特許第6144782号(P6144782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144782光減衰媒体中の細胞への所望の光量の送達方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144782
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】光減衰媒体中の細胞への所望の光量の送達方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   A61M1/36 171
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-556913(P2015-556913)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公表番号】特表2016-506811(P2016-506811A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2013024893
(87)【国際公開番号】WO2014123521
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】308020283
【氏名又は名称】フェンウォール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ラドワンスキ,カテリーネ
(72)【発明者】
【氏名】キュンヨーン,ミン
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−273868(JP,A)
【文献】 特開2001−054579(JP,A)
【文献】 特開2006−175232(JP,A)
【文献】 特開2013−055907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36 − A61M 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全血を単核細胞を含む1以上の成分に分離するための処理室と、分離された単核細胞を受容するための、既知の体積の単核細胞懸濁液が受容された時に予め定められた厚みを有する少なくとも1つの処理容器とを有する使い捨て流体回路と、
前記処理室を受容して全血からの単核細胞の分離を発生させるのに適した分離装置と、
前記処理容器を受容し、前記処理容器を定められた放射光量に曝すのに適した照射装置と、
前記処理容器内に受容された懸濁された単核細胞のヘマトクリットを予め定められた範囲内に制御するように構成された制御部とを備える、循環光療法システム。
【請求項2】
収容された前記既知の体積の懸濁された単核細胞を含む前記処理容器が予め定められた4mm〜5mmの厚みを有する、請求項1に記載の循環光療法システム。
【請求項3】
前記処理容器は4.5mmの厚みを有する、請求項2に記載の循環光療法システム。
【請求項4】
制御部は、2%〜3%のヘマトクリットを有する懸濁された単核細胞を提供するように構成されている、請求項2に記載の循環光療法システム。
【請求項5】
制御部は、2.5%のヘマトクリットを有する懸濁された単核細胞を提供するように構成されている、請求項3に記載の循環光療法システム。
【請求項6】
全血を単核細胞を含む1以上の成分に分離するための分離室と、分離された単核細胞を受容するための、既知の体積の単核細胞懸濁液が受容された時に予め定められた厚みを有する少なくとも1つの処理容器とを有し、前記分離室と前記処理容器との間に無菌閉鎖経路を備える使い捨て流体回路と、前記分離室を受容して全血からの単核細胞の分離を発生させるのに適した分離装置と、前記処理容器を受容し、前記処理容器を定められた放射光量に曝すのに適した照射装置と、前記処理容器内に受容された懸濁された単核細胞のヘマトクリットを予め定められた範囲内に制御するように構成された制御部と、前記回路を通して流体流通を生じさせるための少なくとも1つのポンプを含むアフェレーシス装置とを備える循環光療法システムの作動方法であって、自動化された制御で行われる、
前記分離装置が、生物学的流体の源からある体積の前記生物学的流体を前記分離室に導入し、細胞産物を前記体積の生物学的流体から前記分離室内で分離する工程
前記分離装置が、前記分離された細胞産物を、予め定められた範囲内のヘマトクリットを有する懸濁液を形成するように、選択された量の活性剤と結合させる工程
前記アフェレーシス装置の前記少なくとも1つのポンプが、前記懸濁液が予め定められた厚みを有するように、分離された細胞産物の前記懸濁液と活性剤を前記処理容器内に導入する工程
前記照射装置が、分離された細胞産物と活性剤とが結合された前記懸濁液を前記照射装置内で定められた放射光量で処理する工程
前記アフェレーシス装置の前記少なくとも1つのポンプが、前記処理された細胞産物を前記処理容器から引く工程
含む、循環光療法システムの作動方法。
【請求項7】
分離された細胞産物は単核細胞を含み、懸濁液のヘマトクリットは2%〜3%であり、前記処理容器内の懸濁液の厚みは4mm〜5mmである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁液のヘマトクリットは2.5%であり、前記処理容器内の前記懸濁液の厚みは4.5mmである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記処理容器は既知の表面積を有する処理容器であり、前記アフェレーシス装置の前記少なくとも1つのポンプによって前記処理容器内に導入される分離された細胞産物と活性剤とが結合された前記懸濁液は既知の体積であることによって前記処理容器内の懸濁液の厚みが決定される、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所望の、または目標光量を、光減衰媒体中に懸濁された細胞に送達する方法に関し、より特定的には、たとえ懸濁液中の光減衰媒体の量に変化があっても定められた放射光量の目標光量を送達する方法に関する。
【0002】
光照射治療は、例えば、細胞内の免疫原性の除去、選択された細胞の不活性化または殺傷、ウイルスまたはバクテリアの不活性化、または、所望の免疫反応の活性化のような、様々な血液の病気の治療に用いられる。例えば、患者が8−メトキシソラレン(8−MOP)を受け取る体外循環光療法(ECP)の手順において、リンパ球のような病原性血球を処理する光活性化薬剤のソラレンを用いるために、血液が患者から引き出され、白血球が(典型的には遠心分離によって)分離され、8−MOP分子を活性化させるために紫外光に曝されることが知られている。光活性化された8−MOPは病原性白血球のDNAを変え、変えられた白血球を含む流体は免疫反応を誘発するために再び患者に再注入される。
【0003】
光線療法における困難は、懸濁液中の光活性化材料に、適切な量の光エネルギーを送達することである。特に、懸濁液が実質的に光に対して透明でない材料を含み、光活性化を意図する光エネルギーが減衰される場合、または、標的細胞が流体表面に均一に分散していない場合、表面に最も近いところにある標的細胞は、表面の下にある細胞について、光エネルギーを減衰させ得る。
【0004】
所望の光エネルギー量を懸濁液に送達するための方法は、Therakos,Incの米国特許第6,219,584号に開示されている。この患者は、血液分離装置と光活性化装置との両方が一体化された、閉鎖されたシステム内に含む「オンライン」の循環光療法システムに関する。Therakosのシステムでは、標的とされた白血球(単核細胞またはMNC)に送達されるべき目標量(「効果的な光エネルギー値の目標」、またはTELEV)達成するために必要とされる放射量(「流体光エネルギー値」またはFLEV)を決定するために、複雑なアルゴリズムが使用されている。このアルゴリズムは、産物の厚み比の知識を要求し、かつ、すべての産物について、ヘマトクリットセンサを用いて産物の光透過率の値が測定される。
【0005】
「オフライン」の方法(例えば、Macopharma SAまたはVilber Loumetから入手可能な光線療法システムを使用する場合に実施されるような方法)では、紫外線量は、紫外線球から放射された紫外光と、それぞれの球のセットの後の鏡面から反射された紫外光(そして、処理された細胞産物がより多くの光を吸収していれば、おそらくより少ない光が反射し戻される)を検知する角度に設定されたセンサによって監視される。この方法は、赤血球と血漿によって吸収される紫外線を完全には考慮しておらず、操作者は、産物のヘマトクリットを手動で測定し、それを(必要に応じて)2%未満に調整することを要求される。より高いヘマトクリット量に送達された紫外線は知られていないから(そして不十分であるだろうから)である。
【0006】
以下に記載する方法に従えば、ヘマトクリットセンサは必要でなく、予め設定された産物量と処理されるべき懸濁液のヘマトクリットの適度な制御だけが必要とされる。標的細胞によって受け取られるべき所望の光量は、標的細胞の治療上の反応によって決定される。従って、単に補正係数を放射光量に適用するよりも、より正確な治療結果が得られる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の第1の局面においては、循環光療法システムは、単核細胞を含む1以上の成分に全血を分離するための処理室と懸濁された単核細胞の既知の量が受け取られた時に予め定められた厚みを有する分離された単核細胞を受け取るための少なくとも1つの処理容器を有する使い捨て流体回路と、全血からの単核細胞の分離を生じさせるために処理室を受容するのに適合した分離装置と、貯蔵容器を受容するのに適合した照射装置と、貯蔵容器内に受容された懸濁された単核細胞のヘマトクリットを制御するように構成された制御部とを備える。
【0008】
好ましくは、処理容器は、既知の体積の懸濁された単核細胞を含む時に約4mm〜5mmの予め定められた厚みを有し、より好ましくは、4.5mmの厚みを有する。一方、制御部は、2%〜3%のヘマトクリット、より好ましくは2.5%のヘマトクリットを有する懸濁された単核細胞を提供する。
【0009】
本開示の第2の局面においては、循環光療法の手順を実行する方法が提供される。この方法は、単核細胞を含む1以上の要素に全血を分離するための処理室と単核細胞を受容するのに適合した少なくとも1つの処理容器とを備える使い捨て流体回路を提供することと、処理室を受容するのに適合したアフェレーシス装置において全血源から単核細胞産物を分離することを含む。本方法は、さらに、細胞産物を活性剤と結合させて、分離された細胞産物と結合された活性剤との懸濁液を、懸濁液が予め定められたヘマトクリットを有し予め定められた厚みを有する処理室に導入することを含む。細胞産物懸濁液は、その後、処理された細胞産物を得るために、照射装置内で光に曝される。処理された細胞産物は、源に戻される。
【0010】
好ましくは、処理容器は、懸濁された単核細胞に関して約4mm〜5mmの予め定められた厚みを有し、より好ましくは、4.5mmの厚みを有する。一方、懸濁された単核細胞は、2%〜3%のヘマトクリット、より好ましくは2.5%のヘマトクリットを有する。
【0011】
本開示のさらなる局面においては、標的細胞を含む懸濁液中に存在する光エネルギー減衰材料の量、光エネルギー減衰物質、光エネルギー活性化組成物の範囲を決定して、懸濁液が既知の量の光エネルギーに曝された時に所望の治療的効果を得るための方法が提供される。
【0012】
この局面において、標的細胞と、光エネルギー活性化組成物とを含み、実質的に光エネルギー減衰物質を含まない複数の第1の試料が調製される。そして、既知の量の光エネルギーがそれぞれの第1の試料に適用される。それぞれの第1の試料の治療的反応は、測定され、その後、そこに適用された光の量と比較され、このようにして、治療的反応に基づいて標的細胞を含む懸濁液に送達された光エネルギーの量の予測を可能にする。
【0013】
その後、標的細胞、様々な量の光エネルギー減衰物質、光エネルギー活性化組成物を含む複数の第2の試料が調製される。既知の量の光エネルギーが、その後、それぞれの第2の試料に適用され、それぞれの第2の試料の治療的反応が測定される。それぞれの第2の試料の治療的反応は、その後、治療的反応を得るためにそれぞれの第2の試料に吸収された光エネルギーの量を決定するために、第1の試料の治療的反応と比較される。
【0014】
その後、第2の試料の治療的反応に基づいてそれぞれの第2の試料に適用された光エネルギーの量と、それぞれの試料によって吸収された光エネルギーとの比が決定され、それぞれの第2の試料の比は、それぞれの第2の試料中の様々な光エネルギー減衰物質の量と比較され、プロットの傾きが実質的に平らな比の光エネルギー減衰物質の様々な量の範囲を決定する。
【0015】
好ましい方法と第1の局面のより具体的な例では、標的細胞は単核細胞(MNC)であり、光エネルギー減衰物質は赤血球と血漿であり、光エネルギー活性化組成物はソラレンであり、所望の治療的効果は、アポトーシスが起きる細胞のパーセンテージである。さらに、第2の試料中の光減衰物質の量は、ヘマトクリットHCTを変化させることと、それぞれの第2の試料の体積と厚さによって変化し得る。
【0016】
本開示の関連する局面においては、方法は、標的細胞と、光エネルギー減衰物質と、光エネルギー活性化組成物とを含む懸濁液を調製することを含み、それによって、懸濁液が既知の量の光エネルギーに曝された時に所望の治療的効果が得られる。既知の量の光エネルギーに照射された時に所望の治療的効果が得られる懸濁液の中に存在し得る光エネルギー減衰材料の量の範囲は、上述のように決定される。その後、処理されるべき懸濁液は光減衰物質の量が範囲内になるように調製される。
【0017】
本開示の他の局面は、添付の図面と以後の詳細な記載から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ここに記載した循環光療法の典型的な治療の機械的な要素の全体を示す図である。
図2】ここに記載した方法およびシステムにおいて有用なアフェレーシス分離器の部分斜視図である。
図3図2の分離器に用いられる処理セットの処理容器(分離室)を示す斜視図である。
図4】ここに記載した単核細胞の採集、処理と再注入に有用な流体回路を示す概略図である。
図5】ここに記載した循環光療法の治療方法のステップを示すフローチャートである。
図6】種々の光エネルギー量(J/cm)と様々な量の光活性化組成物(100ng/mL、200ng/mL、300ng/mLの8−MOP)について24時間、48時間、72時間の治療的反応の度数(アネキシンV陽性細胞%)を示す、3つの棒グラフである。
図7】様々な試料厚み(1mm,2mm,3mm,4mm,5mm)について、試料に吸収された光エネルギー(紫外線)のパーセントを、試料中の光減衰物質の量(%HCT)に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示に従った本システムと本方法のより詳細な記載を以下に説明する。以下の具体的な装置と方法は例示を意図しており、可能な全ての変形と応用を排除するものではないと理解されるべきである。従って、本開示の範囲は制限を意図せず、当業者が想到する変形または具体化を含むものであると理解されるべきである。
【0020】
図1は、全体的に、システムを作り上げ、ここに記載される方法において使用される機械的な要素を示す。本開示に従えば、システムは分離要素10と処理(例えば、照射)要素20含む。好ましくは、照射要素20は分離要素10から独立し、別個に収容されている。別個に収容された独立した装置ではあるが、分離装置10と放射装置20とは互いに隣接して配置されていることが好ましい。図1は分離要素と照射要素が切り離された好ましい実施形態を示すが、ここに記述される方法は、上述のTherakosシステムのように、分離要素と照射要素が一体化された装置とともに用いられ得る。
【0021】
ここに記載されるシステムと方法に従えば、患者は血液処理セット、すなわち、流体回路200に接続される。図1と4に全体的に図示されているように、流体回路200は分離要素10と照射要素20との間に無菌閉鎖経路を備える。ここに記載されるシステムはまた、任意で洗浄要素を含む。洗浄要素は、好ましくは、分離要素内に収容されている。好ましくは、分離要素10と洗浄要素は1つであり同じである。
【0022】
図1を参照して、全血は患者から引かれて、全血が標的細胞個体群を備えるように分離要素10に導入される。本開示に従った好ましい実施形態では、標的細胞個体群は、単核細胞であり得る。赤血球と血漿のような、全血から分離された他の要素は、患者に戻される得るか、血液処理セットに予め取り付けられた容器中に採集され得る。
【0023】
分離された標的細胞個体群、例えば、単核細胞は、その後、処理要素20内での処理と照射のために調製される。上で議論したように、本開示に従えば、単核細胞の処理は、単核細胞に結合されている光活性剤の光活性化を含む。一度処理されると、単核細胞は任意で洗浄要素に提供される。洗浄要素は、図1に示すように、分離要素10内に収容されている。処理された単核細胞は上澄みから分離され、濃縮された細胞は患者に戻され得る。上澄みは一般的には過剰な結合されていない光活性剤を含む。濃縮された細胞は、任意に、分離/洗浄要素10内で適切な洗浄溶液にさらに結合され得る。処理された単核細胞の洗浄が実行されると、その後、洗浄溶液中の単核細胞の懸濁液は、遠心場(または流体要素の分離を生じることが可能な他の環境)に曝され、これによって単核細胞は濃縮され、結合されていない光活性剤を含む懸濁液から分離される。全体的に図1に示すように、上澄みはその後、適切な廃棄物容器に移され得、処理された単核細胞は患者に戻される。
【0024】
単核細胞の採集(そして洗浄)と図1の分離要素10を備えるのに有用な装置は、Amicus(登録商標)Separatorを備え、イリノイ州レイクズーリックのFenwal,Incによって製造販売されている。Amicus(登録商標)のような装置を使用する単核細胞の収集は、ここに全体を参照として組み入れる米国特許第6,027,657により詳細に記述されている。簡単には、図2〜4は、流体回路200が搭載された代表的な血液遠心分離器10を示し(図2)、流体回路(図4)は、全血から単核細胞(MNC)を収集するのに適した分離室を規定する血液処理容器13(図3参照)に設置されている。図2に示すように、使い捨て処理セットまたは流体回路200(容器14を含む)は、遠心分離機10のフロントパネル上に設置されている。処理セット(流体回路200)は、装置10上の蠕動ポンプに接続するための管ループを有する複数の処理流体流通カセット23L,23M,23Rを含む。流体回路200はまた、図4により詳細に示すように、流体と血液と血液成分の処理と採集のために、患者と流体連通を確立するための管と予め接続された容器のネットワークを含む。
【0025】
図2と4に見られるように、使い捨て処理セット200は、抗凝縮剤を供給するための容器60と、単核細胞の処理と洗浄の1以上の処理工程において廃棄物を収集するための廃棄物容器62と、生理食塩水または他の洗浄または再懸濁溶媒を保持するための容器64と、血漿を収集するための容器66と、単核細胞を収集するための容器68と、任意に光活性剤を保持する容器69とを含み得る。
【0026】
容器68はまた、照明容器として用いられ得、好ましくは使い捨てセット200に予め取り付けられている。あるいは、容器68は、無菌ドッキングのような既知の無菌接続技術によってセット200に取り付けられ得る。図4を参照して、流体回路は入口ライン72、ACを容器60に送達するための抗凝結剤(AC)ライン74、容器14の室12から容器67に赤血球を輸送するためのRBCライン76、乏血小板血漿(PPP)を容器66に輸送するためのPPPライン78と、単核細胞を分離室14と収集/照明容器68との間で輸送するライン80とを含む。血液処理セットは、患者の循環系にアクセスするために1以上の静脈穿刺針を含む。図4に示すように、流体回路200は入口針70と戻り針82を含む。他の実施形態では、1つの針が入口針と出口針の両方として用いられる。
【0027】
流体回路200の流体流通は好ましくは、弁、ポンプ、重量計、装置10のセンサ、流体回路200と協働して、マイクロプロセッサに基づく制御部によって駆動され、制御され、調整される。これらの詳細は前述の米国特許第6027657号に記述されている。
【0028】
流体回路は処理要素(すなわち、照射装置)20との関係にさらに適している。単核細胞の照射のための装置はまた既知であり、カリフォルニア州コンコードのCerus Corporationから利用可能である。適切な照射装置の一例は、ここに全体が参照として組み込まれる米国特許第7,433,030号に記載されている。米国特許第7,433,030号に示されているように、照射装置は好ましくは1以上の容器を処理の間受容するためのトレイまたは他のホルダを含む。Macopharmaおよび/またはVilberから市販される装置を含む他の照射装置もまた、ここに記載された方法とシステムとの使用に適切であり得る。
【0029】
上述のように、分離室12は、回転スプール要素18とボウル要素(図示しない)によって規定される環状隙間内にある柔軟な処理容器14の壁によって規定される。処理容器14は使用前にスプール要素18の周囲に巻きつけられる細長い管の形状である。ボウルとスプール要素18は、直立位置と吊下げ位置(図示しない)との間でヨーク上で回転する。動作中、遠心分離器10は、吊下げられたボウルとスプール要素18を軸28の周囲に回転させて、容器14の処理室内に遠心場を生成する。スプール要素18とボウル要素の相対的な運動を起こす機構の詳細は、ここに参照として全体が組み込まれる「Centrifuge with Separable Bowl and Spool Elements Providing Access to the Separation Chamber」と題する米国特許第5,360,542号に記述されている。
【0030】
図5を参照して、単核細胞を処理する代表的な方法がわかる。まず、入口針70を通して全血が患者から引かれ(ステップ30)、処理セット200の容器14の分離室2に導入され、ここで全血は遠心場に曝される。遠心場は標的細胞個体群、すなわち、単核細胞を赤血球、血小板、血漿から分離する(ステップ32)。赤血球や血小板のような要素は患者に戻され得るか、さらなる処理のために容器(例えば容器67)に移され得る。単核細胞の採集は、1以上のサイクルで進められ得、処理サイクルの数は、採集されるべきMNCの全体積に依存して、与えられた治療手順内で管理される。
【0031】
光を用いる単核細胞(MNC)の効果的な治療は、採集された単核細胞が適切なヘマトクリットを有する懸濁液中に提供されることを要求し得る。具体的には、そしてより詳細には以下に議論されるように、MNC懸濁液中の赤血球は紫外線の少なくとも一部が標的とされたMNCに到達するのを妨害するので、処理されるべきMNC懸濁液のヘマトクリットのレベルはMNCによって吸収される紫外光の量に影響する。ヘマトクリットの正確な制御の達成は、特にヘマトクリットセンサがこの目的で使用されるシステムでは、困難であり得る。懸濁されたMNCのヘマトクリットが高すぎる場合(赤血球がMNCによる光の吸収と干渉するであろう)には、ヘマトクリットを制御して所望の量の紫外光が標的とされたMNCに到達するように、ステップ33に示すように、単核細胞を血漿または生理食塩水のような希釈液で希釈することが望まれるか必要でさえあり得る。希釈された(容器68中の)単核細胞は、その後、ステップ34で適切な光活性剤と結合される。あるいは、所望の体積の剤が予め容器に加えられ得る。
【0032】
上述のように、上述の単核細胞採集手順に従って採集された単核細胞は、選択された波長の光の放射に適した容器68中に採集され得る。「適切な照射」によって、容器の壁は、光活性剤を活性化させるための選択された波長の光に対して十分に透明であることを意味する。例えば、UVA光を用いた治療では、容器の壁はエチレン酢酸ビニル(EVA)であることが適切である。従って、中に単核細胞が採集される容器68は採集容器としても、照射容器としても使用され得る。容器68は操作者によって、ECP手順の最初に、全血の引出しに先立って、照射装置20の内部に、またはより好ましくは、(図4において破線で表された装置20によって示されているように)照射装置20の照射室の内部に置かれる。いずれにしても、容器68は好ましくは、全ての手順の間、流体回路200の残りと一体的に接続されたままであり、それによって、流体回路200の閉鎖された、または機能的に閉鎖された状態を維持する。
【0033】
MNC採集と照射治療の自動化された制御は、それぞれの装置に入力する操作者と分離装置10と照射装置20のそれぞれのマイクロプロセッサに基づく制御によって影響される。あるいは、分離装置10と照射装置20の操作とそれぞれによって実行される処理のステップは、両方と通信する分離された制御部(例えばコンピュータ)によって遠隔制御され得る。
【0034】
光活性剤(8−MOP)を有する単核細胞は、その後、選択された期間、照射される(ステップ36)。1つの非限定的な例では、処理の間、単核細胞産出物は約320nm〜400nmの範囲のUVAの波長を有する紫外球に、約10〜60分間のような選択された期間曝され、平均UVA照射は、リンパ球あたり約0.5〜5.0J/cm、好ましくは約1〜2J/cmまたはより好ましくはおよそ1.5J/cmである。
【0035】
図5のステップ38に示されるように、処理が完了すると、処理された単核細胞は分離器10(そしてより具体的には、容器4の分離室12)に戻される。室12内で、濃縮されていない細胞と比較して全体積がより小さくなるようにMNCが濃縮される(ステップ40)。その結果、より小さい体積の濃縮されたMNCは、より速く患者に再注入され得る。濃縮された細胞は、ステップ43に示すように適切な再懸濁媒体(例えば、血漿や生理食塩水)で再懸濁されて患者に戻され得る。任意で、患者に戻す前に、濃縮されて処理された細胞が、容器66および/または64(図4)から濃縮された細胞に(カセット23Rと接続されたポンプ運動やポンプによって)供給される適切な洗浄溶媒と組み合わされ得る(ステップ42)。
【0036】
本開示に従った方法では、目標光量は、所望の結果に送達された光量に関する検量線を生成することによって決定される。より具体的には、光減衰曲線は光減衰材料の濃度と光減衰材料の吸収された光のパーセントに関連して生成される。治療を意図する産物のパラメータは、光減衰曲線の実質的に平らな部分(すなわち、吸収された光のパーセントが産物パラメータに敏感でない部分)であることを目標とされる。結果として、たとえ産物パラメータ内に変動があっても、およそ目標光量を送達する、選択された決定された光量が放射され、パラメータの性格な制御が不要であることを意味する。
【0037】
1つの例として、循環光療法では、単核細胞(MNC)のような標的細胞は、(8−MOPのような)ソラレンと結合され、紫外線(具体的にはUV−A光)を照射される。紫外線は8−MOPを細胞内と細胞壁のDNA鎖に架橋し、その結果、処理された細胞のアポトーシスを引き起こす。採集手順の一部として、循環光療法中に処理されたMNC産物は、いくらかの量の赤血球と血漿を含み、いずれも紫外線を吸収するので、それによって、紫外線の一部が所望の標的細胞(例えば単核細胞)に送達されない。結果として、紫外線源から射される紫外線量は、MNCに送達される紫外線量とは等しくない。
【0038】
これによって、検量線(送達された紫外線量、対、リンパ球アポトーシス)が、RBCと血漿(光減衰材料を含む)がないときのMNCへの既知の紫外線量を適用し、培養の観点から一定時間経過後のリンパ球におけるアポトーシス反応の監視することによって、生成される。より詳細は図1に関連して以下に述べる。
【0039】
第2の検量線は、図2とともに以下に議論するように、ヘマトクリット(光減衰材料の濃度に対応する)と吸収された光のパーセンテージ(=(1−(送達/放射))×100%)に関連して生成され得る。この曲線から、実質的に平坦な(すなわち、傾斜が小さい)曲線の面積から手順に関する産物パラメータが選択され得、産物のパラメータ(ヘマトクリットと体積、後者は産物の厚みに対応する)はMNCに送達された紫外線の量に重大な影響を与えることなく、変化し得る。光量と所望の結果の曲線は種々の8−MOP濃度および/または培養中複数の時間の点(24時間、48時間、72時間)について生成され得る。
【実施例】
【0040】
A.治療的反応に相関する送達される光量
実質的に光減衰材料を含まない懸濁液について、リンパ球中のアポトーシス反応(所望の結果)に送達される関連する光量(この場合はUVA)の検量線の作成は以下のように決定された。
【0041】
健康な提供者からアフェレーシスで派生した単核細胞は、精製されたMNC個体群を製造するためにフィコール・パック勾配を使用して処理された。MNCはその後、2mLグルタミンを含むRPMI1640媒体中、5×10または50×10白血球/mLで再懸濁された。MNCは60mmのポリスチレン培養皿(5mL細胞/皿)に移され、暗所で15分間、100,200または300ng/mLの8−MOPを用いてインキュベートされた。照射は、365±10nmのUVAバンドにおいて11.6±0.2mW/cmの光強度が可能であるLED配列を使用して実行された。照射後、MNCはRPMI1640媒体を用いて洗浄され、2mMグルタミンと10%ヒト血清を含むRPMI1640媒体中、1〜2×10/mLで再懸濁された。細胞は最長72時間、5%COを含む湿った室内で37℃で培養された。試料は24,48,72時間後、アポトーシスについて分析された。白血球アポトーシスは白血球の前方/側方散乱でゲートしてCD45+/アネキシンV陽性細胞のパーセンテージとして測定された。試料は、それぞれのUV量/8−MOP濃度について、少なくともn=3まで繰り返された。24,48,72時間において様々なUV量にアネキシンV陽性細胞パーセンテージを関連させる棒グラフが図6に示される。
【0042】
B.減衰材料の量と吸収される光量との相関
次に、ヘマトクリット(すなわち、光減衰材料の濃度)と関連させて検量線が生成され、産物の厚みを吸収された紫外光のパーセンテージに対する産物の厚みは以下のように測定された。
【0043】
健康な提供者からアフェレーシスで派生した単核細胞は、精製されたMNC個体群を製造するためにフィコール・パック勾配を使用して処理された。細胞はその後、2mLグルタミンを含むRPMI1640媒体中、10×10白血球/mLで再懸濁された。1,2または3%のヘマトクリットになるよう、赤血球(光減衰材料)が加えられ、続けて暗所で15分間、200ng/mLの8−MOPを用いてインキュベートされた。細胞は、60mmのポリスチレン培養皿に、2.83,5.65,8.48mL/皿として移され、産物の厚みが1mm,2mm,3mm,4mm(1mmと3mmの合計),5mm(2mmと3mmの合計)となるようにされた。照射は市販のUVAライトボックス(Cerus)を用いて実行された。照射後、精製されたMNC個体群を製造するために、細胞は再びフィコール・パック勾配を使用して処理された。最終洗浄はRPI1640媒体を用いてなされ、細胞は2mMグルタミンと10%ヒト血清を含むRPMI1640媒体中、1〜2×10/mLで再懸濁された。細胞は最長72時間、5%COを含む湿った室内で37℃で培養された。試料は24,48,72時間後、アポトーシスについて分析された。白血球アポトーシスは白血球の前方/側方散乱でゲートしてCD45+/アネキシンV陽性細胞のパーセンテージとして測定された。試料は、それぞれのヘマトクリット/厚みの組み合わせについて、少なくともn=3まで繰り返された。それぞれの試料中に送達された紫外線の光量は、アポトーシス反応に基づいて、図1に示す棒グラフの読み取りから決定された。吸収された紫外線のパーセンテージは(1−(UV送達)/(UV放射))×100として計算され、このパーセンテージは、図7に示すグラフを生成するように、産物の様々な厚みについて試料のヘマトクリットに対してプロットされた。
【0044】
図7を参照して、4mmと5mmの厚みを有する試料のプロットは、2〜3のHCTを有する懸濁液について実質的に平坦であった。従って、本方法に従った標的産物パラメータは、約4.5mmの厚みを有する約2.5%HCTを有する懸濁液を調製するためのものとなるであろうが、実際の産物のヘマトクリットは、MNCに送達される紫外線量に重大な影響を与えることなく、2〜3%から変動することができ、厚みは4〜5mmから変動することができ、それによってまだ所望の結果を達成することができる。実際には、MNC懸濁液のヘマトクリットはMNCが採集されるアフェレーシス手順中に設計されることが好ましく、処理される懸濁液の厚みは紫外線処理容器の表面積とその容器中にポンプで入れられるMNC懸濁液の体積を知ることによって制御される。
【0045】
以上のように、所望の量が受容されて所望の治療的効果が得られるような光減衰物質を含み光エネルギーに曝されるための懸濁液を調製するためのシステムと方法が開示された。方法は単核細胞の循環光療法の文脈において記述されているが、これに限定されるものではなく、他の光量細胞処理プロトコルもまたこの方法(すなわち、病原体不活性化)を使用することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7