(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
断面略矩形状のリング状基体部の内径の一側面に所定の肉厚を有する可撓部と、前記基体部の外径の一側面に固定部がそれぞれ一体に延設され、前記可撓部の外周面と前記固定部の内周面との間に凹状の空間部が設けられ、前記可撓部の内径位置にはシール接触部が突設され、このシール接触部にかかるシール面圧Fの力点が流路方向に垂直な分力Fyと流路方向に平行な分力Fxに分解され、この分力Fyが前記空間部を貫通する方向に構成され、前記固定部の内径側位置を前記可撓部が可撓する際の支点部としたことを特徴とするバタフライ弁用シートリング。
筒形状のボデーと環状のシートリテーナの間に介在させたジスクの外周面にシール接触するシートリングの外方を固定する固定構造であって、前記シートリングは、基体部の内周側部に突出した可撓部と前記基体部の外周側部に突出した固定部が一体に延設され、かつ前記可撓部と前記固定部との間に空間部を有する環状形であり、前記基体部の外周面側の環状周囲に位置するガスケット部が薄肉部を介して一体に連結されていることを特徴とするバタフライ弁用シートリングの固定構造。
前記基体部の外周面と前記ガスケット部の内周面との間に幅狭の装入空間が設けられ、前記シートリテーナに設けた幅狭の突起部が前記装入空間に装入され、この突起部の先端で前記薄肉部の幅狭の側部を高い面圧で押圧した状態で前記薄肉部を局圧部位とした請求項5に記載のバタフライ弁用シートリングの固定構造。
前記ガスケット部の側面部に前記シートリテーナの押圧部で押圧する潰し代が設けられ、かつ前記固定部の側面部に前記シートリテーナの押圧面部で押圧する潰し代が設けられると共に、前記固定部の側面部、前記ガスケット部の側面部、前記薄肉部の側部の順で潰し代を大きくした請求項5又は6に記載のバタフライ弁用シートリングの固定構造。
筒形のボデー内にステムを介して偏心位置に回動自在に軸支されたジスクを、前記ボデー内にシートリテーナで固定したシートリングに密封シール可能に設けた偏心型バタフライ弁において、前記シートリングは、断面略矩形状のリング状基体部の内径の一側面に所定の肉厚を有する可撓部と、前記基体部の外径の一側面に固定部がそれぞれ一体に延設され、前記可撓部の外周面と前記固定部の内周面との間に凹状の空間部が設けられると共に、前記可撓部の内径位置にシール接触部が突設され、このシール接触部にかかるシール面圧Fの力点が流路方向に垂直な分力Fyと流路方向に平行な分力Fxに分解され、この分力Fyは前記空間部が貫通される方向であり、前記基体部の外方と前記固定部とが前記シートリテーナで固定され、前記基体部と前記ボデーとの間に隙間が形成され、前記可撓部と前記シートリテーナとの間に隙間をそれぞれ設け、前記シートリテーナに設けた環状突起の外面と前記空間部の内側内面とを接触させた接触位置を、前記可撓部が可撓する際の支点部としたことを特徴とする偏心型バタフライ弁。
弁閉時には、前記可撓部がシートリテーナに当接して支持された状態で、前記シール接触部とジスクとのシール面圧が高められた請求項13又は14に記載の偏心型バタフライ弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2のバタフライ弁においては、
図11の模式図に示すように、平板状の円環状体1の一面側に円環状溝2が形成され、この円環状溝2の溝底4よりも二次側にシール面部3が形成されている。このため、シール面部3の接点Aに弁体封止に係るシール面圧Gが加わり、このシール面圧Gが矢印に示した弁体球面の法線方向に発生したときに、シール面圧Gによりシートリング1にかかる力を、弁体とシートリング1との接点Aを通りその表面に平行な方向(流れ方向に垂直な方向)の成分である分力Gyと、流れ方向に平行な成分である分力Gxとに分解した場合、分力Gyが溝底4の領域Eに存在することで円環状溝2を貫通しない方向に働くことになる。このように分力Gyが円環状溝2に差し掛からないことで、シートリング1がY方向にたわみ難くなり、弁体との接触面圧が大きいものとなる。これにより、同文献2のバタフライ弁では、シートリング1の形状の単純化は図られてはいるが耐久性や操作性が十分ではなくなり、摩耗や圧縮などによってシートリングの寸法が変化して耐久性が損なわれたり、バタフライ弁の操作トルクが大きくなるという問題を有している。
【0009】
この対策として、シートリング1の円環状溝2からシール側の接点Aまでの長さを大きくして撓みやすくすることも考えられるが、この場合、シール部分が径方向に延長することでシートリング1の小径化につながって流量特性が犠牲になるという問題が生じる。
【0010】
また、特許文献1、2に示すバタフライバルブは、シートリングとバルブ本体、あるいはシートリングとシートリテーナとの間にそれぞれ隙間を設けることにより、シートリングの柔軟性を確保するようにしている。この隙間は、流体圧が付加されない無負荷の状態で、且つ弁体がシートリングと接する全閉状態においても確保されている。そして、シートリングが前記の隙間側を下流とする流体圧を受けた場合には、シートリングが撓んでシートリテーナに当接する構造となっている(特許文献1の
図3、特許文献2の
図8参照)。
従って、シートリングがバルブ本体やシートリテーナに当接していない状態が長期間に及べば、シートリングがクリープ現象などによって寸法変化が生じやすくなり、弁体とのシール面圧が低下するおそれがある。
【0011】
特許文献3において、シートリングの両平面全面がリテーナとボデーとに当接しながら挟み込まれた構造の偏心型バタフライ弁は、ステム装着側を上流とした流れ方向のみに対応しており、ステム装着側が下流となる流れが加わる場合にはシール性を確保することが難しい。
また、このシートリングでは、ジスクが流体圧により移動して圧縮する場合にも耐え得るように剛性が高く設定されているため、流体で変形してシールする機能、いわゆるセルフシール機能を有していない。
【0012】
特許文献4の偏心型バタフライ弁のシートリングは、リテーナの突起で押さえられているが、この突起のみでは熱サイクル発生時の基部側から内径方向へのシートリングの変形を防いで裏漏れを抑えることは難しく、特許文献2と同様の問題を有している。可動部が流体圧で変形する際には、本体との隙間で変形するようになっているが、基部が一次側の突起で押さえられた状態で可動部が二次側の変形点を中心に旋回して変形するため、変形点を中心に基部に回転方向の力が加わってシートリング全体の固定が弱くなる。さらに、基部の径方向への変形を抑えられていないため、シール圧縮部側の内径方向への変形量が大きくなってシール性能が悪化しやすい。
【0013】
また、これらの偏心型バタフライ弁は、低温下で常温に比べてシートリング材料自体の硬度が増加し、特に、充填材の入ったPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のシートリングは、必要締付け面圧も増加する。そのため、常温下ではガスケット側の漏れが無い場合でも、低温下にさらした場合に漏れが生じることがある。
【0014】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、構造を単純化しつつ封止時における弁体とシートリングとのシール面圧を適切に確保することで、耐久性を向上して優れた操作性を維持し、正圧又は逆圧の何れの場合でもシール面圧を確保して高シール性を発揮し、かつ、裏漏れを確実に封止できるバタフライ弁用シートリングとその固定構造並びに偏心型バタフライ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、断面略矩形状のリング状基体部の内径の一側面に所定の肉厚を有する可撓部と、基体部の外径の一側面に固定部がそれぞれ一体に延設され、可撓部の外周面と固定部の内周面との間に凹状の空間部が設けられ、可撓部の内径位置にはシール接触部が突設され、このシール接触部
にかかるシール面圧Fの力点が流路方向に垂直な分力Fyと流路方向に平行な分力Fxに分解され、この分力Fyが前記空間部を貫通する方向に構成され、固定部の内径側位置を可撓部が可撓する際の支点部としたバタフライ弁用シートリングである。
【0017】
請求項2に係る発明は、基体部の内周面は、シール接触部から緩やかなテーパ面としたバタフライ弁用シートリングである。
【0018】
請求項3に係る発明は、空間部は断面略円弧状に形成されているバタフライ弁用シートリングである。
【0019】
請求項4に係る発明は、固定部と基体部の外方側とで固定基部が構成されたバタフライ弁用シートリングである。
【0020】
請求項5に係る発明は、筒形状のボデーと環状のシートリテーナの間に介在させたジスクの外周面にシール接触するシートリングの外方を固定する固定構造であって、シートリングは、基体部の内周側部に突出した可撓部と基体部の外周側部に突出した固定部が一体に延設され、かつ可撓部と固定部との間に空間部を有する環状形であり、基体部の外周面側の環状周囲に位置するガスケット部が薄肉部を介して一体に連結されているバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0021】
請求項6に係る発明は、基体部の外周面とガスケット部の内周面との間に幅狭の装入空間が設けられ、シートリテーナに設けた幅狭の突起部が装入空間に装入され、この突起部の先端で薄肉部の幅狭の側部を高い面圧で押圧した状態で薄肉部を局圧部位としたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0022】
請求項7に係る発明は、ガスケット部の側面部にシートリテーナの押圧部で押圧する潰し代が設けられ、かつ固定部の側面部にシートリテーナの押圧面部で押圧する潰し代が設けられると共に、固定部の側面部、ガスケット部の側面部、薄肉部の側部の順で潰し代を大きくしたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0023】
請求項8に係る発明は、空間部の内周面をシートリテーナに突設した
環状突起の外面に接触させたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0024】
請求項9に係る発明は、固定部の外面とシートリテーナの内面との間に空隙部が設けられ、かつ装入空間の外面とシートリテーナの突起部の内面との間に隙間が設けられたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0025】
請求項10に係る発明は、固定部の外面と装入空間との繋ぎ位置に段部が形成されたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0026】
請求項11に係る発明は、ガスケット部の外面とシートリテーナの内面及び装入空間の内面と突起部の外面との間にそれぞれ空隙部が設けられたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0027】
請求項12に係る発明は、薄肉部が当接するボデー側面にボデー段部が設けられたバタフライ弁用シートリングの固定構造である。
【0028】
請求項13に係る発明は、筒形のボデー内にステムを介して偏心位置に回動自在に軸支されたジスクを、ボデー内にシートリテーナで固定したシートリングに密封シール可能に設けた偏心型バタフライ弁において、シートリングは、断面略矩形状のリング状基体部の内径の一側面に所定の肉厚を有する可撓部と、基体部の外径の一側面に固定部がそれぞれ一体に延設され、可撓部の外周面と固定部の内周面との間に凹状の空間部が設けられると共に、可撓部の内径位置にシール接触部が突設され、このシール接触部
にかかるシール面圧Fの力点が流路方向に垂直な分力Fyと流路方向に平行な分力Fxに分解され、この分力Fyは前記空間部が貫通される方向であり、基体部の外方と固定部とがシートリテーナで固定され、基体部とボデーとの間に隙間が形成され、可撓部とシートリテーナとの間に隙間をそれぞれ設け、
シートリテーナに設けた環状突起の外面と空間部の内側内面とを接触させた接触位置を、可撓部が可撓する際の支点部とした偏心型バタフライ弁である。
【0029】
請求項14に係る発明は
、環状突起が空間部の奥部側の手前まで突出され、環状突起の外面を空間部の内側内面に接触させ、かつ環状突起の内面と空間部の外側内面との間に離間部が設けられた偏心型バラフライ弁である。
【0031】
請求項15に係る発明は、弁閉時には、可撓部がシートリテーナに当接して支持された状態で、シール接触部とジスクとのシール面圧が高められた偏心型バタフライ弁である。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に係る発明によると、基体部、可撓部、固定部を一体に形成して全体形状を単純化しながらボデーとシートリテーナとの間に簡単に装着でき、可撓部と固定部との間に設けた凹状の空間部を介してシール接触部を弾性変形することで、正圧又は逆圧の何れの流体圧の場合にも高いシール性を発揮しながら封止できる。その際、シール接触部を空間部の奥側位置よりシートリテーナ側となる可撓部の内周面に位置させていることにより、弁体からシートリングに加わる流路と垂直方向の分力が空間部方向に差し掛かるようにシール接触部に加わることで、全体にかかる負荷を低減しながら可撓部を変形させて所定のシール面圧を確保できる。これにより可撓部の耐久性を向上して消耗を抑えることができ、シールさせるために必要な面圧力の上昇を防いで操作トルクの上昇を回避できる。このため、優れた操作性を維持でき、低面圧による制御も可能になる。
しかも、空間部により弾性変形量を確保しつつ基体部と固定部とにより剛性を維持し、シール内径寸法の変化を抑えながら可撓部を撓ませて所定のシール面圧を保つことにより、耐久性の向上を図ることが可能となる。
さらには、支点部により固定部を位置決めしながら支えて、シール接触部側を正圧又は逆圧方向に弾性変形させることができる。これにより、シール接触部から固定部に力が加わり難くなることで固定部の摩耗や圧縮を抑制し、特に、逆圧側に力が加わる際において、固定部が支点部で押さえられた状態で可撓部が弾性変形して可撓部の潰れや摩耗、胴部分のへたりを防止でき、高圧流体を確実に封止可能なシール面圧を維持できる。
【0034】
請求項2に係る発明によると、緩やかなテーパ面を介してテーパ接触面を設けることで可撓部が弾性変形しやすくなり、可撓部と固定部との間に亀裂や破断を生じることなく流体圧力に応じて所定変形量で可撓部を撓ませることができ、シール接触部が所定のシール面圧を発揮できる。
【0035】
請求項3に係る発明によると、可撓部が弾性変形するときにこの可撓部の空間部に加わる力を分散させて可撓部への応力集中を回避することにより、シール時に可撓部全体を撓ませて負荷を抑える。
【0036】
請求項4に係る発明によると、固定基部側を強固に固定して全体の位置ずれを防ぎつつ、可撓部側を固定基部に対して弾性変形させてシール可能となる。これによりシール接触部の振れを抑えて所定のシールポイントで弁体に接触させて均一なシール力を発揮する。
【0037】
請求項5に係る発明によると、ガスケット部を基体部の外周面側の環状周囲に一体に連結していることでガスケット部を基体部とは別に独立した部位として設け、このガスケット部に流体により熱サイクルが生じて高温時に膨張が生じた場合でも、常温に復帰したときにガスケット部のシール性を維持して裏漏れを防止できる。しかも、ガスケット部を薄肉部を介して固定部とは別に位置決め固定することで、ガスケット部の熱膨張による余剰分の移動を薄肉部で抑えて基体部側の変形を抑えているので、安定した弁座シール性を得ることができる。固定部をガスケット部とは別に設けていることで、この固定部を所定位置に強固に固定している。シートリングは、基体部の内周側部に可撓部、基体部の外周側部に固定部が一体に延設され、これらの間に空間部を有していることにより、固定部側を固定しつつ空間部を介して可撓部側を撓ませ、この可撓部の先端側のジスクとのシール側を所定位置に保持して高いシール面圧を安定して発揮し、優れたシール性を長期に渡って維持する。
【0038】
請求項6に係る発明によると、シートリングの装入空間にシートリテーナの幅狭の突起部を装入し、突起部先端で薄肉部の幅狭の側部を高い面圧で押圧して薄肉部を局圧部位とすることで、強く挟圧した薄肉部を境にしてガスケット部と固定部とを機能的に分断し、シートリングの固定側である固定部よりも外側のガスケット部を固定してこのガスケット部が独立したシール機能を発揮する。これにより、基体部側への変形を防止しつつガスケット部により裏漏れ防止することができる。
【0039】
請求項7に係る発明によると、シートリテーナで潰し代の大きい薄肉部の側部を強く押圧して位置決め固定した状態で、この薄肉部の変形分を逃がしつつ、次に潰し代の大きいガスケット部を押圧して密着嵌合することでシール性を高めながら固定できる。次いで、潰し代の最も小さい固定部側に薄肉部の変形部を逃がしながらこの固定部を嵌合固定することにより、変形した余剰部位を可撓部側に移動させることなく、固定部及びガスケット部側で位置決めしてシートリング全体を固定できる。シートリングの装着後には、この嵌め込み構造により固定部の変形部位のガスケット部側への移動を防止し、ガスケット部によるシール状態を確保して裏漏れ防止機能を維持できる。
【0040】
請求項8に係る発明によると、空間部の内周面を
環状突起の外面に接触させることで、
環状突起で固定部の移動を規制してシートリング全体の位置ずれを防止し、この状態で可撓部を撓ませつつシートリングを装着して正圧又は逆圧の何れの流体圧が加わる場合にも対応可能に設けることができる。
【0041】
請求項9に係る発明によると、シートリテーナによる押圧により固定部の変形した余剰部位を空隙部に収容して固定部を密着嵌合により所定位置に固定でき、高精度に位置決め固定して可撓部側の精度を保ち、この可撓部のシール部と弁体とを所定の位置関係に配置して高シール性を発揮しながら弁閉封止できる。また、熱膨張により変形した固定部の余剰部位を隙間により吸収して基体部側への変形を防ぎ、温度変化に対しても安定した封止性を維持することができる。
【0042】
請求項10に係る発明によると、シートリテーナによる押圧に伴う固定部の余剰部位の変形を段部で規制し、この段部を介して固定部をシートリテーナに位置決め状態で密着固定できる。これにより、固定部の位置ずれを防ぎ、かつ熱膨張による余剰部位の移動も規制できるため、装着後の固定部、ガスケット部のそれぞれの変形を防止し、ガスケット部による裏漏れ防止機能、固定部によるシートリング全体の固定機能を維持しながらシートリングのシール性を確保する。
【0043】
請求項11に係る発明によると、シートリテーナによる押圧により変形した余剰部位を隙間で吸収してシール性を維持し、熱膨張による変形を防いで温度変化に対しても安定した封止性を維持する。
【0044】
請求項12に係る発明によると、ボデー段部により薄肉部を係止することにより、この薄肉部の圧縮率を利用してガスケット部の移動を防いで、ボデーとシートリングとの間からの流体の裏漏れを確実に防止できる。
【0045】
請求項13に係る発明によると、全体形状を単純化したシートリングを簡単に装着し、このシートリングのシール接触部により封止することで、高圧流体が流れる場合にも正圧又は逆圧の何れの場合にも弁閉状態で高いシール性を発揮できる。そして、基体部とボデー側との間に設けた隙間により、正圧におけるシートリングの可撓域が増し、セルフシール機能を利用した高いシール性が確保できる。
また、可撓部とシートリテーナとの間に設けた隙間により、弁開状態では可撓部や基体部に弁体やシートリテーナからの押圧力が付加されないことから、長期にわたり安定したシール性が維持できる。しかも、環状突起の外面と空間部の内側内面との接触位置を可撓部の支点部とすることで、この支点部により固定部を位置決めしながら支えて、シートリングのシール接触部側を正圧又は逆圧方向に弾性変形させることができる。これにより、逆圧側に力が加わる際において、固定部が支点部で押さえられた状態で可撓部が弾性変形することで、シール接触部の位置が長期にわたり安定し可撓部の異常な潰れや摩耗、胴部分のへたりを防止しながら、高圧流体を封止するために必要なシール面圧を得ることができる。
【0046】
請求項14に係る発明によると、シートリテーナの環状突起を空間部の内側内面に接触させた状態で空間部に設けていることで環状突起により固定部を規制して全体の位置ずれを防止し、この状態で離間部に可撓部を弾性変形させながら予め撓ませた状態でシートリテーナを装着することで、正圧又は逆圧の何れの流体圧が加わる場合にも可撓部を変形させて高シール性を発揮しながら高圧流体をシールする。
【0048】
請求項15に係る発明によると、弁閉状態において、可撓部にはシートリテーナの当接に伴う反力が生じるため、この反力がシール面圧に加算されてシール面圧を高め、低圧から安定したシール性を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に、本発明におけるバタフライ弁用シートリングと偏心型バタフライ弁の実施形態並びに作用を図面に基づいて説明する。
図1においては、本発明のバタフライ弁用シートリングが装着された偏心型バタフライ弁の一実施形態を示した縦断面図、
図2においては、
図1の偏心型バタフライ弁の弁体(ジスク)の下部付近を示している。本発明におけるバタフライ弁の使用圧力は、2〜5MPaを想定したものである。本実施形態中における常温は約20℃、高温は約200℃、低温は約−30℃を想定したものである。
【0051】
図1の偏心型バタフライ弁(以下、バルブ本体10という)は、ボデー11、ジスク12、シートリテーナ13、及びシートリング(以下、シートリング本体20という)を有し、このうちボデー11、ジスク12、シートリテーナ13は、ステンレスやダクタイル鋳鉄等の金属材料により成形される。
【0052】
ボデー11は筒形に形成され、このボデー11の上下部にはステム21装着用の軸装部22が設けられる。ジスク12は略円板形状に形成され、このジスク12の外周側に弁体シール面12aが設けられ、また、一面側にはボス部23が突設形成され、このボス部23にステム21取付用の穴部24がシール位置から偏心して形成されている。ジスク12は、穴部24にステム21が装入された状態で、ボデー11内の偏心位置にテーパピン26でステム21に一体に固定される。これにより、ジスク12は、ステム21を介して流路25に偏心状態で回動自在に軸支され、このジスク12がボデー11内にシートリテーナ13で固定されたシートリング本体20に密封シール可能に設けられている。なお、
図2において、シートリング本体20の右側が流路25の上流側、左側が流路25の下流側である。上流側は、流体がこの上流側から下流側へ流れる正圧の場合、一次側となる。
【0053】
図2において、シートリング本体20は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂材料により環状に成形される。本実施形態においては、15%のカーボン等の充填材入りPTFEを採用しており、リング状の基体部30、可撓部31、固定部32を有している。図中、破線は基体部30、可撓部31、固定部32の形状上の境界を示している。破線は基体部30、可撓部31、固定部32、ガスケット部46の各部の機能の境界を示すものではなく、例えば、可撓部31が撓む場合にはこの可撓部31だけでなく、基体部30の一部も可撓部位として可撓することが可能になっている。
【0054】
シートリング本体20の二点鎖線は、シートリング本体20がボデー11とシートリテーナ13との間に装着され、且つ、弁開時におけるシートリング本体20の形状を示している。シートリング本体20の実線、特に可撓部31付近の実線は、本図のように、ジスク12がシートリング本体20に当接することにより、可撓部31の側面が当接部34としてシートリテーナ13に当接した形状を示している。
【0055】
基体部30は断面略矩形状に設けられ、シートリング本体20の基部の役割を成している。基体部30の内径の一側面には所定の肉厚により弾性変形可能な可撓部31、基体部30の外径の一側面にはボデー11とシートリテーナ13との間に固定される固定部32がそれぞれ一体に延設される。基体部30の内周面33は、可撓部31の後述するシール接触部35から続けて緩やかなテーパ面に設けられる。このテーパ面33は直線状や曲線状、或は凹みが設けられていてもよく、適宜の形状に設けることにより、ジスク12が当接した際の可撓部31の可撓性を高めることも可能になる。
【0056】
可撓部31は、ジスク12とシールするための部位であり、この可撓部31の外周面36と固定部32の内周面37との間には凹状の空間部40が設けられ、この空間部40により可撓部31がジスク12からの面圧や流体圧を利用することにより、正圧(上流側から下流側への流体圧)又は逆圧(下流側から上流側への流体圧)の何れの方向にも撓むことが可能となる。
【0057】
可撓部31の内径位置にはジスク12とシールされるシール接触部35が突設形成され、このシール接触部35は、空間部40の奥側位置よりシートリテーナ13側となる可撓部31の内周面に位置するように、断面C面形状或は断面R面形状により所定のシール幅で環状に設けられ、このシール幅によりジスク12と面接触しながらシール可能となる。
図2、
図3において、可撓部31のシートリテーナ13側には、可撓部31の側面を径方向に連通する溝部41が複数箇所において径方向に設けられている。
【0058】
空間部40は、断面略円弧状に形成され、幅Wと深さLとによりシートリング本体20と同心上に溝状に形成される。上記の可撓部31を形成する場合、これら幅Wと深さL、及びシール接触部35から空間部40までの径方向の可撓部31の厚さT、基体部30の厚みTsをそれぞれ適宜の寸法に設定すればよく、これにより、ジスク12からの押圧による可撓部31の可撓性を向上して過剰な変形を防止し、耐久性を向上することが可能になる。この場合、厚さTと深さLとが大きくなるように可撓部31を形成することが望ましく、このときには可撓部31が肉厚になってジスク12との接触部付近の内径の広がりが抑えられ、シール時の耐久性が向上する。
【0059】
固定部32は、シートリング本体20をボデー11とシートリテーナ13との間に装着するために空間部40よりもシートリング本体20の外径側全体に設けられ、固定部32の装着後にはその内径側位置が支点部Qにより位置決めされながらシートリテーナ13で支えられ、この支点部Qを介して可撓部31が可撓するようになる。固定部32は、空間部40よりも外径側であって、この固定部32側のみをボデー11とシートリテーナ13とにより保持して固定できる構造であればその形状にはこだわらない。支点部Qは、固定部32を位置決めして支える役割を発揮するために設けられた面状部位であり、この支点部Qをてこの中心として可撓部31が可撓するわけではない。
【0060】
固定部32と基体部30の外方側とによりハッチングに示した固定基部45が構成され、この固定基部45がボデー11とシートリテーナ13との間に固定部32を介して挟まれて固定され、この固定基部45に対して可撓部31が撓むように変形可能となる。このようにして、流体圧による可撓部31のシートリング本体20全体の位置ずれが防がれている。
【0061】
ガスケット部46は、固定部32の外周側の基体部30の外周面側の環状周囲に位置するように、薄肉部47を介して一体に連結するように形成され、このガスケット部46によりボデー11とシートリテーナ13との間の漏れが防止される。シートリング本体20は、固定部32に加えてガスケット部46を介してボデー11とシートリテーナ13との間に装着される固定構造となる。薄肉部47は、熱膨張による余剰部位の流出を抑制可能に、例えば、バルブの呼び径100Aの場合、シートリング本体20の材質にもよるが、0.8〜1.5mm程度の厚さの薄肉に設けられる。
【0062】
シートリング本体20において、基体部30の外周面とガスケット部46の内周面との間には、幅狭の装入空間48が設けられ、また、ガスケット46部の側面部と、固定部32の側面と、薄肉部47の側部とには、それぞれシートリテーナ13を装着したときにこのシートリテーナ13で押圧されて変形する潰し代61、62、63が設けられている。
【0063】
図2に示すように、シートリング本体20の外径側には、固定部32と基体部30の外方側、ガスケット部46によりハッチングに示した固定基部45が構成され、この固定基部45がボデー11とシートリテーナ13との間に固定部32を介して挟まれて固定され、この固定基部45に対して可撓部31が撓むように変形可能となる。
【0064】
シートリテーナ13は略環状に設けられ、
図1においてボデー11側の内径側が切欠き形成され、この切欠き部位にシートリング本体20の固定部32が装着可能に設けられる。凹状部位のシートリング本体20の空間部40との対向位置には、この空間部40の深さよりも短い長さの
環状突起50が設けられる。
【0065】
環状突起50よりも外径側には凹状溝51が形成され、このシートリング本体20の凹状溝51は、シートリング本体20の固定部32の流路方向における端面側からの長さよりも短く形成され、かつ、固定部32よりも径方向において長い幅に形成される。
【0066】
これにより、シートリング本体20の固定部32の外面とシートリテーナ13の内面との間には空隙部70が設けられる。この空隙部70の容量は、シートリング本体20の固定部32が、つぶし代62の体積分、シートリテーナ13の凹状溝51に押されて外径方向に張り出す体積よりも小さく設定される。そして、この固定部32の張り出しは、後述する段部75、76により、ボデー11側に広がらないように設定される。
以上の構成により、シートリテーナ13により押圧されたシートリング本体20の固定部32は、シートリテーナ13の凹状溝51内に充填され、固定される。
【0067】
凹状溝51の外径側には幅狭の突起部52が形成され、この突起部52は、薄肉部47の側部の流路方向における端面側からの長さよりも長く形成され、かつ、薄肉部47よりも径方向において長い幅に形成される。突起部52は幅狭の装入空間48に装入され、この突起部52の先端で薄肉部47の幅狭の側部を高い面圧で押圧して薄肉部47を局圧部位とするように設けられる。
【0068】
突起部52の外径側には装着凹溝53が形成され、この装着凹溝53は、ガスケット部46の先端側の流路方向における端面側からの長さよりも長く形成され、かつ、先端部よりも径方向において長い幅に形成される。
【0069】
これにより、シートリング本体20のガスケット部46の外面とシートリテーナ13の内面との間には空隙部80が設けられる。また、ガスケット部46の内面とシートリテーナ13の突起部52の外面との間には空隙部71が設けられる。これら空隙部80、71の容量は、シートリング本体20の薄肉部47が、つぶし代63の体積分、シートリテーナ13の突起部52に押されて外径方向に張り出す体積や、シートリング本体20のガスケット部46が、つぶし代61の体積分、シートリテーナ13の装着凹溝53から押されて内外径方向に張り出す体積よりも小さく設定されている。
【0070】
以上の構成により、シートリテーナ13により押圧されたシートリング本体20のガスケット部46は、シートリテーナ13の装着凹溝53に充填される。そして、この充填される割合は、常温→低温→常温のように低温にさらされる熱サイクルを受ける場合でも、シートリング本体20の熱収縮によって、ボデー11やシートリテーナ13との間のシール性が低下しない程度の充填割合に設定されている。
【0071】
これらのようにガスケット部46の側面部にはシートリテーナ13の押圧部となる装着凹溝53で押圧される潰し代61が設けられ、かつ固定部32の側面部にはシートリテーナ13の押圧面部となる凹状溝51で押圧される潰し代62が設けられると共に、固定部32の側面部、ガスケット部46の側面部、薄肉部47の側部に設けられる潰し代63の順でこれらの潰し代を大きくするようにしている。
【0072】
前述のシートリング本体20は、固定部32の内周面がシートリテーナ13に突設された前記
環状突起50の外面に接触された状態で装着される。これにより、シートリテーナ13で固定基部45を径方向に規制してその位置ずれを防止しながらシートリング本体20が固定される。
【0073】
固定部32の外面と装入空間48との繋ぎ位置には段部75が形成され、この段部75がシートリテーナ13に形成された段部76に密着状態で係合するように、シートリング本体20が変形して固定可能になっている。
【0074】
装入空間48の内面と突起部52の外面との間には隙間81が設けられている。隙間81により、シートリング本体20の固定部32や固定基部45の熱膨張による余剰部位を吸収し、シール部35に影響を与えないようになっている。
図2では、隙間81により、熱膨張による余剰部位を吸収した状態を示している。
【0075】
図1において、シートリング本体20をバルブ本体10に装着する場合には、このシートリング本体20をボデー11とシートリテーナ13との間に挟んだ状態で、固着ボルト54でシートリテーナ13をボデー11に固着し、基体部30の外方と固定部32とをシートリテーナ13で固定する。
【0076】
この固着ボルト54によるシートリテーナ13のボデー11への固着は、シートリテーナ13を上記の各つぶし代61、62、63がなくなるまでシートリング本体20に押圧した状態でボデー11に固着する、いわゆる完全な固着ではなく、例えば、固定部32のつぶし代62は、つぶさずに保持する程度の仮固着である。
そして、本発明にかかるバタフライ弁を、配管フランジ(図示せず)に挟持し、配管ボルト(図示せず)を締め付けることにより、シートリテーナ13を各つぶし代61、62、63がなくなるまで完全にボデー11に固着するようにしている。このような仮固着により、シートリング本体20の初期的な弾性力を配管直前まで保持することができ、配管後は、長期にわたって各シール機能を発揮することができる。
【0077】
各つぶし代61、62、63については、ガスケット部46の薄肉部47の側部の潰し代63を最も大きく設定しており、幅狭の突起部52を幅狭の装入空間48に装入するときには、突起部52の先端により薄肉部47の側部が高い面圧で押圧された状態で、この薄肉部47が局圧部位となってこの薄肉部47を中心に変形し、固定部32側とガスケット部46側とが分離した状態になる。また、ガスケット部46先端側の潰し代61を薄肉部47の側部の潰し代63の次に大きく設定しており、このガスケット部46が変形し、ガスケット部46全体が装着凹溝53に密着嵌合する。薄肉部47を先に潰すことで、ガスケット部46の変形部分が固定部32側に流出することを防止する。
【0078】
このようにシートリング本体20の基端側であるガスケット部46を、潰し代61、62、63を利用して、特にPTFE等の硬質の樹脂製シートにおいて高温から常温域に有効であるといわれる、いわゆる逃げ場のない嵌め込み構造で装着することにより、シートリング本体20を大きく潰しながら位置決め固定して装着誤差の発生を防いでいる。しかも、固定部32から独立して設けたガスケット部46の密着嵌合により、優れた裏漏れ防止機能を発揮する。
【0079】
続いて、潰し代61よりも小さい潰し代62の固定部32側が、凹状溝51に押圧されて密着嵌合する。このとき、薄肉部47の側部の潰し代63がより大きいため、固定部32側の余剰部位がガスケット部46側に変形することがない。また、この余剰部位は固定部32の外面と装入空間48の繋ぎ位置との形成された段部75が段部76に係合することにより変形が規制され、また、熱膨張による固定部32の移動が生じても、隙間81により吸収される。なお、固定部32の潰し代62を小さく抑えていることにより、熱サイクルによる余剰部位の発生を低減している。
【0080】
上記のように逃げ場のない嵌め込み構造のガスケット部46を形成するため、シートリテーナ13とボデー11とのシートリング本体20の組立て時の挟み込みにおいて、薄肉部47を最初に潰し始めることで余剰分の流出を抑制した。
また、組立て時の初期段階で薄肉部47の圧縮率をガスケット部46よりも高くすることで薄肉部47からのガスケット部46の流出を抑制し、かつ幅狭の薄肉部47を高い面圧で突起部52先端で押圧することで、ガスケット部46のみでなく薄肉部47のシール機能を持たせて全体的にシール性を高めている。本実施形態の場合、シートリング本体20の各部位は、ボデー11とシートリテーナ13との間に挟まれる前の厚みに対して、薄肉部47を約20%、ガスケット部46を約10%、固定部32を約3%の割合で押圧変形した。
【0081】
このようにして、固定基部45のシートリテーナ13側を逃げ場のない嵌め込み構造である凹状溝51、装着凹溝53に密着させるように充填させながら固定し、かつ、ボデー11側を密接シール状態にしていることで、固定基部45全体の位置ずれを防止しながら取付け可能となる。このため、シートリング本体20の取付け側である固定基部45により強固に固定して、この固定基部45の熱サイクルによる裏漏れを防ぎつつ、シール側である可撓部31側への変形を防いでいる。これにより、可撓部31は、熱膨張による影響を受けずに可撓し、シール部35を所定の位置に高精度で配置できることで、高いシール面圧を発揮させながら弁閉シール可能になる。
シートリング本体20の装着時に、薄肉部47、ガスケット部46、固定部32の順序で押圧して潰すようにすれば、潰し代61、62、63を上記の寸法以外に設定してもよい。
【0082】
シートリテーナ本体20の装着後には、
図2に示すように、基体部30とボデー11との間にクリアランスS1、可撓部31とシートリテーナ13との間にクリアランスS2がそれぞれ設けられ、これらのクリアランスS1、S2によって可撓部31が流路25の一次側、二次側に変形可能になっている。
【0083】
その際、
環状突起50が空間部40の奥側位置である奥部42側の手前まで突出され、この
環状突起50の外面55が空間部40の内周面56に接触され、かつ
環状突起50の内面57と空間部40の外側内面58との間に離間部60が設けられる。
このときの
環状突起50の外面55と空間部40の内周面56とを接触させた位置が、前述した可撓部31が可撓する際に固定部を支える支点部Qとなる。
【0084】
このように、空間部40の内周面56を
環状突起50の外面55に接触させた状態で、ボデー11とシートリテーナ13との間に固定基部45を嵌め込むように装着していることで、シートリング本体20の抜け出しを防ぎながら固定している。そのため、固定部32への装着方向の面圧力が低下した場合にも流体による加圧やジスク12の押圧による影響を受け難く、固定部32の位置ずれが防がれることで、シートリング本体20の全体の耐久性にも寄与する。
【0085】
さらに、ガスケット部46付近を挟み込むときの面圧力がクリープなどにより低下したとしても、固定部32が凹状溝51に嵌め込まれていることでクリープに起因する保持力低下が補われる。その結果、過度の流体圧やジスク12側からの押圧によりシートリング本体20が移動したり倒れようとする場合にも、固定部32の強固な固定状態が保持される。
【0086】
熱サイクルが発生して高温状態になると、金属、樹脂の線膨張係数の違いによりシートリング本体20の固定基部45が溝部位に収まりきれなくなろうとするが、この余剰部位は、逃げ場のない嵌め込み構造によってガスケット部46の外面とシートリテーナ13の内面との間にはみ出すように変形する。このとき、基体部30とガスケット部46とを連結する薄肉部47により余剰部位の溝部位からの流出を抑制し、常温に戻った際にも安定したシール性を維持できる。
【0087】
また、高温時におけるシートリング本体20の余剰部位は、装入空間48の内面と突起部52の外面との間に設けた隙間81に逃げるように変形し、これによりシートリング本体20内径側への余剰部位の移動を抑制している。そのため、高温時のシートリング本体20の内径が小さくなることを防止し、ジスク12との押圧代の増加を抑制してシール性を維持できる。
一方、シートリング本体20が低温下にさらされた場合にも、ガスケット部46側からの裏漏れを防止し、シートリング内径側の寸法変化を抑えてシール性を確保できる。
【0088】
本実施形態におけるシートリング本体20の固定部32の外径端部側には、鉤状のガスケット部46が適宜の大きさにより一体に延設され、このガスケット部46によりボデー11とシートリテーナ13との間の漏れが防止される。
【0089】
なお、上述した破線は、基体部30、可撓部31、固定部32の各部の機能を限定するものではない。すなわち、可撓部31が撓む場合には、この可撓部31だけでなく基体部30の一部も可撓部位としての機能を有する。また、シートリング本体20は、固定部32(固定基部45)のみで固定されるものでなく、ガスケット部46もシートリング本体20を固定するための機能を有している。
【0090】
一方、シートリテーナ13は略環状に設けられ、ボデー11側の内径側が切欠き形成されてこの切欠き部位にシートリング本体20の固定部32が装着される。この凹状部位のシートリング本体20の空間部40との対向位置には、この空間部40の深さよりも短い長さの環状突起50が設けられる。
【0091】
環状突起50よりも外径側には凹状溝51が形成され、このシートリテーナ13の凹状溝51は、シートリング本体20の固定部32の流路方向における端面側からの長さよりも短く形成され、かつ、固定部32よりも径方向において広い幅に形成される。
【0092】
凹状溝51の外径側には突状部52が形成され、この突状部52は、ガスケット部46が固定基部45と接続する部位である薄肉部位の側部の流路方向における端面側からの長さよりも長く形成され、かつ、薄肉部位よりも径方向において狭い幅に形成される。これにより、突状部52は薄肉部位を流路方向に押圧可能になっている。
【0093】
突状部52の外径側には装着凹溝53が形成され、この装着凹溝53は、ガスケット部46の先端側の流路方向における端面側からの長さよりも長く形成され、かつ、先端部よりも径方向において広い幅に形成される。
【0094】
前述のシートリング本体20を装着する場合には、このシートリング本体20をボデー11とシートリテーナ13との間に挟んだ状態で、固着ボルト54でシートリテーナ13をボデー11に固着し、基体部30の外方と固定部32とをシートリテーナ13で固定する。
【0095】
その際、ガスケット部46の薄肉部位の側部の潰し代を最も大きく設定しており、突状部52を装入するときには、突状部52の先端により薄肉部位の側部が高い面圧で、この薄肉部位が局圧部位となってこの薄肉部位を中心に変形し、固定部32側とガスケット部46側とが分離した状態になる。また、ガスケット部46先端側の図示しない潰し代を薄肉部部位の側部の潰し代の次に大きく設定しており、このガスケット部46が変形し、ガスケット部46全体が装着凹溝53に密着嵌合する。薄肉部位を先に潰すことで、ガスケット部46の変形部分が固定部32側に流出することを防止する。
【0096】
このようにシートリング本体20の基端側であるガスケット部46を、潰し代を利用して、特にPTFE等の硬質の樹脂製シートにおいて高温から常温域に有効であるといわれる、いわゆる逃げ場のない嵌め込み構造で装着することにより、シートリング本体20を大きく潰しながら位置決め固定して装着誤差の発生を防いでいる。しかも、固定部32から独立して設けたガスケット部46の密着嵌合により、優れた裏漏れ防止機能を発揮する。
【0097】
続いて、より小さい潰し代の固定部32側が、凹状溝51に押圧されて密着嵌合する。このとき、薄肉部位の側部の潰し代がより大きいため、固定部32側の余剰部位がガスケット部46側に変形することがない。なお、固定部32の潰し代を小さく抑え、また、余剰部位の逃がしを設けていることにより、熱サイクルによる余剰部位の発生を低減している。
【0098】
このようにしてシートリング本体20の装着時に、ガスケット部46をいわゆる逃げ場のない嵌め込み構造で固定しつつ、固定基部45側全体をボデー11とシートリテーナ13との間に嵌め込むように装着し、この固定基部45の位置決めによりシール接触部35を所定の位置に高精度に配置した状態で、固定基部45に対して可撓部31側を可撓できることで、高シール性を発揮できる。
【0099】
シートリング本体20の装着後には、
図2に示すように、弁開状態において基体部30とボデー11との間に隙間S1、二点鎖線で示す可撓部31と実線のシートリテーナ13との間に隙間S2がそれぞれ設けられ、これらの隙間S1、S2によってシートリング本体20装着後の可撓部31が、ボデー11側、又はシートリテーナ13側に変形可能になっている。
【0100】
環状突起50は、空間部40の奥側位置である奥部42側の手前まで突出され、この環状突起50の外面55が空間部40の内側内面56に接触され、かつ環状突起50の内面57と空間部40の外側内面58との間に離間部60が設けられる。
このときの環状突起50の外面55と空間部40の内側内面56とを接触させた位置が、前述した可撓部31が可撓する際に固定部を支える支点部Qとなる。従って、環状突起50のシートリング側端面は、シートリング本体20の空間部40の奥部42と離れているので、可撓部31が傾倒する際に環状突起50が障害となることはない。
【0101】
シートリング本体20の固定部32は、凹状溝51に圧縮変形しながら嵌入され、固定部32とガスケット部46との間に突状部52が嵌入され、装着凹溝53にガスケット部46が圧縮変形しながら嵌入されることで、シートリング本体20がシートリテーナ13とボデー11との間に位置決め固定状態で可撓部31側が変形可能になる。
【0102】
このように環状突起50の外面55を空間部40の内側内面56に接触させた状態で、シートリテーナ13の環状突起50よりも外径側とボデー11によって構成される密封空間部位に固定基部45を嵌め込むように装着することで、シートリング本体20が強固に固定される。そのため、固定部32への装着方向の面圧力が低下した場合にも流体による加圧やジスク12による押圧による影響を受け難く、固定部32の位置ずれが防がれることで、シートリング本体20の全体の耐久性にも寄与する。
【0103】
さらに、ガスケット部46付近を挟み込むときの面圧力がクリープなどにより低下したとしても、固定部32が凹状溝51に嵌め込まれていることでクリープに起因する保持力低下が補われる。その結果、過度の流体圧やジスク12側からの押圧によりシートリング本体20が移動したり倒れようとする場合にも、固定部32の強固な固定状態が保持される。
【0104】
ガスケット部46は、逃げ場のない嵌め込み構造でシートリテーナ13に固定されているため、固定部32から独立したシール機能が発揮される。しかも、ガスケット部46が鉤状に形成されていることで、熱膨張による余剰分の固定部32側への移動が抑えられ、ボデー12とシートリテーナ13との間の裏漏れも防がれる。
【0105】
固定部32とシートリテーナ13との間には、図示しない間隙が設けられ、この間隙により熱膨張によるシートリング本体20の余剰部位を吸収可能になっている。昇温によって固定部32よりも外径側が熱膨張した場合、この膨張分が間隙に逃げることで吸収される。これにより、シートリング本体20の膨張による潰し代が急激に増加することがなく温度変化に対して安定した封止性が維持可能になっている。
【0106】
図9においては、偏心型バタフライ弁の他の実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
バタフライ弁を逆圧で使用する際には、ジスク12の移動に伴って、シートリング本体20のシート部(基体部30並びに可撓部31付近)に矢印に示す引き抜き方向への力が加わる。これにより、シートリング本体20は、シートリテーナ13側に傾倒するので、ボデー11との間に流体の漏れを生ずる、いわゆる「裏漏れ」を生ずるおそれがある。この現象は、バルブの呼び径250Aや300Aなどの比較的大きな口径で生じやすい。
【0107】
この裏漏れを防ぐため、この実施形態では、
図9に示すように薄肉部47を局圧部位としてガスケット部46の移動を防ぎつつ、薄肉部47が当接するボデー11側面にボデー段部82を設けたものである。
このボデー段部82により、薄肉部47が係止されるので、薄肉部47の局圧(圧縮率)を利用してガスケット部46の移動を防ぐことができる。
【0108】
この場合、ボデー段部82の配置に伴い、薄肉部47全体をボデー11側にずらすようにすれば、薄肉部47の局圧が変わることがない。
また、この実施形態では、ボデー段部82をボデー11側面に凹状に設けているが、ボデー11側面から凸状に設けるようにしてもよい。
なお、ボデー段部82に係止された薄肉部47は、係止領域においてボデー11とのシール面圧が高まるので、「裏漏れ」を効果的に防ぐことができる。
【0109】
ここで、本発明におけるバタフライ弁用シートリングのメカニズムを、
図5に示す本発明のシートリングの模式図を用いて説明する。流体圧力0MPa、すなわち流体圧力が加わっていない状態において、シール接触部35へのシール面圧が
図2に示す弁体シール面12aの法線M方向に生じ、可撓部31が、
図2に示す支点部Qにより固定部32が支えられた状態でシートリテーナ13側にやや倒れるように変形した状態を維持する。
【0110】
このときのシール接触部35の一部にかかるシール面圧Fを、その力点を通り流路25方向に垂直な分力Fy、流路25方向に平行な分力Fxに分解すると、シール接触部35を空間部40の奥側位置よりシートリテーナ13側における可撓部31の内周面に位置させていることで、
図5の模式図に示すように、分力Fyが空間部40を貫通する(空間部40に差し掛かる)方向に働くことになる。
【0111】
そのため、ジスク12から可撓部31に加わろうとする力を空間部40側に逃がすことができ、可撓部31を撓みやすくしてシートリング本体20への負荷を軽減できる。これにより、所定のシール面圧で封止性を高めながら、可撓部31側にかかる負荷を減らして耐久性を向上でき、摩耗を防止することで高いシール性を確保して低トルク性による操作性を発揮可能になる。
よって、流体圧力が付加されていない場合でも、本発明に係るシートリングによれば、所定の低シール面圧を発生させ流体圧が付加された場合には直ちにシール可能になる。なお、本実施形態ではシール接触部35の一点におけるシール面圧Fを示しているが、このシール面圧Fは、シール接触部35によるシール幅全体にかかっている。
【0112】
続いて、上記の偏心型バタフライ弁の実施形態における動作を、
図4に示す流体圧力とシール面圧との関係を示すグラフを用いて、本発明におけるバタフライ弁用シートリングのメカニズムと共に説明する。なお、
図4においては、説明の便宜のため、中央の0MPaを中心として、正圧の場合には図の左側に行くほど流体圧が高くなることを示し、逆圧の場合には図の右側に行くほど流体圧が高くなることを示している。
【0113】
(1)先ず、流体圧力が付加されていない場合、すなわち0MPaの場合には、シートリテーナ13の装着後にジスク12を全閉状態に回転すると、
図2の実線に示すように、ジスク12の弁体シール面12aが可撓部31のシール接触部35を押圧し、可撓部31が、支点部Qにより固定部が支えられた状態でシートリテーナ13側に倒れるようにやや変形する。より詳細には、ジスク12は、シートリング本体20と接触することにより、ボデー11のステム装着用の軸装部22とステム21とのクリアランス分、すなわち軸廻りのクリアランス分、ボデー11側(
図2の左側)に移動した状態で、弁体シール面12aが可撓部31のシール接触部35を押圧する。
【0114】
ジスク12が全閉状態となる際は、可撓部31は、隙間S1、S2と離間部60との間を変形し、シートリテーナ13に当接した状態になる。このような可撓部31の変形によりシートリング本体20の基体部30に反りが生じ、この反りによりジスク12に所定のシール面圧で可撓部31が密接することで、低圧時における封止性が発揮される。また、可撓部31がシートリテーナ13に当接することにより、その反力がシール面圧を増加させ、封止性を高める。
なお、
図4の0MPaにおけるシール面圧は、上記の反りにより生じるシール面圧aと、可撓部31がシートリテーナ13に当接することによる反力により生じるシール面圧bとの合算値を示している。
【0115】
(2)次に、弁閉時のジスク12に対して、上流側から下流側、すなわち、シートリテーナ13側からボデー11方向に正圧が加わる状態を、低圧の場合と高圧の場合に分けて説明する。まず、
図4に示す流体圧力が0MPaからK1MPaまでの範囲、すなわち低圧の場合では、流体圧力により下流側(左側)に移動する。これにより、シートリング本体20は、
図6の二点鎖線に示すように、その可撓部31がシートリテーナ13に当接した状態を維持しつつも、下流側に若干移動する。従って、シートリング本体20の基体部30の反りと、可撓部31のシートリテーナ13への当接による反力とが、それぞれ若干減少するので、ジスク12とシートリング本体20とのシール面圧がやや低下する。
ここで、K1MPaとは、任意の圧力値(単位:MPa)である。
【0116】
(3)更に、
図4に示す流体圧力が、K1MPa〜2MPaまでの範囲、すなわち高圧の場合では、シートリング本体20は、
図6の実線に示すように、支点部Qが突設部50に支えられた状態で、可撓部31がシートリテーナ13から離れ、下流側のジスク12側に倒れて、シール接触部35が弁体シール部12aに強く圧接する。
このとき、流体は、溝部41や隙間S2を介して空間部40に到達しているので、シートリング本体20は、基体部30を含む可撓部31側が、更に下流側に傾倒するように弾性変形する。このようないわゆるセルフシール機能が発揮されることにより、
図4のΔPで示すように、シール面圧が効果的に増加する。従って、弁体シール面12aが下流側に移動することに加え、基体部30の反りやシートリテーナ13への当接による反力を利用したシール面圧の低下を、流体圧を利用したセルフシール機能で補うことにより、シール面圧を向上させて優れた封止性を確保できる。
なお、
図6に示すように、基体部30とボデー11側との間に隙間S1は確保されており、シートリング本体20の下流側への弾性変形が阻害されることはない。
【0117】
より具体的には、可撓部31がジスク12と当接した際には、
図2に示すシートリング本体20の流路方向の垂直断面において、支点部Qを延長した線分Vと、ボデー11との交点Nが正圧の流体圧を受けた場合の可撓部31の「てこ」の中心となる支点になり、可撓部31は、この交点Nを中心に変形する。
【0118】
(4)次に、弁閉時のジスク12に対して、下流側から上流側、すなわち、ボデー11側からシートリテーナ13方向に逆圧が加わる状態を、低圧の場合と高圧の場合に分けて説明する。まず、
図4における流体圧力が0MPa〜K2MPaまでの範囲、すなわち低圧の場合では、ジスク12は流体圧力により軸廻りのクリアランス分、上流側に移動する。これにより、シートリング本体20、
図7の実線に示すように、可撓部31が傾倒してシートリテーナ13にやや強く当接する。従って、可撓部31がシートリテーナ13に当接することに伴う反力により生じるシール面圧bが増加することにより、シール面圧は
図4に示すように大きく上昇する。
このとき、上流側の流体は、溝部41を介して空間部40から抜けるので、可撓部31がシートリテーナ13側に変形しやすくなっている。
ここで、K2MPaとは、任意の圧力値(単位:MPa)である。
【0119】
(5)更に、
図4に示す流体圧力がK2MPa〜2MPaまでの範囲、すなわち高圧の場合では、シートリング本体20は、
図7に実線で示す状態から更に強くシートリテーナ13に当接する状態となる。なお、この高圧の場合には、既に軸廻りのクリアランスが無くなった状態であることから、ジスク12が上流側に移動する量は、ステム21が上流側に撓むことに起因する量に留まることから、シール面圧上昇は、低圧の場合よりも小さいものとなる。
【0120】
以上のように、正圧の高圧時を除いて可撓部31がシートリテーナ13に当接することにより、シートリング本体20の基体部30の内部応力の増加を防止する。これにより、シートリング本体20を構成する材料(PTFE)自体のばね性(弾性)を維持でき、シール性が向上する。この動作により、逆圧時には、全ての圧力領域においてシートリング本体20自体の剛性に依存することなく、復元性を保持しながら面圧力を高め、その結果、長期に渡って耐久性を維持できる。
【0121】
しかも、環状突起50の外面55を空間部40の内側内面56に接触させていることにより、バルブ本体10に熱変化が生じた場合にも、空間部40よりも外径側の固定部32側を金属製シートリテーナ13の径方向の寸法変化とほぼ同じに抑えることができる。
一方、可撓部31側は、固定部32の内径側位置が支点部Qに支えられた状態で可撓することで熱変化による膨張量を一定に抑え、流路25側への露出をわずかな状態にしつつ、樹脂特有の線膨張係数で寸法変化させて潰し代の変形量も少なくなるため、可撓部31の消耗を抑えて安定したシール性を発揮する。
【0122】
シール接触部35を空間部40の奥側位置よりもシートリテーナ13側に設けていることで、
図8に示すように、シール接触部35から交点Nまでのアーム長さJが、シール接触部35がより二次側に位置するときの交点Nまでのアーム長さJ´よりも長くなる。これにより、シール接触部(力点)35に力が加わったときに小さい力でシートリング本体20を倒し、同じシール面圧でより高いシール性を発揮可能となる。可撓部31が反りやすくなることでシール面圧を低減でき、耐久性も向上する。
【0123】
前述した正圧又は逆圧の何れの場合であっても、
図4の実線に示したシートリング本体20が発揮するシール面圧Fは、破線に示した封止に必要な最低限の最低必要面圧P0以上となる。これを確実に満足するためには、シートリング厚Tsと、空間部40の内側内面56間の内径Dとの設定により回転半径Zを適切な長さに設けてシール面圧を調整すればよく、これにより流路25を確実に封止可能にできる。
【0124】
すなわち、シール接触部35から可撓部31に力が加わると、この可撓部31が回転半径Zにより所定の弾性力で変形するため、その変形量を規制することで、
図4の破線に示した弁体シール面12aとシール接触部35とのシールに必要な最低必要面圧P0以上を確保しつつ正圧(上流側から下流側への流れ)及び逆圧(下流側から上流側への流れ)の双方を封止できる。この場合、シートリング本体20の材料やバルブ本体10の温度変化により物性値が変化するため、これらに応じて適宜最適な寸法に設けることが望ましい。
本実施形態の偏心型バタフライ弁では、少なくとも正圧及び逆圧時の流体圧力2MPaまでに対応して所定のシール面圧を発揮できるように設けている。
【0125】
また、基体部30の一面側に可撓部31、固定部を延設し、これらの間に空間部40を設けてシートリング本体20を構成していることにより、全体形状が単純化し、ボデー11側にシートリング本体20装着用の複雑な加工を施す必要もないため、バルブ本体10全体の簡略化も可能になり、組立ても容易になる。
【0126】
図10においては、偏心型バタフライ弁のさらに他の実施形態を示している。
バルブの呼び径が小さい場合には、流路を確保する観点から、可撓部の径方向の厚さが十分に確保できないものもある。この場合、可撓部をシートリテーナで支えるだけでは、外径側に過剰に変形してクリープを生じるおそれがある。
この実施形態では、呼び径の小さいバルブにおいて、逆圧の流体圧が付加された際には、
図10の実線に示すようにシートリング本体70の可撓部71の外周面72がシートリテーナ73の環状突起74内面に接触することで、可撓部71の外周側への変形を抑制することができる。これにより、薄肉形状でも長期にわたり安定したシール性を確保できる。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。