(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔熱膨張性微小球の製造方法〕
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂からなる外殻とそれに内包される発泡剤とを必須として構成される熱膨張性微小球の製造方法である。この製造方法は、平均粒子径が1.0〜10nmの微粒子状の金属化合物を含有するpHが7以下である水性分散媒中に、重合性成分と前記発泡剤とを分散させ、前記重合性成分を重合させる工程を含み、前記微粒子状の金属化合物の配合量が前記重合性成分および発泡剤の合計100重量部に対して0.15〜20重量部である製造方法である。
【0016】
(重合工程)
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であれば特に限定はないが、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3〜13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150〜260℃および/または蒸留範囲70〜360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭素数1〜12の炭化水素のハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル−n−プロピルシラン等の炭素数1〜5のアルキル基を有するシラン類;アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であるが、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質を内包すると、熱膨張性微小球の膨張温度において膨張に十分な蒸気圧を発生させることが可能で、高い膨張倍率を付与することが可能であるために好ましい。この場合、発泡剤として、熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質と共に、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包していても良い。
【0017】
重合性成分は、重合開始剤存在下で重合することによって、熱膨張性微小球の外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある成分である。
単量体成分は、一般には、重合性二重結合を1個有するラジカル重合性単量体と呼ばれている成分を意味し、特に限定はない。
【0018】
単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。単量体成分はこれらのラジカル重合性単量体を1種または2種以上を併用してもよい。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
重合性成分は、ニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、アクリルアミド系単量体およびハロゲン化ビニリデン系単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体成分を含むと好ましい。
【0019】
重合性成分が、単量体成分としてのニトリル系単量体を必須成分として含むと、得られる熱膨張性微小球が耐溶剤性に優れるために好ましい。ニトリル系単量体としては、アクリロニトリルや、メタクリロニトリル等が入手し易く、耐熱性および耐溶剤性が高いために好ましい。
ニトリル系単量体がアクリロニトリル(AN)およびメタクリロニトリル(MAN)を含有する場合、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルの重量比率(AN/MAN)については特に限定はないが、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜80/20である。ANおよびMAN重量比率が10/90未満であると、ガスバリア性が低下することがある。一方、ANおよびMAN重量比率が90/10を超えると、十分な発泡倍率が得られないことがある。
【0020】
ニトリル系単量体の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは単量体成分の20〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%であり、さらに好ましくは40〜100重量%であり、特に好ましくは50〜100重量%であり、最も好ましくは60〜100重量%である。ニトリル系単量体が単量体成分の20重量%未満の場合は、耐溶剤性が低下することがある。
重合性成分が、単量体成分としてのカルボキシル基含有単量体を必須成分として含むと、得られる熱膨張性微小球が耐熱性や耐溶剤性に優れるために好ましい。カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸や、メタクリル酸が入手し易く、耐熱性が向上するために好ましい。
【0021】
カルボキシル基含有単量体の重量割合については、特に限定はないが、単量体成分に対して、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜60重量%であり、さらに好ましくは20〜50重量%であり、特に好ましくは25〜45重量%であり、最も好ましくは30〜40重量%である。カルボキシル基含有単量体が10重量%未満の場合は、十分な耐熱性向上が得られないことがある。一方、カルボキシル基含有単量体が70重量%超の場合は、ガスバリア性が低下することがある。
単量体成分がニトリル系単量体およびカルボキシル基含有単量体を必須成分として含む場合、カルボキシル基含有単量体およびニトリル系単量体の合計の重量割合は単量体成分に対して、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。
【0022】
このとき、カルボキシル基含有単量体およびニトリル系単量体の合計におけるカルボキシル基含有単量体の比率は、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜60重量%、さらに好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%、最も好ましくは30〜40重量%である。カルボキシル基含有単量体の比率が10重量%未満であると耐熱性、耐溶剤性の向上が不十分で、高温の広い温度域や時間域で安定した膨張性能が得られないことがある。また、カルボキシル基含有単量体の比率が70重量%超の場合は、熱膨張性微小球の膨張性能が低くなることがある。
重合性成分が、単量体成分としての塩化ビニリデン系単量体を含むとガスバリア性が向上する。また、重合性成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体および/またはスチレン系単量体を含むと熱膨張特性をコントロールし易くなる。重合性成分が(メタ)アクリルアミド系単量体を含むと耐熱性が向上する。
【0023】
塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体およびスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種の重量割合は、単量体成分に対して、好ましくは80重量%未満、さらに好ましくは50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満である。80重量%以上含有すると耐熱性が低下することがある。
重合性成分は、上記単量体成分以外に、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)を含んでいてもよい。架橋剤を用いて重合させることにより、熱膨張後の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができる。
【0024】
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5ペンタンジオールジアクリレート、等のジ(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
架橋剤の量については、特に限定はなく、無くてもよいが、架橋の程度、外殻に内包された発泡剤の内包保持率、耐熱性および熱膨張性を考慮すると、架橋剤の量は、単量体成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部である。
【0025】
重合工程では、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。重合開始剤は、重合性成分や発泡剤とともに油性混合物に含まれるとよい。
重合開始剤としては、特に限定はないが、たとえば、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド等の過酸化物;アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアルキル、高分子アゾ開始剤等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。なお、重合開始剤としては、ラジカル重合性単量体に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
【0026】
重合開始剤の量については、特に限定はないが、単量体成分100重量部に対して0.3〜8重量部であると好ましく、より好ましくは0.6〜7重量部である。
重合工程において、連鎖移動剤、有機顔料、表面が疎水性処理された無機顔料や無機粒子等をさらに使用してもよい。
【0027】
重合工程では、水性分散媒は、重合性成分および発泡剤を必須とする油性混合物を分散させる媒体であり、イオン交換水等の水を主成分とする。水性分散媒は、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールや、アセトン等の親水性有機性の溶媒をさらに含有してもよい。本発明における親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。水性分散媒の使用量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、100〜1000重量部の水性分散媒を使用するのが好ましい。
水性分散媒の20℃における粘度については、特に限定はないが、小粒径の熱膨張性微小球を安定に得るという観点では、好ましくは1.5〜80mPa・s、より好ましくは1.7〜70mPa・s、さらに好ましくは1.9〜65mPa・sであり、特に好ましくは2.0〜60mPa・sである。水性分散媒の20℃における粘度が1.5mPa・s未満の場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、熱膨張性微小球を得ることができないことがある。水性分散媒の20℃における粘度が80mPa・s超の場合は、重合工程における反応熱の除去が困難になることがある。
【0028】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、たとえば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。
電解質の含有量については、特に限定はないが、水性分散媒全体に対して、好ましくは30重量%未満、より好ましくは25重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満、よりさらに好ましくは15重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満とするのが好ましい。電解質の含有量の好ましい下限は0重量%である。電解質の含有量が水性分散媒全体に対して30重量%以上の場合は、水性分散媒の粘度が高くなり、効率的に小粒径の熱膨張性微小球を得ることができなくなることがある。
【0029】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基およびホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1−置換化合物類、重クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化チタン、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1.0重量部、さらに好ましくは0.0003〜0.1重量部、特に好ましくは0.001〜0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料である重合性成分の残存量が増加することがある。
【0030】
重合工程では、小粒径で分散性等の物性に優れる熱膨張性微小球を製造するために、水性分散媒は、微粒子状の金属化合物を分散安定剤として含有する。金属化合物は1種または2種以上を併用してもよい。微粒子状の金属化合物としては、特に限定はないが、たとえば、第三リン酸カルシウム、複分解生成法により得られるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウムや、コロイダルシリカ、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、水酸化マグネシウム等の微粒子状のものを挙げることができる。これらの分散安定剤は、1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コロイダルシリカが好ましく、小粒径の熱膨張性微小球を安定に得ることができる。コロイダルシリカについては、コロイダルシリカを含む分散液、すなわちコロイダルシリカ分散液の形態で広く市販されており、扶桑化学工業株式会社製「クウォートロン」、株式会社ADEKA製「アデライト」、日本化学工業株式会社製「シリカドール」、日産化学工業株式会社製「スノーテックス」、Dupont社製「Ludox」等の市販品の中から、コロイダルシリカの平均粒子径や比表面積等の物性について各種グレードのものを容易に入手することができる。
コロイダルシリカ分散液に含まれるコロイダルシリカの有効濃度については、特に限定はないが、好ましくは10〜28重量%、より好ましくは13〜26重量%、さらに好ましくは14〜24重量%、よりさらに好ましくは15重量%超で23重量%未満、特に好ましくは16〜22重量%、最も好ましくは17〜21重量%である。コロイダルシリカの有効濃度が10〜28重量%の範囲外である場合は、小粒子径の熱膨張性微小球を効率的に得ることができないことがある。
【0031】
微粒子状の金属化合物の平均粒子径については、通常1.0〜10nmであるが、好ましくは2.0〜9.0nmであり、より好ましくは3.0〜8.0nmであり、さらに好ましくは3.4〜7.0nmであり、よりさらに好ましくは3.6〜6.0nm、特に好ましくは3.8〜5.5nm、最も好ましくは4.0〜5.0nmである。微粒子状の金属化合物の平均粒子径が1.0nm未満である場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、凝集物が発生することがある。一方、微粒子状の金属化合物の平均粒子径が10nm超である場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴を安定化させるために、多量に添加する必要があり、その結果、得られた熱膨張性微小球の灰分が大きく塗料用途等に使用する場合に分散不良が発生することがある。
金属化合物の平均粒子径については、透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の500個の金属化合物粒子について、その投影面積円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径)を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
【0032】
微粒子状の金属化合物の比表面積については、特に限定はないが、270〜2720m
2/g、280〜2500m
2/g、290〜2200m
2/g、295〜1800m
2/g、300〜1360m
2/g、320〜1200m
2/g、340〜900m
2/g、390〜800m
2/g、450〜700m
2/gの順で好ましい。
微粒子状の金属化合物の比表面積が270m
2/g未満である場合、10μm以下の熱膨張性微小球を安定に得るために微粒子状金属化合物を多量に使用する必要があり、その結果、得られた熱膨張性微小球の灰分が大きく塗料用途などに使用する場合に分散不良が発生することがある。一方、微粒子状の金属化合物の比表面積が2720m
2/g超である場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、凝集物が発生することがある。
金属化合物の比表面積は、微粒子状の金属化合物がコロイダルシリカである場合、その比表面積はシアーズ法により測定される。シアーズ法は、アナリティカル・ケミストリー(ANALYTICAL CHEMISTRY)第28巻第12号(1956年12月)第1981頁に記載されており、シリカゾル表面のシラノール基量を定量することによって比表面積を測定する方法である。コロイダルシリカ以外のその他の微粒子状の金属化合物の比表面積は、JIS Z8830に準じて窒素吸着BET法で測定される。シアーズ法による具体的な測定方法については実施例に記載する。
【0033】
重合工程で用いる分散安定剤の配合量は、重合性成分および発泡剤の合計100重量部に対して、通常、0.15〜20重量部であるが、好ましくは0.20〜18重量部であり、より好ましくは0.25〜16重量部であり、さらに好ましくは0.35〜14重量部であり、よりさらに好ましくは0.40〜12重量部、特に好ましくは0.50〜11.5重量部、最も好ましくは0.55〜11.3重量部である。分散安定剤の配合量が重合性成分および発泡剤の合計100重量部に対して0.15〜20重量部の範囲外の場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、凝集物が発生することがある。
水性分散媒は、電解質や水溶性化合物、分散安定剤以外に、分散安定補助剤を含有していてもよい。
【0034】
分散安定補助剤としては、特に限定はないが、たとえば、高分子タイプの分散安定補助剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等を挙げることができる。これらの分散安定補助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
前記分散安定補助剤として、たとえば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、水溶性窒素含有化合物、ポリエチレンオキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0035】
水溶性窒素含有化合物としては、たとえば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルピロリドンが好ましい。
重合工程で用いる分散安定補助剤の配合量は、重合性成分および発泡剤の合計100重量部に対して、好ましくは0.10〜5重量部、より好ましくは0.15〜4重量部であり、さらに好ましくは0.20〜3重量部である。分散安定補助剤の配合量が重合性成分および発泡剤の合計100重量部に対して0.10〜5重量部の範囲外の場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、凝集物が発生することがある。
【0036】
水性分散媒は、たとえば、水(イオン交換水)に、分散安定剤とともに、必要に応じて水溶性化合物および/または分散安定補助剤等を配合して調製される。
本発明の重合時の水性分散媒のpHは通常7以下である。水性分散媒のpHは、好ましくは1.5〜5、より好ましくは1.8〜4.8であり、さらに好ましくは2〜4.5であり、特に好ましくは2.2〜4であり、最も好ましくは2.4〜3.8である。重合時の水性分散媒のpHが7を超える場合は、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、凝集物が発生することがある。
【0037】
本発明の製造方法では、水酸化ナトリウムや、水酸化ナトリウムおよび塩化亜鉛の存在下で重合を行ってもよい。
重合工程では、単量体成分を必須とし架橋剤を含むことがある重合性成分;発泡剤;水、分散安定剤としての微粒子状の金属化合物を必須として、補助安定剤、水溶性化合物、電解質等を含むことがある水性分散媒;重合開始剤等の各成分を混合して、重合性成分を重合させることによって行われる。これらの各成分の配合順序等については特に限定はなく、水性分散媒に溶解または分散し得る成分をあらかじめ配合しておき、他の成分と配合してもよい。
【0038】
重合工程では、所定粒子径の球状油滴が調製されるように、重合性成分および発泡剤等の油性混合物からなる油滴を水性分散媒中に懸濁分散させる。
油性混合物を懸濁分散させる方法としては、たとえば、ホモミキサー(たとえば、プライミクス株式会社製)、ホモディスパー(たとえば、プライミクス株式会社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(たとえば、株式会社ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法、マイクロチャネル法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
【0039】
次いで、油性混合物が球状の油滴として水性分散媒に分散された分散液を加熱することにより、懸濁重合を開始する。重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、たとえば、単量体の浮上や重合後の熱膨張性微小球の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは40〜90℃、特に好ましくは50〜85℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、0.1〜20時間程度が好ましい。重合初期圧力については特に限定はないが、ゲージ圧で0〜5.0MPa、さらに好ましくは0.1〜3.0MPa、特に好ましくは0.2〜2.0MPaの範囲である。
【0040】
重合工程後に得られる熱膨張性微小球を含む水性分散媒(以下では、重合液ということもある)中には、目的とする熱膨張性微小球以外に、熱膨張性微小球の凝集物や重合カス等の副生成物が生成することがある。このような副生成物の大きさは熱膨張性微小球の粒子径よりも一般に大きいので、副生成物が一定のふるいを通過しなくなる。この点を利用して、安定に熱膨張性微小球を製造できたかを示す指標として、熱膨張性微小球の製造安定性を評価することができる。熱膨張性微小球の製造安定性は、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。熱膨張性微小球の製造安定性が80重量%未満であると、製造工程上で問題が生じ、生産性よく熱膨張性微小球が得られないことがある。熱膨張性微小球の製造安定性の定義は実施例で詳しく説明する。
重合工程後に得られる熱膨張性微小球を含む水性分散媒(以下では、重合液ということもある)から熱膨張性微小球を単離する方法としては、たとえば、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離等の単離方法を挙げることができ、その結果、熱膨張性微小球の含液ケーキが得られる。
得られた熱膨張性微小球(通常は、熱膨張性微小球の含液ケーキ)に対して、棚乾燥、減圧乾燥、気流乾燥、等の乾燥操作をさらに行うことで、乾燥した熱膨張性微小球を得ることができる。
また、熱膨張性微小球を含む水性分散媒から乾燥した熱膨張性微小球を得る過程で、水性分散媒に含まれる水以外の成分を除去し、熱膨張性微小球を精製するために、熱膨張性微小球を水洗してもよい。
【0041】
〔熱膨張性微小球〕
次に、本発明の熱膨張性微小球について説明する。熱膨張性微小球は、
図1に示すように、熱可塑性樹脂からなる外殻(シェル)11とそれに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤(コア)12とから構成されたコア−シェル構造をとっており、熱膨張性微小球は微小球全体として熱膨張性(微小球全体が加熱により膨らむ性質)を示す。熱可塑性樹脂、重合して熱可塑性樹脂となる重合性成分、この重合性成分を構成する単量体成分、発泡剤等については、前述のとおりである。
本発明の熱膨張性微小球の平均粒子径については、通常は0.01〜10μmである。熱膨張性微小球の平均粒子径は、前記範囲の中で用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されないが、0.05〜9.0μm、0.1〜8.0μm、0.5〜7.0μm、0.7〜6.5μm、0.8〜6.0μm、0.9〜5.5μm、1.0〜5.0μmの順で好ましい。熱膨張性微小球の平均粒子径が0.01μm未満の場合は、十分な膨張性が得られないことがある。また、熱膨張性微小球の平均粒子径が10μm超の場合は、表面平滑性が必要な用途には不適になることがある。
【0042】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数CVは、特に限定されないが、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数CVは、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0044】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、x
iはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
発泡剤の内包率は、熱膨張性微小球の重量に対する熱膨張性微小球に内包された発泡剤の重量の百分率で定義される。発泡剤の内包率については、特に限定はなく、使用される用途により内包率は適宜決められるが、好ましくは1〜35%、さらに好ましくは2〜30%、特に好ましくは3〜25%である。内包率が1%未満であると、発泡剤の効果が得られないことがある。一方、内包率が35%を超えると熱膨張性微小球の外殻の厚みが薄くなることで、ガス抜けの原因となり、耐熱性の低下や高い膨張性能が得られないことがある。
【0045】
熱膨張性微小球の膨張開始温度(T
s)については、特に限定はないが、好ましくは60〜250℃、より好ましくは70〜230℃、さらに好ましくは80〜200℃、特に好ましくは90〜180℃、最も好ましくは100〜160℃である。膨張開始温度が60℃未満であると、熱膨張性微小球の経時安定性の問題が発生し、塗料や樹脂等の組成物への利用が難しくなることがある。
熱膨張性微小球の最大膨張温度(T
max)については、特に限定はないが、好ましくは80〜300℃、より好ましくは90〜280℃、さらに好ましくは100〜250℃、特に好ましくは110〜230℃、最も好ましくは120〜210℃である。最大膨張温度が80℃未満であると、塗料や樹脂等の組成物への利用が難しくなることがある。
【0046】
熱膨張性微小球の灰分は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9.5重量%以下、さらに好ましくは9.0重量%以下、よりさらに好ましくは8.5重量%以下、特に好ましくは8.0重量%以下、最も好ましくは7.5重量%以下である。灰分が10重量%を超えると、熱膨張性微小球や以下で説明する中空粒子を配合した組成物および成形物において、軽量化や材料物性に悪影響を及ぼす場合がある。熱膨張性微小球の灰分は、金属化合物等に由来すると考えられる。また、熱膨張性微小球の灰分の好ましい下限は、0重量%である。
熱膨張性微小球のケイ素含有量は、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下の順で好ましい。ケイ素含有量が10重量%を超えると、熱膨張性微小球や以下で説明する中空粒子を配合した組成物および成形物において、分散性に悪影響を及ぼす場合がある。また、熱膨張性微小球のケイ素含有量の好ましい下限は、0重量%である。
【0047】
〔中空粒子〕
本発明の中空粒子は、上記で説明した熱膨張性微小球や上記で説明した熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球を加熱膨張させて得られる粒子である。
本発明の中空粒子は、軽量であり、組成物や成形物に含ませると材料物性に優れる。中空粒子を、たとえば、塗料組成物の成分として配合した場合に、塗料組成物の粘度上昇を抑制することが可能となり、材料物性に優れる。
【0048】
中空粒子を得る製造方法としては、乾式加熱膨張法、湿式加熱膨張法等が挙げられる。熱膨張性微小球を加熱膨張させる温度は、好ましくは60〜350℃である。
中空粒子の平均粒子径については用途に応じて自由に設計することができるために特に限定されないが、好ましくは0.1〜1000μm、より好ましくは0.8〜200μmである。また、中空粒子の粒度分布の変動係数CVについても、特に限定はないが、30%以下が好ましく、さらに好ましくは25%以下である。
【0049】
中空粒子の灰分は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9.5重量%以下、さらに好ましくは9.0重量%以下、よりさらに好ましくは8.5重量%以下、特に好ましくは8.0重量%以下、最も好ましくは7.5重量%以下である。灰分が10重量%を超えると、中空粒子を配合した組成物および成形物において、軽量化や材料物性に悪影響を及ぼす場合がある。中空粒子の灰分は、金属化合物等に由来すると考えられる。また、中空粒子の灰分の好ましい下限は、0重量%である。
中空粒子のケイ素含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4.5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、よりさらに好ましくは3.5重量%以下、特に好ましくは3.0重量%以下、最も好ましくは2.5重量%以下である。ケイ素含有量が5重量%を超えると、中空粒子を配合した組成物および成形物において、分散性に悪影響を及ぼす場合がある。また、中空粒子のケイ素含有量の好ましい下限は、0重量%である。
【0050】
中空粒子の真比重については特に限定はないが、好ましくは0.010〜0.5、さらに好ましくは0.015〜0.3、特に好ましくは0.020〜0.2である。
中空粒子(1)は、
図2に示すように、その外殻(2)の外表面に付着した微粒子(4や5)から構成されていてもよく、以下では、微粒子付着中空粒子(1)ということがある。
【0051】
ここでいう付着とは、単に微粒子付着中空粒子(1)の外殻(2)の外表面に微粒子充填剤(4および5)が、吸着された状態(4)であってもよく、外表面近傍の外殻を構成する熱可塑性樹脂が加熱によって融解し、微粒子付着中空粒子の外殻の外表面に微粒子充填剤がめり込み、固定された状態(5)であってもよいという意味である。微粒子充填剤の粒子形状は不定形であっても球状であってもよい。微粒子付着中空粒子では、使用時の作業性(ハンドリング)が向上する。
微粒子の平均粒子径については、用いる中空体本体によって適宜選択され、特に限定はないが、好ましくは0.001〜30μm、さらに好ましくは0.005〜25μm、特に好ましくは0.01〜20μmである。
【0052】
微粒子としては、種々のものを使用することができ、無機物、有機物のいずれの素材であってもよい。微粒子の形状としては、球状、針状や板状等が挙げられる。
微粒子の平均粒子径は、微粒子付着中空粒子の平均粒子径の1/10以下であることが好ましい。ここで、平均粒子径とは、一次粒子における平均粒子径を意味する。
【0053】
中空粒子が微粒子付着中空粒子の場合、中空粒子として微粒子付着中空粒子を後述の組成物に配合すると、たとえば、接着剤組成物として有用である。
微粒子付着中空粒子は、たとえば、微粒子付着熱膨張性微小球を加熱膨張させることによって得ることができる。微粒子付着中空粒子の製造方法としては、熱膨張性微小球と微粒子とを混合する工程(混合工程)と、前記混合工程で得られた混合物を前記軟化点超の温度に加熱して、前記熱膨張性微小球を膨張させるとともに、得られる中空粒子の外表面に微粒子を付着させる工程(付着工程)を含む製造方法が好ましい。
【0054】
微粒子付着中空粒子の真比重については、特に限定はないが、好ましくは0.01〜0.5であり、さらに好ましくは0.03〜0.4、特に好ましくは0.05〜0.35、最も好ましくは0.07〜0.30である。微粒子付着中空粒子の真比重が0.01より小さい場合は、耐久性が不足することがある。一方、微粒子付着中空粒子の真比重が0.5より大きい場合は、低比重化効果が小さくなるため、微粒子付着中空粒子を用いて組成物を調製する際、その添加量が大きくなり、非経済的であることがある。
中空粒子の水分については特に限定はないが、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.4重量%以下、特に好ましくは0.35重量%以下、最も好ましくは0.3重量%以下である。中空粒子の水分の下限値は0重量%である。中空粒子の水分はいわゆる結晶水のように存在している。
【0055】
〔組成物および成形物〕
本発明の組成物は、上記熱膨張性微小球、上記熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球、および、上記中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物と、基材成分とを含む。したがって、本発明の組成物は、分散不良に起因する凝集物の発生が少なく、表面平滑性に優れる。
基材成分としては特に限定はないが、たとえば、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;変性シリコン系、シリコン系、ウレタン系、ポリサルファイド系、アクリル系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系の塗料成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物;後述するリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の負極活物質や負極用バインダー成分等が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物に占める粒状物の配合割合は、特に限定はないが、添加効果、軽量化、組成物の製造の際の均一混合等を考慮すると、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは0.3〜25重量%、特に好ましくは0.5.5〜20重量%である。
組成物は、基材成分や粒状物以外に、パーライト、フライアッシュ、シラスバルーン、ガラスバルーン、フェノールバルーン、カーボンバルーン、アルミナバブル、発泡スチレンビーズ等の従来軽量化に使用されてきた充填剤;ガラス繊維やアラミド繊維等の補強剤;シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の充填剤;酸化チタン、酸化マグネシウム等の顔料等の添加剤をさらに配合してもよい。これらの添加剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の組成物は、これらの基材成分と粒状物とを混合することによって調製することができる。
本発明の組成物の用途としては、たとえば、成形用組成物、塗料組成物、粘土組成物、繊維組成物、接着剤組成物、粉体組成物、電極用スラリー組成物等を挙げることができる。本発明の組成物は、より具体的には、化粧品、パテ、塗料、シーリング材、モルタル、紙粘土、陶器、人工大理石等の収縮防止、軽量化、断熱性を意図した用途、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物等に利用することができる。リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物の詳細については、後述する。
【0058】
本発明の成形物は、この組成物を成形して得られる。本発明の成形物としては、たとえば、成形品や塗膜等の成形物を挙げることができる。本発明の成形物では、優れた動的耐久性を有し、軽量性、多孔性、吸音性、断熱性、低熱伝導性、低誘電率化、意匠性、衝撃吸収性、強度等の諸物性が向上している。
本発明の成形物は、上記組成物を成形して得られるので、軽量で、優れた表面平滑性を有する。
【0059】
基材成分として無機物を含む成形物は、さらに焼成することによって、独立気泡が形成されたセラミックフィルタ等が得られる。
本発明の成形物が塗料組成物の硬化物の場合、表面性が高いと好ましい。また、切削加工した際の断面の平滑性も高い。
【0060】
〔リチウムイオン二次電池〕
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、電解液及びセパレータを備える。
(リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物)
本発明のリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物は、負極用バインダー、負極活物質および水溶性高分子、並びに上記熱膨張性微小球、上記熱膨張性微小球の製造方法で得られる熱膨張性微小球および上記中空粒子から選ばれる少なくとも1種の粒状物を含むものである、必要に応じて添加される導電助剤を含んでもよい。ここで、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物(以下、「負極用スラリー組成物」ということがある。)中の中空粒子の含有量は、負極活物質100重量部に対して好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜4重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。負極用スラリー組成物中の中空粒子の含有量が多すぎると、得られるリチウムイオン二次電池の出力特性が低下することがある。また、負極用スラリー組成物中の中空粒子の含有量が前記範囲外であると、リチウムイオン二次電池の寿命特性が低下することがある。
【0061】
負極用バインダー、負極活物質、水溶性高分子、中空粒子および必要に応じて添加される導電助剤を溶媒に分散又は溶解する方法又は順番は、特に限定されず、例えば、溶媒に負極用バインダー、負極活物質、水溶性高分子、中空粒子および導電助剤を添加し混合する方法、溶媒に水溶性高分子を溶解した後、負極活物質及び導電助剤を添加して混合し、最後に溶媒に分散させた負極用バインダー(例えば、ラテックス)を添加して混合する方法、溶媒に分散させた負極用バインダーに負極活物質および導電助剤を添加して混合し、この混合物に溶媒に溶解させた水溶性高分子を添加して混合して、最後に中空粒子を添加混合する方法等が挙げられる。
【0062】
負極用バインダーは、水系バインダーが好ましく、SBRバインダー、ポリアクリレートバインダー等を用いることができる。
【0063】
負極活物質は、リチウムイオン二次電池の負極において通常、リチウムを吸蔵及び放出できる物質を用いることができる。
負極活物質の例としては、炭素で形成された負極活物質が挙げられる。炭素で形成された負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック等が挙げられ、リチウムイオン二次電池の高容量化と寿命特性とのバランスを図ることができる観点から、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛が好ましい。
また、リチウムイオン二次電池に好ましく用いられる負極活物質の別の例としては、金属を含む負極活物質が挙げられる。特に、スズ、ケイ素、ゲルマニウム及び鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む負極活物質が好ましい。これらの元素を含む負極活物質は、不可逆容量を小さくできる。
【0064】
水溶性高分子は、特に限定はないが、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸エステル、ならびにアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩、ポリアクリル酸、およびポリアクリル酸(またはメタクリル酸)ナトリウムなどのポリアクリル酸(またはメタクリル酸)塩、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプン、キチン、キトサン誘導体、キサンタンガム、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレン系界面活性剤などが挙げられる。なお、本発明において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味する。
これらの水溶性高分子は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。
【0065】
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いる熱膨張性微小球の平均粒子径は、好ましくは0.01〜20μm、さらに好ましくは0.1〜15μm、特に好ましくは1.0〜10である。粒子径が、0.01〜20μmの範囲外にあると電池寿命が短くなることがある。
【0066】
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いる中空粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜40μm、さらに好ましくは0.5〜30μm、特に好ましくは1.0〜20である。粒子径が、0.1〜40μmの範囲外にあると電池寿命が短くなることがある。
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いる中空粒子の原料となる熱膨張性微小球の最大膨張温度は、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜130℃である。最大膨張温度が、70〜150℃の範囲外にあると電池寿命が短くなることがある。
【0067】
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いる中空粒子の灰分は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9.5重量%以下、さらに好ましくは9.0重量%以下、よりさらに好ましくは8.5重量%以下、特に好ましくは8.0重量%以下、最も好ましくは7.5重量%以下である。灰分が10重量%を超えると、中空粒子を配合したリチウムイオン二次電池において、電池寿命を低下させることがある。中空粒子の灰分は、金属化合物等に由来すると考えられる。また、中空粒子の灰分の好ましい下限は、0重量%である。
【0068】
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いる中空粒子のケイ素含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4.5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、よりさらに好ましくは3.5重量%以下、特に好ましくは3.0重量%以下、最も好ましくは2.5重量%以下である。ケイ素含有量が5重量%を超えると、中空粒子を配合したリチウムイオン二次電池負極が電解液によって膨潤し、活物質のはがれが発生する場合がある。また、中空粒子のケイ素含有量の好ましい下限は、0重量%である。
【0069】
リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物に用いる中空粒子の真比重については特に限定はないが、好ましくは0.010〜0.5、さらに好ましくは0.015〜0.3、特に好ましくは0.020〜0.2である。
【0070】
導電助剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、導電性を有する粒子状の材料が好ましく、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック等の導電性カーボンブラック;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相法炭素繊維等の炭素繊維;が挙げられる。導電助剤が粒子状の材料である場合の平均粒子径は、特に限定されないが、負極活物質の平均粒子径よりも小さいものが好ましく、より少ない使用量で十分な導電性を発現させる観点から、好ましくは0.001〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。
【0071】
(リチウムイオン二次電池負極)
リチウムイオン二次電池負極は、例えば、上記リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物を、集電体上に塗布し、乾燥する工程を含む製造方法により製造することができる。
具体的には、負極用スラリー組成物を調製後、この負極用スラリー組成物を集電体上に塗布する。負極用スラリー組成物は、集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。負極用スラリー組成物は分散性に優れるので、均一な塗布が容易である。また、塗工前に負極用スラリー組成物をろ過することで、更に均一な負極活物質層を作製できる。集電体上への負極用スラリー組成物の塗布量は、好ましくは10〜20mg/cm
2、である。
【0072】
集電体の材料としては、たとえば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。金属としては、通常、銅、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から、銅、アルミニウム又はアルミニウム合金を使用するのが好ましい。また、高い耐電圧性が要求される場合には特開2001−176757号公報等で開示される高純度のアルミニウムを好適に用いることができる。集電体は、フィルム又はシート状であり、その厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
【0073】
塗布方法に制限は無く、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。負極用スラリー組成物を塗布することにより、集電体の表面に、負極用スラリー組成物の膜が形成される。この際、負極用スラリー組成物の膜の厚みは、目的とする負極活物質層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
その後、乾燥により、負極用スラリー組成物の膜から水等の溶媒を除去する。これにより、負極用粒子状バインダー、負極活物質、水溶性高分子及び必要に応じて用いられる導電助剤を含む負極活物質層が集電体の表面に形成され、リチウムイオン二次電池負極が得られる。
【0074】
乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限されない。例えば、120℃以上で1時間以上加熱処理してもよい。乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
集電体の表面に負極活物質層を形成した後で、金型プレス又はロールプレスなどを用い、負極活物質層に加圧処理を施すことが好ましい。加圧処理により、負極の空隙率を低くすることができる。
さらに、負極活物質層が硬化性の重合体を含む場合は、負極活物質層の形成後にこの重合体を硬化させてもよい。
【0075】
(正極)
電気化学素子の正極は、正極活物質層を集電体上に積層してなる。電気化学素子の正極は、正極活物質、正極用バインダー、正極の作製に用いる溶媒、必要に応じて用いられる水溶性高分子、導電助剤等のその他の成分を含む正極用スラリー組成物を集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより得ることができる。即ち、正極用スラリー組成物を集電体の表面に塗布し、乾燥させることにより集電体に正極活物質層が形成される。
【0076】
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、リチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な活物質が用いられ、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属とのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が使用される。
遷移金属酸化物としては、MnO、MnO
2、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2、Cu
2V
2O
3、非晶質V
2O−P
2O
5、MoO
3、V
2O
5、V
6O
13等が挙げられ、中でもサイクル安定性と容量からMnO、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2が好ましい。遷移金属硫化物としては、TiS
2、TiS
3、非晶質MoS
2、FeS等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
【0077】
有機化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた正極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
【0078】
正極用バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などの樹脂;アクリル系軟質重合体、ジエン系軟質重合体、オレフィン系軟質重合体、ビニル系軟質重合体等の軟質重合体等が挙げられる。なお、正極用バインダーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
正極用スラリー組成物に必要に応じて用いられる水溶性高分子、導電助剤としては、上述の負極用スラリー組成物に用いることができる水溶性高分子および導電助剤をそれぞれ使用することができる。
【0080】
正極の作製に用いる溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれを使用してもよい。有機溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;などが挙げられるが、中でもN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。なお、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒としては水を用いることが好ましい。
溶媒の量は、正極用スラリー組成物の粘度が塗布に好適な粘度になるように調整すればよい。具体的には、正極用スラリーの固形分濃度が、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%となるように調整して用いられる。
【0081】
正極に用いる集電体は、上述のリチウムイオン二次電池負極に用いる集電体と同様の集電体を用いることができる。
【0082】
正極用スラリー組成物を集電体の表面に塗布する方法は特に限定されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、およびハケ塗り法などの方法が挙げられる。
乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法などが挙げられる。乾燥時間は好ましくは5分〜30分であり、乾燥温度は好ましくは40〜180℃である。
【0083】
また、集電体の表面に正極用スラリー組成物を塗布及び乾燥した後で、必要に応じて、例えば金型プレス又はロールプレスなどを用い、正極活物質層に加圧処理を施すことが好ましい。加圧処理により、正極活物質層の空隙率を低くすることができる。空隙率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。空隙率が小さすぎると、高い体積容量が得難く、正極活物質層が集電体から剥がれ易くなる。また、空隙率が大きすぎると、充電効率及び放電効率が低下する。
さらに、正極活物質層が硬化性の重合体を含む場合は、正極活物質層の形成後に重合体を硬化させることが好ましい。
【0084】
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や、芳香族ポリアミド樹脂を含んでなる微孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;などを用いることができる。具体例を挙げると、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる微多孔膜;ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜;ポリオレフィン系の繊維を織ったもの又はその不織布;絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、リチウムイオン二次電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
【0085】
(電解液)
リチウムイオン二次電池用の電解液としては、例えば、非水溶媒に支持電解質を溶解した非水電解液が用いられる。支持電解質としては、リチウム塩が好ましく用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほど、リチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液における支持電解質の濃度は、支持電解質の種類に応じて、0.5〜2.5Mの濃度で用いることが好ましい。支持電解質の濃度が低すぎても高すぎても、イオン導電度が低下する可能性がある。
【0086】
非水溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されない。非水溶媒の例を挙げると、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;支持電解質としても使用されるイオン液体などが挙げられる。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類が好ましい。非水溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。一般に、非水溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなり、誘電率が高いほど支持電解質の溶解度が上がるが、両者はトレードオフの関係にあるので、溶媒の種類や混合比によりリチウムイオン伝導度を調節して使用するのがよい。また、非水溶媒は全部あるいは一部の水素をフッ素に置き換えたものを併用あるいは全量用いてもよい。
【0087】
また、電解液には添加剤を含有させてもより。添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系;エチレンサルファイト(ES)などの含硫黄化合物;フルオロエチレンカーボネート(FEC)などのフッ素含有化合物が挙げられる。添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0088】
(リチウムイオン二次電池の製造方法)
リチウムイオン二次電池の具体的な製造方法としては、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。さらに、必要に応じてエキスパンドメタル;ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子;リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電を防止してもよい。リチウムイオン二次電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。電池容器の材質は、電池内部への水分の侵入を阻害するものであればよく、金属製、アルミニウムなどのラミネート製など特に限定されない。
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池は寿命特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【実施例】
【0089】
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を意味する。
なお、実施例5は参考例とする。
以下の実施例および比較例では、次に示す要領で物性を測定した。
【0090】
〔水性分散媒の粘度〕
東機産業株式会社製BLII型粘度計を用いて、20℃における水性分散媒の粘度を測定する。
【0091】
〔コロイダルシリカの比表面積〕
以下に示すシアーズ法にてコロイダルシリカの比表面積を測定する。
1)二酸化ケイ素(SiO
2)含有量1.5gに相当するコロイダルシリカのW(g)をビーカーに採取してから、恒温槽で25℃に温調し、純水を加えて試料の液量を90mlとする。なお、以下の操作は、25℃に保持した恒温槽中にて行う。
2)試料のpHが3.6になるように0.1N塩酸を加える。
3)塩化ナトリウム(試薬グレード)30gを試料に加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌する。
4)試料にpH電極をセットし、マグネチックスターラーで攪拌しながら0.1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、pHを4.0に調整する。
【0092】
5)pH4.0に調整した試料を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、pH8.7〜9.3の範囲での滴定量およびpH値を4回以上記録して、0.1N水酸化ナトリウム水溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
6)以下に示す計算式(A)から、二酸化ケイ素1.5g当たりについて、pHが4.0から9.0まで変化するのに要する0.1N水酸化ナトリウム水溶液の消費量V(ml)を求め、計算式(B)に従って比表面積SA(m
2/g)を求める。
【0093】
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) (A)
SA=29.0V−28 (B)
但し、計算式(A)および(B)における記号は次の通りである。
A:二酸化ケイ素1.5g当たりについて、pHが4.0から9.0まで変化するのに要する0.1N水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(ml)
f:0.1N水酸化ナトリウム水溶液の力価
C:コロイダルシリカの二酸化ケイ素濃度(%)
W:コロイダルシリカ採取量(g)
【0094】
〔pH〕
東亜ディーケーケー(株)社製のpHメーター(品番HM−12P)を使用して、pHを測定する。
【0095】
〔平均粒子径と粒度分布〕
測定装置として、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製のHEROS&RODOS)を使用し、湿式測定法により熱膨張性微小球を測定し体積平均径D
50値を平均粒子径とする。
【0096】
〔発泡剤の内包率〕
まず、乾燥後の熱膨張性微小球の含水率C
W(%)を、カールフィッシャー水分計(MKA−510N型、京都電子工業株式会社製)を測定装置として用いて測定をする。ついで、乾燥後の熱膨張性微小球1.0(g)を直径80mm、深さ15mmのステンレス製蒸発皿に入れ、その重量W
3(g)を測定する。アセトニトリルを30ml加え均一に分散させ、2時間室温で放置した後、110℃で2時間乾燥後の重量W
4(g)を測定した。発泡剤の内包率CR
2(重量%)は下記の計算式(C)で算出される。
CR
2=((W
3−W
4)/1.0)×100−C
W (C)
【0097】
〔重合状態〕
1)製造安定性
重合工程後に得られる熱膨張性微小球を含む水性分散媒W
6(g)を用意し、この水性分散媒を関西金網製ふるい分け金網(目開き200μm)に通過させ、ふるいを通過した水性分散媒W
5(g)を測定した。水性分散媒のふるい通過率Y(重量%)は、W
5(g)およびW
6(g)から、下記の計算式(D)で算出される。
Y(重量%)=(W
5/W
6)×100 (D)
ふるい通過率Y(重量%)から、以下の評価基準で製造安定性を評価する。
×:Y<80重量%
○:Y≧80重量%
【0098】
2)重合反応時発熱
重合反応時の発熱の状況を以下の評価基準で評価する。
○:重合反応時の加圧反応器(容量1.5リットル)内の液温度と加圧反応器を温調する温水バス(容量20リットル)の温度との温度差が3℃を超えた時間が反応時間を通じて1分間未満の場合
×:上記温度差が3℃を超えた時間が反応時間を通じて1分間以上ある場合
【0099】
〔熱膨張性微小球の灰分〕
乾燥した熱膨張性微小球W
p(g)をるつぼに入れ、電熱器にて加熱を行い、700℃で30分間強熱して灰化させ、得られた灰化物W
q(g)を重量測定する。熱膨張性微小球の灰分C
A(重量%)は、W
p(g)およびW
q(g)から下記の計算式(D)で算出される。
C
A=(W
q/W
p)×100 (D)
【0100】
〔熱膨張性微小球中のケイ素含有率〕
エタノールおよび水を95:5の割合で均一溶液を調製し水酸化カリウムを溶解させアルカリ分解液を調製する。熱膨張性微小球1.0gにアルカリ分解液10mLを加え、電気ヒーターにより380℃で30分間以上加熱後、着火し炭化、電気炉にて灰化させる。その後、灰化させた試料に炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムを等量で混合した試薬0.5gを添加し溶融、冷却後、超純水により50mlにメスアップして試料を調製する。得られた試料中のケイ素含有量をICP発光分析装置(島津製作所社製、ICP−8100)により測定し、その測定結果から、熱膨張性微小球に含まれるケイ素の含有率を算出する。
【0101】
〔熱膨張性微小球の膨張開始温度(T
s)および最大膨張温度(T
max)の測定〕
測定装置としてDMA(DMA Q800型、TA instruments社製)を使用した。熱膨張性微小球0.5mgを直径6.0mm(内径5.65mm)、深さ4.8mmのアルミカップに入れ、熱膨張性微小球層の上部にアルミ蓋(5.6mm、厚み0.1mm)をのせて試料を準備する。その試料に上から加圧子により0.01Nの力を加えた状態でサンプル高さを測定する。加圧0.01Nの力を加えた状態で、20℃から300℃まで10℃/minの昇温速度で加熱し、加圧子の垂直方向における変位量を測定する。正方向への変位開始温度を膨張開始温度(T
s)とし最大変位量を示した時の温度を最大膨張温度(T
max)とする。
【0102】
〔中空粒子の真比重〕
中空粒子の真比重は、以下の測定方法で測定する。まず、真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定する。
具体的には、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WB
1)を秤量した。秤量したメスフラスコにイソプロピルアルコールをメニスカスまで正確に満たした後、イソプロピルアルコール100ccの充満されたメスフラスコの重量(WB
2)を秤量する。また、容量100ccのメスフラスコを空にし、乾燥後、メスフラスコ重量(WS
1)を秤量した。秤量したメスフラスコに約50ccの粒子を充填し、中空粒子の充填されたメスフラスコの重量(WS
2)を秤量する。そして、粒子の充填されたメスフラスコに、イソプロピルアルコールを気泡が入らないようにメニスカスまで正確に満たした後の重量(WS
3)を秤量する。そして、得られたWB
1、WB
2、WS
1、WS
2およびWS
3を下式に導入して、中空粒子の真比重(d)を計算する。
d={(WS
2−WS
1)×(WB
2−WB
1)/100}/{(WB
2−WB
1)−(WS
3−WS
2)}
【0103】
〔最大膨張時真比重の測定〕
アルミ箔で縦12cm、横13cm、高さ9cmの底面の平らな箱を作製し、その中に熱膨張性微小球1.0gを均一になるように入れ、上記膨張開始温度の測定により得られた膨張開始温度から5℃ずつ温度を上昇させ、各温度で1分間加熱した後、膨張した熱膨張性微小球(中空微粒子)の真比重を上記測定方法にしたがって測定する。それらの中で最低真比重を示したものを最大膨張時の真比重とする。
【0104】
〔加熱膨張時の凝集の確認〕
前記最大膨張時真比重測定の際に、加熱膨張時における融着発生の有無を目視で確認する。
【0105】
〔実施例1〕
イオン交換水600gに、コロイダルシリカ分散液A(平均粒子径5nm、比表面積550m
2/g、コロイダルシリカ有効濃度20重量%)200gおよびアジピン酸−ジエタノールアミンの縮合物(有効濃度50重量%)3.0gを加えた後、得られた混合物のpHを3.0に調整し、水性分散媒を調製した。このとき20℃における水性分散媒の粘度は4.4mPa・sであった。
これとは別に、単量体成分(アクリロニトリル180g、メタクリロニトリル105g、メタクリル酸メチル15g)、架橋剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート1.5g)、発泡剤(イソブタン30g、イソペンタン30g)、および、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)2.0g)を混合して油性混合物を調製した。
【0106】
水性分散媒および油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサーにより12000rpmで5分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で15時間重合した。得られた重合生成物を濾過、乾燥して、熱膨張性微小球を得た。得られた熱膨張性微小球の物性評価結果を表1に示す。
【0107】
〔実施例2〜11、比較例1〜7〕
実施例2〜11および比較例1〜7では、実施例1で表1に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして熱膨張性微小球を得た。それぞれの実施例および比較例に示す配合で調製した水性分散媒の粘度や得られた熱膨張性微小球の物性を評価して表1および2に示した。
表1および2においては、表3に示す略号が使用されている。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
実施例1〜11では、平均粒子径1.3〜8.5nmのコロイダルシリカを使用することによって、重合工程における反応液の粘度を低く抑えることができていると考えられ、重合中の発熱を効率的に除去することが可能になり、凝集物の発生等による反応液の粘度上昇も抑制され、製造安定性に優れた製造方法であることが明確となった。また、小粒子径の二酸化ケイ素が、小粒径の熱膨張性微小球を製造するのに必要最低限な量だけ付着していると考えられ、塗料等に配合した場合に粘度上昇を抑制し、分散性にも優れる。
比較例1では、小粒子径の熱膨張性微小球を得るために多量のコロイダルシリカを含有する水性分散媒を用いており、重合工程における反応液の粘度が高くなり、重合中の発熱を効率的に除去できていないことが分かった。また、得られた熱膨張性微小球の灰分が高く、その表面に多量の二酸化ケイ素が付着しているため、加熱膨張時の融着は発生しない。しかし、塗料等に配合する場合に分散不良により塗膜表面の平滑性を損なう恐れがある。
【0112】
比較例2では平均粒子径5nmのコロイダルシリカを使用したが、重合性単量体および発泡剤の合計量に対してコロイダルシリカが過剰に存在するために、水性分散媒中の油性混合物の油滴の分散状態が不安定になり、反応系が凝集固化し、熱膨張性微小球を得ることができなかった。
比較例3では平均粒子径0.8nmのコロイダルシリカを使用したが、水性分散媒中の油性混合物の油滴の分散安定性が不足し、反応系が凝集固化し、熱膨張性微小球を得ることができなかった。
【0113】
比較例4では、凝集物が発生した。その結果、製造安定性についても不十分な結果となった。得られた熱膨張性微小球については、熱膨張性微小球の表面に比較的大きな二酸化ケイ素が付着しており、加熱膨張時の融着を抑制することが難しい状態であった。
比較例5では、コロイダルシリカの平均粒子径が大きく、しかも水性分散媒に多量に含有するために、得られる熱膨張性微小球の灰分は多かった。そのために、塗料等に配合する場合に分散不良により塗膜表面の平滑性を損なうおそれがある。
【0114】
比較例6では、水性分散媒が少量のコロイダルシリカしか含有しないため、重合途中で凝集固化し、熱膨張性微小球を得ることができなかった。
比較例7では、水性分散媒のpHが7を超えるため、重合工程において水性分散媒に分散させた油性混合物の油滴が不安定になり、重合途中で凝集固化し、熱膨張性微小球を得ることができなかった。
【0115】
次に、熱膨張性微小球は、特開昭62−201231号公報記載の湿式加熱膨張法によって、以下の実施例A1および比較例A1のように中空粒子を製造できる。
〔実施例A1〕
(湿式加熱膨張法による中空粒子の製造)
実施例2で得られた熱膨張性微小球を5重量%含有する水分散液(スラリー)を調製した。特開昭62−201231号公報記載の湿式加熱膨張法に従い、このスラリーをスラリー導入管から発泡管(直径16mm、容積120ml、SUS304TP製)に5L/minの流量を示すように送り込み、さらに水蒸気(温度:147℃、圧力:0.3MPa)を蒸気導入管より供給し、スラリーと混合して、湿式加熱膨張した。なお、混合後のスラリー温度(発泡温度)を115℃に調節した。
得られた中空粒子を含むスラリーを発泡管突出部から流出させ、冷却水(水温15℃)と混合して、50〜60℃に冷却した。冷却したスラリー液を遠心脱水機で脱水して、湿化した中空粒子を10重量%含有する中空粒子組成物(水は90重量%含有)を得た。
【0116】
得られた中空粒子を単離し、その平均粒子径は2.7μm、真比重は0.20、灰分は5.5重量%であった。
得られた中空粒子50gを水性アクリル塗料(アサヒペン製水性多用途カラー)950gに添加し、ディスパーミキサーで混合後、自転・公転ミキサー(シンキー製ARE−500)を用いて脱泡処理を行い、塗料組成物を調製した。得られた塗料組成物を200メッシュのポリエステルメッシュを用いてスクリーニングを行った結果、メッシュ上の残留物が無く良好な分散性が確認できた。
得られた塗料組成物を鋼板へ乾燥後塗膜厚み0.6mmになるように塗布した。得られた塗膜は平滑性に優れ、鋼板へ断熱性を付与することができた。
【0117】
〔比較例A1〕
実施例A1において実施例2で得られた熱膨張性微小球の代わりに、比較例1で得られた熱膨張性微小球に変更する以外は同様にして、湿化した中空粒子および塗料組成物を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は3.1μm、真比重は0.20、灰分は13.6重量%であった。また、得られた塗料組成物を実施例A1と同様に200メッシュのポリエステルメッシュを用いてスクリーニングしたところ、1mm程度の凝集物が見られ、中空粒子の灰分が高いことによる分散不良が原因であることが確認された。
【0118】
〔実施例A2〕
実施例4で得られた熱膨張性微小球(外殻を構成する熱可塑性樹脂の軟化点:109℃)20重量部と、酸化チタン(石原産業株式会社製のタイペークCR−50;平均粒子径約0.25μm)80重量部とをセパラブルフラスコに添加混合した。次いで、攪拌しながら5分間かけて加熱温度140℃まで昇温して、微粒子付着中空粒子を得た。
得られた微粒子付着中空粒子の平均粒子径は4.1μm、真比重は0.53であった。また、真比重測定後のメスフラスコを室温で30分間静置した後、液層部分は透明で中空微粒子表面に酸化チタンが十分付着しており、中空微粒子表面からの脱離成分は確認されなかった。
【0119】
〔比較例A2〕
実施例A2において、比較例1で得られた熱膨張性微小球に変更する以外は同様にして、微粒子付着中空微粒子を得た。
得られた微粒子付着中空粒子の平均粒子径は3.1μm、真比重は0.83であった。また、真比重測定後のメスフラスコを室温で30分間静置した後、液層部分は白濁しており、中空微粒子表面への酸化チタンの付着が不十分であることが確認された。これは原料の熱膨張性微小球の灰分およびケイ素含有量が高く、すなわち表面がシリカに覆われた状態になっており、酸化チタンの中空微粒子表面への付着を阻害し、脱離成分となっているためであった。このように脱離成分の多い微粒子付着中空微粒子を塗料やシーリング材に配合した場合、粘度上昇等が発生した。
【0120】
次に、上記で得られた中空粒子を用いて、リチウム二次電池負極用スラリー組成物を調製し、リチウムイオン二次電池の寿命特性を評価する。
〔製造例B1〕
負極活物質としてグラファイト(大阪ガス製 MCMB2528)100重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬製、セロゲン7A)1.0重量部、SBRバインダー(日本ゼオン製、BM−400B 有効濃度40重量%)2.5重量部、イオン交換水50重量部からなる負極用スラリー組成物を作成した。その後厚み20μmの銅箔上にコンマコーターを用いて150μmの厚みで塗布する。これを120℃で1時間真空乾燥し、圧力約1×10
2〜3×10
2N/mm2となるようにプレスした後に、真空乾燥機で、120℃で12時間乾燥して、厚み80μmの負極シートを作成した。
【0121】
次に、正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiCoO
2100重量部、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業製、HS−100)2重量部、ポリフッ化ビニリデンバインダー(クレハ製、#7208、有効濃度8重量%のN−メチルピロリドン溶液)25重量部と、N−メチルピロリドンとを混合し全固形分濃度が70重量%である正極用スラリー組成物を得た。この正極用スラリー組成物を厚み20μmのアルミ箔の上に乾燥後膜厚が150μmになるように塗布し、60℃で2分間乾燥をさせた後、120℃にて2分間加熱処理して正極シートを作成した。
【0122】
次に電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。上記で得られた正極を4cm×4cmの正方形に切り出し、スラリー未塗布側がアルミ包材外装に接するように配置した。
セパレータ(セルガード製、セルガード2500)を5cm×5cmの正方形に切り出し、正極の正極活物質層の面上に配置した。さらに、上記で得られた負極シートを4.2cm×4.2cmの正方形に切り出し、セパレータの上に、負極活物質側がセパレータに接するように配置した。電解液(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=体積比68.5/30/1.5の混合溶媒に電解質1MのLiPF
6を含有)を空気が残らないようにアルミ包材外装中に注入し、さらに、アルミ包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、ラミネート型のリチウムイオン二次電池(ラミネート型セル)を製造した。
【0123】
<電池寿命特性の評価>
ラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を25℃環境下で24時間精置した後に、25℃の環境下で、4.2V、1Cの充電、3.0V、1Cの放電にて充放電の操作を行い、初期容量C
0を測定した。さらに60℃環境下で、4.2V、1Cの充電、3.0V、1Cの放電にて充放電を繰り返し、1000サイクル後の容量C
2を測定した。寿命特性ΔCを下式より算出した。
ΔC(%)=C
2/C
0×100
【0124】
〔実施例C1〕
実施例A1記載の湿式加熱膨張法において実施例2で得られた熱膨張性微小球を実施例6で得られた熱膨張性微小球に変更する以外は同様にして、湿化した中空粒子を10重量%含有する中空粒子組成物(水は90重量%含有)を得た。
得られた中空粒子を単離し、その平均粒子径は7.0μm、真比重は0.09、灰分は4.8重量%、ケイ素含有量は1.4重量%であった。
続いて、上記で得られた中空粒子組成物10重量部を製造例B1記載の負極用スラリー組成物に添加し均一混合し、負極用スラリー中空粒子含有組成物を作成した。
製造例B1において負極用スラリー組成物の代わりに、負極用スラリー中空粒子含有組成物を用いる以外は、同様にしてリチウムイオン二次電池を作成した。
得られたリチウムイオン二次電池の寿命特性を評価した結果、中空粒子を添加していない製造例B1で得られたリチウムイオン二次電池の寿命特性ΔCを100としたとき、118となり、寿命特性の向上が確認された。
【0125】
〔比較例C1〕
実施例C1記載の湿式加熱膨張法において実施例6で得られた熱膨張性微小球を比較例1で得られた熱膨張性微小球に変更する以外は同様にして、湿化した中空粒子を10重量%含有する中空粒子組成物(水は90重量%含有)を得た。
得られた中空粒子を単離し、その平均粒子径は4.5μm、真比重は0.2、灰分は14重量%、ケイ素含有量は5.5重量%であった。
続いて、実施例C1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作成したが、負極の膨れが発生した。
【0126】
〔比較例C2〕
実施例C1記載の湿式加熱膨張法において実施例6で得られた熱膨張性微小球を比較例4で得られた熱膨張性微小球に変更し、湿式加熱膨張時のスラリー温度(発泡温度)を110℃にする以外は同様にして、湿化した中空粒子を10重量%含有する中空粒子組成物(水は90重量%含有)を得た。
得られた中空粒子を単離し、その平均粒子径は49μm、真比重は0.02、灰分は4.0重量%、ケイ素含有量は1.2重量%であったが、凝集物を含有していることが確認された。
続いて、実施例C1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作成し、寿命特性を評価した結果、中空粒子を添加していない製造例B1で得られたリチウムイオン二次電池の寿命特性ΔCを100としたとき、78となり、寿命特性の低下が確認できた。
【0127】
実施例C1では、ケイ素含有量の低い小粒子径の中空粒子を使用することで、活物質粒子間のバインダー成分量を低減することが可能になり、電池の寿命特性が向上したと考えられる。
比較例C1では、ケイ素含有量の高い中空粒子を使用したことにより、負極が電解液によって膨潤していると考えられる。
比較例C2では、ケイ素含有量は十分低いが、中空粒子が凝集物を含有しているために電池の寿命特性が低下したと考えられる。