特許第6144959号(P6144959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144959
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】有価証券取引システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20170529BHJP
【FI】
   G06Q40/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-96411(P2013-96411)
(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公開番号】特開2014-219729(P2014-219729A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100093023
【弁理士】
【氏名又は名称】小塚 善高
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅之
【審査官】 谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−142973(JP,A)
【文献】 特開平08−087489(JP,A)
【文献】 特開2003−030469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価証券の売買取引をオンラインで処理する有価証券取引システムであって、
コンピュータシステム上で、顧客が情報処理端末を利用してネットワークを介してアクセスすることができる有価証券取引の場としての仮想空間を実現するPTSサブシステムを有し、
前記PTSサブシステムは、
前記仮想空間において前記顧客により仮想的に取引される商品の情報と、当該商品に対応する有価証券の情報とを関連付けて保持するデータベースを有し、
前記商品の情報には当該商品の名称と取引価値の情報を含み、前記有価証券の情報には当該有価証券の銘柄と時価の情報を含み、
前記仮想空間において前記商品の取引が行われた際に、当該商品に関連付けられた有価証券の取引が約定したものとする、有価証券取引システム。
【請求項2】
請求項1に記載の有価証券取引システムにおいて、
前記PTSサブシステムの前記データベースにおける前記商品の情報には、当該商品についての画像の情報を含み、
前記PTSサブシステムは、
前記仮想空間において、取引対象となる前記各商品を対応する前記画像により表し、前記情報処理端末を介した前記顧客からの指示により特定された前記画像に対応する前記商品について取引を行う、有価証券取引システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有価証券取引システムにおいて、
前記PTSサブシステムは、前記仮想空間において、取引を行う前記顧客を、前記顧客自身を示すアバターにより表し、前記情報処理端末を介した前記顧客からの指示に基づいて前記アバターを動作させて取引を行う、有価証券取引システム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の有価証券取引システムにおいて、
前記PTSサブシステムにより実現される前記仮想空間において取引対象となる前記商品に関連付けられた前記有価証券は、当該有価証券取引システムを運営する金融機関が保有する自己の在庫から決定された銘柄である、有価証券取引システム。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の有価証券取引システムにおいて、
前記PTSサブシステムにより実現される前記仮想空間において取引対象となる前記商品に関連付けられた前記有価証券は、単元未満株である、有価証券取引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券の取引を処理する技術に関し、特に、利用者がオンラインで容易に有価証券取引を行うことを可能とする有価証券取引システムに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内の個人金融資産の大半を占める間接金融資産(預金・貯金)を直接金融資産に誘導して転換することは、国内資本市場や日本経済の活性化にとって重要な施策であり、様々な取り組みがなされている。しかしながら、個人金融資産の大半を保有しているのは高齢者であり、従来証券会社等が販売の対象としてきたこれら高齢者や富裕層向けのセールスだけでは、10〜20年後の将来に向けた国内資本市場の継続的な活性化を図るという観点では課題を有する。
【0003】
この課題解決のためには、将来における直接金融取引の中心世代となるべき現在の若年層に対して、直接金融取引への興味、関心、知識を引き上げ、実取引体験の機会を提供するということが非常に重要である。現在、特にオンラインによる有価証券取引の分野では、若年層に対する取り組みが検討され、実施されているが、若年層一般として、有価証券取引自体に興味が薄く、また、有価証券取引には開始時点で一定の元手・資金(預り金)の用意が必要となることから、特に若年層にとって有価証券取引への敷居は依然高い状況にある。
【0004】
これに関連する技術として、例えば、特開2004−348509号公報(特許文献1)には、株式等の有価証券機能を商品に付随させるものとして、有価証券情報と同様の情報を、例えばICチップや半導体メモリ等に書き込んで商品に埋め込む、もしくは商品番号等の商品識別情報を商品に格納または記録し、商品識別情報と有価証券情報との対応データを管理センタで管理する技術が記載されている。このとき、商品取引は、商品価格に有価証券価格を加算して行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−348509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1などに記載されたような技術では、商品に有価証券機能を付随させ商品を介して取引することが可能となるため、若年層などの一般消費者にとって有価証券取引を行うための敷居を下げることが可能になると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載されたような技術は、有価証券機能を付随させることで商品を長く使って愛着を高めることに資するものである。ここで、例えば、利益を得るためや、有価証券取引についての興味、関心、知識を引き上げ、実取引体験の機会を提供するためには、取引の機会をできるだけ多く得られるようにすることが必要となってくるが、特許文献1に記載されたような技術はこれとは矛盾してしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、有価証券取引のユーザインタフェースを、若年層が馴染みやすいゲーム等の仮想空間での物品の売買とすることで容易に取引を行うことを可能とする有価証券取引システムを提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態による有価証券取引システムは、有価証券の売買取引をオンラインで処理する有価証券取引システムであって、コンピュータシステム上で、顧客が情報処理端末を利用してネットワークを介してアクセスすることができる有価証券取引の場としての仮想空間を実現するPTSサブシステムを有し、前記PTSサブシステムは、前記仮想空間において前記顧客により仮想的に取引される商品の情報と、当該商品に対応する有価証券の情報とを関連付けて保持するデータベースを有し、前記商品の情報には当該商品の名称と取引価値の情報を含み、前記有価証券の情報には当該有価証券の銘柄と時価の情報を含み、前記仮想空間において前記商品の取引が行われた際に、当該商品に関連付けられた有価証券の取引が約定したものとするものである。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、有価証券取引のユーザインタフェースを、若年層が馴染みやすいゲーム等の仮想空間での物品の売買とすることで容易に取引を行うことが可能となり、若年層を有価証券取引に誘導するための実取引体験の場を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施の形態である有価証券取引システムの構成例について概要を示した図である。
図2】本発明の一実施の形態におけるユーザ端末の画面上に表示されるPTSシステムが提供する仮想空間の画面表示例について概要を示した図である。
図3】本発明の一実施の形態における全体の処理の流れの例について概要を示した図である。
図4】本発明の一実施の形態における在庫DBのデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。
図5】本発明の一実施の形態における口座DBのデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。
図6】本発明の一実施の形態におけるユーザDBのデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。
図7】本発明の一実施の形態におけるオブジェクトDBのデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。
図8】本発明の一実施の形態における端株DBのデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本発明の一実施の形態である有価証券取引システムは、一般的な株式等の有価証券についてリテールでのオンライン取引を行う情報処理システムに対して、有価証券の売買等に係る情報の入力等の操作を行うためのユーザインタフェースを、利用者、特に若年層が馴染みやすいゲーム等の仮想空間での物品の売買を通して行うようなインタフェースとする。すなわち、仮想空間上に表現された「物(の画像)」と、これに対応し、株式等の有価証券と関連付けられた「商品」を想定し、例えば、仮想空間上での「家」の購入を、住宅メーカーの株式の買い入れと取り扱い、また、「お菓子」の売買を、菓子メーカーの株式の売買と取り扱う。
【0016】
このような仮想的な「物」と「株式」等の有価証券との紐付けにより、仮想空間全体がPTS(Proprietary Trading System:私設取引システム)市場となり、ゲーム中での仮想的な「物」の売買により間接的に「株式」売買取引を実施することになる。このような仕組みにより、利用者の有価証券取引に対する興味を惹起し、ゲーム的な操作や仕組みで容易に売買できるようにすることで、有価証券取引に対する敷居を下げることを可能とする。
【0017】
また、本実施の形態では、若年層の利用者がより利用しやすいよう、すなわち、より敷居が下がるよう、売買単価やリスク幅の引き下げのため、仮想的な「物」に関連付けて売買対象とする株式についてはいわゆる端株(現行商法では「単元未満株」という制度となっているが以下では「端株」と総称する)を活用するものとする。上記のPTS市場に対する端株の供給は、例えば、当該PTS市場を運営する証券会社の自己勘定による在庫を利用することができる。
【0018】
また、若年層の利用者に対する興味の惹起のため、例えば、PC(Personal Computer)だけでなく、スマートフォンやタブレット型端末、さらにはウェアラブルデバイスや生体動作認証デバイス等の、最先端のITデバイスを活用した操作性やゲーム性を取り入れたユーザインタフェースとすることも可能である。
【0019】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施の形態である有価証券取引システムの構成例について概要を示した図である。有価証券取引システム1は、例えば、証券会社等が運営している既存の証券取引システム10に対して、フロントエンドシステムとしてのPTSシステム20を有し、利用者(顧客)が各種のユーザ端末4を利用してインターネット3等のネットワークを介してPTSシステム20(および証券取引システム10)にアクセス可能な構成を有する。証券取引システム10は、顧客がPTS市場において端株の取引を行った際の決済を行うための決済機能を有する。決済機能は証券取引システム10とは別のシステムとして構成することも可能であり、本実施の形態では、決済機能は証券取引システム10とは別に構成された決済システム30が行うこととし、決済システム30と証券取引システム10とを接続している。
【0020】
証券取引システム10は、証券会社等が運営している一般的なオンラインでの証券取引を処理するサブシステムであり、当該証券取引システム10を利用して証券取引を行う顧客、および各顧客が保有する株式等の有価証券の情報を、口座データベース(DB)12によって管理し、また、各顧客が行う売買取引を処理する機能を有する。また、当該証券取引システム10を運営する証券会社等の自己勘定での売買取引を処理し、在庫(ポジション)を在庫DB11により管理する機能を有する。また、上記のような各機能を顧客や証券会社のトレーダー等に提供するためのユーザインタフェースの機能も有する。また、顧客からの注文や証券会社の自己部門による売買取引を、必要に応じて東京証券取引所等の取引所の業務システムである取引所システム2に対して執行する機能も有する。
【0021】
PTSシステム20は、上述したような、本実施の形態におけるPTS市場サービスを顧客に提供するためのフロントエンドのサブシステムであり、例えば、サーバ機器やクラウドコンピューティング環境上の仮想サーバなどのサーバシステムにより構成され、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)、Webサーバプログラムなどのミドルウェア上で稼働するソフトウェアプログラムとして実装される、仮想空間処理部21、端株取引処理部22、およびデータ登録部23などの各部を有する。
【0022】
仮想空間処理部21は、端株に関連付けられた仮想的な物(商品)や、これを売買するための仮想的な人、店舗、その他の物などを含む環境を、仮想空間としてコンピュータシステム上に実現し、ユーザ端末4の画面を介して顧客に提示し、また、顧客からの操作を受け付ける機能を有する仮想空間エンジンである。仮想空間の内容や仕様については特に限定されないが、例えば、後述するように、各顧客自身をいわゆるアバター(自身を表す分身のキャラクター等)として表現し、また、端株に関連付けられた仮想的な物を、これらを視覚的に表す画像データとして表現する。
【0023】
各顧客が仮想空間においてそれぞれのアバターを操作し、仮想的な店舗等において商品の売買等の取引を行うことで、当該商品に関連付けられた端株の取引が間接的に行われることになる。仮想空間の内容や操作手法等にゲーム的な要素を取り入れて、顧客の興味を惹くようにしてもよい。
【0024】
各顧客(ユーザ)の情報は、ユーザデータベース(DB)24によって管理する。また、仮想空間において取引が可能な物(オブジェクト)の情報は、オブジェクトデータベース(DB)25によって管理する。
【0025】
端株取引処理部22は、仮想空間処理部21において取引された物(オブジェクト)に関連付けられた端株について、当該取引に対応する売買取引の処理を行うことで、端株についてのPTS市場を実現する機能を有する。すなわち、仮想空間において行われる物(オブジェクト)の売買取引によって、顧客が売買した物に関連付けられた端株を提供する証券会社と顧客との間、もしくは顧客と他の顧客との間で端株の相対取引(店頭取引)が行われることになる。
【0026】
また、PTSシステム20は、証券取引システム10を介して取引所システム2と接続されており仮想空間において行われる物の売買取引によって、取引所で実際に行われる端株の市場取引を行うことも可能なように構成されている。具体的には、PTSシステム20は、取引市場が開いている時間帯においては市場取引が可能である一方、取引市場が閉まっている時間帯においては相対取引(店頭取引)が行われるよう、仮想空間において取引される物の仮想空間内での価格(価値)と、その物と関連付けられた端株との価値(価格)の決定プロセスを切り替えることができる。
【0027】
なお、仮想空間内で取引される物の価格(価値)に対する、その物と関連付けられた端株の価値(価格)の決定手法については特に限定されず、後述するように、例えば、取引市場が開いている時間帯であれば、対象の端株の時価(対象銘柄の株価と単元株式数から算出する)としてもよいし、時価などに基づいて独自に決定された仮想空間内での価格(価値)としてもよい。時価に連動しない固定の価格(価値)であってもよい。対象の端株の銘柄の時価そのもの、もしくは時価に連動させた価格(価値)とする場合は、例えば、取引所システム2を介して定期的に取引市場から現在の株価を取得することによって、これを反映させることが可能である。一方、取引市場が閉まっている時間帯では、直近の終値を現在の株価と取り扱うようにしたり、特定の固定値を使用したりなど、価格(価値)の決定プロセスを切り替えるようにしてもよい。
【0028】
このように、PTSシステム20は、取引市場の開閉時間に合わせて、証券会社と顧客、もしくは顧客同士での端株の相対取引のみを行う場合と、証券会社と顧客、もしくは顧客同士での端株の相対取引に加えて、顧客と市場との間での市場取引をも行える場合とを、切り替え可能に構成されている。
【0029】
取引可能な端株の情報は、端株データベース(DB)26によって管理する。また、端株と仮想空間上での物(オブジェクト)との対応・関連付けは、オブジェクトDB25に保持する。取引対象となる端株は、上述したように、当該有価証券取引システム1を運営する証券会社等の自己勘定による在庫を用いるものとし、これを顧客に対して売却し、もしくは顧客から買い取ることで取引するものとする。この在庫は、必要に応じて証券会社等の自己勘定による購入として取引所システム2を介して市場から取得する。
【0030】
データ登録部23は、当該システムを利用可能なユーザ(顧客)の情報や、仮想空間において取引される物(オブジェクト)の情報、取引可能な端株の情報などを各データベースに登録するインタフェースを提供する機能を有する。例えば、ユーザDB24に対しては、各顧客自身が独自にユーザ登録を行えるインタフェースを提供してもよいし、オブジェクトDB25に対しては、例えば、協賛するメーカー等の企業が自社の株式に関連付ける商品を独自に登録することができるインタフェースを提供してもよい。端株DB26に対しては、例えば、証券会社の担当者等が自己勘定の在庫からPTS市場に提供する端株の情報を登録することができるインタフェースを提供する。
【0031】
決済システム30は、PTSシステム20が提供する仮想空間でのPTS市場において端株取引を行った顧客に対して、当該取引についての決済処理を行う機能を提供するシステムである。本実施の形態では、取引対象を端株とすることで取引に要するコストを抑えることから、決済金額も多額とはならないため、例えば、端株を購入した場合には電子マネーにチャージされた金額から支払い、端株を売却した場合には電子マネーへのチャージを行うなど、簡易に決済できる仕組みを採用することが可能である。
【0032】
ユーザ端末4は、利用者(顧客)がPTSシステム20により実現される仮想空間でのPTS市場にアクセスするために用いる情報処理端末であり、インターネット3を介してWebブラウザ等によりPTSシステム20にアクセスが可能なものであれば、PCやスマートフォン、タブレット型端末、ゲーム機など種々のデバイスを用いることができる。上述したように、若年層の興味を惹くために、ウェアラブルデバイスや生体動作認証デバイス等の最先端のITデバイスを用いることも可能である。なお、汎用のWebブラウザではなく、専用のクライアントアプリケーションを用いるものであってもよい。
【0033】
<画面例>
図2は、ユーザ端末4の画面上に表示される、PTSシステム20が提供する仮想空間の画面表示例について概要を示した図である。図2の例では、顧客のアバター41が仮想空間においてスーパーマーケットを訪れ、A社の商品42(図2の例ではチョコレート)を購入する場合の画面例を示している。ここでは、購入対象の商品42(チョコレート)が画像として表示され、アバター41を操作してこれを選択したり、買い物カゴ等に入れたりなどにより購入を指示することができる。当該商品42を購入することで、これに関連付けられた銘柄(図2の例では食品メーカーA社)の端株を購入することができる。
【0034】
図示するような画面において、例えば、当該チョコレートや、陳列棚の他の商品について詳細情報を表示するよう指示すると、それぞれの商品の詳細情報として、対応する端株の銘柄や実際の価格(価値)などの情報を参照できるようにしてもよい。なお、仮想空間において取引される物の価格(価値)は、図2の例に示すように、通貨ではない独自の単位(図2の例では“G”)や、ポイントとしてもよいし、実際の通貨による端株の価格自体としてもよい。ゲーム性を持たせるために、所定の条件に基づいてプレミアを付加するなどしてもよい。
【0035】
画面下部には、例えば、各種情報を表示する領域を設け、仮想空間内での現在の場所や、対象のユーザが所持する価値(金額)、購入等により現在保持している商品とその数や合計価値などの情報を表示するようにしてもよい。顧客が仮想空間内で商品(これに関連付けられた端株)を取得する手段としては、図2の例のように、仮想空間内の店舗等において購入するというものに限られず、例えば、ゲームや謎解き等をクリアすることで獲得できるようなものであってもよい。
【0036】
<処理の流れ>
図3は、本実施の形態の有価証券取引システム1における全体の処理の流れの例について概要を示した図である。まず、証券会社の担当者等が、証券取引システム10の在庫DB11に保持された自己勘定の在庫からPTS市場に提供する端株の情報を、PTSシステム20のデータ登録部23を利用して端株DB26に登録する(S01)。なお、このとき、証券取引システム10の在庫DB11における対象の銘柄については、証券取引システム10での通常の取引において処理されないよう識別情報を付与する等によって識別可能としておく。どの銘柄をPTS市場に端株として提供するかは、例えば、仮想空間においてこれに関連付ける商品(オブジェクト)を提供する協賛企業等と協議する等によって決定する。
【0037】
次に、証券会社や協賛企業等の担当者等が、端株DB26に登録された端株に関連付ける商品の情報を、データ登録部23を利用してオブジェクトDB25に登録する(S02)。これにより、仮想空間処理部21によって実現される仮想空間上で対象の商品を売買することで間接的に端株を売買することが可能となる。
【0038】
その後、ユーザ(顧客)は、ユーザ端末4を使用してPTSシステム20にアクセスし、必要に応じてユーザアカウントを作成してユーザDB24に登録した上で、PTSシステム20によって提供される仮想空間上で自身のアバター等を操作し、オブジェクトにより表現されている商品を売買する(S03)。なお、ユーザアカウントの作成の際には、対象の証券会社等に予め証券口座が開設されており、その情報が証券取引システム10の口座DB12に予め登録されているものとする。この証券口座の口座番号と、PTSシステム20における各ユーザ(顧客)のユーザIDとが関連付けられる。
【0039】
ユーザが自身のアバター等を操作して仮想空間上で商品の売買等を行った場合、その情報を記録するとともに、端株取引処理部22において、当該商品に対応する銘柄の端株についても売買が約定したものとする(S04)。
【0040】
その後、端株取引処理部22は、約定した1つ以上の端株取引の内容を証券取引システム10に送信して連携し(S05)、証券取引システム10では取引内容を在庫DB11に反映させる(S06)。
【0041】
<データ構成>
図4は、証券取引システム10の在庫DB11のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。在庫DB11は、当該証券取引システム10を運営する証券会社等の自己勘定での売買取引によって保有する在庫(ポジション)の情報を保持するテーブルであり、例えば、銘柄コード、銘柄名、および株数などの項目を有する。
【0042】
銘柄コードおよび銘柄名の各項目は、それぞれ、証券会社が自己の在庫(ポジション)として保持する株式等の有価証券の銘柄を識別するコード値、および当該銘柄の名称の情報を保持する。また、株数の項目は、対象の銘柄について在庫として保持する株数の情報を保持する。信用売りしている場合はマイナスにより表すことができる(例えば図中の銘柄コード“BBBB”など)。
【0043】
図5は、証券取引システム10の口座DB12のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。口座DB12は、当該証券取引システム10を利用して証券取引を行う顧客、および各顧客が保有する株式等の有価証券の情報を保持するテーブルであり、例えば、口座番号、名義人、銘柄コード、および株数などの項目を有する。
【0044】
口座番号および名義人の各項目は、それぞれ、対象の顧客によって開設された(対象の顧客に対して証券会社等により割り当てられた)証券口座を一意に識別する口座番号の情報、および対象の口座の名義人の情報、すなわち対象の顧客の氏名や法人名等の情報を保持する。銘柄コードおよび株数の各項目は、それぞれ、対象の口座番号を保有する顧客が当該口座に保有する有価証券を特定する銘柄コードの情報、および対象の銘柄について保有する株数の情報を保持する。この口座DB12では、対象の顧客が当該証券会社の口座に保有する全ての株式等の有価証券の情報(本実施の形態の有価証券取引システム1により実現されるPTS市場において取得した端株の情報を含んでもよい)を銘柄毎に保持する。
【0045】
図6は、PTSシステム20のユーザDB24のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。ユーザDB24は、PTSシステム20により実現される仮想空間にアクセスすることができる顧客(ユーザ)の情報を保持するテーブルであり、例えば、ユーザID、口座番号、ユーザ名、オブジェクトコード、および保有数などの各項目を有する。
【0046】
ユーザIDの項目は、各ユーザを一意に識別することができるよう割り当てられたID等の情報を保持する。口座番号の項目は、対象のユーザ(顧客)が証券取引システム10上で口座DB12上に保有する証券口座を特定する口座番号の情報を保持する。ユーザ名の項目は、対象のユーザの名称の情報を保持する。氏名等に限らず、仮想空間上でのハンドルネームやニックネーム等であってもよい。オブジェクトコードおよび保有数の各項目は、それぞれ、対象のユーザが仮想空間上で取引等によって取得・保有する商品(オブジェクト)を特定するコード値等の情報およびその保有数の情報を保持する。
【0047】
図7は、PTSシステム20のオブジェクトDB25のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。オブジェクトDB25は、PTSシステム20により提供される仮想空間において取引対象となる商品等の物(オブジェクト)の情報、およびこれと関連付けられて実際に取引される端株の情報を保持するテーブルであり、例えば、オブジェクトコード、オブジェクト名、端株銘柄コード、および基準価値などの各項目を有する。
【0048】
オブジェクトコードおよびオブジェクト名の各項目は、それぞれ、各商品(オブジェクト)を一意に識別することができるコード値等の情報、および仮想空間上で対象のオブジェクトが表す商品等の名称の情報を保持する。端株銘柄コードおよび基準価格の各項目は、それぞれ、対象のオブジェクトに関連付けられる端株を特定する銘柄コードの情報、および当該オブジェクトが表す商品等の仮想空間における現在時点での基準となる価値の情報を保持する。基準価値の値は、例えば、関連付けられた端株の時価等に基づいて所定のルールによって算出・決定することができる。
【0049】
図8は、PTSシステム20の端株DB26のデータ構成と具体的なデータの例について概要を示した図である。端株DB26は、PTSシステム20により提供される仮想空間でのPTS市場において取引可能な端株の情報を保持するテーブルであり、例えば、銘柄コード、端株数、売却済み数、および時価などの各項目を有する。
【0050】
銘柄コードの項目は、仮想空間でのPTS市場において取引可能な端株の銘柄を特定する銘柄コードの情報を保持する。端株数の項目は、対象の銘柄の端株について取引可能な数、すなわち、証券取引システム10の在庫DB11において管理された証券会社の自己部門の在庫から提供された端株の総数の情報を保持する。
【0051】
売却済み数の項目は、対象の銘柄の端株について取引可能な数のうち、現在ユーザ(顧客)に対して既に売却されている状態の端株の数の情報を保持する。上記の端株数の項目の値から売却済み数の項目の値を差し引いた値が現在ユーザが購入可能な端株の数となる。対象の銘柄の端株を購入済みのユーザがこれを売却すると、売却済み数の項目の値はその分減少することになる。時価の項目は、対象の銘柄の端株の時価の情報を保持する。この値は、例えば、定期的に証券取引所等から取得する対象の銘柄の株価と、その単元株式数に基づいて算出することができる。
【0052】
なお、上述の図4図8で示した各テーブルのデータ構成(項目)はあくまで一例であり、同様のデータを保持・管理することが可能な構成であれば、他のテーブル構成やデータ構成であってもよい。
【0053】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態である有価証券取引システム1によれば、有価証券のリテールでのオンライン取引を行う証券取引システム10に対して、有価証券の売買等に係る情報の入力等の操作を行うためのユーザインタフェースを、利用者、特に若年層が馴染みやすいゲーム等の仮想空間での物品の売買を通して行うようなものとする。この仮想空間において、取引される物品と株式等の有価証券とを紐付けることにより、仮想空間全体を一種のPTS市場とし、ゲーム中での仮想的な「物」の売買により「株式」売買取引を間接的に実施することができる。
【0054】
このような仕組みにより、利用者の有価証券取引に対する興味を惹起し、ゲーム的な操作や仕組みで容易に売買できるようにすることで、有価証券取引に対する敷居を下げることが可能となる。また、売買対象の有価証券として、証券会社等が保有する株式の在庫を用いた端株を活用することにより、売買単価やリスク幅を引き下げ、若年層の利用者がより利用しやすいようにすることが可能となる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0056】
例えば、本実施の形態では、コンピュータシステム上での仮想空間における仮想的な物(オブジェクト)の売買を通して端株を売買する構成としているが、物の対象は、仮想空間における仮想的な物に限らず、実際の物とすることも可能である。例えば、Google Glass(登録商標)のようなAR(Augmented Reality:拡張現実)に対応したデバイスを通して表示される実際の物に対して、拡張情報として関連付けられた端株の銘柄や時価などの情報を吹き出し等により表示するようにし、当該物が実際に売買された際に対応する端株が売買されたものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、利用者がオンラインで容易に有価証券取引を行うことを可能とする有価証券取引システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…有価証券取引システム、2…取引所システム、3…インターネット、4…ユーザ端末、
10…証券取引システム、11…在庫DB、12…口座DB、
20…PTSシステム、21…仮想空間処理部、22…端株取引処理部、23…データ登録部、24…ユーザDB、25…オブジェクトDB、26…端株DB、
30…決済システム、
41…アバター、42…商品。




図1
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