特許第6144809号(P6144809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6144809
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20170529BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20170529BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H02H3/087
   G06F1/26 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-173011(P2016-173011)
(22)【出願日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】西川 康則
【審査官】 安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−175895(JP,A)
【文献】 特開2014−212658(JP,A)
【文献】 特開2016−015807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
G06F 1/26−1/32
H02H 3/08−3/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池が設けられ、前記電池を充電する携帯端末に、前記電池の充電に用いられる電力を給電する電源装置であって、
前記携帯端末が給電端子に接続された後、前記携帯端末と通信を行って、前記携帯端末に給電する給電電圧の指示値を示す指示情報を取得する指示情報取得部と、
前記指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力する一方、前記給電電圧の出力に伴い前記携帯端末に給電する給電電流が予め設定された電流値に達する場合には前記給電電圧の電圧値を低下させて前記予め設定された電流値からなる電流を前記給電電流として出力する電源部と、
前記携帯端末が前記給電端子に接続されてから予め設定された第1の時間が経過するまでの間、前記電源部から出力される給電電圧が予め設定された第1の電圧値以下の状態が継続した場合に前記電源部の動作を停止する第1の保護部と、
前記第1の時間が経過し、且つ、前記電源部から出力される給電電圧が所期の電圧値に達した後、前記給電電圧の電圧値が予め設定された第2の電圧値以下となった場合は予め設定された第2の時間間隔で前記電源部に前記指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力させる第2の保護部と、
を備える電源装置。
【請求項2】
前記指示情報取得部は、前記携帯端末が前記給電端子に接続された後、前記携帯端末との通信を所定の周期で継続して行い、
前記電源部は、前記通信により新たな指示情報が取得されるまで、現在の電圧値で前記給電電圧を出力する請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記指示情報により示される前記給電電圧の指示値は、前記携帯端末による前記電池の充電効率に応じて設定される請求項1又は2に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に電力供給を行う電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばスマートフォン等の携帯端末が広く利用されてきた。このような携帯端末は充電可能な電池が搭載され、当該電池に蓄えられた電力により駆動される。このような電池は携帯端末により充電され、携帯端末には、例えば特許文献1に記載のACアダプタ(本願「電源装置」の一例)を用いて給電される。
【0003】
特許文献1に記載のACアダプタはコンピュータ(上記「携帯端末」の一例)のバッテリ(上記「電池」に相当)を充電する際に利用される。このACアダプタは、直流出力を出力する出力回路と、コンピュータの電源状態がオフ状態からオン状態となった場合に、出力回路の過電流保護特性を逆L字特性(アルファベットの「L」の字を回転したような形状をした特性)からフの字特性(日本語の片仮名の「フ」の字のような形状をした特性)に切り替える切り替え回路とを備えて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−135564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、電池の充電中に何らかの理由で過電流が流れるような状況になった場合には、フの字特性により過電流保護を行うことが可能である。一方、携帯端末とACアダプタとが異物を噛み込んだ状態(以下「ハーフショート状態」とする)で接続された場合には、数秒レベルで接続部分が赤熱状態となり、発煙や発火等に至ることが知られている。このため、特許文献1に記載の技術のようなフの字特性における定電流特性部分を短くしたり、無くしたりして対応してきた。
【0006】
ここで、近年、携帯端末は稼働時間を長くすべく、電池の大容量化が進められてきた。一方、このような電池の大容量化に伴い、充電時間を短縮すべく、携帯端末に給電する電圧(本願の「給電電圧」に相当)を変更して充電効率を高めることが検討されてきた。給電電圧の変更を行う方法の一つとして、例えば携帯端末にACアダプタを接続した際に、携帯端末とACアダプタとが通信を行って給電電圧を設定することが考えられる。しかしながら、給電電圧が決定される前に、現在のACアダプタの出力(供給電力)を測定するために定電流特性を使用するので、上述したハーフショート状態での保護との両立が容易ではない。
【0007】
そこで、携帯端末と電源装置との接続初期段階に、携帯端末と電源装置との通信により携帯端末に電源装置の電力供給能力の確認を行わせつつ、過電流保護を行うことが可能な電源装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電源装置の特徴構成は、電池が設けられ、前記電池を充電する携帯端末に、前記電池の充電に用いられる電力を給電する電源装置であって、前記携帯端末が給電端子に接続された後、前記携帯端末と通信を行って、前記携帯端末に給電する給電電圧の指示値を示す指示情報を取得する指示情報取得部と、前記指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力する一方、前記給電電圧の出力に伴い前記携帯端末に給電する給電電流が予め設定された電流値に達する場合には前記給電電圧の電圧値を低下させて前記予め設定された電流値からなる電流を前記給電電流として出力する電源部と、前記携帯端末が前記給電端子に接続されてから予め設定された第1の時間が経過するまでの間、前記電源部から出力される給電電圧が予め設定された第1の電圧値以下の状態が継続した場合に前記電源部の動作を停止する第1の保護部と、前記第1の時間が経過し、且つ、前記電源部から出力される給電電圧が所期の電圧値に達した後、前記給電電圧の電圧値が予め設定された第2の電圧値以下となった場合は予め設定された第2の時間間隔で前記電源部に前記指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力させる第2の保護部と、を備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、電源装置が、携帯端末から当該携帯端末に給電する給電電圧の指示値を示す指示情報を取得することができる。また、例えば第1の時間を、携帯端末と電源装置とがハーフショート状態で接続された場合でも発煙や発火が生じない程度の時間に設定しておくことにより、ハーフショートにより電源装置から出力される給電電圧の電圧値が第1の電圧値以下の状態が継続した場合には、発煙や発火が生じる前に、第1の保護部により電源部の動作を停止することができる。また、携帯端末と電源装置とが異物を噛み込まずに接続された状態で電源装置が携帯端末に給電している時に、想定外の給電電圧の低下や過電流が検出された場合には、電源部が第2の時間間隔で指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力するように制御されるので、このような想定外の状態が継続した場合でも発煙や発火が生じることを防止できる。このように本特徴構成によれば、携帯端末に電源装置の電力供給能力の確認を行わせつつ、携帯端末と電源装置との接続初期より、例えばハーフショート保護のような過電流保護を行うことが可能となる。
【0010】
また、前記指示情報取得部は、前記携帯端末が前記給電端子に接続された後、前記携帯端末との通信を所定の周期で継続して行い、前記電源部は、前記通信により新たな指示情報が取得されるまで、現在の電圧値で前記給電電圧を出力すると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、電源装置の出力特性として、所定の電圧値からなる給電電圧を出力後、所定時間が経過するまで定電流を出力するように構成しておくことで、携帯端末が、電源装置の出力特性を利用し、その時点の給電電圧での最大出力容量の計測及び認識を行うことが可能となる。したがって、携帯端末に、給電電圧の電圧値を変更するか否かを決定させることが可能となる。
【0012】
また、前記指示情報により示される前記給電電圧の指示値は、前記携帯端末による前記電池の充電効率に応じて設定されると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、携帯端末がリアルタイムで変化する電池の電圧に基づいて充電効率が良いか否かを判定し、この判定結果により指示情報で示される給電電圧の指示値を決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電源装置の構成を模式的に示した図である。
図2】電源装置の出力特性の一例を示した図である。
図3】第2の保護部による保護動作を示す図である。
図4】電源装置の構成の一例を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る電源装置は、電池が設けられ、電池を充電する携帯端末に、電池の充電に用いられる電力を給電するのに利用され、給電電圧が所期の電圧値でない場合でも電源装置や携帯端末から発煙や発火が生じないように保護機能を備えて構成されている。以下、本実施形態の電源装置1について説明する。
【0016】
図1は、電源装置1の構成を示す模式図である。図1には、電源装置1により給電される携帯端末100も示される。携帯端末100には電池101が設けられ、電池101は携帯端末100により充電される。携帯端末100とは、例えばスマートフォン等のように所有者が携帯して使用する端末であり、動力源として電池101に蓄電された電力が利用される。電源装置1は、このような携帯端末100に、電池101の充電に用いられる電力を給電する。
【0017】
電源装置1は、指示情報取得部10、電源部20、第1の保護部30、第2の保護部40、計数中止部50の各機能部を備えて構成される。これらの各機能部は、ディスクリート部品や、IC(Integrated Circuit)や、MPU(Micro-processing unit)の少なくとも一つを用いて構成することが可能である。
【0018】
指示情報取得部10は、携帯端末100が給電端子11に接続された後、携帯端末100と通信を行って、携帯端末100に給電する給電電圧の指示値を示す指示情報を取得する。給電端子11とは、電源装置1に設けられる携帯端末100への給電時に電力供給に利用される正負一対の端子である。また、電源装置1と携帯端末100とは通信端子12でも接続される。指示情報取得部10は、携帯端末100が給電端子11に接続された後、この通信端子12を介して、携帯端末100との通信を所定の周期で継続して行う。なお、図1では、理解を容易にするために通信端子12と給電端子11とを離間して示しているが、通信端子12と給電端子11とが一体的に纏められた公知のUSB(Universal Serial Bus)規格に基づくUSBコネクタで構成すると好適である。
【0019】
ここで、携帯端末100に設けられる電池101は、充電電流が一定となる定電流で充電され、その後、充電電圧が一定となる定電圧で充電される。このため、電源装置1は、携帯端末100がこのような定電流及び定電圧による電池101の充電を行うことができるように、図2に示されるような出力特性を有して構成される。指示情報により示される給電電圧の指示値は、携帯端末100による電池101の充電効率に応じて携帯端末100により設定される。このような給電電圧の電圧値を変更する指示は、携帯端末100から給電電圧の指示値を示す指示情報として伝達され、指示情報取得部10により取得される。
【0020】
図1に戻り、電源部20は、AC/DCコンバータ21、DC/DCコンバータ22、給電電圧検出部23、制御部25を備えて構成される。AC/DCコンバータ21は、電源装置1に入力される交流電圧を直流電圧に変換する。電源装置1に入力される交流電圧は、例えば電力会社から供給される。AC/DCコンバータ21及びDC/DCコンバータ22は、例えば商用トランスを用いたトランス方式や、スイッチング素子を用いたスイッチング方式で構成することが可能である。
【0021】
AC/DCコンバータ21から出力された直流電圧は、交流電圧を全波整流したものである。そこで、AC/DCコンバータ21の出力は、図示しない平滑コンデンサにより平滑され、更にDC/DCコンバータ22により、所定の電圧値からなる直流電圧に変換される。「所定の電圧値からなる直流電圧」とは、指示情報が無い場合には予め設定された値(例えばUSB充電の場合には、5V)からなる直流電圧が相当し、指示情報がある場合には指示情報により規定された給電電圧の指示値が相当する。DC/DCコンバータ22は、例えば公知のスイッチング方式による降圧用DC/DCコンバータを用いて構成することが可能である。特に、変換効率を向上するために、同期整流型の降圧用DC/DCコンバータを用いることも可能である。DC/DCコンバータ22の動作は、後述する制御部25により制御される。
【0022】
制御部25は、指示情報取得部10から伝達される指示情報に基づいてDC/DCコンバータ22の動作を制御する。具体的には、DC/DCコンバータ22が有するスイッチング素子のオンDUTYを制御して、DC/DCコンバータ22の出力電圧が指示情報に基づく電圧値になるようにする。これにより、電源部20が、指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力することが可能となる。DC/DCコンバータ22から出力される出力電圧は、給電電圧検出部23により検出される。給電電圧検出部23は、DC/DCコンバータ22の出力電圧そのものを測定するように構成しても良いし、DC/DCコンバータ22の出力電圧を所定の抵抗値を有する抵抗器で分圧した電圧と所定の基準電圧との大小関係を比較して検出するように構成しても良い。
【0023】
また、電源部20は、給電電圧の出力に伴い携帯端末100に給電する給電電流が予め設定された電流値に達する場合には給電電圧の電圧値を低下させて予め設定された電流値からなる電流を給電電流として出力する。電源装置1が供給可能な電力は、電源装置1毎に予め決定されている。上述したように、電源部20は、指示情報が無い場合には予め設定された値(例えばUSB充電の場合には、最初は5V)からなる直流電圧を出力し、その後に指示情報がある場合には指示情報により規定された給電電圧の指示値からなる直流電圧を出力する。携帯端末100は、その直流電圧で電源部20の出力を引き込むことで、電源装置1が出力可能な電流の電流値をCC(定電流)特性により検出し、携帯端末100が電池101を充電する際の充電効率が最適となる様に電源装置1に対して給電電圧の指示値を示す指示情報を継続して出力する。電源部20は、指示情報取得部10が携帯端末100との通信により新たな指示情報を取得するまで、現在の電圧値で給電電圧を出力する。
【0024】
制御部25は、指示情報取得部10が取得した指示情報に基づき、携帯端末100が指示する電圧値の給電電圧を出力するように、電源部20を制御する。これにより、電源装置1から携帯端末100に給電する給電電圧の電圧値を変更することができ、電力供給時の効率を向上することが可能となる。なお、電源装置1が出力可能な電力(所謂、出力容量)は、電源装置1と携帯端末100とが接続されてから所定時間(例えば、数十ミリ秒)の間に行われるCC特性よる給電時に、携帯端末100が検出する。これにより、各出力電圧毎に、出力容量(CC特性)の形で携帯端末100に検知させることが可能となる。
【0025】
第1の保護部30は、携帯端末100が給電端子11に接続された後、定電圧出力を経て、定電流垂下特性に入った時点から予め設定された第1の時間が経過する時点までの間において、電源部20から出力される給電電圧が予め設定された第1の電圧値以下の状態が継続した場合に電源部20の動作を停止する。「第1の時間」は、上述した携帯端末100が、電源装置1の出力容量を検出可能な時間より長く、且つ、仮に、携帯端末100と電源装置1とがハーフショート状態で接続された場合でも発煙や発火が生じない程度の時間で設定すると良い。
【0026】
第1の保護部30は、このような第1の時間の間において、電源部20の出力電圧の電圧値が予め設定された第1の電圧値以下となる状態が継続した場合には、電源部20の動作を停止させる。「予め設定された第1の電圧値」とは、指示情報が無い場合には予め設定された値(例えばUSB充電の場合には、5V)からなる直流電圧の許容範囲を逸脱した値に設定すると良く、指示情報がある場合には指示情報により規定された給電電圧の指示値からなる直流電圧の許容範囲を逸脱した値に設定すると良い。「電源部20の動作を停止させる」とは、電源部20が所謂hiccup状態又はラッチ停止状態になることを意味する。したがって、第1の保護部30は、第1の時間に亘って電源部20から出力される電圧が、このような予め設定された第1の電圧値以下の場合には、電源部20がhiccup状態又はラッチ停止状態になるようにする。
【0027】
ここで、第1の保護部30は、上述した第1の時間を計数するタイマ31を有すると良い。この場合、電源部20から出力される給電電圧が第1の電圧値以下であって、タイマ31の計数結果が予め設定された値になった場合に電源部20の動作を停止するように構成することができる。これにより、携帯端末100が電源装置1の出力容量を検出しつつ、携帯端末100と電源装置1とがハーフショート状態で接続された場合でも発煙や発火が生じないように保護することができる。
【0028】
計数中止部50は、給電電圧の値が第1の電圧値を超えた場合に、タイマ31の計数を中止させる。「給電電圧の値が第1の電圧値を超えた場合」とは、電源部20の出力電圧の電圧値が、指示情報により示される給電電圧の許容範囲内の電圧値である場合をいう。したがって、計数中止部50は、電源部20の出力電圧が、指示情報により示される給電電圧の許容範囲内の電圧値である場合に、タイマ31の計数を中止させる。なお、タイマ31が計数中止部50により計数が中止された後は、タイマ31の計数結果は一旦、リセットし、改めて電源部20の出力電圧の電圧値が、指示情報により示される給電電圧の許容範囲を逸脱する値になった場合に、改めて計数するように構成すると良い。この状態でも、計数結果が予め設定された値になった場合には、第1の保護部30が電源部20の動作を停止するように構成される。なお、タイマ31が計数を行っている時は、携帯端末100が電源装置1の出力容量の検出を行った後、電源装置1の給電電圧が所期の電圧値になっていない状態、或いは、電源部20の出力がフの字特性として動作している状態にあたる。
【0029】
第2の保護部40は、電源部20から出力される給電電圧が所期の電圧値に達した後、給電電圧の電圧値が予め設定された第2の電圧値以下となった場合は予め設定された第2の時間間隔で電源部20に指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力させる。「電源部20から出力される給電電圧が所期の電圧値に達した後」とは、携帯端末100が電源装置1の出力容量の検出を行った後、電源装置1の給電電圧が所定の電圧値の給電電圧を出力している状態をいう。
【0030】
「予め設定された第2の電圧値」とは、第2の保護部40が電源部20に対する保護動作を開始する閾値に相当する。「予め設定された第2の時間間隔」とは、電源装置1から想定外の電流が出力された場合であっても、電源装置1が給電端子11において発煙や発火をしないエネルギー量となる時間間隔である。具体的には、数ミリ秒の出力状態と数百ミリ秒の休止状態との繰り返しとすると良い。「指示情報に基づく電圧値の給電電圧」とは、直前の指示情報により示される給電電圧である。第2の保護部40は、上述した時間間隔で電源部20に対して、直前の指示情報により示される給電電圧を間欠出力させる。図3には、hiccup動作時の電源部20から出力される電流の電流波形が示される。図3に示されるように、hiccup動作時には、数百ミリ秒間隔で数ミリ秒に亘って所定の大きさの電流が出力される。なお、hiccup動作時にあっては、上述したように電源部20から直前の指示情報により示される給電電圧が出力されるが、観測される電圧の電圧値は給電端子11に外部から印加される電圧値によって定まることになる。
【0031】
上述した指示情報取得部10は、計数中止部50によりタイマ31の計数が中止されている状態やフの字特性により出力している状態においても指示情報を取得可能に構成される。電源部20は、タイマ31の計数が中止されている状態やフの字特性により出力している状態において指示情報が取得された場合には、指示情報に基づいて給電電圧の電圧値を変更して出力するように構成すると良い。これにより、電圧値の変更後、所定時間の間、CC特性により、携帯端末100が電源装置1の出力容量を計測し、次の切り換え指示を出すことが可能となる。
【0032】
このように電源装置1を構成することにより、電源装置1の起動時における過渡状態と、起動後の定常状態とにおいて2種類の特性を持たせることができる。具体的には、過渡状態では、第1の保護部30により数百ミリ秒程度での異常発熱や発煙や発火等を防止し、定常状態では、第2の保護部40によりショート時の異常発熱や発煙や発火等を防止することができる。また、このような構成とすることにより、電源装置1のフの字特性における定電流特性部分において、携帯端末100と電源装置1とが通信を行うことが可能となる。
【0033】
図4には、上述した電源装置1の構成を具体的に示した回路図が示される。図4の例では、AC/DCコンバータ21はダイオードブリッジを用いた整流回路が用いられる。また、給電電圧検出部23は、2つの抵抗器を用いて構成され、DC/DCコンバータ22の出力を当該2つの抵抗器で分圧して給電電圧を検出している。ここで、電源部20から出力される給電電流を一次側で検出する場合には、AC/DCコンバータ21の出力電圧を所定の電圧に降下させるために用いられるスイッチング素子のソース電流を検出し、この検出結果に基づき給電電流を演算することが可能である。これにより、1次側で電源装置1の出力容量を検出することが可能となる。もちろん、2次側で検出するように構成することも可能である。
【0034】
制御部25は、制御ICが用いられ、図4の例では一次側制御IC25Aと二次側制御IC25Bとに分けて用いられている。第1の保護部30は、制御部25及びコンデンサ(タイマ31の一例)を用いて構成される。この場合、コンデンサへの充電によりタイマ31の計数時間が設定されるが、もちろん、制御部25にタイマ31を内蔵して構成することも可能であるし、タイマ31を他の回路構成を用いて構成することも可能である。第2の保護部40は、二次側制御IC25Bに組み込まれている。DC/DCコンバータ22は、同期整流型のものが示される。なお、同期整流のスイッチングに用いられるスイッチング素子の一方(出力段に設けられるスイッチング素子:P型MOSFET)の動作を制御して、電源部20の出力シーケンスの制御を行うことが可能である。なお、第2の保護部40は、一次側制御IC25Aに組み込むことも可能であるし、出力段に設けられるスイッチング素子はN型MOSFETを用いることも可能である。
【0035】
計数中止部50は、フォトトランジスタとフォトダイオードとを用いて構成されている。フォトダイオードに電流が流れることで、フォトトランジスタを動作させ、第1の保護部30が有するタイマ31として用いられるコンデンサの端子間を短絡するように構成されている。これにより、フの字特性への切り替えを行うことが可能となる。指示情報取得部10は、携帯端末100と通信可能に端子が設けられている。このような回路構成で電源装置1を構成することが可能であるが、制御部25は一次側制御IC25Aと二次側制御IC25Bとに分けずに、1つの制御ICで構成することも可能である。なお、計数中止部50がタイマ31として用いられるコンデンサの端子間を短絡する構成は単なる一例であり、他の回路構成とすることも可能である。
【0036】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、指示情報取得部10は、携帯端末100が給電端子11に接続された後、携帯端末100との通信を所定の周期で継続して行うとして説明したが、指示情報取得部10は、携帯端末100から指示情報が伝達されてきた時のみ通信を行うように構成することも可能である。
【0037】
上記実施形態では、指示情報により示される給電電圧の指示値は、携帯端末100による電池101の充電効率に応じて設定されるとして説明したが、指示情報により示される給電電圧の指示値は、電池101の寿命に応じて設定することも可能である。
【0038】
上記実施形態では、電源部20は、タイマ31の計数が中止されている状態において指示情報が取得された場合には、指示情報に基づいて給電電圧の電圧値を変更して出力するとして説明したが、電源部20はタイマ31の計数が中止された場合には給電電圧の電圧値を変更しないように構成することも可能である。
【0039】
本発明は、携帯端末に電力供給を行う電源装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:電源装置
10:指示情報取得部
11:給電端子
20:電源部
30:第1の保護部
40:第2の保護部
100:携帯端末
101:電池
【要約】
【課題】過電流保護を行うことが可能な電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、携帯端末100と給電端子11との接続後、携帯端末100からの指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力する一方、給電電圧の出力に伴い携帯端末100に給電する給電電流が予め設定された電流値に達する場合には給電電圧の電圧値を低下させて予め設定された電流値からなる電流を給電電流として出力する電源部20と、携帯端末100と給電端子11との接続後、第1の時間が経過するまでの間、電源部20から出力される給電電圧が第1の電圧値以下の状態が継続した場合に電源部20の動作を停止する第1の保護部30と、電源部20から出力される給電電圧が所期の電圧値に達した後、給電電圧の電圧値が第2の電圧値以下となった場合は第2の時間間隔で電源部20に指示情報に基づく電圧値の給電電圧を出力させる第2の保護部40とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4