【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例および比較例により更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
実施例および比較例で用いた各成分は下記の通りである。
【0049】
成分(a−1):
SBS−1
スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体
製造会社:旭化成ケミカルズ株式会社
商品名:アサプレン T−430
スチレンの含有量:30重量%
数平均分子量:130,000
重量平均分子量:200,000
分子量分布:1.5
SBS−2
スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体
製造会社:JSR株式会社
商品名: TR2787
スチレンの含有量:24重量%
MFR(200℃、5Kg荷重)6g/10分
【0050】
成分(a−2):
SEBS
スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体
製造会社:クレイトンポリマー社
商品名:クレイトンG1651H
スチレン含有量:30質量%
重量平均分子量:260,000
SEEPS
スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体
製造会社:株式会社クラレ
商品名:セプトン4077
スチレンの含有量:30質量%
イソプレンの含有量:70質量%
数平均分子量:260,000
重量平均分子量:320,000
分子量分布1.23
水素添加率:90モル%以上
【0051】
成分(b):非芳香族系ゴム軟化剤
製造会社:出光興産株式会社
商品名:ダイアナプロセスオイル PW−90
種類:パラフィン系オイル
質量平均分子量:540
芳香族成分の含有量:0.1%以下
【0052】
成分(c):ポリプロピレン系樹脂
製造会社:株式会社プライムポリマー
商品名:CJ−700
種類:ホモポリプロピレン
密度:0.9g/cm
3
結晶化度(Tm):166℃、融解エンタルピー(△Hm)82J/g
【0053】
成分(d):有機過酸化物
製造会社:日本油脂株式会社
商品名:パーヘキサ25B
種類:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
【0054】
成分(e):架橋助剤
製造会社:新中村化学工業株式会社
商品名:NKエステル3G
種類:トリエチレングリコールジメタクリレート
【0055】
実施例1〜10、比較例1〜10
表1に示す割合の各成分(質量部)を2軸押出機(L/D=46)を使用し、混練温度180〜240℃およびスクリュー回転数350rpmの条件で溶融混練して、熱可塑性エラストマー組成物を得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、下記1)〜12)の評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0056】
評価方法
1)デュロメータA硬さ:
JIS K 7215−1986に準拠した。試験片は、溶融混練によって得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、240℃で、6.3mm厚にプレスしたフィルムを用いた。
【0057】
2)熱移動特性q
max(W/m
2):
溶融混練によって得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを、240℃で、130mm×130mm×2mm(厚み)のフィルム状にプレスし、その表面に、カトーテック社製フィンガーロボットサーモラボのプローブを当てて、熱伝導率λ(W/mK)と温度勾配g(K/m)を測定し、次式により算出した。
q
max=λ・g
【0058】
3)摩擦係数:
トライボギア(「TYPE:33」(商品名);新東科学株式会社製)の試料テーブルの上に、前記2)で作成したフィルムから切り出した90mm角の試料の4隅を両面テープで貼り付けて固定した。固定された試料の中心部を指で押さえつつ、この指を5cm移動させることで摩擦抵抗力を測定した。5回測定し、平均値を算出した。
【0059】
4)フィルム成形性
(株)東芝製90mmφT−ダイ押出成形機を用いて、スクリューがフルフライト、L/D=22、押出温度220℃、T−ダイがコートハンガーダイを用い、フィルムの引き取り速度を5m/分から10m/分まで変化させて、熱可塑性エラストマー組成物のフィルム成形性を4段階表示した。
4段階表示
A ・・・ 引き取り速度10m/分でフィルム成形が可能である場合
B ・・・ 引き取り速度8m/分以下でフィルム成形が可能である場合
C ・・・ 引き取り速度6m/分以下でフィルム成形が可能である場合
D ・・・ 引き取り速度5m/分以下でフィルム成形が可能である場合
なお、引き取り速度と得られるフィルムの厚みとの関係は、次の通りである。
引き取り速度10m/分のとき、約0.2mm厚のフィルムが得られ、引き取り速度8m/分のとき、約0.25mm厚のフィルムが得られた。また、引き取り速度6m/分のとき、約0.35mm厚のフィルムが得られ、引き取り速度5m/分のとき、約0.4mm厚のフィルムが得られた。
【0060】
5)シボ残り性
ダイ温度210℃に設定したTダイ付き押出フィルム成形機で熱可塑性エラストマー組成物を押出し、ダイス直後に設置されたシボロール(ロール温度90℃)とピンチロールとの間を通して、シボを有するシボ付きフィルムを得た。このシボ付きフィルムの厚さは0.5mmであり、シボの最大深さは320μmである。
このシボ付きフィルムの展開率が250%になる凸引き真空成形金型を用いて真空成形を下記の条件で行ない、あらかじめシボ付きフィルム表面に付けられていたシボの残り性を5段階表示した。
凸引き真空成形条件:上下ヒーターは、フィルムの表面温度が120℃になるようにヒーターをセットした。また、真空圧は500〜700mmHgの条件で行った。
5段階表示
5 ・・・ シボが全く消えていない状態
4 ・・・ シボがやや消えている状態
3 ・・・ シボが消えている状態
2 ・・・ シボが殆ど消えている状態
1 ・・・ シボが完全に消えている状態
【0061】
6)Rだれ性
半径5mm(5R)の稜線を有する凸引き真空成形金型を用い、上記4)フィルム成形性試験において引取速度5m/分で押出して得られたフィルムの真空成形を下記の条件で行ない、真空成形されたフィルム裏面の半径(R)を測定し、Rだれ性を5段階表示した。
凸引き真空成形条件:上下ヒーターは、フィルムの表面温度が120℃になるようにヒーターをセットした。また、真空圧は500〜700mmHgの条件で行った。
5段階表示
5 ・・・ R≦7mm
4 ・・・ 7mm<R≦9mm
3 ・・・ 9mm<R≦11mm
2 ・・・ 11mm<R≦13mm
1 ・・・ R>13mm
【0062】
7)延展性
上記4)フィルム成形性試験において引取速度5m/分で押出して得られたフィルムの展開率が400%になる凸引き真空成形金型を用いて真空成形を下記の条件で行ない、フィルムの延展性を4段階表示した。
凸引き真空成形条件:上下ヒーターは、フィルムの表面温度が120℃になるようにヒーターをセットした。また、真空圧は500〜700mmHgの条件で行った。
4段階表示
A ・・・ フィルムの破れ無し
B ・・・ フィルムの破れ最大長さ1cm以下
C ・・・ フィルムの破れ最大長さ5cm以下
D ・・・ フィルムの破れ最大長さ10cm以上
【0063】
8)フィルムインサート成形性:
8−1)発泡ポリプロピレン樹脂を芯材とする場合
上記4)フィルム成形性試験において引取速度5m/分で押出して得られたフィルムを使用した。縦7cm×横10cm×高さ1cmの矩形状凹部を有する金型に該フィルムをセットする。そして、発泡ポリプロピレン樹脂としてポリプロピレン樹脂(製造会社:日本ポリプロ株式会社、商品名:FW4BT、融点:139℃、MFR測定値:6.5g/10分(ASTM D‐1238法による230℃))100質量部に発泡剤(永和化成工業株式会社、ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20分)、重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース。)5質量部を添加したものを射出成形(温度180〜250℃の範囲内で各フィルムについて外観がもっとも良好となる温度をそれぞれ選択する。)することにより、該フィルムが金型の矩形状凹部に密着するようにフィルムインサート成形する。成形性について破れなどないか、表面外観についてはひび割れの有無、透けて発泡層が見えないかを主に目視で評価を行い、下記の通り判定する。
○:成形性、表面外観ともに良好。
△:成形性には優れて破れはないが、表面外観にやや劣る。
×:成形時に破れが生じる、またはひび割れあるいは透けて発泡層が見える。
【0064】
8−2)発泡ポリエチレン樹脂を芯材とする場合
上記4)フィルム成形性試験において引取速度5m/分で押出して得られたフィルムを使用した。縦7cm×横10cm×高さ1cmの矩形状凹部を有する金型に該フィルムをセットする。そして、発泡ポリエチレン樹脂としてポリエチレン(製造会社:日本ポリエチレン株式会社、商品名:ノバテックLL UJ480、融点:124℃、MFR測定値:30g/10分、密度:0.92g/cm
3)100質量部に発泡剤(永和化成工業株式会社、ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20分)、重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース。)5質量部を添加したものを射出成形(温度180〜250℃の範囲内で各フィルムについて外観がもっとも良好となる温度をそれぞれ選択する。)することにより、該フィルムが金型の矩形状凹部に密着するようにフィルムインサート成形する。成形性について破れなどないか、表面外観についてはひび割れの有無、透けて発泡層が見えないかを主に目視で評価を行い、下記の通り判定する。
○:成形性、表面外観ともに良好。
△:成形性には優れて破れはないが、表面外観にやや劣る。
×:成形時に破れが生じる、またはひび割れあるいは透けて発泡層が見える。
【0065】
9)さわり心地:
上記フィルムインサート成形で得られたサンプルの表面(熱可塑性エラストマー組成物の表皮フィルム)について、
モニター10人で温かさ、サラサラ感、柔らかさの観点から以下の基準で評価を行った。
◎◎:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスがよい。極めて心地よくシルクのような感覚である。
◎:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスがよい。
○:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスが少し崩れているが不快感はない。
△:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスのバランスが崩れており、比較例1の組成物と同等のさわり心地である。
×:温かさ、サラサラ感、柔らかさのバランスが悪く、不快な感覚である。
【0066】
10)耐油性(体積変化率):
JIS K 6258に準拠し、試験片は熱可塑性エラストマー組成物からなる1mm厚プレスフィルムを、ダンベルで3号型に打抜いて使用した。パラフィンオイルを使用し、80℃×24時間の体積変化を測定した。
【0067】
11)テーバー摩耗
JIS K 7204に準拠し、試験片として熱可塑性エラストマー組成物からなる2mm厚プレスフィルムを用い、摩耗輪H−22、1000回転後の摩耗量(mg)を測定した。
【0068】
12)真空圧空成形性試験
(1)樹脂製基体の製造
(1−1)樹脂製基体(ア)の製造
発泡ポリプロピレン系樹脂としてポリプロピレン(製造会社:日本ポリプロ株式会社、商品名:FW4BT、融点:139℃、MFR測定値:6.5g/10分(ASTM D‐1238法による230℃))100質量部に発泡剤(永和化成工業株式会社、ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20分)、重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース。)5質量部を添加したものを三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社製の100トン射出成形機s−2000i100Aを使用して、シリンダー温度220℃、金型温度70℃、射出速度250mm/秒、保持圧50MPaにて射出成形を行い、
図1に示す形状の熱可塑性樹脂製の基体を得た。
図1は、当該成形品を写真撮影したものである。なお、樹脂製基体(ア)の最大長さは15cm、最大幅は6.5cm、最大厚みは3.5cmである。
【0069】
(1−2)樹脂製基体(イ)の製造
発泡ポリエチレン系樹脂としてポリエチレン(製造会社:日本ポリエチレン株式会社、商品名:ノバテックLL UJ480、融点:124℃、MFR測定値:30g/10分、密度:0.92g/cm
3)100質量部に発泡剤(永和化成工業株式会社、ポリスレンEE25C、発泡剤濃度20%、発生ガス量75〜90ml/2.5g(220℃恒温下×20分)、重炭酸ナトリウム・クエン酸系、低密度ポリエチレンベース。)5質量部を添加したものを三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社製の100トン射出成形機s−2000i100Aを使用して、シリンダー温度220℃、金型温度70℃、射出速度250mm/秒、保持圧50MPaにて射出成形を行い、
図1に示す形状の熱可塑性樹脂製の基体を得た。
図1は、当該成形品を写真撮影したものである。なお、樹脂製基体(イ)の最大長さは15cm、最大幅は6.5cm、最大厚みは3.5cmである。
【0070】
(2)真空圧空成形性試験
図2は、真空圧空成形法の一例を示す図である。真空圧空成形では、まず、成形室内の中央部に上記4)フィルム成形性試験において引取速度5m/分で押出して得られたフィルム(1)を置き、中央下部に基体(6)を設置し、上記室を密閉し、上室(7)と下室(8)を同じ減圧度で減圧する(
図2(a))。このときの上室(7)と下室(8)の圧力は、真空成形と同様に、好ましくは10KPa以下、より好ましくは1KPa以下である。十分に減圧されたところで赤外線等のヒーター(9)によりフィルム(1)を加熱して軟化させ、次いで、十分に軟化したフィルム(1)と基体(6)を接触させる(
図2(b))。この後、下室(8)は減圧のままで、上室(7)のみを大気圧以上にしてフィルム(1)と基体(6)を十分密着させて(
図2(c))、フィルムで被覆された成形品(10)を得る(
図2(d))。
図2(c)における上室(7)の圧力は、100〜1000KPaであるのが好ましく、より好ましくは150〜500KPaである。上室(7)をこのような圧力にすることにより、フィルム(1)と基体(6)とを十分密着させることができ、したがって、フィルムと基体との間に空気の残留を生じない。
図2(c)において、上室(7)の圧力が上記範囲よりも小さかったり、下室(8)の圧力が10KPaより大きかったりした場合には、基体とフィルムとの間に空気が残留し易くなる。また、上室(7)の圧力が上記範囲よりも大きい場合には、真空圧空成形時に基体やフィルムが破損する場合がある。なお、密着力は、下室(8)の圧力が小さいほど大きくなるが、圧力を小さくするのは加速度的にコストがかかること、及び基体やフィルムの機械強度を考慮すれば、実用的には、下室(8)の圧力の下限は10
−5KPa程度である。
上記真空圧空成形性試験において、下室(8)の圧力はいずれも0.001KPa、上室(7)の圧力は200KPaであった。
【0071】
(3)評価
外観性
成形品のフィルム表面の外観を下記の評価基準にしたがって目視評価した。
○=膨れや凹凸が認められない。
△=極僅かな膨れや凹凸が認められる。
×=指で触れて引っかかる程度の大きな膨れや凹凸が認められる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1に示すように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、フィルム成形性、真空成形性(シボ残り性、Rダレ性、延展性)、真空圧空成形性、フィルムインサート成形性、耐油性、耐摩耗性に優れ、さわり心地と外観に優れる。
上記フィルムインサート成形において、芯材に発泡ポリプロピレンを用いた場合が、芯材に発泡ポリエチレンを用いた場合よりも表面の触感と成形品全体としてのしっかり感の点で特に優れていた。(モニター10人中8人以上がそう評価した。)
上記真空圧空成形において、芯材に発泡ポリプロピレン(樹脂製基体(ア))を用いた場合が、芯材に発泡ポリエチレン(樹脂製基体(イ))を用いた場合よりも表面の触感と成形品全体としてのしっかり感の点で特に優れていた。(モニター10人中8人以上がそう評価した。)
これに対して表2に示す比較例1は、(a−1)成分を配合していないので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、耐油性、真空圧空成形性が悪化している。
比較例2は、(a−1)成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、真空圧空成形性が悪化している。
比較例3は、(b)成分の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、耐油性、真空圧空成形性が悪化している。
比較例4は、(b)成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、耐摩耗性、真空圧空成形性が悪化している。
比較例5は、(c)成分の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、耐摩耗性、真空圧空成形性が悪化している。
比較例6は、(c)成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、真空圧空成形性が悪化している。
比較例7は、(d)成分を配合していないので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、耐油性、耐摩耗性、真空圧空成形性が悪化している。
比較例8は、(d)成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、真空圧空成形性が悪化している。
比較例9は、(e)成分を配合していないので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、耐油性、耐摩耗性、真空圧空成形性が悪化している。
比較例10は、(e)成分の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、フィルム成形性、真空成形性、フィルムインサート成形性、さわり心地、真空圧空成形性が悪化している。