(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145100
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】噴射弁のためのアライメント部材、ならびに噴射弁を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F02M 61/16 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
F02M61/16 F
F02M61/16 P
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-534996(P2014-534996)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公表番号】特表2014-528549(P2014-528549A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】EP2012068983
(87)【国際公開番号】WO2013056957
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年4月15日
(31)【優先権主張番号】102011084704.9
(32)【優先日】2011年10月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・シェッフェル
(72)【発明者】
【氏名】アクセル・ボアマン
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ヴィーショレック
【審査官】
田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102004049710(DE,A1)
【文献】
特表2005−500474(JP,A)
【文献】
特開平05−079423(JP,A)
【文献】
特表2001−505277(JP,A)
【文献】
特表2003−517140(JP,A)
【文献】
特許第3712589(JP,B2)
【文献】
特表2008−508465(JP,A)
【文献】
特表2004−518849(JP,A)
【文献】
独国実用新案第000001873834(DE,U1)
【文献】
独国特許出願公開第03600311(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102008025788(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0261286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーモールド(4)を備える噴射弁(1)を製造する方法において、
噴射モジュール(2)の管状部分(20)に円板状のアライメント部材(3)を外嵌し、前記アライメント部材(3)は十分な柔軟性を有するためにスリットを有しており、
前記噴射モジュール(2)の前記管状部分(20)に前記アライメント部材(3)を溶接結合し、続いて溶接結合のステップ中に前記アライメント部材(3)に剛性を与えるために前記スリットの少なくとも1つの部分も溶接閉止した後、前記噴射モジュール(2)に前記オーバーモールド(4)を射出成形する
噴射弁(1)の製造方法。
【請求項2】
溶接結合のステップ中に前記噴射モジュール(2)を前記アライメント部材(3)に溶接結合させた後に回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アライメント部材(3)が前記噴射モジュール(2)の前記管状部分(20)に溶接結合される溶接平面(S1)と、前記スリット(31)が溶接閉止される溶接平面(S2)とは互いに離れている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アライメント部材(3)は、縁部領域(37)に舌部(30)を有しており、かつ、前記舌部(30)に隣接して底面領域(36)に配置された第1のラグ(38)および/または第2のラグ(39)を有しており、
前記舌部(30)は、溶接結合のステップのときに前記第1のラグおよび/または前記第2のラグ(38,39)と溶接結合される
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
溶接結合のステップはレーザを用いて行われる
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
噴射弁のためのアライメント部材において、
前記アライメント部材の軸方向(X−X)に突出する鍔部(35)と、
前記鍔部(35)に半径方向で後続する底面領域(36)と、
前記底面領域(36)に半径方向で後続する縁部領域(37)と、
周回する前記鍔部(35)で区切られた中央の貫通孔(40)と、
前記貫通孔(40)から半径方向外側に向かって延びる第1のスリット(31)と、
円周方向に沿って形成される円弧状の第2のスリット(32)と、
前記縁部領域(37)を起点として半径方向内側に向かって前記第1のスリット(31)に突入する舌部(30)と、
前記舌部(30)に隣接して前記底面領域(36)に配置され、前記底面領域(36)から軸方向(X−X)で前記舌部(30)と同方向に折り曲げられ、一定の幅を有する第1および/または第2のラグ(38,39)と
を含んでおり、
前記スリット(31、32)は軸方向(X−X)で連続するように、かつ、溶接閉止可能に構成されている
アライメント部材。
【請求項7】
前記第1および前記第2のスリット(31,32)は互いに交わっている
請求項6に記載のアライメント部材。
【請求項8】
前記貫通孔(40)から半径方向外側に向かって延びる第3のスリット(33)および/または円周方向に沿って形成される円弧状の第4のスリット(34)をさらに含み、
前記第3および/または前記第4のスリットは軸方向(X−X)で連続するように構成される
請求項6又は7に記載のアライメント部材。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のアライメント部材(3)と、アライメント面(8)を備えるオーバーモールド(4)とを含んでいる噴射弁。
【請求項10】
前記オーバーモールド(4)は前記アライメント部材(3)を完全に包囲する
請求項9に記載の噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射弁のためのアライメント部材、ならびに、コネクタ射出成形部を備える噴射弁を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射弁は、従来技術からさまざまな構成で知られている
(従来の噴射弁の構成については、例えばドイツ連邦共和国特許公開第10108464号明細書参照)。エンジン型式が相違していると、噴射弁の組付状況も、特にそのアライメントに関して相違していることが多い
(アライメントについては、例えばドイツ連邦共和国特許公開第10140794号明細書及び第102009000184号明細書等参照)。しかしながら、アライメントに応じて噴射弁のさまざまに異なるスプレーパターンが得られるので、噴射弁のアライメントは重要である。しかしスプレーパターンは燃料消費量や排ガスエミッションに影響を及ぼすので、現代のエンジンにおける噴射弁は、非常に厳密にアライメントされていなければならない。1つのアライメント手段は、たとえば平坦な研削部を噴射モジュールに設けることであろう。しかしながら、このことは望ましくないコストの増大につながる。さらに、場合により各々のエンジン型式について固有の研削部を設けなければならない。別案として、アライメント面を有する追加コンポーネントを噴射弁に配置することもできよう。このことも、上に説明した平面研削部と同様の欠点を有しており、追加コンポーネントを組み付けるときのアライメントプロセスに、アライメントのコストが前倒しされる。さらに現代の噴射弁は、コネクタ接続部を構成するための部分的なプラスチックオーバーモールドを有している。この場合、コネクタ接続部も噴射弁のためのアライメント部材として利用することができるはずであるが、その場合にも、同じくエンジン型式が多数あるために、多数の射出成形金型が必要になることが欠点として判明している。
【発明の概要】
【0003】
請求項1の構成要件を有する、オーバーモールドを備える噴射弁を製造する本発明の方法は、予備組付けされた噴射モジュールの1つの部分へ容易に外嵌することができるアライメント部材が設けられるという利点を有しており、それにより、噴射モジュールをアライメント部材とともに射出成形金型へアライメントされた状態で入れることができ、その次のステップで、オーバーモールドを射出成形することができる。アライメント部材は外嵌プロセス中に柔軟になっており、溶接ステップによって噴射モジュールに溶接結合される。溶接結合と同時にアライメント部材への剛性付与が行われ、それにより、アライメント部材が特に後続の射出成形プロセスに耐えるようになる。そのためにアライメント部材は実質的に円板状に形成されており、少なくとも1つのスリットを有している。このスリットは、外嵌プロセス中に柔軟性を提供する。これに続く溶接ステップで、噴射モジュールへのアライメント部材の溶接結合と同時にスリットが溶接閉止され、それにより、射出成形プロセスのために必要なアライメント部材の剛性が成立する。このように、一方ではアライメント部材を容易に外嵌可能であるようにしたいが、このことは剛性の低減を要請し、その一方で、高い射出成形圧力に基づく変形およびこれに伴う射出成形金型内でのミスアライメントを回避するには、射出成形プロセスのために剛性ができるだけ高いほうがよいという問題を、本発明は巧妙な仕方で解決するものである。溶接プロセスにより剛性を与えられるアライメント部材は、特に、射出成形プロセス中に変形が生じ、そのためにアライメント部材が射出成形金型の壁領域と接触し、そのようにして完成した噴射弁で外から目に見えるようになることを回避する。そうなれば、噴射弁の飛沫水密閉性が与えられないことになってしまう。しかし本発明では、アライメント部材への剛性付与が、噴射モジュールの特に管状の部分へのアライメント部材の溶接結合プロセスと同時に実施されるので、1回のステップで同時にアライメント部材を噴射モジュールへ取り付けて剛性を与えることができる。
【0004】
従属請求項は、本発明の好ましい発展例を示している。
【0005】
溶接結合のステップのために、噴射モジュールをこれに外嵌されたアライメント部材とともに回転させるのが特別に好ましい。それにより、特別に容易な溶接ステップを実施することができる。
【0006】
本発明の別の好ましい実施形態では、アライメント部材が噴射モジュールに溶接結合される溶接平面と、スリットが溶接閉止される溶接平面とは互いに離れている。このことは、アライメント部材のいっそう広い構成自由度を可能にし、噴射モジュールにアライメント部材を固定するための溶接継目の品質が、そのせいで低下することがない。
【0007】
アライメント部材は、溶接結合のステップのとき剛性付与のために少なくとも部分的にアライメント部材の底面領域と溶接される舌部を有しているのが特別に好ましい。この舌部は、たとえば同時にスリットもアライメント部材で作成される打抜きステップによって、簡単な仕方により製作することができる。
【0008】
さらにアライメント部材は、第1および/または第2のラグを有しているのが好ましく、第1および/または第2のラグは舌部に隣接して配置される。そして溶接結合のステップで、舌部が第1および/または第2のラグと溶接される。このような方策により、アライメント部材の溶接およびこれに伴う剛性付与を、簡単な仕方で別の平面へと移すことができる。
【0009】
溶接は1つのレーザによって行われるか、または別案として、互いに180°向かい合うように配置された2つのレーザによって行われるのが特別に好ましい。2つのレーザを使用するときは、噴射モジュールを180°回転させるだけでよい。
【0010】
さらに本発明は、予備組付けされた噴射モジュールに取付可能であり、特にコネクタ射出成形部であるオーバーモールドを噴射モジュールに射出成形するために、射出成形金型の中でアライメントをするためにセットアップされている、請求項7に記載された噴射弁のためのアライメント部材を対象としている。このアライメント部材は、軸方向に延びる鍔部と、鍔部に半径方向で後続する底面領域と、底面領域に半径方向で後続する縁部領域とを含んでいる。さらに、中央の貫通孔と、半径方向を向いていてアライメント部材の軸方向に連続するように形成された第1のスリットとが設けられている。第1のスリットは、貫通孔を起点として半径方向外側に向かって延びている。それにより、特に内側の鍔部の領域でアライメント部材の柔軟性がもたらされる。すなわちこのことは、噴射モジュールの特に管状の部分への、アライメント部材の非常に容易な外嵌を可能にする。そしてこれに続く取付ステップで、鍔部が噴射コンポーネントに溶接結合され、そのようにしてアライメント部材に剛性が与えられる。次いでオーバーモールドを、特にコネクタ収容部を、特にアライメント部材の領域で射出成形することができる。貫通孔は楕円形であるのが好ましい。
【0011】
さらにアライメント部材は、同じく軸方向で連続するように構成された、円周方向を向く円弧状の少なくとも1つの第2のスリットを含んでいるのが好ましい。半径方向を向くスリットと、円周方向を向くスリットとを設けることで、半径方向および軸方向だけでなく円周方向でも柔軟性がもたらされ、それにより、アライメント部材の外嵌を特別に容易に行うことができる。
【0012】
アライメント部材の第1および第2のスリットは互いに交わっているのが特別に好ましい。それにより、アライメント部材の柔軟性のいっそうの向上が実現され、それによってアライメント部材の外嵌がなおいっそう容易に行われる。
【0013】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、アライメント部材は、スリットのうちの1つに突入する舌部をさらに含んでいる。この舌部により、舌部がアライメント部材の1つの部分に溶接結合される溶接プロセスによるアライメント部材の特別に容易な剛性付与を実現することができる。この溶接によって同時に、少なくとも1つのスリットが閉じられ、特にすべてのスリットが閉じられるのが好ましい。
【0014】
さらにアライメント部材は、底面領域に配置された第1および/または第2のラグをさらに含んでいるのが好ましく、第1および/または第2のラグは舌部に隣接して配置されているのが好ましく、すなわち、ラグを溶接ステップ中に舌部と溶接することができる。
【0015】
アライメント部材のいっそう改善された柔軟性のために、アライメント部材は、半径方向を向いていて軸方向に連続する第3のスリット、および/または円周方向を向いていて軸方向に連続する第4のスリットをさらに含んでおり、第1のスリットと第3のスリット、および第2のスリットと第4のスリットは、アライメント部材を通る中心平面に対して対称に形成されているのが特別に好ましい。
【0016】
さらにアライメント部材は、半径方向を向く第2のスリットを含んでいるのがさらに好ましく、半径方向のスリットのうちの少なくとも1つは、半径方向で連続するスリットとして、貫通孔からアライメント部材の縁部まで延びている。それによりアライメント部材はC字型の形状を有しており、少なくとも1つの領域で円周方向に閉じているのではなくなる。それによってアライメント部材を円周方向で拡張させることができ、それにより、いっそう容易な組付け可能性が実現される。
【0017】
スリットのうちの少なくとも1つは、拡張領域を有しているのがさらに好ましい。拡張領域はたとえば円弧状であってよい。このことは特に、スリットが射出成形材料により充填される1サイクルの射出成形の完了後に、改善された剛性を生じさせるとともに、射出成形材料による比較的細いスリットの確実な充填を生じさせる。
【0018】
アライメント部材は、底面の平面に対して傾いて配置された底面領域を含んでいるのがさらに好ましい。
【0019】
いっそう改善された射出成形材料の通過性を得るために、アライメント部材は底面領域に多数の通過開口部、特に円形の通過開口部を有しているのが好ましい。
【0020】
これに加えて、射出成形金型の中でのアライメント部材の簡単かつ確実なアライメントを可能にするために、アライメント部材は縁部領域にアライメントをする少なくとも1つの装置を有しているのが好ましい。アライメントをする装置は切欠きであるのが好ましく、たとえばアライメント部材の縁部領域にあるV字型の切込み、または直線状の当接面である。2つのアライメント装置が互いに180°向かい合って縁部領域に配置されているのが特別に好ましい。
【0021】
射出成形プロセスの後に、アライメント部材と射出成形材料との間で高い液密性が得られることを確保するために、アライメント部材は、少なくとも1つの溝を備えるラビリンス構造を有しているのが好ましい。特に互いに同軸に配置されて円周方向に延びる、複数の溝が設けられているのが好ましい。このようなラビリンス装置により、射出成形材料とアライメント部材の間で確実な密閉を実現することができる。ラビリンス構造は、アライメント部材の両方の平坦側に設けられているのが好ましい。それによりアライメント部材は、特に、飛沫水などとの接触の可能性を排除することができない車両での採用に適している。
【0022】
さらに本発明は、特にコネクタのためのオーバーモールドが射出成形された、本発明によるアライメント部材を備える噴射弁を対象としている。アライメント部材はオーバーモールドで完全に取り囲まれているのが好ましい。オーバーモールドには、アライメントのための1つまたは複数のアライメント面等が、内燃機関での組付けのために設けられているのが好ましい。このアライメント部材は、オーバーモールドへのアライメント面の非常に正確な射出成形を可能にする。
【0023】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。図面には次のものが示されている:
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に基づく第1のアライメント部材を有する噴射弁を示す模式的な部分断面図である。
【
図2】
図1に示す噴射弁の噴射モジュールを示す模式的な断面図である。
【
図3】アライメント部材を示す模式的な平面図である。
【
図4】
図3のB−B線に沿った模式的な断面図である。
【
図8】噴射モジュールの1つの部分へのアライメント部材の溶接プロセスを示す模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施例に基づくアライメント部材を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施例に基づくアライメント部材を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施例に基づくアライメント部材を示す図である。
【
図12】本発明の第3の実施例に基づくアライメント部材を示す図である。
【
図13】本発明の第3の実施例に基づくアライメント部材を示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施例に基づくアライメント部材を示す図である。
【
図15】本発明の第4の実施例に基づくアライメント部材を示す模式的な平面図である。
【
図16】本発明の第5の実施例に基づくアライメント部材を示す斜視図である。
【
図17】本発明の第6の実施例に基づくアライメント部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、
図1から
図8を参照しながら、本発明に基づく第1のアライメント部材3を備える噴射弁について、ならびにこの噴射弁を製造する方法について詳細に説明する。
【0026】
図1を見ると明らかなように、噴射弁1は
図2に詳細に示す噴射モジュール2を含んでおり、この噴射モジュールは本実施例では、弁体21を動かすためにマグネットアーマチュア23を含んでいる。弁体は、噴射弁の一方の端部にある弁座22を解放し、ないしはこれを閉止する。さらに噴射弁1は、
図2に示す噴射モジュール2に射出成形される、コネクタ射出成形部4(オーバーモールド)を含んでいる。噴射モジュール2は、予備組付けされるモジュールである。円板状のアライメント部材3が、噴射モジュール2の管状部分20に予備組付けされている。噴射モジュール2が射出成形金型に挿入されてから、アライメント部材3を利用してコネクタ射出成形部4が射出成形される。コネクタ射出成形部4は、本来のコネクタ接続部と同じく、そのつどの顧客とその要求事項について個別に製作しなければならないアライメント面8を有している。アライメント面8は、のちに内燃機関での噴射弁の組付けステップのときに、噴射弁をアライメントする役目を果たす。それは、噴射弁により提供されるスプレーパターンが、顧客の希望する要求事項を満たすようにするためである。したがって、すでにコネクタ射出成形部の射出成形プロセス中に、噴射モジュール2が射出成形金型の中で正しくアライメントされていなければならない。それは、のちに噴射弁のスプレーのアライメントが、オーバーモールドでの射出成形プロセスによって製作されるアライメント面8に対して適合するようにするためである。
【0027】
アライメント部材3は
図3から
図8に詳細に示されている。アライメント部材3は実質的に円板状の部材であり、中央の貫通孔40を有している。貫通孔40は、アライメント部材の軸方向X−Xに突出する周回する鍔部35によって区切られている。鍔部35には、アライメント部材3の底面の平面Eに対して傾いた底面領域36が接しており、終端の縁部領域37がこれに後続している。縁部領域37は、アライメント部材3の底面の平面Eに位置している。さらにアライメント部材3は、第1のスリット31と、第2のスリット32と、第3のスリット33と、第4のスリット34とを含んでいる。第1のスリット31と第3のスリット33は、アライメント部材3の中心軸を起点として半径方向に延びており、互いに180°向かい合って位置している(
図3参照)。第2のスリット32と第4のスリット34は円周方向でそれぞれ約150°の中心角にわたって延びている。第1のスリット31は第2のスリット32と交わっており、第3のスリット33は第4のスリット34と交わっている。すべてのスリットは軸方向X−Xで連続するように構成されている。それにより、アライメント部材3の高い柔軟性がもたらされる。特に第2および第4のスリット32,34によってアライメント部材3の軸方向X−Xばかりでなく、特に、第1および第3のスリット31,33によって中心軸に対して半径方向にも柔軟性がもたらされる。
【0028】
さらにアライメント部材3は、縁部領域37を起点として半径方向内側に向かって第1のスリット31に突入する舌部30を含んでいる。舌部30は、特に
図5を見ると明らかなように、軸方向X−Xでも若干折り曲げられている。さらにアライメント部材3は、第1のラグ38と第2のラグ39とを含んでいる。第1および第2のラグ38,39は、底面領域36から同じく軸方向X−Xで舌部30と同じ方向に折り曲げられている(
図5参照)。舌部30は両方のラグ38,39に側方で接触する。それにより、
図5,6および7を見るともっとも良くわかるように、アライメント部材の底面の平面Eの範囲外で、舌部30と両方のラグ38,39との間の接触ゾーンが生じている。別案として、溶接プロセスにとってクリティカルではない短い間隔を舌部とラグとの間に設けることもでき、溶接プロセスによってこの間隔が橋渡しされる。
【0029】
軸方向X−Xだけでなく、半径方向でもアライメント部材3の柔軟性が高いことに基づき、噴射モジュール2の管状部分20にアライメント部材3を迅速かつ簡単に外嵌することができる。管状部分20に外嵌された状態でのアライメント部材の位置を、場合によりさらに容易に修正することもできる。アライメント部材3の位置が重要である理由は、射出成形金型の中で噴射モジュール2のアライメントを確保するとともに、噴射モジュール2に対して正しいアライメントでコネクタ射出成形部4を射出成形するためである。アライメント部材3が射出成形プロセス中に変位しないようにするために、アライメント部材は、レーザ光線7による溶接接合によって管状部分20に溶接結合される。それにより、アライメント部材3の鍔部35と管状部分20との間に溶接継目5が生じる(
図8参照)。溶接プロセスのために、管状部分20がアライメント部材3とともに回転する。このとき
図8に示すように、レーザ光線7は舌部30の領域ではもはや鍔部35ないし管状部分20とは接触せず、軸方向X−Xに突出する舌部30および突出するラグ38,39と接触する。それにより、舌部30がラグ38ないし39に溶接結合される。
図8を見ると明らかなように、舌部30がラグ38,39と溶接される溶接平面S2は、鍔部35が管状部分20に溶接される通常の溶接平面S1の範囲外に位置している。舌部30とラグ38,39との溶接により、アライメント部材3への剛性付与が行われる。それによりアライメント部材3は、コネクタ射出成形部4を製作するための後続する射出成形プロセス中における高い圧力に耐えることができ、アライメント部材3が湾曲したり、ないしは位置を変えたりすることがない。
【0030】
このようにアライメント部材3の形状により、溶接プロセス中に舌部の領域でレーザ光線7が遮られ、レーザ光線7は、レーザ光線の本来の焦点の範囲外で、ラグへの舌部の溶接も可能であるように調整されている。舌部30の領域にはもともとアライメント部材3の第1のスリット31が設けられているので、鍔部35は、ラグ38,39の領域でのみ遮蔽される。ただし、それによって鍔部35に沿った溶接接合部5は、ラグの幅の分だけわずかに減るにすぎない。
【0031】
このように、管状部分20を回転させている間のただ1回の溶接プロセスによって、アライメント部材3を管状部分20に溶接結合できるばかりでなく、舌部30およびラグ38,39の領域での剛性付与も行うことができる。付言しておくと、アライメント部材における第2の剛性付与を自動的に提供するために、第3のスリット33の領域にも相応に形成された舌部と相応に形成されたラグを設けることができる。
【0032】
このように本発明では、アライメント部材3が組付けために十分な柔軟性を有することができ、それにより、組付けを迅速かつ簡単に、しかも特に非常に正確に実施することができる。そして引き続き、管状部分20でのアライメント部材3の固定と同時にアライメント部材3に剛性も付与され、アライメント部材3の舌部とラグとに基づき、アライメント部材の剛性付与と固定とを1回のステップで行うことができる。このように、本発明では噴射弁の製造を有意に簡素化し、安価にすることができ、それと同時に、あとで必要となる内燃機関での噴射弁のアライメントのための精度も改善することができる。
【0033】
次に、本発明の別の実施例について詳細に説明するが、同じ部品ないし機能が同じ部品には第1の実施例と同じ符号が付されている。
【0034】
図9から
図11には、本発明の第2の実施例に基づくアライメント部材3が詳細に図示されている。
図9の平面図を見ると明らかなように、第2の実施例のアライメント部材3は縁部領域37に、第1および第2のV字型の切込み51,52の形態の2つのアライメント装置を含んでいる。さらに、多数の円形の通過開口部53が設けられている。V字型の切込み51,52により、アライメント部材を射出成形金型の中で確実にアライメントすることができる。さらに、射出成形プロセス中に通過開口部53は、射出成形材料が確実かつ迅速にアライメント部材3の両方の側へ到達できることを保証する。特に
図9と
図11を見ると明らかなとおり、第2の実施例のアライメント部材3は非常に簡単かつ低コストに製作することができる。それは特に、ラグおよび/または舌部が設けられていないからである。さらに第2の実施例のアライメント部材3は、ラビリンス構造50を有している。ラビリンス構造50は、本実施例では、周回するように閉じた溝をそれぞれ含んでおり、アライメント部材の両方の側にそれぞれ1つの溝が設けられている。これら両方の溝は、射出成形プロセスの後で、特に外部から内部に向かう方向で、非常に良好な密閉が可能であることを保証する。それにより、アライメント部材3の領域における噴射弁の液密性をいっそう改善することができる。
【0035】
図12から
図14は、本発明の第3の実施例に基づくアライメント部材3を示している。第3の実施例のアライメント部材3は、周回するスリットを有しているのではなく、半径方向に延びる2つのスリット61,62を有している。スリット62は、中央の貫通孔40から縁部領域37まで半径方向で連続するスリットとして構成されている。すなわちアライメント部材3は、平面図(
図12参照)で見たときにC字型の形状を有している。鍔部35から縁部領域37まで連続するスリット62は、特に、軸方向で改善された柔軟性を提供する。さらに、アライメント部材3を円周方向へも若干拡張することができるので、特別に簡単で迅速な組付けが可能である。さらに第3の実施例のアライメント部材3は、スリット61,62に設けられた拡張領域63,64を有している。それにより、射出成形材料がスリット61,62も完全に充填することが保証される。スリットはそれぞれ比較的細く形成されているからである。さらに、アライメント部材3の縁部領域37と底面領域36は共通の平面に位置している(
図13の断面図を参照)。
【0036】
図15から
図17は、本発明のさらに別の実施例を示している。
図15に示す第4の実施例では、アライメント部材3の縁部領域37にあるアライメント装置として、半径方向に突出する当接面55とV字型の切込み51が設けられている。切込み51と当接面55は、180°向かい合って位置している。
図16に示すアライメント部材3の第5の実施例は、縁部領域37での材料除去により生じた直線状の当接面56を示している。いっそう改善された柔軟性のために、円周方向に延びるスリット34,32は、半径方向内側を向く第1および第2の延長スリット321および341を有している。両方の延長スリット321,341は、同じくアライメントのために利用される深い切込み57と平行に延びている。さらに第5の実施例では、通過開口部は設けられていない。
図17に示す第6の実施例は、同じくアライメント部材の外側の縁部領域37での材料除去により生じた当接面56を有している。しかし第6の実施例では、第5の実施例の延長スリットならびに第5の実施例の深い切込みが欠如している。それによって第6の実施例は、非常に簡素かつ低コストに製作することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 噴射弁
2 噴射モジュール
3 アライメント部材
4 オーバーモールド
8 アライメント面
20 管状部分
30 舌部
31 スリット
32 スリット
33 スリット
34 スリット
35 鍔部
36 底面領域
37 縁部領域
38 ラグ
39 ラグ
40 貫通孔
50 ラビリンス構造
51 切込み
52 切込み
53 通過開口部
55 当接面
56 当接面
62 スリット
63 拡張領域
64 拡張領域