特許第6144936号(P6144936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144936
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】穿刺具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20170529BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A61M25/06 512
   A61M5/158 500Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-56568(P2013-56568)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180412(P2014-180412A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】中島 淳
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−175112(JP,A)
【文献】 特開2005−261938(JP,A)
【文献】 特開平10−165511(JP,A)
【文献】 特開平09−234250(JP,A)
【文献】 特表2000−501960(JP,A)
【文献】 特表2009−504242(JP,A)
【文献】 米国特許第06638254(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外針と、前記外針の基端部を保持すると共に、側面に突起部位を有する外針ハブと、前記外針に先端部が挿入される内針と、前記内針の基端部を保持する筒状の内針ハブと、前記外針を覆うプロテクタとを備える穿刺具であって、
前記プロテクタは、前記外針を収容する円筒部と、前記円筒部から軸線方向に延設されてプロテクタの上面及び側面を形成すると共に、下面及び前記円筒部の反対端部に開口部を有する本体部と、本体部の前記円筒部の反対端部側の外周面に形成されたリブ状フレームと、本体部の前記円筒部の反対端部側の内周面に形成された被係止突起とを有し、
前記内針ハブは、一端側の外周面に形成された前記被係止突起を係止するリブ状突起を有し、
前記プロテクタの下面の開口部に前記外針ハブの突起部位が配置され、前記プロテクタの円筒部の反対端部側の開口部から内針ハブの一端側を挿入することにより、前記本体部の被係止突起が前記内針ハブのリブ状突起に係止され、前記外針が前記円筒部に収容されることを特徴とする穿刺具。
【請求項2】
前記リブ状フレームの本体部外周面からの高さが、使用者の指がかかる寸法に形成されていることを特徴する請求項1記載の穿刺具。
【請求項3】
前記プロテクタは、本体部の内周面から突出して、円筒部の反対端部側の開口部から本体部の軸線に沿って前記軸線と平行に延設された接触部を有し、
前記プロテクタの円筒部の反対端部側の開口部から内針ハブの一端側を挿入した際、前記接触部が内針ハブの外周面に圧接することを特徴する請求項1又は請求項2記載の穿刺具。
【請求項4】
前記プロテクタは、本体部の内周面から突出して、前記円筒部の反対端部側の開口部から本体部の軸線に沿って前記軸線と平行に延設された被ガイド部を有し、
前記リブ状突起は、所定の間隔をあけて形成され、前記プロテクタの円筒部の反対端部側の開口部から内針ハブの一端側を挿入する際、前記被ガイド部が前記リブ状突起間を挿通し、前記リブ状突起に案内されることを特徴する請求項1又は請求項2記載の穿刺具。
【請求項5】
前記リブ状突起より内針の基端部側の内針ハブの外周面に、前記被ガイド部が接する押え突起が形成されていることを特徴する請求項4記載の穿刺具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穿刺具に関し、特に外針(カテーテル)を血管に留置するための穿刺具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているような外針を血管に留置するための穿刺具が知られている。
このような穿刺具は、外針と外針ハブと、外針に先端部が挿入される内針と、内針の基端部を内部に保持する筒状の内針ハブとを備えている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載された穿刺具を図15に基づいて説明する。
この穿刺具100は、図15(A)に示すように、外針102aと外針ハブ102bと、外針102aに先端部が挿入される内針103と、内針の基端部を内部に保持する筒状の内針ハブ101とを備えている。
【0004】
そして、穿刺具100の使用方法について説明すると、図15(A)に示すように、内針ハブ101内にスライドカバー104が収納され、外針102aの先端から内針103の先端103aが突出した状態で、患者の身体110に穿刺(刺針)される。
【0005】
その後、外針102aを体内に送った後(図15(B)参照)、外針102aを体内に刺し置いた状態で、内針ハブ101を手元に引っ張ることにより、スライドカバー104が伸長し、内針の先端103aが体内から抜ける(図15(C)参照)。
そして、更に同方向に内針ハブ101を引っ張ることで、手に触れることなく、内針103の先端103aが同スライドカバー104内に保持される。
【0006】
次いで、斯かる状態で内針ハブ101を周方向に回動させ(図15(D)参照)、スライドカバー104の全体が同方向に回転して先端側のホルダー105が解除される(取り外される)。
その結果、外針102aのみを体内に留置し、内針103を収容した内針ハブ101を取り外すことができ、内針103をそのまま廃棄することができる(図15(E)参照)。
【0007】
前記穿刺具にあっては、図15に示した形状の他に、図16に示すように、外針ハブ102bの左右両側にそれぞれ延設され、外針ハブ102bと一体形成された一対の翼105を有するものがある。前記一対の翼106は、これを粘着テープ等により皮膚に固定し、カテーテル102のずれを防止するために用いられる。尚、このような穿刺具については、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−000727号公報
【特許文献2】特開平10−179734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の穿刺具においては、患者の身体110に外針102aを穿刺する際、外針102aの先端から内針103の先端103aが突出した状態となっている必要がある。そのため、穿刺具の使用前にあっては、内針103と外針102aとの軸方向の位置がずれないように、また安全面からキャップ状のプロテクタを外針102aおよび内針103に被せて保護したいという要求があった。
【0010】
しかしながら、図16に示すように外針ハブ102bの側面に翼106が設けられた穿刺具にあっては、前記プロテクタを被せる場合に、前記翼106が障害となる。
即ち、外針ハブ102bの全体を前記プロテクタで覆うことができないという課題があった。また、翼106を収容可能なプロテクタを形成すると、非常に大型なプロテクタになるという課題があった。
【0011】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、外針を保持する外針ハブに翼が設けられている場合にも、外針ハブを覆うためのプロテクタを大型化することなく確実に装着し、前記外針及び該外針から突出した内針を保護し、それらの位置ずれを防止すると共に安全面を確保でき穿刺具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明にかかる穿刺具は、外針と、前記外針の基端部を保持すると共に、側面に突起部位を有する外針ハブと、前記外針に先端部が挿入される内針と、前記内針の基端部を保持する筒状の内針ハブと、前記外針を覆うプロテクタとを備える穿刺具であって、前記プロテクタは、前記外針を収容する円筒部と、前記円筒部から軸線方向に延設されてプロテクタの上面及び側面を形成すると共に、下面及び前記円筒部の反対端部に開口部を有する本体部と、本体部の前記円筒部の反対端部側の外周面に形成されたリブ状フレームと、本体部の前記円筒部の反対端部側の内周面に形成された被係止突起とを有し、前記内針ハブは、一端側の外周面に形成された前記被係止突起を係止するリブ状突起を有し、前記プロテクタの下面の開口部に前記外針ハブの突起部位が配置され、前記プロテクタの円筒部の反対端部側の開口部から内針ハブの一端側を挿入することにより、前記本体部の被係止突起が前記内針ハブのリブ状突起に係止され、前記外針が前記円筒部に収容されることを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、前記プロテクタの本体部下面には、開口部が設けられるため、前記開口部に突起部位(図16に示した翼106など)を配置することができ、プロテクタを前記突起部位に干渉させずに内針ハブに嵌合させることができる。
即ち、外針ハブに翼などの突起部位が設けられている場合にも、プロテクタを大型化することなく確実に装着することができ、前記円筒部により外針及び該外針の先端から突出した内針を収容して保護し、それらの位置ずれを防止すると共に、安全面を確保することができる。
尚、前記本体部にリブ状フレームが形成されているため、下面及び前記円筒部の反対端部側に開口部を有する本体部の強度を増大させることができ、プロテクタの変形を抑制することができる。
【0014】
ここで、前記リブ状フレームの本体部外周面からの高さが、使用者の指がかかる寸法に形成されていることが望ましい。このようにリブ状フレームが形成されている場合には、使用者は片手で、リブ状フレームに指をかけてプロテクタを内針ハブから容易に取り外すことができる。
【0015】
また、前記プロテクタは、本体部の内周面から突出して、前記円筒部の反対端部側の開口部から本体部の軸線に沿って前記軸線と平行に延設された接触部を有し、前記プロテクタの円筒部の反対端部側の開口部から内針ハブの一端側を挿入した際、前記接触部が内針ハブの外周面に圧接することが望ましい。
このように、内針ハブの外周面は、本体部の内周面全体と圧接するのではなく、前記接触部と圧接するため、適度な摺動抵抗が得られ、プロテクタの装着、取り外す際の事故を抑制することができる。
【0016】
また、前記プロテクタは、本体部の内周面から突出して、前記円筒部の反対端部側の開口部から本体部の軸線に沿って前記軸線と平行に延設された被ガイド部を有し、前記リブ状突起は、所定の間隔をあけて形成され、前記プロテクタの円筒部の反対端部側の開口部から内針ハブの一端側を挿入する際、前記被ガイド部が前記リブ状突起間を挿通し、前記リブ状突起に案内されることが望ましい。
このように、プロテクタを内針ハブに装着する際に、プロテクタはガイドされ、内針ハブとプロテクタとを確実に嵌合させることができる。
【0017】
前記リブ状突起より内針の基端部側の内針ハブの外周面に、前記被ガイド部が接する押え突起が形成されていることが望ましい。
このように、前記被ガイド部が押え突起と接することにより、プロテクタの内針ハブに対するガタつきを防止することができる。特に、プロテクタを内針ハブに装着した際、プロテクタの下面開口部側への傾き(変形)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外針を保持する外針ハブに翼が設けられている場合にも、外針ハブを覆うためのプロテクタを大型化することなく確実に装着し、前記外針及び該外針から突出した内針を保護し、それらの位置ずれを防止すると共に安全面を確保でき穿刺具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる穿刺具の外観を示す斜視図である。
図2図2は、図1の穿刺具の側面図である。
図3図3は、図1における穿刺具のプロテクタを取り外した状態を示す斜視図である。
図4図4は、図1の穿刺具を分解した状態を示す斜視図である。
図5図5は、図1に示した穿刺具を示す図であって、(a)は縦断面図、(b)(a)と90°角度の異なる縦断面図である。
図6図6は、図1に示した穿刺具の内針ハブを示す図であって、(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
図7図7は、図6に示した内針ハブの斜視図である。
図8図8は、外筒を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は縦断面図、(c)は、(b)の90°方向が異なる縦断面図である。
図9図9は、内筒を示す斜視図である。
図10図10は、プロテクタの斜視図である。
図11図11は、プロテクタの下側(下面側)から見た斜視図である。
図12図12は、プロテクタの縦断面図である。
図13図12は、プロテクタ装着する手順を説明するための穿刺具の図であって、(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
図14図14は、図1に示された穿刺具を使用する手順を説明するため縦断面図である。
図15】従来の穿刺具にかかる動作状態を側面図である。
図16】従来の穿刺具の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかる穿刺具について、図1乃至図14に基づいて説明する。
穿刺具1は、図1図3に示すように、カテーテル2と、前記カテーテル2に先端部が挿入される内針3と、前記内針3の一端部(基端部)を保持する筒状の注射具4と、前記カテーテル2および前記内針3の先端を覆うプロテクタ5とを備えている。また、前記穿刺具1において、前記内針3を除く全ての部品は樹脂製である。尚、図1,2では、前記カテーテル2および前記内針3は、前記プロテクタ5に覆われて見ることができない。
【0021】
前記カテーテル2は、図3図4に示すように可撓性を有する中空の管からなる外針21と、外針21の基端部を保持する外針ハブ22とを有する。前記外針ハブ22には、その左右両側に延設された一対の翼22A(突起部位)が一体形成されている。前記一対の翼22Aは、これを粘着テープ等により患者の皮膚に固定し、カテーテル2のずれを防止するために用いられる。
【0022】
前記注射具4は、図4図5に示すように、筒状の内針ハブ41と、前記内針ハブ41の基端(紙面左端)に圧入によって取り付けられると共に、前記内針3の基端部が保持される略円筒状の針保持部42aを有する尾栓42とを備えている。
また、前記注射具4は、前記内針ハブ41の内部に進退自在に取り付けられた外筒6と、前記カテーテル2を把持する4つのアーム71Aを有し、前記外筒6の内部に進退自在に取付けられた内筒7とを備えている。
尚、本実施形態では、前記内筒7に、前記4つのアーム71Aが形成された場合を示しているが、2つ以上のアームでカテーテル2を保持できれば良い。
【0023】
前記内針ハブ41は略円筒状に形成され、前記内針ハブ41の先端側には、図4図7に示すように、本体部41aの筒径よりも拡径された筒状の嵌合部41bが形成されている。この嵌合部41bはプロテクタ5と嵌合するように構成されている。
また、内針ハブ41の後端部には、尾栓42が嵌合する開口部41cが設けられ、筒状の嵌合部41bの本体部41a側には、前記外筒6の軸部64が挿通する貫通孔41dが設けられている。そして、内針ハブ41の本体部41a及び嵌合部41b内に、前記外筒6が収容されるように構成されている。
【0024】
この嵌合部41bの外周面の先端部には、周方向に円弧状(先端側から見て円弧状)の複数のリブ状突起41eが形成されている(図では4個のリブ状突起が図示されている)。このリブ状突起41eは、プロテクタ5に形成された被係止突起5e(図11参照)を係止することにより、前記注射具4にプロテクタ5を装着(固定する)するものである。
【0025】
また、前記リブ状突起41eのうち隣接するリブ状突起41eは、図6に示すように所定の間隔tをあけて形成されている。
即ち、4個のリブ状突起41eは、2個のリブ状突起41eを一対として、内針ハブ41の先端側から見て左右対称に配置されている。そして、左右対称に配置されたリブ状突起41e間の間隔tは、プロテクタ5に形成された被ガイド部5h,5i(図11参照)が挿通するように、所定寸法に形成されている。
【0026】
更に、前記嵌合部41bの外周面に形成されたリブ状突起41eの後方(リブ状突起41eより内針の基端部側)には、内針ハブ41の軸線に沿って該軸線と平行に延設された押え突起41fcが設けられている。
この押え突起41fの下面41f1は、図6に示すように、左右対称に配置された一対のリブ状突起41eのうち、上側のリブ状突起41eの下面41e1の延長線上に配置されている。
即ち、前記リブ状突起41eと押え突起41fにより、プロテクタ5に形成され被ガイド突起5h,5iを確実に保持するように構成されている。
【0027】
前記外筒6は、図8に示すように、前記外筒6の軸線に沿って、軸部64に形成された(内筒7の進退方向に沿って形成された)溝部61と、前記4つのアーム71Aを収容するアーム開閉部62とを備え、全体として筒状に形成されている。
尚、前記4つのアーム71Aは、前記アーム開閉部62の内面の両側部に形成されたガイド溝部62Aに案内されながら進退可能に形成されている。
【0028】
前記溝部61は、図8(c)に示すように、前記外筒6の周面における上部および下部の2箇所に対称となるように形成されている。
また、前記アーム開閉部62は、図5に示すように、前記外筒6に前記内筒7が収容されている場合には、前記4つのアーム71Aは閉じられ前記カテーテル2を把持する。
一方、前記外筒6から前記内筒7が引抜かれた(進出した)場合には、図14(c)に示すように、ガイド溝部62A(アーム開閉部62)による規制がなくなるため、アーム71A自体の弾発力により、前記4つのアーム71Aは開き、前記カテーテル2を解放する。
【0029】
このように、前記4つのアーム71Aと、前記アーム開閉部62とによって、前記カテーテル2を把持する把持手段が構成され、前記4つのアーム71Aがアーム開閉部62内に後退している状態にあっては、図5に示すように、カテーテル2を把持する状態となり、前記4つのアーム71Aがアーム開閉部62から進出している状態にあっては、図14(c)に示すように、カテーテル2を解放する状態となる。
【0030】
前記内筒7は、図9に示すように、前記4つのアーム71Aを備えた首部71と、前記首部71よりも縮径した軸部72と、前記首部71および前記軸部72の中心を貫通し、前記内針3を挿通させる貫通孔73とを有し、全体として筒状に成形されている。
前記軸部72は、前記外筒6の前記溝部61内に収容され、移動可能に形成された突出部72Aと、前記貫通孔73内の内針3によって押し出されて起立し、前記溝部61に係合する起立片72Bとを備えている。
【0031】
前記突出部72Aは、前記溝部61のそれぞれに対応するように、前記軸部72の上面および下面の2箇所に対称となるように形成されている(図5(b)参照)。そして、前記溝部61と前記突出部72Aとによって、前記外筒6に対する前記内筒7の進退方向(内筒7に対する前記外筒6の進退方向)を規制している。
尚、前記内筒7を前記外筒6に対して進出させた際、前記外筒6および内筒7は互いに分離することのないように、溝部61の端部に前記突出部72Aが係止されるように構成されている。
【0032】
また、前記起立片72Bは、図5に示すように、前記貫通孔73に前記内針3が挿入される(収容される)ことによって、前記内針3の周面によって押し出されて起立し、前記溝部61の端部に係合する。
ここで、前記起立片72Bは、前記溝部61のうち、前記カテーテル2側の端部に係合するので、前記内筒7の前記首部71と共働して前記外筒6を挟み込むようにして前記外筒6に係止される。
換言すれば、前記起立片72Bは、前記貫通孔73に内針3が存在する場合には、前記内針3によって起立し、外筒6と内筒7が一体となり、前記内筒7の前記外筒6からの引抜きが規制される。
【0033】
また、前記起立片72Bは、前記貫通孔73内から前記内針3が引き抜かれ、内針3による押し出しがなくなると、前記貫通孔73を閉塞するようにして前記内筒7の内部に収納され(復帰し)、前記溝部61との係合が解除される。換言すれば、前記起立片72Bは、前記貫通孔73に内針3が存在しない場合には、前記外筒6に係止されないため、外筒6と内筒7とが分離可能となり、前記外筒6から前記内筒7を引抜くことができる。
尚、前記内針ハブ41、および前記外筒6の夫々の端部41d、63には係合部が形成されており、伸長した際、前記端部41d、63に形成された係合部が係止することによって、互いに分離(離間)することのないように構成されている。
【0034】
また、前記プロテクタ5は、図10乃至図12に示すように、前記外針21を収容する円筒部5aと、前記円筒部5aから軸線方向に延設されてプロテクタの上面及び側面を形成すると共に、前記円筒部の反対端部及び下面に開口部5c1,5c2を有する本体部5bを備えている。
【0035】
前記円筒部5aは、プロテクタ5の先端部の内周面に突出して形成され、円筒部5aの内部の空間5a1内に前記内針3の先端が位置すると共に、前記円筒部5aの端部5a2が外針ハブ22に当接するように構成されている。
【0036】
前記開口部5c1は、プロテクタ5を内針ハブ41の嵌合部41bを挿入するための開口部であり、前記開口部5c2はプロテクタ5を装着した際、外針ハブ22に設けられた翼22Aと干渉しないために設けられている。
【0037】
また、前記本体部外周面の円筒部5aの反対端部側には、前記本体部5bの左右両側に延設された、円弧状(円筒部5a側から見て)のリブ状フレーム5dが形成されている。またリブ状フレーム5dは、前記本体部5bの左右両側から円筒部5aに向かう延設部5d1が設けられている。
また、前記円弧状のリブ状突起5dは、使用者が指を掛けてプロテクタ5を取り外せるように、所定の高さh(寸法)を有している。
尚、前記リブ状突起5d及びリブ状突起5dの延設部5d1が本体部5bに設けられることにより、開口部5c1,5c2が形成されたプロテクタ5の機械的強度が向上し、プロテクタ5の変形を抑制することができる。
【0038】
また、プロテクタ5の内周面には、その周方向に被係止突起5eが形成されている。
前記内針ハブ41にプロテクタ5装着する際、前記内針ハブ41の嵌合部41b外周面に形成されたリブ状突起41eが前記係止突起5eを乗り越えることによって、プロテクタ5の係止突起5eがリブ状突起41eに係止され、プロテクタ5は内針ハブ41(嵌合部41a)に固定されるように構成されている。
【0039】
また、プロテクタ5の内周面には、その内針ハブ41の嵌合部41bの外周面と圧接する接触部5f,5gが設けられている。
この接触部5f,5gは、プロテクタ5の内周面に突出すると共に、プロテクタ5の軸線に沿って、前記軸線と平行に延設されている。前記接触部5f,5gは、複数形成されていれば良く、前記嵌合部41bの外周面と接触部5f,5gとの圧接力は、前記嵌合部41bの外周面と接触部5f,5gとの摺動抵抗(引抜き力)を考慮して、接触部の幅、長さ、個数等が設定される。
【0040】
ところで、適切な前記摺動抵抗(引抜き力)が設定されていない場合、例えば、内針ハブ41の嵌合部41bの外周面が本体部5bの内周面全体と接し、前記摺動抵抗が大きい場合には、使用者が力を入れてプロテクタを取り外した瞬間、力あまって、自己又は他人に対して内針を刺してしまう虞があり、一方、前記摺動抵抗(引抜き力)が小さいときには、プロテクタ5が内針ハブ41の嵌合部41bから脱落する虞がある。
上記したようにプロテクタ5の内周面に接触部5f,5gを設け、接触部の幅、長さ、個数等を適宜設定することにより、適切な前記摺動抵抗力(引抜き力)を得ることができ、安全性を確保することができる。
【0041】
また、プロテクタ5の内周面には、前記接触部5f,5gと平行(本体部5の軸線に沿って前記軸線に平行)に、プロテクタ5の内周面から突出したリブ状の突起である被ガイド部5h,5iが設けられている。
この被ガイド部5h,5iは、プロテクタ5を装着する際には、前記一対のリブ状突起41eの間を挿通し、前記リブ状突起41eに案内される。そのため、被ガイド部5h,5iの厚さ寸法は、一対のリブ状突起41eの間隔tよりも小さく形成されている。
【0042】
そして、一対のリブ状突起41eの間を挿通し、案内された被ガイド部5h,5iの上面は、前記内針ハブ41の嵌合部41bに設けられた押え突起41fの下面と接する(図7参照)。
このように、前記被ガイド部5h,5iが、一対のリブ状突起41eおよび押え突起41fによって、保持されるため、プロテクタ5のガタつきを防止することができる。
【0043】
特に、プロテクタ5の下面の開口部5c2側は機械的な強度が弱いため、プロテクタ5を内針ハブ41の嵌合部41bに装着した際、プロテクタ5が開口部5c2側への傾く(変形する)虞がある。
この押え突起41fによって、前記被ガイド部5h,5iを押えることにより、プロテクタ5開口部側への傾き(変形)を抑制することができる。
【0044】
このようなプロテクタ5を装着する際には、図13に示すように、プロテクタ5の下面側の開口部5c2に一対の翼22Aが配置された状態とし、プロテクタ5をX方向(注射具4側)に移動させ、被ガイド部5e,5fを前記一対のリブ状突起41bの間を挿通させると、被ガイド部5h,5iは、リブ状突起41eに案内されながらに移動する。また接触部5f、5gは、内針ハブ41の嵌合部41bの外周面に圧接しながら移動する。
そして、プロテクタ5の被係止突起5eが、内針ハブ41の嵌合部41b外周面に形成されたリブ状突起41eを乗り越えることによって、プロテクタ5の被係止突起5gがリブ状突起41eに係止され、プロテクタ5は内針ハブ41(嵌合部41a)に固定される。
【0045】
このとき、一対のリブ状突起41eの間を挿通した被ガイド部5h,5iの上面は、前記内針ハブ41の嵌合部41bに設けられた押え突起41fの下面と接し、前記被ガイド部5h,5iが、一対のリブ状突起41eおよび押え突起41fによって、保持される。
また、プロテクタ5に形成された円筒部5aの内部空間5a1内に前記内針3の先端が位置すると共に、前記円筒部5aの先端部5a2が外針ハブ22に当接する。これによりプロテクタ5が内針ハブ41に対し安定して装着(嵌合)された状態となる。
【0046】
そして、このようにしてプロテクタが装着された状態にあっては、外針ハブ22(カテーテル2)の前方への移動は円筒部5aによって阻止され、外針ハブ22(カテーテル2)の後方への移動はプロテクタ5に固定された内針ハブ41(嵌合部41b)によって阻止される。
その結果、カテーテル2は固定された状態になされ、カテーテル2の移動は阻止される。また、外針ハブ22に翼22Aが設けられている場合にも、プロテクタ5を大型化することなく確実に装着することができ、また前記円筒部5aの空間部5a1により外針21及び該外針21の先端から突出した内針3を収容して保護することができる。
【0047】
また、前記プロテクタ5を取り外す際(図5のY方向にプロテクタ5を移動させる際)、使用者はリブ状フレーム5dに指をかけ、片手で容易にプロテクタ5を取り外すことができる。尚、前記接触部5f,5gは、外筒6のアーム開閉部62に接しないため、プロテクタ5が移動しても、外筒6のアーム開閉部62がY方向に移動することはなく、その位置に留まる。
その結果、前記プロテクタ5を取り外した場合においても、内針3に対して外針ハブ22(カテーテル2)は移動しないため、外針21が内針3の先端よりも前方に移動し、内針3の先端を覆う等の弊害を防止することができる。
【0048】
次に、このような穿刺具1を使用する場合について説明する。
まず、図1図2に示す穿刺具1から、前記したようにプロテクタ5を取り外し、図3に示すようにカテーテル2および内針3を露出させる。そして、図14(a)に示すように、前記カテーテル2および前記内針3を血管(患者の身体110)に穿刺する。
その後、前記カテーテル2を留め置きするために、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記カテーテル2から離間する方向に移動させる(引抜動作を行う)。この内針ハブ41の引抜き動作により、前記注射具4は伸長する。
【0049】
具体的には、前記カテーテル2を留置した状態において、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記カテーテル2から離間させる(図14(a)に示す矢印方向に引抜動作を行う)と、前記内針ハブ41が軸方向に沿って移動し、前記注射具4は全体として伸長することになる。このとき、カテーテル2は内筒7によって保持され、内筒7と外筒6は起立片72Bによって一体化している(図14(b)参照)。
【0050】
したがって、内針3の後端部(基端部)を保持する内針ハブ41を軸方向に沿って移動すると、内針3も同様に軸方向に沿って移動する。そして、カテーテル2内から引出されることで、引抜き出された内針3が内筒7、外筒6、内針ハブ41内に覆われる。
【0051】
更に、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記カテーテル2から離間させる。そして、図14(c)に示すように、内針3の先端が起立片72Bを通過すると、起立片72Bは前記内針3の側面から力を受けない状態となり、元の状態に戻り、貫通孔73を閉塞する。これにより、内針ハブ41をカテーテル2側に移動させる力が作用しても、内針3は、前記起立片72Bによって移動が規制され、再びカテーテル2内に戻ることはない。
【0052】
更に、前記内針3による起立片72Bの押し出しが解除されると、前記外筒6との係止状態が解除される。その結果、外筒6と内筒7が分離可能となり、前記内針ハブ41の移動に伴って、前記外筒6が軸方向に沿って移動することになる。
このとき、前記溝部61は前記突出部72Aに案内されるため、前記内筒7の突出部72Aに案内されながら、前記外筒6は前記内針ハブ41から引抜き出される。
【0053】
更に、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記カテーテル2から離間させ、前記外筒6を移動させ、前記外筒6から前記内筒7が抜出されると、図14(c)に示すように、前記4つのアーム71Aを開いて、前記4つのアーム71Aによるカテーテル2の保持状態を解放する。
即ち、前記内針ハブ41を軸方向に沿って前記カテーテル2から離間させて前記注射具4を伸長させることによって、前記カテーテル2から抜出された前記内針3が前記内筒7、外筒6、内針ハブ41の内部に収容されると、前記4つのアーム71Aとアーム開閉部62によるカテーテル2の保持状態から、カテーテル2を解放する。
【0054】
これによって、前記カテーテル2を血管に留置しつつ、前記内針3を前記カテーテル2から引抜き出して前記注射具4の内部に収容するとともに、前記カテーテル2は前記注射具4から取り外される。
このように、前記穿刺具1は、前記内針3を前記カテーテル2から引抜き動作のみによって、前記内針3を前記注射具4の内部に収容することができ、しかも前記カテーテル2を前記注射具4から取り外すことができる。
【0055】
尚、本実施形態では、外筒6および内筒7によって,注射具4が伸長する場合を例にとって説明したが、特にこの構成に限定されるものではなく、例えば、前記内針ハブと外筒との間に、あるいは外筒と内筒との間に中継筒(図示せず)を設け、注射具4を伸長するように構成されても良い。
【0056】
また、本実施形態では、把持手段として、前記4つのアーム71Aと、前記アーム開閉部62とによって構成されている場合を例にとって説明したが、特にこの構成に限定されるものではない。前記把持手段は、内針ハブを軸方向に沿って外針ハブから離間させて内針ハブを伸長させることによって、外針ハブから引き抜かれた内針が筒状体の内部に収容された際、外針ハブを解放することができるように構成されていれば良い。
【符号の説明】
【0057】
1 穿刺具
2 カテーテル
3 内針
4 注射具
5 プロテクタ
5a 円筒部
5b 本体部
5c1 開口部(下面側)
5c2 開口部(円筒部の反対側端部側)
5d リブ状フレーム
5d1 リブ状フレーム延設部
5e 被係止突起
5f 接触部
5g 接触部
5h 被ガイド部
5i 被ガイド部
6 外筒(筒状体)
7 内筒(筒状体)
21 外針
22 外針ハブ
22A 翼(突起部位)
41 内針ハブ
41a 本体部
41b 嵌合部
41c 開口部
41d 貫通孔
41e リブ状突起
41f 押え突起
42 尾栓
42a 針接続部
61 溝部
62 アーム開閉部(把持手段)
71 首部
71A アーム(把持手段)
72 軸部
72A 突出部
72B 起立片
73 貫通孔
73A,73B 溝部
74 内部空間
74A,74B 凹部
110 患者の身体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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