(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の端部から他方の端部に貫通して第一の流体の流路となる複数のセルと、前記複数のセルを区画形成するセラミックスを主成分とする隔壁とを有して形成されたセル構造部と、
前記セル構造部の外周に設けられ、セラミックスを主成分とし、前記第一の流体と前記セル構造部の外周側を流れる第二の流体とを混合させずに、前記第一の流体と前記第二の流体との熱の受け渡しを介在する外周壁と、を備えたハニカム構造体を含み、
前記セラミックスがSiまたはSi含浸SiCであり、
前記セル構造部は、軸方向に垂直な断面において、2つ以上の異なる開口率のセル構造を有し、断面積の1/2ずつの2つの領域X,Yに分けた場合に、それぞれの領域X,Yにおいて最大の面積を有するセル構造をセル構造A、セル構造Bとし、それぞれの領域X,Yの全開口面積をSX,SYとすると、SX/SYまたはSY/SXの大きい方の値が最も大きくなる分け方において、1.05〜2.0であり、
前記セル構造部に流入する、400℃の大気ガスである前記第一の流体の流入前の流量が5〜15g/sの範囲で変化し、ある流量V1,V2が、同じ流体温度のときに、V2/V1≧2の関係となる場合に、流量V1,V2の熱交換効率をそれぞれλ1,λ2とし、
仮に前記セル構造部が前記セル構造Aのみで構成されている場合のV1,V2の熱交換効率をそれぞれλ1A,λ2Aとし、
仮に前記セル構造部が前記セル構造Bのみで構成されている場合のV1,V2の熱交換効率をそれぞれλ1B,λ2Bとするとき、
λ1A/λ2Aとλ1B/λ2Bの大きい方の値よりもλ1/λ2が大きくなる熱交換部材。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0028】
1.セル構造による熱交換効率の低下
図1に本発明の熱交換部材10の実施形態1を示す。本発明の熱交換部材10は、セル構造部3aと外周壁7と、を備えたハニカム構造体1を含む。セル構造部3aは、一方の端部から他方の端部に貫通して第一の流体の流路となる複数のセル3と、複数のセル3を区画形成するセラミックスを主成分とする隔壁4とを有して形成されている。外周壁7は、セル構造部3aの外周に設けられ、セラミックスを主成分とし、第一の流体とセル構造部3aの外周側を流れる第二の流体とを混合させずに、第一の流体と第二の流体との熱の受け渡しを介在する。
【0029】
ハニカム構造体1は、セル構造部3aが、軸方向に垂直な断面において、2つ以上の異なる開口率のセル構造を有する(
図1は、2つの異なる開口率のセル構造を有する例である)。そして、断面積の1/2ずつの2つの領域X,Yに分けた場合に、それぞれの領域X,Yにおいて最大の面積を有するセル構造をセル構造A、セル構造Bと呼ぶこととする。また、ハニカム構造体1は、それぞれの領域X,Yの全開口面積をS
X,S
Yとすると、S
X/S
YまたはS
Y/S
Xの大きい方の値が、1.05〜2.0である。
【0030】
ここで、断面積の1/2ずつの2つの領域X,Yに分ける分け方としては、円で分ける(
図2A)、直線で分ける(
図2C)等が挙げられるが、その他の分け方もありうる。
図2Bは、
図2Aのセル構造において、境界9で領域X,Yを分けた場合の領域X,Yを示す模式図である。
図2A及び
図2Bの実施形態では、領域Xは、セル構造Aとセル構造Bとを含む。また、領域Yは、セル構造Bのみである。本発明の熱交換部材10は、2領域X,Yに分けた後、それぞれの領域の全開口面積S
X,S
Yの比の値を求めると、S
X/S
YまたはS
Y/S
Xの大きい方の値が最も大きくなる分け方において、その値が1.05〜2.0となる。
図1の熱交換部材10の場合、
図2A(
図2B)と
図2Cの分け方があるが(他の分け方もある)、比の値が最も大きくなる分け方は、
図2A(
図2B)である。そして、その値が、1.05〜2.0である。
図1の熱交換部材10は、中心側にセル密度が粗のセル構造が断面が円状に形成され、外周側にセル密度が密のセル構造が形成されている実施形態である。
【0031】
熱交換部材10において、第一の流体は、ハニカム構造体1の各セル3内を、セル3外に漏洩・混合することなく流通する。つまり、あるセル3内を流れる第一の流体が、隔壁4を通って他のセル3に漏洩することはないようにハニカム構造体1が形成されている。そして、セル3を流通する第一の流体と、ハニカム構造体1の外周壁7の外側を流通する第二の流体とが混合しない状態で、ハニカム構造体1の外周壁7を介して第一の流体と第二の流体を熱交換させることができる。
【0032】
図3を用いて、熱交換部材10における、第一の流体の流量の変化に対する熱交換効率の変化を説明する。熱交換部材10が、2つのセル構造Aとセル構造Bとにより構成され(
図2A及び
図2B参照)、S
X/S
YまたはS
Y/S
Xの大きい方の値が、1.05〜2.0である実施形態において、セル構造部3aに流入する第一の流体の流入前の流量が変化する場合について説明する(なお、
図2Aは、2つのセル構造の場合であるが、3つ以上のセル構造を有する場合は、領域X,Yのそれぞれにおいて、最大の面積を有するセル構造をセル構造A,セル構造Bと考える。)。仮にセル構造部3aがセル構造Aのみで構成されている場合のV
1,V
2の熱交換効率がそれぞれλ
1A,λ
2Aであり、仮にセル構造部3aがセル構造Bのみで構成されている場合のV
1,V
2の熱交換効率がそれぞれλ
1B,λ
2Bであるとすると、本実施形態の熱交換部材10は、同じ流体温度のとき、ある流量V
1,V
2がV
2/V
1≧2の関係となる場合に、流量V
1,V
2の熱交換効率をそれぞれλ
1,λ
2とすると、λ
1A/λ
2Aとλ
1B/λ
2Bの大きい方の値よりもλ
1/λ
2が大きくなる。つまり、第一の流体の流量が少ないとき(V
1)に、熱交換効率が大きく(λ
1Aに近い)、流量が多くなると(V
2)、熱交換効率が小さくなる(λ
2Bに近い)。このため、第一の流体の流量が増加したときにおいても、オーバーヒートを発生させにくい熱交換部材10である。なお、熱交換部材10は、ある流量V
1,V
2が同じ流体温度のときに、上記の関係を満たすものであるが、流体温度は、使用温度範囲で上記の関係を満たしていることが特に好ましい。
【0033】
さらに、熱交換部材10は、ハニカム構造体1の外周面7hに、被覆部材11が嵌合していることが好ましい。このように構成すると、ハニカム構造体1の内部を流通する第一の流体と外部を流通する第二の流体とが混合することを防ぐことができる。また、被覆部材11としては、金属管12が挙げられる。金属管12は、加工が容易であるため、熱交換部材10を設置しやすい。
【0034】
ハニカム構造体1の外周面7hに、嵌合する金属管12としては、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましく、例えば、ステンレス、チタン、銅、真鍮等を用いることができる。接続部分が金属で形成されているため、圧入、焼きばめ、かしめなどの機械締め、ろう接、溶接などの化学接合を、用途や保有設備に応じて自由に選択することができる。
【0035】
ハニカム構造体1は、セラミックスで筒状に形成され、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで貫通する流体の流路を有するものである。ハニカム構造体1は、隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセル3が区画形成されている。隔壁4を有することにより、ハニカム構造体1の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
【0036】
ハニカム構造体1の外形は、円筒状(円柱状)に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が楕円形であってもよい。また、ハニカム構造体1の外形は、角柱状、すなわち、軸(長手)方向に垂直な断面が、四角形、またはその他の多角形であってもよい。
【0037】
ハニカム構造体1の外形が円柱状である場合には、軸方向に垂直な断面の直径(円柱状でない場合は、断面中心を通る平均距離)をD、軸方向の長さをLとしたとき、D/L=2以上となるハニカム構造体であることが好ましい。
図4にハニカム構造体1の直径が軸方向の長さの2倍以上の熱交換部材10の実施形態を示す。このようにすると、流量が多くなったときに流体が吹き抜けやすいため、第一の流体の流量が多くなったときの熱交換効率が上昇しにくい。
【0038】
本発明の熱交換部材10では、ハニカム構造体1がセラミックスを主成分とすることにより、隔壁4や外周壁7の熱伝導率が高まり、その結果として、隔壁4や外周壁7を介在させた熱交換を効率良く行わせることができる。なお、本明細書にいうセラミックスを主成分とするとは、セラミックスを50質量%以上含むことをいう。
【0039】
ハニカム構造体1は、耐熱性に優れるセラミックスを用いることが好ましく、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、ハニカム構造体1の50質量%以上が炭化珪素であることを意味する。
【0040】
但し、必ずしもハニカム構造体1の全体がSiC(炭化珪素)で構成されている必要はなく、SiC(炭化珪素)が本体中に含まれていれば良い。即ち、ハニカム構造体1は、SiC(炭化珪素)を含むセラミックスからなるものであることが好ましい。
【0041】
また、SiC(炭化珪素)であっても多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないため、ハニカム構造体1の作製過程でシリコンを含浸させて緻密体構造とすることが好ましい。緻密体構造にすることで高い熱伝導率が得られる。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、20W/(m・K)程度であるが、緻密体とすることにより、150W/(m・K)程度とすることができる。
【0042】
ハニカム構造体1として、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができるが、高い熱交換効率を得るための緻密体構造とするためにSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することができる。Si含浸SiCは、SiC粒子表面を金属珪素融体の凝固物が取り囲むとともに、金属珪素を介してSiCが一体に接合した構造を有するため、炭化珪素が酸素を含む雰囲気から遮断され、酸化から防止される。さらに、SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。つまり、Si−SiC系[Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC]材料からなるハニカム構造体1は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性をはじめ、酸やアルカリなどに対する耐蝕性に優れた特性を示すとともに、高熱伝導率を示す。
【0043】
ハニカム構造体1のセル3の軸方向に垂直な断面のセル形状としては、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0044】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、30〜400セル/平方インチ(4.7〜62セル/cm
2)の範囲であることが好ましい(なお、ハニカム構造体1は、2つ以上の異なる開口率のセル構造を有するが、いずれのセル構造も、上記範囲内であることが好ましい。)。セル密度を30セル/平方インチ以上とすると、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。一方、セル密度を400セル/平方インチ以下とすると、熱媒体が流れる際の圧力損失を小さくすることができる。
【0045】
また、ハニカム構造体1の1つ当たりのセル数は、1〜10,000が望ましく、200〜2,000が特に望ましい。セル数が多すぎるとハニカム自体が大きくなるため第一の流体側から第二の流体側までの熱伝導距離が長くなり、熱伝導ロスが大きくなり熱流束が小さくなる。またセル数が少ないときには第一の流体側の熱伝達面積が小さくなり第一の流体側の熱抵抗を下げることが出来ず熱流束が小さくなる。
【0046】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を6〜25mil(0.15mm〜0.64mm)とすることが好ましく、8〜22milとすることが更に好ましい(なお、ハニカム構造体1は、2つ以上の異なる開口率のセル構造を有するが、いずれのセル構造も、上記範囲内であることが好ましい。)。壁厚を6mil以上とすると、機械的強度が向上して衝撃や熱応力による破損を防止できる。一方、25mil以下とすると、ハニカム構造体1側に占めるセル容積の割合が大きくなることにより流体の圧力損失が小さくなり、熱交換効率を向上させることができる。
【0047】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。0.5g/cm
3以上の場合、隔壁4の強度が十分であり、第一の流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損することを防止できる。また、5g/cm
3以下であると、ハニカム構造体1自体が重くなりすぎず、軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができる。また、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0048】
ハニカム構造体1は、セル3の開口率が40%〜80%であることが好ましく、50%〜75%であることがより好ましい(なお、ハニカム構造体1は、2つ以上の異なる開口率のセル構造を有するが、いずれのセル構造も、上記範囲内であることが好ましい。)。開口率がこの範囲であると、十分に第一の流体を流通させることができ、熱交換効率を向
上させることができる。
【0049】
ハニカム構造体1は、熱伝導率が100W/(m・K)以上であることが好ましい。より好ましくは、120〜300W/(m・K)、さらに好ましくは、150〜300W/(m・K)である。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率的にハニカム構造体1内の熱を金属管12の外側に排出できる。
【0050】
熱交換部材10を用いた熱交換器30(
図6参照)に流通させる第一の流体(高温側)が排ガスの場合、第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1のセル3内部の壁面には、触媒が担持されていることが好ましい。これは、排ガス浄化の役割に加えて、排ガス浄化の際に発生する反応熱(発熱反応)も熱交換することが可能になるためである。貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。これらは金属、酸化物、及びそれ以外の化合物であっても良い。
【0051】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部5のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が十分に発現する。一方、400g/L以下とすると、圧力損失が大きくなりすぎず、製造コストの上昇も抑えることができる。
【0052】
次に、熱交換部材10を構成するハニカム構造体1のセル構造の他の実施形態を説明する。
図5Aに熱交換部材10を構成するハニカム構造体1の実施形態2を示す。実施形態2の熱交換部材10は、中心側にセル密度が密のセル構造が断面が円状に形成され、外周側にセル密度が粗のセル構造が形成されている実施形態である。本実施形態においても第一の流体の流量が増えると、熱交換効率が低下し、オーバーヒートを防止する効果が得られる。
【0053】
図5Bに熱交換部材10を構成するハニカム構造体1の実施形態3を示す。実施形態3の熱交換部材10は、断面が半円の2領域が形成され、一方の半円の領域がセル密度が密のセル構造、他方の半円の領域がセル密度が粗のセル構造として形成されている実施形態である。
【0054】
図5Cに熱交換部材10を構成するハニカム構造体1の実施形態4を示す。実施形態4の熱交換部材10は、中心側に隔壁4がない空洞のセル構造が断面が円状に形成され、外周側にセル密度が密のセル構造が形成されている実施形態である。
【0055】
図5Dに熱交換部材10を構成するハニカム構造体1の実施形態5を示す。実施形態5の熱交換部材10は、隔壁4がない空洞の円状のセル構造が、外周側に複数並んで形成されている。
【0056】
図6に本発明の熱交換部材10を含む熱交換器30の斜視図を示す。
図6に示すように、熱交換器30は、熱交換部材10と、熱交換部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。ハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱交換部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。
【0057】
つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第二流体流通部6は、ケーシング21と金属管12の外周面12hとによって形成された第二の流体の流通部であり、第一流体流通部5とハニカム構造体1の隔壁4や外周壁7、金属管12によって隔たれて熱交換可能とされており、第一流体流通部5を流通する第一の流体の熱を隔壁4、外周壁7、金属管12を介して受け取り、流通する第二の流体である被加熱体へ熱を伝達する。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。
【0058】
熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱交換するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。
【0059】
以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体としては、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。
【0060】
次に、本発明の熱交換部材10の製造方法を説明する。まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム構造体1の材料としては、前述のセラミックスを用いることができるが、例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム構造体1を製造する場合、所定量のC粉末、SiC粉末、バインダー、水又は有機溶媒を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得る。
【0061】
そしてハニカム成形体を乾燥し、焼成することによって、隔壁4によってガスの流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1を得ることができる。続いて、金属管12を昇温させ、ハニカム構造体1を金属管12に挿入して焼きばめにより一体化し、熱交換部材10を形成することができる。なお、ハニカム構造体1と金属管12との接合は、焼きばめ以外に、ろう付けや拡散接合等を用いてもよい。
【0062】
2.伝熱低減部による熱交換効率の低下
次に、伝熱低減部40が設けられた熱交換部材10を説明する。熱交換部材10は、セラミックスを主成分とするハニカム構造体1と、ハニカム構造体1を被覆する被覆部材11と、を備える。ハニカム構造体1は、筒形状の外周壁7と、第一の流体の流路となる複数のセル3を区画形成する隔壁4とを有する。被覆部材11は、ハニカム構造体1の内部を流れる第一の流体とハニカム構造体1の外部を流れる第二の流体とを混合させずに、第一の流路と第二の流体との間での熱交換可能にハニカム構造体1を被覆する。そして、ハニカム構造体1と被覆部材11の間の伝熱を低減させる伝熱低減部40が一部の範囲に設けられている。
【0063】
図7A〜
図7D、および
図8A、
図8Bを用いて、伝熱低減部40が括れ部41として設けられた実施形態を説明する。伝熱低減部40は、ハニカム構造体1の外周部分である外周壁7、または外周壁7及び隔壁4が、ハニカム構造体1の平均直径に対して0.3mm以上、外周部分の全表面積に対して10%以上括れた括れ部41である。
【0064】
図7Aは、軸方向における一方の端面2側(第一の流体の入口側)、
図7Cは、他方の端面2側(第一の流体の出口側)のハニカム構造体1の外周部分に括れ部41が形成されている。括れ部41は、端面2の一部が欠ける形状で形成されている。また、
図7B、及び
図7Dは、軸方向において端面2よりも内側(中央側)に括れ部41が形成された実施形態である。
図7Bは、軸方向における中央部に1つ、
図7Dは、複数の括れ部41が形成されている。
【0065】
このような括れ部41は、第二の流体と接触する被覆部材11(例えば、金属管12)とハニカム構造体1が接触する面積を小さくするため、ハニカム構造体1と、ハニカム構造体1を被覆する被覆部材11との間の伝熱を低減させることができる。したがって、このような熱交換部材10は、第一の流体の流量が増加しても、オーバーヒートを発生させにくい。
【0066】
図8A及び
図8Bは、括れ部41の周辺の拡大図である。
図8Aは、外周壁7に括れ部41が形成された実施形態を示す模式図である。このように括れ部41を形成することにより、ハニカム構造体1と被覆部材11(金属管12)との間の伝熱を低減させることができる。また、第一の流体の流量に対して熱交換効率を変化させる効果が得られる。具体的には、伝熱低減部40(括れ部41)を設けることにより流量が多いときの熱回収効率を低減することができる。これは、第一の流体が低流量時には伝熱面積が小さくとも第二の流体へ伝熱可能だが、高流量時には伝熱面積が小さいと、第二の流体へ伝熱しきれなくなるからである。
【0067】
図8Bは、外周壁7と隔壁4によって括れ部41が形成された実施形態を示す模式図である。このような括れ部41は、
図8Aと同様に、ハニカム構造体1と被覆部材11(金属管12)との間の伝熱を低減させることができる。また、第一の流体の流量に対して熱交換効率を変化させる効果が得られ、伝熱低減部40(括れ部41)を増やすことにより流量が多いときの熱回収効率を低減することができる。
【0068】
図9に、伝熱低減部40が、ハニカム構造体1と被覆部材11との間に、ハニカム構造体1の外周部分の全表面積に対して10%以上の範囲に備えられた断熱材42で形成された実施形態を示す。このような断熱材42によって形成された伝熱低減部40を有することにより、ハニカム構造体1と被覆部材11(金属管12)との間の伝熱を低減させる効果が得られる。また、第一の流体の流量に対して熱交換効率を変化させる効果が得られ、伝熱低減部40(断熱材42)を備えることにより流量が多いときの熱回収効率を低減することができる。
【0069】
3.攪拌手段による熱衝撃の低下
熱交換部材10は、第一の流体の流れを攪拌する攪拌手段を備えることが好ましい。攪拌手段を備えることにより、熱交換部材10の下流における温度の不均一を低減することができ、下流の部品の熱衝撃による破損を低減させることができる。
【0070】
図10A、及び
図10Bに、筒形状の外周壁7と、第一の流体の流路となる複数のセル3を区画形成する隔壁4とを有するセラミックスを主成分とし、軸方向における少なくとも一方の端面2に、軸方向における長さが1mm以上の凸部44、または凹部45を一箇所以上有するハニカム構造体1と、ハニカム構造体1を被覆する被覆部材11と、を備えた実施形態を示す。凸部44、または凹部45は、攪拌手段である。
【0071】
図10Aは、ハニカム構造体1が、軸方向における端面2に、凸部44を有する熱交換部材10を示す模式図である。
図10Bは、ハニカム構造体1が、軸方向における端面2に、凹部45を有する熱交換部材10を示す模式図である。凸部あるいは凹部により、ガス流れを乱流にし、熱交換部材10の下流における温度の不均一を低減することができ、下流の部品の熱衝撃による破損を低減させることができる。
【0072】
図11Aは、被覆部材11中に、ハニカム構造体1の軸方向上にハニカム構造体1と並んでハニカム構造体1のセル3を流通する第一の流体を攪拌するための攪拌板48を備えた実施形態を示す。攪拌板48は、攪拌手段である。攪拌板48は、ハニカム構造体1の上流側、下流側のいずれに設置することもできる。あるいは、被覆部材11中に、ハニカム構造体1を直列に複数配置した場合は、ハニカム構造体1とハニカム構造体1との間に、すなわち、中段に攪拌板48を設置することもできる。攪拌板48は、ハニカム構造体1の端面に接する様に配置してもよく、離間して配置してもよい。攪拌板48の材料としては、例えば、金属が挙げられる。
図11B〜
図11Dに攪拌板48の例を示す。攪拌板48の形状は、第一の流体を攪拌することができる形状であれば、特に限定されるものではない。このような攪拌板48を備えることにより、第一の流体の流量特性を変化させることができる。これにより、熱交換部材10の下流の部品の熱衝撃による破損を低減させることができる。
【0073】
図12に、ハニカム構造体1と、ハニカム構造体1を被覆していない部分において括れた小径部、または膨らんだ大径部を1箇所以上有しハニカム構造体1を被覆する被覆部材11と、を備えた熱交換部材10の実施形態を示す。被覆部材11は、小径部、または大径部のいずれかのみを備えてもよいし、両方を備えてもよい。すなわち、被覆部材11は、ハニカム構造体1を被覆していない部分において、湾曲部を有するとその湾曲部において、第一の流体を攪拌することができ、熱交換部材10の下流の部品の熱衝撃による破損を低減させることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
(セル構造による熱交換効率の低下)
(1)熱交換部材
(坏土の作製)
まず、平均粒径45μmのSiC粉末70質量%と平均粒径35μmのSiC粉末10質量%と平均粒径5μmのSiC粉末20質量%とを混ぜ合わせて、SiC粉末の混合物を調製した。このSiC粉末の混合物100質量部に、バインダー4質量部、水を混ぜ合わせ、ニーダーを用いて混練することにより、混練物を得た。この混練物を真空土練機に投入し、円柱状の坏土を作製した。
【0076】
(押出成形)
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成した。押出成形では、適当な形態の口金や治具を選択することにより、外周壁7の形状や厚さ、隔壁4の厚さ、セルの形状、セル密度などを所望のものにした。口金は、摩耗し難い超硬合金で作られたものを用いた。ハニカム成形体については、外周壁7を円筒形状とし、外周壁7の内部を隔壁4により四角形の格子状に区分された構造となるように形成した。また、これらの隔壁4については、互いに直交する方向のそれぞれで等間隔に並行し、かつ、真っすぐに外周壁7の内部を横切るように形成した。これにより、外周壁7の内部の最外周部以外にあるセル3の断面形状を正方形にした。
【0077】
(乾燥)
次に、押出成形により得たハニカム成形体の乾燥を行った。まず、ハニカム成形体を電磁波加熱方式で乾燥し、続いて、外部加熱方式で乾燥を行った。こうした二段階の乾燥により、乾燥前のハニカム成形体に含まれる全水分量の97%以上に相当する水分をハニカム成形体から除去した。
【0078】
(脱脂、Si金属の含浸および焼成)
次に、ハニカム成形体に対して大気雰囲気で500℃、5時間の脱脂を行った。さらに、こうした脱脂により得られたハニカム構造体1の上に金属Siの塊を載せ、真空中または減圧の不活性ガス中で、1450℃、4時間、焼成をした。この焼成中に、ハニカム構造体1の上に載せた金属Siの塊を融解させ、外周壁7や隔壁4に金属Siを含浸させた。外周壁7や隔壁4の熱伝導率を100W/(m・K)にする場合には、ハニカム構造体100質量部に対して70質量部の金属Siの塊を使用した。また、外周壁7や隔壁4の熱伝導率を150W/(m・K)にする場合には、ハニカム構造体100質量部に対して80質量部の金属Siの塊を使用した。こうした焼成を経て、熱交換部材10を得た。なお、熱交換部材10のより詳細な形態などに関しては、以下で、各実施例および各比較例を個別に説明する際に述べる。
【0079】
(基準例A
1,B
1、実施例1〜6)
図1と同様の構造とされた、円筒形状の外周壁7を有する熱交換部材10を製造した。具体的には、直径42mm、全長100mm、外周壁7の厚さが1.0mm、外周壁7および隔壁4の熱伝導率150W/(m・K)である熱交換部材10を製造した。
図2Aに示すようなセル構造A,Bを有し、
図2Bに示すような境界9で領域X,Yが分けられる。具体的なセル構造は、表1に示す。なお、基準例A
1,B
1は、単一のセル構造を有するものである。
【0080】
(基準例A
2,B
2、実施例7〜9、比較例1〜3)
上記と同様にして、セル構造A,Bの異なる円筒形状の外周壁7を有する熱交換部材10を製造した。具体的には、直径42mm、全長100mm、外周壁7の厚さが1.0mm、外周壁7および隔壁4の熱伝導率150W/(m・K)である熱交換部材10を製造した。
図2Aに示すようなセル構造A,Bを有し、
図2Bに示すような境界9で領域X,Yが分けられる。具体的なセル構造は、表2に示す。なお、基準例A
2,B
2は、単一のセル構造を有するものである。
【0081】
(2)熱交換器
上述した各実施例および各比較例の熱交換部材10をケーシング21内に収容することにより、熱交換器30(
図6に示したものと基本的に同じ構造の熱交換器)を作製した。ケーシング21については、熱交換部材10の外周壁7とケーシング21の壁面との隙間が各部で1mmとなるような形状のものを用いた。すなわち、円筒形状の外周壁7を有する熱交換部材については、円筒形状のケーシング21に収容した。
【0082】
(3)熱交換試験
上述した熱交換器30において、大気ガスを第一の流体とし、水を第二の流体として用いて、熱交換試験を行った。大気ガスの温度は400℃、流量は5〜15g/s、水の流量は10L/minに設定した。また、熱交換試験は、大気ガスの出口温度(熱交換部材10の出口側の端部から排出直後の大気ガスの温度)、および水の出口温度(ケーシング21の出口を通過する際の水の温度)が安定化することを確認して実施した。
【0083】
熱交換部材10の入口側の端部に流入直前の第一の流体の温度を「入口ガス温」、熱交換部材の出口側の端部から排出直後の第一の流体の温度を「出口ガス温」として計測した。また、ケーシング21の入口を通過する水の温度を「入口水温」として計測した。これらの温度から、熱交換効率(%)を下記式にて算出した。結果を表1〜2に示す。
熱交換効率(%)=(入口ガス温−出口ガス温)/(入口ガス温−入口水温)×100
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、実施例1〜6は、領域X,Yの開口面積の比のS
X/S
YまたはS
Y/S
Xの大きい方の値が、1.05〜2.0であることにより、λ
1/λ
2が基準例の大きい方の値(基準例A
1:1.59)よりも大きくなった。すなわち、第一のガスの流量が増加すると、熱交換効率が低下すると言える。
【0086】
【表2】
【0087】
表2に示すように、実施例7〜9は、領域X,Yの開口面積の比のS
X/S
YまたはS
Y/S
Xの大きい方の値が、1.05〜2.0であることにより、λ
1/λ
2が基準例の大きい方の値(基準例A
2:1.48)よりも大きくなった。すなわち、第一のガスの流量が増加すると、熱交換効率が低下すると言える。
【0088】
以上のように、領域X,Yの開口面積の比のS
X/S
YまたはS
Y/S
Xの大きい方の値が、1.05〜2.0であることにより、第一のガスの流量が増加すると、熱交換効率が低下すると言える。すなわち、第一のガスの流量が増加しても、オーバーヒートを発生させにくい熱交換部材10である。