(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストンと前記ねじ駆動装置との間で接続された非回転部材をさらに有し、前記非回転部材は、前記ピストンが前記ねじ駆動装置によって係合されている間に前記ピストンの回転を実質的に防止するように作用することができる
請求項1に記載のブレーキブースタ。
前記ねじ駆動装置が前記モータの作動中に前記係合位置にある場合に、前記マスタシリンダは第1液圧力を前記第1液室で発生させ、前記ブレーキブースタは、前記第1液圧力より大きい第2液圧力を前記第2液室で発生させるように作動可能である
請求項17に記載の液圧ブレーキシステム。
前記モータが故障の場合であって使用者が前記ブレーキペダルを押し下げた際に、前記マスタシリンダからの加圧された作動液が前記第1液室に、前記第1液室からの加圧された作動液が前記第2液室に直に、前記第2液室からの加圧された作動液が前記液圧制御装置に流れる
請求項17に記載の液圧ブレーキシステム。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0005]本発明による液圧ブレーキシステムの一部の概略図である。
【
図2】[0006]休止位置で示された、
図1の液圧ブレーキシステムのブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図3】[0007]待機位置で示された、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図4】[0008]使用者作動ブレーキ位置で示された、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図5】[0009]使用者がブレーキの作動を停止した後の戻り位置で示された、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図6】[0010]非使用者作動ブレーキ位置で示された、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図7】[0011]車両が電気的故障またはブースタモータ故障を被ったときの使用者作動ブレーキ位置で示された、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図8】[0012]ブレーキブースタの無効ストローク調整機能を示す、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図9】[0013]前輪車軸の圧力制御回生ブレーキの開始前におけるシステムの圧力を例示する、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図10】[0014]前輪車軸の圧力制御回生ブレーキの開始時におけるシステムの圧力を例示する、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図11】[0015]4つの車輪での圧力制御回生ブレーキの開始前におけるシステムの圧力を例示する、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図12】[0016]4つの車輪での圧力制御回生ブレーキの開始時におけるシステムの圧力を例示する、
図2のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図13】[0017]休止位置で示された、液圧ブレーキシステム用の代替のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図14】[0018]待機位置で示された、
図13のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図15】[0019]使用者作動ブレーキ位置で示された、
図13のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図16】[0020]使用者がブレーキの作動を停止した後の戻り位置で示された、
図13のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図17】[0021]非使用者作動ブレーキ位置で示された、
図13のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図18】[0022]車両が電気的故障またはブースタモータ故障を被ったときの使用者作動ブレーキ位置で示された、
図13のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【
図19】[0023]ブレーキブースタの無効ストローク調整機能を示す、
図13のブレーキブースタの断面および一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0024]本発明のすべての実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、もしくは、以下の図面に例示された、詳細な構造および構成部品の配置に限定されないことは理解されるだろう。本発明は、他の実施形態も可能であり、ならびに、様々な方法で実施または実行することができる。
【0008】
[0025]
図1は、車両または他の用途で使用するための液圧ブレーキシステム10を概略的に例示する。ブレーキシステム10は、使用者(例えば、車両の運転者)による操作によって作動するように構成されたブレーキペダル14を有する。ブレーキペダル14は、マスタシリンダ18に接続されており、例示の実施形態では、ブレーキペダル14とマスタシリンダ18との間に負圧ブースタは設けられていない。液圧ブレーキシステム10はさらに、1つまたは複数の車輪ブレーキ26(
図9〜
図12に概略的に例示)への液圧ブレーキの作動液の流れを制御するように作動可能な液圧制御装置22を有する。
図2〜
図12に示すように、任意でペダル感覚シミュレータ28が、技術的に公知とされているように、マスタシリンダ18に接続され得る。
【0009】
[0026]液圧ブレーキシステム10はさらに、マスタシリンダ18と液圧制御装置22との間で流体接続されたブレーキブースタ30を有する。ブースタ30は、マスタシリンダ18と液圧制御装置22との間で基本的にどの位置にも配置することができるため、システム10の設計に融通性を与えることができる。ブレーキブースタ30は、後でさらに詳細に説明されるように、使用者がブレーキペダル14を押し下げるのに応じて、マスタシリンダ18で発生した液圧力を選択的に増加または上昇させるように作動可能であり、従来の負圧ブースタに取って代わるものである。
【0010】
[0027]
図2〜
図12は、本発明によるブレーキブースタ30の第1の実施形態を例示する。ブレーキブースタ30は、ねじ駆動装置38を支持するハウジング34を有する。モータ40もまたハウジング34に接続されており、ねじ駆動装置38を作動させるために、ねじ駆動装置38と一体とされている。モータ40は、固定子44および回転子48を有する。例示の回転子48は、永久磁石52および取付部56を有する。回転子48は、ねじ駆動装置38の長手方向軸線64に沿った回転子48の制限された変位を許容するアンギュラ軸受60に回転自在に支持されている。
【0011】
[0028]例示のねじ駆動装置38は、2つの別体で鏡像とされた駆動装置を同時に提供するように対称的に構成されており、それら駆動装置の各々は長手方向軸線64と同軸となっている。後でさらに説明されるように、これにより、単体のブースタ30は、4つの車輪ブレーキ26すべてを、2つの別々の入力および出力で作動させることができる。しかしながら、他の実施形態では、ブースタ30は、この2つの対称とされた装置を有する必要はなく、代わりに、2つの完全に別体のブースタの態様を取っていてもよく、それぞれが例示のブースタ30の半分(例えば、左側または右側)と同様の方法で作動すればよい。
【0012】
[0029]各駆動装置は、回転子48にそれと共に回転するように接続されたねじ68と、第1方向にねじ68を回転させることでナット72を第1方向に移動(例えば、変位)させるようにねじ68上に配置されたナット72とを有する。
図3および
図4を参照すると、回転子48が第1方向に回転すると、2つのねじ68が回転させられ、左側のナット72が左へと変位させられ、右側のナット72が右へと変位させられる。同様に、
図5に示すように、回転子48が第1方向と反対の第2方向に回転すると、2つのねじ68が反対に回転させられ、左側のナット72が右へと変位させられ、右側のナット72が左へと変位させられる。例示のねじ駆動装置38は、ボールねじ駆動であり、各ねじ68と各ナット72との間に(例えば、従来から理解されているように、それぞれの溝またはねじ山に)配置された複数のボール74をさらに有する。
【0013】
[0030]ハウジング34は概して、ねじ駆動装置38の長手方向軸線64と同軸であり、2つのシール80の間にねじ駆動室76を区画する。
図4を参照すると、2つのシール80の各々は、対応するナット72の外面84とシール係合する。例示のナット72は、実質的に一定の外面寸法D
n(例えば、実質的に一定の外径)を有する、概して円筒形の外面84を有する。他の実施形態では、ナット72は、外面が他の形状(例えば、楕円、正方形など)を有するように構成され、対応する外面寸法D
nを有していてもよい。ねじ駆動装置38は作動中にナット72を駆動するため、それぞれの外面84がシール80に対して摺動することで、ナット72を中央のねじ駆動室76に対して出し入れするようにさらに移動させる。
【0014】
[0031]
図2を参照すると、ハウジング34は2つのピストン組立品88をさらに支持しており、それらピストン組立品88は、例示の実施形態では、互いが実質的に同一のものとなっており、互いに鏡像の関係となる向きでねじ駆動装置38の両側に1つずつ配置されている。各ピストン組立品88は、ピストン92および付勢装置96を有しており、例示の実施形態では、長手方向軸線64と同軸となっている。各ピストン92は、端部壁102およびスカート106を有する。端部壁102は開口110を有しており、その目的は後で詳細に説明される。端部壁102は、ナット72の各々のシール面114に対向する関係となっている。シール面114は、シール部材を有していてもよく、あるいは、封止できる材料から形成されていてもよい。付勢装置96は、少なくとも一部がスカート106の内部に配置されており、付勢部材122を少なくとも一部支持する支持部材118を有する。例示の実施形態では、支持部材118は、一端がハウジング34の端部壁126に当接し、他端がピストン92の端部壁102とスカート106との少なくとも一方に当接する伸縮部材である。付勢部材122(例えば、圧縮ばね)は、支持部材118を取り囲んでおり、ピストン92を端部壁126から離してねじ駆動装置38に向かって付勢する。
【0015】
[0032]
図4を再び参照すると、スカート106の外面は、実質的に一定の外面寸法Dp(例えば、実質的に一定の外径)を有する、概して円筒形のピストン外面130を規定する。他の実施形態においては、ピストン92は、外面が他の形状(例えば、楕円、正方形など)を有するように構成され、対応する外面寸法D
pを有していてもよい。例示の実施形態では、ピストン92の外面寸法D
pは、具体的な寸法にかかわらず、ナット72の外面寸法D
nに実質的に等しくなっており、その理由については後でさらに詳細に説明される。
【0016】
[0033]2つのシール134が、ハウジング34によって、ねじ駆動装置38の両側で支持されており、一方のシール134は一方のピストン92の外面130とシール係合しており、他方のシール134は他方のピストン92の外面130とシール係合する。ハウジング34と、ピストン組立品88(すなわちピストン92)と、シール80および134とは共に、第1液室138、第2液室142、第3液室146、および第4液室150を区画する。例示の実施形態では、液室138、142、146、および150のすべてが、ねじ駆動装置38の長手方向軸線64と同軸となっている。第1液室138および第3液室146は、ねじ駆動室76の両側でねじ駆動室76にすぐに隣接している。第1液室138は、第1液室138とマスタシリンダ18との間で液圧作動液を移動させるための、マスタシリンダ18と流体連通する開口154を有する。第3液室146は、第3液室146とマスタシリンダ18との間で液圧作動液を移動させるための、マスタシリンダ18と流体連通する開口158を有する。
【0017】
[0034]第2液室142は、第2液室142と液圧制御装置22との間で液圧作動液を移動させるための、液圧制御装置22と流体連通する開口162を有する。第4液室150は、第4液室150と液圧制御装置22との間で液圧作動液を移動させるための、液圧制御装置22と流体連通する開口166を有する。開口154と、第1液室138と、第2液室142と、開口162とは共に1つの回路を規定する一方で、開口158と、第3液室146と、第4液室150と、開口166とは共に1つの回路を規定する。
【0018】
[0035]第1液室138内のナット72のシール面114が対応するピストン端部壁102と係合して開口110を封止する場合(
図3〜
図6および
図8〜
図12参照)、第1液室138および第2液室142は、第1液室138の液圧作動液が第2液室142に流れ込むことができないように、互いから流体的に分離される。この流体的な分離によって、ブレーキペダル14は車輪ブレーキ26から切り離されることになり、アンチロック(ABS)やアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)などのブレーキ状態の間に、ブレーキペダル14で感じられるペダルの反力感がなくなることになる。第1液室138内のナット72のシール面114が対応するピストン端部壁102と非係合となった場合、それによって開口110は封止されなくなり(
図2および
図7参照)、第1液室138および第2液室142は互いから流体的に分離されず、第1液室138の液圧作動液は第2液室142に自由に流れ込むことができる。同様に、第3液室146内のナット72のシール面114が対応するピストン端部壁102と係合して開口110を封止する場合(
図3〜
図6および
図8〜
図12参照)、第3液室146および第4液室150は、第3液室146の液圧作動液が第4液室150に流れ込むことができないように、互いから流体的に分離される。また、この流体的な分離によって、ブレーキペダル14は車輪ブレーキ26から切り離されることになり、アンチロック(ABS)やアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)などのブレーキ状態の間に、ブレーキペダル14ではペダルの反力感がなくなることになる。第3液室146内のナット72のシール面114が対応するピストン端部壁102と非係合となった場合、それによって開口110は封止されなくなり(
図2および
図7参照)、第3液室146および第4液室150は互いから流体的に分離されず、第3液室146の液圧作動液は第4液室150に自由に流れ込むことができる。
【0019】
[0036]ここで、液圧ブレーキシステム10の作動を、
図2〜
図8に関して説明する。
図2は、運転者がアクセルペダル(図示せず)を押し下げ、ブレーキペダル14を押し下げていない休止位置のブースタ30を例示しており、この位置において、両ナット72は、シール面114がそれぞれのピストン端部壁102と非係合となるように、内側に最も後退した位置にある。それぞれの非回転および付勢部材170は、隣接するナット72およびピストン端部壁102の間で接続されている。
図2に例示された休止位置において、部材170は、ナット72を、それぞれのピストン92から離して、例示された真ん中の休止位置に向かって付勢するように作用する。具体的には、モータ40によって回転子48にトルクが付与されていない場合、付勢部材170はナット72を例示の休止位置に変位させることになる。部材170はまた、それぞれのピストン92とナット72との間での相対回転を防ぐことになる。例示の付勢部材170は圧縮ばねである。
【0020】
[0037]
図3は、ナット72のシール面114がそれぞれのピストン端部壁102と係合して開口110が封止される待機位置のブースタ30を示す。第1液室138および第2液室142、ならびに、第3液室146および第4液室150は、互いから流体的に分離される。この待機位置は、使用者が、アクセルペダルを離しているが(つまり、アクセルペダルを押し下げていないが)まだブレーキペダル14を押し下げていないときに生じる。システム10は、以後に起こり得るブレーキの筋書きを予測する。モータ40は、制御器を介して、アクセルペダルが押し下げられていない位置にあることを検出するセンサ、または、いくつかの他のエンジンパラメータセンサによって作動させられ、また、電流がモータ40に供給されて回転子48が回転させられ、シール面114がそれぞれの開口122を封止するのに十分となるように、ナット72をそれぞれのピストン92と係合するように移動させる。ナット72の移動は、部材170の付勢力には打ち勝つが、付勢装置96の付勢力に打ち勝ってピストン92を動かすにはまだ相当の差がある。回転子48に付与されるトルクは、この待機位置を実現するように制御される。
【0021】
[0038]
図4は、使用者の操作によるブレーキの作動を例示しており、使用者が所望のブレーキに向けて力をブレーキペダル14に付与している。モータ40に接続された制御器は、ブレーキペダル移動距離、ブレーキペダル14に付与される力、マスタシリンダ圧力のうちの少なくとも1つを決定または検出し、モータ40に信号を送り、それに伴う大きさのトルクを回転子48に加えてナット72をそれぞれのピストン92に向かってさらに移動させる。ナット面114およびそれぞれのピストン端部壁102の係合は、ピストン92をねじ駆動室76から離すように押し、付勢装置96の付勢に打ち勝つ。第2液室142および第4液室150の容積は、変化(つまり減少)させられ、第2液室142および第4液室150の液圧作動液は、マスタシリンダ18で発生して第1液室138および第3液室146にある圧力P1より大きい圧力P2に加圧される(
図9および
図11もまた参照)。第2液室142内の作動液は、開口162を通じて、1つまたは複数の車輪ブレーキ26に制御適用するために液圧制御装置22に押し込まれる。同様に、第4液室150内の作動液は、開口166を通じて、1つまたは複数の別の車輪ブレーキ26に制御適用するために液圧制御装置22に押し込まれる。ピストン92に対して行われる仕事のすべてまたはほとんどすべては、モータ40によるナット72の移動の結果である。
【0022】
[0039]圧力P1に加圧された作動液は、マスタシリンダ18から第1液室138および第3液室146へと流れ込むが、分離された第2液室142および第4液室150に直に流れ込むことは防止されている。同様に、第2液室142および第4液室150から第1液室138および第3液室146にそれぞれ逆流することが防止されている。そのため、ブレーキペダル14は車輪から切り離されることになり、アンチロックブレーキ、トラクション制御ブレーキ、アダプティブ・クルーズ・コントロールの動作、およびその他の使用者によって開始されないブレーキ状態の間に通常感じられる、ペダルの反力感がなくなる。液圧ブレーキシステム10はまた、エンジンの吸気から完全に独立している。
【0023】
[0040]第1液室138および第3液室146はまた、それぞれの外径D
nおよびD
pが等しいため、一定の容積を維持する。係合したナット72およびピストン92にどれだけ変位移動が発生しても、第1液室138および第3液室146の容積は同じままである。そのため、使用者がブレーキペダル14に力を付与するときに、ペダルの操作感が変化しないことになる。任意によるペダル感覚シミュレータ28は、従来のペダルの操作感を得たいと望まれる場合に使用することができる。しかしながら、第1液室138および第3液室146が一定の容積であるという特徴によって、さらに後で説明されるように、回生ブレーキをかけることに関する追加的な有利性が提供される。
【0024】
[0041]
図5は、使用者がブレーキの作動を停止(つまり、ブレーキペダル14に圧力を付与するのを停止)した後のブースタ30の戻り位置を例示する。制御器は、モータ40に回転子48へのトルクを逆方向にするように信号を送り、ナット72を休止位置に向かって後退させる。付勢装置96は、後退の間、ピストン端部壁102をナットのシール面114と係合させて封止する状態に維持する。その結果、ブレーキペダル14にさらに力が付与されない場合は、ナット72およびピストン92が
図2に示された休止位置まで戻ることになる。
【0025】
[0042]
図6は、アダプティブ・クルーズ・コントロールの作動など、ブースタ30の非使用者作動ブレーキ位置を例示する。この状態で、使用者はブレーキペダル14を全く押し下げておらず、代わりに、ブレーキは車両システムによって完全に開始されている。制御器は、モータ40にトルクを付与するように信号を送り、ナット72は、車両システムの必要性に基づいて望まれるようにピストン92に係合してピストン92を移動させる。
【0026】
[0043]
図7は、モータ40が作動不可能となる電気的故障またはブースタモータ故障を車両が被ったときの、ブースタ30の使用者作動ブレーキ位置を例示する。車両がなお停止可能であることを確保するため、使用者のブレーキペダル14の押し下げによってマスタシリンダ18で加圧された液圧作動液は、開口154、158をそれぞれ通って第1液室138および第3液室146の各々に入り、開口110から第2液室142および第4液室150を素通りすることができ、それぞれの開口162、166を通って液圧制御装置22まで流れ続けることができる。そのため、液圧制御装置22はそれでもなお液圧作動液を加圧して車輪ブレーキを制御する。この状態において、ブースタ30は、使用者の操作による圧力増加に抵抗を与えることはない。さらに、負圧ブースタがないため、負圧ブースタのダイアフラムの戻しばねの力(例えば、200N超の抵抗力)に伴う使用者への抵抗力がない。
【0027】
[0044]
図8は、ブースタ30の無効ストローク調整機能を例示する。ブースタ30は、圧力が車輪ブレーキ26に付与される前に、ブレーキペダル14に必要とされる長い移動距離のためにブレーキペダル14の操作感を柔らかくさせてしまうものである無効ストロークを、埋め合わせる、あるいは、調整するように制御することができる。
図8に示すように、待機位置は、
図3に示される位置(点線190で指示される)から、ピストン92により外側への力を付与してピストン92をより移動させるようにナット72が制御される調整された位置(直線194で指示される)へと調整され得る。この調整された待機位置において、使用者がブレーキペダル14を押し下げたときには、柔らかさまたは無効ストロークが小さくなることで、ブレーキがより硬くなる、つまり、より良い応答性となる。この調整は、モータ40を有する制御器が、
図3の待機位置においてよりも、少し大きなトルクを回転子48に付与してナット72を少し大きく駆動することによって制御される。調整の量は、所望のブレーキ操作感を得るために変化させることができる。この特徴は、例えば、キャリパを大きく戻すこと/キャリパの引き摺りを小さくすることと併せて用いることができる。
【0028】
[0045]上記のように、第1液室138および第3液室146が一定の容積であるという特徴によって、ハイブリッド車両または電動車両での使用など、回生ブレーキをかけることに関する追加的な有利性が提供される。
図9および
図10は、回生エンジンブレーキが例えば前輪車軸に付与されているときに液圧制御装置22がブレーキ圧を釣り合わせるのに使用される、回生ブレーキの第1モードを例示する。
図9は、回生する前の状態における液圧ブレーキシステム10を例示する。第1の圧力P1が第1液室138および第3液室146にあり、上記の方法でブースタ30によって発生させられた、より高い第2の圧力P2が第2液室142および第4液室150にある。液圧制御装置22は、それの一連の弁を介して第2の圧力P2を4つの車輪ブレーキ26のすべてに付与するように作動可能である。
図10は、回生ブレーキの状態の開始において起こる状態を例示する。横滑り防止装置は、液圧制御装置22のモータを利用して、前輪車軸でエンジンブレーキを発生させる回生トルクに応じて4輪すべてのブレーキ圧を実質的に釣り合わせる。この釣り合わせがあるときには、前輪車軸の車輪ブレーキ26に対して、前輪車軸ではより低い液圧が必要とされる。そのため、液圧制御装置22は、より低い第1の圧力P1(または他のより低い圧力)だけを前輪車軸の車輪ブレーキ26に選択的に付与する一方で、より高い第2の圧力P2を後輪車軸で車輪ブレーキ26に付与する。
【0029】
[0046]第1液室138および第3液室146の容積が一定であるため、特定の車輪ブレーキ26に対して液圧を調整する液圧制御装置22の作動にもかかわらず、回生ブレーキの状態への移行の間または回生ブレーキの作動の間、ブレーキペダル14を通じた運転者の足への反力感はない。このことによって、ブレーキブースタ30は、このタイプの回生ブレーキシステムに対して特に有益とされている。
【0030】
[0047]
図11および
図12は、ブースタ30の4つの車輪圧力制御回生ブレーキ能力を例示する。
図11はまた、回生の開始前のシステム圧力を例示する。このシステムにおいては、一方の車軸または両方の車軸に付与することが可能な回生エンジンブレーキが発生し、横滑り防止装置は車輪ブレーキ圧力を釣り合わせるようには利用されない。回生が
図12で開始すると、ブースタ30は、(ねじ駆動装置38に適用されるモータトルクの制御を介して)出力圧をより低い第1の圧力P1へと減少し、発生するエンジンブレーキを補完する。液圧制御装置22は、4つの車輪ブレーキ26での圧力を補完する、あるいは、釣り合わせるようにすることなく、圧力P1を4つの車輪ブレーキ26すべてに単に適用する。また、第1液室138および第3液室146の容積が一定であるため、この場合には、液圧制御装置22の代わりにブースタ30によって補完される、回生ブレーキの状態への移行の間または回生ブレーキの作動の間、ブレーキペダル14を通じた運転者の足への反力感はない。これによってもまた、ブレーキブースタ30は、回生ブレーキシステムに対して特に有益とされている。
【0031】
[0048]
図13〜
図19は、ブレーキペダル14、マスタシリンダ18、および液圧制御装置22を備えた液圧ブレーキシステム10’に使用される、本発明によるブレーキブースタ30’の第2の実施形態を例示する。ブレーキブースタ30’は、多くの点においてブレーキブースタ30と同様であり、同様の部品には、プライム記号(’)で指定された同様の参照番号が付与されている。ブレーキブースタ30から異なることだけが、以下で詳細に説明される。
【0032】
[0049]ブレーキブースタ30’は、変更されたねじ駆動装置200を有する。例示の回転子204は、永久磁石208とねじ駆動装置200のナット212とを有する。ナットは、第1ナット部212aおよび第2ナット部212bを規定する。回転子204は、ねじ駆動装置200の長手方向軸線64’に沿った回転子204の制限された変位を許容するアンギュラ軸受60’に回転自在に支持されている。
【0033】
[0050]例示のねじ駆動装置200は、2つの別体で鏡像とされた駆動装置を同時に提供するように対称的に構成されており、それら駆動装置の各々は長手方向軸線64’と同軸となっている。これにより、単体のブースタ30’は、4つの車輪ブレーキ26すべてを、2つの別々の入力および出力で作動させることができる。しかしながら、他の実施形態においては、ブースタ30’は、この2つの対称とされた装置を有する必要はなく、代わりに、2つ完全に別体のブースタの態様を取っていてもよく、それぞれが例示のブースタ30’の半分(例えば、左側または右側)と同様の方法で作動すればよい。
【0034】
[0051]各駆動装置は、ナット212のナット部212a、212bにそれぞれ受け入れられたねじ216a、216bをさらに有する。ナット212が回転子204によって第1方向に回転すると、ねじ216a、216bは第1方向に移動(例えば、変位)する。
図14および
図15を参照すると、回転子204が第1方向に回転すると、ナット212が回転させられ、左側のねじ216aが左へと変位させられ、右側のねじ216bが右へと変位させられる。同様に、
図16に示すように、回転子204が第1方向と反対の第2方向に回転すると、ナット212が反対に回転させられ、左側のねじ216aが右へと変位させられ、右側のねじ216bが左へと変位させられる。例示のねじ駆動装置200は、ボールねじ駆動であり、各ねじ216a、216bとそれぞれのナット部212a、212bとの間に(例えば、従来から理解されているように、それぞれの溝またはねじ山に)配置された複数のボール220をさらに有する。
【0035】
[0052]各ねじ216a、216bは、ブースタ30に関して上記で説明した同じ理由のため、ピストン92’のそれぞれの端部壁102’に選択的に当接して開口110’を封止するように構成されたシール面224a、224bをそれぞれ有する。シール面224a、224bは、シール部材を有していてもよく、あるいは、封止できる材料から形成されていてもよい。それぞれの非回転および付勢部材170’は、ねじ216a、216bおよびそれぞれのピストン端部壁102’の間で接続されている。
図13に例示された休止位置において、部材170’は、ねじ216a、216bを、それぞれのピストン92’から離して、例示された真ん中の休止位置に向かって付勢するように作用する。具体的には、モータ40’によって回転子204にトルクが付与されていない場合、付勢部材170’はねじ216a、216bを例示の休止位置へと変位させることになる。部材170はまた、それぞれのピストン92’とねじ216a、216bとの間での相対回転を防ぐことになる。例示の付勢部材170’は圧縮ばねである。
【0036】
[0053]ハウジング34’と、ピストン組立品88’(すなわちピストン92’)と、シール80’および134’とは共に、第1液室228、第2液室232、第3液室236、および第4液室240を区画する。例示の実施形態では、液室228、232、236、および240のすべてが、ねじ駆動装置200の長手方向軸線64’と同軸となっている。第1液室228および第3液室236は、ねじ駆動室76’の両側ですぐに隣接している。液室228、232、236、および240は、開口154、158、162、および166に関し上述されたのと同じ開口154’、158’、162’、および166’を有する。
【0037】
[0054]開口154’と、第1液室228と、第2液室232と、開口162’とは共に1つの回路を規定する一方で、開口158’と、第3液室236と、第4液室240と、開口166’とは共に第2の回路を規定する。第1液室228内のねじ216aのシール面224aが対応するピストン端部壁102’と係合して開口110’を封止する場合(
図14〜
図17および
図19参照)、第1液室228および第2液室232は、第1液室228の液圧作動液が第2液室232に流れ込むことができないように、互いから流体的に分離される。この流体的な分離によって、ブレーキペダル14は車輪ブレーキ26から切り離されることになり、アンチロック(ABS)やアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)などのブレーキ状態の間に、ブレーキペダル14で感じられるペダルの反力感がなくなることになる。第1液室228内のねじ216aのシール面224aが対応するピストン端部壁102’と非係合となった場合、それによって開口110’は封止されなくなり(
図13および
図18参照)、第1液室228および第2液室232は互いから流体的に分離されず、第1液室228の液圧作動液は第2液室232に自由に流れ込むことができる。
【0038】
[0055]同様に、第3液室236内のねじ216bのシール面224bが対応するピストン端部壁102’と係合して開口110’を封止する場合(
図14〜
図17および
図19参照)、第3液室236および第4液室240は、第3液室236の液圧作動液が第4液室240に流れ込むことができないように、互いから流体的に分離される。また、この流体的な分離によって、ブレーキペダル14は車輪ブレーキ26から切り離されることになり、アンチロック(ABS)やアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)などのブレーキ状態の間に、ブレーキペダル14ではペダルの反力感がなくなることになる。第3液室236内のねじ216bのシール面224bが対応するピストン端部壁102’と非係合となった場合、それによって開口110’は封止されなくなり(
図13および
図18参照)、第3液室236および第4液室240は互いから流体的に分離されず、第3液室236の液圧作動液は第4液室240に自由に流れ込むことができる。
【0039】
[0056]ここで、液圧ブレーキシステム10’の作動を、
図13〜
図19に関して説明する。
図13は、運転者がアクセルペダル(図示せず)を押し下げ、ブレーキペダル14を押し下げていない休止位置のブースタ30’を例示する。この位置において、両ねじ216a、216bは、シール面224a、224bがそれぞれのピストン端部壁102’と非係合となるように、内側に最も後退した位置にある。それぞれの非回転および付勢部材170’は、隣接するねじ216a、216bおよびピストン端部壁102’の間で接続されている。
図13に例示された休止位置において、部材170’は、ねじ216a、216bを、それぞれのピストン92’から離して、例示された真ん中の休止位置に向かって付勢するように作用する。具体的には、モータ40’によって回転子204にトルクが付与されていない場合、付勢部材170’はねじ216a、216bを例示の休止位置へと変位させることになる。部材170’はまた、それぞれのピストン92’とねじ216a、216bとの間での相対回転を防ぐことになる。
【0040】
[0057]
図14は、ねじ216a、216bのシール面224a、224bがそれぞれのピストン端部壁102’と係合して開口110’が封止される待機位置のブースタ30’を例示する。第1液室228および第2液室232、ならびに、第3液室236および第4液室240は、互いから流体的に分離される。待機位置は、使用者が、アクセルペダルを離しているが(つまり、アクセルペダルを押し下げていないが)まだブレーキペダル14を押し下げていないときに生じる。システム10’は、以後に起こり得るブレーキの筋書きを予測する。モータ40’は、制御器を介して、アクセルペダルが押し下げられていない位置にあることを検出するセンサ、または、いくつかの他のエンジンパラメータセンサによって作動させられ、また、電流がモータ40’に供給されて回転子204が回転させられ、シール面224a、224bが対応する開口122’を封止するのに十分となるように、ねじ216a、216bをそれぞれのピストン92’と係合するように移動させる。ねじ216a、216bの移動は、部材170’の付勢力には打ち勝つが、付勢装置96’の付勢力に打ち勝ってピストン92’を動かすにはまだ相当の差がある。回転子204に付与されるトルクは、この待機位置を実現するように制御される。
【0041】
[0058]
図15は、使用者の操作によるブレーキの作動を例示しており、使用者が所望のブレーキに向けて力をブレーキペダル14に付与している。モータ40’に接続された制御器は、ブレーキペダル移動距離、ブレーキペダル14に付与される力、マスタシリンダ圧力のうちの少なくとも1つを決定または検出し、モータ40’に信号を送り、それに伴う大きさのトルクを回転子204に加えてねじ216a、216bをそれぞれのピストン92’に向かってさらに移動させる。シール面224a、224bおよびそれぞれのピストン端部壁102’の係合は、ピストン92’をねじ駆動室76’から離すように押し、付勢装置96’の付勢に打ち勝つ。第2液室232および第4液室240の容積は、変化(つまり減少)させられ、第2液室232および第4液室240の液圧作動液は、マスタシリンダ18で発生して第1液室228および第3液室236にある圧力P1より大きい圧力P2に加圧される。第2液室232内の作動液は、開口162’を通じて、1つまたは複数の車輪ブレーキ26に制御適用するために液圧制御装置22に押し込まれる。同様に、第4液室240内の作動液は、開口166’を通じて、1つまたは複数の別の車輪ブレーキ26に制御適用するために液圧制御装置22に押し込まれる。ピストン92’に対して行われる仕事のすべてまたはほとんどすべては、モータ40’によるねじ216a、216bの移動の結果である。
【0042】
[0059]圧力P1に加圧された作動液は、マスタシリンダ18から第1液室228および第3液室236へと流れ込むが、分離された第2液室232および第4液室240に直に流れ込むことは防止されている。同様に、第2液室232および第4液室240から第1液室228および第3液室236にそれぞれ逆流することが防止されている。そのため、ブレーキペダル14は車輪から切り離されることになり、アンチロックブレーキ、トラクション制御ブレーキ、アダプティブ・クルーズ・コントロール、およびその他の使用者によって開始されないブレーキ状態の間に通常感じられる、ペダルの反力感がなくなる。液圧ブレーキシステム10’はまた、エンジンの吸気から完全に独立している。
【0043】
[0060]ブースタ30と異なり、第1液室228および第3液室236は、作動中に容積が一定となっておらず、使用者によって開始されるブレーキ状態の間にブレーキペダルの操作感が変化することになる。この点において、システム10で使用された任意でのペダル感覚シミュレータ28は、システム10’では使われる必要がない。
【0044】
[0061]
図16は、使用者がブレーキの作動を停止(つまり、ブレーキペダル14に圧力を付与するのを停止)した後のブースタ30’の戻り位置を例示する。制御器は、モータ40’に回転子204へのトルクを逆方向にするように信号を送り、ねじ216a、216bを休止位置に向かって後退させる。付勢装置96’は、後退の間、ピストン端部壁102’をシール面224a、224bと係合させて封止する状態に維持する。その結果、ブレーキペダル14にさらに力が付与されない場合は、ねじ216a、216bおよびピストン92’が
図13に示された休止位置まで戻ることになる。
【0045】
[0062]
図17は、アダプティブ・クルーズ・コントロールの作動など、ブースタ30’の非使用者作動ブレーキ位置を例示する。この状態で、使用者はブレーキペダル14を全く押し下げておらず、代わりに、ブレーキは車両システムによって完全に開始されている。制御器は、モータ40’にトルクを付与するように信号を送り、ねじ216a、216bは、車両システムの必要性に基づいて望まれるようにピストン92’に係合してピストン92’を移動させる。
【0046】
[0063]
図18は、モータ40’が作動不可能となる電気的故障またはブースタモータ故障を車両が被ったときの、ブースタ30’の使用者作動ブレーキ位置を例示する。車両がなお停止可能であることを確保するため、使用者のブレーキペダル14の押し下げによってマスタシリンダ18で加圧された液圧作動液は、開口154’、158’をそれぞれ通って第1液室228および第3液室236の各々に入り、開口110’から第2液室232および第4液室240を素通りすることができ、それぞれの開口162’、166’を通って液圧制御装置22まで流れ続けることができる。そのため、液圧制御装置22はそれでもなお液圧作動液を加圧して車輪ブレーキを制御する。この状態において、ブースタ30’は、使用者の操作による圧力増加に抵抗を与えることはない。さらに、負圧ブースタがないため、負圧ブースタのダイアフラムの戻しばねの力(例えば、200N超の抵抗力)に伴う使用者への抵抗力がない。
【0047】
[0064]
図19は、ブースタ30’の無効ストローク調整機能を例示する。ブースタ30’は、圧力が車輪ブレーキ26に付与される前に、ブレーキペダル14に必要とされる長い移動距離のためにブレーキペダル14の操作感を柔らかくさせてしまうものである無効ストロークを、埋め合わせる、あるいは、調整するように制御することができる。
図19に示すように、待機位置は、
図14に示される位置(点線300で指示される)から、ピストン92’により外側への力を付与してピストン92’をより移動させるようにねじ216a、216bが制御される調整された位置(直線304で指示される)へと調整され得る。この調整された待機位置において、使用者がブレーキペダル14を押し下げたときには、柔らかさまたは無効ストロークが小さくなることで、ブレーキがより硬くなる、つまり、より良い応答性となる。この調整は、モータ40’を有する制御器が、
図14の待機位置においてよりも、少し大きなトルクを回転子204に付与してねじ216a、216bを少し大きく駆動することによって制御される。調整の量は、所望のブレーキ操作感を得るために変化させることができる。この特徴は、例えば、キャリパを大きく戻すこと/キャリパの引き摺りを小さくすることと併せて用いることができる。
【0048】
[0065]本は発明の様々な特徴および有利性は、以下の特許請求の範囲で説明される。