(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA1の少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB1の少なくとも1個とからなるブロック共重合体55〜20質量%;
及び、
(a−2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA2の少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB2の少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体45〜80質量%;
からなるブロック共重合体樹脂成分(a)100質量部;
ここで(a−1)と(a−2)との和は100質量%であり、
(b)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜300質量部;
(c)ポリプロピレン系樹脂 150〜280重量部;
(d)有機過酸化物 0.5〜5.0質量部;
(e)架橋助剤 1.0〜10.0質量部;
を含有し、
下記物性(1)〜(3)を満たすことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
(1)デュロメータA硬さ60〜95;
(2)熱移動特性qmax0.1〜0.45(単位W/m2);
(3)摩擦係数0.1〜0.7;
ここで上記(2)は、次式で定義される値である。
qmax=λ・g
但し、λ:熱伝導率(単位W/mK)、g:温度勾配(単位K/m)である。
また上記(3)は、トライボギア(「TYPE:33」(商品名);新東科学株式会社製)を用い、その試料テーブルの上に、90mm角の試料の4隅を両面テープで貼り付けて固定し、固定された試料の中心部を指で押さえつつ、この指を5cm移動させることで測定した値である。
(ただし、前記熱可塑性エラストマー組成物は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物を含まない。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐油性、耐摩耗性、機械的特性に優れ、成形加工性が良く、かつ、さわり心地が心地よいという点で極めて良好である熱可塑性エラストマー樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の熱可塑性エラストマー組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、第一の発明によれば、
(a−1)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA1の少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB1の少なくとも1個とからなるブロック共重合体55〜5質量%;
及び、
(a−2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA2の少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB2の少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体45〜95質量%;
からなるブロック共重合体樹脂成分(a) 100質量部;
ここで(a−1)と(a−2)との和は100質量%であり、
(b)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜300質量部;
(c)ポリプロピレン系樹脂 10〜300重量部;
(d)有機過酸化物 0.5〜5.0質量部;
(e)架橋助剤 1.0〜10.0質量部;
を含有する熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
第二の発明によれば、下記物性(1)〜(3)を満たすことを特徴とする第一の発明に記載の熱可塑性エラストマー組成物が提供される。。
(1)デュロメータA硬さ60〜95;
(2)熱移動特性q
max0.1〜0.45(単位W/m
2);
(3)摩擦係数0.1〜0.7;
ここで上記(2)は、次式で定義される値である。
q
max=λ・g
但し、λ:熱伝導率(単位W/mK)、g:温度勾配(単位K/m)である。
また上記(3)は、トライボギア(「TYPE:33」(商品名);新東科学株式会社製)を用い、その試料テーブルの上に、90mm角の試料の4隅を両面テープで貼り付けて固定し、固定された試料の中心部を指で押さえつつ、この指を5cm移動させることで測定した値である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、ビニル芳香族化合物および共役ジエン化合物から主としてなるブロック共重合体と水添ブロック共重合体を所定割合で含有する樹脂成分を含むので、硬度、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲に入りさわり心地と外観、耐油性、耐摩耗性、に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組成物を構成する各成分について、説明する。
【0010】
(a)成分「ブロック共重合体樹脂成分」
本発明における(a)ブロック共重合体樹脂成分は、(a−1)成分と(a−2)成分からなる。(a−1)成分は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA1の少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB1の少なくとも1個とからなるブロック共重合体であり、(a−2)成分は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA2の少なくとも2個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB2の少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られるものである。例えば、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−Aなどの構造を有するビニル芳香族化合物‐共役ジエン化合物ブロック共重合体、あるいは、これらの水素添加されたもの等を挙げることができる。
【0011】
(a−1)成分と(a−2)成分を、所定の割合で併用することにより、さわり心地が心地よいという点で極めて良好となる。
【0012】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA1は、好ましくは、ビニル芳香族化合物のみから成るか、またはビニル芳香族化合物50質量%超、好ましくは70質量%以上と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
【0013】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA2は、好ましくは、ビニル芳香族化合物のみから成るか、またはビニル芳香族化合物50質量%超、好ましくは70質量%以上と共役ジエン化合物及び/又は水素添加された共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。
【0014】
共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB1およびB2は、好ましくは共役ジエン化合物のみから成るか、または共役ジエン化合物50質量%超、好ましくは70質量%以上とビニル芳香族化合物との共重合体ブロックである。
【0015】
これらのビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックA1およびA2、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックB1およびB2のそれぞれにおいて、分子鎖中のビニル化合物または共役ジエン化合物の分布がランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加または減少するもの)、一部ブロック状またはこれらの任意の組合せでなっていてもよい。ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック或いは共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックが2個以上ある場合には、それぞれが同一構造であっても異なる構造であってもよい。
【0016】
ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐第3ブチルスチレンなどのうちから1種または2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどのうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。
【0017】
(a−1)ブロック共重合体の具体例としては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)等を挙げることができる。本発明において、特に好ましいブロック共重合体は、SBSである。
【0018】
(a−1)ブロック共重合体の質量平均分子量は、好ましくは80,000〜500,000、より好ましくは150,000〜300,000である。
【0019】
(a−2)水添ブロック共重合体の具体例としては、SEBS(スチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体)等を挙げることができる。
【0020】
(a−2)ブロック共重合体の質量平均分子量は、好ましくは50,000〜550,000である。
【0021】
(a−1)成分と(a−2)成分は、55〜5質量%:45〜95質量%で配合する。ここで(a−1)と(a−2)との和は100質量%である。(a−2)成分が45質量%未満であると、熱移動特性が好ましい範囲を外れ、さわり心地に劣る。一方95質量%を超えると耐油性に劣り、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲を外れ、さわり心地に劣る。(a−1)成分と(a−2)成分との配合比は、好ましくは40〜20質量%:60〜80質量%である。
【0022】
(a−1)成分と(a−2)成分との混合は、本発明の組成物の他の成分と一括混練してもよく、予め(a−1)成分と(a−2)成分との混合物を得た後に他の成分と混練してもよい。
【0023】
これらのブロック共重合体の製造方法としては数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号明細書に記載された方法により、リチウム触媒またはチーグラー型触媒を用い、不活性溶媒中にてブロック重合させて得ることができる。上記方法により得られたブロック共重合体に、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下にて水素添加することにより水添ブロック共重合体が得られる。
【0024】
(b)成分「非芳香族系ゴム用軟化剤」
本発明の成分(b)としては、非芳香族系の鉱物油または液状もしくは低分子量の合成軟化剤を用いることができる。ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系とよび、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれて区別されている。
【0025】
本発明の成分(b)として用いられる鉱物油系ゴム用軟化剤は上記区分でパラフィン系およびナフテン系のものである。芳香族系の軟化剤は、その使用により成分(a)が可溶となり、架橋反応を阻害し、得られる組成物の物性の向上が図れないので好ましくない。成分(b)としては、パラフィン系のものが好ましく、更にパラフィン系の中でも芳香族環成分の少ないものが特に好ましい。これらの非芳香族系ゴム用軟化剤の性状は、37.8℃における動的粘度が20〜500cSt、流動点が−10〜−15℃、引火点(COC)が170〜300℃を示す。
【0026】
成分(b)の配合量は、成分(a)100質量部に対して、30〜300質量部、好ましくは、80〜200質量部である。配合量が300質量部を越えると、耐摩耗性に劣り、硬度、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲を外れ、さわり心地に劣る。また、配合量が30質量部未満では、耐油性に劣り、熱移動特性が好ましい範囲を外れ、さわり心地と外観が劣る。
【0027】
成分(b)は、質量平均分子量が100〜2,000のものが好ましい。
【0028】
(c)成分「ポリプロピレン系樹脂」
本発明の成分(c)は、得られる組成物中のゴム分散を良好にし、成形品の外観を良好にする効果を有する。成分(c)として用いるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等との共重合体(ブロック共重合体、ランダム共重合体);などをあげることができる。これらの中で、示差走査熱量計(DSC)により測定した融点(Tm)が150〜167℃のものが好ましい。またメルトマスフローレート(MFR)「ASTM‐D‐1238、L条件、230℃」が0.1〜10g/10分のものが好ましい。
【0029】
成分(c)の配合量は、成分(a)100質量部に対して10〜300質量部、好ましくは20〜200質量部である。10質量部未満では耐摩耗性に劣り、硬さ、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲をはずれさわり心地、外観が悪化し、300質量部を越えると、得られるエラストマー組成物の硬度が高くなりすぎて柔軟性が失われ、熱移動特性が好ましい範囲を外れてさわり心地が悪化する。
【0030】
(d)成分「有機過酸化物」
本発明で用いられる有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ‐tert‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5ジ(tert‐ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3、1,3−ビス(tert‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(tert‐ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p‐クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert‐ブチルパーオキシベンゾエート、tert‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert‐ブチルクミルパーオキサイドなどを挙げることができる。
【0031】
これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル2,5‐ジ‐(tert‐ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3が最も好ましい。
【0032】
有機過酸化物の添加量は、成分(a)100質量部に対して0.5〜5.0質量部である。好ましくは1.0〜3.0質量部である。下限未満では、耐油性、耐摩耗性に劣り、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲をはずれさわり心地が悪化する。上限をこえると、摩擦係数が好ましい範囲をこえてさわり心地が悪化する。
【0033】
(e)成分「架橋助剤」
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、有機過酸化物による部分架橋処理に際し、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、又はエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーを架橋助剤として配合する。このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0034】
特に、本発明においては、トリエチレングリコールジメタクリレートが、取扱いやすいこと;及び有機過酸化物可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋が均一にかつ効果的に起こり、硬さとゴム弾性のバランスの高い架橋熱可塑性エラストマーが得られること;から最も好ましい。
【0035】
本発明で用いられる架橋助剤の添加量は、成分(a)100質量部に対して、1.0〜10.0質量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.0〜8.0重量部である。下限未満では、耐油性、耐摩耗性に劣り、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲をはずれさわり心地が悪化する。上限をこえると、熱移動特性が好ましい範囲をはずれさわり心地が悪化する。
【0036】
また架橋助剤の添加量は有機過酸化物の添加量の2〜2.5倍程度の割合にすることが好ましい。
【0037】
上記各成分に加えて、本発明の組成物には、必要に応じて無機充填剤を配合することができる。無機充填剤は増量による経済上の利点を有する。用いられる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、硫酸バリウム、天然けい酸、合成けい酸(ホワイトカーボン)、酸化チタン、カーボンブラックなどがある。これらのうち、炭酸カルシウム、タルクが特に好ましい。
【0038】
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて、各種のブロッキング防止剤、シール性改良剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6‐ジ‐tert‐p‐ブチル‐p‐クレゾール、2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、2,4‐ジメチル‐6‐tert‐ブチルフェノール、4,4‐ジヒドロキシジフェニル、トリス(2‐メチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐tert‐ブチルフェニル)ブタンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0039】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(a)〜(e)を任意の順序で又は同時に溶融混練することにより製造することができる。溶融混練の方法に特に制限はなく、公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ミキサー又は各種のニーダー等を使用し得る。二軸混練機を用いる場合には、例えば、スクリュー回転数50〜500rpm、混練温度180〜240℃で溶融混練を行う。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
評価方法
1)デュロメータA硬さ:
JIS K 7215−1986に準拠した。試験片は、溶融混練によって得られたペレットを、240℃で、6.3mm厚にプレスしたシートを用いた。
【0042】
2)熱移動特性q
max(W/m
2):
130mm×130mm×2mm(厚み)の射出成形シートの表面に、カトーテック社製フィンガーロボットサーモラボのプローブを当てて、熱伝導率λ(W/mK)と温度勾配g(K/m)を測定し、次式により算出した。
q
max=λ・g
【0043】
3)摩擦係数:
トライボギア(「TYPE:33」(商品名);新東科学株式会社製)の試料テーブルの上に、90mm角の試料の4隅を両面テープで貼り付けて固定した。固定された試料の中心部を指で押さえつつ、この指を5cm移動させることで摩擦抵抗力を測定した。5回測定し、平均値を算出した。
【0044】
4)さわり心地:
下記5)の方法で得た射出成形シートを用い、温かさ、サラサラ感、柔らかさの観点から以下の基準で評価を行った。評価は、モニター10人の平均をとった。
☆:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスがよい。極めて心地よくシルクのような感覚である。
◎:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスがよい。
○:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスが少し崩れているが不快感はない。
△:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスのバランスが崩れており、比較例1の組成物と同等のさわり心地である。
×:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスが悪く、不快な感覚である。
【0045】
5)射出成形性:
型締圧120トンの射出成形機で、12.5×13.5×1mmのシートを下記の成形条件で成形した。
成形温度 220℃
金型温度 40℃
射出速度 55mm/秒
射出圧力 1400Kg/cm
2
保圧圧力 400〜1400Kg/cm
2
射出時間 6秒
冷却時間 45秒
続いて、得られたシートについて、変形及び著しく外観を悪化させる様なフローマークの有無を、目視により、以下の基準で評価した。
☆:フローマーク等の成形不良が認められない
◎:フローマーク等の成形不良が僅かに認められる
○:フローマーク等の成形不良が一部に認められる
△:フローマーク等の成形不良が一面に認められる
×:フローマーク等の成形不良が甚だしく、一部表面に凹凸が認められる
【0046】
6)耐油性(体積変化率):
JIS K 6258に準拠し、試験片は1mm厚プレスシートを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。パラフィンオイルを使用し、80℃×24時間の体積変化を測定した。
【0047】
7)テーバー摩耗
JIS K 7204に準拠し、試験片として2mm厚プレスシートを用い、磨耗輪H−22、1000回転後の摩耗量(mg)を測定した。
【0048】
実施例及び比較例で用いた各成分は下記の通りである。
【0049】
成分(a−1):
SBS−1 スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体
製造会社:旭化成ケミカルズ株式会社
商品名:アサプレン T−430
スチレンの含有量:30重量%
数平均分子量:130,000
重量平均分子量:200,000
分子量分布:1.5
SBS−2 スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体
製造会社:JSR株式会社
商品名: TR2787
スチレンの含有量:24重量%
MFR(200℃、5Kg荷重)6g/10分
【0050】
成分(a−2):
SEBSスチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体
製造会社:クレイトンポリマー社
商品名:クレイトンG1651H
スチレン含有量:30質量%
重量平均分子量:260,000
SEEPSスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体
製造会社:株式会社クラレ
商品名:セプトン4077
スチレンの含有量:30質量%
イソプレンの含有量:70質量%
数平均分子量:260,000
質量平均分子量:320,000
分子量分布1.23
水素添加率:90モル%以上
【0051】
成分(b):非芳香族系ゴム軟化剤
製造会社:出光興産株式会社
商品名:ダイアナプロセスオイル PW−90
種類:パラフィン系オイル
質量平均分子量:540
芳香族成分の含有量:0.1%以下
【0052】
成分(c):ポリプロピレン系樹脂
製造会社:株式会社プライムポリマー
商品名:CJ−700
種類:ホモポリプロピレン
密度:0.9g/cm
3
結晶化度(Tm):166℃、融解エンタルピー(△Hm)82J/g
【0053】
成分(d):有機過酸化物
製造会社:日本油脂株式会社
商品名:パーヘキサ25B
種類:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
【0054】
成分(e):架橋助剤
製造会社:新中村化学工業株式会社
商品名:NKエステル3G
種類:トリエチレングリコールジメタクリレート
【0055】
実施例1〜10、比較例1〜10
表1又は表2に示す割合の各成分を二軸押出機(L/D=46)を使用し、混練温度180〜240℃およびスクリュー回転数350rpmの条件で溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、上記1)〜7)の評価を行った。結果を表1又は表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1又は表2に示すように、本発明の組成物は、耐油性、耐摩耗性に優れ、硬度、熱移動特性、摩擦係数が好ましい範囲に入りさわり心地と外観に優れる。これに対して比較例では、硬度、熱移動特性、摩擦係数の少なくとも何れか一つが好ましい範囲に入らず、さわり心地と外観、耐油性、耐摩耗性の少なくとも何れか一つが劣った。
なお、実施例1、8は参考例である。