【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の撮像レンズは、物体側から像面側に向かって順に、光軸近傍で物体側に凸面を向けた正の屈折力を有する第1レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する第3レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で像面側に凸面を向けた正の屈折力を有するメニスカス形状の第5レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けたメニスカス形状で両面が非球面の第6レンズと、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両面が非球面の第7レンズとで構成される。
【0015】
上記構成の撮像レンズは、第1レンズと第2レンズで構成される第1群、第3レンズと第4レンズで構成される第2群、第5レンズで構成される第3群、第6レンズと第7レンズで構成される第4群の4群7枚構成で考えると、物体側から順に正、正、正、負、または、物体側から順に正、負、正、負で配列されたレンズ群で構成される。従って、光学全長を短縮するのに有利なパワー配列となっている。また、第1群及び第2群はともに、物体側に正のレンズを配置し、像面側に負のレンズを配置する構成であり、物体側に配置された正のレンズで発生する色収差を像面側に配置した負のレンズによって良好に補正する。また、第3群を構成する第5レンズに適切な正の屈折力を配分して光学全長を短く維持するとともに、第4群を構成する負の第6レンズ及び負の第7レンズを適切な非球面形状に形成することで、色収差の更なる補正とともに像面湾曲、歪曲収差の良好な補正、撮像素子へ入射する主光線の角度の制御を可能にしている。
【0016】
第1レンズは物体側の面の曲率半径を像面側の面の曲率半径よりも小さくした両凸形状とし、両面に正の屈折力を適切に配分することで、球面収差の発生を抑えながら、比較的強い屈折力を得、撮像レンズの小型化を図っている。なお、第1レンズの像面側の面は凹面とすることも可能であり、その際の像面側の面の曲率半径の大きさは屈折力が低下し過ぎず、また球面収差量が増大しない範囲で、物体側の面の曲率半径よりも大きく設定することが望ましい。
【0017】
第2レンズは、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有するレンズであり、球面収差および色収差を良好に補正する。
【0018】
第3レンズは、光軸近傍で像面側に凸面を向けた正の屈折力を有するレンズであり、像面湾曲およびコマ収差を良好に補正する。
【0019】
第4レンズは、光軸近傍で像面側に凹面を向けた負の屈折力を有するレンズであり、残存する色収差を良好に補正する。
【0020】
第5レンズは、光軸近傍で像面側に凸面を向けたメニスカス形状の正の屈折力を有するレンズであり、撮像レンズを構成するレンズの中において、比較的強い正のパワーを有しており、第1レンズの正の屈折力とバランスさせることで、撮像レンズの小型化に寄与する。
【0021】
第6レンズは、光軸近傍で像面側に凹面を向けたメニスカス形状のレンズであり、残存する色収差を良好に補正している。両面に形成された非球面形状によって、コマ収差、非点収差を良好に補正する事に寄与している。
【0022】
第7レンズは、光軸近傍で像面側に凹面を向けたメニスカス形状の負の屈折力を有するレンズであり、バックフォーカスの確保を容易にしている。また、両面に形成された非球面形状によって、レンズ周辺部に向かうにつれて正の屈折力に変化する形状になっていることで、主に歪曲収差および像面湾曲を補正する効果と、撮像素子へ入射する光線の角度を制御する効果を得ている。
【0023】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(1)、(2)を満足することが望ましい。
(1)50<νd1<70
(2)20<νd2<30
ただし、
νd1:第1レンズのd線に対するアッベ数
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
【0024】
条件式(1)、及び(2)は第1レンズと第2レンズのd線に対するアッべ数を適切な範囲に規定することで、第1レンズで発生する色収差を良好に補正するための条件である。条件式(1)の下限値を下回る場合、および条件式(2)の上限値を上回る場合は、第1レンズと第2レンズとの分散値の差が小さくなるため、色収差の補正が不十分になる。また、条件式(1)の上限値を上回る場合および条件式(2)の下限値を下回る場合、軸上色収差と倍率色収差のバランスが悪化し、周辺部における光学性能の確保が困難になる。
【0025】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(3)、(4)を満足することが望ましい。
(3)50<νd3<70
(4)20<νd4<30
ただし、
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
【0026】
条件式(3)、及び(4)は第3レンズと第4レンズのd線に対するアッべ数を適切な範囲に規定することで、第3レンズで発生する色収差を良好に補正するための条件である。条件式(3)の下限値を下回る場合、および条件式(4)の上限値を上回る場合は、第3レンズと第4レンズとの分散値の差が小さくなるため、色収差の補正が不十分になる。また、条件式(3)の上限値を上回る場合、および条件式(4)の下限値を下回る場合、軸上色収差と倍率色収差のバランスが悪化し、周辺部における光学性能の確保が困難になる。
【0027】
本発明の撮像レンズの第6レンズは、物体側の面及び像面側の面に光軸上以外の位置に変極点を有する非球面を形成することが望ましい。
【0028】
第6レンズの物体側の面に変極点を有する非球面形状を形成し、且つ非球面サグ量の変化を小さく抑えることによって、光学全長を短縮することができるため、撮像レンズの小型化を図ることが可能となる。また、第6レンズの物体側の面及び像面側の面に光軸上以外の位置に変極点を有する非球面形状に形成することは、光軸近傍では物体側に凸面を向けたメニスカス形状であり、光軸から離れるに従って物体側は凸面から凹面に、像面側は凹面から凸面に変化する形状になる。このような形状変化を伴う非球面は、像面の中心部から最大像高にかけて効果的な収差補正を可能にする。また、第6レンズは、最も像面側に配置した第7レンズによる収差補正と主光線角度の制御の負担を軽減させる意味で非常に重要な役割を果たしている。
【0029】
本発明の撮像レンズの第7レンズは、像面側の面に光軸上以外の位置に変極点を有する非球面であることが望ましい。
【0030】
第7レンズの像面側は、光軸上以外の位置に変極点を有する非球面形状に形成し、光軸近傍において像面側は凹面とし、光軸から離れるに従って凸面に変化する形状としている。このような非球面形状とすることで、主に歪曲収差および像面湾曲の最終的な補正を容易にするとともに、主光線の角度制御を容易にし、周辺部における光量の低下を抑制している。なお、本発明でいう変極点とは、接平面が光軸と垂直に交わる非球面上の点を意味する
【0031】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)0.6<TTL/2ih<1.0
ただし、
TTL:フィルタ類を取り外した際の最も物体側に配置された光学素子の物体側の面から像面までの光軸上の距離
ih:最大像高
【0032】
条件式(5)は、撮像レンズの光学全長と最大像高の比を規定するものであり、小型化を実現しつつ、良好な結像性能を得るための条件である。条件式(5)の上限値を上回ると、光学全長が長くなり過ぎ、小型化に適応することが困難になる。一方、条件式(5)の下限値を下回ると、小型化には有利になるが、光学全長が短くなり過ぎて、撮像レンズを構成する各レンズを最適な形状で配置することが困難になる。その結果、収差を良好に補正出来る構成が困難となり、光学性能の劣化に繋がる。
【0033】
条件式(5)は以下の条件式(5a)がより好適な範囲である。
(5a)0.6<TTL/2ih<0.9
【0034】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)0.85<Σd/f<1.25
ただし、
f:撮像レンズ系全体の焦点距離
Σd:第1レンズの物体側の面から第7レンズの像面側の面までの光軸上の距離
【0035】
条件式(6)は、光学全長を短縮しながら、良好に収差を補正するための条件である。条件式(6)の上限値を上回ると、バックフォーカスが短くなりすぎ、フィルタ等を配置するスペースの確保が困難になり、光学全長も長くなる。一方、条件式(6)の下限値を下回ると、撮像レンズを構成する各レンズの厚みを確保することが困難になる。また、各レンズ間の間隔も狭くなるため、非球面形状の設計上の自由度が制限を受けやすい。結果的に、良好な収差補正が困難になり、高い光学性能の確保が困難になる。本発明の撮像レンズは、構成する枚数が7枚と従来よりも多く、また、全てのレンズは空気間隔を置いて配置された構成になっているため一般的には小型化に不利な構成であるが、条件式(6)の範囲に規定することで、従来の5枚や6枚構成の撮像レンズと同程度、またはそれ以下の小型化が可能になる。
【0036】
条件式(6)は以下の条件式(6a)がより好適な範囲である。
(6a)0.95<Σd/f<1.25
【0037】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)0.8<ih/f<1.2
ただし、
f:撮像レンズ系全体の焦点距離
ih:最大像高
【0038】
条件式(7)は、撮像レンズ全系の焦点距離と最大像高の比を規定するものであり、広角化を実現しつつ、良好な結像性能を得るための条件である。条件式(7)の上限値を上回ると、画角が広くなりすぎて、収差を良好に補正出来る範囲を超えてしまい、光学性能の劣化に繋がる。一方、条件式(7)の下限値を下回ると、撮像レンズ全系の焦点距離が長くなりすぎ、小型化が困難になるとともに広角化にも不利になる。
【0039】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(8)、(9)を満足することが望ましい。
(8)0.7<f1/f<1.5
(9)−5.0<f2/f<−1.0
ただし、
f:撮像レンズ系全体の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
【0040】
条件式(8)は、第1レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との比を適切な範囲に規定し、撮像レンズの小型化を図りつつ、球面収差やコマ収差を良好に補正するための条件である。条件式(8)の上限値を上回ると、第1レンズの正のパワーが弱くなり過ぎるため、撮像レンズの小型化が困難となる。一方、条件式(8)の下限値を下回ると、第1レンズの正のパワーが強くなり過ぎ、球面収差およびコマ収差を良好に補正することが困難となる。
【0041】
条件式(9)は、第2レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との比を適切な範囲に規定し、撮像レンズの小型化を図りつつ、色収差を良好に補正するための条件である。条件式(9)の上限値を上回ると、第2レンズの負のパワーが強くなり過ぎ、撮像レンズの小型化に不利になる。また、軸上および軸外の色収差が補正過剰となり、良好な結像性能を得ることが困難となる。一方、条件式(9)の下限値を下回る場合には、第2レンズの負のパワーが弱くなり過ぎ、軸上および軸外の色収差が補正不足となり、この場合も良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0042】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)2.0<|f34/f|
ただし、
f:撮像レンズ系全体の焦点距離
f34:第3レンズと第4レンズの合成焦点距離
【0043】
条件式(10)は、第3レンズと第4レンズの合成焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との比を適切な範囲に規定することで、非点収差及びコマ収差を良好に補正するための条件である。条件式(10)の下限値を下回ると、第3レンズと第4レンズの合成の屈折力が強くなり過ぎ、非点収差及びコマ収差を補正する事が困難となる。
【0044】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(11)、(12)を満足することが望ましい。
(11)0.6<f5/f<1.2
(12)−1.2<f67/f<−0.6
ただし、
f:撮像レンズ系全体の焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
f67:第6レンズと第7レンズの合成焦点距離
【0045】
条件式(11)は、第5レンズの焦点距離と撮像レンズ全系の焦点距離との比を適切な範囲に規定することで、撮像レンズの小型化を図りつつ、コマ収差及び軸上色収差を良好に補正するための条件である。条件式(11)の上限値を上回ると、第5レンズの正のパワーが弱くなり過ぎるため、撮像レンズの小型化が困難となる。一方、条件式(11)の下限値を下回ると、第5レンズの正のパワーが強くなり過ぎ、コマ収差及び軸上色収差を良好に補正することが困難となる。
【0046】
条件式(12)は、光学全長を短く維持しながら、性能を確保し、十分なバックフォーカスを確保するための条件である。条件式(12)の上限値を上回ると、第6レンズと第7レンズの合成の負のパワーが小さくなり過ぎ、バックフォーカスを十分に確保することが困難になる。一方、条件式(12)の下限値を下回ると、第6レンズと第7レンズの合成の負のパワーが大きくなり過ぎ、光学全長の短縮が困難になってしまう。
【0047】
条件式(11)、(12)は以下の条件式(11a)、(12a)がより好適な範囲である。
(11a)0.75<f5/f<1.05
(12a)−1.1<f67/f<−0.7
【0048】
本発明の撮像レンズは、以下の条件式(13)、(14)、(15)を満足することが望ましい。
(13)50<νd5<70
(14)20<νd6<30
(15)50<νd7<70
ただし、
νd5:第5レンズのd線に対するアッベ数
νd6:第6レンズのd線に対するアッベ数
νd7:第7レンズのd線に対するアッベ数
【0049】
条件式(13)、(14)、及び(15)はそれぞれ、第5レンズ、第6レンズ、第7レンズのアッベ数の適切な範囲を規定するものであり、色収差を良好に補正するための条件である。7枚で構成されるレンズ系の像面側に配置された3枚のレンズに対して、低分散材料と高分散材料とを交互に配置することにより、レンズ系の像面側で発生する軸上色収差および倍率色収差をより良好に補正することができる。
【0050】
また、本発明の撮像レンズは、全てのレンズにプラスチック材料を採用することが望ましい。すべてのレンズをプラスチック材料にすることによって、例えば射出成形で製造する場合、大量生産が可能となり、低コスト化を実現できる。
【0051】
さらに、本発明の撮像レンズは、接合レンズを採用せず、全てのレンズを空気間隔を置いて配置することが望ましい。このような構成は、全てのレンズ面に非球面を形成できるため、諸収差の補正をより好適に図ることが可能になる。