が行われる。
【0004】
上述のように、VEGF及びこれと結合するVEGF受容体(VEGFR)のシグナル伝逹を阻害して窮極的に血管新生を抑制することで、腫瘍の成長と転移をはじめ、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症、乾癬、リウマチ性関節炎及び慢性炎症を含む様々な疾患に対する治療効果を奏することができる点が明らかになるに伴い、VEGFの活性を抑制するための様々な薬物の開発が行われている。
【0005】
具体的に説明すると、VEGFは、1989年のジェネンテク(Genentech)社のDr.N.Ferraraグループによってタンパク質の分離・精製及びcDNAクローニングが行われた(Leung et al.,Science,246:1306,1989)。VEGF‐Aとも称するVEGFは、現在まで4個のイソ型(VEGF121、VEGF165、VEGF189、VEGF206)が存在すると知られており、そのうち、VEGF165は、胎盤以外のすべてのヒト組織で最も豊かなものと報告されている(Tisher et al.,J.Biol.Chem.,266:11947,1991)。VEGFは、その受容体であるVEGFR‐1とVEGFR‐2/KDRに対して非常に高い親和度を有して結合するが、主に、VEGFR‐2を介してそのシグナルを伝達することで、血管内皮細胞の増殖と移動などの血管新生に関するメカニズムを誘導すると知られている。このような理由で、VEGF及びVEGFR‐2は、VEGFによって誘導される血管新生のメカニズムを抑制するための主要標的となっており、これに関して多数の論文がこれらを扱っている(Ellis and Hicklin,Nature Rev.Cancer,8:579,2008;Youssoufian et al.,Clin.Cancer Res.,13:5544s,2007)。
【0006】
例えば、ジェネンテク社のアバスチン(Avastin、bevacizumab)は、VEGF‐Aを標的とするヒト化抗体(Ferrara et al.,Biochem.Biophy.Res.Comm.,333:328,2005)であり、2004年に転移性結腸直腸癌(metastatic colorectal cancer)、2006年に非小細胞肺癌(non‐small cell lung cancer)、また、2008年にHer‐2 negative転移性乳癌(metastatic breast cancer)に対して、それぞれ米国のFDA認証を取得しており、多形神経膠芽腫(Glioblastoma mutiforme、GBM)及び腎癌(renal cancer)に対して認証を取得し、現在も適応症を拡大するために様々な固形癌腫に対して臨床試験を行っている。それだけでなく、同一会社で発売したルセンティス(Lucentis)は、加齢性黄斑変性の主様相である黄斑周りの過剰な血管新生を抑制するために、網膜に注射したときにその透過性を良好にするためにアバスチンからFab切片のみを切断して製造された抗体であり(Eter et al.,Biodrgus,20:167,2006)、ウェット型加齢性黄斑変性(wet‐ARMD)に対する治療薬として、2006年に米国FDA認証を取得している。
【0007】
VEGFを標的とする他の治療用抗体としては、リジェネロン(Regeneron)社のVEGF‐trapがある(Holash et al.,PNAS,99:11393,2002)。これは、VEGFR‐1の第二の免疫グロブリンドメインとVEGFR‐2の第三の免疫グロブリンドメインをヒトのFcに融合した形態の水溶性「おとり受容体(decoy receptor)」であり、まだ米国FDA認証を取得していないが、転移性乳癌と転移性肺癌、転移性結腸直腸癌またホルモン不応性前立腺癌(hormone refractory prostate cancer)などに対して、現在、Phase III段階を進めている。
【0008】
一方、VEGF受容体であるVEGFR‐2を標的とする血管新生抑制抗体には、イムクローン(Imclone)社のIMC‐1121B(EP1916001A2)とUCB社のCDP‐791(PCT/GB02/04619)、また、本発明者らが開発して臨床試験を進めているタニビルマブ(Tanibirumab、TTAC‐0001)(PCT/KR07/003077)などがある。
【0009】
IMC‐1121Bは、完全ヒトFabライブラリーから選別されたモノクローナル抗体であり、現在、転移性乳癌に対してPhase III段階を進めており、2010年に胃癌に対するPhase III段階に進んでおり、UCB社のCDP‐791は、ヒト化抗体であり、PEGylated Di‐Fab形態で非小細胞肺癌に対して、現在、Phase II段階を進めている。この抗体は、Fcを有していないため、抗体依存性細胞傷害(antibody‐dependent cell‐mediated cytotoxicity)や補体依存性細胞傷害(complement‐dependent cytotoxicity)を期待することができない。
【0010】
最後に、本発明者らが開発したタニビルマブ(Tanibirumab,TTAC‐0001)は、完全ヒトScFvライブラリーから選別されたモノクローナル抗体であり、VEGFR‐2を標的とするとともに、同時にマウスやラット由来のflk‐1(VEGFR‐2相同体)に対しても反応性を有する唯一の抗体であり、これは、イムクローン社のIMC‐1121Bと区別される重要な特徴の一つである(PCT/KR07/003077)。特に、タニビルマブが示す異種間交差反応性(cross‐species cross reactivity)は、動物疾患モデルに対する研究を可能とすることで、今後、特定の癌腫に対する抗癌剤の開発を段階的に進めて、関連研究をより容易に終了するようにすることができる。
【0011】
このようにVEGF及びVEGFR‐2を標的とする研究は、最近5年間、飛躍的に発展し、多数の治療剤が市場及び臨床研究を介して開発されている。
【0012】
一方、VEGF/VEGFR‐2シグナル伝逹によりTip cellに分化した細胞は、DLL4を強く発現させて、周辺の細胞に存在するNotch1受容体と結合し、このようにNotch1シグナル伝達系が活性化した細胞は、stalk cellに分化して正常な血管tube構造を形成するが、これは、DLL4/Notch1シグナル伝達系が、VEGF/VEGFR‐2経路とともに血管新生に最も重要なメカニズムの一つである点を立証するものである(Dufraine et al.,Oncogene,27:5132〜5137,2008)。
【0013】
前記DLL4は、Notch受容体に対するリガンドの一つであり、哺乳動物には、現在まで4種類のNotch受容体(Notch1〜4)と、5種類のNotchリガンド(Jagged‐1、Jagged‐2、DLL1、DLL3、DLL4)が存在すると知られており、Notchシグナル伝達系の場合、一細胞のNotchリガンドが他の細胞のNotch受容体に結合することで始まるが、必ず、互いに異なる細胞間の直接的な相互作用を介してのみ活性化する(Bray SJ,Nat Rev Mol Cell Biol.,7(9):678,2006)。
【0014】
NotchリガンドがNotch受容体に結合すると、まず、ADAM metalloproteaseが活性化し、Notch受容体の細胞膜の外側近接部位が切れ、次いで、gamma‐secretase複合体が活性化してNotch受容体の細胞膜の内側近接部位を切り、NICD(Notch Intracellular Domain)が遊離され、このNICDは、核に移動、RBPJ/CSL transcription factorと結合して、Hes、Heyのようなbasic helix‐loop‐helixタンパク質などのNotchターゲット遺伝子の発現を誘導する。このようにNotchシグナル伝達系は、当該細胞が置かれている状況に応じて、増殖/分化/消滅(apoptosis)などの運命を決定し、正常幹細胞及び癌幹細胞の維持にも重要な役割をする。
【0015】
基本的にすべてのNotch受容体がすべてのNotchリガンドと結合することができるが、このような様々な結合の組み合わせは、当該細胞が置かれた微細環境で選択的に調節される。例えば、DLL4は、胎児の発達過程で血管新生の際に内皮細胞に強く発現され、周辺内皮細胞に発現するNotch1とNotch4と結合するが、このうち、DLL4‐Notch1結合が排他的に最も重要であり(Yan M,Vasc Cell,2011)、この結合により血管新生が行われる。このような事実は、遺伝子欠損実験などにより明らかになっている(Duarte et al.,Genes Dev,2004;Gale et al.,PNAS,2004;Krebs et al.,Genes Dev,2004)。
【0016】
したがって、DLL4‐Notch1結合を阻害すると血管新生を抑制することができ、これにより腫瘍などの様々な疾患を治療することができる。すでに癌の治療においてAvastin(bevacizumab)などを用いてVEGFを抑制すると、血管形成が抑制されて腫瘍のperfusionが減少するに伴い腫瘍の大きさが減少する一方、DLL4を標的として周辺細胞から発現するNotch1との結合を抑制すると血管が非正常的に多く生成(hypersprouting)されるが、完全な機能を行うことができず(non‐functional)腫瘍のperfusionが減少し、結果、腫瘍の大きさが減少する(Thurston et al,Nat Rev Cancer,7(5):327,2007)という点が立証されている。
【0017】
興味深い事実は、Genentech社の研究チームで行ったいくつかの癌細胞株を用いた異種移植動物実験でVEGFとDLL4を抑制する抗体をともに投与する際にそれぞれを別に抑制した場合に比べて、癌の成長が著しく強く阻害されたということである(Ridgway et al.,Nature,444(7122):1083,2006)。これは、DLL4/Notch1経路によるシグナル伝逹が単純にVEGF/VEGFR‐2経路によって活性化するだけではなく、二つの経路によるシグナル伝逹を同時に阻害することで、より効率的な腫瘍などの様々な血管新生関連疾患の治療が可能であることを示唆する。
【0018】
また、DLL4抑制は、VEGF/VEGFR‐2経路阻害剤に敏感な腫瘍及び耐性のある腫瘍の両方に効果があることが明らかになったが(Ridgway et al.,Nature.,444(7122):1083、2006;Noguera‐Troise et al.,Nature.,444(7122):1032.2006)、これは、現在、VEGFを遮断するAvastinのような薬物を投与する際に頻繁に発生する耐性(最初からAvastinが利かないintrinsic resistance、時間が経ってAvastinの薬効が徐々に低下するacquired resistanceの二つの場合ともに)克服に非常に重要な手がかりを提供している。
【0019】
また、DLL4抑制が直接的に腫瘍内の癌幹細胞の頻度を低減し、腫瘍成長を抑制するという事実が、Oncomed社の研究チームによって明らかになり(Hoey et al.,Cell Stem Cell.,2009)、これは、DLL4抑制が癌の再発を根本的に遮断する可能性があることを示唆する。最後に、現在、癌の治療に使用されている抗癌化学療法(chemotherapy)及びHerceptinなどの抗体治療剤に対する耐性がNotchシグナル伝達系と多く関係しており、DLL4/Notch1経路の抑制は、このような抗癌化学療法又はHerceptinのような抗体治療剤の耐性も克服する可能性がある(Wang et al.,Biochim Biophys Acta.,1806(2):258,2010)。
【0020】
上述のように、VEGF/VEGFR‐2及びDLL4/Notch1の二つの経路によるシグナル伝逹を同時に阻害することで、より効率的な腫瘍などの様々な血管新生関連疾患の治療が可能になるが、依然としてそのための効率的な薬品の開発が行われておらず、これに関する開発が切実に要求されている状況である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Carmeliet and Jain,Nature,407:249,2000
【非特許文献2】Ferrara and Kerbel,Nature,435:967,2005
【非特許文献3】Leung et al.,Science,246:1306,1989
【非特許文献4】Tisher et al.,J.Biol.Chem.,266:11947,1991
【非特許文献5】Ellis and Hicklin,Nature Rev.Cancer,8:579,2008
【非特許文献6】Youssoufian et al.,Clin.Cancer Res.,13:5544s,2007
【非特許文献7】Ferrara et al.,Biochem.Biophy.Res.Comm.,333:328,2005
【非特許文献8】Eter et al.,Biodrgus,20:167,2006
【非特許文献9】Holash et al.,PNAS,99:11393,2002
【非特許文献10】Dufraine et al.,Oncogene,27:5132〜5137,2008
【非特許文献11】Bray SJ,Nat Rev Mol Cell Biol.,7(9):678,2006
【非特許文献12】Thurston et al,Nat Rev Cancer,7(5):327,2007
【非特許文献13】Ridgway et al.,Nature,444(7122):1083,2006
【非特許文献14】Noguera‐Troise et al.,Nature.,444(7122):1032.2006
【非特許文献15】Wang et al.,Biochim Biophys Acta.,1806(2):258,2010
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、前記のような問題を解決するために、VEGF/VEGFR‐2及びDLL4/Notch1の二つの経路によるシグナル伝逹をより効率的に同時に阻害することで、腫瘍など様々な血管新生関連疾患を治療することができる治療剤を開発するために鋭意研究を重ねた結果、VEGFR‐2とDLL4を同時に標的する二重標的抗体が効率的にそのような効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0023】
これにより、本発明は、VEGFR‐2に対する抗体及びDLL4に対する拮抗剤が結合され、VEGFRとDLL4を同時に標的する二重標的抗体を提供することを一つの目的とする。
【0024】
本発明の他の目的は、前記二重標的抗体をコードするDNA及びこれを含む組み換え発現ベクターを提供することである。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、前記組み換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞及びこれを用いて本発明に係る二重標的抗体を製造する方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらに他の目的は、前記二重標的抗体を含む薬剤学的組成物を提供することである。
本発明の特定の実施形態において、例えば、以下が提供される。
(項目1)
VEGFR‐2とDLL4を標的とする二重標的抗体。
(項目2)
前記VEGFR‐2に特異的に結合する抗体の末端にDLL4の拮抗剤が結合されることを特徴とする項目1に記載の二重標的抗体。
(項目3)
前記VEGFR‐2を標的とする抗体はタニビルマブ(Tanibirumab)またはこれの変移体であることを特徴とする項目2に記載の二重標的抗体。
(項目4)
前記DLL4の拮抗剤は人間Notch1受容体の11〜12番目のカルシウム結合EGF‐類似ドメインであることを特徴とする項目2に記載の二重標的抗体。
(項目5)
前記VEGFR‐2を標的とする抗体の軽鎖N‐末端にDLL4の拮抗剤が結合されていることを特徴とする項目2に記載の二重標的抗体。
(項目6)
前記VEGFR‐2を標的とする抗体とDLL4の拮抗剤はアミノ酸リンカーにより結合されていることを特徴とする項目5に記載の二重標的抗体。
(項目7)
前記VEGFR‐2を標的とする抗体は配列番号1〜3から選択される何れかの配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4〜6から選択される何れかの配列を有する軽鎖可変領域からなることを特徴とする項目3に記載の二重標的抗体。
(項目8)
前記VEGFR‐2を標的とする抗体は配列番号1の重鎖可変領域と配列番号4の軽鎖可変領域、配列番号2の重鎖可変領域と配列番号5の軽鎖可変領域、または、配列番号3の重鎖可変領域と配列番号6の軽鎖可変領域からなることを特徴とする項目7に記載の二重標的抗体。
(項目9)
前記DLL4の拮抗剤でる人間Notch1受容体の11〜12番目のカルシウム結合EGF‐類似ドメインは配列番号7のアミノ酸配列を有することを特徴とする項目4に記載の二重標的抗体。
(項目10)
項目1〜9の中何れか一項による二重標的抗体をコードするDNA。
(項目11)
項目10によるDNAを含む組み換え発現ベクター。
(項目12)
項目11による組み換え発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
(項目13)
項目12による宿主細胞を培養し、これらの培養物から二重標的抗体を分離することを特徴とする二重標的抗体の製造方法。
(項目14)
前記二重標的抗体はプロチンA親和性カラム、SP−せぱロースカラム及びサイズ排除クロマトグラフィーをもってFPLCを利用し、追加製剤することを特徴とする項目13に記載の二重標的抗体の製造方法。
(項目15)
項目1〜9の中何れか一項による二重標的抗体を含む血管新生関連疾患の治療用薬剤学的組成物。
(項目16)
前記血管新生関連疾患は腫瘍(癌)、腫瘍の成長と転移、加齢性黄斑変性、糖尿病網膜症、乾癬、リウマチ性関節炎及び慢性炎症から選択される1種以上であることを特徴とする項目15に記載の薬剤学的組成物。
(項目17)
前記癌は大腸癌、結腸癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、肝臓癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎臓癌、食道癌、胆道癌、精巣癌、直腸癌、頭頚部癌、頸椎癌、尿管癌、骨肉腫、神経細胞芽腫、黒色腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫及び神経膠腫から選択された1種であることを特徴とする項目16に記載の薬剤学的組成物。
(項目18)
ヒトDLL4(hDLL4)を発現する細胞株又は組み換え細胞株とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の共培養によりNotch1活性を測定することを特徴とする項目1〜9の中何れか一項による二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
(項目19)
前記Notch1活性は、NICDの発現量を測定することを特徴とする項目18に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
(項目20)
前記NICDの発現量は、SDS‐PAGE、ウェスタンブロット、免疫組織化学染色法、免疫染色法、免疫蛍光染色法及びルシフェラーゼアッセイからなる群より選択される方法で測定することを特徴とする項目19に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
(項目21)
前記hDLL4を発現する細胞株はhDLL4過発現293細胞株(293‐hDLL4)であることを特徴とする項目18に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
(項目22)
前記共培養は(a)ヒト臍帯静脈内皮細胞を培養する段階および、(b)hDLL4を発現する293細胞株または、組み換え細胞株と二重標的抗体を反応させた後、前記(a)段階で培養されたヒト臍帯静脈内皮細胞に処理して共培養する段階と、を含むことを特徴とする項目18に記載の二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】DLL4に結合するNotch1の11番目、12番目のEGF‐類似ドメインのアミノ酸配列を示す図である。
図2】本発明に係るベクターPMC‐201 v213を図式化して示す図である。
図3】本発明に係るベクターを293‐T細胞を用いて任意発現させた後、精製した二重標的抗体の生産をSDS‐PAGEを介して確認した結果を示す図である。
図4】本発明に係る二重標的抗体のVEGFR‐2及びヒトDLL4に対する結合能をELISAにより分析した結果を示す図である。
図5】本発明に係る二重標的抗体のヒトDLL4に対する結合能をBiacoreにより分析した結果を示す図である。
図6】本発明に係る二重標的抗体のヒトDLL4に対する結合能をFlow cytometerにより分析した結果を示す図である。
図7】本発明に係る二重標的抗体のHUVECに対する細胞増殖分析(proliferation assay)結果を示す図である。
図8】本発明に係る二重標的抗体がヒトDLL4に結合するNotch‐Fcの結合を競争的に阻害する現象をFACSを用いて分析した結果を示す図である。
図9】本発明に係る二重標的抗体がNotch‐1によるプロモーター活性化を阻害することをluciferase発光値で分析した結果を示す図である。
図10】本発明に係る二重標的抗体とHUVECをhDLL4がコーティングされた培養プレートで培養した際に、Notch‐1の活性化によって細胞内ドメイン(NICD)が増加することを阻害する現象をウェスタンブロットにより分析した結果を示す図である。
図11】本発明に係る二重標的抗体とHUVECをhDLL4を発現する293細胞株と共培養した際に、Notch‐1の活性化によって細胞内ドメイン(NICD)が増加することを阻害する現象をウェスタンブロットにより分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
他に定義されない限り、本明細書で使用されたすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における熟練された専門家によって通常理解されていることと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用された命名法及び以下に記述する実験方法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0029】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、VEGFR‐2に特異的に結合する抗体の末端にDLL4の拮抗剤(antagonist)が結合された二重標的抗体を提供する。
【0030】
本発明に係る二重標的抗体は、血管新生をより効率的に抑制することで血管新生によって発生する疾患を抑制する効能を有し、本発明に係る二重標的抗体は、VEGFR‐2とDLL4それぞれの標的に対する結合能があることが確認され、HUVEC増殖抑制実験によりVEGFR‐2のみを単独標的する抗体、例えば、タニビルマブ(Tanibirumab)に比べて優れたHUVEC増殖抑制能があることが確認された。
【0031】
本発明における用語「二重標的抗体」は、一つ以上のターゲットに結合能又は拮抗能を有する抗体を意味し、二つの互いに異なるターゲットに対する結合能又は拮抗能を有する抗体が結合された形態又は一つのターゲットに対する結合能を有する抗体と他のターゲットに対する拮抗能を有する物質が結合されている抗体を意味する。
【0032】
また、本発明における用語「抗体」は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含み、二つの全体長さの軽鎖及び二つの全体長さの重鎖を有する完全な形態だけでなく、抗体分子の断片も使用されることができる。抗体分子の断片とは、少なくとも抗原結合機能を有している断片を意味し、単一鎖(single‐chain)Fv(scFv)、Fab、F(ab´)、F(ab´)、単一ドメイン(single domain)などを含む。
【0033】
好ましくは、本発明に係る二重標的抗体は、血管新生因子又はそのような血管新生因子に対する受容体に特異的な抗体と、血管新生拮抗剤、すなわち、血管新生因子又はそのような血管新生因子受容体に対する拮抗剤が結合された形態である。
【0034】
本発明に係る二重標的抗体において、VEGFR‐2に特異的に結合する抗体は、VEGFR‐2に結合してVEGF/VEGFR‐2シグナル伝逹を阻害する特性を有する抗体であれば制限なく使用可能であり、タニビルマブ(Tanibirumab)又はベバシズマブ(bevacizumab)、又はこれらの変異体が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0035】
また、DLL4の拮抗剤は、DLL4/Notch1シグナル伝逹を阻害する特性を有する物質であれば制限なく使用可能であり、特に、Notch1の細胞内ドメインが欠失された水溶性受容体(soluble receptor)が好ましいが、これに限定されるものではなく、より好ましくは、DLL4の拮抗剤(antagonist)、特に、DLL4に対するNotch1受容体の11〜12番目のEGF‐類似ドメイン(以下、「Notch1 minimal decoy」とする)が使用されることができる。
【0036】
DLL4の拮抗剤は、VEGFR‐2に特異的に結合する抗体の重鎖又は軽鎖のN‐末端又はC‐末端などに制限なく結合されることができるが、好ましくは、重鎖又は軽鎖のN‐末端、より好ましくは、軽鎖のN‐末端に結合されることができる。
【0037】
本発明で提供されるPMC‐201と称する最も好ましい二重標的抗体は、VEGFR‐2に特異的に結合する抗体の末端、特に、軽鎖N‐末端にDLL4の拮抗剤(antagonist)、特に、DLL4に対するNotch1 minimal decoyが連結された形態であり、VEGFR‐2特異的抗体は、タニビルマブ及びその変異体であることを特徴とする。
【0038】
本発明における「血管新生」は、血管内皮細胞が増殖し再構成されて既存に存在する血管ネットワークから新たな血管を形成する細胞現象を意味する。このような血管新生には、血管新生、内皮細胞成長、血管安定性及び血管形成を促進する血管新生因子が関与する。前記血管新生因子は、例えば、VEGF及びVEGFファミリー、PIGF(placental growth factor)、PDGF(platelet‐derived growth factor)ファミリーのメンバー、DLL4、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンジオポエチン)、エプリン、Del‐1、線維芽細胞増殖因子(酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF))、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF)、インターロイキン‐8(IL‐8)、レプチン、ミドカイン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD‐ECGF)、血小板由来増殖因子、特に、PDGF‐BB又はPDGFR‐β、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換増殖因子‐α(TGF‐α)、形質転換増殖因子‐β(TGF‐β)、腫瘍壊死因子‐α(TNF‐α)、血管内皮増殖因子(VEGF)/血管透過因子(VPF)などが含まれ、特にこれに制限されない。
【0039】
本発明における用語「血管新生拮抗剤」は、血管新生、血管形成、又は好ましくない血管透過性を直接又は間接的に抑制する低分子量物質、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、単離されたタンパク質、組み換えタンパク質、抗体、又はこれらのコンジュゲート又は二重標的抗体を意味する。また、前記血管新生抑制剤は、血管新生因子又はその受容体に結合して血管新生活性を遮断する物質を含む。例えば、血管新生抑制剤は、血管形成剤に対する抗体又は他の拮抗剤、例えば、VEGF‐A又はVEGF‐Aの水溶性受容体(例えば、水溶性KDR受容体又はFlt‐1水溶性受容体)、VEGF‐トラップ、アンジオポエチン(Angiopoietin)2、Notch1水溶性受容体及びおとり(decoy)、又は前記物質のリガンドに対する結合能を維持する切片などを含むが、これに限定されるものではない。
【0040】
上述のように、本発明は、特に好ましい形態でVEGFR‐2に特異的に結合する抗体の末端にDLL4の拮抗剤(antagonist)、特に、DLL4に対するNotch1 minimal decoyが連結された形態の二重標的抗体を提供するが、本発明におけるVEGFR‐2に特異的な抗体は、タニビルマブ又はその変異体であることが好ましく、本発明に係るVEGFR‐2に特異的な抗体は、配列番号1〜配列番号3から選択されるいずれか一つの配列を有する重鎖可変領域と、配列番号4〜配列番号6から選択されるいずれか一つの軽鎖可変領域からなることが好ましい。
【0041】
特に好ましくは、配列番号1の重鎖可変領域と配列番号4の軽鎖可変領域、配列番号2の重鎖可変領域と配列番号5の軽鎖可変領域又は配列番号3の重鎖可変領域と配列番号6の軽鎖可変領域からなることが好ましく、前記VEGFR‐2に特異的な抗体は、可変領域に定常領域をさらに含むことができ、VEGFR‐2に対する結合能力を有する限り、その断片又はアミノ酸変異が生じたものを用いる場合も本発明の権利範囲に含まれることは、通常の技術者にとって自明である。
【0042】
【表1】
【0043】
また、本発明におけるDLL4に対するNotch1 minimal decoyは、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなることが好ましいが、DLL4に対する拮抗能を維持する限り、アミノ酸の変異、欠失及び挿入が生じた変異体も本発明の権利範囲に含まれることもまた通常の技術者にとって自明である。
【0044】
本発明に係る二重標的抗体において、VEGFR‐2に特異的に結合する抗体とDLL4の拮抗剤は、リンカーによる結合、化学的な直接結合又は遺伝工学融合(genetic fusion)などの様々な方法によって連結されることができ、好ましくは、リンカーによる結合、より好ましくは、アミノ酸リンカーによって結合されることができる。本発明に係る好ましいアミノ酸リンカーは、配列番号8に記載の配列を有する。
【0045】
【表2】
【0046】
これにより、本発明に係る二重標的抗体の軽鎖N‐末端にアミノ酸リンカーを介してDLL4に対するNotch1 minimal decoyが連結された二重標的抗体の軽鎖‐アミノ酸リンカー‐Notch1 minimal decoyタンパク質は、配列番号9又は配列番号10のアミノ酸配列を有する。
【0047】
【表3】
【0048】
また、本発明では、前記二重標的抗体をコードするポリヌクレオチド配列及びこれを含む組み換えベクターを提供する。
【0049】
前記二重標的抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、前記配列番号1〜10に記載のアミノ酸配列から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に導き出すことができる。また、リーダー配列(leader sequence)をコードするポリヌクレオチドが二重標的抗体のN‐末端に位置するようにして、本発明に係る二重標的抗体の生産に用いられることができる。
【0050】
本発明における用語「組み換えベクター」とは、適当な宿主細胞で標的タンパク質を発現することができる発現ベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子作製物を言う。
【0051】
本発明における「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を行うように核酸発現調節配列と標的タンパクをコードする核酸配列が機能的に連結されていることを意味する。組み換えベクターとの作動的連結は、当該技術分野においてよく知られた遺伝子組み換え技術を用いて製造することができ、部位‐特異的DNAの切断及び連結は、当該技術分野において周知の酵素などを使用して容易に行うことができる。
【0052】
本発明の好適な発現ベクターは、プロモーター、開始コドン、終始コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンヘンサーのような発現調節エレメント以外にも、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列を含むことができる。開始コドン及び終始コドンは、一般的に免疫原性標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部とみなし、遺伝子作製物が投与されたときに個体において必ず作用を示すべきであり、コード配列とインフレーム(in frame)に存在すべきである。一般のプロモーターは、構成的又は誘導性であってもよい。原核細胞には、lac、tac、T3及びT7プロモーターがあるが、これに制限されない。真核細胞には、シミアンウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、例えば、HIVの長い末端反復部(LTR)プロモーター、モロニーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターだけでなく、β‐アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトメタロチオネイン由来のプロモーターがあるが、これに制限されない。
【0053】
前記発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択マーカーを含むことができる。選択マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性薬に対する耐性又は表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を付与するマーカーが使用されることができる。選択剤(selective agent)が処理された環境で選別マーカーを発現する細胞のみが生存するため、形質転換された細胞が選別可能である。また、ベクターは、複製可能な発現ベクターの場合、複製が開始する特定の核酸配列である複製原点(replication origin)を含むことができる。
【0054】
外来遺伝子を挿入するための組み換え発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルス、コスミドなどの様々な形態のベクターを使用することができる。組み換えベクターの種類は、原核細胞及び真核細胞の各種の宿主細胞で所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能をする限り、特に限定されないが、強力な活性を示すプロモーターと強い発現力を有して自然状態と類似の形態の外来タンパク質を大量に生産することができるベクターが好ましい。
【0055】
本発明に係る二重標的抗体を発現させるために様々な発現宿主/ベクター組み合わせが用いられることができる。真核宿主に好適な発現ベクターとしては、これに限定されるものではないが、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(adeno‐associated virus)、サイトメガロウイルス及びレトロウイルスから由来した発現調節配列が含まれる。細菌宿主に使用することができる発現ベクターには、pET、pRSET、pBluescript、pGEX2T、pUCベクター、col E1、pCR1、pBR322、pMB9及びこれらの誘導体のように大腸菌(Escherichia coli)から得られる細菌性プラスミド、RP4のようにより広い宿主範囲を有するプラスミド、gt10とgt11、NM989のような非常に多様なファージラムダ(phage lambda)誘導体と例示されることができるファージDNA、及びM13とフィラメント性一本鎖のDNAファージのようなその他のDNAファージが含まれる。酵母細胞に有用な発現ベクターは、2プラスミド及びその誘導体である。昆虫細胞に有用なベクターは、pVL941である。
【0056】
他の一様態として、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。前記組み換えベクターは、宿主細胞に挿入されて形質転換体を形成する。前記ベクターの好適な宿主細胞は、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、プロテウス‐ミラビリス(Proteus mirabilis)又はスタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)のような原核細胞であってもよい。また、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)のような真菌、ピキア・パストリス属(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、スキゾサッカロマセス属(Schizosaccharomyces sp.)及びニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)のような酵母、それ以外の下等真核細胞、及び昆虫からの細胞のような高等真核生物の細胞のような真核細胞であってもよい。また、植物、哺乳動物から由来してもよい。好ましくは、サル腎培養細胞7(COS7:monkey kidney cells)細胞、NSO細胞、SP2/0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:chinese hamster ovary)細胞、W138、ベビーハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、MDCK、骨髄腫細胞株、HuT 78細胞及びHEK293細胞などが利用可能であるが、これに限定されない。特に、CHO細胞が好ましい。
【0057】
本発明における「宿主細胞への形質転換」は、核酸を有機体、細胞、組織又は気管に取り入れるいかなる方法も含まれ、当分野において公知のように宿主細胞に応じて好適な標準技術を選択して行うことができる。かかる方法には、エレクトロポレーション法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿、塩化カルシウム(CaCl)沈殿、炭化ケイ素線維を用いた撹拌、アグロバクテリウム媒介形質転換、PEG(polyethyleneglycol)、PEI(polyethyleneimine)、デキストラン硫酸、リポフェクタミン及び乾燥/抑制媒介形質転換方法などが含まれるが、これに制限されない。
【0058】
他の一様態として、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された宿主細胞を培養し、本発明に係る二重標的抗体を製造する方法を提供する。
【0059】
本発明に係る二重標的抗体は、遺伝子組み換え方法で発現及び精製して取得することが好ましいが、具体的に、抗体の重鎖可変領域又は重鎖全体領域をコードする遺伝子配列及び軽鎖可変領域又は軽鎖全体領域をコードする遺伝子配列を一つのベクター又は二つのベクターで別に発現させてもよく、この際、重鎖又は軽鎖のN‐末端に該当する部位にアミノ酸リンカー及び/又はDLL4の拮抗剤をコードする遺伝子配列を連結して、細胞発現システムで発現させ、本発明に係る二重標的抗体を製造してもよく、これに限定されるものではない。
【0060】
具体的に、前記二重標的抗体の製造方法は、本発明の二重標的抗体をコードするヌクレオチド配列をベクターに挿入して組み換えベクターを製造する段階と、前記組み換えベクターを宿主細胞に形質転換させて培養する段階と、前記培養された形質転換体から二重標的抗体を分離、精製する段階と、を含むことができる。
【0061】
具体的に、組み換えベクターが発現する形質転換体を栄養培地で培養することで、二重標的抗体を大量生産することができ、培地と培養条件は、宿主細胞に応じて慣用のものを適宜選択して用いることができる。培養の際に細胞の生育とタンパク質の大量生産に適するように温度、培地のpH及び培養時間などの条件を適宜調節することができる。
【0062】
前記のように組み換え生産されたペプチド又はタンパク質は、培地又は細胞分解物から回収することができる。膜結合型の場合、好適な界面活性剤溶液(例えば、トリトン‐X100)を使用するか又は酵素的切断によって膜から遊離されることができる。二重標的抗体の発現に使用された細胞は、凍結‐解凍順化、音波処理、機械的破壊又は細胞分解剤のような様々な物質的又は化学的手段によって破壊することができ、通常の生化学分離技術によって分離、精製が可能である(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A laborarory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deuscher,M.,Guide to Protein Purification Methods Enzymology,Vol.182.Academic Press.Inc.,San Diego,CA(1990))。電気泳動、遠心分離、ゲルろ過、沈殿、透析、クロマトグラフィー(イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、免疫カラムクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなど)、等電点フォーカシング及びその様々な変化及び複合方法などが利用可能であるが、これに限定されない。
【0063】
さらに他の様態として、本発明は、前記二重標的抗体を含む血管新生抑制用又は癌治療用組成物を提供する。本発明における用語「抗癌」とは、「予防」及び「治療」を含み、ここで、「予防」とは、本発明の抗体を含む組成物投与によって癌が抑制又は遅延されるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明の抗体投与によって癌の症状が好転するか、良好に変更するすべての行為を意味する。
【0064】
本発明の組成物で治療することができる癌又は癌腫は、特に制限されず、固形癌及び血液癌を含む。好ましくは、大腸癌、結腸癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、肝臓癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮頸癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、腎癌、食道癌、胆道癌、精巣癌、直腸癌、頭頚部癌、頸椎癌、尿管癌、骨肉腫、神経細胞芽腫、黒色腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫又は神経膠腫などを含む。
【0065】
本発明における抗癌組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。経口投与の際には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬剤学的組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造されることができる。例えば、経口投与の際には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウェハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプル又は多数回投薬形態に製造することができる。また、前記抗癌組成物は、典型的に膜を通過した移動を容易にする界面活性剤を含むことができる。このような界面活性剤は、ステロイドから誘導されたものであるか、N‐[1‐(2,3‐ジオレオイル)プロピル‐N,N,N‐トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)などのカチオン性脂質、又はコレステロールヘミサクシネート、ホスファチジルグリセロールなどの各種化合物などがある。
【0066】
さらに他の様態として、本発明は、前記二重標的抗体、又は二重標的抗体を含む組成物を個体に投与して癌を治療し、癌の成長を抑制する方法を提供する。本発明に係る二重標的抗体を含む組成物は、癌細胞又はそれらの転移を治療するために、又は癌の成長を抑制するために薬学的に効果的な量で投与されることができる。癌の種類、患者の年齢、体重、症状の特性及び程度、現在の治療法の種類、治療回数、投与形態及び経路などの様々な要因に応じて異なり、当該分野における専門家によって容易に決定されることができる。本発明における組成物は、前記薬理学的又は生理学的成分をともに投与するか順次投与してもよく、また、追加の従来の治療剤と併用して投与してもよく、従来の治療剤とは順次又は同時に投与してもよい。このような投与は、単一又は多重投与であってもよい。前記要素をすべて考慮して、副作用のない最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定されることができる。
【0067】
本発明における「個体」とは、本発明の二重標的抗体を投与して、軽減、抑制又は治療することができる状態又は疾患であるか、そのような虞のある哺乳動物を意味し、好ましくは、ヒトを意味する。
【0068】
本発明における「投与」とは、ある適切な方法で個体に所定の物質を取り入れることを意味し、本発明の二重標的抗体を含む組成物の投与経路は、目標組織に逹することができる限り、いかなる一般的な経路を介して投与されてもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与されてもよく、これに制限されない。しかし、経口投与の際に、タンパク質は、消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護するために剤形化することが好ましい。また、製薬組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与されることができる。
【0069】
また、本発明では、ヒトDLL4(hDLL4)を発現する細胞株又は組み換え細胞株とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の共培養によりNotch1活性を測定することを特徴とする前記二重標的抗体のDLL4拮抗効能の測定方法を提供する。
【0070】
本発明において、前記Notch1活性は、NICDの発現量を測定することを特徴とし、NotchリガンドがNotch受容体に結合すると、まず、ADAM metalloproteaseが活性化してNotch受容体の細胞膜外側近接部位が切れ、次いで、gamma‐secretase複合体が活性化してNotch受容体の細胞膜内側近接部位を切り、NICD(Notch Intracellular Domain)が遊離され、このNICDは核に移動、RBPJ/CSL transcription factorと結合し、Hes、Heyのようなbasic helix‐loop‐helixタンパク質などのNotchターゲット遺伝子の発現を誘導する。
【0071】
NICDの発現量の測定は、直接的には、SDS‐PAGE、ウェスタンブロット(western blotting)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫染色法(immuno‐staining)、免疫蛍光染色法(immunofluorescence)、酵素免疫測定法(ELISA assay)、及び間接的には、ルシフェラーゼアッセイ(luciferase assay)からなる群から選択される方法を用いて測定することを特徴とするが、これに限定されるものではなく、当業界における公知のタンパク質発現測定法を制限なく使用することができる。本発明では、好ましくは、ウェスタンブロット方法を使用してNICDの発現量を測定した。
【0072】
前記ヒトDLL4(hDLL4)を発現する細胞株又は組み換え細胞株とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の共培養は、具体的に、(a)ヒト臍帯静脈内皮細胞を培養する段階と、(b)hDLL4を発現する293細胞株(293‐hDLL4)と二重標的抗体を反応させた後、前記(a)段階で培養されたヒト臍帯静脈内皮細胞に処理して共培養する段階と、を含む方法を用いて培養することができ、本発明の実施例において、前記共培養方法を用いて二重標的抗体PMC‐201によりNotch‐1活性化によって現れるNICD発現量が減少することを確認した。
【0073】
また、Notch1活性は、NICDの発現量を測定することを特徴とする二重標的抗体のhDLL4拮抗効能の測定方法は、本発明の他の実施例で確認したように、NICD量をルシフェラーゼアッセイ方法を用いて測定することで、NICDプロモーター活性程度を測定することができ、hDLL4がコーティングされたプレートにヒト臍帯静脈内皮細胞と二重標的抗体PMC‐201を処理して培養した後、HUVEC細胞内のNICDの量を測定し、二重標的抗体のhDLL4拮抗効能を測定することができる。
【0074】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明である。
【実施例】
【0075】
実施例1:二重標的抗体PMC‐201臨時生産用発現ベクターの製造
hDLL4に結合するNotch1 minimal decoy(Notch1の11〜12番目のcalcium‐結合EGF−類似ドメイン)をコードするDNAは、当該ドメインのアミノ酸塩基配列(図1及び配列番号7)を把握した後、遺伝子合成(gene optimizationを含む、GeneArt、ドイツ)により確保した。
【0076】
前記77個のアミノ酸塩基配列を13個のアミノ酸からなるG4Sリンカー(S GGGG SGGGGS GS)を用いてタニビルマブ(国際特許出願第PCT/KR07/003077号に開示されたTTAC0001参照)発現ベクターの軽鎖N‐末端部分にクローニングして、293‐T細胞株(ATCC、CRL‐11268TM)で発現が最適化した二重標的抗体PMC‐201発現ベクターを製造した(図2)。確認された組み換えベクターは、「PMC‐201‐v213」と称した。
【0077】
実施例2:二重標的抗体PMC‐201の生産及び同定
完成された発現ベクターPMC‐201‐v213を293T細胞に形質導入による任意発現を誘導した後、SDS‐PAGE及びウェスタンブロッティングによりその発現可否を確認した。形質導入は、lipofectamineTM 2000(Invitrogen #11668‐019、米国)を用いており、その方法は、製造社の説明にしたがった。略述すると、αMEM培地(Welgene、韓国)が入っている6‐ウェルプレート(well plate)に1ウェルあたり5×10個の293T細胞を接種した後、加湿が維持されるCO(5%)培養器を使用して37℃で24時間放置することで、細胞密度が80〜90%程度になるように粗密に培養した。組み換えベクター2μg(PMC‐201‐v213)と6μlのlipofectaminTM 2000をそれぞれ250μlの無血清のαMEM培地に希釈し、常温で5分間放置した。
【0078】
DNA希釈液とlipofectaminTM 2000希釈液を交ぜて常温で20分間反応させ、DNA‐lipofectaminTM 2000複合体が形成されるようにした。培養された細胞で既存の培地を除去した後、DNA‐lipofectaminTM 2000複合体500μlと無血清のαMEM培地500μlを各ウェルに添加して、37℃条件のCO培養器で6時間培養した。透析ウシ胎児血清が20%含まれたαMEM培地1mlを追加して48〜72時間培養した後、その上澄みのみを分離して抗体の発現可否をSDS‐PAGEにより確認した。SDS‐PAGEは、当業界で一般的に使用される方法を準用し、使用された試料は次のとおりである:12%SDS‐polyacrylamide Gel、PVDFメンブレン(Millipore #IPVH00010、米国)、HRP‐conjugated goat anti‐human IgG(kappa)抗体、また、HRP‐conjugated goat anti‐human IgG(Fc)抗体(Pierce、米国)。
【0079】
その結果、SDS‐PAGE及びウェスタンブロッティングにより二重標的抗体PMC‐201が発現されたことを確認することができ、Protein Aアフィニティーカラム、SP‐sepharoseカラム、サイズ排除カラムを用いたFPLCにより純度95%以上の精製された抗体を取得することができた(図3)。
【0080】
実施例3:二重標的抗体PMC‐201の結合能試験
3‐1:VEGFR‐2及びhDLL4に対する結合能試験
二重標的抗体PMC‐201がVEGFR‐2及びhDLL4に対して結合するかを確認する結合能アッセイをELISAを用いて実施した。このために、96‐ウェルプレートにVEGFR‐2のExtracellular domain1〜3(以下、VEGFR‐2ECD)とDLL4をそれぞれ1μg/mlの濃度でウェルに分注し、室温で2時間コーティングした後、2%の脱脂乳/PBSを用いて室温でblocking反応を2時間行った。
【0081】
Blockingが終了したプレートをPBSで洗浄した後、室温で予め準備した様々な濃度(0.18〜3000ng/ml)のTanibirumabとPMC‐201をVEGFR‐2ECDあるいはhDLL4がコーティングされたウェルに入れて、室温で1時間反応させた。反応が終了した後、PBSを用いて洗浄し、次に、2次抗体としてHRP‐conjugated goat anti‐human IgG antibody(Pierce、米国)を1:2000に希釈して添加し、常温で30分間反応させた後、TMB substrate reagent(BD Biosciences #555214、米国)を用いて発色反応を誘導し、2N硫酸(HSO)溶液50μlずつを添加して発色反応を中止した。発色反応の測定は、マイクロプレートリーダー(Tecan、スイス)を用いて、吸光度450nmと650nmで行われる。
【0082】
その結果、VEGFR‐2には、TanibirumabとPMC‐201が類似の結合能を示すことを確認した一方、hDLL4には、PMC‐201のみが結合能を有することを確認した(図4)。
【0083】
3‐2:PMC‐201とhuman DLL4の親和度分析
PMC‐201のhuman DLL4に対する解離定数(Kd、dissociation constant)を確認するために、BIACORER 3000(GE Healthcare)を使用し、CM5 chipを使用した。解離定数は、Km値の類似値であり、酵素‐基質複合体において酵素の基質に対する親和性の指標として使用され、値が低いほど酵素と基質の親和度が高いことを意味する。
【0084】
試料の固定化は、Amine Coupling Kit(GE Healthcare)である400mM EDC(N‐ethyl‐N´‐(dimethylaminopropyl)Carbodiimide)、100mM NHS(N‐Hydroxysuccinimide)、1Mエタノールアミン塩酸塩(Ethanolamine hydrochloride、pH8.5)を使用し、再生バッファーとしては20mMの水酸化ナトリウム、固定化バッファーとしては1XPBSに希釈した後、pH5.0の10mMのアセテート(GE Healthcare)に分析試料を1/40に希釈した。固定化範囲としては4000RU(Response Unit)で固定化した。分析試料の吸着性測定バッファーは、HBS‐EPバッファー(GE Healthcare)を使用した。抗原としては、DLL4を測定濃度4.9、9.7、19.5、39.1、78.1、156.3、312.5nMでHBS‐EPバッファーを使用し、最終容積が200μlになるように段階別に希釈した。7個の濃度のうち5個の濃度を選択してfittingした。再生バッファーは、実際分析する前に予備に156.3nM試料を結合段階、解離段階を経た後、水酸化ナトリウムを利用ベースライン(base line)の+10%程度再生されるかを確認した後、使用濃度を選択した。分析流速は30μl/minであり、結合区間は60秒、解離区間は300秒とし、分析試料の親和度を測定した。
【0085】
各バッチ別の親和度を分析した結果、PMC‐201、Notch‐1Fcでそれぞれの親和度を確認し、本発明における二重標的抗体PMC‐201が、Notch‐1Fcに比べて親和度が高いことを確認した(図5)。
【0086】
3‐3:細胞表面に発現するhDLL4とPMC‐201の結合能測定
ELISAとBiacoreは、solid‐phaseに固定されたhDLL4に対するPMC‐201の結合能を確認したものであり、PMC‐201が細胞表面に発現するhDLL4に結合するか否かを確認するために、FACS分析を行った(図6)。
【0087】
先ず、hDLL4(配列番号12アミノ酸配列)を発現する293poolと細胞株を作製するために、GeneArtのGeneoptimizerにより、gene optimizationを行ったhDLL4のコード配列(配列番号11塩基配列)をpcDNA3.1(+)の制限酵素BamHIとEcoRIの位置にクローニングし、pcDNA‐hDLL4を構築した。次に、前記pcDNA‐hDLL4ベクターを293細胞に形質導入した。形質導入は、lipofectamineTM 2000(Invitrogen #11668‐019、米国)を用いており、その方法は、製造社の説明にしたがった。略述すると、αMEM培地(Welgene、韓国)が入っている100mmのプレートに1×10個の293細胞を接種した後、加湿が維持されるCO(5%)培養器を使用して、37℃で24時間培養することで、細胞密度が20%程度になるようにした。ベクター16μg(DLL4 pcDNA3.1)と40μlのlipofectaminTM 2000をそれぞれ1mlの無血清のαMEM培地に希釈し、常温で5分間incubation後、DNA希釈液とlipofectaminTM 2000希釈液を交ぜて常温で20分間反応させ、DNA‐lipofectaminTM 2000複合体が形成されるようにした。培養された細胞で既存の培地を除去した後、DNA‐lipofectaminTM 2000複合体1mlと無血清のαMEM培地9mlを各ウェルに添加し、加湿が維持される37℃のCO培養器で6時間培養した後、透析ウシ胎児血清が10%含まれたDMEM培地に変えた。次に、37℃で72時間培養し、Trypsin‐EDTAを使用して細胞を分離した後、透析ウシ胎児血清が10%含まれたDMEM培地とneomycin(G418、500μg/ml)を添加して培養した。72時間後、同じ条件でG418濃度を1mg/mlに増加させた培地に変えて、コロニーが形成されるまで1週間前後に培養した。コロニーが形成されたプレートでそれぞれのコロニーをTrypsine‐EDTA処理し、24ウェルプレートに移して透析ウシ胎児血清が10%含まれたDMEM培地とneomycin(G418、500μg/ml)を添加して培養する一方、生長するすべてのコロニーを集めて、pool状態に培養した。
【0088】
1週間後、pool状態でanti‐hDLL4抗体(Biolegend、米国)でFACS分析を行ってhDLL4発現を確認してから使用し、選別された単一コロニー23種はこれらをそれぞれ6‐wellプレートと100mmプレートで継代しながら、透析ウシ胎児血清10%とneomycin(G418、500μg/ml)が含まれたDMEM培地で培養した。単一コロニーのうちhDLL4をよく発現する細胞1種を選択して、293‐hDLL4と称し、移行、PMC‐201のDLL4の拮抗効能関連分析に用いた。
【0089】
PMC‐201が293‐DLL4 poolによく結合するかを確認するためにFACS分析を実施した。まず、十分な数(FACSサンプルあたり1×10以上)の293‐DLL4 poolを培養した後、これらをTrypsin‐EDTAでsingle‐cell化し、1x FACS buffer(0.2%BSA in PBS)2mlを添加してよく交ぜ、1200rpmで3分間遠心分離した後、上澄みを捨て、沈殿した細胞に10nM濃度のPMC‐201、Notch‐1 Fc、Tanibirumabでiceで20分間1次染色した後、1x FACS bufferで洗浄し、PE‐anti‐human Fc抗体で2次染色(iceで20分)した後、洗浄した。次に、フローサイトメトリー(flow cytometry;FACSCalibur)で測定した。
【0090】
細胞表面に発現するhDLL4に対する結合可否を測定した結果、PMC‐201は、Notch‐1Fcに類似の結合能を示すことを確認した(図6)。
【0091】
実施例4:二重標的抗体PMC‐201処理後、HUVECの増殖能分析
本発明に係る二重標的抗体PMC‐201処理後、血管内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cell、HUVEC)(Lonza、スイス)の増殖能変化を確認するために、細胞増殖能分析を実施した。HUVECの培養は、20%のウシ胎児血清(Hyclone、米国)、ペニシリン100units/ml(Hyclone、米国)、ストレプトマイシン100μg/ml(Hyclone、米国)、線維芽細胞増殖因子(Upstate Biotechnology、米国)3ng/ml、ヘパリン5units/ml(Sigma‐Aldrich、米国)を添加したphenol red‐free M199培地(Invitrogen、米国)を使用し、細胞培養は、加湿された5%のCO混合空気条件の37℃培養器で培養した。血管内皮細胞の生存率分析のために、これら細胞を24‐ウェルプレートに2×10細胞/ウェルの密度で24時間培養した。次に、M199培地で2回洗浄した後、1%のウシ胎児血清(Hyclone、米国)が含まれたM199培地の低い血清濃度条件で6時間培養した。様々な濃度の抗体を細胞に30分間前処理した後、20ng/ml VEGF(R&D systems、米国)を処理した。48時間培養後、WST−8(Dojindo、日本)を2時間処理して450nm波長での吸光度を測定することで、各条件での細胞増殖能を比較した。
【0092】
その結果、初代培養したHUVEC細胞に対する細胞増殖能アッセイにより、二重標的抗体PMC‐201がVEGFによって誘発されるHUVEC細胞の増殖能を親抗体であるタニビルマブ(Tanibirumab)に比べてより強力に阻害することができることを確認した(図7)。
【0093】
実施例5:FACSを用いた競争的human DLL4結合能分析
293‐hDLL4細胞株に結合するhNotch1‐FcにPMC‐201が競合的に結合するかを確認するためにFACS分析を実施した。まず、十分な数(FACSサンプルあたり細胞数1×10以上)の293‐hDLL4を培養した後、これらをTrypsin−EDTAで処理して、単一細胞に分離した後、1 X FACS buffer(0.2% BSA in PBS)2mlを添加した。次に、単一細胞に分離した細胞を回収し、1,200rpmで3分間遠心分離した後、上澄みを捨て、沈殿した細胞に16μg/ml濃度のタニビルマブ又はPMC‐201とAlexa‐488(Zenon、#Z‐25402)をラベリングしたrhNotch1‐Fcを1μg/mlでともに入れて、氷で30分間1次染色した後、1X FACS bufferで洗浄し、次に、フローサイトメトリー(flow cytometry;FACSCalibur)で測定した。
【0094】
その結果、HUVECに結合するrhNotch1‐Fcの結合が、PMC‐201によって幾何平均(Geometric mean)で見たとき、4倍以上減少したことを確認した。一方、タニビルマブの場合、抗体非処理群と類似に、rhNotch1‐Fcの結合を阻害することができなかった(図8)。
【0095】
実施例6:Notch‐1の一プロモーター活性分析
1×10個のLS174T細胞(colon cancer cell line;ATCC、CL‐188TM)を10%のウシ胎児血清が含まれたRPMI培地に24時間培養し、Cignal Reporter Assay Kit(#336841 CCS‐014L、QIAGEN)に含まれたNotch Cignal reporter DNA 0.8μgとlipofectamine(#11668‐500;Invitrogen)2μlをopti‐MEM media 100μlと交ぜて20分間静置した後、よく交ぜて、トランスフェクションの際に、400μl opti‐MEMを添加して6時間培養した。6時間後、10%のウシ胎児血清が含まれMEM培地に培地を交換した後。一晩中培養した。翌日、1×10個の293‐hDLL4細胞にタニビルマブとPMC‐201(それぞれ20mg/ml)を交ぜて1時間前処理(pretreatment)した後、Notch Cignal reporter DNAがトランスフェクションされたLS174T細胞と24時間共培養(coculture)した。DAPT(5mM)は、前処理せず、トランスフェクションされたLS174T細胞に293‐hDLL4細胞とともに交ぜて、24時間共培養(coculture)した。
【0096】
DAPT(N‐[N‐(3,5‐Difluorophenacetyl)‐L‐alanyl]‐S‐phenylglycine t‐butyl ester)は、一般的にNotch1活性を抑制すると知られており、γ‐secretaseの活性を抑制して、NICDの生産増加を減少させる役割をする(Andrea Geling et al.,EMBO Rep.,:3(7):688,2002;Ie‐Ming Shih and Tian‐Li Wang,Cancer Research,67:1879,2007)。
【0097】
24時間共培養した後、Dual‐Luciferase Reporter Assay System(Cat.# E1910;Promega)に含まれた溶解バッファー(lysis buffer)で溶解した後、基質とATPを交ぜ、Luminometerを使用して発光程度を測定した。
【0098】
その結果、LS174T細胞のNotch‐1活性化によって示されるNICDのプロモーター活性化が、抗体を処理していない比較群に比べて、二重標的抗体PMC‐201を処理した場合に、DAPT処理群だけNICDのプロモーター活性化が減少したことを確認した(図9)。
【0099】
実施例7:Notch‐1の活性化による細胞内ドメイン(NICD)増加分析
6‐ウェルプレートに組み換えhDLL4を1μg/mlの濃度で一晩中(16時間)コーティングした。1XPBSで洗浄した後、各ウェル(well)にヒトIgG(hIgG)、タニビルマブ、PMC‐201(20μg/ml)濃度で1時間処理した後、処理した抗体溶液を除去し、5×10個のHUVECとIgG、タニビルマブ、PMC‐201(20μg/ml)を交ぜて6‐ウェルプレートにそれぞれ処理した。24時間培養後、溶解バッファー(最終1%SDS、1mM Na3VO4、1x protease inhibitor cocktail)を使用して細胞を溶解した後、細胞溶解液を集めてエッペンチューブに移して、95℃で10分間加熱した後、氷で冷やした後、BCA定量法を用いて全体タンパク質を定量した後、実施例2のウェスタンブロット法と同じ方法でNICDを測定した。
【0100】
この際、1次抗体としては、Cleaved Notch1(Val1744)(D3B8)抗体(Rabbit)を1:1000に、β‐actin抗体(Rabbit)は1:2000に、5%、0.05%TBSTで満たされたskim milkに希釈し、2次抗体としては、anti‐Rabbit IgG(R&D HAF008)を1:1000に希釈して使用した。
【0101】
その結果、HUVEC細胞でhNotch‐1活性化によって現れるNICDの量が、親抗体であるタニビルマブに比べて、DLL4をターゲッティングする二重標的抗体PMC‐201によって相当減少していることを確認した(図10)。
【0102】
一方、hDLL4をコーティングせず、細胞培養と共培養(co‐culture)だけでNICDを検出する分析方法のために、以下を行った。
【0103】
先ず、6‐ウェルプレートにHUVECを5×10細胞/ウェルで24時間培養した。次に、293‐hDLL4(ヒトDLL4過発現293細胞株)2.5×10細胞/ウェルとhIgG、PMC‐201(10μg/ml)DAPT(5μM)を1時間処理した後、抗体(hIgG、PMC‐201)とDAPTが処理された293‐hDLL4細胞を抗体溶液を除去していない状態で、前記6‐ウェルプレートに初期培養されたHUVECに添加して24時間共培養した。比較群としては293‐T細胞株を処理してHUVECと共培養した。
【0104】
このように、24時間共培養された細胞を溶解バッファー(final 1%SDS、1mM Na3VO4,1x protease inhibitor cocktail)を使用して細胞を溶解した後、細胞溶解液を集めてエッペンチューブに移し、95℃で10分加熱した後、氷で冷やした後、BCA定量法を用いて全体タンパク質を定量した後、実施例2のウェスタンブロット法と同じ方法でNICDを測定した。
【0105】
その結果、HUVEC細胞でNotch‐1活性化によって現れるNICDの量が、hIgGに比べて、DLL4をターゲッティングする二重標的抗体PMC‐201によって50%未満に減少したことを確認した(図11)。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る二重標的抗体は、VEGF/VEGFR‐2及びDLL4/Notch1の二つの経路によるシグナル伝逹をより効率的に同時に阻害することにより、腫瘍などの様々な血管新生関連疾患を治療することができ、特に、新生血管治療剤を単独で使用するに伴い発生する耐性を克服することができ、癌幹細胞を直接ターゲッティングすることにより、癌の再発を根本的に防止することができるという利点がある。
【0107】
したがって、本発明に係る二重標的抗体及びこれを含む薬学的組成物は、血管新生関連疾患、特に、癌を治療するために有用に使用することができる。
【0108】
以上、本発明における内容の特定の部分を詳細に説明しているが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的技術は単に好ましい実施様態であって、これによって本発明の範囲が制限されることはない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]