(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
片面に粘着層(C)を設けた樹脂フィルム層(A)を含む吸着シート(i)と、片面に粘着層(D)を設けた樹脂フィルム層(B)を含む吸着シート(iv)を積層した静電吸着シートであって、
吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)と、吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)が静電吸着しており、
前記粘着層(C)がコート層(I)を介して樹脂フィルム層(A)の片面に設けられていることを特徴とする静電吸着シート(iii)。
樹脂フィルム層(A)および樹脂フィルム層(B)の少なくとも一方に帯電処理を施し、両者を静電吸着により積層し、次いで樹脂フィルム層(A)側の表面上に粘着層(C)を積層することを特徴とする請求項1に記載の静電吸着シート(iii)の製造方法。
樹脂フィルム層(A)の一方の面に粘着層(C)を積層し、次いで樹脂フィルム層(A)および樹脂フィルム層(B)の少なくとも一方に帯電処理を施し、両者を静電吸着により積層することを特徴とする請求項1に記載の静電吸着シート(iii)の製造方法。
樹脂フィルム層(A)および樹脂フィルム層(B)の少なくとも一方に帯電処理を施し、両者を静電吸着により積層し、次いで樹脂フィルム層(A)側の表面上に粘着層(C)を、樹脂フィルム層(B)側の表面上に粘着層(D)を設けることを特徴とする請求項2に記載の静電吸着シート(iii)の製造方法。
樹脂フィルム層(A)の一方の面に粘着層(C)を、樹脂フィルム層(B)の一方の面に粘着層(D)をそれぞれ積層し、次いで樹脂フィルム層(A)および樹脂フィルム層(B)の少なくとも一方に帯電処理を施し、樹脂フィルム層(A)および樹脂フィルム層(B)を静電吸着により積層することを特徴とする請求項2に記載の静電吸着シート(iii)の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の静電吸着シート(iii)は、片面に粘着層(C)を設けた樹脂フィルム層(A)を含む吸着シート(i)と、樹脂フィルム層(B)を含む支持体層(ii)を積層した静電吸着シートであって、吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)と、支持体層(ii)の樹脂フィルム層(B)が静電吸着していることを特徴とする(
図1参照)。
また本発明の静電吸着シート(iii)は、片面に粘着層(C)を設けた樹脂フィルム層(A)を含む吸着シート(i)と、片面に粘着層(D)を設けた樹脂フィルム層(B)を含む吸着シート(iv)を積層した静電吸着シートであって、吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)と、吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)が静電吸着していることを特徴とする(
図9参照)。
本発明の静電吸着シート(iii)は、その粘着層(C)上に非粘着性の印刷物等(印刷シート層(G))を接着可能であり、また静電吸着シート(iii)から支持体層(ii)を剥離してなる吸着シート(i)はその樹脂フィルム層(A)側表面が静電気により被着体に吸着可能である。
以下、本発明の静電吸着シート(iii)を構成する各部材について詳細に説明する。
【0013】
[吸着シート(i)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成する吸着シート(i)は、片面に粘着層(C)を設けた樹脂フィルム層(A)を含むものである。
吸着シート(i)は、樹脂フィルム層(A)の粘着層(C)と反対側の面に静電吸着能力を有している。
吸着シート(i)は、粘着層(C)側の面に非粘着性の印刷物等を粘着力により、樹脂フィルム層(A)側の面に被着体を静電吸着により、それぞれ結合して両者間に介在することで、所謂両面粘着シートのように被着体上に印刷物等を貼着することができる。このようにして得られる表示物は、その表示内容、寸法、形状、表示方式に応じて、シール、ラベル、サイン、ポスター、広告等として使用できる。
吸着シート(i)は、その静電吸着により印刷物等を種々の被着体に貼り付け表示することが可能である。また表示使用時には、静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り印刷物等を表示使用することができ、且つ使用後は吸着シート(i)ごと容易に剥がすことができるという特徴を有する。またその静電吸着力は、湿度に影響され難いという特徴を有する。いずれの場合でも、樹脂フィルム(A)に帯電処理を施す代わりに、樹脂フィルム(B)の樹脂フィルム(A)と接する側に帯電処理を施しても良い。
【0014】
吸着シート(i)は、詳細後述する樹脂フィルム層(A)を含むものであり、同樹脂フィルム層(A)に帯電処理を施し、且つ同樹脂フィルム層(A)に粘着層(C)を積層して得ることができる。
樹脂フィルム層(A)を吸着シート(i)とするには、樹脂フィルム層(A)の片面に帯電処理を施した後に、同処理面に樹脂フィルム層(B)を含む支持体層(ii)を積層
し、次いで樹脂フィルム層(A)の未処理面に粘着層(C)を設けることで達成できる。また、樹脂フィルム層(A)の片面に粘着層(C)を設け、同粘着層(C)の上に剥離シート層(E)または印刷シート層(G)を設けた後に、樹脂フィルム層(A)のもう片面に帯電処理を施すことで達成できる。
或いは樹脂フィルム層の片面に帯電処理を施した後に、同処理面に樹脂フィルム層(B)を含む支持体層(ii)を積層したものを一旦形成し、別途、樹脂フィルムの片面に粘着層(C)を設け、同粘着層(C)の上に剥離シート層(E)または印刷シート層(G)を設けたものを一旦成形し、それぞれの樹脂フィルムをドライラミネート等の手法により接合して樹脂フィルム層(A)とすることで達成できる。
【0015】
吸着シート(i)における樹脂フィルム層(A)は、静電吸着能を具備させるために、帯電処理を施し易く、且つ帯電処理による電荷を内部に保持し易い構造であることが好ましい。
樹脂フィルム層(A)における帯電処理の施し易さおよび電荷の保持性能は、表面抵抗率により整理することができる。吸着シート(i)の帯電処理を施す樹脂フィルム層(A)側の面における表面抵抗率は、1×10
13〜9×10
17Ωの範囲であることが好ましい。該表面抵抗率は、5×10
13〜9×10
16Ωの範囲であることがより好ましく、1×10
14〜9×10
15Ωの範囲であることが更に好ましい。
表面抵抗率が1×10
13Ω未満のものは、帯電処理を施す際に与えた電荷が表面を伝って逃げ易く、帯電処理が施し難い傾向がある。また、樹脂フィルム層(A)に一旦与えた電荷が同表面を伝って外部(大気中など)に逃げ易く、吸着シート(i)が長期間電荷を保持できずに、静電吸着力が低下し易くなる傾向がある。
一方、9×10
17Ωを超えるものは、性能上問題ない筈であるが、現在公知の物質を使用してこの様な高絶縁性の表面を形成することは困難であり、実現できたとしても高コストとなることから実現化が困難である。
このような表面抵抗率を有する樹脂フィルム層(A)は、これを構成する熱可塑性樹脂の選定、および樹脂フィルム(A)への表面処理の有無等により達成できる。
【0016】
本発明において吸着シート(i)は、その樹脂フィルム層(A)側の面を未処理として表面抵抗率を1×10
13〜9×10
17Ωの範囲とし、他方の面には帯電防止の表面処理を行い、帯電防止性能を持たせることが好ましい。片面に帯電防止性能を持たせることによって、吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)側の面に帯電処理を施した後に、これに粘着層(C)を設ける加工工程において、樹脂フィルム層(A)への埃等の付着や樹脂フィルム層(A)のロールへの貼り付きなどを効果的に防止することが可能となり、生産性をより高めることが可能となる。
吸着シート(i)の片面に帯電防止性能を付与する手法としては、例えば樹脂フィルム層(A)に帯電防止剤を練り込む手法や、樹脂フィルム層(A)の片面に後述するコート層(I)を設ける手法がある。樹脂フィルム層(A)に帯電防止剤を練り込む場合は、コロナ放電表面処理やフレーム表面処理を行わないと帯電防止効果が発現しない場合があり、特に延伸されたフィルムは、表面処理の処理面と未処理面で帯電防止効果が大きく異なる場合がある。この現象を利用して片面に帯電防止性能を有する樹脂フィルム層(A)を形成することも可能である。
【0017】
また吸着シート(i)は、被着体が壁やロッカー等のように不透明なものである場合には、透明であっても不透明であっても良いが、被着体がガラス板や、アクリル板、ポリカーボネート板等のように透明な板状物などである場合には、透明性が高いほうが適している。例えば表示に用いる印刷シート層(G)が両面印刷物であり、吸着シート(i)および被着体が透明である場合には、印刷シート層(G)の吸着シート(i)に接する側の印刷面も吸着シート(i)および被着体を介して視認することが可能となる。
従って本発明の静電吸着シート(iii)における吸着シート(i)は透明または半透
明であることが好ましい。即ち吸着シート(i)を構成する樹脂フィルム層(A)および粘着層(C)が透明または半透明であることが好ましい。係る透明性の指標として、吸着シート(i)の全光線透過率は、60〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましく、80〜100%であることが特に好ましい。全光線透過率が60%以上であれば、吸着シート(i)面側に印刷絵柄を向けて貼り付けた場合に印刷物の画像や情報の視認性が良好であり、ガラス板、アクリル板やポリカーボネート板などの透明な被着体に貼り付けた印刷物の視認性が良好である。このような高い透明性は、これを構成する樹脂フィルム層(A)および粘着層(C)の選定により達成できる。
【0018】
[樹脂フィルム層(A)]
本発明において樹脂フィルム層(A)は、吸着シート(i)を構成するものであって、これに直接帯電処理を施すことや、帯電処理を施した支持体層(ii)または吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)に接して誘電されることによって、内部に電荷を保持し、その静電電荷によって吸着シート(i)の静電吸着を可能とするものである。
樹脂フィルム層(A)は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。特に絶縁性の優れた熱可塑性樹脂を使用することにより、そのフィルム層は内部に蓄積した電荷を保持しやすくなり好ましい。
又、樹脂フィルム層(A)は樹脂フィルム層(B)と接しない面に後述のコート層(I)を含んでいても良い。
【0019】
樹脂フィルム層(A)に用い得る熱可塑性樹脂は、絶縁性があり内部に電荷を保持できる限り、その種類は特に制限されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、またはポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を使用することができる。これらの熱可塑性樹脂は透明性を充分担保し得るものである。これらの熱可塑性樹脂の中でも、絶縁性と加工性に優れるポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂および熱可塑性ポリエステル系樹脂の何れかを用いることがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体、及びこれらオレフィン類2種類以上からなる共重合体を挙げることができる。
更にこれらポリオレフィン系樹脂の中でも、プロピレン系樹脂が、絶縁性、電荷保持性、加工性、機械的強度、コストなどの面から好ましく用いられる。プロピレン系樹脂としては、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレン(プロピレン単独重合体)や、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させたプロピレン系共重合体を、主成分として使用することが望ましい。プロピレン系共重合体は、プロピレンを主に含む2元系よりなるものでも3元系以上よりなるものでもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。またプロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25重量%配合して使用することも可能である。そのような融点が低い樹脂としては高密度ないしは低密度のポリエチレンを挙げることができる。
【0021】
官能基含有ポリオレフィン系樹脂のより具体的な例としては、前記オレフィン類と共重合可能な官能基含有モノマーとの共重合体を挙げることができる。かかる官能基含有モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類(或いは共重合後にこれらカルボン酸ビニルエステル類を鹸化して得られるビニルアルコール);アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メタロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類を挙げることができる。これら官能基含有モノマーの中から必要に応じ1種類もしくは2種類以上を適宜選択し共重合したものを用いることができる。
【0022】
またこれらのポリオレフィン系樹脂及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂は、その絶縁性や帯電圧の調整のため、そのグラフト変性物を必要に応じて使用することもできる。
樹脂のグラフト変性には公知の手法を用いることができる。具体的には、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるグラフト変性を挙げることができる。該不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができる。また上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等を挙げることができる。
具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N‐ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等を挙げることができる。
【0023】
グラフト変性物は、グラフトモノマーをポリオレフィン系樹脂及び官能基含有ポリオレフィン系樹脂に対して、通常0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%用いてグラフト変性したものを使用し得る。
樹脂フィルム層(A)に用いる熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂の中から1種を選択して単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。
また樹脂フィルム層(A)には、上記の樹脂フィルム層(A)の透明性を損なわない程度に、無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を添加したものであっても良い。無機微細粉末または有機フィラーの添加により、フィルムの誘電率を調整することや、熱可塑性樹脂シート同士を貼り付きにくくすることができる。また、後述の延伸工程との組合せにより内部に空孔を形成することが容易となり、樹脂フィルム層(A)の軽量化が可能となる。
【0024】
無機微細粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバーなどを使用することができる。無機微細粉末を添加する場合には、レーザー回折による粒度分布計で測定した体積平均粒径が通常は0.01〜15μm、好ましくは0.1〜5μmのものを使用する。
有機フィラーを添加する場合には、樹脂フィルム層(A)の主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い融点(例えば170〜300℃)ないしは高いガラス転移温度(例えば170〜280℃)を有し、かつ非相溶のものを使用することができる。
【0025】
これら無機微細粉末または有機フィラーの樹脂フィルム層(A)中への配合量は、総量として、0〜3重量%であることが好ましく、0〜1重量%であることがより好ましく、意図的に添加しないことが特に好ましい。配合量が3重量%以下であれば、上記の全光線透過率を達成しやすく、透明な被着体を介した画像視認性が良好である。
更に樹脂フィルム層(A)には、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、核剤などを添加することができる。熱安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で添加する。具体的には、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤などを使用することができる。光安定剤を使用する場合は、通常0.001〜1重量%の範囲内で使用する。具体的には、立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の光安定剤などを使用することができる。分散剤や滑剤は、例えば無機微細粉末を分散させる目的で使用する。使用量は通常0.01〜4重量%の範囲内にする。具体的には、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を使用することができる。
【0026】
[多層化]
樹脂フィルム層(A)は、単層構造であってもよく、2層構造、3層以上の多層構造のものであってもよい。樹脂フィルム層(A)は多層化により耐電圧性能の向上や、筆記性、耐擦過性、2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。樹脂フィルム層(A)を多層構造にする場合には、公知の種々の方法が使用できるが、具体例としては、種々の接着剤を使用したドライラミネート方式、ウェットラミネート方式および溶融ラミネート方式や、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式(共押出方式)や、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式や、種々のコーターを使用した塗工方法等を挙げることができる。また、多層ダイスと押出しラミネーションを組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
[延伸]
樹脂フィルム層(A)は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸樹脂フィルムを含むことが好ましい。延伸により得られる熱可塑性樹脂延伸フィルムは、軽量な薄膜であり、厚みの均一性に優れているため面方向に均一で帯電によるムラのない静電吸着力を達成しやすい。樹脂フィルム層(A)が多層構造である場合には、これを構成する各層の延伸軸数は、1軸/1軸、1軸/2軸、2軸/1軸、1軸/1軸/2軸、1軸/2軸/1軸、2軸/1軸/1軸、1軸/2軸/2軸、2軸/2軸/1軸、2軸/2軸/2軸であっても良い。
【0028】
樹脂フィルム層(A)の延伸は、通常用いられる種々の方法のいずれかまたはその組合せによって行うことができる。具体的な延伸方法としては、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、縦延伸と横延伸の組み合わせによる逐次2軸延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時2軸延伸などを挙げることができる。また、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時2軸延伸を挙げることができる。
【0029】
延伸の倍率は、特に限定されず、樹脂フィルム層(A)に用いる熱可塑性樹脂の特性および得られる樹脂フィルム層(A)の物性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用し、これを一方向に延伸する場合の延伸倍率は、通常1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、2軸延伸の場合には面積倍率で通常1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用しこれを一方向に延伸する場合の延伸倍率は通常1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、2軸延伸の場合には面積倍率で、通常1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
【0030】
延伸の温度は、樹脂フィルム層(A)に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲内で適宜決定する。具体的には、樹脂フィルム層(A)の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)である場合は100〜166℃、高密度ポリエチレン(融点121〜136℃)である場合は70〜135℃であり、融点より1〜70℃低い温度である。また延伸の速度は、20〜350m/分にするのが好ましい。
【0031】
樹脂フィルム層(A)が前述する無機微細粉末または有機フィラーを含み、且つ延伸されたものであれば、フィルム内部に微細な空孔が形成される場合がある。しかしながらこの空孔は樹脂フィルム層(A)の光線透過率を著しく阻害するものである。そのため樹脂フィルム層(A)の次式(1)で算出される空孔率は、0〜10%とすることが好ましく、0〜5%とすることがより好ましい。空孔率が10%を超えると空孔による光拡散効果により、樹脂フィルム層(A)の光線透過率の低下を招き、望ましい全光線透過率を有する樹脂フィルム層(A)を得ることが困難となる傾向がある。
【数1】
(ρ
0は樹脂フィルム層(A)の真密度を示し、ρは樹脂フィルム層(A)の密度を示す)
樹脂フィルム層(A)が前述する無機微細粉末または有機フィラーを含み、且つ延伸されたものである場合には、延伸の温度を熱可塑性樹脂の融点近傍まで上げるなどの対応を取ることで、樹脂フィルム層(A)中の空孔の形成を低減させることができる。
【0032】
また樹脂フィルム層(A)は、その厚みが20〜500μmの範囲であることが好ましい。該厚みは、30〜400μmの範囲であることがより好ましく、40〜300μmの範囲であることが特に好ましい。樹脂フィルム層(A)の厚みが20μm未満では、該層(A)の機械的強度が弱くなり、印刷物を貼り付ける際、または被着体に貼り付ける際にシワが入り易く、上手く貼着できずに外観が劣りやすくなる。逆に500μmを越えてしまうと内部まで充分に静電電荷を注入できず、且つ吸着シート(i)の自重が大きくなり、静電吸着力では自重を保持できず被着体から落下しやすくなる。
【0033】
また樹脂フィルム層(A)は、その坪量が20〜500g/m
2の範囲であることが好ましい。該坪量は、30〜400g/m
2の範囲であることがより好ましく、40〜300g/m
2の範囲であることが特に好ましい。樹脂フィルム層(A)の坪量は、同層(A)内部に保持可能な静電電荷の容量と比例関係にある。そのため、樹脂フィルム層(A)の坪量が20g/m
2未満では、該層(A)の静電容量も小さくなり、吸着シート(i)が被着体から落下しやすくなる。逆に500g/m
2を越えてしまうと静電容量の観点では充分なものの、内部まで充分に静電電荷を注入しづらく、且つ吸着シート(i)の自重が大きくなり、この場合も吸着シート(i)が被着体から落下しやすくなる。
【0034】
[粘着層(C)]
本発明において粘着層(C)は、吸着シート(i)を構成するものであって、その粘着力により吸着シート(i)と、非粘着性の印刷物(印刷シート層(G))とを接合可能とするものである。
粘着層(C)は、上記樹脂フィルム層(A)の樹脂フィルム層(B)と接しない面に粘着剤を層状に設けることで形成される。粘着剤の種類や厚さ(塗工量)は、表示物が使用される環境、接着の強度等により種々選択が可能である。
【0035】
かかる粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤や自己粘着性を有する樹脂が使用できる。アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のものを挙げることができる。ゴム系粘着剤の具体例としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、およびこれらの混合物を挙げることができ、或いはこれらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものを挙げることができる。ウレタン系粘着剤の具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオールとイソシアネート化合物との混合物を挙げることができる。シリコーン系粘着剤の具体例としては、末端に水酸基を持つオルガノポリシロキサンに架橋剤を混合した縮合硬化型、或いは末端にビニル基を持つオルガノポリシロキサンに架橋剤を混合した付加硬化型のものを挙げることができる。自己粘着性を有する樹脂の具体的な例としては、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、軟質ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらの中でも透明性、コストの観点からアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0036】
これらの粘着剤は通常、高分子量の樹脂成分からなるものであり、有機溶媒溶液やディスパージョンやエマルジョンといった水に分散した形態、または無溶媒型の形態で使用される。本発明における粘着層(C)の形成に、溶剤型、ディスバージョン型、エマルジョン型等の溶液状態のものを使用する場合は、樹脂フィルム層(A)上に直接または詳細後述する剥離シート層(E)上に塗工し、乾燥固化して形成することが容易である。かかる塗工には、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、コンマコーター等の手法を採用できる。更に必要によりスムージングを行い、乾燥工程を経て、粘着層(C)が形成される。
又、本発明における粘着層(C)の形成に、無溶媒型のものを使用する場合は、樹脂フィルム層(A)上に直接または詳細後述する剥離シート層(E)上に熱融解した粘着剤をグラビアコーター、ダイコーターなどを使用して塗工するか、押出機を使用して溶融混練した粘着剤をフィルム状に押出し、冷却固化して形成することが容易である。
【0037】
樹脂フィルム層(A)上への粘着層(C)の形成は、剥離シート層(E)上に粘着剤を
塗工して粘着層(C)を形成したものに、樹脂フィルム層(A)を積層する方法が一般的であるが、場合によっては樹脂フィルム層(A)上に直接に粘着剤を塗工して形成することもできる。
また樹脂フィルム層(A)上への粘着層(C)の形成は、該樹脂フィルム層(A)への詳細後述する帯電処理の前に行ってもよく、帯電処理の後に行ってもよい。
粘着層(C)の坪量(塗工量)は特に限定されないが、通常は固形分量で3〜60g/m
2の範囲であり、好ましくは10〜40g/m
2の範囲である。
【0038】
[支持体層(ii)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成する支持体層(ii)は、吸着シート(i)の静電吸着力または自身の静電吸着力により、吸着シート(i)の片面に積層するものであり、吸着シート(i)の使用時には感圧粘着ラベルの剥離紙の如く剥離して吸着シート(i)のみを表示物として用いることができる。
支持体層(ii)は、吸着シート(i)を印刷物の表示等に使用するまでの間、吸着シート(i)内部に蓄えられた電荷が外部に流出するのを堰き止めるものであり、且つ吸着シート(i)内部の静電吸着力が外部に発現することなく静電吸着シート(iii)を取扱い易くするものである。
支持体層(ii)は樹脂フィルム層(B)を含むものであり、樹脂フィルム層(B)が誘電体である樹脂よりなり、樹脂フィルム層(B)の樹脂フィルム層(A)と接する面が樹脂フィルム層(A)または自身の静電吸着力によって樹脂フィルム層(A)を積層可能としている。
【0039】
一方、支持体層(ii)の樹脂フィルム層(A)と接しない面は、帯電防止性能を有することが好ましい。支持体層(ii)がその片面に帯電防止性能を有することによって、吸着シート(i)と支持体層(ii)を積層した静電吸着シート(iii)は外部に静電吸着力を発現せずに、静電吸着シートの運送、保管、印刷などの取り扱い時に周囲への貼り付きやシート同士の貼り付き等のトラブルが発生し難く、ハンドリング性が良好なものとなる。
従って支持体層(ii)は、吸着シート(i)を表示物として使用する際には感圧粘着ラベルにおける剥離紙と同様に剥離されるものであるが、その前段階において樹脂フィルム層(A)の高い静電吸着力を保護しながら、静電吸着シートの加工等の取り扱いを容易とするものである。
【0040】
支持体層(ii)は、単層構造でもよく、2層以上からなる多層構造でも良い。前述の通り支持体層(ii)は、樹脂フィルム層(B)を含み、同層(B)側の面が樹脂フィルム層(A)と接触して静電吸着可能であり、またその反対面が帯電防止性能を持つように構成することが好ましいことから、多層構造とすることが好ましい。
支持体層(ii)は、樹脂フィルム層(A)と接する面は樹脂フィルム層(A)からの電荷の移動を少なくする観点から絶縁性が優れている樹脂フィルム層(B)を含むものであるが、支持体層(ii)を多層構造とする場合、他方の面は帯電防止性能の付与を考慮して、紙、合成紙、組成の異なる樹脂フィルム、織布、不織布、或いは帯電防止コート層などの公知の素材が適宜選択され、積層することができる。
また支持体層(ii)の樹脂フィルム層(B)側の面は、これに直接帯電処理を施して静電吸着力を持たせ、その静電吸着力のより無処理の樹脂フィルム層(A)に貼り合せて静電吸着シートとすることも可能である。この場合、樹脂フィルム層(A)側が支持体層(ii)の電荷により誘電され、静電吸着力を帯びるものになる。
支持体層(ii)には印刷により文字や画像を設けることが可能である。係る印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、感熱記録印刷、熱転写印刷、電子写真印刷などの従来公知の手法で印刷を施すことができる。
【0041】
[樹脂フィルム層(B)]
支持体層(ii)を構成する樹脂フィルム層(B)に用い得る樹脂は、誘電体であり、絶縁性があって内部に電荷を保持できる限り、その種類は特に制限されない。樹脂フィルム層(B)は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。特に絶縁性の優れた熱可塑性樹脂を使用することにより、そのフィルム層は内部に蓄積した電荷を保持し易くなり好ましい。
そのため該樹脂としては、前述の樹脂フィルム層(A)で例示した高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルを含む熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等の熱可塑性樹脂に加えて、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
これらの中でも加工性に優れる熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、ポリオレフィン系樹脂、官能基含有ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂の何れかを用いることがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂を用いることが特に好ましい。
また、樹脂フィルム層(B)は樹脂フィルム層(A)と接しない面に後述のコート層(J)を含んでいても良い。
【0042】
支持体層(ii)における樹脂フィルム(B)は、吸着シート(i)における樹脂フィルム層(A)の電荷が外部に逃げないように封じこめる役割を担っている。この電荷を封じ込める能力は、比誘電率で整理することができる。樹脂フィルム層(B)における比誘電率は、好ましくは1.1〜5.0、より好ましくは1.2〜4.0、更に好ましくは1.5〜3.0の範囲である。樹脂フィルム層(B)の比誘電率が5.0を超えると、樹脂フィルム層(A)が電荷を長期間保持できずに、吸着シート(i)の静電吸着力が低下し易くなる傾向がある。一方、比誘電率が1.1未満のものは性能上問題ない筈であるが、空気(真空)の比誘電率よりも低くなる為、このような素材は現在の技術上、入手が困難である。
このような比誘電率は、樹脂フィルム層(B)が上述の樹脂から構成されることや、内部に空隙を形成する加工などにより、所望の範囲を達成することができる。
【0043】
また支持体層(ii)における樹脂フィルム層(B)側の面は、電荷の移動を少なくする観点から、樹脂フィルム層(A)と同様にその表面抵抗率が高いほど好ましい。具体的には支持体層(ii)における樹脂フィルム層(B)側の面の表面抵抗率は1×10
13〜9×10
17Ωの範囲であることが好ましい。該表面抵抗率は、5×10
13〜9×10
16Ωの範囲であることがより好ましく、1×10
14〜9×10
15Ωの範囲であることが更に好ましい。表面抵抗率が1×10
13Ω未満の場合には、樹脂フィルム層(A)の電荷が該表面を伝って外部に逃げ易く、樹脂フィルム層(A)が電荷を長期間保持できずに、吸着シート(i)の静電吸着力が低下し易くなる傾向がある。一方、9×10
17Ωを超えるものは、性能上問題ない筈であるが、現在公知の物質を使用してこの様な高絶縁性の表面を形成することは困難であり、実現できたとしても高コストとなることから実現化が困難である。
【0044】
一方、静電吸着シート(iii)とした際のハンドリング性を高める目的から、支持体層(ii)はその片面(樹脂フィルム層(A)と接しない面)に帯電防止性能を有することが好ましい。支持体層(ii)への帯電防止性能の付与は、支持体層(ii)を構成す
る樹脂フィルム層(B)に、帯電防止剤を練り込んだ樹脂フィルムを用いる方法や、後述するコート層(J)を設ける方法や、導電性塗料を塗工して導電層を設ける方法や、直接蒸着、転写蒸着、蒸着フィルムのラミネート等により金属薄膜を設ける方法や、帯電防止処理した紙、合成紙、樹脂フィルム、織布、不織布や、帯電防止剤を練り込んだ樹脂フィルムを貼合積層する方法などを挙げることができる。
帯電防止剤を練り込んだ樹脂フィルム層を設ける様態においては、同フィルム面にコロナ放電表面処理やフレーム表面処理を行わないと帯電防止効果が発現しない場合があり、特に延伸フィルムでは表面処理の処理面と未処理面とでは帯電防止効果が大きく異なる場合がある。この現象を利用して、帯電防止剤を練り込んだ熱可塑性樹脂を延伸したものを樹脂フィルム層(B)とし、この片面にコロナ放電等の表面処理を行うことで、単層構造ながら片面に帯電防止性能を有する支持体層(ii)を形成することも可能である。
【0045】
上記の種々の方法により、支持体層(ii)における樹脂フィルム層(A)と接しない面、即ち静電吸着シート(iii)の外層にくる面に帯電防止性能を付与し、その表面抵抗率は1×10
-1〜9×10
12Ωの範囲内とすることが好ましい。該表面抵抗率は1×10
0〜9×10
12Ωの範囲とすることがより好ましい。支持体層(ii)の樹脂フィルム層(A)と接しない面の表面抵抗率が9×10
12Ωを超えてしまうと、帯電防止性能が充分ではなく、静電吸着シートの周囲への貼り付きやシート同士の貼り付き等のトラブルが発生し易くハンドリング性が劣るものとなり、本発明の所期の性能が得られにくい傾向がある。一方、表面抵抗率が1×10
-1Ωを下回る場合は、静電吸着シートとして性能上問題ない筈であるが、現在公知の物質を使用してこの様な高導電性の表面を形成することは困難であり、実現できたとしても高コストとなることから実現化が困難である。
【0046】
また樹脂フィルム層(B)は、その坪量が20〜500g/m
2の範囲であることが好ましい。該坪量は、30〜400g/m
2の範囲であることがより好ましく、40〜300g/m
2の範囲であることが特に好ましい。樹脂フィルム層(B)の坪量は、同層(B)内部に保持可能な静電電荷の容量と比例関係にある。そのため、樹脂フィルム層(B)の坪量が20g/m
2未満では、該層(B)の静電容量も小さくなり、吸着シート(ii)が被着体から落下しやすくなる。逆に500g/m
2を越えてしまうと静電容量の観点では充分なものの、内部まで充分に静電電荷を注入しづらく、且つ吸着シート(ii)の自重が大きくなり、この場合も吸着シート(ii)が被着体から落下しやすくなる。
【0047】
[吸着シート(iv)]
本発明の静電吸着シート(iii)は、上記吸着シート(i)と、吸着シート(iv)を静電吸着により積層したものであってもよい。この際、吸着シート(iv)は、支持体層(ii)同様に樹脂フィルム層(B)を含むものであるが、樹脂フィルム層(B)の片面(樹脂フィルム層(A)に接しない面)に粘着層(D)を設けたものである。従って同様態における静電吸着シートは、(粘着剤層(C)/樹脂フィルム層(A)/樹脂フィルム層(B)/粘着剤層(D))の積層構造を含むものである(
図9参照)。
同様態における静電吸着シートは、その両面の粘着剤層(C)および粘着剤層(D)によって非粘着性の印刷物等(印刷シート層(G)および印刷シート層(H))をそれぞれ貼り付けることができる。その後、静電吸着している樹脂フィルム層(A)と樹脂フィルム層(B)との間で剥離して、印刷シート層(G)付きの吸着シート(i)および印刷シート層(H)付きの吸着シート(iv)をそれぞれ表示物とすれば、1枚の静電吸着シート(iii)から2枚の表示物が得られる。同様態によれば、上記例において支持体層(ii)が吸着シート(i)の使用時に感圧粘着ラベルの剥離紙の如く除去されて廃棄物となっていたものを有効活用することができる。また同様態によれば、1枚の静電吸着シートで2枚の表示物が得られることから、輸送コスト低減などの効果も得られる。
【0048】
[粘着層(D)]
本発明において粘着層(D)は、吸着シート(iv)を構成するものであって、その粘着力により樹脂フィルム層(B)と、非粘着性の印刷物(印刷シート層(H))とを接合するものである。
粘着層(D)は、上記樹脂フィルム層(B)の樹脂フィルム層(A)と接しない面に粘着剤を層状に設けることで、或いは上記樹脂フィルム層(B)の片面に層状の粘着剤を設けることで形成される。粘着剤の種類や厚さ(塗工量)は、表示物が使用される環境、接着の強度等により種々選択が可能である。
かかる粘着剤としては、上記粘着層(C)にて記載した粘着剤と同様の組成のものを、同様の手法で設け、同様の坪量(塗工量)で使用することができる。粘剤層(D)で用いられる粘着剤の種類、積層方法、坪量(塗工量)は、粘着層(C)のそれらと同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0049】
[コート層(I)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成する樹脂フィルム層(A)には、その樹脂フィルム層(B)と接しない面に帯電防止性能を付与する目的からコート層(I)を設けることが好ましい。この場合吸着シート(i)の粘着層(C)は、コート層(I)上に設けられる(
図5参照)。
例えば片面にコート層(I)を設けた樹脂フィルム層(A)を用いて、これの樹脂フィルム層(A)側の面に帯電処理を施し、次いで片面にコート層(J)を設けた樹脂フィルム層(B)の樹脂フィルム層(B)側の面と接合して静電吸着による両者の積層体を一旦作製し、次いで樹脂フィルム層(A)のコート層(I)上に粘着層(C)を積層すれば本発明の静電吸着シート(iii)が得られるが、該積層体はその両表面が帯電防止性能を有しており、内部の電荷が外部に発現しないことから、その後の粘着層(C)を積層の工程で機器への貼り付きなどトラブルが生じにくく、非常に取扱いやすいものとなる。
コート層(I)は、樹脂フィルム層(A)に帯電防止性能を付与する為に用いられる。コート層(I)はその組成として、帯電防止剤0.1〜100重量%と、高分子バインダー0〜99.9重量%と、顔料粒子0〜70重量%とを含むことが好ましい。コート層(I)は、これら成分を含む塗工剤として、樹脂フィルム層(A)上に直接塗工により設けるか、或いは予め別のフィルム上に塗工してコート層(I)を形成しておき、これを樹脂フィルム層(A)にラミネートすることで設けることができる。
【0050】
帯電防止剤は、コート層(I)に帯電防止性能を付与するために添加するものである。具体的には、ステアリン酸モノグリセリド、アルキルジエタノールアミン、ソルビタンモノラウレート、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩などに代表される低分子量有機化合物系の帯電防止剤;ITO(インジウムドープド酸化錫)、ATO(アンチモンドープド酸化錫)、グラファイトウィスカなどに代表される導電性無機充填剤;ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの分子鎖内の共役電子により導電性を発揮するいわゆる電子導電性ポリマー;そしてポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン等の非イオン性ポリマー系の帯電防止剤;ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第四級アンモニウム塩型共重合体;アルキレンオキシド基および/または水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーに代表される帯電防止機能を有するポリマーなどを挙げることができる。
【0051】
これらの帯電防止剤はそれぞれに特性がある。例えば、低分子量有機化合物系の帯電防止剤は、環境湿度に帯電防止性能が大きく影響されやすく、最表面にブリードアウトしやすい特徴がある。帯電防止剤のブリードアウトにより、当該樹脂フィルム層(A)の静電吸着力が低下する場合がある。またブリードアウトした帯電防止剤が他方フィルムの表面へ転移して帯電防止性能が発現してしまい、結果的に安定した静電吸着力を有する樹脂フィルム層(A)が得られない場合がある。
導電性無機充填剤は、少量の添加では充填剤同士が接触しないため帯電防止効果が充分に得られない場合がある。また導電性無機充填剤は、充填剤同士が接触しあう程度の量を添加するとバインダー量が著しく少なくなる為、コート層(I)の凝集力が低下し、樹脂フィルム層(A)への接着力の低下や、吸着シート(i)の層間強度の低下が発生する場合がある。
【0052】
電子導電性ポリマーは、共役系に由来する着色により一般的には黒色、緑色、或いは青灰色の着色が有り、これを用いれば優れた帯電防止効果は得られるものの、くすんだ色の樹脂フィルム層(A)となり、その透明性を低下させるため印刷物の掲示には適さない場合がある。
帯電防止機能を有するポリマーは、帯電防止性能が安定しており、他方フィルムの表面への転移性も小さく、着色も殆ど無いことから本発明の静電吸着シート(iii)に用いるコート層(I)を構成する帯電防止剤として好ましい。中でも第四級アンモニウム塩型共重合体やアルカリ金属塩含有ポリマーは、帯電防止性能が良好であり、環境湿度の帯電防止性能への影響が小さい為、より好ましい。
コート層(I)は、必要に応じて高分子バインダーを含んでいても良い。該高分子バインダーはその凝集力によって、コート層(I)とこれを設ける樹脂フィルム層(A)との間に良好な密着性を持たせることができる。
【0053】
高分子バインダーの具体例としては、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリ(エチレンイミン−尿素)のエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミド、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体;アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、およびオキサゾリン基含有アクリル酸エステル重合体等のアクリル酸エステル系重合体;ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等、加えて、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体等を挙げることができる。
【0054】
これらの高分子バインダーは、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの高分子バインダーは、有機溶剤または水に希釈または分散した様態で用いることができる。これらの中でも、ポリエチレンイミン系重合体、ポリエーテルウレタン、ポリエステルポリウレタン、アクリルウレタンなどのウレタン樹脂、若しくはアクリル酸エステル共重合体が、前述の帯電防止機能を有するポリマーとの相性(相溶性)がよく、混溶して塗料とした際に安定しており、塗工しやすく好ましい。
コート層(I)は、顔料粒子を含んでいても良く、含まなくても良い。コート層(I)への顔料粒子の添加により形成されるコート層(I)表面の凹凸付与によるブロッキング防止等の性能向上、紫外線反射材として耐光性や耐候性等の性能付与を図ることができる。顔料粒子はこれら求める性能を考慮し適宜選択して使用するものであり、必要に応じて添加される。
【0055】
顔料粒子としては、公知の有機ないし無機の微細粒子が使用できる。具体的な例としては、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子等を使用
することができる。顔料粒子の粒子径は、好ましくは20μm以下のものであり、より好ましくは15μm以下のものであり、更に好ましくは3μm以下のものである。顔料粒子の粒子径が20μmを超えると形成したコート層(I)から顔料粒子が脱落しやすくなり粉吹き現象が発生する。コート層(I)中の顔料粒子含有量は、好ましくは0〜70重量%であり、より好ましくは0〜60重量%であり、更に好ましくは0〜50重量%である。顔料粒子の含有量が70重量%を超えると、相対してバインダー樹脂量が不足して、コート層(I)の凝集力不足が発生し、樹脂フィルム層(A)または樹脂フィルム層(B)への接着力が低下して、粘着剤層(C)または粘着剤層(F)、及び非粘着性の印刷物(印刷シート層(G))が上記フィルム層から剥がれやすくなる傾向がある。
【0056】
コート層(I)は、上記成分を含む塗工液を調製し、樹脂フィルム層(A)上に塗工し、これを乾燥、固化させて塗工層として設けることが可能である。塗工には、従来公知の手法や装置を利用することができる。
またコート層(I)は、樹脂フィルム層(A)上にラミネートにより設けることも可能である。この場合はあらかじめコート層(I)を設けた別のフィルムを作成し、樹脂フィルム層(A)上にこれをラミネート加工すればよい。ラミネート加工は、通常のドライラミネート、または溶融ラミネート等の手法により行うことができる。
樹脂フィルム層(A)へのコート層(I)の設置は、後述する帯電処理を実施する前に行うことが好ましい。コート層(I)の持つ帯電防止性能により、帯電処理後であっても静電吸着シート(iii)の外部への静電吸着力を抑止することが可能となる。
【0057】
コート層(I)は、樹脂フィルム層(A)の片面に帯電防止性能を付与するものである。具体的には、コート層(I)表面の表面抵抗率は1×10
-1〜9×10
12Ω、好ましくは1×10
3〜9×10
11Ω、更に好ましくは1×10
6〜9×10
10Ωの範囲内に調整する。
コート層(I)の表面抵抗率が9×10
12Ωを超えてしまうと静電吸着積層体や静電吸着シートが持つ静電吸着力を充分に抑止できずに、静電吸着積層体同士の貼合加工の際にロールへの貼り付きやシート同士の貼り付き等のトラブルが発生し易い傾向があり、静電吸着シート同士の貼り付き等のトラブルが発生し易い傾向がある。一方、表面抵抗率が1×10
-1Ωを下回る様な高導電性を有するコート層(I)を形成することは技術的に困難であり、形成できたとしても、樹脂フィルム層(A)の全光線透過率が低くなり樹脂フィルム層(A)に貼り付けた印刷絵柄の視認性が劣るものとなる恐れがある。また樹脂フィルム層(A)の静電吸着力が損なわれる恐れもある。
【0058】
コート層(I)の坪量(塗工量)は、固形分換算で0.01〜50g/m
2であることが好ましく、0.05〜30g/m
2であることがより好ましく、0.1〜10g/m
2であることが更に好ましく、0.3〜8g/m
2であることが特に好ましい。坪量が0.01g/m
2に満たない場合には、コート層(I)の均一性を維持することが難しく、安定した帯電防止性能が得られない場合がある。一方50g/m
2を超える場合には、これを樹脂フィルム層(A)に設けると、樹脂フィルム層(A)の静電吸着力や光線透過率が損なわれる傾向があり、また樹脂フィルム層(A)が重くなりその静電吸着力では自重を支えることができず剥れ落ちやすくなる傾向があり、また樹脂フィルム層(A)と支持体層(ii)間の静電吸着力が低下しやすくなる可能性がある。
コート層(I)には印刷により文字や画像を設けることが可能である。係る印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、感熱記録印刷、熱転写印刷、電子写真印刷などの従来公知の手法を挙げることができる。
【0059】
[コート層(J)]
本発明の静電吸着シート(iii)を構成する樹脂フィルム層(B)には、その片面に
帯電防止性能を付与する目的からコート層(J)を設けることが好ましい。この場合吸着シート(iv)の粘着層(D)は、コート層(J)上に設けられる。
かかるコート層(J)としては、上記コート層(I)にて記載と同様の組成のものを、同様の手法で設け、同様の厚さで使用することができる。コート層(J)で用いられる組成、積層方法、坪量(塗工量)はコート層(I)のそれと同じでもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
コート層(J)には印刷により文字や画像を設けることが可能である。係る印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、感熱記録印刷、熱転写印刷、電子写真印刷などの従来公知の手法を挙げることができる。
【0060】
[剥離シート層(E)]
本発明の静電吸着シート(iii)は、その粘着剤層(C)の表面上に更に剥離シート層(E)を設けてもよい(
図2参照)。剥離シート層(E)は、粘着剤層(C)の上に後述する印刷シート層(G)を設けるまでの間、粘着剤層(C)の粘着力が外部に発現しないよう粘着剤層(C)を保護するために設けるものである。そのため、粘着剤層(C)上に印刷シート層(G)を設ける際には通常の感圧粘着ラベルの剥離紙の如く剥離され、除去される。
剥離シート層(E)は、剥離紙として一般的なものを使用することができる。例えば、上質紙やクラフト紙をそのまま、またはこれらにカレンダー処理したもの、またはこれらに樹脂塗工したもの、またはこれらにプラスチックフィルムをラミネートしたもの、コート紙、グラシン紙、プラスチックフィルムなどにシリコーン処理またはフッ素処理を施したものが使用できる。
より具体的には、上質紙やクラフト紙等の天然パルプ紙の片面または両面にポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂等のプラスチックフィルムをラミネートしたもの、またはこれらにシリコーン処理を施したもの、更にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂等のプラスチックフィルム等にシリコーン処理を施したもの等が使用できる。
【0061】
[剥離シート層(F)]
本発明の静電吸着シート(iii)が粘着剤層(D)を有している場合は、その粘着剤層(D)の表面上に更に剥離シート層(F)を設けてもよい(
図9参照)。剥離シート層(F)は、粘着剤層(D)の上に後述する印刷シート層(H)を設けるまでの間、粘着剤層(D)の粘着力が外部に発現しないよう粘着剤層(D)を保護するために設けるものである。そのため、粘着剤層(D)上に印刷シート層(H)を設ける際には通常の感圧粘着ラベルの剥離紙の如く剥離され、除去される。
かかる剥離シート層(F)としては、上記剥離シート層(E)にて記載と同様のものを使用することができる。本発明の静電吸着シート(iii)に用いる剥離シート層(F)は上記剥離シート層(E)と同じものでもよいし、それぞれ異なったものでもよい。
【0062】
[印刷シート層(G)]
本発明の静電吸着シート(iii)は、その粘着剤層(C)の表面上に更に印刷シート層(G)を設けてもよい(
図3参照)。ここで言う印刷シート層(G)とは非粘着性の印刷物である。
印刷シート層(G)を設けた静電吸着シート(iii)から支持体層(ii)または吸着シート(iv)を剥離した、印刷シート層(G)と吸着シート(i)を含む積層体は、表示物として被着体に貼着可能である。
印刷シート層(G)は、通常印刷物として入手可能な一般的なものを種々使用することができる。例えば上質紙やクラフト紙等の天然パルプ紙、合成紙、ポリエチレン、ポリプ
ロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂等のプラスチックフィルムの片面または両面に、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、感熱記録印刷、熱転写印刷、電子写真印刷などの従来公知の手法で印刷を施した印刷物を挙げることができる。
【0063】
[印刷シート層(H)]
本発明の静電吸着シート(iii)が粘着剤層(D)を有している場合は、その粘着剤層(D)の表面上に更に印刷シート層(H)を設けてもよい(
図11参照)。ここで言う印刷シート層(H)もまた非粘着性の印刷物である。
印刷シート層(H)を設けた静電吸着シート(iii)から吸着シート(i)を剥離した、印刷シート層(H)と吸着シート(iv)を含む積層体は、表示物として被着体に貼着可能である。
かかる印刷シート層(H)としては、上記印刷シート層(G)にて記載と同様のものを使用することができる。本発明の静電吸着シート(iii)に用いる印刷シート層(H)は上記印刷シート層(G)と同じものでもよいし、それぞれ異なったものでもよい。
印刷シート層(G)および印刷シート層(H)の坪量は、それぞれ20〜500g/m
2の範囲であることが好ましい。該坪量は、30〜400g/m
2の範囲であることがより好ましく、40〜300g/m
2の範囲であることが特に好ましい。印刷シート層(G)および印刷シート層(H)の坪量が500g/m
2を越えてしまうと自重が大きくなりすぎ、吸着シート(i)の静電吸着力では保持しきれずに被着体から落下しやすくなる傾向がある。一方20g/m
2未満では印刷シート層(G)および印刷シート層(H)の腰が低い為、吸着シート(i)に貼り合わせる作業が困難となる傾向がある。
【0064】
[帯電処理]
本発明の静電吸着シート(iii)は、吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)面ならびに支持体層(ii)または吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)面の少なくとも一方に帯電処理を施し、次いで両者を静電吸着力によって貼合して(A)/(B)の積層体としたものである。
帯電処理は、樹脂フィルム層(A)や樹脂フィルム層(B)の内部に電荷を注入することで、これに静電吸着力を持たせるために実施する。
帯電処理は、公知の種々の方法に従って行なうことができる。処理方法としては、例えば、同フィルムを成形した後、同フィルムの表面にコロナ放電やパルス状高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)や、同フィルムの両面を誘電体で保持し、両面に直流高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)や、同フィルムにγ線や電子線等の電離放射線を照射してエレクトレット化する方法(ラジオエレクトレット化法)などを挙げることができる。
該フィルムへの帯電処理は、好ましくは上記コロナ放電や高電圧を加える方法(エレクトロエレクトレット化法)により行うことが好ましい。エレクトロエレクトレット化法の好ましい例としては、直流高圧電源に繋がった印加電極とアース電極の間に、フィルムを固定して電圧をかける方法(バッチ式、
図15、16参照)や、フィルムを通過させて電圧をかける方法(連続式、
図17、18、19参照)を挙げることができる。本手法を用いる場合には、主電極(印加電極)に針状のものを等間隔で多数配置したものや、金属ワイヤーを使用し、対電極(アース電極)に平坦な金属板や金属ロールを使用することが望ましい。
【0065】
樹脂フィルム層(A)の片面にコート層(I)を設けている場合、または樹脂フィルム層(B)の片面にコート層(J)を設けている場合に、同コート層表面へのコロナ放電等の帯電処理は、与えた電荷が周囲に散逸してしまう可能性が高く効果的ではない。但しこの帯電防止性能を有している面をアース側(金属板や金属ロール)に接して帯電処理を行
う方法は、安定的に電荷を注入できるため好ましい。
本発明の静電吸着シート(iii)を構成する樹脂フィルム層(A)または樹脂フィルム層(B)は、帯電処理後に除電処理を行うことも可能である。除電処理を行なうことにより過剰な帯電を除去して断裁工程、印刷工程等の加工工程でのトラブルを回避することが可能となる。係る除電処理には、電圧印加式除電器(イオナイザ)や自己放電式除電器など公知の手法を用いることができる。これら一般的な除電器は、表面の電荷の除去はできるが、樹脂フィルム層(A)または樹脂フィルム層(B)の内部に蓄積した電荷までは除去できない。したがって除電処理により、樹脂フィルム層(A)または樹脂フィルム層(B)の静電吸着力が大きく損なわれることはない。
吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)に電荷注入して支持体(ii)または吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)を積層して得た静電吸着シート(iii)と、支持体(ii)または吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)に電荷注入して吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)を積層して得た静電吸着シート(iii)とでは両者を区別することはできず、また、静電吸着シート(iii)を剥離して吸着シート(i)と支持体(ii)または吸着シート(iv)とに分離した場合、吸着シート(i)の樹脂フィルム層(A)に電荷注入したか、支持体(ii)または吸着シート(iv)の樹脂フィルム層(B)に電荷注入したかを区別することはできない。どちらの手法で製造しても同等の性能の静電吸着シート(iii)が得られる。
【0066】
[表示物]
本発明の静電吸着シート(iii)から支持体層(ii)を剥離してなる吸着シート(i)は、その粘着剤層(C)の面に印刷シート層(G)を貼り付けることによりシール、ラベル、サイン、ポスター、広告等の表示物として使用することができる。この表示物は樹脂フィルム層(A)側表面を粘着剤等を用いずに静電吸着により被着体に貼着可能であることから、被着体との間に空気溜りが生じたとしても手で扱けばどの方向からも空気を抜くことが容易であり、最終的な仕上がりとして空気溜りが発生しにくいという利点がある。また同表示物は使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り被着体上に表示使用することができ、且つ使用後は容易に被着体から表示物を分離することができる。
同様に、本発明の静電吸着シート(iii)から吸着シート(i)を剥離してなる吸着シート(iv)は、その粘着剤層(D)の面に印刷シート層(H)を貼り付けることにより表示物として使用することができる。この表示物も同様に、樹脂フィルム層(B)側表面を粘着剤等を用いずに静電吸着により被着体に貼着可能であり、最終的な仕上がりとして空気溜りが発生しにくいという利点がある。また同表示物は使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り被着体上に表示使用することができ、且つ使用後は容易に被着体から表示物を分離することができる。
【0067】
表示物の例としては、POP(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、ラベル、ネーマー、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、店頭価格表、登山ガイド、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内等)、スケジュール表、ロードサイン(葬式・住宅展示場所等)、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、マウスパッド、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター等を挙げることができ、何れも利用可能である。特に屋内使用を前提とした用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に、調製例、製造例、実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的
に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
本発明の樹脂フィルム層(A)および樹脂フィルム層(B)の製造例に使用する熱可塑性樹脂組成物を表1にまとめて示す。これらは予め表1に記載した使用原料を表1に記載した割合で混合した樹脂組成物(a)〜(f)を、210℃に設定した2軸混練機にて溶融混練し、次いで230℃に設定した押出機にてストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにて切断して樹脂組成物(a)〜(f)のペレットを作成して、以降の製造例で使用した。
【0069】
【表1】
【0070】
[帯電防止機能を有するポリマーの調製例1]
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE−350)100重量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部およびプロピレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)400重量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに導入し、
系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、n−ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5重量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、プロピレングリコールモノエチルエーテルを添加して固形分を20重量%に調整し、重量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.6重量%のアルカリ金属塩含有ポリマーよりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
【0071】
[帯電防止機能を有するポリマーの調製例2]
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35重量部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20重量部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25重量部、エチルアルコール150重量部と、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1重量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、窒素気流下にて80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50重量%水溶液85重量部(和光純薬工業(株)製、試薬)を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20重量%の第四級アンモニウム塩型共重合体よりなる帯電防止機能を有するポリマーの溶液を得た。
【0072】
[高分子バインダーの調製例3]
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)15重量部、メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)50重量部、エチルアクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)35重量部およびトルエン(和光純薬工業(株)製、試薬)100重量部を、攪拌機、環流冷却管、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素置換後、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)0.6重量部を開始剤として導入し80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有メタクリル酸エステル系重合体の50%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100重量部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(新第1塩ビ(株)製、商品名:ZEST C150ML)20%メチルエチルケトン溶液を30重量部加え、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製、試薬)を添加して固形分を20重量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
【0073】
[高分子バインダーの調製例4]
攪拌機、環流冷却器、温度計および窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミン P−1000)25重量%水溶液100重量部、1−クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10重量部を導入して窒素気流下で攪拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行い、次いでこの溶液に水を添加して固形分を20重量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
【0074】
[コート層の調製例1]
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに攪拌しながら、これに表2に記載の顔料粒子のそれぞれ計量したものを少しずつ加え、固形分濃度20重量%になるように調整した後、カウレスミキサーの回転数を上げて30分間攪拌し顔料分散液を作成した。
次いでカウレスミキサーの回転数を落とし、この顔料分散液に、上記調製例に記載の高分子バインダー溶液、帯電防止機能を有するポリマー溶液、および表2に記載の硬化剤の溶液(酢酸エチルにて固形分20重量%に希釈したもの)をこの順に、表2に記載した配合割合となるように添加し、そのまま20分間攪拌して混合し、その後100メッシュの
フィルターを通し粗粒径物の除去を行い、メチルエチルケトンで表2に記載の固形分濃度となる様に希釈し、コート層用の塗工溶液(調製例1)を得た。
【0075】
[コート層の調整例2]
攪拌機を備えた容器中に、表2に記載の高分子バインダー溶液、および帯電防止機能を有するポリマー溶液をこの順に、表2に記載した配合割合となるように添加し、次いで水で表2に記載の固形分濃度となる様に希釈し、そのまま20分間攪拌し混合してコート層用の塗工溶液(調製例2)を得た。
【0076】
【表2】
【0077】
[樹脂フィルム層の製造例1、3、4]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを、150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを、60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向(TD)に8倍延伸した後、更に160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃まで冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸樹脂フィルムの片面にコロナ放電による表面処理を施し、表3に記載の坪量の2軸延伸樹脂フィルムを得て、これを樹脂フィルム層とした。
【0078】
[樹脂フィルム層の製造例2]
熱可塑性樹脂組成物aを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、シート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを、150℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向(MD)に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを、60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向(TD)に8倍延伸した
後、更に160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして肉厚が40μm、坪量が36g/m
2の2軸延伸樹脂フィルムを得た。次いでこの2軸延伸樹脂フィルムの片面にコロナ放電による表面処理を施し、次いでコロナ放電による処理表面上に、コート層の調製例1で得た塗工溶液をグラビアコーターにて塗工し、乾燥させて2g/m
2のコート層を有する樹脂フィルム層とした。
【0079】
[樹脂フィルム層の製造例5]
熱可塑性樹脂組成物bと熱可塑性樹脂組成物aとを、230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱して縦方向に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを、60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸樹脂フィルムの片面にコロナ放電による表面処理を施し、厚みが50μm、坪量が44g/m
2、空孔率が5%、3層構造〔各層樹脂組成(a/b/a)、各層厚み(2μm/46μm/2μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)〕の2軸延伸樹脂フィルムを得て、これを樹脂フィルム層とした。
【0080】
[樹脂フィルム層の製造例6]
熱可塑性樹脂組成物cと熱可塑性樹脂組成物aとを、230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを150℃に加熱して縦方向に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを、60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃に冷却し、耳部をスリットした後、この2軸延伸樹脂フィルムの片面にコロナ放電による表面処理を施し、厚みが45μm、坪量が41g/m
2、空孔率が0%、3層構造〔各層樹脂組成(a/c/a)、各層厚み(2μm/41μm/2μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)〕の2軸延伸樹脂フィルムを得て、これを樹脂フィルム層とした。
【0081】
[樹脂フィルム層の製造例7]
熱可塑性樹脂組成物dと熱可塑性樹脂組成物eとを、230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを145℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで、この5倍延伸シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約155℃に加熱して横方向に8倍延伸した後、更に160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして肉厚が45μm、坪量が36g/m
2、空孔率が20%、3層構造〔各層樹脂組成(e/d/e)、各層厚み(2μm/41μm/2μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)〕の2軸延伸樹脂フィルムを得た。
次いでこの2軸延伸樹脂フィルムの片面にコロナ放電による表面処理を施し、コロナ放電による処理表面上に、コート層の調製例1で得た塗工溶液をグラビアコーターにて塗工し、乾燥させて2g/m
2のコート層を有する樹脂フィルム層とした。
【0082】
[樹脂フィルム層の製造例8]
熱可塑性樹脂組成物eを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを145℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸
した。次いで可塑性樹脂組成物fを250℃に設定した2台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上で調製した5倍延伸シートの両面にそれぞれに積層し、3層構造の積層シートを得た。次いで、この積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。
その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして肉厚が50μm、坪量が39g/m
2、空孔率が29%、3層構造〔各層樹脂組成(f/e/f)、各層厚み(10μm/30μm/10μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸)〕の延伸樹脂フィルムを得た。
次いでこの延伸樹脂フィルムの片面にコロナ放電による表面処理を施し、コロナ放電による処理表面上に、コート層の調製例2で得た塗工溶液をスクイズコーターにて塗工し、乾燥させて0.1g/m
2のコート層を有する樹脂フィルム層とした。
【0083】
[樹脂フィルム層の製造例9]
熱可塑性樹脂組成物eを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。
この無延伸シートを145℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで熱可塑性樹脂組成物aと熱可塑性樹脂組成物fとを250℃に設定した2台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出して、上で調製した5倍延伸シートの片面に組成物aが最外層となるように積層した。また可塑性樹脂組成物fを250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上で調製した5倍延伸シートのもう一方の面に積層し、4層構造の積層シートを得た。次いで、この積層シートを60℃まで冷却し、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃に調整した熱セットゾーンにより熱処理を行った。
その後60℃まで冷却し、耳部をスリットして肉厚が70μm、坪量が68g/m
2、空孔率が23%、4層構造〔各層樹脂組成(a/f/e/f)、各層厚み(20μm/10μm/30μm/10μm)、各層延伸軸数(1軸/1軸/2軸/1軸)〕の延伸樹脂フィルムを得た。
次いでこの延伸樹脂フィルムの組成物fの側の面にコロナ放電による表面処理を施し、コロナ放電による処理表面上に、コート層の調製例1で得た塗工溶液をグラビアコーターにて塗工し、乾燥させて2g/m
2のコート層を有する樹脂フィルム層とした。
各製造例で得た樹脂フィルム層の物性を表3にまとめて示す。
【0084】
【表3】
【0085】
[実施例1〜8]
図20に概略図を示す製造装置を用い、上記樹脂フィルム層の製造例2〜9で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(A)としてこれをロール(41)より巻きだし、該樹脂フィルム層(A)の未処理面に、直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施した。電荷注入処理の条件として、
図20中のワイヤー状電極(45)と対電極ロール(46)の距離を1cmに設定し、表4に記載の加工条件の放電電圧を用いた。
別に製造例2で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(B)としてこれをロール(42)より巻きだし、上記で電荷注入処理を実施した樹脂フィルム層(A)面と、樹脂フィルム層(B)の未処理面(非コート面)が接するように積層し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着して静電吸着積層体を得た。
また別に、シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(E)として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層(C)を形成した。
次いでこの粘着層(C)に静電吸着積層体の樹脂フィルム層(A)側の面が接するように積層し、静電吸着積層体とグラシン紙とを圧着ロールで加圧接着して実施例1〜8の静電吸着シート(iii)を得た。
【0086】
[実施例9]
上記樹脂フィルム層の製造例8で得た樹脂フィルム層の未処理面に、接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:TM−329と商品名:CAT−18Bの等量混合液)を固形分量が3g/m
2となるように塗工し、40℃で1分間乾燥した後に、上記樹脂フィルム層の製造例1で得た樹脂フィルム層を未処理面が外側となるように貼り合わせて、これを樹脂フィルム層(A)とし、この(製造例1の樹脂フィルム層の)未処理面に直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施する以外は、実施例1と同様にして静電吸着シート(iii)を得た。
更に、この静電吸着シート(iii)の支持体層(ii)の面にUVフレキソ印刷により、雪の結晶文様を印刷し、
図23に記載の使用方法をした場合に印刷物の絵柄が支持体層(ii)の文様により意匠性が高まる様にした。
【0087】
[実施例10]
上記樹脂フィルム層の製造例9で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(A)として、この表面処理面(組成物f側面)に溶剤系アクリル系強粘着剤(商品名:オリバインBPS5209、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで直接塗工し、乾燥して粘着層(C)を形成した。次いでシリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(E)として用い、このシリコーン処理が施された側の面に、粘着層(C)を接するように積層し、両者を圧着ロールで加圧接着して、剥離シート層(E)/粘着層(C)/樹脂フィルム層(A)からなる粘着積層体を得た。
次いで
図20に概略図を示す製造装置を用い、上記製造例2で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(B)としてロール(41)より巻きだし、未処理面に直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施した。電荷注入処理の条件として、
図20中のワイヤー状電極(45)と対電極ロール(46)の距離を1cmに設定し、表4に記載の加工条件の放電電圧を用いた。
別に上記粘着積層体をロール(42)より巻きだし、上記で電荷注入処理を実施した樹脂フィルム層(B)面と、粘着積層体の未処理面(樹脂フィルム層(A)側の面)が接するように積層し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着して静電吸着シート(iii)を
得た。
更に、この静電吸着シート(iii)の支持体層(ii)の面にUVオフセット印刷により、本発明の静電吸着シート(iii)の使用方法の図と説明文を印刷した。
【0088】
[実施例11、12]
図20に概略図を示す製造装置を用い、上記樹脂フィルム層の製造例2または7で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(A)としてこれをロール(41)より巻きだし、該樹脂フィルム層(A)の未処理面に、直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施した。電荷注入処理の条件として、
図20中のワイヤー状電極(45)と対電極ロール(46)の距離を1cmに設定し、表4に記載の加工条件の放電電圧を用いた。
別に製造例2で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(B)としてこれをロール(42)より巻きだし、上記で電荷注入処理を実施した樹脂フィルム層(A)面と、樹脂フィルム層(B)の未処理面(非コート面)が接するように積層し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着して静電吸着積層体を得た。
また別に、シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(E)および剥離シート層(F)として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層(C)および粘着層(D)をそれぞれ形成した。
次いでこの粘着層(C)に静電吸着積層体の樹脂フィルム層(A)側の面が接するように積層し、静電吸着積層体とグラシン紙とを圧着ロールで加圧接着し、続けて粘着層(D)に静電吸着積層体の樹脂フィルム層(B)側の面が接するように積層し、積層体全体を圧着ロールで加圧接着して実施例11または12の静電吸着シート(iii)を得た。
【0089】
[実施例13]
上記樹脂フィルム層の製造例9で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(A)とした。別に、シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(E)として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層(C)を形成した。
次いでこの粘着層(C)に樹脂フィルム層(A)側の表面処理面(組成物f側面)が接するように積層し、樹脂フィルム層(A)とグラシン紙とを圧着ロールで加圧接着して剥離シート層(E)/粘着層(C)/樹脂フィルム層(A)からなる粘着積層体Iを得た。
【0090】
同様に樹脂フィルム層の製造例2で得た樹脂フィルム層を樹脂フィルム層(B)とした。別に、シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(F)として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層(D)を形成した。
次いでこの粘着層(D)に樹脂フィルム層(B)側の表面処理面が接するように積層し、樹脂フィルム層(B)とグラシン紙とを圧着ロールで加圧接着して剥離シート層(F)/粘着層(D)/樹脂フィルム層(B)からなる粘着積層体IIを得た。
図20に概略図を示す製造装置を用い、上記粘着積層体Iをロール(41)より巻きだし、樹脂フィルム層(A)側の面に直流式のコロナ放電による電荷注入処理を実施した。電荷注入処理の条件として、
図20中のワイヤー状電極(45)と対電極ロール(46)
の距離を1cmに設定し、表4に記載の加工条件の放電電圧を用いた。
別に上記粘着積層体IIをロール(42)より巻きだし、上記で電荷注入処理を実施した樹脂フィルム層(A)面と、粘着積層体IIの樹脂フィルム層(B)側の面が接するように積層し、両者を圧着ロール(49)で加圧接着して静電吸着シート(iii)を得た。
【0091】
[比較例1]
上記特許文献1,2の如く、透明なフィルムの両面に粘着剤を設けた両面粘着シートを得た。具体的には、シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(E)として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層(C)を形成した。
次いでこの粘着層(C)に上記樹脂フィルム層の製造例3で得た樹脂フィルム層の表面処理面が接するように積層し、樹脂フィルム層とグラシン紙とを圧着ロールで加圧接着して剥離シート層(E)/粘着層(C)/樹脂フィルム層からなる粘着積層体を得た。
【0092】
別にシリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック(株)製)を剥離シート層(F)として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム(株)製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム(株)製)の100:3の混合液を、乾燥後の坪量が25g/m
2となるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着層(D)を形成した。
次いでこの粘着層(D)に上記粘着積層体の樹脂フィルム層の表面未処理面が接するように積層し、全体を圧着ロールで加圧接着して剥離シート層(E)/粘着層(C)/樹脂フィルム層/粘着層(D)/剥離シート層(F)からなる両面粘着シートを得た。
本発明の実施例1〜13および比較例1で用いた樹脂フィルム層(A)と樹脂フィルム層(B)の組み合わせ、電荷注入処理の際の放電電圧、および下記試験例に基づく評価結果を表4にまとめて示す。
【0093】
【表4】
【0094】
[評価方法]
(厚み)
本発明における厚みは、JIS−K−7130に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、商品名:PG−01J)を用いて測定した。
形成した樹脂フィルム層(A)が多層構造である場合に、各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて−60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面測定用の試料を作成し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM−6490)を使用して断面観察を行い、組成外観から熱可塑性樹脂組成物ごとの境界線を判別して、樹脂フィルム層(A)全体の厚みと観察される層厚み比率を乗算して求めた。
【0095】
(坪量)
本発明において、樹脂フィルム層(A)、樹脂フィルム層(B)、印刷シート層(G)、印刷シート層(H)、吸着シート(i)および吸着シート(iv)の坪量は、JIS−P−8124に準拠し、100mm×100mmサイズに打抜いたサンプルを電子天秤で秤量して測定した。
粘着層(C)、粘着層(D)、コート層(I)およびコート層(J)の坪量は、上記で求めた個々の坪量から算出した。
(表面抵抗率)
本発明における表面抵抗率は、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、表面抵抗率が1×10
7Ω以上の場合は、JIS−K−6911:1995に準拠し、2重リング法の電極を用いて測定した。表面抵抗率が1×10
7Ω未満の場合は、JIS−K−7194:1994に準拠し、4端針により測定することによって測定した。
【0096】
(吸着力)
静電吸着シート(iii)を、200mm×220mmのサイズに断裁し、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、同雰囲気下で、静電吸着シート(iii)よりラベル層(i)を剥がして、吸着力測定装置のガラス板上に、吸着面積が200mm×200mmとなりラベル層(i)の下端20mm幅分がはみ出す様に貼り付け、ラベル層(i)の下端分にクリップを取り付け、糸を取り付けた10gの分銅を1つずつクリップに追加して行き、ラベル層(i)が滑り落ちた時の分銅の重さから吸着力を平米当りに換算して求め、以下の基準で評価した。
○ : 良好 吸着力が5000g/m
2以上
△ : やや良好 吸着力が1000g/m
2以上、5000g/m
2未満
× : 不良 吸着力が1000g/m
2未満
【0097】
(空気溜りの有無)
印刷用紙として合成紙(商品名:「ユポ」FEB−130、坪量100.1g/m
2、(株)ユポ・コーポレーション製)を菊半サイズに断裁したものを用い、これの両面に4色オフセット印刷を施した印刷物(印刷シート層(G))を準備した。
次いでコールドラミネータを用い、実施例1〜13で得た静電吸着シート(iii)、および比較例1で得た両面粘着シートを巻きだしながら剥離シート層(E)を剥離し、剥離後の粘着層(C)上に上記両面印刷物を貼合し、印刷シート層(G)/粘着層(C)/樹脂フィルム層(A)/樹脂フィルム層(B)を含む静電吸着シート(iii)を得た。この段階で、全ての実施例および比較例において粘着層(C)と印刷物の間には空気溜りは発生していなかった。
次いで印刷シート層(G)を積層した静電吸着シート(iii)または両面粘着シートをA4サイズに断裁し、これから支持体層(ii)または吸着シート(iv)を剥離して
、印刷シート層(G)と吸着シート(i)からなる表示物(両面粘着シートの場合は剥離シート層(F)を剥離して、印刷シート層(G)と両面粘着シートからなる表示物)を得た。
次いでこの表示物の樹脂フィルム層(A)側の面(両面粘着シートの場合は粘着層(D)の面)を透明で平滑なガラス板上に接するように貼着し、手で印刷物をよく扱いて空気を抜き、空気溜りの有無を以下の基準で評価した。実施例1〜5、実施例11、および比較例1の静電吸着シート(iii)または両面粘着シートは、用いる樹脂フィルム層(A)が透明であることから、被着体であるガラス板、および樹脂フィルム層(A)を介して印刷を視認することができた。その他の実施例についてはガラス面から印刷を視認することはできなかったが、空気溜りの有無は何れもガラス板面側から評価した。
○ : 良好 空気溜りが目視で確認できない
× : 不良 空気溜りが確認できる
【0098】
以上の結果から明らかなように、本発明の静電吸着シート(iii)は、非粘着性の印刷物をポスター、広告等として被着体に貼り付け表示する際に、被着体と印刷物の間の空気を容易に除去することが可能であり、印刷物の外観を損なうことがない。また該静電吸着シートは、表示使用時には静電吸着力が高く、静電吸着力の持続性も充分で長期に亘り被着体上に表示使用することができ、且つ使用後は容易に剥がすことができる。また該静電吸着シートは、静電吸着力が湿度に影響され難いという特徴を有する。
また、同静電吸着シートにおける樹脂フィルム層および粘着層が透明または半透明である場合に、これを介して印刷物を被着体に接着した表示物からは、印刷物上の文字、図柄等の情報を吸着シートおよび透明な被着体を透して視認することができる。