(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6144807
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】風車
(51)【国際特許分類】
F03D 3/04 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
F03D3/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-161510(P2016-161510)
(22)【出願日】2016年8月19日
【審査請求日】2016年8月19日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305025795
【氏名又は名称】井手 昊基
(72)【発明者】
【氏名】井手 昊基
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−241709(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0280707(US,A1)
【文献】
特開2006−022798(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0119504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼の外側に回転翼と同心状に常に回転翼の回転方向に風を案内する固定導風板を配し、さらにその外側に可動導風板を配し、その可動導風板はその外側端近傍を中心に一定範囲の角度で回動自在とし吹き付ける風によって押され即座に向きを変え、これによってどの方向からの風も風車に吹き付ける風のほぼ全てを取り込み、抵抗少なく回転翼の回転方向に案内するようにした垂直軸式風車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力原動機等に用いる風車の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風車の方式は各種現存しており、それぞれの特徴に応じて用いられている。本願発明は、どの方向からの風に対しても回転作動するクロスフロー式などの垂直軸式風車において、その風車に吹き付ける風量の殆どを回転翼の回転方向に導くようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−241709
【特許文献2】特開2004−197643
【特許文献3】実用新案登録3179856
【特許文献4】米国特許5463257
【特許文献5】米国特許公開2013−0302138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風車は概ね、水平方向に配した軸周りに回転するものと垂直方向に配した軸周りに回転するものに大別されるが、何れに於いても風が回転翼に吹き付けることで風のエネルギーを回転翼の回転力に変換するものであり、要は風の勢いを弱めることなく、より多くの風量を回転翼に受けて回転運動に変換させるのが望ましい。
クロスフロー式などの垂直軸式風車の特長はどの方向からの風に対しても回転作動することであるが、欠点としては回転翼に吹き付ける風が回転軸を界にして左右の一方は回転力として作用するが、反対側は回転の抗力として作用するため効率を損ねてしまうことである。
その対策として回転翼の外側に導風板を設けたものがあり、回転力として作用する側は風を導き入れ、抗力として作用する側は一部の風のみ回転翼の回転方向に案内し多くの風は流入を防いで抗力とならないようにしている。以下にその事例文献を示す。
【特許文献1】は一般的な導風板であり回転翼の軸を中心として点対称に配置され固定されている。これにより回転力として作用する側は風を導き入れ、抗力として作用する側は風の流入を防ぎ一部の風のみ回転翼の回転方向に案内される。
【特許文献2】および
【特許文献3】は導風板の角度を可変にしたものである。これらは強風の場合に回転翼が過剰な回転を起こして破損することのないように、モーター等で導風板の角度を変えて回転翼への風の流路を閉鎖するようになっている。
【特許文献4】は一部の導風板を固定し残りの導風板を可動として、風速を検知し可動の導風板をチェーンで同期させて角度変化するものであり、本願発明のように各々の可動導風板がそれぞれ適切な角度に変化して吹き付ける風のほぼ全てを回転翼の回転方向に案内するものではなく、また構造も複雑で製造コスト高である。
【特許文献5】は各々の導風板を個別に角度変化させて風を案内するものであるが、その角度変化の方法は手動または電動で行うものであり、その動かす機構の詳細は不明であるが、めまぐるしく変化する風向変化に対して手動式では実用的ではなく、また風向風速を検知しそれに応じて各々の導風板を個別に電動で動かすものは構造が複雑で製造コストも高くなってしまう。
【0005】
以上、従来の可動導風板は何れも各導風板の中央付近を回転中心として手動や電動により回動するようになっている。これに対して本願発明の可動導風板は各導風板の外側端近傍を回転中心として風車中心側が振れるようになっており、風向が変化してもその吹き付ける風によって即座に安定的に角度変化し、風量のほぼ全てを回転翼の回転方向に案内し回転力として働くようになっている。
【発明の効果】
【0006】
風車に吹き付ける風量のほぼ全てを取り込んで回転翼の回転方向に案内し回転力として働かせることにより効率が高く、且つ導風板の可動機構が簡素で製造コストが安くメンテナンスも容易な垂直軸式風力原動機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本願発明の第2の例であり、
図2同様の断面の図である。
【
図4】本願発明の第
1の例であり、
図2同様の断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願発明について図を参照して説明する。
図1図2は
参考図であり、
図1は
図2のB断面の図、
図2は
図1のA断面の図である。
回転翼1は風を受けて回転軸2を中心に回転する。回転翼1の外側には可動導風板7が回転翼1と同心状に配置され、その外側端は導風板回転軸6を介して導風板上板3と導風板下板4に回動自在に係合されている。可動導風板7は導風板回転軸6を中心に振れるようになっており、吹き付けた風によって押され即座に向きを変化する。
また、導風板上板3と導風板下板4には導風板回転規制ピン5が設けてあり、可動導風板7はこの導風板回転規制ピン5によって変化の角度が規制され、可動導風板7はその導風板回転規制ピン5以上には振れず、風はその可動導風板7の向いた方向に案内される。これによって、どの方向からの風も風車に吹き付けるその殆どを回転翼1の回転方向に抵抗少なく案内される。
【0009】
図3は本願発明の第2の例であり、
図2同様の断面の図である。
参考図に対し、回転翼1と可動導風板7の間に固定導風板8を設けたものである。
固定導風板8は回転軸2を中心に点対称に配置され導風板上板3と導風板下板4に固定されている。
固定導風板8が常に回転翼1の回転方向に風を案内するため、それと組み合わせて風を案内する可動導風板8は形状自由度を高めることができ、第1の例よりも振れの角度を大きくしまた板形状を平板とすることでさらにスムーズに風を取り込み抵抗少なく回転翼1の回転方向に案内される。
【0010】
図4は本願発明の第
1の例であり、
図2同様の断面の図である。
第2の例に対し、導風板回転規制ピン5は無く、その機能を固定導風板8に兼務させたものである。
固定導風板8の隣り合う板の間に挟まれた範囲内で可動導風板7の角度変化は可能であり、風はその可動導風板7と固定導風板8が重なった状態に沿って案内される。
可動導風板7と固定導風板8が重なり連続した状態は、回転軸2を界にして風が回転翼1の回転力として作用する側は略「一直線」となりほぼ抵抗なく回転翼1に案内され、反対側では略「くの字」を為して風の流れを回転翼1の回転方向に変化させて案内する。
以上、本願は、どの方向から吹く風に対しても、風が吹き付ける側の可動導風板7の全てが風を迎え入れる向きとなり回転翼1に案内する状態を維持する。
【0011】
尚、本願発明は、クロスフロー式の風車に限らず、他形式の垂直軸式風車にも適用するものである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
垂直軸式の風車において、風車に吹き付ける風を回転翼の回転力として最大限に取り込める効率の良い風車であり、特に敷地面積の制限のある家庭用などの中小型発電機への活用が期待される。
【符号の説明】
【0013】
1 回転翼
2 回転軸
3 導風板上板
4 導風板下板
5 導風板回転規制ピン
6 導風板回転軸
7 可動導風板
8 固定導風板
【要約】 (修正有)
【課題】風車に吹き付ける風量のほぼ全てを取り込んで回転翼の回転方向に案内し、回転力として働かせることにより効率が高く、且つ導風板の可動機構が簡素で、製造コストが安く、メンテナンスも容易な垂直軸式風力原動機を提供する。
【解決手段】回転翼1の外側に回転翼と同心状に導風板7を配し、その導風板はその外側端近傍を中心に一定範囲の角度で回動自在として、吹き付ける風によって角度変化し、風車に吹き付ける風のほぼ全てを回転翼の回転方向に案内させるようにした。
【選択図】
図4