特許第6144933号(P6144933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144933
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20170529BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20170529BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20170529BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20170529BHJP
   B60C 3/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B60C13/00 F
   B60C11/03 B
   B60C5/00 H
   B60C15/00 B
   B60C3/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-49117(P2013-49117)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-172565(P2014-172565A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】野中 寛之
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−542129(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/033778(WO,A1)
【文献】 特開2008−279796(JP,A)
【文献】 特開2010−167903(JP,A)
【文献】 特開2010−012881(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0125468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
B60C 3/06
B60C 5/00
B60C 9/02、 9/08
B60C 11/03、11/04
B60C 15/00、15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のビード部と、該ビード部の径方向外側に延びる1対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部とを有し、一方のビード部からトレッド部を通り他方のビード部にわたって延びるカーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層のベルト層からなるベルトを具えるタイヤであって、
前記カーカスは、前記ビード部間に延びるカーカス本体部と、該カーカス本体部から前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返され、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側で終端するカーカス折り返し部と、を有し、
前記サイドウォール部のいずれか一方に、前記カーカス本体部に沿って補強コード層が延び、該補強コード層のタイヤ径方向外側端は、前記ベルトの最大幅ベルト層端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、同内側端は、前記カーカス折り返し部の末端よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記補強コード層のタイヤ径方向内側端は、前記ビード部のビードベースから、前記タイヤの断面高さの40%以上55%以下の領域に位置すること、を特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記補強コード層のタイヤ径方向内側端と、前記カーカス折り返し部の末端とのタイヤ径方向の間隔が15mm以上である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤを適用リムに装着し、所定空気圧を充填し、無負荷とした状態における、前記カーカス折り返し部の末端は、前記ビード部に配したビードコアのタイヤ径方向最外側点と、前記適用リムのリムフランジの先端との間に位置する、請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド部に区画形成される陸部を有し、前記補強コード層が配置される前記サイドウォール部側の陸部はブロック状であり、前記補強コード層が配置されない前記サイドウォール部側の陸部はリブ状である、請求項1からのいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記補強コード層は、前記カーカスよりも切断時伸びが大きい、請求項1からのいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤを軽量化しつつ、サイドウォール部におけるピンチカット故障を抑制し得るタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中にタイヤが、路面脇の縁石や路面のキャッツアイ等の段差に乗り上げた際、これらの段差とタイヤに装着したリムのフランジとの間にタイヤのサイドウォール部が噛み込まれて、該サイドウォール部に延在するカーカスやサイドウォールゴム等が損傷する、「ピンチカット故障」が生じることが知られている。
【0003】
特に、自動車の低燃費化に寄与する転がり抵抗の小さいタイヤを提供するための一手段として、タイヤのサイドウォール部のゴムゲージを薄くして軽量化すると、該サイドウォール部のタイヤ径方向の剛性が比較的小さくなるため、上記したピンチカット故障が生じ易い。そこで、例えば、特許文献1には、薄ゲージ化したサイドウォール部外表面に、タイヤ周方向に直交する向きに帯状に延在する、複数のゴム製の突起を一定間隔で小刻みに配置することにより、サイドウォール部のタイヤ径方向の剛性を補填してピンチカット故障の抑制を試みたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−279954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サイドウォール部外表面に、タイヤ周方向にわたって複数のゴム製の突起を設けることは、サイドウォール部に使用するゴム量を、少なくとも突起部分において増加させるから、タイヤの軽量化の妨げとなっている。
そこで、本発明の目的は、サイドウォール部の薄ゲージ化による軽量化を維持したまま、サイドウォール部におけるピンチカット故障を抑制し得るタイヤ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)本発明のタイヤは、1対のビード部と、該ビード部の径方向外側に延びる1対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間に跨るトレッド部とを有し、一方のビード部からトレッド部を通り他方のビード部にわたって延びるカーカスのクラウン部の径方向外側に、少なくとも1層のベルト層からなるベルトを具えるタイヤであって、前記カーカスは、前記ビード部間に延びるカーカス本体部と、該カーカス本体部から前記ビード部にてタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返され、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向内側で終端するカーカス折り返し部と、を有し、前記サイドウォール部のいずれか一方に、前記カーカス本体部に沿って補強コード層が延び、該補強コード層のタイヤ径方向外側端は、前記ベルトの最大幅ベルト層端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、同内側端は、前記カーカス折り返し部の末端よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記補強コード層のタイヤ径方向内側端は、前記ビード部のビードベースから、前記タイヤの断面高さの40%以上55%以下の領域に位置すること、を特徴とする。
かかる構成の本発明のタイヤによれば、一定領域にのみ補強コード層を配置することによってサイドウォール部のタイヤ径方向の剛性を補填できるので、サイドウォール部の薄ゲージ化による軽量化を維持したまま、サイドウォール部におけるピンチカット故障を抑制することができる。また、補強コード層のタイヤ径方向内側端がサイドウォールゴムから剥離するのを抑制でき、また、タイヤを軽量化しつつ、ピンチカット故障を十分に抑制することができる。
【0007】
(2)本発明のタイヤは、前記補強コード層のタイヤ径方向内側端と、前記カーカス折り返し部の末端とのタイヤ径方向の間隔が15mm以上であること、が好ましい。
この構成によれば、カーカス折り返し部の末端と、補強コード層のタイヤ径方向内側端とに生じる応力が一箇所に集中するのを回避できるので、サイドウォールゴムに亀裂が生じ難くなる。
【0009】
(3)本発明のタイヤにおいて、前記タイヤを適用リムに装着し、所定空気圧を充填し、無負荷とした状態における、前記カーカス折り返し部の末端は、前記ビード部に配したビードコアのタイヤ径方向最外側点と、前記適用リムのリムフランジの先端との間に位置すること、が好ましい。
この構成によれば、タイヤをより軽量化しつつ、ピンチカット故障を十分に抑制することができる。
【0010】
(4)本発明のタイヤは、前記トレッド部に区画形成される陸部を有し、前記補強コード層が配置される前記サイドウォール部側の陸部はブロック状であり、前記補強コード層が配置されない前記サイドウォール部側の陸部はリブ状であること、が好ましい。
この構成によれば、補強コード層を有するサイドウォール部と有しないサイドウォール部とではタイヤ径方向の剛性差があるところ、トレッド部にも同様に剛性差をつけることによって、上記の1対のサイドウォール部間の剛性差を相殺して、トレッド踏面における偏摩耗を抑制することができる。
【0011】
(5)本発明のタイヤにおいて、前記補強コード層は、前記カーカスよりも切断時伸びが大きいこと、が好ましい。
この構成によれば、カーカスのプライコードの強度を大きくするのに比し、生産コストを抑えることができる。
【0012】
なお、「タイヤ最大幅位置」とは、タイヤを適用リムに装着し、所定空気圧を充填し、所定荷重を負荷した際の、サイドウォール部間の直線距離、すなわち、総幅からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅のうち最大となるときの、タイヤ径方向位置をいう。なお、リムガードを有するタイヤにおいては、リムガードを含まない仮想外輪郭線上にて測定するものとする。
【0013】
また、ここでいう「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO STANDARD MANUAL、米国ではTRA YEAR BOOK等に記載されている、適用サイズにおける標準リムをいう。また、「所定空気圧」とは、上記のJATMA等に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧をいうものとし、「所定荷重」とは、前記最大負荷能力に相当する荷重をいうものとする。
【0014】
なお、本発明のタイヤは、補強コード層を有するサイドウォール部が、車輌装着状態において車輌外側となる状態の下で使用に供す。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、タイヤを軽量化しつつ、サイドウォール部におけるピンチカット故障を抑制し得るタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤの半部の、タイヤ幅方向断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係るタイヤの半部の、同断面図である。
図3】本発明のさらに他の実施形態に係るタイヤの半部の、同断面図である。
図4図3に示すタイヤのビード部周辺の、タイヤ幅方向の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明のタイヤを、その実施形態を例示して詳細に説明する。このタイヤは、1対のビード部11(一方のみを図示)と、該ビード部11の径方向外側に延びる1対のサイドウォール部12(一方のみを図示)と、両サイドウォール部12の間に跨るトレッド部13とを有し、一方のビード部11からトレッド部13を通り他方のビード部11(図示せず)にわたって延びるカーカス2のクラウン部のタイヤ径方向外側に、少なくとも1層、図示例では、コードを赤道に対し傾けて配置した傾斜ベルト層3aおよび3bの2層からなるベルト3と、例えばコードを赤道に沿って配置したベルト補強層4と、を具えている。また、上記のカーカス2は、ビード部11間に延びるカーカス本体部2aと、該カーカス本体部2aからビード部11にてタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されるカーカス折り返し部2bと、を有している。
【0018】
ここにおいて、本発明に係るタイヤは、1対のサイドウォール部12のいずれか一方に、カーカス本体部2aに沿って延びる補強コード層Rを有し、該補強コード層Rのタイヤ径方向外側端ROUTは、ベルト3の最大幅ベルト層(図1では、3a)の末端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、同内側端RINは、カーカス折り返し部2bの末端eよりもタイヤ径方向外側に位置すること、が肝要である。
【0019】
なぜなら、上述したとおり、ピンチカット故障は、走行中にタイヤが、例えば道路脇の縁石に乗り上げたり、または、ポットホールと呼ばれる路面の穴に落ちたりした際に、これらの段差と、タイヤに装着したリム7のフランジ7fとの間にサイドウォール部12が噛み込まれて、サイドウォール部12に延在するカーカス2やサイドウォールゴム5等が損傷する故障であることから、サイドウォール部12に補強コード層Rを配置して該サイドウォール部12のタイヤ径方向の剛性を大きくすることにより、サイドウォール部12をフランジ7fと段差との間に噛み込まれ難くし、よってピンチカット故障の発生を抑制する。
【0020】
ところで、このサイドウォール部のタイヤ径方向の剛性を大きくする手段としては、カーカス層におけるプライコードの打ち込み本数を増やしたり、より強力の大きいプライコードを用いたりすることや、カーカスの折り返し部をトレッド付近にまで延在させたり、カーカスプライを2枚配置させたりすること等が考えられるが、これらの方法では、カーカス自体の重量が大きくなってしまうため、タイヤを軽量化するのに適さない。
その点、本発明のタイヤによれば、補強コード層Rによって、ピンチカットを抑制するために必要となるサイドウォール部の剛性を補うことができるため、タイヤを軽量化するのに有利である。
【0021】
その際、上記の補強コード層Rのタイヤ径方向外側端ROUTを、ベルト3の最大幅ベルト層3aの末端よりもタイヤ幅方向内側に配置することが肝要である。すなわち、補強コード層Rのタイヤ径方向外側端ROUTがサイドウォールゴムやトレッドゴム中に配置される場合には、補強コード層Rに負荷される応力によって該外側端ROUTがサイドウォールゴムまたはトレッドゴムから剥離し易くなるのに対し、外側端ROUTを上記配置とすることによって負荷応力が低減される結果、ゴムからの剥離を回避することができる。
【0022】
さらに、ピンチカット故障は、サイドウォール部12のビード部11寄りでは生じ難いため、かかる部分に補強コード層Rを延在させる必要はなく、却って重量増をまねくことになるから、補強コード層Rのタイヤ径方向内側端RINは、カーカス折り返し部2bの末端eよりもタイヤ径方向外側までの配置とする。
【0023】
一方、カーカス折り返し部2bは、タイヤ最大幅位置WMAXよりもタイヤ径方向内側で終端している必要がある。
すなわち、上述したように、ピンチカット故障はビード部11寄りでは生じ難いため、かかる部分にカーカスを2重に配置する必要は少なく、当該部分へのカーカス折り返し部2bの配置を省略すれば、タイヤの軽量化に有利となる。
【0024】
なお、上記の、補強コード層Rと最大幅ベルト層3aとのタイヤ幅方向の重複長さdは、補強コード層Rのタイヤ径方向外側端ROUTでの剥離を確実に回避する観点から、5mm以上であることが好ましい。
【0025】
なお、補強コード層は、カーカスプライのコードと平行な、有機繊維を配したトリートからなることが好ましい。
【0026】
また、図2に示すように、補強コード層Rのタイヤ径方向内側端RINと、カーカス折り返し部2bの末端eとの、タイヤ径方向の間隔αが15mm以上であることが好ましい。
【0027】
かように配置することにより、補強コード層Rのタイヤ径方向内側端RINおよびカーカス折り返し部2bの末端eにおいては、転動負荷時に生じる応力が大きいところ、これらを適正な間隔をあけて配置することによって、サイドウォール部での応力の集中が回避されるため、サイドウォールゴムに亀裂が生じ難くなる。
【0028】
さらに、図3に示すように、補強コード層Rのタイヤ径方向内側端RINは、ビード部11のビードベースBLから、タイヤの断面高さSHの40%以上55%以下のタイヤ径方向領域βに位置している。
【0029】
このように、補強コード層Rのタイヤ径方向内側端RINが、タイヤ断面高さSHの40%以上の位置にあれば、内側端RINはタイヤの歪が少ない領域に配置されるため、サイドウォールゴム5からの剥離を抑制することができる。
また、同内側端RINがタイヤ断面高さの55%以下にあれば、サイドウォール部12におけるピンチカット故障をより確実に抑制しながら、タイヤを軽量化することができる。
【0030】
また、図4には、図3に示すタイヤのビード部周辺の、タイヤ幅方向断面図を拡大して示している。本発明において、カーカス折り返し部2bの末端eは、ビード部11のビードコア1のタイヤ径方向最外側点Pと、適用リム7のリムフランジ7fの先端との間の領域γ内にて終端していることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、カーカス折り返し部2bの長さがさらに短くなるため、ピンチカットを十分に抑制しながら、タイヤをより軽量化することができる。
なお、カーカス折り返し部2bがカーカス本体部2a側へ引き抜かれるのを回避するために、カーカス折り返し部2bの末端eを、ビードコア1のタイヤ径方向最外側点Pより、10mm以上タイヤ径方向外側に配置することがより好ましい。
【0032】
さらに、本発明のタイヤにおいては、トレッド部13に区画形成される陸部9を有し、補強コード層Rが配置されるサイドウォール部12側の陸部9はブロック状であり、補強コード層Rが配置されないサイドウォール部12′側(図示せず)の陸部9はリブ状であること、が好ましい。
【0033】
このように、タイヤ径方向の剛性が大きい、補強コード層Rを有するサイドウォール部12側の陸部9の剛性を、補強コード層Rを有しないサイドウォール部12′側の陸部9の剛性よりも小さくすることによって、サイドウォール部12の剛性差を相殺して、トレッド踏面の偏摩耗を抑制することができる。
【0034】
さらに、本発明のタイヤにおいては、補強コード層Rはカーカス2よりも切断時伸びが大きいこと、が好ましい。この場合、延在面積の大きいカーカス2のプライ強力を大きくせずとも、延在面積の小さい補強コード層Rのプライ強力を大きくすれば、ピンチカット故障を抑制できるので、生産コストを低減することができる。
【0035】
なお、本発明に係るタイヤにおいては、カーカス2を構成するカーカス層は1層であることが、タイヤを軽量化する観点から好ましいが、2層以上であってもよい。
【0036】
また、補強コード層Rは、カーカス2のタイヤ幅方向内側に配置しても、外側に配置してもよいが、図1〜3に示すように、カーカス2のタイヤ幅方向外側に配置するのが好ましい。なぜなら、カーカス2の内側よりも外側の方がタイヤ転動負荷時の歪みが小さく、補強コード層Rがサイドウォールゴム5から剥離しにくいからである。
【0037】
また、タイヤのサイドウォール部12の外表面からカーカス2までのサイドウォールゴム5のゲージが最も薄いところで、インナーライナーからカーカス2までのサイドウォールゴム5のゲージよりも小さいことが好ましい。この場合、タイヤのさらなる軽量化を図ることができる。また、走路中に生じるサイドウォール部12の歪みをゲージ厚の大きいインナーライナー側に負担させて、タイヤ外表面側の歪みを小さくすることができるため、補強コード層Rがサイドウォールゴム5から剥離し難くなる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。
発明例タイヤ1、2、4、5、7〜9、参考例3、6、および比較例タイヤ1〜2(ともに、タイヤサイズは195/65R13)を表1に示す仕様のもと試作し、サイドウォール部の耐ピンチカット性、タイヤ重量、および、補強コード層Rの耐剥離性を評価した。
【0039】
各供試タイヤは、図1に示す構成(比較例1に関しては、補強コード層Rを含まない)である。ここで、補強コード層Rのコードは、カーカス2の有するプライコードの延在方向と平行に延びている。また、これらの供試タイヤは、補強コード層Rを有するサイドウォール部12が車輌装着状態において車輌外側となるように装着されている。
【0040】
(耐ピンチカット性)
各供試タイヤを適用リム7に装着し、所定内圧を充填してテスト用車両に装着し、路面のキャッツアイ上を、所定の走行速度で通過する試験を行った。繰り返し走行を行いながら走行速度を上げていき、タイヤのサイドウォール部12に外傷が生じた速度、および、エア漏れが生じた速度を計測した。結果は、比較例タイヤ1のこれらの速度を足した値を100とする指数にて示した。なお、指数が大きいほど、耐ピンチカット性に優れていることを示す。
【0041】
(タイヤ重量)
各供試タイヤの重量を測定して、その結果を、比較例タイヤ1の測定値を100とする指数にて示した。数値が小さいほど軽量であり、良好である。
【0042】
(耐剥離性)
各供試タイヤを適用リム7に装着し、所定内圧を充填してテスト用車両に装着し、一般道を60000km走行させた後、タイヤを解剖して補強コード層の端部が、サイドウォールゴムから剥離しているか否かを確認した。
【0043】
表1に示すように、本発明に係る発明例タイヤ1、2、4、5、7〜9、参考例3、6、は、いずれも、ピンチカット故障を抑制しながら、比較例タイヤ1または2よりも、タイヤを軽量していることが分かった。また、補強コード層Rおよびカーカス2の配置が適切であれば、コードがゴムから剥離しづらいことも明らかとなった。
【0044】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、タイヤを軽量化しつつ、サイドウォール部におけるピンチカット故障を抑制し得るタイヤを提供できる。
【符号の説明】
【0046】
1:ビードコア 2:カーカス 2a:カーカス本体部 2b:カーカス折り返し部 3:ベルト 3a、3b:傾斜ベルト層 4:ベルト補強層 5:サイドウォールゴム 7:リム 7f:リムフランジ 8:周方向溝 9:陸部 11:ビード部 12:サイドウォール部 13:トレッド部 BL:ビードベース R:補強コード層 e:カーカス折り返し部の末端 RIN:補強コード層のタイヤ径方向内側端 ROUT:補強コード層のタイヤ径方向外側端 SH:タイヤ断面高さ
図1
図2
図3
図4