(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1嵌合部および前記第2嵌合部を嵌合させたときに当該嵌合部分を前記本体厚み方向に連通するように、固定具を取り付けるための貫通孔が形成される、請求項1記載の防汚パネル部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、防汚パネル部材の大きさは、作業者が水中運搬可能であって施工作業に支障をきたさない範囲での最大の大きさに設定されており、防汚パネルを形成する際には、防汚パネル部材を一方向に連結していくようにしている。このようにサイズの大きい防汚パネル部材を連結して壁面に設置する際には、作業者の1人が防汚パネル部材を押さえ、他の作業者が防汚パネル部材をアンカ止めするというように、複数の作業者が共同で設置作業を行う。
【0005】
しかしながら、設置コストを削減するため、作業者が1人で防汚パネル部材を取り付けることが可能、つまり作業者が1人で防汚パネル部材を連結してアンカ止めできる技術が求められており、より施工性に優れる防汚パネル部材の開発が望まれている。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、防汚パネル部材およびそれを設置した構造物を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、施工性に優れる、防汚パネル部材およびそれを設置した構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0009】
第1の発明は、海水と接する壁面に取り付けられて、海水の電気分解によって酸素を発生させて海生生物の付着を防止する防汚パネルを形成する防汚パネル部材であって、絶縁材によって形成される基板、および基板の表面側に貼り付けられる陽極要素を備え、基板は、方形板状に形成される本体、本体の第1対向2辺の一方に形成されるかつ当該本体の端面の厚み方向裏面側から突出する凸形状の第1嵌合部、第1対向2辺の他方に形成されるかつ第1嵌合部と対応する位置に形成されて隣り合う第1嵌合部と嵌合される凹み形状の第2嵌合部、本体の第2対向2辺の一方に形成されるかつ当該本体の端面の厚み方向裏面側において辺長方向に並んで形成される凸部および凹部を有する第3嵌合部、および第2対向2辺の他方に形成されるかつ第3嵌合部の凸部および凹部と対応する位置に形成される凹部および凸部を有し隣り合う第3嵌合部と嵌合される第4嵌合部を備え、陽極要素は、本体の表面を覆い、かつ本体の各端面の厚み方向表面側を覆
い、第3嵌合部および第4嵌合部が有する凹部の長さは、当該第3嵌合部および当該第4嵌合部が有する凸部の長さよりも大きく、第3嵌合部および第4嵌合部が有する凸部のそれぞれは、第2対向2辺の辺長方向における両側部に傾斜面を有し、防汚パネルの設置後において、他の防汚パネル部材を取り外すことなく、特定の1枚の防汚パネル部材のみを取り替え可能とした、防汚パネル部材である。
【0010】
第1の発明では、防汚パネル部材(10)は、海水に接する構造物(102)の壁面に海生生物が付着することを防止する防汚システム(100)に用いられる。防汚パネル部材は、基板(20)およびその表面側に貼り付けられる陽極要素(22)を備え、縦方向および横方向に連結されることによって防汚パネル(12)を形成する。基板は、合成樹脂などの絶縁性を有する材質によって形成され、方形板状に形成される本体(24)を含む。本体の第1対向2辺には、互いに嵌り合う第1嵌合部(26)および第2嵌合部(28)が形成される。第1嵌合部は、本体の端面の厚み方向裏面側から突出する凸形状に形成され、第2嵌合部は、第1嵌合部と対応する位置において凹み形状に形成される。また、本体の第2対向2辺には、互いに嵌り合う第3嵌合部(30)および第4嵌合部(32)が形成される。第3嵌合部は、本体の端面の厚み方向裏面側において辺長方向に並んで形成される凸部(34)および凹部(36)を有し、第4嵌合部は、第3嵌合部の凸部および凹部と対応する位置に形成される凹部(38)および凸部(40)を有する。また、陽極要素は、本体の表面側を覆い、かつその端部が本体の4つの端面の厚み方向表面側(端面上部)まで延びるように基板に貼り付けられる。
さらに、第3嵌合部および第4嵌合部が有する各凹部の辺長方向の長さは、それに対応する第3嵌合部および第4嵌合部が有する各凸部の辺長方向の長さよりも大きく設定されると共に、第3嵌合部および第4嵌合部が有する凸部のそれぞれは、第2対向2辺の辺長方向における両側部に傾斜面を有する。
【0011】
第1の発明によれば、第1対向2辺に互いに嵌り合う第1嵌合部および第2嵌合部を形成し、第2対向2辺に互いに嵌り合う第3嵌合部および第4嵌合部を形成したので、横方向にも縦方向にも連結させることができる。
【0012】
また、第3嵌合部および第4嵌合部のそれぞれは、辺長方向に並んで形成される凸部および凹部を有しているので、海水路の側面に防汚パネル部材を設置する際には、右進行および左進行のいずれの場合であっても、防汚パネル部材の2辺を隣接する他の防汚パネル部材で押さえた状態にすることができる。これによって、取付中の防汚パネル部材の作業者側への倒れ込みが防止されるので、作業者が1人で防汚パネル部材の連結固定作業を行うことができるようになる。したがって、施工性に優れる。
【0013】
さらに、左進行用および右進行用の防汚パネル部材を別途製作することなく、1種類の防汚パネル部材で海水路の各面に対して防汚パネルを形成することができるので、量産化によるコストダウンの効果が大きい。また、2種類の防汚パネル部材を区別して施工する必要がないので、施工ミス等のトラブルを防止できる。
【0014】
さらにまた、陽極要素を本体の各端面上部まで延びるように設けたので、各嵌合部を嵌合させた際には、本体の端面上部を覆う陽極要素同士を面接触させて通電可能に接続することができる。つまり、隣り合う陽極要素同士が電気的に一体化して、防汚パネル部材間の通電を確保できる。また、この際には、陽極要素の端縁が外部に露出しないので、海水路の壁面に取り付けたときの陽極要素の捲れを防止できる。
さらに、各凹部に対して各凸部を嵌め込み易くなり、第3嵌合部と第4嵌合部との嵌合を容易に行うことができる。また、防汚パネル部材同士を連結した際の横方向のずれ(ガタ)を吸収できるようになる。さらに、施工後において、防汚パネル部材を横方向に引き抜き易くなるので、他の防汚パネル部材を取り外すことなく不良の防汚パネル部材の1枚のみを取り換え易くなる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に従属し、第1嵌合部および第2嵌合部を嵌合させたときに当該嵌合部分を本体厚み方向に連通するように、固定具を取り付けるための貫通孔が形成される。
【0016】
第2の発明では、防汚パネル部材(10)には、隣り合う第1嵌合部(26)および第2嵌合部(28)を嵌合させたときに、その嵌合部分を本体(24)の厚み方向に連通するように、貫通孔(42,44)が形成される。この貫通孔には、防汚パネル部材を壁面(102)に固定するためのアンカボルト等の固定具(64)が取り付けられる。実施例では、第1嵌合部および第2嵌合部の嵌合部分に対して、隣り合う陽極要素(22)の接点を確保するための陽極要素接続具(60,62)が取り付けられる。この際、貫通孔に取り付けられる固定具の締付力が陽極要素接続具に作用するので、陽極要素接続具と陽極要素とが強固に密着される。
【0020】
第
3の発明は、海水と接する壁面を有する構造物であって、第1
または第2の発明に係る防汚パネル部材を縦方向および横方向のそれぞれに連結して壁面に固定した、構造物である。
【0021】
第
3の発明では、構造物(102)は、海水と接する壁面を有し、この壁面には、複数の防汚パネル部材(10)を縦方向および横方向のそれぞれに連結することによって形成される防汚パネル(12)が取り付けられる。この際には、隣り合う陽極要素同士が電気的に一体化されて、防汚パネル部材間の通電が確保される。
【0022】
第
3の発明によれば、第1
または第2の発明と同様の作用効果を奏し、壁面に対する海生生物の付着が防止される。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、第1対向2辺に互いに嵌り合う第1嵌合部および第2嵌合部を設け、第2対向2辺に互いに嵌り合う第3嵌合部および第4嵌合部を設けたので、横方向にも縦方向にも連結させることができる。また、第3嵌合部および第4嵌合部のそれぞれは、辺長方向に並んで形成される凸部および凹部を有している。このため、海水路の側面にパネル部材を設置する際には、右進行および左進行のいずれの場合であっても、パネル部材の2辺を他のパネル部材で押さえた状態にすることができる。これによって、パネル部材の作業者側への倒れ込みが防止されるので、作業者が1人でパネル部材の連結固定作業を行うことができるようになり、施工性に優れる。
【0024】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1−
図4を参照して、この発明の一実施例である防汚パネル部材(以下、単に「パネル部材」という。)10は、海水に接する構造物の壁面にイガイやフジツボ等の海生生物が付着することを防止する防汚システム100に用いられる。この実施例では、防汚システム100(パネル部材10)をコンクリート製ボックスカルバート型の海水路102に適用した例を示す。
【0027】
防汚システム100では、海水路102の両側面、底面および天面のそれぞれに対して、複数のパネル部材10を連結して構成される防汚パネル12が取り付けられる。そして、防汚パネル12の表面に形成される陽極体14に対して、外部に設置された直流電源装置16の正極を接続して微弱電気を流すことによって、海水を電気分解して酸素を発生させる。発生した酸素は、バクテリアの栄養素となる有機物を分解するので、防汚システム100では、バクテリアの繁殖を抑制でき、バクテリアの繁殖によるスライム層の形成、それに伴う藻類の付着および海生生物の付着を防止できる。
【0028】
先ず、
図5−
図8を参照して、パネル部材10の構成について説明する。
図5−
図8に示すように、パネル部材10は、基板20およびそれに貼り付けられる陽極要素22を備え、海水路102の軸方向および周方向(パネル部材10の横方向および縦方向)のそれぞれに連結されて防汚パネル12を形成する。また、隣り合う陽極要素22同士が通電可能に接続されることにより、陽極体14を形成する。
【0029】
基板20は、矩形の平板状に形成される本体24を含み、絶縁性を有する材質、たとえば塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂等の合成樹脂によって形成される。本体24の横方向の長さは、たとえば760mmであり、縦方向の長さは、たとえば500mmである。また、本体24の厚みは、たとえば8mmである。この本体24の大きさは、作業者が1人でパネル部材10を連結してアンカ止めするのに適した大きさとして設定されたものである。もちろん、設置作業に支障をきたさない範囲でサイズ変更することは可能である。なお、基板20を発泡性合成樹脂によって形成したり、基板20内部に中空部を形成したりすることによって、パネル部材10の軽量化を図ることもできる。
【0030】
本体24の横方向一方端(第1対向2辺の一方)には、凸形状の第1嵌合部26が形成され、本体24の横方向他端(第1対向2辺の他方)には、第1嵌合部26と対応する位置に、凹み形状の第2嵌合部28が形成される。具体的には、第1嵌合部26は、本体24の端面の厚み方向裏面側(端面下部)から外方に突出する断面矩形の突起であって、本体24の縦方向全長に亘って形成される。また、第2嵌合部28は、本体24の端面下部を内方に凹ませたL字状の溝であって、本体24の縦方向全長に亘って形成される。第1嵌合部26の突出長さおよび第2嵌合部28の凹み深さはそれぞれ、たとえば35mmである。パネル部材10同士を横方向に連結する際には、凹み形状の第2嵌合部28に対して凸形状の第1嵌合部26を嵌め込むことようにして、第1嵌合部26と第2嵌合部28とが嵌合される。
【0031】
また、本体24の縦方向一方端(第2対向2辺の一方)には、第3嵌合部30が形成され、本体24の縦方向他端(第2対向2辺の他方)には、第4嵌合部32が形成される。具体的には、第3嵌合部30は、本体24の端面の厚み方向裏面側において辺長方向(横方向)に並んで形成される凸部34および凹部36を有する。凸部34は、本体24の端面下部から外方に突出する断面矩形の突起であって、平面視で両側部に傾斜面34aを有する台形状に形成される。また、凹部36は、本体24の端面下部を内方に凹ませたL字状の溝であって、平面視で凸部34側に傾斜面36aを有し、本体24の横方向他端側は第2嵌合部28まで延びる。第4嵌合部32は、第3嵌合部30の凸部34および凹部36と対応する位置に形成される凹部38および凸部40を有する。凹部38は、本体24の端面下部を内方に凹ませたL字状の溝であって、平面視で両側部に傾斜面38aを有する台形状に形成される。また、凸部40は、本体24の端面下部から外方に突出する断面矩形の突起であって、平面視で両側部に傾斜面40aを有する台形状に形成される。
【0032】
各凸部34,40の突出長さおよび各凹部36,38の凹み深さはそれぞれ、たとえば15mmである。また、各凹部36,38の横方向(辺長方向)の長さは、各凸部34,40の横方向の長さよりも大きく(たとえば40mm程度大きく)設定される。さらに、第3嵌合部30の凸部34の横方向一方端側は、第1嵌合部26から内方に少し離れた位置(たとえば10mm程度離れた位置)から立ち上がる。同様に、第4嵌合部32の凸部40の横方向他端側は、第2嵌合部28から内方に少し離れた位置から立ち上がる。
【0033】
パネル部材10同士を縦方向に連結する際には、第3嵌合部30の凸部34および凹部36のそれぞれと第4嵌合部32の凹部38および凸部40のそれぞれとを互いに嵌め合うようにして、第3嵌合部30と第2嵌合部32とが嵌合される。この際、各凹部36,38の長さが、各凸部34,40の長さよりも大きく設定されていることや、各凸部34,40が傾斜面34a,40aを有する台形状に形成されていることから、各凹部36,38に対して各凸部34,40を嵌め込み易くなり、第3嵌合部30と第4嵌合部32との嵌合を容易に行うことができる。また、各凹部36,38の長さが、各凸部34,40の長さよりも大きく設定されていることから、パネル部材10同士を連結した際の横方向のずれ(ガタ)を吸収できるようになる。
【0034】
さらに、パネル部材10を連結して防汚パネル12を施工した後、パネル部材10の中の1枚に不良のものがあった場合或いは不良が生じた場合には、その不良のパネル部材10を取り換える必要がある。この際には、各凹部36,38の長さが各凸部34,40の長さよりも大きく設定されているため、アンカボルト64(
図2参照)を取り外すと横方向にパネル部材10を少しスライドできることや、各凸部34,40および各凹部36,38が傾斜面34a,36a,38a,40aを有していることから、パネル部材10を横方向に引き抜き易くなり、他のパネル部材10を取り外すことなく不良のパネル部材10の1枚のみを取り換え易くなる。
【0035】
なお、図示は省略するが、本体24の裏面側にポリウレタン等の発泡体によって形成される発泡層を設けておくようにしてもよい。これによって、海水路102の壁面の凹凸がある場合でも、その凹凸を吸収できるようになり、連結したパネル部材10、つまり防汚パネル12の表面を面一に形成し易くなる。
【0036】
このような基板20の表面側には、エポキシ樹脂などを主成分とする絶縁性の接着剤を用いて陽極要素22が貼り付けられる。陽極要素22は、チタンによって薄膜状に形成されるシート、フィルム或いは板であって、その厚みは、たとえば0.3mmである。具体的には、陽極要素22は、本体24の表面全体を覆い、かつその横方向一方端側は本体24の厚み方向表面側(端面上部)を介して第1嵌合部26の表面側まで延びると共に、横方向他端側は本体24の端面上部まで延びる。また、陽極要素22の縦方向一方端側および他端側は、本体24の端面上部まで延びる。
【0037】
このように、陽極要素22を本体24の各端面上部まで延びるように設けることによって、隣り合う第1嵌合部26と第2嵌合部28とを嵌合させた際、および隣り合う第3嵌合部30と第4嵌合部32とを嵌合させた際には、本体24の端面上部を覆う陽極要素22同士のそれぞれが面接触して通電可能に接続される。つまり、隣り合う陽極要素22同士が電気的に一体化して、パネル部材10間の通電が確保される。また、パネル部材10を連結して防汚パネル12を海水路102の壁面に設けた際には、陽極要素22の端縁が海水中に露出しないので、陽極要素22(延いては陽極体14)の捲れが防止される。
【0038】
なお、陽極要素22の表面は、白金族の電気的触媒(図示せず)で被覆しておくことが好ましい。電気的触媒で陽極要素22の表面を被覆することによって、塩素の発生を抑制しながら、酸素を効率よく発生させることができる。
【0039】
また、パネル部材10には、隣り合う第1嵌合部26および第2嵌合部28を嵌合させたときに、その嵌合部分を本体24の厚み方向に連通するように、貫通孔42,44が形成される。貫通孔42は、第1嵌合部26およびそれに貼り付けられた陽極要素22を貫くように縦方向中央部分に設けられ、平面視で円形状に形成される。一方、貫通孔44は、貫通孔42と対応する位置において、第2嵌合部28を構成する本体24の横方向他端部およびそれに貼り付けられた陽極要素22を貫くように設けられ、平面視で本体24側に直線部(平面部)44aを有する馬蹄状に形成される。さらに、パネル部材10には、第1嵌合部26およびそれに貼り付けられた陽極要素22を本体24の厚み方向に貫く貫通孔46が形成される。貫通孔46は、縦方向端部に設けられ、平面視で細長矩形状に形成される。
【0040】
貫通孔42,44は、パネル部材10を海水路102の壁面にアンカ止めする際に、アンカボルト64等の固定具の取付部として利用される。また、貫通孔44の直線部44aは、後述する第1陽極要素接続具60を取り付けるための取付部として利用され、貫通孔46は、後述する第2陽極要素接続具62を取り付けるための取付部として利用される。なお、貫通孔42,44,46は、パネル部材10の製造時に穿孔しておいてもよいし、施工時に穿孔されてもよい。また、必要とするパネル部材10の取付強度に応じて、第1嵌合部26および第2嵌合部28の嵌合部分に複数の貫通孔42,44を形成することもできる。
【0041】
図2−
図4に戻って、防汚システム100では、複数のパネル部材10を連結して構成される防汚パネル12の端部(4辺)のそれぞれに、陰極部材50が設けられる。陰極部材50は、レール形状を有し、海水を電気分解する際の陰極として機能すると共に、海水路102の壁面からの防汚パネル12の脱落や剥離を防止するための端部固定部材としても機能する。
【0042】
具体的には、
図9に示すように、陰極部材50は、絶縁性を有する材質、たとえば塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂等の合成樹脂によって形成されるレール部52および固定部54を含む。レール部52は、第1片52aおよび第2片52bを有し、第1片52aは、長尺の矩形平板状に形成されて、防汚パネル12の端面に沿うように延びる。また、第2片52bは、第1片52aの一方端から直角に突出する長尺の矩形平板状に形成され、防汚パネル12の表面に沿うように延びる。つまり、レール部52は、第1片52aと第2片52bとによって断面L字状に形成され、その内面側と海水路102の壁面とで形成される溝部分に防汚パネル12の端部が嵌め込まれる。レール部52の長手方向の長さは、たとえば2000−3000mmである。
【0043】
また、固定部54は、レール部52の第1片52aの他端から第2片52bと反対方向に突出する矩形平板状に形成され、レール部52の長手方向の全長に亘って形成される。固定部54には、アンカ止めに利用される複数の貫通孔56が形成される。
【0044】
さらに、レール部52の第2片52bの外側面には、陰極部58が設けられる。陰極部58は、ステンレス鋼などの金属によって長尺の矩形平板状に形成され、レール部52の長手方向の全長に亘って延びる。また、陰極部58は、レール部52の第2片52bの先端から少し間隔をあけた位置に設けられ、これによって、防汚パネル12の表面に形成された陽極体14との短絡が防止される。なお、4辺に設けられる陰極部材50(陰極部58)同士の導通は、適宜、ステンレス鋼などによって形成される平板状の導通体(図示せず)を用いて連結することによって確保される。
【0045】
また、
図3および
図4に示すように、防汚システム100では、パネル部材10の第1嵌合部26および第2嵌合部28の嵌合部分に対して、第1陽極要素接続具60および第2陽極要素接続具62が取り付けられる。
【0046】
具体的には、第1陽極要素接続具60は、パネル部材10を横方向に連結したときに、隣り合う陽極要素22同士をより確実に電気的に接合するための部材であって、
図10および
図11に示すように、チタンによって溝形の断面形状を有するように形成される。第1陽極要素接続具60は、パネル部材10の貫通孔44の直線部44aに取り付けられて、本体20の横方向他端部の陽極要素22とそれに隣接する第1嵌合部26の陽極要素22との電気的接点を確保する。この際、第1陽極要素接続具60には、貫通孔44に取り付けられるアンカボルト64の締付力が作用するので、第1陽極要素接続具60と各陽極要素22とは強固に密着する。
【0047】
また、第2陽極要素接続具62は、パネル部材10を縦方向に連結したときに、隣り合う陽極要素22同士をより確実に電気的に接合するための部材であって、
図12および
図13に示すように、チタンによって鉤形の断面形状を有するように形成される。第2陽極要素接続具62は、パネル部材10の貫通孔46に取り付けられると共に、その端部が第1嵌合部26と第2嵌合部28との嵌合部分に嵌め込まれて、本体20の横方向他端部および第1嵌合部26の陽極要素22とそれらに隣接する本体20の横方向他端部および第1嵌合部26の陽極要素22との電気的接点を確保する。この際、第2陽極要素接続具62にも、貫通孔44に取り付けられるアンカボルト64の締付力が作用するので、第2陽極要素接続具62と各陽極要素22とは強固に密着する。
【0048】
続いて、防汚システム100の施工方法(パネル部材10の海水路102への設置方法)の一例について説明する。
【0049】
防汚システム100を施工する際には、海水路102内に足場(図示せず)が設けられる。海水路102の全長に亘る足場を設けると大掛かりとなって施工費用が嵩むので、通常は、施工区間の先頭の数m−10数m程度の一部区間に足場を設置し、その足場を用いて、海水路102の両側面、底面および天面のそれぞれに対して防汚パネル10および陰極部材50などを設置する。そして、足場周囲の区間に防汚パネル10および陰極部材50などを設置し終わると、足場を進行方向にずらして、残りの施工区間についても防汚パネル10および陰極部材50などを順次設置する。すなわち、海水路102の両側面、底面および天面のそれぞれに対する防汚パネル10および陰極部材50などの設置は、数m−10数m程度の区間を1ブロック(1組)として同時並行的に行われる。そして、その1ブロックの施工が終了すると、次の1ブロックの施工に進み、これらを繰り返して施工区間の全長に亘って防汚システム100を施工する。
【0050】
なお、
図2では、図示および説明の簡素化のため、パネル部材10を横方向に3列連結したものを1ブロック分として例示しているが、4列以上連結したものを1ブロック分とすることもできる。また、縦方向については、4段連結したものを1組として例示しているが、この段数は海水路102の高さや幅などに応じて適宜変更可能である。
【0051】
また、以下においては、海水路102の両側面にパネル部材10を設置する場合を想定して説明するが、海水路102の天面および底面に対しても同様にパネル部材10を設置することができる。なお、海水路102へのパネル部材10の設置は、海水路102から海水を除去して行うようにしてもよいし、海水路102を使用中であって海水が除去できない場合は、海水中で行うようにしてもよい。また、パネル部材10および陰極部材50等の部材の海水路102内への搬送は、点検用マンホール等を利用して行われる。パネル部材10には、第1陽極要素接続具60および第2陽極要素接続具62を予め取り付けておくとよい。
【0052】
以下、
図2−
図4、
図14および
図15を適宜参照して、防汚システム100の施工方法について具体的に説明する。防汚システム100を施工する際には、先ず、海水路102の一方側面に対して、アンカボルト64等の固定具を用いて下端(底面側)および一方端(先頭側)に配置される陰極部材50を取り付ける。
【0053】
続いて、
図14に示すように、パネル部材10の第1嵌合部26が先頭側に配置されるようにして、1列目のパネル部材10を下から順番に縦方向に連結していく。すなわち、1列目の1段目に配置される(以下、1列1段目と言う。他も同様である。)パネル部材10の横方向一方端側および縦方向他端側を陰極部材50に支持させた状態(つまり、陰極部材50と海水路102の壁面とで形成される溝部分にパネル部材10の第1嵌合部26および第4嵌合部32を嵌め込んだ状態)にして、海水路102の壁面に当該パネル部材10を取り付ける。次に、1列1段目のパネル部材10の第3嵌合部30に対して、1列2段目のパネル部材10の第4嵌合部32を嵌合させてパネル部材10同士を連結すると共に、横方向一方端側を陰極部材50に支持させた状態にして、1列2段目のパネル部材10を取り付ける。その後、同様にして、パネル部材10を縦方向に連結していくことによって、1列目のパネル部材10を設置する。
【0054】
なお、1列目の各パネル部材10を取り付ける際には、パネル部材10の第1嵌合部26の表面側の空間に対して、
図16に示すような第1スペーサ66を適宜取り付けておくとよい(
図3参照)。この第1スペーサ66は、合成樹脂などの絶縁性を有する材料によって平板状に形成され、パネル部材10の貫通孔42,44に対応する位置に貫通孔68を有する。また、1段目の各パネル部材10を取り付ける際には、パネル部材10の第4嵌合部32に対して
図17に示すような第2スペーサ70を適宜取り付けておくとよい(
図4参照)。この第2スペーサ70は、合成樹脂などの絶縁性を有する材料によって平板状に形成され、第3嵌合部30および第4嵌合部32の凸部34,40および凹部36,38と対応する位置に形成される凹部72および凸部74を有する。
【0055】
1列目のパネル部材10の設置作業が終了すると、続いて、
図15に示すように、2列目のパネル部材10を1列目のパネル部材10に連結しつつ、下から順番に縦方向に連結して固定していく。すなわち、2列1段目のパネル部材10の縦方向他端側(第4嵌合部32側)を陰極部材50に支持させると共に、1列1段目のパネル部材10の第2嵌合部28に2列1段目のパネル部材10の第1嵌合部26を嵌め込むようにして、パネル部材10同士を横方向に連結する。そして、第1嵌合部26と第2嵌合部28との嵌合によって連通した貫通孔42,44にアンカボルト64を挿通して、海水路102の壁面に当該パネル部材10を固定する。
【0056】
次に、1列2段目のパネル部材10および2列1段目のパネル部材10に対して、2列2段目のパネル部材10を連結する。具体的には、1列2段目および1列3段目のパネル部材10の第2嵌合部28に対して2列2段目のパネル部材10の第1嵌合部26を嵌め込んだ後、2列2段目のパネル部材10を下方向にスライドさせて、2列1段目の第3嵌合部30と2列2段目のパネル部材10の第4嵌合部32とを嵌合させる。その後、連通した貫通孔42,44にアンカボルト64を挿通して、海水路102の壁面に当該パネル部材10を固定する。ここで、アンカボルト64を用いて2列2段目のパネル部材10を固定する際には、当該パネル部材10の第1嵌合部26は、1列2段目のパネル部材10の裏面側(第2嵌合部28)に入り込んだ状態となり、第4嵌合部32の凸部40は、2列1段目のパネル部材10の裏面側(第3嵌合部30の凹部34)に入り込んだ状態となる。つまり、当該パネル部材10は、横方向一方端部および縦方向他端部の2辺において、他のパネル部材10によって表面側への動きを規制された状態となる。これによって、当該パネル部材10の作業者側への倒れ込みが防止されるので、作業者がアンカボルト64によって当該パネル部材10を壁面に固定する際に、パネル部材10が倒れないように他の作業者に押さえておいてもらう必要がなくなり、作業者が1人でパネル部材10の連結固定作業を行うことができるようになる。
【0057】
2列2段目のパネル部材10を連結固定作業が終わると、同様にして、パネル部材10を縦方向に連結固定していくことによって、2列目のパネル部材10を設置する。その後、同様にして、3列目のパネル部材10も順次連結してアンカ止めし、1ブロック分の防汚パネル12を形成する。なお、アンカボルト64は、後からまとめて設置してもよい。
【0058】
1ブロック分の防汚パネル12を形成すると、防汚パネル12の上端(天面側)および他端(最後尾側)にも陰極部材50を取り付ける。この際には、最後尾の各パネル部材10の第2嵌合部28に対して、第1スペーサ66を適宜取り付けておくとよい(
図3参照)。また、最上段の各パネル部材10の第3嵌合部30には、第2スペーサ70を取り付けておくとよい(
図4参照)。さらに、隣り合う陰極部材50同士は、平板状の導通体52などを利用して通電可能に適宜連結しておくとよい。
【0059】
一方、上述したように、海水路102の一方側面に対してパネル部材10等を設置する作業と同時並行的に、海水路102の他側面に対してもパネル部材10等を設置していく。この際、海水路102の左右の側面に対してパネル部材10を同一方向に連結しようとすると、海水路102の他側面に対しては、
図18に示すように、パネル部材10の上下を反転した状態(第3嵌合部30と第4嵌合部32の配置位置が逆になる状態)で連結していくことになる。この場合においても、2列2段目以降のパネル部材10を固定する際には、当該パネル部材10の第1嵌合部26は、その横に固定されたパネル部材10の裏面側(第2嵌合部28)に入り込んだ状態となり、第3嵌合部30の凸部34は、その下に固定されたパネル部材10の裏面側(第4嵌合部32の凹部38)に入り込んだ状態となる。つまり、当該パネル部材10は、横方向一方端部および縦方向一方端部の2辺において、他のパネル部材10によって表面側への動きを規制された状態となるので、当該パネル部材10の作業者側への倒れ込みが防止される。
【0060】
このように、パネル部材10は、右方向および左方向のどちらの方向に連結していく場合でも、アンカボルト64で固定する際のパネル部材10の作業者側への倒れ込みが防止されるので、パネル部材10の連結固定作業を作業者が1人で容易に行うことができる。すなわち、パネル部材10は、横方向の双方(左右両方向)に対して適切に進行していくことができるので、左進行用および右進行用のパネル部材を別途製作することなく、1種類のパネル部材10で海水路102の各面に対して防汚パネル12を形成することができる。なお、海水路102の他側面に対するパネル部材10等の設置作業自体は、上述の海水路102の一方側面に対するパネル部材10等の設置作業と同様に行うとよいので、説明は省略する。
【0061】
1ブロック分の設置作業が終了すると、次の1ブロックの施工に進み、これらを繰り返して施工区間の全長に亘ってパネル部材10および陰極部材50等を施工する。そして、海水路102の施工区間の全長に亘る設置作業が終了すると、防汚パネル12の表面に形成された陽極体14には、外部に設置された直流電源装置16の正極を接続し、陰極部材50には、直流電源装置16の負極を接続することによって、海水路102の壁面への防汚システム100の施工作業を終了する。
【0062】
この実施例によれば、第1対向2辺に互いに嵌り合う第1嵌合部26および第2嵌合部28を設け、第2対向2辺に互いに嵌り合う第3嵌合部30および第4嵌合部32を設けたので、横方向にも縦方向にも連結させることができる。
【0063】
また、第3嵌合部30および第4嵌合部32のそれぞれは、辺長方向に並んで形成される凸部34,40および凹部36,38を有している。このため、海水路102の側面にパネル部材10を設置する際には、右進行および左進行のいずれの場合であっても、パネル部材10の2辺を他のパネル部材10で押さえた状態にすることができる。これによって、当該パネル部材10の作業者側への倒れ込みが防止されるので、作業者が1人でパネル部材10の連結固定作業を行うことができるようになり、施工性に優れる。
【0064】
さらに、左進行用および右進行用のパネル部材を別途製作することなく、1種類のパネル部材10で海水路102の各面に対して防汚パネル12を形成することができるので、量産化によるコストダウンの効果が大きい。また、2種類のパネル部材10を区別して施工する必要がないので、施工ミス等のトラブルを防止できる。
【0065】
さらにまた、陽極要素22を本体24の各端面上部まで延びるように設けたので、各嵌合部26,28,30,32を嵌合させた際には、本体24の端面上部を覆う陽極要素22同士を面接触させて通電可能に接続することができる。つまり、隣り合う陽極要素22同士が電気的に一体化して、パネル部材10間の通電を確保できる。また、この際には、陽極要素22の端縁が外部に露出しないので、海水路102の壁面に取り付けたときの陽極要素22の捲れを防止できる。
【0066】
なお、上述の実施例では、第3嵌合部30および第4嵌合部32には、辺長方向に並ぶ凸部34,40および凹部36,38を1つずつ形成するようにしたが、辺長方向に並ぶ複数の凸部34,40および凹部36,38を形成することもできる。たとえば、
図19に示す実施例のように、第3嵌合部30が、中央部分に形成される凸部34およびその両側に形成される凹部36を有すると共に、第4嵌合部32が、中央部分に形成される凹部38およびその両側に形成される凸部40を有するようにすることもできる。もちろん、第3嵌合部30および第4嵌合部32のそれぞれが、2つ以上の凸部34,40および凹部36,38を有することもできる。
【0067】
また、上述の実施例では、第1嵌合部26および第2嵌合部28を本体24の縦方向の全長に亘って形成するようにしたが、これに限定されず、縦方向に部分的に形成することもできる。
【0068】
さらに、上述の実施例では、各嵌合部26,28,30,32を本体24の端面の厚み方向裏面側(端面下部)に形成するに際し、本体24の端面下部全体を突出させたり、端面下部全体を内方に凹ませたりしたが、これに限定されない。たとえば、
図20に示すように、第1嵌合部26、第3嵌合部30の凸部34、および第4嵌合部32の凸部40は、本体24の裏面から所定距離だけ離れた部分を突出させてもよいし、第2嵌合部28、第3嵌合部30の凹部36、および第4嵌合部32の凹部38は、それらと対応させて、本体24の裏面から所定距離だけ離れた部分を凹ませてもよい。すなわち、この発明で言う本体24の端面の厚み方向裏面側とは、本体24の表面から裏面側に所定距離だけ離れた端面部分を示し、端面の厚み方向裏面側から突出するとは、本体24の裏面と面一に突出するだけでなく、段差状に突出する場合も含む。
【0069】
さらにまた、上述の実施例では、第1嵌合部26および第2嵌合部28の嵌合部分に貫通孔42,44を形成し、そこにアンカボルト64を取り付けることによってパネル部材10を固定するようにしたが、これに限定されない。たとえば、嵌合部分以外の本体24部分や、第3嵌合部30および第4嵌合部32の嵌合部分に対して、1または複数の貫通孔を適宜形成して、その貫通孔にアンカボルト64等の固定具を取り付けることもできる。
【0070】
また、上述の実施例では、本体24の辺長を縦方向と横方向とで異ならせているが、本体24の4辺の長さを同じ大きさにする、つまり本体24を平面視で正方形状に形成してもよい。また、平面視で菱形状および平行四辺形状などに形成してもよい。
【0071】
さらに、上述の実施例では、陽極要素22を本体24の各端面上部まで延びるように設けることによって、隣り合う陽極要素22の端部同士を面接触させて通電可能に接続すると共に、第1陽極要素接続具60および第2陽極要素接続具62を取り付けることによって、より確実に電気的接点を確保するようにしたが、さらに、海水路102から海水を除去して施工を実施できる場合には、陽極要素22の端部表面および各接続具60,62など(つまり電気的接合部分)に対して、通電性接着剤を塗布するようにしてもよい。これによって、隣り合う陽極要素22同士は、より強固に電気的に接続され、腐食にも強くなるので、より長期に亘って確実に陽極体14の通電性を保つことができる。
【0072】
また、陽極要素22は、第2嵌合部28の内面まで延びるように形成してもよく、これによって、第1嵌合部26と第2嵌合部28とを接合した際に、隣り合う陽極要素22同士がより確実に通電可能に接続される。さらに、陽極要素22は、第3嵌合部30および第4嵌合部32の凸部34,40の表面、および凹部36,38の内面まで延びるように形成してもよく、これによって、第3嵌合部30と第4嵌合部32とを接合した際に、隣り合う陽極要素22同士がより確実に通電可能に接続される。なお、隣り合う陽極要素22同士が確実に通電可能に接続される場合には、必ずしも第1陽極要素接続具60および第2陽極要素接続具62を取り付ける必要はない。
【0073】
また、上述の実施例では、陰極部材50として、絶縁材によって形成されるレール部52および固定部54、ならびにステンレス鋼などによって形成される陰極部58を備える構成のものを用いたが、これに限定されない。たとえば、
図21に示すように、ステンレス鋼などの金属によって形成されるレール部80および固定部82を備え、レール部80の内面全体および外面側にゴムライニング等の絶縁体84を設けた構成の陰極部材50を用いることもできる。
図21に示す陰極部材50では、海水と接する導電部分、つまりレール部80の外面側の一部および固定部82が陰極として作用する。
【0074】
さらに、上述の実施例では、防汚パネル12の4辺に陰極部材50を設けるようにしたが、防汚パネル12のいずれか1辺ないし3辺のみに陰極部材50を設けるだけでもよい。また、陰極部材50に代えて、或いは陰極部材50と共に、海水路102の軸方向の所定間隔ごとに、防汚パネル12の上に第2陰極部材を設けるようにしてもよいし、陰極具備型のパネル部材を設けるようにしてもよい。なお、第2陰極部材および陰極具備型のパネル部材に関しては、特開2013−23847号公報に記載されたものと同様のものを利用可能であるので、説明は省略する。
【0075】
さらにまた、上述の実施例では、陽極として作用する陽極要素22(陽極体14)およびその接続具60,62の材質としてチタンを採用し、陰極として作用する陰極部材50の陰極部58の材質としてステンレス鋼を採用したが、海水を電気分解して酸素を発生できるならば、これらの材質は適宜変更しても構わない。ただし、腐食に対する耐性を有することが好ましい。なお、陰極として一般構造用圧延鋼材(SS相当品)を用いても電気防食効果が期待できる。
【0076】
また、上述の実施例では、施工区間を所定長さの複数のブロックに区切って、海水路102の各壁面に対するパネル部材10等の設置を同時並行的に行うようにしたが、これに限定されない。たとえば、施工区間の全長に亘るパネル部材10等の設置を或る壁面に対して行った後、他の壁面に対してパネル部材10等を設置していくこともできる。
【0077】
さらに、上述の実施例では、海水路102の壁面に取り付ける際に、第1嵌合部26と第2嵌合部28とを横方向(左右方向)に連結し、第3嵌合部30と第4嵌合部32とを縦方向(上下方向)に連結するようにしたが、これらの縦横を入れ替えて連結固定することもできる。つまり、第1嵌合部26と第2嵌合部28とを縦方向に連結し、第3嵌合部30と第4嵌合部32とを横方向に連結することもできる。
【0078】
なお、パネル部材10(防汚システム100)は、海水と接する壁面であればどこに適用してもよく、たとえば、上方が解放された溝型の海水路(開水路)に適用することもできるし、橋脚や海岸壁に適用することもできる。さらに、適用する壁面が湾曲面であれば、その曲率に対応した曲板状にパネル部材10を形成することもできる。
【0079】
また、上で挙げた寸法などの具体的数値はいずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。