【実施例】
【0029】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、以下の実施例において、「%」は質量%を表す。また、以下の実施例において、窒素、ヘリウム、空気はいずれも露点が−60℃以下のものを使用した。
実施例3、4、及び10は、参考例である。
【0030】
[実施例1]
攪拌器と還流管を備えた1Lのテフロン(登録商標)製反応器に、窒素雰囲気下で、フッ化リチウム30.7g(1.18mol)とエチルメチルカーボネート200mlとを導入し、攪拌を開始した。次いで、反応器内を5℃〜20℃に保ち、窒素5ml/分をキャリアガスとしてバブリングしながら、五フッ化リン75g(0.59mol)を210分かけてバブリングした。五フッ化リンの導入後、還流管の上部から白煙状のガスが発生していることが目視で確認された。このガスをFT−IRで分析した結果、オキシフッ化リンを1.2vol%、フッ化水素を0.12vol%含有していた。
次いで、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は34重量ppm、フッ化水素の濃度は135重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物(オキシフッ化リン由来の酸不純物)は20重量ppm未満であった。
【0031】
[実施例2]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を400ml/分(溶液1mlあたり2ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。
60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は21重量ppm、フッ化水素の濃度は70重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は20重量ppm未満であった。
【0032】
[実施例3]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、30分間バブリングした。30分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが残存していることが目視で確認された。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は78重量ppm、フッ化水素の濃度は195重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は180重量ppmであった。
【0033】
[実施例4]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を400ml/分(溶液1mlあたり2ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、30分間バブリングした。3
0分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが残存していることが目視で確認された。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は68重量ppm、フッ化水素の濃度は140重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は155重量ppmであった。
【0034】
[実施例5]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を50℃に保ち、60分間バブリングした。60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は45重量ppm、フッ化水素の濃度は625重量ppmであり、その他に、オキシフッ化リン由来物としてオキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物が569重量ppm検出された。
【0035】
[実施例6]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対してヘリウムガスによりバブリングを行った。ヘリウム流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は50重量ppm、フッ化水素の濃度は138重量ppmであり、その他に、オキシフッ化リン由来物としてオキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は20重量ppm未満であった。
【0036】
[実施例7]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対して空気によりバブリングを行った。空気の流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は75重量ppm、フッ化水素の濃度は182重量ppmであり、その他に、オキシフッ化リン由来物としてオキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は20重量ppm未満であった。
【0037】
[実施例8]
攪拌器と還流管を備えた1Lのテフロン(登録商標)製反応器に、窒素雰囲気下で、フッ化リチウム30.7g(1.18mol)とジメチルカーボネート200mlとを導入し、攪拌を開始した。次いで、反応器内を5℃〜20℃に保ち、窒素5ml/分をキャリアガスとしてバブリングしながら、五フッ化リン75g(0.59mol)を210分かけてバブリングした。五フッ化リンの導入後、還流管の上部から白煙状のガスが発生していることが目視で確認された。このガスをFT−IRで分析した結果、オキシフッ化リンを1.3vol%、フッ化水素を0.1vol%含有していた。
次いで、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は48重量ppm、フッ化水素の濃度は165重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物(オキシフッ化リン由来の酸不純物)は20重量ppm未満であった。
【0038】
[実施例9]
攪拌器と還流管を備えた1Lのテフロン(登録商標)製反応器に、窒素雰囲気下で、フッ化リチウム30.7g(1.18mol)とジエチルカーボネート200mlとを導入し、攪拌を開始した。次いで、反応器内を5℃〜20℃に保ち、窒素5ml/分をキャリアガスとしてバブリングしながら、五フッ化リン75g(0.59mol)を210分かけてバブリングした。五フッ化リンの導入後、還流管の上部から白煙状のガスが発生していることが目視で確認された。このガスをFT−IRで分析した結果、オキシフッ化リンを1.4vol%、フッ化水素を0.14vol%含有していた。
次いで、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を100ml/分(溶液1mlあたり0.5ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが消失していることが目視で確認された。ガスをFT−IRにて分析した結果、フッ化水素、オキシフッ化リンは検出されなかった。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は60重量ppm、フッ化水素の濃度は170重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物(オキシフッ化リン由来の酸不純物)は20重量ppm未満であった。
【0039】
[実施例10]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた後、得られた混合溶液に対して窒素バブリングを行った。窒素流量を20ml/分(溶液1mlあたり0.1ml/分)に設定し、反応器内を5℃〜10℃に保ち、60分間バブリングした。
60分後、還流管の上部から発生していた白煙状のガスが残存していることが目視で確認された。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は123重量ppm、フッ化水素の濃度は357重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は548重量ppm検出された。
【0040】
[比較例1]
実施例1と同様の方法でフッ化リチウムと五フッ化リンとを反応させた。得られた混合溶液からは白煙状のガスが発生していることが目視で確認された。
得られた液をろ過し、過剰のフッ化リチウムを除去した。ろ液の
19F−NMR測定を行った結果、六フッ化リン酸リチウムの生成が確認された。ろ液中のオキシフッ化リンの濃度は145重量ppm、フッ化水素の濃度は420重量ppmであった。オキシフッ化リンと有機溶媒とが反応した酸不純物は645重量ppmであった。
【0041】
本発明の方法における、バブリングの条件およびバブリングの結果を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
上記の結果より、実施例におけるバブリング工程を有する六フッ化リン酸リチウムの製造方法であれば、比較例における製造方法に比較して、ろ過後のろ液中における不純物濃度が低くなることが明らかである。
また、実施例1及び2と、実施例3及び4と、の比較により、ろ過後のろ液中における不純物濃度は、バブリングの流量が0.5ml/分以上であり、バブリングの時間が60分以上である場合に、より低くなることがわかる。
さらに、実施例1及び5との比較より、ろ過後のろ液中における不純物濃度は、バブリングの反応温度が50℃未満である場合に、より低くなることがわかる。
加えて、実施例1、6及び7の比較より、ろ過後のろ液中における不純物濃度は、バブリングに使用するガスが窒素ガスである場合に、より低くなることがわかる。
そして、実施例1、8及び9の比較より、ろ過後のろ液中における不純物濃度は、混合溶液中の有機溶媒がエチルメチルカーボネートである場合に、より低くなることがわかる。