【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、上記およびその他の目的は、
オーディオ信号を発生するための信号プロセッサと、
信号プロセッサの出力に接続され、処理された補償済みオーディオ信号を音声信号に変化するレシーバと、
を収容する聴覚補助装置ハウジングによって達成され、このハウジングは先端パーツと相互接続される本体パーツを有し、
ハウジングには、信号プロセッサを搭載したプリント回路基板がさらに収容され、
プリント回路基板は、ハウジング内で本体バーツの長手方向にわたる範囲を横切って延びる壁を形成することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、プリント回路基板は壁を形成し、この壁は、聴覚補助装置ハウジングの横断面全体にわたって延び、壁の片側の内部空間を、壁の反対側にある内部空間から密閉し、好ましくは、先端パーツの内部空間を本体パーツの内部空間の少なくとも一部、好ましくは本体パーツの内部空間全体から密閉する。しかしながら、プリント回路基板の面積は、ハウジングの横断面積より小さくてもよく、たとえばハウジングの横断面積の50%より大きく、好ましくは60%より大きく、より好ましくは70%より大きく、さらに好ましくは80%より大きく、それよりさらに好ましくは90%より大きく、最も好ましくは95%より大きい。
【0011】
以下の説明において、信号プロセッサを搭載したプリント回路基板を「信号プロセッサモジュール」と呼ぶ。
【0012】
聴覚補助装置ハウジングの中の壁として信号プロセッサモジュールを収容することにより、ハウジング内で信号プロセッサモジュールのために必要なスペースが最小限で済み、これによってハウジングが小型化する。壁として、信号プロセッサモジュールは、ハウジングの長手方向にわたる範囲を横切る方向、好ましくは略垂直な方向に延び、ハウジングを従来のハウジングより短くすることができるため、使用者の外耳道内のより深い位置にハウジングを定置でき、装置が他人から見えにくくなる。
【0013】
信号プロセッサモジュールにより、ハウジング内にハウジングと一体構造の壁を構成する必要もなくなり、その結果、ハウジングに必要な材料が節減され、ハウジングはさらに短縮できる。壁はハウジングを支持する要素にもなるため、ハウジングの材料をさらに節減できる。
【0014】
聴覚補助装置の横方向の壁として信号プロセッサモジュールを用いることによって必要なスペースが最小化されることから、オーブン型装置の提供も容易となる。
【0015】
補聴器用語によれば、ハウジングを外耳道の所期の動作位置に定置したときにハウジングが外耳道を塞がないような聴覚補助装置は、「オープン型」に分類される。「オープン型」という用語が使用されるのは、外耳道壁の一部とハウジングの一部の間に通路ができ、音波がハウジングの背後の鼓膜とハウジングの間からこの通路を通って使用者の周辺へと漏れることがあるからである。以下の説明において、オープン型補聴器のハウジングをオープン型ハウジングと呼ぶ。
【0016】
従来の補聴器を装着している人は、主にハウジングやイヤピースによる外耳道の閉塞によって自分の声の聞こえ方が変わったと感じる。このような使用者は一般的に、自分の声を次のように表現する。「自分の声がエコーする」、「自分の声が響く」、あるいは「自分が樽の中で喋っているように聞こえる」。
【0017】
声道(喉と口)から発せられる音は、これらの空洞と外耳道の外側部分との間の軟骨組織を通って外耳道に伝えられる。
【0018】
外耳道内に何も入っていないと、この、主として低周波数の音のほとんどは単純に外耳道から外に出る。しかしながら、外耳道が塞がっていると、骨によって伝えられるこれらの音は、外耳道から出て行くことができない。その結果、残りの外耳道空間音の音圧レベルが高くなる。このような低周波音の音圧上昇は聞こえるため、それによって自分の声がより大きく、低音が響くように聞こえる。自分の声の聞こえ方の変化は、外耳道閉塞に関して最も多い主訴であるが、これだけではない。外耳道閉塞関連の他の問題としては、低周波数聴力は良好な補聴器の使用者にとって、低周波数帯域の増幅が大きすぎること、音像定位が不良であること、身体的な不快感、外耳の炎症と感染のリスクの増大がある。補聴器の使用者は外耳道閉塞には適応せず、補聴器装着者の27%もの人々が、自分の補聴器に満足しない理由として外耳道閉塞効果を挙げる。このことから、外耳道閉塞効果を軽減する、あるいはさらによいことには、排除することが一層急務となっている。
【0019】
プロセッサを備える信号プロセッサモジュールを聴覚補償装置ハウジングの中の壁として利用することにより、オープン型装置を提供しやすくなる。このようにして、外耳道閉塞効果が軽減し、好ましくは、実質的に排除される。
【0020】
さらに、オープン型ハウジングの場合、外耳道壁に圧力がかからないため、使用者の快適さはさらに改善される。
【0021】
オープン型ハウジングが外耳道の環境に与える影響は、従来のハウジングより小さい。
【0022】
オープン型ハウジングは外耳道の断面積の一部しか占有しないことから、ハウジングの大きさを使用者の外耳道に正確にフィットさせる必要がなく、その結果、各使用者に合わせてハウジングをカスタムメイドする必要がなくなり、それどころか、標準サイズのオープン型ハウジングを提供することが可能になる。
【0023】
さらに、オープン型ハウジングの場合は、自然音が外耳道の中で鼓膜まで通るため、音源の方向感覚が保たれ、使用者の快適さと、たとえば運転時の使用者の安全がより改善される。
【0024】
オープン型の補聴器の場合、自然音が通過することによって補聴器はこれらの自然音を増幅せず、その結果、音質の改善と補聴器の低消費電力化、小型化、低コスト化につながる。
【0025】
壁を形成するプリント回路基板の上のプロセッサの位置は中央位置であり、聴覚補助装置の他の電気構成部品との電気的接続が容易となる。
【0026】
さらに、プロセッサをプリント回路基板に搭載することで、自蔵式の信号プロセッサモジュールが得られ、プロセッサの取扱と試験およびプロセッサの聴覚補助装置への組み付けが行いやすくなる。
【0027】
プリント回路基板上のプロセッサとの電気的相互接続により、プロセッサをプリント回路基板ごと、ポリマ等の保護材料、たとえばエポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性エポキシドポリマ(エポキシ)で封止することが可能となる。これによって、環境や取扱または受ける可能性のある衝撃からプロセッサを保護する材料の中に埋め込まれる。このようにして、信号プロセッサモジュールは堅牢な(robust)自蔵式ユニットとなり、プロセッサの取扱と試験およびプロセッサの聴覚補助装置への組み付けが一層容易になる。
【0028】
さらに、プリント回路基板は、プリント回路基板上にない電気構成部品、たとえば1つまたは複数のマイクロホン、レシーバ、バッテリその他と結合するように機械的に形成された電気コネクタを有していてもよい。すると、聴覚補助装置内の配線が省略され、その結果、聴覚補助装置の組立が簡素化されて、製造コストが低減する。
【0029】
マイクロホンを設けた実施形態では、レシーバとマイクロホンを信号プロセッサモジュールのそれぞれ反対側に設置することが好ましく、それによって信号プロセッサモジュールが音響バリアとして機能して、聴覚補助装置ハウジング内でレシーバからマイクロホンに伝達される音響信号によって引き起こされる内部フィードバックを抑制する。内部フィードバックについてはさらに後述する。
【0030】
さらに、信号プロセッサモジュールがレシーバとの機械的および電気的接触のためのコネクタを有する場合、レシーバは専門販売員によって聴覚補助装置ハウジングの中に据え付けられてもよいため、専門販売員は使用者にさまざまなモデルを提供でき、それに匹敵するような種類の聴覚補助装置を仕入れて保管する必要がない。レシーバを結合用コネクタに相互接続する方法は、従来の方法のいずれでもよく、たとえば、結合用コネクタに取り外し自在に挿入する方法やはんだ付け等がある。
【0031】
聴覚補助装置は、聴覚補助装置の電気構成部品への電源供給のための1つまたは複数のバッテリをさらに備えていてもよい。バッテリは、充電式でも、充電式でなくてもよい。
【0032】
信号プロセッサモジュールは、聴覚補助装置の回路への電源供給用バッテリと接続するためのコネクタパッドをさらに備えていてもよい。
【0033】
聴覚補助装置は、信号プロセッサモジュールとバッテリを相互接続するためのコネクタパッドと相互接続された第一のスプリングをさらに備えていてもよい。
【0034】
第一のスプリングは、聴覚補助装置ハウジングに信号プロセッサモジュールをスナップ方式で機械的に連結できるようにさらに構成されていてもよい。
【0035】
聴覚補助装置は、ハウジングに取り付けられる細長部材の中の信号線と相互接続される第二のスプリングをさらに備えていてもよく、細長部材は、外耳道にハウジングを保持するために、使用者の耳介の中の外耳道の外に定置されるように適合されている。
【0036】
第二のスプリングは、聴覚補助装置ハウジングに信号プロセッサモジュールをスナップ方式で機械的に連結できるようにさらに構成されていてもよい。
【0037】
信号プロセッサモジュールが聴覚補助装置ハウジング内のその動作位置において連結される第一と第二のスプリングの位置は、聴覚補助装置ハウジングの動作位置にあるその信号プロセッサモジュールによって安定化される。
【0038】
信号プロセッサモジュールは、聴覚補助装置のためのプログラミング装置との接続のためのコネクタパッド、たとえばはんだパッド等をさらに備えていてもよい。聴覚補助装置のプログラミング中、たとえば聴覚補助装置の信号処理パラメータの調整中などに、聴覚補助装置のプログラミング装置のプログラミング用コネクタが、聴覚補助装置ハウジングの中、たとえばハウジングのバッテリ構成部品の中に挿入されて、コネクタパッドと電気的に相互接続される。プログラミング用コネクタは、ハウジングの中の第一と第二のスプリングのうちの少なくとも1つまたは複数と機械的に係合して、プログラミング用コネクタがプログラミング中に固定位置に保持されるようになっていてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、一実施形態において、バッテリ構成部品の中にプログラミング用コネクタを保持するために、バッテリドアを閉じてもよい。
【0039】
以上のように、プログラミング装置の相互接続部は、聴覚補助装置内にすでに存在する接続要素をプログラミング装置との相互接続にも利用できるため、電気的にも機械的にも簡素化される。
【0040】
好ましくは、ハウジングは、ハウジングを使用者の外耳道の中に保持するために使用者の耳介の中の外耳道の外に定置されるように構成された細長部材に取り付けられる。
【0041】
聴覚補助装置を適正な位置に保持することは重要である。顎の動きによって、使用中に外耳道の中に留置されている聴覚補助装置ハウジングのパーツに外向きの力が加えられる可能性がある。好ましくは、細長部材がこの力に対抗するのに十分な弾性を有し、これによって外耳道内に留置される聴覚補助装置用のハウジングのパーツを外側に動かないように固定する。
【0042】
細長部材は、使用者の耳介内の、対耳輪と接する耳甲介の周囲に定置され、少なくとも部分的に対耳輪によって覆われて、その位置に保持されるように適合されていてもよい。
【0043】
細長部材は、製造中に、好ましくは対耳輪の曲率より若干大きい曲率のアーチ形に予備成形して、耳介内の所期の位置に細長部材をフィットさせやすくしてもよい。
【0044】
細長部材は、使用者の外耳道にハウジングの本体パーツを保持するのを助けるように弾性を有していてもよく、これによってハウジングの本体パーツは外耳道の所定の位置にしっかりと留まり、使用者が、たとえば微笑む、物を噛む、あくびをするなどのように動いても、耳から外れない。また、このように保持しても、使用者には痛みを与えない。
【0045】
好ましくは、細長部材は、その長手方向にわたる範囲に対して垂直方向に弾性を有し、これにより、ハウジングの本体パーツを使用者の外耳道の中に保持する能力がさらに高まる。ハウジングを使用者の外耳道内の所期の位置に定置している間に、細長部材の横方向への弾性によって、ハウジングを使用者の外耳道に挿入しやすくなる。
【0046】
細長部材はさらに、ハウジングが外耳道内に挿入されると、対耳珠で耳甲介の一部と接するように適合されていてもよく、これによってハウジングに対し、外耳道の上側部分に向かう力が加わり、その結果、ハウジングが、ハウジングが外耳道の上側部分の壁に向かって圧迫される位置に保持される。外耳道の上側部分は顎の運動中も比較的影響を受けないため、外耳道壁の上側部分に接して安定しているハウジングのパーツが、顎が動いている間に受ける外側に移動する力は最小限で済む。
【0047】
好ましくは、細長部材は、ハウジングが使用者の外耳道内に設置されたときに、対耳輪と接触し、少なくとも下側対輪脚まで延びるように適合されている。
【0048】
より好ましくは、細長部材は、ハウジングの本体パーツが使用者の外耳道内に設置されたときに、使用者の耳の三角窩の下の耳甲介艇に第二の端が位置付けられるように適合されている。
【0049】
細長部材は、マイクロホンを収容するように適合されていてもよい。たとえば、細長部材は、その第二の端においてマイクロホンを収容するように適合されていてもよい。細長部材は第二の端において、マイクロホンを収容するために、第二の端から第一の端に向かって延びる、細長部材の残りの部分より断面積が大きくなっていてもよい。
【0050】
補聴器のマイクロホンの位置を細長部材の第二の端に置くことによって、マイクロホンと補聴器のレシーバの間に距離が長くなり、その結果、フィードバックが最小限になる。
【0051】
フィードバックは、補聴器の使用者が得られる最大利得を限定する。フィードバックとは、補聴器の入力に戻る増幅された信号を指す。フィードバック経路は、音がレシーバから聴覚補助装置の外の経路を通ってマイクロホンへと伝搬する音響フィードバック経路(acoustic feedback path)であってもよい。この現象は、音響フィードバック(acoustical feedback)とも呼ばれ、たとえば、聴覚補助装置ハウジングが完全に装着者の耳に嵌め込まれていない場合、あるいはハウジングにいわゆるベント孔、たとえば換気等を目的とした管または開口部がある場合に発生する。どちらの場合も、音がレシーバからマイクロホンに「漏れ」、その結果、フィードバックが起こる。
【0052】
さらに、補聴器では、たとえば補聴器内のテレコイルを通じて誘導的フィードバックが発生することがあり、レシーバによって発生された磁界がテレコイルにカップリングし、それが補聴器への入力信号を発生させる。
【0053】
フィードバック経路による減衰がその補聴器の利得より小さいと、振動が起こる場合がある。マイクロホンとレシーバの距離を長くすることによって、この問題は軽減される。
【0054】
外部フィードバック信号経路は一般に、マイクロホンとレシーバの間の音響経路であり、すなわち、外部フィードバック信号は聴覚補助装置の周囲の空気を通じて伝播する。
【0055】
しかしながら、聴覚補助装置におけるフィードバックは、音が聴覚補助装置ハウジング内部の経路に沿ってレシーバからマイクロホンに伝達され得るため、内部でも発生することがある。
【0056】
マイクロホンとレシーバの間の内部フィードバック信号経路は、機械的信号経路でも、音響的信号経路でも、または機械的および音響的信号経路の組み合わせでもよい。
【0057】
ここで、音響的という用語は、補聴器内の気体、たとえば通常の空気中を圧力波として音が伝播することを意味し、機械的とは、固体材料、たとえば聴覚補助装置ハウジング、レシーバやマイクロホンの取付け手段その他の中を振動として音が伝播することを意味する。
【0058】
したがって、内部フィードバック信号経路は、補聴器の中の機械的要素、たとえばレシーバ、マイクロホン、取付け手段およびハウジング等および、場合によっては音響的要素、たとえば聴覚補助装置ハウジング内の空気等であってもよい。
【0059】
一般に、機械的フィードバックの主な根源は、レシーバが発生した振動が、たとえばレシーバの取付け手段を通じて聴覚補助装置の他の部分に伝達されることである。そのために、最新型のITE型(外耳道挿入型)の中には、レシーバを固定せずに、補聴器ハウジング内にフレキシブルに取り付け、これによってレシーバから装置の他の部分への振動の伝達を低減しているものもある。
【0060】
外部フィードバックの問題が、使用中に補聴器で得られる最大利得を限定するのに対し、内部フィードバックの主な影響は、マイクロホンを備える聴覚補助装置の生産工程に対するものであり、今日、内部フィードバックを最小限に抑えるような方法でレシーバとマイクロホンを装置内に取り付け、および/または設置することは非常に時間のかかる手作業となっている。
【0061】
補聴器の小型化が進む中で、製造または修理中に、内部フィードバックをなるべく抑えるように補聴器の中にレシーバを正確に位置づけることは、ますます重要になっている。これにより、聴覚補助装置の使用中に起こり得る周辺物との衝突や衝撃に対する聴覚補助装置の堅牢さも低下することになり、その理由は、レシーバが少しずれただけで、大きな内部フィードバックが生じ、その聴覚補助装置でハウリングやピーピー音が発生せずに使用者が得られる最大利得が大幅に低下するからである。
【0062】
したがって、内部フィードバックの抑制により、レシーバの位置付けは製造や修理中に行いやすく、また使用中も堅牢となり、同時に、聴覚補助装置の使用者が得られる最大利得も低下しない。
【0063】
さらに、内部フィードバックの抑制によって、レシーバを聴覚補助装置ハウジングと密接に接触させて取り付けることが可能となるが、これは、内部の機械的および/または音響的フィードバックが、レシーバとマイクロホンの間の長い距離によって抑制されるからである。したがって、以前のように聴覚補助装置内にレシーバを弾力的に懸垂させる必要がなくなる。レシーバは、聴覚補助装置ハウジングの中、たとえば、取り付けられたときに聴覚補助装置に接触し、使用中にレシーバを特定の位置に保持するような機械的支持要素を有する、聴覚補助装置ハウジングのコンパートメントの中にぴったりと嵌め込んでもよい。そのようにすることにより、レシーバを、聴覚補助装置の輸送中または使用中に発生する機械的衝突または衝撃に対して堅牢に取り付けることができる。その上、聴覚補助装置の製造が簡素化、低コスト化され、校正も容易となる。
【0064】
さらに、特定のレシーバ取付け手段がないことにより、聴覚補助装置ハウジングの内部でより大きなレシーバのために利用できる容量が大きくなるため、本発明の聴覚補助装置ハウジングには、同様の大きさの従来の聴覚補助装置ハウジングの中に収容できるものより大きなレシーバを収容できる。したがって、細長部材の中にマイクロホンを設置した本発明の聴覚補助装置ハウジングは、同様の大きさの従来の聴覚補助装置ハウジングより大きな利得を提供することができる。
【0065】
レシーバとマイクロホンとの間の距離を長くすることによって、内部フィードバックが抑制される。
【0066】
PCB壁を設置することで、内部フィードバックはさらに抑制される。
【0067】
後に詳しく述べるように、本発明による聴覚補助装置には、電子的なフィードバック抑制手段を設けてもよい。
【0068】
細長部材には、電気的聴覚補助装置のさらに別の構成部品が収容されてもよい。
【0069】
細長部材の第二の端にマイクロホンを設けた細長部材において、細長部材は、好ましくは、長手方向にわたる範囲の方向に向かって実質的に剛性で、細長部材の中に収容された導電体を破損から保護する。
【0070】
マイクロホンが細長部材の第二の端に設けられている場合、マイクロホンが耳介の中の、使用者が音源の方向を認知できるような音信号をマイクロホンが受信する位置に設置されると、音像定位(localisation)が実質的に保持される。この場合、使用者が方向を認知する際の根拠となる音信号は、補聴器によって使用者の鼓膜に伝えられる。たとえば、マイクロホンが耳介の三角窩の下の耳甲介艇に定置された時に、方向感覚は実質的に保持される。
【0071】
ノイズを抑制するため、および/または方向性をさらに高めるために、細長部材の第二の端に2つのマイクロホンを収容してもよい。
【0072】
細長部材と本体パーツは、好ましくは、別の部品として製造される個別のユニットを形成する。ハウジングの本体パーツと細長部材は、聴覚補助装置の製造中に、左耳連結部または右耳連結部を通じて機械的に、またおそらく電気的に相互接続されてもよく、あるいは、もっと後の段階で、たとえば専門販売員によって、使用者への聴覚補助装置のフィッティング中に相互接続されてもよい。
【0073】
本発明による細長部材は、好ましくは、多くの使用者の耳介の人体構造にフィットするように、多数の標準サイズを取り揃えて製造される。このようにすることで、製造コストはカスタムメイドの細長部材の製造コストに比較して安くなる。
【0074】
本発明による聴覚補助装置ハウジングは、好ましくは、多くの使用者の外耳道の人体構造にフィットするように、多くの標準サイズを取り揃えて製造される。このようにすることで、製造コストはカスタムメイドのハウジングの製造コストと比較して安くなる。また、異なるサイズのバッテリを収容できるように、さまざまな標準サイズを揃えてもよく、異なるサイズのレシーバを収容できるように、さまざまな標準サイズを揃えてもよい。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、細長部材はハウジングの本体パーツと取り外し自在に相互接続され、異なる標準サイズの細長部材を、異なるサイズの本体パーツからなるセットの中から選択される標準サイズの本体パーツと組み合わせることによって、多種多様な補聴器のモデルを提供できる。
【0076】
左耳連結部は、本体パーツに取り外し自在に取り付けられるように構成されていてもよい。さらに、右耳連結部は、本体パーツに取り外し自在に取り付けられるように構成されていてもよい。
【0077】
ハウジングは、充電式でないバッテリを収容するバッテリコンパートメントにアクセスするためのバッテリドアを備えていてもよい。細長部材をバッテリドアに取り付けてもよく、右耳連結部または左耳連結部が収容されたバッテリドアをハウジングの本体パーツに取り外し自在に取り付けて、細長部材をバッテリドアと一緒に本体パーツから取り外すことができるようにしてもよい。
【0078】
細長部材を取り付けたバッテリドアは、右耳に適した1つの形状と、左耳に適した別の形状で製造してもよい。右耳に適した形状では、細長部材は、バッテリドアから、バッテリドアに関してある角度で延び、この角度は、本体パーツが使用者の右外耳道に挿入されたときに、細長部材を右耳の耳介の中に定置するのに適した角度である。左耳に適した形状では、細長部材は、バッテリドアから、バッテリドアに関してある角度で延び、この角度は、本体パーツが使用者の左外耳道に挿入されたときに、細長部材を左耳の耳介の中に定置するのに適した角度である。
【0079】
コネクタはさらに、バッテリドアがハウジングに取り付けられたときに、細長部材の信号線と電気的に接触するように適合されていてもよい。
【0080】
オープン型装置を提供するためには、使用中に外耳道内に留置されるハウジングの本体パーツと、使用され得る追加のパーツは、その断面積が外耳道の断面積より小さく、外耳道閉塞が実質的に起こらない。ハウジングが使用者の外耳道に挿入されたときに、ハウジングの本体パーツと、使用され得る追加のパーツの断面積が小さいと、鼓膜とハウジングの間の外耳道と周辺部との連通が可能となり、外耳道閉塞が防止される。
【0081】
本体パーツは、好ましくは、その長手方向にわたる範囲に沿って、略一直線である。
【0082】
好ましくは、本体パーツはその長手方向にわたる範囲に垂直な方向に、略長方形の断面を有する。
【0083】
好ましくは、本体パーツはその長手方向にわたる範囲に平行な方向に、略長方形の断面を有する。
【0084】
本体パーツはさらに、細長部材が本体パーツに取り付けられたときに、細長部材の中の信号線と電気的に接触するように構成されたコネクタを備えていてもよい。
【0085】
信号プロセッサモジュールは、聴覚補助装置ハウジングパーツセットの中に含まれてもよく、このセットはさらに、
使用者の外耳道の中に収容されるように形成された本体パーツを含み、本体パーツは、
本体パーツに取り付けられ、また反対の第二の自由端を有する細長部材の第一の端に取り付けられる左耳連結部であって、細長部材が、本体パーツと動作的に相互接続されたときに本体パーツの長手方向にわたる範囲と角度をなし、この角度が使用者の左耳に使用するのに適した角度となるように構成される左耳連結部と、
本体パーツに取り付けられ、また反対の第二の自由端を有する細長部材の第一の端に取り付けられる右耳連結部であって、細長部材が、本体パーツと動作的に相互接続されたときに本体パーツの長手方向にわたる範囲と角度をなし、この角度が使用者の右耳に使用するのに適した角度となるように構成される右耳連結部と、
相互接続されるように構成され、
細長部材は、左耳連結部と右耳連結部のうちの選択された一方と相互接続されるように、また外耳道の中に本体パーツを保持するために、外耳道の外の耳介内に定置されるように構成される。
【0086】
上記のような聴覚補助装置ハウジングパーツセットを提供することにより、千差万別の使用者の右耳と左耳にそれぞれフィットする聴覚補助装置ハウジングを提供するために必要な各種の機械的パーツが少なくて済むようになる。
【0087】
外耳道の大きさと形状は人によって異なる。一般に、外耳道は長さ約26mm、直径7mmである。ほとんどの場合、外耳道は後方に曲がり、内側の方向、すなわち外耳道の入口から鼓膜に向かって若干上向きとなる。したがって、使用者の右外耳道に取り付けられる聴覚補助装置の右先端パーツは、好ましくは、上から外耳道の内側方向に見たときに、本体パーツの長手方向にわたる範囲に関して左に向かう角度を形成するような形態で提供される。さらに、使用者の左外耳道に取り付けられる左先端パーツは、好ましくは、上から外耳道の内側方向に見たときに、本体パーツの長手方向の範囲に関して右に向かう角度を形成するような形態で提供される。真っ直ぐな先端パーツが必要な、真っ直ぐな外耳道を有する人はめったにいない。
【0088】
聴覚補助装置ハウジングパーツセットはさらに、
本体パーツと動作的に相互接続されたときに、本体パーツの長手方向にわたる範囲に対して角度をなす右先端パーツであって、相互接続された本体パーツと右先端パーツからなる聴覚補助装置ハウジングを使用者の右外耳道の中に収容しやすくするような右先端パーツと、
本体パーツと動作的に相互接続されたときに、本体パーツの長手方向にわたる範囲に対して角度をなす左先端パーツであって、相互接続された本体パーツと左先端パーツからなる聴覚補助装置ハウジングを使用者の左外耳道の中に収容しやすくするような左先端パーツと、
を含み、
本体パーツはさらに、左先端パーツと右先端パーツのうちの選択された一方と相互接続するように構成される。
【0089】
聴覚補助装置ハウジングパーツセットはさらに、本体パーツと動作的に相互接続されたときに、本体パーツの長手方向にわたる範囲に沿って一直線に延びる、直線的先端パーツを含んでいてもよい。
【0090】
先端パーツはさまざまな標準サイズと形状を取り揃えて、たとえば、本体パーツと組み立てられたときに本体パーツの長手方向にわたる範囲に対してなされる角度を各種の大きさで、また各種の長さ、幅、高さで、また角度的な深さ、すなわち先端パーツと本体パーツとの相互接続部から先端パーツの屈曲部までの距離を各種の大きさで製造し、大きさが異なり、外耳道内の曲がる深さが異なり、屈曲角度が異なる個々の外耳道に収容できるようにしてもよい。
【0091】
ハウジングの先端パーツは、より快適に装着するために角度を変えられるように、柔軟性があってもよい。
【0092】
先端パーツは、使用者の外耳道に個々にフィットするようにカスタムメイドし、使用者に痛みを与えずに、しかも、外耳道内の所定の場所にハウジングを確実に保持して、微笑む、物を噛む、あるいはあくびをするときなどに使用者が動いても、ハウジングが耳から外れないようにしてもよい。
【0093】
一実施形態において、標準的な大きさのハウジングを特定の使用者の外耳道に個々にフィットさせるために、標準的な大きさの先端パーツの周辺に取り付けられるカスタムメイドのパーツが提供される。
【0094】
一実施形態において、ハウジングを特定の使用者の外耳道によりよくフィットさせるための、標準サイズの先端パーツの周辺に取り付けられる柔軟なパーツが提供される。この柔軟なパーツは、各種の標準サイズを取り揃えて提供してもよい。
【0095】
聴覚補助装置は、レシーバまたはハウジングの先端パーツの上に、スナップ式結合手段で取り付けるように適合された耳垢フィルタをさらに備えていてもよい。
【0096】
本発明の好ましい実施形態において、聴覚補助装置ハウジングパーツセットは、大多数の使用者にフィットする1つの標準サイズの本体パーツを含むが、聴覚補助装置ハウジングパーツセットは、複数の異なるサイズの本体パーツを含んでいてもよい。
【0097】
聴覚補助装置ハウジングパーツセットは、複数の異なるサイズの信号プロセッサモジュールをさらに含んでいてもよく、その各々が特定のサイズの聴覚補助装置ハウジングの中にフィットする。
【0098】
聴覚補助装置ハウジングパーツセットは、複数の信号プロセッサモジュールをさらに含んでいてもよく、その各々は、たとえば異なる種類の聴覚障害を補償するための別々のアルゴリズム等、各種の信号処理プログラムを実行するように適合された信号プロセッサを担持する。
【0099】
聴覚補助装置ハウジングパーツセットは、複数の異なるサイズのレシーバをさらに含んでいてもよい。
【0100】
聴覚補助装置ハウジングパーツセットは、複数の異なるサイズの細長部材をさらに含んでいてもよい。
【0101】
以上のように、一般に、特定の使用者の右耳に用いる聴覚補助装置ハウジングは、たとえば聴覚補助装置の販売地点において、所望の信号処理を実行するように適合された特定の信号プロセッサモジュールを選択し、さらに、対象となる使用者の右耳、すなわちその使用者の右耳介と右外耳道に最もよくフィットするパーツを選択すること、つまりは、その使用者の右耳に適した所望の角度の細長部材を有する、選択された右耳連結部と接続するための、適当なサイズの本体パーツを選択することによって、組み立てられる。さらに、選択された本体パーツは、その使用者の右外耳道に収容しやすいように、上から外耳道の内側方向に見た場合に、本体パーツの長手方向にわたる範囲に関して左に向かう所望の角度をなす、選択された右先端パーツと相互接続されてもよい。
【0102】
特定の使用者の左耳用の聴覚補助装置ハウジングも同様に組み立てられる。
【0103】
好ましくは、レシーバがハウジングの先端パーツに収容される。
【0104】
ハウジングの本体パーツは、レシーバと機械的および電気的に接触するコネクタを備えていてもよい。このように、レシーバは販売地点で、たとえば専門販売員によって聴覚補助装置の中に据え付けられてもよいため、専門販売員は使用者に対して各種のモデルを提供でき、それに匹敵するような種類の聴覚補助装置を仕入れて、保管しておく必要がなくなる。
【0105】
好ましくは、本体パーツには、オーディオ信号を発生する、聴覚補助装置のための信号プロセッサが収容される。
【0106】
聴覚補助装置は、聴覚補助装置の電気構成部品に電源供給するための1つまたは複数のバッテリをさらに備えていてもよい。この1つまたは複数のバッテリは充電式でも、充電式でなくてもよい。
【0107】
本発明によるハウジングの大きさと形状は非常に快適であり、使用者はハウジングが外耳道に挿入されたままの状態でもよく眠れることがわかった。その結果、このハウジングは耳鳴り緩和とノイズ抑制用として非常に適したものとなる。
【0108】
本発明の一実施形態において、聴覚補助装置は、音をオーディオ信号に変換するためのマイクロホンと、聴力損失を補償するためにオーディオ信号を処理するための信号プロセッサと、信号プロセッサの出力に接続され、処理されたオーディオ信号を音声信号に変換するためのラウドスピーカを備える補聴器を構成する。さらに、この補聴器は、補聴器の電気構成部品に電源供給するためのバッテリを備える。
【0109】
補聴器用語により、本明細書では、ラウドスピーカをレシーバと呼ぶ場合もある。
【0110】
聴覚補助装置ハウジングには、CIC型補聴器ハウジングと同様に、マイクロホンを含む上記のような補聴器の構成部品が収容されてもよい。
【0111】
一実施形態において、細長部材には、たとえばその第二の端にマイクロホンが収容され、ハウジングの残りの1つまたは複数のパーツには他の構成部品が収容され、細長部材の内部に信号導体が延びていて、これがマイクロホンをハウジング内の他の構成部品と電気的に相互接続する。
【0112】
本発明の好ましい実施形態において、電子的フィードバック補償手段が提供される。フィードバックは聴覚補助装置における周知の問題であり、当該技術分野にはフィードバックの抑制とキャンセレーションのためのいくつかのシステムが存在する。超小型デジタル信号処理(DSP)ユニットの開発により、補聴器のような小さな装置の中でフィードバック抑制のための高度なアルゴリズムを実行することが可能となった。たとえば、米国特許第5,619,580号明細書、米国特許第5,680,467号明細書、米国特許第6,498,858号明細書を参照されたい。
【0113】
補聴器のフィードバックキャンセレーションのための上記のような先行技術のシステムは、外部フィードバック、すなわち、補聴器の中のラウドスピーカ(しばしばレシーバと呼ばれる)とマイクロホンの間の補聴器の外の経路に沿った音の伝達に対処している。この問題は、音響フィードバックとも呼ばれ、たとえば、補聴器のイヤピース部分が使用者の耳の中に完全にフィットしていないとき、あるいは、イヤピース部に通気口がある場合に発生する。どちらの場合も、音がレシーバからマイクロホンに「漏れ」、これがフィードバックの原因となる。
【0114】
外部フィードバックの問題は、補聴器で得られる最大利得を限定する。
【0115】
したがって、聴覚補助装置は、その聴覚補助装置の音響的および機械的フィードバック信号経路をモデル化することによって、マイクロホンにより拾われた信号のフィードバック補償信号を供給するためのフードバック補償回路と、オーディオ信号からフィードバック補償信号を減算して、聴覚補助装置の信号プロセッサに入力される補償済みオーディオ信号を形成するための減算手段をさらに備えていてもよい。
【0116】
フィードバック信号経路は一般に、マイクロホンとレシーバの間の音響経路であり、すなわち、外部フィードバック信号は聴覚補助装置周辺の空気を通って伝播する。
【0117】
好ましくは、フィードバック補償手段は、順応可能フィルタ、すなわちフィードバック経路の変化にしたがって、そのインパルス応答を変化させるフィルタである。
【0118】
静的フィルタと順応的フィルタのどちらも、聴覚補助装置分野の当業者にとっては良く知られており、したがって、ここでは詳しく説明しない。
【0119】
耳鳴りは、それに相当する外部音がないときに、人間の耳が音を知覚することである。耳鳴りは、聴覚系で発生する錯覚音と考えられる。たとえば、キーン、ブンブン、ピーピーまたはゴーゴーという音が耳鳴りとして知覚されるかもしれない。耳鳴りには連続的なものと間欠的なものがあるが、いずれにせよ、きわめてうっとうしく、このような苦痛を抱える人の生活の質を大きく低下させ得る。
【0120】
耳鳴りは、それ自体病気ではないが、さまざまな根本原因によって生じる不快な症状であり、その原因としてはストレス等の心理的要因、病気(感染、メニエール病、耳硬化症等)、耳内の異物または耳垢および大きな騒音による外傷等がある。耳鳴りは、ある薬剤の副作用でもあり、また極度の不安や抑うつからも発生することがある。
【0121】
知覚される耳鳴り音は、小さな背景音から、外部の音を掻き消すほど大きな信号まで広範囲にわたる。「耳鳴り」という用語は通常、より重度のケースを指す。80名の耳鳴りのない大学生を防音室に入れて行われた1953年の研究の結果、93%がブンブンという音、脈動音またはピーピーという音が聞こえたと報告した。しかしながら、この状況を普通であると仮定してはならない。なぜなら、コホート研究により、不自然な騒音レベルに曝されたことによる聴覚損傷の程度は非常に範囲が広いことが証明されているからである。
【0122】
耳鳴りは外科的に治すことができず、現時点では、承認された有効な薬物治療法がないため、いわゆる耳鳴りマスカが知られるようになった。これは小さな、バッテリ式の装置で、補聴器のように耳の後ろまたは中に装着され、たとえば補聴器のスピーカを通じて耳道の中に発生される人工音を通じて、耳鳴りを心理音響的に覆い、それによって耳鳴りの知覚を軽減するものである。
【0123】
マスカが発生する人工音はしばしば、狭帯域ノイズである。このノイズのスペクトル位置と大きさレベルは、たとえばプログラミングデバイスによって調節し、個々の耳鳴りの状況に合わせてできるだけ最適に適応させられるようにできることが多い。さらに、いわゆる順応方式が開発されており、たとえば耳鳴り順応療法(Tyler RS, ed. Handbook of Tinnitus. San Diego; Singular Publishing; 2000: 357−376のJastreboff.PJ.によるTinnitus habituation therapy(THI) and tinnitus retraining therapy (TRT))では、心理的トレーニングプログラムと、聴覚閾値に近い広帯域音(ノイズ)の提示を組み合わせることによって、静かな状況での耳鳴りの知覚も同様に大きく抑制されるとされている。このような装置は、「ノイザ(noiser)」または「音声濃縮装置(sound enrichment devices)」とも呼ばれる。この種の装置や方式は、たとえば独国特許第29718503号明細書、英国特許第2134689号明細書、米国特許出願公開第2001/0051776号明細書、米国特許出願公開第2004/0131200号明細書および米国特許第5,403,262号明細書で紹介されている。
【0124】
今日の耳鳴りマスカは、ある程度までは耳鳴りをすぐに緩和できるものの、発生されるマスキング音は人の話を理解するのに不利な影響を与えることがあり、その一因はノイズの追加によるS/N(話(Speech)/ノイズ)比の低下であり、また別の一因は、耳鳴りのある人は正常な聴力を有する人と比較して、ノイズの中で人の話を理解する能力も低下しているという点である。
【0125】
多くの人々にとって、これまで知られているマスカでは、耳鳴りを長期的に解消できない。Del Bo、Ambrosetti、Bettinelli、Domenichetti、Fagnani、Scottiにより行われた最近の研究、“Using Open−Ear Hearing Aids in Tinnitus Therapy”, Hearing Review, Aug. 2006では、周囲の環境音による音声濃縮(sound enrichment)を利用することによって、耳鳴りに悩む人々の中にいわゆる耳鳴りへの順応を引き起こした場合、耳鳴りの緩和のためのよりよい長期的効果が達成されるかもしれないことが示された。順応の根本原理は、脳の機能の2つの基本的な面に依存する。すなわち、縁辺系と交感神経系の反応の順応および、人が耳鳴りの存在を無視できるようになる音知覚の順応である。耳鳴りマスカは知覚される耳鳴りの音を部分的または完全に覆う音を発生するが、Del Bo、Ambrosetti、Bettinelli、Domenichetti、Fagnani、Scottiは、環境音を補聴器または、人工音、たとえば帯域限定ノイズの適用によって増幅したものを利用することを提案している。本発明の一態様によれば、聴覚補助装置はまた、たとえば前述のように耳鳴りの解消に有益な音を発生させるような耳鳴り緩和回路を備える。緩和回路はたとえば、耳鳴りマスカ、音声濃縮回路(sound enrichment circuit)等であってもよい。
【0126】
本発明の別の態様によれば、本明細書において開示されるハウジングと細長部材を備える耳鳴り緩和装置または耳鳴り治療装置が提供される。この耳鳴り緩和装置には、マイクロホンがなくてもよい。一実施形態において、耳鳴り緩和装置は聴力損失を補償しない。
【0127】
別の実施形態において、本発明による聴覚補助装置は、耳鳴り緩和装置または耳鳴り治療装置を備える。
【0128】
本発明のさらに別の態様によれば、本明細書において開示されるハウジングと細長部材を備えるノイズ抑制装置が提供される。このノイズ抑制デバイスには、マイクロホンがなくてもよい。一実施形態において、ノイズ抑制装置は聴力損失を補償しない。
【0129】
また別の実施形態において、本発明による聴覚補助装置は、ノイズ抑制装置を備える。
【0130】
このノイズ抑制装置は、背景の聴覚または非聴覚ノイズの波形を解析し、干渉によって背景ノイズを消すための極性反転波形を生成するための信号プロセッサを備える従来のノイズ抑制回路を有していてもよい。生成される波形は、元のノイズの波形と同一でも、あるいはこれに正比例する振幅でもよいが、極性は反転している。これが相殺干渉を起こさせ、知覚されたノイズの振幅を縮小させる。
【0131】
本発明の上記およびその他の特徴と利点は、添付の図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明することにより、当業者にとってより明らかとなるであろう。